JP7336426B2 - 皮膚又は毛髪洗浄剤組成物 - Google Patents
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皮膚が本来持つ保湿成分には、皮膚表面に存在する角層細胞中に含まれる天然保湿成分と、角層細胞の周りを埋める細胞間脂質の2つがあるが、皮膚を洗浄したときに、これらの成分が失われると皮膚の保湿機能が低下しやすくなる。一般に、アニオン性界面活性剤は、角層細胞中の天然保湿成分を溶出させやすくすることが知られている。そのため、アニオン性界面活性剤による天然保湿成分の溶出を防ぎ、皮膚にマイルドな皮膚洗浄料が検討されている。
例えば、特許文献1には、特定の分布を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩を含有する洗浄剤組成物が、泡性能に優れ、すすぎ性が良好であることが記載されている。特許文献2には、特定の分布を有するアルキルエーテルカルボン酸塩と、アシル化アミノ酸塩を組合せた皮膚洗浄剤組成物が、泡立ち及び泡質に優れ、弾力のある泡が得られ、すすぎ時にぬるつかないことが記載されている。非特許文献1には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩と脂肪酸塩のアニオン性界面活性剤の混合成分が、肌へのやさしさと洗浄力を両立することが報告されている。
一方、洗浄時の細胞間脂質の溶出を防ぐ検討に関してはあまり注目されていなかったが、最近になって、細胞間脂質の溶出を抑制する洗浄剤組成物も検討されている。特許文献3では、アニオン界面活性剤と、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステルを特定の比率で含有した組成物が提案されている。
そして、このような細胞間脂質を溶出させる界面活性剤を含む条件下において、細胞間脂質の流出を抑制するため鋭意検討したところ、特定のノニオン性界面活性剤に、細胞間脂質を溶出させる界面活性剤の影響を著しく抑制する効果があることを見出した。具体的には、両性界面活性剤とともに、特定のノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤を特定の割合で組合せた組成物が、豊かな泡量(起泡性)を維持しつつ、細胞間脂質の溶出を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
(A)両性界面活性剤、
(B)一般式(1):
R11O(CH2CH2O)mH (1)
(式中、R11は炭素数16~22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、mは質量平均で5~60の数を示す。)
で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤、
(C)(C1)及び(C2)から選ばれるアニオン性界面活性剤 0.1~20質量%、
(C1)アシル化アミノ酸又はその塩、アシルタウリン又はその塩、
(C2)ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸又はその塩
を含有し、
成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が、0.6~30である皮膚又は毛髪洗浄剤組成物に関する。
これらのうち、泡質の観点から、スルホベタイン型界面活性剤、アミドベタイン型界面活性剤、イミダゾリニウムベタイン型界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましく、スルホベタイン型界面活性剤及びアミドベタイン型界面活性剤がより好ましい。
一般式(1)中、R11は炭素数16~22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、炭素数18~22の直鎖のアルキル基がより好ましい。
また、mはポリオキシエチレン基の平均付加モル数であり、質量平均で5~60の数を示し、5~40が好ましく、5~30がより好ましい。
また、市販品として、例えば、エマルゲン306P、エマルゲン320P、エマルゲン210P、エマルゲン220、エマルゲン420、エマルゲン2025G(以上、花王社製)、NIKKOL BB-5、NIKKOL BB-10、NIKKOL BB-20、NIKKOL BB-30(以上、日光ケミカルズ社製)、エマレックスBHA-5、エマレックスBHA-10、エマレックスBHA-20、エマレックスBHA-30(以上、日本エマルジョン社製)等を使用することができる。
(C1)アシル化アミノ酸又はその塩としては、例えば、一般式(1):
で表されるN-アシルアミノ酸塩が好ましい。
これらのうち、泡質の観点から、N-アシルグリシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルアスパラギン酸塩、N-アシルサルコシン塩が好ましい。
RCONR’CH2CH2SO3M
(式中、Rは炭素数7~21のアルキル基又はアルケニル基を示し、R’は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す)
具体的には、ココイルメチルタウリン塩、ラウロイルメチルタウリン塩、ミリストイルメチルタウリン塩等が挙げられる。
成分(C1)としては、アシル化アミノ酸又はその塩が好ましい。
R4O(CH2CH2O)pCH2COOM2 (2)
(式中、R4は炭素数4~22のアルキル基又はアルケニル基を示し、pは平均付加モル数で、0.5~15の数を示し、M2は、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す)
M2としては、水素原子;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;アンモニウム;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来のアンモニウム;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸由来のアンモニウムなどが挙げられる。これらのうち、前記の観点から、ナトリウム、カリウム、トリエタノールアミン及びアルギニンから選択される1種又は2種以上を含むことが好ましく、ナトリウム及びカリウムから選択される1種又は2種を含むことがより好ましい。
これらの市販品として、例えば、カオーアキポ RLM-45NV、カオーアキポ RLM-45、カオーアキポ RLM-100NV、カオーアキポ RLM-100(以上、花王社製)等が挙げられる。
R5O(CH2CH2O)qCH2COOM3 (3)
(式中、R5は炭素数4~22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、qは0~20の数を示し、M3は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す)
で表されるアルキルエーテルカルボン酸又はその塩であって、R5の平均炭素数が10.8~12.8であり、q=0の成分を9.6質量%を超え27質量%以下、q=1の成分とq=2の成分を合計で21質量%以上40質量%未満含むアルキルエーテルカルボン酸又はその塩を含む。なお、本発明の成分(C2)において、R5のアルキル鎖長の分布、R5の平均アルキル鎖長、q=0の成分量、qの平均付加モル数、q=0、1、2、3、4の成分の質量割合は、一般式(3)で表されるアルキルエーテルカルボン酸においてガスクロマトグラフィーによる分析を行い、特開2013-209370号公報に記載の方法で求めることができる。
なお、本発明において、これらの化合物のかっこ内の数値はエチレンオキシドの平均付加モル数を意味する。
成分(B)以外のノニオン性界面活性剤としては、細胞間脂質の溶出抑制(マイルドさ)と泡量の両立の観点から、成分(D)として、一般式(4)で表されるアルキルグルコシドを併用することが好ましい。
R6-(OR7)sGt (4)
(式中、R6は炭素数8~16のアルキル基を示し、R7は炭素数2~4のアルキレン基を示し、Gは還元糖に由来する基を示す。sは平均付加モル数であり、0~5の数を示す。tは糖の平均縮合度であり、1~3の数を示す)
還元糖に由来する基Gは、グリコシド基とすることができる。原料の還元糖は、アルドース及びケトースのいずれであってもよく、炭素数が3~6個のトリオース、テトロース、ペントース、ヘキソースとすることができる。アルドースとして具体的には、アピオース、アラビノース、ガラクトース、グルコース、リキソース、マンノース、ガロース、アルドース、イドース、タロース、キシロースを挙げることができる。ケトースとして具体的には、フラクトースを挙げることができる。これらの中でも、炭素数5又は6のアルドペントース又はアルドヘキソースが好ましく、グルコースがより好ましい。さらに、糖の平均縮合度tは、1~2が好ましく、1~1.5がより好ましい。
これらの市販品として、例えば、マイドール10、マイドール12(以上、花王社製)等が挙げられる。
また、成分(D)に対する成分(B)の質量割合(B)/(D)は、0.05~5であるのが好ましく、0.1~2でがより好ましい。
これら成分(B)及び成分(D)以外のノニオン性界面活性剤の含有量は、全ノニオン性界面活性剤中に10質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下がより好ましい。
成分(C)以外のアニオン性界面活性剤の含有量は、全アニオン性界面活性剤中に30質量%以下であるのが好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の2価アルコール;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等の3価以上のアルコール;エリスリトール、ペンタエリスリトール、マルチトール、キシリトール、ソルビタン、ソルビトール等の糖又は糖アルコールなどが挙げられる。
多価アルコールの含有量は、全組成中に、2~40質量%であるのが好ましく、10~35質量%がより好ましく、20~30質量%がさらに好ましい。
多価アルコールは、本発明の洗浄剤組成物を、特に、容器に充填してフォーム剤とする際に有用である。
本発明の皮膚又は毛髪洗浄剤組成物は、細胞間脂質の溶出抑制し、マイルドさを付与することと泡量の両立の観点から、pH4~7であるのが好ましく、pH4.5~7がより好ましい。
本発明において、pHは、25℃にて HORIBA社製 LAQUa act D-72により測定される。
表1~表5に示す組成の洗浄剤組成物を製造し、細胞間脂質モデルを用いた溶出量と泡量を評価した。結果を表1~表5に併せて示す。
なお、表中の配合量の数字は、有効量を示す。
成分(A)、(B)、(C)及びその他成分を添加して80℃に加熱し、均一になるまで撹拌した後、30℃まで冷却して、水酸化カリウムとクエン酸を用いて所定のpHに調整して各組成物を得た。
なお、pHは、洗浄剤組成物を50mLガラス容器に50g充填し、25℃にて、HORIBA社製、LAQUA act D-72 により測定した。
49mgのセラミドII(高砂香料社製)、21mgのパルミチン酸(シグマアルドリッチ社製)、32mgのコレステロール(シグマアルドリッチ社製)を秤量後、これらに4mLのクロロホルム/メタノール=2/1(v/v)を加え、得られた溶液を30℃で1時間攪拌し、溶解させた。溶媒を窒素気流下にて除去し、得られた粉末を減圧下で終夜乾燥し、細胞間脂質モデルを得た。
得られた細胞間脂質をバイアル瓶に10mg量り取り、各組成物の10倍希釈液5mLを加え、32℃で1時間攪拌した。試験後、上澄みを回収し、細胞間脂質モデルからの溶出物を含む溶液を溶出液として得た。得られた溶出液100μLに対し、メタノール(富士フィルム和光純薬社製)900μL、クロロホルム(富士フィルム和光純薬社製)1000μLを加え、溶媒混合液を得た。この溶媒混合液を、下記の方法にて分析し、コレステロール濃度を定量した。求めた濃度を、ノニオン界面活性剤を含まない比較例4の濃度を1として規格化することにより、コレステロール溶出量比を求めた。
G6125B LC/MS(Agilent Technologies)
(クロマトグラフィー分離条件)
特開2017-67510号公報、実施例1に記載のクロマトグラフィー分離条件
カラム:L-column ODS 2.1mmi.d.×150mm(化学物質評価
研究機構)(40℃)
移動相:A)10mmol/Lイオン化促進剤含有メタノール/水=1/1溶液
移動相:B)2-プロパノール
グラジエント:A100%(0min)→B50%(5min)→B100%(35min)→B100%(45min)
移動相流速:0.2mL/min
平衡化時間:10min
イオン化促進剤:炭酸水素アンモニウム
(MS分析条件)
イオン化法 :APCI/Positive
測定モード :SIM
SIMモニターイオン :[M+H-H2O]+
乾燥ガス流量 :4.0L/min
ネブライザー圧力 :60psig
乾燥ガス温度 :350℃
キャピラリー電圧 :2000V
フラグメンター電圧 :150V
約20gの毛髪束に40℃のお湯を約30g含ませ、各組成物1gと表2に示すモデル皮脂0.2mlを塗布して30秒間で60回泡立てたときの泡量を測定した。
また、実施例1と比較例1、2を比べると、(A)/(B)が小さい比較例1は泡量が少なく、反対に(A)/(B)比率が大きい比較例2はノニオン性界面活性剤を含まない場合と同様に細胞間脂質が溶出した。比較例5に配合されたノニオン性界面活性(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル)では、細胞間脂質の溶出が多く、比較例6や比較例7に配合されたノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノラウリン酸エステル)では、細胞間脂質への溶出が多いだけでなく、泡量も低下させてしまうものであった。
以上より、実施例1~25に配合されているノニオン性界面活性剤は少ない配合量でも十分に細胞間脂質の溶出を抑えることができるため、細胞間脂質の溶出を抑えて皮膚にマイルドでありながら、豊かな泡量によって使用時の心地よい洗浄感を提供することが可能であった。
得られた洗浄組成物を使用して毛髪を洗浄すると、泡立ち及び洗浄力に優れ、頭皮に対してマイルドな使用感で、細胞間脂質の溶出も十分に抑制されたものであった。
(成分)
(C1)ラウロイルサルコシンナトリウム 12.0(質量%)
(C1)N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム 1.0
(A)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 5.0
(B)ポリオキシエチレン(6)ステアリルエーテル 2.0
ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド 2.0
トリイソステアリン酸PEG-160ソルビタン 1.0
クエン酸 適量
水 残部
合計 100
(A)/(B)=2.5
(C)/(B)=6.5
Claims (6)
- 次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)両性界面活性剤、
(B)一般式(1):
R11O(CH2CH2O)mH (1)
(式中、R11は炭素数16~22の直鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、mは質量平均で5~60の数を示す)
で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤、
(C)(C1)及び(C2)から選ばれるアニオン性界面活性剤 0.1~20質量%、
(C1)N-アシルグリシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルアスパラギン酸塩、N-アシルサルコシン塩、アシルタウリン又はその塩、
(C2)ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸又はその塩
を含有し、
成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が、0.6~25である皮膚又は毛髪洗浄剤組成物。 - 成分(A)の含有量が、0.1~15質量%である請求項1に記載の皮膚又は毛髪洗浄剤組成物。
- 成分(A)に対する成分(C)の質量割合(C)/(A)が1~10である請求項1又は2に記載の皮膚又は毛髪洗浄剤組成物。
- さらに、成分(D)アルキルグルコシドを含有する請求項1~3のいずれかに記載の皮膚又は毛髪洗浄剤組成物。
- 成分(D)に対する成分(B)の質量割合(B)/(D)が、0.05~5である請求項4に記載の皮膚又は毛髪洗浄剤組成物。
- 成分(C)以外のアニオン性界面活性剤の含有量が、全アニオン性界面活性剤中に30質量%以下である請求項1~5のいずれかに記載の皮膚又は毛髪洗浄剤組成物。
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