JP7333243B2 - 溶接速度算出システム、溶接速度算出方法及び溶接速度算出装置 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、センサ配置が限定される作業スペースにおいて、曲率を有する溶接線上の溶接速度を連続的に算出することを目的とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
図1は、溶接速度算出装置1の構成等を説明する図である。溶接速度算出装置1は、一般的なコンピュータであり、中央制御装置11、マウス、キーボード等の入力装置12、ディスプレイ等の出力装置13、主記憶装置14、補助記憶装置15及び通信装置16を備える。これらは、バスで相互に接続されている。補助記憶装置15は、溶接速度情報31(詳細後記)を記憶している。
図2は、溶接防護具を説明する図である。溶接防護具4は、顔面形状又はヘルメット形状を有し、作業員5の頭部に固定される。図2は、溶接防護具4を外側(作業員5に対面する側)から見た正面図である。溶接防護具4は、観察窓41、赤外照明42及び赤外ステレオカメラ43を有する。観察窓41は、アーク光を十分遮断する半透明の素材で生成された覗き窓である。作業員5は、観察窓41を介して溶接線及び溶接トーチ3を視認する。赤外照明42は、赤外マーカ(詳細後記)に対して赤外線を発する光源である。赤外ステレオカメラ43は、赤外線を受光する2台の赤外カメラの集合体である。
図3は、溶接トーチを説明する図である。溶接される配管6a及び配管6b(母材)の間の線45は、溶接線(これから溶接する線)である。作業員5は、溶接トーチ3を右手で把持し、溶接トーチ3の先端を溶接線45に接触させながら、左から右の方向に移動させる。溶接線45のうち溶接トーチ3が通過した箇所では、母材が融合されている。溶接トーチ3には、赤外マーカ44が取り付けられている。
・赤外マーカは不安定なアーク光を反射せず、赤外照明42が照射した赤外線のみを反射するため、可視化されたオプティカルフロー(軌跡)はアーク光にかき消されず、人間の目に見やすい。
・赤外ステレオカメラ43及び赤外照明42の設置スペースを節約することができる。
・赤外マーカ44への入射光及びその反射光が、作業員5の手以外の障害物に遮られることがない。
図4は、平面画像を説明する図である。赤外ステレオカメラ43を構成する2台の赤外カメラのそれぞれは、“単体カメラ”と呼ばれる。図4の平面画像51は、単体カメラの受光素子面が捉えた赤外マーカ44の画像である。なお、図4の溶接トーチ3は、説明のわかりやすさのために記載されているのであって、溶接トーチ3自身が赤外線を反射する材質で作成されている必要はない(図5及び図6においても同様)。
図5は、奥行を説明する図である。図5は、単体カメラ43a及び単体カメラ43b及び赤外マーカ44を上方向から見下ろした俯瞰図であり、2つの単体カメラの収差を説明している。因みに、単体カメラ43a及び単体カメラ43bのそれぞれが撮像した平面画像は、当然図4のようになる。図5において、θaは、単体カメラ43aの受光素子面の中心と時刻t0における赤外マーカ44とを結ぶ直線が受光素子面となす角度(X軸を基準として反時計回り)である。θbは、単体カメラ43bの受光素子面の中心と時刻t0における赤外マーカ44とを結ぶ直線が受光素子面となす角度である。θbからθaを減算した差分は、“収差”と呼ばれる。
図6は、3次元空間の距離を説明する図である。図6は、図4におけるXY平面と図5におけるXZ平面を統合したXYZ空間の図である。赤外マーカ44は、時刻t0には点(x0,y0,z0)に位置し、時刻t1には点(x1,y1,z1)に位置し、その間、距離D1だけ移動している。
なお、“Dn=√[(xn-xn-1)2+(yn-yn-1)2+(zn-zn-1)2]”が成立する。溶接速度算出装置1は、空間内の溶接速度“Vn=Dn/(tn-tn-1)”を算出することができる。
図7は、3次元空間内の配管を説明する図である。単体カメラが撮像した平面画像は、多くの場合、符号52のように、配管6a及び配管6bの側面を撮像したものになる。時刻t0から時刻t1までの間に、赤外マーカ44は、Y軸の正の方向に移動する。仮に配管6a及び配管6bの長さ方向から溶接線を含む平面を見た場合の平面画像が符号53である。
ランドマーク46は、任意の固定点に配置された赤外マーカである。赤外ステレオカメラ43が常にある点に固定され、溶接トーチ3上の赤外マーカ44のみが移動する場合、特に問題はない。しかしながら、赤外ステレオカメラ43は、作業員5の頭部とともに移動する(頭ブレ)。すると、仮に、溶接トーチ3上の赤外マーカ44がある点に固定されている間に、頭ブレが発生すると、赤外ステレオカメラ43は、溶接トーチ3上の赤外マーカ44が移動したと誤認識してしまう。
図8は、溶接速度情報を説明する図である。溶接速度情報31においては、時刻欄111に記憶された時刻に関連付けて、X座標欄112にはX座標値が、Y座標欄113にはY座標値が、Z座標欄114にはZ座標値が、溶接速度欄115には溶接速度が、溶接電流欄116には溶接電流値が、溶接電圧欄117には溶接電圧値が、溶接電力欄118には溶接電力値が記憶されている。
X座標欄112のX座標値は、ある1つの単体カメラが撮像した溶接トーチ3上の赤外マーカ44のX座標(図4のx0、x1、・・・)である。
Y座標欄113のY座標値は、当該1つの単体カメラが撮像した溶接トーチ3上の赤外マーカ44のY座標(図4のy0、y1、・・・)である。
溶接速度欄115の溶接速度は、溶接トーチ3上の赤外マーカ44の空間内の溶接速度である。なお、前記したように、“Vn=√[(xn-xn-1)2+(yn-yn-1)2+(zn-zn-1)2]/(tn-tn-1)”が成立している。さらに、Vnは、ランドマーク46の座標値の変化を減算することによって誤認識が除かれた後の値である。
溶接電圧欄117の溶接電圧値は、溶接機7が溶接トーチ3に供給する電力の電圧値である。
溶接電力欄118の溶接電力値は、溶接機7が溶接トーチ3に供給する電力の電力値である。溶接電力欄118の溶接電力値は、同一行の溶接電流欄116の溶接電流値と、溶接電圧欄117の溶接電圧値とを乗算して得られる計算値が記憶されてもよい。より一般的には、当該欄には、溶接トーチ3を介して溶接線に供給されるエネルギの量(瞬間値又は僅少期間における積分値)を定義できる任意の物理量が記憶される。
図9は、処理手順のフローチャートである。図9の説明の途中で、適宜図10を参照する。
ステップS201において、溶接速度算出装置1の同期処理部25は、nに“0”を代入する。具体的には、同期処理部25は、処理進行用のカウンタ値nに“0”を代入する。nの値は、時刻tnのnに対応している。
ステップS202において、溶接速度算出装置1の平面画像追跡部21は、時刻tnの赤外マーカの平面位置を取得する。具体的には、平面画像追跡部21は、赤外ステレオカメラ43の単体カメラのいずれかから、現時点(時刻tn)における赤外マーカ44のX座標値及びY座標値を取得する。
ステップS204において、溶接速度算出装置1のエネルギ量取得部24は、時刻tnの溶接電流値及び溶接電圧値を取得する。具体的には、エネルギ量取得部24は、溶接機7から、現時点(時刻t0)における溶接電流値及び溶接電圧値を取得する。
なお、初回の繰り返し処理においては、“n=0”であることから、溶接速度算出部23は、2時刻間の溶接速度を算出することができない。そこで、初回の繰り返し処理においては、溶接速度算出部23は、ステップS206を省略する。
ステップS202~S209の繰り返し処理を終了した段階で、各時刻についての、赤外マーカ44のX座標値、Y座標値及びZ座標値、溶接速度(時点t0分を除く)、溶接電流値、溶接電圧値、並びに、溶接電力値が補助記憶装置15に記憶されていることになる。
溶接速度算出部23は、ステップS206において、溶接速度のZ軸成分の絶対値が所定の閾値以下になったか否かを判断する。そして、Z軸成分の絶対値が所定の閾値以下になった場合、溶接速度算出部23は、出力装置13に警報を出力する。さらにその場合、記録処理部26は、ステップS207において、当該時刻のレコードに関連付けて“注意フラグ”を記憶する。曲率を有する配管等を溶接する場合、溶接速度のZ軸成分の絶対値が所定の閾値以下になった時点で、例えば、作業員の前屈不足等に起因する施工不良が発生している可能性が高い。
溶接中の溶接トーチ3の動きは、溶接トーチ3の先端の熱発生分布に変化を与える。そこで、母材と溶接トーチ3との関係を示す“当たり角度”を記録することは、品質管理の点で有用である。
図8のX座標値及びY座標値は、平面画像追跡部21が取得したものであり、図8のZ座標値は、奥行き算出部22が取得したものである。ここでのXY平面は、単体カメラの受光素子面である。X軸は、受光素子面の左下の原点(図4参照)から水平方向に伸長し、Y軸は、原点から垂直方向に伸長し、Z軸は、原点から、原点における受光素子面の法線の方向に伸長している。
時刻欄122の時刻は、図8の時刻と同じである。
溶接トーチ位置欄123は、X座標欄123a、Y座標欄123b及びZ座標欄123cから構成される。X座標欄123aのX座標値、Y座標欄123bのY座標値及びZ座標欄123cのZ座標値は、図13のXYZ空間におけるX座標値、Y座標値及びZ座標値(直交座標値)である。
図14から明らかなように、1つの時刻において、6つの直交座標の値及び3つの極座標の値が取得される。通常、r0=r1=r2=・・・が成立する。画像のピクセル値に誤差が発生すると、この関係が成立しなくなる。
本実施形態の溶接速度算出システムの効果は以下の通りである。
(1)溶接速度算出システムは、狭隘な作業スペースにおいても溶接速度を算出できる。
(2)溶接速度算出システムは、溶接速度と同時に溶接電流等を取得できる。
(3)溶接速度算出システムは、曲率を有する溶接線上の溶接速度を算出できる。
(4)溶接速度算出システムは、溶接速度等を表示、記憶するので、溶接作業の品質を容易に確認できる。
(5)溶接速度算出システムは、赤外線を使用して高精度で溶接速度を算出できる。
(6)溶接速度算出システムは、溶接トーチの当たり角度を算出できる。
(7)溶接速度算出システムは、カメラブレの影響を相殺することができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆どすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
3 溶接トーチ
4 溶接防護具
5 作業員
6a、6b 配管
8 ネットワーク
11 中央制御装置
12 入力装置
13 出力装置
14 主記憶装置
15 補助記憶装置
16 通信装置
21 平面画像追跡部
22 奥行算出部
23 溶接速度算出部
24 エネルギ量取得部
25 同期処理部
26 記録処理部
27 表示処理部
31 溶接速度情報
42 赤外照明(光源)
43 赤外ステレオカメラ
44 赤外マーカ
46 ランドマーク
Claims (9)
- 作業員が把持する溶接トーチに付されたマーカに対して光を照射する光源、及び、前記マーカが反射した光を受光するカメラを有し、前記作業員が装着する撮像装置と、
前記カメラが撮像した前記マーカの画像を使用して溶接トーチの溶接速度を算出する溶接速度算出装置と、
を備え、
前記溶接速度算出装置は、
前記マーカの所定期間における移動軌跡、及び、空間内のある点に固定されたランドマークの同期間における移動軌跡を表示すること、
を特徴とする溶接速度算出システム。 - 前記溶接速度算出装置は、
前記溶接トーチに供給されるエネルギの量を取得し、前記溶接トーチの溶接速度及び前記取得したエネルギの量を時刻で同期させ関連付けること、
を特徴とする請求項1に記載の溶接速度算出システム。 - 前記撮像装置は、
溶接防護具に装備されており、
複数のカメラを有し、
前記溶接速度算出装置は、
前記複数のカメラのうちの1つが撮像した平面画像における前記マーカの平面位置を取得し、
前記複数のカメラが撮像した平面画像の収差に基づき前記マーカの奥行を取得し、
前記取得した平面位置及び奥行に基づき、前記マーカの3次元位置を取得し、
前記取得した3次元位置に基づき、前記溶接トーチの溶接速度を算出すること、
を特徴とする請求項2に記載の溶接速度算出システム。 - 前記溶接速度算出装置は、
前記溶接速度及び前記エネルギの量を時系列で記憶し、表示すること、
を特徴とする請求項3に記載の溶接速度算出システム。 - 前記光源は、
前記マーカに赤外線を照射し、
前記カメラは、
前記マーカが反射した赤外線を受光すること、
を特徴とする請求項4に記載の溶接速度算出システム。 - 前記溶接速度算出装置は、
前記溶接トーチの当たり角度を算出すること、
を特徴とする請求項5に記載の溶接速度算出システム。 - 前記溶接速度算出装置は、
空間内のある点に固定されたランドマークの座標値の変化を、前記マーカの座標値の変化から減算すること、
を特徴とする請求項6に記載の溶接速度算出システム。 - 溶接速度管理システムを構成し、作業員が装着する撮像装置が有する光源は、
前記作業員が把持する溶接トーチに付されたマーカに対して光を照射し、
前記撮像装置が有するカメラは、
前記マーカが反射した光を受光し、
前記溶接速度管理システムを構成する溶接速度算出装置は、
前記カメラが撮像した前記マーカの画像を使用して前記溶接トーチの溶接速度を算出し、
前記マーカの所定期間における移動軌跡、及び、空間内のある点に固定されたランドマークの同期間における移動軌跡を表示すること、
を特徴とする溶接速度算出システムの溶接速度算出方法。 - 作業員が把持する溶接トーチに付されたマーカに対して光を照射する光源、及び、前記マーカが反射した光を受光するカメラを有し、前記作業員が装着する撮像装置と通信可能であって、
前記カメラが撮像した前記マーカの画像を使用して前記溶接トーチの溶接速度を算出し、
前記マーカの所定期間における移動軌跡、及び、空間内のある点に固定されたランドマークの同期間における移動軌跡を表示すること、
を特徴とする溶接速度算出装置。
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