本開示は、経口医薬組成物、特に、固体剤形(SDF)を含み、SDFはSADを含む、経口組成物に関する。開示された経口医薬組成物の一部の実施形態は、a)良好な物理的安定性(例えば、活性薬剤の相分離/結晶化に関して)、b)急速な溶解速度、c)過飽和の活性薬剤の持続、d)高い活性薬剤ローディング、またはそれらの任意の組合せを示す。有利には、経口医薬組成物のある特定の実施形態は、最小の投薬単位数を使用して、低溶解度の活性薬剤の改善された経口バイオアベイラビリティをもたらす。
I.定義および略語
以下の用語および略語の説明は、本開示をより十分に説明し、本開示の実施において当業者を導くために提供される。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」は、「含む(including)」を意味し、「1つの(a)」もしくは「1つの(an)」または「その(the)」という単数形は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、「1つの(a)」または「1つの(an)」という不定冠詞は、通常、「少なくとも1つの」を意味する。「または」という用語は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、記述された択一的要素の単一の要素または2つもしくはそれ以上の要素の組合せを指す。
別段の説明がない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似のまたは均等な方法および材料を本開示の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料を下記に記載する。材料、方法、および例は、説明的なものにすぎず、限定することを意図したものではない。本開示の他の構成は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
数値範囲の開示は、別段の注記がない限り、端点を含め、その範囲内の各離散点を指すと理解すべきである。別段の指示がない限り、本明細書または特許請求の範囲で使用される構成成分の分量、分子量、百分率、温度、時間などを表す全ての数は、「約」という用語によって修飾されていると理解すべきである。数値範囲の開示において使用される「約」という用語は、記述された値からの逸脱が、その逸脱が測定の変動性の結果であり、かつ/または同じもしくは類似の特性の生成物を生じる限りにおいて許容されることを示す。よって、別段の黙示的もしくは明示的な指示がない限り、または当業者が文脈を適切に理解してより確定的な解釈をする場合を除き、記載された数値パラメーターは、求められる所望の特性および/または当業者に公知の標準的な試験条件/方法下での検出限界に依存し得る近似値である。実施形態を論じられた先行技術と直接的かつ明示的に区別する場合、実施形態番号は、「約」という語が記載されていない限り、近似ではない。
種々の構成成分、パラメーター、操作条件等の選択肢が本明細書に記載されているが、それは、それらの選択肢が必ずしも均等であり、かつ/または等しく良好に機能することを意味するものではない。また、別段の記述がない限り、選択肢が好ましい順序で列挙されていることを意味するものでもない。
化学における一般用語の定義は、Richard J.Lewis,Sr.(編)、Hawley’s Condensed Chemical Dictionary、John Wiley & Sons,Inc.出版、1997(ISBN0-471-29205-2)に見出される。本開示の種々の実施形態の検討を容易にするために、以下の具体的な用語の説明が提供される:
活性:本明細書で使用される場合、「活性成分」、「活性物質」、「活性構成成分」、「活性医薬成分」および「活性薬剤」という用語は、ヒトを含むがこれに限定されない哺乳動物に所望の生理学的効果を及ぼす構成成分と同じ意味を有する。
非晶質:非結晶質。非晶質固体は、明確な結晶質構造および明瞭な融点を持たない。
アスペクト比:粒子に関して本明細書で使用される場合、「アスペクト比」という用語は、長さと幅の比を指す。長さは、粒子上の2点間の最大直線距離と定義される。幅は、長さの中点において、長さを画成する線に垂直な線上で取得される。粒子がねじれているかまたは折り畳まれている場合、輪郭長(すなわち、最大の物理的伸長時の長さ)の測定値が使用される。粒子のアスペクト比は、光学または電子顕微鏡技法によって、例えば、個々の粒子を拡大して可視化し、測定することができる走査電子顕微鏡法によって測定することができる。ImageJオープンソースソフトウェアを使用して、低いアスペクト比、例えば、<10のアスペクト比を有する粒子のカウントを自動化することができる。
濃度持続ポリマー(CSP):in vivoまたはin vitroの使用環境(例えば、対象の胃腸管、模擬腸液、モデル絶食時十二指腸液など)においてCSPを含まないベンチマーク組成物に対して活性薬剤の初期に増大した溶解濃度をもたらし、同じ使用環境においてベンチマーク組成物に対して活性薬剤のより高い溶解濃度を長期間(例えば、少なくとも30分、例えば30~90分間)にわたって維持するポリマー。溶解濃度は、任意の好適な方法によって判定することができる。例えば、in vitroでの溶解濃度は、活性薬剤によって吸収される波長での紫外可視分光法によって決定することができる。既知の濃度の活性薬剤を使用した較正曲線を比較のために作成する。
分散体:粒子、例えば、活性薬剤の粒子が異なる組成の連続相内に分布している系。固体分散体は、少なくとも1つの固体構成成分が別の固体構成成分の全体に分布している系である。分子分散体は、少なくとも1つの構成成分が別の構成成分の全体に分子レベルで均質にまたは実質的に均質に分散している系である。
添加剤:医薬組成物において添加物として使用される生理学的に不活性な物質。本明細書で使用される場合、添加剤は、医薬組成物の粒子内に組み入れることができ、または医薬組成物の粒子と物理的に混合することができる。添加剤は、例えば、活性薬剤を希釈するためおよび/または医薬組成物の特性を改変するために使用することができる。添加剤の例は、ポリビニルピロリドン(PVP)、トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(ビタミンE TPGS、またはTPGSとしても知られている)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、トレハロース、炭酸水素ナトリウム、グリシン、クエン酸ナトリウム、およびラクトースを含むがこれらに限定されない。
顆粒外:顆粒の外部。例えば、顆粒の一部ではないポリマーまたは添加剤と混合された顆粒。
ガラス転移温度、Tg:材料が過冷却液体からガラスに転移する温度。Tgは、例えば、示差走査熱量測定(DSC)によって決定することができる。DSCは、試料および基準物質の温度を上げるのに必要な熱量の差を温度の関数として測定する。相転移、例えば非晶質状態から結晶質状態への変化の間に、必要な熱量は変化する。結晶質の構成成分を有さない固体については、単一のガラス転移温度は、その固体が均質であるかまたは分子分散体であることを示す。一般的に、ガラスが試料の温度を一定の速度、典型的には1から10℃/分で増加させることによって試験された場合、熱容量の比較的急激な増加がTgの近傍で観察される。Tgはまた、動的機械分析装置(DMA)、膨張計によって、または誘電分光法によって測定することができる。各技法によって測定されたTg値は、変動し得るが、一般的に、互いに10~30℃の範囲内に入る。例えば、DMAによって測定されたTgは、多くの場合、DSCによって測定されたTgよりも10~30℃高い。
顆粒状:顆粒状粒子は、100~600μmの平均直径を有する。本明細書で使用される場合、「平均直径」は、複数の顆粒の算術平均直径を意味する。
顆粒状ブレンド:2つまたはそれ以上の構成成分を含む複数の顆粒。各顆粒は、1つの構成成分または2つ以上の構成成分を含むことができる。
顆粒内ブレンド:各顆粒が2つまたはそれ以上の構成成分を含む、例えば、各顆粒が活性薬剤およびポリマーを含む、複数の顆粒。
ローディング:本明細書で使用される「ローディング」という用語は、固体非晶質分散体、噴霧乾燥分散体、または固体剤形中の活性薬剤の重量百分率を指す。
Log P:活性薬剤のLog P値は、2つの相が互いに平衡状態にあるときの(1)オクタノール相中の活性薬剤濃度と(2)水相中の活性薬剤濃度の比の常用対数と定義され、親油性の広く認められた尺度である。Log P値は、実験的に測定するかまたは当技術分野で公知の方法を使用して計算することができる。Log P値は、オクタノール中の薬物溶解度と水中の薬物溶解度の比を決定することによって実験的に推定することができる。Log P値に計算値を使用する場合、任意の一般的に認められたLog P計算方法を使用して計算された最高値が使用される。計算されたLog P値は、多くの場合、計算方法によって、例えばClog P、Alog P、およびMlog Pと呼ばれる。Log P値はまた、フラグメント化法、例えばCrippenのフラグメント化法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.、27、21(1987));Viswanadhanのフラグメント化法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.、29、163(1989));またはBrotoのフラグメント化法(Eur.J.Med.Chem.-Chim.Theor.19、71(1984))を使用して推定することができる。一部の実施形態では、Log P値は、Crippen、Viswanadhan、およびBrotoのフラグメント化法を使用して推定された平均値を使用することによって計算される。
マトリックス:本明細書で使用される場合、「マトリックス」または「マトリックス材料」という用語は、活性薬剤が混合または分散されるポリマー材料を指す。
溶融温度、Tm:化合物が大気圧で固体から液体に状態変化する温度。Tmは、例えば、示差走査熱量測定(DSC)によって決定することができる。DSCは、試料および基準物質の温度を上げるのに必要な熱量の差を温度の関数として測定する。相転移、例えば固体状態から液体状態への変化の間に、必要な熱量は変化する。あるいは、Tmは、透明窓および拡大鏡を有する油浴を含む基本的な融点装置により決定することができる。固体の複数の粒を細いガラス管に入れ、油浴に部分的に浸漬する。油浴を加熱し、撹拌して、粒が溶融する温度を手動または自動検出によって観察することができる。
PMMAMA:ポリ[(メタクリル酸メチル)-co-(メタクリル酸)]。
SDD:噴霧乾燥分散体。
SDF:固体剤形。
固体非晶質分散体(SAD):ポリマー中に分散した活性薬剤を含み、活性薬剤は非晶質または実質的に(少なくとも80wt%)非晶質である、固体分散体。SADは、多くの場合、噴霧乾燥プロセスによって製造される。別段の規定がない限り、SADおよび噴霧乾燥分散体(SDD)という用語は、本開示において互換的に使用される。
過飽和:溶液が所与の温度での溶媒中の溶質の平衡溶解濃度よりも高い濃度の溶解溶質を含む状態。
II.経口医薬組成物
開示された経口医薬組成物の実施形態は、(i)非晶質または実質的に非晶質(すなわち、少なくとも80wt%非晶質)形態の難水溶性活性薬剤および1つまたはそれ以上の分散ポリマーを含むマトリックス材料を含むSADと、(ii)1つまたはそれ以上の濃度持続ポリマー(CSP)とを含み、1つまたはそれ以上のCSPは、SAD内に分散しておらず、分散ポリマーおよびCSPは、異なるポリマーである、固体剤形(SDF)を含む。一部の実施形態では、SDFは、非晶質形態の難水溶性活性薬剤と、CSPポリマー単独、マトリックス分散ポリマー単独、または2つのポリマーの混合物とを含むSADを含む基準SDF中の活性薬剤ローディングよりも少なくとも50%高い活性薬剤ローディングを有する。有利には、開示されたSDFのある特定の実施形態はまた、過飽和の溶解活性薬剤濃度を得るための急速な崩壊および/または長期間にわたる過飽和の活性薬剤濃度の持続をもたらす。
とりわけ、前述の利益は、SDF全体に機能性を戦略的に分布させることによって達成される。従来のSDFは、最適化されたSADを含み、その後、これを性能に害を及ぼすことなく剤形に組み入れる。従来のSDFは、典型的には、最適化されたSAD、または活性薬剤および1つまたはそれ以上のポリマーの物理的混合物を含み、これを添加剤と組み合わせて、SDFを形成する。対照的に、開示されたSDFの実施形態は、SADおよびCSPを含み、これらを組み合わせてSDFとする。SDF全体に機能性(例えば、急速な崩壊と濃度持続)を分布させることによって、より高い活性薬剤ローディングおよびより高い物理的安定性を有するSDFを提供することができる。
固体非晶質分散体
固体非晶質分散体は、非晶質または実質的に非晶質(すなわち、少なくとも80wt%非晶質)形態の難水溶性活性薬剤と、1つまたはそれ以上の分散ポリマーを含むマトリックス材料とを含む。SADは、噴霧乾燥分散体とすることができる。
難水溶性活性薬剤は、非晶質状態および/または結晶質状態で低い水溶解度、すなわち、生理学的に適切なpH範囲1~8の少なくとも一部にわたって≦1mg/mLの水溶解度を有する。一部の実施形態では、難水溶性活性薬剤は、生理学的に適切なpH範囲1~8の少なくとも一部にわたって≦1mg/mLまたは≦0.1mg/mLの水溶解度、例えば0.0001~1mg/mLまたは0.0001~0.1mg/mLの水溶解度を有する。前述の実施形態のいずれかまたは全てでは、活性薬剤は、結晶質状態でよりも非晶質状態で溶解度が高くなり得る。一部の実施形態では、活性薬剤は、高い非晶質と結晶質の溶解度の比、例えば>5、>10、またはさらに>20の非晶質溶解度と結晶質溶解度の比を有する。
結晶化の推進力は、難水溶性活性薬剤の溶融温度(Tm)とそのガラス転移温度(Tg)の比である。高い融点を有する化合物は、結晶化する傾向が強く、低いTg値を有する化合物は、分子拡散に対して低い速度論的障壁を有する。したがって、Tm/Tg比(K/K)は、化合物の結晶化する傾向の指標となる。より高い比を有する化合物は、より結晶化しやすい。上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、活性薬剤は、≧1.2のTm/Tg比、例えば≧1.3、≧1.35、≧1.4、≧1.5、または≧1.6のTm/Tg比、例えば1.2~2.0、1.3~1.6、1.35~1.6、または1.4~1.6のTm/Tg比を有することができる。
Log Pは、難水溶性活性薬剤の親油性の尺度である。上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、難水溶性活性薬剤は、≧2および/または≦10のLog P、例えば1~10、2~10、3~10、4~10、または5~10の範囲内のLog Pを有することができる。
一部の実施形態では、難水溶性活性薬剤は、「急速結晶化物質(rapid crystallizer)」である。一部の実施形態では、急速結晶化物質は、≧1.3のTm/Tg比、例えば≧1.35または≧1.4のTm/Tg比、および1~10の範囲内のLog Pを有する。ある特定の実施形態では、急速結晶化物質は、1.4~2.0または1.4~1.6の範囲内のTm/Tg比、および1~7、2~7、3~7、4~7、または5~7の範囲内のLog Pを有する。
本開示による活性薬剤の非限定的な例は、難水溶性薬物、栄養補助食品、例えばビタミンまたはプロビタミンA、B、C、D、E、PPおよびそれらのエステル、カロテノイド、抗ラジカル物質、ヒドロキシ酸、防腐剤、色素沈着または炎症に作用する分子、生物学的抽出物、酸化防止剤、細胞および細胞小器官、抗生物質、マクロライド、抗真菌薬、イトラコナゾール、ケトコナゾール、抗寄生虫薬、抗マラリア薬、吸着剤、ホルモンおよびそれらの誘導体、ニコチン、抗ヒスタミン薬、ステロイドおよび非ステロイド抗炎症薬、イブプロフェン、ナプロキセン、コルチゾンおよびそれらの誘導体、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、局所麻酔薬、抗ウイルス薬、抗体および免疫系に作用する分子、細胞増殖抑制薬および抗がん剤、脂質低下薬、血管拡張薬、血管収縮薬、アンジオテンシン変換酵素およびホスホジエステラーゼの阻害薬、フェノフィブラートおよびそれらの誘導体、スタチン、ニトレート誘導体および抗狭心症薬、ベータ遮断薬、カルシウム阻害薬、抗利尿薬および利尿薬、気管支拡張薬、アヘン剤およびそれらの誘導体、バルビツール酸塩、ベンゾジアゼピン、中枢神経系に作用する分子、核酸、ペプチド、アントラセン化合物、パラフィン油、ポリエチレングリコール、無機塩、鎮痙薬、胃液分泌抑制剤、クレイ胃ドレッシング剤(clay gastric dressing)およびポリビニルピロリドン、アルミニウム塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、デンプン、ベンゾイミダゾールの誘導体、ならびに前述のものの組合せを含むがこれらに限定されない。本開示のある特定の実施形態における口腔内崩壊錠はまた、グルクロン酸抱合阻害薬、例えば、ピペリンを含むことができる。
本開示による非限定的な例示的な活性成分は、デキストロメトルファン、エルロチニブ、フェキソフェナジン、グアイフェネシン、ロラタジン、シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィル、オランザピン、リスペリドン、ファモチジン、ロペラミド、ゾルミトリプタン、オンダンセトロン、セチリジン、デスロラタジン、リザトリプタン、ピロキシカム、パラセタモール(アセトアミノフェン)、フロログルシノール、ニセルゴリン、メトピマジン、ジヒドロエルゴタミン、ミルタザピン、クロザピン、プレドニゾロン、レボドパ、カルビドパ、ラモトリギン、イブプロフェン、オキシコドン、ジフェンヒドラミン、ラモセトロン、トラマドール、ゾルピデム、フルオキセチン、ヒヨスチアミン、およびそれらの組合せを含む。プラセボ薬製品もまた、本開示の範囲内にあり、開示された組成物のある特定の実施形態における「活性薬剤」とみなすことができる。
固体非晶質分散体(SAD)は、難水溶性活性薬剤およびマトリックス材料、すなわち、活性薬剤が分散した分散ポリマーにより形成される。一部の実施形態では、活性薬剤は、分散ポリマーの全体に均質にまたは実質的に均質に分散している。ある特定の実施形態では、SADは、活性薬剤および分散ポリマーの分子分散体である。
一部の実施形態では、分散ポリマーは、<5%の相対湿度(RH)で≧135℃のTg、例えば5%のRHで135~200℃のTgを有する。上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、分散ポリマーは、≧0.2mol/100g(≧2mmol/g)の酸含有量を有することができる。酸含有量は、ポリマーの単位質量当たりの酸性基(例えば、イオン化可能なプロトン化基)のモル数を指す。一部の実施形態では、分散ポリマーは、≧0.3mol/100g、≧0.4mol/100g、または≧0.5mol/100gの酸含有量を有する。一部の実施形態では、分散ポリマーは、イオン化可能なカルボキシ基を含むポリマーである。分散ポリマーは、低いpH(例えば、pH<4.5)で少なくとも幾分疎水性であるが、より高いpH(例えば、>5.5)でカルボキシ基がイオン化すると水溶性になる。これらの特徴を有する分散ポリマーは、約2の胃内pHでゲルを形成する傾向が低く、腸のより高いpHで容易に溶解する。したがって、分散ポリマーは、腸溶ポリマーであり得る。
上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、マトリックス材料、または分散ポリマーは、ポリ[(メタクリル酸メチル)-co-(メタクリル酸)](PMMAMA)を含むことができる。一部の実施形態では、PMMAMAは、<5%の相対湿度で≧135℃のガラス転移温度(Tg)、例えば<5%のRHで135~200℃または135~190℃の範囲内のTgを有する。ある特定の実施形態では、PMMAMAは、1:0.8から1:2.2の遊離カルボキシル基とエステル基の比を有し、2.5~7mmolの酸/グラムとなる。PMMAMAは、腸管において、例えば、pH≧6で可溶性である。一実施形態では、遊離カルボキシル基とエステル基の比は、1:0.8から1:1.2または1:0.9から1:1.1である。独立した実施形態では、遊離カルボキシル基とエステル基の比は、1:1.8から1:2.2または1:1.9から1:2.1である。PMMAMAは、ほぼ1:1の遊離カルボキシル基とエステル基の比および5.6mmolの酸/グラムの酸含有量を有するEudragit(登録商標)L100、またはほぼ1:2の遊離カルボキシル基とエステル基の比および3.5mmolの酸/グラムの酸含有量を有するEudragit(登録商標)S100(Evonik Nutrition & Care GmbH、Essen、ドイツ)の商品名で販売されている市販のポリマーとすることができる。Eudragit(登録商標)L100およびS100ポリマーは、約0.3wt%のラウリル硫酸ナトリウムを含む。
SADのガラス転移温度は、SAD構成成分、例えば、難水溶性活性薬剤および分散ポリマーのTg値の加重平均であると推定することができる。しかしながら、Tgは、例えば、とりわけ、Couchman-Karasz、Gordon-Taylor、またはFoxの式によって計算されるように、SADの構成成分間の相互作用に応じて、その予測から変動し得る。Tgはまた、一部には、SADが保存される相対湿度(RH)に依存する。一般的に、RH%が増加するにつれて、SADのTgは減少する。SADのTgが減少するにつれて、SAD中の非晶質の難水溶性活性薬剤の相分離および/または結晶化につながる移動は増加する。したがって、SADは、SADの所望の貯蔵寿命または保存期間の間に非晶質の難水溶性活性薬剤の移動および/または結晶化を最小化または防止するのに十分に高いTgを有することが有益である。有利には、SADのTgは、SADが保存される温度よりも高い。例えば、SADが40℃の温度で保存される場合、SADのTgは、保存湿度条件下で40℃よりも高く、それにより、SADの所望の貯蔵寿命または保存期間にわたって移動を阻害または防止することが有益である。Tgが保存温度よりも低い場合、SADは、ゴムまたは液体状態に転移し得る。例えば、SADは、SADの所望の貯蔵寿命または保存期間よりも短い期間でゴムまたは液体状態に転移し得る。一部の実施形態では、SADのTgは、保存温度よりも少なくとも10℃高く、例えば保存温度よりも少なくとも25℃高い、少なくとも50℃高い、またはさらに少なくとも75℃高い。高いTgを有する分散ポリマー、例えばPMMAMAは、高いTgを保持する高い難水溶性活性薬剤ローディングを有するSADの形成を容易にし、それにより、同じ難水溶性活性薬剤ローディングを有するより低いTgを有する分散ポリマーを含むSADに対してSADの物理的安定性を増加させる。一例として、60wt%のエルロチニブおよび40wt%のPMMAMAを含み、PMMAMAが約1:1の遊離カルボキシル基とエステル基の比を有するSADは、75%のRHで71℃のTgを有する。対照的に、PMMAMAの代わりにHPMCAS-HFを含む同等のSADは、75%のRHでわずか28℃のTgを有する。
上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、SADは、少なくとも1つの添加剤をさらに含むことができる。SADは、例えば、1つまたはそれ以上の界面活性剤、薬物錯化剤もしくは可溶化剤、滑沢剤、流動化剤、フィラー、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。一部の実施形態では、SADは、界面活性剤を含む。界面活性剤は、例えば、脂肪酸およびアルキルスルホネートを含め、スルホン化炭化水素およびそれらの塩、例えばドクサートナトリウム(CROPOL)としても知られている1,4-ビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムおよびラウリル硫酸ナトリウム(SLS);ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(PLURONIC、LUTROL)とも呼ばれるポロキサマー;ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ICI Americas Inc.、Wilmington、Del.から入手可能なCREMOPHOR A、BRIJ);ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート、ICIから入手可能なTWEEN);短鎖グリセリルモノ-アルキレート(HODAG、IMWITTOR、MYRJ);ポリオール、例えばグリセリンのモノ-およびジ-アルキレートエステル;非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80、ICIから入手可能なTWEEN80);ポリオキシエチレン20ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20、ICIから入手可能なTWEEN20);ポリエチレン(40または60)水素添加ヒマシ油(例えば、BASFから入手可能なCREMOPHOR RH40およびRH60);ポリオキシエチレン(35)ヒマシ油(BASFから入手可能なCREMOPHOR EL);ポリエチレン(60)水素添加ヒマシ油(Nikkol HCO-60);アルファトコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(ビタミンE TPGS);PEG8カプリル酸/カプリン酸グリセリル(例えば、Gattefosseから入手可能なLABRASOL);ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(例えば、ICIから入手可能なMYRJ)、市販の界面活性剤、例えば塩化ベンゼトニウム(Lonza,Inc.、Fairlawn、N.J.から入手可能なHYAMINE1622);LIPOSORB P-20ポリソルベート-40(Lipochem Inc.、Patterson N.J.から入手可能);CAPMUL POE-0(2-[2-[3,5-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)オキソラン-2-イル]-2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル(E)-オクタデカ-9-エノエート;Abitec Corp.、Janesville、Wis.から入手可能)、ならびに天然界面活性剤、例えばタウロコール酸ナトリウム、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、レシチン、ならびに他のリン脂質ならびにモノ-およびジグリセリドを含む。界面活性剤は、有利には、湿潤化を容易にし、それにより、最大溶解濃度を増加させることによって溶解速度を増加させるため、およびさらに錯体化、包接錯体の形成、ミセルの形成または固体薬物の表面への吸着のような機構によって溶解薬物と相互作用することによって薬物の結晶化または沈殿を阻害するために用いることができる。これらの界面活性剤は、SAD組成物の最大5wt%、最大10wt%、またはさらに最大15wt%を占めることができる。薬物錯化剤または可溶化剤は、ポリエチレングリコール、カフェイン、キサンテン、ゲンチジン酸、およびシクロデキストリンを含む。滑沢剤は、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、水素添加植物油、軽質鉱油、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、タルク、およびステアリン酸亜鉛を含む。流動化剤は、例えば、二酸化ケイ素、タルク、およびトウモロコシデンプンを含む。フィラーまたは希釈剤は、ラクトース、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、圧縮糖、微結晶セルロース、粉末セルロース、ヒュームドシリカ、デンプン、アルファ化デンプン、デキストレート、デキストラン、デキストリン、デキストロース、マルトデキストリン、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、およびポロキサマー、例えばポリエチレンオキシドを含む。
上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、SADは、少なくとも35wt%の難水溶性活性薬剤ローディング、例えば少なくとも40wt%、少なくとも50wt%、少なくとも60wt%、少なくとも70wt%、または少なくとも75wt%の活性薬剤ローディングを有することができる。一部の実施形態では、SADは、35wt%から95wt%、例えば35~90wt%、35~85wt%、35~75wt%、40~75wt%、50~75wt%、または60~75wt%の難水溶性活性薬剤ローディングを有する。上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、SADは、5~65wt%のマトリックス材料を含むことができる。一部の実施形態では、SADは、5~60wt%のマトリックス材料、10~60wt%のマトリックス材料、10~50wt%のマトリックス材料、10~40wt%のマトリックス材料、10~30wt%のマトリックス材料、10~25wt%のマトリックス材料、または10~20wt%のマトリックス材料を含む。活性薬剤およびマトリックス材料の量が合計100wt%にならない場合、SADの残部は、1つまたはそれ以上の添加剤から構成される。
上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、SADの粒子は、<10のアスペクト比、例えば≦5、≦4または≦3のアスペクト比を有することができる。一部の実施形態では、SAD粒子の少なくとも95%は、<10のアスペクト比を有する。ある特定の実施形態では、SAD粒子の少なくとも95%または少なくとも99%は、アスペクト比ARを有し、ここで、1≦AR<10、1≦AR≦5、1≦AR≦4、または1≦AR≦3である。上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、SADの粒子は、100μm以下の平均直径、または粒子長の中点における幅を有することができる。
濃度持続ポリマー
開示されたSDFの実施形態は、本明細書に開示されたSADおよび濃度持続ポリマー(CSP)を含む。一部の実施形態では、CSPは、イオン化可能なセルロース系ポリマー、イオン化不能なセルロース系ポリマー、イオン化可能な非セルロース系ポリマー、イオン化不能な非セルロース系ポリマー、またはそれらの組合せである。CSPは、PMMAMAではない。
イオン化可能なセルロース系ポリマーは、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸コハク酸メチルセルロース、酢酸コハク酸エチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸コハク酸ヒドロキシプロピルセルロース、プロピオン酸コハク酸セルロース、酪酸コハク酸ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸メチルセルロース、酢酸フタル酸エチルセルロース、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロピオン酸フタル酸セルロース、酪酸フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、酢酸トリメリット酸メチルセルロース、酢酸トリメリット酸エチルセルロース、酢酸トリメリット酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸トリメリット酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸トリメリット酸コハク酸ヒドロキシプロピルセルロース、プロピオン酸トリメリット酸セルロース、酪酸トリメリット酸セルロース、酢酸テレフタル酸セルロース、酢酸イソフタル酸セルロース、酢酸ピリジンジカルボン酸セルロース、酢酸サリチル酸セルロース、酢酸ヒドロキシプロピルサリチル酸セルロース、酢酸エチル安息香酸セルロース、酢酸ヒドロキシプロピルエチル安息香酸セルロース、酢酸エチルフタル酸セルロース、酢酸エチルニコチン酸セルロース、酢酸エチルピコリン酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、エチルカルボキシメチルセルロース、およびそれらの組合せを含む。
イオン化不能なセルロース系ポリマーは、酢酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、酢酸ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシエチルエチルセルロース、ならびにそれらの組合せを含む。
イオン化可能な非セルロース系ポリマーは、カルボン酸官能化ポリメタクリレート、カルボン酸官能化ポリアクリレート、アミン官能化ポリアクリレート、アミン官能化ポリメタクリレート、タンパク質、およびカルボン酸官能化デンプン、ならびにそれらの組合せを含む。
イオン化不能な非セルロース系ポリマーは、ヒドロキシル、アルキルアシルオキシ、および環状アミドからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するビニルポリマーおよびコポリマー;少なくとも1つの親水性のヒドロキシルを含む繰り返し単位および少なくとも1つの疎水性のアルキルまたはアリールを含む繰り返し単位のビニルコポリマー;非加水分解形態で繰り返し単位の少なくとも一部を有するポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールポリ酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールコポリマー、ポリビニルピロリドン、およびポリエチレンポリビニルアルコールコポリマー、ならびにそれらの組合せを含む。
一部の実施形態では、CSPは、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)(PVPVA)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、またはそれらの組合せを含む。ある特定の実施形態では、CSPは、HPMCASまたはPVPVAを含む。HPMCASは、例えば、HPMCAS-HFまたはAffinisol(登録商標)126 HPMCASポリマー(The Dow Chemical Company)とすることができる。HPMCAS-HFは、レーザー回折によって測定して≦10μmの平均粒子サイズ、例えば5μmの平均粒子サイズを有する。HPMCAS-HFおよびAffinisol(登録商標)126 HPMCASは各々、10~14wt%のアセチル含有量、4~8wt%のスクシノイル含有量、22~26wt%のメトキシル含有量、および6~10wt%のヒドロキシプロポキシ含有量を有する。HPCMAS-HFおよびAffinisol(登録商標)126 HPMCASは、0.7mmolの酸/グラムの酸含有量を有し、pH≧6.5で可溶性である。PVPVAは、例えば、PVPVA64-6:4の比のN-ビニルピロリドンおよび酢酸ビニルを含む直鎖状ランダムコポリマーとすることができる。市販の一例は、Kollidon(登録商標)VA64ポリマー(BASF Corporation)である。一実施形態では、活性薬剤は、塩基性の活性薬剤であり、CSPは、HPMCASを含む。独立した実施形態では、活性薬剤は、中性の活性薬剤であり、CSPは、PVPVAを含む。PVPVAは胃媒体に(例えば、pH2で)可溶性であることから、PVPVAは、胃媒体中での一部の活性薬剤の結晶化を遅らせるまたは防止することができる。
固体剤形
開示された固体剤形(SDF)の実施形態は、本明細書に開示されたSADおよびCSPを含み、CSPは、SAD中に分散していない。SAD中の分散ポリマーは、SDFの急速な崩壊および溶解を容易にする一方で、CSPは、使用環境において過飽和の薬物濃度を持続させる。
一部の実施形態では、SDFは、SAD中に存在し得る任意の添加剤に加えて、1つまたはそれ以上の添加剤をさらに含む。添加剤は、SDFの特性に悪影響を及ぼすことなく、通例の目的および典型的な量で、界面活性剤、pH調整剤、フィラー、崩壊剤、色素、結合剤、滑沢剤、流動化剤、香料(flavorant)などを含むことができる。界面活性剤は、例えば、脂肪酸およびアルキルスルホネートを含め、スルホン化炭化水素およびそれらの塩、例えばドクサートナトリウム(CROPOL)としても知られている1,4-ビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムおよびラウリル硫酸ナトリウム(SLS);ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(PLURONIC、LUTROL)とも呼ばれるポロキサマー;ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ICI Americas Inc.、Wilmington、Del.から入手可能なCREMOPHOR A、BRIJ);ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート、ICIから入手可能なTWEEN);短鎖グリセリルモノ-アルキレート(HODAG、IMWITTOR、MYRJ);ポリオール、例えばグリセリンのモノ-およびジ-アルキレートエステル;非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80、ICIから入手可能なTWEEN80);ポリオキシエチレン20ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20、ICIから入手可能なTWEEN20);ポリエチレン(40または60)水素添加ヒマシ油(例えば、BASFから入手可能なCREMOPHOR RH40およびRH60);ポリオキシエチレン(35)ヒマシ油(BASFから入手可能なCREMOPHOR EL);ポリエチレン(60)水素添加ヒマシ油(Nikkol HCO-60);アルファトコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(ビタミンE TPGS);PEG8カプリル酸/カプリン酸グリセリル(例えば、Gattefosseから入手可能なLABRASOL);ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(例えば、ICIから入手可能なMYRJ)、市販の界面活性剤、例えば塩化ベンゼトニウム(Lonza,Inc.、Fairlawn、N.J.から入手可能なHYAMINE1622);LIPOSORB P-20ポリソルベート-40(Lipochem Inc.、Patterson N.J.から入手可能);CAPMUL POE-0(2-[2-[3,5-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)オキソラン-2-イル]-2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル(E)-オクタデカ-9-エノエート;Abitec Corp.、Janesville、Wis.から入手可能)、ならびに天然界面活性剤、例えばタウロコール酸ナトリウム、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、レシチン、ならびに他のリン脂質ならびにモノ-およびジグリセリドを含む。例示的なpH調整剤は、酸、例えばクエン酸、酢酸、アスコルビン酸、乳酸、酒石酸、アスパラギン酸、コハク酸、リン酸など;塩基、例えば酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、リン酸三ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなど;ならびに一般的に酸および前記酸の塩の混合物を含む緩衝液を含む。フィラーまたは希釈剤は、ラクトース、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、圧縮糖、微結晶セルロース、粉末セルロース、デンプン、アルファ化デンプン、デキストレート、デキストラン、デキストリン、デキストロース、マルトデキストリン、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、およびポロキサマー、例えばポリエチレンオキシドを含む。薬物錯化剤または可溶化剤は、ポリエチレングリコール、カフェイン、キサンテン、ゲンチジン酸、およびシクロデキストリンを含む。崩壊剤は、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(架橋ポリビニルピロリドン)、メチルセルロース、微結晶セルロース、粉末セルロース、デンプン、アルファ化デンプン、およびアルギン酸ナトリウムを含むがこれらに限定されない。例示的な錠剤結合剤は、アカシア、アルギン酸、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、水素添加植物油、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、液体グルコース、マルトデキストリン、ポリメタクリレート、ポビドン、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、スクロース、トラガカント、およびゼインを含む。滑沢剤は、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、水素添加植物油、軽質鉱油、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、タルク、およびステアリン酸亜鉛を含む。流動化剤は、例えば、二酸化ケイ素、タルク、およびトウモロコシデンプンを含む。当技術分野で周知の(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第16版、1980)に記載された)添加剤を含め、他の従来の製剤添加剤を本発明の組成物において用いることができる。
一部の実施形態では、SDFは、SADの粒子およびCSPの粒子の混合物と、場合により1つまたはそれ以上の添加剤とを含む。混合物は、下記により詳細に記載するように、造粒、対流混合、剪断混合、拡散混合、またはミリングを含むがこれらに限定されない任意の好適な方法によって形成することができる。ある特定の実施形態では、混合物は、SADおよびCSPの顆粒を含む。個々の顆粒は、SAD粒子、CSP粒子、またはSAD粒子およびCSP粒子の混合物(すなわち、顆粒内ブレンド)を含むことができる。混合条件は、難水溶性活性薬剤、マトリックス材料、およびCSPの分子分散体が形成されないように選択される。独立した実施形態では、SAD粒子およびCSP粒子は、SDFの別個の領域に、例えば、別個の層に存在する。
上記に論じたように、SAD中の難水溶性活性薬剤ローディングは、少なくとも35wt%である。一部の実施形態では、(i)SDFは、少なくとも35wt%のSADを含み、(ii)SADおよびCSPは合わせて、SDFの少なくとも50wt%を占め、または(iii)(i)および(ii)の両方である。ある特定の実施形態では、SADおよびCSPは合わせて、SDFの少なくとも50wt%、少なくとも60wt%、少なくとも70wt%、少なくとも80wt%、またはさらに少なくとも90wt%である。一部の実施形態では、SDFは、1つまたはそれ以上の添加剤をさらに含む。例えば、SDFは、最大50wt%、最大40wt%、最大30wt%、最大20wt%、または最大10wt%の量の添加剤をさらに含むことができる。一部の実施形態では、SAD、CSP、および添加剤は合わせて、合計100wt%になる。
一部の実施形態では、SDFは、SAD粒子、CSP粒子、および場合により1つまたはそれ以上のIG添加剤(例えば、1つまたはそれ以上の滑沢剤、流動化剤、フィラー、またはそれらの任意の組合せ)を含む顆粒内(IG)ブレンドを含む。IGブレンド中の個々の顆粒は、SAD、CSP、1つもしくはそれ以上のIG添加剤、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。ある特定の実施形態では、IGブレンドは、SDFの総質量を基準にして、0~30wt%のIG添加剤、例えば5~30wt%、5~25wt%、5~20wt%もしくは10~20wt%のIG添加剤(または、IGブレンドの総質量を基準にして、0~35wt%、0~30wt%、0~25wt%、5~30wt%、5~25wt%、もしくは10~25wt%のIG添加剤)を含む。IGブレンドを含むSDFは、顆粒外(EG)添加剤、例えば、SDFの総質量を基準にして、0~10wt%、1~5wt%、または3~5wt%のEG添加剤をさらに含むことができる。
独立した実施形態では、SDFは、SAD粒子および1つまたはそれ以上のIG添加剤を含むIGブレンドを含む。IGブレンド中の個々の顆粒は、SAD、1つもしくはそれ以上のIG添加剤、またはそれらの組合せを含むことができる。ある特定の実施形態では、IGブレンドは、SDFの総質量を基準にして、0~30wt%、例えば5~30wt%、5~25wt%、5~20wt%または10~20wt%の量のIG添加剤を含む。この実施形態では、CSPは、顆粒外にある。SDFは、EG添加剤、例えば、SDFの総質量を基準にして、0~10wt%、1~5wt%、または3~5wt%の量のEG添加剤をさらに含むことができる。
上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、SDFは、少なくとも35wt%、少なくとも40wt%、少なくとも50wt%、少なくとも60wt%、または少なくとも70wt%の量のSAD、例えば35wt%から70wt%のSAD、例えば40~70wt%のSAD、または40~60wt%のSADを含むことができる。前述の実施形態のいずれかまたは全てでは、SDFは、少なくとも5wt%、少なくとも10wt%、少なくとも20wt%、または少なくとも25wt%の量のCSP、例えば5~60wt%、10~60wt%のCSP、20~60wt%のCSP、20~50wt%、または20~40wt%のCSPを含むことができる。上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、SDF中のCSPと活性薬剤の比は、少なくとも0.4:1、例えば少なくとも0.4:1から5:1という高い比、例えば0.5:1から4:1、0.5:1から3:1、または0.8:1から2:1とすることができる。
一部の実施形態では、SDFは、SAD粒子と、CSP粒子と、場合により1つまたはそれ以上の添加剤とを含む圧縮されたカプレット剤または錠剤である。上記のように、SAD粒子は、活性薬剤と、マトリックス材料(すなわち、分散ポリマー)と、場合により1つまたはそれ以上の添加剤とを含む。ある特定の実施形態では、SAD粒子およびCSP粒子を、場合により1つまたはそれ以上の添加剤とともに一緒に造粒して、ブレンド、例えば、顆粒内ブレンドを形成する。IGブレンドを任意の所望の顆粒外添加剤と混合し、圧縮して、カプレット剤または錠剤を形成する。
あるいは、カプレット剤または錠剤は、SAD粒子の1つまたはそれ以上の層およびCSP粒子の1つまたはそれ以上の層を含む積層構造を有することができる。1つまたはそれ以上の添加剤は、SAD層、CSP層、または両方に含めることができる。独立した実施形態では、カプレット剤または錠剤は、SAD粒子および場合により1つまたはそれ以上の添加剤を含む核と、CSPを含む外側コーティングとを含む。
一部の実施形態では、SDFは、カプセル殻と、SAD粒子およびCSP粒子を含む充填物とを含むカプセル剤である。充填物は、1つまたはそれ以上の添加剤をさらに含むことができる。ある特定の実施形態では、充填物は、SAD粒子、CSP粒子、および場合により1つまたはそれ以上のIG添加剤の顆粒内ブレンドを含む。充填物は、1つまたはそれ以上の顆粒外添加剤をさらに含むことができる。そのようなカプセル剤において、カプセル殻は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、デンプン、カゼイン、キトサン、アルギネート、ジェランガム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセテートフタレート、プルラン、およびそれらの組合せを含むがこれらに限定されない任意の好適な材料を含むことができる。独立した実施形態では、SDFは、カプセル殻がCSPを含み、充填物がSAD粒子および場合により1つまたはそれ以上の添加剤を含む、カプセル剤である。充填物は、例えば、SAD粒子および1つまたはそれ以上のIG添加剤のIGブレンドを含むことができ、1つまたはそれ以上の顆粒外添加剤をさらに含むことができる。
上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、経口医薬組成物は、SDFの外表面のコーティング、例えば、腸溶コーティングをさらに含むことができる。好適なコーティングは、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート、セラック、カルボン酸官能化ポリメタクリレート、カルボン酸官能化ポリアクリレート、およびそれらの組合せを含むがこれらに限定されない。
開示されたSDFの一部の実施形態は、非晶質形態の難水溶性活性薬剤と、(i)マトリックス材料(分散ポリマー)単独、(ii)濃度持続ポリマー単独、または(iii)マトリックス材料およびCSPの単純混合物とを含む基準SDFよりも高い物理的安定性を示す。より高い物理的安定性とは、非晶質の難水溶性活性薬剤が、基準SDFと比較して本発明のSDFにおいて結晶化しにくいことを意味する。より高い物理的安定性は、一部には、SADのガラス転移温度(Tg)を増加させることによって達成される。先に述べたように、SADのTgは、多くの場合、SAD構成成分のTg値の加重平均にほぼ等しい。SADのTgが保存温度に対して増加するにつれて、SAD中の非晶質活性薬剤の移動および/または結晶化は減少する。ある特定の実施形態では、開示されたSADは、<5%の相対湿度で≧135℃のTgを有する分散ポリマーを含む。例えば、PMMAMAは、<5%のRHで最大190℃のTgを有する。他の典型的な分散および/または濃度持続ポリマーは、多くの場合、はるかに低いTgを有する。例えば、HPMCAS-HのTgは、<5%のRHで119℃である。PMMAMAの高いTgは、より低いTgを有する別の分散ポリマーを含むSADと比較して、SAD中のより高い活性薬剤ローディングを容易にし、その理由は、SADの全体的なTgが、SADの適切な保存期間にわたって活性薬剤の移動と結果として生じる相分離および/または結晶化を阻害するのに十分に高いままであるからである。この利点は、非晶質の難水溶性活性薬剤がPMMAMAと単に混合された場合には実現されない。
一部の実施形態では、PMMAMAは、十分に有効な濃度持続ポリマーではない。したがって、SDFは、CSPをさらに含む。CSPがSADの外部にある(すなわち、SAD粒子がCSPを含まない)ことから、CSPは、SADのTgを低減せず、SADの物理的安定性の利益がSDFにおいて維持される。SADおよびCSPを一緒に製剤化して、本明細書に開示されたSADを含まない基準SDFよりも高い活性薬剤ローディングを含むSDFとすることができる。より高いローディングにより、SDFが、基準SDFと比較してより小さい全体的な質量を有することが可能となる。例えば、難水溶性活性薬剤およびHPCMAS-Hを含む基準SADは、わずか35wt%の活性薬剤ローディングを有することができるのに対し、難水溶性活性薬剤およびPMMAMAを含むSADは、65wt%の活性薬剤ローディングを有することができる。したがって、錠剤の50wt%がSADである活性薬剤100mgを含む錠剤を作製しようとする場合、基準SDFは、575gの質量を有することができるのに対し、本明細書に開示されたSDFは、はるかに小さい300mgの質量を有することができる。
開示された組成物の増大した物理的安定性および増加した難水溶性活性薬剤ローディングは、難水溶性活性薬剤が急速結晶化物質である場合に特に有利である。基準SDFではポリマー:活性薬剤の比が減少することから、SDFが腸管に進入すると、腸液のより高いpHでの活性薬剤の結晶化に起因してバイオアベイラビリティが減少し得る。急速結晶化物質は、しばしば、胃媒体中で良好に溶解するが、その後、腸管への進入時に溶解濃度が急速に減少する。対照的に、開示された経口医薬組成物の一部の実施形態は、CSPを欠くがその他の点では同じであるベンチマーク組成物と比較して、より良好なin vitroでの性能をもたらす。ある特定の実施形態では、開示された経口医薬組成物は、下記により詳細に論じるように、ベンチマーク組成物と比較して優れたin vivoでの性能、例えば過飽和の溶解活性薬剤濃度の持続によるより高いバイオアベイラビリティをもたらすことが予期される。
III.経口医薬組成物の製造
開示された経口医薬組成物の実施形態は、SADおよびCSPを含む固体剤形を生じさせる任意の方法によって製造することができる。
一部の実施形態では、SADは、噴霧乾燥によって形成される。噴霧乾燥プロセスは、溶媒中に難水溶性活性薬剤およびマトリックス材料(例えば、PMMAMAのような分散ポリマー)を含む噴霧溶液を提供することと、噴霧溶液を噴霧器内に導入することと、噴霧溶液をチャンバー内に霧化して、液滴を形成することと、乾燥ガスをチャンバー内に導入して、液滴を乾燥させ、SADの粒子を含む粉末を形成することと、チャンバーから粉末を収集することとを含む。一部の実施形態では、マトリックス材料がPMMAMAである場合、噴霧溶液は、少なくとも2wt%、少なくとも3wt%、少なくとも4wt%、または少なくとも5wt%のPMMAMA、例えば2~9wt%、3~9wt%、4~9wt%、または5~9wt%のPMMAMAを含む。溶媒は、メタノール、エタノール、アセトンおよび水の混合物、ジクロロメタンおよびエタノールの混合物、ジクロロメタンおよびメタノールの混合物、エタノールおよび水の混合物、メタノールおよび水の混合物、メタノールおよびアセトンの混合物、メタノール、アセトンおよび水の混合物、メチルエチルケトンおよび水の混合物、またはテトラヒドロフランおよび水の混合物から選択することができる。
上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、噴霧溶液を提供することは、難水溶性活性薬剤およびマトリックス材料を溶媒中に溶解することを含むことができる。一部の実施形態では、マトリックス材料は、溶媒中に溶解され、難水溶性活性薬剤は、溶媒中に部分的に溶解されるかまたは懸濁される。上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、プロセスは、1つまたはそれ以上の添加剤を噴霧溶液中に溶解することをさらに含むことができる。ある特定の実施形態では、溶媒は、マトリックス材料、難水溶性活性薬剤、および場合による添加剤が溶媒に可溶性であるように選択される。噴霧溶液中の活性薬剤および/または非ポリマー添加剤の量は、噴霧乾燥に関する実際的な考慮事項、例えば、活性薬剤/添加剤の溶解度、ノズルの閉塞、噴霧乾燥液滴を十分に乾燥させる能力等によってのみ限定される。一部の実施形態では、噴霧溶液を製造するために使用される固体-マトリックス材料、難水溶性活性薬剤、および場合による添加剤-は、少なくとも35wt%の活性薬剤/添加剤から最大95wt%の活性薬剤/添加剤、例えば35wt%から85wt%、35wt%から80wt%、または35wt%から70wt%の活性薬剤/添加剤を含み、固体の残部は、マトリックス材料である。上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、噴霧溶液は、溶液を製造するために使用される固体および溶媒の質量を基準にして、3wt%から40wt%、例えば3wt%から30wt%、3wt%から20wt%、または3wt%から15wt%の固体含有量(マトリックス材料、難水溶性活性薬剤、および場合による添加剤)を有することができる。マトリックス材料がPMMAMAである場合、PMMAMA含有量は、先に記載したように2~9wt%である。有利には、固体の濃度は、噴霧溶液のスキニングが自発的に生じないように選択される。一実施形態では、固体は、溶媒中に完全に溶解される。独立した実施形態では、固体は、実質的に溶解される(すなわち、固体の少なくとも90wt%が溶解される)。別の独立した実施形態では、マトリックス材料は全て溶解され、活性薬剤および場合による添加剤の一部は、噴霧溶液中に懸濁される。一部の実施形態では、総固体含有量は、3~15wt%、3~12wt%または3~10wt%である。
上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、商業規模において、噴霧溶液は、少なくとも3kg/時の供給速度で噴霧器内に導入することができる。一部の実施形態では、噴霧溶液の供給速度は、少なくとも6kg/時、少なくとも10kg/時、少なくとも12kg/時、少なくとも15kg/時、または少なくとも18kg/時である。噴霧溶液の供給速度は、実際的な考慮事項、例えば噴霧乾燥装置、ノズルの容量等によってのみ限定される。一部の例では、噴霧溶液の供給速度は、3kg/時から450kg/時、例えば6~450kg/時、10~450kg/時、12~450kg/時、15~450kg/時、または18~405kg/時である。乾燥ガスは、少なくとも72kg/時の流速でチャンバー内に導入することができる。一部の実施形態では、乾燥ガスの流速は、少なくとも75kg/時、少なくとも100kg/時、少なくとも125kg/時、または少なくとも150kg/時である。一部の例では、乾燥ガスの流速は、72kg/時から2100kg/時、例えば75~2100kg/時、100~2100kg/時、125~2100kg/時、または150~2100kg/時である。上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、噴霧溶液の供給速度および乾燥ガスの流速は、乾燥ガスの流速(kg/時)と噴霧溶液の供給速度(kg/時)の比が少なくとも5となるように選択することができる。一部の実施形態では、乾燥ガスの流速と噴霧溶液の供給速度の比は、少なくとも5から16、または少なくとも8から16である。噴霧乾燥の技術分野の当業者には、前述のパラメーターは、噴霧乾燥装置およびその能力に依存することが理解される。より小さい噴霧乾燥機は、典型的には、より低い供給速度および流速を有する。例えば、より小さい実験室規模において、30~35kg/時の乾燥ガスの流速で、噴霧溶液は、少なくとも1kg/時の供給速度、例えば1~7kg/時の供給速度で噴霧器内に導入することができる。一部の事例では、乾燥ガスの流速と噴霧溶液の供給速度の比は、5~25の範囲内とすることができる。
上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、噴霧器は、圧力ノズルまたは二流体ノズルとすることができる。一部の実施形態では、圧力ノズルは、圧力旋回ノズルである。
上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、チャンバー内に導入されるときの乾燥ガスの温度は、<165℃とすることができる。一部の実施形態では、チャンバー内に導入されるときの乾燥ガスの温度は、≦160℃、≦150℃、≦125℃、または≦100℃である。一部の例では、チャンバー内に導入されるときの乾燥ガスの温度は、70~160℃、80~160℃、90~160℃、95~160℃、95~150℃、または95~125℃である。好適な乾燥ガスは、マトリックス材料、活性薬剤、溶媒、および噴霧溶液中に存在する他の任意の構成成分(例えば、添加剤)と反応しないガスを含む。例示的な乾燥ガスは、窒素、アルゴン、およびヘリウムを含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、乾燥ガスは、窒素である。一実施形態では、マトリックス材料は、PMMAMAを含み、溶媒は、メタノールを含み、チャンバー内に導入されるときの乾燥ガスの温度は、<165℃である。独立した実施形態では、マトリックス材料は、PMMAMAを含み、溶媒は、アセトンを含み、チャンバー内に導入されるときの乾燥ガスの温度は、≦100℃である。
上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、チャンバーの出口における乾燥ガスの温度は、<55℃とすることができる。一部の実施形態では、出口における乾燥ガスの温度は、周囲温度から<55℃または周囲温度から<50℃である。ある特定の実施形態では、チャンバーの出口における乾燥ガスの温度は、チャンバー内に導入されるときの乾燥ガスの温度よりも少なくとも50℃低い。
上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、SADをCSPおよび場合により1つまたはそれ以上の添加剤と混合して、混合物を形成することができる。混合プロセスは、物理的加工、ならびに造粒およびコーティングプロセスを含む。例示的な混合方法は、造粒、対流混合、剪断混合、拡散混合、またはミリングを含む。一部の実施形態では、混合物は、乾式造粒、湿式造粒、ローラーコンパクション/ミリングまたはそれらの任意の組合せによって形成される。混合条件は、活性薬剤、マトリックス材料、およびCSPの分子分散体の形成を回避するように選択される。一実施形態では、混合は、SAD、CSP、および場合により1つまたはそれ以上の添加剤を同時造粒することによって実施される。独立した実施形態では、SAD、CSP、および任意の添加剤を混合し、ローラーコンパクションに供して、圧縮されたリボンを提供し、その後、圧縮されたリボンをミリングして、SAD、CSP、および任意の添加剤を含む顆粒を提供する。一部の実施形態では、混合物は、(i)SAD粒子、CSP粒子、および場合により1つまたはそれ以上のIG添加剤を含む顆粒内ブレンドと、(ii)場合により1つまたはそれ以上の顆粒外添加剤とを含む。その後、混合物を形成してSDFとする。一実施形態では、混合物を製薬技術分野で公知のように成形または圧縮して、錠剤またはカプレット剤を提供する。独立した実施形態では、混合物をカプセル殻内に充填して、カプセル剤を提供する。
別の独立した実施形態では、SADの1つまたはそれ以上の層およびCSPの1つまたはそれ以上の層を圧縮して、錠剤またはカプレット剤を形成する。1つまたはそれ以上の添加剤は、SAD層、CSP層、または両方に含めることができる。さらに別の独立した実施形態では、SADおよび場合により1つまたはそれ以上の添加剤を含む圧縮された核を形成し、CSPを含む層でコーティングする。
なお別の独立した実施形態では、SAD粒子および場合により1つまたはそれ以上の添加剤を、CSPを含むカプセル殻内に充填する。カプセル殻は、製薬技術分野で公知の他の構成成分、例えば、可塑剤、ゲル化助剤、流動化剤、滑沢剤、乳化剤などをさらに含むことができる。
上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、経口医薬組成物は、SDFと、SDFの外表面のコーティングとを含むことができる。一部の実施形態では、コーティングは、腸溶コーティングである。ある特定の実施形態では、コーティングは、滑沢剤、流動化剤、色素、着色料、消泡剤、酸化防止剤、ワックス、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加物を含む。コーティングは、スプレーコーティング(例えば、流動床コーターまたはパンコーターにおける)、ディッピング、流動床蒸着などを含むがこれらに限定されない製薬技術分野で公知の任意の好適な方法によって施すことができる。
IV.経口医薬組成物の使用
開示された経口医薬組成物の実施形態は、難水溶性活性薬剤の送達のために対象(例えば、ヒトまたは動物)に投与される。一部の実施形態では、開示された経口医薬組成物は、a)良好な物理的安定性(例えば、活性薬剤の相分離/結晶化に関して)、b)急速な崩壊/溶解速度、c)過飽和の活性薬剤の持続、d)高い活性薬剤ローディング、またはそれらの任意の組合せを示す。有利には、経口医薬組成物のある特定の実施形態は、より小さいまたはより少ない投薬単位を使用して、難水溶性活性薬剤の改善された経口バイオアベイラビリティをもたらし、例えば、難水溶性活性薬剤の所望の投薬量を提供するのにより小さいSDFまたはより少ないSDFが必要とされる。
開示された実施形態のいずれかまたは全てでは、SDFは、使用環境に導入されたときに、難水溶性活性薬剤の平衡濃度を超える難水溶性活性薬剤の初期濃度、すなわち、過飽和濃度をもたらすことができる一方で、CSPは、初期活性薬剤濃度が平衡濃度に降下する速度を遅らせる。
開示されたSADの一部の実施形態は、使用環境(例えば、胃から腸の移行溶解試験)に添加されたときに、模擬腸液、pH6.5「SIF」中の濃度時間曲線下溶解面積(AUC)が、CSPおよび難水溶性活性薬剤を含むがPMMAMAを含まないSADを含むベンチマーク組成物のAUCの少なくとも75%、少なくとも90%、または少なくとも100%となり、ここで、本発明の組成物のSAD中の活性薬剤ローディングは、ベンチマークSDFのSAD中の活性薬剤ローディングよりも少なくとも25%高い、少なくとも40%高い、少なくとも60%高い、少なくとも75%高い、または少なくとも90%高い。開示された組成物のSADは、(例えば、加速安定性研究によって決定して)ベンチマーク組成物のSADと少なくとも同程度に物理的に安定である。一部の実施形態では、USP崩壊装置において0.01N HClに添加されたときの開示された組成物のSADの崩壊時間は、≦10分、例えば≦5分、≦3分、または≦2分である。崩壊時間は、5秒から10分、5秒から5分、5秒から3分、または5秒から2分の範囲内であり得る。
開示されたSDFの一部の実施形態は、使用環境(例えば、胃から腸の移行溶解試験)に添加されたときに、模擬腸液、pH6.5「SIF」中の濃度時間曲線下溶解面積(AUC)が、ベンチマークSDFのAUCの少なくとも75%、少なくとも90%または少なくとも100%となり、ここで、開示された組成物のSDFおよびベンチマーク組成物のSDFは、同量のCSP(例えば、±5%以内)を含むが、開示された組成物のSDF中の活性薬剤ローディングは、ベンチマーク組成物のSDF中の活性薬剤ローディングよりも少なくとも25%高い、少なくとも40%高い、少なくとも60%高い、少なくとも75%高い、または少なくとも90%高い。ベンチマークSDFは、(i)活性薬剤およびCSPを含むがPMMAMAを含まないSADと、(ii)SADの外部にある、CSPを含まない追加の添加剤とを含む。開示されたSDFの実施形態は、(i)活性薬剤およびPMMAMAを含むがCSPを含まないSADと、(ii)SADの外部にあるCSPおよび追加の添加剤とを含む。開示された組成物のSADは、(例えば、加速安定性研究によって決定して)ベンチマーク組成物のSADと少なくとも同程度に物理的に安定である。一部の実施形態では、USP崩壊装置において0.01N HClに添加されたときの開示された組成物のSDFの崩壊時間は、≦10分、例えば≦5分、≦3分、または≦2分である。崩壊時間は、5秒から10分、5秒から5分、5秒から3分、または5秒から2分の範囲内であり得る。ある特定の例では、開示された組成物のSDFの崩壊時間は、ベンチマーク組成物のSDFの崩壊時間と同じまたはそれ未満であり得る。
開示されたSDFの一部の実施形態は、使用環境(例えば、下記の方法の節に記載する胃から腸の移行溶解試験)に添加されたときに、模擬腸液、pH6.5「SIF」中の濃度時間曲線下溶解面積(AUC)が、ベンチマークSDFのAUCの少なくとも75%、少なくとも90%または少なくとも100%となり、ここで、開示された組成物のSDFは、ベンチマーク組成物のSDFよりも低いCSP:薬物の比を含む(例えば、開示されたSDFのCSP:薬物比は、ベンチマークSDFのCSP:薬物比よりも少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、または少なくとも90%低い)が、開示された組成物のSDF中の活性薬剤ローディングは、ベンチマーク組成物のSDF中の活性薬剤ローディングよりも少なくとも25%高い、少なくとも40%高い、少なくとも60%高い、少なくとも75%高い、または少なくとも90%高い。ベンチマークSDFは、(i)活性薬剤およびCSPを含むがPMMAMAを含まないSADと、(ii)SADの外部にある、CSPを含まない追加の添加剤とを含む。開示されたSDFの実施形態は、(i)活性薬剤およびPMMAMAを含むがCSPを含まないSADと、(ii)SADの外部にあるCSPおよび追加の添加剤とを含む。開示された組成物のSADは、(例えば、加速安定性研究によって決定して)ベンチマーク組成物のSADと少なくとも同程度に物理的に安定である。一部の実施形態では、USP崩壊装置において0.01N HClに添加されたときの開示された組成物のSDFの崩壊時間は、≦10分、例えば≦5分、≦3分、または≦2分である。崩壊時間は、5秒から10分、5秒から5分、5秒から3分、または5秒から2分の範囲内であり得る。ある特定の例では、開示された組成物のSDFの崩壊時間は、ベンチマーク組成物のSDFの崩壊時間と同じまたはそれ未満であり得る。
開示されたSDFの上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、開示されたSDFは、使用環境(例えば、胃から腸の移行溶解試験)に添加されたときに、模擬腸液、pH6.5「SIF」中の濃度時間曲線下溶解面積(AUC)が、SDF中に同じSAD(例えば、CSPを含まない活性薬剤およびPMMAMA)を含むがCSPを含まない対照組成物のSDFのAUCの少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも400%、または少なくとも600%となり得、ここで、開示された組成物中のSADのwt%は、対照組成物のSDF中のSADのwt%に等しく、開示された組成物のSDF中の活性薬剤ローディングは、対照組成物のSDF中の活性薬剤ローディングに等しい。
開示されたSDFの上記の実施形態のいずれかまたは全てでは、使用環境(例えば、胃から腸の移行溶解試験)に添加されたときに、模擬腸液、pH6.5「SIF」中の濃度時間曲線下溶解面積(AUC)が、難水溶性活性薬剤およびCSPを含むがPMMAMAを含まないSADを含む対照組成物のSDFのAUCの少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、または少なくとも400%となり得、ここで、開示された組成物中のSAD中の活性薬剤のwt%は、対照組成物中のSADのwt%に等しく、開示された組成物のSDF中のSADのwt%は、対照組成物のSDF中のSADのwt%に等しく、開示された組成物のSDF中のCSPのwt%は、対照組成物のSDF中のCSPのwt%に等しく、開示された組成物のSDF中の活性薬剤ローディングは、対照組成物のSDF中の活性薬剤ローディングに等しい。開示された組成物のSADは、(例えば、加速安定性研究によって決定して)対照組成物のSADよりも物理的に安定である。一部の実施形態では、USP崩壊装置において0.01N HClに添加されたときの開示された組成物のSDFの崩壊時間は、≦10分、例えば≦5分、≦3分、または≦2分である。崩壊時間は、5秒から10分、5秒から5分、5秒から3分、または5秒から2分の範囲内であり得る。ある特定の例では、開示された組成物のSDFの崩壊時間は、ベンチマーク組成物のSDFの崩壊時間と同じまたはそれ未満であり得る。
V.代表的実施形態
開示された経口医薬組成物の代表的な非限定的な実施形態を以下の番号付き段落に示す。
1.固体剤形(SDF)を含む経口医薬組成物であって、SDFは、難水溶性活性薬剤とポリ[(メタクリル酸メチル)-co-(メタクリル酸)](PMMAMA)を含むマトリックス材料とを含む固体非晶質分散体(SAD)であって、PMMAMAは、示差走査熱量測定によって測定して、<5%の相対湿度で≧135℃のガラス転移温度Tgを有する、SAD;および濃度持続ポリマー(CSP)を含み、CSPは、PMMAMAではなく、CSPは、SAD中に分散しておらず、SADは、SDFの少なくとも35wt%である、経口医薬組成物。
2.CSPは、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)(PVPVA)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、またはそれらの組合せを含む、段落1に記載の経口医薬組成物。
3.難水溶性活性薬剤は、≧1.3、≧1.35または≧1.4の溶融温度Tmとガラス転移温度Tgの比および≦10のLog Pを有する、段落1または段落2に記載の経口医薬組成物。
4.SADは、少なくとも35wt%、少なくとも40wt%、少なくとも50wt%、少なくとも60wt%、少なくとも70wt%、またはさらに少なくとも75wt%の活性薬剤ローディングを有する、段落1~3のいずれか1つに記載の経口医薬組成物。
5.SADは、SDFの少なくとも40wt%、SDFの少なくとも50wt%、少なくとも60wt%、またはさらにSDFの少なくとも70wt%である、段落4に記載の経口医薬組成物。
6.CSPは、SDFの少なくとも5wt%、SDFの少なくとも10wt%、SDFの少なくとも20wt%、またはさらにSDFの少なくとも25wt%である、段落1~5のいずれか1つに記載の経口医薬組成物。
7.SADおよびCSPは合わせて、SDFの少なくとも50wt%、SDFの少なくとも60wt%、SDFの少なくとも70wt%、SDFの少なくとも80wt%、またはさらにSDFの少なくとも90wt%である、段落1~6のいずれか1つに記載の経口医薬組成物。
8.CSPと活性薬剤の比は、0.4:1から5:1、0.5:1から3:1、またはさらに0.8:1から2:1である、段落1~7のいずれか1つに記載の経口医薬組成物。
9.PMMAMAは、1:0.8から1:2.2の遊離カルボキシル基とエステル基の比を有する、段落1~8のいずれか1つに記載の経口医薬組成物。
10.SADの粒子の少なくとも95%は、<10のアスペクト比を有する、段落1~9のいずれか1つに記載の経口医薬組成物。
11.SADは、少なくとも1つの添加剤をさらに含む、段落1~10のいずれか1つに記載の経口医薬組成物。
12.SDFは、SADの粒子およびCSPの粒子を含む顆粒状ブレンド;または個々の顆粒がSAD粒子およびCSP粒子を含む顆粒内ブレンドを含む、段落1~11のいずれか1つに記載の経口医薬組成物。
13.顆粒内ブレンドの個々の顆粒の少なくとも一部は、SAD粒子、CSP粒子、および1つまたはそれ以上の顆粒内添加剤を含む、段落12に記載の経口医薬組成物。
14.SDFは、1つまたはそれ以上の顆粒外添加剤をさらに含む、段落12または段落13に記載の経口医薬組成物。
15.SDFは、圧縮された錠剤またはカプレット剤であり、SADおよびCSPをブレンドし、圧縮して、錠剤またはカプレット剤を形成する、段落1~14のいずれか1つに記載の経口医薬組成物。
16.SDFは、圧縮されたSAD粒子と、CSPを含む外側コーティングとを含む圧縮された錠剤またはカプレット剤である、段落1~14のいずれか1つに記載の経口医薬組成物。
17.SDFは、カプセル殻と、SADおよびCSPを含む充填物とを含むカプセル剤である、段落1~14のいずれか1つに記載の経口医薬組成物。
18.SDFは、CSPを含むカプセル殻と、SADを含む充填物とを含むカプセル剤である、段落1~14のいずれか1つに記載の経口医薬組成物。
VI.実施例
一般的方法
溶解性能:錠剤および懸濁剤を、USP2溶解装置(Vankel VK7000、Agilent、Santa Clara、CA)を光ファイバーUVプローブ検出(Rainbow(商標)、Pion、Billerca、MA)とともに使用する胃から腸の移行溶解試験において、溶解性能について評価した。実験に先立って、既知量のストックAPI溶液(メタノール中の10~15mg/mLエルロチニブまたは95/5のTHF/H2O中の10~15mg/mLポサコナゾール)のアリコートを、37±2℃で保たれた0.01N HCl、pH2.00からなる模擬胃液(SGF)、またはpH6.50の67mMリン酸カリウム+0.5wt%FaSSIF/FeSSIF/FaSSGF粉末(Biorelevant.com、London、英国)からなる模擬腸液(SIF)50~100mLに送達することによって、各UVプローブ(経路長2mm)について固有の較正曲線を構築した。標準物質を作製する場合、HPMC E3をSIF溶液に添加して、エルロチニブ溶液の過飽和を持続させた。投薬を始めるために、1つの錠剤を500ml USP2溶解ベッセル内に含まれるSGF200mLに添加して、500μg/mLエルロチニブの名目用量濃度を達成した。試料を75rpmで撹拌し、USP2溶解装置に取り付けた加熱ブロックを通る循環水によって37℃で保った。SGF中での溶解性能を、0~550μg/mlの較正範囲内で386~396nmの波長範囲(2次微分スペクトル)を使用して、UVプローブにより30分間モニタリングした。30分後に、pH6.55の134mMホスフェート+1.0wt%FaSSIF/FeSSIF/FaSSGF粉末200mlを溶解ベッセルに添加して、SIF400ml中250μg/mLの最終用量濃度を達成した。SIF中での溶解性能を、エルロチニブについては0~290μg/mLの較正範囲内で366~376nmの波長範囲(2次微分スペクトル)またはポサコナゾールについては0~160μg/mLの較正範囲内で266~272nmの波長範囲(2次微分スペクトル)を使用して、90分間にわたってモニタリングした。SIF中での溶解プロファイルを使用して、曲線下面積を台形法を使用して計算した。
崩壊性能:錠剤を、1000ml低形ビーカー内に含まれるバスケット-ラックアセンブリからなるUSP(general chapter<701>参照)崩壊装置(ZT-71崩壊試験器、Erweka、Heusenstamm、ドイツ)において、崩壊性能について評価した。錠剤を1つずつバスケット-ラックアセンブリ内の6つの管の1つの中に入れた。その後、ディスクを各錠剤の上に追加した。ビーカーに浸漬液としての0.01N塩酸750mlを充填し、これを37±2℃で維持した。試験を開始するために、バスケット-ラックアセンブリを、USP<701>に規定されたように、浸漬液内で一定の頻度で所定の距離を自動的に上下させた。装置によって自動的に検出されたディスクが管の底部にある金網に接触した(例えば、錠剤が十分に破壊されて破片となり、網を通って落ちた)時間を、崩壊時間として記録した。
加速安定性研究:典型的な保存環境におけるより長い保存間隔を模擬するために、試料を高温および高湿条件下で保存して、材料中で生じる物理的変化の速度を増加させた。各材料ほぼ100mgを4mLガラスバイアルに移した。その後、各バイアルを有孔アルミニウム箔で覆い、50℃および75%の相対湿度の温度/湿度制御オーブン(Environmental Specialties lnc.、モデルES2000)に移し、7日、14日および28日間静置した。試験した他の条件は、40℃/75%のRHおよび50℃/45%のRHを含んでいた。その後、試料をオーブンから取り出し、最大18時間真空デシケータに移して、吸着水を試料から除去した。その後、試料を真空デシケータから取り出し、密栓し、5℃で保存した。そのような保存の前後に、分散体の安定性を評価するために、SEMおよびpXRDを使用した結晶性(crystallinity)の分析ならびにDSCを使用したTgの分析を行った。
示差走査熱量測定(DSC):TA Instruments Q2000変調示差走査熱量計(TA Instruments-Waters L.L.C、New Castle、DE)を使用して試料を分析して、それらが単一のガラス転移温度(Tg)によって証明されるように均質であることを確認した。試料を疎粉末として調製し、Tzeroパン(TA Instruments)にロードし、<5%のRHで最大18時間平衡化した。その後、試料を密閉蓋により圧着し、変調モードにおいて、2.5℃/分の走査速度、±1.5℃/分の変調、および-20から200℃の走査範囲で実行した。
走査電子顕微鏡法(SEM):材料を、温度および湿度の増加への曝露の前後に、下記のSEM分析を使用して、結晶の存在ならびに粒子形状および形態の変化について判定した。試料のほぼ0.5mgを両面カーボンテープによりアルミニウム台に取り付けた。試料を15mVで10分間Au/Pdステージによりスパッタコーティングし(Hummer Sputtering System、モデル6.2、Anatech Ltd.)、SEMによって研究した。老化前の試料は、全般的に、平滑で丸い面および表面を有する球またはつぶれた球のような外観であった。物理的不安定性を示す粒子の外観の変化は、次を含む:個々の粒子の融合、表面性状の変化、全般的な粒子形状の変化、および粒子中の直線状縁部の出現(結晶性の可能性を示す)。
粉末X線回折(PXRD):Cu-Kα源を備えたRigaku MiniFlex600 X線回折計(Rigaku、The Woodlands、TX)を使用して試料を粉末X線回折を使用して分析して、それらがx線パターンの鋭いBragg回折ピークを持たないことによって証明されるように非晶質であることを確認した。走査速度は、3°から40°2θまで0.02°のステップサイズで2.5°/分に設定した。
エルロチニブを含む高ローディング剤形(HLDF)
エルロチニブは、高い薬物ローディングを有するSDFに非晶質形態として含まれた場合に不十分な物理的安定性を有する急速結晶化物質である。エルロチニブの一般的投薬量は、150mg/日(非小細胞肺がん)および100mg/日(膵臓がん)である。エルロチニブは、以下の測定された特性を有する:Log P 2.8、pKa(塩基) 5.3、0.5%模擬腸液(SIF)中の結晶質溶解度 3μg/mL、胃緩衝液(GB)中の結晶質溶解度 182μg/mL、0.5%SIF中の非晶質溶解度 約380μg/mL、Tm 157℃、Tg 39℃、Tm/Tg(K/K) 1.4。
エルロチニブおよび分散ポリマー(PMMAMAまたは酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースHグレード)を、所望のエルロチニブとポリマーの比で、3%の固体ローディングで、メタノール中に溶解することによって、噴霧溶液を製造した。溶液を、圧力旋回Schlick2.0噴霧ノズル(Dusen-Schlick GmbH、Untersiemau、ドイツ)を使用して、最大35kg/時の乾燥ガスの流速が可能な特注噴霧乾燥機(0.5~200グラムのバッチサイズに好適なもの)で、45~50℃の出口温度および150~160℃の入口温度により噴霧乾燥させた。噴霧乾燥プロセスの後に、噴霧乾燥分散体を35~40℃で18時間超の間Gruenberg Benchtop Lab Dryer(Thermal Product Solutions、New Columbia、PA)に入れて、残留溶媒を除去した。
エルロチニブ100mgを含む錠剤組成物1~6を表1(図1)に示すように製造し、表中、SAD=噴霧乾燥固体非晶質分散体、DL=薬物ローディング、H=HPMCAS-HFであり、「外部H」は、SADの外部にあるHPMCAS-HFを指す。錠剤は、表2(図2)に示す添加剤を含んでいた。添加剤は、Avicel(登録商標)PH-101微結晶セルロース(フィラー、DuPont Nutrition & Healthから入手可能)およびラクトース310(フィラー、UPI Chem.、Somerset、NJから入手可能)の1:1ブレンド、Ac-Di-Sol(クロスカルメロースナトリウム、崩壊剤、DuPont Nutrition & Healthから入手可能)、Cab-O-Sil(登録商標)ヒュームドシリカ(フィラー、Cabot Corporation、Alpharetta、GAから入手可能)、ならびにステアリン酸マグネシウム(MgSt;滑沢剤)であった。
錠剤組成物は、(i)表1に示すエルロチニブおよび分散ポリマー(PMMAMA(すなわち、Eudragit(登録商標)L100ポリマー、以下「PMMAMA-1」という);またはHPMCAS-H)を含む噴霧乾燥SAD、(ii)HPMCAS-HF(組成物3および4を除く)、ならびに(iii)表2に示すIG添加剤の顆粒内(IG)ブレンドを製造することによって作製した。その後、IGブレンドを表2に示す顆粒外(EG)添加剤とブレンドし、圧縮して、錠剤を形成した。
錠剤組成物を、方法に記載されたように、溶解性能および崩壊時間(0.01N HCl中)について評価した。結果を表3および図3に示す。溶解試験の胃部分の間の最大可能溶解濃度は、活性薬剤の質量および0.01N HClの体積を基準にして、500μg/mLであった。ベンチマーク錠剤中の35:65のエルロチニブ:HPMCAS-HのSADの百分率を70%に増加させて、25wt%のエルロチニブを含む400mg錠剤を提供することによって、追加の陰性対照(表3に示さず)を作製した。この錠剤組成物は、非常に長い崩壊時間(>1時間)および不十分な溶解性能(図示せず)を有していた。
エルロチニブを含むHLDFについての製造研究
組成物1および2(表1および2;図1および2)による錠剤を、2つの異なる手法によって製剤化した。第1の手法は、実施例1に記載されている。簡潔には、SAD、HPMCAS-HFおよびIG添加剤を組み合わせて、IGブレンドを形成した。その後、IGブレンドをEG添加剤と混合し、圧縮して、錠剤を形成した。第2の手法では、SADおよびIG添加剤を組み合わせて、IGブレンドを形成した。その後、IGブレンドをEG添加剤およびHPMCAS-HMP(中粒子サイズグレード、Shin-Etsu AQOATグレード:AS-HMP)と混合し、圧縮して、錠剤を形成した。したがって、2つの手法は、HPMCASのグレード-微細または中粒子サイズ-およびHPMCASの位置-IGブレンド中(内部)またはIGブレンドの外部-が異なっていた。処方を表4にまとめる。
錠剤の溶解性能を、方法に記載されたように評価した。結果を図4(300mg錠剤)および図5(400mg錠剤)に示す。結果は、類似のin vitroでの性能が得られることを示しており、CSPは、類似のin vitroでの効果でIGブレンド中またはIGブレンドの外部に含めることができる。
エルロチニブおよびPMMAMA-1またはHPMCAS-Hを含むSDDの物理的安定性
異なる薬物ローディング(エルロチニブ)および分散ポリマー-HPMCAS-HまたはPMMAMA-1-を含む噴霧乾燥分散体を製造し、方法に記載された加速物理的安定性研究に供した。薬物ローディングは、PMMAMA-1中25~75wt%およびHPMCAS-H中25~60wt%の範囲であった。安定性研究では、SADを規定の温度および相対湿度に設定したチャンバーの中の開放容器に入れた。SDDの試料を0週間、1週間、2週間、および4週間でチャンバーから取り出し、以下により評価した:
・ガラス転移温度(Tg)および潜在的な結晶化または溶融事象を測定するための示差走査熱量測定(DSC);
・結晶性の存在(試料質量の約3%まで)を測定するための粉末x線回折(PXRD);ならびに
・形態の視覚的変化、SADの融合、および/または結晶の存在を検出するための走査電子顕微鏡法(SEM)。
結果の概要を表5に提示し、表中、DL=薬物ローディングであり、RH=相対湿度である。例16~19は、PMMAMAを含まないベンチマーク組成物である。
結果は、PMMAMA-1を含む噴霧乾燥SADが、少なくとも最大65wt%の薬物ローディングで少なくとも4週間安定なままであった(すなわち、薬物が非晶質のままであった)ことを示している。HPMCAS-Hを含むベンチマークSADは、最大35wt%の薬物ローディングで少なくとも4週間安定なままであった;しかしながら、50~60wt%の薬物ローディングで、ベンチマークSADは、研究条件下でわずか1週間後に不安定性を示した。したがって、PMMAMAは、ベンチマーク分散ポリマーHPMCAS-Hよりも高い薬物ローディングで優れた安定性をもたらした。
図6は、SADのガラス転移温度Tgを相対湿度(RH)の関数として示すグラフである;EUD L100=Eudragit(登録商標)L100 PMMAMAポリマー。Eudragit(登録商標)L100 PMMAMAのTgは、191℃であり;HPMCAS-HのTgは、121℃である。結果は、所与の薬物ローディングおよびRH%で、PMMAMA系SADが、HPMCAS-H系SADよりも高いTg値を有することを示している。結果はまた、50wt%(組成物18)および60wt%(組成物19)の薬物ローディングを有するHPMCAS-H系SADが、RHが75%であるときに加速安定性保存温度(40℃)よりも低いTg値を有することを示しており、これは、これらのSADの不十分な安定性を説明する。対照的に、Eudragit(登録商標)L100 PMMAMA系SAD(組成物12、13、15)は全て、75%のRHで加速安定性保存温度(40℃)よりも高いTg値を有し、より高い保存安定性を有するPMMAMA系SADを提供する。
エルロチニブおよびPMMAMA-1またはPMMAMA-2を含むHLDF
PMMAMA-1またはPMMAMA-2(Eudragit(登録商標)S100ポリマー)中のエルロチニブを含むHLDFを製造した。各HLDFにおいて、噴霧乾燥SAD中の薬物ローディングは、65wt%であり、CSPは、顆粒内ブレンドに組み入れたHMCAS-HFであった。
33wt%の薬物および25wt%の薬物を含む錠剤を表7(図7)に示すように製造し、表中、H=顆粒内HPMCAS-HFである。添加剤は、組成物1(33wt%の薬物)および2(25wt%の薬物)について表2(図2)に開示されたものであった。
崩壊および溶解試験を、方法に記載されたように実施した。崩壊結果を表8に示す。組成物3は、17wt%の活性薬剤を含むベンチマーク575mg錠剤(表1参照)である。in vitroでの溶解結果を図8および9に示す:PMMAMA-1(Eudragit(登録商標)L100)(図8)、PMMAMA-2(Eudragit(登録商標)S100)(図9)。
結果は、PMMAMA-1およびPMMAMA-2を含むHLDFが、試験の腸部分(30分より後)において、ベンチマーク組成物と類似の崩壊時間および類似の性能を有していたことを示している。
加速安定性試験を、方法に記載されたように、50℃および75%のRHで実施した。HPMCAS-H中の35wt%エルロチニブを含む基準SADを比較として使用した。結果を表9にまとめる。物理的安定性の観点から、Eudragit(登録商標)S100ポリマー(PMMAMA-2)は、SAD中65wt%のエルロチニブローディングで、Eudragit(登録商標)L100ポリマー(PMMAMA-1)よりも劣っていた。
図10は、SADのガラス転移温度(Tg)を相対湿度(RH)の関数として示すグラフである。結果は、Eudragit(登録商標)L100 PMMAMA(1:1の比のカルボキシル基とエステル基を有する)を用いて製造されたPMMAMA系SADが、判定された全てのRH条件において、Eudragit(登録商標)S100 PMMAMA(1:2の比のカルボキシル基とエステル基を有する)を用いて製造されたSADよりも高いTg値を有することを示している。
ポサコナゾールを含む高ローディング剤形(HLDF)
ポサコナゾールは、高い薬物ローディングを有するSDFに非晶質形態として含まれた場合に不十分な物理的安定性を有する急速結晶化物質である。ポサコナゾール錠剤の投薬量は、重度の免疫不全に起因して侵襲性アスペルギルスおよびカンジダ感染症を発症する危険性が高い患者、例えば移植片対宿主病(GVHD)を有する造血幹細胞移植(HSCT)レシピエントまたは化学療法による長期の好中球減少症を伴う血液学的悪性腫瘍を有する患者におけるこれらの感染症の予防については、300mg/日であり、1日目に追加で300mgの負荷用量である。ポサコナゾールは、以下の特性を有する:Log P 4.5、pKa(塩基) 4.5、0.5%模擬腸液(SIF)中の結晶質溶解度 2.2μg/mL、胃緩衝液(GB)中の結晶質溶解度 33μg/mL、0.5%SIF中の非晶質溶解度 約55μg/mL、Tm 168℃、Tg 59℃、Tm/Tg(K/K) 1.3。
ポサコナゾールおよび分散ポリマー(PMMAMAまたは酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースHグレード)を、所望のポサコナゾールとポリマーの比で、4%の固体ローディングで、18/15(w/w)ジクロロメタン/メタノール中に溶解することによって、噴霧溶液を製造した。溶液を、圧力旋回Schlick2.0噴霧ノズル(Dusen-Schlick GmbH、Untersiemau、ドイツ)を使用して、最大35kg/時の乾燥ガスの流速が可能な特注噴霧乾燥機(0.5~200グラムのバッチサイズに好適なもの)で、35~40℃の出口温度および90~100℃の入口温度により噴霧乾燥させた。噴霧乾燥プロセスの後に、噴霧乾燥分散体を30~35℃で18時間超の間Gruenberg Benchtop Lab Dryer(Thermal Product Solutions、New Columbia、PA)に入れて、残留溶媒を除去した。
ポサコナゾール100mgを含む錠剤組成物24~27を表10(図11)に示すように製造し、表中、SAD=噴霧乾燥固体非晶質分散体、DL=薬物ローディング、H=HPMCAS-HFであり、「外部H」は、SADの外部にあるHPMCAS-HFを指す。錠剤は、表11(図12)に示す添加剤を含んでいた。添加剤は、Avicel(登録商標)PH-101微結晶セルロース(フィラー、DuPont Nutrition & Healthから入手可能)およびラクトース310(フィラー、UPI Chem.、Somerset、NJから入手可能)の1:1ブレンド、Ac-Di-Sol(クロスカルメロースナトリウム、崩壊剤、DuPont Nutrition & Healthから入手可能)、Cab-O-Sil(登録商標)ヒュームドシリカ(フィラー、Cabot Corporation、Alpharetta、GAから入手可能)、ならびにステアリン酸マグネシウム(MgSt;滑沢剤)であった。
錠剤組成物は、(i)表10(図11)に示すポサコナゾールおよび分散ポリマー(PMMAMA(すなわち、Eudragit(登録商標)L100ポリマー、以下「PMMAMA-1」という)またはHPMCAS-H)を含む噴霧乾燥SAD、(ii)HPMCAS-HF(組成物3および4を除く)、ならびに(iii)表11(図12)に示すIG添加剤の顆粒内(IG)ブレンドを製造することによって作製した。その後、IGブレンドを表2に示す顆粒外(EG)添加剤とブレンドし、圧縮して、錠剤を形成した。
錠剤組成物を、方法に記載されたように、溶解性能および崩壊時間(0.01N HCl中)について評価した。ポサコナゾール錠剤のin vitroでの溶解プロファイルを、追加の陰性対照としての市販の結晶質ポサコナゾール懸濁剤、Noxafil(登録商標)(1ml当たり40mg、Merck & Co.,Inc.)と比較した。ポサコナゾールの100mgの用量を達成するために、Noxafil懸濁剤2.5mlを溶解ベッセルに添加した。結果を表12および図13に示す。
ポサコナゾールおよびPMMAMA-1またはHPMCAS-Hを含む噴霧乾燥分散体の物理的安定性
異なる薬物ローディング(ポサコナゾール)および分散ポリマー-HPMCAS-HまたはPMMAMA-1-を含む噴霧乾燥分散体を製造し、方法に記載された加速物理的安定性研究に供した。薬物ローディングは、PMMAMA-1中50~85wt%およびHPMCAS-H中35~75wt%の範囲であった。安定性研究では、SADを規定の温度および相対湿度に設定したチャンバーの中の開放容器に入れた。
SDDの試料を0週間、1週間、2週間、および4週間でチャンバーから取り出し、以下により評価した:
・ガラス転移温度(Tg)および潜在的な結晶化または溶融事象を測定するための示差走査熱量測定(DSC);
・結晶性の存在(試料質量の約3%まで)を測定するための粉末x線回折(PXRD);ならびに
・形態の視覚的変化、SADの融合、および/または結晶の存在を検出するための走査電子顕微鏡法(SEM)。
結果の概要を表13に提示し、表中、DL=薬物ローディングであり、RH=相対湿度である。例30~32は、PMMAMAを含まないベンチマーク組成物である。
結果は、PMMAMA-1を含む噴霧乾燥SADが、少なくとも最大85wt%の薬物ローディングで少なくとも4週間安定なままであった(すなわち、薬物が非晶質のままであった)ことを示している。HPMCAS-Hを含むベンチマークSADは、最大50wt%の薬物ローディングで少なくとも4週間安定なままであった。しかしながら、50wt%の薬物ローディングで、ベンチマークSADは、研究条件において4週間後に最小限の粒子凝集を示した。75wt%の薬物ローディングで、ベンチマークSADは、研究条件において1週間後に粒子融合および結晶を示した。したがって、PMMAMAは、ベンチマーク分散ポリマーHPMCAS-Hよりも高い薬物ローディングで優れた安定性をもたらした。
図14は、SADのガラス転移温度Tgを相対湿度(RH)の関数として示すグラフである;EUD L=Eudragit(登録商標)L100 PMMAMAポリマー。Eudragit(登録商標)L100 PMMAMAのTgは、191℃であり;HPMCAS-HのTgは、121℃である。結果は、所与の薬物ローディングおよびRH%で、PMMAMA系SADが、HPMCAS-H系SADよりも高いTg値を有することを示している。結果はまた、50wt%(組成物31)および75wt%(組成物32)の薬物ローディングを有するHPMCAS-H系SADが、RHが75%であるときに加速安定性保存温度(50℃)よりも低いTg値を有することを示しており、これは、これらのSADの不十分な安定性を説明する。対照的に、Eudragit(登録商標)L100 PMMAMA系SAD(組成物27、28、29)は全て、75%のRHで加速安定性保存温度(50℃)よりも高いTg値を有し、より高い保存安定性を有するPMMAMA系SADを提供する。
開示された発明の原理を適用することができる多くの可能な実施形態を考慮して、例示された実施形態は、本発明の好ましい例にすぎず、本発明の範囲を限定するものと解すべきではないことを認識すべきである。その代わりに、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定められる。したがって、本発明者らは、これらの特許請求の範囲の趣旨および範囲内に入る全てのものを本発明として特許請求する。