JP7349685B2 - 魚肉の酸化抑制方法、保存方法、輸送方法、変色抑制方法及び魚臭抑制方法、並びに、魚肉 - Google Patents

魚肉の酸化抑制方法、保存方法、輸送方法、変色抑制方法及び魚臭抑制方法、並びに、魚肉 Download PDF

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Description

本発明は、魚肉の酸化抑制方法、保存方法、輸送方法、変色抑制方法及び魚臭抑制方法、並びに、魚肉に関する。本願は、2018年10月31日に、日本に出願された特願2018-205243号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
魚は内臓やえらから傷みが進むことが知られており、内臓やえらを取り除く下処理を行い、必要に応じて、切り身の状態等に加工して、4℃程度で冷蔵保存される。しかしながら、その保存期間は魚の種類によっても異なるが、1日以上3日以下程度と短い。魚を長期保存するために、従来から、例えば、塩漬けやオイル漬けにする方法、氷水につける方法、冷凍する方法等が用いられている。
一方、発明者らは、これまで特定の微生物が着生した布を用いた熟成肉の製造方法を開発している(例えば、特許文献1参照)。
従来の魚の保存方法において、塩漬けやオイル漬けにする方法では、魚の長期保存が可能となるが、塩分又は油分を多く含むため、その調理方法が限定される。また、生の魚本来の食感や味を楽しむことが困難である。
氷水につける方法では、魚と同等以上の質量の氷水を必要とし、輸送コストがかかる。また、保存期間も通常の冷蔵保存と同程度であり、短い。
冷凍方法では、魚の長期保存が可能となるが、冷解凍による傷みや解凍時のドリップ(魚から出る余分な水分)の発生により、魚の生臭みが生じやすく、魚の美味しさが損なわれやすい。
また、特許文献1では、魚肉を含む熟成肉の製造方法について検討されているものの、魚の傷みを防ぎながら保存又は輸送する方法については知られていない。
日本国特開2017-147950号公報 日本国特許第3963306号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、新規の魚肉の酸化抑制方法、保存方法、輸送方法、変色抑制方法及び魚臭抑制方法、並びに、魚肉を提供する。
発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の微生物が着生した基材を魚肉に巻き付けて冷蔵することで、腐敗や酸化、変色、生臭さ等の臭いの発生を防ぎながら、魚肉を保存又は輸送することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係る魚肉の酸化抑制方法は、魚肉に基材を接触させた状態で、0℃以上6℃以下で冷蔵する魚肉の酸化抑制方法であって、前記基材のうち、少なくとも前記魚肉に接する部分に、ヘリコスティラム属、タムニディウム属、又はムコール属に属する菌を備える方法である。
本発明の第2態様に係る魚肉の保存方法は、魚肉に基材を接触させた状態で、0℃以上6℃以下で冷蔵する魚肉の保存方法であって、前記基材のうち、少なくとも前記魚肉に接する部分に、ヘリコスティラム属、タムニディウム属、又はムコール属に属する菌を備える方法である。
前記基材の材質がレーヨン又は木綿であってもよい。
本発明の第3態様に係る魚肉の輸送方法は、魚肉に基材を接触させた状態で、0℃以上6℃以下で冷蔵する魚肉の輸送方法であって、前記基材のうち、少なくとも前記魚肉に接する部分に、ヘリコスティラム属、タムニディウム属、又はムコール属に属する菌を備える方法である。
本発明の第4態様に係る魚肉の変色抑制方法は、魚肉に基材を接触させた状態で、0℃以上6℃以下で冷蔵する魚肉の変色抑制方法であって、前記基材のうち、少なくとも前記魚肉に接する部分に、ヘリコスティラム属、タムニディウム属、又はムコール属に属する菌を備える方法である。
本発明の第5態様に係る魚肉の魚臭抑制方法は、魚肉に基材を接触させた状態で、0℃以上6℃以下で冷蔵する魚肉の魚臭抑制方法であって、前記基材のうち、少なくとも前記魚肉に接する部分に、ヘリコスティラム属、タムニディウム属、又はムコール属に属する菌を備える方法である。
本発明の第6態様に係る魚肉は、基材で表面が覆われてなる魚肉であって、前記基材のうち、少なくとも前記魚肉に接する部分に、ヘリコスティラム属、タムニディウム属、又はムコール属に属する菌を備える。
上記態様の魚肉の酸化抑制方法によれば、魚肉に含まれる各種成分(特に、脂肪)の酸化を効果的に抑制することができる。上記態様の魚肉の保存方法によれば、傷みを防ぎながら魚肉を冷蔵保存することができる。上記態様の魚肉の輸送方法によれば、傷みを防ぎながら魚肉を輸送することができる。上記態様の魚肉の変色抑制方法によれば、魚肉の変色を効果的に抑制することができる。上記態様の魚肉の魚臭抑制方法によれば、魚臭の発生を効果的に抑制することができる。上記態様の魚肉によれば、傷みが少なく、変色、魚臭及び酸化が抑制された魚肉を提供することができる。
実施例3における保存14日目の菌の胞子を付着させた基材を貼り付けた試料を示す画像である。 実施例3における保存21日目の菌の胞子を付着させた基材を貼り付けた試料を示す画像である。 実施例3におけるTBARS(2-チオバルビツール酸反応性物質)アッセイの結果を示すグラフである。
≪魚肉の保存方法≫
本実施形態の魚肉の保存方法(以下、単に「本実施形態の保存方法」と略記する場合がある)は、魚肉に基材を接触させた状態で、0℃以上6℃以下で冷蔵する保存方法である。また、前記基材のうち、少なくとも前記魚肉に接する部分に、ヘリコスティラム属、タムニディウム属、又はムコール属に属する菌(以下、単に「菌」と略記する場合がある)を備える。
本実施形態の保存方法は、上記基材を魚肉に接触させて冷蔵保存することで、魚肉の傷みを防ぎながら保存することができる。また、従来の冷蔵保存では、保存期間が1日以上3日以下である。また、一般に、魚肉を10日以上冷蔵保存すると、酸化臭が酷くなり、食に適さない状態となる。これに対して、本実施形態の保存方法では、従来の保存期間を超えて生の魚本来の食感及び香味を楽しむことができる。さらに長く保存する場合には、菌により熟成された魚肉(特に、ギンダラ等)の食感及び香味を楽しむことができる。
本実施形態の保存方法では、まず、魚肉を基材に巻き付ける。魚肉は、予め、アルコールや0.1質量%以上1.0質量%以下程度の低濃度の塩化ナトリウム水溶液と接触させる等の前処理をしておいてもよい。魚肉とアルコールや塩化ナトリウム水溶液との接触方法としては、例えば、浸漬法、噴霧法等が挙げられる。
次いで、基材を接触させた魚肉を冷蔵保存する。魚肉への基材の接触方法としては、例えば、基材を魚肉の表面を覆うように巻き付ける方法や、複数枚の基材を魚肉の表面に敷き詰めて接触させる方法等が挙げられる。
保存条件としては、温度は、0℃以上6℃以下であり、0℃以上5℃以下が好ましく、0℃以上4℃以下がより好ましい。保存温度が上記範囲であることにより、菌を生育させやすく、その他の腐敗菌等の雑菌の繁殖を抑制することができる。
湿度としては、通常の冷蔵庫内の湿度であれば問題ないが、例えば40%RH以上90%以下程度とすることが好ましい。
<基材>
基材としては、菌が生育可能なものであり、酸素を透過できる(酸素透過性を有する)ものが好ましい。また、魚肉と接しても有害な成分等が染み出ることのないものであればよい。基材の形状は、取扱い易さの点で、シート状であることが好ましい。基材はシート状であることで、魚肉の表面全体を覆うことができる。
基材の材質としては、例えば、木綿、絹、麻、レーヨン、アセテート、キュプラ、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル等が挙げられる。中でも、基材の材質は、菌が着生しやすく、また安価に手に入ることから、レーヨン又は木綿が好ましい。
[菌]
基材に着生させる菌としては、ヘリコスティラム属(Helicostylum)、タムニディウム属(Thamnidium)、又はムコール属(Mucor)に属する菌である。これらの菌は、糸状菌である。一般的に、糸状菌とは、菌糸と呼ばれる管状の細胞から構成されている菌の総称である。また、菌は、基材のうち、少なくとも魚肉に接する部分に着生していればよく、基材全体に着生していてもよい。また、上記各属に属する菌を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
ヘリコスティラム属(Helicostylum)に属する菌としては、例えば、Helicostlum pulchrum、Helicostlum elegans等が挙げられる。これら菌株を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
タムニディウム属(Thamnidium)に属する菌としては、例えば、Thamnidium elegans等が挙げられる。これら菌株を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
ムコール属(Mucor)に属する菌としては、例えば、Mucor aligarensis、Mucor flavus等が挙げられる。これら菌株を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
[その他成分]
基材は、菌の他に、例えば、炭水化物、ミネラル等を含んでいてもよい。中でも、基材は、炭水化物を含むことが好ましい。炭水化物を含むことにより、菌が繁殖するための栄養分とすることができ、脂肪分の多い部位等の菌が繁殖しにくい魚肉であっても、効率的に菌を繁殖することができ、魚肉を安定的に保存させることができる。
炭水化物としては、菌が細胞内に取り込むことができるものであればよく、例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、糖アルコール類等が挙げられる。単糖類としては、例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース等が挙げられる。二糖類としては、例えば、ラクトース、マルトース、スクロース等が挙げられる。オリゴ糖類としては、例えば、ラフィノース、マルトトリオース、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖等が挙げられる。多糖類としては、例えば、デンプン、セルロース、グリコーゲン等が挙げられる。糖アルコール類としては、例えば、グリセロール、エリトリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等が挙げられる。
また、ミネラルとしては、例えば、マグネシウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン等が挙げられる。
<魚肉>
本明細書において、「魚肉」とは、魚介類の可食部を意味する。魚介類としては、例えば、魚類、貝類、水産動物類、海洋哺乳類等が挙げられる。
魚類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、降河回遊魚類、遡河性魚類、淡水性両側回遊魚類、海水性両側回遊魚類、海水魚類等が挙げられる。降河回遊魚類としては、例えば、ウナギ等が挙げられる。遡河性魚類としては、例えば、サケ、マス、シシャモ、カワヤツメ等が挙げられる。淡水性両側回遊魚類としては、例えば、アユ、ハゼ等が挙げられる。海水性両側回遊魚類としては、例えば、ボラ、アカメ等が挙げられる。海水魚類としては、例えば、ニシン科、サバ科、アジ科、シイラ科、タラ科、カレイ科、ヒラメ科、スズキ科、タイ科、ニベ科、ギンダラ科、ネズミザメ上目、ツノザメ上目等に属する魚類が挙げられる。ニシン科に属する魚類としては、例えば、ニシン、イワシ等が挙げられる。サバ科に属する魚類としては、例えば、カツオ、マグロ、サバ、サワラ等が挙げられる。アジ科に属する魚類としては、例えば、アジ、ブリ等が挙げられる。シイラ科に属する魚類としては、例えば、シイラ等が挙げられる。タラ科に属する魚類としては、マダラ、スケトウダラ、コマイ等が挙げられる。カレイ科に属する魚類としては、例えば、マガレイ等が挙げられる。ヒラメ科に属する魚類としては、例えば、ヒラメ等が挙げられる。スズキ科に属する魚類としては、例えば、スズキ等が挙げられる。タイ科に属する魚類としては、例えば、マダイ等が挙げられる。ニベ科に属する魚類としては、例えば、ニベ等が挙げられる。
貝類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、シジミ科、タニシ科、イタボガキ科、ベッコウガキ科、イタヤガイ科、フネガイ科、マルスダレガイ科、バカガイ科、ミミガイ科、サザエ科等に属する貝類が挙げられる。フネガイ科に属する貝類としては、例えば、アカガイ、サルボウガイ(モガイ)等が挙げられる。マルスダレガイ科に属する貝類としては、例えば、ハマグリ、アサリ等が挙げられる。ミミガイ科に属する貝類としては、例えば、アワビ等が挙げられる。
水産動物類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、軟体動物類、甲殻類、棘皮動物類、カメ目に属する水産動物類等が挙げられる。軟体動物類としては、例えば、イカ、タコ等が挙げられる。甲殻類としては、例えば、エビ、カニ、ザリガニ等が挙げられる。棘皮動物類としては、例えば、ウニ、ナマコ、ヒトデ等が挙げられる。
海洋哺乳類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トド、イルカ、クジラ等が挙げられる。
中でも、本実施形態の保存方法は、魚肉の供給の点から、マグロ、カジキ、カツオ、ブリ、タラ、ギンダラ等の、トリミング後1.0kg以上の可食部が確保可能な大型の魚類に好適である。本実施形態の保存方法によれば、これら大型の魚類を生(非加熱)の状態で品質を保ちながら冷蔵保存することができる。
また、魚介類は、天然のものであっても、養殖されたものであってもよい。
また、魚肉の加工形状としては、ラウンド、セミドレス、ドレス、センターカット、フィレー、ロイン、ハラミ、切り身、刺身(盛り合わせたものを除く)、むき身及びそれらを冷凍状態から解凍したものを包含する。中でも、身(特に、胴体の骨の周りの肉)の部分に、基材に着生している菌を直接的に接触させることで、本明細書で開示されている効果が顕著となることから、セミドレス、ドレス、センターカット、フィレー、ロイン、ハラミ、切り身、刺身(盛り合わせたものを除く)、むき身又はそれらを冷凍状態から解凍したものが好ましい。
なお、ラウンド、セミドレス、ドレス、センターカット、フィレー、ロイン、ハラミは、主に魚類の加工形状を示すものである。「ラウンド」とは、加工せずにそのままの状態の魚類を指す。「セミドレス」とは、内臓を取り除いた状態の魚類を指す。「ドレス」とは、頭と内臓を取り除いた状態の魚類を指す。「センターカット」とは、肺骨部分でドレスを左右に開いた状態の魚類を指す。「フィレー」とは、ドレスから尾、ヒレ及び中骨を除いた状態の魚類を指す。「ロイン」とは、ドレスのうち背側の部分からなる魚類を指す。「ハラミ」とは、ドレスのうち腹側の部分からなる魚類を指す。
また、「切り身」とは、規格グラム数に切り分けられた状態の魚介類を指す。「刺身」とは、生のまま薄く切り分けられた状態の魚介類を指す。
また、本実施形態の保存方法では、ヒスチジンを多く含むことが知られている魚類、例えば、マグロ、カジキ、カツオ、サバ、イワシ、サンマ、ブリ、アジ等において、保存期間中(10日から好ましくは28日)におけるヒスタミンの生産を、菌が着生している表面を数ミリから1cm程度トリミング後の魚肉において抑制することができる。これは、菌が優位に増殖しており、ヒスタミン産生菌の増殖が抑えられているためであると推察される。
本実施形態の保存方法によって保存された魚肉は、菌が着生している表面を数ミリから1cm程度トリミングすることで、食することができる。
<基材の製造方法>
基材の製造方法としては、例えば、特許文献1に記載の方法が挙げられ、具体的には、以下に示すとおりである。
まず、菌の胞子の懸濁液を調製し(懸濁液調製工程)、該懸濁液と、適当な大きさの基材とを接触させて、菌を基材に付着させる(付着工程)。温度は、室温(例えば、20℃以上30℃以下)であることが好ましい。接触時間は基材の大きさによって、適宜調整することができる。また、懸濁液は、菌の栄養分となり得る成分(例えば、炭水化物、ミネラル等)を含んでいてもよい。また、基材に霧吹き等を用いて、懸濁液を噴霧する方法により、菌を着生させてもよいが、基材に菌を均一に着生させるために、懸濁液に基材を浸す方法が好ましい。続いて、乾燥機を用いて、菌を着生させた基材を乾燥させる(乾燥工程)ことにより、菌を着生させた基材を得ることができる。乾燥温度及び乾燥時間についても、基材の大きさによって、適宜調整することができる。
≪魚肉の輸送方法≫
本実施形態の魚肉の輸送方法(以下、単に「本実施形態の輸送方法」と略記する場合がある)は、魚肉に基材を接触させた状態で、0℃以上6℃以下で冷蔵する輸送方法である。また、前記基材のうち、少なくとも前記魚肉に接する部分に、ヘリコスティラム属、タムニディウム属、又はムコール属に属する菌を備える。
本実施形態の輸送方法によれば、傷みを防ぎながら魚肉を輸送することができる。
また、従来では、魚肉の輸送時には、魚肉を魚肉と同等の質量の氷水につける必要があった。これに対して、本実施形態の輸送方法では、基材を巻き付けることで、上記氷水につける必要がないため、氷水分の物流費を軽減することができる。
本実施形態の輸送方法は、マグロ等の大型の魚類に好適に用いられる。本実施形態の輸送方法によれば、大型の魚類を生(非加熱)の状態で品質を保ち、且つ、輸送コストを抑えながら海外等の長距離の輸送を可能にする。
本実施形態の輸送方法での魚肉の保存条件、用いられる基材及び菌は、上記「魚肉の保存方法」で記載されたものと同様である。
≪魚肉の酸化抑制方法≫
本実施形態の魚肉の酸化抑制方法(以下、単に「本実施形態の酸化抑制方法」と略記する場合がある)は、魚肉に基材を接触させた状態で、0℃以上6℃以下で冷蔵する酸化抑制方法である。また、前記基材のうち、少なくとも前記魚肉に接する部分に、ヘリコスティラム属、タムニディウム属、又はムコール属に属する菌を備える。
本実施形態の酸化抑制方法によれば、魚肉に含まれる各種成分(特に、脂肪)の酸化を効果的に抑制することができる。
従来、魚肉は保存期間の経過に伴い、魚肉に含まれる各種成分の酸化が進み、食に適さない状態となる。特に、魚肉に含まれる脂肪の酸化により、香味が著しく劣化する。これに対して、本実施形態の酸化抑制方法では、上記脂肪等の各種成分の酸化を効果的に抑制することで、従来の保存期間を超えて生の魚本来の食感及び香味を保つことができる。このことは、後述する実施例においても示されており、本実施形態の酸化抑制方法を用いることで、脂肪の酸化によって生成されるアルデヒド様物質(例えば、マロンジアルデヒド等)の生成量が著しく低減されることから、本実施形態の酸化抑制方法を用いた魚肉は脂肪の酸化度が低いことを発明者らは初めて明らかにしている。
魚肉の酸化を抑制する詳細なメカニズムについては不明だが、菌により魚肉に含まれる各種物質(特に、脂肪)が他の物質に代謝又は分解されることで、前記各種物質の酸化物(特に、脂肪の酸化によって生成されるアルデヒド様物質)の生成が抑制されているためであると推察される。
本実施形態の酸化抑制方法での魚肉の保存条件、用いられる基材及び菌は、上記「魚肉の保存方法」で記載されたものと同様である。
≪魚肉の変色抑制方法≫
本実施形態の魚肉の変色抑制方法(以下、単に「本実施形態の変色抑制方法」と略記する場合がある)は、魚肉に基材を接触させた状態で、0℃以上6℃以下で冷蔵する変色抑制方法である。また、前記基材のうち、少なくとも前記魚肉に接する部分に、ヘリコスティラム属、タムニディウム属、又はムコール属に属する菌を備える。
本実施形態の変色抑制方法によれば、魚肉の変色を効果的に抑制することができる。
一般に、魚肉の色は、魚介類の表皮や筋肉に存在する色素の種類に依存する。本明細書における「魚肉の変色」には、例えば、魚介類の表皮や筋肉に存在するカロテノイド系色素(アスタキサンチン、ツナキサンチン、ルテイン等)の退色、甲殻類におけるチロシンの酸化により生成されるメラニン重合体の蓄積による黒変、魚介類の筋肉に存在するミオグロビン、ヘモグロビン及びそれらの誘導の酸化による褐変(特に、赤身魚において顕著な変色)、皮下脂肪を多く含む魚介類の酸化による油焼け、魚介類における還元糖とアミノ化合物とのメイラード反応により生成されたメラノイジンの蓄積による黄褐変(特に、白身魚において顕著な変色)等が挙げられる。本実施形態の変色抑制方法によれば、これらの魚肉の変色を効果的に抑制することができる。
本実施形態の変色抑制方法は、赤身魚に特に好適である。また、白身魚においても血合い(魚類の両側面皮下の中央部を縦走する筋肉)の変色を効果的に抑制することができる。赤身魚としては、例えば、カツオ、マグロ、ブリ、アジ、イワシ、サンマ、サバ等が挙げられる。白身魚としては、例えば、タイ、タラ、ヒラメ、カレイ等が挙げられる。
本実施形態の変色抑制方法での魚肉の保存条件、用いられる基材及び菌は、上記「魚肉の保存方法」で記載されたものと同様である。
また、詳細なメカニズムは不明であるが、本実施形態の変色抑制方法を用いて、28日間等の長期間冷蔵した魚肉について、基材をはがした後、魚肉の表面を数ミリから1cm程度トリミングして、更に5日間程度0℃以上6℃以下で冷蔵した場合に、魚肉の変色が抑制された状態が保たれることを、発明者らは初めて明らかにしている。
≪魚肉の魚臭抑制方法≫
本実施形態の魚肉の魚臭抑制方法(以下、単に「本実施形態の魚臭抑制方法」と略記する場合がある)は、魚肉に基材を接触させた状態で、0℃以上6℃以下で冷蔵する魚臭抑制方法である。また、前記基材のうち、少なくとも前記魚肉に接する部分に、ヘリコスティラム属、タムニディウム属、又はムコール属に属する菌を備える。
本実施形態の魚臭抑制方法によれば、魚臭の発生を効果的に抑制することができる。
本明細書において、魚臭には、例えば、生臭さ(主な原因物質:トリメチルアミン、ピペリジン、酢酸、酪酸、吉草酸等)、酸化臭(主な原因物質:過酸化脂質等)、養殖臭等が挙げられる。なお、ここでいう「養殖臭」とは、養殖された魚介類(以下、単に「養殖魚介類」と略記する場合がある)に特有の臭いである。養殖臭の原因の一つとして、投与したエサが臭いの原因となる場合が知られている。例えば、ジオスミン(例えば、特許文献2参照)や2-メチルイソボルネオール(2-MIB)を産生する藍藻類を食べた養殖魚介類において、それらの物質が検出されることが明らかとなっている。
魚臭の発生を抑制する詳細なメカニズムについては不明だが、菌により魚肉に含まれる物質が他の物質に代謝又は分解されることで、魚臭の各原因物質の生成が抑制されているためであると推察される。
中でも、本実施形態の魚臭抑制方法は、魚臭のうち特に養殖臭を効果的に抑制することから、養殖されたものに好適である。
本実施形態の魚臭抑制方法での魚肉の保存条件、用いられる基材及び菌は、上記「魚肉の保存方法」で記載されたものと同様である。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
1.菌の準備
(1)熟成肉からの微生物のスクリーニング
(1-1)スクリーニング用培地の調製
200mLの三角フラスコに、3.9gのポテトデキストロース寒天培地(日水製薬(株)社製)及び100mLの蒸留水を加え、湯せんにより撹拌しながら加温溶解し、オートクレーブ処理(高圧蒸気滅菌処理:121℃、15分)した。続いて、オートクレーブ処理した培地を、クリーンベンチ内で15分間UV照射した後、滅菌済プラスチックシャーレ(直径90mm)に分注して、スクリーニング用のポテトデキストロース寒天(potato dextrose agar;PDA)平板培地を作製した。また、分離菌株の純粋分離に用いる培地として、0.01%のTriton X-100を含む同組成の平板培地も同様に作製した。また、分離菌株の採取及び保存用には、試験管に分注して作製したPDA培地(PDAスラント培地)を調製した。
(1-2)微生物のスクリーニング
続いて、熟成庫内の熟成肉(枝肉)から、優先的に繁殖している微生物を乾熱滅菌済みのピンセット、又は白金耳を用いて、スクリーニング用のポテトデキストロース寒天平板培地に塗布した。4℃及び15℃で3~4日培養し、生育した糸状菌様微生物を採取し、純粋分離用の平板培地に塗布した。続いて、同様に生育した微生物を分離菌株としてPDA斜面培地に採取した。また、オートクレーブ処理した20%(w/v)グリセロール溶液に胞子を懸濁したものをグリセロールストックとして-80℃で保存した。
(2)分離菌株の同定
(2-1)菌株同定用培地の調製
糸状菌様微生物の菌体回収用の培地として、200mL用の三角フラスコに、1gの酵母エキス(Difco社製)、1gのポリペプトン(日本製薬(株)社製)、2gのD-グルコース、及び80mLの蒸留水を加え、撹拌して完全に溶解した後、100mLになるよう定容した。続いて、100mLの培地を試験管に5mLずつ分注し、オートクレーブ処理したものを分離菌株の菌体回収用のPGY(Peptone,Glucose,Yeast Extract)液体培地として用いた。
また、同定実験に用いる大腸菌形質転換株用の培地として、0.5gの酵母エキス(Difco社製)、1gのポリペプトン(日本製薬(株)社製)、1gの塩化ナトリウム、及び80mLの蒸留水を加え、撹拌して溶解した。続いて、1N水酸化ナトリウム溶液でpHを6.8~7.0に調整した。続いて、100mLになるよう定容し、試験管に2mLずつ分注した。
寒天培地を作製する場合は、定容後に1.5gの寒天を加え、湯せんで溶解した。オートクレーブ処理後、寒天培地には、15分間UV照射したクリーンベンチ内で、終濃度が括弧内の濃度になるように、アンピシリンナトリウム(50μg/mL)、イソプロピル-β-D(-)-チオガラクトピラノシド(1mM)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(0.04%)を加え、滅菌済プラスチックシャーレに分注して、形質転換株獲得用のLB寒天平板培地とした。
2mLのLB液体培地は、プラスミド回収の培養の前に、終濃度が50μg/mLになるようアンピシリンナトリウムを加えてから培養に用いた。
(2-2)菌株の同定
分離菌株の同定は、以下に示した方法により、28S rRNA遺伝子の塩基配列及びInternal transcribed sequence (ITS:後述)に基づいて同定した。
(2-2-a)菌体からのDNAの調製
菌体の回収は、分離菌株を菌体回収用のPGY液体培地を用いて15℃で2日間振とう培養し、ミラクロスをセットしたブフナーロートを用いた吸引ろ過によって行った。続いて、従来の方法(参考文献:浜本牧子、「微生物の分類・同定実験法-分子遺伝学・生物学的手法を中心に-」、2.DNAの調製 2.2.酵母・糸状菌 2.2.3.小スケール法、p.26-27、シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社、2001年)に従って、菌体からDNAを抽出した。抽出されたDNAの濃度は1%アガロースゲル電気泳動により確認した。サイズマーカーはHindIIIで消化したλ-DNAを用いた。
(2-2-b)PCRによる28S rRNA遺伝子の増幅
続いて、従来の方法(参考文献:Sandhu, G.S., Kline, B.C., Stockman, L. and Roberts, G.D., “Molecular probes for diagnosis of fungal-infections.” Journal of Clinical Microbiology, 33, 2913-2919, 1995.)に従って、前記(2-2-a)で調製したDNAを鋳型として、PCR法により28S rRNA遺伝子の一部分を増幅した。プライマーとして、真菌の28S rRNA遺伝子に特異的な配列であるP1プライマー(配列番号1:5’-ATCAATAAGCGGAGGAAAAG-3’)、及びP4プライマー(配列番号2:5’-ACTCCTTGGTCCGTGTTTCA-3’)を用いた。増幅の確認は、2%(w/v)アガロースゲル電気泳動により行った。サイズマーカーは、100bp DNA ladder(Bioneer社製)を用いた。
(2-2-c)PCR増幅産物の精製
FavorPrep GEL/PCR Purification Mini Kit(FAVORGEN社製)を用いて、PCR増幅産物を精製した。続いて、以下に示したエタノール沈殿操作を行った。前記(2-2-b)で得られたPCR増幅産物に、1/10容量の3M acetate buffer (pH5.2)、2.5容量の99.5% EtOHを加え、25℃で15分間静置した後、遠心分離(15,400×g、15分、25℃)した。続いて、上清を除去し、70%エタノールを100μL加え、遠心分離(15,400×g、10分、25℃)した。続いて、上清を除去し、10分間減圧下で乾燥させた(以後、本操作を「エタノール沈殿」と呼ぶ。)。続いて、得られた沈殿物を4μLのTE buffer(10mM Tris-HCl(pH8.0)、1mM EDTA)に溶解した。そのうち、1μLを2%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、精製されたPCR増幅産物の回収を確認した。
(2-2-d)ベクターと精製PCR増幅産物のライゲーション
精製PCR増幅産物及びpGEM T-Easy Vector Systems I(Promega社製)を用いて、12℃で1晩インキュベートし、ライゲーション反応を行った。
(2-2-e)大腸菌の形質転換及びプラスミドの回収
ECOS(登録商標) Competent E. coli DH5α(ニッポンジーン社製)を製品マニュアルに従い、前記(2-2-d)で調製したライゲーション反応液を用いて形質転換した。続いて、得られた形質転換株をLB寒天平板培地で37℃、20時間培養した。続いて、生育したコロニーを滅菌した爪楊枝を用いて2mLのLB液体培地に植菌し、37℃で16時間振とう培養した。続いて、従来の方法(参考文献:Sambrook, J. and Russell, D. W., Molecular cloning: a laboratory manual, 3rd ed., “Preparation of plasmid DNA by Alkaline Lysis with SDS: Minipreparation”, p. 1.32-1.34, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001.)に従って、アルカリ溶菌法によりプラスミドDNAを回収した。続いて、回収したプラスミドDNAを、0.2μLのRNase A溶液(10mg/mL、Sigma-Aldrich社製)を含む40μLのTE bufferに溶解した。続いて、37℃で5分間インキュベートした後、そのうち、1μLを1%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、目的サイズのプラスミドDNAの回収を確認した。サイズマーカーとしてHindIIIで消化したλ-DNAを用いた。
(2-2-f)DNAシークエンシング
続いて、前記(2-2-e)で回収したプラスミドDNAをFavorPrep GEL/PCR Purification Mini Kit(FAVORGEN社製)を用いて精製した。精製したプラスミドDNA溶液のうち、1μLのサンプルを1%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、プラスミドDNAの回収を確認した。続いて、残りの精製プラスミドDNAのうち、4μLをシークエンシングに用いた。BigDye(登録商標) Terminator v3.1 Cycles Sequencing Kit(Applied Biosystems社製)を用いて、サイクルシークエンシングを行った。まず、プラスミドDNAをPCR反応により増幅した。PCR反応条件は、96℃で1分間加熱した後、96℃で10秒間、50℃で5秒間、60℃で4分間のサイクルを35回繰り返した。続いて、PCR増幅産物を含む反応液をエタノール沈殿し、15μLのHidi formamide(Applied Biosystems社製)に溶解し、得られた試料を3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)に供し、DNA配列を得た。得られたデータをChromas LITE version 2.01(Technelysium Pty社製)、及びGENETYX(登録商標)-WIN version 3.1.0(Software Development社製)を用いて解析した。決定した塩基配列と同一性を示す配列を、fastaプログラムを用いて、European Molecular Biology Laboratory(http://www.ebi.ac.uk/embl/)のデータベースを検索した。同一性の高さに基づいて、分離菌株を同定した。
形態及び28S rRNA遺伝子の塩基配列の解析結果から、ケカビ目ケカビ科(Mucoraceae)のいくつかの属種の菌株を高い同一性を示した。同一性が高かった候補の属種から、分離菌のうちJW-1株と名付けた菌株がどの属種かを同定するため、Internal transcribed sequence(ITS)領域を用いて同定を進めた。参考文献(Walther et al., “DNA barcoding in Mucorales: an inventory of biodiversity”, Persoonia, 30, 2013: 11-47)に示されている属種を基に候補株を選定した。具体的な方法としては、前記菌体からのDNAの調製、PCR、PCR増幅産物の精製、DNAシークエンシングから成るダイレクトシークエンス法により行った。PCRに用いたプライマーは、高い同一性を示した菌株のITS領域の塩基配列の増幅に特異的なプライマーを作製(JW-ITS-F(配列番号3):5’-CAACGGATCTCTTGGTTCTC-3’、JW-ITS-R(配列番号4):5’-CCCGCCTGATTTCAGATC-3’)し、使用した。結果を表1に示す。
Figure 0007349685000001
表1から、JW-1株がデータベースに登録されているヘリコスティラム属(Helicostylum)の両種との同一性が99.5%以上(Helicostlum pulchrum CBS 259.68(Accession no.JN206052)と同一性が100%)、タムニジウム属(Thamnidium)及びムコール属(Mucor)との同一性が94.5%以下であることが判明した。このことから、JW-1株をヘリコスティラム属(Helicostylum)に含まれる菌株であると同定した。
2.基材の準備
1.で得られたヘリコスティラム属に属する菌(JW-1株)を用いた。予め培養した菌及び滅菌水を用いて、菌の胞子懸濁液(胞子濃度:8.5×10個/mL)を調製した。次いで、調製した胞子懸濁液にオートクレーブしたレーヨン製の布を浸し、軽く振とうした。続いて、浸した布を殺菌済みのタッパーに移し、通風乾燥機を用いて40℃で一晩乾燥させて、基材を得た。
3.魚肉の保存
魚肉として、7.0kgのマグロ(養殖)のフィレー(背の皮を残した状態のもの)を用いた。マグロの表面に「2.」で準備した基材を巻き付けた。次いで、基材の上からミートラッパー(レーヨン製)をさらに巻き付けた。基材及びミートラッパーを巻き付けたマグロを4℃の冷蔵庫(無風環境下、除湿環境下)で25日間保存した。なお、マグロからドリップが多く出る場合には、ミートラッパーを定期的に巻き直した。保存後、基材を取り外した魚肉は、鮮やかな赤色が保たれ、変色が抑制される傾向が見られた。養殖臭もせず、ねっとりとした食感であった。また、熟成状態特有のナッツ臭がした。
[実施例2]
約0.5kgの切り身に小分けしたマグロ(養殖)の背の皮を取った状態で、実施例1の「2.」と同様の方法で準備した基材及びミートラッパーを巻き付けて4℃の冷蔵庫(無風環境下、80~90%RH)で保存し、5日ごと20日目まで、基材を取り外した後に観察した。その結果、各切り身において、鮮やかな赤色が保たれ、変色が抑制される傾向が見られた。養殖臭もせず、ねっとりとした食感であった。また、20日目の切り身については、熟成状態特有のナッツ臭がした。
以上のことから、菌を備える基材を魚肉の表面に巻き付けて保管することで、傷み、特に、魚肉の変色及び魚臭の発生を防ぎながら、魚肉を冷蔵保存できることが明らかとなった。
[実施例3]
1.魚肉の前処理
試料として、サーモン(ノルウェー産、2枚おろし)を使用した。まず、2枚に開かれた魚体を1枚ずつに分け、頭部と尾に近い部分を切り落とし、残りの部分を実験に用いた。片身をそれぞれ4等分し、各切り身に質量の5%相当の食塩を腹側に振りかけ、10分間放置した。食塩を水道水で洗い流した後、ぬれた状態のままで腹側に70%エタノールを噴霧し、5分間放置した。この切り身を保存試験に供した。
2.魚肉の保存
前処理したそれぞれ片身の間で同じ位置にあたる切り身に対して、それぞれ0日目、7日目、14日目及び21日目の試料とした。一方の切り身には、実施例1の「2.」と同様の方法で準備した基材を腹側にのみ貼り付け、対応する他方の切り身には、オートクレーブ滅菌(121℃、15分)したミートラッパー(基材に菌の胞子を付着させていないもの:コントロール)を同様に貼り付けた。それらの試料をそれぞれ分けて業務用恒温恒湿冷蔵庫(4℃、湿度80%以上90%以下)内で保存した。0日目用の切り身は、そのまま真空パックして-80℃の冷凍庫で保管した。保存後の切り身は、基材又はミートラッパーを除いた後、同様に真空パックして-80℃で保管した。
3.酸化物生成量の測定
脂肪の酸化によって生成するアルデヒド様物質をTBARS(2-チオバルビツール酸反応性物質)アッセイで定量することで、魚肉の酸化度を評価した。-80℃で保存していた各試料を4℃で自然解凍し、腹側の試料1gを分析に用いる試料とした。スクリューキャップ付き試験管に、1gの試料及び9mLの1.15% KCl溶液を加え、氷中でホモジナイズした。回収した0.5mLの粉砕物含有溶液に0.3mLの1%リン酸、1.0mLの0.67% チオバルビツール酸(TBA)溶液を加えて混合し、沸騰浴中で45分間インキュベートすることでアルデヒド-TBA複合体の生成を進行させた後、氷水中で冷却した。この試料に4mLのn-ブタノールを加え、10分間激しく撹拌することでアルデヒド-TBA複合体を抽出した。試料を3,000rpm、室温の条件下で10分間遠心分離して水相とn-ブタノール相に分離した。n-ブタノール相を回収し、これに含まれるアルデヒド-TBA複合体の535nm及び520nmにおける吸光度を測定した。MADの定量は、10μMの1,1,3,3,-テトラエトキシプロパン/メタノール溶液中で生じるマロンジアルデヒド(MAD)を標準物質として同様に吸光度の測定を行い、以下の式を用いて算出した。なお、式中、fは「試料の535nm及び520nmにおける吸光度の差(A535-A520)」であり、Fは「標準物質の535nm及び520nmにおける吸光度の差(A535-A520)」である。結果を表2及び図3に示す。表2及び図3において、「基材」とは、菌の胞子を付着させた基材を貼り付けた試料であり、「コントロール」はミートラッパー(基材に菌の胞子を付着させていないもの)を貼り付けた試料である。
MADを標準物質とした場合のアルデヒド様物質の生成量(nmol/gサーモン)=f/F×10/0.5×9
Figure 0007349685000002
4.結果
菌の胞子を付着させた基材を貼り付けた試料では、7日目にケカビの増殖が確認され、気中菌糸の成長も確認された(図示せず)。14日目には切り身全体を覆うようにケカビの増殖が進行し(図1参照)、21日目にはかなり毛足の長い気中菌糸の発達が確認できた(図2参照)。また香りについては、時間の経過に伴った大きな変化は観察されなかった。一方、ミートラッパーを貼り付けたコントロール試料では、7日目に脂肪の酸化が原因と思われる異臭が発生し、21日目には腐敗菌と思われるカビ様の微生物の増殖が観察された。
表2及び図3から、ミートラッパーを貼り付けたコントロール試料では、有意にアルデヒド様物質の生成を指標とする酸化物量が増加したのに対し、菌の胞子を付着させた基材を貼り付けた試料では、21日間の保存では酸化物の増加は認められなかった。
本実施形態の保存方法によれば、傷みを防ぎながら魚肉を冷蔵保存することができる。本実施形態の輸送方法によれば、傷みを防ぎながら魚肉を輸送することができる。本実施形態の変色抑制方法によれば、魚肉の変色を効果的に抑制することができる。本実施形態の魚臭抑制方法によれば、魚臭の発生を効果的に抑制することができる。本実施形態の酸化抑制方法によれば、魚肉の酸化を効果的に抑制することができる。本実施形態の魚肉は、傷みが少なく、変色、魚臭及び酸化が抑制されている。

Claims (3)

  1. 魚肉に基材を接触させた状態で、0℃以上6℃以下で冷蔵する魚肉の酸化抑制方法であって、
    前記基材のうち、少なくとも前記魚肉に接する部分に、ヘリコスティラム属、又はタムニディウム属に属する菌を備え
    前記ヘリコスティラム属に属する菌はHelicostylum pulchrum又はHelicostylum elegansであり、
    前記タムニディウム属に属する菌はThamnidium elegansである、酸化抑制方法。
  2. 魚肉に基材を接触させた状態で、0℃以上6℃以下で冷蔵する魚肉の変色抑制方法であって、
    前記基材のうち、少なくとも前記魚肉に接する部分に、ヘリコスティラム属、又はタムニディウム属に属する菌を備え、
    前記ヘリコスティラム属に属する菌はHelicostylum pulchrum又はHelicostylum elegansであり、
    前記タムニディウム属に属する菌はThamnidium elegansである、変色抑制方法。
  3. 魚肉に基材を接触させた状態で、0℃以上6℃以下で冷蔵する魚肉の魚臭抑制方法であって、
    前記基材のうち、少なくとも前記魚肉に接する部分に、ヘリコスティラム属、又はタムニディウム属に属する菌を備え、
    前記ヘリコスティラム属に属する菌はHelicostylum pulchrum又はHelicostylum elegansであり、
    前記タムニディウム属に属する菌はThamnidium elegansである、魚臭抑制方法。
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