以下、本発明を詳細に説明する。
<多官能フェノール樹脂>
本発明の多官能フェノール樹脂は、芳香環上に置換基を有していてもよいナフトール構造と、芳香環上の置換基として炭素原子数4~8のアルキル基を有するカテコール構造とが、置換基を有していてもよいメチレン基を介して結合してなることを特徴とする。
前記多官能フェノール樹脂は、1分子中にフェノール性水酸基を3個以上有するものであり、また、ベンゼン環とナフタレン環とを有することから、硬化物における架橋密度が向上するとともに、ベンゼン環上の水酸基が隣接することによって、水素結合が働きやすくなることから、弾性率も向上すると考えられる。
前記ナフタレン環上には、水酸基以外の置換基を有していてもよいが、硬化物における架橋密度が向上し、より耐熱性に優れる観点からは、置換基を有していないことが好ましい。また、原料入手の容易性、反応性の観点からは、ベンゼン環とナフタレン環との連結部は、置換基を有さないメチレン基であることがより好ましい。
前記多官能フェノール樹脂としては、例えば、下記構造式(1)で表されるものを挙げることができる。
〔構造式(1)中、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基であり、R1は水素原子または炭素原子数4~8のアルキル基であり、少なくとも一つは炭素原子数4~8のアルキル基である。R2は水素原子またはアルキル基であり、nは0~3の整数であり、mは0~6の整数であり、lは1~3の整数であり、n+lは4である。複数あるR1、R2は同一でも異なっていてもよい。〕
なお、前記式(1)において、ナフタレン環と置換基を有していてもよいメチレン基との結合位置は任意であり、水酸基を有する環上であっても、水酸基を有さない環上で結合していてもよいことを示すものであり、lが2以上の場合、同一構造であっても異なる構造であってもよい。
前記構造式(1)中のRは、水素原子、アルキル基、またはアリール基であり、アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基等が挙げられ、アリール基としては例えば、フェニル基、アルコキシフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。後述する製法において、原料入手の容易性、および反応性の観点、並びに得られる硬化物の耐熱性の観点からはRは水素原子、メチル基、エチル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
また前記構造式(1)中のR1は水素原子または炭素原子数4~8のアルキル基であり、少なくとも一つは炭素原子数4~8のアルキル基であるが、得られる硬化物の耐熱性と弾性率とのバランスの観点から、ベンゼン環上の置換基として炭素原子数4~8のアルキル基を一つ有することが好ましく、アルキル基としてはブチル基であることが好ましく、特にt-ブチル基であることが最も好ましい。また、反応性の観点から、水酸基に対してパラ位の何れかに結合していることが好ましい。
更に、前記構造式(1)中のR2は水素原子またはアルキル基であり、アルキル基としては、炭素原子数1~6のアルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基が挙げられる。後述する製法において、原料入手の容易性、および反応性の観点、並びに得られる硬化物の耐熱性と弾性率のバランスの観点からは、ナフタレン環上に置換基がないことが好ましいため、水素原子であってかつmが6であることが特に好ましい。
また、前記構造式(1)中のlは、ベンゼン環と結合するナフタレン環の数を示すものであり、1~3の整数であるが、後述する多官能エポキシ樹脂の前駆体として用いる場合には、lが1の化合物の含有率が高いものであることが好ましい。
<多官能エポキシ樹脂>
本発明の多官能エポキシ樹脂は、芳香環上に置換基を有していてもよいナフトール構造と、芳香環上の置換基として炭素原子数4~8のアルキル基を有するカテコール構造とが、置換基を有していてもよいメチレン基を介して結合してなる多官能フェノール樹脂と、エピハロヒドリンとの反応物であることを特徴とする。
前記多官能エポキシ樹脂は、1分子中にグリシジルエーテル基を2個以上有するものであり、また、ベンゼン環とナフタレン環とを有することから、硬化物における架橋密度が向上するとともに、近接するグリシジルエーテル基と硬化剤との硬化反応時に生成する水酸基も近接する。その結果として、水素結合がより強く作用し、硬化物の弾性率も向上すると考えられる。
前記ナフタレン環上には、グリシジルエーテル基以外の置換基を有していてもよいが、硬化物における架橋密度が向上し、より耐熱性に優れる観点からは、置換基を有していないことが好ましい。また、原料入手の容易性、反応性の観点からは、ベンゼン環とナフタレン環との連結部は、置換基を有さないメチレン基であることがより好ましい。
前記多官能エポキシ樹脂としては、例えば、下記構造式(2)で表されるものを挙げることができる。
〔構造式(2)中、Gはグリシジル基であり、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基であり、R1は水素原子または炭素原子数4~8のアルキル基であり、少なくとも一つは炭素原子数4~8のアルキル基である。R2は水素原子またはアルキル基であり、nは0~3の整数であり、mは0~6の整数であり、lは1~3の整数であり、n+lは4である。複数あるR1、R2は同一でも異なっていてもよい。〕
なお、前記式(2)において、ナフタレン環と置換基を有していてもよいメチレン基との結合位置は任意であり、水酸基を有する環上であっても、水酸基を有さない環上で結合していてもよいことを示すものであり、lが2以上の場合、同一構造であっても異なる構造であってもよい。
前記構造式(2)中のRは、水素原子、アルキル基、またはアリール基であり、アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基等が挙げられ、アリール基としては例えば、フェニル基、アルコキシフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。後述する製法において、原料入手の容易性、および反応性の観点、並びに得られる硬化物の耐熱性の観点からはRは水素原子、メチル基、エチル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
また前記構造式(1)中のR1は水素原子または炭素原子数4~8のアルキル基であり、少なくとも一つは炭素原子数4~8のアルキル基であるが、得られる硬化物の耐熱性と弾性率とのバランスの観点から、ベンゼン環上の置換基として炭素原子数4~8のアルキル基を一つ有することが好ましく、アルキル基としてはブチル基であることが好ましく、特にt-ブチル基であることが最も好ましい。また、反応性の観点から、グリシジルエーテル基に対してパラ位の何れかに結合していることが好ましい。
更に、前記構造式(2)中のR2は水素原子またはアルキル基であり、アルキル基としては、炭素原子数1~6のアルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基が挙げられる。後述する製法において、原料入手の容易性、および反応性の観点、並びに得られる硬化物の耐熱性と弾性率のバランスの観点からは、ナフタレン環上に置換基がないことが好ましいため、水素原子であってかつmが6であることが特に好ましい。
また、前記構造式(2)中のlは、ベンゼン環と結合するナフタレン環の数を示すものであり、1~3の整数であるが、後述する多官能エポキシ樹脂を硬化性樹脂組成物として用いる際の取り扱い性、硬化性の観点からは、lが1の化合物の含有率が高いものであることが好ましい。
前記多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量としては、得られる硬化物の耐熱性により優れる観点から165~300g/eqの範囲であることかが好ましく、特に165~250g/eqの範囲であることが好ましい。
また、前記多官能エポキシ樹脂の150℃における溶融粘度としては、取り扱い容易性の観点から、0.1~2dPa・sの範囲であることかが好ましく、特に0.1~1dPa・sの範囲であることが好ましい。
本発明での多官能エポキシ樹脂は、中間体の多官能フェノール樹脂とエピハロヒドリンとを反応させて水酸基をグリシジルエーテル化するものであるが、この反応時に、副反応が起こり、カテコール構造における隣接する水酸基同士、あるいは、ベンゼン環上の水酸基とナフタレン環上の水酸基とが環化することがある。このような副生成物を含むことにより、グリシジルエーテル化反応後のエポキシ樹脂がより低粘度になることがあり、また得られる硬化物における弾性率の向上にも寄与するため、副生成物を含んだままで樹脂組成物とすることも好ましい。
前記の環化によって得られる化合物としては、例えば、下記構造式で表されるものを挙げることができる。
<多官能フェノール樹脂の製造方法>
本発明の多官能フェノール樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではないが、ナフトール化合物とアルキルカテコール化合物とアルデヒド化合物とを反応させる方法があげられる。
前記ナフトール化合物としては、置換基を有していてもよいα-ナフトール、β-ナフトール、各種ジヒドロキシナフタレンが挙げられるが、反応性の観点から、無置換のβ-ナフトールを用いることが好ましい。
またアルキルカテコール化合物としては、例えば、n-ブチルカテコール、sec-ブチルカテコール、t-ブチルカテコール、4-オクチルカテコール、3,5-ジ-t-ブチルカテコールなどが挙げられ、1種のみからなるものであっても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、得られる硬化物の弾性率の観点から、より嵩高い構造のアルキル基を有していることが好ましく、t-ブチルカテコール、3,5-ジ-t-ブチルカテコールを用いることが好ましく、t-ブチルカテコールが最も好ましい。
更にアルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、テトラオキシメチレン、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、反応性に優れることからホルムアルデヒドを用いることが好ましい。ホルムアルデヒドは水溶液の状態であるホルマリンとして用いても、固形の状態であるパラホルムアルデヒドとして用いても、どちらでも良い。
前記原料の使用割合としては、分子量分布制御の観点から、ナフトール化合物とアルキルカテコール化合物の合計モルに対して、アルデヒド化合物を0.90~1.20モル倍の範囲で用いることが好ましく、特に1.00~1.10モル倍の範囲で用いることが好ましい。
また、ナフトール化合物とアルキルカテコール化合物との使用割合としては、高耐熱性化と高弾性率化の観点から、モル比でナフトール化合物/カテコール化合物=7/3~3/7の範囲で用いることが好ましい。
前記反応は、通常のノボラック化反応と同様の条件で実施することができる。より効率よく目的の化合物が得られる観点からは、溶剤としては、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等を用いることができる。溶剤は、原料のナフトール化合物、アルキルカテコール化合物の総質量に対し0.1~10質量倍の範囲で用いることが好ましい。
更に、反応触媒としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機アルカリ類があげられる。触媒の使用量としては、ナフトール化合物とカテコール化合物の合計モルの0.02~0.50倍モルの範囲であることが好ましい。
反応温度としては、60~120℃の範囲であることが好ましく、反応で生成する水は留去しながら実施することが好ましい。反応時間は、通常1~16時間であり、2~12時間であることがより好ましい。
前記反応によって、前記構造式(1)で表される多官能フェノール樹脂が得られるが、その他副生成物を含むことがある。この副生成物を除去して、前記構造式(1)で表される化合物のみを取り出して用いてもよいが、副生成物を含んだまま後述する硬化性樹脂組成物として用いる、あるいは後述する多官能エポキシ樹脂の前駆体として用いることもできる。また、前記構造式(1)中のlが1の含有率は、前述の手法で、通常60質量%以上で得ることができ、特に70質量%以上の高含有率で含むものを得ることができる。
<多官能エポキシ樹脂の製造方法>
本発明の多官能エポキシ樹脂は、前述の方法で得られた多官能フェノール樹脂をエポキシ化する方法により得ることができる。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のフェノール類を併用してもよい。
本発明の多官能エポキシ樹脂の製造方法は、前記のように本発明の多官能フェノール樹脂をエピハロヒドリンと反応させてエポキシ化するエポキシ樹脂の製造方法であり、エポキシ化の方法は公知技術を適宜適用することができる。
例えば、エピハロヒドリンは、多官能フェノール樹脂に含まれる水酸基1モルに対し、1~10モルを添加し、更に、原料の水酸基1モルに対し0.9~2.0モルの塩基性触媒を一括添加または徐々に添加しながら20~120℃の温度で0.5~10時間反応させる方法が挙げられる。この塩基性触媒は固形でもその水溶液を使用してもよく、水溶液を使用する場合は、連続的に添加すると共に、反応混合物中から減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピハロヒドリン類を留出せしめ、更に分液して水は除去しエピハロヒドリン類は反応混合物中に連続的に戻す方法でもよい。
なお、工業生産を行う際、エポキシ樹脂生産の初バッチでは仕込みに用いるエピハロヒドリン類の全てが新しいものであるが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリン類と、反応で消費される分で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリン類とを併用することが好ましい。この際、グリシドール等、エピクロルヒドリンと水、有機溶剤等との反応により誘導される不純物を含有していても良い。この時、使用するエピハロヒドリンは特に限定されないが、例えば、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β-メチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。これらの中でも、工業的に入手が容易なことからエピクロルヒドリンが好ましい。
また、前記塩基性触媒は、具体的には、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特にエポキシ樹脂合成反応の触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10質量%~55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。また、有機溶媒を併用することにより、エポキシ樹脂の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4-ジオキサン、1、3-ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調製するために適宜二種以上を併用してもよい。
続いて、前述のエポキシ化反応の反応物を水洗後、加熱減圧下、蒸留によって未反応のエピハロヒドリンや併用する有機溶媒を留去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、得られたエポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ樹脂に対して0.1質量%~3.0質量%の範囲が好ましい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより高純度のエポキシ樹脂を得ることができる。このような方法により、前記構造式(2)中のlが1の含有率は、前述の手法で、通常50質量%以上で得ることができ、特に60質量%以上の高含有率で含むものを得ることができる。
<多官能フェノール樹脂を含有する硬化性樹脂組成物>
本発明の多官能フェノール樹脂は、水酸基と反応する官能基を有する、その他の化合物、すなわち硬化剤(X)を併用することで、硬化性樹脂組成物とすることができる。硬化性樹脂組成物は、接着剤や塗料、フォトレジスト、プリント配線基板、半導体封止材料等の各種の電気・電子部材用途に好適に用いることが出来る。
前記硬化剤(X)としては、例えば、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの基で置換されたメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、レゾール樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基等の2重結合を含む化合物、酸無水物、オキサゾリン化合物等が挙げられる。
前記メラミン化合物は、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1~6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1~6個がアシロキシメチル化した化合物等が挙げられる。
前記グアナミン化合物は、例えば、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物等が挙げられる。
前記グリコールウリル化合物は、例えば、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル等が挙げられる。
前記ウレア化合物は、例えば、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(ブトキシメチル)尿素及び1,1,3,3-テトラキス(メトキシメチル)尿素等が挙げられる。
前記レゾール樹脂は、例えば、フェノール、クレゾールやキシレノール等のアルキルフェノール、フェニルフェノール、レゾルシノール、ビフェニル、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール性水酸基含有化合物と、アルデヒド化合物とをアルカリ性触媒条件下で反応させて得られる重合体が挙げられる。
前記エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ジグリシジルオキシナフタレン、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、1,1-ビス(2,7-ジグリシジルオキシ-1-ナフチル)アルカン、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、リン原子含有エポキシ樹脂、フェノール性水酸基含有化合物とアルコキシ基含有芳香族化合物との共縮合物のポリグリシジルエーテル等、あるいは本発明の多官能エポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の中でも、特に難燃性に優れる硬化物が得られる点においては、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましく、誘電特性に優れる硬化物が得られる点においては、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂が好ましい。
前記イソシアネート化合物は、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
前記アジド化合物は、例えば、1,1’-ビフェニル-4,4’-ビスアジド、4,4’-メチリデンビスアジド、4,4’-オキシビスアジド等が挙げられる。
前記アルケニルエーテル基等の2重結合を含む化合物は、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2-プロパンジオールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
前記酸無水物は例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(イソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物等の芳香族酸無水物;無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水ドデセニルコハク酸、無水トリアルキルテトラヒドロフタル酸等の脂環式カルボン酸無水物等が挙げられる。
これらの中でも、硬化性や硬化物における耐熱性に優れる硬化性樹脂組成物となることから、エポキシ樹脂が特に好ましい。
更に前記エポキシ樹脂を使用する場合には、エポキシ樹脂用硬化剤を配合してもよい。
ここで用いることのできるエポキシ樹脂用硬化剤としては、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノール系化合物などの各種の公知のエポキシ樹脂用の硬化剤が挙げられる。
具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェニロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール性水酸基含有化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール性水酸基含有化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール性水酸基含有化合物)等の多価フェノール性水酸基含有化合物が挙げられる。
<多官能エポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物>
本発明の多官能エポキシ樹脂は、エポキシ基と反応性を有する基を有する種々の硬化剤(Y)を併用することで、硬化性樹脂組成物とすることができる。硬化性樹脂組成物は、接着剤、塗料、複合材、フォトレジスト、プリント配線基板、半導体封止材料等の各種の用途に好適に用いることが出来る。
ここで用いることのできる硬化剤(Y)としては、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノール系化合物などの各種の公知のエポキシ樹脂用の硬化剤が挙げられる。
具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェニロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール性水酸基含有化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール性水酸基含有化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール性水酸基含有化合物)等の多価フェノール性水酸基含有化合物が挙げられる。更に本発明の多官能フェノール樹脂を用いても良い。
更に、本発明の硬化性樹脂組成物には、前記で規定するエポキシ樹脂以外のその他のエポキシ樹脂を本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。
前記その他のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の中でも、特に難燃性に優れる硬化物が得られる点においては、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましく、誘電特性に優れる硬化物が得られる点においては、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂が好ましい。また、その他のエポキシ樹脂を併用する場合、本発明のエポキシ樹脂とその他のエポキシ樹脂との合計100質量部に対し、本発明のエポキシ樹脂を30~90質量部で含むことが、本発明の効果を容易に発現することができる観点から好ましいものである。
本発明の硬化性樹脂組成物において、前記エポキシ樹脂と硬化剤(Y)との配合量は、硬化性に優れる観点より、前記エポキシ樹脂と必要により併用されるその他のエポキシ樹脂中のエポキシ基の合計1当量に対して、前記硬化剤(Y)中の活性基の合計が0.8~1.2当量となる割合であることが好ましい。
<その他の成分>
本発明において、前述のフェノール樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、エポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物のいずれにおいても、その他の熱硬化性樹脂を併用しても良い。
その他の熱硬化性樹脂としては、例えば、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン構造を有する樹脂、マレイミド化合物、活性エステル樹脂、ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、スチレンとマレイン酸無水物の共重合物などが挙げられる。前記した他の熱硬化性樹脂を併用する場合、その使用量は本発明の効果を阻害しなければ特に制限をうけないが、硬化性樹脂組成物100質量部中1~50質量部の範囲であることが好ましい。
前記シアネートエステル樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールスルフィド型シアネートエステル樹脂、フェニレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ビフェニル型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビフェニル型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、クレゾールノボラック型シアネートエステル樹脂、トリフェニルメタン型シアネートエステル樹脂、テトラフェニルエタン型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂、フェノールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトールノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型シアネートエステル樹脂、ビフェニル変性ノボラック型シアネートエステル樹脂、アントラセン型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
これらのシアネートエステル樹脂の中でも、特に耐熱性に優れる硬化物が得られる点においては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ノボラック型シアネートエステル樹脂を用いることが好ましく、誘電特性に優れる硬化物が得られる点においては、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂が好ましい。
ベンゾオキサジン構造を有する樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノールFとホルマリンとアニリンの反応生成物(F-a型ベンゾオキサジン樹脂)やジアミノジフェニルメタンとホルマリンとフェノールの反応生成物(P-d型ベンゾオキサジン樹脂)、ビスフェノールAとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジヒドロキシジフェニルエーテルとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジアミノジフェニルエーテルとホルマリンとフェノールの反応生成物、ジシクロペンタジエン-フェノール付加型樹脂とホルマリンとアニリンの反応生成物、フェノールフタレインとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジフェニルスルフィドとホルマリンとアニリンの反応生成物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
前記マレイミド化合物としては、例えば、下記構造式(i)~(iii)の何れかで表される各種の化合物等が挙げられる。
(式中Rはm価の有機基であり、α及びβはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基の何れかであり、sは1以上の整数である。)
(式中Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基の何れかであり、sは1~3の整数、tは繰り返し単位の平均で0~10である。)
(式中Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基の何れかであり、sは1~3の整数、tは繰り返し単位の平均で0~10である。)これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
前記活性エステル樹脂としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。前記活性エステル樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物又はそのハライドとヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル樹脂が好ましく、カルボン酸化合物又はそのハライドと、フェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等、又はそのハライドが挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールフタレイン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン-フェノール付加型樹脂等が挙げられる。
活性エステル樹脂として、具体的にはジシクロペンタジエン-フェノール付加構造を含む活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル樹脂等が好ましく、なかでもピール強度の向上に優れるという点で、ジシクロペンタジエン-フェノール付加構造を含む活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂がより好ましい。ジシクロペンタジエン-フェノール付加構造を含む活性エステル樹脂として、より具体的には下記一般式(iv)で表される化合物が挙げられる。
但し、式(iv)中、Rはフェニル基又はナフチル基であり、uは0又は1を表し、nは繰り返し単位の平均で0.05~2.5である。なお、樹脂組成物の硬化物の誘電正接を低下させ、耐熱性を向上させるという観点から、Rはナフチル基が好ましく、uは0が好ましく、また、nは0.25~1.5が好ましい。
更に、各種のノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン等の脂環式ジエン化合物とフェノール化合物との付加重合樹脂、フェノール性水酸基含有化合物とアルコキシ基含有芳香族化合物との変性ノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、及び各種のビニル重合体を併用してもよい。
前記各種のノボラック樹脂は、より具体的には、フェノール、フェニルフェノール、レゾルシノール、ビフェニル、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール性水酸基含有化合物と、アルデヒド化合物とを酸触媒条件下で反応させて得られる重合体が挙げられる。
前記各種のビニル重合体は、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルカルバゾール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロデセン、ポリテトラシクロドデセン、ポリノルトリシクレン、ポリ(メタ)アクリレート等のビニル化合物の単独重合体或いはこれらの共重合体が挙げられる。
これらその他の樹脂を用いる場合の配合割合は、用途に応じて任意に設定することが出来るが、本発明が奏する組成物としての流動性、加熱硬化時の成形収縮率のバランス効果がより顕著に発現することから、本発明のフェノール樹脂あるいはエポキシ樹脂100質量部に対し、その他の樹脂が0.5~100質量部となる割合であることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化促進剤を併用してもよい。硬化促進剤としてはイミダゾール、ジメチルアミノピリジンなどの3級アミン化合物;トリフェニルホスフィンなどの燐系化合物;3フッ化ホウ素、3フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体などの3フッ化ホウ素アミン錯体;チオジプロピオン酸等の有機酸化合物;チオジフェノールベンズオキサジン、スルホニルベンズオキサジン等のベンズオキサジン化合物;スルホニル化合物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これら触媒の添加量は、硬化性樹脂組成物100質量部中0.001~15質量部の範囲であることが好ましい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物に高い難燃性が求められる用途に用いる場合には、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
前記非ハロゲン系難燃剤は、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
前記リン系難燃剤は、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
前記有機リン系化合物は、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5―ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
これらリン系難燃剤の配合量としては、リン系難燃剤の種類、樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した樹脂組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合には0.1質量部~2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を用いる場合には同様に0.1質量部~10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、0.5質量部~6.0質量部の範囲で配合することがより好ましい。
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ素化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
前記窒素系難燃剤は、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
前記トリアジン化合物は、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(1)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(2)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール類と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン類及びホルムアルデヒドとの共縮合物、(3)前記(2)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂類との混合物、(4)前記(2)、(3)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
前記シアヌル酸化合物は、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した樹脂組成物100質量部中、0.05~10質量部の範囲で配合することが好ましく、0.1質量部~5質量部の範囲で配合することがより好ましい。
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
前記シリコーン系難燃剤は、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した樹脂組成物100質量部中、0.05~20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
前記無機系難燃剤は、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
前記金属水酸化物は、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
前記金属酸化物は、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
前記金属炭酸塩化合物は、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
前記金属粉は、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
前記ホウ素化合物は、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
前記低融点ガラスは、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO2-MgO-H2O、PbO-B2O3系、ZnO-P2O5-MgO系、P2O5-B2O3-PbO-MgO系、P-Sn-O-F系、PbO-V2O5-TeO2系、Al2O3-H2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した樹脂組成物100質量部中、0.05質量部~20質量部の範囲で配合することが好ましく、0.5質量部~15質量部の範囲で配合することがより好ましい。
前記有機金属塩系難燃剤は、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した樹脂組成物100質量部中、0.005質量部~10質量部の範囲で配合することが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて無機充填材を配合することができる。前記無機充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、硬化性樹脂組成物の全質量に対して20質量%以上が特に好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、この他、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
<硬化性樹脂組成物の用途>
本発明の硬化性樹脂組成物は、半導体封止材料、半導体装置、プリプレグ、プリント回路基板、ビルドアップ基板、ビルドアップフィルム、繊維強化複合材料、繊維強化樹脂成形品、導電ペースト等に適用することができる。
1.半導体封止材料
本発明の硬化性樹脂組成物から半導体封止材料を得る方法としては、前記硬化性樹脂組成物、及び無機充填剤等の配合剤とを必要に応じて押出機、ニ-ダ、ロ-ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常、溶融シリカが用いられるが、パワートランジスタ、パワーIC用高熱伝導半導体封止材として用いる場合は、溶融シリカよりも熱伝導率の高い結晶シリカ,アルミナ,窒化ケイ素などの高充填化、または溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などを用いるとよい。その充填率は硬化性樹脂組成物100質量部当たり、無機充填剤を30質量部~95質量部の範囲で用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐半田クラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。
2.半導体装置
本発明の硬化性樹脂組成物から半導体装置を得る方法としては、前記半導体封止材料を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50~200℃で2~10時間の間、加熱する方法が挙げられる。
3.プリプレグ
本発明の硬化性樹脂組成物からプリプレグを得る方法としては、有機溶剤を配合してワニス化した硬化性樹脂組成物を、補強基材(紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布など)に含浸したのち、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50~170℃で加熱することによって、得る方法が挙げられる。この時用いる樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20質量%~60質量%となるように調製することが好ましい。
ここで用いる有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、下記のようにプリプレグからプリント回路基板をさらに製造する場合には、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤を用いることが好ましく、また、不揮発分が40質量%~80質量%となる割合で用いることが好ましい。
4.プリント回路基板
本発明の硬化性樹脂組成物からプリント回路基板を得る方法としては、前記プリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1~10MPaの加圧下に170~300℃で10分~3時間、加熱圧着させる方法が挙げられる。
5.ビルドアップ基板
本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップ基板を得る方法としては、工程1~3を経由する方法が挙げられる。工程1では、まず、ゴム、フィラーなどを適宜配合した前記硬化性樹脂組成物を、回路を形成した回路基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。工程2では、必要に応じて、硬化性樹脂組成物が塗布された回路基板に所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、前記基板に凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。工程3では、工程1~2の操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップしてビルドアップ基板を成形する。なお、前記工程において、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行うとよい。また、本発明のビルドアップ基板は、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170~300℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
6.ビルドアップフィルム
本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップフィルムを得る方法としては、例えば、支持フィルム上に硬化性樹脂組成物を塗布したのち、乾燥させて、支持フィルムの上に樹脂組成物層を形成する方法が挙げられる。本発明の硬化性樹脂組成物をビルドアップフィルムに用いる場合、該フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃~140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう前記各成分を配合することが好ましい。
ここで、回路基板のスルーホールの直径は通常0.1~0.5mm、深さは通常0.1~1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
前記したビルドアップフィルムを製造する具体的な方法としては、有機溶剤を配合してワニス化した樹脂組成物を調製した後、支持フィルムの表面に、前記組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥して樹脂組成物の層を形成する方法が挙げられる。
ここで用いる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30質量%~60質量%となる割合で使用することが好ましい。
なお、形成される前記樹脂組成物の層の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする必要がある。回路基板が有する導体層の厚さは通常5~70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10~100μmの厚みを有するのが好ましい。なお、本発明における前記樹脂組成物の層は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10~150μmであり、好ましくは25~50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1~40μmとするのが好ましい。
前記した支持フィルムは、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。ビルドアップフィルムを構成する樹脂組成物層が加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
なお、前記のようにして得られたビルドアップフィルムから多層プリント回路基板を製造することができる。例えば、前記樹脂組成物の層が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、前記樹脂組成物の層を回路基板に直接接するように回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。また必要により、ラミネートを行う前にビルドアップフィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を70~140℃とすることが好ましく、圧着圧力を1~11kgf/cm2(9.8×104~107.9×104N/m2)とすることが好ましく、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
7.繊維強化複合材料
本発明の樹脂組成物から繊維強化複合材料(樹脂が強化繊維に含浸したシート状の中間材料)を得る方法としては、樹脂組成物を構成する各成分を均一に混合してワニスを調整し、次いでこれを強化繊維からなる強化基材に含浸した後、重合反応させることにより製造する方法が挙げられる。
かかる重合反応を行う際の硬化温度は、具体的には、50~250℃の温度範囲であることが好ましく、特に、50~100℃で硬化させ、タックフリー状の硬化物にした後、更に、120~200℃の温度条件で処理することが好ましい。
ここで、強化繊維は、有撚糸、解撚糸、又は無撚糸などいずれでも良いが、解撚糸や無撚糸が、繊維強化プラスチック製部材の成形性と機械強度を両立することから、好ましい。さらに、強化繊維の形態は、繊維方向が一方向に引き揃えたものや、織物が使用できる。織物では、平織り、朱子織りなどから、使用する部位や用途に応じて自由に選択することができる。具体的には、機械強度や耐久性に優れることから、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などが挙げられ、これらの2種以上を併用することもできる。これらの中でもとりわけ成形品の強度が良好なものとなる点から炭素繊維が好ましく、かかる、炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系などの各種のものが使用できる。中でも、容易に高強度の炭素繊維が得られるポリアクリロニトリル系のものが好ましい。ここで、ワニスを強化繊維からなる強化基材に含浸して繊維強化複合材料とする際の強化繊維の使用量は、該繊維強化複合材料中の強化繊維の体積含有率が40%~85%の範囲となる量であることが好ましい。
8.繊維強化樹脂成形品
本発明の樹脂組成物から繊維強化成形品(樹脂が強化繊維に含浸したシート状部材が硬化した成形品)を得る方法としては、型に繊維骨材を敷き、前記ワニスを多重積層してゆくハンドレイアップ法やスプレーアップ法、オス型・メス型のいずれかを使用し、強化繊維からなる基材にワニスを含浸させながら積み重ねて成形、圧力を成形物に作用させることのできるフレキシブルな型をかぶせ、気密シールしたものを真空(減圧)成型する真空バッグ法、あらかじめ強化繊維を含有するワニスをシート状にしたものを金型で圧縮成型するSMCプレス法、繊維を敷き詰めた合わせ型に前記ワニスを注入するRTM法などにより、強化繊維に前記ワニスを含浸させたプリプレグを製造し、これを大型のオートクレーブで焼き固める方法などが挙げられる。なお、前記で得られた繊維強化樹脂成形品は、強化繊維と樹脂組成物の硬化物とを有する成形品であり、具体的には、繊維強化成形品中の強化繊維の量は、40質量%~70質量%の範囲であることが好ましく、強度の点から50質量%~70質量%の範囲であることが特に好ましい。
9.導電ペースト
本発明の樹脂組成物から導電ペーストを得る方法としては、例えば、微細導電性粒子を該硬化性樹脂組成物中に分散させる方法が挙げられる。前記導電ペーストは、用いる微細導電性粒子の種類によって、回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とすることができる。
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、GPC、13C-NMR、MSは以下の条件にて測定した。
<GPC測定条件>
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
<13C-NMRの測定条件>
装置:日本電子株式会社製 ECA500
測定モード:逆ゲート付きデカップリング
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
パルス角度:30°パルス
試料濃度 :30wt%
積算回数 :2000回
<MALDI-MSスペクトルの測定条件>
株式会社島津製作所製のマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計AXIMA TOF2を用いて測定した。
<軟化点>
JIS K7234に基づいて測定した。
<溶融粘度>
ASTM D4287に準拠し、ICI粘度計にて測定した。
<エポキシ当量>
JIS K7236に基づいて測定した。
実施例1:多官能エポキシ樹脂 A-1の合成
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコにβ-ナフトール122.5g(0.85mol)、t-ブチルカテコール(DIC株式会社製 商品名DIC-TBC)141.2g(0.85mol)、20%水酸化ナトリウム水溶液38.3g(0.19mol)を仕込み、溶解しながら100℃まで昇温した。その温度を保ったまま37%ホルマリン71.0g(0.88mol)を2時間かけて滴下した。次いで100℃で6時間反応させ、室温まで冷却した。リン酸二水素ナトリウム26.4gで中和した後、メチルイソブチルケトン380g加え溶解し、水洗後、減圧下にてメチルイソブチルケトンを留去し、多官能フェノール樹脂を含む生成物を得た。GPCチャートを図1に示す。GPC測定の結果、構造式(1)において、R1がt-ブチル基、n=1、m=0、l=1に相当すると推定されるピークは76面積%であった。
次いで、エピクロルヒドリン1174.8g(12.7mol)を仕込み、攪拌溶解しながら50℃に昇温した。次いで、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムを9.47g仕込み、50℃の温度のまま24時間反応させた。さらに、49%水酸化ナトリウム水溶液238.2gを3時間かけて滴下し、さらに50℃で1時間反応させた。反応終了後、n-ブタノール117.4添加し、攪拌を停止して、下層に溜まった水層を除去し、攪拌を再開し150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン708.9gとn-ブタノール105.0gを加え溶解した。さらにこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液33.8gを添加して80℃2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水209.0gで水洗を繰り返した。次いで、共沸によって系内を脱水し、精密ろ過を経た後に、溶媒を減圧下にて留去し目的の多官能エポキシ樹脂(A-1)を得た。得られた多官能エポキシ樹脂(A-1)のエポキシ当量は237g/eqであり、150℃における溶融粘度は0.2dPa・s、軟化点は54℃であった。エポキシ樹脂(A-1)のGPCチャートを図2に、13C-NMRスペクトルを図3に、MALDI-MSスペクトルを図4に示す。GPC測定の結果、構造式(2)において、R1がt-ブチル基、n=1、m=0、l=1に相当すると推定されるピークは65面積%であった。
比較用エポキシ樹脂(B-1):t-ブチルカテコール型エポキシ樹脂 DIC株式会社製 EPICLON HP-820 (エポキシ当量 208g/eq 25℃における粘度1500mPa・s)をそのまま用いた。
比較用エポキシ樹脂(B-2):ナフタレン型エポキシ樹脂 DIC株式会社製 EPICLON HP-4770 (エポキシ当量 204g/eq 150℃での溶融粘度0.7dPa・s)をそのまま用いた。
実施例3、比較例1~2
実施例1で得られたエポキシ樹脂(A-1)、比較用エポキシ樹脂(B-1)、(B-2)比較例1~2のエポキシ樹脂よび硬化剤として4,4’-ジアミノジフェニルスルホンをエポキシ当量/活性水素当量=1/1となるように配合し、120℃で溶融混合して硬化性樹脂組成物を得た。さらに、硬化性樹脂組成物を、2mmおよび4mmのスペーサーを挟んだガラス板の間にそれぞれ流し込み、150℃で1時間、次いで180℃で3時間硬化反応を行い、硬化物を作製し、下記に従って評価した。結果を表1にまとめる。
<ガラス転移温度>
厚さ2mmの硬化物を幅5mm、長さ20mmのサイズに切り出し、これを試験片とした。この試験片を粘弾性測定装置(DMA:日立ハイテクサイエンス社製固体粘弾性測定装置「DMS6100」、変形モード:両持ち曲げ、測定モード:正弦波振動、周波数1Hz、昇温速度3℃/分)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
<曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ歪み>
JIS K7171に従って、4mm厚の硬化物の曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ歪みを測定した。