以下、添付図面を参照して、本願に係る超音波診断装置の実施形態を詳細に説明する。なお、本願に係る超音波診断装置は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ2と、ディスプレイ3と、入力インターフェース4と、装置本体5とを有し、超音波プローブ2と、ディスプレイ3と、入力インターフェース4とが装置本体5と通信可能に接続される。ここで、本実施形態に係る超音波診断装置1は、さらに、生体情報取得装置6が装置本体5と通信可能に接続される。
超音波プローブ2は、装置本体5に含まれる送受信回路51に接続される。超音波プローブ2は、例えば、プローブ本体に複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、送受信回路51から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ2は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ2は、プローブ本体において、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ2は、装置本体5と着脱自在に接続される。例えば、超音波プローブ2は、セクタ型、リニア型又はコンベックス型などの超音波プローブである。
超音波プローブ2から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ2が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
ここで、本実施形態に係る超音波プローブ2は、複数の圧電振動子を機械的に揺動することにより、被検体Pを3次元でスキャンすることができる超音波プローブである。すなわち、超音波プローブ2は、図1に示すように、揺動機構21を有し、装置本体5に含まれる揺動制御回路56の制御により、複数の圧電振動子を機械的に揺動してエリアスキャンを実行する。
揺動機構21は、圧電振動子を機械的に揺動する。具体的には、揺動機構21は、圧電振動子を保持する保持部と、モータやアクチュエータなどの駆動部とを有し、揺動制御回路56の制御のもと、圧電振動子の配列方向と直交する方向に圧電振動子を揺動させる。
ディスプレイ3は、超音波診断装置1の操作者が入力インターフェース4を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体5において生成された超音波画像等を表示したりする。また、ディスプレイ3は、装置本体5の処理状況や処理結果を操作者に通知するために、各種のメッセージや表示情報を表示する。また、ディスプレイ3は、スピーカーを有し、音声を出力することもできる。
入力インターフェース4は、所定の位置(例えば、関心領域等)の設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチモニタ、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インターフェース4は、後述する処理回路55に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換し処理回路55へと出力する。なお、本明細書において入力インターフェース4は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路55へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
装置本体5は、送受信回路51と、Bモード処理回路52と、ドプラ処理回路53と、メモリ54と、処理回路55と、揺動制御回路56とを有する。図1に示す超音波診断装置1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ54へ記憶されている。送受信回路51、Bモード処理回路52、ドプラ処理回路53、処理回路55、及び、揺動制御回路56は、メモリ54からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各回路は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
送受信回路51は、パルス発生器、送信遅延回路、パルサ等を有し、超音波プローブ2に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延回路は、超音波プローブ2から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ2に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
なお、送受信回路51は、後述する処理回路55の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
また、送受信回路51は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延回路、加算器等を有し、超音波プローブ2が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延回路は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延回路によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
Bモード処理回路52は、送受信回路51から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
ドプラ処理回路53は、送受信回路51から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。例えば、移動体は、血管内を流動する血液や、リンパ管内を流動するリンパ液等の流体である。
なお、Bモード処理回路52及びドプラ処理回路53は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理回路52は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理回路53は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。3次元のBモードデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点(サンプル点)それぞれに位置する反射源の反射強度に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。また、3次元のドプラデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点(サンプル点)それぞれに、血流情報(速度、分散、パワー)の値に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。
また、Bモード処理回路52及びドプラ処理回路53は、複数の2次元の反射波データを合成して3次元の反射波データを生成し、生成した反射波データから3次元のデータを生成することもできる。例えば、Bモード処理回路52は、複数の2次元の反射波データを合成して3次元の反射波データを生成し、生成した3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理回路53は、複数の2次元の反射波データを合成して3次元の反射波データを生成し、生成した3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。なお、Bモード処理回路52及びドプラ処理回路53は、生成部の一例である。
メモリ54は、処理回路55が生成した表示用の画像データを記憶する。また、メモリ54は、Bモード処理回路52やドプラ処理回路53が生成したデータを記憶することも可能である。また、メモリ54は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。例えば、メモリ54は、エリアスキャンで収集された各スキャン位置の反射波データを記憶する。なお、各スキャン位置の反射波データについては、後に詳述する。
処理回路55は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、処理回路55は、図1に示す制御機能551、画像生成機能552、取得機能553に対応するプログラムをメモリ54から読み出して実行することで、種々の処理を行う。ここで、制御機能551は、制御部の一例である。また、取得機能553は、取得部の一例である。
例えば、処理回路55は、入力インターフェース4を介して操作者から入力された各種設定要求や、メモリ54から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路51、Bモード処理回路52、ドプラ処理回路53、揺動制御回路56の処理を制御する。また、処理回路55は、メモリ54が記憶する表示用の超音波画像データ(以下、超音波画像とも記す)をディスプレイ3にて表示するように制御する。また、処理回路55は、処理結果をディスプレイ3にて表示するように制御する。例えば、処理回路55が制御機能551に対応するプログラムを読み出して実行することで、装置全体の制御を行い、上述したような処置を制御する。また、制御機能551は、任意の位相におけるエリアスキャンを可能にするように、送受信回路51と揺動制御回路56とを制御するが、この点については、後に詳述する。
画像生成機能552は、Bモード処理回路52及びドプラ処理回路53が生成したデータから超音波画像データを生成する。すなわち、画像生成機能552は、Bモード処理回路52が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像データを生成する。Bモード画像データは、超音波走査された領域内の組織形状が描出されたデータとなる。また、画像生成機能552は、ドプラ処理回路53が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表すドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。ドプラ画像データは、超音波走査された領域内を流動する流体に関する流体情報を示すデータとなる。
ここで、画像生成機能552は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成機能552は、超音波プローブ2による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成機能552は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成機能552は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成機能552が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
更に、画像生成機能552は、Bモード処理回路52が生成した3次元のBモードデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のBモード画像データを生成する。また、画像生成機能552は、ドプラ処理回路53が生成した3次元のドプラデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のドプラ画像データを生成する。すなわち、3次元のBモードデータ及び3次元のドプラデータは、スキャンコンバート処理前のボリュームデータであり、3次元のBモード画像データ及び3次元のドプラ画像データは、スキャンコンバート後のボリュームデータである。
更に、画像生成機能552は、ボリュームデータをディスプレイ3にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対してレンダリング処理を行なうことができる。
取得機能553は、被検体において周期的な変化を示す生体情報を取得する。具体的には、取得機能553は、生体情報取得装置6によって被検体から取得された生体情報を取得する。ここで、生体情報取得装置6は、周期的な変化を示す生体情報を被検体から取得する。例えば、生体情報取得装置6は、心拍モニタ、心電図モニタ、脈波モニタなどであり、取得機能553は、生体情報取得装置6によって取得された心拍情報や、心電図、脈波情報などを取得する。ここで、脈波は、心臓が血液を送出することに伴って発生する血管の容積変化を波形としたものである。すなわち、脈波は、心拍の位相と同様の位相を有する。
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、任意の位相におけるエリアスキャンを可能にする。具体的には、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、周期的な変化を示す生体情報における所定位相をスキャン開始時点とし、スキャン開始時点から一定の時間間隔で複数の位相の超音波画像を、エリアスキャンの対象の位置ごとにそれぞれ収集し、収集した複数の位相の超音波画像から同一位相の超音波画像を合成することで、任意の位相におけるエリアスキャンを可能にする。
上述したように、超音波診断においては、近年、エリアスキャンにより末梢血管の血流も捉えることが可能となってきている。しかしながら、末梢の血流は微量であり、血管の拡張期及び収縮期で血流速度が異なる。また、揺動機構によって定速でエリアスキャンを実行すると、血管の拡張収縮により血管径が増減する。このため、微量な異常血流の血管径を正しく測定することが困難である。
これに対して、現在、心周期に合わせて3次元画像を合成するSTIC(spatiotemporal image correlation)法が知られている。STIC法は、まず、心拍を検出して心周期の情報を取得する。そして、STIC法では、揺動機構によって定速でエリアスキャンを実行し、心周期に合わせて同位相の画像を検出して合成する。しかしながら、STIC法では、心拍とは独立したタイミングでスキャンを実行しており、スキャンタイミングと心拍とが同期していないため、一定の確率で所望の位相の画像を入手できない場合があり、3次元画像に抜けが生じる場合がある。そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置1においては、生体情報における所定の位相をスキャン開始のトリガとして、一定の時間間隔で複数の位相の超音波画像を、エリアスキャンの対象領域の位置ごとにそれぞれ収集することで、エリアスキャンの対象領域の各位置で同一位相の超音波画像を取得することを可能にし、その結果、同一位相の超音波画像を合成した3次元画像を生成することを可能にする。
以下、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の詳細について説明する。制御機能551は、被検体のスキャン対象領域の位置ごとに、生体情報における各周期の所定位相をスキャン開始時点とし、スキャン開始時点から一定の時間間隔で複数の位相の超音波画像をそれぞれ収集するように制御する。具体的には、制御機能551は、エリアスキャンの対象領域について、位置ごとに複数の位相の超音波画像をそれぞれ収集する際に、生体情報における所定の位相をトリガとして、一定の時間間隔で複数の位相の超音波画像を収集するように、送受信回路51及び揺動制御回路56を制御する。
例えば、制御機能551は、揺動制御回路56を制御することで揺動機構21による圧電振動子の揺動を制御してスキャンの位置を変化させる。また、制御機能551は、送受信回路51を制御することで、位置ごとのスキャンを制御する。図2Aは、第1の実施形態に係る超音波プローブ2の一例を示す図である。ここで、図2Aは、圧電振動子の配列方向に直交する方向から見た場合の超音波プローブ2の内部を示す。例えば、超音波プローブ2は、図2Aに示すように、圧電振動子22を保持して揺動する揺動機構21を有する。そして、超音波プローブ2は、揺動制御回路56の制御に応じて揺動機構21の駆動部が駆動し、図2Aの矢印の方向に圧電振動子22を揺動させる。
制御機能551は、揺動制御回路56を制御して圧電振動子22の揺動を制御しながら、送受信回路51を制御することで、位置ごとに複数の位相の反射波データを収集するように制御する。ここで、制御機能551は、位置ごとのスキャンを生体情報に基づいて開始する。具体的には、制御機能551は、生体情報の所定の位相をスキャン開始のトリガとして用いる。すなわち、制御機能551は、圧電振動子22を揺動させる揺動機構21を有する超音波プローブ2における圧電振動子22の揺動位置ごとに、スキャン開始時点から一定の時間間隔で複数の位相の超音波画像をそれぞれ収集するように制御する。
図2Bは、第1の実施形態に係る制御機能551による制御の一例を説明するための図である。ここで、図2Bは、圧電振動子の配列方向に直交する方向から見た場合の超音波プローブ2の内部を示す。また、図2Bでは、生体情報として、脈波を用いる場合について説明する。すなわち、図2Bでは、脈波の位相に基づいてスキャンを制御する。上述したように、脈波は、心拍に伴って発生する血管の容積変化を波形としたものであり、脈波の位相に基づいてスキャンを実行することで、血管の拡張及び収縮の状態を合わせた反射波データを収集することができる。
例えば、制御機能551は、図2Bの上段の図に示すように、揺動制御回路56を制御することで揺動機構21を揺動させ、圧電振動子22を位置P1に移動させる。そして、制御機能551は、揺動機構21による揺動を停止させて圧電振動子22を位置P1に留めた状態で、脈波に基づくスキャンを制御する。ここで、制御機能551は、取得機能553によって取得されている脈波における所定の位相をスキャン開始のトリガとして用いる。例えば、制御機能551は、図2Bに示すように、脈波におけるタイミングAをスキャン開始のトリガとしてスキャンを開始する。スキャン開始のトリガとなるタイミングAは、任意に設定することができる。
一例を挙げると、制御機能551は、取得機能553によって取得されている脈波の振幅に基づいてタイミングAを特定し、一定の時間間隔で複数の位相の反射波データを収集するように制御する。すなわち、制御機能551は、図2Bに示すように、タイミングAを示す縦線と平行な縦線の各位相をスキャンタイミングとして反射波データを収集するように制御する。
そして、制御機能551は、複数の位相の反射波データの収集を次周期に達する前に終了し、当該次周期における所定位相に達する前にスキャンの位置を移動させる。例えば、制御機能551は、図2Bの左端の1心拍分の脈波におけるタイミングAから一定の時間間隔で複数の位相の反射波データの収集を開始し、次の脈波に達する前に反射波データの収集を停止する。すなわち、制御機能551は、1心拍内で所定位相から一定期間、一定の時間間隔で複数の位相の反射波データを収集する。なお、反射波データを収集する時間間隔は任意に設定することができる。
そして、制御機能551は、次の脈波におけるタイミングAに達する前に、揺動機構21を制御して圧電振動子22の位置を移動させる。例えば、制御機能551は、図2Bの下段の図に示すように、揺動制御回路56を制御することで揺動機構21を揺動させ、圧電振動子22を位置P2に移動させる。そして、制御機能551は、揺動機構21による揺動を停止させて圧電振動子22を位置P2に留めた状態で、位置P1と同様に脈波に基づくスキャンを制御する。すなわち、制御機能551は、次の脈波におけるタイミングAを位置P2におけるスキャン開始のトリガとし、1心拍内でタイミングAから一定期間、一定の時間間隔で複数の位相の反射波データを収集する。なお、反射波データを収集するスキャン位置の間隔は任意に設定することができる。
制御機能551は、上述したスキャン位置の移動と、各スキャン位置における脈波のタイミングAをトリガとした一定の時間間隔での複数の位相の反射波データの収集とを繰り返し実行することで、各位置について、含まれる複数の位相がそれぞれ同一となる反射波データを収集する。例えば、図2Bに示すように、タイミングAから一定時間が経過した位相を所望の位相として各位置の反射波データから抽出することで、各位置について同一位相の反射波データを取得することができる。
また、制御機能551は、スキャンの位置ごとに複数の位相の超音波画像を収集した後、当該位置の移動時に対応する位相の超音波画像を、スキャンの位置の移動方向とは逆方向に位置を移動させながら収集するように制御する。例えば、制御機能551は、1心拍のうち、反射波データを収集していない位相について、圧電振動子22を逆方向に揺動させるタイミングで収集する。
一例を挙げると、図2Bに示すように、図の左側から右側に向かって圧電振動子22を揺動させながら、位置ごとに複数の位相の反射波データを収集した場合、制御機能551は、図の右側から左側に向かって圧電振動子22を揺動させる際に、収集していない位相の反射波データを収集する。
例えば、制御機能551は、脈波の振幅に基づいてタイミングAを検出し、タイミングAから一定の期間(反射波データを取得済みの期間)が経過した時点をスキャン開始のトリガとし、次の脈波におけるタイミングAまでの間、一定の時間間隔で反射波データを収集する。そして、制御機能551は、次の脈波のタイミングAを検出するとスキャンを停止して、揺動機構21を制御して、図の右側から左側に向かって圧電振動子22を移動させる。制御機能551は、圧電振動子22の位置が図2Bの位置P1に戻るまで、上記制御を繰り返し実行する。
上述したように、制御機能551は、エリアスキャンの対象領域の各位置について、複数の位相の反射波データを収集するように制御する。ここで、制御機能551によって収集された反射波データは、メモリ54に格納される。具体的には、制御機能551によって収集された反射波データは、収集されるごとにメモリ54に格納される。
図3は、第1の実施形態に係るメモリ54に対するデータの格納の例を説明するための図である。なお、図3においては、脈波におけるタイミングAをスキャン開始として収集された反射波データの格納の例について示す。また、図3において示す丸印は、反射波データが格納されていることを示す。また、図3における「位置」は、スキャンの位置を示す。また、図3における「位相」は、脈波の位相を示す。
例えば、制御機能551が「位置:P1」において「位相:T1」から順に各位相の反射波データを収集すると、メモリ54は、図3の上段の図に示すように、「位置:P1」に対応付けて各位相の反射波データを記憶する。その後、制御機能551が、「位置:P2」において「位相:T1」から順に各位相の反射波データを収集すると、メモリ54は、図3の中段の図に示すように、「位置:P2」に対応付けて各位相の反射波データを記憶する。このように、メモリ54は、制御機能551によって各位置の反射波データが順次収集されると、位置ごとに各位相の反射波データを記憶する。
そして、図3の下段の図に示すように、全ての位置について各位相の反射波データが格納されると、Bモード処理回路52又はドプラ処理回路53は、指定された位相(所望の位相)の反射波データを読み出して3次元のBモードデータ又は3次元のドプラデータを生成する。例えば、Bモード処理回路52又はドプラ処理回路53は、メモリ54に格納された2次元の反射波データを合成して3次元の反射波データを生成し、生成した3次元の反射波データから3次元のBモードデータ又は3次元のドプラデータを生成する。
例えば、Bモード処理回路52は、図3の下段の図に示すように、各位置の反射波データから「位相:T3」の反射波データを読み出して合成することで、「位相:T3」における3次元の反射波データを生成する。そして、Bモード処理回路52は、生成した3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。これにより、Bモード処理回路52によって生成される3次元のBモードデータは、「位相:T3」でエリアスキャンを実行したデータとなる。すなわち、超音波診断装置1は、任意の位相のエリアスキャンを実行することが可能となる。
Bモード処理回路52又はドプラ処理回路53によって生成された3次元のBモードデータ又は3次元のドプラデータ(スキャンコンバート前のボリュームデータ)は、画像生成機能552の処理により、スキャンコンバートされて、スキャンコンバート後のボリュームデータとなる。
次に、図4を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理について説明する。図4は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理の手順を説明するためのフローチャートである。ここで、図4に示すステップS101、S103~S107は、処理回路55がメモリ54から制御機能551に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。また、ステップS102は、処理回路55がメモリ54から取得機能553に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。ステップS108は、Bモード処理回路52又はドプラ処理回路53がメモリ54から対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。
第1の実施形態に係る超音波診断装置1では、処理回路55が、揺動機構21を制御して、圧電振動子22を「位置:P1」に移動させる(ステップS101)。そして、処理回路55は、心拍の情報(例えば、脈波等)を取得して(ステップS102)、心拍が所定のタイミングとなったか否かを判定する(ステップS103)。
ここで、心拍が所定のタイミングとなった場合には(ステップS103肯定)、処理回路55は、一定の時間間隔で画像(反射波データ)を取得してメモリ54に格納する(ステップS104)。なお、心拍が所定のタイミングとなるまで、処理回路55は、待機状態となる(ステップS103否定)。
続いて、処理回路55は、所定の枚数の画像を取得したか否かを判定する(ステップS105)。ここで、所定の枚数の画像を取得した場合には(ステップS105肯定)、処理回路55は、全ての位置について画像を取得したか否かを判定する(ステップS106)。なお、所定の枚数の画像を取得するまで、処理回路55は、スキャンを継続して実行する(ステップS105否定)。
ステップS106の判定において、全ての位置について画像を取得していない場合には(ステップS106否定)、処理回路55は、揺動機構21を制御して次の位置に移動させ(ステップS107)、ステップS103の判定処理を実行する。一方、全ての位置について画像を取得している場合には(ステップS106肯定)、Bモード処理回路52又はドプラ処理回路53は、所望の位相の反射波データを合成して、3次元のデータを生成する(ステップS108)。
上述したように、第1の実施形態によれば、取得機能553は、被検体において周期的な変化を示す生体情報を取得する。制御機能551は、被検体のスキャン対象領域の位置ごとに、生体情報における各周期の所定位相をスキャン開始時点とし、スキャン開始時点から一定の時間間隔で複数の位相の超音波画像をそれぞれ収集するように制御する。Bモード処理回路52又はドプラ処理回路53は、スキャン対象領域の位置ごとに収集された複数の位相の超音波画像のうち、同一位相の超音波画像を合成した画像データを生成する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、任意の位相のエリアスキャンを可能にする。その結果、例えば、毎心拍で血管の所望の位置での血流信号を得ることができ、抜けのない画像によって、微量な異常血流の径を正しく測定することができる。
また、第1の実施形態によれば、制御機能551は、圧電振動子22を揺動させる揺動機構21を有する超音波プローブ2における圧電振動子22の揺動位置ごとに、スキャン開始時点から一定の時間間隔で複数の位相の超音波画像をそれぞれ収集するように制御する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、従来のエリアスキャンを利用することでき、任意の位相のエリアスキャンを容易に実現することを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、制御機能551は、複数の位相の超音波画像の収集を次周期に達する前に終了し、当該次周期における所定位相に達する前にスキャンの位置を移動させる。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、連続する各周期で異なる位置のスキャンを実行することを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、制御機能551は、スキャンの位置ごとに複数の位相の超音波画像を収集した後、当該位置の移動時に対応する位相の超音波画像を、スキャンの位置の移動方向とは逆方向に位置を移動させながら収集するように制御する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、全ての位相のデータを取得することができ、全ての位相の中から所望の位相を選択することを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、生体情報は脈波信号であり、制御機能551は、脈波信号の振幅に基づいて、所定位相を特定する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、心拍の位相を対象に同一位相のエリアスキャンを実行することを可能にする。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、超音波プローブ2内の揺動機構21によってスキャン位置を移動させる場合について説明した。第2の実施形態では、超音波プローブ2を保持するメカ機構によってスキャン位置を移動させる場合について説明する。図5は、第2の実施形態に係る超音波診断装置1aの構成の一例を示すブロック図である。図5に示すように、第2の実施形態に係る超音波診断装置1aは、第1の実施形態と比較して、メカ機構7を有する点と、制御機能551及びメカ制御機能554による処理が異なる。以下、これらを中心に説明する。
メカ機構7は、超音波プローブ2のプローブ本体を保持する保持部71と、超音波プローブ2を被検体の体表上の所望の位置に移動させるための機構部72とを有する。すなわち、メカ機構7は、保持部71によって保持した超音波プローブ2を、機構部72の動きによって所望の位置に移動させる。例えば、メカ機構7は、装置本体5の制御に応じて、超音波プローブ2を移動させる。以下、メカ機構7の一例について、図6を用いて説明する。なお、図6に示すメカ機構7は、あくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。
図2は、第2の実施形態に係るメカ機構7の一例を示す外観図である。図6に示すように、メカ機構7は、第1の保持部711、第2の保持部712、第3の保持部713、及び、第4の保持部714を有する保持部71と、第1の機構部721、第2の機構部722、及び、第3の機構部723を有する機構部72とを有する。保持部71は、アルミニウムなどを材料とした鋳物であり、保持部間を接合するための接合部や、機構部72との間で係合する係合部、超音波プローブ2を保持するプローブホルダー等を有する。また、機構部62は、モータやアクチュエータなどの駆動部や、保持部との間を係合するための係合部等を有する。
例えば、第1の保持部711は、メカ機構7全体を支持する基部(不図示)に対して長手方向の一端が接合され、他端に第2の保持部712が接合されている。これにより、第1の保持部711は、第2の保持部712に直接的或いは間接的に保持される全ての部材を支持する。第2の保持部712は、長手方向の一端が第1の保持部711に接合され、長手方向に沿って第1の機構部721がスライド移動可能となるように、第1の機構部721が係合されている。例えば、第2の保持部712は、第1の機構部721と係合するレールを長手方向に沿って有し、レール上に第1の機構部721をスライド移動可能に保持している。
ここで、図6に示すように、第2の保持部712の長手方向が水平方向となるように、第1の保持部711に対して第2の保持部712が接合されることで、第1の機構部721が、矢印a1で示す水平方向にスライド移動する。第1の機構部721は、第2の保持部712に係合して保持され、モータやアクチュエータなどの駆動部による駆動力により第2の保持部712の長手方向に沿って移動する。例えば、第1の機構部721は、第2の保持部712のレールと係合して、装置本体5の制御に基づく駆動部による駆動力によってレール上をスライド移動する。また、第1の機構部721は、第2の機構部722が接合されている。
第2の機構部722は、第1の機構部721と接合されることで第2の保持部712に保持されている。また、第2の機構部722は、第3の保持部713がスライド移動可能となるように第3の保持部713と係合して、第3の保持部713を保持している。すなわち、第2の機構部722は、第1の機構部721のスライド移動とともに第2の保持部712の長手方向に沿って移動するとともに、第3の保持部713をスライド移動させる。ここで、第2の機構部722は、第1の機構部721の移動方向と直交する方向に第3の保持部713をスライド移動させる。例えば、第2の機構部722は、装置本体5の制御に基づく駆動部による駆動力によって、矢印a2で示す鉛直方向に第3の保持部713をスライド移動させる。
第3の保持部713は、長手方向の一端が第2の機構部722と係合され、第2の機構部722上をスライド移動する。例えば、第3の保持部713は、第2の機構部722と係合するレールを長手方向に沿って有し、矢印a2で示す鉛直方向に第2の機構部722上をスライド移動する。また、第3の保持部713は、他端が第3の機構部723と係合される。ここで、第3の保持部713では、第3の機構部723が第2の保持部712の長手方向を軸として回転移動するように、第3の機構部723を保持している。例えば、第3の保持部713は、矢印a3で示す方向に回転移動可能となるように、第3の機構部723を保持する。
第3の機構部723は、第3の保持部713と係合されることで第3の保持部713に保持されている。また、第3の機構部723は、第4の保持部714が接合されている。例えば、第3の機構部723は、装置本体5の制御に基づく駆動部による駆動力によって、第4の保持部714を保持した状態(第4の保持部714の向きが変わらない状態)で、矢印a3で示す方向に回転移動する。これにより、第3の機構部723は、第4の保持部714によって保持された超音波プローブ2の角度を変化させることができる。
第4の保持部714は、第3の機構部723に接合され、超音波プローブ2を保持する。例えば、第4の保持部714は、図2に示すように、超音波プローブ2の超音波の送受信面の面方向が第3の保持部713の長手方向と直交するように、超音波プローブ2を保持する。
上述したように、メカ機構7は、第1の機構部721による移動と、第2の機構部722による移動と、第3の機構部723による移動とによって、第4の保持部714に保持された超音波プローブ2を、矢印a1、矢印a2、矢印a3によって示す方向にそれぞれ移動させることができる。すなわち、メカ機構7は、水平方向及び鉛直方向に超音波プローブ2を移動させるとともに、超音波プローブ2の角度を変えることができる。なお、図2に示すメカ機構7は、メカ機構の一例であり、メカ機構は、図示のものに限られない。例えば、メカ機構7は、矢印a1に直交し、かつ、矢印a2に直交する方向に、超音波プローブ2を移動させる機構部を備える場合でもよい。
メカ制御機能554は、メカ機構7における機構部72に含まれる駆動部に対して制御信号を送信することで、機構部72の移動を制御する。例えば、メカ制御機能554は、第1の機構部721に対して制御信号を送信することで、第1の機構部721の駆動部を制御して、矢印a1に示す方向への第1の機構部721のスライド移動を制御する。また、例えば、メカ制御機能554は、第2の機構部722に対して制御信号を送信することで、第2の機構部722の駆動部を制御して、矢印a2に示す方向への第3の保持部713のスライド移動を制御する。また、例えば、メカ制御機能554は、第3の機構部723に対して制御信号を送信することで、第3の機構部723の駆動部を制御して、矢印a3に示す方向への第3の機構部723の回転移動を制御する。
メカ制御機能554は、例えば、制御機能551から受信した信号に基づく制御信号を機構部72に送信することで、メカ機構の動きを制御する。すなわち、メカ制御機能554は、制御機能551によって決定されたタイミング及び移動量で機構部72を移動させる。
第2の実施形態に係る制御機能551は、超音波プローブ2の送受信面を被検体に向けた状態で移動させるメカ機構7における移動位置ごとに、スキャン開始時点から一定の時間間隔で複数の位相の超音波画像をそれぞれ収集するように制御する。すなわち、制御機能551は、メカ機構7によって超音波プローブ2の位置(スキャン位置)を移動させながら、生体情報における所定の位相をスキャン開始のトリガとして、第1の実施形態と同様のエリアスキャンを制御する。
ここで、制御機能551は、被検体と超音波プローブ2との距離情報を取得して、取得した距離情報に基づいてメカ機構7の機構部72の移動量を決定する。すなわち、メカ機構7を用いたスキャンでは、メカ機構7が超音波プローブ2を保持するため、適切なスキャンが実行できるように、制御機能551は、被検体と超音波プローブ2の送受信面との距離情報を取得し、取得した距離情報に基づいて超音波プローブ2の適切な位置を特定し、特定した位置に超音波プローブ2が配置されるように、機構部72の移動量を決定する。例えば、制御機能551は、距離センサによって取得された距離情報や、超音波プローブ2及び被検体をカメラで撮影した映像などに基づいて、超音波プローブ2の適切な位置を特定し、特定した位置に超音波プローブ2が配置されるように、機構部72の移動量を決定する。
また、メカ機構7を用いたスキャンでは、音響媒体として水を用いることで、被検体に対して非接触で超音波プローブ2を移動させながら、スキャン対象部位の反射波データを収集することができる。
図7は、第2の実施形態に係る制御機能による制御の一例を説明するための図である。ここで、図7は、圧電振動子の配列方向に直交する方向から見た場合の超音波プローブ2の内部を示す。また、図7では、生体情報として、脈波を用いる場合について説明する。例えば、制御機能551は、図7の上段の図に示すように、メカ制御機能554に信号を送信することでメカ機構7を駆動させて超音波プローブ2を移動させることで、圧電振動子22を位置P1に移動させる。
そして、制御機能551は、メカ機構7の駆動を停止させて圧電振動子22を位置P1に留めた状態で、脈波に基づくスキャンを制御する。例えば、制御機能551は、図7に示すように、脈波におけるタイミングAをスキャン開始のトリガとしてスキャンを開始する。スキャン開始のトリガとなるタイミングAは、任意に設定することができる。
一例を挙げると、制御機能551は、取得機能553によって取得されている脈波の振幅に基づいてタイミングAを特定し、一定の時間間隔で複数の位相の反射波データを収集するように制御する。すなわち、制御機能551は、図7に示すように、タイミングAを示す縦線と平行な縦線の各位相をスキャンタイミングとして反射波データを収集するように制御する。
そして、制御機能551は、複数の位相の反射波データの収集を次周期に達する前に終了し、当該次周期における所定位相に達する前にスキャンの位置を移動させる。例えば、制御機能551は、図7の左端の1心拍分の脈波におけるタイミングAから一定の時間間隔で複数の位相の反射波データの収集を開始し、次の脈波に達する前に反射波データの収集を停止する。なお、反射波データを収集する時間間隔は任意に設定することができる。
そして、制御機能551は、次の脈波におけるタイミングAに達する前に、メカ機構7を制御して超音波プローブ2を移動させることで、圧電振動子22の位置を移動させる。例えば、制御機能551は、図7の下段の図に示すように、メカ制御機能554に信号を送信することでメカ機構7を駆動させ、圧電振動子22を位置P2に移動させる。そして、制御機能551は、メカ機構7による駆動を停止させて圧電振動子22を位置P2に留めた状態で、位置P1と同様に脈波に基づくスキャンを制御する。
制御機能551は、上述したスキャン位置の移動と、各スキャン位置における脈波のタイミングAをトリガとした一定の時間間隔での複数の位相の反射波データの収集とを繰り返し実行することで、各位置について、含まれる複数の位相がそれぞれ同一となる反射波データを収集する。例えば、図7に示すように、タイミングAから一定時間が経過した位相を所望の位相として各位置の反射波データから抽出することで、各位置について同一位相の反射波データを取得することができる。
また、制御機能551は、スキャンの位置ごとに複数の位相の超音波画像を収集した後、当該位置の移動時に対応する位相の超音波画像を、スキャンの位置の移動方向とは逆方向に位置を移動させながら収集するように制御する。例えば、制御機能551は、1心拍のうち、反射波データを収集していない位相について、超音波プローブ2を逆方向に移動させながら収集する。
一例を挙げると、図7に示すように、図の左側から右側に向かって超音波プローブ2を移動させながら、位置ごとに複数の位相の反射波データを収集した場合、制御機能551は、図の右側から左側に向かって超音波プローブ2を移動させながら、収集していない位相の反射波データを収集する。
例えば、制御機能551は、脈波の振幅に基づいてタイミングAを検出し、タイミングAから一定の期間(反射波データを取得済みの期間)が経過した時点をスキャン開始のトリガとし、次の脈波におけるタイミングAまでの間、一定の時間間隔で反射波データを収集する。そして、制御機能551は、次の脈波のタイミングAを検出するとスキャンを停止して、メカ機構7を制御して、図の右側から左側に向かって超音波プローブ2を移動させる。制御機能551は、圧電振動子22の位置が図2Bの位置P1に戻るまで、上記制御を繰り返し実行する。
上述したように、第2の実施形態によれば、制御機能551は、超音波プローブ2の送受信面を被検体に向けた状態で移動させるメカ機構7における移動位置ごとに、スキャン開始時点から一定の時間間隔で複数の位相の超音波画像をそれぞれ収集するように制御する。従って、第2の実施形態に係る超音波診断装置1aは、ロボットにより自動スキャンにおいても任意の位相のエリアスキャンを可能にする。
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、揺動機構21によってスキャン位置を移動させる場合について説明した。また、第2の実施形態では、メカ機構7によってスキャン位置を移動させる場合について説明した。第3の実施形態では、揺動機構21及びメカ機構7によってスキャン位置を移動させる場合について説明する。なお、第3の実施形態に係る超音波診断装置は、図1で示す構成及び図5で示す構成を含むものであり、第1の実施形態及び第2の実施形態と比較して、制御機能551による処理が異なる。以下、これを中心に説明する。
第3の実施形態に係る制御機能551は、揺動位置ごとのスキャンが完了した後に、超音波プローブ2の送受信面を被検体に向けた状態で移動させるメカ機構7により超音波プローブ2の位置を移動させる。すなわち、制御機能551は、エリアスキャンの対象領域内の各位置の移動を揺動機構21により制御し、エリアスキャンの対象領域の移動をメカ機構7により制御する。
例えば、制御機能551は、揺動機構21を制御して全ての位相の反射波データを収集した後、メカ機構7を制御して超音波プローブ2の位置を移動させる。そして、制御機能551は、移動後の位置において、再度揺動機構21を制御して全ての位相の反射波データを収集する。なお、メカ機構7を制御した超音波プローブ2の移動は、隣接する対象領域間でデータが重複するように実行される。これにより、全ての対象領域の反射波データを合成することで、広範囲の領域を対象として任意の位相のエリアスキャンを可能にする。
また、例えば、全ての位相について反射波データを収集しない場合には、圧電振動子22がもとの位置に戻る期間に、超音波プローブ2を次の領域へと移動させることもできる。図8は、第3の実施形態に係る制御機能551による制御の一例を説明するための図である。ここで、図8は、圧電振動子の配列方向に直交する方向から見た場合の超音波プローブ2の内部を示す。
例えば、制御機能551は、図8の上段の図に示すように、揺動機構21を揺動させた各位置のスキャンが完了すると、図8の中段の図に示すように、揺動制御回路56を制御して圧電振動子22を矢印81の方向に揺動させるともに、メカ機構7を制御して超音波プローブ2を矢印82の方向に移動させる。これにより、図8の下段の図に示す次の領域への移動とその領域でのスキャン開始までの時間を短縮させることができる。
図9は、第3の実施形態に係る超音波診断装置の処理の手順を説明するためのフローチャートである。なお、図9では、図8における処理の手順を示す。ここで、図9に示すステップS201~S207は、図4に示すステップS101~S107と同様の処理であるため、説明を省略する。図9に示すステップS208、S209は、処理回路55がメモリ54から制御機能551に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。ステップS210は、Bモード処理回路52又はドプラ処理回路53がメモリ54から対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。
第3の実施形態に係る超音波診断装置1では、揺動機構21及び送受信回路51を制御して(ステップS201~ステップS207)、全ての位置について画像を取得すると(ステップS206肯定)、処理回路55は、全ての対象領域について画像を取得したか否かを判定する(ステップS208)。
ここで、全ての対象領域について画像を取得していない場合には(ステップS208否定)、処理回路55は、メカ機構7で超音波プローブ2を移動させながら、揺動機構21を制御して、次の領域における位置P1に圧電振動子22を移動させ(ステップS209)、ステップS203の判定処理を実行する。
一方、全ての対象領域について画像を取得している場合には(ステップS208肯定)、Bモード処理回路52又はドプラ処理回路53は、所望の位相の反射波データを合成して、3次元のデータを生成する(ステップS210)。
上述したように、第3の実施形態によれば、制御機能551は、揺動位置ごとのスキャンが完了した後に、超音波プローブ2の送受信面を被検体に向けた状態で移動させるメカ機構により超音波プローブ2の位置を移動させる。従って、第3の実施形態に係る超音波診断装置は、任意の位相のエリアスキャンを広範囲で実施する場合にも迅速に行うことを可能とする。
例えば、メカ機構7のみを用いて広範囲のエリアスキャンを実行することができるが、揺動機構21による移動と比較した場合、メカ機構7による移動は、移動速度が遅い。したがって、メカ機構7のみを用いた場合、生体情報において連続する各周期で異なる位置のスキャンを実行することが困難となる場合もある。そこで、上述したように、エリアスキャンの対象領域内の各位置の移動を揺動機構21により制御し、エリアスキャンの対象領域の移動をメカ機構7により制御することで、連続する各周期で異なる位置のスキャンを実行しつつ、広範囲な領域を対象とすることが可能となる。
(その他の実施形態)
さて、これまで第1~第3の実施形態について説明したが、上述した第1~第3の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
なお、上記の実施形態の説明で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
また、上述した実施形態で説明した処理方法は、あらかじめ用意された処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD、USBメモリ及びSDカードメモリ等のFlashメモリ等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって非一時的な記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上、説明したとおり、実施形態によれば、任意の位相におけるエリアスキャンを可能にする。
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。