<第1の実施形態>
第1の実施形態について、図1~図9を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置の概略構成について、図1を用いて説明する。
[画像形成装置]
図1に示す画像形成装置1は、装置本体内に4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の画像形成部PY、PM、PC、PKを有する電子写真方式のフルカラープリンタである。本実施形態では、画像形成部PY、PM、PC、PKを後述する中間転写ベルト7の回転方向に沿って配置した中間転写タンデム方式としている。画像形成装置1は、装置本体に接続された不図示の原稿読み取り装置又は装置本体に対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)を記録材Sに形成する。記録材としては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシート材が挙げられる。
トナー像の形成プロセスについて説明する。まず、画像形成部PY、PM、PC、PKについて説明する。但し、画像形成部PY、PM、PC、PKは、トナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外、ほぼ同一に構成される。そこで、以下では代表してイエローの画像形成部PYを例に説明し、その他の画像形成部PM、PC、PKについては説明を省略する。
画像形成部PYは、主に感光ドラム2、帯電装置3、露光装置4、現像装置5等から構成される。回転駆動される像担持体の一例としての感光ドラム2の表面は、帯電装置3により予め表面を一様に帯電され、その後、画像情報の信号に基づいて駆動される露光装置4によって静電潜像が形成される。即ち、感光ドラム2には、静電潜像が形成される。感光ドラム2上に形成された静電潜像は、現像装置5によってトナーにより現像され、トナー像として可視像化される。また、画像形成で消費された現像剤中のトナーは、不図示のトナーカートリッジからキャリアと共に補給される。
その後、感光ドラム2と中間転写ベルト7を挟んで対向配置される一次転写ローラ6により所定の加圧力及び一次転写バイアスが与えられ、感光ドラム2上に形成されたトナー像が中間転写ベルト7上に一次転写される。一次転写後の感光ドラム2上に僅かに残る転写残トナーは、クリーニング装置8により除去され、再び次の画像形成プロセスに備える。
中間転写ベルト7は、テンションローラ10、二次転写内ローラ11、駆動ローラ12によって張架されている。中間転写ベルト7は、駆動ローラ12によって図中矢印R1方向へと移動するように駆動される。上述の画像形成部PY、PM、PC、PKにより処理される各色の画像形成プロセスは、中間転写ベルト7上に一次転写された移動方向上流の色のトナー像上に順次重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト7上に形成され、二次転写部T2へと搬送される。二次転写部T2は、中間転写ベルト7の二次転写内ローラ11に張架された部分と二次転写外ローラ13とにより形成される転写ニップ部である。なお、二次転写部T2を通過した後の転写残トナーは、転写クリーナ装置14によって中間転写ベルト7から除去される。
二次転写部T2まで送られて来るトナー像の形成プロセスに対して、同様のタイミングで二次転写部T2までの記録材Sの搬送プロセスが実行される。搬送プロセスでは、記録材Sは、不図示のシートカセット等から給送され、画像形成タイミングに合わせて二次転写部T2へと送られる。二次転写部T2では、二次転写内ローラ11に二次転写電圧が印加される。
以上、画像形成プロセス及び搬送プロセスにより、二次転写部T2において中間転写ベルト7から記録材Sにトナー像が二次転写される。その後、記録材Sは定着装置15へと搬送され、定着装置15により加熱及び加圧されることにより、トナー像が記録材S上に溶融固着される。こうしてトナー像が定着された記録材Sは、排出ローラにより排出トレイに排出される。
[制御部]
画像形成装置1は、上記した画像形成動作などの各種制御を行うための制御部20を備えている。画像形成装置1の各部の動作は、画像形成装置1に設けられた制御部20によって制御される。一連の画像形成動作は、装置本体の上面の操作部、あるいは、ネットワークを経由した各入力信号に従って制御部20が制御している。
図2に示すように、制御部20は、演算制御手段としてのCPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23等を有する。CPU21は、ROM22に格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら画像形成装置1の各部の制御を行う。RAM23には、作業用データや入力データが格納されており、CPU21は、前述のプログラム等に基づいてRAM23に収納されたデータを参照して制御を行う。制御部20は、画像処理部24で画像情報を処理して各部の駆動信号を生成し、画像形成制御部25で各部の動作を制御し、補給制御部26で現像装置5に対するトナー補給制御を行う。制御部20には、トナー濃度センサ58と、光学センサ80と、温湿度センサ81とが接続されている。トナー濃度センサ58と、光学センサ80とについては後述する。尚、温湿度センサ81は、温度検知手段の一例として現像装置5の内部の温度及び湿度に関する情報を検知するために、例えば、撹拌室53の壁部のトナー搬送方向下流側の一部に設けられている(図3参照)。
[二成分現像剤]
次に、本実施形態にて用いられる現像剤について説明する。本実施形態では、現像剤として、非磁性トナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)を含む二成分現像剤を使用している。トナーは、結着樹脂、着色剤、及び、必要に応じてその他の添加剤を含む着色樹脂粒子であり、その表面にコロイダルシリカ微粉末のような外添剤が外添されている。本実施形態で用いたトナーは、負帯電性のポリエステル系樹脂であり、体積平均粒径は約7.0μmである。本実施形態で用いたキャリアは、例えば表面が酸化処理された鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属粒子からなり、体積平均粒径は約50μmである。
[現像装置]
次に、現像装置5について、図3乃至図6を用いて詳細に説明する。図3及び図4に示すように、現像装置5は、現像容器50と、現像スリーブ60と、供給スリーブ61と、回収機構70(図4参照)と、を備えている。
現像容器50には、非磁性トナー及び磁性キャリアを含む現像剤が収容される。現像容器50内の略中央部は、現像室52と撹拌室53とが水平方向に隣接するように隔壁51によって区画されている。現像剤は、現像室52及び撹拌室53に収容されている。現像室52及び撹拌室53には、現像剤を撹拌して循環させるために回転可能な第1搬送スクリュ54及び第2搬送スクリュ55が、それぞれ配置されている。第1搬送スクリュ54は、現像室52の底部に供給スリーブ61の軸方向に沿ってほぼ平行に対向して配置されており、第2搬送スクリュ55は撹拌室53内の底部に第1搬送スクリュ54とほぼ平行に配置されている。第1搬送スクリュ54及び第2搬送スクリュ55を回転することで、現像剤を搬送する。なお、現像室52において現像剤が搬送される搬送路を現像搬送路52pとし、撹拌室53において現像剤が搬送される搬送路を撹拌搬送路53pとする。第1搬送スクリュ54及び第2搬送スクリュ55の回転によって搬送された現像剤は、隔壁51の両端部の開口部である連通部56、57を通じて現像室52と撹拌室53とを循環する。
撹拌室53には、第2搬送スクリュ55と対面して、トナー濃度センサ58が配置されている。トナー濃度センサ58としては、例えば、現像容器50内の現像剤の透磁率を検出する透磁率センサが用いられる。制御部20は、トナー濃度センサ58の検知結果に基づいて、トナーカートリッジからトナー補給口59を介して撹拌室53にトナーを補給する。
図4に示すように、供給スリーブ61の回転軸線方向から視て供給スリーブ61の斜め上方で感光ドラム2との間には、現像スリーブ60が設けられている。供給スリーブ61と現像スリーブ60とは、回転軸線をほぼ平行にして、対向部分Ar2において互いに対向して配置されている。現像スリーブ60は、現像容器50の開口側において感光ドラム2に対向している。現像スリーブ60及び供給スリーブ61は、それぞれ回転軸周りに関して回動自在に設けられている。現像スリーブ60及び供給スリーブ61は、装置本体に設けられた駆動部9(図2参照)によって、図4中の反時計回りに回転駆動される。即ち、現像スリーブ60及び供給スリーブ61は、対向部分Ar2で反対方向に回転すると共に、駆動部9により回転速度を可変としている。
供給スリーブ61は、図4において反時計方向に回転する非磁性のスリーブからなり、内周側に設けられた磁界発生手段である回転しないマグネットローラ61aの周囲を回転可能に設けられている。マグネットローラ61aは、複数の磁極を有しており、現像極S1と現像剤を搬送する磁極S3、N2、N1、S2を有している。このうち同極である磁極S2、S3は、隣り合って現像容器50の内側に設置され、極間では反発磁界が形成される。供給スリーブ61は、現像容器50の内部の現像剤を担持して回転することで、現像スリーブ60にトナーを供給可能である。
現像スリーブ60は、図4において反時計回り方向に回転する非磁性のスリーブからなり、内周側に設けられた1つの磁極を持つ回転しないマグネット60aの周囲を回転可能に設けられている。現像スリーブ60は、トナーを担持して回転することで感光ドラム2に対向する対向領域である現像領域Ar1において感光ドラム2上の静電潜像を現像可能である。供給スリーブ61と現像スリーブ60とは、その対向部分Ar2において所定のギャップをもって対向している。現像スリーブ60内のマグネット60aの磁極N3は、対向する現像極S1と異極性である。
現像容器50には、規制ブレード62が供給スリーブ61に対向して長手方向に沿って取り付けられている。規制ブレード62は、供給スリーブ61の回転方向(図4中、反時計回転方向)において、現像スリーブ60と供給スリーブ61との対向部分Ar2よりも上流側に位置付けられている。規制ブレード62の先端と供給スリーブ61の表面との間には、僅かな隙間(ギャップ)が形成されている。
[トナーの供給と回収]
現像スリーブ60には、直流電圧と交流電圧とが重畳された現像電圧(以下、現像バイアスという)が印加されている。供給スリーブ61には、直流電圧と交流電圧とが重畳された供給電圧(以下、供給バイアスという)が印加されている。これらの電圧は、電圧印加部の一例としてのバイアス電源82(図2参照)からバイアス制御回路を経由して現像スリーブ60及び供給スリーブ61に印加される。即ち、バイアス電源82は、現像スリーブ60と供給スリーブ61との間に直流成分及び交流成分を含む電圧を印加する。
現像室52内の現像剤は、第1搬送スクリュ54によって供給スリーブ61に搬送され、供給スリーブ61上に発生している磁界によって穂立ちした磁気穂を形成する。供給スリーブ61上の磁気穂は、規制ブレード62によって層厚規制された後、供給スリーブ61の回転によって供給スリーブ61と現像スリーブ60との対向部分Ar2に搬送される。供給スリーブ61に印加される供給バイアスの直流電圧と現像スリーブ60に印加される現像バイアスの直流電圧との電位差ΔVにより、供給スリーブ61と現像スリーブ60との対向部分Ar2に電界が生ずる。この生じた電界によって、現像スリーブ60上にトナー薄層が形成される。
現像スリーブ60上のトナー層厚は、例えば、供給スリーブ61と現像スリーブ60との回転速度差により変化する。これは、供給スリーブ61が供給するトナーの量と現像スリーブ60が供給されるトナーの量とが、回転速度差により変化することに起因する。供給スリーブ61の回転速度が速くなるほど、または、現像スリーブ60の回転速度が遅くなるほど、現像スリーブ60上のトナー層厚は厚くなる。また、現像スリーブ60上のトナー層厚は、供給バイアスの直流電圧と現像バイアスの直流電圧との電位差ΔVでも制御することができる。この電位差ΔVを大きくすることで、現像スリーブ60上のトナー層は厚くなる。現像時における電位差ΔVの範囲は、一般的に100V~350V程度が適切である。
供給スリーブ61上の磁気穂との接触によって現像スリーブ60上に形成されたトナー薄層は、現像スリーブ60の回転によって感光ドラム2と現像スリーブ60との対向部分(以下、現像領域Ar1という)に搬送される。現像スリーブ60には現像バイアスが印加されているため、感光ドラム2との間の電位差によって現像スリーブ60から感光ドラム2にトナーが飛翔し、感光ドラム2上の静電潜像が現像される。
現像に用いられずに残ったトナーは、再び現像スリーブ60と供給スリーブ61との対向部分Ar2に搬送され、供給スリーブ61上の磁気穂によって摺擦されて回収される。磁気穂は、マグネットローラ61aの反発磁界が形成される剥ぎ取り部で供給スリーブ61から現像室52内に落下して、現像容器50内を循環している現像剤と混合される。その後、トナー濃度センサ58の検知結果に基づいてトナー補給口59から所定量のトナーが補給され、撹拌室53と現像室52を循環し、現像容器50内を循環している現像剤と混合される。混合された現像剤が、供給スリーブ61上へ再び供給される。
[回収機構]
次に図4~図6を用いて、堆積したトナーを回収する回収機構70について詳細に説明する。図4に示すように、現像容器50の現像スリーブ60の近傍には、回収機構70が設けられている。回収機構70は、現像スリーブ60とほぼ平行に配置され、現像スリーブ60の回転軸線方向から視て現像スリーブ60の下方から供給スリーブ61に向けて下方に傾斜する壁部を構成している。回収機構70は、トナー受け部材71と、トナー受け部材71を振動させる振動手段の一例である振動機構72とを有している。
トナー受け部材71は、回収機構70の上面において長手方向に沿って設けられ、飛散したトナーが堆積するトナーを受ける。即ち、トナー受け部材71は、現像スリーブ60と供給スリーブ61との少なくとも一方の下方に対向して配置される。トナー受け部材71は金属製の板材であり、圧縮コイルばねからなるコイルばね73を介して、合成樹脂製の底部74に支持されている。コイルばね73は、底部74に一体形成された台座75に装着されている。
振動機構72は、トナー受け部材71の裏面に固定されて設けられている。振動機構72は、モータホルダ76と、振動モータ77と、加振ウェイト78とを有している。トナー受け部材71の裏面には、モータホルダ76を介して振動モータ77が固定されている。モータホルダ76内には、振動モータ77の駆動を制御するための不図示の回路基板や電子部品が実装されている。
図5(a)、(b)は、振動機構72の振動モータ77と加振ウェイト78との概略図である。図5(a)、(b)に示すように、振動機構72の加振ウェイト78は、円柱形状の周側面の一部に中心軸線に沿った平面部78aを有する所謂Dカット形状をなしている。即ち、加振ウェイト78は、中心軸線に重なる位置に嵌入された振動モータ77の回転軸77aに対して非対称な形状となっている。振動モータ77の回転軸77aが所定の回転速度以上の回転速度で回転するとき、平面部78aに作用する遠心力は加振ウェイト78の他の部分に比べて小さいため、加振ウェイト78には偏心した不均一な遠心力が加わる。この遠心力が回転軸77aに伝達されることにより、振動モータ77が振動する。なお、加振ウェイト78の形状はDカット形状に限定されず、回転軸77aに対して重心が中心軸線上から外れる任意の形状とすることができる。
図6は、現像装置5の駆動中におけるトナー受け部材71の動作を示す概略側面図である。振動モータ77の回転軸77aを例えば10000rpm程度に高速回転させることにより、加振ウェイト78も回転軸77aと共に高速回転する。尚、振動モータ77の回転軸77aの回転方向は、図6中、反時計回り方向としている。このとき、加振ウェイト78には偏心した不均一な遠心力が加わるため、回転軸77aを介して振動モータ77及びモータホルダ76が振動する。この振動に伴い、モータホルダ76が固定されたトナー受け部材71も振動する。トナー受け部材71の振動により、トナー受け部材71に堆積したトナーTはトナー受け部材71の表面から離れ、傾斜した下方側に向けてふるい落とされる。
これにより、現像装置5内の供給スリーブ61及び現像スリーブ60が高速で回転し、トナー浮遊量が大きい場合であっても、トナー受け部材71上でのトナーの堆積を抑制できる。トナー受け部材71の振動により、トナー受け部材71に堆積したトナーTはトナー受け部材71の傾斜に沿って下方(図6中、白矢印方向)に滑り落ち、トナー落下面79と供給スリーブ61とで挟まれた領域Ar3に落下する。本実施形態では、トナー受け部材71はトナー落下面79が略垂直となるように配置されるため、領域Ar3のトナーTが自由落下し易くなる。
本実施形態では、制御部20は、非画像形成時に、振動機構72を制御することにより、トナー受け部材71に堆積したトナーを振動機構72の振動によってふるい落とす振動モードの一例である回収モードを実行可能である。なお、本実施形態では、非画像形成時とは、感光ドラム2にトナー像を形成していないときを意味しており、例えば、画像形成ジョブ中の紙間、前回転時、後回転時や、画像形成ジョブが実行されていないときを含むものとする。
また、本実施形態では、領域Ar3に落下したトナーTを現像室52へ戻すために、非画像形成時に供給スリーブ61を画像形成時とは逆方向(図6中、時計回り方向)に回転させる。供給スリーブ61を逆方向に回転させることにより、領域Ar3に落下して堆積したトナーTは供給スリーブ61の表面に連れ回りして供給スリーブ61と規制ブレード62との隙間を通過し、現像室52へ強制的に戻される。
[トナー補給制御]
現像装置5に対するトナー補給制御について説明する。画像形成装置1は、現像によって消費した分に見合う量のトナーを現像装置5に補給する自動トナー補給制御(ATR:Auto Toner Replenisher)を行う。本実施形態では、出力画像の濃度を安定させるために、次のような方式のATR制御を採用している。制御部20は、画像形成時の画像比率、トナー濃度センサ58の検知結果、パッチ画像の濃度の検知結果等に応じて、トナーカートリッジとトナー補給口59の間に設けられたトナーホッパの補給スクリュの回転回数を制御し、現像容器50にトナーを補給する。即ち、画像形成時の画像比率に基づいて、予測されるトナー消費量に見合う分のトナー補給量を求める。また、トナー濃度センサ58の検知結果に基づいて、上記画像比率に基づくトナー補給量を補正する。また、所定の頻度で形成されるパッチ画像の濃度検知結果を用いて、上記トナー濃度センサ58の検知結果の目標値を補正する。本実施形態では、任意の補給量を随時補給するのではなく、予め設定された1回分(例えば、トナーホッパの補給スクリュの1回転分)の補給量まで補給を控え、1回分の補給量ごとに補給スクリュを1回転させる。これにより、安定した補給量を得ることができる。
更に、制御部20の画像処理部24は、画像読み取り装置やネットワークなどを介して接続されたパーソナルコンピュータから受信した画像情報に基づいて、画像形成によるトナー消費量を算出する。本実施形態では、トナーの消費量は、画像情報に基づいて積算されるビデオカウント値(画像信号値)に基づく画像比率から求められ、画像出力1枚ごとに積算される。制御部20の補給制御部26は、トナー消費量に見合う分のトナー量をトナー補給量として求めるが、トナー濃度センサ58で検知されたT/DがT/Dの目標値に対しずれている場合は、そのずれを小さくするようにトナー補給量を補正する。そして、補給制御部26は、求められた補給量がトナーホッパの補給スクリュの1回転分の補給量以上になると、必要な回転回数分だけ補給スクリュを回転させて、トナーを現像装置5に補給する。
補給制御部26は、所定の頻度(例えば、所定枚数の画像出力ごと)で所定の潜像コントラストの所定のサイズ(例えば、15mm角)の制御用トナー像の一例であるパッチ画像を感光ドラム2に形成し、これを中間転写ベルト7に転写させる。このパッチ画像の画像濃度(反射濃度)を、中間転写ベルト7上で、濃度検知手段の一例としての光学センサ80(図1及び図2参照)によって測定させる。そして、測定された画像濃度と基準の画像濃度とを比較して、画像濃度のずれを小さくするようにT/Dの目標値を変更する(パッチ検知制御)。これにより、パッチ画像の形成に使用されたトナー量からトナーの帯電量を予測して、キャリアの劣化などによるトナーの帯電量の変動に起因する画像濃度の変動に対応することができる。
[トナーの飛散]
ここで、トナーの飛散について説明する。トナーの飛散の主な要因は、供給スリーブ61と現像スリーブ60との対向部分Ar2で行われる電界によるトナーの受け渡しと、供給スリーブ61と現像スリーブ60との回転により生じる気流である。ここでは、電界によるトナーの飛散と、気流によるトナーの飛散とについて、それぞれ説明する。
まず、電界によるトナーの飛散について説明する。現像剤は、供給スリーブ61の内部に配置されたマグネットローラ61aによって担持され、供給スリーブ61上に磁気穂を形成し、供給スリーブ61と現像スリーブ60との対向部分Ar2まで搬送される。供給スリーブ61と現像スリーブ60とは、それぞれ供給バイアスと現像バイアスとを印加され、その対向部分Ar2では供給バイアスと現像バイアスとの電位差により電界が生じる。対向部分Ar2に搬送された現像剤において、電界によりキャリアからトナーが遊離する。遊離したトナーは、供給バイアスと現像バイアスとの直流電圧及び交流電圧により生じる電界に追従し、供給スリーブ61と現像スリーブ60との間を往復しながら、供給スリーブ61から現像スリーブ60に向けて飛翔する。電界に追従していたトナーのうち、電界の影響を受ける範囲外に移動したものが現像装置5内に飛散する。このため、対向部分Ar2に供給されるトナー量が増加すれば、トナーの飛散量も増える傾向にある。
次に、気流によるトナーの飛散について説明する。供給スリーブ61及び現像スリーブ60は、それぞれ直流電圧と交流電圧が重畳された供給バイアス及び現像バイアスを印加され、その対向部分Ar2に供給バイアスと現像バイアスとの電位差による電界を生じさせている。現像剤は、規制ブレード62を通過後、供給スリーブ61上で磁気穂を形成しながら搬送され、供給スリーブ61と現像スリーブ60との対向部分Ar2で現像スリーブ60と接触する。このとき、対向部分Ar2に生じた電界により、対向部分Ar2に供給された現像剤中のキャリアからトナーが遊離する。遊離したトナーは、供給バイアスと現像バイアスにより生じる電界に追従して供給スリーブ61と現像スリーブ60の間を往復運動する。往復運動するトナーは、供給スリーブ61と現像スリーブ60の駆動やその駆動にともない生じる気流を受け、電界の影響を受ける範囲外へ移動し、現像装置5内に飛散することがある。このため、供給スリーブ61と現像スリーブ60が対向する対向部分Ar2の周辺では、トナーの飛散が発生し易い。
このトナーの飛散は、対向部分Ar2に供給されるトナーの量に依存する傾向があるため、供給スリーブ61と現像スリーブ60の回転速度を上げた場合、トナーの飛散する量も増加する。また、供給スリーブ61と現像スリーブ60の回転速度が上がると供給スリーブ61と現像スリーブ60の周辺の気流が強くなる傾向があるため、遊離したトナーがその気流の影響を受け、さらに飛散するトナーの量が増えることが知られている。特に近年では、画像形成装置1の動作の高速化が進められており、供給スリーブ61や現像スリーブ60の回転速度も高速化されており、トナーの飛散量は増加傾向にある。
[トナー堆積量]
ここで、図7に、供給スリーブ61と現像スリーブ60との駆動時において、供給スリーブの回転速度と、トナー受け部材71に堆積したトナーの量との関係を示す。ここでは、所定の時間、画像形成動作を実施し、そのときに、トナー受け部材71に付着したトナーの付着面積と濃度の積分値とからトナーの堆積量を測定した。図7に示すように、供給スリーブ61の回転速度が速いほど、トナーの堆積量が多くなる。これは、現像装置5内を飛散したトナーが、供給スリーブ61と現像スリーブ60との対向部分Ar2の近傍で発生した気流に乗り、対向部分Ar2から移動し、移動したトナーの一部がトナー受け部材71に堆積するためである。画像形成速度が異なる現像装置の提供や、画像形成する記録材に応じて画像形成速度を変更する場合、供給スリーブ61と現像スリーブ60との回転速度が速くなれば、トナーの飛散量は増加する傾向にあるため、トナーの堆積量も増加する関係にある。
[回収モードの実行間隔]
制御部20は、振動機構72を作動させてトナー受け部材71のトナーをふるい落とす回収モードを実行する際に、回収モードの実行間隔として、例えば、一定の印字枚数毎にすることができる。しかしながら、一定の印字枚数ごとにトナー受け部材71を振動させる構成では、画像形成速度を速くした場合、トナーが堆積する早さに対して、振動機構72を作動させる間隔が長くなり実行頻度が少なくなる。このため、現像装置5の内壁にトナーの堆積と凝集が進み、凝集したトナーが現像スリーブ60へ付着し、感光ドラム2上へ凝集したトナーが供給されることで、画像不良を生じる虞がある。また、画像形成速度を遅くした場合では、トナーの堆積が進む早さに対して振動機構72を作動させる間隔が短くなり実行頻度が多くなるため、生産性が低下してしまう虞がある。そこで、本実施形態では、トナー受け部材71を振動させ堆積トナーを回収する回収モードの実行間隔を、供給スリーブ61及び現像スリーブ60の回転速度と供給スリーブ61と現像スリーブ60の駆動時間とに基づいて適正化するようにしている。これにより、生産性を必要以上に落とすことなく、トナーの堆積を抑制することができる。
本実施形態における回収モードの実行手順について、図8に示すフローチャートに沿って詳細に説明する。尚、フローチャートに使用される各種指数については後述する。制御部20は、画像形成ジョブ情報を受け取ると、供給スリーブ61の回転速度を取得する(ステップS1)。尚、本実施形態では、制御部20は供給スリーブ61の回転速度を取得する場合について説明しているが、これには限られない。即ち、現像スリーブ60と供給スリーブ61との回転速度には相関関係があるので、現像スリーブ60と供給スリーブ61との少なくとも一方の回転速度を取得するようにすればよい。
制御部20は、取得した回転速度に基づいてテーブルを参照するなどして、回転速度指数Rを取得する(ステップS2)。制御部20は、画像形成ジョブの実行時の供給スリーブ61の駆動時間tを取得する(ステップS3)。更に、制御部20は、回転速度指数R及び駆動時間tを乗じて積算し、積算堆積指数P1=Σ{R×t}を算出する(ステップS4)。
制御部20は、積算堆積指数P1が閾値P0を超えたか否かを判断する(ステップS5)。制御部20は、積算堆積指数P1が閾値P0を超えていないと判断した場合は(ステップS5のNO)、供給スリーブ61の回転速度を再び取得する(ステップS1)。制御部20は、積算堆積指数P1が閾値P0を超えたと判断した場合は(ステップS5のYES)、画像形成前の前回転時か画像形成後の後回転後に回収モードを実行する(ステップS6)。即ち、制御部20は、前回の回収モードの実行後において、供給スリーブ61の回転速度及び駆動時間tに基づく回転量に関する値である積算堆積指数P1が所定値である閾値P0を超えた場合に、回収モードを実行する。尚、本実施形態では、制御部20は、画像形成前の前回転時か画像形成後の後回転後に回収モードを実行するようにしているが、これには限られず、紙間に実行するようにしてもよい。制御部20は、回収モードの実行後、積算堆積指数P1をリセットし(ステップS7)、処理を終了する。
ここで、制御部20は、供給スリーブ61の回転速度及び駆動時間tに基づく積算堆積指数P1が閾値P0を超えた場合に回収モードを実行するので、回転速度の速い場合の方が遅い場合よりも早く閾値P0を超える。即ち、制御部20は、供給スリーブ61の回転速度が第1速度である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間であるようにする。この場合に、制御部20は、供給スリーブ61の回転速度が第1速度より速い第2速度である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間より短い第2時間であるようにする。
フローチャートに使用される各種指数について説明する。まず、回転速度指数Rについて説明する。ここでは、図7に示す供給スリーブの回転速度とトナー受け部材71に堆積したトナーの量との関係に基づいて、考察する。供給スリーブ61の回転速度を300mm/sとした場合と、供給スリーブ61の回転速度を600mm/sとした場合とを比較すると、トナー受け部材71にトナーが堆積する早さは、およそ10倍異なる。次に、図9は、供給スリーブ61の回転速度と回転速度指数Rとの関係を示すグラフである。例えば、供給スリーブ61の回転速度を300mm/sで駆動するならば、回転速度指数Rは1となり、供給スリーブ61の回転速度を600mm/sで駆動するならば回転速度指数Rは10となる。したがって、回転速度指数Rは、供給スリーブ61の回転速度に応じてトナーが堆積する早さを重みづけする指数である。
積算堆積指数P1は、トナー受け部材71上でのトナーの堆積具合を示す数値である。閾値P0は、トナー受け部材71に堆積したトナーが現像スリーブ60に付着し、画像不良が発生した際の積算堆積指数P1を基に、画像不良発生時の積算堆積指数P1を0.8倍した値としている。トナー受け部材71上のトナーの堆積具合を閾値P0で判断することで、画像不良が発生する前に、回収モードを実施できる。本実施形態では、閾値P0を1300とした。
なお、本実施形態の回収モードの実行手順では、供給スリーブ61の回転速度に重みづけをすることで回転速度に応じて実行間隔を変更しているが、これには限られない。例えば、現像スリーブ60の回転速度と駆動時間とのそれぞれに重みづけをするなどして、回転速度と駆動時間とに応じて回収モードの実行間隔を変更するようにしてもよい。
上述したように本実施形態の画像形成装置1によれば、制御部20は、前回の回収モードの実行後において、供給スリーブ61の回転速度及び駆動時間tに基づく回転量に関する積算堆積指数P1が閾値P0を超えた場合に、回収モードを実行する。これにより、一定の画像形成枚数ごとに回収モードを実行する場合に比べて、回収モードの実行間隔が長すぎたり短すぎたりすることを抑制し、積算堆積指数P1に基づいて回収モードの実行間隔を適正化することができる。また、画像を形成する記録材に応じて画像形成速度を変更するなど、速度変調を要する場合でも、生産性の低下を抑えつつ、トナー受け部材71に堆積したトナーが現像スリーブ60へ付着することを抑えることができ、画像不良を抑制できる。
また、本実施形態の画像形成装置1によれば、制御部20は、供給スリーブ61の回転速度が第1速度より速い第2速度である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間より短い第2時間であるようにしている。このため、例えば、供給スリーブ61の回転速度及び駆動時間tに基づく回転量が同じであっても、供給スリーブ61の回転速度の速い方が回収モードの実行間隔を短くするようになる。これにより、一定の回転量ごとに回収モードを実行する場合に比べて、回収モードの実行間隔が長すぎたり短すぎたりすることを抑制し、回転量に加えて供給スリーブ61の回転速度にも基づいて回収モードの実行間隔を適正化することができる。
また、本実施形態の画像形成装置1によれば、制御部20は、供給スリーブ61の回転速度に重みづけをすることで、回転速度に応じて回収モードの実行間隔を変更している。具体的には、供給スリーブ61の回転速度が速いほど、重みづけを大きくするようにしている。このため、トナーの飛散量は、回転速度に対して単純に比例的に増加するのではなく、回転速度が速いほど、比例的な増加を超えて増加することに対応することができる。これにより、回転速度に重みづけをせずに、回転速度に対して単純に比例的に対応して回収モードの実行間隔を変更する場合に比べて、より高精度に回収モードの実行間隔を適正化することができる。
[比較評価]
上述した本実施形態の画像形成装置1に係る実施例と、比較例1及び比較例2とについて、画像評価と生産性を比較した。ここでは、複数の画像形成速度で画像形成を行い、実施例では積算堆積指数P1が閾値P0を超えるごとに回収モードを実行し、比較例1及び比較例2では、一定の印字枚数(以下、積算堆積枚数)ごとに回収モードを実行した。
画像形成速度は、第1画像形成速度(25枚/分)と第2画像形成速度(50枚/分)との2種類の速度とし、比較例1の積算堆積枚数を100枚、比較例2の積算堆積枚数を500枚とした。画像形成に使用する画像は、画像比率30%とし、1万枚の耐久印刷を行い、そのときの画像欠陥の発生の有無と回収モードに要した時間を比較した。1万枚の耐久印字は、画像形成速度を変更して実施した。条件1は第1画像形成速度、条件2は第2画像形成速度、条件3は、第1画像形成速度と第2画像形成速度を1:9の割合で耐久印刷を行った。
現像装置5の第1画像形成速度における感光ドラム2の回転速度は125mm/sとし、感光ドラム2の回転速度と現像スリーブ60の回転速度との比を1.5として、現像スリーブ60の回転速度を187.5mm/sとした。また、現像スリーブ60の回転速度と供給スリーブ61の回転速度との比を1.6として、供給スリーブ61の回転速度を300mm/s(第1速度)とした。一方、第2画像形成速度における感光ドラム2の回転速度は250mm/sとし、感光ドラム2の回転速度と現像スリーブ60の回転速度との比を1.5として、現像スリーブ60の回転速度を375mm/sとした。また、現像スリーブ60の回転速度と供給スリーブ61の回転速度との比を1.6として、供給スリーブ61の回転速度を600mm/s(第2速度)とした。このときの回転速度指数Rは、第1画像形成速度でR=1、第2画像形成速度でR=10とした。
現像スリーブ60の回転方向は、感光ドラム2に対して現像領域Ar1で同方向となるウィズ回転とし、供給スリーブ61の回転方向は、現像スリーブ60に対して対向部分Ar2で反対方向となるカウンタ回転とした。トナー受け部材71の長手方向の長さは315mm、トナー受け部材71の短手方向の長さは25mmとし、回収モードにおける振動モータ77の回転速度は10000rpm、駆動時間は10秒とした。
実施の結果を表1に示す。表1中、画像評価については、1万枚耐久後に画像形成した10枚を目視し、トナー受け部材71に堆積したトナーの凝集塊による画像欠陥が認められたか否かを確認した。画像上に凝集塊による画像欠陥が認められない場合を「○」、認められた場合を「×」とした。生産性については、耐久印刷を行った際に回収モードに要した時間が1000秒未満である場合を「○」、1000秒以上である場合を「×」とした。
表1に示すように、実施例では、比較例1と比較例2と比べ、良好な結果を得ることができた。一方、比較例1では、画像不良は発生しなかったが、必要以上に回収モードが実行されたため、実施例と比べて生産性の低下がみられた。比較例2では、生産性は良好であったが画像不良が確認された。したがって、本実施形態によれば、供給スリーブ61と現像スリーブ60との回転速度と駆動時間とに応じて回収モードの実行間隔を変更できるため、生産性を必要以上に落とすことなく、トナーの堆積を抑制できることが確認された。
また、本実施例では、画像形成速度が第1画像形成速度である場合に、回転速度指数R=1、閾値P0=1300であることから、回収モードの実行間隔は供給スリーブ61が駆動される第1時間である1300秒ごとになる。これは、画像形成枚数では541枚ごとになる。また、画像形成速度が第2画像形成速度である場合に、回転速度指数R=10、閾値P0=1300であることから、回収モードの実行間隔は供給スリーブ61が駆動される第2時間である130秒ごとになる。これは、画像形成枚数では108枚ごとになる。従って、供給スリーブ61の回転速度が、300mm/s(第1速度)より速い600mm/s(第2速度)であるとする。この場合に、制御部20は、回収モードの実行間隔を、供給スリーブ61が駆動される第1時間である1300秒より短い第2時間である130秒に短縮することが確認された。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態を、図10~図11を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、制御部20は現像装置5の内部の温度を参照して回収モードの実行間隔を設定する点で、第1の実施形態と構成を異にしている。但し、それ以外の画像形成装置1の構成については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
現像装置5の内壁に堆積するトナーは、堆積量が同じでも、使用状況によって堆積するトナーの特性が変化することがある。例えば、高温環境での稼働や、連続稼働による昇温によって、トナーの温度が変わることがある。この場合、温度の異なるトナーでは、同じ走行距離Lを経ても流動特性が異なることがある。流動性に関する特性は、トナー受け部材71に堆積したトナーを振動機構72によって振動させてふるい落とす際の効果に大きく影響する。つまり、トナー受け部材71に堆積したトナーに振動機構72により振動を与えても、トナーの流動性の低下によって現像装置5の内壁との付着力が上昇していることで、トナーの堆積を効果的に抑制できないことがある。
ここで、トナーの消費や補給をせずに現像装置5で空回転した際の供給スリーブ61の走行距離と、流動性に影響するトナーの凝集度との関係について、トナー温度を異ならせて、以下のように測定した。
[凝集度の測定方法]
測定対象となる温度の異なる現像剤を用意し、各現像剤でキャリアからトナーを分離した。キャリアからトナーを分離する際には、電界飛翔式帯電量測定装置II-DC電界(DIT株式会社製)を用いた。次に、粉体物性測定器に、上から第1の篩(60mesh)、第2の篩(100mesh)、第3の篩(200mesh)の順で、篩を3段重ねて設置する。そして、秤量したトナー5gを静かに第1の篩の上に載せ、3段の篩に振動を15秒間与え、各篩上に残ったトナーの重さを測定する。その後、下に示す数式に従って凝集度を算出する。計算に当たって、第1の篩上のトナー量をM1、第2の篩上のトナー量をM2、第3の篩上のトナー量をM3とする。
X=M1/5×100
Y=M2/5×100×0.6
Z=M3/5×100×0.2
として、凝集度(%)を次式のように算出した。
凝集度(%)=X+Y+Z
算出結果を図10に示す。尚、本実施形態で用いたトナーについて、現像装置5で空回転する前の凝集度を測定したところ、30%であった。図10に示すように、走行距離が長くなるほど、凝集度が上昇し、流動性が低下してしまう。そこで、供給スリーブ61の駆動時間tと回転速度Vrとによって得られる走行距離Lによって、回収モードの実行間隔を決定することが考えられる。
また、図10に示すように、トナーの温度が高いほど、凝集度の上昇する傾きが大きくなった。これは、駆動中のトナーの温度が高いと、トナーの外添剤がトナーに埋め込まれやすくなることが原因であると考えられる。ここで、規制ブレード62の裏側(規制ブレード62の回転方向下流側)に位置する現像剤の挙動について検討する。規制ブレード62の裏側における供給スリーブ61の表面近傍の現像剤は搬送速度が速いのに対し、供給スリーブ61の表面から離れた現像剤は搬送速度が遅いか、または動かない。このため、搬送速度の速い現像剤と現像速度の遅い現像剤との境界領域では、搬送速度差に伴う剪断面が生じ、トナーに機械的ストレスが作用する。その際、現像剤の温度が高い方がトナーは軟化し易く、外添剤が機械的ストレスによってトナーに埋め込まれ易くなってしまう。それに伴い、トナーの流動性が低下して劣化が進んでしまう。これは画像比率が低いほど、トナーの入れ替わりが少ないため、より顕著である。
よって、トナーの温度上昇に伴う劣化状態は、堆積したトナーを振動機構72によって振動させてふるい落とす際の効果に大きく影響する。即ち、トナーの流動性の低下によってトナー受け部材71との付着力が上昇してしまうと、振動機構72により振動を与えてもトナーの堆積を効果的に抑制できなくなることがある。そこで、本実施形態では、制御部20は、現像装置5に設置された温湿度センサ81により検知された温度に関する情報を基に、回収モードの実行間隔を決定する。
[回収モードの実行間隔]
本実施形態における回収モードの実行手順について、図11に示すフローチャートに沿って詳細に説明する。制御部20は、画像形成ジョブ情報を受け取ると、温湿度センサ81を参照して、現像装置5の内部の温度に関する情報を検知する(ステップS11)。制御部20は、検知した温度に関する情報に基づいて、テーブルなどの利用により劣化係数αを取得する(ステップS12)。ここでの劣化係数αとは、図10に示す温度に対する凝集度の変化の傾きを指数化したもので、図12に示すように温度に応じて設定する値である。制御部20は、供給スリーブ61の回転速度Vrを取得し(ステップS13)、画像形成ジョブの実行時の供給スリーブ61の駆動時間tを取得する(ステップS14)。
制御部20は、劣化係数α、回転速度Vr、駆動時間tを乗じて積算し、積算走行距離指数L1=Σ{Vr×t×α}を算出する(ステップS15)。制御部20は、積算走行距離指数L1が閾値L0を超えたか否かを判断する(ステップS16)。制御部20は、積算走行距離指数L1が閾値L0を超えていないと判断した場合は(ステップS16のNO)、現像装置5の内部の温度に関する情報を再び検知する(ステップS11)。制御部20は、積算走行距離指数L1が閾値L0を超えたと判断した場合は(ステップS16のYES)、画像形成前の前回転時か画像形成後の後回転後に回収モードを実行する(ステップS17)。即ち、制御部20は、前回の回収モードの実行後において、供給スリーブ61の回転速度Vr及び駆動時間tに基づく回転量に関する値である積算走行距離指数L1が所定値である閾値L0を超えた場合に、回収モードを実行する。尚、本実施形態では、制御部20は、画像形成前の前回転時か画像形成後の後回転後に回収モードを実行するようにしているが、これには限られず、紙間に実行するようにしてもよい。制御部20は、回収モードの実行後、積算走行距離指数L1をリセットする(ステップS18)。
劣化係数αは温度が高いほど大きい値であるため、積算走行距離指数L1が閾値L0に対して早く達することになる。例えば、トナーの温度が35℃で稼働した場合α=1.08に対し、45℃で稼働した場合α=1.40であるため、回転速度Vrや駆動時間tが固定の場合、制御部20は単純に約1.3倍の頻度で回収モードを実行する。これにより、トナーの温度が高い状況でトナー受け部材71にトナーが堆積したとしても、回収モードの実行間隔を短くすることにより、回収モードの振動によってトナーを回収し、画像不良の発生を抑制することができる。
また、制御部20は、ステップS16において積算走行距離指数L1=Σ{Vr×t×α}とL0とを比較しているが、これは両辺を劣化係数αで除算すると、Vr×tとL0/αとを比較することになる。即ち、制御部20は、前回の回収モードの実行後において、供給スリーブ61の回転速度Vr及び駆動時間tに基づく回転量(Vr×t)が所定値である閾値L0/αを超えた場合に、回収モードを実行するとも言える。この場合、制御部20は、温湿度センサ81の検知結果が35℃(第1温度)である場合に、閾値L0/αをL0/1.08(第1の値)とする。また、制御部20は、温湿度センサ81の検知結果が35℃(第1温度)より高い45℃(第2温度)である場合に、閾値L0/αをL0/1.08(第1の値)より小さいL0/1.40(第2の値)とする。
また、制御部20は、供給スリーブ61の回転速度Vr、駆動時間t、劣化係数αに基づく積算走行距離指数L1が閾値L0を超えた場合に回収モードを実行するので、回転速度Vrの速い場合の方が遅い場合よりも早く閾値L0を超える。即ち、制御部20は、供給スリーブ61の回転速度Vrが第1速度である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間であるようにする。この場合に、制御部20は、供給スリーブ61の回転速度Vrが第1速度より速い第2速度である場合に、回収モードの実行間隔を供給スリーブ61が駆動される第1時間より短い第2時間であるようにする。
上述したように本実施形態の画像形成装置1によれば、制御部20は、供給スリーブ61の回転速度Vr、駆動時間t、劣化係数αに基づく回転量に関する積算走行距離指数L1が閾値L0を超えた場合に、回収モードを実行する。これにより、一定の画像形成枚数ごとに回収モードを実行する場合に比べて、回収モードの実行間隔が長すぎたり短すぎたりすることを抑制し、積算走行距離指数L1に基づいて回収モードの実行間隔を適正化することができる。温度情報に基づいた劣化係数αを利用して回収モードの実行間隔を判断することで、周囲の環境温度や連続稼働による昇温によってトナーの流動性が低下しても、トナー受け部材71に堆積したトナーが現像スリーブ60に付着することを抑えることができる。これにより、画像不良が発生することを抑制できる。
尚、上述した各実施形態の画像形成装置1では、いずれも供給スリーブ61の回転速度及び駆動時間に基づいた回転量を利用して回収モードの実行間隔を判断しているが、これには限られない。例えば、回転速度が一定であれば、駆動時間に関係なく回転速度のみで判断してもよい。この場合、制御部20は、現像スリーブ60又は供給スリーブ61のうちの一方のスリーブの回転速度が第1速度である場合に、回収モードの実行間隔を一方のスリーブが駆動される第1時間とする。そして、制御部20は、一方のスリーブの回転速度が第1速度より速い第2速度である場合に、回収モードの実行間隔を一方のスリーブが駆動される第1時間より短い第2時間とするようにできる。これにより、供給スリーブ61と現像スリーブ60の回転速度が速い場合には、トナー受け部材71に堆積するトナーの量が許容量を超える前に回収モードを実行することができる。よって、トナー受け部材71に堆積したトナーが現像スリーブ60へ付着することを抑え、画像不良の発生を抑制することができる。また、供給スリーブ61と現像スリーブ60の回転速度が遅い場合では、回収モードの実行間隔を長く設けることができるため、生産性の低下を抑えながら、画像不良を抑制することができる。