JP7340725B1 - レーザー溶着用樹脂組成物、複合成形体、及び樹脂組成物のレーザー光透過率向上方法 - Google Patents

レーザー溶着用樹脂組成物、複合成形体、及び樹脂組成物のレーザー光透過率向上方法 Download PDF

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Abstract

レーザー溶着に適したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びその製造方法を提供する。ポリアリーレンスルフィド樹脂を含む成形体のレーザー光透過率を向上させる方法を提供する。ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部と、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カルシウム、酢酸カリウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及び塩基性炭酸亜鉛からなる群から選ばれる1以上を含むレーザー光透過率向上剤0.03質量部以上1.05質量部以下と、を含む、レーザー溶着用樹脂組成物とする。

Description

本発明は、レーザー溶着用樹脂組成物、複合成形体、及び樹脂組成物のレーザー光透過率向上方法に関する。
樹脂成形体同士を接合する技術として、レーザー溶着が知られている。レーザー溶着では、光源から発せられるレーザー光を透過する透過側成形体と、レーザー光を吸収する吸収側成形体とを、接合させたい面同士が接するように重ね合せ、透過側成形体側から吸収側成形体側に向けてレーザー光を照射する。レーザー光の照射により、重ね合せた界面が発熱して溶融し接合される。そのため、透過側成形体に用いられる樹脂組成物は、レーザー光の透過率が高いほど好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂は、耐熱性、機械的物性、耐化学薬品性、寸法安定性、難燃性に優れていることから、電気・電子機器部品材料、自動車部品材料、化学機器部品材料等に広く使用されている。しかしながら、ポリアリーレンスルフィド樹脂は、光の屈折率が高いため、他の樹脂と比較してレーザー光の透過率が低い。また、ポリアリーレンスルフィド樹脂は、無機充填剤(例えばガラス繊維)と光の屈折率の差が大きいため、無機充填剤を含む樹脂組成物成形体の透過率はさらに低下する。
特許文献1には、レーザー光を透過する樹脂成形部材からなる透過材が、所定の重量平均分子量を有するポリフェニレンスルフィド樹脂からなることが記載されている。特許文献2には、降温結晶化温度が所定の範囲であるレーザー溶着用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が記載されている。
一方、特許文献3には、ポリアリーレンスルフィド樹脂と熱老化防止剤とを含む耐熱老化性樹脂組成物が記載されている。
特開2006-168221号公報 特開2005-15792号公報 特開2014-210914号公報
本発明の第一の課題は、レーザー溶着に適したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
本発明の第二の課題は、ポリアリーレンスルフィド樹脂を含む成形体のレーザー光透過率を向上させる方法を提供することにある。
特許文献1,2は、高分子量のポリアリーレンスルフィド樹脂を用いることでレーザー溶着による接合強度を高めようとするものである。本発明者は、従来の方法とは異なり、樹脂組成物への添加剤を工夫することでレーザー光の透過率を高める方法について鋭意研究を進めた。その結果、驚くべきことに、水酸化亜鉛等の所定の化合物が、ポリアリーレンスルフィド樹脂の分子量の大小に関わらず、レーザー光の透過率を向上させる作用を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は以下の態様を有する。
[1]ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部と、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カルシウム、酢酸カリウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及び塩基性炭酸亜鉛からなる群から選ばれる1以上を含むレーザー光透過率向上剤0.03質量部以上1.05質量部以下と、を含む、レーザー溶着用樹脂組成物。
[2]無機充填剤を、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0を超え105質量部以下含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]無機充填剤が、長手方向に直角な断面積が60μm以上500μm以下である繊維状無機充填剤を含む、[2]に記載の樹脂組成物。
[4]無機充填剤が、平均粒子径が10μm以上40μm以下である粒状無機充填剤を含む、[2]又は[3]に記載の樹脂組成物。
[5]アルコキシシラン化合物を、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0.1質量部以上1.5質量部以下含む、[1]から[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]ポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量が10000以上80000以下である、[1]から[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]レーザー光透過側成形体の製造に用いられる、[1]から[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8][1]から[7]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、レーザー光透過側用の成形体。
[9][1]から[7]のいずれかに記載の樹脂組成物を含むレーザー光透過側成形体と、レーザー光吸収側成形体とを含む、複合成形体。
[10]レーザー溶着用樹脂組成物の製造方法であり、
ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部と、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カルシウム、酢酸カリウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及び塩基性炭酸亜鉛からなる群から選ばれる1以上を含むレーザー光透過率向上剤0.03質量部以上1.05質量部以下とを、溶融混練することを含む、製造方法。
[11]押出機における混練部のシリンダー温度が160℃以上370℃以下で溶融混練することを含む、[10]に記載の製造方法。
[12]ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を含む成形体のレーザー光透過率を向上させる方法であり、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、水酸化カルシウム、酢酸カリウム、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及び塩基性炭酸亜鉛からなる群から選ばれる1以上を0.03質量部以上1.05質量部以下配合することを含む、方法。
[13]ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、無機充填剤をポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0を超え105質量部以下含む、[12]に記載の方法。
[14]無機充填剤が、長手方向に直角な断面積が60μm以上500μm以下の繊維状無機充填剤を含む、[13]に記載の方法。
[15]無機充填剤が、平均粒子径が10μm以上40μm以下である粒状無機充填剤を含む、[13]又は[14]に記載の方法。
[16]ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対してアルコキシシラン化合物を0.1質量部以上1.5質量部以下配合することを含む、[12]から[15]のいずれかに記載の方法。
[17]ポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量が10000以上80000以下である、[12]から[16]のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、レーザー溶着に適したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びその製造方法を提供することができる。本発明によれば、ポリアリーレンスルフィド樹脂を含む成形体のレーザー光透過率を向上させる方法を提供することができる。
実施例及び比較例においてレーザー光透過率の測定に用いた試験片についての概略説明図である。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している場合がある。本明細書において「X~Y」との表現は、「X以上Y以下」であることを意味している。
[レーザー溶着用樹脂組成物]
本実施形態に係るレーザー溶着用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう)は、ポリアリーレンスルフィド樹脂と、レーザー光透過率向上剤とを含む。
(ポリアリーレンスルフィド樹脂)
ポリアリーレンスルフィド樹脂は、以下の一般式(I)で示される繰り返し単位を有する樹脂である。
-(Ar-S)- ・・・(I)
(但し、Arは、アリーレン基を示す。)
アリーレン基は、特に限定されないが、例えば、p-フェニレン基、m-フェニレン基、o-フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’-ジフェニレンスルフォン基、p,p’-ビフェニレン基、p,p’-ジフェニレンエーテル基、p,p’-ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基等を挙げることができる。ポリアリーレンスルフィド樹脂は、上記一般式(I)で示される繰り返し単位の中で、同一の繰り返し単位を用いたホモポリマーの他、異種の繰り返し単位を含むコポリマーとすることができる。
ホモポリマーとしては、アリーレン基としてp-フェニレン基を有する、p-フェニレンスルフィド基を繰り返し単位とするものが好ましい。p-フェニレンスルフィド基を繰り返し単位とするホモポリマーは、極めて高い耐熱性を持ち、広範な温度領域で高強度、高剛性、さらに高い寸法安定性を示すからである。このようなホモポリマーを用いることで非常に優れた物性を備える成形体を得ることができる。
コポリマーとしては、上記のアリーレン基を含むアリーレンスルフィド基の中で、異なる2種以上のアリーレンスルフィド基の組み合わせが使用できる。これらの中では、p-フェニレンスルフィド基とm-フェニレンスルフィド基とを含む組み合わせが、耐熱性、成形性、機械的特性等の高い物性を備える成形体を得るという観点から好ましい。p-フェニレンスルフィド基を70mol%以上含むポリマーがより好ましく、80mol%以上含むポリマーがさらに好ましい。なお、フェニレンスルフィド基を有するポリアリーレンスルフィド樹脂は、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)である。
ポリアリーレンスルフィド樹脂は、一般にその製造方法により、実質的に線状で分岐や架橋構造を有しない分子構造のものと、分岐や架橋を有する構造のものが知られている。一実施形態において、レーザー光の透過率向上の観点から、架橋構造を有する構造を含まないことがより好ましい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の分子量の大きさに関わらず、成形体のレーザー光の透過率を高めることができる。
一実施形態において、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10000以上80000以下であり、より好ましくは30000以上80000以下である。
一実施形態において、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000以上40000未満とすることができ、20000以上38000以下とすることができる。重量平均分子量(Mw)が10000以上40000未満の低分子量のポリアリーレンスルフィド樹脂を用いた場合でも、レーザー光の透過率を高めてレーザー溶着に適したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物とすることができる。
一実施形態において、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、40000以上80000以下とすることができ、50000以上80000以下とすることができる。
一実施形態において、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、70000以上80000以下とすることができる。ポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量(Mw)が70000以上の高分子量のポリアリーレンスルフィド樹脂を用いた場合でも、レーザー光の透過率を高めてレーザー溶着に適したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物とすることができる。
なお、本実施形態に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂は、異なる2種類以上の重量平均分子量(Mw)のポリアリーレンスルフィド樹脂を混合して用いてもよい。2種類以上を混合した場合のポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、混合後のポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量(Mw)である。
重量平均分子量(Mw)の測定は、以下のように行うことができる。すなわち、溶媒として1-クロロナフタレンを使用し、オイルバスで230℃/10分間加熱溶解させて、必要に応じて高温濾過により精製し、0.05質量%濃度溶液を調製する。高温ゲル浸透クロマトグラフ法を行い、標準ポリスチレン換算で重量平均分子量を算出する。測定装置は、例えば、(株)センシュー科学製、製品名「SSC-7000」、UV検出器(検出波長:360nm)を使用する。
ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法は、特に限定されず、従来公知の製造方法によって製造することができる。高分子量のポリアリーレンスルフィド樹脂を得る場合は、例えば、低分子量のポリアリーレンスルフィド樹脂を合成後、公知の重合助剤の存在下で、高温下で重合して高分子量化することで製造することもできる。
一実施形態において、樹脂組成物中のポリアリーレンスルフィド樹脂の含有量は、好ましくは45質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。
一実施形態において、樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂中の、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上がポリアリーレンスルフィド樹脂であり得る。一実施形態において、樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂がポリアリーレンスルフィド樹脂のみからなるように構成することもできる。
(レーザー光透過率向上剤)
本実施形態における「レーザー光透過率向上剤」は、レーザー光透過率向上剤を含まない樹脂組成物の成形体と比べて、レーザー光透過率を高める作用を有する剤を意味している。「レーザー光透過率」は、光路長1.0mmにおける波長800nm~1000nmのレーザー光透過率とする。一実施形態において、レーザー光透過率は、光路長1.0mmにおける波長980nmのレーザー光透過率とすることができる。レーザー光透過率は、分光光度計を用いて測定される。
レーザー光透過率向上剤は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カルシウム、酢酸カリウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及び塩基性炭酸亜鉛からなる群から選ばれる1以上を含む。レーザー光透過率向上剤を含むことで、成形体のレーザー光の透過率を高めることができる。その結果、レーザー溶着に適したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物とすることができる。
レーザー光透過率向上剤は、好ましくは、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及び塩基性炭酸亜鉛からなる群から選ばれる1以上を含み、より好ましくは、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛及び塩基性炭酸亜鉛からなる群から選ばれる1以上を含み、さらに好ましくは、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、水酸化亜鉛及び炭酸亜鉛からなる群から選ばれる1以上を含み、特に好ましくは水酸化亜鉛及び炭酸亜鉛からなる群から選ばれる1以上を含む。一実施形態において、レーザー光透過率向上剤は、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛及び塩基性炭酸亜鉛からなる群から選ばれる1以上のみからなるように構成することもでき、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、水酸化亜鉛及び炭酸亜鉛からなる群から選ばれる1以上のみからなるように構成することもでき、水酸化亜鉛及び炭酸亜鉛からなる群から選ばれる1以上のみからなるように構成することもできる。
特許文献3では、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カルシウム、酢酸カリウム、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及び塩基性炭酸亜鉛は、成形体が長期加熱された場合(ヒートエージング)でも、引張強度、引張伸び、及び抵抗率の低下抑制、誘電率の上昇抑制、及び着色抑制、発生ガスの抑制などをし得る性能(熱老化防止性能)を有することが提案されているが、レーザー光透過率については検討されていない。
一実施形態において、レーザー光透過率向上剤は、成形後に加熱処理(ヒートエージング)する前の成形体のレーザー光透過率を向上させる作用を有する。
レーザー光透過率向上剤の含有量は、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、0.03質量部以上1.05質量部以下であり、好ましくは0.04質量部以上1.00質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上0.90質量部以下であり、さらに好ましくは0.06質量部以上0.80質量部以下であり、特に好ましくは0.07質量部以上0.70質量部以下である。レーザー光透過率向上剤の含有量を、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0.03質量部以上1.05質量部以下とすることにより、成形体のレーザー光の透過率を高めて、レーザー溶着に適したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物とすることができる。
(無機充填剤)
樹脂組成物は、必要に応じて、機械強度の向上の観点から、無機充填剤を含んでいてもよい。上記したように、ポリアリーレンスルフィド樹脂は、無機充填剤(例えばガラス繊維)と光の屈折率の差が大きいため、無機充填剤を含む樹脂組成物成形体の透過率はさらに低下する傾向にある。しかしながら、本実施形態に係る樹脂組成物によれば、無機充填剤を含む場合においても、成形体のレーザー光透過率を向上させて、レーザー溶着に適したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物とすることができる。
無機充填剤の形状は限定されず、繊維状無機充填剤、板状無機充填剤、及び粒状無機充填剤から選ばれる1以上を含むことができる。レーザー光の透過率向上の観点から、繊維状無機充填剤及び粒状無機充填剤の、いずれか一方または併用であることがより好ましい。無機充填剤は、1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。
本実施形態において、「繊維状」とは、異径比が1~4、かつ、平均繊維長(カット長)が0.01~3mmの形状をいう。「板状」とは、異径比が4より大きく、かつ、アスペクト比が1~500の形状をいう。「粒状」とは、異径比が1~4、かつ、アスペクト比が1~2の形状(球状を含む。)をいう。いずれの形状も初期形状(溶融混練前の形状)である。異径比とは、「長手方向に直角な断面の長径(断面の最長の直線距離)/当該断面の短径(長径と直角方向の最長の直線距離)」である。アスペクト比とは、「長手方向の最長の直線距離/長手方向に直角な断面の短径(当該断面における最長距離の直線と直角方向の最長の直線距離)」である。異径比及びアスペクト比は、いずれも、走査型電子顕微鏡及び画像処理ソフトを用いて算出することができる。また、平均繊維長(カット長)はメーカー値(メーカーがカタログなどにおいて公表している数値)を採用することができる。
無機充填剤としては、レーザー光の透過率をより高める観点から、透明な無機充填剤であることが好ましい。透明な繊維状無機充填剤としては、ガラス繊維等が挙げられ、透明な板状無機充填剤としては、ガラスフレーク等が挙げられ、透明な粒状無機充填剤としては、粒状ガラス(ガラスビーズ、ガラス粉等)等が挙げられる。中でも、ガラス繊維及び/又はガラスビーズを含むことが好ましく、ガラスビーズを含むことがより好ましい。
繊維状無機充填剤としては、長手方向に直角な断面形状が円形、略円形、長円形、楕円形、半円、まゆ形、矩形又はこれらの類似形のいずれの繊維状無機充填剤も用いることができ、繊維状無機充填剤を粉砕したミルドファイバーを用いることもできる。長手方向に直角な断面形状は、円形、略円形、長円形、楕円形が特に好ましい。なお、「まゆ形」は、長円形の長手方向の中央付近が内側に窪んだ形状である。
繊維状無機充填剤は、機械物性をより高める観点から、長手方向に直角な断面積が、初期形状(溶融混練前の形状)において、好ましくは15μm以上2000μm以下であり、より好ましくは60μm以上500μm以下であり、さらに好ましくは75μm以上300μm以下である。「長手方向に直角な断面積」は、繊維状無機充填剤の、長手方向に対して直角となる面の面積を意味している。「断面積」は、走査型電子顕微鏡及び画像処理ソフトを用いて測定することができる。長手方向に直角な断面形状が円形、略円形、長円形、楕円形の場合は、走査型電子顕微鏡及び画像処理ソフトを用いて測定した繊維状無機充填剤の断面の最長の直線距離を長径とし、最短の直線距離を短径とした場合に、長径を2で除した値と、短径を2で除した値とを乗じた値に、さらに円周率πを乗じた値とすることができる。
繊維状無機充填剤の平均繊維長は、特に限定されないが、成形体の機械的物性、成形加工性等を考慮し、初期形状における平均繊維長(カット長)が0.01~3mmであることが好ましく、0.05~3mmであることがより好ましく、0.1~3mmであることがさらに好ましく、0.5~3mmであることが特に好ましい。繊維状無機充填剤は、樹脂組成物の比重を軽くする等の目的で、中空の繊維を使用することも可能である。平均繊維長は、上記のとおりである。
板状無機充填剤の平均粒子径(体積基準累積50%径D50)は、初期形状(溶融混練前の形状)において、10μm以上1000μm以下であることが好ましく、30μm以上800μm以下であることがより好ましい。平均粒子径(体積基準累積50%径D50)は、レーザー回折散乱法で測定することができる。
粒状充填剤の平均粒子径(体積基準累積50%径D50)は、初期形状(溶融混練前の形状)において、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上45μm以下であることがより好ましく、10μm以上40μm以下であることがさらに好ましい。平均粒子径(体積基準累積50%径D50)は、レーザー回折散乱法で測定することができる。
ガラスビーズは、表面積が大きいことから、レーザー光の散乱が大きくなり、透過率の向上効果が小さいと予想された。しかしながら、予想に反して、ガラスビーズを含む樹脂組成物においても、透過率の向上効果が高い結果が得られた。
無機充填剤の含有量は、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、好ましくは0を超え105質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上100質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以上95質量部以下であり、さらにより好ましくは15質量部以上90質量部以下であり、特に好ましくは20質量部以上85質量部以下である。
無機充填剤の含有量が、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0を超え105質量部以下であれば、レーザー光透過率の向上効果を維持したまま機械強度をより高めることができる。
(アルコキシシラン化合物)
樹脂組成物は、アルコキシシラン化合物を含むことが好ましい。アルコキシシラン化合物を含むことにより、成形体のレーザー光透過率をより向上させることができ、レーザー溶着により適したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物とすることができる。
アルコキシシラン化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、エポキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン等のアルコキシシランが挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられることが好ましい。アルコキシ基の炭素原子数は1~10が好ましく、特に好ましくは1~4である。
エポキシアルコキシシランの例としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
アミノアルコキシシランの例としては、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ジアリルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ジアリルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
ビニルアルコキシシランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
メルカプトアルコキシシランの例としては、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらの中でも、エポキシアルコキシシランとアミノアルコキシシランが好ましく、特に好ましいものはγ-アミノプロピルトリエトキシシランである。
アルコキシシラン化合物の含有量は、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上1.5質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上1.3質量部以下であり、さらに好ましくは0.2質量部以上1.0質量部以下であり、さらに好ましくは0.2質量部以上0.9質量部以下である。アルコキシシラン化合物の含有量を、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0.1質量部以上1.5質量部以下とすることで、成形体のレーザー光透過率をより向上させることができる。
(その他の添加剤)
樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、滑剤、核剤、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、金属不活性剤、UV吸収剤、安定剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、発泡剤、その他の樹脂等の高分子や、添加剤を含有していてもよい。
一実施形態において、レーザー光透過率の向上効果をより高める観点から、カーボンブラックの含有量は、樹脂組成物中に0.01質量%未満であることが好ましく、0%であることがより好ましい。一実施形態において、顔料の含有量は、樹脂組成物中に0.02質量%未満であることが好ましい。一実施形態において、染料の含有量は、樹脂組成物中に2質量%未満であることが好ましく、1質量%未満であることがより好ましい。
(用途)
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド樹脂を含むので、耐熱性、機械的物性等に優れていることから、電気・電子機器部品材料、自動車部品材料、化学機器部品材料等として広く用いることができる。特に、成形体のレーザー光透過率を高めることができるので、レーザー溶着用成形体を製造するためのレーザー溶着用樹脂組成物として好ましく用いることができる。特に、レーザー光透過側成形体を製造するのに適している。
[樹脂組成物の製造方法]
本実施形態に係るレーザー溶着用樹脂組成物の製造方法は、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部と、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カルシウム、酢酸カリウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及び塩基性炭酸亜鉛からなる群から選ばれる1以上を含むレーザー光透過率向上剤0.03質量部以上1.05質量部以下とを、溶融混練することを含む。
ポリアリーレンスルフィド樹脂及びレーザー光透過率向上剤については、上記のとおりである。
溶融混練は、一般に樹脂組成物の調製に用いられる設備と方法により行うことができる。一般的には必要な成分を混合し、1軸又は2軸の押出機を使用して溶融混練する。その後、押出して成形用ペレットとすることができる。
一般に、押出機のシリンダーにはスクリューが配設されており、このスクリューは上流側から下流側に向けて供給部、可塑化部、混練部を有する。また、シリンダーの上流側の端には、原料を供給するためのホッパが設けられており、下流側の端にはダイが連結されている。
供給部は、シリンダー内に供給された原料を押出方向(下流方向)に搬送する働きを有する。具体的には、順フライトから構成される搬送用のスクリューエレメントを使用し、スクリューを回転させることで原料を押出方向に搬送する。
可塑化部は、原料にせん断力を与え発熱させることにより原料を充分に溶融させる働きを有する。可塑化部には可塑化能力(樹脂を溶融する能力)を有するスクリューエレメントが使用される。
混練部は、溶融状態の原料を充分に混練する働きを有し、ここで原料をより均一に混合する。混練部にも可塑化部と同様に、溶融状態の原料に圧縮応力やせん断応力等をかけることが可能なスクリューエレメントを使用することができる。また、通常、可塑化部と混練部とは搬送用のスクリューエレメントを挟んで連なっているため、可塑化部と混練部とを明確に区別できる。
一実施形態において、樹脂組成物の製造方法は、押出機における混練部のシリンダー温度が、好ましくは160℃以上370℃以下、より好ましくは200℃以上360℃以下で、溶融混練することを含む。なお、可塑化部のシリンダー温度は、300℃以上370℃以下が好ましい。
従来、溶融混練時の混練部のシリンダー温度が低い方が、レーザー光の透過率が高くなる傾向にあると考えられていた。しかしながら、本実施形態に係る樹脂組成物によれば、溶融混練時の混練部のシリンダー温度が高い場合であっても、成形体のレーザー光透過率を向上させる効果が得られる。一実施形態において、溶融混練時の混練部のシリンダー温度は、320℃以上360℃以下とすることができ、320℃を超え360℃以下とすることもできる。
[成形体]
本実施形態に係る成形体は、上記した樹脂組成物を含むレーザー光透過側用の成形体(以下、単に「成形体」ともいう)である。上記した樹脂組成物を含むので、レーザー溶着に適した成形体とすることができる。
成形体は、上記した樹脂組成物を含む成形用ペレットを、射出成形、押出成形、真空成形、圧縮成形等、一般に公知の熱可塑性樹脂の成形法を用いて成形することで製造することができる。
成形時の温度は、レーザー光透過率をより高める観点から、好ましくは300~360℃であり、より好ましくは300~320℃である。
成形体は、光路長1.0mmにおける波長800nm~1000nmのレーザー光透過率が、レーザー光透過率向上剤を含有しないポリアリーレンスルフィド樹脂の成形体よりも高い。
レーザー光透過率は、光路長1.0mmにおける波長800nm~1000nmのレーザー光透過率とする。一実施形態において、レーザー光透過率は、光路長1.0mmにおける波長980nmのレーザー光透過率とすることができる。一実施形態において、レーザー光透過率は、射出成形により形成された縦80mm×横80mm×厚み1.0mm(フィルムゲート、ゲート幅80mm)の成形体の片方の主面側から反対側の主面に向けて垂直にレーザー光(波長800nm~1000nm、好ましくは980nm)を照射した際の透過率として測定することができる。レーザー光透過率は、分光光度計を用いて測定される。
一実施形態において、成形体のレーザー光透過率(T1)と、レーザー光透過率向上剤を含有しないポリアリーレンスルフィド樹脂の成形体のレーザー光透過率(T2)との比(T1/T2)が、ゲート付近において1.02以上(好ましくは1.04以上)であり、成形体の中央付近において1.05以上(好ましくは1.08以上)であり、流動末端側において1.02以上(好ましくは1.04以上)である。
なお、レーザー光透過率は、分光光度計を用いて測定した値である。
[複合成形体]
本実施形態に係る複合成形体は、上記した樹脂組成物を含むレーザー光透過側成形体と、レーザー光吸収側成形体と、を含む。レーザー光透過側成形体については、上記のとおりである。
レーザー光吸収側成形体を構成する樹脂は、特に限定されず、ポリアリーレンスルフィド樹脂とレーザー溶着可能な樹脂であればよく、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の樹脂、その混合物のいずれであってもよい。
レーザー光吸収側成形体は、レーザー光に対する吸収剤又は着色剤を含んでいてもよい。着色剤は、レーザー光の波長に応じて選択でき、例えば公知の無機顔料又は有機顔料を用いることができる。
複合成形体の製造方法は、レーザー光透過側成形体とレーザー光吸収側成形体とを、接合面となる面同士が接するように重ね合わせた状態で、レーザー光吸収側成形体側からレーザー光を照射して両者を溶着することを含む。
レーザー光源としては、特に制限されず、例えば、色素レーザー、気体レーザー(エキシマレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム-ネオンレーザー等)、固体レーザー(YAGレーザー等)、半導体レーザー等が利用できる。レーザー光としては、通常、パルスレーザーが利用される。
[レーザー光透過率の向上方法]
本実施形態に係るレーザー光透過率の向上方法は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を含む成形体のレーザー光透過率を向上させる方法であり、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カルシウム、酢酸カリウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及び塩基性炭酸亜鉛からなる群から選ばれる1以上を0.03質量部以上1.05質量部以下配合することを含む。ポリアリーレンスルフィド樹脂については上記のとおりである。
「レーザー光透過率を向上させる」とは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カルシウム、酢酸カリウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及び塩基性炭酸亜鉛を含まない樹脂組成物の成形品よりも、初期状態において(加熱処理などをする前の状態において)、レーザー光の透過率を高めることを意味している。「レーザー光透過率」については、上記のとおりである。
上記したように、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カルシウム、酢酸カリウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及び塩基性炭酸亜鉛は、成形体のレーザー光の透過率を高める作用を有することが分かった。上記化合物の配合量は、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0.03質量部以上1.05質量部以下であり、好ましくは0.04質量部以上1.00質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上0.90質量部以下であり、さらに好ましくは0.06質量部以上0.80質量部以下であり、特に好ましくは0.07質量部以上0.70質量部以下である。ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0.03質量部以上1.05質量部以下配合することで、成形体のレーザー光の透過率を向上させることができる。
本実施形態に係るレーザー光透過率の向上方法において、アルコキシシラン化合物をさらに配合することが好ましい。アルコキシシラン化合物の種類については上記のとおりである。
アルコキシシラン化合物の配合量は、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上1.5質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上1.3質量部以下であり、さらに好ましくは0.2質量部以上1.0質量部以下であり、さらに好ましくは0.2質量部以上0.9質量部以下である。
本実施形態に係るレーザー光透過率の向上方法において、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、上記した無機充填剤を含有していてもよい。上記したように、ポリアリーレンスルフィド樹脂は、無機充填剤(例えばガラス繊維)と光の屈折率の差が大きいため、無機充填剤を含む樹脂組成物成形体の透過率はさらに低下する傾向にある。しかしながら、本実施形態に係るレーザー光透過率の向上方法によれば、ポリアリーレンスルフィド樹脂が無機充填剤を含む場合においても、成形体のレーザー光透過率を向上させることができる。無機充填剤の種類及び含有量については上記のとおりである。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
[材料]
実施例及び比較例で用いた材料は、以下のとおりである。
PPS-1:ポリフェニレンスルフィド、(株)クレハ製、フォートロン(登録商標)KPS、重量平均分子量(Mw)64000
PPS-2:ポリフェニレンスルフィド、(株)クレハ製、フォートロン(登録商標)KPS、重量平均分子量(Mw)35000
水酸化亜鉛:純正化学(株)製
炭酸亜鉛:正同化学工業(株)製
酸化亜鉛:純正化学(株)製
酢酸ナトリウム:純正化学(株)製
酢酸リチウム:富士フイルム和光純薬(株)製
ガラス繊維-1:日本電気硝子(株)製、「チョップドストランド ECS03T-747」、断面が略円形、平均繊維径13μm、平均繊維長3mm、断面積133μm
ガラス繊維-2:日本電気硝子(株)製、「チョップドストランド ECS03T-747N」、断面が略円形、平均繊維径17μm、平均繊維長3mm、断面積227μm
ガラス繊維-3:日本電気硝子(株)製、「チョップドストランド ECS03T-747H」、断面が略円形、平均繊維径10.5μm、平均繊維長3mm、断面積87μm
ガラスビーズ:ポッターズ・バロティーニ(株)製、「EGB731A」、平均粒子径(50%d)20μm
アルコキシシラン化合物:信越化学工業(株)製、「KBE-903P」
[実施例1-1~1-9、比較例1-1~1-3]
上記材料を用いて、表1に示す組成及び含有割合でドライブレンドした。これを表1に記載の混練部のシリンダー温度の二軸押出機に投入して溶融混練することで、樹脂組成物ペレットを得た。
[実施例2-1~2-3、比較例2]
上記材料を用いて、表2に示す組成及び含有割合でドライブレンドした。これを表2に記載の混練部のシリンダー温度の二軸押出機に投入して(ガラス繊維は押出機のサイドフィード部より別添加)溶融混練することで、樹脂組成物ペレットを得た。
[実施例3-1~3-6、比較例3]
上記材料を用いて、表3に示す組成及び含有割合でドライブレンドした。これを表3に記載の混練部のシリンダー温度の二軸押出機に投入して(ガラス繊維は押出機のサイドフィード部より別添加)溶融混練することで、樹脂組成物ペレットを得た。
[実施例4-1~4-7、比較例4]
上記材料を用いて、表4に示す組成及び含有割合でドライブレンドした。これを表4に記載の混練部のシリンダー温度の二軸押出機に投入して(ガラス繊維は押出機のサイドフィード部より別添加)溶融混練することで、樹脂組成物ペレットを得た。
[実施例5-1~5-5、比較例5-1~5-5]
上記材料を用いて、表5に示す組成及び含有割合でドライブレンドした。これを表5に記載の混練部のシリンダー温度の二軸押出機に投入して(ガラス繊維は押出機のサイドフィード部より別添加)溶融混練することで、樹脂組成物ペレットを得た。
[測定及び評価]
(成形体のレーザー光透過率の測定)
実施例及び比較例で得られたペレットを用いて、射出成形機(ファナック株式会社製)により、シリンダー温度320℃及び金型温度150℃の条件で成形品(縦80mm×横80mm×厚さ1.0mm、フィルムゲート)を成形した。図1に、得られた成形品から試験片を作製する概略説明図を示す。図1において、上がゲート側であり、下が流動末端側を示す。図1に示すように、流動方向に沿って3分割し、中央の分割片について、さらに流動方向に垂直方向に沿って3分割した。得られた3つの分割片を、ゲート側から流動末端側に向かって順に、ゲート側試験片1、中央試験片2、及び流動末端側試験片3とした。
各試験片について、片方の主面側から反対側の主面に向けて垂直に波長980nmのレーザー光を照射し、反対側の主面側において、積分球を使用した分光光度計(日本分光(株)製、型式:V-770)を用いて透過率を測定した。ゲート側試験片1の透過率を「ゲート側透過率」とし、中央試験片2の透過率を「中央透過率」とし、及び流動末端側試験片3の透過率を「流動末端側透過率」として、結果を表1~5に示した。
(透過率の比)
表1において、実施例1-1~1-9のゲート側試験片1、中央試験片2、流動末端側試験片3の各透過率をT1とし、比較例1のゲート側試験片1、中央試験片2、流動末端側試験片3の各透過率をT2(基準)として、ゲート側透過率の比(T1/T2)、中央透過率の比(T1/T2)、及び流動末端側透過率の比(T1/T2)を算出した。
同様に、表2~5において、ゲート側透過率の比(T1/T2)、中央透過率の比(T1/T2)、及び流動末端側透過率の比(T1/T2)を算出した。表2~4では、比較例2~4の値を、それぞれ、T2として使用した。表5では、実施例5-1については、比較例5-1の値をT2として使用した。同様に、実施例5-2~5-5については、実施例と同じ番号の比較例の値をT2として使用した(つまり、例えば実施例5-2については、比較例5-2の値をT2として使用した)。結果を表1~5に示した。
Figure 0007340725000001
Figure 0007340725000002
Figure 0007340725000003
Figure 0007340725000004
Figure 0007340725000005
表1~5に示すように、実施例の樹脂組成物の成形品は、比較例の樹脂組成物の成形品に対して、ゲート側、中央、及び流動末端側の全てにおいてレーザー光の透過率が向上している。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の分子量の大小に関わらず、レーザー光の透過率を向上させる作用を備える。そのため、レーザー溶着用樹脂組成物として好適に利用できる。
1 ゲート側試験片
2 中央試験片
3 流動末端側試験片

Claims (17)

  1. ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部と、
    水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及び塩基性炭酸亜鉛からなる群から選ばれる1以上を含むレーザー光透過率向上剤0.03質量部以上1.05質量部以下と、
    を含む、レーザー溶着用樹脂組成物。
  2. 無機充填剤を、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0を超え105質量部以下含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 無機充填剤が、長手方向に直角な断面積が60μm以上500μm以下である繊維状無機充填剤を含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 無機充填剤が、平均粒子径が10μm以上40μm以下である粒状無機充填剤を含む、請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
  5. アルコキシシラン化合物を、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0.1質量部以上1.5質量部以下含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  6. ポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量が10000以上80000以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  7. レーザー光透過側成形体の製造に用いられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  8. 請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、レーザー光透過側用の成形体。
  9. 請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含むレーザー光透過側成形体と、レーザー光吸収側成形体とを含む、複合成形体。
  10. レーザー溶着用樹脂組成物の製造方法であり、
    ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部と、
    水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及び塩基性炭酸亜鉛からなる群から選ばれる1以上を含むレーザー光透過率向上剤0.03質量部以上1.05質量部以下とを、溶融混練することを含む、製造方法。
  11. 押出機における混練部のシリンダー温度が160℃以上370℃以下で溶融混練することを含む、請求項10に記載の製造方法。
  12. ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を含む成形体のレーザー光透過率を向上させる方法であり、
    ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及び塩基性炭酸亜鉛からなる群から選ばれる1以上を0.03質量部以上1.05質量部以下配合することを含む、方法。
  13. ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、無機充填剤をポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0を超え105質量部以下含む、請求項12に記載の方法。
  14. 無機充填剤が、長手方向に直角な断面積が60μm以上500μm以下の繊維状無機充填剤を含む、請求項13に記載の方法。
  15. 無機充填剤が、平均粒子径が10μm以上40μm以下である粒状無機充填剤を含む、請求項13又は14に記載の方法。
  16. ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対してアルコキシシラン化合物を0.1質量部以上1.5質量部以下配合することを含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
  17. ポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量が10000以上80000以下である、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
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