JP7350301B2 - フィルタ並びに眼鏡レンズ、カメラフィルタ、窓板及びサンバイザ - Google Patents

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Description

本発明は、入射角に依存した透過率を有するフィルタ、並びに眼鏡レンズ、カメラフィルタ、窓板及びサンバイザに関する。
特開2007-279424号公報(特許文献1)に記載されているように、使用者に対してのみ限定的に画像を高い輝度で視認させ得るディスプレイ装置の覗き見防止シートが知られている。
このシートは、第一ルーバー槽12と、第二ルーバー槽13と、入射光を指向するプリズム層11とを含む。第一ルーバー槽12及び第二ルーバー槽13は、それぞれ、所定の間隔をおいて互いに平行に延在する複数のルーバーを含む。第一ルーバー槽12及び第二ルーバー槽13により、ディスプレイにおける側面方向の光の出射が防止され、側方からの覗き見が防止される。
特開2007-279424号公報
上記のシートでは、ディスプレイ面で考えれば、入射角(ディスプレイ面の垂線に対する光線の角度)が0°及びその近傍である場合に光の透過率が高く、入射角が90°に近い側面方向である場合に光の透過率が低い。よって、上記のシートは、入射角に依存した透過率を有する(入射角依存性透過率)。
しかし、上記のシートでは、第一ルーバー槽12及び第二ルーバー槽13という立体構造が存在するため、他の物体との接触等により毀損されて入射角依存性が損なわれることがある。
又、上記のシートでは、第一ルーバー槽12及び第二ルーバー槽13の構造上、透過率の変化パターンは、ある入射角(45°程度)を境界として急激に変化するものしか形成し得ない。
そこで、本発明の主な目的は、より耐久性に優れたフィルタ、ないしはそのフィルタに属する眼鏡レンズ、カメラフィルタ、窓板、サンバイザを提供することである。
又、本発明の別の主な目的は、様々な透過率の変化パターンを具備可能であるフィルタ、ないしはそのフィルタに属する眼鏡レンズ、カメラフィルタ、窓板、サンバイザを提供することである。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、基材と、可視域における光の少なくとも一部に係る透過率が、入射角に応じて減少する、前記基材上の誘電体多層膜と、を有しているフィルタであって、前記誘電体多層膜は、iを自然数として()内の構成のi回の繰り返しを() とし、設計波長をλ とし、垂直入射での光学膜厚がλ /4である高屈折率層をHとし、垂直入射での光学膜厚がλ /4×2=λ /2である高屈折率層を2Hとし、垂直入射での光学膜厚がλ /4である低屈折率層をLとし、垂直入射での光学膜厚がλ /4である中屈折率層をMとし、前記基材の側を左側として、(HL) の基本設計と、(LM2HML) の基本設計と、を含んでいることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、上記発明において、前記pは9以下であり、前記qは22以下であることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、上記発明において、前記中屈折率層のうちの少なくとも何れかは、等価な前記高屈折率層及び前記低屈折率層で置換されていることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、上記発明において、前記入射角が0である場合に、無色透明であることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、上記発明において、前記入射角が0である場合に、着色されていることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、上記発明において、光吸収膜を有していることを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、眼鏡レンズにおいて、上記発明のフィルタを有していることを特徴とするものである。
請求項8に記載の発明は、カメラフィルタにおいて、上記発明のフィルタを有していることを特徴とするものである。
請求項9に記載の発明は、窓板において、上記発明のフィルタを有していることを特徴とするものである。
請求項10に記載の発明は、サンバイザにおいて、上記発明のフィルタを有していることを特徴とするものである。
本発明の主な効果は、より耐久性に優れたフィルタ、ないしはそのフィルタに属する眼鏡レンズ、カメラフィルタ、窓板、サンバイザが提供されることである。
又、本発明の別の主な効果は、様々な透過率の変化パターンを具備可能であるフィルタ、ないしはそのフィルタに属する眼鏡レンズ、カメラフィルタ、窓板、サンバイザが提供されることである。
本発明に係るフィルタの模式的な断面図である。 本発明の実施例1-1における積層膜の構造が示される棒グラフである。 実施例1-1に対する垂直入射光(入射角θ=0°)及び斜入射光(θ=45°)の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示されるグラフである。 実施例1-1及び実施例1-2に対する垂直入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示されるグラフである。 実施例1-1,1-3,1-4に係る45°入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示されるグラフである。 実施例1-1,1-5~1-7の垂直入射光の可視域及び隣接域における分光透過率が示されるグラフである。 実施例1-1,1-5~1-7の45°斜入射光の可視域及び隣接域における分光透過率が示されるグラフである。 実施例2-1における積層膜の構造が示される棒グラフである。 実施例2-1及び実施例2-2に対する垂直入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示されるグラフである。 実施例3-5における積層膜の構造が示される棒グラフである。 実施例3-6における積層膜の構造が示される棒グラフである。 実施例3-7における積層膜の構造が示される棒グラフである。 実施例3-1ないし実施例3-4に対する垂直入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示されるグラフである。 実施例3-1ないし実施例3-4に対する45°斜入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示されるグラフである。 実施例3-5に対する垂直入射光及び45°斜入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示されるグラフである。 実施例3-6に対する垂直入射光及び10°,30°,45°,55°斜入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示されるグラフである。 実施例3-7に対する垂直入射光及び10°,30°,45°,55°斜入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示されるグラフである。 実施例4-3における積層膜の構造が示される棒グラフである。 実施例4-4における積層膜の構造が示される棒グラフである。 実施例4-1ないし実施例4-2に対する垂直入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示されるグラフである。 実施例4-1ないし実施例4-2に対する45°斜入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示されるグラフである。 実施例4-3に対する垂直入射光及び45°斜入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示されるグラフである。 実施例4-4に対する垂直入射光及び10°,30°,45°,55°斜入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示されるグラフである。 実施例5における積層膜の構造が示される棒グラフである。 実施例5に対する垂直入射光及び10°,30°,45°,55°斜入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示されるグラフである。 各種の光吸収層の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示されるグラフである。 実施例6における積層膜の構造が示される棒グラフである。 実施例6に対する垂直入射光及び10°,41.8°,55°斜入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示されるグラフである。 実施例7における積層膜の構造が示される棒グラフである。 実施例7に対する垂直入射光及び10°,30°,45°,55°斜入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示されるグラフである。
以下、本発明に係る実施の形態の例が、適宜図面に基づいて説明される。尚、本発明の形態は、これらの例に限定されない。
図1に示されるように、本発明に係るフィルタ1は、基材2と、光学多層膜4と、を有する。
基材2は、透光性を有している。
基材2の材質は、特に限定されず、例えばガラス、あるいは樹脂である。
基材2の形状は、特に限定されず、例えば板状、フィルム状、眼鏡レンズ状である。
光学多層膜4は、誘電体材料を用いた無機多層膜であり、誘電体多層膜である。
光学多層膜4は、基材2の少なくとも一面における一部又は全部に形成される。
光学多層膜4は、低屈折率層及び高屈折率層を含む。又、光学多層膜4は、更に中屈折率層を含み得る。
高屈折率層及び低屈折率層(並びに中屈折率層)の層数及び材質の選択、並びに各層における厚み(層に係る物理膜厚あるいは光学膜厚)の増減といった設計要素の変更により、光学多層膜4の設計が変更される。
例えば、中屈折率層がこれと光学的に等価である高屈折率層と低屈折率層との組合せにより置換される等、光学多層膜4における一部又は全部の構造は、光学的に等価な他の構造に置換されても良い。
高屈折率層は、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化タンタル(Ta)、酸化ニオブ(Nb)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化ランタン(La)、若しくは酸化プラセオジム(Pr)又はこれらの二種以上の混合物といった高屈折率材料から形成される。
又、低屈折率層は、例えば、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化マグネシウム(MgF)、酸化アルミニウムと酸化プラセオジムとの組合せ(Al-Pr)、酸化アルミニウムと酸化ランタンとの組合せ(Al-La)、若しくは酸化アルミニウムと酸化タンタルとの組合せ(Al-Ta)、又はこれらの二種以上の混合物といった低屈折率材料から形成される。
中屈折率層は、例えばAl、Pr、La、Al-Pr、Al-La、といった中屈折率材料から形成される。
光学多層膜4の外部あるいは内部に、光吸収膜A等の他の機能を有する膜が組み合わせられても良い。光吸収膜Aを形成する光吸収膜材料として、例えば、不飽和ニッケル酸化物(NiO,0<x<1)、不飽和チタン酸化物(TiO,0<y<2)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ニクロム(NiCr)、ケイ素(Si)、若しくはゲルマニウム(Ge)又はこれらの二種以上の混合物が挙げられる。
光学多層膜4の低屈折率層及び高屈折率層(並びに中屈折率層)は、真空蒸着法あるいはイオンアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法等により形成される。
光学多層膜4は、基材2における複数の面に形成されても良い。例えば、光学多層膜4は、板状あるいはフィルム状の基材2の表裏両面に形成されても良い。
光学多層膜4は、光学薄膜フィルタの所定の特性を用いて、可視域における光Bの入射角θに依存した透過率を実現する。ここで、可視域は、例えば400ナノメートル(nm)以上780nm以下であり、その下限は、380nm、390nm、410nm、420nm、430nmあるいは440nm等とされても良いし、その上限は、800nm、790nm、770nm、760nm、750nm、730nm、700nm、680nm、650nm、あるいは640nm等とされても良い。
光学薄膜フィルタの所定の特性とは、光学薄膜フィルタへの光Bの入射角θが増加すると、分光透過率分布が短波長側へシフトする特性である。例えば、θ=0(垂直入射)において700nmを境界として、これより短波長側で100%に近い透過率を持ち、長波長側で0%に近い透過率を持つショートウェーブパスフィルタにおいて、θが増加すると、700nmより短い波長を境界として、これより短波長側で100%に近い透過率を持ち、長波長側で0%に近い透過率を持つように、分光透過率分布が短波長側にシフトする。
かような特性は、従来、波長軸(横軸)方向について注目されてきた。これに対し、本発明では、透過率軸(縦軸)方向の変化に注目し、当該変化を制御することで、入射角θに依存した透過率を可視域において有する光学多層膜4ないしフィルタ1を実現する。
かような光学多層膜4の基本設計(基本単位)として、それぞれ垂直入射での光学膜厚がλ/4である高屈折率層及び低屈折率層の組の繰り返し(交互膜)であるQW(Quarter Wave)積層膜が挙げられる。()内の構成のp回の繰り返しを()と表し、垂直入射での光学膜厚がλ/4である高屈折率層をH、垂直入射での光学膜厚がλ/4である低屈折率層をLと表すと、QW積層膜は、(HL)と表される。
QW積層膜に対する垂直入射光の分光透過率分布では、設計波長、及び設計波長の3分の1・・・(奇数分の1)の波長において、反射帯(1次反射帯,3次反射帯・・・)が形成される。可視域が反射帯間(例えば1次反射帯と3次反射帯との間)となるように設計波長が選択されれば、垂直入射(入射角θ=0)の光Bに対して、可視域での透過率が高くなると共に、入射角θ>0(斜入射)の光Bに対して、反射帯の短波長側へのシフトにより、反射帯が可視域内に入って、可視域での透過率が低下することとなる。
又、斜入射光に対する分光透過率分布において、垂直入射光の分光透過率分布では現れなかった偶数次の反射帯が現れる。これら偶数次の反射帯の少なくとも何れかが可視域に配置されれば、垂直入射光の透過率に対する斜入射光の透過率の低減が実現される。
更に、QW積層膜の基本構造(層の並び)を維持しながら、高屈折率層の物理膜厚と低屈折率層の物理膜厚との比率を変化させると、偶数次の反射帯が現れる。これら偶数次の反射帯の少なくとも何れかが斜入射光において可視域に配置されれば、垂直入射光の透過率に対する斜入射光の透過率の低減が実現される。
又、別の光学多層膜4の基本単位として、垂直入射での光学膜厚がλ/4である中屈折率層Mを用いた(LM2HML)が挙げられる。ここで、2Hは、垂直入射での光学膜厚がλ/4×2=λ/2である高屈折率層である。Mの少なくとも何れかは、等価なH及びLで置換されても良い。
(LM2HML)に対する垂直入射光の分光透過率分布では、設計波長、及び設計波長の5分の1の波長において、反射帯(1次反射帯,5次反射帯)が形成される。(LM2HML)は、3次反射帯が形成されないことから、以下3次非形成積層膜と呼ばれる。可視域が1次反射帯と5次反射帯との間となるように設計波長が選択されれば、垂直入射光に対して、可視域での透過率が高くなると共に、斜入射光に対して、1次反射帯の短波長側へのシフトにより、1次反射帯が可視域内に入って、可視域での透過率が低下することとなる。
更に、別の光学多層膜4の基本単位として、カットの境界(分光透過率分布が短波長側から長波長側へ急減する部分)が可視域に隣接した赤外線カットフィルタが挙げられる。
かような赤外線カットフィルタでは、垂直入射光は、可視域において透過する。又、斜入射光は、シフトに基づいてカットの境界が可視域に入ることにより、可視域透過率が低減された状態で透過する。
かような本発明のフィルタ1は、好適には、眼鏡レンズ、カメラフィルタ、窓板、サンバイザ、覗き見防止フィルタである。
眼鏡レンズの場合、垂直入射を主体とする視認及び外観においては透過率が高く、斜め上方から入射する太陽光等の透過率が抑制されて太陽光等の眩しさが軽減される。垂直入射で透過率が90%以上程度であれば、サングラスのような着色のない外観を具備しながら、太陽光等の眩しさが軽減された眼鏡レンズが提供される。あるいは、着色(減光膜)と組み合わせることにより、太陽光等の眩しさを比較的に多く減光するサングラスが提供される。又、眼鏡レンズを斜めから見た場合に、度の強さによっては縁の像が並ぶことで牛乳瓶の底のように見える(瓶底像が見える)ことがあるところ、本発明に係る光学多層膜4付きの眼鏡レンズにより、瓶底像が見えにくくなる。
カメラフィルタの場合、例えば太陽等の光源が斜め上前方にある逆光において、正面前方からの光の透過が確保されて撮像への影響が抑制された状態で、斜め上の光源によるフレア及びゴーストの少なくとも一方の発生が防止される。
窓板の場合、正面からの景色等の視認性が確保され、斜め上からの直射日光等の透過が抑制されて太陽光等による眩しさが低減される。
サンバイザの場合、例えば車内のフロントガラスの後側で鉛直に立てると、正面からの光の透過が確保されて正面の視認性が確保されつつ、斜め上の太陽光等の透過が抑制されて太陽光等による眩しさが低減される。
覗き見防止フィルタの場合、正面からの視認性を確保しつつ、周囲からの視認性が抑制される。
以上の通り、本発明のフィルタ1は、可視域における光Bの少なくとも一部に係る透過率が、入射角θに応じて減少する誘電体多層膜としての光学多層膜4を有している。よって、従来の立体的なルーバーのように他の物体との接触等により立体構造が毀損されることはなく、より耐久性に優れる入射角θに依存した減光量を呈する減光フィルタ1が提供される。又、減光フィルタ1は、光学多層膜4の積層構造を様々に変更することにより、様々な透過率の変化パターンを具備可能である。
又、フィルタ1は、入射角θが0である場合に、無色透明であるようにすれば、正面視で透明でありながら斜方視で減光されるものとなる。
他方、フィルタ1は、入射角θが0である場合に、着色されているようにすれば、正面視で有色でありつつ、斜方視で色みがそのままであるいは変化しつつ色の濃さが更に濃くなるものとなる。
加えて、フィルタ1が、光吸収膜Aを有していれば、入射角θが0の場合に減光され、更に入射角θに応じてより減光されるものとなる。
次に、本発明の実施例が示される。
但し、実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
又、本発明の捉え方により、実施例が本発明の範囲外となる実質的な比較例となったり、比較例が本発明の範囲内である実質的な実施例となったりすることがある。同様に、下記の参考例は本発明の範囲内である実質的な実施例となったり本発明の範囲外となる実質的な比較例となったりする。
[実施例1:QW積層膜]
実施例1-1~1-7は、板状の基材2(基板)の片面にQW積層膜が形成されたものである。基板はBK7製であり、透明であって、基板の屈折率nは、波長550nmの光に対して1.52である。屈折率は、波長550nmの光に対するものであり、以下同様である。
実施例1-1のQW積層膜(HL)は、図2に示される通り、p=10であり、基板:(151.11H,231.29L)10,151.11H,115.65L:空気、である。ここで、151.11Hは、物理膜厚が151.11nmの高屈折率層であり、231.29Lは、物理膜厚が231.29nmの低屈折率層であって、以下同様である。図2において、1層目(横軸の“1”)は、基板に最も近い(基板に接する)層を示し、2層目(横軸の“2”)は、基板側から数えて2番目の層を示し、以下同様である。
実施例1-1のQW積層膜の各高屈折率層は、Nb層であり、その屈折率nは、2.25である。
実施例1-1のQW積層膜の各低屈折率層は、SiO層であり、その屈折率nは、1.47である。
実施例1-1のQW積層膜の設計波長λは、1360nmである。
繰り返し要素が10回繰り返された(HL)10の空気側における、151.11H,115.65Lは、透過帯のリップルをより小さくするように調整するためのものである。
実施例1-1に対して垂直に入射する(θ=0°)光Bの可視域及び隣接域における分光透過率分布が、図3において実線で示され、図4において点線で示される。
実施例1-1では、λ=1360nmを含む波長域(1200~1550nm)において、透過率が0あるいは0付近となる1次反射帯が形成される。又、実施例1-1では、λ/3=453.3nmを含む波長域(448~455nm)において、透過率が0あるいは0付近となる3次反射帯が形成される。更に、実施例1-1では、λ/5=272nmを含む波長域(270~274nm)において、透過率が0あるいは0付近となる5次反射帯が形成される。1次反射帯、3次反射帯及び5次反射帯の各波長域において、分光透過率分布の極小値が存在する。
実施例1-1に対してθ=45°で入射する光Bの可視域及び隣接域における分光透過率分布が、図3において破線で示される。
45°斜入射光の分光透過率分布は、垂直入射光の分光透過率分布に対して短波長側にシフトしている。
又、45°斜入射光の分光透過率分布は、垂直入射光の分光透過率分布では見られない2次反射帯(λ/2=680nmからシフトした620nm付近,透過率70%程度)を有しており、2次反射帯の分、実施例1-1における45°斜入射光の可視域での透過率は、垂直入射光の可視域での透過率より低くなる。
尚、実施例1-1において、入射角θの増加に対して、各反射帯の短波長側へのシフト量が単調増加し、又各反射帯における透過率が単調減少する。
実施例1-1の構造につき各層の光学膜厚を除いて維持し、各高屈折率層の光学膜厚(n)を1.05倍すると共に、各低屈折率層の光学膜厚(n)を0.95倍して、即ち各高屈折率層の光学膜厚と各低屈折率層の光学膜厚との比率を変えて(n:n=1.05:0.95)、実施例1-2が作製された。
実施例1-2の垂直入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が、図4において破線で示される。実施例1-2の場合、垂直入射光においても、2次反射帯及び4次反射帯が形成されている。実施例1-2に係る斜入射光の分光透過率分布では、2次反射帯及び4次反射帯における透過率の値が下がるところ、2次反射帯は短波長側へのシフト後においても可視域内に有るため、実施例1-2の斜入射光の可視域透過率は、垂直入射光の可視域透過率に対して減少する。
更に、実施例1-1の構造につき層の数を除いて維持し、層数を異ならせたものとして、実施例1-3(全層数12)、及び実施例1-4(全層数42)が作製された。
実施例1-3は、基板:(151.11H,231.29L),151.11H,115.65L:空気、である。
実施例1-4は、基板:(151.11H,231.29L)20,151.11H,115.65L:空気、である。
実施例1-1,1-3,1-4に係る45°斜入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が、それぞれ図5に示される。層数が多いほど、斜入射時に形成される2次反射帯の透過率が低くなる。
実施例1-1と設計波長λを除き同様の構造を有するQW積層膜を、3種(λ=1220,1040,900)、それぞれ基板の片面に形成することで、実施例1-5,1-6,1-7が形成された。
実施例1-5(λ=1220)は、基板:(135.19H,207.9L)10,135.19H,104L:空気、である。
実施例1-6(λ=1040)は、基板:(114.67H,177.03L)10,114.67H,88L:空気、である。
実施例1-7(λ=900)は、基板:(98.63H,153.01L)10,98.63H,76L:空気、である。
実施例1-1,1-5~1-7の垂直入射光,45°斜入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が、図6,図7において示される。
実施例1-1,1-5~1-7では、45°斜入射光において、垂直入射光では見られない2次反射帯(極小値70%程度)が、それぞれ可視域内である、620nm(680nmからのシフト),555nm(610nmからのシフト),470nm(520nmからのシフト),415nm(450nmからのシフト)を中心に生じる。よって、実施例1-1,1-5~1-7では、斜入射光の可視域透過率は、垂直入射光の可視域透過率に対して、主に2次反射帯の分だけ減少する。
[実施例2:3次非形成積層膜]
実施例2-1~2-2は、実施例1の基板と同様な基板の片面に、3次非形成積層膜が形成されたものである。
実施例2-1の3次非形成積層膜における各高屈折率層の材質及び各低屈折率層の材質は、何れも実施例1と同じである。実施例2-1の3次非形成積層膜における設計波長λは、1360nmである。
実施例2-1は、3次非形成積層膜(LM2HML)型の設計で、q=10であり、図8に示される通り、基板:(86.75L,15.29H,23.44L,111.71H,23.44L,15.29H,86.75L)10:空気、である。3次非形成積層膜の繰り返し要素(LM2HML)における基板から2~3層目及び4層目の一部と、基板から4層目の一部及び5~6層目とは、中屈折率層と光学的に同等になっている。又、Lが同じ材質である場合、互いに隣接する要素では、空気側のLと、次の要素の基板側のLとが物理的に1つの層となり、実施例2-1の3次非形成積層膜は全61層となる(図8参照)。
図9に点線で示されるように、実施例2-1において、453.3nm(シフト前)に係る3次反射帯は形成されない。よって、1次反射帯と5次反射帯との間が比較的に広くなり、反射帯の間に可視域が配置され易く、垂直入射光の可視域透過率が比較的に高くされ易い。又、実施例2-1において、斜入射光で偶数次の反射帯が発生し、2次反射帯が可視域内(650nm前後)で発生するので、斜入射光の可視域透過率は、垂直入射光の可視域透過率に対して、主に2次反射帯の分だけ減少する。
実施例2-2は、実施例1-2と同様に、実施例2-1の構造につき各層の光学膜厚を除いて維持し、各高屈折率層の光学膜厚を1.05倍すると共に、各低屈折率層の光学膜厚を0.95倍して作製された。
実施例2-2の垂直入射光の可視域及び隣接域における分光透過率分布が、図9において破線で示される。実施例2-2の場合も、実施例1-2と同様に、垂直入射光において2次反射帯及び4次反射帯が形成されている。実施例2-2に係る斜入射光の分光透過率分布では、2次反射帯及び4次反射帯における透過率の値が下がるところ、2次反射帯は短波長側へのシフト後においても可視域内に有るため、実施例2-2の斜入射光の可視域透過率は、垂直入射光の可視域透過率に対して減少する。
[実施例3:QW積層膜及び3次非形成積層膜の組合せ]
実施例3-1~3-2は、実施例1の基板と同様な基板の片面に、実施例2と同様の材質の3次非形成積層膜が形成されたものである。
実施例3-3~3-4は、実施例1の基板と同様な基板の片面に、実施例1と同様の材質のQW積層膜が形成されたものである。
実施例3-5は、実施例3-1~3-4を、実施例1の基板と同様な1つの基板の片面に、順次積層して直列につなげたものである。実施例3-6は、実施例3-5における各層の膜厚を微調整して膜厚最適化を行った状態で、実施例3-5と同様に形成される。実施例3-7は、実施例3-6の構造を参考に層数を減らした設計が採用され、実施例3-6と同様に形成される。
実施例3-1は、3次非形成積層膜(LM2HML)型の設計で、λ=1360でq=12であり、基板:(86.75L,15.29H,23.44L,111.71H,23.44L,15.29H,86.75L)12:空気、である。実施例3-1の3次非形成積層膜は、実施例2-1に対して、繰り返し数qが相違するだけである。
実施例3-2は、3次非形成積層膜(LM2HML)型の設計で、λ=1220でq=10であり、基板:(75.8L,13.54H,20.48L,98.94H,20.48L,13.54H,75.8L)10:空気、である。
実施例3-3のQW積層膜(HL)は、λ=1040でp=5であり、基板:(114.67H,173.03L),114.67H,88L:空気、である。
実施例3-4のQW積層膜(HL)は、λ=900でp=4であり、基板:(98.63H,153.01L),98.63H,76L:空気、である。
実施例3-5は、図10に示される通り、基板側から順に実施例3-1~3-4の構造を配置したものであって、全153層であり、全物理膜厚は10.2μm(マイクロメートル)である。
実施例3-6は、図11に示される通りであって、全153層であり、全物理膜厚は10.1μmである。実施例3-6の構造は、次の通りである。
基板:5L,13.5H,29.43L,114.24H,28.02L,14.51H,184.2L,14.94H,26.56L,99.42H,16.78L,14.21H,172.57L,19.64H,20.55L,103.14H,17.79L,18.34H,174.28L,18.64H,17.45L,100.06H,22.25L,19.69H,191.06L,20.76H,20.26L,86.42H,19.89L,21.23H,190.01L,20.11H,22.91L,84.65H,15.08L,23.31H,184.33L,23.81H,20.17L,82.75H,15.95L,25.71H,180.24L,22.58H,14.07L,91.64H,23.21L,21.07H,185.81L,16.76H,20.08L,110.4H,23.38L,16.83H,168.18L,17.14H,21.44L,214.16H,19.15L,15.06H,151.62L,15.19H,15.65L,97.3H,25.63L,16.96H,165.18L,12.31H,24.94L,87.08H,15.41L,17.11H,177.15L,18.33H,24.8L,97.56H,8.9L,18.01H,164.37L,21.45H,8.52L,92.38H,24.5L,19.8H,177.34L,21.14H,14.61L,81.49H,25.92L,15.75H,170.15L,15.54H,25.3L,85.43H,15.62L,16.81H,137.32L,11.85H,28.21L,116.11H,17.93L,12.77H,134.62L,6.21H,25.8L,111.7H,25.6L,8.73H,141.15L,8.95H,19.43L,104.46H,32.59L,3.46H,131.09L,18.08H,11.25L,95.88H,23.89L,11.46H,114.39L,6.35H,32.33L,104.98H,23.36L,9.17H,144.83L,11.94H,24.66L,113.43H,54.58L,2.55H,110.13L,111.6H,177.16L,113.18H,173.54L,110.18H,172.58L,106.84H,167.71L,107.6H,168.74L,105.44H,161.62L,96.92H,154.32L,96.34H,150.6L,94.47H,154.65L,94.79H,77.72L:空気
実施例3-7は、図12に示される通りであって、全53層であり、全物理膜厚は5.3μmである。実施例3-7の構造は、次の通りである。
基板:5.11L,14.55H,30.66L,122.21H,31.3L,12.41H,153.07L,15.46H,28.24L,115.11H,19.73L,12.3H,173.13L,19.89H,19.74L,101.3H,16.99L,19.23H,165.27L,14.94H,17.19L,101.74H,17.31L,12.95H,159.83L,22.81H,14.91L,83.21H,20.84L,22.6H,167.11L,9.82H,22.15L,79.3H,8.83L,22.85H,132.58L,5.11H,35.78L,120.72H,71.09L,5.11H,78.72L,111H,172.68L,105.81H,158.26L,93.89H,148.68L,90.02H,150.44L,91.04H,75.93L:空気
実施例3-1~3-4では、図13に示される通り、垂直入射光の透過率は可視域全域で90%以上で平坦になっており、垂直入射光はほぼそのまま透過されて、実施例3-1~3-4は、垂直入射光に対し無色透明となる。分光透過率分布が可視域全域で90%以上で平坦であれば、減光の度合が十分に小さく、又可視域における減光の偏りが十分に小さいため、実施例3-1~3-4は垂直入射光に対し無色透明となる。
又、実施例3-1~3-4では、図14(θ=45°)に示される通り、それぞれ可視域で2次反射帯が生成され、2次反射帯が斜入射光の可視域透過率の垂直入射光の可視域透過率に対する低下に寄与している。
実施例3-5では、垂直入射光(実線)及びθ=45°の斜入射光(破線)について図15に示されるように、斜入射光において可視域の全体にわたり透過率が減少している。
実施例3-6では、垂直入射光及びθ=10°,30°,45°,55°の各斜入射光について図16に示されるように、垂直入射光において可視域の全体にわたり透過率が平坦になっており、斜入射光において可視域の全体にわたり透過率が平坦に減少している。即ち、実施例3-6では、垂直入射光において可視域で均一な透過がなされ、斜入射光において可視域で均一な減光がなされる。ここでの均一性(平坦性)は、層数が有限である現実に鑑みれば、可視域における透過率の最大値と最小値との差が15%以内であれば充足している。ここでの均一性は、好ましくは、当該差が12%以内、10%以内、あるいは8%以内である。以下、均一性につき、特に断りがない限り同様である。又、実施例3-6では、θが大きくなる程、可視域での透過率の平均値が小さくなっている。
実施例3-7では、垂直入射光及びθ=10°,30°,45°,55°の各斜入射光について図17に示されるように、可視域での透過率の平均値の大きさが異なるものの、実施例3-6と同様に平坦な透光及び入射角θに依存する平坦な減光が実現される。
[実施例4:QW積層膜及び赤外線カットフィルタの組合せ]
実施例4-1は、実施例1-3と同様であり、基板:(111.79H,183.32L),111.79H,91.5L:空気、である。
実施例4-2は、カットの境界が可視域に隣接した赤外線カットフィルタが、実施例1と同様の基板の片面に形成されたものであり、基板:(21.54H,214.32L),21.54H,107.25L:空気、である。
実施例4-3は、図18に示される通り、基板側から順に実施例4-1相当の構造及び4-2の構造を配置したものであって、全28層である。実施例4-1相当の構造は、(111.79H,183.32L)であり、最も空気側の層(14層目)の物理膜厚のみが実施例4-1と相違している。
実施例4-4は、実施例4-3における各層の膜厚を微調整して膜厚最適化を行った状態で、実施例4-3と同様に形成される。実施例4-4は、図19に示される通りであって、全28層である。実施例4-4の構造は、次の通りである。
基板:105.93H,160.01L,95.57H,153.09L,98.78H,164.21L,108.3H,178.24L,118.93H,178.16L,123.12H,183.96L,114.59H,206.26L,13.8H,221.22L,9.68H,216.32L,7.26H,231.8L,5H,300L,5H,78.71L,12.17H,228.6L,16.66H,111.26L:空気
実施例4-1~4-2では、図20に示される通り、垂直入射光の透過率は可視域全域で85%以上で平坦になっており、垂直入射光は可視域においてほぼそのまま透過されて、実施例4-1~4-2は、垂直入射光に対し無色透明となる。
又、実施例4-1では、図21(θ=45°)に示される通り、可視域で2次反射帯が生成され、2次反射帯が斜入射光の可視域透過率の垂直入射光の可視域透過率に対する低下に寄与している。尚、図21における点線は、実施例4-2の垂直入射光に係る分光透過率分布(図20)を参考のため再掲したものである。
更に、実施例4-2では、図21に示される通り、カットの境界が可視域に入ってきており、カットの境界より長波長側におけるカット領域が、斜入射光の可視域透過率の低下に寄与している。
実施例4-3では、垂直入射光(実線)及びθ=45°の斜入射光(破線)について図22に示されるように、斜入射光では、可視域の中波長帯(実施例4-1に係る2次反射帯)、及び長波長帯(実施例4-2に係るカットの境界の長波長側)において、透過率が減少している。
実施例4-4では、垂直入射光及びθ=10°,30°,45°,55°の各斜入射光について図23に示されるように、垂直入射光において可視域の全体にわたり透過率が平坦になっており、斜入射光において可視域の全体にわたり透過率が平坦に減少している。即ち、実施例4-4では、垂直入射光において可視域で均一な透過がなされ、斜入射光において可視域で均一な減光がなされる。又、実施例4-4では、θが大きくなる程、可視域での透過率の平均値が小さくなっている。
[実施例5:光吸収膜の挿入]
実施例5は、図24に示される通り、実施例4-4と同様の構造における積層膜の基板側から1層目に、光吸収膜(A)であるNi層を挿入したものであって、次の通りである。実施例5の積層膜における基板側から2層目及び3層目は、Ni層と実施例4-4と同様の構造とをつなぐ層である。尚、光吸収膜Aは、Ni単層ではなく、他の材質に係る単層膜であっても良いし、複数の層を有する積層膜であっても良い。又、光吸収膜Aは、積層膜の内部、あるいは積層膜の空気側に形成されても良い。
基板:6.3A,11.87H,34.33L,114.36H,155.37L,93.43H,144.3L,97.17H,150.33L,96.06H,163L,99.82H,174.12L,105H,161.7L,109H,169.85L,118.72H,166.75L,116.89H,176.5L,113.38H,197.38L,17.23H,205.91L,13.43H,201.74L,10.93H,203.31L,10.11H,196.73L,14.18H,12.47L,93.27H,86.45L:空気
実施例5では、垂直入射光及びθ=10°,30°,45°,55°の各斜入射光について図25に示されるように、垂直入射光において可視域の全体にわたり透過率が既に70%程度で平坦に減少されており、斜入射光において可視域の全体にわたり透過率が平坦に更に減少されている。
即ち、実施例5では、垂直入射光においてNi層により可視域で均一な減光がなされ、斜入射光において可視域で更に均一な減光がなされる。又、実施例5では、θが大きくなる程、可視域での透過率の平均値が小さくなっている。
図26に、各種の光吸収層(単層の光吸収膜A)の可視域及び隣接域における分光透過率分布が示される。
不飽和金属酸化物であるNiO,TiOの薄膜は、可視域全体にわたり一様に光Bを吸収し、一様な減光に寄与する。
金属であるCrの薄膜は、可視域のうち520nm付近を中心に光Bをより吸収し、520nm付近を中心とした減光に寄与する。尚、520nm付近には、太陽光スペクトルのピークが存在する。
半導体であるGe,Siの薄膜は、可視域における短波長側の光Bをより強く吸収し、短波長側を中心とした減光に寄与する。
これらの特徴を有する光吸収層が目的に合わせて選択され、積層膜に導入されあるいは積層膜と組み合わせられれば、垂直入射光が減光され、斜入射光が入射角θに応じ更に減光されるフィルタ1が、目的に合致した状態で形成される。
[実施例6:可視域の中波長帯を中心とした入射角依存の減光]
実施例6は、太陽光の可視域におけるスペクトル強度f(λ)(波長λの関数、以下適宜(λ)が省略される)に基づいて設計された積層膜を、実施例1と同様の基板の片面に形成したものである。
より詳しくは、実施例6の積層膜は、f=1/fに基づいて設計された。fは、JIS C 8094-3(基準太陽光)における可視域及び隣接域(370nm以上780nm以下)での5nm毎のデータにつき、5次のフィッティングを行ったフィッティング関数とされた。そして、fの最小値が80%となるようにfを定数倍したf(但し100%を超えた値は100とする)に対し、入射角θ=41.8°における斜入射光の分光透過率分布が可及的に近づくように、積層膜の構造が設計された。即ち、41.8°斜入射光の分光透過率分布が、基準太陽光の分光放射照度の逆数に比例するfに沿うように、fをターゲットとして設計された。θ=41.8°は、エアマス(Air Mass,AM)が1.5となる角度である。AM1.5は、垂直入射に対して大気を通過する距離が1.5倍であることを表し、標準測定に良く用いられる。尚、fのフィッティング時の次数は、5から増加あるいは減少されても良い。
実施例6の積層膜の設計に際しては、上述の各実施例の設計が適宜参酌された。
かような設計により、実施例6の積層膜は、図27及び次に示される通り、全47層のものとなった。実施例6の積層膜の物理膜厚は、4.1μmである。
基板:104.25L,9.97H,36.18L,111.21H,168.98L,105.81H,173.4L,44.89H,16.93L,38.76H,180.48L,111.76H,170.22L,111.39H,173.9L,27.07H,9.63L,73.36H,22.4L,17.32H,145.82L,7.44H,30.54L,112.38H,166.25L,113.36H,37.33L,10.01H,136.89L,14.58H,30.44L,113.67H,166.67L,121.32H,19.57L,123.32H,193.9L,18.83H,214.44L,16.27H,215.89L,16.12H,200.08L,18.2H,7.85L,88.51H,87.24L:空気
実施例6では、図28に示されるように、垂直入射光及びθ=10°の斜入射光について、可視域で均一な減光がなされている。又、θ=41,8°の斜入射光について、ターゲット関数f(二点鎖線)に沿うような分布において、即ち太陽光の放射強度が強い500nm以上550nm以下の波長域を中心として減少した分布において、更なる減光がなされている。
[実施例7:斜入射時における青系反射色の具備]
実施例7は、斜入射の際、青色域で他の波長域より透過率が減少することで、垂直入射の際と異なり、青色に着色された反射光を呈するように設計された積層膜を、実施例1と同様の基板の片面に形成したものである。尚、垂直入射の際に反射光が既に青色であり、斜入射の際に反射光の青色がより濃くなるようにされても良い。又、垂直入射時の反射光は、無色透明以外とされても良く、斜入射時の反射光は、青色以外の他の色とされても良い。垂直入射時の反射光の色、斜入射時の反射光の色とが、同系であっても良いし、互いに異なっていても良い。
実施例7の積層膜の設計に際しては、上述の各実施例の設計が適宜参酌された。特に、QW積層膜構造の2次反射帯が青色域に生じるように設計された。
かような設計により、実施例7の積層膜は、図29及び次に示される通り、全20層のものとなった。実施例7の積層膜の物理膜厚は、2.5μmである。
基板:97.94H,158.47L,93.93H,150.79L,93.93H,154.05L,93.93H,153.58L,93.93H,156.55L,96.22H,166.19L,102.1H,171.61L,104.32H,169.84L,101.61H,163.74L,95.65H,79.65L:空気
実施例7では、図30に示されるように、垂直入射光及びθ=10°の斜入射光について、可視域で均一な減光がなされており、反射光が無色透明を呈するものとされている。いる。又、θ=30°,45°,55°の斜入射光について、青色域で透過率が他の波長域の透過率より更に減少し、反射光が青色を呈するものとされている。そして、実施例7では、θが大きくなる程、青色域での透過率の平均値が小さくなっており、反射色における青色の濃さが濃くなっている。即ち、実施例7は、入射角θに依存した青色の濃さに係る反射色を有する。
実施例7では、正面から見ると透明で、斜めから見ると青系反射色を呈するフィルタ1が提供される。上述の通り、正面から見た場合の色と斜めから見た色とは、様々に変更可能である。
1・・フィルタ、2・・基材、4・・光学多層膜(誘電体多層膜)、A・・光吸収膜、θ・・入射角。

Claims (10)

  1. 基材と、可視域における光の少なくとも一部に係る透過率が、入射角に応じて減少する、前記基材上の誘電体多層膜と、を有しているフィルタであって、
    前記誘電体多層膜は、
    iを自然数として()内の構成のi回の繰り返しを() とし、設計波長をλ とし、垂直入射での光学膜厚がλ /4である高屈折率層をHとし、垂直入射での光学膜厚がλ /4×2=λ /2である高屈折率層を2Hとし、垂直入射での光学膜厚がλ /4である低屈折率層をLとし、垂直入射での光学膜厚がλ /4である中屈折率層をMとし、前記基材の側を左側として、
    (HL) の基本設計と、(LM2HML) の基本設計と、を含んでいる
    ことを特徴とするフィルタ。
  2. 前記pは9以下であり、
    前記qは22以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ
  3. 前記中屈折率層のうちの少なくとも何れかは、等価な前記高屈折率層及び前記低屈折率層で置換されている
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフィルタ
  4. 前記入射角が0である場合に、無色透明である
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のフィルタ。
  5. 前記入射角が0である場合に、着色されている
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のフィルタ。
  6. 光吸収膜を有している
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載のフィルタ。
  7. 請求項1ないし請求項6の何れかに記載のフィルタを有している
    ことを特徴とする眼鏡レンズ。
  8. 請求項1ないし請求項6の何れかに記載のフィルタを有している
    ことを特徴とするカメラフィルタ。
  9. 請求項1ないし請求項6の何れかに記載のフィルタを有している
    ことを特徴とする窓板。
  10. 請求項1ないし請求項6の何れかに記載のフィルタを有している
    ことを特徴とするサンバイザ。
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