JP7343868B2 - 癌の予防及び/又は治療薬、癌マーカー、癌診断キット、又は生体試料の測定方法 - Google Patents
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Description
大腸癌も他の癌と同様に、外科的手術のほか、化学療法が多く用いられており、5フルオロウラシル(5-FU:ファイブ・エフ・ユー)、ロイコボリン、イリノテカン(CPT-11:シー・ピー・ティー・イレブン)、オキサリプラチン等の低分子薬のほか、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、セツキシマブ(アービタックス(登録商標))等に代表されるような、各種の分子標的製剤等、これまで多数のものが開発されてきているが、必ずしも満足のいくものでは無かった。
例えば癌が出来た箇所が肛門から遠いほど自覚症状が出にくい等の原因で発見が遅れ、血液やリンパの流れに乗る等して、他の臓器等へ転移してしまっているケースが多いからである。
従って、大腸癌に関しても、他の癌同様に早期発見が重要である。
下記(X)を阻害する物質を含むことを特徴とする、下記(Y)の癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
下記(X)を阻害する物質を含むことを特徴とする、下記(Y)の予防及び/又は治療薬。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
(X)を阻害する物質が、投与対象における、当該蛋白質又はその遺伝子の、量又は機能を抑制又は阻害する物質であることを特徴とする、第二の発明に記載の予防及び/又は治療薬。
(X)を阻害する物質が、下記のi)乃至iii)のいずれかから選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする、第三の発明に記載の予防及び/又は治療薬。
i)(X)の発現量を、抑制する物質
ii)(X)を分解する物質
iii)(X)の機能を阻害する物質
(X)を阻害する物質が、(X)の遺伝子に対するsiRNA遺伝子、shRNA遺伝子、miRNA遺伝子、アンチセンスRNA、核酸アプタマー、又はリボザイム、或いは(X)の蛋白質に対する抗体、ペプチドアプタマー、サイクリックマクロペプチド、又はプロテアーゼから選択された少なくとも1種以上のものであることを特徴とする、第三の発明に記載の予防及び/又は治療薬。
下記(X)を含むことを特徴とする、下記(Y)を識別するための癌マーカー。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
下記(X)を検出可能な物質を含むことを特徴とする、下記(Y)の診断キット。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
(X)を検出可能な物質が、(X)の蛋白質に対して特異的に結合する物質、(X)の遺伝子を増幅可能なプライマーセット、又は(X)の遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブから選択される少なくとも1種であることを特徴とする、第七の発明に記載の診断キット。
下記(1)及び(2)の工程を含むことを特徴とする、生体試料の測定方法。
(1)生体試料中の、下記(X)蛋白質の存在量又は下記(X)遺伝子の発現量を測定する工程
(2)(1)で測定された(X)蛋白質の存在量又は(X)遺伝子の発現量が、当該生体試料と同種の正常組織由来の対照試料中の(X)蛋白質の存在量又は(X)遺伝子の発現量と比較して多い場合に、前記生体試料が下記(Y)の癌患者由来のものであると判定する工程
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
下記(A)及び/又は(B)の工程を指標とする、大腸癌の進行度合い又は他の臓器や組織への転移又は浸潤の可能性の判定方法。
(A)生体試料中の、下記(X)蛋白質の存在量又は下記(X)遺伝子の発現量を測定する工程
(B)(X)蛋白質の存在位置又は(X)遺伝子の発現位置を測定する工程
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
下記(X)の蛋白質又はその遺伝子を含むことを特徴とする、下記(Y)の予防及び/又は治療薬のスクリーニング用キット。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
第十一の発明に記載のスクリーニング用キットを用いることを特徴とする、下記(Y)の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法。
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
本発明の「(Y)の癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤」は、(X)を阻害する物質を含むことを特徴とするものである。
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
「(X)の蛋白質又はその遺伝子の発現量を、抑制する物質」
「(X)の蛋白質又はその遺伝子を分解する物質」
「(X)の蛋白質又はその遺伝子の機能を阻害する物質」
等が挙げられる。
(ii)(X)の蛋白質に対する抗体、ペプチドアプタマー、サイクリックマクロペプチド、又は各種のプロテアーゼ等を含む、蛋白質を制御するのに用いられる各種のペプチド或いは蛋白質類、及び各種の低分子性化合物等。
尚、核酸アプタマーは、ランダム配列からなる公知の巨大ライブラリー等からのスクリーニングによって得ることが一般的である。
但し、後述する「本発明の診断キット」の「(X)の蛋白質に対して特異的に結合する物質」として使用する際には、ポリクローナル抗体でも良い。
本発明の「下記(Y)の癌の予防及び/又は治療薬」は、「下記(X)を阻害する物質」を含むことを特徴とするものである。
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
本発明の「癌マーカー」は、(Y)を識別するための癌マーカーであって、(X)を含むことを特徴とするものである。
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
本発明のマーカーに用いられる、KLHL蛋白質は、kelch-like ,又はkelch like family memberなどと呼ばれるKLHL蛋白質ファミリーのうち、KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36である。
但し、KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36は、いずれもそれぞれにバリアントが複数あり、上記のアミノ酸数は、あくまでも各々の代表例である。
本発明のマーカーに用いられる、KLHL蛋白質遺伝子とは、上述した公知KLHL蛋白質の遺伝子であり、その詳細は、下記にも示されるものである。
本発明のマーカーを構成するKLHL蛋白質は、ヒト又はその他生物の生体に由来するものであるが、具体的には生体由来の試料(以下「生体試料」と記載する。)」中に存在するものを検出することにより、マーカーとしての役割を発揮するものである。
具体的な生体試料としては、生体から偶然あるいは人為的に抽出された臓器又は組織の一部、生体由来細胞、又はその培養細胞、又は体液等が挙げられるが、細胞としては、培養細胞よりも採取直後の細胞の方が、より正確な情報が得られるため好ましい。
末梢血、血清、又は血漿を含む血液、リンパ液、組織液(組織間液、細胞間液、間質液)、体腔液、漿膜腔液、胸水、腹水、心嚢液、脳脊髄液(髄液)、関節液(滑液)、眼房水(房水)等のいわゆる狭義の体液のほか、消化液、唾液、胃液、胆汁、膵液、腸液、汗、涙、鼻水、尿、精液、膣液、羊水又は母乳等の広義の体液。
本発明のマーカーは、これを指標とした診断を行うことで、大腸癌や大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌について、その発生、進行状況、転移状況等を早期に発見することできるため、これらの癌についての、より有効な予防又は治療が可能となる。
本発明のマーカーは、後述する本発明の「診断キット」等を用いた癌診断の、診断指標となり得るほか、本発明の「癌の予防及び/又は治療薬のスクリーニング用キット」を用いた本発明の「癌の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法」に用いることができる。
本発明の(Y)の診断キットは、(X)を検出可能な物質を含むことを特徴とするものである。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
2)(X)の各遺伝子を増幅可能なプライマーセット
3)(X)の各遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブ
そのため、上述した「(X)を検出可能な物質」にも、一般的なKLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36蛋白質の配列の個体差に応じた、各種のバリエーションがあり得る。
そのため、上述した「(X)を検出可能な物質」にも、一般的なKLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36遺伝子の配列の個体差に応じた、各種のバリエーションがあり得る。
本発明の「生体試料の測定方法」は、下記(1)及び(2)の工程を含むことを特徴とするものである。
(2)(1)で測定された(X)蛋白質の存在量又は(X)遺伝子の発現量が、当該生体試料と同種の正常組織由来の対照試料中の(X)蛋白質の存在量又は(X)遺伝子の発現量と比較して多い場合に、前記生体試料が(Y)の癌患者由来のものであると判定する工程
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
尚、本発明の測定対象である(X)蛋白質の存在量は、上記(X)蛋白質の単量体のほか、多量体、又は当該蛋白質の一部のポリペプチド等の量から推定される量であっても良く、また、本発明の測定対象である(X)遺伝子の発現量も、その配列の一部からなる断片の量等から推定される量であっても良い。
本発明の「大腸癌の進行度合い又は他の臓器や組織への転移又は浸潤の可能性を判定する方法」は、下記(A)及び/又は(B)の工程を含むことを特徴とするものである。
(B)(X)蛋白質の存在位置又は(X)遺伝子の発現位置を測定する工程
また、(A)の(X)蛋白質の存在量は、上記(X)蛋白質の単量体のほか、多量体、又は当該蛋白質の一部のポリペプチド等の量から推測される量であっても良く、また(X)遺伝子の発現量も、その配列の一部からなる断片の量等から推測される量であっても良い。
大腸癌は、大腸の最も内側の粘膜表面(粘膜上皮細胞)より発生し、大腸の壁に深く侵入(浸潤)するにつれて進行し、リンパ管や血管への癌細胞の侵入、あるいは癌細胞が大腸の壁を突き破って腹腔内に拡がる腹膜播種等によって、他の組織に転移すること等を通じて、全身に広がっていくことが知られているからである。
また、上記分類中、同じ層中であっても、大腸の内側から外側(下層)に向かって大腸壁の深い位置での発現である程、進行度や転移可能性が高くなると判断される。
本発明の「(Y)の予防及び/又は治療薬のスクリーニング用キット」は、(X)蛋白質又はその遺伝子を含むことを特徴とするものである。
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌
また本発明で言う、KLHL遺伝子には、これまで報告されているような一塩基多型その他の変異体等も含まれる。
本発明の「(Y)の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法」は、上記本発明の「(Y)の予防及び/又は治療薬のスクリーニング用キット」を用いることを特徴とするものである。
各種KLHL蛋白質(KLHL2、3、4、5、6、9、12、19、26、27、36、37、39)遺伝子に対する「siRNA」、又は「抗KLHL5抗体」からなる、大腸癌細胞の増殖抑制剤を製造した。
各siRNA配列は、後述する表1及び配列表に、抗体の詳細については表2に示した通りである。
「抗KLHL5抗体」(product number ; HPA013958, SIGMA社)を、[実施例10](表2)
KLHL蛋白質(KLHL2、3、4、6、9、12、19、37、又は39)の遺伝子に対する「siRNA」を[比較例1~9](表1)
とした。
また、CUL3蛋白質の遺伝子に対する「siRNA」を[比較例10](表1)とした。
以下の試験例によって、本発明の各種の抑制剤等の効果を確認した。
尚、各試験例において用いたsiRNA、蛋白質の分離・検出方法、検出用抗体等は下記の通りである。
(siRNA試薬)
各試験例で使用したsiRNA試薬の配列は、表1及び配列表に示した通りである。
各試験例で使用したKLHL蛋白質抗体は、表2に示したものを使用した。
下記のプロトコルに従って、実施例1、6、7、8、比較例1~10及び対照例1の「細胞増殖抑制剤」を用いて、大腸癌細胞HCT116の増殖抑制試験を実施した。
上記した実施例、比較例、対照例の各増殖抑制剤(siRNA)を用い、大腸癌細胞株HCT116(ヒト結腸腺癌)のノックダウンを行った。siRNAの導入に際し、ThermoFisher scientific社製のリポフェクション試薬を使用した。
siRNA処理した細胞を培養皿(96well)に播種し(1.0x104/well/100μL)、72時間培養した。
尚、培地としては、[McCoy’s 5A培地+FBS10%]を用いた。
ナカライテスク株式会社製の、試験例3で詳述するMTTアッセイ試薬を添加し、30分後にマルチプレートリーダーを用い吸光度(450nm)を測定し、各増殖抑制剤(siRNA)による細胞増殖抑制効果を評価した。
図1に示すように、対照例や比較例1~10の「細胞増殖抑制剤」(siRNA)には、大腸癌細胞株HCT116細胞の増殖抑制効果は、殆ど無かったのに対し、下記の(X)のKLHL蛋白質遺伝子を阻害する実施例1(siKLHL5#1)、6(siKLH26)、7(siKLHL27)、8(siKLHL36)の各種「細胞増殖抑制剤」(siRNA)(枠で囲った写真のもの)は、大腸癌細胞株HCT116細胞の増殖を、いずれも顕著に抑制した。
従って、siKLHL5、siKLHL26、siKLHL27、又はsiKLHL36を主成分とする大腸癌細胞の「細胞増殖抑制剤」が、大腸癌を初めとする、下記(Y)の各種癌の、予防及び/又は治療薬としても使用可能であることは明らかである。
下記のプロトコルに従って、実施例1及び対照例1の「細胞増殖抑制剤」を用いて、大腸癌細胞HCT116の遊走抑制試験を実施した。
試験例1と同様の手法で、siRNAを用い、大腸癌細胞株HCT116中のKLHL5のノックダウンを行った。
ノックダウン処理したHCT116用いトランスウェル(Transwell(登録商標)システムにより、遊走能に与える影響を評価した。
トランスウェルシステムとは、培養皿が2重になったもので、受け皿となるマルチプレートと細胞が通過できる小孔(8 μm pore size)を持つトランウェルインサートからなる、コーニングインターナショナル社のシステムである。トランスウェルシステムのより詳細なプロトコルは、例えば下記のURL等に掲載されている。
https://www.corning.com/jp/jp/products/life-sciences/products/permeable-supports/transwell-guidelines.html
受け皿となるマルチプレート(24 well)の各wellに、細胞遊走活性化作用を有するFBSを下記の通常培地(10%)より高濃度(20%)に調整した培地[McCoy’s 5A培地+FBS20%]を加え、次にトランウェルインサートを、マルチプレートの各wellに、トランウェルインサートの各コンパートメントが対応するように嵌め込んだ。
各々のコンパートメント内に、上述のノックダウン処理したHCT116を通常培地[McCoy’s 5A培地+FBS10%]とともに加えた(3.5x105/well/mL)。
48時間培養後、トランウェルインサートの上層側の細胞を綿棒で拭き取った後に、トランウェルインサートの下層側に付着している細胞を100%のメタノール用いて固定した。さらに2%のクリスタルバイオレットで染色を行い、トランウェルインサートを通過した細胞数を計測した。
図2に示すように、対照例と比較して、実施例1の「細胞増殖抑制剤」(siKLHL5#1)によって、大腸癌細胞株HCT116細胞の遊走を、顕著に抑制していることが分かった。
上述の結果から、KLHL5の遺伝子を阻害する物質は、大腸癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤,あるいは大腸癌の予防及び/又は治療薬となり得ることが分かった。
下記のプロトコルに従って、実施例1、6、7比較例10及び対照例1の「細胞増殖抑制剤」を用いて、大腸癌細胞HCT116の増殖抑制試験を実施した。
試験例1と同様の方法で、実施例、比較例、対照例の各「細胞増殖抑制剤」(siRNA)をHCT116細胞に導入後、下記のMTTアッセイ法による癌細胞の生細胞数測定を行い、各siRNAの癌細胞増殖抑制効果を確認した。
3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド (MTTアッセイ試薬)が、生細胞のミトコンドリアで開裂し、暗青色のホルマザンを生成することを利用し、生細胞を測定した。
尚、培地としては、[McCoy’s 5A培地+FBS10%]を用いた。
また、KLHL蛋白質発現と大腸癌との因果関係調査の一環として、KLHL5蛋白質の、ユビキチンリガーゼ(E3)アダプターとしての可能性を探るため、E3のプラットフォームであるCUL3蛋白質についても、比較例10のsiCUL3を用いて、発現抑制試験を行った。
図3に示すように、比較例や対照例と比較して、実施例1(siKLHL5#1)、実施例6(siKLHL26)、実施例7(siKLHL27)の「細胞増殖抑制剤」によって、大腸癌細胞株HCT116細胞の生細胞数が、顕著に減少していることが分かった。
上述の結果から、KLHL5、26、27の遺伝子を阻害する物質は、大腸癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤,あるいは大腸癌の予防及び/又は治療薬となり得ることが分かった。
下記のプロトコルに従って、実施例1、7及び対照例1の「細胞増殖抑制剤」を用いて、細胞接着阻止剤(poly HEMA:ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリラレート))を使用した培養皿での培養における、大腸癌細胞HCT116の特性(足場非依存性)の残存確認試験を実施した。
試験例1と同様の手法で、siRNA処理により、大腸癌細胞株、HCT116のKLHL5 ノックダウンを行った。
細胞接着阻止剤(poly HEMA)の塗布された培養皿(24well)にKLHL5 ノックダウン HCT116を播種(5x104/well/mL)した。
尚、培地としては、[McCoy’s 5A培地+FBS10%]を用いた。
48時間培養後に細胞を培養皿から回収し、遠心分離(2,000rpm,3分)後、上澄を除去した。
遠心チューブ内にトリプシン100μLを添加して、チューブ内に付着した細胞を剥離し、細胞懸濁液を調整した。
細胞懸濁液10μLに対しトリパンブルー10μLを加え、細胞の染色を行った。生存している細胞数を計測し、KLHL5の足場非依存性への影響を評価した。
通常のがん細胞は足場非依存性増殖を示すためpoly HEMA処理培養ディッシュ上でも増殖するが、図4に示すように、実施例1(siKLHL5#1)、7(siKLHL27)の「細胞増殖抑制剤」の添加によって、HCT116細胞の増殖が抑制されていることが分かった。
これは、KLHL5又はKLHL27に対するsiRNA処理によって、大腸癌細胞HCT116が、その特性である足場非依存性増殖能を失っていた(細胞-マトリクス間の接着喪失により誘導されるアポトーシス(細胞自死)つまりアノイキス(anoikis)を起こした)ことを意味している。
上述の結果から、KLHL5又はKLHL27の遺伝子を阻害する物質は、大腸癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤,あるいは大腸癌の予防及び/又は治療薬となり得ることが分かった。
下記のプロトコルに従って、実施例1、7及び対照例1の「細胞増殖抑制剤」を用いて、軟寒天培地での培養における大腸癌細胞HCT116の特性(足場非依存性)の残存確認試験を実施した。
試験例1と同様の手法で、siRNAを用い大腸癌細胞株、HCT116のKLHL5のノックダウンを行った。軟寒天培地(6well)にKLHL5 ノックダウン HCT116を播種し(1.0x104/well)、4週間培養した。100μm以上の大きさのコロニー数を測定し、KLHL5の足場非依存性増殖能への影響を評価した。
野生型HCT116細胞は足場非依存性増殖を示すため軟寒天培地でも増殖するが、図5に示すように、実施例1又は7の「細胞増殖抑制剤」(KLHL5又はKLHL27に対するsiRNA処理)の使用によって、HCT116細胞の増殖が抑制されており、癌細胞の特性である足場非依存性増殖能を失ったと言える。
上述の結果から、KLHL5又はKLHL27の遺伝子を阻害する物質は、大腸癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤,あるいは大腸癌の予防及び/又は治療薬となり得ることが分かった。
実施例1~5の、複数種類の「細胞増殖抑制剤」(siKLHL5)を用いて、大腸癌細胞HCT116中における、KLHL5の発現量の抑制効果を比較した。コントロールとして、対照例1のsiControlを用いた。
尚、図には示していないが、Silencer Select社製のsiKLHL5(#4427037 Silencer(R) Select Pre-designed siRNA, inventoried, std purity,1 nmol siRNA ID: s27397)によっても、実施例1~5程では無いものの、明確なKLHL5の発現抑制効果が見られた。
このことは、実施例1~5のsiKLHL5が、大腸癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤,あるいは大腸癌の予防及び/又は治療薬として有用であることを示している。
下記のプロトコルに従って、本発明の「細胞増殖抑制剤」(siRNA)により、大腸癌細胞HCT116において、KLHL5蛋白質の発現が特異的に抑制されていることを確認した。
(i)融合遺伝子の作成
野生型のKLHL5遺伝子(WT)、及び実施例1又は2各々のsiKLHL5に対して抵抗性を持つようにsiRNA標的領域に変異を導入したKLHL5遺伝子(Mut1,Mut2)の、合計3種のKLHL5遺伝子を、それぞれFLAG遺伝子に結合し、3種類のFLAG標識KLHL5融合遺伝子(FLAG-KLHL5遺伝子)を作成した。
(ii-1)HCT116細胞に対照例1,実施例1,又は実施例2のsiRNA(siKLHL5 #1,#2)を、各々リポフェクション試薬「Lipofectamine RNAi max」(Invitrogen社製)を用いてトランスフェクションし、24時間培養した。
(ii-2)(ii-1)の3種のHCT116細胞各々に、(i)で作成した3種類のFLAG-KLHL5融合遺伝子を、リポフェクション試薬「GeneJuice」(Millipore社製)を用いてトランスフェクションし、通常の培養条件(McCoy’s 5A培地+FBS(10%) 、5%CO2)下で48時間、細胞培養することによって、それぞれのFLAG-KLHL5蛋白質を強制発現させた。
(ii)でKLHL5を過剰発現させた後、KLHL5蛋白質を、表2記載の抗FLAG抗体で検出することによって検証した。
尚、内因性コントロールとして、β-アクチンを使用した。
図7から分かる通り、野生型のKLHL5を導入した細胞では、実施例1及び実施例2のいずれのsiRNA(siKLHL5 #1,#2)によっても、KLHL5の発現を抑制できた。
上記の結果は、実施例1,2に代表されるsiKLHL5試薬が、大腸癌細胞の増殖抑制剤となり得ることに加えて、そのKLHL5の発現抑制作用が非常に特異的ものであることから、より副作用の少ない、大腸癌の予防及び/又は治療剤となり得ることを示している。
「大腸癌」及び「ヒト大腸腺腫」におけるKLHL5 mRNAの発現を、real-time PCRで確認した。
パラフィン包埋された臨床検体(「進行大腸癌」18サンプル、「低異形度腺腫」9サンプル)より、Maxwell 16 LEV RNA FFPE kit (Promega社)を使用してmRNAを抽出した。
比較対象とするコントロールとしては、同一臨床検体の非腫瘍部位より採取し、同様に抽出したmRNAを用いた。
抽出したmRNAを、「KLHL5特異的プライマー」及び「PrimeScript 1strand cDNA synthesis kit(製品コードTKR 6110)、タカラバイオ社システム」を用いてcDNAに変換し、TaqMan Gene Expression Assay(applied biosystems社)を使用し、ABI 7500fastによりreal-time PCRを用いて増幅した。
real-time PCRの結果を示す「増幅曲線」の、ミッドポイント(S字曲線の変曲点)の値を、KLHL5 mRNAの発現量を反映したデータとして、本試験例の比較・検証に用いた。
内因性コントロールはGAPDHを使用し、結果は対コントロール比で比較検討した。
図8から分かる通り、「進行大腸癌(図8のadenocarcinoma:腺癌)」では、「大腸腺腫(図8のadenoma:低異形度腺腫(良性腫瘍))」に比べて有意にKLHL5 mRNAが高発現していることが判明した。
上述の結果から、「KLHL5遺伝子(mRNA)」が、「大腸癌のマーカー」として特に有用であることが裏付けられた。
「ヒト大腸癌組織」におけるKLHL5蛋白質の発現を免疫染色で確認した結果を示す図である。
パラフィン包埋された「ヒト大腸癌」切除標本を使用し、表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」を用いた免疫染色により、KLHL5の発現を検証した。
発現の程度は視認による相対的評価で行った。「正常組織(Normal tissue)」としては、同一個体の肉眼的非癌部を使用した。
Negative controlは一次抗体を使用せず免疫染色を実施。免疫染色は下記プロトコルを使用した。
(1) 脱パラフィン
(2) 前処理。加熱しておいた10mMクエン酸に入れ、10分加熱。その後、冷却。
(3) 3%H2O2で内因性ペルキシダーゼの阻害
(4) PBSで洗浄。5分x3回。
(5) 正常血清でブロッキング
(6) 一次抗体添加。常温で1時間以上、更に4℃で一晩放置。
(7) PBSで洗浄。5分x3回
(8) 2次抗体添加。10分
(9) PBSで洗浄。5分x3回
(10) 酵素試薬。5分
(11) PBSで洗浄。5分x3回
(12) DAB溶液を作成し、4分標本に浸透。
(13) 流水水洗5分~10分
(14) ヘマトキシリン液添加 1分静置
(15) 流水水洗 5分
(16) 脱水、エタノール3相
(17) 透徹、キシレン4相
(18) 封入
図9に示す組織標本には正常組織及び癌組織が混在しているが、KLHL5は癌組織のみに特異的に発現していることが判明した。
尚、免疫染色の2次抗体による非特異的な染色の可能性を排除するため、組織標本の連続切片を用い2次抗体のみで免疫染色を行ったところ、染色は認めなかった。
上述の結果から、「KLHL5蛋白質」も、「大腸癌のマーカー」として利用可能であることが裏付けられた。
また、2次抗体による非特異的な染色は見られなかったことから、「抗KLHL5抗体」が、本発明の[癌診断キット]の構成成分として有用であることも、確認できた。
予めKLHL5抗原で処理した表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」を用いて、「大腸癌組織」の免疫染色を行うことによって、「抗KLHL5抗体」のKLHL5蛋白質への特異性を検証した。
表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」のPBS希釈液に、抗体:抗原が1:20(mol)となるように下記抗原希釈液を加え、4℃で一晩転倒混和した。
この混合液を一次抗体として免疫染色を行い、上述の試験例9と同様のプロトコルに従い、「大腸癌組織」の免疫染色を行った。
図10から分かる通り、予めKLHL5抗原で処理した「抗KLHL5抗体」では、大腸癌組織は染色されなかった。
これは、「抗KLHL5抗体」が、予め行った「KLHL5抗原処理」によって、もはや「大腸癌組織」に発現したKLHL5には、結合しなくなったことを意味している。
また、抗体は生体内において抗原蛋白質の機能を阻害し得るものであることから、上記結果は、「抗KLHL5抗体」が、本発明の[癌細胞の増殖又は転移抑制剤]又は本発明の[癌の予防又は治療薬]に使用し得ることも示している。
「ヒト大腸腺腫(図11のadenoma)」、「早期大腸癌(図11のadenocarcinoma(粘膜内癌; m癌))」におけるKLHL5蛋白質の発現を、免疫染色で確認した。
パラフィン包埋された「ヒト大腸腺腫(高度異型腺腫2検体)」、及び「早期大腸癌(粘膜癌(m癌)2検体))の、各切除標本を使用し、表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」を用いた免疫染色により、KLHL5の発現を検証した。
免疫染色は上述の試験例9と同様のプロトコルを使用した。
KLHL5タンパク発現は、免疫染色結果を視認することによって相対的に評価した。図11上段は弱拡大、下段は強拡大を示す。
図11から分かる通り、「大腸腺腫」ではKLHL5蛋白質は検出されなかったが、「早期大腸癌(粘膜内癌; m癌)」では、わずかにKLHL5蛋白質の発現を認めた。
上述の結果から、「KLHL5蛋白質」は単なる大腸癌マーカーとしてのみならず、早期大腸癌を発見し得る、優れた「大腸癌マーカー」であることが裏付けられた。
ヒト大腸癌組織におけるKLHL5蛋白質の発現を免疫染色で確認した。
パラフィン包埋された下記1)、2)の2グループのヒト大腸癌切除標本を使用し、表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」を用いた免疫染色によりKLHL5の発現を検証した。
1)早期大腸癌(粘膜下層浸潤癌;Adenocarcinoma(sm))2検体
2)進行大腸癌(筋層以深浸潤癌:Adenocarcinoma(advanced);2検体
免疫染色は上述の試験例9と同様のプロトコルを使用した。
KLHL5タンパク発現は、免疫染色結果を視認することによって相対的に評価した。
「早期大腸癌(sm)」、「進行大腸癌(advanced)」は標本サイズが大きくなるため、癌を含む大腸組織を上下で「上層」・「下層」(「upper layer」・「lower layer」)と任意部位で2分した。1)、2)の各2検体は、同グループの検体はそれぞれ同様の結果を示したため、1)、2)の各グループ中の、1検体の結果について、図12に示した。
尚、図上段は弱拡大、下段は強拡大を示す。
図12から分かる通り、「早期大腸癌(sm)」ではKLHL5蛋白質の発現は弱く、「進行大腸癌(advanced)」ではKLHL5は腫瘍の上層では発現が認められず、下層で発現が認められた。
上述の結果から、KLHL5蛋白質は、単なる大腸癌マーカーとしてのみならず、大腸癌の進行度合いをも検出可能な、優れた高度大腸癌マーカーであることが裏付けられた。
「ヒト大腸癌転移組織(肺転移及び肝臓転移)」におけるKLHL5蛋白質の発現を、免疫染色で確認した。
パラフィン包埋された「ヒト大腸癌転移巣」切除標本(肺転移1検体、肝転移1検体)を使用し、表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」を用いた免疫染色によりKLHL5の発現を検証した。
免疫染色は上述の試験例9と同様のプロトコルを使用した。
KLHL5タンパク発現は、免疫染色結果を視認することによって相対的に評価した。
サンプル転移巣組織を上下で上層・下層(「upper layer」・「lower layer」)と任意部位で2分した。図上段は弱拡大、下段は強拡大を示す。
図13から分かる通り、大腸癌肺転移、大腸癌肝転移ともに、わずかにKLHL5蛋白質の発現が認められた。
上述の結果から、「KLHL5蛋白質」は、単なる「大腸癌マーカー」としてのみならず、肺癌、肝臓癌等の、大腸癌由来の転移癌又は浸潤癌をも検出可能な、優れた「転移性腫瘍マーカー」として利用可能であることが裏付けられた。
更には、本発明の[予防又は治療剤]が、大腸癌のみならず、肺癌、肝臓癌等の、大腸癌由来の転移癌又は浸潤癌に対する予防又は治療薬となり得ることも判明した。
ステージ4と診断されたヒト大腸癌組織におけるKLHL5蛋白質の発現を、深度別に免疫染色で確認した。
パラフィン包埋されたヒト進行大腸癌切除標本を使用し、表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」を用いた免疫染色により、KLHL5の発現を検証した。
免疫染色は上述の試験例9と同様のプロトコルを使用した。
KLHL5タンパク発現は、免疫染色結果を視認することによって相対的に評価した。
対象標本は大腸の内腔(lumen)に近い「粘膜側」から「漿膜(serosa)側」までを連続観察し、ほぼ3等分となるように、任意の点で「上層」・「中層」・「下層」(「upper layer」・「middle layer」・「lower layer」)に3分した。図左側は弱拡大、右側は強拡大を示す。
図14から分かる通り、本試験例で用いた大腸癌組織(ステージ4)においては、KLHL5蛋白質の発現量が、大腸癌組織の「上層」では弱く、「中層」から「下層」にかけて増強していることが判明した。
上記の結果、及び試験例13の結果から、「KLHL5蛋白質」が、単なる「大腸癌マーカー」としてのみならず、大腸癌のステージの判定基準の1つとしても使用可能な、優れたマーカーとして使用可能であることが裏付けられた。
後述する[ヒト進行大腸癌組織の上層、中層、下層の分類法及びKLHL5蛋白質発現強度の数値化の定義]に従い、KLHL5の発現を数値化し、「大腸腺腫(adenoma)」、「大腸癌(adenocarcinoma)」、「大腸癌転移巣(metastatic lesion)」におけるKLHL5の発現を統計学的に解析した。
尚、「大腸癌」については、深達度に応じ、下記3つのカテゴリーに階層化した。
「早期大腸癌」(「粘膜内癌;m癌」、「粘膜下層癌;sm癌」)
「進行癌:advanced」
パラフィン包埋されたヒト大腸病変切除標本(腺腫4例、m癌5例、sm癌2例、進行癌33例、転移巣9例)を使用し、表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」を用いた免疫染色によりKLHL5の発現を検証した。
免疫染色は上述の試験例9と同様のプロトコルを使用した。
KLHL5タンパク発現は、後述する[ヒト進行大腸癌組織の上層、中層、下層の分類法及びKLHL5蛋白質発現強度の数値化の定義]に従い、KLHL5蛋白質の発現を数値化し、大腸腺腫、早期大腸癌(m癌、sm癌)、進行大腸癌、大腸癌転移巣におけるKLHL5蛋白質の発現量(各症例数における平均値+標準誤差)を、統計学的に解析した。
図15から分かる通り、「進行癌」では、「早期癌(m癌、sm癌)」と比較して有意にKLHL5蛋白質の発現が増強していた。また「進行癌」では「大腸腺腫」はもちろんのこと、「大腸癌転移巣」と比較しても有意にKLHL5蛋白質の発現が増強していた。
上記の結果から、KLHL5蛋白質が、単なる大腸癌マーカーとしてのみならず、大腸癌のステージの判定にも使用可能であることや、肺癌、肝臓癌等の、大腸癌由来の転移癌又は浸潤癌をも検出可能な、優れたマーカーとしても使用可能であることが、数値的に裏付けられた。
尚、「大腸癌転移巣」におけるKLHL5蛋白質発現量が、「進行癌」と比較して、優位に少なかったのは、転移巣に癌が転移して間もないためと考えられる。
進行大腸癌の「上層」、「中層」、「下層」におけるKLHL5蛋白質の発現を、統計学的に解析した。
パラフィン包埋されたヒト進行大腸癌33検体を使用し、表2記載(実施例10)の「抗KLHL5抗体」を用いた免疫染色によりKLHL5の発現を検証した。
免疫染色は上述の試験例9と同様のプロトコルを使用した。
KLHL5タンパク発現は後述する[ヒト進行大腸癌組織の「上層」、「中層」、「下層」の分類法及びKLHL5蛋白質発現強度の数値化の定義]に従い、KLHL5蛋白質の発現量(各部位における33検体の平均値+標準誤差)を数値化し、進行大腸癌の「上層」、「中層」、「下層」におけるKLHL5蛋白質の発現を、統計学的に解析した。
図16から分かる通り、進行大腸癌では、「上層」、「中層」と比較して「下層」で有意にKLHL5の発現が高いことが示された。
上記の結果から、KLHL5蛋白質が、単なる進行大腸癌マーカーとしてのみならず、転移・浸潤可能性の判定等にも使用可能であることが、数値的に裏付けられた。
公開データベース(Oncomine, https://www.oncomine.org/)の情報を用いて、「大腸癌組織」及び「大腸腺腫組織」におけるKLHL5 mRNA発現量を解析した。
既知の解析方法である公開データベース(Oncomine, https://www.oncomine.org/)の情報を用いて、「大腸癌組織」及び「大腸腺腫組織」におけるKLHL5 mRNA発現量を解析し、記載数値及びP-valueを評価した。
公開データベースは、Skrzypczak(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GSE20916)らのデータを利用し、Oncomine 3.0 softwearを用いて統計学的な解析を行った。
図17から分かる通り、既知の遺伝子情報からも、「大腸癌組織」では、「大腸腺腫組織」と比較して、有意にKLHL5 mRNAの発現が高いことが、本試験例によって確認できた。
上記の結果からも、KLHL5遺伝子が、大腸癌マーカーとして有用であることが裏付けられた。
公開データベース(Oncomine, https://www.oncomine.org/)の情報を用いて、「大腸癌組織」及び「正常の大腸組織」におけるKLHL5 mRNA発現量を解析した。
試験例17と同様の方法で、「大腸癌組織」及び「正常大腸組織」におけるKLHL5 mRNA発現量を解析し、記載数値及びP-valueを評価した。
図18から分かる通り、既知の遺伝子情報からも、「大腸癌組織」では「正常大腸組織」と比較して、有意にKLHL5 mRNAの発現が高いことが示された。
上記の結果からも、KLHL5遺伝子が、大腸癌マーカーとして有用であることが裏付けられた。
公開データベース(Prognoscan, https://www.prognoscan.org/)の情報を利用し、大腸癌組織におけるKLHL5 mRNA発現と無病生存率の相関をKaplan-Meier法を用い解析した。
既知の解析方法である公開データベース(Prognoscan, https://www.prognoscan.org/)の情報を用い、大腸癌組織における「KLHL5 mRNA発現量」と「無病生存率」の相関をKaplan-Meier法を用い解析した。
公開データベースは、Jorissen RNら(Clin Cancer Res. 2009 Dec 15;15(24):7642-7651.)及び、Smith JJら(Gastroenterology. 2010 Mar;138(3):958-68. doi: 10.1053/j.gastro.2009.11.005. Epub 2009 Nov 13. , Gastroenterology. 2012 Mar;142(3):562-571.e2. doi: 10.1053/j.gastro.2011.11.026. Epub 2011 Nov 22.)の報告に記載のものを使用した。
図19から分かる通り、KLHL5 mRNA高発現群(図中の下のライン)では、KLHL5 mRNA低発現群(図中の上のライン)と比較して統計学的に有意に「無病生存率」が低下していた。
上記の結果からも、KLHL5遺伝子が、大腸癌マーカーとして有用であることが裏付けられた。
図20-1は、ヒト進行大腸癌組織の上層、中層、下層の分類法、図20-2はKLHL5蛋白質強度の数値化の定義について示した図である。
KLHL5蛋白の発現強度については、免疫染色を行った大腸癌組織を用い、KLHL5蛋白陽性細胞数の計測及び染色濃度の評価により数値化した。
Claims (9)
- 下記(X)の遺伝子に結合するsiRNA遺伝子、shRNA遺伝子、miRNA遺伝子、アンチセンスRNA、核酸アプタマー、リボザイム、(X)の蛋白質に結合する抗体、ペプチドアプタマー、又はサイクリックマクロペプチドからなる群から選択される少なくとも1種以上を含むことを特徴とする、下記(Y)の癌細胞の増殖及び/又は転移抑制剤。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌 - 下記(X)の遺伝子に結合するsiRNA遺伝子、shRNA遺伝子、miRNA遺伝子、アンチセンスRNA、核酸アプタマー、リボザイム、(X)の蛋白質に結合する抗体、ペプチドアプタマー、又はサイクリックマクロペプチドからなる群から選択される少なくとも1種以上を含むことを特徴とする、下記(Y)の予防及び/又は治療薬。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌 - 下記(X)の蛋白質に結合する抗体、ペプチドアプタマー、サイクリックマクロペプチド、(X)の遺伝子を増幅可能なプライマーセット、又は(X)の遺伝子に特異的にハイブリダイズするプローブからなる群から選択される少なくとも1種以上を含むことを特徴とする、下記(Y)の診断キット。
(X)KLHL5蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌 - 下記(1)及び(2)の工程を含むことを特徴とする、生体試料の測定方法。
(1)生体試料中の、下記(X)蛋白質の存在量又は下記(X)遺伝子の発現量を測定する工程
(2)(1)で測定された(X)蛋白質の存在量又は(X)遺伝子の発現量が、当該生体試料と同種の正常組織由来の対照試料中の(X)蛋白質の存在量又は(X)遺伝子の発現量と比較して多い場合に、前記生体試料が下記(Y)の癌患者由来のものであると判定する工程
(X)KLHL5蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌 - 下記(A)及び/又は(B)の工程を指標とする、大腸癌の進行度合い又は他の臓器や組織への転移又は浸潤の可能性の判定方法。
(A)生体試料中の、下記(X)蛋白質の存在量又は下記(X)遺伝子の発現量を測定する工程
(B)(X)蛋白質の存在位置又は(X)遺伝子の発現位置を測定する工程
(X)KLHL5蛋白質又はその遺伝子 - 下記(X)の蛋白質又はその遺伝子を含むことを特徴とする、下記(Y)の予防及び/又は治療薬のスクリーニング用キット。
(X)KLHL5、KLHL26、KLHL27、又はKLHL36からなる群から選択される蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌 - 請求項6記載のスクリーニング用キットを用いることを特徴とする、下記(Y)の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法。
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌 - 下記(X)の蛋白質に結合する抗体、ペプチドアプタマー、サイクリックマクロペプチド、又は(X)の遺伝子に特異的にハイブリダイズする核酸分子からなる群から選択される少なくとも1種以上を含むことを特徴とする、下記(Y)を識別するのに用いられる試薬。
(X)KLHL5蛋白質又はその遺伝子
(Y)大腸癌又は大腸癌由来の転移癌若しくは浸潤癌から選択される少なくとも1種以上の癌 - 生体由来試料及び請求項8記載の試薬を含むことを特徴とする、大腸癌の進行度、転移度、浸潤度、又は転移可能性を判定するための組成物。
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