JP7343861B2 - 球状炭素粒子およびその製造方法、並びに球状炭素粒子を用いた蓄電デバイス - Google Patents
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Description
上述した通り、特許文献3には、有機物の球状超微粒子は記載されている。しかし、同文献には、超微粒子状の炭素を得るためにはフェノール樹脂またはフリフラール樹脂を使用すべきであることが記載されており、有機物としてフェノール樹脂を使用した実施例しか記載されていない。また、本発明者らの検討によれば、同文献における球状超微粒子の製造には、特殊な装置が必要とされ、工程数も多いといった問題がある。
また、特許文献4では、リグニンを使用した微粒子の製造方法が検討されているが、本発明者らの検討によれば、熱プラズマ処理を必要とする等、特殊な装置を必要とするといった問題がある。
すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕BET法により求めた比表面積は500m2/g以上1900m2/g以下であり、酸素元素含有量は1質量%以上15質量%以下であり、硫黄元素含有量は0.8質量%以上であり、CuKα線を用いて測定される(002)面の面間隔d002は3.3Å以上3.7Å以下である、球状炭素粒子。
〔2〕前記球状炭素粒子のラマンスペクトルによる1360cm-1付近のDバンドの半値幅は270cm-1以上330cm-1以下であり、R値は0.8以上1.5以下である、前記〔1〕に記載の球状炭素粒子。
〔3〕前記球状炭素粒子の体積平均粒径は100nm以上5.0μm以下である、前記〔1〕または〔2〕に記載の球状炭素粒子。
〔4〕リグニン、水、金属水酸化物、およびアルデヒドを混合して水溶液を得る工程、前記水溶液を噴霧乾燥する工程、および得られた噴霧乾燥物を炭化して球状炭素粒子を得る工程を含む、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の球状炭素粒子の製造方法。
〔5〕前記炭化工程は不活性ガス雰囲気下400℃以上1000℃以下の温度で行う、前記〔4〕に記載の方法。
〔6〕前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の球状炭素粒子を含む、非水電解質蓄電デバイス用電極。
〔7〕前記〔6〕に記載の電極を含む、非水電解質蓄電デバイス。
本発明の球状炭素粒子において、BET法により求めた比表面積は500m2/g以上1900m2/g以下であり、酸素元素含有量は1質量%以上15質量%以下であり、硫黄元素含有量は0.8質量%以上であり、CuKα線を用いて測定される(002)面の面間隔d002は3.3Å以上3.7Å以下である。
球状炭素粒子のBET法により求めた比表面積(以下において、単に「比表面積」とも称する)は500m2/g以上1900m2/g以下である。比表面積が500m2/g未満であると、細孔容積が小さいことに起因して蓄電デバイスとしての静電容量が小さいため、エネルギー密度の高維持率を得ることは困難である。比表面積が1900m2/gより大きいと、質量当たりの電解質吸着量は増大するが体積当たりの静電容量が低下する結果、電気二重層キャパシタ性能が低下する可能性がある。比表面積は、好ましくは520m2/g以上、より好ましくは550m2/g以上であり、好ましくは1700m2/g以下、より好ましくは1600m2/g以下である。比表面積が前記下限値以上であり前記上限値以下であると、球状炭素粒子を例えば電気二重層キャパシタに使用した場合に、高電圧駆動においてさえも、長期にわたって更に高い静電容量およびエネルギー密度が維持されやすい。比表面積は、球状炭素粒子の製造において用いる金属水酸化物の種類または量を適宜調整することによって、或いは球状炭素粒子の製造方法における炭化温度または炭化時間を適宜調整することによって、前記下限値以上および前記上限値以下に調整できる。比表面積は、後述の実施例に記載の通り、窒素吸着等温線を測定する方法によって求めることができる。
球状炭素粒子の酸素元素含有量は、1質量%以上15質量%以下である。酸素元素含有量が1質量%未満であると、炭素に由来する物性が支配し、酸素元素を含有することによる効果(例えば溶媒親和性)を得ることが困難であり、酸素元素含有量が15質量%より大きいと、熱安定性が低く、球状形状を維持することが困難である。酸素元素含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは14質量%以下、より好ましくは12質量%以下である。酸素元素含有量が前記下限値以上であり前記上限値以下であると、酸素元素を含有することによる効果を得やすい。酸素元素含有量は、球状炭素粒子を製造する際に使用する出発材料の選択、または炭化処理条件の調整によって、例えば、出発材料としてクラフトリグニンを使用し、金属水酸化物と反応させ、熱分解を抑制した温度で炭化することによって、前記下限値以上および前記上限値以下に調整できる。酸素元素含有量は、後述の実施例に記載の通り、酸素・窒素・水素分析装置を用いて測定できる。
球状炭素粒子の硫黄元素含有量は、0.8質量%以上である。硫黄元素含有量が0.8質量%未満であると、静電容量の優れたデバイスを得ることは困難である。硫黄元素含有量は、好ましくは0.9質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上である。硫黄元素含有量の上限値は特に限定されない。硫黄元素含有量は、通常は3.0質量%以下であり、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.8質量%以下である。硫黄元素含有量が前記下限値以上であり前記上限値以下であると、静電容量のより優れたデバイスを得やすい。硫黄元素含有量は、例えば、球状炭素粒子を製造する際に使用する(硫黄元素を含有する)出発材料を(例えば苛性ソーダ水溶液と一緒に加熱する等の方法により)加水分解することによって、或いは出発材料を硫酸等の硫黄元素含有成分で変性し、その変性量を調整することによって、前記下限値以上および前記上限値以下に調整できる。硫黄元素含有量は、例えば元素分析または蛍光X線分析によって、求めることができる。
球状炭素粒子のCuKα線を用いて測定される(002)面の面間隔d002(以下において、単に「面間隔d002」とも称する)は3.3Å以上3.7Å以下である。面間隔d002が3.3Å未満であるかまたは3.7Åより大きいと、低温での静電容量維持率に優れた蓄電デバイスをもたらすことは困難である。面間隔d002は、好ましくは3.35Å以上、より好ましくは3.4Å以上、特に好ましくは3.5Å以上であり、好ましくは3.67Å以下、より好ましくは3.65Å以下である。面間隔d002が前記下限値以上であり前記上限値以下であると、低温での静電容量維持率に優れた蓄電デバイスをもたらしやすい。また、イオンが侵入しやすくなるため、入出力特性に優れる蓄電デバイスを得やすい。面間隔d002は、例えば球状炭素粒子の製造方法における噴霧乾燥時の固形分濃度若しくは吐出速度または炭化時の温度若しくは時間を適宜調整することによって、前記下限値以上および前記上限値以下に調整できる。面間隔d002は、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
本発明の一実施態様である球状炭素粒子は、ラマン分光測定において、1360cm-1付近にピークを有する。このピークは、一般にDバンドと称されるラマンピークであり、グラファイト構造の乱れおよび欠陥に起因するピークである。1360cm-1付近のDバンドの半値幅(以下において、単に「半値幅」とも称する)は、乱れた構造の量を表しており、本発明の好ましい一実施態様では、好ましくは270cm-1以上330cm-1以下、より好ましくは280cm-1以上320cm-1以下である。半値幅が広すぎないことにより、多すぎる末端構造に起因した電気抵抗の増大を抑制しやすく、半値幅が狭すぎないことにより、十分な量の、吸着の起点になる構造を得やすい。Dバンドの半値幅は、例えば金属水酸化物の添加量、並びに炭化工程の温度および処理時間を適宜調整することによって、前記範囲内に調整できる。
1360cm-1付近のピーク強度(ID)と1580cm-1付近のピーク強度(IG)との強度比(ID/IG)は一般にR値と称され、球状炭素粒子の結晶性に関係する。ここで、球状炭素粒子の結晶性が高すぎると、グラファイト構造の発達により炭素エッジが減少し、電解質の配位サイトが少なくなる傾向がある。その結果、低温特性の低下、または電気抵抗の増大といった問題が起こり得る。一方、球状炭素粒子の結晶性が低すぎると、非晶質が多くなり、電気抵抗が高くなる傾向がある。その結果、電解質と電極材料との界面の電気二重層の利用効率が低下し得る。上記の観点から、R値は、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.82以上、特に好ましくは0.85以上である。また、R値は、電解液親和性の観点から、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.4以下(例えば1.3以下)、更に好ましくは1.2以下、特に好ましくは1.17以下である。R値が前記下限値以上であり前記上限値以下であると、球状炭素粒子を例えば電気二重層キャパシタに使用した場合に、高電圧駆動においてさえも、長期にわたって更に高い静電容量およびエネルギー密度が維持されやすい。R値は、例えば金属水酸化物の添加量、並びに炭化工程の温度および処理時間を適宜調整することによって、前記下限値以上および前記上限値以下に調整できる。
球状炭素粒子の体積平均粒径は、好ましくは100nm以上、より好ましくは110nm以上、特に好ましくは120nm以上であり、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは4.9μm以下、特に好ましくは4.5μm以下である。体積平均粒径が前記下限値以上であり前記上限値以下であると、電極密度が高く体積効率の良い、かつ入出力特性に優れる蓄電デバイスを得やすい。体積平均粒径は、例えば球状炭素粒子の製造方法における噴霧乾燥条件を適宜調整することによって、前記下限値以上および前記上限値以下に調整できる。体積平均粒径は、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
本発明の球状炭素粒子は、尖頭部分または平面部分を有さない粒子が個数換算で全体の好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上、更により好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上である。尖頭部分または平面部分を有さない粒子の個数は、例えば、走査型顕微鏡等により測定できる。
本発明において、球状は、真球状、楕円球状、ドーナツ状および複数個の孔を持つ球状からなる群から選択される1以上の形状である。また、本発明の球状炭素粒子は、例えば、表面に凹凸を有していてもよいし、歪みまたは一部欠けた部分を有していてもよい。球状炭素粒子はまた、球状が2~10個結合した形状(例えば雪だるま状、蝶ネクタイ状およびブドウの房状)の粒子を含んでいてもよい。なお、球状は、棒状、繊維状および板状等ではない。
本発明の球状炭素粒子は、例えば、
リグニン、水、金属水酸化物、およびアルデヒドを混合して水溶液を得る工程、
前記水溶液を噴霧乾燥する工程、および
得られた噴霧乾燥物を炭化して球状炭素粒子を得る工程
を含む製造方法により製造できる。この製造方法により、本発明の球状炭素粒子は、効率的かつ安全に製造できる。
前記製造方法では、0.1質量%以上の硫黄元素を含むリグニンを好ましくは使用する。このようなリグニンは、一般的にクラフトリグニンと呼ばれており、製紙業においてセルロース抽出後の廃棄物として得られる。具体的には、例えばパルプの製造過程で生成した黒液を鉱酸で酸性化し、析出した沈殿を洗浄して調製することができる。このようにして得られたリグニンは、調製工程中で、その主要な結合であるエーテル結合が切断され、著しく低分子化されるので、その数平均分子量は通常3500~4500となる。また、クラフトリグニンは、他の方法で単離されたリグニンと比べて多量のフェノール性水酸基を有していることから化学的活性に富んでいるため、高い密度の炭素形成に好ましい。
リグニンの硫黄元素含有量は、リグニンの分子量の低下を抑制しやすく、その結果炭素縮合が十分に進みやすい観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。また、硫黄元素含有量は、使用する機器を腐食する可能性のある二酸化硫黄等の排出が抑制されやすい観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下である。硫黄元素含有量は、例えば、硫黄元素を含有するリグニンを(例えば苛性ソーダ水溶液と加熱する等の方法により)加水分解することにより、或いはリグニンを硫酸等の硫黄元素含有成分で変性し、その変性量を調整することにより、前記下限値以上および前記上限値以下に調整できる。硫黄元素含有量は、元素分析または蛍光X線分析によって測定できる。
金属水酸化物を塩基触媒として、リグニンをアルデヒドと反応させることにより、リグニンに含まれるフェノール部分とアルデヒドが反応し、熱架橋し得る官能基が付与される。これらが混合時または噴霧乾燥時の加熱によって架橋され、分子量が増大し、強固な三次元ネットワークが形成されることにより、溶融することなく良好な炭化収率で球状炭素粒子を得ることができる。更に、アルデヒド付加反応の触媒であった金属水酸化物は、噴霧乾燥時に固化して微細孔の鋳型として機能するほか、炭化時には賦活反応をも触媒し、球状炭素粒子に高い比表面積をもたらすことができる。
得られた水溶液を噴霧乾燥することにより、球状炭素粒子の前駆体を得ることができる。噴霧乾燥は、例えば、超音波または気体を導入しながら水溶液を霧化し、霧化物を加熱乾燥するか、またはスプレー等を用いて水溶液から微細な液滴を作製し、得られた液滴を加熱乾燥することにより実施できる。
加熱乾燥による溶媒の除去は、常圧下または減圧下のいずれで実施してもよい。常圧下で実施する場合には、不活性ガス雰囲気下、例えば窒素雰囲気下に行うことが、安全性の観点から好ましい。
次いで、得られた噴霧乾燥物(球状炭素粒子の前駆体)を炭化することにより、球状炭素粒子を得ることができる。炭化工程は、一段の炭化工程でも多段の炭化工程でもよい。多段の炭化工程を行う場合は、連続的に行っても、一旦冷却して行ってもよい。
球状炭素粒子は、後述する任意の解砕工程および/または任意の分級工程の前または後に、1回または複数回、酸性水溶液で洗浄してよく、酸性水溶液で洗浄することが好ましい。酸性水溶液で洗浄することによって、過剰のまたは残留した金属水酸化物を除去できる。酸性水溶液で球状炭素粒子を洗浄した後、イオン交換水で洗液が中性になるまで洗浄し、球状炭素粒子に付着した酸性水溶液を除去することが極めて好ましい。洗浄に使用する酸性水溶液としては、塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等の鉱酸の水溶液、ギ酸および酢酸等の有機酸の水溶液を使用することができる。金属水酸化物の除去性、球状炭素粒子への浸透性、および球状炭素粒子表面における残留性を考慮すると、塩酸水または酢酸水溶液を使用することが好ましい。酸性水溶液中の酸の濃度は特に制限されるものではなく、使用する酸成分の種類に応じて異なるが、通常、pH=-1~5の酸性水溶液を用いることが好ましく、pH=0~3の酸性水溶液を用いることがより好ましい。1回の洗浄のために使用する酸性水溶液の量は、好ましくは球状炭素粒子の1質量倍以上300質量倍以下、より好ましくは5質量倍以上200質量倍以下の量である。洗浄後は、適当に乾燥することが好ましい。
本発明の製造方法では、炭化工程後または任意の酸洗浄工程の後に解砕を実施してもよい。この工程では、噴霧乾燥および/または炭化により融着または凝集した炭化物を解砕し、目的の大きさに調整することができる。
本発明の製造方法は、炭化工程後または必要に応じて行ってよい酸洗浄工程若しくは解砕工程の後に分級を実施してもよい。分級によって、球状炭素粒子の体積平均粒径をより正確に調整することができ、また、特定の寸法より小さい粒子(例えば体積平均粒径が0.1μm未満の粒子)、および特定の寸法より大きい粒子(例えば体積平均粒径が50μm以上の粒子)を除去することもできる。
分級を行う場合、その例として篩による分級、湿式分級、または乾式分級を挙げることができる。湿式分級機としては、例えば重力分級、慣性分級、水力分級、または遠心分級等の原理を利用した分級機を挙げることができる。乾式分級機としては、沈降分級、機械的分級、または遠心分級の原理を利用した分級機を挙げることができる。
本発明の球状炭素粒子は、非水電解質蓄電デバイス用電極に使用できる。従って、本発明はまた、本発明の球状炭素粒子を含む非水電解質蓄電デバイス用電極も対象とする。本発明の電極は、非水電解質蓄電デバイスの分極性電極(例えば塗布電極またはシート電極)として使用することができる。
非水電解質蓄電デバイス用電極は、例えば、本発明の球状炭素粒子、結合剤(バインダー)、導電性付与剤および溶剤(例えば水)を混合し、得られた混合物を公知の方法により、集電材(例えばアルミ箔等)に塗布して溶媒を除去した後、加圧成形することにより製造できる。
結合剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニリデン等のフッ素系高分子化合物、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンラバー、石油ピッチ、およびフェノール系樹脂等を単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。結合剤の添加量は、使用する結合剤の種類によっても異なるが、上記混合物の質量に対して、好ましくは1~10質量%であり、より好ましくは2~9質量%である。結合剤の添加量が前記範囲内であると、球状炭素粒子および導電性付与剤と集電材との十分な結合を得やすく、所望の内部抵抗を有する蓄電デバイスをもたらしやすい。
導電性付与剤としては、アセチレンブラックおよびケッチェンブラック等を単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明はまた、本発明の電極を含む非水電解質蓄電デバイスも対象とする。
非水電解質蓄電デバイスの例としては、非水電解質を用いたキャパシタ(例えば電気二重層キャパシタ)および二次電池が挙げられる。
電気二重層キャパシタは、一般に、電極、電解液、およびセパレータを主構成要素として含み、セパレータを介在させた一対の電極、またはセパレータと電極とを交互に積層させた積層物を電解液中に浸漬させた構造を有する。電極以外の構成要素としては、一般的に使用されている構成要素を使用することができる。
そのような非水溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネート等のカーボネート類;アセトニトリルおよびプロピオニトリル等のニトリル類;γ-ブチロラクトンおよびγ-バレロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシドおよびジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルホルムアミドおよびジエチルホルムアミド等のアミド類;テトラヒドロフランおよびジメトキシエタン等のエーテル類;並びにジメチルスルホランおよびスルホラン等を挙げることができる。これらの非水溶媒は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
これらの非水溶媒に溶解させる電解質としては、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラプロピルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリメチルエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ジエチルジメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、N-エチル-N-メチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、N,N-テトラメチレンピロリジニウムテトラフルオロボレートおよび1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートのようなアンモニウムテトラフルオロボレート類;テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラプロピルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、トリメチルエチルヘキサフルオロホスフェート、トリエチルメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートおよびジエチルジメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートのようなアンモニウムヘキサフルオロホスフェート類;並びにリチウムヘキサフルオロホスフェートおよびリチウムテトラフルオロボレート等が挙げられる。非水溶媒中の電解質の濃度は、所望の静電容量を得やすい観点から、好ましくは0.5~5mol/L、より好ましくは1~2.5mol/Lである。
なお、以下に本発明の球状炭素粒子の物性値(「比表面積」、「元素含有量」、「(002)面の面間隔d002」、「ラマンスペクトルによる1360cm-1付近のDバンドの半値幅」、「R値」および「体積平均粒径」)の測定法を記載するが、実施例を含めて、本明細書中に記載する物性値は、以下の方法により求めた値に基づくものである。
〔比表面積〕
以下にBETの式から誘導された近似式を記す。
具体的には、日本BELL社製「BELL Sorb Mini」を用いて、以下のようにして液体窒素温度における球状炭素粒子への窒素の吸着量を測定した。球状炭素粒子を試料管に充填し、試料管を-196℃に冷却した状態で、一旦減圧し、その後所望の相対圧にて球状炭素粒子に窒素(純度99.999%)を吸着させた。各所望の相対圧にて平衡圧に達した時の試料に吸着した窒素量を吸着ガス量vとした。
株式会社堀場製作所製「酸素・窒素・水素分析装置EMGA-930」を用いて酸素元素含有量の測定を行った。
この装置の検出方法は、不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法(NDIR)であり、校正は、Snカプセル、およびSS-3(標準試料)により行った。前処理として250℃で約10分間脱水処理を施した試料20mgを、Snカプセルに量り取り、元素分析装置内で30秒間脱ガスした後、測定を行った。3検体を分析し、その平均値を分析値とした。
株式会社堀場製作所製「炭素・硫黄分析装置EMIA-920V2 HORIBA製」を用いて硫黄元素含有量の測定を行った。
この装置の検出方法は、酸素気流中燃焼(高周波誘導加熱炉方式)-非分散赤外吸収法(NDIR)であり、校正は、アルミナ坩堝に助燃剤であるW(タングステン)とSn(スズ)のみを入れてブランクとし、標準物質であるJSS152-18[C:0.277%、S:0.0056%]およびJSS150-16[S:0.0296%]を用いて行った。前処理として250℃で約10分間脱水処理を施した試料50mg、粒子状タングステン1.5g、粒子状スズ0.3gをアルミナ坩堝に量り取り、元素分析装置内で30秒間脱ガスした後、純酸素気流下で高周波により加熱燃焼させ、測定を行った。3検体を分析し、その平均値を分析値とした。
球状炭素粒子を試料ホルダーに充填し、「株式会社リガク製MiniFlexII」を用い、Niフィルターにより単色化したCuKα線を線源とし、X線回折図形を得た。X線回折図形のピーク位置は重心法(回折線の重心位置を求め、これに対応する2θ値でピーク位置を求める方法)により求め、標準物質用高純度シリコン粉末の(111)面の回折ピークを用いて補正した。CuKα線の波長を0.15418nmとし、以下に記すBraggの公式により面間隔d002を算出した。
株式会社堀場製作所製「LabRAM ARAMIS」を用い、レーザー波長532nmの光源を用いて、ラマンスペクトルを測定した。各試料において無作為に5箇所の粒子をサンプリングし、測定を実施した。測定条件は、波長範囲50~2000cm-1、積算回数1000回であり、5箇所の平均値を計測値として算出した。
1360cm-1付近のDバンドの半値幅は、上記測定条件にて得られたスペクトルに対し、Dバンド(1360cm-1付近)とGバンド(1580cm-1付近)とのピーク分離を、ガウス関数でフィッティングして実施した後、測定した。また、R値は、DバンドとGバンドの各ピークの強度比ID/IG(Dバンドピーク強度/Gバンドピーク強度)であって、得られたスペクトルを用いて算出した。
体積平均粒径(粒度分布)は、以下の方法により測定した。界面活性剤[和光純薬工業株式会社製「TritonX100」]を0.3質量%含む水溶液に試料を投入し、超音波洗浄器で10分以上処理し、試料を水溶液中に分散させた。この分散液を用いて粒度分布を測定した。粒度分布測定は、粒径・粒度分布測定器(日機装株式会社製「マイクロトラックM T3000」)を用いて行った。D50は、累積体積が50%となる粒径であり、この値を体積平均粒径として用いた。
〔球状炭素粒子の製造〕
1Lセパラブルフラスコに、硫黄元素含有量が2質量%であるリグニン12gを秤取し、イオン交換水320mLを添加した。得られた混合物をメカニカルスターラーで撹拌しながら、水酸化カリウムを0.4g添加してリグニンを溶解し、更にホルムアルデヒド水溶液(36質量%)を4.2mL添加し、リグニン水溶液を得た。
標準サイクロンを装着したスプレードライヤーB-290(Buchi製)を用い、流通量357L/時で窒素を流通させながら、液体材料の挿入部を200℃に加熱した状態で、得られたリグニン水溶液を噴霧乾燥した。固形分回収率は82.7質量%であった。
得られた噴霧乾燥物2gを、焼成ボートに入れ、管状炉(50φ,500mm)にて、窒素気流1L/分の不活性ガス雰囲気下700℃で4時間炭化した。得られた炭化物を1N塩酸水300mLで洗浄し、更にイオン交換水で中性を示すまで洗浄して乾燥し、球状炭素粒子を得た。
収率は83.2質量%(8.26g)であった。得られた球状炭素粒子の分析結果を表1に示す。また、得られた球状炭素粒子の電子顕微鏡観察写真を図1に示す。
得られた球状炭素粒子、JSR株式会社製のスチレン-ブタジエンラバー(SBR)、第一工業製薬株式会社製のカルボキシメチルセルロース(CMC)、および電気化学工業株式会社製のアセチレンブラックを、球状炭素粒子:SBR:CMC:アセチレンブラック=90:3:2:5(質量比)になるように秤取し、これらを水と混合し、スラリーを得た。得られたスラリーを、厚さ20μmの宝泉株式会社製のエッチドAl箔にバーコーターで塗布した。スラリーが塗布されたエッチドAl箔を、ガラスチューブオーブンを用いて減圧雰囲気下150℃で7時間乾燥することにより、分極性電極を得た。得られた分極性電極の厚さは100μmであった。
電気二重層キャパシタとしての静電容量およびエネルギー密度を、2032型コインセルを作製して評価するため、得られた分極性電極を用いて、下記手順に従って電気二重層キャパシタを作製した。
2032型コインセル部材は宝泉株式会社から入手した。得られた分極性電極を14mmΦの寸法に打抜いたものを電極として用いた。セパレータとして、日本板硝子株式会社製のガラス繊維セパレータを17mmΦに打抜いたものを用いた。電解液として、富山薬品工業株式会社製のトリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレートのプロピレンカーボネート溶液(TEMA-BF4/PC、1.4mol/L)を用いた。2032型コインセルの作製は、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で行った。セパレータを介して上記電極2枚を重ね合わせてコインセルの中に入れ、電解液を注入した。電極およびセパレータを電解液で十分に含浸させた後、かしめ機を用いて封止することにより、電気二重層キャパシタを得た。
<静電容量>
作製した電気二重層キャパシタを充放電装置(株式会社計測器センター製BLS5516)に接続し、25℃で、電圧が2.5Vになるまで電流密度3mA/cm2で定電流充電を行い、次いで、2.5Vの定電圧で2時間充電した。充電後、定電流(電流密度3mA/cm2)でキャパシタの放電を行った。このとき、キャパシタ電圧(V1,V2)および放電時間(t1,t2)を測定し、下記式からキャパシタの静電容量を算出した。また、キャパシタの静電容量を、電極における球状炭素粒子の総質量で除することにより、質量基準の静電容量を算出した。結果を表2に示す。
F(V1-V2)=-I(t1-t2)
F:キャパシタの静電容量(F)
V1:2.5(V)
V2:1.5(V)
t1:キャパシタ電圧がV1になったときの放電時間(秒)
t2:キャパシタ電圧がV2になったときの放電時間(秒)
I:キャパシタの放電電流(A)
放電開始から放電終了までの放電電力量を、電極における球状炭素粒子の総質量で除することにより、質量基準のエネルギー密度を算出した。結果を表2に示す。
水酸化カリウムの使用量を0.4gから36gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、球状炭素粒子を製造した。収率は37.9質量%(4.55g)であった。得られた球状炭素粒子の分析結果を表1に示す。
また、実施例1で得た球状炭素粒子に代えて上記球状炭素粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電気二重層キャパシタを作製し、その性能評価試験を行った。結果を表2に示す。
1Lセパラブルフラスコにリグニン60gを秤取し、イオン交換水570mLを添加した。得られた混合物をメカニカルスターラーで撹拌しながら、アンモニア水(28質量%)を200mL添加した。そこに、ホルムアルデヒド水溶液(36質量%)20.4mL、アンモニア水(28質量%)5mLおよび酢酸0.5gの混合溶液を添加し、室温で20分撹拌した。更に、オイルバスを用いて80℃で1.5時間撹拌した。その後、撹拌しながら室温に冷却し、リグニン水溶液を得た。
得られたリグニン水溶液を、実施例1と同様にして噴霧乾燥した。固形分回収率は68質量%であった。
得られた噴霧乾燥物2gを、焼成ボートに入れ、管状炉(50φ,500mm)にて、窒素気流1L/分の不活性ガス雰囲気下1200℃で3時間炭化し、球状炭素粒子を得た。
収率は85.6質量%(1.71g)であった。得られた球状炭素粒子の分析結果を表1に示す。
また、実施例1で得た球状炭素粒子に代えて上記球状炭素粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電気二重層キャパシタを作製し、その性能評価試験を行った。結果を表2に示す。
一方、比較例1で得られた球状炭素粒子は、不十分な静電容量および不十分なエネルギー密度しかもたらさなかった。
Claims (7)
- BET法により求めた比表面積は500m2/g以上1900m2/g以下であり、酸素元素含有量は1質量%以上15質量%以下であり、硫黄元素含有量は0.8質量%以上であり、CuKα線を用いて測定される(002)面の面間隔d002は3.3Å以上3.7Å以下である、球状炭素粒子。
- 前記球状炭素粒子のラマンスペクトルによる1360cm-1付近のDバンドの半値幅は270cm-1以上330cm-1以下であり、R値は0.8以上1.5以下である、請求項1に記載の球状炭素粒子。
- 前記球状炭素粒子の体積平均粒径は100nm以上5.0μm以下である、請求項1または2に記載の球状炭素粒子。
- 0.1質量%以上の硫黄元素を含むリグニン、水、金属水酸化物、およびリグニンの質量に対して0.01質量%以上のアルデヒドを混合して水溶液を得る工程、
前記水溶液を噴霧乾燥する工程、および
得られた噴霧乾燥物を不活性ガス雰囲気下400℃以上1000℃以下の温度で炭化して球状炭素粒子を得る工程
を含む、請求項1~3のいずれかに記載の球状炭素粒子の製造方法。 - 前記炭化工程は500℃以上900℃以下の温度で行う、請求項4に記載の方法。
- 請求項1~3のいずれかに記載の球状炭素粒子を含む、非水電解質蓄電デバイス用電極。
- 請求項6に記載の電極を含む、非水電解質蓄電デバイス。
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