JP2017021289A - 光学フィルタ及び発光装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】既設の白色LEDに対して後付けすることができ、白色LEDの白色光の演色性を良好にすることができ、白色光の色温度の低下を抑制したり色温度を高くしたり更に低くしたりする等、色温度の調整も行うことができる光学フィルタ等を提供する。
【解決手段】可視域において所定の分光放射分布を有する光源Aからの光源光が、可視域における所定の分光透過率分布に従って透過されて、調整された可視域における分光放射分布を有する透過光となるように形成された光学多層膜が、基体に形成されている光学フィルタにおいて、透過光に係る分光放射分布の形状(実施例1適用)が、太陽光(D55光源)に係る可視域の分光放射分布の形状に近づくように、光源Aのみに係る分光放射分布における極大値(3.20E−03,3.20×10−3)の波長(530nm)において、光学多層膜に係る分光透過率分布の極小値の波長が位置している。
【選択図】図1

Description

本発明は、白色光等の演色性を高めるための光学フィルタ、及び当該光学フィルタを用いた照明装置を始めとする発光装置に関する。
近時、LED(Light Emitting Diode)を用いた白色に発光する照明装置が、その明るさや省エネルギー性から各所で盛んに導入されている。
かような照明装置用の白色LEDとして、下記特許文献1に記載されるような、青色LEDに、青色励起で黄色発光するYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)蛍光体が組み合わされたものが普及しつつある。かような白色LEDでは、青色光の一部を励起光として使用してYAG蛍光体内で黄色の蛍光を励起させ、励起光とならなかった青色光と混色させることで、YAG蛍光体外において白色光を発光するものである。
この白色LEDを用いた照明装置では、青色光と黄色光や橙色光との混色により白色光を発光しているため、特許文献1の図3で示されているように、可視領域に係る発光スペクトルにおける放出ピークがおよそ450,590ナノメートル(nm)の双方の波長において顕著に見受けられるのに対して、緑色発光成分や赤色発光成分が少なくなっており、演色性が比較的に低くなっている。
そこで、演色性をより良くするため、かような照明装置や白色LEDにおいて、黄色発光の蛍光体に代えて緑色発光の蛍光体を採用すると共に赤色LEDを追加したり(特許文献2)、緑色発光の蛍光体や赤色発光の蛍光体を追加したりすることが提案されている(特許文献3)。
特開2005−216892号公報 特開2007−42307号公報 特開2005−19981号公報
しかし、特許文献2のものでは、光源として別途赤色LEDが必要となり、光源のサイズが大きくなってしまうし、光が元の光源と赤色LEDの2方向から発せられるために光の影が複数発生してしまい、既設の白色LEDを用いた照明装置に対して後付けで演色性を改善し難い。更に、元の光源と赤色LEDで劣化速度が異なることが多く、時を経るに従い照明の色合いが変化してしまう。
又、特許文献3のものでは、青色励起で緑色発光や赤色発光を行う蛍光体において、青色光が吸収されて緑色光や赤色光が発光するために、特許文献2のものにおける課題が解消され得るが、三原色光に係る各波長の光の放射強度(輝度)が、他の波長の光の放射強度に比べて突出して大きくなり、演色性の向上の余地があるものとなっているし、光の色温度も所定のものに決まってしまう。
そこで、本発明の目的は、既設の白色LEDに対して後付けすることができ、白色LEDの白色光の演色性を良好にすることができ、白色光の色温度の低下を抑制したり色温度を高くしたり更に低くしたりする等、色温度の調整も行うことができる光学フィルタや、これを用いた発光装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、可視域において所定の分光放射分布を有する光源からの光源光が、可視域における所定の分光透過率分布に従って透過されて、調整された可視域における分光放射分布を有する透過光となるように形成された光学多層膜が、基体に形成されている光学フィルタであって、前記透過光に係る前記分光放射分布の形状が、太陽光に係る可視域の分光放射分布の形状又はハロゲンランプにおける可視域の分光放射分布の理想曲線の形状に近づくように、前記光源光に係る前記分光放射分布における極大値の波長の前後各20nm以内に、前記光学多層膜に係る前記分光透過率分布の極小値の波長が位置していることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、上記発明にあって、前記光源光に係る演色評価数より、前記透過光に係る演色評価数が大きいことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、上記発明にあって、前記光源光に係る特殊演色評価数の内R13及びR15の少なくとも一方より、前記透過光に係る当該特殊演色評価数が大きいことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、上記発明にあって、前記光源光に係る色温度と前記透過光に係る色温度が同一であり、又は前記光源光に係る色温度に対する95パーセントの色温度以上105パーセントの色温度以内に前記透過光に係る色温度が入っていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、上記発明にあって、前記基材は、マット面を有しており、前記光学多層膜は、前記マット面に形成されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、上記発明にあって、前記光源光は、白色光であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、上記発明にあって、前記光源は、近紫外域ないし青色域内の少なくとも何れかの波長の光を発するLEDと、蛍光体とを備えていることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、上記発明にあって、前記光源は、有機エレクトロルミネッセンスであることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、上記発明にあって、前記光学多層膜に係る前記分光透過率分布において、青色光の透過率の平均より赤色光の透過率の平均が小さいことを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、上記発明にあって、青色励起で赤色及び緑色の少なくとも一方の蛍光を発光する蛍光体を有していることを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、上記発明にあって、前記光源と前記蛍光体の間に、前記光学多層膜が配置されていることを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、上記発明にあって、前記光源と前記光学多層膜の間に、前記蛍光体が配置されていることを特徴とする。
請求項13に記載の発明は、発光装置にあって、上記の光学フィルタが、前記光源に取り付けられていることを特徴とする。
本発明では、既設の照明光源を始めとする光源に後付けすることができ、光源の演色性を良好にすることができ、光源の色温度の低下を抑制したり色温度を高くしたり更に低くしたりする等、色温度の調整も行うことができる光学フィルタや、これを用いた発光装置を提供することができる、という効果を奏する。
(a)は、実施例1の可視域(適宜隣接域を含む)における分光透過率分布を示すグラフであり、(b)は実施例1に組み合わせられる光源Aと、D55光源と、光源Aに実施例1を取り付けた場合の分光放射輝度分布を示すグラフである。 実施例2及び光源Bに係る図1同等図である。 実施例3及び光源Cに係る図1同等図である。 実施例4及び光源D(フル発光及び色温度調整発光)に係る図1同等図である。 実施例5の可視域における光の入射角毎の分光透過率分布を示すグラフである。 実施例6に係る図5同等図である。 実施例7に係る図5同等図である。 参考例1に係る図5同等図である。 参考例2に係る図5同等図である。 参考例3に係る図5同等図である。 参考例4に係る図5同等図である。 参考比較例1に係る図5同等図である。 実施例8〜11及び比較例1に係る図1同等図である。 実施例12〜13及び比較例2並びに光源F及び標準A光源に係る図1同等図である。
以下、本発明に係る実施の形態の例が、適宜図面に基づいて説明される。なお、本発明の形態は、これらの例に限定されない。
本発明に係る光学フィルタは、透光性を有する基体と、その基体の表面(一部又は全部)に形成された光学多層膜を含む。
光学フィルタの基体と光学多層膜の間に中間膜が設けられても良く、光学多層膜の上(基体と反対側、空気側)に更に表面膜が設けられても良い。
光学多層膜は、基体の表側(光源と逆側)のみに形成されても良いし、基体の裏側(光源側)のみに形成されても良いし、両側に形成されても良い。
基体は、透光性を有していれば何れの材質でも用いることができ、色みを持っていても良く、例えば青板ガラス・白板ガラス等の一般ガラスやBK7等の屈折率を規定した光学ガラス、あるいは透明樹脂等を用いることができる。樹脂としては、例えばポリウレタン樹脂、エピスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂、ポリイソシアネート化合物とポリチオール及び/又は含硫黄ポリオールとを付加重合して得られるポリウレタン樹脂、エピスルフィド基とポリチオール及び/又は含硫黄ポリオールとを付加重合して得られるエピスルフィド樹脂等を用いることができる。
基体は、照明装置等の発光装置において輝度をなるべく大きく確保する観点から、透明であることが好ましい。又、発光装置に適用する観点から、光源を(一部又は全部)覆うカバーとして形成されることが好ましい。
光学多層膜は、可視域(例えば400nm以上780nm以下、あるいは400nm以上800nm以下)やその隣接域における所定の波長域の光を選択的に透過(反射)させる膜であって、複数の層を含むものである。光学多層膜に係る可視域やその隣接域における光の選択的な透過は、当該領域における分光透過率分布(分光反射率分布)で表すことができ、当該分光透過率分布は層構造の設計によって調整することができる。
光学多層膜は、高屈折率材料で形成された高屈折率層と、低屈折率材料で形成された低屈折率層が交互に積層されたものであることが好ましく、高屈折率材料と低屈折率材料を1種ずつ用いることがより好ましい。高屈折率層や低屈折率層の層数や材質の選択、各層における厚み(層に係る物理膜厚あるいは光学膜厚)の増減といった設計要素の変更により、光学多層膜の設計を変更することができる。
光学多層膜の高屈折率層の屈折率の範囲として、1.6以上2.35以下を例示することができる。高屈折率層は、誘電体で形成することが好ましく、その材質の例として、金属酸化物を含有した有機ケイ素化合物、窒化ケイ素、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タンタル(Ta)、酸化ニオブ(Nb)、酸化ハフニウム(HfO)、あるいはこれらの二種以上の混合物を挙げることができるが、生産性や耐久性等の観点から酸化チタンであることが好ましい。
光学多層膜の低屈折率層の屈折率の範囲としては、上記高屈折率層よりも屈折率が低ければ良く、1.2以上1.8以下を例示することができる。低屈折率層は、誘電体で形成することが好ましく、その材質の例として、中空シリカを含有した有機ケイ素化合物、多孔質ゾル、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化カルシウム(CaF)、あるいはこれらの二種以上の混合物を挙げることができる。
光学多層膜は、蒸着法やスパッタリング法で成膜されることが好ましい。
光学多層膜は、可視域において所定の分光透過率分布を有するように形成されている。光学多層膜は、可視域において所定の分光放射分布を有する光源からの光源光を、その分光透過率分布に従って透過して、調整された可視域における分光放射分布を有する透過光とする。
光学多層膜は、透過光に係る分光放射分布の形状を、太陽光に係る可視域の分光放射分布の形状又はハロゲンランプにおける可視域の分光放射分布の理想曲線の形状に近づけるように、光源光に係る分光放射分布における極大値の波長の前後各20nm以内に、光学多層膜に係る分光透過率分布の極小値の波長を位置させて形成されている。太陽光に係る分光放射分布(自然光に係る分光放射分布)としては、D55光源やD65光源を始めとする各種の色温度のもの等が用いられる。光色の指標としては、色温度毎に電球色(2000ケルビン(K)以上3000K以下)、温白色(3500K前後)、白色(4200K前後)、昼白色(5000K前後)、昼光色(6500K)として区分したものや、色度座標の数値が定められているものもあるが、光学フィルタの透過光の分光放射分布の態様が光源光の分光放射分布の態様に対して太陽光の分光放射分布の態様に近づけばより自然に見えるから、太陽光の分光放射分布において色度座標の値が近いだけでは不十分で、太陽光の分光放射分布の形状が比較的に重要となる。よって、光学多層膜は、太陽光の分光放射分布について形状(分布の様子・分布の傾向)を保ったまま放射エネルギーを適宜全体的に上げた又は下げたもの、即ち相対的な太陽光の分光放射分布(調整された太陽光の分光放射分布)を参照して設計される。つまり、光源光に係る分光放射分布から、相対的な太陽光の分光放射分布を減じた差の分布を把握し、その差の分布において極大値があれば、その極大値の前後の波長に係る光の透過率を抑制して、透過光の分光放射分布の形状を相対的な太陽光の分光放射分布の形状に近づける。又、その差の分布において極小値があれば、その極小値の前後の波長に係る光の透過率を大きくして、透過光の分光放射分布の形状を相対的な太陽光の分光放射分布の形状に近づける。これらの前後の波長(波長範囲)は、光学フィルタ(光学多層膜)の設計(製造)のし易さに配慮しながら太陽光の分光放射分布の形状になるべく近づける観点から、極大値(極小値)に対して、好適には前後各20nm以内であり、より好適には前後各15nm以内であり、更に好適には前後各12,10,8,6,5,4,3,2あるいは1nm以内である。又、透過率の抑制や大きな透過率の確保は、光学多層膜に係る分光透過率分布の極小値(極大値)の波長が当該波長範囲内に位置することによって行える。
又、光学フィルタ(光学多層膜)の透過光に係る分光放射分布の形状を太陽光の分光放射分布の形状に近づけることにより、透過光の演色評価数を光源光のものより高めることができ、近づける度合や波長(域)により、透過光に係る特殊演色評価数の内R13及びR15の少なくとも一方を光源光のものより高めることができる。R13は西洋人の肌色に関するものであり、R15は日本人女性の肌色に関するものであるから、かような光学フィルタにより、光源光を、肌色の再現性に優れた、肌色の映えるものに変えることができる。又、色温度の調整も、近づける度合や波長(域)によって行え、色温度を光源光と透過光とで同等にする(光源光の色温度の90パーセント(%)の色温度以上光源光の色温度の110%の色温度以下の範囲内に透過光の色温度が入っているようにする)ことも可能である。
更に、微細な凹凸を有する面であるマット面を有する基材の当該マット面に光学多層膜を形成して、光源光が光学多層膜に対しどのような角度で入射したとしても同様の演色性向上等を発揮させ、入射角依存性を低減することができる。
光源光は、主に照明光として用いられ、好適には白色光であり、光源は、好適には、近紫外域ないし青色域内の少なくとも何れかの波長の光を発するLED(紫外LED,青色LED)に、蛍光体が組み合わせられたものである。これらの光源光や光源であれば、太陽光の分光放射分布の形状に近づけ易く、現状三原色の各波長で分光放射分布の極大値を有する比較的に偏った白色の光源光について、演色性を向上し、極めて良好な演色評価数を呈する透過光を照明光等の新たな光源光として提供することができる。
そして、太陽光の分光放射分布の形状に代えてハロゲンランプの分光放射分布(A標準光の分光放射分布)の形状を参照しこれに近づければ、同様に極めて良好な演色評価数を呈する透過光を新たな光源光として提供することができる。
より具体的には、光学多層膜は、光源に係る可視域の分光放射分布における少なくとも何れかの極大値の波長の前後各20nm以内に、可視域の分光透過率分布における極小値の波長が位置するように設計されて形成されている。尚、当該極小値が位置する、当該極大値の波長を含む波長域が狭いほど、演色性をより良くすることができ、好適には前後各15nm以内であり、更に好適には前後各12,10,8,6,5,4,3,2あるいは1nm以内である。
光源が青色LEDと青色励起の緑色蛍光体及び赤色蛍光体による白色LEDであれば、光源に係る可視域の分光放射分布における極大値の波長は青色域と緑色域と赤色域に入り、少なくとも何れかの当該極大値の波長の前後各20nm以内に、光学多層膜の分光透過率分布の極小値が位置する。光源が紫外LEDと紫外励起の青色蛍光体、緑色蛍光体及び赤色蛍光体による白色LEDでも同様である。
特に赤色蛍光体等の赤色成分による光源の分光放射分布の極大値周辺の波長の光の透過を相対的に抑制するために、610nm以上680nm以下の波長域内において光学多層膜の分光透過率分布の極小値の波長が位置することが好ましい。
更に、緑色蛍光体等の緑色成分による光源の分光放射分布の極大値周辺の波長の光の透過を相対的に抑制するために、500nm以上570nm以下の波長域内において光学多層膜の分光透過率分布の極小値の波長が位置することが好ましい。
又、青色蛍光体等の青色成分による光源の分光放射分布の極大値周辺の波長の光の透過を相対的に抑制するために、400nm以上500nm以下(未満)の波長域において光学多層膜の分光透過率分布の極小値の波長が位置することが好ましい。
光源は、電球色LEDを始めとする白色以外の色で発光するLEDであっても良いし、白色や他の色で発光する有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)を始めとするエレクトロルミネッセンス効果を用いた光であっても良いし、蛍光灯であっても良い。
かような光学多層膜を有する光学フィルタが上述の光源の周りに配置されることで、演色性に優れ、色温度の調整された発光装置を提供することができる。
更に、光学フィルタは、青色等(適宜紫外線を含む)の励起光により緑色や赤色の蛍光を発光する蛍光体を含んでも良い。蛍光体は、好適には、シート状の蛍光体基体において分散及び付着の少なくとも一方により保持されて蛍光シートの一部となることが好ましい。蛍光シート基体は、上述した光学フィルタの基体と同様である。蛍光シート基体と、光学多層膜を有する光学フィルタの基体とは、互いに接触するように配置されても良いし、離れて間隔を有するように配置されても良い。尚、蛍光シート基体が光学フィルタの基体となっても良く、即ち蛍光シート基体の少なくとも一面に光学多層膜が形成されても良い。
赤色や緑色の蛍光体は、例えば発光イオンがセリウム(Ce)イオン、ユウロピウム(Eu)イオン及びマンガン(Mn)イオンの少なくとも何れかであるものが挙げられる。
赤色や緑色の蛍光体は、普及している青色励起の黄色蛍光体を合わせた白色LEDと組み合わせることで、赤色光や緑色光の相対的な不足を補って、当該白色LEDの演色性を向上することができる。しかし、青色を吸収して緑色や赤色を発光するため、色温度が必然的に下がる。
かように下がった色温度は、赤色や緑色の蛍光体に加え、光学多層膜が組み合わされることで、調節することが可能である。
例えば、青色光の透過率が赤色や緑色の蛍光の透過率より高い光学多層膜が組み合わせられれば、白色LEDと赤色や緑色の蛍光体の組合せにより白色LEDの光に比べて低下した色温度を回復させ上昇させることができる。ここで、光源側に光学多層膜が配置され、外側に赤色や緑色の蛍光体が配置されるようにすれば、光源側に向かう赤色や緑色の蛍光が光学多層膜に(部分的に)反射されて外側に向かうようにすることができ、赤色や緑色の蛍光体の変換効率が相対的に良好になるため、蛍光体の濃度をその分少なくすることができる。
他方、赤色や緑色の透過率が青色光の透過率より高い光学多層膜が組み合わせられれば、白色LEDと赤色や緑色の蛍光体の組合せにより白色LEDの光に比べて低下した色温度を更に低下させることができる。ここで、光源側に赤色や緑色の蛍光体が配置され、外側に光学多層膜が配置されるようにすれば、励起に用いられずに赤色や緑色の蛍光体を透過して外側に向かう青色光が光学多層膜により(部分的に)反射されて光源側に向かい、再度赤色や緑色の蛍光体において蛍光の励起に用いられるようにすることができ、赤色や緑色の蛍光体の変換効率が相対的に良好になって、赤色や緑色の蛍光体及び光学多層膜を通過した光源光に係る分光放射分布の形状を太陽光に係る分光放射分布の形状やハロゲンランプにおける可視域の分光放射分布の理想曲線の形状に近づけ易くなる。
本発明に属する実施例、及び本発明に属さない比較例が以下に示される。但し、実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。尚、本発明の捉え方によって、下記の実施例の一部が、実質的には本発明に属さない比較例となり得、又下記の比較例の一部が、実質的には本発明に属する実施例となり得る。
≪演色性の向上及び色温度の保持/実施例1〜3≫
<実施例1>
照明光源の周りを覆う照明用の光学フィルタ(実施例1)は、照明器具化されたランプカバーの透明な基体の裏側(光源側)に光学多層膜が蒸着されて形成されている。
実施例1に係る光学多層膜αは、1種の低屈折率層と1種の高屈折率層を交互に積層して形成されており、図1(a)に示される分光透過率分布(垂直入射光における分布)を有するように設計されている。尚、透過率(図1の縦軸)の単位は、%である。
実施例1が適用される光源Aは、紫外LEDを用いた市販の照明装置(発光装置)である。当該照明装置は、近紫外線を発する紫外LEDの表面に、紫外励起で三原色(青色・緑色・赤色)の蛍光を発光する3種の蛍光材料の混合体が塗布されて、これらの蛍光材料に係る蛍光の混色発光により白色光を発光するものである。
図1(b)は、可視域ないし紫外域(380nm以上780nm以下)における、「光源Aのみ」の場合及び光源に光学フィルタを被せた「実施例1適用」の場合の分光放射輝度分布を示したグラフである。尚、輝度(グラフの縦軸)の単位は、cd/m(カンデラ毎平方メートル)である。又、図2には、縦軸において「実施例1適用」の分光放射分布に合わせた、太陽光に係る分光放射分布としてのD55光源の分光放射分布も示されている。分光放射輝度分布の測定は、分光放射輝度計(コニカミノルタオプティクス株式会社製CS−2000)により行った(以下同様)。
又、次の表1は、「光源Aのみ」の場合と「実施例適用」の場合の光量、xy色度座標におけるx,yの各値、相関色温度(K)、Δuv(黒体軌跡からの偏差(色差))、平均演色評価数Ra及び演色評価数R1〜R15(単位なし)を示すものである。尚、演色評価数R1〜R8はCIE(国際照明委員会)で定められた中間色的な赤から紫までの8色の基準色に係る色再現性の指標であり、その平均点は平均演色評価数として代表的にカタログ等で記載されている。又、演色評価数R9〜R15はJIS(日本工業規格)で追加して定められた特殊演色評価数であって、R9から順に、赤、黄、緑、青、西洋人の肌色、木の葉の色、日本人女性の肌色に対応する。
Figure 2017021289
実施例1において、光学多層膜αの分光透過率分布は、可視域内の所定域(400nm以上650nm以下)で、光源Aのみの分光放射分布の極大値の波長付近で極小値をとるように設計されている。又、光学多層膜αの分光透過率分布は、可視域内の所定域で、光源Aのみの分光放射分布の極小値の波長付近で極大値をとるように設計されている。尚、波長付近は、好適には前後各20nm以内であり、より好適には前後各15nm以内であり、更に好適には前後各12,10,8,6,5,4,3,2あるいは1nm以内である。
即ち、波長425nmにおいて光源Aのみの分光放射分布の極小値(1.60E−03、E−03はその前の数値に10−3を乗算することを示す)が位置するところ、同波長において光学多層膜αの分光透過率分布の極大値(95%)が位置している。又、波長445nm(青色)において光源Aのみの分光放射分布の極大値(3.30E−03)が位置するところ、同波長において光学多層膜αの分光透過率分布の極小値(60%)が位置している。更に、波長485nmにおいて光源Aのみの分光放射分布の極小値(2.25E−03)が位置するところ、同波長において光学多層膜αの分光透過率分布の極大値(95%)が位置している。又、波長530nm(緑色)において光源Aのみの分光放射分布の極大値(3.20E−03)が位置するところ、同波長において光学多層膜αの分光透過率分布の極小値(70%)が位置している。更に、波長580nmにおいて光源Aのみの分光放射分布の極小値(2.60E−03)が位置するところ、波長575nmにおいて光学多層膜αの分光透過率分布の極大値(79%)が位置している。又、波長625nm(赤色)において光源Aのみの分光放射分布の極大値(2.80E−03)が位置するところ、同波長において光学多層膜αの分光透過率分布の極小値(69%)が位置している。尚、紫外LEDの励起光の影響により波長410nmにおいて光源Aのみの分光放射分布の極大値(2.70E−03)が位置するところ、同波長において光学多層膜αの分光透過率分布の極小値(62%)が位置している。
このように光学多層膜αを形成することで、光学フィルタ通過後の光源Aの光の分光放射分布が当該所定域で大局的に平坦化される。そして、D55光源の分光放射分布は、やはり当該所定域において大局的に平坦であり、よって光学フィルタ通過後の光源Aの光の分光放射分布の形状はD55光源の分光放射分布の形状に近づくこととなる。
又、上記所定域におけるD55光源の分光放射分布は、より詳しくは400nm以上430nm未満で平坦であり、430nm以上450nm未満において右上がりで上昇し、450nm以上650nm以下で平坦である。又D55光源の分光放射分布は、更に詳しくは550nm以上600nm未満で右下がりでなだらかに下降し、600nm以上650nm以下で平坦である。かようなD55光源の分光放射分布に更に近づけるため、光学多層膜αの分光透過率分布における極小値の大きさや極大値の大きさが定められている。
即ち、光源Aのみの分光放射分布に係る波長445nm(青色)での極大値(3.30E−03)は、波長530nm(緑色)での極大値(3.20E−03)より大きいので、光学多層膜αの分光透過率分布に係る波長445nm(青色)での極小値(60%)は、波長530nm(緑色)での極小値(70%)より小さい。又、光源Aのみの分光放射分布に係る波長530nm(緑色)での極大値(3.20E−03)は、波長625nm(赤色)での極大値(2.70E−03)より大きいのであるが、D55光源の分光放射分布に係る波長530nm(緑色)での放射強度(放射エネルギー)が波長625nm(赤色)での放射強度より大きいので、光学多層膜αの分光透過率分布に係る波長530nm(緑色)での極小値(60%)は、波長625nm(赤色)での極小値(69%)と同等である。更に、波長410nmにおける光学多層膜αの透過率の極小値は、D55光源の分光放射分布に係る400nm以上430nm未満の域の状態(その長波長側より放射強度が小さい)に対応して、光源Aのみの分光放射分布に係る極大値(2.70E−03)が比較的小さいにもかかわらず、低い値(62%)とされている。加えて、波長580nm(緑色)における光源Aのみの分光放射分布の極小値(2.70E−03)が同分布中の他の極小値(1.60E−03や2.25E−03)より大きいことに対応して、波長575nmにおける光学多層膜αの分光透過率分布の極大値(79%)は同分布中の他の極大値(94%前後)より小さくなっている。
そして、実施例1の光学フィルタが、紫外LED及び三原色の蛍光シートを用いた市販の照明装置に取り付けられることにより、表1に示すように、光源Aのみの場合に対して光量が僅かに減少するものの(59.70→44.71)、色み(白さ)は変わらず(x,y:0.334,0.345→0.332,0.348)、演色性がより良好になる。即ち、平均演色評価数Raは96→99に上昇している。又、演色評価数R1〜R15も、元から高いR13(西洋人の肌色)を除き全て上昇しており、7個の評価数において最高値(100)に達している。特に、R9(赤)において95→98に上昇しており、又R15(日本人女性の肌色)において97→99に上昇していることは注目に値する。
又、実施例1の光学フィルタを用いても、色温度は僅かに上昇するものの、さほど変わらない(5513.2K→5551.7K)。即ち、5513.2の105%は5788.86であり、実施例1の透過光の色温度(5551.7K)は、光源Aの色温度の105%の色温度以下となっている。
従って、実施例1の光学フィルタによって、紫外LED及び三原色の蛍光シートを用いた市販の照明装置の色温度を維持しながら演色性をより良好に補正することができる。又、実施例1の光学フィルタと、紫外LED及び三原色の蛍光体を用いた光源Aとにより、演色性に優れた光源装置を提供することができる。
<実施例2>
実施例2の光学フィルタは、光学多層膜の設計(構成)が変わったことを除き実施例1と同様である。
実施例2の光学多層膜βは、図2(a)に示される分光透過率分布を有するように設計されている。
実施例2の光学フィルタは、市販の電球形LEDランプ(色温度5000K相当)である光源Bの発光部表面に、光学多層膜βを蒸着により配置することで形成されている。
図2(b)は、「光源Bのみ」の場合及び「実施例2適用」の場合の図1(b)同等図である。尚、D55光源の分光放射分布における縦軸方向の位置は、光源Bのみの分光放射分布の波長600nmにおける極小値の下側になるように配置されており、光源Bのみの分光放射分布の波長490nmにおける極小値の上方を通るように配置されている。
又、次の表2は、「光源Bのみ」の場合と「実施例2適用」の場合の光量、xy色度座標におけるx,yの各値、相関色温度、Δuv、平均演色評価数Ra及び演色評価数R1〜R15を示すものである。
Figure 2017021289
実施例2において、光学多層膜βの分光透過率分布は、可視域内の所定域(400nm以上730nm以下)で、実施例1と同様に、光源Bのみの分光放射分布の極大値の波長付近で極小値をとり、光源Bのみの分光放射分布の極小値の波長付近で極大値をとるように設計されている。
即ち、波長445nm(青色)において光源Bのみの分光放射分布の極大値(1.70E−01)が位置するところ、波長435nmにおいて光学多層膜βの分光透過率分布の極小値(66%)が位置している。更に、波長490nmにおいて光源Bのみの分光放射分布の極小値(1.00E−02)が位置するところ、同波長において光学多層膜βの分光透過率分布の極大値(98%)が位置している。又、波長545nm(緑色)において光源Bのみの分光放射分布の極大値(9.50E−02)が位置するところ、同波長において光学多層膜βの分光透過率分布の極小値(57%)が位置している。更に、波長600nmにおいて光源Bのみの分光放射分布の極小値(5.20E−02)が位置するところ、同波長において光学多層膜βの分光透過率分布の極大値(95%)が位置している。又、波長655nm(赤色)において光源Bのみの分光放射分布の極大値(8.50E−02)が位置するところ、同波長において光学多層膜βの分光透過率分布の極小値(56%)が位置している。
このように光学多層膜βを形成することで、光学フィルタ通過後の光源Bの光の分光放射分布がD55光源の分光放射分布に近づけられる。光源Bのみの分光放射分布における極小値(波長490nm,1.00E−02)の放射強度を蛍光体等によって増加することも可能で、D55光源の分光放射分布により一層近づけることができるが、実施例2では行っていない。そして当該極小値の前後域でD55光源の分光放射分布に対する不足が生じる分、光源Bの青色成分について他色の成分より放射エネルギーが大きくなることを利用して色温度を調整した。光学多層膜βの分光透過率分布における青色波長の極小値(66%)は、他色の極小値(緑色の57%や赤色の56%)より大きくなっている。
そして、実施例2の光学フィルタが、光源Bに対して取り付けられることにより、表2に示すように、光源Bのみの場合に対して光量が僅かに減少するものの(1452.43→1007.56)、色みは変わらず(x,y:0.331,0.329→0.334,0.312)、演色性がより良好になる。即ち、平均演色評価数Raは76→83に上昇している。又、演色評価数R1〜R15も、R15を除き全て上昇している。特に、R9(赤)において72→88に上昇しており、又R13(西洋人の肌色)において88→92に上昇していることは注目に値する。
又、実施例2の光学フィルタを用いても、色温度は僅かに低くなるものの、さほど変わらない(5543.2K→5272.4K)。即ち、5543.2の95%は5266.04であり、実施例2の透過光の色温度(5272.4K)は、光源Aの色温度の95%の色温度以上となっている。
従って、実施例2の光学フィルタによって、光源Bの色温度を維持しながら演色性をより良好に補正することができる。又、実施例2の光学フィルタと、赤色蛍光シートを通した市販の電球形LEDランプである光源Bとにより、演色性に優れた発光装置を提供することができる。
<実施例3>
実施例3の光学フィルタは、光学多層膜の設計(構成)が変わったことを除き実施例2と同様である。
実施例3の光学多層膜γは、図3(a)に示される分光透過率分布を有するように設計されている。
実施例3の光学フィルタは、市販のミニレフLEDランプ(色温度8500K相当)の発光部表面に、青色励起で赤色発光する演色性を改善するための赤色蛍光シートが後付けで貼り付けられた光源Cを覆うように設けられる。光源CのミニレフLEDランプと、光源Bの電球形LEDランプとは、メーカーが異なる。
図3(b)は、「光源Cのみ」の場合及び「実施例3適用」の場合の図2(b)同等図である。
又、次の表3は、「光源Cのみ」の場合と「実施例3適用」の場合の光量、xy色度座標におけるx,yの各値、相関色温度、Δuv、平均演色評価数Ra及び演色評価数R1〜R15を示すものである。
Figure 2017021289
実施例3において、光学多層膜γの分光透過率分布は、可視域内の所定域(400nm以上730nm以下)で、実施例2と同様に、光源Cのみの分光放射分布の極大値の波長付近で極小値をとり、光源Cのみの分光放射分布の極小値の波長付近で極大値をとるように設計されている。
即ち、波長445nm(青色)において光源Cのみの分光放射分布の極大値(5.40E−03)が位置するところ、同波長において光学多層膜γの分光透過率分布の極小値(61%)が位置している。又、波長545nm(緑色)において光源Cのみの分光放射分布の極大値(9.50E−03)が位置するところ、波長550nmにおいて光学多層膜γの分光透過率分布の極小値(82%)が位置している。更に、波長595nmにおいて光源Cのみの分光放射分布の極小値(2.00E−03)が位置するところ、波長590nmにおいて光学多層膜γの分光透過率分布の極大値(94%)が位置している。又、波長655nm(赤色)において光源Cのみの分光放射分布の極大値(3.20E−03)が位置するところ、同波長において光学多層膜γの分光透過率分布の極小値(61%)が位置している。
このように光学多層膜γを形成することで、光学フィルタ通過後の光源Cの光の分光放射分布がD55光源の分光放射分布に近づけられる。光源Cのみの分光放射分布における極小値(波長495nm,1.20E−03)の放射強度を蛍光体等によって増加することは、実施例3では行わなかった。そして当該極小値の前後域でD55光源の分光放射分布に対する不足が生じる分、光源Cの青色成分について他色の成分より放射エネルギーが大きくなることを利用して色温度を制御した。光学多層膜γの分光透過率分布における青色波長の極小値(61%)は、他色の極小値(緑色の82%や赤色の61%)より大きいか同等となっている。
そして、実施例3の光学フィルタが、光源Cに対して取り付けられることにより、表3に示すように、光源Cのみの場合に対して光量が僅かに減少するものの(47.53→40.90)、色みは変わらず(x,y:0.330,0.301→0.333,0.332)、演色性がより良好になる。即ち、平均演色評価数Raは84→95に上昇している。又、演色評価数R1〜R15も、R12を除き全て上昇しており、R7は最高値に達している。特に、R9(赤)において72→88に上昇しており、又R13(西洋人の肌色)において81→97に上昇しており、更にR15(日本人女性の肌色)において65→92に上昇していることは注目に値する。
又、実施例3の光学フィルタを用いても、色温度は僅かに下がるものの、さほど変わらない(5605.0K→5550.8K)。即ち、5605.0の95%は5324.75であり、実施例3の透過光の色温度(5550.8K)は、光源Aの色温度の95%の色温度以上となっている。
従って、実施例3の光学フィルタによって、光源Cの色温度を維持しながら演色性をより良好に補正することができる。又、実施例3の光学フィルタと、赤色蛍光シートを通した市販のミニレフ球である光源Cとにより、演色性に優れた発光装置を提供することができる。
≪演色性の向上及び色温度の調整/実施例4≫
<実施例4>
実施例4の光学フィルタは、光学多層膜の設計(構成)が変わったことを除き実施例1と同様である。
実施例4の光学多層膜δは、図4(a)に示される分光透過率分布を有するように設計されている。
実施例4の光学フィルタは、市販の有機ELランプである光源Dを覆うように設けられる。
図4(b)は、「光源Dのみフル発光」の場合及び「光源Dのみ色温度変更後」並びに「実施例4適用」の場合の図2(b)同等図である。光源Dは、三原色(有機ELの場合赤色・黄色・青色)の発光割合が可変となっており、全ての色の発光の放射エネルギーを最大にした場合が「光源Dのみフル発光」の場合であり、その状態から赤色発光や黄色発光を相対的に減じて色温度を高くした場合が「光源Dのみ色温度調整後」の場合である。又、「実施例4適用」の場合は、フル発光の光源Dに対して実施例4の光学フィルタを取り付けた場合である。
又、次の表4は、「光源Dのみ色温度調整後」の場合と「実施例4適用」の場合と「光源Dのみフル発光」の場合の光量、xy色度座標におけるx,yの各値、相関色温度、Δuv、平均演色評価数Ra及び演色評価数R1〜R15を示すものである。
Figure 2017021289
光源Dは、三原色光の発光割合を変えることにより、それ自体で色温度を調整することができる。光源Dは、ここでは比較のために、フル発光時の3067.0K→5591Kに増加するよう調整される。この場合、平均演色評価数Raは色温度調整前後で87→86と僅かに減少している。又、演色評価数R1〜R15は、上昇するものもあるが多くは減少している。よって、発光割合の変更による色温度調整後において光源Dの演色性が良好になったとは言えない。
これに対し、フル発光の光源Dに実施例4の光学フィルタを取り付ければ、色温度を調整しながら演色性も良好にすることができる。
実施例4において、光学多層膜δの分光透過率分布は、可視域内の所定域(460nm以上680nm以下)で、フル発光の光源Bのみの分光放射分布の極大値の波長付近で極小値をとるように設計されている。
即ち、波長620nm(赤色)においてフル発光の光源Dのみの分光放射分布の極大値(3.50E−02)が位置するところ、波長605nmにおいて光学多層膜δの分光透過率分布の極小値(26%)が位置している。尚、波長555nm(緑色)においてフル発光の光源Dのみの分光放射分布の極大値(2.50E−02)が位置するところ、この極大値付近において光学多層膜δの分光透過率分布の極小値は存在しない。但し、この極大値付近においても透過率は低い(40%)。又、波長480nmにおいてフル発光の光源Dのみの分光放射分布の極大値(1.20E−02)が位置するところ、波長485nmにおいて光学多層膜δの分光透過率分布の極小値(84%)が位置している。更に、波長500nmにおいてフル発光の光源Dのみの分光放射分布の極小値(7.00E−03)が位置するところ、波長510nmにおいて光学多層膜δの分光透過率分布の極大値(96%)が位置している。
かように形成された光学多層膜δをフル発光の光源Dに適用すれば、実施例4通過後の光源Dの光の分光放射分布は、D55光源の分光放射分布に近づく。実施例4通過後の光源Dの光の分光放射分布は、光源Dのみの発光割合変更による色温度調整に比べ、特に620nm以上680nm以下の波長域においてD55光源の分布により近くなっている。
そして、フル発光の光源Dに実施例4のフィルタが取り付けられることにより、表4に示すように、フル発光の光源Dのみの場合に対し、色温度を3067.0K→5556.0Kに調整することができ、しかも演色性をより良好にすることができる。即ち、平均演色評価数Raは87→95に上昇している。又、演色評価数R1〜R15も全て上昇している。特に、R9(赤)において40→70に上昇しており、又R13(西洋人の肌色)において90→96に上昇しており、更にR15(日本人女性の肌色)において86→90に上昇していることは注目に値する。
従って、実施例4の光学フィルタによって、色温度を調整しながら、光源Dのみの発光割合変更による色温度調整の場合と異なり、演色性をより良好にすることができる。又、実施例4の光学フィルタと、有機ELに係る光源Dとにより、所望の色温度に調整可能であり演色性に優れた発光装置を提供することができる。
≪演色性の向上及び光源光の入射角依存性の低減/実施例5〜7≫
<実施例5>
実施例5の光学フィルタは、設計が異なるものの実施例1〜4と同様になる光学多層膜εが、基体のマット面(凹凸面)に形成されたものである。実施例5のマット面は、平均直径7マイクロメートル(μm)の微細なビーズを体積濃度で30%程度含む透明塗布剤が、基体の平面に対し2μmの肉厚を有するように塗布されることで形成されている。
実施例5の分光透過率分布の測定を正確且つ容易にするため、表側の面がマット面で裏側の面が平面である基体のマット面に光学多層膜εを形成して、測定器に対し、測定器の光が測定器の検出器に至るようにセットする。測定器の光はマット面に対する入射角を変えるために測定対象(実施例5)に対して相対的に移動可能である。測定対象がマット面を含む場合、マット面により測定器の光が拡散(散乱)されるので、検出器に至る測定器の光が減少し、よってマット面を含まない場合に対して測定される透過率が見かけでは下がる(実際の透過率より低い値で検知される)が、仮に拡散した透過光も測定対象として全光線透過光を測定すれば、マット面を含まない場合と同等の透過率となる。マット面の測定の場合でも、分光透過率分布の波長毎の透過率の変化の様子(分光透過率分布の状態)は測定することができる。
実施例5の光学多層膜εは、図5に示される分光透過率分布を有するように設計されている。図5において、0度は測定器の光の入射角(実施例5の表側の面の垂線に対する角度)が0度である、即ち垂直入射であることを示し、20度等についても測定器の光の実施例5に対する入射角を示している。
かような光学多層膜εを有する実施例5の光学フィルタは、青色LEDに青色励起で黄色発光する蛍光体を組み合わせた特許文献1のような照明装置に取り付けることで、少なくとも色温度を上昇させることができ、又照明光(光源光)の特性にも依るが大多数の照明装置(発光装置)において演色性を向上させることができる。即ち、かような照明装置の分光放射分布における黄色蛍光体による極大値に係る波長(590nm)の付近において、実施例5の分光透過率分布(特に0度の分布)の極小値が位置している(0度の分布の600nmで18%)。
<実施例6>
実施例6の光学フィルタは、実施例5と同等の設計の光学多層膜εが、実施例5の基体のマット面ではなく平面に形成されたものである。
実施例6の光学多層膜εの分光透過率分布は、実施例5と同様に測定され(光学多層膜εの形成された平面側から測定器の光が当てられ)、図6に示されている。実施例6の分光透過率分布において、黄色蛍光体による極大値に係る波長(590nm)の付近に、極小値が位置している(0度の分布の610nmで16%)。
実施例6によっても、実施例5と同様、特許文献1のような照明装置に取り付けて、色温度を上昇させ、又演色性を向上させることができる。
<実施例7>
実施例7の光学フィルタは、実施例5,6と同等の設計の光学多層膜εが、表裏共に平面である基体における一方の平面に形成されたものである。
実施例7の光学多層膜εの分光透過率分布は、実施例5と同様に測定され(光学多層膜εの形成された平面側から測定器の光が当てられ)、図7に示されている。実施例7の分光透過率分布において、黄色蛍光体による極大値に係る波長(590nm)の付近に、極小値が位置している(0度の分布の600nmで49%)。
実施例7によっても、実施例5と同様、特許文献1のような照明装置に取り付けて、色温度を上昇させ、又演色性を向上させることができる。
<実施例5〜7の入射角依存性等に関する検討>
実施例5に係る光の入射角に応じた分光透過率分布に関し、次の表5において特徴的な波長ないしその変化量が示される。特徴的な波長として、540nm以上620nm以下の波長域における分光透過率分布の極小値の波長であるバレー波長が把握される。又、620nm以上710nm以下の波長域における分光透過率分布の極大値の波長であるピーク波長が把握される。更に、470nm以上620nm以下の波長域における分光透過率分布の右下がり部分の半値(右下がりとなり始める透過率の高い値と右下がりが終わる透過率の低い値の平均,半値透過率)の波長である半値波長が把握される。尚、これら波長の変化量は、光の入射角が40度である場合の分光透過率分布のものから、0度である場合の分光透過率分布のものを減じて算出される。
又、実施例6,7についても、同様に表6,7において特徴的な波長ないしその変化量が示される。
Figure 2017021289
Figure 2017021289
Figure 2017021289
可視域内において、分光透過率分布がその態様(増減の傾向)を維持しつつ縦軸方向(透過率の増減方向)にずれたとしても、横軸方向(波長の増減方向)にずれていなければ、色みのずれは少なく感ぜられる。これに対し、分光透過率分布がその態様を維持していたとしても、横軸方向(波長の増減方向)にずれると、色みが光の波長に依存することから、色みのずれが比較的に大きく感ぜられる。
従って、互いに光の入射角の異なる分光透過率分布における特徴的な波長の変化量が少ないほど、色みのずれが少なく、光の入射角によらずに光学多層膜εの性能を発揮する(演色性を良好にしたり色温度を調整したりする)ことが可能であると言える。
表5〜7に示される実施例5〜7の半値波長,バレー波長,ピーク波長の各変化値は、何れも実施例6が最も大きく、次いで実施例7が大きく、実施例5が最も小さい。
実施例6は、光が光学多層膜εの形成された基体の平面を通過して分光放射分布を調整された後、基体のマット面で散乱されるため、光の入射角の異なる(0,40度)分光放射分布における波長ずれが比較的に大きくなり、入射角依存性が誇張されることになる。
実施例7は、光が光学多層膜εの形成された基体の平面を通過して分光放射分布を調整されたうえで、光学多層膜εの形成されない基体の平面を通過するため、中間的な入射角依存性を呈している。
実施例5は、光が光学多層膜εの形成された基体のマット面を通過する。マット面の微細な凹凸群に光学多層膜εが形成されるため、微視的に光学多層膜εが様々な角度を有している。例えば、凸部の頂部や凹部の底部は平面と同様に平らになっており、凸部の頂部と凹部の底部の間は斜めになっている。従って、マット面に対して入射角の異なる光が入射しても、同様に凹凸のある面に形成された光学多層膜εを通過させることができる。例えば、0度の入射光に対して、凸部の頂部や凹部の底部が垂直に交わると共に、凸部の頂部と凹部の底部の間が斜めに交わる。又、40度の入射光に対して、凸部の頂部と凹部の底部の間の一部が垂直に交わると共に、凸部の頂部や凹部の底部等が斜めに交わる。そして、光学多層膜εを通過した光は、基体の平面を通過する。よって、実施例5では、光の入射角の異なる分光放射分布における波長ずれが比較的に小さくなり、入射角依存性が軽減されることになる。
一般に、光学多層膜は、透明で平滑な基体に形成される反射防止膜に代表されるように(例えば特開2011−242697号公報のプラスチック光学製品)、光が散乱する箇所には付与されず、又入射角0度の特性が重視されて入射角依存性は二の次となるところ、実施例5では、あえて光の散乱するマット面に光学多層膜εを形成し、光学多層膜εの機能を入射角依存性の低い状態で発揮させている。かような光学多層膜ε(が形成された光学フィルタ)は、散乱が許容されることから、照明用途に向く。又、実施例5の光学多層膜εの機能(演色性の向上や色温度の調整)は、散乱を許容し、むしろ散乱によって明るさムラの均一化が図られるので、実施例5は、やはり照明(用カバー)に適している。
≪光学多層膜の入射角依存性の低減/参考例1〜4,参考比較例1≫
<参考例1〜4>
照明用光学フィルタではなく赤外線透過用フィルタ(ハイパスフィルタ)における入射角依存性の低減に関し、参考例1〜4や参考比較例1が示される。赤外線透過用フィルタは、携帯機器を始めとする機器の赤外線受発光部等において、赤外線センサーや赤外線通信手段のカバー等として用いられる。
参考例1〜4は、実施例5と同様に、基体のマット面に光学多層膜ζが形成されたものである。参考例1における光学多層膜ζは、赤外域(例えば800nm以上)において高い透過率(例えば平面に形成した場合に0度入射光に対して90%以上)を有すると共に、これより低い波長域(例えば700nm以下又は400nm以上700nm以下)で極めて低い透過率(例えば平面に形成した場合に0度入射光に対して5%以下)を有する。
参考例1のマット面は、実施例5〜7と同様、平均直径7μmの微細なビーズを体積濃度で30%程度含む透明塗布剤が、基材の平面に対し2μmの肉厚を有するように塗られることで形成されている。図8に、参考例1の分光透過率分布(可視域及び赤外域の一部に係るもの)であって、各種の入射角(0,20,30,40度)に関するものが示される。尚、実施例5と同様の理由で、分光透過率分布における透過率が低く測定され、参考例2〜4についても同様に低く測定されるが、全光線透過率は全て同等である。
参考例2のマット面は、平均直径4μmの微細なビーズを体積濃度で30%程度含む透明塗布剤が、基材の平面に対し2μmの肉厚を有するように塗られることで形成されている。図9に、参考例2の分光透過率分布が示される。
参考例3のマット面は、平均直径4μmの微細なビーズを体積濃度で60%程度含む透明塗布剤が、基材の平面に対し2μmの肉厚を有するように塗られることで形成されている。図10に、参考例3の分光透過率分布が示される。
参考例4のマット面は、平均直径4μmの微細なビーズを体積濃度で20%程度含む透明塗布剤が、基材の平面に対し4μmの肉厚を有するように塗られることで形成されている。図11に、参考例4の分光透過率分布が示される。
<参考比較例1>
参考比較例1は、参考例1〜4と同様の光学多層膜ζが、両面とも平面である基体の一面に形成された光学フィルタである。図12に、参考比較例1の分光透過率分布が示される。
<参考例1〜4及び参考比較例1の入射角依存性等に関する検討>
実施例5〜7と同様に、参考例1〜4及び参考比較例1に係る光の入射角に応じた分光透過率分布に関し、次の表8〜12において特徴的な波長ないしその変化量が示される。特徴的な波長として、600nm以上850nm以下の波長域における分光透過率分布の右上がり部分の半値(右上がりとなり始める透過率の低い値と右上がりが終わる透過率の高い値の平均,半値透過率)の波長である半値波長が把握される。半値波長の変化量は、光の入射角が40度である場合の分光透過率分布のものから、0度である場合の分光透過率分布のものを減じて算出される。尚、表8〜12の「840nmT」は波長840nmにおける透過率のことであり、「600nmT」は波長840nmにおける透過率のことである。
Figure 2017021289
Figure 2017021289
Figure 2017021289
Figure 2017021289
Figure 2017021289
光学フィルタの分光透過率分布がその態様(増減の傾向)を維持していたとしても、横軸方向(波長の増減方向)にずれると、機器の赤外線センサや赤外線通信手段等が光(赤外線)の波長に依存して動作することから、機器の赤外線センサや赤外線通信手段等の誤動作の原因となり得る。これに対し、分光透過率分布がその態様を維持しつつ縦軸方向にずれたとしても、横軸方向にずれていなければ、機器の赤外線センサや赤外線通信手段等の誤動作が防止される。
従って、互いに光の入射角の異なる分光透過率分布における特徴的な波長の変化量が少ないほど、光の入射角によらずに光学多層膜ζの性能を発揮する(赤外線を選択的に通過させる)ことが可能であると言える。
表8〜12に示される半値波長の変化値は、参考比較例1が最も大きく、参考例4,2,1の順に小さくなり、参考例3が最も小さい。
参考例1〜4では、何れも、参考比較例1に対して半値波長の変化量が少なくなっており、入射角依存性が低減されている。
参考例3は、参考例1,2,4に比べてビーズの濃度が高くなっており、その分半値波長の変化量が更に少なくなっていて、より一層入射角依存性が低減されたものとなっている。即ち、参考例3の程度に表面に凹凸があれば、入射角依存性の低減の観点においてより好ましいこととなる。参考例3の表面粗さは1μm以上5μm以下の範囲内に入っており、参考例3以外の例であって表面粗さが当該範囲内となるものを数例作成して入射角依存性を調べたところ、参考例3と同様に入射角依存性の更なる低減がみられた。
参考例1〜4では、あえて光の散乱するマット面に光学多層膜ζを形成し、光学多層膜ζの機能を入射角依存性の低い状態で発揮させている。かような光学多層膜ζ(が形成された光学フィルタ)は、光(赤外線)の透過率が散乱により減少したとしても、全光線透過率は同等なため、センサとフィルタの距離が近ければ十分に透過光量を確保することができ、入射角依存性を十分に確保したい場合には、好適に用いることができる。
例えば、携帯機器の顔接近時の動作切り替え(画面消灯等)を始めとする機器の機能切り替え等に用いられる近接センサは、特定の波長(域)の赤外線を放射する赤外線放射部と、その波長(域)の赤外線の入射を検知する赤外線検知部を互いに隣接する状態で有しており、赤外線放射部からの赤外線が近接物により反射して赤外線検知部で検知されたことにより近接物の近接を検知するものである。赤外線検知部(及び赤外線放射部)の外側には、これ(ら)を保護すると共に、他の波長(域)の赤外線や可視光線による赤外線検知部の誤検知を防止するため、赤外線を選択的に通過させる光学フィルタが設けられる。赤外線が検知される場合、赤外線は機器側から光学フィルタに斜めに入射して外部に放射され、近接物で反射して外側から光学フィルタに斜めに入射して赤外線検知部に至る。赤外線放射部の放射強度ないし赤外線検知部の感度や検出可能波長(域)等の特性に関し、赤外線放射部の放射強度に対する赤外線検知部の感度は十分に向上している傾向にあり、検出可能波長(域)も種々調整可能であるが広くし過ぎると誤検知が増える傾向にある。又誤検知低減のため検出可能波長(域)を狭くした場合において、光学フィルタに入射角依存性が存在すると、赤外線がある程度幅のある様々な入射角を持って斜めに光学フィルタに入射するため、近接物が存在しているにもかかわらず入射角によって赤外線の検知結果が異なる可能性を生じてしまう。かような入射角の相違による誤検知の発生は、参考例1〜4のような光学フィルタによって防止することができ、機器の近接センサの動作が安定する。
又、リモートコントローラや赤外線通信部等における機器の赤外線発信部や赤外線受信部に、参考例1〜4のような入射角依存性の低い光学フィルタを取り付けても、動作を安定させることができ、赤外線発信部の赤外線受信部に対する角度が大きくても動作可能とする等、動作範囲を広げることができる。
尚、入射角依存性の低減に関する発明が以下に示される。
(1)マット面を有する基体と、前記マット面に形成される光学多層膜を有することを特徴とする光学フィルタ。光学フィルタにあって、光学多層膜がマット面に形成されることにより、光の透過率が減少するものの、光学多層膜による機能を光の入射角に依らずに提供することができる。
(2)前記光学多層膜は、光源に係る可視域の分光放射分布における少なくとも何れかの極大値の波長の前後各20nm以内に、可視域の分光透過率分布における極小値の波長が位置するように形成されたものであることを特徴とする(1)に記載の光学フィルタ。演色性の向上や色温度調整の機能を、入射角依存性を低減した状態で提供することができる。
(3)前記光学多層膜は、赤外線透過フィルタであることを特徴とする(1)に記載の光学フィルタ。赤外線検知や赤外線通信等の機能を、入射角依存性を低減した状態で提供することができる。
≪蛍光シートと光学多層膜の配置等/実施例8〜11,比較例1≫
光学多層膜の設計を除き実施例3と同様に成る赤色蛍光シートの基体の表側(外側)又は裏側(光源側)に、光学多層膜η又は光学多層膜θが配置されることで、実施例8〜11が作製された。
これらの内、実施例8,9では光学多層膜ηが用いられており、実施例10,11では光学多層膜θが用いられている。光学多層膜η,θは、図13(a)に示される分光透過率分布(分光反射率分布)を有するように設計されており、色温度の変化量(アップコンバージョン量)を互いに異ならせたものとなっている。又、実施例8,10では、光源側に蛍光シートが配置されており、即ち光源光がまず蛍光シートに当たり次いで蛍光シートの出力光が光学多層膜η,θを透過するものとなっており、実施例9,11では、外側に蛍光シートが配置されており、即ち光源光がまず光学多層膜η,θを透過して中間透過光となり次いで中間透過光が蛍光シートに当たって出力光が出力されるものとなっている。
蛍光シートは、ポリエチレンテレフタレート製の透明なフィルム(シート基体)に、蛍光材料として電気化学工業株式会社製アロンブライトRE−625B(30%濃度)を4回重ねて印刷することで形成されている。当該蛍光材料は、ユウロピウム(Eu)を発光イオンとしており、波長625nmにおいて発光ピークを有するものである。
又、光学多層膜を成膜せずに、実施例8〜11と同じ蛍光シートを用い、光学多層膜が配置されず蛍光シートのみ配置された比較例1が作製された。尚、光学多層膜η,θやその蛍光シートに対する配置は、後述の表13において示される。
実施例8〜11や比較例1は、光源E(ミニレフLEDランプ)と組み合わされる。
又、光源Eを覆った実施例8〜11や比較例1の分光放射分布は、図13(b)において示される。
光源Eが照射された際の蛍光シートの出力光(光学多層膜なし)に係る分光放射分布は、光源Eの白色光と蛍光シートの発光が混合されることで、波長570nmにおいて1つの極大値(6.20E−02)を持つ。又、蛍光シートは、青色光を(部分的に)吸収し、波長625nmにピークを有する状態で発光する。これに対し、光学多層膜ηは、図13(a)に示されるように、波長625nmの前20nm以内である波長610nmにおいて分光透過率分布の極小値(48%)を持つ。又、光学多層膜θは、図13(a)に示されるように、波長625nmの前20nm以内である波長605nmにおいて分光透過率分布の極小値(37%)を持つ。
表13は、実施例8〜11や比較例1、光源Eに係る表1と同様の表である。
Figure 2017021289
比較例1において、蛍光シートで青色光を減じて赤色光を足すことによって、光学多層膜がなくても光源Eの演色性を一部向上することができているが、黄色から赤色域内に極大値を有することとなり、更に演色性を向上する余地があるものとなっており、又色温度が必ず低下することとなる(7719Kから4679Kに減少している)。
これに対し、実施例8〜11では、蛍光シートによって加えられた赤色領域の輝度を光学多層膜η,θにより抑制して赤色域の極大値を比較的に小さくし、当該極大値の両側における分光放射分布の傾きをより緩くすることができ、演色性を向上しながら色温度の低下を抑制して色温度を光源E相応に維持し(実施例8,9,11)、あるいは色温度を上昇させることができる(色温度アップコンバージョン、実施例10)。
更に、光学多層膜ηが蛍光シートの外側に配置された実施例8に比べ、光学多層膜ηが蛍光シートの光源側に配置された実施例9では、分光放射分布において赤色域の極大値がより小さく又当該極大値の両側における傾きがよりなだらかとなっていると共に、580nm以上670nm以下の波長域で実施例8の輝度より実施例9の輝度が上回っており、色温度が僅かに小さいものの(6743Kに対して6164K)、演色評価数が全て上回っている(例えばRaは82に対して87となっている)。実施例8に対する実施例9において、赤色の蛍光を光学多層膜が外側に反射してその分赤色域の輝度が増加し、色温度が相対的に下がっているので、発光効率がより良くなっていると言える。
同様に、光学多層膜θが蛍光シートの外側に配置された実施例10に比べ、光学多層膜θが蛍光シートの光源側に配置された実施例11では、分光放射分布において赤色域の極大値がより小さく又当該極大値の両側における傾きがより穏やかとなっていると共に、570nm以上680nm以下の波長域で実施例10の輝度より実施例11の輝度が上回っており、色温度が僅かに小さいものの(8576Kに対して7148K)、演色評価数が全て上回っている(例えばRaは82に対して90となっている)。実施例10に対する実施例11においても、赤色の蛍光を光学多層膜が外側に反射してその分赤色域の輝度が増加し、色温度が相対的に下がっているので、発光効率がより良くなっていると言える。
特に、実施例11は、光学多層膜θが蛍光シートの光源側に配置されることで、光源Eの色温度を維持しながら、演色性を極めて良好に向上することができるものである。
かように赤色域の透過率の比較的に低い光学多層膜η,θが光源側に配置されれば、蛍光シートで発光した赤色の蛍光が光学多層膜η,θで外側に反射され、外側に出力される光に係る赤色域の強度が増え、蛍光シートにおける励起光から蛍光への変換の効率がより良好になっており、その分緑色域から赤色域にかけての分光放射分布が太陽光に係る可視域の分光放射分布により近づくものとなる。従って、光源側に光学多層膜η,θが形成されたものは、一般の照明により適している。又、光学多層膜η,θが光源側に形成されれば、光学多層膜η,θの露出の度合が少なくて済み、光学多層膜η,θが保護されて光学フィルタがより長寿命となる。
≪蛍光シートと光学多層膜の配置等/実施例12〜13,比較例2≫
光学多層膜の設計を除き実施例8〜11と同様に成る赤色蛍光シートの基体の表側(外側)又は裏側(光源側)に、光学多層膜ιが配置されることで、実施例12〜13が作製された。
実施例12,13は3mm厚の赤色蛍光シートを用いて形成されており、光学多層膜ιは、図14(a)に示される分光透過率分布(分光反射率分布)を有するように設計されている。実施例12では、外側に蛍光シートが配置されており、即ち光源光がまず光学多層膜ιを透過して中間透過光となり次いで中間透過光が蛍光シートに当たって出力光が出力されるものとなっており、実施例13では、光源側に蛍光シートが配置されており、即ち光源光がまず蛍光シートに当たり次いで蛍光シートの出力光が光学多層膜ιを透過するものとなっている。
又、光学多層膜を成膜せずに、実施例12,13と同じ蛍光シートを用い、光学多層膜が配置されず蛍光シートのみ配置された比較例2が作製された。尚、光学多層膜ιやその蛍光シートに対する配置は、後述の表14において示される。
実施例12,13や比較例2は、光源F(昼白色のLEDランプ)と組み合わされる。
光源Fを覆った実施例12,13や比較例2、及び光源Fの分光放射分布、並びに標準A光源の分光放射分布(ハロゲンランプにおける理想曲線に係る分光放射分布,放射強度方向即ち縦軸方向に適宜移動したもの)は、図14(b)において示される。
光源Fの分光放射分布は、波長445nmにおいて青色LEDによる極大値(3.00E−01)を持つ。又、赤色蛍光シートは、青色光を(部分的に)吸収し、波長625nmにピークを有する状態で発光する。これに対し、光学多層膜ιは、図14(a)に示されるように、波長445nmの前20nm以内である波長430nmにおいて、分光透過率分布の極小値(17%)を持つ。
表14は、実施例12〜13や比較例2、光源Fに係る表1と同様の表である。
Figure 2017021289
比較例2において、蛍光シートで青色光を減じて赤色光を足すことによって、光学多層膜がなくても光源Fの演色性を一部向上することができているが、未だ青色域内に極大値を有しており、標準A光源に係る右上がりの分光放射分布に更に近付ける余地があり、更に演色性を向上する余地があるものとなっている。
これに対し、実施例12,13では、青色光の光量がその他の色の光量に対して理想的なハロゲンランプに相当する程度まで減衰されており、色温度が低下する(ダウンコンバージョン)と共に、分光放射分布が標準A光源の分光放射分布に係る右上がりの形状により近づくものとなる。実施例12,13は、演色性が比較例2と同程度であるものの、青みのない光源に相当するものとなり、写真撮影等に用いられるハロゲンランプとして利用し易い照明装置(発光装置)の構成要素となる。
又、光学多層膜ιが蛍光シートの外側に配置された実施例13では、光学多層膜ιが蛍光シートの光源側に配置された実施例12に比べ、分光放射分布において赤色域の極大値がより増加して、標準A光源の右上がりの分光放射分布により近づいていると共に、580nm以上670nm以下の波長域で実施例12の輝度より実施例13の輝度が上回っており、実施例13の色温度が実施例12より僅かに小さいものの(3017Kに対する2779K)、実施例13の演色評価数は実施例12に対して更に向上している(例えばRaは78に対して80となっている)。実施例12に対する実施例13において、波長変換されなかった青色の励起光を光学多層膜ιが内側に反射して再度蛍光の発光に寄与させるため、その分赤色域の輝度が増加し、色温度が相対的に下がっているので、発光効率がより良くなっていると言える。
実施例13のように青色域の透過率の比較的に低い光学多層膜ιが外側に配置されれば、蛍光シートで波長変換されなかった青色光が光学多層膜ιで光源側に反射され、反射された青色光は再度蛍光発光に寄与して赤色域の強度が増加する。従って、実施例13において、蛍光シートにおける励起光から蛍光への変換の効率は、実施例12に比べより良好になっており、その分青色域から赤色域にかけての分光放射分布が理想的なハロゲンランプ(標準A光源)に係る可視域の分光放射分布により近づくものとなる。よって、外側に光学多層膜ιが形成されたものは、写真撮影等の照明により適している。

Claims (13)

  1. 可視域において所定の分光放射分布を有する光源からの光源光が、可視域における所定の分光透過率分布に従って透過されて、調整された可視域における分光放射分布を有する透過光となるように形成された光学多層膜が、基体に形成されている光学フィルタであって、
    前記透過光に係る前記分光放射分布の形状が、太陽光に係る可視域の分光放射分布の形状又はハロゲンランプにおける可視域の分光放射分布の理想曲線の形状に近づくように、前記光源光に係る前記分光放射分布における極大値の波長の前後各20nm以内に、前記光学多層膜に係る前記分光透過率分布の極小値の波長が位置している
    ことを特徴とする光学フィルタ。
  2. 前記光源光に係る演色評価数より、前記透過光に係る演色評価数が大きい
    ことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
  3. 前記光源光に係る特殊演色評価数の内R13及びR15の少なくとも一方より、前記透過光に係る当該特殊演色評価数が大きい
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学フィルタ。
  4. 前記光源光に係る色温度と前記透過光に係る色温度が同一であり、又は前記光源光に係る色温度に対する95パーセントの色温度以上105パーセントの色温度以内に前記透過光に係る色温度が入っている
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の光学フィルタ。
  5. 前記基材は、マット面を有しており、
    前記光学多層膜は、前記マット面に形成されている
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載の光学フィルタ。
  6. 前記光源光は、白色光である
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の光学フィルタ。
  7. 前記光源は、近紫外域ないし青色域内の少なくとも何れかの波長の光を発するLEDと、蛍光体とを備えている
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れかに記載の光学フィルタ。
  8. 前記光源は、有機エレクトロルミネッセンスである
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れかに記載の光学フィルタ。
  9. 前記光学多層膜に係る前記分光透過率分布において、青色光の透過率の平均より赤色光の透過率の平均が小さい
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項8の何れかに記載の光学フィルタ。
  10. 青色励起で赤色及び緑色の少なくとも一方の蛍光を発光する蛍光体を有している
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項9の何れかに記載の光学フィルタ。
  11. 前記光源と前記蛍光体との間に、前記光学多層膜が配置されている
    ことを特徴とする請求項10に記載の光学フィルタ。
  12. 前記光源と前記光学多層膜の間に、前記蛍光体が配置されている
    ことを特徴とする請求項10に記載の光学フィルタ。
  13. 請求項1ないし請求項12の何れかに記載の光学フィルタが、前記光源に取り付けられている
    ことを特徴とする発光装置。
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