JP7328529B2 - 刃物用研磨パッド - Google Patents
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特許文献1の刃物用研磨工具は、回転可能な回転部材の外周にらせん状に連続した状態で設けられており、上記刃物用研磨工具の外周縁の部分が刃物の刃部に接触して研磨を行う研磨面を構成している。
ここで、特許文献1における刃物研削装置では、最終的な磨き革による研磨工程が不要であるとされているものの、現在においても刃部の仕上げ研磨のために牛や馬の革からなる革砥を用いた刃物用研磨工具の需要は存在している。
このような問題に鑑み、本発明は扱いやすく、また革砥からなる刃物用研磨工具と同等以上の研磨性能を得ることが可能な刃物用研磨パッドを提供するものとなっている。
疎水性繊維によって構成された繊維基体と、当該繊維基体に含浸されたポリウレタン樹脂とによって構成され、
上記ポリウレタン樹脂の流動開始温度が150~300℃となっており、
上記繊維基体を構成する疎水性繊維の少なくとも一部は、刃物用研磨パッドの平面な面に対して水平方向に配向し、当該繊維の端部が上記研磨面に露出しており、
上記疎水性繊維の含有量は、刃物用研磨パッドの全質量に対し30~90wt%の割合となっており、
さらに、上記繊維基体は不織布からなり、当該不織布の繊度は0.7~30dtexであることを特徴としている。
また、ポリウレタン樹脂の流動開始温度を上記範囲としたことで、刃物用研磨パッドを構成するポリウレタン樹脂が刃物の研磨を行う際の摩擦熱によって軟化することで、適度な弾性で刃物の研磨を行うことができる。そして、刃物の研磨の際には、刃部先端の先鋭化された形状を崩さずにバリ(刃返り)を除去することができるとともに、刃部の表面を滑らかに研磨することができる。
上記材料供給手段4には、材料としての帯状のステンレス鋼をロール状に巻回したコイルが装着されており、当該コイルから上記材料3を所定速度で送り出すようになっている。なお、上記材料3には必要に応じて予め所定位置に穴や切欠きが形成され、また焼き入れや焼きなましなどの処理も行われている。
研削手段5は、上記材料供給手段4によって送られる材料3の側部に沿った位置に複数の研削工具5a~5cを備えており、この研削工具5a~5cは搬送される材料3の端部の両側面を斜めに研削するように配置されている。
また研削手段5は、複数の研削工具5a~5cを備え、これら研削工具5a~5cが上流側から順に荒加工、中加工、仕上げ加工といった複数の過程で研削工程を行うことで、材料の端部を任意の形状の刃部1aへと研削するものとなっている。
図2は研磨手段6を正面から見た図を示しており、研磨手段6は回転可能に設けられた円筒状の回転治具11と、当該回転治具11に設けられた略円盤形状を有する複数の刃物用研磨パッド12と、刃物用研磨パッド12の外周縁に形成された研磨面12aに研磨剤を供給する図示しない研磨剤供給手段とを備えている。
図2に示すように、回転治具11は搬送される材料3の一面および他面に、当該材料3の搬送方向と平行に設けられ、材料3の両側の端部に刃部1aを形成する場合には、材料3の両側部にそれぞれ回転治具11が設けられるようになっている。
また刃物用研磨パッド12は回転治具11の軸方向に所定の間隔で複数枚設けられており、一方の回転治具11に設けられた刃物用研磨パッド12と他方の回転治具11に設けられた刃物用研磨パッド12とが干渉しないよう、偏倚した位置に交互に設けられている。
そして回転治具11の刃物用研磨パッド12を軸方向に偏倚させて設けることで、上記刃部1aに対して各刃物用研磨パッド12の研磨面12aを刃の両面から接触させることが可能となっている。
また材料3の一面側に設けられた回転治具11は図示する矢印方向に反時計回りに回転し、他面側に設けられた回転治具11は図示する矢印方向に時計回りに回転し、接触した研磨面12aが刃部1aの先端部から基部に向けて移動しながら研磨を行うようになっている。
そして上記研磨剤供給手段は、各刃物用研磨パッド12の研磨面12aに油性成分を含む研磨剤を供給するようになっており、上記研磨剤としては従来公知のものを使用することができ、例えば油脂材料に酸化クロム(III)や酸化鉄、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、アルミナ、CBN、人工ダイヤモンドなどの研磨成分を混合したものを用いることができる。
なお、刃物用研磨パッド12の研磨面12aが刃部1aに接触する位置や角度は任意に設定可能であり、上記研削手段5と同様、複数回に分けて刃部1aの研磨を行うようにしてもよい。
また特許文献1に記載されているように、刃物用研磨パッド12の研磨面12aをらせん状に連続して設けることも可能であり、また刃物用研磨面12aの外径を異ならせて全体を円錐台形状とすることも可能である。
なお、研磨手段6と切断手段7との間や切断手段7の後に、刃部1aに錆防止などのコーティングを行うコーティング手段や、刃部1aに電解研磨加工を行う電解研磨手段を設けてもよい。
上記繊維基体としては、ポリエチレンテレフタレート繊維等のポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維、ナイロン6繊維、ナイロン66繊維等のポリアミド繊維などの油分とのなじみのよい親油性を有する疎水性繊維を使用することができ、これらの繊維を1種または2種以上用いることができる。
繊維は親水性繊維と疎水性繊維に大別される。親水性繊維はその分子構造中にヒドロキシル基(-OH)、アミノ基(-NH)、カルボキシル基(-COOH)、アミド基(-NHCO)の親水基を有し、水と馴染み易い反面、油と馴染みにくく、さらに、親水性繊維を刃物用研磨パッドとして使用した場合には研磨加工時の冷却水により繊維が膨潤、軟化し、繊維のコシがなくなるため刃部のバリを取り除くことができない。
一方、疎水性繊維は親水基を持たない、或いは、少量しか持たないため、疎水性・親油性を有し、ポリウレタン樹脂、および、油剤を含む研磨剤成分との馴染みがよく研磨剤を保持しやすいうえ、研磨加工時に膨潤、軟化によりコシがなくなることもない。
疎水性繊維のなかでも公定水分率の低い繊維が好ましく、公定水分率が5%未満の繊維が好ましく、3%以下の繊維がより好ましい。具体的には、特に親油性に優れ、公定水分率が1%未満の、ポリエステル繊維を使用することが望ましく、特にポリエチレンテレフタレート繊維の使用が好ましい。
刃物用研磨パッド12を構成する各繊維の繊度としては0.7~30dtexのものを用いるのが望ましく、1.0~20dtexのものを用いるのがより望ましく、2.0~10dtexのものを用いるのがさらに望ましい。繊維と繊維との間に空隙を確保できるとともに不織布の剛性を高めることができ、研磨効率向上に寄与する。
繊度が30dtexより太すぎると、繊維の剛性が高くなりすぎて繊維の交絡が困難になるうえ、刃物用研磨パッド12が曲げ難く粗硬なものになってしまうので、研磨時に刃部1aへ研磨傷を生じさせる恐れがある。一方、繊度が0.7dtexに満たず細すぎると刃物用研磨パッド12が軟質化してしまい、研磨した刃部1aの先端が丸くなって切れ味が低下してしまう。
繊維長が40mm未満では、不織布の目付や厚みにもよるが、ニードルパンチの際に表面付近の繊維が裏面まで到達し難く、不織布シートの層間剥離が生じやすいので好ましくない。
また80mmを著しく超過する範囲では研磨時に繊維の端部が表れにくいことや、研磨加工により研磨面12aが摩耗した際に、繊維が脱離できずに目詰まりを形成し易く、刃部1aに研磨焼けが生じるため好ましくない。
フリースの形成方法としては、特に制限されないが、例えば、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法などが挙げられる。また、フリースの繊維の絡合方法としては、特に制限されないが、例えば、ケミカルボンド法(浸漬法、スプレー法)、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水流交絡法(ウォータージェット法)などが挙げられる。
これら各方法は任意に組み合わせることが可能であり、例えば、乾式法によりカード機で繊維の方向性を整えたフリースを形成し、得られたフリースを複数枚積層させ、ニードルパンチにより繊維を交絡させて不織布を作製することができる。
このとき刃物用研磨パッド12として構成した際における繊維の方向は、回転治具11の軸方向に直交する面内を向くよう2次元平面上に配向されている。
このような構成とすることで、上記繊維の端部を刃物用研磨パッド12の外周縁の研磨面12aに露出させることができ、刃部1aを研磨する際に繊維の端部で刃部1aの研磨を行うことが可能となる。
また、このような構成とすることで、繊維の先端部と繊維の先端部との間に研磨剤が入り込みやすく、またこれを保持することができるため、研磨剤による効果を得やすいという効果も得られる。
ニードルパンチ法では糸を引っ掛けて絡ませる部分が複数ついた針(ニードル)又は先端がフォークのような形状になったフォーク針等を用いることができる。このときの機械の速度(ストローク数)や針密度、ストロークの距離等々の条件は、ウェブの目付や厚み等々に応じて適宜選定すればよい。
またサーマルボンド法やケミカルボンド法など、ウェブにバインダー繊維や接着剤を入れ、加圧下加熱して一体化する方法の場合、融着部が研磨面に露出した場合に刃部1aに対するあたりが強く、刃部1aに研磨焼けや研磨傷を生じさせやすいうえ、研磨加工時に繊維が脱離しづらく目詰まりが発生し、研磨焼けを起こしやすいため好ましくない。
一方、ウェブを作成せず、紡糸後直接不織布を得るスパンボンド法やメルトブロー法では、連続した長繊維となるため、研磨面12aに繊維端部が露出しにくく、剃刀刃研磨用パッドの基材として好ましくない。
またポリウレタン樹脂としては、流動開始温度を150~300℃とすることが望ましく、さらには155~250℃であることがより望ましい。流動開始温度をこのような範囲に設定することで、刃部1aの研磨をする際に摩擦によって樹脂部分を適度に軟質化させることができ、高い研磨結果を得ることができる。
これに対し、流動開始温度を150℃未満とすると、研磨加工時の発熱により樹脂成分が研磨面12aに付着しやすくなり、研磨した刃部1aの外観、及び、鋭利な先端形状が損なわれることとなり切れ味に影響を及ぼす。
一方、流動開始温度が300℃を超えると、樹脂部分が硬い状態を維持してしまい、刃部1aの形状に追従させることが難しく、刃部1aのバリを除去しにくくなる。
なお、樹脂の流動開始温度の導出方法としては、動的粘弾性測定装置を使用して得られる温度依存性曲線より、位相角の急激な上昇が起こる点の外挿点より導出することができる。なお動的粘弾性測定装置としてはRSA-III(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社)を使用することができる。
また10mmを超過する厚みでは、含浸処理する樹脂の付着量が不織布シートの厚み中央側と表面側で差ができやすく、研磨面12aにおいて樹脂の粗密が生じ、刃部1aに対する当たり方が不均一になるため好ましくない。
これに対し、密度が0.3g/cm3未満となると刃物用研磨パッドの剛性が劣り、研磨の際に刃部1aのバリを除去する能力が低下する。また0.8g/cm3を超えると構成する繊維と繊維との間の空隙が少なくなって、研磨時に研磨屑の目詰まりや研磨材の保持量が減ることから、研磨焼けが起きる原因となる。
これに対し、断面圧縮率が1.5%未満となると研磨面12aの変形量が少なくなって刃部1aに傷がつきやすくなり、5.0%を超えると変形しすぎてしまい、研磨の際に刃部1aの先端が丸くなって切れ味が低下してしまう。
なお、断面圧縮率は、実施例に記載の方法により測定することができる。また、断面圧縮率は、上記密度を調整することにより調整することができる。
断面A硬度が50°以上であることにより、刃物用研磨パッド12の寿命がより向上する傾向にある。また、断面A硬度が90°以下であることにより、研磨傷の発生を抑制し、得られる剃刀刃1の刃部1aの研磨品質がより向上する傾向にある。
なお、断面A硬度は、実施例に記載の方法により測定することができる。また、断面A硬度は、例えば、用いる樹脂の種類及び付着量により調整することができる。
断面圧縮弾性率が上記範囲内であることにより、刃物用研磨パッド12と刃部1aとの密着性がより良好となる。
なお、断面圧縮弾性率は、実施例に記載の方法により測定することができる。また、断面圧縮弾性率は、用いる樹脂の種類により調整することができる。
繊維基体の含有量(樹脂溶液の繊維基体への付着量)は、繊維基体を浸漬させるポリウレタン樹脂溶液中のポリウレタン樹脂濃度を調整することや、ポリウレタン樹脂溶液に繊維基体を十分に浸漬した後、樹脂溶液が付着した繊維基体から、1対のローラ間で加圧可能なマングルローラを用いて樹脂溶液を絞り落とすことで、所望の量に調整することができる。
この範囲で繊維を含有させることで、上記ポリウレタン樹脂が付着した繊維と繊維との間に研磨剤を効率的に保持しやすく、繊維端部を研磨面12aに露出させることが可能となる。
刃物用研磨パッド12の繊維密度は、200~2100本/mm2であることが好ましく、350~1650本/mm2であることがより好ましい。
繊維密度が当該範囲であれば、研磨面12aに繊維端部が十分に露出し、繊維間の隙間に多くの研磨剤を保持することができるうえ、刃部1aに接触する接触点の数が増すことで刃部1aへの当たりがマイルドになり、研磨傷の発生が抑制される。
なお、下記実施例において、走査電子顕微鏡を用いる繊維密度の測定方法が詳しく説明されるが、実施例で採用された方法以外にも、反射型光学顕微鏡を用いた方法等、不織布の断面における一定面積の中に存在する繊維の本数を把握することによって繊維密度を算出することが可能な方法であれば、特に制限されない。
最初に、刃物用研磨パッド12を構成する上記疎水性繊維基体を準備する。上述したように疎水性繊維基体としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、アクリルなどの疎水性、および、親油性を有する繊維を使用した不織布を用いることができ、従来公知の方法で得ることができる。
次に、ポリウレタン樹脂を上記疎水性繊維基体に含浸させ、含浸樹脂が乾燥したら円盤状にカットし、刃物用研磨パッド12が得られる。ここで厚みの均一化を図るため、上面視円形の面の一面側、或いは両面側をスライス処理や熱プレスしても良い。
研磨剤(ブッシュクラフト社製#12000 白)を使用しながら刃物用研磨パッド12を用いて剃刀刃1の刃部1aを30秒間研磨し、研磨後の刃部1aのバリや付着物の有無を、走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM-5500LV)の反射電子像により観察し、付着物をガスクロマトグラフィー質量分析法(ガスクロマトグラフ装置:アジレントテクノロジー株式会社製:Agilent 6890N、質量分析装置:日本電子株式会社製:JMS-Q100OGCK9)で測定した。
切断荷重試験機により、試験片(細長いウールフェルト)の両端部を保持し、これに対して上方から実験1の研磨の結果得られた剃刀刃1を下降させて、試験片が切断されるときの抵抗値を測定し、これを革砥からなる刃物用研磨工具で研磨した剃刀刃の抵抗値と比較した。
実験1で研磨に使用した実施例品と比較例品の刃物用研磨パッド12の研磨面12aを走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM-5500LV)で200倍に拡大した二次電子像、および、反射電子像によって観察し、研磨後の研磨面12aの表面状態と研磨面12aへの研磨剤の付着状態を観察した。
〔断面A硬度〕
刃物用研磨パッドの上面視円形の面から5mm×10mmの試験片を切り取り、刃物用研磨パッドの厚み断面が上面(測定面)となるように試験片を測定台に設置する。続いて試験片の中央に押針(直径0.79mmの円柱状圧子)を押し付け、30秒後の押針の押し込み深さから、刃物用研磨パッドの断面A硬度を測定した。測定装置としては、デュロメータ タイプAを用いた。これを3回行って、相加平均から断面A硬度を求めた。
〔断面圧縮率及び断面圧縮弾性率〕
刃物用研磨パッドの上面視円形の面から5mm×10mmの試験片を切り取り、パッドの厚み断面が上面(測定面)となるように試験片をショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)に設置し、刃物用研磨パッドの圧縮率及び圧縮弾性率を測定した。
具体的には、初荷重で30秒間加圧した後の厚さt0を測定し、次に最終荷重のもとで5分間放置後の厚さt1を測定した。全ての荷重を除き、1分間放置後、再び初荷重で30秒間加圧した後の厚さt0’を測定した。このとき、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2であった。
圧縮率は下記数式(1)で算出し、圧縮弾性率は下記数式(2)で算出した。
数式(1):圧縮率(%)=(t0-t1)/t0×100
数式(2):圧縮弾性率(%)=(t0’-t1)/(t0-t1)×100
〔厚さ〕
ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を用いて、日本工業規格(JIS K 6505)に準拠して、刃物用研磨パッドの厚さを測定した。
具体的には、刃物用研磨パッドを10cm×10cmに切り出した試料片3枚用意し、試料片ごとに、厚さ測定器の所定位置にセットした後、480g/cm2の荷重をかけた加圧面を試料片の表面に載せ、5秒経過後に厚さを測定した。1枚の試料片につき、5箇所の厚さを測定し相加平均を算出し、さらに3枚の試料片の相加平均を求めた。
〔密度〕
刃物用研磨パッドを10cm×10cmに切り出し、試料片とし、その質量を測定し、上記サイズから求めた体積と上記質量から、刃物用研磨パッドの密度(かさ密度)(g/cm3)を算出した。
〔繊維密度〕
刃物用研磨パッドの厚み断面について、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM-5500LV)を用いて500倍に拡大し、ランダムに9か所を観察した。
この画像より露出した繊維端部の数を数え、その平均値繊維端部数を求め、これを単位面積(mm2)あたりの繊維端部数に換算し、繊維密度を算出した。
続いて、得られた不織布を、流動開始温度が160℃のエーテル系ポリウレタンの樹脂分散液に浸漬し、その後、1対のローラ間を加圧可能なマングルローラを用いて余剰の樹脂分散液を絞り落とし、不織布に樹脂分散液を略均一に含浸させた。次いで、樹脂分散液を乾燥させて樹脂含浸不織布を得た。
その後、得られた樹脂含浸不織布の一面側をスライスし、円盤状に切削加工することで、刃物用研磨パッド12を得た。
製造した実施例1の刃物用研磨パッド12は、厚み5.5mm、密度0.35g/cm3、断面圧縮弾性率85.0%、断面圧縮率3.0%、断面A硬度68.0°、繊維密度1197本/mm2であった。
また、刃物用研磨パッド12に占める疎水性繊維の含有量は全質量に対し70wt%の割合であった。
製造した実施例2の刃物用研磨パッド12は、厚み4.5mm、密度0.45g/cm3、断面圧縮弾性率85.0%、断面圧縮率2.5%、断面A硬度75.0°、繊維密度392本/mm2であった。
また、刃物用研磨パッド12に占める疎水性繊維の含有量は全質量に対し35wt%の割合であった。
製造した実施例3の刃物用研磨パッド12は、厚み4.51mm、密度0.5g/cm3、断面圧縮弾性率84.1%、断面圧縮率1.4%、断面A硬度80.5°、繊維密度1362本/mm2であった。
また、刃物用研磨パッド12に占める疎水性繊維の含有量は全質量に対し78wt%の割合であった。
製造した比較例1の刃物用研磨パッドは、厚み4.5mm、密度0.34g/cm3、断面圧縮弾性率94.0%、断面圧縮率1.7%、断面A硬度62.5°、繊維密度254本/mm2であった。
また、刃物用研磨パッドに占める疎水性繊維の含有量は全質量に対し20wt%の割合であり、刃物用研磨パッドを構成するポリウレタン樹脂の流動開始温度は140℃であった。
製造した比較例2の刃物用研磨パッドは、厚み4.54mm、密度0.35g/cm3、断面圧縮弾性率94.0%、断面圧縮率1.7%、断面A硬度60.5°、繊維密度1176本/mm2であった。
また、刃物用研磨パッドに占める疎水性繊維の含有量は全質量に対し70wt%の割合であり、刃物用研磨パッドを構成するポリウレタン樹脂の流動開始温度は140℃であった。
評価方法としては、刃部1aにバリや付着物が認められなかった場合に○、バリや付着物が認められた場合に×と評価した。
実験の結果、実施例1~3の刃物用研磨パッド12を用いて研磨を行った剃刀刃1については、刃部1aにバリや付着物は認められず、良好な研磨面を得られた。
これに対し比較例1、2の刃物用研磨パッド12で研磨した刃部1aにはバリおよび付着物が認められ、また比較例2の刃物用研磨パッド12で研磨した刃部1aには付着物が認められた。
ここで、比較例1、2の刃物用研磨パッド12を用いて研磨を行った剃刀刃1の付着物は、刃部1aの先端部に粉末状の凸状付着物や、帯状に色素が沈着した黒色付着物であった。この付着物が付着した刃物と比較例1、2の刃物用研磨パッド12をそれぞれガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS)により熱分析したところ、付着物と比較例1、2の刃物用研磨パッドとで同一の有機物質成分のピークが検出されたことから、上記付着物はパッドのポリウレタン樹脂成分の溶出物であることが判明した。
このことから、樹脂の流動開始温度が150℃より低い場合、研磨の際にポリウレタン樹脂の樹脂部分が溶解し、その結果溶出物が剃刀刃1に付着してしまうものと推察される。
そして、革砥からなる刃物用研磨パッドを用いて研磨した刃物による切断抵抗値を1とし、測定した切断抵抗値が1を下回った場合には従来よりも良好な切れ味が得られているものと考えられる。
実験の結果、実施例1~3の刃物用研磨パッド12を用いて研磨を行った剃刀刃1については切断抵抗値がいずれも1以下であり、良好な切れ味が得られた。
これに対し比較品1、2の刃物用研磨パッド12を用いて研磨を行った剃刀刃1については切断抵抗値がいずれも1を超えており、革砥を用いた場合に比べて切れ味が低下するという結果が得られた。これは実験1において認識された刃部のバリや付着物に起因するものと考えられる。
反射電子像は原子番号依存性があることから、砥粒成分など原子番号の大きいものは明るく、有機成分など原子番号の小さいものは暗い像となることから、評価方法としては、刃物用研磨パッドの繊維が明るい場合を〇とし、繊維が明るくない場合を×と評価した。
実施例1~3、比較例2については、疎水性繊維の含有量が、刃物用研磨パッドの全質量に対し30wt%より大きいため、図4の二次電子像写真からも明らかなように研磨面12aに繊維端部を確認することができ、また図5の反射電子像写真より明らかなように繊維表面に明るく示される砥粒成分が多く固着した状態を確認できた。
これに対し、比較品1は図4から明らかなように樹脂が多く空隙が少ないため、図5に示されるように砥粒成分が研磨面12a全体に薄く広がって存在していた。
以上のように、実験3によれば、実施例にかかる刃物用研磨パッド12は、繊維の先端部と繊維の先端部との間で研磨剤を保持するため、研磨中においても研磨剤を良好に保持することができ、切れ味向上に寄与するものと推察される。
2 剃刀刃製造装置 3 材料
5 研削手段 6 研磨手段
11 回転治具 12 刃物用研磨パッド
12a 研磨面
Claims (1)
- 円盤状を有するとともにとともに、その外周縁に形成された研磨面によって刃物の刃部を研磨する刃物用研磨パッドであって、
疎水性繊維によって構成された繊維基体と、当該繊維基体に含浸されたポリウレタン樹脂とによって構成され、
上記ポリウレタン樹脂の流動開始温度が150~300℃となっており、
上記繊維基体を構成する疎水性繊維の少なくとも一部は、刃物用研磨パッドの平面な面に対して水平方向に配向し、当該繊維の端部が上記研磨面に露出しており、
上記疎水性繊維の含有量は、刃物用研磨パッドの全質量に対し30~90wt%の割合となっており、
さらに、上記繊維基体は不織布からなり、当該不織布の繊度は0.7~30dtexであることを特徴とする刃物用研磨パッド。
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