JP7333348B2 - 冷菓 - Google Patents

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Description

本技術は、冷菓に関する。
一般に、冷菓は、アイスクリーム類と氷菓に分類される。アイスクリーム類は、更に、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(以下、「乳等省令」ともいう)によって、乳固形分と乳脂肪分との含有量により、アイスクリーム、アイスミルク及びラクトアイスに分類される。この乳等省令では、アイスクリームは乳固形分15.0%以上かつ乳脂肪分8.0%以上、アイスミルクは乳固形分10.0%以上かつ乳脂肪分3.0%以上、ラクトアイスは乳固形分3.0%以上と成分規定されている。なお、乳固形分は、乳脂肪分及び無脂乳固形分との合計である。
アイスクリーム類は、一般的に、乳脂肪、植物性脂肪、又はこれらを混合した油脂3~20%、無脂乳固形分3~12%、糖類8~20%、その他必要に応じ少量の安定剤、乳化剤、色素、香料等を含む殺菌した原料混合液に、オーバーランを10~150%に調整しながら連続式フリーザーで空気を取り込み、凍結し、容器に充填し、硬化して製造される。
アイスクリーム類の製造において、滑らかな食感の冷菓を得るために乳化剤が用いられている。
例えば、乳化剤としてモノグリセリドが一般的によく利用されている。
例えば、非特許文献1では、口溶けの良い滑らかな食感を得るために、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する冷菓が提案されている。
例えば、特許文献1では、組織の緻密さと滑らかな食感の両方が良好であるために、乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルを含有する冷菓が提案されている。
特開2005-58084号公報 特開2008-43323号公報 特開2018-161075号公報
ジャパンフードサイエンス 第41巻第5号5月号日本食品出版株式会社2002年5月5日発行、第45~51頁 「澱粉糖関連工業分析法」、澱粉糖技術部会編,食品化学新聞社発行(平成3(1991)年11月1日発行
アイスクリーム類等の冷菓を製造する際、一般的に、原料混合液を調製する調合工程、原料混合液をエージング次いでフリージングし、充填・硬化・包装する製品化工程に大別される。より具体的には、一般的に、乳化剤を含む冷菓原料を混合して乳化させた後に、均質化工程、殺菌工程を経て原料混合液を得、この原料混合液はエージング工程、フリージング工程を経て、冷菓になる。
そして、フリージング工程において、空気の混合、水分の凍結等を行う際に、原料混合液の乳化状態が破壊(「解乳化」ともいう)され、解乳化した脂肪球が凝集し、過度に大きくなり、チャーニング(脂肪の塊の発生)という現象が起こることが知られている。
冷菓の製造において、このチャーニングが生じた場合には、冷菓における口当たりの滑らかさが悪くなったり、品質不良の原因になったりすることがある。フリージング工程でチャーニングが生じやすいのは脂肪分を含む冷菓特有の問題でもあるが、フリージング工程でのチャーニング制御は難しい。このため、本発明者は、冷菓におけるチャーニング(脂肪の塊の発生)を制御できる技術を検討することとした。
なお、一般的に、冷菓の「口当たりの滑らかさ」では、1mm以上の大きな氷晶感がなく、1cm以上の視認できる大きさの(バター状の)脂肪の塊がない冷菓が、口当たりの滑らかさが良いものとされ、さらにタンパクの凝集や乳糖結晶等によるざらつきが少なく、アイスクリームの組織が密な状態の冷菓が、口当たりの滑らかさがより良いものとされている。
また、一般的に、冷菓の「製品不良」として、例えば、大きな氷晶感がありシャリシャリする状態、1cm以上の視認できる大きさの(バター状の)脂肪の塊がある状態、タンパクの凝集や乳糖結晶などによるざらつきがある状態が挙げられる。
そこで、本技術は、チャーニングが制御できる冷菓を提供することを主な目的とする。
本発明者は、鋭意検討を行った結果、冷菓に含有させる原料として、澱粉分解物を使用し、この澱粉分解物のデキストロース当量(以下、「DE」ともいう)を制御することで、チャーニングを制御できることを見出した。より具体的には、本発明者は、冷菓に低DE澱粉分解物を含有させることで、冷菓製造で生じるチャーニングを制御できることを見出した。また、このとき、本発明者は、後述する<平均脂肪粒量(/冷菓100g)の測定方法>を用いることで、冷菓製造で生じるチャーニングの制御を行いやすいことも見出した。本発明は、以下のとおりである。
本技術は、デキストロース当量(DE)15以下の低DE澱粉分解物と、デキストロース当量(DE)20~40の高DE澱粉分解物と、を含有し、前記低DE澱粉分解物及び前記高DE澱粉分解物の含有質量割合が、固形分換算として、前記低DE澱粉分解物1質量部に対して前記高DE澱粉分解物が1~10質量部であり、乳脂肪分が、3%以上であり、前記高DE澱粉分解物を、6質量%~9質量%含有し、前記乳脂肪分1質量部に対して前記低DE澱粉分解物が0.01~2質量部である、冷菓を提供するものである。
前記冷菓の平均脂肪粒量が、10~14g(/冷菓100g)であってもよい。
前記冷菓の平均脂肪粒量/コントロール冷菓の平均脂肪粒量から求められる前記冷菓の平均脂肪粒量比が、1.0未満であってもよい。
前記低DE澱粉分解物を、0.5~10質量%含有してもよい
記冷菓が、アイスクリーム、アイスミルク、又はラクトアイスであってもよい。
前記冷菓が、卵加工品、果汁、果肉、ジャム類、野菜類、コーヒー類、茶類、チョコレート類、及びキャラメル類からなる群より選ばれるいずれか一種以上含有していてもよい。
前記冷菓の油脂含有量が、8%以上であってもよい。
本技術によれば、チャーニングが制御できる冷菓を提供することができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
以下、本技術を実施するための好適な実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。なお、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。また、本明細書において記載されている含有量等の上限値と下限値とは、所望により、任意に組み合わせることができる。
1.本技術に係る冷菓
本技術に係る冷菓は、デキストロース当量(DE)15以下である低DE澱粉分解物を少なくとも含有するものである。さらに、デキストロース当量(DE)20~40の高DE澱粉分解物を含有することが好適であり、低DE澱粉分解物及び高DE澱粉分解物を併用することにより、チャーニングをより制御しやすい。
本技術に係る冷菓は、平均脂肪粒量[g(/冷菓100g)]は特に限定されず、例えば3~14g(/冷菓100g)に調製されてもよいが、10~14g(/冷菓100g)が好適であり、当該範囲内にあることで、チャーニングをより制御できた冷菓を得ることができる。また、後述する<平均脂肪粒量(/冷菓100g)の測定方法>(以下、「本技術の平均脂肪粒量の測定方法」ともいう)を利用して冷菓の脂肪粒量の平均(AVG)を測定することで、冷菓製造でのチャーニングの制御が良好であるかを確認することができる。
なお、本技術における「脂肪粒」とは、冷菓中の脂肪を溶かさないように作製した溶解液を、100メッシュ(目開き150μm)の篩に通し、この篩を通過しなかった脂肪粒のことをいい、後述する<平均脂肪粒量(/冷菓100g)の測定方法>を参照することができる。
本技術に係る冷菓は、一般的な冷菓に分類されるものをいい、当該冷菓の代表的な例はアイスクリーム類であり、当該アイスクリーム類には、例えば、アイスクリーム、アイスミルク及びラクトアイスが挙げられるが、本技術の冷菓はこれらに限定されない。
また、本技術に係る冷菓は、特定のDE澱粉分解物を含む原料混合液をフリーザーでフリージングする工程を経て製造される冷菓に好適である。
<デキストロース当量(DE)15以下である低DE澱粉分解物>
本技術の冷菓には、DE15以下である低DE澱粉分解物が含まれている。
当該低DE澱粉分解物のDEは、その上限値として、好ましくはDE14以下、より好ましくはDE13以下、さらに好ましくはDE12以下、よりさらに好ましくはDE10以下であり、また、その下限値として、好ましくはDE1以上、より好ましくはDE3以上であり、さらに好ましくはDE5以上、よりさらに好ましくはDE7以上、さらに好ましくはDE8以上であり、より好適な当該数値範囲として、より好適にはDE1~15、さらに好適にはDE7~11である。これにより、チャーニングをより良好に制御することができる。
本技術の低DE澱粉分解物は、市販品を使用することもでき、市販品として、例えば、商品名VIANDEX-BH(DE7~11)(昭和産業社製)、マックス2000N(DE8~12)(松谷化学工業社製)等が挙げられるが、特に限定されず、適宜1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本技術の低DE澱粉分解物を冷菓に使用することで、チャーニングをより良好に制御することができる。このとき、所定の平均脂肪粒量の範囲内に制御することで、チャーニングを制御することができる。これにより、冷菓における口当たりの滑らかさが悪くなることを回避でき、品質不良の原因になったりすることを回避することができる。
また、本技術は、冷菓の原料混合液に前記低DE澱粉分解物を含ませることで、冷菓製造のときに生じるチャーニングを制御できる。本技術であれば、特殊な装置を用いなくとも一般的な冷菓製造でもチャーニングを制御できることから、本技術は作業性の簡便さやコスト等の観点から優れた効果がある。また、本技術は、低DE澱粉分解物の使用によってチャーニング制御が可能であるので、合成系の乳化剤の使用量の低減化又は合成系の乳化剤フリー化も可能である。
さらに、本技術において、低DE澱粉分解物と高DE澱粉分解物を併用することでチャーニングをより制御しやすいので、より好ましい。これにより、より適切な平均脂肪粒量の範囲内により簡便に調整できる。
<高DE澱粉分解物>
本技術における高DE澱粉分解物は、DE20~40の範囲のものであることが好適である。高DE澱粉分解物のDEの上限値は、好適にはDE35以下、より好適にはDE30以下であり、また、そのDEの下限値は好適にはDE25以上である。高DE澱粉分解物のDEの数値範囲として、より好適にはDE20~30である。
一般的に、粉あめ(又は、「水あめ」ともいう)がDE20~40とされており、斯様な粉あめ(又は、「水あめ」ともいう)を、本技術の高DE澱粉分解物として使用することができる。当該高DE澱粉分解物として使用できる市販品は、例えば、商品名K-SPD(昭和産業社製)等を挙げることができるが、特に限定されない。
本技術で用いられる所定のDE澱粉分解物は、所定のDEになるように、澱粉を分解処理することによって得ることができる。これにより、本技術で用いられる低DE澱粉分解物や高DE澱粉分解物等を得ることができる。この澱粉分解物は、種々の重合度の分解生成物(分解度の低い分解物や分解度の高い分解物等)の混合物であり、例えば、デキストリン、オリゴ糖等の少糖類、マルトース等の二糖類、及びグルコース(単糖)が含まれている。
ここで、一般的に、デキストリンは、デキストロース当量(D.E.; dextrose equivalent)と呼ばれる、澱粉の糖化率を示す数値により分類されており、DEが高いほど澱粉が分解され糖化率が高い。
<デキストロース当量(DE)及びその測定方法>
本技術の澱粉分解物の分解度は、デキストロース当量(DE)として表わされる。このDEは、澱粉分解物の全固形分に対する直接還元糖(直接還元糖/澱粉分解物の全固形分)×100によって算出される。澱粉分解物は、デンプンの分解生成物であるため、直接還元糖はグルコースもしくはグルコースが少数重合したものとなる。直接還元糖は、レインエイノン法によって定量される直接還元糖の還元基量を、グルコース量に換算することによって算出される値であり、全固形分は、澱粉分解物の乾燥前後の質量比の百分率である(非特許文献2:「澱粉糖関連工業分析法」、澱粉糖技術部会編,食品化学新聞社発行(平成3(1991)年11月1日発行))。
例えば、市販の粉あめ(水あめ)を測定したときに、グルコース量換算された直接還元糖量が12%であり、全固形分が60%である場合、この粉あめ(水あめ)のDEは、20となる。
本技術の澱粉分解物は、澱粉を、所定のDEになるように化学的又は酵素的な処理によって得ることができる。本技術の澱粉分解物は、公知の分解処理方法や、澱粉分解物の製造方法を参考にして製造することができ、必要に応じて公知の分離精製を行ってもよい。
また、本技術の澱粉分解物は、市販の澱粉分解物を必要に応じてDEを測定して適宜使用することができる。市販品として、例えば、K-SPD(DE25~30)(昭和産業社製)、VIANDEX-BH(DE7~11)(昭和産業社製)、マックス2000N(DE8~12)(松谷化学工業社製)等が挙げられ、適宜単独で又は複数組み合わせて使用してもよい。
前記化学的な処理として、例えば、酸、アルカリ等の加水分解;酵素的な処理として例えばアミラーゼ等の加水分解;等が挙げられるが、このような手法に限定されない。酸としては、例えば、シュウ酸、塩酸等が挙げられ、酵素として、例えば、αアミラーゼ、イソアミラーゼ、プルラナーゼ等が挙げられ、これらからなる群から1種又は2種以上選択して使用することができる。
本技術の澱粉分解物に用いる原料の澱粉は、特に限定されないが、一般的に食品に使用されているものを使用することが可能である。澱粉原料として、例えば、コーンスターチ、米澱粉、小麦粉澱粉等の澱粉(穀物由来の地上系澱粉);馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉等の澱粉(地下茎又は根由来の地下系澱粉)が挙げられる。このうち、好ましくは、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、及びタピオカ澱粉である。これらからなる群から1種又は2種以上選択して使用することができる。
本技術の冷菓に含まれる「低DE澱粉分解物」の含量(固形分換算として)は、特に限定されないが、その下限値として、チャーニング制御の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、その上限値として、風味や食感の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下、よりさらに好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下である。
当該低DE澱粉分解物における数値範囲は、チャーニング制御と風味や食感との観点から、より好適には0.5質量%~10質量%、さらに好適には0.5質量%~6質量%であり、さらに好適には1質量%~4質量%である。
本技術の冷菓に含まれる「高DE澱粉分解物」の含量(固形分換算として)は、特に限定されないが、その下限値として、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは6質量%以上であり、また、その上限値として、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは9質量%以下であり、よりさらに好ましくは8質量%以下である。
当該高DE澱粉分解物の数値範囲は、より好適には5質量%~10質量%、さらに好適には6質量%~9質量%である。
本技術の冷菓に含まれる「前記低DE澱粉分解物及び前記高DE澱粉分解物」の含有質量割合(固形分換算として)は、前記低DE澱粉分解物1質量部に対して、前記高DE澱粉分解物0.1~30質量部が好ましく、より好ましくは前記高DE澱粉分解物0.1~25質量部、さらに好ましくは前記高DE澱粉分解物0.5~15質量部、よりさらに好ましくは前記高DE澱粉分解物1~10質量部、より好ましくは前記高DE澱粉分解1.5~9質量部である。
<冷菓の乳脂肪分、無脂乳固形分等>
本技術の冷菓中の「乳脂肪分」は、特に限定されないが、その下限値として、乳脂肪リッチの風味の観点から、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは4%以上、よりさらに好ましくは5%以上であり、その上限値として、チャーニング制御の観点から、好ましくは20%以下、より好ましくは18%以下、さらに好ましくは15%以下である。
当該乳脂肪分の数値範囲として、より好適には3%~20%、さらに好適には3%~15%である。本技術において、ラクトアイスの乳脂肪分は3%の場合もありえる。当該乳脂肪分の数値範囲として、よりさらに好適には、乳脂肪リッチ及び良好なチャーニング制御の観点から5%~15%である。
本技術であれば、乳脂肪リッチの冷菓においても、冷菓中のチャーニングを制御することができ、乳脂肪リッチな冷菓として、乳脂肪分3%以上含む冷菓が、より好ましい。さらに、乳脂肪リッチの冷菓の場合、この乳脂肪分は好適には5%以上、より好適には7%以上、さらに好適には8%以上であることが、風味や食感の観点から、好ましい。
本技術の冷菓における「乳脂肪分と、前記低DE澱粉分解物(固形分換算)と」の含有質量割合は、特に限定されないが、乳脂肪分1質量部に対して、その下限値として、好ましくは前記低DE澱粉分解物0.025質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.125質量部以上であり、また、その上限値として、好ましくは前記低DE澱粉分解物3.4質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、さらに好ましくは1.34質量部以下、よりさらに好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
当該低DE澱粉分解物の質量含有割合の数値範囲として、より良好な脂肪リッチとより良好なチャーニング制御の観点から、乳脂肪分1質量部に対して、より好適には0.01~2質量部、さらに好適には0.125~0.5質量部である。また、適度な乳脂肪分の使用及びより良好なチャーニング制御の観点から、乳脂肪分1質量部に対して、より好適には0.125~1.5質量部、さらに好適には0.33~1.34質量部である。
本技術の冷菓中の「無脂乳固形分」は、特に限定されないが、その下限値として、好ましくは4%以上、より好ましくは6%以上、さらに好ましくは7%以上であり、また、その上限値として、好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは9%以下である。
当該無脂乳固形分の数値範囲として、より好適には5%~10%、さらに好適には6%~9%である。
本技術の冷菓中の「乳固形分」は、特に限定されないが、その下限値として、好ましくは7%以上、より好ましくは8%以上、さらに好ましくは10%以上であり、また、その上限値として、好ましくは32%以下、より好ましくは25%以下である。
当該乳固形分の数値範囲として、より好適には8%~25%、さらに好適には10%~24%、よりさらに好適には11%~24%である。
本技術の冷菓は、乳脂肪リッチな味わいの観点から、乳脂肪分が3%以上かつ乳固形分が10%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは、乳脂肪分が8%以上かつ乳固形分が15%以上である。本技術によれば、脂肪分がリッチな冷菓であっても、チャーニングを制御することができる利点がある。
本技術の冷菓中の「全固形分」は、特に限定されないが、その下限値として、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上、また、その上限値として、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下である。
当該全固形分の数値範囲として、より好適には25%~45%、さらに好適には30%~40%である。
なお、本技術における、乳脂肪分、無脂乳固形分、乳固形分、及びその他乳成分の含有量は、「乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令)」の「乳等の成分規格の試験法」に記載の各定量法によって測定することができる。
また、本技術において「乳固形分」とは、無脂乳固形分及び乳脂肪分の合計である。
また、本技術の冷菓における「全固形分」とは、水分を除去したものをいい、全固形分は、混砂法、直接乾燥法等によって測定することができるが、乳等省令に記載の水分の定量法から求めた水分を冷菓全量から除去して求めることができる。
本技術の冷菓は、後述する<平均脂肪粒量(/冷菓100g)の測定方法>を利用することで、冷菓のチャーニングを制御することができる。チャーニングは乳脂肪リッチであるほど生じやすく、本技術では、このような乳脂肪リッチによるチャーニングを制御することができる。
本技術において、チャーニングを制御することとして、例えば、脂肪塊を所定の質量範囲に制御すること、脂肪球の解乳化を抑制すること、脂肪球の凝集を抑制させること等が挙げられる。これにより、冷菓の口当たりの滑らかさが悪くなることを回避できたり、冷菓の品質不良の原因になったりすることを回避できる。
本技術の平均脂肪粒量を制御する例として、例えば、冷菓の平均脂肪粒量(/冷菓100g)が所定の範囲内になるように調整すること;コントロール冷菓の平均脂肪粒量と対比し、調整対象となる冷菓の平均脂肪粒量を低くするように冷菓を調製すること等が挙げられる。本技術の平均脂肪粒量の測定方法を用いることにより、冷菓のチャーニング状況や使用原料に起因するチャーニングへの影響を、簡便に、客観的に、再現性良く確認することができる。また、本技術の平均脂肪粒量の測定方法を用いた場合、主観的ではなく客観的に判断できることから、検査のばらつきを少なくして冷菓品質を安定的に判断することができ、より冷菓品質の均質化を図ることができる。
<冷菓の平均脂肪粒量(/冷菓100g)>
本技術の冷菓の平均脂肪粒量(/冷菓100g)は、口当たりの滑らかさや品質の観点から、その上限値として、14g(/冷菓100g)以下であることがより好ましく、さらに好ましくは13.5g(/冷菓100g)以下、よりさらに好ましくは13g(/冷菓100g)以下であり、また、その下限値として、3g(/冷菓100g)以上であることが好ましく、5g(/冷菓100g)以上であることがより好ましく、さらに好ましくは8g(/冷菓100g)以上、よりさらに好ましくは10g(/冷菓100g)以上である。
本技術の低DE澱粉分解物を含む冷菓における当該数値範囲として、この平均脂肪粒量は、好ましくは3~14g(/冷菓100g)であり、より好ましくは10~13g(/冷菓100g)である。当該冷菓の平均脂肪粒量の絶対値が当該数値範囲内にあることで、合成系の乳化剤を低減したり、フリーにした場合でも、冷菓の口当たりの滑らかさや冷菓の品質も良好な冷菓を得ることができる。
また、本技術の低DE澱粉分解物を含む冷菓は、この平均脂肪粒量比は、好適には0.7~0.95、より好適には0.8~0.95であることが好ましい。当該平均脂肪粒量比については後述する。このような数値範囲内にあることで、合成系の乳化剤を低減したり、フリーにした場合でも、冷菓の口当たりの滑らかさや冷菓の品質も良好である。
<平均脂肪粒量(/冷菓100g)の測定方法>
冷菓製造工程において、フリージング後のアイスミックス(原料混合液)を分注する。各分注されたアイスミックスに、冷水(0~10℃)を加え、脂肪を溶かさないように各溶解液を作製する。0~25℃の雰囲気下で、各アイスミックス溶解液を100メッシュ(目開き150μm)の篩に通す。0~25℃の雰囲気下で、各篩において、篩を通過しなかった各未通過量の重さを測定する。これら未通過量の重さの合計値及び試料数から、平均脂肪粒量(/冷菓100g)を算出する。平均する際の試料数は3以上が好ましい。より具体的な測定方法は、後記実施例に示す。
本技術では、試料「無添加」をコントロール冷菓、試料「添加」を試料冷菓とし、これらを対比することで、試料冷菓のチャーニングが制御できているか否かを判断することができる。本技術におけるコントロール冷菓は、コントロール原料から成る冷菓であり、試料冷菓は、コントロール原料に試料を配合した「試料+コントロール原料」から成る試料冷菓である。当該試料は、冷菓のチャーニングの良好な制御を期待する物質であり、本技術の平均脂肪粒量の測定方法によれば、試料が、冷菓のチャーニングを抑制できる物質(すなわち、良好な制御ができる物質)であるかどうかも判断することができる。
このとき、試料以外は同じにすることが好適である。本技術において、試料冷菓及びコントロール冷菓のそれぞれの乳脂肪分(MF)及び無脂乳固形分(SNF)を少なくとも同じにすることがより好適であり、全固形分も同じにすることが更に好適である。この「同じ」とは、試料のチャーニング制御能を精度良く判断する観点から、各冷菓原料の含有量は、好ましくは±0.1質量%以内であり、より好ましくは±0.05質量%以内である。
なお、本技術の平均脂肪粒量の測定方法によって、チャーニングを抑制可能な試料として、低DE澱粉分解物を用いることが好適であることを見出すことができた。
例えば、試料冷菓の平均脂肪粒量(/冷菓100g)-コントロール冷菓の平均脂肪粒量(/冷菓100g)(式1)が、-1.0g(/冷菓100g)以上のときに、当該試料冷菓はチャーニングを制御できていると判断することができる。このように、試料冷菓の平均脂肪粒量(/冷菓100g)は、コントロール冷菓の平均脂肪粒量よりも低く(すなわち、「マイナス」の意味)、かつその差が大きいほど(すなわち、「以上」の意味)、チャーニングを制御できていると判断することができる。「-1.0g(/冷菓100g)以上のとき」の具体例として、例えば、式1において-2.0g(/冷菓100g)のときにチャーニングを制御できていると判断でき、式1において0g(/冷菓100g)のとき、チャーニングが制御できていないと判断することができる。
<冷菓の平均脂肪粒量比>
本技術の冷菓の平均脂肪粒量比は、上述した試料冷菓及びコントロール冷菓を用いて、「試料冷菓の平均脂肪粒量/コントロール冷菓の平均脂肪粒量」から、求めることができる。この冷菓の平均脂肪粒量比を使用することで、冷菓のチャーニング制御を判断することができる。
平均脂肪粒量比が1.0未満のとき、コントロール冷菓よりも、チャーニングがより良好に制御できた冷菓が得られたといえ、その上限値として、より好ましくは0.95以下、さらに好ましくは0.9以下、よりさらに好ましくは0.85以下であり、また、その下限値は特に限定されない。当該数値範囲として、より好適には0.2~0.95、さらに好適には0.2~0.9である。
例えば、試料を添加した試料冷菓の平均脂肪粒量と、試料を添加しないコントロール冷菓の平均脂肪粒量とを対比し、「試料冷菓の平均脂肪粒量/コントロール冷菓の平均脂肪粒量」の比から、試料による冷菓のチャーニング制御の程度を判断することができる。この比が1より小さいほど、冷菓のチャーニングをより良好に制御できると判断できる。この平均脂肪粒量を用いることは、主観が少なく客観的にできる点、簡便に行うことができる点、再現性の点で優れている。
より具体的には、前記試料冷菓の平均脂肪粒量/コントロール冷菓の平均脂肪粒量の比が0.95以下(好適には0.92以下)である場合、当該試料に起因して冷菓のチャーニングが制御できたと判断することができる。さらに、比が0.91以下(より好適には0.90以下)である場合には、1割低減できたため、より良好にチャーニング制御ができたと判断することができる。また、例えば、前記試料冷菓の平均脂肪粒量の絶対値が、合成系の乳化剤を配合しない冷菓において、10~14g(/冷菓100g)であることで、冷菓の口当たりの滑らかさや冷菓の品質も良好と判断することもできる。また、例えば、乳脂肪分3%以上8%未満の冷菓では、10~12g(/冷菓100g)であることに基づき、また、乳脂肪分8%以上の冷菓では、11~14g(/冷菓100g)であることに基づき、チャーニング制御が良好、冷菓の口当たりの滑らかさや冷菓の品質も良好と判断することもできる。
<冷菓のその他の含有成分>
本技術の冷菓は、上記成分以外に、一般的に冷菓の原料として用いられるものを適宜含有させていてもよい。冷菓原料は、液状でミックスに配合して使用してもよいし、固形状(例えば、チップ状、果肉状等)にて含有させてもよい。具体的な例として、乳原料(例えば、牛乳及び乳製品など)、糖類及び甘味料、油脂(例えば、植物性脂肪等)、安定剤、乳化剤、酸味料、植物タンパク質、卵加工品、着香料、着色料、果汁及び果肉(例えば、イチゴ、ブドウ、メロン、柑橘類等)、ジャム類、野菜類(例えば、ニンジン、スイカ等)、コーヒー類、茶類(抹茶、紅茶、緑茶、烏龍茶等)、チョコレート類、キャラメル類、各種食材等が挙げられ、これらから1種又は2種以上選択されるものを含有させてもよい。
本技術の冷菓において、乳由来のコクや乳由来の風味を得る観点から、乳原料を含むことが好適であり、乳原料として、例えば、牛乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、粉乳、クリーム、バター等が挙げられる。これらから1種又は2種以上選択して使用することができる。
本技術において、油脂とは、少なくとも乳脂肪分を含むものが好適であり、さらに植物性脂肪を適宜含んでもよい。アイスクリーム類では、油脂3~20%程度(固形分換算として)が含まれており、植物性脂肪(固形分換算として)は冷菓中に上限値15%以下で使用してもよく、また0~10%程度で使用してもよく、乳脂肪分を低減しつつ風味や舌触りを良好にする観点から、植物性脂肪は冷菓中に0.5~10%や0.5~15%で使用することが可能である。また、本技術であれば、植物性脂肪を高めたときに油脂3~25%にすることも可能である。
脂肪リッチの冷菓ときの油脂含有量は、好適には5%以上、より好適には8%以上である。本技術の冷菓において、軽い風味及び口溶け等を得る観点から、植物性脂肪として、例えば、ヤシ油、パーム油、菜種油、オリーブ油、大豆油等が挙げられるが、これらに限定されない。これらから1種又は2種以上選択して使用することができる。
本技術であれば、乳脂肪分及び/又は植物性脂肪等を含む油脂に起因するチャーニングを制御し、良好な冷菓を得ることができる。
本技術の冷菓において、「前記油脂及び前記低DE澱粉分解物」の質量含有割合は、特に限定されないが、油脂1質量部に対して、前記低DE澱粉分解物は、その下限値として、好ましくは0.002質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、さらに好ましくは0.05質量部以上、よりさらに好ましくは0.125質量部以上であり、また、その上限値として、好ましくは4質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下、よりさらに好ましくは1質量部以下である。
油脂(特に乳脂肪分)が多いと脂肪リッチの冷菓を得ることができる一方でチャーニングも問題となるが、本技術であれば、脂肪リッチの冷菓であってもチャーニングを制御できる。
なお、本技術における脂肪は、レーゼゴットリーブ法によって測定することができる。
本技術の冷菓において、上述した本技術の澱粉分解物を含有させることにより、一般的に使用されている合成系の乳化剤を低減すること又はフリーにすることが可能であり、冷菓のうちアイスクリーム及びアイスミルクなどが好適である。当該合成系の乳化剤として、いわゆる合成系の脂肪酸又は脂肪酸エステルを挙げることができ、特に合成系の脂肪酸エステル(例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル)を低減又はフリーにすることができる。
本技術における「乳化剤フリー」とは、本技術の冷菓において合成系脂肪酸エステルの乳化作用が実質的に奏し得ない含有量以下のことをいい、例えば、冷菓中に少なくとも0.1質量%以下、より好適には0.05質量%以下、よりさらに好適には0.01質量%以下をいう。
近年、消費者が、自然食材を嗜好する傾向にあることから、合成系乳化剤フリーを望む傾向にあるが、本技術であれば、斯様な消費者のニーズにも対応することが可能である。
本技術の冷菓において、より良好にチャーニングを制御する観点から、卵加工品を含有させることが好適である。
本技術に含有させる卵加工品として、例えば、卵白、卵黄、及びこれら酵素分解物等が挙げられ、これらからなる群から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
このうち、好適には酵素分解卵黄であり、当該酵素分解卵黄はリゾ化率40~80%のリゾ化卵黄であることがより好適であり、さらに好適には、更に二重結合が4個以上の高度不飽和脂肪酸が結合したリン脂質が残存したリゾ化卵黄である(例えば、特許文献2:特開2008-43323号公報参照)。さらに、より具体的には、リゾ化卵黄中のホスファチジルエタノールアミンの脂肪酸組成におけるアラキドン酸(C20:4)とドコサヘキサエン酸(C22:6)の合計が20%以上、好ましくは25%以上であることが好ましい。また、酵素分解に使用する酵素は、少なくとも微生物由来の脂質分解酵素を用いることが好ましく、ストレプトマイセス属等の細菌由来のホスフォリパーゼA2等が挙げられるがこれに限定されない。
リゾ化率=(リゾホスファチジルコリンの面積百分率)×100/(ホスファチジルコリンの面積百分率+リゾホスファチジルコリンの面積百分率+リゾホスファチジルエタノールアミンの面積百分率(イアトロスキャン法(TLC-FID法)分析による(例えば、特許文献2:特開2008-43323号公報参照)。
本技術の冷菓に含まれる卵加工品の含量は、特に限定されないが、その下限値として、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.5%以上であり、その上限値として、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下であり、当該数値範囲として、より好適には0.5~3%、さらに好適には0.5~1%である。これにより、チャーニングをより良好に所定の範囲内にすることができる。
2.本技術に係る冷菓の製造方法
本技術の冷菓は、公知の冷菓の製造工程を参考にして製造することができる。具体的には、本技術の冷菓の製造は、フリーザーを用いて原料混合液(いわゆるミックス)をフリージングする工程を有する、公知の製造方法と同じ手順で行うことができる。なお、<平均脂肪粒量(/冷菓100g)の測定方法>で使用する、フリージング後のアイスミックスは、公知の冷菓の製造工程を用いて得てもよい。
本技術において、上述のような成分を原料として使用することで、通常の冷菓の製造方法を採用しても、所定のチャーニングの範囲の冷菓を得ることができる。このように、本技術は、特殊な製造ラインや製造プロセスを行わずに所望の冷菓を得ることができる利点を有する。
本技術の冷菓の製造方法について、以下に一例を挙げて説明するが、本技術はこれに限定されない。
本技術の冷菓の製造工程として、まず、原料を混合溶解して原料混合液(いわゆるミックス)を調製する。そして、必要に応じて、ろ過、均質化、殺菌を行った後に、冷却してエージングする。エージングを終えた原料混合液をフリーザーに投入してフリージングする。フリージング後、充填、包装、硬化等の周知の工程を経て最終製品の冷菓を得ることができる。
より具体的には、本技術冷菓の各原料を含有させた原料液を、65℃~80℃で混合して乳化状態の原料混合液を得る。混合には、粉物溶解機、高速攪拌機等の混合機を使用できる。
次に、原料混合液を濾過する。原料混合液を濾過することで、不純物を除去し、より滑らかな冷菓を得ることが可能となる。
次に、濾過した原料混合液を50℃~90℃、5~20MPaの条件で均質化する。ここで、均質化を行うことにより、乳化状態がより良好となる。均質化には、ホモゲナイザー等を使用できる。
次に、均質化した原料混合液を65℃~150℃で殺菌する。殺菌には、プレート殺菌機、チューブラー殺菌機、インフュージョン殺菌機、インジェクション殺菌機、バッチ式殺菌機等を使用できる。
更に、殺菌した原料混合液を0~10℃に冷却し、4~24時間程度エージングさせる。エージングとは、原料混合液中の脂肪球を結晶化し、乳化被膜を安定化させることであり、ここで、エージングを行うと原料混合液の乳化状態の物性が安定化する傾向にある。
上記過程を経た乳化液を、連続式フリーザーを用いてフリージングし、半凍結液を得る。
連続式フリーザーとは、連続的に冷却と攪拌を行い、アイスクリーム類を製造するフリーザーのことをいう。
また、フリージングとは、原料混合液を冷却すると同時に適量の空気を混入して、気泡や氷の粒を乳化液中に分散させることをいう。原料混合液をフリージングすることで、適度な空気と微細な氷結晶を有する半凍結液を得ることができる。
本技術の冷菓を製造するにあたり、フリージング後の充填温度は原料混合液の凝固点(凍結点)によるが、-9~-3℃とすることが好ましい。また、オーバーラン値は10~100%程度が好ましく、より好ましくは30~70%程度であり、より好ましくは30~50%である。これにより、氷結晶が微細で滑らかな組織を有する冷菓が得られる傾向にある。
なお、本技術における原料液の凝固点(凍結点)温度の測定方法は、原料液である液状の冷菓原料ミックスを雰囲気温度-35℃で冷却しながら、冷菓原料ミックスの温度を経時的に測定する(例えば、特許文献3:特開2018-161075号公報参照)。
以上のようにして得られた半凍結液を、容器に充填し、包装した後硬化させると本技術の冷菓を最終製品の状態で得ることができる。
3.本技術の別の側面
乳化剤添加によって原料混合液が乳化されても、フリージング工程時に過度な解乳化が生じる場合がある。すなわち、選択する乳化剤によってはチャーニング制御に適さないものも存在する。一般的に、チャーニング制御のためには合成系の乳化剤(具体的には、脂肪酸エステル)が使用されている。一方で、本技術の低DE澱粉分解物は、このような脂肪酸エステルの構造とも全く異なるので、フリージング工程を経ても低DE澱粉分解物にチャーニング制御作用があることは全くの予想外である。
後記実施例に示すように、本技術の低DE澱粉分解物は、冷菓のチャーニングを制御することが可能であり、これにより脂肪リッチの冷菓を提供することも可能である。本技術の低DE澱粉分解物は、上述したように、冷菓におけるチャーニング制御作用(例えば、脂肪塊を所定の質量範囲に制御すること、脂肪球の解乳化を抑制すること、脂肪球の凝集を抑制させること等)が期待でき、これを目的として冷菓、その原料混合液(ミックス)、又は冷菓原料に使用できる。さらに、本技術の低DE澱粉分解物を冷菓に用いることで、冷菓の滑らかさが良好になりやすい。さらに、本技術であれば、合成系の乳化剤の使用を実質的にフリーにすることもできる。
なお、本技術の別の側面において、上述した<1.本技術に係る冷菓>及び<2.本技術に係る冷菓の製造方法>と共通する構成については説明を省略する。例えば、本技術の別の側面で用いられる低DE澱粉分解物、この好適なDE範囲、好適な含有量、好適な使用(組み合わせやその比等)等は、上述のとおりであり、その他高DE澱粉分解物や卵加工品等も上述のとおりである。
また、本技術の低DE澱粉分解物は、有効成分として、上述したような、チャーニング制御作用やこれを期待する組成物又は製剤等の各種組成物に含有させることができ、これら各種組成物は製剤としても使用できる。
また、本技術は、上述したように、冷菓のチャーニングを制御する等の目的のために用いる、本技術の低DE澱粉分解物(さらに高DE澱粉分解物等との併用も可能)又はこれらの使用を提供することができる。また、本技術の低DE澱粉分解物(さらに高DE澱粉分解物等との併用も可能)は、上述したチャーニング制御方法等の各種方法に使用する有効成分として用いることができる。 また、本技術の低DE澱粉分解物(さらに高DE澱粉分解物等との併用も可能)は、上述した作用を有する又は上述した使用目的のための各種製剤又は各種組成物等の製造のために使用することができる。
本技術は、以下の構成を採用することができる。
〔1〕
デキストロース当量(DE)15以下である低DE澱粉分解物を含有する、冷菓。
〔2〕
前記冷菓が、アイスクリーム、アイスミルク、又はラクトアイスである、前記〔1〕記載の冷菓。
〔3〕
前記冷菓が、乳脂肪分が3%以上の冷菓である、前記〔1〕又は〔2〕記載の冷菓。好適には前記冷菓が、(a)乳脂肪分が3%以上8%未満の冷菓である、又は、(b)乳脂肪分が8%以上の冷菓である。より好適には、前記冷菓が、(a)乳脂肪分が3%以上8%未満、かつ、乳固形分10%以上15%未満の冷菓である、又は、(b)乳脂肪分が8%以上、かつ、乳固形分15%以上の冷菓である。
〔4〕
さらに、デキストロース当量(DE)20~40の高DE澱粉分解物を含有する、前記〔1〕~〔3〕のいずれかの冷菓。
〔5〕
前記冷菓が、平均脂肪粒量が3~14g(/冷菓100g)のもの又は平均脂肪粒量が10~14g(/冷菓100g)のものである、前記〔1〕~〔4〕のいずれかの冷菓。〔6〕
前記低DE澱粉分解物が、固形分換算として、0.5~10質量%含有する、前記〔1〕~〔5〕のいずれかの記載の冷菓。
〔7〕
前記低DE澱粉分解物と前記高DE澱粉分解物との質量含有割合が、前記低DE澱粉分解物1質量部に対して、前記高DE澱粉分解物0.1~30質量部である、前記〔4〕~〔6〕のいずれかの冷菓。
〔8〕
さらに、卵加工品を含有する、前記〔1〕~〔7〕のいずれかの冷菓。前記卵加工品は、好適には、酵素分解卵黄である。
〔9〕
冷菓の前記低DE澱粉分解物が、油脂1質量部に対して、0.002~4質量部を含むものである、前記〔1〕~〔8〕のいずれかの冷菓。
〔10〕
デキストロース当量(DE)15以下である低DE澱粉分解物を含有する、脂肪リッチの冷菓用のチャーニング制御剤。好適には、脂肪リッチの冷菓は、乳脂肪分5%以上のものである。
〔11〕
さらに、高DE澱粉分解物及び/又は卵加工品を含む、脂肪リッチの冷菓用のチャーニング制御剤。
〔12〕
デキストロース当量(DE)15以下である低DE澱粉分解物を使用する、脂肪リッチの冷菓用のチャーニング制御方法。さらに高DE澱粉分解物及び/又は卵加工品を使用することが好適である。
〔13〕
前記〔1〕~〔9〕のいずれかの冷菓の製造方法。
〔14〕
平均脂肪粒量が3~14g(/冷菓100g)のもの又は平均脂肪粒量が10~14g(/冷菓100g)のものになるように冷菓を調製する、冷菓の製造方法又は当該製造方法にて得られた冷菓。当該冷菓は、前記〔1〕~〔9〕のいずれかの冷菓が好適である。
〔15〕
冷菓のチャーニングを制御するために、デキストロース当量(DE)15以下である低DE澱粉分解物を、原料混合液(ミックス)に配合する原料混合液の調製する調合工程を含む、冷菓の製造方法又は当該製造方法にて得られた冷菓。当該冷菓は、前記〔1〕~〔9〕のいずれかの冷菓が好適である。
以下、製造例、実施例等に基づいて本技術をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する製造例、実施例等は、本技術の代表的な実施例等の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
<試験例1:アイスクリーム>
〔製造例1〕
下記表1の比較例1、実施例1~6の配合組成で、原料混合液(ミックス)を製造した。この原料混合液から、フリージング工程を経て、アイスクリームを得た。得られた各アイスクリームの平均脂肪粒量を<平均脂肪粒量(/冷菓100g)の測定方法>にて測定した。なお、比較例1は、コントロールであり、低DE澱粉分解物を添加しない以外は、実施例1~6と同じ成分の配合組成である。
〔製造例2〕
下記表2の比較例2、実施例7の配合組成で、原料混合液(ミックス)を製造した。この原料混合液から、フリージング工程を経て、アイスクリームを得た。得られた各アイスクリームの平均脂肪粒量を<平均脂肪粒量(/冷菓100g)の測定方法>にて測定した。なお、比較例2は、コントロールであり、低DE澱粉分解物を添加しない以外は、実施例7と同じ成分の配合組成である。
〔各原料〕
なお、表1及び表2中の原料粉あめ(DE27)*1、低DE澱粉分解物(DE9)*2、低DE澱粉分解物(DE10)*3の各配合量は、固形分換算したときの数値である。表1及び表2中の原料粉あめ(DE27)*1は、商品名K-SPD(固形分96%:昭和産業社製)である。低DE澱粉分解物(DE9)*2は、商品名VIANDEX-BH(固形分96.3%:昭和産業社製)である。低DE澱粉分解物(DE10)*3は、商品名マックス2000N(固形分95.3%:松谷化学工業社製)である。上記<デキストロース当量(DE)及びその測定方法>にて測定して求めることができる。また、K-SPDとVIANDEX-BHは、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉をベースにしており、マックス2000Nはタピオカ澱粉をベースにしている。
また、表1及び表2中の卵加工品*4は、商品名ヨークレートLM(太陽化学)である。当該卵黄加工品は、酵素分解卵黄であり、酵素分解卵黄としてリゾ化卵黄中のホスファチジルエタノールアミンの脂肪酸組成におけるアラキドン酸(C20:4)とドコサヘキサエン酸(C22:6)の合計が25%以上のものを使用した。
〔製造例1〕及び〔製造例2〕において、各アイスクリームの製造は常法の手順に基づいて行った。
具体的には、まず原料を加温した溶解水に混合溶解し、70~75℃で1時間加熱保持した。加熱保持後、85℃まで達温させ、二段均質機(Sanmaru Machinery社製)を使用して、2次圧:5MPa、全圧:15MPaで均質化した。これを10℃以下で1昼夜エージングした。
こうして得られた原料混合液を、連続式フリーザーを使用してフリージングした。フリーザーは、SOREN社製 CS200で、30ダッシャーを使用した。フリーザーの排出温度は、-7.5℃~-4.0℃の範囲で変化させた。オーバーランはいずれも40%とした。
このようにしてフリージングしたものを130mLのカップに入れ、-35℃の冷凍庫で硬化させてアイスクリームを得た。得られたアイスクリームを-35℃の冷凍庫で48時間保存した後、-18℃に調温した。
〔製造例1〕及び〔製造例2〕の冷菓の平均脂肪粒量(/冷菓100g)を<平均脂肪粒量(/冷菓100g)の測定方法>にて測定した。
<平均脂肪粒量(/冷菓100g)の測定方法の具体例>
具体的には、冷菓の原料混合液を均質化、殺菌し、エージングした液状アイスミックスを得、このフリージングにバッチ式フリーザー(富繁産業社性のTBF-5LS(5Lバッチ式アイスクリームフリーザー))を使用した。あらかじめシリンダー内を-25℃以下に冷却したところに調整した液状ミックス(5℃標準)を2kg投入し、フリージングした。フリーザーの冷却はONのまま1時間フリージングし続け、1h経過後、出口よりアイスミックスを取り出した。-10~0℃の雰囲気下で、取り出したアイスミックスを200g毎に4つに分注し、4つの試料1~4を作製した。0~25℃の雰囲気下で、この各試料1~4を冷水(0~10℃)300mLで混合して溶解液1~4を得た。0~25℃の雰囲気下で、各溶解液1~4を、その溶解液中の脂肪粒を溶かさないようにしながら、100メッシュ(目開き150μm)の篩に通させた。そして、この冷水(0~10℃)に不溶で、この篩の上に残った脂肪粒について、その残ったものの表面にキッチンペーパーを接触させ水分を吸収させた。水分を吸収させた後に、脂肪粒が残った篩ごとの質量を測定した。あらかじめ篩の風袋を測定しておき、篩ごと測定したものから差し引いて篩上に残ったものを算出した。
この冷水に不溶で篩上に残ったものの各試料1~4の質量を得、各試料1~4の質量を合計し、その平均を、平均脂肪粒量(/冷菓100g)として算出した。なお、表1中で、実施例3における試料4は試料の調整にミスがあったため(表中で「-」)、試料1~3の3つの試料の質量の平均を算出した。
表1に示す、製造例1において得られたアイスクリームの組成は、乳脂肪分(MF)8.0%、無脂乳固形分(SNF)7.0%、全固形分(TS)35.5%である。
表2に示す、製造例2において得られたアイスクリームの組成は、乳脂肪分(MF)8.0%、無脂乳固形分(SNF)7.0%、全固形分(TS)35.5%である。
なお、乳脂肪分(MF)、無脂乳固形分(SNF)及び全固形分(TS)は、乳等省令の記載の各測定方法に従って測定し算出した。
<試験例2:アイスミルク>
下記表3の比較例3、実施例8~13の配合組成で、原料混合液(ミックス)を製造した。この原料混合液から、フリージング工程を経て、アイスミルクを得た。得られた各アイスミルクの平均脂肪粒量を<平均脂肪粒量(/冷菓100g)の測定方法>にて測定した。なお、比較例3は、コントロールであり、低DE澱粉分解物を添加しない以外は、実施例8~13と同じ成分の配合組成である。
〔各原料〕
なお、表3中の原料粉あめ(DE27)*1、低DE澱粉分解物(DE9)*2、低DE澱粉分解物(DE10)*3、植物性油脂*5の各配合量は、固形分換算したときの数値である。原料粉あめ(DE27)*1、低DE澱粉分解物(DE9)*2、低DE澱粉分解物(DE10)*3、卵加工品*4は、上述した<試験例1:アイスクリーム>で使用した〔各原料〕と同様のものを使用した。植物性油脂*5は、メラノメロー200使用した。
〔製造例3〕において、各アイスミルクの製造は常法の手順に基づいて行った。
具体的には、まず原料を加温した溶解水に混合溶解し、70~75℃で1時間加熱保持した。加熱保持後、85℃まで達温させ、二段均質機(Sanmaru Machinery社製)を使用して、2次圧:5MPa、全圧:15MPaで均質化した。これを10℃以下で1昼夜エージングした。
こうして得られた原料混合液を、連続式フリーザーを使用してフリージングした。フリーザーは、SOREN社製 CS200で、30ダッシャーを使用した。フリーザーの排出温度は、-7.5℃~-4.0℃の範囲で変化させた。オーバーランはいずれも40%とした。
このようにしてフリージングしたものを130mL(200g)のカップに入れ、-35℃の冷凍庫で硬化させてアイスミルクを得た。得られたアイスミルクを-35℃の冷凍庫で48時間保存した後、-18℃に調温した。
〔製造例3〕の冷菓の平均脂肪粒量(/冷菓100g)を<平均脂肪粒量(/冷菓100g)の測定方法>にて測定した。具体的には、上述した<試験例1:アイスクリーム>の<平均脂肪粒量(/冷菓100g)の測定方法の具体例>と同様の手順にて行った。前記<平均脂肪粒量(/冷菓100g)の測定方法の具体例>と同様に、4つの試料1~4を作製し、最終的に、冷水に不溶で篩上に残ったものの各試料1~4の質量を得、各試料1~4の質量を合計し、その平均を、平均脂肪粒量(/冷菓100g)として算出した。
表3に示す、製造例3において得られたアイスミルクの組成は、乳脂肪分(MF)3.0%、植物性油脂5.0%、無脂乳固形分(SNF)7.0%、全固形分(TS)35.5%である。
なお、乳脂肪分(MF)、無脂乳固形分(SNF)及び全固形分(TS)は、乳等令の記載の各測定方法に従って測定し算出した。乳脂肪分と植物性油脂の合計量を、冷菓中の油脂の含有量として算出した。


<結果>
製造例1~2(表1~2)において、低DEの澱粉分解物を使用した冷菓のときに、100メッシュ篩上に残った平均脂肪粒量(実施例1~7)が、コントロール冷菓の平均脂肪粒量と比較して1g以上減少した。また、実施例1~7において、実施例1~7の各平均脂肪粒量/コントロールの平均脂肪粒量の比は、10%以上低減できた。また、実施例1~7の平均脂肪粒量の絶対値は、10~13g/冷菓100gの範囲内であった。
また、製造例3(表3)において、低DEの澱粉分解物を使用した冷菓のときに、100メッシュ篩上に残った平均脂肪粒量(実施例8~13)が、コントロール冷菓の平均脂肪粒量と比較して1g以上減少した。また、実施例8~13において、実施例8~13の各平均脂肪粒量/コントロールの平均脂肪粒量の比は、9%以上低減できた。また、実施例8~13の平均脂肪粒量の絶対値は、10.0~11.5g/冷菓100gの範囲内であった。
すなわち、表1~3の実施例1~13に示すように、本技術の冷菓は、低DE澱粉分解物を用いることで、冷菓中の脂肪球の解乳化を抑制すること又は脂肪球の凝集を抑制させること等で、篩の未通過物(通過できなかった大きめの脂肪塊)が減少したと本発明者は考えた。このことから、低DE澱粉分解物を用いることで、冷菓のチャーニング(脂肪塊の発生)を制御することができることが認められた。
また、実施例1~6の冷菓は、比較例1の冷菓を基準としたときに、これと口当たりの滑らかさは同等程度以上に良好であり、製品不良も少なく同等程度以上に良好であった。
また、実施例8~13の冷菓は、比較例3の冷菓を基準としたときに、これと口当たりの滑らかさは同等程度以上に良好であり、製品不良も少なく同等程度以上に良好であった。
また、実施例7の冷菓は、比較例2の冷菓を基準としたときに、これと口当たりの滑らかさは同等程度以上に良好であり、製品不良も少なく同等程度以上に良好であった。
風味や食感の付与に関する一般的に冷菓に使用されている食材として、コーヒーエキスなどのエキスを原料に使用した場合でも、低DE澱粉分解物を用いることで、適切なチャーニング制御効果があると考える。
低DE澱粉分解物は、水あめDE27の約半分のDE15以下であれば、冷菓に対してチャーニング抑制に効果があると本発明者は考えた。具体的には、低DE澱粉分解物は、表1~表3に示すように、澱粉分解物がDE10以下のものがよりチャーニング制御に効果がある。また、前記低DE澱粉分解物1質量部に対して、前記高DE澱粉分解物は、実施例1,4,8,11で9質量部、実施例2,5,9,12で4質量部、実施例3,10で1.5質量部、実施例6,13で2質量部、実施例7で4質量部であった。
また、油脂1質量部に対して、低DE澱粉分解物を0.1~0.5質量部で冷菓に使用することがチャーニング制御の観点、及び糖の甘みやコストの観点から良好である。このときの油脂の含有量は、試験例1のアイスクリームでは、乳脂肪分(8%)と植物性油脂(0%)との合計の含有量(8%)であり、試験例2のアイスミルクでは、乳脂肪分(3%)と植物性油脂(5%)との合計の含有量(8%)である。
また、油脂1質量部に対して、低DE澱粉分解物及び高DE澱粉分解物は、実施例1~5、実施例7及び実施例8~12が1.25質量部、実施例6及び実施例13が1.5質量部であることから、低DE澱粉分解物及び高DE澱粉分解物を0.5~3質量部で使用することが、チャーニング制御の観点、及び糖の甘みやコストの観点からより良好である。
また、試験例1のアイスクリームのような、乳固形分15.0%以上かつ乳脂肪分8.0%以上の冷菓の場合、乳脂肪分1質量部に対して、低DE澱粉分解物を0.1~0.5質量部で使用することがチャーニング制御の観点、及び糖の甘みやコストの観点から良好である。また、当該アイスクリームのような冷菓の場合、乳脂肪分1質量部に対して、「低DE澱粉分解物及び高DE澱粉分解物」は、実施例1~5及び実施例7が1.25質量部、実施例6が1.5質量部であることから、「低DE澱粉分解物及び高DE澱粉分解物」を0.5~3質量部で使用することが、チャーニング制御の観点、及び糖の甘みやコストの観点からより良好である。
また、試験例2のアイスミルクのような、乳固形分10.0%以上15.0%未満かつ乳脂肪分3.0%以上8.0%未満の冷菓の場合、乳脂肪分1質量部に対して、低DE澱粉分解物を0.3~1.4質量部で使用することがチャーニング制御の観点、及び糖の甘みやコストの観点から良好である。
また、当該アイスミルクのような冷菓の場合、乳脂肪分1質量部に対して、「低DE澱粉分解物及び高DE澱粉分解物」は、実施例8~12が3.33質量部、実施例13が4質量部であることから、「低DE澱粉分解物及び高DE澱粉分解物」を0.5~3質量部で使用することが、チャーニング制御の観点、及び糖の甘みやコストの観点からより良好である。
また、製造例2(表2)において、風味や食感の付与に関する一般的に冷菓に使用されている食材として、コーヒーエキスを原料に使用した場合でも、低DE澱粉分解物を用いることで、適切なチャーニング制御効果があった。
さらに、高DE澱粉分解物及び/又は酵素分解卵黄を原料として併用させることで、より良好に冷菓のチャーニングを制御することができると本発明者は考えた。
さらに、いままで合成系の乳化剤を冷菓のチャーニング制御のために使用していたが、実施例1~7及び実施例8~13に示すように、このような合成系ではない、本技術の低DE澱粉分解物を冷菓に用いることで、冷菓のチャーニングを制御できるようになった。このように、本技術であれば、合成系の乳化剤を実質的にフリーにすることもできるようになった。合成系の乳化剤は脂肪酸エステルがよく使用されているが、低DE澱粉分解物はこの合成系の脂肪酸エステルとは全くことなる成分及び構造である。また、低DE澱粉分解物は、フリージング後の冷菓中でチャーニング制御作用が認められる。低DE澱粉分解物は、冷菓のチャーニング制御作用を有しており、このことを今回明らかにでき、新たな冷菓分野での利用及び用途を提供できるものである。
本技術であれば、少なくとも乳固形分を含む冷菓のチャーニング(脂肪塊の発生)を制御することができる。より具体的には、本技術であれば、試験例1のアイスクリームのような、乳固形分15.0%以上かつ乳脂肪分8.0%以上の冷菓であっても、また、試験例2のアイスミルクのような、乳固形分10.0%以上15.0%未満かつ乳脂肪分3.0%以上8.0%未満の冷菓であっても、チャーニング(脂肪塊の発生)を制御することができる。また、本技術であれば、種々の食材(例えばエキス)を利用しやすく、口当たりの滑らかさは良好であり、製品不良も少ないという利点がある。

Claims (6)

  1. デキストロース当量(DE)5~5の低DE澱粉分解物と、
    デキストロース当量(DE)20~40の高DE澱粉分解物と、
    を含有し、
    前記低DE澱粉分解物及び前記高DE澱粉分解物の含有質量割合が、固形分換算として、前記低DE澱粉分解物1質量部に対して前記高DE澱粉分解物が1~10質量部であり、
    乳脂肪分が、3%以上であり、
    前記高DE澱粉分解物を、6質量%~9質量%含有し、
    前記乳脂肪分1質量部に対して前記低DE澱粉分解物が0.01~2質量部である、冷菓。
  2. 前記冷菓の平均脂肪粒量が、10~14g(/冷菓100g)である、請求項1に記載の冷菓。
  3. 前記低DE澱粉分解物を、0.5~10質量%含有する、請求項1又は2に記載の冷菓。
  4. 前記冷菓が、アイスクリーム、アイスミルク、又はラクトアイスである、請求項1~のいずれか一項に記載の冷菓。
  5. 前記冷菓が、卵加工品、果汁、果肉、ジャム類、野菜類、コーヒー類、茶類、チョコレート類、及びキャラメル類からなる群より選ばれるいずれか一種以上含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の冷菓。
  6. 前記冷菓の油脂含有量が、8%以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の冷菓。
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