以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る樹脂材料は、ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物と、平均粒径が50nm以上5μm以下である無機充填材と、硬化剤とを含む。本発明に係る樹脂材料では、上記ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物は、少なくとも二核体と三核体とを含む。本発明に係る樹脂材料では、上記ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定において、全ピーク面積に占める上記三核体のピーク面積割合の、全ピーク面積に占める上記二核体のピーク面積割合に対する比が、0.55以上4.5以下である。
本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、硬化物の反り及びボイドの発生を抑えることができ、かつ繰り返し加熱した場合でも硬化物の誘電正接が変化しにくい。
本発明に係る樹脂材料は、樹脂組成物であってもよく、樹脂フィルムであってもよい。上記樹脂組成物は、流動性を有する。上記樹脂組成物は、ペースト状であってもよい。上記ペースト状には液状が含まれる。取扱性に優れることから、本発明に係る樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。
本発明に係る樹脂材料は、熱硬化性材料であることが好ましい。上記樹脂材料が樹脂フィルムである場合には、該樹脂フィルムは、熱硬化性樹脂フィルムであることが好ましい。
以下、本発明に係る樹脂材料に用いられる各成分の詳細、及び本発明に係る樹脂材料の用途などを説明する。
[(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物]
本発明に係る樹脂材料は、(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物を含む。上記ナフタレン骨格は、(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物において、部分骨格として存在する。(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物は、後述するように、二核体と三核体とを特定の含量比で含む。(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物としては、ナフタレン骨格を有するノボラック型エポキシ化合物、及びナフタレン骨格を有するアラルキル型エポキシ化合物等が挙げられる。
(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物は、ナフタレン骨格を有するノボラック型エポキシ化合物、又はナフタレン骨格を有するアラルキル型エポキシ化合物であることが好ましい。
上記ナフタレン骨格を有するノボラック型エポキシ化合物としては、α-ナフトールノボラックのエポキシ化物;α-ナフトール化合物とホルムアルデヒドとの重縮合体をポリグリシジルエーテル化したエポキシ化合物;β-ナフトール化合物とホルムアルデヒドとの重縮合体をポリグリシジルエーテル化したエポキシ化合物;α-ナフトール化合物、β-ナフトール化合物及びホルムアルデヒドの重縮合体をポリグリシジルエーテル化したエポキシ化合物等が挙げられる。
(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物は、上記ナフタレン骨格を1個有していてもよく、2個以上有していてもよく、3個以上有していてもよく、4個以上有していてもよい。
(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物は、少なくとも二核体と三核体とを含む。(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物は、一核体を含んでいてもよく、四核体を含んでいてもよく、五核体以上の核体を含んでいてもよい。
(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定において、全ピーク面積に占める上記三核体のピーク面積割合(%)の、全ピーク面積に占める上記二核体のピーク面積割合(%)に対する比(三核体のピーク面積割合/二核体のピーク面積割合)は、0.55以上4.5以下である。上記比(三核体のピーク面積割合/二核体のピーク面積割合)が0.55未満であると、硬化物の反りが発生することがある。上記比(三核体のピーク面積割合/二核体のピーク面積割合)が4.5を超えると、ボイドが発生したり、繰り返し加熱した場合の硬化物の誘電正接の変化率が大きくなったりすることがある。
全ピーク面積に占める上記三核体のピーク面積割合(%)の、全ピーク面積に占める上記二核体のピーク面積割合(%)に対する比(三核体のピーク面積割合/二核体のピーク面積割合)は、好ましくは0.6以上、好ましくは4.0以下である。上記比(三核体のピーク面積割合/二核体のピーク面積割合)が上記下限以上であると、硬化物の反りを効果的に抑えることができる。上記比(三核体のピーク面積割合/二核体のピーク面積割合)が上記上限以下であると、ボイドの発生を効果的に抑え、また、繰り返し加熱した場合の硬化物の誘電正接の変化を効果的に抑えることができる。
(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定において、全ピーク面積に占める上記二核体のピーク面積割合(%)は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下である。上記二核体のピーク面積割合が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定において、全ピーク面積に占める上記三核体のピーク面積割合(%)は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。上記三核体のピーク面積割合が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
上記比(三核体のピーク面積割合/二核体のピーク面積割合)、上記二核体のピーク面積割合及び上記三核体のピーク面積割合を求める際のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定は具体的には以下の条件で測定される。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC):
高速液体クロマトグラフ(例えば、Waters社製「ACQUITY APCTMシステム」)を用いて、テトラヒドロフランを移動相とし、流速1.0mL/分で測定を行う。カラムは、分子量分画範囲が200-5,000であるカラム(例えば、Waters社製「ACQUITY APCTMXT 45」)2本と、分子量分画範囲が1,000―30,000であるカラム(例えば、Waters社製「ACQUITY APCTMXT 125」)1本とを直列に接続し、カラム温度を40℃として用いる。
なお、上記比(三核体のピーク面積割合/二核体のピーク面積割合)、上記二核体のピーク面積割合及び上記三核体のピーク面積割合が上記の好ましい範囲を満たす(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物を得る方法としては、例えば、以下の(1)及び(2)の方法が挙げられる。(1)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物を合成する際に、反応条件を調整し、二核体及び三核体の含有量を調整する方法。(2)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)等により測定して、二核体画分及び三核体画分を適宜分取する等して二核体及び三核体の含有量を調整する方法。
(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物の分子量は4000以下であることがより好ましい。この場合には、樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、無機充填材の含有量が50重量%以上であっても、絶縁層の形成時に流動性が高い樹脂材料が得られる。このため、樹脂材料の未硬化物又はBステージ化物を回路基板上にラミネートした場合に、無機充填材を均一に存在させることができる。
(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物の分子量は、該エポキシ化合物が重合体ではない場合、及び該エポキシ化合物の構造式が特定できる場合には、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物の分子量は、該エポキシ化合物が重合体である場合には、重量平均分子量を意味する。
(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物のエポキシ当量は、好ましくは200以上、より好ましくは250以上、好ましくは450以下、より好ましくは400以下である。上記エポキシ当量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物の軟化点は、好ましくは75℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上、好ましくは150℃以下、より好ましくは145℃以下、更に好ましくは140℃以下である。(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物の軟化点が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の熱寸法安定性をより一層高め、メッキピール強度をより一層高めることができる。なお、(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物の軟化点は、90℃以下であってもよく、85℃以下であってもよく、80℃以下であってもよい。
(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物の軟化点は、示差走査熱量測定装置(例えば、TA・インスツルメント社製「Q2000」)を用いて、昇温速度3℃/分で-30℃から200℃まで窒素雰囲気下で加熱を行い、リバースヒートフローの変曲点から求めることができる。
樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物の含有量が上記下限以上であると、誘電正接をより一層低くすることができる。
[(B)平均粒径が50nm以上5μm以下である無機充填材]
上記樹脂材料は、(B)平均粒径が5nm以上5μm以下である無機充填材を含む。(B)無機充填材の使用により、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができる。また、(B)無機充填材の使用により、硬化物の熱による寸法変化がより一層小さくなる。(B)無機充填材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(B)無機充填材としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素等が挙げられる。
硬化物の表面の表面粗さを小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ硬化物により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、(B)無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの使用により、硬化物の熱膨張率がより一層低くなり、また、硬化物の誘電正接がより一層低くなる。また、シリカの使用により、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。シリカの形状は球状であることが好ましい。
硬化環境によらず、樹脂の硬化を進め、硬化物のガラス転移温度を効果的に高くし、硬化物の熱線膨張係数を効果的に小さくする観点からは、(B)無機充填材は球状シリカであることが好ましい。
(B)無機充填材の平均粒径は、50nm以上5μm以下である。(B)無機充填材の平均粒径が50nm未満であると、ボイドが発生しやすく、また、繰り返し加熱した場合の硬化物の誘電正接の変化率が大きくなることがある。(B)無機充填材の平均粒径が5μmを超えると、硬化物の反りが発生することがある。
(B)無機充填材の平均粒径は、好ましくは75nm以上、更に好ましくは100nm以上、好ましくは3μm以下、更に好ましくは2μm以下である。(B)無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、(B)無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、エッチング後の表面粗度を小さくし、かつメッキピール強度を高くすることができ、また、絶縁層と金属層との密着性をより一層高めることができる。
(B)無機充填材の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
(B)無機充填材は、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、更に硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。(B)無機充填材が球状である場合には、(B)無機充填材のアスペクト比は好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
(B)無機充填材は、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤による表面処理物であることがより好ましく、シランカップリング剤による表面処理物であることが更に好ましい。(B)無機充填材が表面処理されていることにより、粗化硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。また、(B)無機充填材が表面処理されていることにより、硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができ、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン、及びエポキシシラン等が挙げられる。
樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、(B)無機充填材の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは65重量%以上、特に好ましくは68重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、更に好ましくは80重量%以下、特に好ましくは75重量%以下である。(B)無機充填材の含有量が上記下限以上であると、誘電正接が効果的に低くなる。(B)無機充填材の含有量が上記上限以下であると、熱寸法安定性を高め、硬化物の反りを効果的に抑えることができる。(B)無機充填材の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくすることができ、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができる。さらに、この無機充填材の含有量であれば、硬化物の熱膨張率を低くすることと同時に、スミア除去性を良好にすることも可能である。
[(C)硬化剤]
上記樹脂材料は、(C)硬化剤を含む。(C)硬化剤は特に限定されない。(C)硬化剤として、従来公知の硬化剤を使用可能である。(C)硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(C)硬化剤としては、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、ジシアンジアミド、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、酸無水物、活性エステル化合物、カルボジイミド化合物(カルボジイミド硬化剤)、ベンゾオキサジン化合物(ベンゾオキサジン硬化剤)、及びマレイミド化合物(マレイミド硬化剤)等が挙げられる。(C)硬化剤は、上記エポキシ化合物のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
(C)硬化剤は、フェノール化合物、シアネートエステル化合物、酸無水物、活性エステル化合物、カルボジイミド化合物、ベンゾオキサジン化合物、及びマレイミド化合物の内の少なくとも1種の成分を含むことが好ましく、活性エステル化合物を含むことがより好ましい。すなわち、上記樹脂材料は、フェノール化合物、シアネートエステル化合物、酸無水物、活性エステル化合物、カルボジイミド化合物、ベンゾオキサジン化合物、及びマレイミド化合物の内の少なくとも1種の成分を含む硬化剤を含むことが好ましく、活性エステル化合物を含む硬化剤を含むことがより好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができ、また、硬化物の誘電正接を低くすることができ、かつ硬化物の熱寸法安定性を高めることができる。
本明細書において、「フェノール化合物、シアネートエステル化合物、酸無水物、活性エステル化合物、カルボジイミド化合物、ベンゾオキサジン化合物、及びマレイミド化合物の内の少なくとも1種の成分」を「成分X」と記載することがある。
したがって、上記樹脂材料は、成分Xを含む硬化剤を含むことが好ましい。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD-2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEH-7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH-7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA1356」及び「LA3018-50P」)等が挙げられる。
上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
上記シアネートエステル化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT-30」及び「PT-60」)、並びにビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA-230S」、「BA-3000S」、「BTP-1000S」及び「BTP-6020S」)等が挙げられる。
上記酸無水物としては、テトラヒドロフタル酸無水物、及びアルキルスチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
上記酸無水物の市販品としては、新日本理化社製「リカシッド TDA-100」等が挙げられる。
上記活性エステル化合物とは、エステル結合を少なくとも1つ有し、かつ、エステル結合の両側に脂肪族鎖、脂肪族環、又は芳香族環が結合している化合物をいう。活性エステル化合物は、例えばカルボン酸化合物又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物又はチオール化合物との縮合反応によって得られる。上記活性エステル化合物の例としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
上記式(1)中、X1は、脂肪族鎖を含む基、脂肪族環を含む基又は芳香族環を含む基を表し、X2は、芳香族環を含む基を表す。上記芳香族環を含む基の好ましい例としては、置換基を有していてもよいベンゼン環、及び置換基を有していてもよいナフタレン環等が挙げられる。上記置換基としては、炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
上記式(1)中のX1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいベンゼン環との組み合わせ、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。さらに、上記式(1)中のX1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいナフタレン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点、熱寸法安定性をより一層高める観点から、上記活性エステル化合物は、ナフタレン骨格を有する活性エステル化合物であることが好ましく、ナフタレン骨格を有しかつ側鎖を有する活性エステル化合物であることが好ましい。上記側鎖としては、ビニル基等の炭素-炭素不飽和結合を有する基、芳香族骨格を有する基、水酸基、活性エステル構造を有する基、及び酸無水物基等のエポキシ基と反応性を有する基が挙げられる。上記側鎖は、ナフタレン骨格を構成している炭素原子と結合していることが好ましい。上記側鎖は、芳香族骨格を有する基であることが好ましい。
上記芳香族骨格を有する基としては、置換基を有していてもよいベンゼン環を有する基、及び置換基を有していてもよいナフタレン環を有する基等が挙げられる。
本発明の効果を更により一層効果的に発揮する観点、熱寸法安定性を更により一層高める観点から、上記ナフタレン骨格はナフチレンエーテル骨格を有することが好ましく、ナフチレンエーテル骨格であることが好ましい。上記ナフチレンエーテル骨格とは、ナフタレン環を構成している炭素原子に酸素原子が結合している骨格をいう。上記ナフチレンエーテル骨格は、ナフチレンエーテル骨格を有する活性エステル化合物において、部分骨格として存在する。
上記活性エステル化合物は、ナフチレンエーテル骨格を有する活性エステル化合物であることが好ましく、ナフチレンエーテル骨格を有しかつ側鎖を有する活性エステル化合物であることが好ましい。上記側鎖は、ナフチレンエーテル骨格を構成している炭素原子と結合していることが好ましく、ナフチレンエーテル骨格を構成している酸素原子と結合していることがより好ましい。
上記活性エステル化合物がナフタレン骨格又はナフチレンエーテル骨格を有する活性エステル化合物である場合、上記式(1)中、X1は、脂肪族鎖を含む基、脂肪族環を含む基又は芳香族環を含む基を表し、X2は、芳香族環を含む基を表し、X1及びX2の内の少なくとも一方がナフタレン骨格又はナフチレンエーテル骨格を有する。
上記活性エステル化合物がナフタレン骨格又はナフチレンエーテル骨格を有する活性エステル化合物である場合、上記式(1)中、X1及びX2は、以下の(i)~(iii)のいずれかの構成であることが好ましい。
(i)上記式(1)中、X1は、脂肪族鎖を含む基、脂肪族環を含む基又は芳香族環を含む基を表し、X2は、ナフタレン骨格又はナフチレンエーテル骨格を含む基を表す。
(ii)上記式(1)中、X1は、ナフタレン骨格又はナフチレンエーテル骨格を含む基を表し、X2は、芳香族環を含む基を表す。
(iii)上記式(1)中、X1は、ナフタレン骨格又はナフチレンエーテル骨格を含む基を表し、X2は、ナフチレンエーテル骨格を含む基を表す。
なお、上記式(1)中、X1がナフタレン骨格又はナフチレンエーテル骨格を含む基である場合に、該X1は、脂肪族鎖又は脂肪族環をさらに有していてもよく、該ナフタレン骨格又は該ナフチレンエーテル骨格とは別に芳香族環をさらに有していてもよい。また、上記式(1)中、X2がナフタレン骨格又はナフチレンエーテル骨格を含む基である場合に、該X2は、該ナフタレン骨格又は該ナフチレンエーテル骨格とは別に芳香族環をさらに有していてもよい。
上記活性エステル化合物は、上記ナフタレン骨格又はナフチレンエーテル骨格を1個有していてもよく、2個以上有していてもよく、3個以上有していてもよく、4個以上有していてもよい。
熱寸法安定性及び難燃性を高める観点からは、上記活性エステル化合物は、上記ナフタレン骨格を構成していない芳香族環又は上記ナフチレンエーテル骨格を構成していない芳香族環を1個以上有することが好ましく、2個以上有することがより好ましい。
上記カルボジイミド化合物は、下記式(2)で表される構造単位を有する。下記式(2)において、右端部及び左端部は、他の基との結合部位である。上記カルボジイミド化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記式(2)中、Xは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、シクロアルキレン基に置換基が結合した基、アリーレン基、又はアリーレン基に置換基が結合した基を表し、pは1~5の整数を表す。Xが複数存在する場合、複数のXは同一であってもよく、異なっていてもよい。
好適な一つの形態において、少なくとも1つのXは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、又はシクロアルキレン基に置換基が結合した基である。
上記カルボジイミド化合物の市販品としては、日清紡ケミカル社製「カルボジライト V-02B」、「カルボジライト V-03」、「カルボジライト V-04K」、「カルボジライト V-07」、「カルボジライト V-09」、「カルボジライト 10M-SP」、及び「カルボジライト 10M-SP(改)」、並びに、ラインケミー社製「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、及び「ハイカジル510」等が挙げられる。
上記ベンゾオキサジン化合物としては、P-d型ベンゾオキサジン、及びF-a型ベンゾオキサジン等が挙げられる。
上記ベンゾオキサジン化合物の市販品としては、四国化成工業社製「P-d型」等が挙げられる。
上記マレイミド化合物は、ビスマレイミド化合物であってもよい。
上記ビスマレイミド化合物としては、芳香族ビスマレイミド化合物、及び脂肪族ビスマレイミド化合物等が挙げられる。
上記脂肪族ビスマレイミド化合物としては、N-アルキルビスマレイミド化合物等が挙げられる。
誘電正接を低くし、硬化温度を低く抑える観点からは、上記マレイミド化合物は、N-アルキルビスマレイミド化合物であることが好ましい。
上記N-アルキルビスマレイミド化合物の市販品としては、Designer Molecules Inc.社製「BMI-1500」、及び「BMI-1700」、「BMI-3000」等が挙げられる。
全てのエポキシ化合物100重量部((A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物と(D)第2のエポキシ化合物との合計100重量部)に対する(C)硬化剤の含有量は、好ましくは70重量部以上、より好ましくは85重量部以上である。全てのエポキシ化合物100重量部((A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物と(D)第2のエポキシ化合物を有さないエポキシ化合物との合計100重量部)に対する(C)硬化剤の含有量は、好ましくは150重量部以下、より好ましくは120重量部以下である。上記含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性により一層優れ、熱寸法安定性をより一層高め、残存未反応成分の揮発をより一層抑制できる。
全てのエポキシ化合物100重量部((A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物と(D)第2のエポキシ化合物との合計100重量部)に対する上記活性エステル化合物の含有量は、好ましくは70重量部以上、より好ましくは85重量部以上である。全てのエポキシ化合物100重量部((A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物と(D)第2のエポキシ化合物との合計100重量部)に対する上記活性エステル化合物の含有量は、好ましくは150重量部以下、より好ましくは120重量部以下である。上記含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性により一層優れ、熱寸法安定性をより一層高め、残存未反応成分の揮発をより一層抑制できる。
上記樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、全てのエポキシ化合物と硬化剤との合計の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。上記樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、全てのエポキシ化合物と硬化剤との合計の含有量は、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。上記合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性により一層優れ、熱寸法安定性をより一層高めることができる。
[(D)第2のエポキシ化合物]
上記樹脂材料は、(D)下記の(D1)~(D3)の内の少なくとも1種のエポキシ化合物(第2のエポキシ化合物)を含むことが好ましい。
(D1)ナフタレン骨格を有さないエポキシ化合物。
(D2)ナフタレン骨格を有しかつ二核体又は三核体を有さないエポキシ化合物。
(D3)ナフタレン骨格を有しかつゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定において、全ピーク面積に占める上記三核体のピーク面積割合(%)の、全ピーク面積に占める上記二核体のピーク面積割合(%)に対する比が、0.55未満であるか、又は、4.5を超えるエポキシ化合物。
(D)第2のエポキシ化合物は、(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物とは異なる。(D)第2のエポキシ化合物として、従来公知のエポキシ化合物を使用可能である。(D)第2のエポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(D)第2のエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。
(D)第2のエポキシ化合物は、グリシジルエーテル化合物であってもよい。上記グリシジルエーテル化合物とは、グリシジルエーテル基を少なくとも1個有する化合物である。
(D)第2のエポキシ化合物は、グリシジルエーテル化合物であることが好ましく、モノグリシジルエーテル化合物であることがより好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができ、また、誘電正接をより一層低くし、かつ硬化物の熱寸法安定性及び難燃性を高めることができる。
誘電正接をより一層低くし、かつ硬化物の線膨張係数(CTE)を良好にする観点からは、(D)第2のエポキシ化合物は、25℃で液状のエポキシ化合物と、25℃で固形のエポキシ化合物とを含むことが好ましい。
上記25℃で液状の(D)第2のエポキシ化合物の25℃での粘度は、1000mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることがより好ましい。
(D)第2のエポキシ化合物の粘度を測定は、例えば動的粘弾性測定装置(レオロジカ・インスツルメンツ社製「VAR-100」)等を用いて測定することができる。
(D)第2のエポキシ化合物の分子量は1000以下であることがより好ましい。この場合には、樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、無機充填材の含有量が50重量%以上であっても、絶縁層の形成時に流動性が高い樹脂材料が得られる。このため、樹脂材料の未硬化物又はBステージ化物を回路基板上にラミネートした場合に、無機充填材を均一に存在させることができる。
(D)第2のエポキシ化合物の分子量は、(D)第2のエポキシ化合物が重合体ではない場合、及び(D)第2のエポキシ化合物の構造式が特定できる場合には、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、(D)第2のエポキシ化合物の分子量は、(D)第2のエポキシ化合物が重合体である場合には、重量平均分子量を意味する。
硬化物の熱寸法安定性をより一層高める観点からは、樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、(D)第2のエポキシ化合物の含有量は、好ましくは2重量%以上、より好ましくは4重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
(D)第2のエポキシ化合物の含有量の(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物の含有量に対する重量比((D)第2のエポキシ化合物の含有量/(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物の含有量)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。上記重量比((D)第2のエポキシ化合物の含有量/(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
[(E)硬化促進剤]
上記樹脂材料は、(E)硬化促進剤を含むことが好ましい。(E)硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。樹脂材料を速やかに硬化させることで、硬化物における架橋構造が均一になると共に、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。(E)硬化促進剤は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を使用可能である。(E)硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(E)硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物等のアニオン性硬化促進剤、アミン化合物等のカチオン性硬化促進剤、リン化合物及び有機金属化合物等のアニオン性及びカチオン性硬化促進剤以外の硬化促進剤、並びに過酸化物等のラジカル性硬化促進剤等が挙げられる。
上記イミダゾール化合物としては、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン化合物等が挙げられる。
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
上記過酸化物としてはジクミルペルオキシド、及びパーヘキシル25B等が挙げられる。
硬化温度をより一層低く抑え、硬化物の反りを効果的に抑える観点からは、(E)硬化促進剤は、上記アニオン性硬化促進剤を含むことが好ましく、上記イミダゾール化合物を含むことがより好ましい。
硬化温度をより一層低く抑え、硬化物の反りを効果的に抑える観点からは、(E)硬化促進剤100重量%中、上記アニオン性硬化促進剤の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは100重量%(全量)である。したがって、(E)硬化促進剤は、上記アニオン性硬化促進剤であることが最も好ましい。
(E)硬化促進剤の含有量は特に限定されない。樹脂材料中の(B)無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、(E)硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。(E)硬化促進剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂材料が効率的に硬化する。(E)硬化促進剤の含有量がより好ましい範囲であれば、樹脂材料の保存安定性がより一層高くなり、かつより一層良好な硬化物が得られる。
[熱可塑性樹脂]
上記樹脂材料は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂及びフェノキシ樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化環境によらず、誘電正接を効果的に低くし、かつ、金属配線の密着性を効果的に高める観点からは、熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であることが好ましい。フェノキシ樹脂の使用により、樹脂フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性の悪化及び無機充填材の不均一化が抑えられる。また、フェノキシ樹脂の使用により、溶融粘度を調整可能であるために無機充填材の分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に樹脂組成物又はBステージ化物が濡れ拡がり難くなる。
上記樹脂材料に含まれているフェノキシ樹脂は特に限定されない。上記フェノキシ樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂を使用可能である。上記フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、ナフタレン骨格及びイミド骨格等の骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
上記フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鐵住金化学社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びに三菱化学社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」及び「YX8100BH30」等が挙げられる。
ハンドリング性、低粗度でのメッキピール強度及び絶縁層と金属層との密着性を高める観点から、熱可塑性樹脂は、ポリイミド樹脂(ポリイミド化合物)であることが好ましい。
溶解性を良好にする観点からは、上記ポリイミド化合物は、テトラカルボン酸二無水物とダイマージアミンとを反応させる方法によって得られたポリイミド化合物であることが好ましい。
上記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルエーテル二無水物、及びビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。
上記ダイマージアミンとしては、例えば、バーサミン551(商品名BASFジャパン社製、3,4-ビス(1-アミノヘプチル)-6-ヘキシル-5-(1-オクテニル)シクロヘキセン)、バーサミン552(商品名、コグニクスジャパン社製、バーサミン551の水添物)、PRIAMINE1075、PRIAMINE1074(商品名、いずれもクローダジャパン社製)等が挙げられる。
なお、上記ポリイミド化合物は末端に、酸無水物構造、マレイミド構造、シトラコンイミド構造を有していてもよい。この場合には、上記ポリイミド化合物とエポキシ樹脂とを反応させることができる。上記ポリイミド化合物とエポキシ樹脂とを反応させることにより、硬化物の熱寸法安定性を高めることができる。
保存安定性により一層優れた樹脂材料を得る観点からは、熱可塑性樹脂、上記ポリイミド樹脂及び上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。
熱可塑性樹脂、上記ポリイミド樹脂及び上記フェノキシ樹脂の上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
熱可塑性樹脂、上記ポリイミド樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量は特に限定されない。樹脂材料中の(B)無機充填材及び上記溶剤を除く成分100重量%中、熱可塑性樹脂の含有量(熱可塑性樹脂がポリイミド樹脂又はフェノキシ樹脂である場合には、ポリイミド樹脂又はフェノキシ樹脂の含有量)は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂材料の回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上であると、樹脂フィルムの形成がより一層容易になり、より一層良好な絶縁層が得られる。熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の熱膨張率がより一層低くなる。熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
[溶剤]
上記樹脂材料は、溶剤を含まないか又は含む。上記溶剤の使用により、樹脂材料の粘度を好適な範囲に制御でき、樹脂材料の塗工性を高めることができる。また、上記溶剤は、上記無機充填材を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N-メチル-ピロリドン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
上記溶剤の多くは、上記樹脂組成物をフィルム状に成形するときに、除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記樹脂組成物中の上記溶剤の含有量は特に限定されない。上記樹脂組成物の塗工性などを考慮して、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
上記樹脂材料がBステージフィルムである場合には、上記Bステージフィルム100重量%中、上記溶剤の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記樹脂材料は、レベリング剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、揺変性付与剤及びエポキシ化合物以外の他の熱硬化性樹脂等を含んでいてもよい。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
上記他の熱硬化性樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ジビニルベンジルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、ビスマレイミド樹脂及びアクリレート樹脂等が挙げられる。
(樹脂フィルム)
上述した樹脂組成物をフィルム状に成形することにより樹脂フィルム(Bステージ化物/Bステージフィルム)が得られる。上記樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムは、Bステージフィルムであることが好ましい。
樹脂組成物をフィルム状に成形して、樹脂フィルムを得る方法としては、以下の方法が挙げられる。押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法。溶剤を含む樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法。従来公知のその他のフィルム成形法。薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば50℃~150℃で1分間~10分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムである樹脂フィルムを得ることができる。
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
上記樹脂フィルムは、プリプレグでなくてもよい。上記樹脂フィルムがプリプレグではない場合には、ガラスクロス等に沿ってマイグレーションが生じなくなる。また、樹脂フィルムをラミネート又はプレキュアする際に、表面にガラスクロスに起因する凹凸が生じなくなる。
上記樹脂フィルムは、金属箔又は基材フィルムと、該金属箔又は基材フィルムの表面に積層された樹脂フィルムとを備える積層フィルムの形態で用いることができる。上記金属箔は銅箔であることが好ましい。
上記積層フィルムの上記基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルム等のオレフィン樹脂フィルム、並びにポリイミド樹脂フィルム等が挙げられる。上記基材フィルムの表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
樹脂フィルムの硬化度をより一層均一に制御する観点からは、上記樹脂フィルムの厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。上記樹脂フィルムを回路の絶縁層として用いる場合、上記樹脂フィルムにより形成された絶縁層の厚さは、回路を形成する導体層(金属層)の厚さ以上であることが好ましい。上記絶縁層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。
(半導体装置、プリント配線板、銅張積層板及び多層プリント配線板)
上記樹脂材料は、半導体装置において半導体チップを埋め込むモールド樹脂を形成するために好適に用いられる。
上記樹脂材料は、プリント配線板において絶縁層を形成するために好適に用いられる。
上記プリント配線板は、例えば、上記樹脂材料を加熱加圧成形することにより得られる。
上記樹脂フィルムに対して、片面又は両面に金属層を表面に有する積層対象部材を積層できる。金属層を表面に有する積層対象部材と、上記金属層の表面上に積層された樹脂フィルムとを備え、上記樹脂フィルムが、上述した樹脂材料である、積層構造体を好適に得ることができる。上記樹脂フィルムと上記金属層を表面に有する積層対象部材とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、平行平板プレス機又はロールラミネーター等の装置を用いて、加熱しながら又は加熱せずに加圧しながら、上記樹脂フィルムを、金属層を表面に有する積層対象部材に積層可能である。
上記金属層の材料は銅であることが好ましい。
上記金属層を表面に有する積層対象部材は、銅箔等の金属箔であってもよい。
上記樹脂材料は、銅張積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張積層板が挙げられる。
上記銅張積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1μm~50μmの範囲内であることが好ましい。また、上記樹脂材料の硬化物と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法等が挙げられる。
上記樹脂材料は、多層基板を得るために好適に用いられる。
上記多層基板の一例として、回路基板と、該回路基板上に積層された絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。この多層基板の絶縁層が、上記樹脂材料により形成されている。また、多層基板の絶縁層が、積層フィルムを用いて、上記積層フィルムの上記樹脂フィルムにより形成されていてもよい。上記絶縁層は、回路基板の回路が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記絶縁層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
上記多層基板では、上記絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されていることが好ましい。
粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ、特に限定されない。上記絶縁層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
また、上記多層基板は、上記絶縁層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備えることが好ましい。
また、上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された絶縁層と、該絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える多層基板が挙げられる。上記絶縁層が、銅箔と該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張積層板を用いて、上記樹脂フィルムを硬化させることにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数の絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。上記回路基板上に配置された上記複数層の絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂材料を用いて形成される。上記多層基板は、上記樹脂フィルムを用いて形成されている上記絶縁層の少なくとも一方の表面に積層されている回路をさらに備えることが好ましい。
多層基板のうち多層プリント配線板においては、低い誘電正接が求められ、絶縁層による高い絶縁信頼性が求められる。本発明に係る樹脂材料では、硬化物の反り及びボイドの発生を抑えることができ、かつ繰り返し加熱した場合でも硬化物の誘電正接を変化しにくくすることができることによって絶縁信頼性を効果的に高めることができる。従って、本発明に係る樹脂材料は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために好適に用いられる。
上記多層プリント配線板は、例えば、回路基板と、上記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、複数の上記絶縁層間に配置された金属層とを備える。上記絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂材料の硬化物である。
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂材料を用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
図1に示す多層プリント配線板11では、回路基板12の上面12aに、複数層の絶縁層13~16が積層されている。絶縁層13~16は、硬化物層である。回路基板12の上面12aの一部の領域には、金属層17が形成されている。複数層の絶縁層13~16のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する絶縁層16以外の絶縁層13~15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。回路基板12と絶縁層13の間、及び積層された絶縁層13~16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
多層プリント配線板11では、絶縁層13~16が、上記樹脂材料の硬化物により形成されている。本実施形態では、絶縁層13~16の表面が粗化処理されているので、絶縁層13~16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。また、多層プリント配線板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。また、多層プリント配線板11では、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続で接続されていない上方の金属層と下方の金属層との間に、良好な絶縁信頼性が付与されている。
(粗化処理及び膨潤処理)
上記樹脂材料は、粗化処理又はデスミア処理される硬化物を得るために用いられることが好ましい。上記硬化物には、更に硬化が可能な予備硬化物も含まれる。
上記樹脂材料を予備硬化させることにより得られた硬化物の表面に微細な凹凸を形成するために、硬化物は粗化処理されることが好ましい。粗化処理の前に、硬化物は膨潤処理されることが好ましい。硬化物は、予備硬化の後、かつ粗化処理される前に、膨潤処理されており、さらに粗化処理の後に硬化されていることが好ましい。ただし、硬化物は、必ずしも膨潤処理されなくてもよい。
上記膨潤処理の方法としては、例えば、エチレングリコールなどを主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液などにより、硬化物を処理する方法が用いられる。膨潤処理に用いる膨潤液は、一般にpH調整剤などとして、アルカリを含む。膨潤液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。具体的には、例えば、上記膨潤処理は、40重量%エチレングリコール水溶液等を用いて、処理温度30℃~85℃で1分間~30分間、硬化物を処理することにより行なわれる。上記膨潤処理の温度は50℃~85℃の範囲内であることが好ましい。上記膨潤処理の温度が低すぎると、膨潤処理に長時間を要し、更に硬化物と金属層との接着強度が低くなる傾向がある。
上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。粗化処理に用いられる粗化液は、一般にpH調整剤などとしてアルカリを含む。粗化液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
硬化物の表面の算術平均粗さRaは、好ましくは10nm以上であり、好ましくは300nm未満、より好ましくは200nm未満、更に好ましくは150nm未満である。この場合には、硬化物と金属層との接着強度が高くなり、更に絶縁層の表面により一層微細な配線が形成される。上記算術平均粗さRaは、JIS B0601:1994に準拠して測定される。
(デスミア処理)
上記樹脂材料を予備硬化させることにより得られた硬化物に、貫通孔が形成されることがある。上記多層基板などでは、貫通孔として、ビア又はスルーホール等が形成される。例えば、ビアは、CO2レーザー等のレーザーの照射により形成できる。ビアの直径は特に限定されないが、40μm~80μm程度である。上記貫通孔の形成により、ビア内の底部には、硬化物に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアが形成されることが多い。
上記スミアを除去するために、硬化物の表面は、デスミア処理されることが好ましい。デスミア処理が粗化処理を兼ねることもある。
上記デスミア処理には、上記粗化処理と同様に、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物等の化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。デスミア処理に用いられるデスミア処理液は、一般にアルカリを含む。デスミア処理液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記樹脂材料の使用により、デスミア処理された硬化物の表面の表面粗さが十分に小さくなる。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
以下の材料を用意した。
(エポキシ化合物)
[(A)ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物]
ナフタレン骨格を有するアラルキル型エポキシ化合物1A:
以下の調製例1Aに従って、ナフタレン骨格を有するアラルキル型エポキシ化合物1A(エポキシ当量258)を得た。
<調製例1A>
ナフタレン骨格を有するアラルキル型エポキシ化合物(新日鐵住金化学社製「ESN-475V」)から二核体、三核体、四核体以上に相当する成分を、分取用高速液体クロマトグラフ(分取HPLC)を用いて分取した。分取した成分を、上述したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件で測定し、重量平均分子量を確認した。分取した溶液をそれぞれ窒素乾固した後、各成分の濃度が10重量%となるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、二核体含有溶液、三核体含有溶液、四核体以上含有溶液を得た。得られる混合溶液100重量%中、二核体含有溶液47重量%、三核体含有溶液26重量%、四核体以上含有溶液27重量%の混合比となるようにこれら3つの溶液を混合した。得られた混合溶液を、再度窒素乾固させ、ナフタレン骨格を有するアラルキル型エポキシ化合物1Aを調製した。
ナフタレン骨格を有するアラルキル型エポキシ化合物1B:
以下の調製例1Bに従って、ナフタレン骨格を有するアラルキル型エポキシ化合物1B(エポキシ当量261)を得た。
<調製例1B>
得られる混合溶液100重量%中、二核体含有溶液、三核体含有溶液、四核体以上含有溶液の混合比を、それぞれ、27重量%、46重量%、27重量%としたこと以外は、調製例1Aと同様にして、ナフタレン骨格を有するアラルキル型エポキシ化合物1Bを調製した。
ナフタレン骨格を有するアラルキル型エポキシ化合物1C:
以下の調製例1Cに従って、ナフタレン骨格を有するアラルキル型エポキシ化合物1C(エポキシ当量263)を得た。
<調製例1C>
得られる混合溶液100重量%中、二核体含有溶液、三核体含有溶液、四核体以上含有溶液の混合比を、それぞれ、14重量%、59重量%、27重量%としたこと以外は、調製例1Aと同様にして、ナフタレン骨格を有するアラルキル型エポキシ化合物1Cを調製した。
[(D)第2のエポキシ化合物]
ナフタレン骨格を有するアラルキル型エポキシ化合物1D:
以下の調製例1Dに従って、ナフタレン骨格を有するアラルキル型エポキシ化合物1D(エポキシ当量264)を得た。
<調製例1D>
得られる混合溶液100重量%中、二核体含有溶液、三核体含有溶液、四核体以上含有溶液の混合比を、それぞれ、13重量%、60重量%、27重量%としたこと以外は、調製例1Aと同様にして、ナフタレン骨格を有するアラルキル型エポキシ化合物1Dを調製した。
ナフタレン骨格を有するアラルキル型エポキシ化合物1E(新日鐵住金化学社製「ESN-475V」)
液状エポキシ化合物2A:ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物(ADEKA社製「EP-4088S」
液状エポキシ化合物2B:p-アミノフェノール型エポキシ化合物(三菱化学社製「630」)
ナフタレン骨格を有するモノグリシジルエーテル化合物(J&K SCIENTIFIC社製「1-(グリシジルオキシ)ナフタレン)」
(無機充填材)
(B)平均粒径が50nm以上5μm以下である無機充填材:
シリカ含有スラリー(シリカ75重量%:アドマテックス社製「SC4050-HOA」、平均粒径1.0μm、フェニルアミノシラン処理、シクロヘキサノン25重量%)
シリカ含有スラリー(アドマテックス社製「YA050C-HHY」、平均粒径50nm、フェニルアミノシラン処理、シクロヘキサノン60重量%)
シリカ含有スラリー(Denka社製「FB-3SDC」、平均粒径3.0μm、フェニルアミノシラン処理、シクロヘキサノン25重量%)
平均粒径が50nm未満又は5μmを超える無機充填材:
シリカ含有スラリー(アドマテックス社製「YA010C-HFZ」、平均粒径10nm、フェニルアミノシラン処理、シクロヘキサノン70重量%)
シリカ含有スラリー(アドマテックス社製「50SX-CC1」、平均粒径6.3μm、フェニルアミノシラン処理、シクロヘキサノン25重量%)
((C)硬化剤)
ナフタレン骨格を有する活性エステル化合物(活性エステル化合物含有液、DIC社製「EXB-9416-70BK」、固形分70重量%)
ナフタレン骨格を有しかつ側鎖を有する活性エステル化合物:
以下の合成例2に従って、ナフタレン骨格を有しかつ側鎖としてベンジル基を有する活性エステル化合物を合成した。
<合成例2>
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管及び撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7-ジヒドロキシナフタレンを320g(2.0モル)、ベンジルアルコールを184g(1.7モル)、パラトルエンスルホン酸・1水和物を5.0g入れ、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、150℃に昇温し、生成した水を系外に留去しながら4時間攪拌した。反応終了後、メチルイソブチルケトンを900g、20%水酸化ナトリウム水溶液を5.4g添加して中和した後、分液により水層を除去し、水280gで3回水洗を行い、メチルイソブチルケトンを減圧下除去してベンジル変性ナフタレン化合物を460g得た。得られたベンジル変性ナフタレン化合物は黒色の固体であった。また、得られたベンジル変性ナフタレン化合物の水酸基当量は180グラム/当量であった。
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、イソフタル酸クロリドを203.0g(酸クロリド基のモル数:2.0モル)、トルエンを1400g入れ、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、α-ナフトールを96.0g(0.67モル)、得られたベンジル変性ナフタレン化合物を240g(フェノール性水酸基のモル数:1.33モル)添加し、系内を減圧窒素置換し溶解させた。その後、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.70gを溶解させ、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、400gの20%水酸化ナトリウム水溶液を3時間かけて滴下した。次いで、この条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。次いで、反応物が溶解しているトルエン層に水を投入して15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し不揮発分65質量%のトルエン溶液状態にある、ナフタレン骨格を有しかつ側鎖としてベンジル基を有する活性エステル化合物を得た。この不揮発分65質量%のトルエン溶液の溶液粘度は16000mPa・S(25℃)であった。また、乾燥後の軟化点は156℃であった。
アミノトリアジンフェノール(DIC社製「LA-1356」、固形分60重量%)
(熱可塑性樹脂)
フェノキシ樹脂含有液(三菱化学社製「YX6954BH30」、固形分30重量%)
(硬化促進剤)
ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業社製「DMAP」)
(実施例1~6、比較例1~4)
下記の表1,2に示す成分を下記の表1,2に示す配合量(単位は固形分重量部)で配合し、均一な溶液となるまで常温で攪拌し、樹脂材料を得た。
樹脂フィルムの作製:
アプリケーターを用いて、離型処理されたPETフィルム(東レ社製「XG284」、厚み25μm)の離型処理面上に得られた樹脂材料を塗工した後、100℃のギヤオーブン内で2分間乾燥し、溶剤を揮発させた。このようにして、PETフィルム上に、厚さが40μmである樹脂フィルム(Bステージフィルム)が積層されている積層フィルム(PETフィルムと樹脂フィルムとの積層フィルム)を得た。
(評価)
(1)二核体及び三核体のピーク面積割合
上述した方法により、ナフタレン骨格を有するノボラック型エポキシ化合物及びナフタレン骨格を有するアラルキル型エポキシ化合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した。得られたクロマトグラムから、全ピーク面積に占める二核体のピーク面積割合、全ピーク面積に占める三核体のピーク面積割合、及び全ピーク面積に占める三核体のピーク面積割合の、全ピーク面積に占める二核体のピーク面積割合に対する比を求めた。
(2)誘電正接の変化率
得られた樹脂フィルムを幅2mm、長さ80mmの大きさに裁断して5枚を重ね合わせて、厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体を200℃で90分間加熱して、硬化物Aを得た。硬化物Aが積層された積層体を200℃で90分間加熱して、硬化物Bを得た。得られた硬化物A及び硬化物Bについて、関東電子応用開発社製「空洞共振摂動法誘電率測定装置CP521」及びキーサイトテクノロジー社製「ネットワークアナライザーN5224A PNA」を用いて、空洞共振法で常温(23℃)にて、周波数5.8GHzにて誘電正接を測定した。
下記式により、誘電正接の変化率を求めた。
誘電正接の変化率(%)=硬化物Bの誘電正接/硬化物Aの誘電正接×100
[誘電正接の変化率の判定基準]
○○:誘電正接の変化率が2%以下
○:誘電正接の変化率が2%を超え4%以下
△:誘電正接の変化率が4%を超え6%以下
×:誘電正接の変化率が6%を超える
(3)硬化物の反り
得られた積層フィルムを50mm×50mmの大きさに裁断した。裁断された積層フィルムを、樹脂フィルム側から銅板(50mm×50mm×厚み100μm)に重ねて、ダイアフラム式真空ラミネーター(名機製作所社製「バッチ式真空ラミネーターMVLP-500-IIA」)を用い、30秒減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃及び圧力0.7MPaで30秒間ラミネートした。このようにして、銅板上に積層フィルム(樹脂フィルムの未硬化物及びPETフィルム)が積層された積層体を得た。
PETフィルムを付けたまま、得られた積層体を100℃で30分間加熱した後、180℃で30分間さらに加熱した。次いで、PETフィルムを剥離し、200℃で90分間加熱した。このようにして、銅板上に樹脂フィルムの硬化物が積層された積層体を得た。銅板が下側かつ硬化物が上側となるように、該積層体を平坦なガラスの上に置き、4つの角がどの程度反っているかを測定した。平坦なガラスの上面からの4つの角までの各距離を反り量とし、4つの角の反り量の平均値を求めた。硬化物の反りを下記の基準で判定した。
[硬化物の反りの判定基準]
○○:反り量の平均値が3mm以下
○:反り量の平均値が3mmを超え5mm以下
△:反り量の平均値が5mmを超え10mm以下
×:反り量の平均値が10mmを超える
(4)ボイド
100mm角の銅張積層板(厚さ400μmのガラスエポキシ基板と厚さ25μmの銅箔との積層体)の銅箔のみをエッチングして、直径100μm及び深さ25μmの窪み(開口部)を、基板の中心30mm角のエリアに対して直線上にかつ隣接する穴の中心の間隔が900μmになるように開けた。このようにして、計900穴の窪みを持つ評価基板を準備した。
上記評価基板の両面を銅表面粗化剤(メック社製「メックエッチボンド CZ-8101」)に浸漬して、銅表面を粗化処理した。得られた積層フィルムを、樹脂フィルム側から上記評価基板の両面にセットして、ダイアフラム式真空ラミネーター(名機製作所社製「バッチ式真空ラミネーターMVLP-500-IIA」)を用い、上記評価基板の両面に積層フィルムをラミネートした。なお、ラミネートは、30秒減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃及び圧力0.7MPaで30秒間ラミネートし、次いで、100℃及びプレス圧力0.8MPaで60秒間プレスすることにより行った。このようにして、評価基板の両面に積層フィルム(樹脂フィルムの未硬化物及びPETフィルム)が積層された積層体を得た。
PETフィルムを付けたまま、積層体における樹脂フィルムを硬化させ、次いで、PETフィルムを剥離した。このようにして、評価基板上に樹脂フィルムの硬化物が積層された評価サンプルを得た。
得られた評価サンプルについて光学顕微鏡を用いて、窪みの中のボイドを観察した。ボイドを下記の基準で判定した。
[ボイドの判定基準]
○:ボイドが観察された窪みの割合が0%
△:ボイドが観察された窪みの割合が0%を超え5%未満
×:ボイドが観察された窪みの割合が5%以上
組成及び結果を下記の表1,2に示す。