以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、実現例について添付の図面を参考にして詳細に説明する。しかし、実現例は様々な異なる形態で実現されてよく、本明細書で説明する実現例に限定されない。
本明細書において、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などが、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などの「上(on)」または「下(under)」に形成されるものとして記載される場合において、「上(on)」と「下(under)」は、「直接(directly)」または「他の構成要素を介して(indirectly)」形成されるものをすべて含む。また、各構成要素の上/下に対する基準は、図面を基準に説明する。なお、図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさを意味するものではない。また、明細書全体に亘って、同一参照符号は同一構成要素を指す。
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
本明細書において、単数表現は、特別な説明がなければ、文脈上解釈される単数または複数を含む意味で解釈される。
また、本明細書に記載されている構成成分の量、反応条件などを表すすべての数字および表現は、特に記載がない限り、すべての場合に「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
本明細書において、第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために用いられるものであり、前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別するためにのみ用いられる。
また、本明細書において「置換された」ということは、特に記載がない限り、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換の脂環式有機基、置換または非置換のヘテロ環基、置換または非置換のアリール基、および置換または非置換のヘテロアリール基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換されたことを意味し、前記列挙された置換基は互いに結合して環を形成し得る。
[ポリアミド系フィルム]
実現例は、高い透過度、低いヘイズ、低い黄色度のような優れた光学特性を有するのみならず、モジュラスが優れて厚さが均一なポリアミド系フィルムを提供する。
一実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含む。
前記ポリアミド系フィルムは、2θが14°~16°の区間に最高点が位置する第1ピークを含むXRDパターンを有する。例えば、前記第1ピークは、2θが14°~16°の区間に最大値を含む。
本明細書で使用される用語「ピーク」とは、XRDパターン上の特定のポイントにおいて強度値の変化量(傾き)が正の値から負の値に変わるとき、当該ポイント(最高点)を中心にして所定の前後区間に形成された上方に突き出るパターン(強度値の集合)のことを意味し得る。
一部の実現例において、結晶性成分と非晶性成分とを含む試料の場合には、全体の強度から前記非晶性成分に起因する強度(非晶性強度)を除いて、前記結晶性成分に起因する強度(結晶性強度)が導出され、前記ピークは、前記結晶性成分から判別され得る。例えば、XRDパターンにおいて、前記結晶性成分が表れる区間(結晶性区間)を除いた区間(非晶性区間)の強度は、非晶性強度と定義されてよく、前記非晶性区間に位置する非晶性強度のトレンド(例えば、指数関数形態)により、前記結晶性区間に存在する非晶性強度を分離し得る。前記結晶性区間内外の非晶性強度を連結してベースラインを設定することができ、前記ベースラインの法線がXRDパターンと交差する長さ(前記ベースラインを基準にした垂直の高さ)を、修正された強度と定義し得る。前記修正された強度からXRDパターンのピークおよび最高点が判断され得る。
本明細書で使用される用語「最大値」とは、XRDパターンの所定の2θ区間にピークが存在するとき、前記ピークの最高点における強度値(例えば、最大(最高)強度)のことを意味し得る。
この場合、特定の結晶面間の距離を有する結晶形を有するポリアミド系重合体の比率が増加し、これにより、ポリアミド系フィルムの光学および機械的特性が向上され得る。一部の実現例において、前記第1ピークの最大値は、2θが14°~15°の区間に位置し得る。
一実現例において、前記第1ピークは、XRDグラフの2θが10°~30°の区間における最高点を含み得る。例えば、2θが10°~30°の区間内でXRDパターンの最高強度を含む部分が、前記第1ピークと定義され得る。
一実現例において、前記第1ピークに対応する結晶面間の距離は5.4Å~6.3Åであり得る。例えば、前記結晶面間の距離は、前記第1ピークの最高点および/または前記最高点を含む所定区間の2θに対応し得る。一部の実現例において、前記第1ピークに対応する結晶面間の距離は5.8Å~6.3Å、5.9Å~6.3Å、または5.9Å~6.2Åであり得る。
一実現例において、前記ポリアミド系重合体は、結晶面間の距離が異なる複数の結晶形を含み得る。前記ポリアミド系重合体は、前記複数の結晶形の中で結晶面間の距離が前述の範囲内にある結晶形の比率が最も高くて良い。
例示的な実現例によると、結晶面間の距離が前述の範囲を満足して、相対的に結晶面間の距離が大きい結晶形を有するポリアミド系重合体の比率が高いほど、前記ポリアミド系重合体から形成されたフィルムの黄色度、透光度、ヘイズなどの光学特性、およびモジュラス、厚さ均一度などの機械的特性が向上し得る。
一実現例において、前記XRDパターンは、2θが20°~25°の区間内に第2ピークをさらに含み得る。前記第2ピークの最大値(Pb)に対する前記第1ピークの最大値(Pa)の比(Pa/Pb)は、1.03~1.15であり得る。例えば、前記最大値は、XRDグラフの強度0ポイントからピークの最高点までの高さ(絶対強度値)であり得る。前記最高点は、前記修正された強度から導出され得る。
例示的な実現例において、前記第2ピークの最大値に対して前記第1ピークの最大値が前記範囲を満足すると、前記ポリアミド系重合体から形成されたフィルムのヘイズ、透過度、黄色度、モジュラス、厚さ均一度などが向上し得る。好ましくは、前記Pa/Pbは、1.03~1.13、1.08~1.15、1.08~1.13、または1.10~1.12であり得る。
一部の実現例において、前記ポリアミド系フィルムは、XRDグラフ上の第1ピークおよび第2ピークを含む少なくとも2つのピークを含む。一部の実現例において、前記合算ピークは、前記第1ピークおよび前記第2ピークの和からなり得る。
前記第1ピークは、2θ値が10°以上20°未満の区間に最大値を有し、前記第2ピークは2θ値が20°~25°の区間に最大値を有する。例えば、前記第1ピークの最大値または最高点は2θ値が10°以上20°未満の区間に位置し、前記第2ピークの最大値または最高点は2θ値が20°~25°の区間に位置し得る。
そして、前記第1ピークおよび前記第2ピークが合算され合算ピークを形成する。一部の実現例において、前記合算ピークは、2θ値が2°~40°の区間、好ましくは5°~35°の区間に位置し得る。
本明細書で使用される用語「ピーク」は、XRDグラフ上、前記ピークが位置する区間外のXRDパターンが、例えば、関数で表現可能な特定のトレンドを有するとき、前記トレンドから外れたXRDパターンまたはその形状のことを意味し得る。
前記関数は、例えば、y=aex+bで表示される指数関数であり得る。なお、aおよびbは定数であり得る。
前記特定のトレンドはXRDグラフ上のベースラインと定義され得る。
例えば、前記ベースラインは、前記ポリアミド系重合体またはフィルムのうち非晶性成分のXRDパターンに対応し、前記ピークは結晶性成分のXRDパターンに対応し得る。
この場合、前記ピークは、強度値が前記ベースラインよりも大きい部分(前記ベースラインの上側に存在する部分)と定義され得る。前記ベースラインは、前記ピークの底辺として提供され得る。
例えば、前記第1ピークおよび前記第2ピークは、互いに異なる結晶面間の間隔を有する様々な結晶形に対応し得る。
XRDパターンに表れる、様々な結晶面間の間隔を有する結晶形の中で相対的に広い結晶面間の間隔を有する結晶形は、広間隔結晶形と定義され、相対的に狭い結晶面間の間隔を有する結晶形は、狭間隔結晶形と定義され得る。
一部の実現例において、前記第1ピークに対応する結晶性成分は、様々な結晶面間の間隔を有する結晶形の中で相対的に広い結晶面間の間隔を有する広間隔結晶形を高い比率で含み、前記第2ピークに対応する結晶性成分は、様々な結晶面間の間隔を有する結晶形の中で相対的に狭い結晶面間の間隔を有する狭間隔結晶形を高い比率で含み得る。
一部の実現例において、前記ピークの面積が測定され得る。
実現例によるポリアミド系フィルムは、狭間隔結晶比が67よりも大きいのであり得る。
前記狭間隔結晶比は下記式1で定義され得る。
[式1]
狭間隔結晶比=第2ピークの面積/合算ピークの面積×100
例えば、前記合算ピークの面積(合算面積)に対する前記第2ピークの面積(第2面積)は、67%超であり得る。この場合、前記ポリアミド系重合体または前記ポリアミド系フィルムに含まれている様々な結晶面間の間隔を有する結晶形の中で前記狭間隔結晶形が高い比率で含まれ、ポリアミド系フィルムのモジュラス、厚さ均一度などの機械的特性、および透過度、ヘイズ、黄色度などの光学特性がともに改善され得る。好ましくは、前記狭間隔結晶比は、69以上、72以上、または75以上であり得る。また、前記狭間隔結晶比は、90以下、85以下、80以下または78以下であり得る。
一実現例において、前記合算ピークの面積は、前記第1ピークの面積と前記第2ピークの面積との和と定義され得る。
一部の実現例において、ポリアミド系フィルムのXRDパターンは、下記式2を満足し
得る。
[式2]
第1ピークの面積/第2ピークの面積×100%≦48%
例えば、前記第1ピークの面積(第1面積)は、前記第2面積に対して48%以下であり得る。この場合、前記狭間隔結晶形が前記広間隔結晶形に比べて著しく多量(約2倍以上)で含まれ、ポリアミド系フィルムのモジュラス、厚さ均一度などの機械的特性、および透過度、ヘイズ、黄色度などの光学特性がともに改善され得る。好ましくは、前記第1ピークの面積は、前記第2面積に対して45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、または28%以下であり得る。また、前記第1ピークの面積は、前記第2面積に対して10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、または26%以上であり得る。
実現例によるポリアミド系フィルムのx方向屈折率(nx)は、1.60~1.70、1.61~1.69、1.62~1.68、1.64~1.68、1.64~1.66、または1.64~1.65であり得る。
また、ポリアミド系フィルムのy方向屈折率(ny)は、1.60~1.70、1.61~1.69、1.62~1.68、1.63~1.68、1.63~1.66、または1.63~1.64であり得る。
さらに、ポリアミド系フィルムのz方向屈折率(nz)は、1.50~1.60、1.51~1.59、1.52~1.58、1.53~1.58、1.54~1.58、または1.54~1.56であり得る。
前記ポリアミド系フィルムのx方向屈折率、y方向屈折率およびz方向屈折率の値が前記範囲であると、前記フィルムをディスプレイ装置に適用する際、前からだけでなく横から見ても視認性に優れ、広い視野角を実現し得る。
実現例によるポリアミド系フィルムの面内位相差(Ro)は、800nm以下であり得る。具体的に、前記ポリアミド系フィルムの面内位相差(Ro)は、700nm以下、600nm以下、550nm以下、100nm~800nm、200nm~800nm、200nm~700nm、300nm~700nm、300nm~600nm、または300nm~540nmであり得る。
また、実現例によるポリアミド系フィルムの厚さ方向位相差(Rth)は、5000nm以下であり得る。具体的に、前記ポリアミド系フィルムの厚さ方向位相差(Rth)は、4800nm以下、4700nm以下、4650nm以下、1000nm~5000nm、1500nm~5000nm、2000nm~5000nm、2500nm~5000nm、3000nm~5000nm、3500nm~5000nm、4000nm~5000nm、3000nm~4800nm、3000nm~4700nm、4000nm~4700nm、または4200nm~4650nmであり得る。
なお、前記面内位相差(in-plane retardation、Ro)は、フィルムの平面内の直交する2つの軸の屈折率の異方性(△nxy=|nx-ny|)とフィルム厚さ(d)との積(△nxy×d)で定義されるパラメータとして、光学的等方性または異方性を示す尺度である。
また、厚さ方向位相差(thickness direction retardation、Rth)とは、フィルムの厚さ方向の断面から見たときの2つの複屈折である△nxz(=|nx-nz|)および△nyz(=|ny-nz|)にそれぞれフィルムの厚さ(d)を乗じて得られる位相差の平均と定義されるパラメータである。
前記ポリアミド系フィルムの面内位相差および厚さ方向位相差の値が前記範囲であると、前記フィルムをディスプレイ装置に適用する際、光学歪みおよび色相歪みを最小化することができ、側面から光が漏れてくる光漏れ現象も最小化することができる。
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体に加えて、フィラーをさらに含み得る。
前記フィラーの平均粒径は60nm~180nmであり得る。具体的に、前記フィラーの平均粒径は、80nm~180nm、100nm~180nm、110nm~160nm、120nm~160nm、または130nm~150nmであり得るが、これに限定されるものではない。
前記フィラーの平均粒径が前記範囲であると、他の無機系フィラーと比較したとき、相対的に多い量を投入しても、光学特性の低下が発生しない。
前記フィラーの屈折率は1.55~1.75であり得る。具体的に、前記フィラーの屈折率は、1.60~1.75、1.60~1.70、1.60~1.68、または1.62~1.65であり得るが、これに限定されるものではない。
前記フィラーの屈折率が前記範囲を満足することにより、nx、nyおよびnzに関する複屈折値が適切に調節され、フィルムの様々な角度における輝度が改善され得る。
一方、前記フィラーの屈折率が前記範囲から外れると、フィルム上でフィルムの存在が目視されたり、フィラーに起因してヘイズが上昇したりする問題が発生し得る。
前記フィラーの含有量は、ポリアミド系重合体固形分の総重量を基準に、100ppm~3000ppmであり得る。具体的に、前記フィラーの含有量は、ポリアミド系重合体固形分の総重量を基準に、100ppm~2500ppm、100ppm~2200ppm、200ppm~2500ppm、200ppm~2200ppm、250ppm~2100ppm、または300ppm~2000ppmであり得るが、これに限定されるものではない。
前記フィラーの含有量が前記範囲から外れると、フィルムのヘイズが急激に増加し、フィルム表面にフィラー同士の凝集現象が発生して異物感が目視されたり、生産工程において走行に問題が発生したり、巻脆性が低下し得る。
前記フィラーは、例えば、シリカおよび硫酸バリウムを含み得るが、これらに限定されるものではない。
前記フィラーは、粒子状で含まれ得る。また、前記フィラーは、表面に特殊なコーティング処理がなされていない状態であり、フィルム全体にむらなく分散され得る。
前記ポリアミド系フィルムが前記フィラーを含むことにより、前記フィルムは、光学特性の低下することなく、広い視野角を確保し得る。
前記ポリアミド系フィルム内の残留溶媒含有量は、1500ppm以下であり得る。例えば、前記残留溶媒の含有量は、1200ppm以下、1000ppm以下、800ppm以下、500ppm以下であり得るが、これに限定されるものではない。
前記残留溶媒は、フィルム製造時に揮発されず、最終的に製造されたフィルムに残っている溶媒の量のことを意味する。
前記ポリアミド系フィルム内の残留溶媒の含有量が前記範囲を超えると、フィルムの耐久性が低下し、輝度にも影響を与え得る。
実現例によるポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に曲率半径が3mmとなるようにフォルディングする際、破断するまでのフォルディング回数が20万回以上であり得る。
前記フォルディング回数は、フィルムの曲率半径が3mmとなるように曲げて広げることを1回とする。
前記ポリアミド系フィルムが、前述の範囲のフォルディング回数を満足することにより、フォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置に有用に適用され得る。
実現例によるポリアミド系フィルムの表面粗さは、0.01μm~0.07μmであり得る。具体的に、前記表面粗さは、0.01μm~0.07μmまたは0.01μm~0.06μmであり得るが、これに限定されるものではない。
前記ポリアミド系表面粗さが前記範囲を満足することにより、面光源の法線方向からの角度が大きくなる場合にも、高い輝度を実現するのに有利であり得る。
一実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、前記ポリアミド系重合体はアミド繰り返し単位を含み、必要に応じてイミド繰り返し単位をも含み得る。
一部の実現例において、前記ポリアミド系重合体は、前記イミド繰り返し単位を含まず、前記アミド繰り返し単位のみを含み得る。この場合、ポリアミド系フィルムのモジュラスが増加してフォルダブル/フレキシブルディスプレイ装置に効果的に適用され得る。
前記ポリアミド系フィルムはポリアミド系重合体を含み、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物およびジカルボニル化合物を含む反応物が同時または順次反応して形成され得る。具体的に、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物とが重合して形成され得る。
または、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物と、ジアンヒドリド化合物と、ジカルボニル化合物とを重合して形成され得る。この際、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位と、前記ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位とを含み得る。
一部の実現例において、前記ポリアミド系重合体は、前記ジアンヒドリド化合物を含まず重合されたものであり得る。この場合、前記ポリアミド系重合体は、イミド繰り返し単位を含まなくても良い。
一実現例によるポリアミド系フィルムは、ジアミン化合物とジカルボニル化合物とが重合されアミド結合を形成したポリアミド系重合体を含み得る。前記ポリアミド系重合体は、必要に応じてジアンヒドリド化合物がさらに重合されイミド結合を形成したポリアミドイミド系重合体を含んでも良い。
一部の実現例において、前記ポリアミド系重合体は、前記ポリアミドイミド系重合体を含まなくても良い。この場合、ポリアミド系フィルムのモジュラスが増加してフォルダブル/フレキシブルディスプレイ装置に効果的に適用され得る。
前記ジアミン化合物は、前記ジアンヒドリド化合物とイミド結合し、前記ジカルボニル化合物とアミド結合して共重合体を形成する化合物である。
前記ジアミン化合物は特に制限されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアミン化合物であり得る。例えば、前記ジアミン化合物は、下記化学式1の化合物であり得る。
[化1]
前記化学式1において、Eは、置換または非置換の2価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC4-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択され得る。
eは1~5の整数の中から選択され、eが2以上の場合、Eは互いに同一または異なり得る。
前記化学式1の(E)eは、下記化学式1-1a~1-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
具体的に、前記化学式1の(E)eは、下記化学式1-1b~1-13bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
より具体的に、前記化学式1の(E)eは、前記化学式1-6bで表される基または前記化学式1-9bで表される基であり得る。
一実現例において、前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物またはエーテル基(-O-)を有する化合物を含み得る。
前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物からなり得る。この際、前記フッ素含有置換基はフッ素化炭化水素基であり、具体的にはトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
他の実現例において、前記ジアミン化合物は1種のジアミン化合物を使用し得る。すなわち、前記ジアミン化合物は単一成分からなり得る。
例えば、前記ジアミン化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(トリフル
オロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-Bis(trifluoromethyl)-4,4'-diamin
odiphenyl、TFMB)を含み得るが、これに限定されるものではない。
前記ジカルボニル化合物は特に制限されないが、例えば、下記化学式3の化合物であり得る。
[化3]
前記化学式3において、Jは、置換または非置換の2価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC4-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択され得る。
jは1~5の整数の中から選択され、jが2以上の場合、Jは互いに同一または異なり得る。
Xはハロゲン原子である。具体的に、XはF、Cl、Br、I等であり得る。より具体的に、XはClであり得るが、これに限定されるものではない。
前記化学式3の(J)jは、下記化学式3-1a~3-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
具体的に、前記化学式3の(J)jは、下記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
より具体的に、前記化学式3の(J)jは、前記化学式3-1bで表される基、前記化学式3-2bで表される基、3-3bで表される基、または3-8bで表される基であり得る。
一実現例において、前記ジカルボニル化合物は、互いに異なる少なくとも2種のジカルボニル化合物を混合して使用し得る。前記ジカルボニル化合物が2種以上使用される場合、前記ジカルボニル化合物は、前記化学式3において(J)jが前記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択される2種以上が使用され得る。
他の実現例において、前記ジカルボニル化合物は、芳香族構造を含む芳香族ジカルボニル化合物であり得る。
前記ジカルボニル化合物は、下記のような構造を有するテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(1,1'-biphenyl-4,4'-dicarbonyl dichloride、BPDC)、イソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride、IPC)、またはその組み合わせを含み得るが、これに限定されるものではない。
一実現例において、前記ポリアミド系重合体は、2種以上のアミド系繰り返し単位を含み得る。
例えば、前記2種以上のアミド系繰り返し単位は、第1アミド系繰り返し単位および第2アミド系繰り返し単位を含み得る。前記第1アミド系繰り返し単位は、第1ジカルボニル化合物と前記ジアミン化合物とが反応して形成され、前記第2アミド系繰り返し単位は、第2ジカルボニル化合物と前記ジアミン化合物とが反応して形成され得る。
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、互いに異なる化合物であり得る。
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、それぞれ2つのカルボニル基を含み得る。前記第1ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基間の角度は、前記第2ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基間の角度よりも大きくて良い。
例示的な実施例において、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、互いに構造異性体の関係であり得る。構造異性体の関係にある2種のジカルボニル化合物を使用することにより、前述の結晶面間隔を満足するポリアミド系重合体を形成することができ、これにより、ポリアミド系重合体の光学および機械的特性を向上させ得る。
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、それぞれ芳香族ジカルボニル化合物(aromatic dicarbonyl compound)であり得る。
例えば、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物が互いに異なる芳香族ジカルボニル化合物であり得るが、これに限定されるものではない。
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物がそれぞれ芳香族ジカルボニル化合物であると、ベンゼン環を含んでいるので、製造されたポリアミド系重合体を含むフィルムの表面硬度および引張強度のような機械的物性を向上させるのに寄与し得る。
例えば、前記第1ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基の間角は160°~180°であり、前記第2ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基の間角は80°~140°であり得る。
例えば、前記ジカルボニル化合物は、第1ジカルボニル化合物および/または第2ジカルボニル化合物を含み得る。
例えば、前記第1ジカルボニル化合物はTPCを含み、前記第2ジカルボニル化合物はIPCを含み得るが、これに限定されるものではない。
前記第1ジカルボニル化合物としてTPC、前記第2ジカルボニル化合物としてIPCを適切に組み合わせて使用すると、製造されたポリアミド系重合体を含むフィルムは、高い耐酸化性、生産性、透光率、透明度、モジュラスなどを有することができ、ヘイズの低いものであり得る。
前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して、下記化学式Bで表される繰り返し単位を形成し得る。
[化B]
前記化学式Bにおいて、E、J、e、およびjに関する説明は前述の通りである。
例えば、前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して、化学式B-1およびB-2で表されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
[化B-1]
前記化学式B-1のyは1~400の整数である。
[化B-2]
前記化学式B-2のyは1~400の整数である。
一部の実現例において、前記第1アミド系繰り返し単位と前記第2アミド系繰り返し単位とのモル比は、10:90~79:21であり得る。前記第1および第2アミド系繰り返し単位のモル比を前述の範囲に設定することにより、ポリアミド系重合体の結晶面間隔を前述の範囲に調節することができる。したがって、ポリアミド系フィルムのヘイズ、透光度、黄色度、モジュラスなどの物性を改善させ得る。好ましくは、前記第1アミド系繰り返し単位と前記第2アミド系繰り返し単位とのモル比は、25:75~79:21、25:75~75:25、または30:70~75:25であり得る。
一部の実現例において、前記第1アミド系繰り返し単位と前記第2アミド系繰り返し単位とのモル比は、10:90~90:10であり得る。前記第1および第2アミド系繰り返し単位のモル比を前述の範囲に設定することにより、ポリアミド系重合体の結晶面間隔を前述の範囲に調節することができる。したがって、ポリアミド系フィルムのヘイズ、透光度、黄色度、モジュラスなどの物性を改善させ得る。好ましくは、前記第1アミド系繰り返し単位と前記第2アミド系繰り返し単位とのモル比は、25:75~79:21、25:75~75:25、または30:70~75:25であり得る。
一部の実現例において、前記ポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に厚さ偏差が4μm以下であり得る。前記厚さ偏差は、前記フィルムの任意の(random)の位置の10個のポイントを測定した厚さの平均に対する最大値または最小値間の偏差のことを意味し得る。この場合、前記ポリアミド系フィルムは、均一な厚さを有し、各ポイントにおける光学特性および機械的特性が均一に表れ得る。
前記ポリアミド系フィルムのヘイズが1%以下であり得る。例えば、前記ヘイズは0.5%以下または0.4%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
前記ポリアミド系フィルムの透過度は80%以上であり得る。例えば、前記透過度は、82%以上、85%以上、88%以上、89%以上、80%~99%、88%~99%、または89%~99%であり得るが、これに限定されるものではない。
前記ポリアミド系フィルムの黄色度(yellow index)は3以下であり得る。例えば、前記黄色度が2.5以下または2以下であり得るが、これに限定されるものではない。
前記ポリアミド系フィルムのモジュラスが5.0GPa以上であり得る。具体的に、前記モジュラスは、5.5GPa以上または6.0GPa以上であり得るが、これに限定されるものではない。
前記ポリアミド系フィルムの圧縮強度は、0.4kgf/μm以上であり得る。具体的に、前記圧縮強度は、0.45kgf/μm以上または0.46kgf/μm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
前記ポリアミド系フィルムをUTM圧縮モードで2.5mm球状のチップを用いて、10mm/minの速度で穿孔する際、クラックを含む穿孔最大径(mm)が60mm以下であり得る。具体的に、前記穿孔最大径が5mm~60mm、10mm~60mm、15mm~60mm、20mm~60mm、25mm~60mm、または25mm~58mmであり得るが、これに限定されるものではない。
前記ポリアミド系フィルムは、表面硬度がHB以上であり得る。具体的に、前記表面硬度がH以上または2H以上であり得るが、これに限定されるものではない。
前記ポリアミド系フィルムは、引張強度が15kgf/mm2以上であり得る。具体的に、前記引張強度が、18kgf/mm2以上、20kgf/mm2以上、21kgf/mm2以上、または22kgf/mm2以上であり得るが、これに限定されるものではない。
前記ポリアミド系フィルムは、伸び率が15%以上であり得る。具体的に、前記伸び率が、16%以上、17%以上、または17.5%以上であり得るが、これに限定されるものではない。
実現例によるポリアミド系フィルムは、低いヘイズ、低い黄色度、高い透過度などの優れた光学物性のみならず、均一な厚さを有するので、全面積にわたって均一でかつ優れた光学および機械的特性を有し得る。
前述の前記ポリアミド系フィルムの各物性は、40μm~60μmの厚さを基準とする。例えば、前記ポリアミド系フィルムの各物性は、50μmの厚さを基準とする。
前述のポリアミド系フィルムの構成成分および物性に関する特徴は、互いに組み合わされ得る。
例えば、前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、透過度が80%以上であり、ヘイズが1%以下であり、黄色度が3以下であり得る。
また、前記ポリアミド系フィルムの前述したXRDパターン上の特徴および物性は、前記ポリアミド系フィルムをなす成分の化学的、物理的な物性とともに、後述する前記ポリアミド系フィルムの製造方法において、各段階の工程条件が総合されて表れる結果であり得る。
例えば、ポリアミド系フィルムをなす成分の組成と含有量、フィルム製造工程における重合条件および熱処理条件などと、すべてのものが総合され、目的とするXRDパターン上の特徴を実現し得る
[ディスプレイ装置用カバーウィンドウ]
一実現例によるディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ポリアミド系フィルムおよび機能層を含む。
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、2θが14°~16°の区間に最高点が位置する第1ピークを含むXRDパターンを有する。
一部の実現例において、前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、XRDグラフ上の2θ値が10°以上20°未満の区間で最大値を有する第1ピークと、2θ値が20°~25°の区間で最大値を有する第2ピークとが合算された合算ピークを含み、前記式1で定義される狭間隔結晶比が67よりも大きい。
前記ポリアミド系フィルムに関する具体的な説明は、前述の通りである。
前記ディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ディスプレイ装置に有用に適用され得る。
前記ポリアミド系フィルムは、XRD分析パターン上のピーク、結晶面間隔および/または面積率が前述の特徴を有することにより、優れた光学および機械的特性を有し得る。
[ディスプレイ装置]
一実現例によるディスプレイ装置は、表示部と、前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウがポリアミド系フィルムおよび機能層を含む。
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、2θが14°~16°の区間に最高点が位置する第1ピークを含むXRDパターンを有する。
一部の実現例において、前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、XRDグラフ上の2θ値が10°以上20°未満の区間で最大値を有する第1ピークと、2θ値が20°~25°の区間で最大値を有する第2ピークとが合算された合算ピークを含み、前記式1で定義される狭間隔結晶比が67よりも大きい。
前記ポリアミド系フィルムおよびカバーウィンドウに関する具体的な説明は、前述の通りである。
図1は、一実現例によるディスプレイ装置の断面図を示したものである。
具体的に、図1には、表示部400、および前記表示部400上に第1面101および第2面102を有するポリアミド系フィルム100と機能層200とを含むカバーウィンドウ300が配置され、前記表示部400とカバーウィンドウ300との間に接着層500が配置されたディスプレイ装置が例示されている。
前記表示部400は、画像が表示され得るものであり、フレキシブル(flexible)な特性を有し得る。
前記表示部400は、画像を表示するための表示パネルであり得るが、例えば、液晶表示パネルまたは有機電界発光表示パネルであり得る。前記有機電界発光表示パネルは、前面偏光板および有機ELパネルを含み得る。
前記前面偏光板は、前記有機ELパネルの前面上に配置され得る。具体的に、前記前面偏光板は、前記有機ELパネルにおいて、画像が表示される面に接着され得る。
前記有機ELパネルは、ピクセル単位の自己発光によって画像を表示し得る。前記有機ELパネルは、有機EL基板および駆動基板を含み得る。前記有機EL基板は、ピクセルにそれぞれ対応する複数の有機電界発光ユニットを含み得る。具体的に、それぞれ陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、および陽極を含み得る。前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動的に接続され得る。すなわち、前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動電流などの駆動信号を印加し得るように接続されることにより、前記有機電界発光ユニットにそれぞれ電流を印加して、前記有機EL基板を駆動し得る。
また、前記表示部400および前記カバーウィンドウ300の間に接着層500が含まれ得る。前記接着層は、光学的に透明な接着層であってよく、特に限定されない。
前記カバーウィンドウ300は、前記表示部400上に配置され得る。前記カバーウィンドウは、実施例によるディスプレイ装置の最外郭に位置して、前記表示部を保護し得る。
前記カバーウィンドウ300は、ポリアミド系フィルムおよび機能層を含み得る。前記機能層は、ハードコーティング層、反射率低減層、防汚層、および防眩層からなる群より選択された1種以上であり得る。前記機能層は、前記ポリアミド系フィルムの少なくとも一面にコーティングされ得る。
実現例によるポリアミド系フィルムの場合、ディスプレイ駆動方式やパネル内部のカラーフィルター、積層構造などの変更もなく簡単にディスプレイ装置の外部にフィルム状で適用して、均一な厚さ、低ヘイズ、高透光率、高透明性を有するディスプレイ装置を提供することができるため、過度の工程変更やコスト増加を必要としないので、生産コストを削減できるという利点もある。
実現例によるポリアミド系フィルムは、高い透過度、低いヘイズ、低い黄色度のような優れた光学特性を有するのみならず、均一な厚さを有し得る。
また、実現例によるポリアミド系フィルムは、特定レベル以下の面内位相差および厚さ方向位相差を有することにより、光学歪みを最小化することができ、側面から光が漏れてくる光漏れ現象をも減少させ得る。
特に、ディスプレイ装置の画面サイズが大きくなるにつれ、画面の領域ごとに画像品質のばらつきが発生し得るが、実現例によるポリアミド系フィルムは、均一な厚さおよび光学特性を有することにより、画面全体の領域において均質な画像品質を実現することができる。
[ポリアミド系フィルムの製造方法]
一実現例は、ポリアミド系フィルムの製造方法を提供する。
一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物とを重合して、有機溶媒中でポリアミド系重合体を含む溶液を調製する段階と、前記重合体溶液をキャスティングした後、乾燥して、ゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階とを含む。
一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物とを重合して、有機溶媒中でポリアミド系重合体を含む溶液を調製する段階と、前記重合体溶液をタンクに投入する段階と、前記タンク内の溶液を押出およびキャスティングした後、乾燥して、ゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階とを含む。
図2を参照すると、一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、、有機溶媒中でジアミン化合物とジカルボニル化合物とを重合して、ポリアミド系重合体を含む溶液を調製する段階(S100)と、前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造する段階(S200)と、前記ゲルシートを熱処理する段階(S300)とを含む。
一部の実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、前記ポリアミド系重合体溶液の粘度を調節する段階(S110)、前記ポリアミド系重合体を熟成させる段階(S120)、および/または前記ポリアミド系重合体溶液を脱気する段階(S130)をさらに含み得る。
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体が主成分であるフィルムであって、前記ポリアミド系重合体は、構造単位としてアミド繰り返し単位を含む樹脂である。選択的に、前記ポリアミド系重合体は、イミド繰り返し単位を含んでも良い。
前記ポリアミド系フィルムの製造方法において、前記ポリアミド系重合体を調製するための重合体溶液は、反応器内で有機溶媒中にジアミン化合物およびジカルボニル化合物を同時または順次混合し、前記混合物を反応させて製造され得る(S100)。
一実現例において、前記重合体溶液を有機溶媒中にジアミン化合物およびジカルボニル化合物を同時投入して反応させることにより調製され得る。
他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とを混合および反応させてポリアミド(PA)溶液を調製する段階を含み得る。前記ポリアミド溶液は、アミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記ジカルボニル化合物として、互いに異なる2種のジカルボニル化合物を用いて行われ得る。この場合、前記2種のジカルボニル化合物は、同時または順次混合および反応し得る。好ましくは、第1ジカルボニル化合物と前記ジアミン化合物とが反応してプレポリマーが形成され、前記プレポリマーと第2ジカルボニル化合物とが反応して、前記ポリアミド系重合体が形成され得る。この場合、ポリアミド系重合体およびフィルムのXRDパターンを、前述のピーク位置、高さおよび/または面積で容易に調節し得る。
前記重合体溶液に含まれている重合体は、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物との重合に由来のアミド繰り返し単位を含む。
または、前記重合体溶液に含まれている重合体は、前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物との重合に由来のイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物との重合に由来のアミド繰り返し単位とを含んでも良い。
一実現例において、前記ポリアミド系重合体を含む溶液を調製する段階は、-20~25℃の温度条件にて行われ得る。例えば、前記溶媒と、前記ジアミン化合物と、前記ジカルボニル化合物との混合および反応は、-20~25℃の温度条件にて行われ得る。前記温度範囲から外れると、重合核の形成が少な過ぎるか多すぎて、目的とする特性を有するポリアミド系重合体の形成が難しくなり得る。これにより、XRDパターン上第1ピークの最高点の位置が2θ14°~16°の区間から外れたり、前記合算面積に対する前記第2面積の比が前述の範囲から外れたりし得る。したがって、ポリアミド系フィルムのモジュラスまたは黄色度などの特性が低下し得る。また、前記重合体溶液の粘度が所定の範囲に未達となり、製膜されたフィルムの厚さ偏差が増加し得る。好ましくは、前記ポリアミド系重合体を含む溶液を調製する段階は、-20~20℃、-20~15℃、-20~10℃、-15~20℃、-15~15℃、-15~10℃、-10~20℃、-10~15℃、-10~10℃、-8~20℃、-8~15℃、-8~10℃、-5~20℃、-5~15℃、または-5~10℃の温度条件にて行われ得る。
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量は10重量%~30重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量が前記範囲であると、押出および/またはキャスティング工程において、効果的にポリアミド系フィルムが製造され得る。また、製造されたポリアミド系フィルムは、向上されたモジュラスなどの機械的物性および低い黄色度などの光学物性を有し得る。
また他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記重合体溶液のpHを調整する段階をさらに含み得る。この段階において、前記重合体溶液のpHは4~7に調整され、例えば、4.5~7に調整され得る。
前記重合体溶液のpHは、pH調整剤を添加することにより調整され、前記pH調整剤は特に制限されないが、例えば、アルコキシアミン、アルキルアミンまたはアルカノールアミンなどのアミン系化合物を含み得る。
前記重合体溶液のpHを前述の範囲で調整することにより、前記重合体溶液から製造されたフィルムの欠陥発生を阻止し、黄色度およびモジュラスの面で目的とする光学物性および機械的物性を実現し得る。
前記pH調整剤は、前記重合体溶液内の単量体の総モル数を基準に、0.1モル%~10モル%の量で添加され得る。
前記重合体溶液を調製するために用いられる前記第1ジカルボニル化合物と前記第2ジカルボニル化合物とのモル比は、10:90~90:10または10:90~79:21であり、好ましくは、25:75~79:21、25:75~75:25、または30:70~75:25であり得る。
前記第1ジカルボニル化合物と前記第2ジカルボニル化合物とが、このような割合で用いられることにより、XRDパターンが前述の特徴を有するポリアミド系重合体およびフィルムを製造することができ、ポリアミド系フィルムの厚さ均一度、モジュラス、ヘイズ、透光度、黄色度などを改善させ得る。
前記範囲から外れると、輝度やヘイズのような光学物性が低下し得る。
前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物に関する説明は、前述の通りである。
一実現例において、前記有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、m-クレゾール(m-cresol)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)、およびクロロホルムからなる群より選択された1種以上であり得る。前記重合体溶液に用いられる有機溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)であり得るが、これに限定されるものではない。
前記重合体溶液は、-20℃~20℃、-20℃~10℃、-20℃~5℃、-20℃~0℃、または0℃~10℃にて保管され得る。
前記温度にて保管すると、前記重合体溶液の変質を防止することができ、含水率を低下させ、これにより製造されたフィルムの欠陥(defect)を防止し得る。
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階以降、前記重合体溶液の粘度を調節する段階(S110)をさらに含み得る。前記重合体溶液の粘度は、常温を基準に20万cPs~35万cPsに調節され得る。この場合、ポリアミド系フィルムの製膜性を向上させることにより、厚さ均一度を向上させ得る。
具体的に、前記重合体溶液を調製する段階は、有機溶媒中にジアミン化合物とジカルボニル化合物とを同時または順次混合および反応させて、第1重合体溶液を調製する段階と、前記ジカルボニル化合物を追加投入して目標粘度を有する第2重合体溶液を調製する段階とを含み得る。
前記第1重合体溶液を調製する段階と、第2重合体溶液を調製する段階の場合、調製された重合体溶液の粘度が異なり得る。例えば、前記第1重合体溶液よりも前記第2重合体溶液の粘度がさらに高くても良い。
前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度と、前記第2重合体溶液を調製する際の撹拌速度が異なり得る。例えば、前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度が前記第2重合体溶液を調製する際の撹拌速度より速くても良い。
一部の実現例において、前記重合体溶液または前記粘度調節された重合体溶液を熟成させ得る(S120)。
前記熟成は、前記重合体溶液を、24時間以上-10~10℃の温度条件に静置して行われ得る。この場合、前記重合体溶液に含まれているポリアミド系重合体または未反応物が、例えば、反応を仕上げたり、化学平衡をなしたりすることによって、前記重合体溶液が均質化され、これにより形成されたポリアミド系フィルムの機械的特性/光学特性がフィルムの全面積に対して実質的に均一となり得る。好ましくは、前記熟成は-5~10℃、-5~5℃または-3~5℃の温度条件にて行われ得る。
一実現例において、前記ポリアミド系重合体溶液を脱気する段階(S130)をさらに含み得る。前記脱気により前記重合体溶液中の水分を除去し、不純物を減少させることにより、反応収率を増加させることができ、最終フィルムの優れた表面外観および機械的物性などを実現し得る。
前記脱気は、真空脱泡または不活性ガスパージを含み得る。
前記真空脱泡は、前記重合体溶液が収容された反応器を0.1bar~0.7barに減圧した後、30分~3時間行われ得る。このような条件にて真空脱泡を行うことにより、前記重合体溶液内の気泡を低減させることができ、その結果、それにより製造されたフィルムの表面欠陥を防止し、ヘイズなどの優れた光学物性を実現し得る。
具体的に、前記パージは、不活性ガスを用いて前記タンクの内部圧力を1気圧~2気圧でパージする方法により行われ得る。このような条件にて前記パージを実施することにより、前記重合体溶液内部の水分を除去し、不純物を減少させることによって、反応収率を増加させることができ、ヘイズなどの優れた光学物性および優れた機械的物性などを実現し得る。
前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、およびラドン(Rn)からなる群より選択された1種以上であり得るが、これに限定されるものではない。具体的に、前記不活性ガスは窒素であり得る。
前記真空脱泡および前記不活性ガスパージは、別の工程で行われ得る。
例えば、真空脱泡する工程が行われ、それ以降に不活性ガスでパージする工程が行われ得るが、これに限定されるものではない。
前記真空脱泡および/または前記不活性ガスパージを行うことにより、製造されたポリアミド系フィルム表面の物性が向上し得る。
前述のように、有機溶媒中でポリアミド系重合体を含む溶液を調製した後、前記溶液にフィラーを投入しても良い。
前記フィラーの平均粒径は60nm~180nmであり、屈折率は1.55~1.75であり、含有量はポリアミド系重合体固形分の総重量を基準に、100ppm~3000ppmである。また、前記フィラーは、シリカまたは硫酸バリウムであり得る。
前記フィラーに関するさらに具体的な説明は、前述の通りである。
前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造し得る(S200)。
例えば、前記重合体溶液を支持体上で押出、塗布、および/または乾燥してゲルシートを形成し得る。
また、前記重合体溶液のキャスティング厚は200μm~700μmであり得る。前記重合体溶液が前記厚さ範囲にキャスティングされることにより、乾燥および熱処理を経て最終フィルムとして製造されたとき、適切な厚さと厚さ均一度を確保し得る。
前記重合体溶液は前述のように、常温にて20万cPs~35万cPsであり得る。前記粘度範囲を満足することにより、前記重合体溶液がキャスティングされる際に欠陥なく均一な厚さにキャスティングされ、乾燥過程において局所的/部分的な厚さ変化もなく、実質的に均一な厚さのポリアミドフィルムを形成することができる。
前記重合体溶液をキャスティングした後、60℃~150℃の温度にて5分~60分間乾燥してゲルシートを製造し得る。具体的に、前記重合体溶液を70℃~90℃の温度にて15分~40分間乾燥してゲルシートを製造し得る
前記乾燥中に前記重合体溶液の溶媒が一部または全部揮発され、前記ゲルシートが製造され得る。
乾燥されたゲルシートは、熱処理されてポリアミド系フィルムを形成し得る(S300)。
前記ゲルシートの熱処理は、例えば、熱硬化装置により行われ得る。
前記熱硬化装置は、熱風により前記ゲルシートを熱処理し得る。
熱風による熱処理を行うと、熱量が均等に付与され得る。もし、熱量が均等に分布されないと、満足のいく表面粗さを実現することができず、そうすると、表面張力が上昇し過ぎたり、低下し過ぎたりし得る。
前記ゲルシートの熱処理は、60℃~500℃の範囲で5分~200分間行われ得る。具体的に、前記ゲルシートの熱処理は、80℃~300℃の範囲で1.5℃~20℃の速度で昇温させながら10分~150分間行われ得る。
この際、前記ゲルシートの熱処理開始温度は60℃以上であり得る。具体的に、前記ゲルシートの熱処理開始温度は80℃~180℃であり得る。
また、熱処理中の最高温度は300℃~500℃であり得る。例えば、前記熱処理中の最高温度は、350℃~500℃、380℃~500℃、400℃~500℃、410℃~480℃、410℃~470℃、または410℃~450℃であり得る。
一実現例によると、前記ゲルシートの熱処理は2段階以上で行われ得る。
具体的に、前記熱処理は、60℃~120℃の範囲で5分~30分間行われる第1熱風処理段階と、120℃~350℃の範囲で10分~120分間行われる第2熱風処理段階とを含み得る。
このような条件にて熱処理することにより、前記ゲルシートが適切な表面硬度とモジュラスとを有するように硬化され、前記硬化フィルムが高い光透過率および低いヘイズ、適正なレベルの光沢度を同時に確保し得る。
一実現例によると、前記熱処理はIRヒーターを通過させる段階を含み得る。前記IRヒーターによる熱処理は、300℃以上の温度範囲で1分~30分間行われ得る。具体的に、前記IRヒーターによる熱処理は、300℃~500℃の温度範囲で1分~20分間行われ得る。
前記ポリアミド系フィルムは、前述の製造方法によって製造されることにより、光学的、機械的に優れた物性を示し得る。このような前記ポリアミド系フィルムは、柔軟性、透明性、特定レベルの輝度が求められる様々な用途に適用可能である。例えば、前記ポリアミド系フィルムは、太陽電池、ディスプレイ、半導体素子、センサーなどに適用され得る。
特に、前記ポリアミド系フィルムは、優れた厚さ均一度および光学特性を有するので、ディスプレイ装置用カバーウィンドウおよびディスプレイ装置に有用に適用され、フォルディング特性に優れてフォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置にも有用に適用され得る。
前記で述べた製造方法により製造されたポリアミド系フィルムに関する説明は、前述の通りである。
(実施例)
前記のことを下記実施例によりさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は、本発明を例示するものであるのみ、実施例の範囲がこれらのみに限定されるものではない。
(実施例1)
温度調節が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、10℃の窒素雰囲気下で、有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)567gを入れた後、芳香族ジアミンである2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)64g(0.200mol)を徐々に投入しながら溶解させた。
次いで、第1ジカルボニル化合物としてテレフタロイルクロリド(TPC)を徐々に投入しながら1時間撹拌した。そして、第2ジカルボニル化合物としてイソフタロイルクロリド(IPC)を総投入量に対して94%を投入し1時間撹拌して、第1重合体溶液を調製した。
そして、DMAc有機溶媒に10重量%のIPC溶液を準備した。
前記IPC溶液を前記第1重合体溶液に1mL添加した後、30分間撹拌させる過程を繰り返した。これにより、総投入量に対して約6%のIPCを反応させて、約23万cPsの粘度の有する第2重合体溶液を調製した。この際、反応温度は約10℃に調節された。
前記第2重合体溶液を約0℃にて約一日放置した後、ガラス板に塗布して乾燥した。乾燥されたポリアミド重合体をガラス板から剥離して熱処理した後、厚さ50μmのポリアミド系フィルムを得た。
ジアミン化合物(TFMB)およびジカルボニル化合物(IPC、TPC)の含有量に関して、ジアミン化合物100モルを基準に、ジカルボニル化合物のモル数を表1に記載した。
(実施例2~4および比較例1~4)
下記表1に記載されたように、各反応物の含有量、重合温度、調節された粘度を変更したことを除いては、実施例1と同様の方法によりフィルムを製造した。
<評価例>
前記実施例および比較例において製造されたフィルムについて、下記のような物性を測定および評価し、その結果を下記表1に示した。
(評価例1:フィルムの厚さ測定および均一度評価)
日本のミツトヨ社のデジタルマイクロメーター547-401を用いて、フィルム上の任意の10か所の厚さを測定して平均値を導出した。
10ポイント測定の際、最大値と最小値との差を厚さ偏差と定義しており、前記厚さ偏差が4μm以下の場合は「良好」、4μmを超える場合は「不良」として、厚さの均一度を評価した。
(評価例2:モジュラス測定)
インストロン社の万能試験機UTM5566Aを用いて、サンプルの主収縮方向と直交した方向に10cm以上、および主収縮方向に10mmで切り、10cm間隔のクリップに装着した後、常温にて破断が起きるまで12.5mm/minの速度で伸しながら応力-ひずみ曲線(stress-strain curve)を得た。前記応力-ひずみ曲線において初期変形に対する荷重の傾きをモジュラス(GPa)とした。
(評価例3:透過度およびヘイズ測定)
日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを用いて、JIS K 7105、JIS K 7136およびJIS K 7161規格に基づいて光透過度およびヘイズを測定した。
(評価例4:黄色度測定)
黄色度(YI)は、分光光度計(UltraScan PRO、Hunter Associates Laboratory)によりd65、10°の条件で、ASTM-E313規格により測定した。
(評価例5:粘度測定)
重合体溶液(Varnish)の温度を10℃に維持させ、東機産業社のBH-IIモデルの粘度計を用いて測定した。RPMは4に設定し、7番スピンドルを用いてターゲット粘度が実現されるか否かを確認した。
(評価例6:XRD(X-ray diffraction crystallography)分析)
実施例および比較例のポリアミド系フィルムに対してXRD分析を実施した。この際、Rigaku社のUltimaIVを用いており、分析条件は以下のように設定した。
-スキャンソース:Cu(40kV、30mA)
-スキャンの範囲(2-Theta):5°~45°
-スキャンサイズ:0.02°
-スキャン速度:0.24°/sec
図3および図4は、それぞれ実施例3および比較例2のポリアミド系フィルムに対するXRD分析グラフ(diffractogram)である。
図3および図4を参照すると、分析されたXRDグラフ上の2θ値が10°以上20°未満の区間(第1区間)内に第1ピークが現れ、2θ値が20°~25°の区間(第2区間)内に第2ピークが現れた。
図3を参照すると、実施例3のXRDパターンは、第1ピークの最高点が第1区間のうち2θが14°~16°の区間で観察された。一方、図4を参照すると、比較例2のXRDパターンは、2θが14°~16°の区間から外れた16.7°においてピークの最高点が観察された。
前記表1から確認できるように、XRDパターン上のピークの最大値(最高値)が、2θ値14°~16°の間の区間で表れる実施例の場合、比較例に比べて優れたモジュラス、製膜性、透過度、ヘイズ、黄色度などの特性を有することを確認した。
一方、XRDパターン上のピークの最大値が2θ値14°~16°の間の区間外で表れる比較例の場合、重合体溶液の粘度を調整する際、粘度が未上昇となる問題が発生して、均一厚さのフィルム形成が実質的に不可能であるか、機械的物性と、特に光学物性が著しく低下する結果として表れた。
具体的に、XRDパターン上ピークの最大値が2θ値14°~16°の間の区間外に位置し、TPC:IPCのモル比が5:95である比較例1のポリアミド系フィルムは、重合体溶液の粘度が著しく減少してフィルムの製膜工程が不安定に行われ、これにより製造されたフィルムの厚さ均一度が低下した。TFMB、TPCおよびIPCが30℃にて重合された比較例4のポリアミド系フィルムの場合も、重合体溶液の粘度が著しく減少したため、比較例1と同様の問題が発生した。
TPC:IPCのモル比が80:20および95:5である比較例2および3のポリアミド系フィルムの場合は、透過度、ヘイズ、および黄色度を含む光学特性が著しく低下したことを確認した。
(実施例5)
実施例1の第1重合体溶液にDMAc溶媒中10重量%のIPC溶液を1mL添加した後、30分間撹拌する過程を繰り返し、総投入量に対して4%のIPCを反応させて第2重合体溶液を調製した。この際、第2重合体溶液の粘度は約23万cPsに調節され、重合時の温度は10℃に維持した
前記第2重合体溶液をガラス板に塗布した後乾燥した。乾燥されたポリアミド重合体をガラス板から剥離した後、熱処理して、厚さ50μmの実施例5のポリアミド系フィルムを得た。
ジアミン化合物(TFMB)およびジカルボニル化合物(IPC、TPC)の含有量に関して、ジアミン化合物100モルを基準に、ジカルボニル化合物のモル数を表2に記載した。
(実施例6~9および比較例5~7)
下記表2に記載のように、各反応物の含有量および反応温度を変更したことを除いては、実施例5と同様の方法によりフィルムを製造した。
図5は、実施例6のポリアミド系フィルムに対するXRD分析グラフである。
図5を参照すると、2θ値が約5°~35°の区間で2つのピークが合算された合算ピーク10が観察された。
合算ピーク10を第1ピーク11および第2ピーク12に分離しており、第1ピーク11は、2θ値が10°以上20°未満の区間(第1区間)に最大値が位置し、第2ピーク12は、2θ値が20°~25°の区間(第2区間)に最大値が位置している。合算ピーク10は、ベースライン18を基準に、第1ピーク11および第2ピーク12が正規分布(Gaussian distribution)の形態を有するように分離された。
合算ピーク10の開始点(14;2θ値が約5°のポイント)と終了点(15;2θ値が約35°のポイント)を指数関数(例えば、y=aex+b;aおよびbは定数)の形態を有する任意の線で連結し、前記合算ピークを除いた区間のXRDパターンと連結して、ベースライン18を設定した。
合算ピーク10、第1ピーク11および第2ピーク12において、ベースライン18よりも強度値が大きい部分の面積を、分析プログラムを用いて分析した。
そして、下記式1に基づいて狭間隔結晶比を計算して、下記表2に示しており、第2ピーク12の面積(第2面積)に対する前記第1ピークの面積(第1面積)の百分率も下記表2に示した。
[式1]
狭間隔結晶比=第2ピークの面積/合算ピークの面積×100
前記表2から確認できるように、XRDグラフ上で狭間隔結晶比が67を超える実施例の場合、比較例に比べて優れたモジュラス、透過度、ヘイズ、黄色度などの特性を有することが確認された。
一方、XRDグラフ上で狭間隔結晶比が67以下である比較例の場合は、狭間隔結晶比が減少しており、黄色度、モジュラス、透過度、ヘイズなどの特性が低下したことが確認された。
具体的に、ポリアミド系重合体が30℃にて重合された比較例5の場合、重合体溶液の粘度が低下して均一な厚さのフィルムを製膜することが難しく、狭間隔結晶比が65と示され、黄色度が増加した。
TPCの重合モル比が5%である比較例6もまた、重合体溶液の粘度が適正粘度に未達となるため、フィルムを均一に製膜することが実質的に難しく、狭間隔結晶比が減少し、黄色度が増加しており、モジュラスが減少した。
また、TPCの重合モル比が95%である比較例7の場合も、狭間隔結晶比が67であり、透過度、ヘイズ、黄色度などの光学特性が著しく低下した。