JP7352172B2 - ポリアミド化合物、及びその製造方法 - Google Patents
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現在のところ、自己修復性を有するポリマーとして、上述のウレタン系ポリマー等の限定されたポリマーが開発されているのみである。よって、これらの限定されたポリマーのみでは、適用範囲が限られてしまう。
また、従来の自己修復性を有するポリマーは、自己修復に際して、長時間を必要としていた。
このような状況のもと、自己修復性を有する新規ポリマーの開発が望まれている。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
(xは6~12の整数を示し、yは8~18の整数を示す。)
(nは6~12の整数を示し、mは8~18の整数を示す。)
本開示のポリアミド化合物は、下記一般式(1)で表されるジカルボン酸単位と、下記一般式(2)で表されるジカルボン酸単位と、下記一般式(3)で表されるジアミン単位と、を含有する。
(xは6~12の整数を示し、yは8~18の整数を示す。)
(nは6~12の整数を示し、mは8~18の整数を示す。)
一般式(1)におけるyは8~18の整数であり、好ましくは9~15の整数であり、より好ましくは10~12の整数である。
一般式(3)におけるnは6~12の整数であり、好ましくは7~11の整数であり、より好ましくは8~10の整数である。
一般式(3)におけるmは8~18の整数であり、好ましくは9~17の整数であり、より好ましくは10~16の整数である。
本発明のポリアミド化合物において、ジアミン単位の含有量は、特に限定されない。ジアミン単位の含有量は、通常、5%~50モル%であり、好ましくは20%~50モル%であり、更に好ましくは30%~50モル%である。
ジカルボン酸単位とジアミン単位との含有量の割合は、重合反応の観点から、ほぼ同量であることが好ましく、ジカルボン酸単位の含有量がジアミン単位の含有量の±1モル%であることがより好ましい。
一般式(1)で表されるジカルボン酸単位:一般式(2)で表されるジカルボン酸単位のモル比は、自己修復性が特に優れるという観点から、99:1~1:99であることが好ましく、95:5~25:75であることが更に好ましく、90:10~30:70であることが更に好ましい。
また、一般式(1)で表されるジカルボン酸単位及び一般式(3)で表されるジアミン単位からなるくり返し単位と、一般式(2)で表されるジカルボン酸単位及び一般式(3)で表されるジアミン単位からなるくり返し単位とが、それぞれブロック状になってポリアミド化合物中に存在していてもよい。すなわち、このブロック状の場合には、一般式(1)で表されるジカルボン酸単位及び一般式(3)で表されるジアミン単位からなるくり返し単位のみが集まっているブロックと、一般式(2)で表されるジカルボン酸単位及び一般式(3)で表されるジアミン単位からなるくり返し単位のみが集まっているブロックが存在することになる。そして、これらのブロックを有するポリアミド化合物では、一般式(1)で表されるジカルボン酸単位及び一般式(3)で表されるジアミン単位からなるくり返し単位のみからなるポリアミド化合物の性質を備えている。さらに、このポリアミド化合物では、一般式(2)で表されるジカルボン酸単位及び一般式(3)で表されるジアミン単位からなるくり返し単位のみからなるポリアミド化合物の性質も兼ね備えている。
例えば、ジカルボン酸化合物の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2~25の直鎖脂肪族ジカルボン酸、又は、トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した炭素数14~48の二量化脂肪族ジカルボン酸(ダイマー酸)及びこれらの水素添加物(水添ダイマー酸)などの脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、および、テレフタル酸、イソフタル酸、1,3-ベンゼン二酢酸、1,4-ベンゼン二酢酸などの芳香族ジカルボン酸を例示できる。また、これらのジカルボン酸化合物の誘導体を用いてもよい。誘導体としては、カルボン酸ハロゲン化物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリアミド化合物中のジカルボン酸単位の合計を100モル%とした場合に、上述の一般式(1)(2)で表されるジカルボン酸以外のジカルボン酸単位の含有量は特に限定されない。一般式(1)(2)で表されるジカルボン酸以外のジカルボン酸単位の含有量は、50モル%未満であることが好ましく、20モル%未満であることが更に好ましく、10モル%未満であることが特に好ましい。一般式(1)(2)で表されるジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位の含有量をこの範囲とすると、自己修復性が向上するからである。
例えば、一般式(3)で表されるジアミン単位以外のジアミン単位を構成するジアミンとしては、公知の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。
脂環式ジアミンとして、例えば4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを挙げることができる。
芳香族ジアミンとして、例えばo-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,5-ジアミノナフタレン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7-ジアミノフルオレン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6-ジアミノピリジン、3,4-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、3,6-ジアミノアクリジン、3,6-ジアミノカルバゾール、N-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、N-エチル-3,6-ジアミノカルバゾール、N-フェニル-3,6-ジアミノカルバゾール、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-ベンジジン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-N,N’-ジメチルベンジジン、1,4-ビス-(4-アミノフェニル)-ピペラジン、3,5-ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、ドデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5-ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5-ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6-ビス(4-アミノフェノキシ)コレスタン、4-(4’-トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル-3,5-ジアミノベンゾエート、4-(4’-トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル-3,5-ジアミノベンゾエート、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-ブチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-ヘプチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)-4-ヘプチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-(4-ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4-ジアミノーN,N―ジアリルアニリン、4-アミノベンジルアミン、3-アミノベンジルアミン、1-(2,4-ジアミノフェニル)ピペラジン-4-カルボン酸、4-(モルホリン-4-イル)ベンゼン-1,3-ジアミン、1,3-ビス(N-(4-アミノフェニル)ピペリジニル)プロパン、α-アミノ-ω-アミノフェニルアルキレンなどを挙げることができる。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のポリアミド化合物の分子量は、特に限定されない。一般的には、数平均分子量(Mn)は、1000以上100000以下であることが好ましく、2000以上90000以下であることが更に好ましく、3000以上80000以下であることが特に好ましい。同様に、重量平均分子量(Mw)は、3000以上400000以下であることが好ましく、6000以上300000以下であることが更に好ましく、40000以上250000以下であることが特に好ましい。ここでいう分子量は、いずれもポリスチレン換算の値を意味する。
ポリアミド化合物の分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)により測定を行い求めることができる。
ポリアミド化合物は、長鎖を有する一般式(1)で表されるジカルボン酸単位、長鎖を有する一般式(3)で表されるジアミン単位、一般式(2)で表されるジカルボン酸単位の組合せに特徴を有している。この特徴的な組合せによって、高い自己修復性を有していると推測される。
また、ポリアミド化合物の他の特徴は、エネルギー吸収性が高いことが挙げられる。また、他の特徴としては、非結晶性(透明性)であることが挙げられる。
なお、これらの特徴は、ウレタン系のポリマーにはない特徴である。
ポリアミド化合物の製造方法は、下記一般式(4)で表される構造を有するジカルボン酸化合物と、下記一般式(5)で表される構造を有するジカルボン酸化合物と、下記一般式(6)で表される構造を有するジアミン化合物と、を反応させることを特徴とする。
(xは6~12の整数を示し、yは8~18の整数を示す。)
(nは6~12の整数を示し、mは8~18の整数を示す。)
上記一般式(6)の「n」「m」については、上記一般式(3)の「n」「m」の説明をそのまま適用する事ができる。
また、他の方法でも製造できる。ポリアミド化合物を製造する方法としては、例えば、(1)酸または塩基触媒を利用する方法、(2)カルボン酸の活性法、(3)トランスエステル化を利用する方法、(4)縮合剤を利用する方法などが好適に用いられている。ここでは、好適な製造方法として、カルボン酸を活性化した酸クロリドを用いたポリアミド化合物の製造方法を例示する。
例えば、-40℃~100℃の範囲で行なうことが好ましい。
反応溶媒としては、特に限定されず、公知の溶媒は広く適用できる。例えば、反応溶媒としての有機極性溶媒として、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホン、ジメチルホルムアミド、N-メチルカプロラクタム、テトラメチル尿素、N,N′-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は2種以上の混合溶媒として用いてもよい。また、必要に応じて塩化水素、ハロゲン化金属塩、たとえば塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化カリウム等を併用して溶解性を向上してもよい。
ポリアミド化合物の濃度は、ポリアミド化合物組成の内容と組成比、溶解度、溶液粘度、取扱性、脱泡の容易性から総合的に判断して決められる。
中和剤としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ベンジルジメチルアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、テトラエチルアンモニウム塩等を好適に用いることができる。また、このような中和剤は、単独に粉体で添加してもよいが、微粉化して有機溶媒中にスラリーとして分散せしめたものを用いるのが、反応性,操作性の上からも好ましい。
反応押出法は、アミド交換反応により、ポリアミドの骨格中に組み込む方法である。
ポリアミド化合物に、用途や性能に応じて、滑剤、結晶化核剤、白化防止剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、酸化防止剤、耐衝撃性改良材等の添加剤を添加させてポリアミド組成物としてもよい。これらの添加剤は、本開示の効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加することができる。また、本開示のポリアミド化合物を、要求される用途や性能に応じて、種々の樹脂と混合してポリアミド組成物としてもよい。
ポリアミド化合物の用途は特に限定されない。例えば、衣類、ペイント、コーティング剤、化粧品、接着剤、電子機器の素材、建築材料、コンクリート補強剤、プリント用のインク、航空機の素材、宇宙船の素材等として用いられる。
<実施例1>(PA80CHC20PAmの合成)
ポリアミド化合物(PA80CHC20PAm)の合成は、下記のスキームに沿って行った。なお、「PA80CHC20PAm」は、実施例1のポリアミド化合物を示す略号である。CHCは、「t-Cyclohexane-1,4-dicarbonyl dichloride」の略語である。
(1)FT-IR測定
一回反射ATR法(ZnSeプリズム)で測定した。測定範囲は、4000cm-1~550cm-1とし、日本分光(株)製、FT-IR-4200+ATR410-Sを用いた。測定結果は、「1.ポリアミド化合物の合成」の末尾に記載した通りである。
試料の重さ:5mg,昇温速度:10℃/min, 温度範囲:-150℃~300℃の条件でDSCを測定し、Tg(ガラス転移温度)を求めた。DSC測定には(株)日立ハイテクサイエンス製EXSTAR DSC7020を用いた。
試料の重さ:5mg,昇温速度:10℃/min,温度範囲:r.t.~600℃の条件でTG/DTAを測定し、熱分解温度Td(5%重量減少温度)と減量開始温度を求めた。TGA測定には理学電機(株)Thermoplus TG8120を用いた。
比重測定は、試験方法(JIS K 7112-A,水中置換法)により比重測定を行った。また、吸水率も評価した。試験片は、短冊状の試験片(20mmx20mmx5mm)を作製、用いた。
実施例のポリアミド化合物のDSC測定、TGA測定、比重測定の測定結果を表1に示す。
(6.1)試験方法
引張特性は、引張試験を行い、降伏応力(引張強度)、破断伸びを評価した。試験片は、短冊状の試験片(40mmx9mmx4mm)を作製して、用いた。測定に当たっては、試験片の幅、厚みを測定して用いた。測定にはTECHNO GRAPH 5AG-X型(島津製作所製)試験機を用いた。測定条件は、引張速度100mm/min、測定温度23℃とした。
自己修復性試験方法は、以下の通りである。試験片の長手方向の略中央をはさみで横断するように切断した。切断面同士を5秒間押し付けた後30分間放置したサンプルの引張特性を測定した。
試験結果を表2に示す。切断面同士を押しつけて接合すると、30分という短時間で、切断していない試験片(Pristine)と同等の引張強さ及び破断伸びを示すことが確認された。
(7.1)測定方法
ポリアミド化合物の分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)により測定を行い求めた。
測定には、東ソー(株)製(RI 検出器使用)測定装置(HLC-82220GPC)を用い、カラムは、昭和電工(株)製、Shodex GPC KF-806L×3を用い、測定条件は以下のとおりとした。
GPC測定については、溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、標準物質:ポリスチレン(PS)、試料濃度:0.2w/v%、注入量:100μL、流量:1.0mL/min、カラム温度:40℃で測定を行った。
表3に測定結果を示す。
実施例のポリアミド化合物は、ポリマーの骨格にウレタン、ウレア結合を導入せずに、自己修復性を有していることが確認された。
また、切断後に接着したポリアミド化合物の試験片は、短時間で自己修復した。
また、切断後接着した試験片を、引張試験により評価を行った結果、物性が切断前の試験片と同等であることが確認された。よって、実施例のポリアミド化合物は、自己修復性が非常に高いことが分かった。
本実施例のポリアミド化合物は、アミド結合により連結されており、エラストマー特性、自己修復性をもつ樹脂である。本実施例のポリアミド化合物は、短い時間で自己修復する樹脂として非常に有用である。本実施例のポリアミド化合物は、〔1〕自己修復性を有すること、〔2〕エラストマー性を有すること、〔3〕非結晶性(透明性)を有すること、に特徴を有する。特に、切断(破断)後に切断(破断)面を、短時間、再度接触させるだけで自己修復でき、加熱や圧力や化学反応を必要としないという非常に優れた特性を有する。
また、本実施例のポリアミド化合物は、ジカルボン酸単位の原料として、植物由来の化合物を出発原料にできるため、地球温暖化防止や資源リスク低減の観点から有利である。
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