以下に添付図面を参照し、本発明の実施の形態に係るモータ駆動装置及び空気調和機について説明する。なお、以下に示す実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下では、電気的な接続を単に「接続」と称して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るモータ駆動装置100の構成を示す回路図である。図2は、図1に示すインバータ回路の詳細な構成を示す回路図である。
実施の形態1に係るモータ駆動装置100は、図1に示すように、単相の交流電源1から供給される交流電力を直流電力に変換する。また、モータ駆動装置100は、変換した直流電力を再度交流電力に変換し、変換した交流電力を負荷であるモータ500に供給してモータ500を駆動する。モータ500の例は、送風機、圧縮機又は空気調和機に内蔵されるモータである。
図1において、モータ駆動装置100は、昇圧回路3と、コンデンサ4と、制御部10と、電流検出器18Sを備えるインバータ回路18と、結線切替部60と、第1の電圧検出器である電圧検出器5と、第2の電圧検出器である電圧検出器7と、を備える。
昇圧回路3は、後述するスイッチング素子の開閉動作によって交流電源1から出力される交流電圧を直流電圧に変換及び昇圧する昇圧コンバータである。昇圧回路3は、交流電圧を直流電圧に変換する際に、変換した直流電圧の電圧値を制御、即ち昇圧する。なお、交流電源1から出力される交流電圧を「電源電圧」と呼び、「Vs」で表す。
昇圧回路3は、リアクトル2と、第1のレグ31と、第2のレグ32とを備える。第1のレグ31と第2のレグ32とは、並列に接続されている。第1のレグ31では、第1の上アーム素子311と第1の下アーム素子312とが直列に接続されている。第2のレグ32では、第2の上アーム素子321と第2の下アーム素子322とが直列に接続されている。リアクトル2の一端は、交流電源1に接続される。リアクトル2の他端は、第1のレグ31における第1の上アーム素子311と第1の下アーム素子312との接続点3aに接続されている。第2の上アーム素子321と第2の下アーム素子322との接続点3bは、交流電源1の他端に接続されている。昇圧回路3において、接続点3a,3bは、交流端子を構成する。
第1の上アーム素子311は、スイッチング素子Q1と、スイッチング素子Q1に逆並列に接続されるダイオードD1とを含む。第1の下アーム素子312は、スイッチング素子Q2と、スイッチング素子Q2に逆並列に接続されるダイオードD2とを含む。第2の上アーム素子321は、スイッチング素子Q3と、スイッチング素子Q3に逆並列に接続されるダイオードD3とを含む。第2の下アーム素子322は、スイッチング素子Q4と、スイッチング素子Q4に逆並列に接続されるダイオードD4とを含む。
図1では、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4のそれぞれに金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:MOSFET)を例示しているが、MOSFETに限定されない。MOSFETは、ドレインとソースとの間で双方向に電流を流すことができるスイッチング素子である。ドレインに相当する第1端子とソースに相当する第2端子との間で双方向に電流を流すことができるスイッチング素子であれば、どのようなスイッチング素子でもよい。
また、逆並列とは、MOSFETのドレインに相当する第1端子とダイオードのカソードとが接続され、MOSFETのソースに相当する第2端子とダイオードのアノードとが接続されることを意味する。なお、ダイオードは、MOSFET自身が内部に有する寄生ダイオードを用いてもよい。寄生ダイオードは、ボディダイオードとも呼ばれる。
また、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4のうちの少なくとも1つは、シリコン系材料により形成されたMOSFETに限定されず、炭化珪素、窒化ガリウム、酸化ガリウム又はダイヤモンドといったワイドバンドギャップ半導体により形成されたMOSFETでもよい。
一般的にワイドバンドギャップ半導体は、シリコン半導体に比べて耐電圧及び耐熱性が高い。そのため、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4のうちの少なくとも1つにワイドバンドギャップ半導体を用いることにより、スイッチング素子の耐電圧性及び許容電流密度が高くなり、スイッチング素子を組み込んだ半導体モジュールを小型化できる。
なお、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4のうちの3つは、スイッチング素子に代えてダイオードを用いてもよい。即ち、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4のうちの少なくとも1つがスイッチング素子であればよい。このような代替構成でも後述する昇圧動作が可能となる。
コンデンサ4の一端は、高電位側の直流母線12aに接続されている。直流母線12aは、第1のレグ31における第1の上アーム素子311と、第2のレグ32における第2の上アーム素子321との接続点3cから引き出されている。コンデンサ4の他端は、低電位側の直流母線12bに接続されている。直流母線12bは、第1のレグ31における第1の下アーム素子312と、第2のレグ32における第2の下アーム素子322との接続点3dから引き出されている。昇圧回路3において、接続点3c,3dは、直流端子を構成する。また、昇圧回路3において、接続点3c,3dがある側を「直流側」と呼ぶ。
昇圧回路3の出力電圧は、コンデンサ4の両端に印加される。コンデンサ4は、直流母線12a,12bに接続されており、昇圧回路3の出力電圧を平滑する。なお、直流母線12a,12bに生じる電圧を「母線電圧」と呼び、「Vdc」で表す。また、交流電源1と昇圧回路3との間に流れる交流電流を「第1電流」と呼ぶ場合がある。
電圧検出器5は、電源電圧Vsを検出し、電源電圧Vsの検出値を制御部10に出力する。
電圧検出器7は、母線電圧Vdcを検出し、母線電圧Vdcの検出値を制御部10に出力する。
次に、図2を用いて、インバータ回路18の回路構成を説明する。インバータ回路18は、図2に示すように、上アーム素子18UPと下アーム素子18UNとが直列に接続されたレグ18Aと、上アーム素子18VPと下アーム素子18VNとが直列に接続されたレグ18Bと、上アーム素子18WPと下アーム素子18WNとが直列に接続されたレグ18Cと、を備える。レグ18A、レグ18B及びレグ18Cは、互いに並列に接続されている。直流母線12bには、シャント抵抗18DSが挿入されている。シャント抵抗18DSは、図1に示した電流検出器18Sの構成要素である。なお、上アーム素子18UP,18VP,18WP及び下アーム素子18UN,18VN,18WNのそれぞれを「第2のスイッチング素子」と呼ぶ場合がある。
図2では、上アーム素子18UP,18VP,18WP及び下アーム素子18UN,18VN,18WNが絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)である場合を例示しているが、これに限定されない。IGBTに代えて、MOSFETを用いてもよい。
上アーム素子18UPは、トランジスタ18aと、トランジスタ18aに逆並列に接続されるダイオード18bとを含む。他の上アーム素子18VP,18WP、及び下アーム素子18UN,18VN,18WNについても同様の構成である。逆並列とは、昇圧回路3の場合と同様に、IGBTのエミッタに相当する第1端子にダイオードのアノード側が接続され、IGBTのコレクタに相当する第2端子にダイオードのカソード側が接続されることを意味する。
シャント抵抗18DSは、コンデンサ4とインバータ回路18との間に流れる電流を検出する。シャント抵抗18DSに流れる電流の検出値は、制御部10に送られる。
なお、図2は、上アーム素子と下アーム素子とが直列に接続されるレグを3つ備える構成であるが、この構成に限定されない。レグの数は4つ以上でもよい。
上アーム素子18UP,18VP,18WP及び下アーム素子18UN,18VN,18WNのトランジスタ18aがMOSFETである場合、上アーム素子18UP,18VP,18WP及び下アーム素子18UN,18VN,18WNのうちの少なくとも1つは、炭化珪素、窒化ガリウム、酸化ガリウム又はダイヤモンドといったワイドバンドギャップ半導体により形成されていてもよい。ワイドバンドギャップ半導体により形成されたMOSFETを用いれば、耐電圧性及び耐熱性の効果を享受することができる。
上アーム素子18UPと下アーム素子18UNとの接続点26aは、図2では図示しないモータ500の第1の相(例えばU相)に接続され、上アーム素子18VPと下アーム素子18VNとの接続点26bはモータ500の第2の相(例えばV相)に接続され、上アーム素子18WPと下アーム素子18WNとの接続点26cはモータ500の第3の相(例えばW相)に接続される。インバータ回路18において、接続点26a,26b,26cは、交流端子を構成する。
また、図2に示すインバータ回路18に代えて、図3に示すインバータ回路18Xを用いてもよい。図3は、図1に示すインバータ回路の図2とは異なる構成を示す回路図である。
図3に示すインバータ回路18Xでは、下アーム素子18UNと直流母線12bとの間において、下アーム素子18UNに直列に接続される下アームシャント抵抗18USが設けられている。これにより、レグ18Aは、互いに直列に接続された上アーム素子18UP、下アーム素子18UN及び下アームシャント抵抗18USによって構成される。
他のレグも同様である。具体的に、下アーム素子18VNと直流母線12bとの間において、下アーム素子18VNに直列に接続される下アームシャント抵抗18VSが設けられている。これにより、レグ18Bは、互いに直列に接続された上アーム素子18VP、下アーム素子18VN及び下アームシャント抵抗18VSによって構成される。また、下アーム素子18WNと直流母線12bとの間において、下アーム素子18WNに直列に接続される下アームシャント抵抗18WSが設けられている。これにより、レグ18CBは、互いに直列に接続された上アーム素子18WP、下アーム素子18WN及び下アームシャント抵抗18WSによって構成される。
下アームシャント抵抗18USは、U相の下アームに流れる電流を検出する。下アームシャント抵抗18VSは、V相の下アームに流れる電流を検出する。下アームシャント抵抗18WSは、W相の下アームに流れる電流を検出する。下アームシャント抵抗18US,18VS,18WSに流れる電流の検出値は、制御部10に送られる。
図2は、いわゆる1シャント電流検出方式の回路構成である。図2の回路は、主に圧縮機駆動用のモータに好適に用いられる。また、図3は、いわゆる3シャント電流検出方式の回路構成である。図3の回路は、主にファン駆動用のモータに好適に用いられる。
次に、実施の形態1におけるモータ500について説明する。なお、モータ500の回転数を、適宜「モータ回転数」と呼ぶ。また、インバータ回路18がモータ500へ印加する電圧を、適宜「モータ印加電圧」もしくは、単に「印加電圧」と呼ぶ。
図1において、モータ500は、U相巻線502Uと、V相巻線502Vと、W相巻線502Wとを備える。U相巻線502U、V相巻線502V及びW相巻線502Wは、モータ500が備える3つの巻線である。
U相巻線502Uの両端は、開放されている。V相巻線502V及びW相巻線502Wも同様である。結線切替部60は、モータ500が備える3つの巻線の結線状態を、第1の結線状態と第2の結線状態との間で相互に切り替える。第2の結線状態は、モータ回転数が同一の条件において、第1の結線状態よりもモータ印加電圧が低くなる状態である。従って、モータ回転数が同一の条件において、第1の結線状態におけるモータ印加電圧は、第2の結線状態におけるモータ印加電圧よりも高くなる。図1のモータ500の場合、第1の結線状態はスター結線に結線された状態であり、第2の結線状態はデルタ結線に結線された状態である。
結線切替部60は、開放されている各巻線の両端の接続先を変更することで、モータの巻線の結線状態を、スター結線とデルタ結線との間で切り替える機能を有する。この機能の実現のため、結線切替部60は、U相スイッチ62Uと、V相スイッチ62Vと、W相スイッチ62Wとを備える。U相スイッチ62Uは、U相巻線502Uの接続先を切り替える切替部である。V相スイッチ62Vは、V相巻線502Vの接続先を切り替える切替部である。W相スイッチ62Wは、W相巻線502Wの接続先を切り替える切替部である。
U相スイッチ62U、V相スイッチ62V及びW相スイッチ62Wは、制御部10からの切替信号CS1~CS3によって接点が個別に切り替えられる。
各相スイッチの現在の接点は、モータ500の各相巻線をスター結線に接続する状態になっている。即ち、デフォルトの接点は、モータ500の各相巻線をスター結線に接続する状態である。
なお、図1では、各相スイッチは、c接点スイッチとして記載しているが、これら例に限定されない。各相スイッチは、それぞれが双方向に開閉することのできるスイッチであればよい。例えば、各相スイッチは、a接点スイッチ又はb接点スイッチが組み合わされて構成されていてもよい。また、各相スイッチは、半導体スイッチであってもよい。
各相スイッチは、オン時の導通損失が小さいものが好適であり、リレー又はコンタクタといった機械スイッチを用いることができる。また、機械スイッチに代えて、ワイドバンドギャップ半導体により形成されたスイッチング素子を使用してもよい。ワイドバンドギャップ半導体により形成されたスイッチング素子とすることで、オン抵抗が小さく、低損失で素子発熱が小さいという効果を享受することができる。
なお、図1では、第1の結線状態がスター結線であり、第2の結線状態がデルタ結線である場合を例示したが、これに限定されない。例えば、図4に示す2つの結線状態を切り替えてもよい。図4は、実施の形態1における第1及び第2の結線状態の他の例の説明に供する図である。
図4には、図1に示すモータ500の図1とは異なる結線状態が模式的に示されている。図4の上段部には、スター結線における各相の巻線を直列に接続した直列結線の例が示されている。また、図4の下段部には、スター結線における各相巻線を並列に接続した並列結線の例が示されている。
直列結線におけるU相巻線33U1のインピーダンスは、並列結線におけるU相巻線33U2のインピーダンスよりも大きい。同様に、直列結線におけるV相巻線33V1のインピーダンスは、並列結線におけるV相巻線33V2のインピーダンスよりも大きく、直列結線におけるW相巻線33W1のインピーダンスは、並列結線におけるW相巻線33W2のインピーダンスよりも大きい。このため、同じ相電流であれば、各相巻線に誘起される誘起電圧は、並列結線よりも直列結線の方が大きい。従って、図4の上段部に示される直列結線は、モータ印加電圧が並列結線に比べて高くなる結線状態であり、上述した第1の結線状態に対応する。逆に、図4の下段部に示される並列結線は、モータ印加電圧が直列結線に比べて低くなる結線状態であり、上述した第2の結線状態に対応する。
なお、図4では、図1に示す結線切替部60に相当する構成部の図示は省略しているが、a接点スイッチ、b接点スイッチ又はc接点スイッチを適宜組み合わせることにより、第1の結線状態と第2の結線状態とを切り替えることができる。
図1に戻り、制御部10は、電圧検出器5及び電圧検出器7の検出値に基づいて、昇圧回路3内の各スイッチング素子を制御するための制御信号S311~S322を生成する。制御信号S311は、スイッチング素子Q1を制御するための制御信号であり、制御信号S322は、スイッチング素子Q4を制御するための制御信号である。スイッチング素子Q2,Q3も制御部10からの制御信号によって制御される。制御部10によって生成された制御信号S311~S322は、昇圧回路3内の図示しないゲート駆動回路に入力される。
また、制御部10は、電圧検出器5、電圧検出器7及び電流検出器18Sの各検出値に基づいて、インバータ回路18内の各スイッチング素子を制御するための制御信号S1~S6を生成する。制御信号S1は、上アーム素子18UPを制御するための制御信号であり、制御信号S6は、下アーム素子18WNを制御するための制御信号である。他の上アーム素子18VP,WP及び他の下アーム素子18UN,VNも制御部10からの制御信号によって制御される。制御部10によって生成された制御信号S1~S6は、インバータ回路18内の図示しないゲート駆動回路に入力される。
次に、実施の形態1に係るモータ駆動装置100における要部の回路動作について、図1から図8の図面を適宜参照して説明する。
図5は、実施の形態1におけるモータ駆動装置100の動作モードの説明に供する図である。図5には、パッシブ同期整流モード、簡易スイッチングモード及びパルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)制御モードという3つの動作モードが示されている。図6は、実施の形態1の昇圧回路3におけるパッシブ同期整流モード時の電流経路の1つを示す図である。図7は、一般的なスイッチング素子における電流-損失特性を模式的に示す図である。図8は、実施の形態1の昇圧回路3における簡易スイッチングモード時の電流経路の1つを示す図である。
図5の上段部には、パッシブ同期整流モード時の電源電圧及び電源電流が示されている。この動作モードは、非昇圧で同期整流を行うモードである。非昇圧とは、電源短絡動作を行わないことを意味する。なお、電源短絡動作については、後述する。また、同期整流とは、電流がダイオードに流れるタイミングに合わせ、ダイオードに逆並列に接続されるスイッチング素子をON動作させる制御手法である。
図6には、電源電圧が正極性であり、且つ、同期整流を行うときのコンデンサ4に対する充電経路が示されている。図6に示すように、交流電源1における上側の端子がプラス電位のときを電源電圧の極性が正であるとする。また、交流電源1における上側の端子がマイナス電位のときを電源電圧の極性が負であるとする。
図6において、交流電源1から供給される電流によってコンデンサ4が充電される場合、スイッチング素子Q1,Q4をON動作させない場合、交流電源1、リアクトル2、ダイオードD1、コンデンサ4、ダイオードD4、交流電源1の順で電流が流れる。ダイオードは、電流が流れる方向、即ち順方向に電圧降下分の電圧が印加されないと導通しない。このため、図5の上段部に示すように、電源電圧が正の半周期T1の期間において、半周期T1よりも短い期間T2で電流が流れる。パッシブ同期整流モードでは、期間T2において、ダイオードD1,D4の導通タイミングに合わせてスイッチング素子Q1,Q4がONに制御される。従って、期間T2では、交流電源1、リアクトル2、スイッチング素子Q1、コンデンサ4、スイッチング素子Q4、交流電源1の順で電流が流れる。
電源電圧が負の半周期も同様な動作が行われる。但し、電源電圧が負の半周期における期間T3では、ダイオードD2,D3の導通タイミングに合わせてスイッチング素子Q2,Q3がONに制御される。
図7には、ダイオードの損失特性と、スイッチング素子のオン時の損失特性とが示されている。図7に示すように、電流値I0よりも電流が小さい領域Aでは、スイッチング素子の損失よりも、ダイオードの損失の方が大きい。この特性を利用し、電流がダイオードに流れるタイミングに合わせ、ダイオードに逆並列に接続されるスイッチング素子をON動作させる同期整流を利用すれば、モータ駆動装置100を高効率に動作させることができる。
また、図5の中段部には、簡易スイッチングモード時の電源電圧及び電源電流が示されている。この動作モードは、電源電圧の半周期の期間において、1又は数回の電源短絡動作を行って昇圧回路3を昇圧動作させる動作モードである。なお、図5の中段部の例では、電源電圧の半周期の期間に1回の電源短絡動作が行われている。
図8には、電源電圧が正極性であり、且つ、同期整流を行うときのリアクトル2を介した交流電源1の短絡経路が示されている。図8に示すように、スイッチング素子Q1,Q3を期間T4でON動作させる。このようにすれば、交流電源1、リアクトル2、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q3、交流電源1の順で電流が流れ、リアクトル2に電気エネルギーが蓄積される。
期間T4の後、図5の上段部で示したパッシブ同期整流モード時の動作となる。期間T4の直後では、交流電源1の電圧とリアクトル2に生じる電圧との和が、昇圧回路3に印加される。このため、昇圧回路3のダイオードD1,D4は導通する。そして、ダイオードD1,D4の導通タイミングに合わせてスイッチング素子Q1,Q4がON動作し、電源電流が流れる。
なお、図8では、スイッチング素子Q1,Q3をON動作させているが、これに代えて、スイッチング素子Q2,Q4をON動作させてもよい。この場合、交流電源1、リアクトル2、スイッチング素子Q2、スイッチング素子Q4、交流電源1の順で電流が流れる。
負の半周期においても同様であり、1又は数回の電源短絡動作の後に、パッシブ同期整流動作となる。電源短絡動作では、スイッチング素子Q1,Q3をON動作させてもよいし、スイッチング素子Q2,Q4をON動作させてもよい。
また、図5の下段部には、PWM制御モード時の電源電圧及び電源電流が示されている。この動作モードでは、リアクトル2に電気エネルギーを蓄積する電源短絡動作と、リアクトル2に蓄積した電気エネルギーを使用してコンデンサ4を充電する充電動作とが交互に繰り返される。電源短絡動作と充電動作との切り替えは、数kHzから数十kHzの高周波で行われる。これにより、図5の下段部に示されるように、電源電流は、正弦波状の電流に制御される。また、中段部に示す簡易スイッチングモードよりも、昇圧動作の時間が長く、簡易スイッチングモードよりも高い昇圧電圧が得られる。
上述した3つのモードは、運転条件及び負荷条件に応じて切り替えられる。これにより、モータ駆動装置100を、高効率に動作させることが可能となる。
次に、実施の形態1に係るモータ駆動装置100における昇圧制御について、図1、及び図9から図11の図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、図1に示すモータ500のように結線切替が可能な構造のモータを「結線切替モータ」と呼び、モータ500の運転効率を単に「効率」と呼ぶ。なお、ここで言う「効率」は、モータ500への入力電力に対するモータ500の機械出力の比である。また、幾つかの図面では、スター結線を「Y結線」、デルタ結線を「Δ結線」と表記する。
図9は、実施の形態1の結線切替モータにおける結線状態と効率との関係の説明に供する図である。図10は、実施の形態1の結線切替モータを構成する際の着意事項の説明に供する図である。図11は、実施の形態1の昇圧回路3における出力電圧制御の説明に供する図である。
図9には、結線状態がスター結線とデルタ結線とにおけるモータ500の回転数とモータ500の効率との関係が示されている。横軸にはモータ500の回転数が示され、縦軸にはモータ500の効率が示されている。図9に示すように、結線状態がスター結線の場合のモータ500の効率は、回転数が小さい低速領域、即ち軽負荷領域では、デルタ結線に比べて良好であるが、回転数が大きい高速領域、即ち高負荷領域又は過負荷領域では低下する。
一方、結線状態がデルタ結線の場合のモータ500の効率は、回転数が小さい低速領域ではスター結線に比べて劣るが、回転数が大きい高速領域では、向上する。
従って、低速領域では、デルタ結線よりもスター結線の方が効率が良く、高速領域では、スター結線よりもデルタ結線の方が効率が良い。よって、図9に示す切替点が存在し、この切替点で結線状態を切り替えれば、効率の良い運転が可能となる。なお、切替点における切替回転数を「第1回転数」と呼ぶ場合がある。
モータ駆動装置100のアプリケーションの1つに、空気調和機がある。空気調和機における省エネルギーに関する指標の1つに、通年エネルギー消費効率(Annual Performance Factor:APF)がある。APFには、空気調和機の中間負荷での効率が大きく寄与する。なお、上述した低速領域又は軽負荷領域は、APFで言う中間負荷とほぼ同義と考えてよい。
図10には、モータ500の回転数と、2つの巻線の誘起電圧の関係が示されている。横軸にはモータ500の回転数が示され、縦軸には各種の電圧が示されている。
図10において、巻数以外の条件は同一である巻数Aの巻線と巻数Bの巻線において、巻数Aの巻線の誘起電圧が太実線で示され、巻数Bの巻線の誘起電圧が太破線で示されている。巻数Aと巻数Bとの間には、巻数B>巻数Aの関係があり、巻数Aの巻線の誘起電圧よりも、巻数Bの巻線の誘起電圧の方が高くなる。また、巻線の高巻数化により誘起電圧を高めれば、モータ電流を低減できるので、効率の向上が図れる。よって、巻線の高巻数化は、中間負荷での効率向上に有効であることが理解できる。
ところが、巻線の高巻数化により誘起電圧を高めた場合、低速領域又は軽負荷領域において、電圧不足になる場合がある。図10において、整流電圧は、昇圧回路3を昇圧動作させないとき、即ち昇圧回路3をパッシブ同期整流モードで動作させたときの昇圧回路3の出力電圧である。図10に示す整流電圧に対して、巻数Aの巻線は、定格回転数の場合でも電圧不足とならないが、巻数Bの巻線は、定格回転数未満の回転数で電圧不足となる状況が示されている。このため、巻数Bを使用するには、昇圧回路3によって昇圧電圧を出力する必要がある。
図11には、モータ500の結線状態がスター結線のときの誘起電圧と、モータ500の結線状態がデルタ結線のときの誘起電圧とが示されている。横軸にはモータ500の回転数が示され、縦軸には各種の電圧が示されている。図11では、図9に示される効率特性に鑑みて、モータ500の結線状態は、低速領域ではスター結線とし、高速領域ではデルタ結線としている。また、図11では、図9に示される第1回転数において、スター結線とデルタ結線とが切り替えられることが想定されている。
スター結線における端子間の誘起電圧は、デルタ結線における端子間の誘起電圧の√3倍である。従って、結線状態をデルタ結線からスター結線にすることは、巻線の巻数を√3倍にしたのと同等となる。また、スター結線とデルタ結線とで、巻数を変えずに、巻線の結線状態のみで切り替えるものとすれば、スター結線における回転数に対する誘起電圧の傾きは、デルタ結線における回転数に対する誘起電圧の傾きの√3倍となる。
図11には、整流電圧、並びに2つの昇圧電圧である第1電圧及び第2電圧の各レベルが破線で示されている。前述したように、整流電圧は、昇圧回路3を昇圧動作させないときの昇圧回路3の出力電圧である。換言すると、整流電圧は、昇圧回路3のスイッチング素子の開閉動作を伴わない昇圧回路3の出力電圧である。
ここで、実施の形態1では、2つの昇圧モードを定義する。1つは、昇圧回路3を昇圧動作させて第1電圧を出力する昇圧モードである。この昇圧モードを「第1の昇圧モード」と定義する。もう1つは、昇圧回路3を昇圧動作させて第2電圧を出力する昇圧モードである。この昇圧モードを「第2の昇圧モード」と定義する。
第1の昇圧モードにおいて、昇圧回路3は、前述した簡易スイッチングモードで動作し、図11に示すような第1電圧を発生する。第1電圧は、昇圧回路3のスイッチング素子の開閉動作によって昇圧される昇圧回路3の出力電圧である。
また、第2の昇圧モードにおいて、昇圧回路3は、前述したPWM制御モードで動作し、図11に示すような第2電圧を発生する。第2電圧は、昇圧回路3のスイッチング素子の開閉動作によって昇圧される昇圧回路3の出力電圧であり、且つ、第1電圧よりも高い電圧である。なお、第2電圧と第1電圧との間のレベル差が小さい場合、第2電圧の発生を第1の昇圧モード、即ち簡易スイッチングモードで実施してもよい。
図11には、所要母線電圧が太線の一点鎖線で示されている。所要母線電圧は、回転数の増加に応じて、モータ500の結線状態を切り替えたときに、電圧不足とならないレベルを示したものである。
例えばスター結線において、回転数が増加し、誘起電圧が整流電圧に達する第2回転数と、モータ500の回転数が第1回転数となる回転数区間では、第1電圧に昇圧されている必要がある。図示のように、第2回転数は、第1回転数よりも低い回転数である。なお、実際の運転制御では、マージンを見込んで、第2回転数に達する前の予め設定された回転数で第1電圧に昇圧されることは言うまでもない。
また、デルタ結線において、誘起電圧が整流電圧に達する第3回転数と、誘起電圧が第1電圧に達する第4回転数との間の回転数区間では、第1電圧に昇圧されている必要がある。図示のように、第3回転数及び第4回転数は、第1回転数よりも高く、定格回転数よりも低い回転数である。また、第4回転数は、第3回転数よりも高い回転数である。なお、実際の運転制御では、マージンを見込んで、第2回転数となる前の予め設定された回転数で第1電圧に昇圧されることは言うまでもない。
更に、デルタ結線において、誘起電圧が第1電圧に達する第4回転数と、誘起電圧が第2電圧に達する定格回転数との間の回転数区間では、第2電圧に昇圧されている必要がある。なお、実際の運転制御では、マージンを見込んで、第4回転数となる前の予め設定された回転数で第2電圧に昇圧されることは言うまでもない。
以上説明したように、実施の形態1に係るモータ駆動装置100は、モータ500の巻線の結線状態をスター結線とデルタ結線とで切り替える切替点の回転数である第1回転数において、昇圧回路3の出力電圧は、昇圧回路3を昇圧動作させないときの昇圧回路3の出力電圧よりも高い第1電圧に昇圧可能となるように構成される。この構成により、スター結線を使用する低速回転域での効率の更なる改善を図ることが可能となる。
低速回転域において、効率の更なる改善が図られる理由は、以下の通りである。
上述したように、結線切替モータでは、スター結線での電圧不足と、デルタ結線での電圧不足とが起こらないよう、双方の電圧不足に注意する必要があった。また、従来の昇圧回路は、昇圧時の損失が大きく、高巻数化には制約があった。特に、中間負荷での損失が問題となるスター結線での昇圧は見送られていた。
これに対し、実施の形態1では、昇圧回路3がパッシブ動作するときに同期整流を行うので、従来のダイオード整流で発生していた損失を改善することができる。また、2つの昇圧モードでも同期整流を行うので、昇圧動作による損失分を、昇圧動作時の同期整流による損失改善分で埋め合わせることができる。これにより、中間負荷での損失が問題となるスター結線においても、同期整流と併用することにより、スター結線を使用する低速回転域での効率を改善することが可能となる。また、これにより、結線切替モータによる高巻数化の効果を損なうことのない効率改善が可能となる。
次に、実施の形態1における制御部10の機能を実現するためのハードウェア構成について、図12及び図13の図面を参照して説明する。図12は、実施の形態1における制御部10の機能を具現するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図13は、実施の形態1における制御部10の機能を具現するハードウェア構成の他の例を示すブロック図である。
実施の形態1における制御部10の機能の全部又は一部を実現する場合には、図12に示されるように、演算を行うプロセッサ300、プロセッサ300によって読みとられるプログラムが保存されるメモリ302、及び信号の入出力を行うインタフェース304を含む構成とすることができる。
プロセッサ300は、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、CPU(Central Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)といった演算手段であってもよい。また、メモリ302には、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)といった不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)を例示することができる。
メモリ302には、制御部10における機能の全部又は一部を実行するプログラムが格納されている。プロセッサ300は、インタフェース304を介して必要な情報を授受し、メモリ302に格納されたプログラムをプロセッサ300が実行することにより、昇圧回路3及びインバータ回路18を制御する。
また、図12に示すプロセッサ300及びメモリ302は、図13のように処理回路305に置き換えてもよい。処理回路305は、単一回路、複合回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
実施の形態2.
図14は、実施の形態2に係る空気調和機200の構成例を示す図である。実施の形態2に係る空気調和機200は、実施の形態1で説明したモータ駆動装置100を備える。空気調和機200は、実施の形態1におけるモータ500を内蔵した圧縮機251と、四方弁259と、室外熱交換器252と、膨張弁261と、室内熱交換器257とが冷媒配管262を介して取り付けられた冷凍サイクルを備えて、セパレート形空気調和機を構成している。なお、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は、実施の形態1と同一の符号を付している。
圧縮機251の内部には、冷媒を圧縮する圧縮機構250と、圧縮機構250を動作させるモータ500とが設けられている。圧縮機251から室外熱交換器252との間と、圧縮機251から室内熱交換器257との間を冷媒が循環することで冷暖房などを行う冷凍サイクルが構成されている。なお、図14に示した構成は、空気調和機だけでなく、冷蔵庫、冷凍庫といった冷凍サイクルを備える冷凍サイクル装置に適用可能である。
次に、実施の形態2に係る空気調和機200における要部の動作について、図15を参照して説明する。図15は、実施の形態2に係る空気調和機200の運転方法の一例を示すタイムチャートである。なお、図15の説明の前提として、モータ500の巻線の結線状態は、デフォルトの結線状態であるスター結線であるとする。また、図15において、太実線は回転数を表し、太破線は母線電圧を表している。
まず、時刻t1において、空気調和機200への通電が開始され、時刻t2において起動される。なお、時刻t1と時刻t2との間において、巻線の結線状態は、スター結線からデルタ結線に切り替えられる。
時刻t2と時刻t5との間ではモータ500が加速される。また、母線電圧の電圧不足が予測されるため、時刻t3において、1度目の昇圧が行われ、母線電圧が第1電圧に変更されている。また、母線電圧が第1電圧に変更された後、更に母線電圧の電圧不足が予測されるため、時刻t4において、2度目の昇圧が行われ、母線電圧が第2電圧に変更されている。1度目の昇圧は第1の昇圧モードで実施され、2度目の昇圧は第2の昇圧モードで実施される。
時刻t5では定格負荷に到達し、時刻t5から時刻t6の間において、回転数一定の制御が実施される。また、時刻t5から時刻t6の間において、モータ駆動装置100の制御部10は、目標温度と室温との温度差の絶対値が閾値未満であるか否かを判断する。当該温度差が閾値未満であれば、再起動を行うため減速動作に移行する。なお、図15の例では、時刻t6で減速動作に移行している。
時刻t6と時刻t8との間の時刻t7では、効率を高めるため、昇圧動作は停止し、母線電圧は整流電圧となる。時刻t8では停止し、巻線の結線状態は、デルタ結線からスター結線に切り替えられる。
時刻t9において再起動され、時刻t9と時刻t11との間ではモータ500が加速さる。電圧不足が見込まれる時刻t10では昇圧が行われ、母線電圧が第1電圧に変更される。時刻t11では中間負荷に到達し、時刻t11から時刻t12の間において、回転数一定の制御が実施される。なお、時刻t11と時刻t12との間は中間負荷の運転であり、第2電圧までの昇圧は不要である。
時刻t12では、例えば図示しないリモコンから停止指令が入力され、減速動作に移行する。時刻t12と時刻t14との間の時刻t13では、効率を高めるため、昇圧動作は停止し、母線電圧は整流電圧となる。時刻t14では停止し、時刻t15で通電が終了する。
以上が、実施の形態2に係る空気調和機200における運転パターンの一例である。以下、一部の動作について補足する。
まず、時刻t5から時刻t6の間の判定において必要とされる室温の情報は、空気調和機200が通常有する機能によって、把握可能である。
また、時刻t5から時刻t6の間では、目標温度と室温との温度差の絶対値を閾値と比較しているが、これに限定されない。温度差の絶対値は判定指標の一例であり他の判定指標を用いてもよい。また、閾値未満であるか否かは、判定指標によって決まる条件の一例であり、他の条件を用いてもよい。ここでは、この条件を「第1の条件」と呼ぶ。つまり、時刻t5から時刻t6の間では、判定指標が第1の条件を満たしているか否かの判定を行えばよい。
また、図15の例は、最初の起動において、巻線の結線状態をスター結線からデルタ結線に切り替えているが、判定指標が第1の条件を満たしていれば、巻線の結線状態をスター結線からデルタ結線に切り替える必要はなく、デルタ結線で起動すればよい。
また、図15の例は、起動から停止までの期間と、再起動から停止までの期間の双方において、巻線の結線状態を切り替えない実施例であるが、負荷が急変した場合には、巻線の結線状態を切り替えてもよい。負荷の急変とは、ドア、窓の開閉、キッチンでの調理により温度差が急変した場合などが想定される。なお、空気調和機200の運転中に巻線のる場合には、結線状態の切り替えが頻繁に行われないように、温度差の閾値にヒステリシスを持たせることが好ましい。
以上説明したように、実施の形態2に係る空気調和機200は、判定指標が第1の条件を満たさないときは、巻線の結線状態をデルタ結線に切り替えて起動し、判定指標が第1の条件を満たすようになったときは、モータ駆動装置100を停止した後に巻線の結線状態をスター結線に切り替えて再起動する。これにより、スター結線とデルタ結線とのそれぞれの特徴を活かした運転ができ、結線切替モータを用いない場合に比べて、空気調和機200の効率を高めることができる。
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。