JP7349737B2 - 破骨細胞分化抑制剤 - Google Patents

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Description

本発明は、Cardiotrophin-like cytokine factor 1 (CLCF1) 又はその機能的等価物を有効成分とする破骨細胞分化抑制剤に関する。
骨の恒常性と構造的形状は、骨を吸収する破骨細胞と骨を形成する造骨細胞の協調作用により保持されることが知られている。破骨細胞と造骨細胞の協調作用のアンバランスは、骨密度の低下又は上昇を特徴とする様々な代謝性骨疾患をもたらし得る。代謝性骨疾患の代表例は、骨粗鬆症である。骨粗鬆症は、日常的な動作による骨折を患者に引き起こしてQOLを著しく損なうだけでなく、骨折が契機となって当該患者が寝たきりとなり終身介護が必要となる等、医療費の増大を招く一因となっている。
骨粗鬆症等の骨吸収性疾患の治療には骨吸収の抑制が重要であることから、破骨細胞の分化及びその活性化の阻害又は抑制を標的とした治療薬が開発されている。例えば、破骨細胞の活動阻害薬であるビスホスホネートが、臨床で広く使用されている。しかしながら、ビスホスホネートによる治療は、胃腸障害や顎骨壊死等の副作用を伴うため長期投与が推奨されない、治療前や治療中にカルシウムやビタミンDの補充が必要である、等の問題を有する(例えば非特許文献1を参照されたい)。その骨量増加効果も、決して満足がいくものではない。
また、新たな治療薬として、破骨細胞分化のシグナル経路である、Receptor activator of nuclear factor κ ligand (RANKL) とその受容体であるosteoprotegerin (OPG) を中心としたRANKL/RANK/OPG経路の阻害薬、例えば抗RANKL抗体が知られている。破骨細胞の分化は、単球・マクロファージ系の破骨細胞前駆細胞上に発現したRANK及びc-fmsが、骨芽細胞から分泌されるRANKL及びM-CSF (Macrophage-Colony Stimulating Factor) を認識することにより誘導される。RANKL/RANK/OPG経路の阻害薬は、経路の遮断により破骨細胞の分化抑制を引き起こし、骨吸収亢進を抑制するものと考えられている。一方、RANKL/RANK/OPG経路は器官形成、免疫寛容、乳腺の発達等にも関与していることから、それらに対する障害の可能性が指摘されている(例えば非特許文献2及び3を参照されたい)。
Kennel KA and Drake MT., Mayo Clinic Proceedings 2009;84(7):632-647 Chen T and Feng X., ASSAY and Drug Development Technologies 2006;4: 473-482 Walsh M C and Choi Y., Frontiers in Immunology 2014; 5:511
本発明は、破骨細胞の機能を抑制する新たな手段、及び破骨細胞を標的とした骨吸収性疾患の新たな治療手段を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、破骨細胞の分化誘導に影響を与える因子を網羅的に探索した結果、分泌性サイトカインの一種であるCLCF1が、RANKLによる単球から破骨細胞への分化誘導を抑制する作用を有することを見いだし、以下の発明を完成させた。
(1)CLCF1(Cardiotrophin-like cytokine factor 1)又はその破骨細胞分化抑制能を保持した機能的等価物を有効成分として含む破骨細胞分化抑制剤であって、前記機能的等価物が、CLCF1の変異体若しくは誘導体、又はCLCF1、前記変異体若しくは誘導体をコードする核酸である、前記破骨細胞分化抑制剤。
(2)CLCF1の変異体が、CLCF1のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸残基が欠失若しくは置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはCLCF1のアミノ酸配列に1若しくは複数のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつ破骨細胞分化抑制能を有するタンパク質、又は破骨細胞分化抑制能を有するCLCF1のポリペプチド断片である、(1)に記載の破骨細胞分化抑制剤。
(3)CLCF1の誘導体が、CLCF1若しくはその変異体において1若しくは複数のアミノ酸残基が化学修飾されたタンパク質又はCLCF1若しくはその変異体と他のペプチドとの融合タンパク質であって、かつ破骨細胞分化抑制能を有するタンパク質である、(1)に記載の破骨細胞分化抑制剤。
(4)CLCF1が、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である、(1)~(3)のいずれか一項に記載の破骨細胞分化抑制剤。
(5)CLCF1又はその破骨細胞分化抑制能を保持した機能的等価物を有効成分として含む、骨吸収性疾患の治療及び/又は予防のための医薬であって、前記機能的等価物が、CLCF1の変異体若しくは誘導体、又はCLCF1、前記変異体若しくは誘導体をコードする核酸である、前記医薬。
(6)CLCF1の変異体が、CLCF1のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸残基が欠失若しくは置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはCLCF1のアミノ酸配列に1若しくは複数のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつ破骨細胞分化抑制能を有するタンパク質、又は破骨細胞分化抑制能を有するCLCF1のポリペプチド断片である、(5)に記載の医薬。
(7)CLCF1の誘導体が、CLCF1若しくはその変異体において1若しくは複数のアミノ酸残基が化学修飾されたタンパク質又はCLCF1若しくはその変異体と他のペプチドとの融合タンパク質であって、かつ破骨細胞分化抑制能を有するタンパク質である、(5)に記載の医薬。
(8)骨吸収性疾患が骨粗鬆症、骨ページェット病、骨減少症、副甲状腺機能亢進症、炎症性骨吸収、感染に伴う骨吸収、人工物による無菌性骨吸収、多発性骨髄腫若しくはがんの骨転移に伴う骨吸収、歯周病に伴う歯槽骨吸収、抜歯後の歯槽骨吸収又は歯槽骨増生術後の骨吸収である、(5)~(7)のいずれか一項に記載の医薬。
本発明の破骨細胞分化抑制剤は、破骨細胞の分化誘導を効果的に抑制することができる。また、本発明によると、破骨細胞による骨吸収に起因する骨吸収性疾患を治療及び/又は予防することが可能になる。
インビトロでのCLCF1の破骨細胞分化抑制効果を示す図である。図1Aは様々なCLCF1濃度条件下で単球から分化誘導された破骨細胞(TRAP陽性多核細胞)数のグラフを、図1Bは代表的なTRAP陽性多核細胞の顕微鏡観察画像を、図1Cはファロイジンによりアクチンを染色した細胞の代表的な顕微鏡観察画像を示す。図1C中の矢印は、破骨細胞に特徴的なF-アクチンリングを指す。 インビトロでのCLCF1の骨吸収抑制効果を示す図である。図2AはCLCF1存在下又は非存在下で単球から分化誘導された破骨細胞を培養することにより象牙質スライス表面上に形成された吸収窩の面積割合のグラフを、図2Bは各スライスの顕微鏡観察画像を示す。図2B中の褐色領域(画像中の色の濃い箇所)は骨吸収が生じた領域である。図2B下中の矢印は、骨吸収領域を指す。 インビボでのCLCF1の骨吸収抑制効果を示す図である。図3AはRANKL単独又はRANKL及びCLCF1を注射した骨粗鬆症マウスの頭蓋冠における骨吸収領域の面積割合のグラフを、図3Bは代表的な頭蓋冠のμCT走査画像(左側画像)及びTRAP染色画像(右側画像)を示す。
本発明の第1の態様は、CLCF1又はその破骨細胞分化抑制能を保持した機能的等価物を有効成分として含む破骨細胞分化抑制剤に関する。
CLCF1
CLCF1は、IL-6スーパーファミリーに属する分泌型サイトカインであり、Novel Neurotrophin-1 (NNT-1) 又はB cell-stimulating factor-3 (BSF-3) とも呼ばれる。CLCF1は、cytokine receptor-like factor 1 (CRLF1) とヘテロダイマー複合体を形成し、このダイマーはciliary neurotrophic factor receptor (CNTFR) 複合体への結合についてciliary neurotrophic factor (CNTF) と競合し、Jak-STATシグナル伝達カスケードを活性化する。CLCF1は、神経栄養因子、B細胞刺激物質及び下垂体性コルチコトロピン機能の神経内分泌調節物質として知られており、主にリンパ節、脾臓、末梢血リンパ球、骨髄及び胎児肝臓で発現している。
本発明において使用されるCLCF1は哺乳動物由来のCLCF1であり、ヒト由来のCLCF1が好ましく使用される。ヒトCLCF1のアミノ酸配列や、これをコードする遺伝子のORF配列はすでに公知であり、それぞれ公共のデータベースであるGenBankにACCESSION No. NP_037378 (アミノ酸配列)、ACCESSION No. NM_013246(塩基配列)として登録されている。ヒトCLCF1のアミノ酸配列を配列番号1に、これをコードするcDNAの塩基配列を配列番号2にそれぞれ示す。以下の説明において、特に断らない限り、ヒトCLCF1を本発明で使用されるCLCF1の例として説明する。
CLCF1の機能的等価物
本発明においては、CLCF1の他に、CLCF1が有する破骨細胞分化抑制能を保持したCLCF1の機能的等価物も破骨細胞分化抑制剤として使用することができる。CLCF1の機能的等価物とは、CLCF1と同様の破骨細胞分化抑制能を有するCLCF1の改変体、例えばCLCF1の変異体及び誘導体等、並びに生体又は細胞内でCLCF1又はその改変体を生じさせる物質、例えばCLCF1又はその改変体をコードする核酸等を意味する。
本発明における「破骨細胞分化抑制」とは、単球又はマクロファージ系の破骨細胞前駆細胞から破骨細胞への分化を阻害又は抑制することを意味し、「破骨細胞分化抑制能」とは、破骨細胞前駆細胞から破骨細胞への分化を阻害又は抑制する能力を意味する。破骨細胞分化抑制能は、被験物質の存在下でRANKL及びM-CSF刺激により破骨細胞前駆細胞から分化誘導された破骨細胞の数を、被験物質の非存在下で同様に分化誘導された破骨細胞の数と比較することによって、確認することができる。前記比較において、破骨細胞分化抑制能を被験物質の非存在下で分化誘導された破骨細胞の数に対する%阻害として表すと、本発明において望ましい破骨細胞分化抑制能は、少なくとも40%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは95%以上の抑制能である。
CLCF1の変異体
本発明において破骨細胞分化抑制剤として使用することができるCLCF1の変異体は、CLCF1の破骨細胞分化抑制能を保持しながらCLCF1のアミノ酸配列に改変を加えたタンパク質である。その好ましい例としては、CLCF1のアミノ酸配列において1若しくは複数の、例えば1~25個、好ましくは1~20個、より好ましくは1~15個、さらにより好ましくは1~10個、最も好ましくは1~5個のアミノ酸残基が欠失若しくは置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質、又はCLCF1のアミノ酸配列に1若しくは複数の、例えば1~25個、好ましくは1~20個、より好ましくは1~15個、さらにより好ましくは1~10個、最も好ましくは1~5個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつ破骨細胞分化抑制能を有するタンパク質を挙げることができる。
置換はいわゆる保存的置換が好ましく、そのような例としては、グリシン(Gly)とプロリン(Pro)、グリシンとアラニン(Ala)又はバリン(Val)、ロイシン(Leu)とイソロイシン(Ile)、グルタミン酸(Glu)とグルタミン(Gln)、アスパラギン酸(Asp)とアスパラギン(Asn)、システイン(Cys)とスレオニン(Thr)、スレオニンとセリン(Ser)又はアラニン、リジン(Lys)とアルギニン(Arg)等のアミノ酸の間での置換を挙げることができる。
また、CLCF1のアミノ酸配列と、例えばBLASTの初期条件パラメーターを用いて同一性を計算したときに、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%、98%若しくは99%以上の同一性を有しているアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつ破骨細胞分化抑制能を有するタンパク質もCLCF1の変異体に包含される。
さらに、破骨細胞分化抑制能を有する、CLCF1タンパク質のポリペプチド断片もCLCF1の変異体に包含される。ヒトCLCF1由来のかかるポリペプチド断片は、好ましくは配列番号1の28~225番目のアミノ酸残基からなる又はこれを含む。
CLCF1の誘導体
本発明において破骨細胞分化抑制剤として使用することができるCLCF1の誘導体は、CLCF1の破骨細胞分化抑制能を保持しながらCLCF1に化学物質等を付加することにより得られるタンパク質である。その好ましい例としては、CLCF1若しくはその変異体において1若しくは複数のアミノ酸残基が化学修飾されたタンパク質、又はCLCF1若しくはその変異体と他のペプチドとの融合タンパク質であって、かつ破骨細胞分化抑制能を有するタンパク質を挙げることができる。
化学修飾としては、例えば、アシル化、プレニル化、アセチル化、リン酸化、グリコシル化、PEG化を挙げることができる。また、融合タンパク質における他のペプチドとしては、例えば、Hisタグ、GSTタグ、HAタグ、FLAGタグ、GFPその他の蛍光タンパク質タグ等を挙げることができる。
CLCF1又はその改変体をコードする核酸
本発明において破骨細胞分化抑制剤として使用することができる、CLCF1又はその改変体をコードする核酸としては、CLCF1をコードする核酸;CLCF1のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸残基が欠失若しくは置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつ破骨細胞分化抑制能を有するタンパク質をコードする核酸;CLCF1のアミノ酸配列に1若しくは複数のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつ破骨細胞分化抑制能を有するタンパク質をコードする核酸;破骨細胞分化抑制能を有するCLCF1のポリペプチド断片をコードする核酸;CLCF1若しくはその変異体と他のペプチドとの融合タンパク質であって、かつ破骨細胞分化抑制能を有するタンパク質をコードする核酸等を挙げることができる。
核酸は、DNA、RNA又はそれらの安定性が高められた核酸修飾体のいずれでもよい。また直鎖状のものでも、環状のものでもよい。核酸がDNAである場合は発現ベクターに組み込まれた形態であるものが好ましく、RNAである場合はmRNAが好ましい。発現ベクターの例としては、pBApo-CMV (Takara) その他の市販の発現ベクターにCLCF1又はその改変体をコードするDNAを組み込んだものを挙げることができる。
CLCF1又はその改変体の調製
本発明において破骨細胞分化抑制剤として使用することができるCLCF1又はその改変体は、大腸菌その他の微生物、昆虫細胞又は動物細胞を宿主細胞とした組換えタンパク質の生産方法により調製することができる。組換え遺伝子の構築、宿主細胞への発現ベクターの導入、宿主細胞での目的タンパク質の発現その他の遺伝子工学的手法は、種々の遺伝子組換え操作を詳細に解説した実験操作マニュアル書の指示に基づいて行うことができる。
CLCF1又はその改変体の組換え生産のため、CLCF1又はその改変体をコードするDNAを組み込んだ適当な発現ベクターを使用することができる。CLCF1又はその改変体をコードするDNAを有する組換えベクターは、環状、直鎖状等いかなる形態のものであってもよい。また、かかる組換えベクターは、CLCF1又はその改変体をコードする塩基配列に加え、他の塩基配列を有していてもよい。他の塩基配列の例は、エンハンサー配列、プロモーター配列、リボゾーム結合配列、コピー数の増幅を目的として使用される塩基配列、シグナルペプチド等のペプチドや他のポリペプチドをコードする塩基配列、ポリA付加配列、スプライシング配列、選択マーカーとなる遺伝子の塩基配列等である。
遺伝子組換えに際して、適当な合成DNAアダプターを用いて翻訳開始コドンや翻訳終止コドンをCLCF1又はその改変体をコードするDNAに加えたり、あるいは塩基配列内に適当な制限酵素切断配列を追加又は削除することも可能である。これらは当業者が通常行う作業の範囲内であり、当業者はCLCF1又はその改変体をコードするDNAを任意かつ容易に加工することができる。
またCLCF1又はその改変体をコードするDNAを保持する発現ベクターとしては、使用する宿主に応じた適当なベクターを選択することができ、プラスミドの他にバクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウィルス、ワクシニアウィルス等の種々のウイルスを用いることも可能である。
CLCF1又はその改変体は、CLCF1遺伝子固有のプロモーター配列の制御下に発現させることができる。あるいは、CLCF1又はその改変体をコードする塩基配列の上流に別の適当な発現プロモーターを連結して使用することもできる。その様な発現プロモーターは、宿主に応じて適宜選択すればよく、例えば宿主がエシェリヒア属細菌、好ましくは大腸菌である場合にはT7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、λPLプロモーター等を、宿主がバチルス属細菌、好ましくはB. subtillisである場合にはP43プロモーター,vegIプロモーター,xylose―inducible プロモーター,tetracycline inducible プロモーター等を挙げることができる。また、宿主が酵母である場合にはPHO5プロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等を、宿主が動物細胞である場合にはSV40由来プロモーター、レトロウィルスプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等を挙げることができる。
宿主細胞の例としては、エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、セラチア(Serratia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、アースロバクター(Arthrobacter)属、エルウィニア(Erwinia)属、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属及びロドバクター(Rhodobacter)属等の細菌、ストレプトミセス(Streptomyces)属、ザイモモナス(Zymomonas)属及びサッカロミセス(Saccharomyces)属等の真菌を挙げることができる。またカイコ等の昆虫細胞、HEK293細胞、MEF細胞、Vero細胞、Hela細胞、CHO細胞、WI38細胞、BHK細胞、COS-7細胞、MDCK細胞、C127細胞、HKG細胞及びヒト腎細胞株等の動物細胞も利用可能である。
発現ベクターを宿主細胞に導入する形質転換の方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、アルカリ金属法、リン酸カルシウム沈澱法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、リポフェクション法等を挙げることができる。
CLCF1又はその改変体は、発現ベクターを導入した形質転換細胞を培養し、細胞内でタンパク質を発現させ、細胞又は培地から目的とするタンパク質を回収し、精製することによって得ることができる。形質転換細胞の培養は、炭素資化性や栄養要求性等の宿主細胞の性質、導入した組換え遺伝子に含まれる選択マーカー、プロモーター等に応じて常法に従って行えばよい。
CLCF1又はその改変体の精製は、タンパク質の精製に通常使用されている方法の中から適切な方法を適宜選択して行うことができる。すなわち、塩析法、限外濾過法、等電点沈澱法、ゲル濾過法、電気泳動法、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーや抗体クロマトグラフィー等の各種アフィニティークロマトグラフィー、クロマトフォーカシング法、吸着クロマトグラフィー及び逆相クロマトグラフィー等の通常使用され得る方法の中から適切な方法を適宜選択し、必要によりHPLCシステム等を使用して適当な順序で精製を行えばよい。
また、CLCF1又はその改変体を他の機能性タンパク質又はペプチドとの融合タンパク質として発現させた場合には、その機能性タンパク質又はペプチドに特徴的な精製法を採用することが好ましい。かかる機能性タンパク質又はペプチドとそれに対応した精製法としては、6~10個程度の連続するヒスチジン残基からなるヒスチジンタグとニッケル固定化アフィニティークロマトグラフィー、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)とグルタチオン固定化アフィニティークロマトグラフィー等が挙げられる。さらに、精製された融合タンパク質を適当なプロテアーゼ(トロンビン、トリプシン等)を用いて切断することで、CLCF1又はその改変体を回収することができる。
さらに、組換えDNA分子を利用した無細胞系の合成方法も、遺伝子工学的な生産方法の1つである。
CLCF1又はその改変体は、例えばFmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)やtBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)等の有機化学的合成方法により、市販の適当なペプチド合成機を用いて生産することもできるが、遺伝子組換え技術によって、前記の核酸、特に発現ベクターに組み込まれたDNAを原核生物又は真核生物から選択される適当な宿主細胞を用いた好適な発現系に導入することによって生産することが好ましい。
また、組換え生産方法又は有機化学的合成方法により調製されたCLCF1又はその改変体を当業者に知られた種々の方法で化学修飾することで、CLCF1又はその改変体の1又は複数のアミノ酸残基が化学修飾されたタンパク質であって、かつ破骨細胞分化抑制能を有するタンパク質を調製することができる。
CLCF1又はその改変体をコードする核酸の調製
本発明において破骨細胞分化抑制剤として使用することができるCLCF1又はその改変体をコードするDNAは、上記「CLCF1又はその改変体の調製」において述べられた方法と同様の方法を用いて調製することができる。かかるDNAは、発現ベクターに組み込まれた形態であることができ、CLCF1又はその改変体をコードする塩基配列に加えて他の塩基配列を有していてもよく、翻訳開始コドンや翻訳終始コドンの追加、制限酵素切断部位の追加又は削除等が可能である点もまた、上述のとおりである。上記の発現ベクターや他の塩基配列は、破骨細胞分化抑制剤が適用される動物における遺伝子発現に適したものであることが好ましい。
本発明において破骨細胞分化抑制剤として使用することができるCLCF1又はその改変体をコードするRNAは、例えば上記のCLCF1又はその改変体をコードするDNAをインビトロ転写に供することにより得ることができる。
本発明において破骨細胞分化抑制剤として使用することができる核酸修飾体は、CLCF1又はその改変体をコードするDNA又はRNAの塩基の一部又は全部に、例えばヌクレアーゼによる分解に対する安定性を向上させることを目的とした修飾を施したものである。修飾としては、例えば2'O-メチル化、2'-F化、4'-チオ化等を挙げることができる。
本発明において破骨細胞分化抑制剤として使用することができるCLCF1又はその改変体をコードする核酸は、核酸を細胞に導入することのできる種々の公知の方法によって、例えばレンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等のウイルスベクターを用いた核酸導入方法、jetPEI (PolyPlus-transfection) やリポフェクトアミン等の非ウイルス性キャリアを用いた核酸導入方法、ハイドロダイナミクス法等によって、対象動物の細胞に導入することができる。対象動物の細胞に導入された核酸は、これらからCLCF1又はその改変体が転写翻訳されることで、破骨細胞分化抑制剤として機能する。
破骨細胞分化抑制剤の使用
第1の態様の破骨細胞分化抑制剤は、細胞(インビトロ)又は生体(インビボ)において、破骨細胞の分化を抑制するために用いることができる。破骨細胞分化抑制剤は、インビトロにおいて、破骨細胞の分化及びその抑制に関する研究におけるリサーチツールとして好適に用いることができる。また破骨細胞分化抑制剤は、インビボにおいて、破骨細胞による骨吸収に起因する骨吸収性疾患の治療及び/又は予防に好適に用いることができ、その詳細は後述のとおりである。
骨吸収性疾患の治療及び/又は予防のための医薬
本発明の別の態様は、CLCF1又はその破骨細胞分化抑制能を保持した機能的等価物を有効成分として含む、骨吸収性疾患の治療及び/又は予防のための医薬に関する。
本発明における「骨吸収性疾患」とは、骨吸収が骨形成を上回ることに起因する疾患、症状又は状態を意味する。骨吸収性疾患の例としては、骨粗鬆症、骨ページェット病、骨減少症、副甲状腺機能亢進症、炎症性骨吸収、感染に伴う骨吸収、人工物による無菌性骨吸収、多発性骨髄腫又はがんの骨転移に伴う骨吸収、歯周病に伴う歯槽骨吸収、抜歯後の歯槽骨吸収、歯槽骨増生術後の骨吸収等が挙げられる。本態様の医薬は、CLCF1又はその機能的等価物が有する破骨細胞分化抑制作用によって、これらの骨吸収性疾患を、好適には骨粗鬆症を治療及び/又は予防することができる。
本明細書において用いられる用語「治療」は、疾患の治癒、一時的寛解等を目的とする医学的に許容される全てのタイプの治療的介入を包含する。また用語「予防」は、疾患の罹患又は発症の防止若しくは抑制などを目的とする医学的に許容される全てのタイプの予防的介入を包含する。すなわち、骨吸収性疾患の治療及び/又は予防とは、骨吸収性疾患の進行の遅延又は停止、病変の退縮又は消失、発症の予防又は再発の防止などを含む、種々の目的の医学的に許容される介入を包含する。
本態様の医薬は、骨吸収性疾患に罹患した又は罹患するおそれのある対象、例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモットを含むげっ歯類、ヒト、チンパンジー、アカゲザルを含む霊長類、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジを含む家畜、イヌ、ネコを含む愛玩動物といった哺乳動物に投与される。好ましい対象は、ヒトである。
本態様の医薬は、CLCF1又はその機能的等価物のそのままの形態、例えばこれらの乾燥粉末又は水溶液の形態であってもよく、CLCF1又はその機能的等価物に加えて薬学的に許容される緩衝剤、安定剤、保存剤その他の添加剤、骨吸収性疾患の治療及び/又は予防に有益な他の有効成分等の成分を含む医薬組成物の形態であってもよい。かかる医薬組成物もまた本発明にいう医薬に包含される。
薬学的に許容される添加剤、特に生理活性タンパク質又は核酸を有効成分とする医薬組成物において好適な添加剤は当業者において周知であり、当業者が通常の実施能力の範囲内で、例えば第十七改正日本薬局方その他の規格書に記載された成分から製剤の形態に応じて適宜選択して使用することができる。
本態様の医薬において用いることができる骨吸収性疾患の治療及び/又は予防に有益な他の有効成分としては、限定されるものではないが、カルシウム製剤、活性型ビタミンD3、ビタミンK2、副甲状腺ホルモン、ビスホスホネート、エストラジオール等の女性ホルモン、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、カルシトニン、抗RANKL抗体等を挙げることができる。
本態様の医薬の剤形は任意であり、標的部位や具体的な疾患等に応じて適宜選択することができる。剤形は、一般に非経口製剤であることが好ましく、例えば注射剤、経皮剤、経腸剤、点滴剤、外用剤、坐剤等であることができる。また本態様の医薬の投与経路は、特に制限されないが、非経口製剤である場合は、例えば血管内投与(好ましくは静脈内投与)、腹腔内投与、腸管内投与、皮下投与、標的部位への局所投与等を挙げることができる。好ましい実施形態の一つにおいて、本態様の医薬は、静脈内投与又は局所投与により生体に投与される。また、本態様の医薬は、骨吸収性疾患の治療及び/又は予防に有益な他の有効成分を含む医薬と組み合わせて使用してもよい。
本態様の医薬の投与量は、用法、対象の年齢、性別、体重、具体的な疾患、剤形、投与経路その他の条件などに応じて適宜選択される。例えば、CLCF1又はその機能的等価物の投与量は、非経口投与の場合、通常成人に対して体重1kgあたりタンパク質量換算で10ng~2000μgであり、これを1日に1回若しくは複数回に分けて、又は間歇的に投与することが
できる。
このように、本態様の医薬は、骨吸収性疾患の治療及び/又は予防に用いることができる。したがって、本発明は、その必要がある対象に有効量のCLCF1又はその破骨細胞分化抑制能を保持した機能的等価物を投与することを含む、骨吸収性疾患を治療及び/又は予防する方法も包含する。ここで有効量は、骨吸収性疾患の治療及び/又は予防に有効な量を意味し、用法、対象の年齢、性別、体重、具体的な疾患、剤形、投与経路その他の条件などに応じて適宜決定される。
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 CLCF1の破骨細胞分化抑制効果及び骨吸収抑制効果の評価(インビトロ)
実験操作は、既報(Terkawi et al., 2018; Acta Biomaterialia, 65, 417-425)の記載に従って行った。また、市販のキットを用いた操作は製造者が提供するプロトコールに従って行った。
1)単核球の調製
健常ドナーのヒト末梢血から密度勾配遠心分離(Ficoll-Paque TM PLUS:GE Healthcare)によって単核細胞(PMC)画分を回収し、monocyte isolation kit(MACS, Miltenyi Biotec II)に供して、単球を分離した。10% FCS、50 IU/mlペニシリン、50 μg/mlストレプトマイシン及び25 ng/ml組換えマクロファージコロニー刺激因子(MCSF, Peprotech)を含むα-MEM中で3日間、単核球を培養した後、接着細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、1%トリプシン-EDTA溶液(GE Healthcare)で5分間処理して剥がし、氷冷PBSで洗浄して単核球を回収し、以下の実験に使用した。
2)CLCF1の破骨細胞分化抑制効果
上記1)の単核球2×104個を96ウェルプレートに播種し、25 ng/mlのM-CSF、50 ng/mlのRANKL(PeproTech, U.S.A)及び0、50、100又は200 ng/mlのCLCF1(Biolegend, U.S.A)を含むα-MEM中で10日間培養した。培養中、3日ごとにサイトカインを含む新鮮な培地を補充した。培養後の細胞をLeukocyte acid phosphate TRAP kit(Sigma, U.S.A)で染色し、3核以上のTRAP陽性細胞を破骨細胞とみなし、各ウェルにおいて10個のランダムな顕微鏡視野におけるTRAP陽性多核細胞数/cm2を決定することで、破骨細胞数を測定した。
図1Aに各CLCF1濃度におけるTRAP陽性多核細胞数のグラフを、図1Bに代表的なTRAP陽性多核細胞の顕微鏡観察画像を、図1Cにファロイジンによりアクチンを染色した細胞の代表的な顕微鏡観察画像を示す。TRAP染色及びアクチン染色により確認された破骨細胞の数はCLCF1濃度の上昇と共に減少しており、CLCF1による破骨細胞への分化の抑制が認められた。
3)CLCF1の骨吸収抑制効果
上記1)の単核球2×104個を象牙質スライス(直径6mm, 厚さ300μm, Wako)上に播種し、25 ng/mlのM-CSF、50 ng/mlのRANKL及び0又は50 ng/mlのCLCF1を含むα-MEM中で21日間培養した。培養中、3日ごとにサイトカインを含む新鮮な培地を補充した。培養後、20 mg/mlのperoxidase-conjugated wheat germ agglutininで象牙質スライスを染色し、次いで3,3'-ジアミノベンジジン(0.1% H2O2を含むPBSの0.52 mg/mL溶液)でインキュベーションした後、象牙質の吸収窩を共焦点顕微鏡によって観察し、スライス表面における吸収窩の面積割合(%)を画像解析ソフトウェア(NIH ImageJ)を用いて定量した。
図2Aに吸収窩の面積割合のグラフを、図2Bに各スライスの顕微鏡観察画像を示す。CLCF1非存在下ではスライス表面の4割程度に骨吸収が観察されたが、CLCF1存在下では骨吸収はほとんど観察されなかったことから、CLCF1は破骨細胞の分化を抑制することでインビトロで骨吸収を抑制することが確認された。
実施例2 CLCF1の骨吸収抑制効果の評価(インビボ)
Luoら(2019; Nature Medicine, 22; 539-546)の頭蓋冠骨粗鬆症マウスモデルを用いて以下の実験を行った。8週齢の雄性C57/B6マウス(日本クレア)を、0.1 mg/kgのRANKLを、又は0.1 mg/kgのRANKL及び0.1 mg/kgのCLCF1をそれぞれ7日間連続して頭蓋冠の骨膜に注射し、SPF環境下で飼育した。飼育後、頭蓋冠を採取し、マイクロコンピュータ断層撮影装置(μCT, R_mCT2; Rigaku)を用いて10μmの等方性分解能で走査し、骨形態計測ソフトウェアTRI / 3D-BON(ラトックシステムエンジニアリング)を用いて骨構造を解析した。さらに、頭頂骨を横断する四角形の関心領域を選択し、ソフトウェア(NIH ImageJ)を用いて骨吸収領域を定量した。
また、頭蓋骨を10%ホルマリンで固定し、TRAPキット(Sigma)を用いてTRAP染色を行った。
統計解析はスチューデントのt検定を用いて行った。結果は平均±標準誤差(SEM)として示し、p≦0.05(GraphPad)の場合に統計的に有意であるとみなした。
図3Aに骨吸収領域の面積割合のグラフを、図3Bに代表的な頭蓋冠のμCT走査画像(左側画像)及びTRAP染色画像(右側画像)を示す。RANKL及びCLCF1を注射したマウスでは、RANKLのみを注射したマウスと比べて、頭蓋冠における骨吸収領域(μCTの走査画像の黒色部分)の面積割合が低く、骨吸収の抑制が確認された。また、TRAP染色画像もμCTの走査画像と同様の傾向を示したことから、CLCF1はインビボで破骨細胞の分化を抑制することで骨吸収を抑制するものと考えられた。

Claims (8)

  1. CLCF1(Cardiotrophin-like cytokine factor 1)又はその破骨細胞分化抑制能を保持した機能的等価物を有効成分として含む破骨細胞分化抑制剤であって、前記機能的等価物が、CLCF1の変異体若しくは誘導体、又はCLCF1、前記変異体若しくは誘導体をコードする核酸である、前記破骨細胞分化抑制剤。
  2. CLCF1の変異体が、CLCF1のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸残基が欠失若しくは置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはCLCF1のアミノ酸配列に1若しくは複数のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつ破骨細胞分化抑制能を有するタンパク質、又は破骨細胞分化抑制能を有するCLCF1のポリペプチド断片である、請求項1に記載の破骨細胞分化抑制剤。
  3. CLCF1の誘導体が、CLCF1若しくはその変異体において1若しくは複数のアミノ酸残基が化学修飾されたタンパク質又はCLCF1若しくはその変異体と他のペプチドとの融合タンパク質であって、かつ破骨細胞分化抑制能を有するタンパク質である、請求項1に記載の破骨細胞分化抑制剤。
  4. CLCF1が、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である、請求項1~3のいずれか一項に記載の破骨細胞分化抑制剤。
  5. CLCF1又はその破骨細胞分化抑制能を保持した機能的等価物を有効成分として含む、骨吸収性疾患の治療及び/又は予防のための医薬であって、前記機能的等価物が、CLCF1の変異体若しくは誘導体、又はCLCF1、前記変異体若しくは誘導体をコードする核酸である、前記医薬。
  6. CLCF1の変異体が、CLCF1のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸残基が欠失若しくは置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはCLCF1のアミノ酸配列に1若しくは複数のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつ破骨細胞分化抑制能を有するタンパク質、又は破骨細胞分化抑制能を有するCLCF1のポリペプチド断片である、請求項5に記載の医薬。
  7. CLCF1の誘導体が、CLCF1若しくはその変異体において1若しくは複数のアミノ酸残基が化学修飾されたタンパク質又はCLCF1若しくはその変異体と他のペプチドとの融合タンパク質であって、かつ破骨細胞分化抑制能を有するタンパク質である、請求項5に記載の医薬。
  8. 骨吸収性疾患が骨粗鬆症、骨ページェット病、骨減少症、副甲状腺機能亢進症、炎症性骨吸収、感染に伴う骨吸収、人工物による無菌性骨吸収、多発性骨髄腫若しくはがんの骨転移に伴う骨吸収、歯周病に伴う歯槽骨吸収、抜歯後の歯槽骨吸収又は歯槽骨増生術後の骨吸収である、請求項5~7のいずれか一項に記載の医薬。

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