JP7329930B2 - 難消化性でん粉組成物およびその製造方法 - Google Patents

難消化性でん粉組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、食物繊維を含む難消化でん粉組成物およびその製造方法に関する。
近年、健康志向が高まり、低カロリーの食品だけでなく、栄養学的な面で食物繊維を多く摂取できる食品が提案されている。
麺類においても食物繊維を含有する麺が提案されており、食物繊維の種類としては、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、低分子のセルロース、キトサン、サイリウム種皮、難消化性でん粉(レジスタントスターチ)などが挙げられる。
この内、難消化性でん粉は、アミラーゼ消化に対して耐性のあるでん粉であり、ハイアミロースでん粉、老化でん粉、湿熱処理でん粉、強い架橋処理を施したものやエーテル置換したものなどの化学的に改変された加工でん粉などがあり、麺類に使用されている。
特許文献1には、穀粉と、60重量%以上のレジスタントスターチを含むレジスタントスターチ含有でん粉とを含有する麺類に関する発明が開示されており、レジスタントスターチとして、ハイアミロースコーンスターチ及びその誘導体の湿熱処理でん粉が記載されている。特許文献1に開示されているレジスタントスターチは、ハイアミロースコーンスターチを湿熱処理したもので食物繊維含量は65%程度であり、カロリー低減には十分ではなかった。
また、難消化性でん粉は、麺に使用した場合に製麺性や食感、臭い等で他の食物繊維素材より優れているが、糊化しづらい性質を有しているため、ざらつきや粉っぽさを強く感じるといった課題があった。これらの問題を解決するために、特許文献1に記載された発明では、エステル化でん粉、エーテル化でん粉などの加工でん粉を配合していた。
一方、食物繊維含量が70%以上の難消化性でん粉は、アミラーゼ抵抗性が高くなり、それに伴い食物繊維含量も高くなるが、でん粉が全く膨潤しないという課題があった。そのため、食物繊維含量が70%以上の難消化性でん粉を麺に使用した場合、食感が硬くざらつき、製品として十分に満足のいくものではなかった。
特開平10-313804号公報
本発明は、食物繊維含量が70%以上であるためカロリーを低減でき、かつ粘度が従来の食物繊維高含有でん粉よりも高いため、製麺時の食感がソフトであり、かつざらつきの少ない難消化性でん粉を提供することを課題とする。
本発明の発明者らは、従来の食物繊維高含有でん粉よりも高い粘度、具体的には、ブラベンダ法により測定された粘度であって、難消化性でん粉組成物を30質量%含むスラリーの粘度が150~4,000B.U.である難消化でん粉組成物を麺に使用することで、原材料として配合された麺類を低カロリー化させるだけでなく、難消化性でん粉組成物に特有のざらつきを抑えながら食感をソフトにし、おいしさを向上させることができることを見出し、本発明を構成するに至った。
すなわち、本願の第一の発明は、リン酸架橋でん粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋でん粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋でん粉からなる群より選ばれる1または2以上からなる難消化性でん粉組成物であって、食物繊維を70質量%以上含み、リンを0.3~0.5質量%含み、ブラベンダ法により測定された粘度であって、該難消化性でん粉組成物を30質量%含むスラリーの粘度が150~4,000B.U.である、難消化性でん粉組成物である。
本願の第二の発明は、原料粉に本願の第一の発明に記載の難消化性でん粉組成物を含む麺類であって、原料粉における難消化でん粉組成物含量は、5~80質量%である麺類に関する。
本願の第三の発明は、本願の第一の発明に記載の難消化性でん粉組成物の製造方法であって、でん粉濃度が30~47質量%のスラリーを生成する工程と、前記スラリーにアルカリ剤を添加してpHを10~11.5に調整し、トリメタリン酸ナトリウム、オキシ塩化リン、オルトリン酸、オルトリン酸カリウム、オルトリン酸ナトリウムおよびトリポリリン酸ナトリウムのいずれかを前記スラリーに含まれるでん粉に対して0.5~20質量%添加すると共に、30~45℃で架橋反応を継続させる工程と、スラリーの粘度を測定する工程と、スラリーの粘度がしきい値以下となった場合に、スラリーに中和剤を添加して架橋反応を停止する工程と、を含む難消化性でん粉組成物の製造方法に関する。
本願の第四の発明は、前記スラリーを生成する工程の後であって、前記架橋反応を継続させる工程の前において、前記スラリーに硫酸ソーダを添加する工程であって、前記スラリーに対して0.1~30質量%の硫酸ソーダを添加する工程と、を含む、本願の第三の発明に記載の難消化性でん粉組成物の製造方法に関する。
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。なお、本発明は、以下の実施形態および実施例に限定されない。
<難消化でん粉組成物>
本実施形態における難消化でん粉組成物は、リン酸架橋でん粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋でん粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋でん粉からなる群より選ばれる1または2以上からなる。本実施形態における難消化性でん粉組成物は、食物繊維を70質量%以上含み、リンを0.3~0.5質量%含む。本実施形態における難消化でん粉組成物は、ブラベンダ法により測定された粘度であって、該難消化性でん粉組成物を30質量%含むスラリーの粘度が150~4,000B.U.である。
本実施形態における難消化でん粉組成物は、当該難消化でん粉組成物を含む原料粉が配合された麺類における食感をソフトにし、おいしさを向上させる。一般的には、難消化性でん粉が配合された麺類は、低カロリー化されるがざらつきが生じ、食感は低下する。本実施形態における難消化でん粉組成物は、当該難消化でん粉組成物が配合された麺類を低カロリー化させるだけでなく、食感の低下を抑制できる。本実施形態における難消化でん粉組成物は、当該難消化でん粉組成物が配合された麺類を低カロリー化させるだけでなく、難消化でん粉組成物特有のざらつきを抑えながら食物繊維を多く含むにもかかわらずソフトな食感を付与することができる。
本実施形態における難消化でん粉組成物は、例えば、後述する製造方法により得ることができる。
難消化でん粉組成物の原料は、タピオカ、小麦、馬澱、サゴ、ハイアミロースコーン、コーンスターチ、ワキシーコーン、米より選ばれる1または2以上である。
リン酸架橋でん粉は、原料をトリメタリン酸ナトリウム又はオキシ塩化リンでエステル化により架橋処理した加工でん粉である。リン酸モノエステル化リン酸架橋でん粉は、原料をオルトリン酸、オルトリン酸カリウム、オルトリン酸ナトリウムおよびトリポリリン酸ナトリウムのいずれかでエステル化した加工でん粉である。ヒドロキシプロピル化リン酸架橋でん粉は、原料をトリメタリン酸ナトリウム又はオキシ塩化リンでエステル化し、プロピレンオキシドでエーテル化により架橋処理した加工でん粉である。
難消化でん粉組成物は、リン酸架橋処理、リン酸モノエステル化リン酸架橋処理またはヒドロキシプロピル化リン酸架橋処理における反応条件を調整することで直接的に得ることができる。
本実施形態における難消化性でん粉組成物は、食物繊維を70質量%以上、好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上含む。食物繊維含量は、プロスキー法により測定される。上記は水分を含んだ含量であるが、水分を含まない固形分換算(難消化でん粉組成物の水分含量が13質量%の場合)では、食物繊維含量は、80質量%以上、好ましくは86質量%以上、さらに好ましくは92質量%以上である。
食物繊維は、低カロリーであるので、本実施形態の難消化でん粉組成物は、低カロリーである。そのため、難消化でん粉組成物を原料粉として含む麺類は、低カロリーの麺類となる。食物繊維の含量が70質量%未満の場合、製麺時における低カロリー化の効果は少ないので、カロリーの点で好ましくない。
難消化性でん粉組成物は、リン0.3~0.5質量%含む。リンの含量は、日本の食品添加物規定に対応している。架橋処理による結合リンは、でん粉の構造の骨格であるアミロペクチンの鎖長部分を結合し、水を入れない構造にすることで、でん粉を膨潤させないようにしている。
リン含量が0.2質量%未満の場合、難消化でん粉組成物における食物繊維含量を高くすることが難しくなり所望の含量に達しない場合があるため好ましくない。また、リン含量が0.54質量%超の場合、日本の食品添加物規定外のため、食品への利用はできないため好ましくない。リン含量は、食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の第2添加物、リン酸架橋デンプン、純度試験、(1)リンの方法(以下、結合リンの純度試験法という)により測定される。
ここで、原料に含まれる食物繊維含量によって製造時におけるトリメタリン酸ナトリウム、オキシ塩化リン、オルトリン酸、オルトリン酸カリウム、オルトリン酸ナトリウムおよびトリポリリン酸ナトリウムのいずれか(以下、「トリメタリン酸ナトリウム等」という場合がある)の添加量が変動する。そのため、難消化でん粉組成物におけるリン含量は、原料によって異なる。例えば、原料が食物繊維を多く含むハイアミロースコーンである場合、難消化でん粉組成物におけるリン含量は、0.20~0.4質量%、好ましくは0.25~0.35質量%である。また、原料がハイアミロースコーンではない他の原料である場合、難消化でん粉組成物におけるリン含量は、0.25~0.54質量%、好ましくは0.30~0.50質量%である。
難消化でん粉組成物は、ブラベンダ法により測定された粘度であって、該難消化性でん粉組成物を30質量%含むスラリーの粘度が150~4,000B.U.であり、好ましくは160~3,700B.U.であり、さらに好ましくは300~1,500B.U.である。本実施形態の難消化でん粉組成物は、食物繊維を多く含むにもかかわらず、従来の食物繊維高含有でん粉よりも高い粘度を有する。
難消化でん粉組成物の粘度は、上述の通り、ブラベンダ法により測定される。ブラベンダ法は、ブラベンダ社の装置により測定される一般的な方法である。ブラベンダ法による粘度は、セルに難消化でん粉組成物と水とを混合したスラリー(例えば、30%の場合は、105℃4時間法により測定した水分値を用いた固形分換算で135g+水315g)を入れ、所定温度(昇温1.5℃/分、50℃→95℃まで昇温→95℃30分保持=計60分)をかけて、粘度を発現させ、その最終粘度をデータ化したものである。
難消化でん粉組成物の粘度が150~4,000B.U.の場合、製麺時における食感、特に難消化でん粉組成物に特有のざらつきが抑えられ、ソフトな食感が向上するため好ましい。これは、難消化でん粉組成物が高い食物繊維含量を達成しつつ、膨潤性を有しているためである。難消化でん粉組成物の粘度が150B.U.未満の場合、製麺時における食感、特にソフトな食感がなく、ざらつきのある食感となり、好ましくない。また、粘度が4,000B.U.超の場合、食物繊維の含量が少なくなる等、難消化でん粉組成物性における他の規定を満たすことが難しくなるため、好ましくない。
ここで、難消化でん粉組成物の粘度の値は、難消化でん粉組成物が30質量%含有されたスラリーをブラベンダ法により測定して得られた値である。通常、ブラベンダ法では4~10質量%のスラリーを測定するが、食物繊維を高濃度で含有する難消化でん粉は粘度が低く、ブランベンダ法では粘度の測定できなかったところ、難消化でん粉の濃度を30質量%にすることで粘度を測定できることを見出した。従来の難消化でん粉における30質量%濃度の粘度は、例えば、50~130B.U.の範囲であった。
本実施形態における難消化でん粉組成物の粘度も当該方法により測定された。本実施形態における難消化でん粉組成物の粘度は従来の難消化でん粉よりも高く、上述の範囲である。本実施形態における難消化でん粉組成物は、従来品と同様に食物繊維を高濃度で含有するが、従来品より高い粘度を有する。そのため、本実施形態の難消化でん粉組成物を含む麺類は、従来の難消化でん粉を含む麺類に比べて食感がソフトである。
<製造方法>
続けて、本実施形態における難消化でん粉組成物の製造方法について説明する。
難消化でん粉組成物の製造方法は、スラリーを生成する工程と、スラリーに硫酸ソーダを添加する工程と、架橋反応を継続させる工程と、架橋反応を継続させる工程においてスラリーの粘度を測定する工程と、測定されたスラリーの粘度に応じてスラリーに希硫酸、塩酸等の中和剤を添加し、架橋反応を停止させる工程と、を含む。難消化でん粉組成物の製造方法は、上述の工程のほか、消塩工程、脱水工程や乾燥工程等を含んでもよい。
スラリーを生成する工程は、でん粉濃度が30~47質量%、好ましくは35~45質量%のスラリーを生成する工程である。当該工程において、例えば、粉末状の原料(でんぷん粉)をタンク等に投入し、温水または水と混合してスラリーを生成する工程である。
でん粉濃度が30質量%未満であると架橋反応が進みにくく、製造時間が掛かりすぎるため、生産歩留まりが悪く、好ましくない。また、でん粉濃度が47質量%超である場合、スラリー濃度が高すぎて、製造が困難であるため好ましくない。
スラリーの温度は、例えば、30~45℃、好ましくは35~42℃に調整される。スラリーの温度が30℃未満の場合、反応しにくく製造時間がかかりすぎるため、好ましくない。スラリーの温度が45℃超の場合、でん粉が膨潤しやすく、且つ架橋反応のスピードも早くなるため、反応停止のポイントの調整が難しくなるため好ましくない。
スラリーに硫酸ソーダを添加する工程は、スラリーに含まれるでん粉に対して0.1~30質量%、好ましくは5~20質量%の硫酸ソーダを添加する工程である。なお、スラリーに硫酸ソーダを添加する工程は省略可能であるが、反応を促進するためには添加することが望ましい。
架橋反応を継続させる工程は、スラリーにアルカリ剤を添加してpHを10.0~11.5、好ましくは10.5~11.0に調整し、トリメタリン酸ナトリウム等をスラリーに含まれるでん粉に対して5~20質量%、好ましくは7~13質量%添加すると共に、30~45℃、好ましくは35~42℃で架橋反応を継続させる工程である。
当該工程において、アルカリ剤はスラリーのpHを調整するために添加される。アルカリ剤としては、スラリーのpHに応じて、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等を使用することができる。当該工程において、pHは、10.0~11.5、好ましくは10.5~11.0に調整される。pHが上記範囲である場合、架橋反応の速度を緩やかにすることができ、架橋反応を所望の時点で容易に止めることができる。そのため、上述の特性を有する難消化でん粉組成物を得ることができるので好ましい。pHが10未満である場合、架橋反応が遅いため製造効率が悪くなるので好ましくない。また、pHが11.5超である場合、架橋反応が速いため所望の時点で反応を止めることが難しく、上記特性を有する難消化でん粉組成物を得ることが難しいため好ましくない。
当該工程において、トリメタリン酸ナトリウム等は、スラリーに含まれるでん粉に対して5~25質量%、好ましくは7~15質量%、さらに好ましくは8~13質量%添加される。トリメタリン酸ナトリウム等の添加量が上記範囲である場合、架橋反応の速度を緩やかにすることができ、架橋反応中の粘度測定に基づいて架橋反応を停止させるに際して、商品設計上の目標粘度に対する最終生成物の粘度(最終粘度)の誤差を小さくすることができる。トリメタリン酸ナトリウム等の添加量がスラリーに含まれるでん粉に対して5質量%未満である場合、食物繊維含量が高めることができず、難消化性でん粉が得られないので好ましくない。また、トリメタリン酸ナトリウム等の添加量がスラリーに含まれるでん粉に対して25質量%超である場合、架橋反応が速く反応を所望の時点で止めることが難しく、上記特性を有する難消化でん粉組成物を得ることが難しいため好ましくない。
当該工程において、温度は、30~45℃、好ましくは35~42℃である。温度が上記範囲である場合、架橋反応の速度を遅くすることができ、架橋反応を所望の時点で止めることができる。そのため、上述の特性を有する難消化でん粉組成物を得ることができるので好ましい。温度が30℃未満である場合、架橋反応が遅いため製造効率が悪くなるので好ましくない。また、温度が45℃超である場合、でん粉が膨潤しやすく、且つ架橋反応が速くなるため、反応停止のポイントの調整が難しくなるため好ましくない。
反応時間は、当該工程における他の要素により左右される。所望の時点で反応を止めやすい反応速度と製造効率とを考えると、反応時間が上記範囲内になるように反応条件を調整することが好ましい。なお、架橋剤としては、トリメタリン酸ナトリウムに替えて、オキシ塩化リン、オルトリン酸、オルトリン酸カリウム、オルトリン酸ナトリウムおよびトリポリリン酸ナトリウムのいずれかを使用してもよい。
スラリーの粘度を測定する工程は、架橋反応中のスラリーを適宜サンプリングし、上述のブラベンダ法による粘度を測定する工程である。粘度の測定は、ブラベンダーアミログラム(機器名:Brabender viscograph-E(Brabender GmbH & Co. KG社製))を利用して測定することができる。なお、ブラベンダーアミログラムによる粘度測定には約60分を要するため、測定時間が約30分であるラピットビスコアナライザー(Rapid Visco Analyser:RVA4500 Perten製)を使用することができるが、ラピットビスコアナライザーにより測定した粘度をブラベンダーアミログラムによる粘度に換算する必要がある。
スラリーの粘度の測定間隔は任意に設定することができるが、上述の通り粘度の測定には時間を要するため、予備試験を通じて目標粘度に到達する架橋反応時間を予め測定し、例えば、架橋反応時間の70%、80%及び90%経過時に粘度測定を行い、測定された粘度がしきい値以下であるかどうかを判定してもよい。
架橋反応を停止させる工程は、測定されたスラリーの粘度がしきい値を下回った場合に、スラリーに希硫酸、塩酸等の中和剤を添加してpHを5~7、好ましくは5.5~6.5に調整する工程である。当該工程は、スラリーに中和剤を添加してpHを5~7、好ましくは5.5~6.5に調整することで、中和して、架橋反応を停止させる工程である。しきい値は、商品設計上の目標粘度に基づいて設定することが可能である。例えば、目標粘度に所定の係数γ(γ>1)を乗じてしきい値を設定することができる。このように、架橋反応中のスラリーの粘度を測定し、最終生成物の粘度が目標粘度に近づくように中和剤を添加することで、規格外の製品が発生するリスクを減少させ、生産性を向上させることができる。
また、中和工程の前に消塩工程が行われてもよい。消塩工程においては、例えば、亜硫酸ガス、次亜塩素酸ナトリウム等を使用できる。
中和工程を経たスラリー(難消化でん粉組成物)は、脱水工程や乾燥工程を経て、例えば、水分が10~14質量%に調整される。また、得られた難消化でん粉組成物は、例えば、麺類の原材料として混合されやすいように粉末状に調整される。
本実施形態における難消化でん粉組成物の製造方法によれば、反応速度を遅くしているので、上述のような特性を有する難消化でん粉組成物を得ることができると共に、リンおよび食物繊維における規格外の発生を抑制し歩留まりを向上させることができる。
<麺類>
続けて、本実施形態における麺類について説明する。
本実施形態における麺類は、原料粉(主原料)に上述の難消化性でん粉組成物を含む麺類である。本実施形態の麺類において、原料粉における難消化でん粉組成物含量は、5~80質量%、好ましくは20~60質量%である。本実施形態における麺類は、上述の難消化でん粉組成物を原材料として含む麺類あるので、低カロリーであり、かつ、ソフトな食感を有する麺類である。本実施形態における麺類は、低カロリーであるだけでなく、食物繊維を多く含むにもかかわらずソフトな食感を有する麺類である。本実施形態における麺類は、低カロリーであり、かつ、おいしい麺類である。
本実施形態の麺類における難消化でん粉組成物の含量が上記範囲内の場合、麺類が低カロリーかつソフトな食感を有するので好ましい。本実施形態の麺類における難消化でん粉組成物の含量が5質量%未満の場合、低カロリー化の効果が少ないため好ましくない。また、本実施形態の麺類における難消化でん粉組成物の含量が80質量%超である場合、麺帯を作製するのも困難であり、かつ食感が悪くなるので好ましくない。
また、麺類において、原料粉全体に対する本実施形態の難消化でん粉組成物の含量が20~60質量%の場合、特に低カロリー化効果と食感の向上(ソフトな食感)効果とを同時に得やすいので好ましい。また、原料粉における難消化でん粉組成物の含量が5質量%以上20質量%未満の場合、特にソフトな食感に優れているので、おいしさに優れた商品として特に好ましい。また、原料粉における難消化でん粉組成物の含量が60質量%超80質量%以下の場合、低カロリー化の効果が大きいので、カロリーを大幅低減した商品として特に好ましい。
ここで、原料粉における難消化でん粉組成物の含量が60質量%超80質量%以下の場合、外面側に小麦主体層等を配置する(外面を包む)多層麺とすることで、食感を向上させることができ、食感に優れた低カロリー麺とすることができる。例えば、外層における難消化でん粉組成物の含量を少なくし、内層における難消化でん粉組成物の含量を多くすることで、食感を向上させることができる。
例えば、外層における難消化でん粉組成物の含量を0~60質量%、内層における難消化でん粉組成物の含量を65~85質量%とすることができる。
また、外層と内層それぞれにおける難消化でん粉組成物の含量比を、例えば、1:1.1~2に調整することができる。
また、外層と内層との質量比を、例えば、1:0.5~4に調整することができる。製造時における積層状態では、外層:内層:外層の質量比を、例えば、1:8:1~1:1:1とすることができる。
原料粉における難消化でん粉組成物の含量が60質量%超80質量%以下の場合、グルテンを多く含む原料粉を使用したり、後述する副原料であるグルテンを多く含ませたりすることで、麺類の食感を向上させることもできる。例えば、グルテンを難消化でん粉組成物に対して、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上含有させることで、麺類の食感を向上させることができる。
具体的には、麺類における難消化でん粉組成物の含量を80質量%とする場合、例えば、準強力粉200gおよび難消化でん粉組成物800gを原料粉(主原料)とし、グルテン150gを含む副原料を添加し、更に水(例えば、420ml)を加水して混練等することで、低カロリーかつ食感に優れた麺類を製造することができる。
麺類の種類は、特に限定されず、当技術分野で知られるいかなる種類のものであってもよい。麺類として、例えば、うどん、そば、中華麺、パスタ等が挙げられる。また、麺類は、生麺や即席麺等のいずれのタイプであってもよい。麺類は、粉末状の原料の段階で難消化でん粉組成物と小麦粉等の他の原料とを混合して製造されてもよく、上述のように多層麺として一部の層にのみ難消化でん粉組成物が含まれるようにして製造されてもよい。
原料粉(主原料)は、難消化でん粉組成物のほか、小麦粉、でん粉、そば粉、各種穀粉等を含んでよい。また、副原料としては、例えば、即席麺において一般的に使用されている卵白、各種増粘類、グルテン、食塩、かんすい、色素等を使用できる。
麺類は、常法に従って、原料粉(主原料)および副原料を配合し、混練し、麺帯形成し、圧延および切り出して製造される。配合は、原料粉(主原料)に対して副原料を粉体で添加しても、練り水に溶かすか懸濁させて添加してもよい。混練においては、常法に従って、原料粉(主原料)および副原料に、練り水を加えた後、ミキサー等を用いて混練して麺生地を作成する。麺帯は、混練により得られた麺生地を単数又は複数の圧延ロールにより圧延して得ることもできるし、混練により得られた麺生地を押し出し成形機により押し出して得ることもできる。そして、麺帯をさらに圧延した後、切り出して生麺線を形成することができる。
多層麺の場合、例えば、難消化でん粉組成物を含む内層麺帯と、難消化でん粉組成物を含まない(又は含量が少ない)外層麺帯とを得た後、外層/内層/外層に積層配置して三層麺帯とし、この三層麺帯をロール圧延機で強く圧延した後、切刃ロールで切り出すことにより、多層の生麺線を形成することができる。
更に、即席麺においては、α化処理および乾燥処理が行われる。α化処理は、蒸し工程、茹で工程を単独又は組み合わせて行われる。蒸し工程においては、飽和蒸気、過熱蒸気等が使用可能である。乾燥処理は、α化後の麺線を乾燥する。乾燥処理の種類は特に限定されず、即席麺の製造において一般的に使用されている乾燥方法を使用することができる。具体的には、乾燥処理としては、フライ乾燥のほか、熱風乾燥、凍結乾燥、マイクロ波乾燥、低温での送風乾燥といったノンフライ乾燥処理が挙げられる。
本実施形態の難消化でん粉組成物によれば、以下の作用効果が奏される。
本実施形態によれば、食物繊維を多く含み、かつ、所定の粘度を有する難消化でん粉組成物を提供することができる。また、本実施形態の難消化でん粉組成物によれば、当該難消化でん粉組成物が原材料として配合された麺類における食感をソフトにし、おいしさを向上させる。一般的には、難消化性でん粉が配合された麺類は、低カロリー化はされるが、難消化性でん粉特有のざらつきによって食感は低下する。本実施形態における難消化でん粉組成物によれば、当該難消化でん粉組成物が配合された麺類を低カロリー化させるだけでなく、ざらつきによる食感の低下を抑制できる。また、本実施形態における難消化でん粉組成物によれば、当該難消化でん粉組成物が配合された麺類を低カロリー化させるだけでなく、食物繊維を多く含むにもかかわらずソフトな食感を付与することができる。
また、本実施形態における製造方法によれば、反応速度を遅くしているので、上述のような特性を有する難消化でん粉組成物を得ることができると共に、リンおよび食物繊維における規格外の発生を抑制し歩留まりを向上させることができる。
また、本実施形態によれば、低カロリーであり、かつ、ソフトな食感を有する麺類を得ることができる。また、本実施形態によれば、低カロリーであるだけでなく、食物繊維を多く含むにもかかわらずソフトな食感を有する麺類を得ることができる。本実施形態によれば、低カロリーであり、かつ、おいしい麺類を得ることができる。
<実施例>
続けて、実施例について説明する。
表1は、実施例1~4および比較例1~3における難消化でん粉組成物の製造条件および分析結果を、表2は、実施例1~4および比較例1~3の難消化でん粉組成物を含む麺類の食感評価の結果を示す。
ここで、比較例1、2は市販製品であり、比較例1が商品名:パインスターチRT(松谷化学工業株式会社製)、比較例2が商品名:ActistarRT(カーギル社製)である。
Figure 0007329930000001
Figure 0007329930000002
<製造方法・条件>
実施例1~4および比較例3では、実施形態に記載の製造方法と同様の工程により難消化でん粉組成物を製造した。実施例1~4および比較例3における製造方法・条件は、原料粉の種類(原料種)、加工法、添加されるトリメタリン酸ナトリウム(STMP)のでん粉に対する割合(%)、予備試験により測定された目標粘度に要する架橋反応時間(hr)、架橋反応時における平均pH、架橋反応を停止させる工程における粘度のしきい値、目標粘度がそれぞれ異なり、表1に示す通りである。しきい値は目標粘度に基づいて設定され、ここでは目標粘度に係数2を乗じた値となっている。また、スラリーに含まれるでん粉濃度は45質量%とし、架橋反応中のスラリーの温度を40℃に調整した。スラリーに硫酸ソーダを添加する工程では、添加される硫酸ソーダのでん粉に対する割合(%)を10%とし、架橋反応を継続される工程では、表1に示すpHに応じて水酸化ナトリウムを投入した。粘度の測定は架橋反応時間の70%、80%及び90%経過時に実施し 、測定された粘度がしきい値を下回った場合、架橋反応を停止させるためにスラリーへ希硫酸を添加し、pHを5~7に調整した。中和工程を経たスラリーは、脱水工程や乾燥工程を経て水分を12質量%に調整し、最終的に難消化性でん粉の粉末とした。
<分析方法>
<リン含量の測定>
実施例および比較例の難消化でん粉組成物におけるリン含量は、結合リンの純度試験法により測定した。
<食物繊維の測定>
実施例および比較例の難消化でん粉組成物における食物繊維含量は、プロスキー法により測定した。
<粘度の測定方法>
実施例および比較例の難消化でん粉組成物における架橋反応中のスラリー粘度及び最終生成物の粘度は、上述のブラベンダ法により測定した。ここでいう「粘度」とは、各難消化でん粉組成物が30質量%である場合の粘度である。粘度は本実施形態に記載の方法により、機器名:Brabender viscograph-E(Brabender GmbH & Co. KG社製)を利用して測定した。
<製麺(第1条件)>
実施例または比較例の難消化でん粉組成物300gと、準強力粉700gとを主原料とし、食塩10g、かんすい2g、重合リン酸塩0.4gを溶解させた練り水400mlを加え、ミキサーで15分間よく混練した。この麺生地を圧延して麺帯とし、さらにロール圧延を繰り返して麺厚1.00mmの麺帯とした。これを角刃20番の切刃で切り出し、生麺(生ラーメン)を得た。更に、生麺を沸騰したお湯に投入し、2分間茹でて麺類を得た。製造した麺類において、原料粉における難消化でん粉組成物の含量は30質量%である。
<食感評価>
食感評価の経験が深い10名のパネラー(表2、3における上段の1~10)により、実施例および比較例において製造した麺類の評価を行った。食感評価は、スープを入れた丼に麺類を入れ、喫食時におけるざらつきの有無、およびソフト感の有無をについて行い、ざらつくを0点、ややざらつくを1点、ざらつかないを2点、ソフト感なしを0点、ややソフト感ありを1点、ソフト感ありを2点とした。それぞれの評価項目について各パネラーの評価点の平均値を求め、さらにざらつき及びソフト感の評価点の平均値合計を総合評価として求めた。総合評価は、評価点の平均値合計が0以上1未満を×、1以上2未満を△、2以上3未満を〇、3以上を◎とし、△以上を合格とした。
<結果および考察>
実施例1~3は、タピオカをリン酸架橋処理して得られた難消化でん粉組成物であり、実施例4は、タピオカをリン酸モノエステル化リン酸架橋処理して得られた難消化でん粉組成物である。実施例1~4において作製した組成物の最終粘度は、160~3636B.U.であった。また、実施例1~4において作製した組成物のリン含量は、0.35~0.49質量%であった。また、実施例1~4において作製した組成物の食物繊維含量は、72.0~87.5質量%であった。そして、実施例1~4において作製した麺類の食感評価の総合評価は全て△以上であった。
これに対し、比較例3も同様に、タピオカをリン酸架橋処理して得られた難消化でん粉組成物である。比較例3における最終粘度は73B.U.であり比較例3において作製した麺類の食感評価の総合評価は×であった。
比較例1は、タピオカをリン酸架橋処理して得られた市販の難消化でん粉組成物である。比較例1における最終粘度は、58B.U.であった。そして、比較例1において作製した麺類の食感評価の総合評価は×であった。
比較例2は、タピオカをリン酸モノエステル化リン酸架橋処理して得られた市販の難消化でん粉組成物である。比較例2における最終粘度は、129B.U.であった。そして、比較例2おいて作製した麺類の食感評価の総合評価は×であった。
上述の結果より、リン含量が0.3~0.5質量%、かつ最終粘度が150~4,000B.U.の範囲にある実施例1~4の難消化でん粉組成物を含む麺類は、食物繊維が70質量%以上あるにもかかわらず、食感評価が優れていることがわかった。
比較例のように、最終粘度が150B.U.未満の場合、難消化でん粉が膨潤しないため、麺類にした際における食感においてざらつきが発生し、食感が非常に悪いことがわかった。これに対し、実施例の難消化でん粉組成物はやや膨潤し、やや水が入ることにより麺類にした際の食感がソフトなることがわかった。
また、表1に示す製造条件および分析結果、および表2に示す食感評価の結果より、本実施例の難消化でん粉組成物を得るためには、スラリーの粘度測定及び測定粘度に基づく架橋反応を停止させるタイミングが重要であることがわかった。
<製麺(第2条件)>
続けて、実施例3の難消化でん粉組成物を用いて実施例5~9、および比較例4において麺類を製造した。実施例5~9、および比較例4は、麺類に含まれる実施例3の難消化でん粉組成物含量(質量%)が異なる例である。実施例5~9、および比較例4の組成および食感評価を表3に示す。
Figure 0007329930000003
表3に示すように、実施例5~9、および比較例4のそれぞれは、実施例3の難消化でん粉組成物含量が20質量%、30質量%、40質量%、60質量%、80質量%および90質量%の麺類の例である。
製麺条件は、難消化でん粉組成物と準強力粉との配合量の割合のほか、上述の通りである。実施例5~9は、主原料1000gのうち、実施例3の難消化でん粉組成物がそれぞれ200g、300g、400g、600g、800gまたは900gであり、残部が準強力粉である。
実施例5~9、および比較例4の麺類について、上述の食感評価を行った。表3に示すように、実施例5~9の全てが△以上の合格の評価であった。比較例4は、製麺は可能であったが、食感評価は×であり不合格であった。
この結果より、本発明における難消化でん粉組成物を含む麺類は、食感に優れていることがわかった。具体的には、難消化でん粉組成物を含む麺類は、ざらつきが少なく、食感に優れていることがわかった。また、難消化でん粉組成物の含量が高い場合であっても、麺類の食感が優れていることがわかった。
難消化でん粉組成物は加熱による変性が少ないため、上記実施例により製造した生麺について蒸煮し、熱風乾燥して得られるノンフライ麺、加熱したフライ油に浸漬して得られるフライ麺であっても同様の食感が得られる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。

Claims (2)

  1. 食物繊維を70質量%以上と、リンを0.3~0.5質量%含み、ブラベンダ法により測定された30%質量のスラリー粘度が150~4,000B.U.である、難消化性でん粉組成物の製造方法であって、
    でん粉濃度が30~47質量%のスラリーを生成する工程と、
    前記スラリーにアルカリ剤を添加してpHを10~11.5に調整し、トリメタリン酸ナトリウム、オキシ塩化リン、オルトリン酸、オルトリン酸カリウム、オルトリン酸ナトリウムおよびトリポリリン酸ナトリウムのいずれかを前記スラリーに含まれるでん粉に対して0.5~20質量%添加すると共に、30~45℃で架橋反応を継続させる工程と、
    スラリーの粘度を測定する工程と、
    スラリーの粘度が目標粘度に基づいて設定されるしきい値以下となった場合に、スラリーに中和剤を添加して架橋反応を停止する工程と、を含む
    難消化性でん粉組成物の製造方法。
  2. 前記スラリーを生成する工程の後であって、前記架橋反応を継続させる工程の前において、
    前記スラリーに硫酸ソーダを添加する工程であって、前記スラリーに対して0.1~30質量%の硫酸ソーダを添加する工程と、を含む、
    請求項1に記載の難消化性でん粉組成物の製造方法。
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