JP7329930B2 - 難消化性でん粉組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
本実施形態における難消化でん粉組成物は、リン酸架橋でん粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋でん粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋でん粉からなる群より選ばれる1または2以上からなる。本実施形態における難消化性でん粉組成物は、食物繊維を70質量%以上含み、リンを0.3~0.5質量%含む。本実施形態における難消化でん粉組成物は、ブラベンダ法により測定された粘度であって、該難消化性でん粉組成物を30質量%含むスラリーの粘度が150~4,000B.U.である。
食物繊維は、低カロリーであるので、本実施形態の難消化でん粉組成物は、低カロリーである。そのため、難消化でん粉組成物を原料粉として含む麺類は、低カロリーの麺類となる。食物繊維の含量が70質量%未満の場合、製麺時における低カロリー化の効果は少ないので、カロリーの点で好ましくない。
続けて、本実施形態における難消化でん粉組成物の製造方法について説明する。
難消化でん粉組成物の製造方法は、スラリーを生成する工程と、スラリーに硫酸ソーダを添加する工程と、架橋反応を継続させる工程と、架橋反応を継続させる工程においてスラリーの粘度を測定する工程と、測定されたスラリーの粘度に応じてスラリーに希硫酸、塩酸等の中和剤を添加し、架橋反応を停止させる工程と、を含む。難消化でん粉組成物の製造方法は、上述の工程のほか、消塩工程、脱水工程や乾燥工程等を含んでもよい。
でん粉濃度が30質量%未満であると架橋反応が進みにくく、製造時間が掛かりすぎるため、生産歩留まりが悪く、好ましくない。また、でん粉濃度が47質量%超である場合、スラリー濃度が高すぎて、製造が困難であるため好ましくない。
中和工程を経たスラリー(難消化でん粉組成物)は、脱水工程や乾燥工程を経て、例えば、水分が10~14質量%に調整される。また、得られた難消化でん粉組成物は、例えば、麺類の原材料として混合されやすいように粉末状に調整される。
続けて、本実施形態における麺類について説明する。
本実施形態における麺類は、原料粉(主原料)に上述の難消化性でん粉組成物を含む麺類である。本実施形態の麺類において、原料粉における難消化でん粉組成物含量は、5~80質量%、好ましくは20~60質量%である。本実施形態における麺類は、上述の難消化でん粉組成物を原材料として含む麺類あるので、低カロリーであり、かつ、ソフトな食感を有する麺類である。本実施形態における麺類は、低カロリーであるだけでなく、食物繊維を多く含むにもかかわらずソフトな食感を有する麺類である。本実施形態における麺類は、低カロリーであり、かつ、おいしい麺類である。
また、外層と内層それぞれにおける難消化でん粉組成物の含量比を、例えば、1:1.1~2に調整することができる。
また、外層と内層との質量比を、例えば、1:0.5~4に調整することができる。製造時における積層状態では、外層:内層:外層の質量比を、例えば、1:8:1~1:1:1とすることができる。
本実施形態によれば、食物繊維を多く含み、かつ、所定の粘度を有する難消化でん粉組成物を提供することができる。また、本実施形態の難消化でん粉組成物によれば、当該難消化でん粉組成物が原材料として配合された麺類における食感をソフトにし、おいしさを向上させる。一般的には、難消化性でん粉が配合された麺類は、低カロリー化はされるが、難消化性でん粉特有のざらつきによって食感は低下する。本実施形態における難消化でん粉組成物によれば、当該難消化でん粉組成物が配合された麺類を低カロリー化させるだけでなく、ざらつきによる食感の低下を抑制できる。また、本実施形態における難消化でん粉組成物によれば、当該難消化でん粉組成物が配合された麺類を低カロリー化させるだけでなく、食物繊維を多く含むにもかかわらずソフトな食感を付与することができる。
続けて、実施例について説明する。
表1は、実施例1~4および比較例1~3における難消化でん粉組成物の製造条件および分析結果を、表2は、実施例1~4および比較例1~3の難消化でん粉組成物を含む麺類の食感評価の結果を示す。
ここで、比較例1、2は市販製品であり、比較例1が商品名:パインスターチRT(松谷化学工業株式会社製)、比較例2が商品名:ActistarRT(カーギル社製)である。
実施例1~4および比較例3では、実施形態に記載の製造方法と同様の工程により難消化でん粉組成物を製造した。実施例1~4および比較例3における製造方法・条件は、原料粉の種類(原料種)、加工法、添加されるトリメタリン酸ナトリウム(STMP)のでん粉に対する割合(%)、予備試験により測定された目標粘度に要する架橋反応時間(hr)、架橋反応時における平均pH、架橋反応を停止させる工程における粘度のしきい値、目標粘度がそれぞれ異なり、表1に示す通りである。しきい値は目標粘度に基づいて設定され、ここでは目標粘度に係数2を乗じた値となっている。また、スラリーに含まれるでん粉濃度は45質量%とし、架橋反応中のスラリーの温度を40℃に調整した。スラリーに硫酸ソーダを添加する工程では、添加される硫酸ソーダのでん粉に対する割合(%)を10%とし、架橋反応を継続される工程では、表1に示すpHに応じて水酸化ナトリウムを投入した。粘度の測定は架橋反応時間の70%、80%及び90%経過時に実施し 、測定された粘度がしきい値を下回った場合、架橋反応を停止させるためにスラリーへ希硫酸を添加し、pHを5~7に調整した。中和工程を経たスラリーは、脱水工程や乾燥工程を経て水分を12質量%に調整し、最終的に難消化性でん粉の粉末とした。
<リン含量の測定>
実施例および比較例の難消化でん粉組成物におけるリン含量は、結合リンの純度試験法により測定した。
<食物繊維の測定>
実施例および比較例の難消化でん粉組成物における食物繊維含量は、プロスキー法により測定した。
<粘度の測定方法>
実施例および比較例の難消化でん粉組成物における架橋反応中のスラリー粘度及び最終生成物の粘度は、上述のブラベンダ法により測定した。ここでいう「粘度」とは、各難消化でん粉組成物が30質量%である場合の粘度である。粘度は本実施形態に記載の方法により、機器名:Brabender viscograph-E(Brabender GmbH & Co. KG社製)を利用して測定した。
実施例または比較例の難消化でん粉組成物300gと、準強力粉700gとを主原料とし、食塩10g、かんすい2g、重合リン酸塩0.4gを溶解させた練り水400mlを加え、ミキサーで15分間よく混練した。この麺生地を圧延して麺帯とし、さらにロール圧延を繰り返して麺厚1.00mmの麺帯とした。これを角刃20番の切刃で切り出し、生麺(生ラーメン)を得た。更に、生麺を沸騰したお湯に投入し、2分間茹でて麺類を得た。製造した麺類において、原料粉における難消化でん粉組成物の含量は30質量%である。
食感評価の経験が深い10名のパネラー(表2、3における上段の1~10)により、実施例および比較例において製造した麺類の評価を行った。食感評価は、スープを入れた丼に麺類を入れ、喫食時におけるざらつきの有無、およびソフト感の有無をについて行い、ざらつくを0点、ややざらつくを1点、ざらつかないを2点、ソフト感なしを0点、ややソフト感ありを1点、ソフト感ありを2点とした。それぞれの評価項目について各パネラーの評価点の平均値を求め、さらにざらつき及びソフト感の評価点の平均値合計を総合評価として求めた。総合評価は、評価点の平均値合計が0以上1未満を×、1以上2未満を△、2以上3未満を〇、3以上を◎とし、△以上を合格とした。
実施例1~3は、タピオカをリン酸架橋処理して得られた難消化でん粉組成物であり、実施例4は、タピオカをリン酸モノエステル化リン酸架橋処理して得られた難消化でん粉組成物である。実施例1~4において作製した組成物の最終粘度は、160~3636B.U.であった。また、実施例1~4において作製した組成物のリン含量は、0.35~0.49質量%であった。また、実施例1~4において作製した組成物の食物繊維含量は、72.0~87.5質量%であった。そして、実施例1~4において作製した麺類の食感評価の総合評価は全て△以上であった。
これに対し、比較例3も同様に、タピオカをリン酸架橋処理して得られた難消化でん粉組成物である。比較例3における最終粘度は73B.U.であり比較例3において作製した麺類の食感評価の総合評価は×であった。
比較例のように、最終粘度が150B.U.未満の場合、難消化でん粉が膨潤しないため、麺類にした際における食感においてざらつきが発生し、食感が非常に悪いことがわかった。これに対し、実施例の難消化でん粉組成物はやや膨潤し、やや水が入ることにより麺類にした際の食感がソフトなることがわかった。
また、表1に示す製造条件および分析結果、および表2に示す食感評価の結果より、本実施例の難消化でん粉組成物を得るためには、スラリーの粘度測定及び測定粘度に基づく架橋反応を停止させるタイミングが重要であることがわかった。
続けて、実施例3の難消化でん粉組成物を用いて実施例5~9、および比較例4において麺類を製造した。実施例5~9、および比較例4は、麺類に含まれる実施例3の難消化でん粉組成物含量(質量%)が異なる例である。実施例5~9、および比較例4の組成および食感評価を表3に示す。
製麺条件は、難消化でん粉組成物と準強力粉との配合量の割合のほか、上述の通りである。実施例5~9は、主原料1000gのうち、実施例3の難消化でん粉組成物がそれぞれ200g、300g、400g、600g、800gまたは900gであり、残部が準強力粉である。
Claims (2)
- 食物繊維を70質量%以上と、リンを0.3~0.5質量%含み、ブラベンダ法により測定された30%質量のスラリー粘度が150~4,000B.U.である、難消化性でん粉組成物の製造方法であって、
でん粉濃度が30~47質量%のスラリーを生成する工程と、
前記スラリーにアルカリ剤を添加してpHを10~11.5に調整し、トリメタリン酸ナトリウム、オキシ塩化リン、オルトリン酸、オルトリン酸カリウム、オルトリン酸ナトリウムおよびトリポリリン酸ナトリウムのいずれかを前記スラリーに含まれるでん粉に対して0.5~20質量%添加すると共に、30~45℃で架橋反応を継続させる工程と、
スラリーの粘度を測定する工程と、
スラリーの粘度が目標粘度に基づいて設定されるしきい値以下となった場合に、スラリーに中和剤を添加して架橋反応を停止する工程と、を含む
難消化性でん粉組成物の製造方法。 - 前記スラリーを生成する工程の後であって、前記架橋反応を継続させる工程の前において、
前記スラリーに硫酸ソーダを添加する工程であって、前記スラリーに対して0.1~30質量%の硫酸ソーダを添加する工程と、を含む、
請求項1に記載の難消化性でん粉組成物の製造方法。
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