JP7339067B2 - 端子付き電線、及び、端子金具 - Google Patents

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Description

本発明は、端子付き電線、及び、電線に取り付けられる端子金具に関する。
近年、例えば、車両に配索されるワイヤハーネスには、アルミニウムやアルミニウム合金から形成された導体芯線を有する電線(以下「アルミニウム電線」という。)に銅や銅合金から形成された端子金具が取り付けられた端子付き電線が使用される場合がある。
アルミニウム電線を用いた端子付き電線は、電線自体の軽量化などの点でメリットがあるものの、導体芯線と端子金具とが異種金属であることに起因し、導体芯線と端子金具との間に付着した水が電解液となってガルバニック腐食(異種金属接触腐食)が生じるおそれがある点でデメリットがある。なお、周知のように、ガルバニック腐食は異種金属間における標準電極電位の相違に起因して生じる。
そこで、アルミニウム電線を用いた従来の端子付き電線の一つでは、端子金具のバレル部に圧着された導体芯線を外部から隔離するように、止水用のシール部材が設けられている。これにより、上述したガルバニック腐食が抑制され、端子金具と導体芯線との電気的接続の信頼性が長期間にわたって維持される(例えば、特許文献1を参照)。
特開2019-009026号公報
上述した従来の端子付き電線では、紫外線硬化型の樹脂を用いてシール部材を形成している。具体的には、端子金具を電線の端末に圧着した後、外部に露出している導体芯線を覆うように硬化前の液状の樹脂を滴下する。そして、導体芯線およびその周辺の端子金具(バレル部など)を硬化前の樹脂で十分に覆った後、紫外線を用いて樹脂を硬化させることで、硬化した樹脂で構成されたシール部材を形成するようになっている。
しかし、上記説明から理解されるように、この従来の端子付き電線では、シール部材の形状や配置の精度は、液状の樹脂の滴下量や滴下位置に依存する。例えば、液状の樹脂の滴下量が多すぎると、仮に滴下位置が適正であっても、設計上想定している範囲よりも広い範囲にまで樹脂が濡れ広がる(いわゆる液垂れが生じる)可能性がある。そして、濡れ広がった樹脂に気付かずに樹脂を硬化させると、端子付き電線の設計上想定していない箇所にシール部材が形成されることになる。このような想定外の形状を有するシール部材は、例えば、端子付き電線をコネクタハウジングの端子収容室に挿入する妨げとなり得る。
上述した液垂れは、液状の樹脂の滴下量や滴下位置を厳密に制御することによって抑制し得ると考えられる。しかし、液状の樹脂の滴下量などの要求精度を過度に高めると、端子付き電線の生産性が低下することが懸念される。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、端子付き電線への止水体の形成精度の高さと端子付き電線の生産性の高さとを両立可能な端子付き電線、及び、その端子付き電線に用い得る端子金具、を提供することにある。
前述した目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線および端子金具は、下記[1]~[3]を特徴としている。
[1]
電線と、金属板材から構成され且つ前記電線に取り付けられる端子金具と、止水体と、を備える端子付き電線であって、
前記端子金具は、
前記電線の端末にて絶縁被覆から露出する導体芯線を前記導体芯線の周方向に取り囲むよう、前記導体芯線に圧着されるバレル部と、
前記バレル部に繋がり且つ前記導体芯線の軸方向に沿って延びる連結部と、を有し、
前記止水体は、
流動性を有する止水材料の配置及び硬化を経て当該止水体を形成可能な前記止水材料から構成され、且つ、前記バレル部及び前記連結部を構成する前記金属板材の端面と前記導体芯線との間を隔離するように設けられ、
前記連結部は、
前記端子金具の外表面を構成することになる当該連結部の側面の一部が前記端子金具の内側に向けて窪んだ窪み面が、当該連結部の前記端面に繋がるように構成された、凹状箇所を有し、
前記窪み面は、
前記バレル部よりも前記軸方向における先端側および前記バレル部よりも前記軸方向における基端側の少なくとも一方に当該窪み面の全体が配置され、且つ、前記軸方向及び前記周方向に広がる面形状を有する、ように構成される、
端子付き電線であること。
[2]
上記[1]に記載の端子付き電線において、
前記連結部は、
前記凹状箇所における前記金属板材の厚さが前記凹状箇所以外の箇所の前記金属板材の厚さよりも薄い、ように構成される、
端子付き電線であること。
[3]
金属板材から構成され且つ電線に取り付けられる端子金具であって、
前記電線の端末にて絶縁被覆から露出する導体芯線を前記導体芯線の周方向に取り囲むよう、前記導体芯線に圧着されるバレル部と、
前記バレル部に繋がり且つ当該端子金具の軸方向に沿って延びる連結部と、を備え、
前記連結部は、
前記端子金具の外表面を構成することになる当該連結部の側面の一部が前記端子金具の内側に向けて窪んだ窪み面が、当該連結部を構成する前記金属板材の端面に繋がるように構成された、凹状箇所を有し、
前記窪み面は、
前記バレル部よりも前記軸方向における先端側および前記バレル部よりも前記軸方向における基端側の少なくとも一方に当該窪み面の全体が配置され、且つ、前記軸方向及び前記周方向に広がる面形状を有する、ように構成される、
端子金具であること。
上記[1]の構成の端子付き電線によれば、端子金具のバレル部から延びる連結部の側面の一部が端子金具の内側に向けて窪んだ窪み面が、その連結部を構成する金属板材の端面に繋がることにより、連結部に凹状箇所が構成される。更に、流動性を有する状態で配置された後に硬化可能な止水材料(例えば、紫外線硬化型の樹脂や熱硬化型の樹脂など)を用いて、バレル部および連結部を構成する金属板材の端面と導体芯線との間を隔離するように、止水体が設けられる。よって、例えば、その止水材料を端子金具などに滴下して止水体を形成する際、仮に止水材料の滴下量が設計値よりも多少多くても、過剰な止水材料が凹状箇所に流れ込むことで、設計上想定していない範囲にまで止水材料が濡れ広がることを抑制できる。そのため、止水材料の滴下量や滴下位置の精度を過度に高めなくても、設計通りの形状を有する止水体を設計通りの位置に形成し得る。
更に、例えばメッキ加工を施した金属板材を打ち抜き加工(プレス加工)して端子金具を製造する場合、バレル部および連結部の端面には、メッキに覆われていない金属板材の母材が露出し得る。このような場合であっても、本構成の端子付き電線は、バレル部および連結部の端面と導体芯線との間を止水体で隔離するようになっていることで、上述したガルバニック腐食を適正に抑制できる。
したがって、本構成の端子付き電線は、ガルバニック腐食を抑制するとの止水体の本来の機能を高めつつ、端子付き電線への止水体の形成精度の高さと端子付き電線の生産性の高さとを両立可能である。
上記[2]の構成の端子付き電線によれば、例えば、端子金具の製造時に連結部の一部を薄くする(例えば、製造用の金型で押圧して減厚する)ことにより、凹状箇所が連結部に設けられる。よって、端子金具の製造工程を過度に複雑化することなく、連結部に凹状箇所を設けることができる。
上記[3]の構成の端子金具によれば、端子金具のバレル部から延びる連結部の側面の一部が端子金具の内側に向けて窪んだ窪み面が、その連結部を構成する金属板材の端面に繋がることにより、連結部に凹状箇所が構成される。よって、例えば、紫外線硬化型の樹脂や熱硬化型の樹脂などを滴下する手法を用いて防食用の止水体を形成する際、仮に樹脂の滴下量が設計値よりも多少多くても、過剰な樹脂が凹状箇所に流れ込むことで、設計上想定していない範囲にまで樹脂が濡れ広がることを抑制できる。そのため、止水材料の滴下量や滴下位置の精度を過度に高めなくても、設計通りの形状を有する止水体を設計通りの位置に形成し得る。また、バレル部および連結部の端面と導体芯線との間を止水体で隔離することで、上述したガルバニック腐食を適正に抑制できる。したがって、本構成の端子金具は、ガルバニック腐食を抑制するための止水体の形成精度の高さと、端子金具を用いた端子付き電線の生産性の高さと、を両立可能である。
このように、本発明によれば、端子付き電線への止水体の形成精度の高さと端子付き電線の生産性の高さとを両立可能な端子付き電線、及び、その端子付き電線に用い得る端子金具を提供できる。
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
図1(a)は、止水体が設けられる前の本発明の第1実施形態に係る端子付き電線の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のA部の拡大図である。 図2(a)は、図1(b)のB-B断面図であり、図2(b)は、図2(a)のC部の拡大図である。 図3(a)~図3(c)は、図1に示す端子付き電線に紫外線硬化型の液状の樹脂を滴下して、端子付き電線の所定領域に止水体を設ける際の過程を示す側面図である。 図4は、止水体が設けられた本発明の第1実施形態に係る端子付き電線の斜視図である。 図5(a)は、図4のD-D断面図であり、図5(b)は、図5(a)のE部の拡大図である。 図6(a)は、第2実施形態における図1(b)に相当する図であり、図6(b)は、図6(a)のF-F断面図であり、図6(c)は、図6(b)のG部の拡大図である。 図7(a)及び図7(b)はそれぞれ、図6に示す第2実施形態における図5(a)及び図5(b)に相当する図である。 図8(a)及び図8(b)はそれぞれ、変形例における図1(a)に相当する図である。
<第1実施形態>
以下、図面を参照しながら、電線10に本発明の第1実施形態に係る端子金具20を取り付けた端子付き電線1について説明する。以下、説明の便宜上、端子金具20の軸方向(嵌合方向)において、相手側端子(図示省略)が嵌合する側(図1、図3、図4及び図8において左側)を先端側(前方側)とし、その反対側(図1、図3、図4及び図8において右側)を基端側(後方側)と称呼する。また、図1、図3、図4及び図8において上側及び下側をそれぞれ、上側及び下側と称呼する。
図1~図4に示すように、電線10の端部に端子金具20が圧着され、端子金具20と電線10の導体芯線11とが電気的に接続されている。図4に示すように、電線10の導体芯線11が接続された端子金具20の所定箇所には、止水体60が設けられている。これにより、導体芯線11のガルバニック腐食が抑制され、端子金具20と導体芯線11との電気的接続の信頼性を長期間にわたって維持できるようになっている。電線10と端子金具20と止水体60とにより、端子付き電線1が構成されている。端子付き電線1は、例えば、自動車等の車両に配索されるワイヤハーネスを構成する。
電線10は、導体芯線11と、この導体芯線11を覆う樹脂からなる絶縁被覆12とを有した絶縁電線である。導体芯線11は、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成され、複数の素線を撚り合わせて構成されている。電線10の導体芯線11をアルミニウム又はアルミニウム合金から構成することで、端子付き電線1が軽量化され、端子付き電線1を含んで構成されるワイヤハーネスも軽量化される。軽量化された端子付き電線1は、特に電気自動車やハイブリッド自動車などのワイヤハーネスが多用される車両に好適に用いられる。
端子金具20は、軸方向において先端側から基端側に向けて、順に、相手側端子(図示省略)と接続されることになる接点部31、電線10の端末における絶縁被覆12から露出した導体芯線11と電気的に接続される第1バレル部41、及び、電線10の端末における絶縁被覆12と電気的に接続される第2バレル部42、を有している。接点部31と第1バレル部41とは、第1連結部35によって互いに繋がり、第1バレル部41と第2バレル部42とは、第2連結部36により繋がっている。別の言い方をすると、第1連結部35及び第2連結部36は、第1バレル部41に繋がり且つ導体芯線11の軸方向に沿って延びている。
端子金具20は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる導体芯線11と異なる金属材料から形成されている。具体的には、端子金具20は、銅または銅合金などからなる金属板(板状体)を母材として形成されている。
端子金具20は、金属板(板状体)に対してプレス加工(打ち抜き加工および曲げ加工)を施すことで形成されたものである。プレス加工される前の金属板の全表面(表裏面及び側面)には、電線10の導体芯線11の腐食を抑制して耐食性を向上させる等の目的から、スズ(錫。Sn)等によるメッキ処理が事前に施されていることが好適である。この場合、プレス加工後においてプレス加工で露出した金属板の端面(加工面)は、メッキ処理されていない母材(例えば、銅など)が露出した状態となる。
図1に示すように、接点部31は、先端部分が開口した矩形筒状に形成される。この接点部31の開口部分に相手側端子(図示省略)が挿し込まれ、接点部31と相手側端子とが電気的に接続されることになる。
矩形筒状の接点部31を構成する底壁(下面)32及び一対の側壁33は、接点部31の基端側端から基端側に延在している。このように接点部31から基端側に延在する底壁32及び一対の側壁33は、軸方向において先端側から基端側に向けて、順に、第1連結部35の全体、第1バレル部41の一部、第2連結部36の全体、及び、第2バレル部42の一部を構成している。一対の側壁33について、第1連結部35を構成する部分の上端面35a、第1バレル部41を構成する部分の先端側端面41a及び基端側端面41b、第2連結部36を構成する部分の上端面36a、及び、第2バレル部42を構成する部分の先端側端面42aには、上述したように、端子金具20の母材が露出している。
第1バレル部41は、図1に示すように、電線10の端末における絶縁被覆12から露出した導体芯線11に圧着されて導体芯線11に電気的に接続される。このような圧着および接続のため、第1バレル部41は、一対の側壁33の上端から延出して導体芯線11に圧着される一対の加締片45を有している。
第2バレル部42は、図1に示すように、電線10の端末における絶縁被覆12に圧着される。このような圧着のため、第2バレル部42は、一対の側壁33の上端から延出して絶縁被覆12に圧着される加締片46,47を有している。
第1連結部35の一対の側壁33の外表面(幅方向外側面)の一部にはそれぞれ、幅方向内側に向けて窪んだ凹状箇所48が形成されている。凹状箇所48は、本例では、第1連結部35の側壁33のうちの基端側領域のみに位置し(図1等参照)、第1バレル部41の先端側端面41aに隣接している。凹状箇所48の底面(窪み面)は、本例では、上方に向かうほど幅方向内側に移動する向きに上下方向(鉛直方向)に対して傾いた矩形平面状のテーパ面49(平面)となっている(図2(a)参照)。図2(b)に示すように、テーパ面49の上端縁49aは、第1連結部35の上端面35aに繋がっている。
本例では、凹状箇所48に対応する第1連結部35の側壁33の内表面(幅方向内側面)と、凹状箇所48以外の箇所に対応する第1連結部35の側壁33の内表面(幅方向内側面)と、が面一になっている(鉛直方向に平行な1つの平面を構成している)。即ち、図2(b)に示すように、凹状箇所48における第1連結部35の側壁33の厚さは、凹状箇所48以外の箇所における第1連結部35の側壁33の厚さより薄くなっている。
本例では、凹状箇所48は、端子金具20の形成のために上記金属板(板状体)に対してプレス加工を行う際に、減厚加工を施すことで形成される。凹状箇所48を設けたことによる作用・効果については後述する。
圧着前の端子金具20における接点部31から基端側に延在する底壁32の上面は、電線10の端部が配置される「載置面」とされる。即ち、絶縁被覆12から露出した導体芯線11が一対の加締片45に挟まれた位置にあり、且つ、絶縁被覆12が加締片46,47に挟まれた位置にあるように、電線10をこの載置面に配置させた状態で、一対の加締片45及び加締片46,47が周知の圧着機などを用いて加締められる。これにより、一対の加締片45が電線10の導体芯線11に圧着され、加締片46、47が電線10の絶縁被覆12に圧着される。これにより、図1に示すように、止水体60が設けられる前の端子付き電線が得られる。
図1に示す例では、一対の加締片45は、一対の延出端が互いに突き合わされた状態で導体芯線11に食い込むように湾曲した状態で加締められて導体芯線11に圧着されている。更に、導体芯線11の末端部11aは、一対の加締片45の先端側端より先端側に位置しており、第1バレル部41から露出している。加締片46,47は、加締片46の延出端部の上に加締片47の延出端部が重なる(オーバーラップする)ように湾曲した状態で加締められて絶縁被覆12に圧着されている。
止水体60が設けられる前の端子付き電線の所定領域に対して、図3(a)~図3(c)に示すように、滴下装置50を利用して止水体60が設けられる。止水体60は、流動性を有する状態の止水材料(本例では、紫外線硬化型の液状の樹脂60a)を所定領域に滴下して配置した後、その止水材料を所定の手法(本例では、紫外線の照射)によって硬化することで、構成される。
具体的には、図3(a)に示すように、滴下装置50が幅方向に往復動されつつ端子金具20の軸方向に移動されながら、液状の樹脂60aが順次滴下されていく。この結果、液状の樹脂60aが、第1バレル部41と第2バレル部42と連結部36とに囲まれる領域S(図1(a)及び図3(a)参照)に露出する導体芯線11を覆うように配置される。なお、領域Sは、第1バレル部41の基端側端面41bよりも基端側にあり、第2バレル部42の先端側端面42aよりも先端側にあり、且つ、第2連結部36の上端面36aよりも上方側にある領域である。
また、液状の樹脂60aは、第1バレル部41の一対の加締片45の延出端同士が付き合わされながら導体芯線11に食い込むことによって画成される溝状部45a(図1も参照)を埋めるように、配置される。更に、液状の樹脂60aは、第1バレル部41より先端側に露出する導体芯線11の末端部11aを覆うように配置される。加えて、液状の樹脂60aは、第1連結部35の上端面35aの基端側部分、第1バレル部41の先端側端面41aの全体および基端側端面41bの全体、第2連結部36の上端面36aの全体、及び、第2バレル部42の先端側端面42aの全体を覆うように配置される。
ここで、上述したように、第1連結部35の上端面35a、第1バレル部41の先端側端面41a及び基端側端面41b、第2連結部36の上端面36a、及び、第2バレル部42の先端側端面42aには、端子金具20の母材(Cu等)が露出している。端子金具20のこれら端面を覆うように樹脂60aを配置した上で、後述するように樹脂60aを硬化して止水体60を形成することにより、これら端面と導体芯線11との間を隔離できる。これにより、導体芯線11のガルバニック腐食を抑制し得る。
更に、滴下装置50を利用して液状の樹脂60aが順次滴下されていく過程において、仮に意図せず設計値よりも多い量の樹脂60aが滴下されても、図3(c)に示すように、過剰な樹脂60aが凹状箇所48内に流れ込む(図4及び図5も参照)。図5(a)に示す例では、過剰な樹脂60aが、一対の凹状箇所48の双方に流れ込んでいる。この結果、所定領域外(設計上想定していない範囲)にまで止水体60が広がることを抑制できる。また、凹状箇所48の内部に形成された止水体60は、側壁33の補強材としても機能することになる。その結果、凹状箇所48を設けたことによる第1連結部35の側壁33の強度の低下分の少なくとも一部を、この止水体60で補うことができる。
上述したように液状の樹脂60aを配置した後、紫外線を用いて液状の樹脂60aを硬化することで、図4に示すように、導体芯線11や上述した各端面が外部に露出しないように止水体60で覆われた端子付き電線1が得られることになる。
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、凹状箇所48の底面(窪み面)がテーパ面49となっている。これに対し、本発明の第2実施形態では、図6及び図7に示すように、凹状箇所48の底面(窪み面)が、鉛直方向に平行な鉛直面49となるように、端子金具20が構成される。図6に示す凹状箇所48では、鉛直面49の上端縁49aが、第1連結部35の上端面35aに繋がっている。
図6及び図7に示す例では、第1実施形態と同様、凹状箇所48に対応する第1連結部35の側壁33の内表面(幅方向内側面)と、凹状箇所48以外の箇所に対応する第1連結部35の側壁33の内表面(幅方向内側面)と、が面一になっている(鉛直方向に平行な1つの平面を構成している)。即ち、図6(c)に示すように、凹状箇所48における第1連結部35の側壁33の厚さは、凹状箇所48以外の箇所における第1連結部35の側壁33の厚さより薄くなっている。この凹状箇所48も、第1実施形態と同様、端子金具20の形成のために上記金属板(板状体)に対してプレス加工を行う際に、減厚加工を施すことで形成される。
図6及び図7に示す態様では、鉛直面49の上端縁49aが急峻な角部となっている。このため、第1実施形態(凹状箇所48の底面がテーパ面49)と比べて、過剰な樹脂60aが、自身の表面張力に起因して、上端縁49aを超えて凹状箇所48内に流れ落ち難い。他方、仮に過剰な樹脂60aが上端縁49aを超えて凹状箇所48内に流れ落ちたとしても、その樹脂60aを凹状箇所48の内部に流れこませることで、設計上想定していない範囲にまで樹脂60aが濡れ広がることを抑制できる。更に、凹状箇所48の内部に位置する樹脂が、急峻な凹状箇所48の下端縁48a(図6(c)及び図7(b)参照)を超えて更に下方には流れ落ち難い。このため、所定領域外(設計上想定していない範囲)にまで樹脂60a(従って止水体60)が広がることを確実に抑制できる。
<作用・効果>
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る端子付き電線1によれば、端子金具20の第1バレル部41から先端側に延びる第1連結部35の側面の一部が端子金具20の内側に向けて窪んだ窪み面(テーパ面49)が、第1連結部35の上端面35aに繋がることにより、第1連結部35に凹状箇所48が構成される。更に、流動性を有する状態で配置された後に硬化可能な止水材料(例えば、紫外線硬化型の樹脂60a)を用いて、第1、第2バレル部41,42および第1、第2連結部35,36を構成する金属板材の端面と導体芯線11との間を隔離するように、止水体60が設けられる。その止水材料を端子金具20などに滴下して止水体60を形成する際、仮に止水材料60aの滴下量が設計値よりも多少多くても、過剰な止水材料60aが凹状箇所48に流れ込むことで、設計上想定していない範囲にまで止水材料60aが濡れ広がることを抑制できる。そのため、止水材料60aの滴下量や滴下位置の精度を過度に高めなくても、設計通りの形状を有する止水体60を設計通りの位置に形成し得る。
また、メッキ加工を施した金属板材を打ち抜き加工(プレス加工)して端子金具20を製造する際、メッキに覆われていない金属板材の母材が露出し得る第1、第2バレル部41,42および第1、第2連結部35,36の端面と導体芯線11との間を止水体60で隔離することで、上述したガルバニック腐食を適正に抑制できる。
したがって、第1実施形態に係る端子付き電線1は、ガルバニック腐食を抑制するとの止水体60の本来の機能を高めつつ、端子付き電線1への止水体60の形成精度の高さと端子付き電線の生産性の高さとを両立可能である。
更に、第1実施形態に係る端子付き電線1によれば、端子金具の製造時に第1連結部35の一部を薄くする(例えば、製造用の金型で押圧することで減厚する)ことにより、凹状箇所48が第1連結部35に設けられる。よって、端子金具20の製造工程を過度に複雑化することなく、第1連結部35に凹状箇所48を設けることができる。
更に、第1実施形態に係る端子付き電線1によれば、凹状箇所48の底面(窪み面)がテーパ面49となっている。このため、例えば、凹状箇所48の底面が、テーパ面49の上端縁49a(図5(b)参照)から鉛直方向に垂下する鉛直面である態様(後述する図6及び図7に示す態様に相当)と比べて、凹状箇所48における第1連結部35の側壁33の厚さが厚くなる。このため、凹状箇所48を設けたことに起因する第1連結部35の側壁33の強度の低下を小さくすることができる。
加えて、過剰な樹脂60aが凹状箇所48に流れ込んだ状態で硬化することで、止水体60の一部が凹状箇所48の内部に形成されることになる。凹状箇所48の内部に形成された止水体60は、凹状箇所48における第1連結部35の側壁33の強度を高めることに寄与し得る。これにより、凹状箇所48を設けたことに起因する第1連結部35の側壁33の強度の低下が補償され得る。
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
更に、上記各実施形態では、第1連結部35のみに凹状箇所48が形成されている。これに対し、図8(a)に示すように、第1連結部35及び第2連結部36の双方に凹状箇所48が形成されていてもよいし、図8(b)に示すように、第2連結部36のみに凹状箇所48が形成されていてもよい。
更に、上記種々の態様では、凹状箇所48に対応する側壁33の外表面(幅方向外側面)が幅方向内側に窪み、且つ、凹状箇所48に対応する側壁33の内表面(幅方向内側面)が幅方向内側に隆起していない(周囲の内表面と面一になっている)。これらの凹状箇所48は、上記金属板(板状体)に対して減厚加工を施すことで形成される。これに対し、凹状箇所48に対応する側壁33の外表面(幅方向外側面)が幅方向内側に窪み、且つ、凹状箇所48に対応する側壁33の内表面(幅方向内側面)が幅方向内側に隆起していてもよい。この場合、この凹状箇所48は、上記金属板(板状体)に対していわゆるエンボス加工を施すことで形成される。
ここで、上述した本発明に係る端子付き電線1及び端子金具20の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
電線(10)と、金属板材から構成され且つ前記電線(10)に取り付けられる端子金具(20)と、止水体(60)と、を備える端子付き電線(1)であって、
前記端子金具(20)は、
前記電線(10)の端末にて絶縁被覆(12)から露出する導体芯線(11)に圧着されるバレル部(41)と、
前記バレル部(41)に繋がり且つ前記導体芯線(11)の軸方向に沿って延びる連結部(35,36)と、を有し、
前記止水体(60)は、
流動性を有する止水材料(60a)の配置及び硬化を経て当該止水体(60)を形成可能な前記止水材料(60a)から構成され、且つ、前記バレル部(41)及び前記連結部(35,36)を構成する前記金属板材の端面(35a,41a,41b,36a,42a)と前記導体芯線(11)との間を隔離するように設けられ、
前記連結部(35,36)は、
前記端子金具(20)の外表面を構成することになる当該連結部(35,36)の側面の一部が前記端子金具(20)の内側に向けて窪んだ窪み面(49)が、当該連結部(35,36)を構成する前記金属板材の端面(35a,36a)に繋がるように構成された、凹状箇所(48)を有する、
端子付き電線(1)。
[2]
上記[1]に記載の端子付き電線(1)において、
前記連結部(35,36)は、
前記凹状箇所(48)における前記金属板材の厚さが前記凹状箇所(48)以外の箇所の前記金属板材の厚さよりも薄い、ように構成される、
端子付き電線(1)。
[3]
金属板材から構成され且つ電線(10)に取り付けられる端子金具(20)であって、
前記電線(10)の端末にて絶縁被覆(12)から露出する導体芯線(11)に圧着されるバレル部(41)と、
前記バレル部(41)に繋がり且つ当該端子金具(20)の軸方向に沿って延びる連結部(35,36)と、を備え、
前記連結部(35,36)は、
前記端子金具(20)の外表面を構成することになる当該連結部(35,36)の側面の一部が前記端子金具(20)の内側に向けて窪んだ窪み面(49)が、当該連結部(35,36)の前記端面(35a,36a)に繋がるように構成された、凹状箇所(48)を有する、
端子金具(20)。
1 端子付き電線
10 電線
11 導体芯線
12 絶縁被覆
20 端子金具
35 第1連結部(連結部)
35a 第1連結部の上端面(端面)
36 第2連結部(連結部)
36a 第2連結部の上端面(端面)
41 第1バレル部
41a 第1バレル部の先端側端面(端面)
41b 第1バレル部の基端側端面(端面)
42 第2バレル部
42a 第2バレル部の先端側端面(端面)
48 凹状箇所
49 テーパ面、鉛直面(窪み面)
60 止水体
60a 樹脂(止水材料)

Claims (3)

  1. 電線と、金属板材から構成され且つ前記電線に取り付けられる端子金具と、止水体と、を備える端子付き電線であって、
    前記端子金具は、
    前記電線の端末にて絶縁被覆から露出する導体芯線を前記導体芯線の周方向に取り囲むよう、前記導体芯線に圧着されるバレル部と、
    前記バレル部に繋がり且つ前記導体芯線の軸方向に沿って延びる連結部と、を有し、
    前記止水体は、
    流動性を有する止水材料の配置及び硬化を経て当該止水体を形成可能な前記止水材料から構成され、且つ、前記バレル部及び前記連結部を構成する前記金属板材の端面と前記導体芯線との間を隔離するように設けられ、
    前記連結部は、
    前記端子金具の外表面を構成することになる当該連結部の側面の一部が前記端子金具の内側に向けて窪んだ窪み面が、当該連結部の前記端面に繋がるように構成された、凹状箇所を有し、
    前記窪み面は、
    前記バレル部よりも前記軸方向における先端側および前記バレル部よりも前記軸方向における基端側の少なくとも一方に当該窪み面の全体が配置され、且つ、前記軸方向及び前記周方向に広がる面形状を有する、ように構成される、
    端子付き電線。
  2. 請求項1に記載の端子付き電線において、
    前記連結部は、
    前記凹状箇所における前記金属板材の厚さが前記凹状箇所以外の箇所の前記金属板材の厚さよりも薄い、ように構成される、
    端子付き電線。
  3. 金属板材から構成され且つ電線に取り付けられる端子金具であって、
    前記電線の端末にて絶縁被覆から露出する導体芯線を前記導体芯線の周方向に取り囲むよう、前記導体芯線に圧着されるバレル部と、
    前記バレル部に繋がり且つ当該端子金具の軸方向に沿って延びる連結部と、を備え、
    前記連結部は、
    前記端子金具の外表面を構成することになる当該連結部の側面の一部が前記端子金具の内側に向けて窪んだ窪み面が、当該連結部を構成する前記金属板材の端面に繋がるように構成された、凹状箇所を有し、
    前記窪み面は、
    前記バレル部よりも前記軸方向における先端側および前記バレル部よりも前記軸方向における基端側の少なくとも一方に当該窪み面の全体が配置され、且つ、前記軸方向及び前記周方向に広がる面形状を有する、ように構成される、
    端子金具。
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