以下、本開示に係る点滴監視センサの実施形態について図面を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。本明細書において、上下方向とは鉛直方向を意味する。後述する点滴筒110は、生体への使用時において、軸方向が鉛直方向に沿うようにして配置される。上方は排出部112から見て滴下部111が位置する方向(すなわち、図2における上方)を意味し、下方はその反対方向を意味する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の点滴監視センサ1が点滴筒110に装着された状態の輸液装置100の一例を示す図である。図2は、図1の一部を拡大して示す図であり、点滴筒110に装着されている状態の点滴監視センサ1の正面図である。図3は、点滴監視センサ1の構成を示すブロック図である。図3に示す矢印は、電気信号が流れる方向を示す。図4は、点滴監視センサ1が点滴筒110に装着された状態で、点滴筒110と点滴監視センサ1の要部とを上方から見た場合の位置関係を示す図である。
図1に示す輸液装置100は、栄養剤や薬液などの液体を、患者などの生体に投与するために用いられる。輸液装置100は、液体を生体まで輸送するための輸液ラインを形成している。具体的に、輸液装置100は、液体が収容された輸液バッグなどの輸液容器101と、輸液容器101から供給される液体の流量を視認可能な点滴筒110と、生体に留置された留置針等に接続可能なコネクタ102と、これら各部材を接続する複数の輸液チューブ103と、を備えている。輸液ラインは、輸液容器101と、点滴筒110と、コネクタ102と、輸液チューブ103と、により形成されている。図1に示す例では、輸液装置100は、輸液ラインを流れる液体の流量を調整するための、輸液チューブ103に装着されたクランプ104及び輸液ポンプ105を更に備えている。
図2に示すように、点滴筒110は、輸液ラインの上流から輸送される液体を内部の滴下室113内に導入する滴下部111と、滴下室113内の液体を輸液ラインの下流に排出する排出部112と、滴下室113の周面を区画する周壁部114と、を備えている。周壁部114は、光透過性の素材で形成された光透過部を少なくとも一部に備えている。具体的に、周壁部114の光透過部は、少なくとも、後述する貯留液体117の液面よりも上方の位置に備えられている。
点滴筒110に輸送された液体は、滴下部111から落下液体116として落下し、滴下室113内に貯留液体117として貯留される。排出部112は貯留液体117の一部を排出する。そのため、貯留液体117は適量に保たれる。
図1、図2に示すように、点滴監視センサ1は、点滴筒110に装着可能である。図1、図2に示すように、点滴監視センサ1は、点滴筒110の周囲に装着された状態で使用される。具体的に、点滴監視センサ1は、点滴筒110に装着された状態で、点滴筒110の内部を落下する液体を監視することができる。より具体的に、本実施形態の点滴監視センサ1は、点滴筒110の内部の滴下室113内を落下する落下液体116を監視するために用いられる。図2に示すように、本実施形態の点滴監視センサ1は、点滴筒110の周壁部114の、貯留液体117の液面よりも上方に位置する光透過部の位置で、周壁部114を挟み込むようにして装着されている。
図2に示すように、本実施形態の点滴監視センサ1は、発光部10と、受光部20と、導光部30と、液柱検出部50と、液滴検出部60と、増幅部70と、報知部80と、ハウジング2と、を備える。
図2、図4に示すように、発光部10は、点滴筒110の径方向Aの外側に配置される。また、図4に示すように、発光部10は、点滴筒110の周方向Bの異なる位置から点滴筒110の内部に対して同時に照射光L1を照射可能である。より具体的に、発光部10は、周壁部114の光透過部を通じて、点滴筒110の滴下室113内を落下する落下液体116に向けて照射光L1を照射可能である。図4に示すように、本実施形態の発光部10は、点滴筒110の外径以上の幅を有している。本実施形態の発光部10は、同一水平面である水平面H(図2参照)内において、点滴筒110の内部全域に照射光L1を照射できる。発光部10は、例えば、1つ又は複数のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)又はレーザダイオード等の光を出射する発光素子11を含む。本実施形態では、図4に示すように、7つの発光素子11a~11gが、同一水平面である水平面H(図2参照)内において、点滴筒110の周壁部114の外側に配置されているが、配置される発光素子の数については特に限定されない。本実施形態の複数の発光素子11a~11gから発光される光の中心光線は並行している。発光素子から発光される光の中心光線とは、発光素子から出射する最も強い光線を意味する。図4では、便宜上、発光素子11a~11c及び11e~11gから発光される照射光L1のうち、中心光線のみを示している。
図2、図4に示すように、受光部20は、点滴筒110を挟んで発光部10と対向して配置される。「受光部は点滴筒を挟んで発光部と対向して配置される」とは、発光部と受光部とを結ぶ少なくとも1つの直線状の光路が点滴筒の内部を通過する位置関係を意味する。また、受光部20は、発光部10から点滴筒110に照射される照射光L1を受光可能である。具体的に、受光部20が受光し得る照射光L1には、落下液滴116の内部で屈折された屈折光を含む落下液体116を透過する透過光、落下液体116により反射された反射光、落下液体116に照射されなかった直接光、が含まれる。受光部20は、例えば、1つ又は複数のフォトトランジスタ又はフォトダイオード等の受光素子21を含む。受光部20は、受光した照射光L1の受光量に基づく受光信号を、増幅部70を介して、液柱検出部50及び液滴検出部60に出力する。図2に示すように、本実施形態の点滴監視センサ1では、発光部10と受光部20とが同一平面である水平面H内に位置している。本実施形態では、図4に示すように、7つの受光素子21a~21gが、同一平面である水平面H(図2参照)内において、点滴筒110の周壁部114の外側に配置されているが、配置される受光素子の数は特に限定されない。本実施形態の複数の受光素子21a~21gが受光する光の中心光線は並行している。受光素子が受光する光の中心光線とは、受光素子に最も受光され易い、換言すれば、最も受光効率が高い、光線を意味する。
図4に示すように、発光部10の発光素子11a及び受光部20の受光素子21aは対向して配置されている。発光部10の発光素子11aと受光部20の受光素子21aとの間に点滴筒110が介在しない場合、発光部10の発光素子11aから発光される光の中心光線は、受光部20の受光素子21aが受光する中心光線となる。発光部10の発光素子11aと受光部20の受光素子21aとの間に点滴筒110が介在する場合(図4参照)、発光部10の発光素子11aから発光される光の中心光線は、点滴筒110の周壁部114により屈折および/または反射する場合がある。このような場合には、発光部10の発光素子11aから発光される光の中心光線は、受光部20の受光素子21aが受光する中心光線とならない。但し、図4では、説明の便宜上、点滴筒110の周壁部114による屈折および/または反射を考慮しておらず、発光部10の発光素子11aから発光される光の中心光線を、受光部20の受光素子21aが受光する中心光線と一致するものとして描いている。
発光部10の発光素子11b~11gそれぞれについても、受光部20の受光素子21b~21gそれぞれとで、発光部10の発光素子11a及び受光部20の受光素子21aと同様の関係を有する。
図2、図4に示すように、導光部30は、点滴筒110と受光部20との間に配置される。また、図4に示すように、導光部30は、受光部20が受光する照射光L1を制限する導光路31を内部に区画している。導光部30は、照射される光を透過させず、かつ、照射される光を全反射させないように構成されている。導光部30の外面及び内面には、例えば、照射された光を乱反射させる微小凹凸構造が形成されていてよい。また、導光部30は、例えば、黒色の不透明な樹脂で形成されている、あるいは黒色塗料により覆われているなど、照射される光の一部又は全部を吸収可能な構成としてもよい。本実施形態の導光部30は、内部に導光路31を区画する筒状体により構成されている。本実施形態の導光部30は、点滴筒110に面して配置される一端側の端面に、照射光L1が導光路31に入光可能な導光路31の入口開口31aを区画している。また、本実施形態の導光部30は、受光部20に面して配置される他端側の端面に、導光路31から受光部20に向かって出光可能な導光路31の出口開口31bを区画している。本実施形態の導光部30は、受光素子21a~21gそれぞれに対応する7つの筒状体により構成されているが、1つの部材に7つの導光路が形成されている構成であってもよい。
上述したように、発光部10は、点滴筒110の周方向Bの異なる位置から点滴筒110の内部に対して同時に照射光L1を照射可能である。詳細は後述するが、導光部30を備えることで、上述の発光部10を備える構成であっても、受光部20が、点滴筒110の内部を落下する液体の「影」の成分を検出し易くなる。そのため、液体の透明度にかかわらず、点滴筒の内部を落下する液体の液滴状態及び液柱状態を容易に検出することができる。
液柱検出部50は、受光部20が受光する照射光L1の受光量の変化に基づいて、液体の液柱状態を検出することができる。より具体的に、本実施形態の液柱検出部50は、受光部20からの受光信号に基づいて、落下液体116の液柱状態を検出可能である。液柱検出部50は、受光部20が受光する単位時間当たりの総受光量の変化に基づいて、液柱状態を検出することができる。つまり、本実施形態の液柱検出部50は、7つの受光素子21a~21gが受光する単位時間当たりの総受光量の変化に基づいて、液柱状態を検出することができる。本実施形態の液柱検出部50は、受光部20が受光する照射光L1の受光量が、所定の閾値に対して、所定時間以上に亘って所定量以上低下した場合に、落下液体116の液柱状態を検出する。液柱検出部50は、例えば、種々の情報及びプログラムを記憶する記憶装置、及び、当該記憶装置に記憶された種々の情報及びプログラムのうち、所定の情報及びプログラムを読み込むことにより所定の機能を実現するプロセッサ等により構成される。液柱検出部50が落下液体116の液柱状態を検出する方法の詳細については、後述する(図11参照)。液柱検出部50は、液柱状態を検出すると、検出結果を報知部80に出力する。
液滴検出部60は、受光部20が受光する照射光L1の受光量の変化に基づいて、液体の液滴状態を検出することができる。より具体的に、本実施形態の液滴検出部60は、受光部20からの受光信号に基づいて、落下液体116の液滴状態を検出可能である。液滴検出部60は、受光部20が受光する単位時間当たりの総受光量の変化に基づいて、液滴状態を検出することができる。つまり、本実施形態の液滴検出部60は、7つの受光素子21a~21gが受光する単位時間当たりの総受光量の変化に基づいて、液滴状態を検出することができる。本実施形態の液滴検出部60は、受光部20が受光する照射光L1の受光量が、所定時間において所定量以上変化した場合に、落下液体116の液滴状態を検出する。液滴検出部60は、例えば、種々の情報及びプログラムを記憶する記憶装置、及び、当該記憶装置に記憶された種々の情報及びプログラムのうち、所定の情報及びプログラムを読み込むことにより所定の機能を実現するプロセッサ等により構成される。液滴検出部60を構成する記憶装置及びプロセッサ等は、液柱検出部50を構成する記憶装置及びプロセッサ等と共通の部材でもよいし、別部材でもよい。液滴検出部60が落下液体116の液滴状態を検出する方法の詳細については、後述する(図8~図10等参照)。液滴検出部60は、液滴状態を検出すると、検出結果を報知部80に出力する。
増幅部70は、例えば増幅回路等で構成され、受光部20からの受光信号を増幅して、液柱検出部50及び液滴検出部60に出力する。
報知部80は、液柱検出部50からの検出結果及び液滴検出部60からの検出結果を外部に報知する。具体的に、報知部80は、例えばスピーカで構成され、検出結果を音で報知してもよい。報知部80は、例えば発光素子又は表示デバイスで構成され、検出結果を光で報知してもよい。報知部80は、例えば有線又は無線による通信装置で構成され、検出結果を外部の装置に送信することで報知してもよい。当該外部の装置は、例えば輸液ポンプ105(図1参照)であってもよく、その場合、輸液ポンプ105は、検出結果に基づいて、輸液ラインを流れる液体の流量を調整してもよい。
図2に示すように、ハウジング2は、発光部10及び受光部20を保持する。より具体的に、本実施形態のハウジング2は、発光部10及び受光部20のみならず、上述した導光部30、液柱検出部50、液滴検出部60、増幅部70及び報知部80についても保持している。ハウジング2は、点滴監視センサ1の外装部材を構成する。また、ハウジング2は、点滴筒110を収容可能な収容空間2aを区画している。本実施形態の点滴監視センサ1は、ハウジング2の収容空間2aに点滴筒110を収容するようにして、点滴筒110に装着される。
本実施形態の点滴監視センサ1は上述した構成に限られない。点滴監視センサ1の液柱検出部50、液滴検出部60、増幅部70及び報知部80は、例えば、点滴監視センサ1と通信可能な外部装置に設けられていてもよい。また、一例として、点滴監視センサ、及び、この点滴監視センサと通信可能な外部装置、において増幅部70を備えない構成としてもよい。
次に、導光部30の詳細について説明する。まず、導光部30を備えないことで生じ得る1つの課題について説明する。
図5は、本実施形態の比較例としての点滴監視センサ1000の要部を示す図である。図5に示す比較例としての点滴監視センサ1000は、発光部1010及び受光部1020を備えるが、本実施形態の導光部30を備えない。図5では、点滴監視センサ1000の発光部1010及び受光部1020と共に、液滴Vを示している。図5に示す発光部1010は、3つの発光素子1011a~1011cを備える。図5に示す受光部1020は、5つの受光素子1021a~1021eを備える。発光素子及び受光素子の数は、図5に示す数でなくてもよい。図5では、説明の便宜上、3つの発光素子1011a~1011cから発光する光線の指向角の範囲を示している。具体的に、発光素子1011a及び1011cの指向角の範囲は、実線の台形により示されている。発光素子1011bの指向角の範囲は、液滴Vよりも受光部1020側で、二点鎖線により示しており、発光素子1011bの光により液滴Vの影が形成される領域である。また、図5では、発光素子1011bから発光され、液滴Vを透過する光を、光線Rにより示している。図5では、液滴Vが透明液である場合の光線Rの進行方向を示している。液滴Vが不透明液である場合、光線Rは液滴Vを透過せず、大部分は液滴Vにより吸収され、透明液の場合よりも更に高いコントラストで液滴Vの影が形成される。つまり、液滴Vの透明度により、光線Rによる液滴Vの透過光量は異なる。
図5に示すように、発光素子1011bから発光される光は、液滴Vに照射される。これにより、液滴Vの受光部1020側には、液滴Vの影が形成される。発光素子1011bから発光される光は、液滴Vが無い場合には、指向角の範囲にある受光素子1021b~1021dにより受光される。しかしながら、液滴Vが透明液の場合、図5に示すように、発光素子1011bから発光され、液滴Vにより屈折した光線Rは、本来の指向角の範囲(二点鎖線の範囲を参照)よりも拡がるように進行し、全ての受光素子1021a~1021eにより受光される。つまり、図5に示す比較例としての点滴監視センサ1000では、液滴Vがあることで、発光素子1011bから発光され、受光素子1021cにより受光される受光量は減少する。しかしながら、透明液の液滴Vで屈折した屈折光(図5の光線R参照)により、別の受光素子1021a、1021b、1021d及び1021eに受光される受光量が増加するため、受光部1020での単位時間当たりの総受光量についての変動は小さくなる。更に、両側の発光素子1011a及び1011cから発光される光は、液滴Vに照射されずに、液滴Vの影が形成される領域に直接届き、受光素子1021b~1021dにより受光される。そのため、図5に示す比較例としての点滴監視センサ1000では、液滴Vの受光部1020側に形成される影についても、周囲とのコントラストが低くなり易い。
このように、図5に示す比較例としての点滴監視センサ1000では、液滴Vの受光部1020側に形成される影による受光量の減少が検出され難い。
図6は、図5に示す比較例としての点滴監視センサ1000の受光部1020が受光する単位時間当たりの総受光量の変化を示す図である。図6(a)は、例えば脂肪乳剤などの不透明液の液滴Vにより生じる受光部1020の単位時間当たりの総受光量の変化を示している。図6(b)は、例えば生理食塩水などの透明液の液滴Vにより生じる受光部1020の単位時間当たりの総受光量の変化を示している。図6(a)に示すように、不透明液の液滴Vについては、上述したように、液滴Vにより光が吸収されることで、受光部1020の単位時間当たりの総受光量は減少する。これに対して、図6(b)に示すように、透明液の液滴Vについては、上述したように、液滴Vにより屈折した光が幅広い範囲で受光素子に受光されるため、受光部1020の単位時間当たりの総受光量は減少し難い。特に、発光部1010から発光される光が、液滴Vの中心を含む中心平面の近傍を照射する状態(図6(b)の範囲「S2」参照)では、光が液滴Vにより屈折しても、水平面H内の受光素子1021a~1021eにより受光され易く(図5参照)、受光部1020の単位時間当たりの総受光量は増加する。つまり、液滴Vの受光部1020側に形成される影による受光量の減少が特に検出され難い。これに対して、発光部1010から発光される光が、液滴Vの中心を含む中心平面の近傍を照射しない状態(図6(b)の範囲「S1」及び「S3」参照)では、光が液滴Vにより上下方向(鉛直方向)に屈折し易く、水平面H内の受光素子1021a~1021eにより受光され難い。つまり、図6(b)の範囲「S1」及び「S3」では、受光部1020の単位時間当たりの総受光量は減少する。換言すれば、図6(b)の範囲「S1」及び「S3」では、液滴Vの受光部1020側に形成される影による受光量の減少が検出され易い。
図7は、図5に示す比較例としての点滴監視センサ1000の受光部1020が受光する単位時間当たりの総受光量の変化を示す図である。図7では、透明液が液滴状態から液柱状態に変化した場合と、不透明液が液滴状態から液柱状態に変化した場合と、を示している。図7に示すように、不透明液では、液滴状態から液柱状態に変化する場合に、受光部1020が受光する単位時間当たりの総受光量は「m1」から「m2」に減少している。その一方で、図7に示すように、透明液では、液滴状態から液柱状態に変化する場合に、受光部1020が受光する単位時間当たりの総受光量は「n1」から「n2」に増加している。
以上のことから、本願発明者は以下の2つの知見を得るに至った。
(1)図5に示す比較例としての点滴監視センサ1000では、点滴筒110(図1参照)の内部を落下する液滴Vの透明度に応じて、受光部1020により受光される単位時間当たりの総受光量の変化の仕方が大きく異なる(図6参照)。
(2)その結果、図7に示すように、点滴筒110の内部を落下する液体が液滴状態から液柱状態に変化する際に、受光部1020が受光する単位時間当たりの総受光量は、透明液の場合は増加し、不透明液の場合は減少する、という現象が生じ得る。
しかしながら、輸液ラインで使用される液体の透明度は様々であり、一定ではない。つまり、点滴筒110の内部を落下する液体の透明度が不明の状態では、液滴状態から液柱状態へと変化したことを検出するための閾値を設定できない。
本願発明者は、上記知見の下、鋭意検討を重ねた結果、液滴状態から液柱状態になる際の受光部の単位時間当たりの総受光量の増減の相違は、所定環境下にある受光部を用いる場合に発生し易いという認識を得るに至った。上記所定環境下とは、受光部1020が、点滴筒110の内部を落下する液体によって反射した反射光、及び、液体によって屈折した屈折光、を受光し易い環境下である。つまり、受光部を、反射光及び屈折光を受光し難い構成、すなわち、点滴筒110の内部を落下する液体の「影」の成分を検出できる構成とすることで、上記課題は解決される。
この点について、特許文献1には、液体の上述の「影」の成分を検出する構成が記載されているが、この検出を実現する高いコントラストを得るために、1つのみの発光素子で照射すべきことが記載されている。このような構成では、照射光の照射範囲が制限され、点滴筒内の液滴を検出できない可能性がある。
これに対して、図1~図4に示す点滴監視センサ1では、導光部30を備える。導光部30により、点滴筒110の周方向の異なる位置から点滴筒110の内部に対して同時に照射光L1を照射可能な発光部10を備える構成であっても、点滴筒110の内部を落下する液体により反射した反射光及び屈折した屈折光を、受光部20で受光し難くすることができる。これにより、落下する液体の「影」の成分を検出し易くなる。そのため、点滴筒110の内部を落下する液体の透明度によらず、その液体の液滴状態及び液柱状態を容易に検出可能な構成を実現できる。
具体的には、点滴筒110の内部を落下する液体の透明度によらず、液滴状態から液柱状態に変化する際に、受光部20が受光する単位時間当たりの総受光量を、減少するように変化させる点滴監視センサ1を実現できる。この詳細は後述する(図20、図21参照)。そのため、液滴状態から液柱状態への変化を、受光部20による総受光量の時間経過に伴う変化によって検出する場合に、総受光量の増加についての閾値を設定する必要はなく、総受光量の減少についての閾値のみを設定すればよい。これにより、液柱状態の検出アルゴリズムを簡易化できる。
図4に示すように、本実施形態の点滴監視センサ1では、発光部10から点滴筒110の内部に照射される照射光L1のうち、透明液である落下液体116により屈折した屈折光は、導光部30を設けることで、受光素子21d以外で受光され難くなる。このように、落下液体116により反射又は屈折された散乱光が受光部20で受光されることを抑制することで、落下液体116の「影」の成分、すなわち、落下液体116の影となることで発生する総受光量の低下分、をより検出し易い受光部20にすることができる。その結果、上述したように、点滴筒110の内部を落下する落下液体116の透明度によらず、その落下液体116の液滴状態及び液柱状態を容易に検出することができる。
また、図2に示すように、点滴筒110が収容空間2aに収容されている状態で、点滴筒110の径方向Aにおける発光部10から収容空間2aまでの最短距離D1は、点滴筒110の径方向Aにおける受光部20から収容空間2aまでの最短距離D2よりも短い。このようにすることで、発光部10を点滴筒110に近づけて配置でき、点滴筒110の内部に照射されない無駄な照射光L1を減らすことができる。その一方で、受光部20を点滴筒110から遠ざけて配置でき、導光部30の導光路31の長さを確保し易い。そのため、落下液体116の「影」の成分、すなわち、落下液体116の影となることで発生する総受光量の低下分、をより精度よく検出できる。その結果、上述したように、点滴筒110の内部を落下する落下液体116の透明度によらず、その落下液体116の液滴状態及び液柱状態を容易に検出することができる。
また、図4に示すように、本実施形態の導光部30の導光路31の入口開口31aから受光部20までの最短距離D3は、本実施形態の導光部30の導光路31の入口開口31aの最大入光幅W1よりも長い。このようにすることで、落下液体116の影となることで発生する総受光量の低下分、をより精度よく検出できる。本実施形態の導光部30は筒状体により構成されているため、本実施形態の「最大入光幅W1」は導光部30の内径に等しい。
本実施形態の導光部30の内径(最大入光幅W1)は、受光素子21の外径と近似していることが好ましい。受光素子の外径は通常1~3mmであるため、最大入光幅W1は2mm程度とすることが好ましい。また、最大入光幅W1に対する最短距離D3の比であるD3/W1は、2以上とすることが好ましく、2以上5以下とすることが特に好ましい。D3/W1をこの範囲とすることで、実使用上問題とならない大きさの導光部30を用いて落下液体116の「影」の成分を検出でき、落下液体116の液滴状態及び液柱状態を容易に検出することができる。
以下、液柱検出部50及び液滴検出部60による検出処理の一例について、図8~図11を参照して説明する。受光部20から液柱検出部50及び液滴検出部60に出力される受光信号は、落下液体116が液柱状態であるか、液滴状態であるかによって、異なる信号として検出される。しかしながら、落下液体116が液柱状態であっても、液滴状態であっても、それぞれの場合の受光信号は、微小時間ごとに複雑に変化するため、受光信号のままでは液柱状態の検出及び液滴状態の検出が容易ではない。そこで、液柱検出部50及び液滴検出部60は、以下に説明するように、まず、受光信号に振幅の移動区間積分を演算して、液柱状態の検出及び液滴状態の検出をし易い形に変換することができる。
図8~図10は、液滴検出部60による液滴状態検出処理、具体的には受光信号のピーク波形を振幅の移動区間積分する過程を説明する図である。図8は、落下液体116が透明液であって液滴状態であるときの受光信号の一例と振幅の移動区間積分の期間を示す図である。この受光信号は、受光部20により受光される単位時間当たりの総受光量と相関している。受光信号に時刻tにおける振幅の移動区間積分を演算して得られる積分値Z(t)は、下記の数式(1)で表される。
Z(t) = (Yb-Y(t)) + (Yb-Y(t-1)) + (Yb-Y(t-N-1)) ・・・(1)
ここで、Ybは入力波形の基準レベルを示し、Y(t)は時刻tにおける振幅を示し、Nは移動区間積分の積分区間T1のサンプリング数を示す。この積分区間T1を、以下、説明の便宜上、「第1期間T1」と記載する。移動区間積分の積分値Z(t)は、時刻tにおける直近の第1期間T1での落下液体116の流量の合計に相関する。第1期間T1は、液滴状態の落下液体116による受光信号において生じる振幅のピークのみを含む波形(以下、「ピーク波形」とも記載する。)の時間幅と同程度であることが好ましい。
図9(a)、図9(b)は、液滴状態の落下液体116により受光信号に生じるピーク波形の一例を示す図である。具体的に、図9(a)は、落下液体116が、不透明液の液滴である場合に検出される受光信号である。図9(b)は、落下液体116が、透明液の液滴である場合に検出される受光信号である。図10(a)、図10(b)は、図9(a)、図9(b)それぞれに示すピーク波形を振幅の移動区間積分波形に変換した波形を示す図である。図9(a)、図9(b)はいずれも、基準レベルYbよりも負方向の振幅のみを有するピーク波形である。上述したように、導光部30(図4参照)を設けることで、透明液の落下液体116であっても、受光信号を負方向の振幅のみの信号にすることができる(図9(b)参照)。図10(a)、図10(b)に示すように、受光信号のピーク波形を振幅の移動区間積分波形に変換すると、ピークの振幅が正方向に大きいピーク波形となる。液滴検出部60は、移動区間積分波形に、振幅が所定範囲内であり、かつ、時間幅が所定範囲内であるピーク波形が含まれるとき、液滴状態を検出する。換言すれば、液滴検出部60は、受光信号に、振幅が所定範囲内であり、かつ、時間幅が所定範囲内であるピーク波形が含まれるとき、液滴状態を検出する。
図11は、液柱検出部50による液柱状態検出処理を説明する図である。具体的に、図11は、受光部20の単位時間当たりの総受光量の変化を示す図である。受光部20の単位時間当たりの総受光量は、落下液体116が正常な液滴状態で落下している区間(図11で「区間1」と示す区間)と、落下液体116が液柱状態で落下している区間(図11で「区間3」と示す区間)と、これら2つの区間の間で、落下液体116が異常な高流量の液滴で落下している区間(図11で「区間2」と示す区間)と、の3区間において、別々の傾向を示す。
図11に示すように、落下液体116が正常な液滴状態で落下している区間1では、受光信号として、振幅が所定範囲内であり、かつ、時間幅が所定範囲内であるピーク波形が、所定範囲の時間幅を空けて定期的に検出される。区間1では、上述した液滴検出部60が、ピーク波形の時間幅である第1期間T1、ピーク波形の振幅a1、及び、隣接するピーク波形間の時間間隔T2、に基づいて、正常な液滴状態を検出する。区間1において、液滴検出部60が正常な液滴状態を検出した場合に、液柱検出部50は、落下液体116の液柱状態を検出するための、受光部20の単位時間当たりの総受光量の基準レベルXを更新する。具体的に、図11に示す例では、区間1において、液滴検出部60が正常な液滴状態を検出する度に、液柱検出部50が基準レベルXを更新している(図11では「X1」、「X2」、「X3」の順に更新)。
これに対して、図11に示すように、落下液体116が異常な高流量の液滴状態で落下している区間2では、上述した液滴検出部60が、ピーク波形の時間幅である第1期間T1、ピーク波形の振幅a1、及び、隣接するピーク波形間の時間間隔T2、に基づいて、正常な液滴状態を検出できない。区間2において、液滴検出部60が正常な液滴状態を検出できない場合、液柱検出部50は、落下液体116の液柱状態を検出するための、受光部20の単位時間当たりの総受光量の基準レベルXを更新しない。つまり、区間1において最後に更新された基準レベルXは変更されない(図11では「X3」から変更されない)。
液柱検出部50は、受光部20の総受光量が、所定の閾値としての上記基準レベルXに対して、所定時間T3以上に亘って所定量Q以上低下した場合に、落下液体116の液柱状態を検出する。上記「所定時間T3」は、0.1~5秒の範囲に設定されることが好ましい。所定時間T3が0.1秒よりも短いと誤検出が増加し、5秒よりも長くなると液柱状態を検出までの時間遅れが発生する。また、上記「所定量Q」は、落下液体116の透明度にかかわらず適用可能な変化量に設定される。そのため、液柱検出部50は、上述した区間1及び区間2において、落下液体116の液柱状態を検出することはない。
図11に示すように、落下液体116が液柱状態で落下している区間3では、上述した液滴検出部60は、ピーク波形の時間幅である第1期間T1、ピーク波形の振幅a1、及び、隣接するピーク波形間の時間間隔T2、に基づいて、正常な液滴状態を検出できない。したがって、区間3においても、区間1において最後に更新された基準レベルXは変更されない(図11では「X3」から変更されない)。また、区間3において、受光部20の総受光量が、所定の閾値としての上記基準レベルXに対して、所定時間T3以上に亘って所定量Q以上低下しているため、液柱検出部50は、落下液体116の液柱状態を検出する。
以上のように、本実施形態の液柱検出部50及び液滴検出部60は、落下液体116の液柱状態及び液滴状態を検出することができる。
(第2実施形態)
次に、図12を参照して、第2実施形態としての点滴監視センサ201について説明する。図12は、点滴監視センサ201の要部を示す図である。点滴監視センサ201は、第1実施形態の点滴監視センサ1と比較して、点滴筒110と発光部10との間に配置される導光部40を備える点で相違する。点滴監視センサ201の他の構成は、上述した点滴監視センサ1と同一である。したがって、ここでは、点滴監視センサ201のうち、点滴監視センサ1との相違点について主に説明し、共通する構成は説明を省略する。
以下、点滴筒110と受光部20との間に配置される導光部30と、点滴筒110と発光部10との間に配置される導光部40と、を区別するために、説明の便宜上、導光部30を「第1導光部30」と記載し、導光部40を「第2導光部40」と記載する。
図12に示すように、第2導光部40は、発光部10から点滴筒110の内部に照射される照射光L1を制限する第2導光路41を内部に区画している。このような第2導光部40を備えることで、点滴筒110の内部に照射される無駄な照射光L1を減らすことができる。
また、第2導光部40は、照射される光を透過させず、かつ、照射される光を全反射させないように構成されている。第2導光部40の外面及び内面には、例えば、照射された光を乱反射させる微小凹凸構造が形成されていてよい。また、第2導光部40は、例えば、黒色の不透明な樹脂で形成されている、あるいは黒色塗料により覆われているなど、照射される光の一部又は全部を吸収可能な構成としてもよい。本実施形態の第2導光部40は、内部に第2導光路41を区画する筒状体により構成されている。本実施形態の第2導光部40は、発光部10に面して配置される一端側の端面に、照射光L1が第2導光路41に入光可能な第2導光路41の入口開口41aを区画している。また、本実施形態の第2導光部40は、点滴筒110に面して配置される他端側の端面に、第2導光路41から点滴筒110に向かって出光可能な第2導光路41の出口開口41bを区画している。
第1導光路31の延在方向の長さ(本実施形態では軸方向長さ)は、第2導光路41の延在方向の長さ(本実施形態では軸方向長さ)よりも長い。このようにすることで、発光部10を、受光部20よりも点滴筒110に近づけて配置でき、点滴筒110の内部に照射されない無駄な照射光L1を減らすことができる。その一方で、受光部20を発光部10よりも点滴筒110から遠ざけて配置でき、導光部30の導光路31の長さを確保し易い。そのため、落下液体116の「影」の成分、すなわち、落下液体116の影となることで発生する総受光量の低下分、をより精度よく検出できる。その結果、上述したように、点滴筒110の内部を落下する落下液体116の透明度によらず、その落下液体116の液滴状態及び液柱状態を容易に検出することができる。
(第3実施形態)
次に、図13を参照して、第3実施形態としての点滴監視センサ301について説明する。図13は、点滴監視センサ301の要部を示す図である。点滴監視センサ301は、第1実施形態の点滴監視センサ1と比較して、発光部及び受光部の構成が相違する。点滴監視センサ301の他の構成は、上述した点滴監視センサ1と同一である。したがって、ここでは、点滴監視センサ301のうち、点滴監視センサ1との相違点について主に説明し、共通する構成は説明を省略する。
発光部310は、発光素子311と、この発光素子311から発光される光を平行光に変換可能な光学素子312と、を備えている。この点滴監視センサ301では、光学素子312により変換された平行光が、点滴筒110に照射される照射光L1となる。
図13に示す発光部310は、1つのみの発光素子311、及び、1つのみの光学素子312、を備えるが、この構成に限られず、複数の発光素子、及び、複数の光学素子、を備える発光部としてよい。
発光素子311は、例えば、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)又はレーザダイオード等により構成できる。光学素子312は、図13に示すように、1つの発光素子311から入射する光を透過させて照射光L1としての平行光に変換することが可能な、例えば、シリンドリカルレンズ、球面レンズ、フレネルレンズ等で構成することができる。或いは、光学素子312は、1つの発光素子311から入射する光を反射させて照射光L1としての平行光に変換することが可能な、例えば、フレネルミラー、放物面ミラー等で構成することができる。図13に示す例の光線R1は、光学素子312により変換された照射光L1としての平行光の光線である。
受光部320は、受光素子321と、この受光素子321に受光する光を集光可能な光学素子322と、を備えている。この点滴監視センサ301では、発光部310から点滴筒110の内部に照射された照射光L1を、光学素子322により、受光素子321へと集光することができる。
図13に示す受光部320は、1つのみの受光素子321、及び、1つのみの光学素子322、を備えるが、この構成に限られず、複数の受光素子、及び、複数の光学素子、を備える受光部としてよい。
受光素子321は、例えば、フォトトランジスタ又はフォトダイオード等により構成できる。光学素子322は、図13に示すように、入射する光を透過させて受光素子321に集光させることが可能な、例えば、シリンドリカルレンズ、球面レンズ、フレネルレンズ等で構成することができる。或いは、光学素子322は、入射する光を反射させて受光素子321に集光させることが可能な、例えば、フレネルミラー、放物面ミラー等で構成することができる。図13に示す例の光線R2は、光学素子322により変換される前の、落下液体116を透過した透過光を示す光線である。図13に示す例では、光線R2のうち、第1導光部30の第1導光路31を通じて受光素子321に到達した光線が、光学素子322により、受光素子321に集光される。
(第4実施形態)
次に、図14~図16を参照して、第4実施形態としての点滴監視センサ401について説明する。図14は、点滴筒110に装着されている状態の点滴監視センサ401の正面図である。図15は、点滴監視センサ401の構成を示すブロック図である。図15では、説明の便宜上、第1導光部30を併せて示している。図16は、点滴監視センサ401による液柱状態の判定処理の一例を説明する図である。点滴監視センサ401は、第1実施形態の点滴監視センサ1と多くの点で共通するため、以下、主に点滴監視センサ1との相違点について説明し、共通点については説明を省略する。
図14及び図15に示すように、点滴監視センサ401は、発光部10と、受光部20と、第1導光部30と、液柱検出部50と、液滴検出部60と、増幅部70と、報知部80と、ハウジング2と、液柱判定部155と、液滴判定部165と、外来光検出部190と、を備える。
受光部20は、鉛直方向の互いに異なる位置に設置された上受光部120a及び下受光部120bを備える。上受光部120a及び下受光部120bは、それぞれ少なくとも1つの受光素子を備える。図14に示すように、上受光部120aは、下受光部120bよりも、鉛直方向の上方に設置されている。すなわち、受光部20は、鉛直方向に互いに異なる位置に設置された少なくとも2つの受光素子を備える。
図15に示すように、増幅部70は、上増幅部170aと、下増幅部170bと、を備える。上増幅部170aは、例えば増幅回路等で構成され、上受光部120aからの受光信号を増幅して、後述する上液柱検出部150a及び上液滴検出部160aに出力する。下増幅部170bは、例えば増幅回路等で構成され、下受光部120bからの受光信号を増幅して、後述する下液柱検出部150b及び下液滴検出部160bに出力する。
図15に示すように、液柱検出部50は、上液柱検出部150aと、下液柱検出部150bと、を備える。上液柱検出部150aは、上受光部120aからの受光信号に基づいて、液体の液柱状態を検出可能である。上液柱検出部150aは、液柱状態を検出すると、検出結果を液柱判定部155に出力する。下液柱検出部150bは、下受光部120bからの受光信号に基づいて、液体の液柱状態を検出可能である。下液柱検出部150bは、液柱状態を検出すると、検出結果を液柱判定部155に出力する。上液柱検出部150a及び下液柱検出部150bの詳細は、第1実施形態の液柱検出部50と同様であるので説明を省略する。
液柱判定部155は、上液柱検出部150aからの液柱状態の検出結果と、下液柱検出部150bからの液柱状態の検出結果とに基づいて、液体が液柱状態で落下しているか否かを判定する。1つのみの液柱検出部により液柱状態を検出する構成の場合、例えば、点滴筒110内で落下して貯留液体117により跳ね上がり、点滴筒110の内面に付着して落下しない液滴を検出することで、液体が液柱状態で落下していると誤検出する場合がある。そのため、本実施形態では、鉛直方向の異なる位置で、液体の液柱状態の検出動作を実行することで、上述の誤検出を抑制できる。具体的に、液柱判定部155は、上液柱検出部150aが液柱状態を検出し、かつ、下液柱検出部150bが液柱状態を検出している場合に、液体が液柱状態で落下していることを判定する。上液柱検出部150a及び下液柱検出部150bそれぞれが液柱状態を検出する手法は、第1実施形態の液柱検出部50(図3等参照)と同様である。
図16(a)は、実際に液体が液柱状態で落下しておらず、下受光部120bが、点滴筒110の内面に付着して落下しない液滴を検出している場合の、上受光部120a及び下受光部120bの受光量の変化を示す図である。図16(a)の破線で示す上受光部120aが受光する照射光の受光量に基づくと、上液柱検出部150aは液柱状態を検出できない。その一方で、図16(a)の実線で示す下受光部120bが受光する照射光の受光量に基づくと、下液柱検出部150bは液柱状態を検出する。したがって、液柱判定部155は、上液柱検出部150aが液柱状態を検出できないため、たとえ下液柱検出部150bが液柱状態を検出している場合(誤検出している場合)であっても、液体が液柱状態で落下していると判定しない。
これに対して、図16(b)は、実際に液体が液柱状態で落下している場合の、上受光部120a及び下受光部120bの受光量の変化を示す図である。図16(b)の破線で示す上受光部120aが受光する照射光の受光量に基づくと、上液柱検出部150aは液柱状態を検出する。更に、図16(b)の実線で示す下受光部120bが受光する照射光の受光量に基づくと、下液柱検出部150bは液柱状態を検出する。したがって、液柱判定部155は、上液柱検出部150aが液柱状態を検出し、かつ、下液柱検出部150bが液柱状態を検出しているため、液体が液柱状態で落下していると判定する。
図15に示すように、液滴検出部60は、上液滴検出部160aと、下液滴検出部160bと、を備える。上液滴検出部160aは、上受光部120aからの受光信号に基づいて、液体の液滴状態を検出可能である。上液滴検出部160aは、液滴状態を検出すると、検出結果を液滴判定部165に出力する。下液滴検出部160bは、下受光部120bからの受光信号に基づいて、液体の液滴状態を検出可能である。下液滴検出部160bは、液滴状態を検出すると、検出結果を液滴判定部165に出力する。上液滴検出部160a及び下液滴検出部160bの詳細は、第1実施形態の液滴検出部60と同様であるので説明を省略する。
液滴判定部165は、上液滴検出部160aからの液滴状態の検出結果と、下液滴検出部160bからの液滴状態の検出結果とに基づいて、液体が液滴状態で落下しているか否かを判定する。1つのみの液滴検出部により液滴状態を検出する構成の場合、例えば、点滴筒110内で落下し貯留液体117により跳ね上がった液滴を検出することで、液体が液滴状態で落下していると誤検出する場合がある。そのため、本実施形態では、鉛直方向の異なる位置で、液体の液滴状態の検出動作を実行することで、上述の誤検出を抑制できる。具体的に、液滴判定部165は、上液滴検出部160aが液滴状態を検出し、かつ、上液滴検出部160aが液滴状態を検出してから所定時間以内に下液滴検出部160bが液滴状態を検出した場合に、液体が液滴状態で落下していることを判定する。上液滴検出部160a及び下液滴検出部160bそれぞれが液滴状態を検出する手法は、第1実施形態の液滴検出部60(図3等参照)と同様である。
ここで、上液滴検出部160aが検出する液滴状態の液体と、下液滴検出部160bが検出する液滴状態の液体と、の同一性を確認することが好ましい。上液滴検出部160aと下液滴検出部160bとにより検出される液体が同一であるか否かは、受光信号の波形をパターン認識等することにより、所定以上の類似度と判断することに基づいて判定することができる。
液柱判定部155及び液滴判定部165は、例えば、種々の情報及びプログラムを記憶する記憶装置、及び、当該記憶装置に記憶された種々の情報及びプログラムのうち、所定の情報及びプログラムを読み込むことにより所定の機能を実現するプロセッサ等により構成される。液柱判定部155及び液滴判定部165を構成する記憶装置及びプロセッサ等は、上液柱検出部150a、下液柱検出部150b、上液滴検出部160a、又は、下液滴検出部160bを構成する記憶装置及びプロセッサ等と共通の部材でもよいし、別部材でもよい。
更に、本実施形態の受光部20は、外来光を受光可能な外来光受光部120cを有してもよい。上述した上液柱検出部150a及び下液柱検出部150bそれぞれにより液柱状態を検出する場合、カーテンの開け閉め等による外来光の急激な変化によって、上液柱検出部150a及び下液柱検出部150bが同時に液柱状態を検出する場合がある。したがって、実際には液柱状態が発生していない場合であっても、外来光の急激な変化により、液柱判定部155が、液体が液柱状態で落下していると誤判定する可能性がある。これに対して、本実施形態の液柱判定部155は、外来光受光部120cが受光する外来光の受光量の変化に基づいて、液体が液柱状態で落下しているか否かを判定する。具体的に、本実施形態の液柱判定部155は、上液柱検出部150aが液柱状態を検出し、かつ、下液柱検出部150bが液柱状態を検出している場合であっても、直前に外来光受光部120cによる受光量の変化が所定の閾値以上ある場合は、液体が液柱状態で落下していると判定しない。逆に、本実施形態の液柱判定部155は、上液柱検出部150aが液柱状態を検出し、かつ、下液柱検出部150bが液柱状態を検出し、かつ、直前に外来光受光部120cによる受光量の変化が所定の閾値未満である場合、液体が液柱状態で落下していると判定する。ここで、外来光受光部120cによる受光量の変化は、上液柱検出部150a及び下液柱検出部150bが液柱状態を検出したタイミングから遡って所定時間以内(例えば数秒以内)で判断すればよい。外来光受光部120cによる受光量の変化が所定の閾値以上あるか否かの判断は、例えば、プロセッサ等により構成される外来光検出部190により実行すればよい。外来光検出部190による判断結果は、液柱判定部155に出力される。
本実施形態では、上受光部120a及び下受光部120bとは別に、外来光受光部120cを設けたが、上受光部120a及び下受光部120bのいずれか一方を、外来光受光部120cを兼ねる構成としてもよい。
本実施形態において、発光部10は、上受光部120a及び下受光部120bに対応して、鉛直方向に互いに異なる位置に設置された2つ発光部(上発光部及び下発光部)を備えてもよい。これにより、上受光部120a及び下受光部120bそれぞれが受光する光の光量を増加させることができる。
本実施形態の液滴検出部60は、第1実施形態と同様、ピーク波形の時間幅である第1期間T1(図11参照)、ピーク波形の振幅a1(図11参照)、及び、隣接するピーク波形間の時間間隔T2(図11参照)、に基づいて、正常な液滴状態を検出する。更に、本実施形態の液滴検出部60では、これらに加えて、上受光部120a及び下受光部120bの落下液体116の検出時刻の差である時間間隔に基づいて、正常な液滴状態を検出している。
次に、第1導光部30及び第2導光部40による効果を確認する確認実験の概要について説明する。図17は、確認実験の実験系の概要を示す図である。図17に示すように、この確認実験で用いた発光部10は、2mm間隔で並列に配置された7つの発光素子11a~11gを有する。7つの発光素子11a~11gは全て同一のLEDにより構成されている。図18(a)は、7つの発光素子11a~11gの出射特性を示す図である。7つの発光素子11a~11gそれぞれから発光される光の中心光線は、図18(a)における角度「0°」に対応している。また、図17に示すように、この確認実験で用いた受光部20は、2mm間隔で並列に配置された7つの受光素子21a~21gを有する。7つの受光素子21a~21gは全て同一のフォトトランジスタにより構成されている。図18(b)は、7つの受光素子21a~21gの入射特性を示す図である。7つの受光素子21a~21gそれぞれが発光する光の中心光線は、図18(b)における角度「0°」に対応している。
この確認実験では、第1導光部30として内径1.7mmの筒状体を用いている。この確認実験では、第1導光部30を配置しない場合、第1導光部30として軸方向長さ(導光路の長さ)が3.5mmの筒状体を配置した場合、及び、第1導光部30として軸方向長さが7mmの筒状体を配置した場合、の3パターンを検証した。
また、この確認実験では、第2導光部40として内径1.7mmの筒状体を用いている。この確認実験では、第2導光部40を配置しない場合、及び、第2導光部40として軸方向長さが2.5mmの筒状体を配置した場合、の2パターンを検証した。
この確認実験では、20滴/mLの点滴筒を使用している。
図19は、第1導光部30としての筒状体の長さによる受光部20の受光量の相違を示す図である。図19(a)は、脂肪乳剤などの不透明液の液滴による、受光部20の受光量の変化を示す図である。図19(a)に示すように、第1導光部30を有する場合(図19(a)の破線及び実線)は、第1導光部30を有さない場合(図19(a)の二点鎖線)と比較して、不透明液の液滴に基づく受光部20の受光量の減少を、より容易に検出可能である。換言すれば、受光部20は、第1導光部30により、反射光や屈折光などの散乱光を受光し難くなり、液滴の「影」をより精度よく検出できるようになる。更に、第1導光部30の軸方向長さが7mmの場合(図19(a)の実線)は、第1導光部30の軸方向長さが3.5mmの場合(図19(a)の破線)と比較して、不透明液の液滴に基づく受光部20の受光量の減少を、より容易に検出可能である。つまり、第1導光部30の軸方向長さを長くすることで、受光部20は、反射光や屈折光などの散乱光をより受光し難くなる。その結果、液滴の「影」を、より精度よく検出できるようになる。
図19(b)は、生理食塩水などの透明液の液滴による、受光部20の受光量の変化を示す図である。図19(b)に示すように、第1導光部30を有する場合(図19(b)の破線及び実線)は、第1導光部30を有さない場合(図19(b)の二点鎖線)と比較して、透明液の液滴に基づく受光部20の受光量の減少を、より容易に検出可能である。換言すれば、受光部20は、透明液の液滴であっても、第1導光部30により、反射光や屈折光などの散乱光を受光し難くなり、液滴の「影」をより精度よく検出できるようになる。更に、第1導光部30の軸方向長さが7mmの場合(図19(b)の実線)は、第1導光部30の軸方向長さが3.5mmの場合(図19(b)の破線)と比較して、透明液の液滴に基づく受光部20の受光量の減少を、より容易に検出可能である。つまり、第1導光部30の軸方向長さを長くすることで、受光部20は、反射光や屈折光などの散乱光をより受光し難くなる。その結果、液滴の「影」を、より精度よく検出できるようになる。
以上のように、第1導光部30を設けることで、液体の透明度にかかわらず、その液体の「影」を検出し易くなることがわかる。つまり、第1導光部30を設けることで、受光部20は、液体が透明液であっても、反射光や屈折光などの散乱光を受光し難くなる。その結果、受光部20の受光量が液体によって増加するような問題(図6(b)参照)の発生を抑制できる。
図20は、不透明な液体が液滴状態から液柱状態に変化する場合の、受光部20の受光量の変化を示す図である。図20(a)は第1導光部30を設けない場合である。図20(b)は第1導光部30として軸方向長さ3.5mmの筒状体を設けた場合である。図20(c)は第1導光部30として軸方向長さ7mmの筒状体を設けた場合である。図20(a)~図20(c)に示すように、液体として不透明液を用いた場合には、液体が液滴状態から液柱状態に変化する際に、受光部20の受光量が減少することがわかる。
図21は、透明な液体が液滴状態から液柱状態に変化する場合の、受光部20の受光量の変化を示す図である。図21(a)は第1導光部30を設けない場合である。図21(b)は第1導光部30として軸方向長さ3.5mmの筒状体を設けた場合である。図21(c)は第1導光部30として軸方向長さ7mmの筒状体を設けた場合である。図21(a)に示すように、液体として透明液を用いた場合、第1導光部30が無いと、液体が液滴状態から液柱状態に変化する際に、受光部20の受光量はほとんど減少せず、場合によっては増加することもある。これに対して、図21(b)、図21(c)に示すように、液体として透明液を用いた場合には、第1導光部30を設けることで、液体が液滴状態から液柱状態に変化する際に、受光部20の受光量が減少することがわかる。
以上のように、第1導光部30を設けることで、液体の透明度にかかわらず、その液体の「影」を検出し易くなった(図19参照)。その結果、液体の透明度にかかわらず、液体の液滴状態から液柱状態への変化を、受光部20の受光量の減少という同様の傾向によって検出可能となる(図20、図21参照)。上述したように、第1導光部30を設けないと、液体が液滴状態から液柱状態へと変化する際に受光部20の受光量が減少するか否かが、液体の透明度によって変わるという問題がある(図7参照)。すなわち、使用される液体の透明度が不明な場合は、液滴状態から液柱状態への変化を検出できないことになる。これに対して、第1導光部30を設けることで、受光部20の受光量は、液体の透明度にかかわらず、液体が液滴状態から液柱状態へと変化する際に減少する。つまり、第1導光部30を設けることで、液体の透明度にかかわらず、液体の液滴状態から液柱状態への変化を、受光部20での受光量の減少という同一の傾向により検出することが可能となる。
図22(a)は、生理食塩水などの透明液の液滴による、受光部20の受光量の変化を示す図である。図22(a)に示すように、第2導光部40を有する場合(図22(a)の実線)は、第2導光部40を有さない場合(図22(a)の破線)と比較して、透明液の液滴に基づく受光部20の受光量が、若干減少していることがわかる。ここでは、第2導光部40として軸方向長さ2.5mmの筒状体を用いているが、この軸方向長さを長くすることで、受光部20の受光量を、より減少させることができる。但し、上述したように、受光部20の受光量の減少は、第2導光部40の有無よりも、第1導光部30の有無による影響が大きいことがわかる。
図22(b)は、透明な液体が液滴状態から液柱状態に変化する場合の、受光部20の受光量の変化を示す図である。図22(b)の破線は、第2導光部40を設けない場合である。図22(b)の実線は、第2導光部40として軸方向長さ2.5mmの筒状体を設けた場合である。図22(b)に示すように、第2導光部40を設けることで、液体が液滴状態から液柱状態に変化する際の受光量の変化(図22(b)では「o1」から「o2」に変化)を、第2導光部40を設けない場合の変化(図22(b)では「p1」から「p2」に変化)よりも大きくすることができる。その結果、液体の液滴状態から液柱状態への変化を、より検出し易くなる。
本開示に係る点滴監視センサは、上述した各実施形態で特定された構成に限定されず、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、第1実施形態の発光部10と第3実施形態の受光部320とを組み合わせて光学系を構成してもよい。また、第3実施形態の発光部310と第1実施形態の受光部20とを組み合わせて光学系を構成してもよい。この他にも、例えば、各部材、各部位、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の部材、部位又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。