(実施形態)
[伝送線路の構造]
以下に、本発明の実施形態に係る伝送線路10の構造について図面を参照しながら説明する。図1は、伝送線路10の分解斜視図である。なお、図1では、複数の層間接続導体v1,v2の内の代表的な層間接続導体v1,v2にのみ参照符号を付した。図2は、図1のA-Aにおける伝送線路10の断面図である。
本明細書において、方向を以下のように定義する。伝送線路10の素体12の主面の法線が延びる方向を素体上下方向と定義する。また、伝送線路10の信号導体層22が延びる方向を素体前後方向と定義する。また、信号導体層22の線幅方向を素体左右方向と定義する。素体上下方向、素体前後方向及び素体左右方向は、互いに直交している。
以下では、Xは、伝送線路10の部品又は部材である。本明細書において、特に断りのない場合には、Xの各部について以下のように定義する。Xの前部とは、Xの前半分を意味する。Xの後部とは、Xの後半分を意味する。Xの左部とは、Xの左半分を意味する。Xの右部とは、Xの右半分を意味する。Xの上部とは、Xの上半分を意味する。Xの下部とは、Xの下半分を意味する。Xの前端とは、Xの前方向の端を意味する。Xの後端とは、Xの後方向の端を意味する。Xの左端とは、Xの左方向の端を意味する。Xの右端とは、Xの右方向の端を意味する。Xの上端とは、Xの上方向の端を意味する。Xの下端とは、Xの下方向の端を意味する。Xの前端部とは、Xの前端及びその近傍を意味する。Xの後端部とは、Xの後端及びその近傍を意味する。Xの左端部とは、Xの左端及びその近傍を意味する。Xの右端部とは、Xの右端及びその近傍を意味する。Xの上端部とは、Xの上端及びその近傍を意味する。Xの下端部とは、Xの下端及びその近傍を意味する。
まず、図1を参照しながら、伝送線路10の構造について説明する。伝送線路10は、高周波信号を伝送する。伝送線路10は、スマートフォン等の電子機器において、2つの回路を電気的に接続するために用いられる。伝送線路10は、図1に示すように、素体12、保護層20a,20b、信号導体層22、第1グランド導体層24、第2グランド導体層26、第3グランド導体層27、信号端子28a,28b、複数の層間接続導体v1,v2及び層間接続導体v3,v4を備えている。
素体12は、板形状を有している。従って、素体12は、上主面及び下主面(主面)を有している。素体12の上主面及び下主面(主面)は、素体上下方向に延びる法線を有している。素体12の上主面及び下主面は、素体前後方向に延びる長辺を有する長方形状を有している。従って、素体12の素体前後方向の長さは、素体12の素体左右方向の長さより長い。
素体12は、図1に示すように、絶縁体層16a~16c,18a,18bを含んでいる。素体12は、絶縁体層16a,18a,16b,18b,16cが素体上下方向における上から下へとこの順に積層された構造を有している。絶縁体層16a~16c,18a,18bは、素体上下方向に見て、素体12と同じ長方形状を有している。絶縁体層16a~16cは、可撓性を有する誘電体シートである。絶縁体層16a~16cの材料は、例えば、熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂は、例えば、液晶ポリマー、PTFE(ポリテトラフロオロエチレン)等である。また、絶縁体層16a~16cの材料は、ポリイミドであってもよい。絶縁体層18aは、絶縁体層16aと絶縁体層16bとを接着する接着層である。絶縁体層18aは、単一層の絶縁体層である。絶縁体層18aが単一層であるとは、絶縁体層18aが複数の絶縁体層が貼り合された構造を有していないことを意味する。絶縁体層18bは、絶縁体層16bと絶縁体層16cとを接着する接着層である。絶縁体層18bは、単一層の絶縁体層である。絶縁体層18b(第2絶縁体層)は、絶縁体層18a(第1絶縁体層)より素体上下方向における下に設けられている。本明細書において、「絶縁体層18bは、絶縁体層18aより素体上下方向における下に設けられている」とは、以下の状態を指す。絶縁体層18bは、絶縁体層18aの上端を通り素体上下方向に直交する平面(上主面)の素体上下方向における下に配置される。この場合、絶縁体層18a及び絶縁体層18bは、素体上下方向に並んでいてもよく、並んでいなくてもよい。絶縁体層18a,18bは、接着性を有するシートや、印刷等により塗布される液体状の接着剤や粘性を有しシート状態で貼り付けられるボンディングシート等である。絶縁体層18a,18bの材料は、例えば、エポキシ樹脂やフッ素系樹脂、アクリル樹脂等である。このように、絶縁体層18a(第1絶縁体層)の材料は、絶縁体層18a(第1絶縁体層)の素体上下方向における下に設けられている絶縁体層16b(第3絶縁体層)の材料と異なっている。
信号導体層22は、図1に示すように、素体12において絶縁体層18a(第1絶縁体層)より素体上下方向における下に設けられている。また、信号導体層22は、素体12において絶縁体層18b(第2絶縁体層)より素体上下方向における上に設けられている。本実施形態では、信号導体層22は、絶縁体層16bの上主面に設けられている。これにより、信号導体層22は、素体12内に設けられている。信号導体層22は、線形状を有している。信号導体層22は、素体前後方向に延びている。信号導体層22は、絶縁体層16bの上主面の素体左右方向の中央に位置している。
第1グランド導体層24は、素体12において絶縁体層18a(第1絶縁体層)より素体上下方向における上に設けられている。本実施形態では、第1グランド導体層24は、絶縁体層16aの上主面に設けられている。これにより、第1グランド導体層24は、信号導体層22の素体上下方向における上に位置している。本明細書において、「第1グランド導体層24は、信号導体層22の素体上下方向における上に位置している。」とは、以下の状態を指す。第1グランド導体層24の少なくとも一部分は、信号導体層22が素体上方向に平行移動するときに通過する領域内に配置されている。よって、第1グランド導体層24は、信号導体層22が素体上方向に平行移動するときに通過する領域内に収まっていてもよいし、信号導体層22が素体上方向に平行移動するときに通過する領域から突出していてもよい。本実施形態では、第1グランド導体層24は、絶縁体層16aの上主面の略全面を覆っている。そのため、第1グランド導体層24は、信号導体層22が素体上方向に平行移動するときに通過する領域から突出している。また、第1グランド導体層24は、素体上下方向に見て信号導体層22と重なっている。
第2グランド導体層26は、素体12において絶縁体層18b(第2絶縁体層)より素体上下方向における下に設けられている。本実施形態では、第2グランド導体層26は、絶縁体層16cの下主面に設けられている。これにより、第2グランド導体層26は、信号導体層22の素体上下方向における下に位置している。本実施形態では、第2グランド導体層26は、絶縁体層16cの下主面の略全面を覆っている。これにより、第2グランド導体層26は、素体上下方向に見て信号導体層22と重なっている。その結果、信号導体層22、第1グランド導体層24及び第2グランド導体層26は、ストリップライン構造を有している。
第3グランド導体層27は、素体12において絶縁体層18a(第1絶縁体層)より素体上下方向における下に設けられている。本実施形態では、第3グランド導体層27は、絶縁体層16bの上主面に設けられている。第3グランド導体層27は、上下方向に見て、信号導体層22の周囲を囲んでいる。従って、第3グランド導体層27は、信号導体層22の素体左右方向における左及び右に設けられている。
複数の層間接続導体v1,v2は、第1グランド導体層24と第2グランド導体層26と第3グランド導体層27とを電気的に接続している。より詳細には、複数の層間接続導体v1,v2は、絶縁体層16a~16c,18a,18bを素体上下方向に貫通している。複数の層間接続導体v1,v2の上端は、第1グランド導体層24に接続されている。複数の層間接続導体v1,v2の下端は、第2グランド導体層26に接続されている。複数の層間接続導体v1,v2の中間部は、第3グランド導体層27に接続されている。複数の層間接続導体v1は、信号導体層22の素体左右方向における左に設けられている。複数の層間接続導体v1は、素体前後方向において等間隔に一列に並んでいる。複数の層間接続導体v2は、信号導体層22の素体左右方向における右に設けられている。複数の層間接続導体v2は、素体前後方向において等間隔に一列に並んでいる。
信号端子28aは、素体12の上主面に設けられている。より詳細には、信号端子28aは、絶縁体層16aの上主面の前端部に設けられている。信号端子28aは、素体上下方向に見て、信号導体層22の前端部と重なっている。ただし、信号端子28aは、素体上下方向に見て、後述する第1空孔H1及び第2空孔H2と重なっていない。信号端子28aは、素体上下方向に見て、長方形状を有している。信号端子28aが第1グランド導体層24と絶縁されるように、信号端子28aの周囲には第1グランド導体層24が設けられていない。
層間接続導体v3は、信号端子28aと信号導体層22とを電気的に接続している。具体的には、層間接続導体v3は、絶縁体層16a,18aを素体上下方向に貫通している。層間接続導体v3の上端は、信号端子28aに接続されている。層間接続導体v3の下端は、信号導体層22の前端部に接続されている。これにより、信号端子28aは、信号導体層22と電気的に接続されている。高周波信号は、信号端子28aを介して、信号導体層22に入出力する。
なお、信号端子28b及び層間接続導体v4は、信号端子28a及び層間接続導体v3と左右対称な構造を有する。従って、信号端子28b及び層間接続導体v4の説明を省略する。
以上のような信号導体層22、第1グランド導体層24、第2グランド導体層26、第3グランド導体層27及び信号端子28a,28bは、例えば、絶縁体層16a~16cの上主面又は下主面に設けられた金属箔にエッチングが施されることにより形成されている。金属箔は、例えば、銅箔である。また、層間接続導体v1~v4は、例えば、スルーホール導体である。スルーホール導体は、絶縁体層16a~16c,18a,18bに貫通孔を形成し、貫通孔にメッキを施すことにより作製される。
保護層20a,20bは、可撓性を有する絶縁体層である。ただし、保護層20a,20bは、素体12の一部ではない。保護層20a,20bは、素体上下方向に見て、素体12と同じ長方形状を有している。
保護層20aは、絶縁体層16aの上主面の略全面を覆っている。これにより、保護層20aは、第1グランド導体層24を保護している。ただし、保護層20aには、開口h1~h6が設けられている。開口h1は、素体上下方向に見て、信号端子28aと重なっている。これにより、信号端子28aは、開口h1を介して伝送線路10から外部に露出している。開口h2は、開口h1の素体左右方向における左に設けられている。開口h3は、開口h1の素体左右方向における右に設けられている。これにより、第1グランド導体層24は、開口h2,h3を介して伝送線路10から外部に露出している。なお、開口h4~h6の構造はそれぞれ、開口h1~h3の構造と左右対称である。従って、開口h4~h6の説明を省略する。
次に、図1及び図2を参照しながら第1空孔H1及び第2空孔H2について説明する。絶縁体層18aには、絶縁体層18aを素体上下方向に貫通する第1空孔H1が設けられている。より詳細には、第1空孔H1は、図1に示すように、素体上下方向に見て、素体前後方向に延びる長辺を有する長方形状を有している。第1空孔H1は、絶縁体層18aの素体左右方向の中央に設けられている。これにより、第1空孔H1の少なくとも一部は、素体上下方向に見て、信号導体層22と重なっている。そして、信号導体層22は、図2に示すように、第1空孔H1内に位置している。ただし、信号導体層22の前端及び後端は、素体上下方向に見て、第1空孔H1と重なっていない。すなわち、信号導体層22の前端及び後端は、第1空孔H1内に位置していない。
また、第3グランド導体層27の左部の右端部は、図2に示すように、第1空孔H1内に位置している。第3グランド導体層27の右部の左端部は、第1空孔H1内に位置している。
ここで、図2に示すように、絶縁体層18aが第1空孔H1を形成している面を第1空孔形成面S1と定義する。また、第1空孔形成面S1は、左部S1L及び右部S1Rを有している。更に、第1空孔形成面S1の左部S1Lは、上端P1LU及び下端P1LDを有している。第1空孔形成面S1の右部S1Rは、上端P1RU及び下端P1RDを有している。
第1空孔形成面S1の左部S1Lは、素体前後方向に見て、素体左方向に突出する円弧形状を有している。すなわち、第1空孔形成面S1の左部S1Lは、素体前後方向に直交する断面において、第1空孔形成面S1の左部S1Lの上端P1LU及び第1空孔形成面S1の左部S1Lの下端P1LDから素体左方向に突出するように湾曲した形状を有している。これにより、第1空孔形成面S1の左部S1Lの素体上下方向の中央は、左部S1Lにおいて最も左に位置している。以上より、第1空孔形成面S1の左部S1Lは、図2に示すように、素体前後方向に直交する断面において、第1空孔形成面S1の左部S1Lの上端P1LU及び第1空孔形成面S1の左部S1Lの下端P1LDより素体左右方向における左に位置する部分を有している。
第1空孔形成面S1の右部S1Rは、素体前後方向に見て、素体右方向に突出する円弧形状を有している。すなわち、第1空孔形成面S1の右部S1Rは、素体前後方向に直交する断面において、第1空孔形成面S1の右部S1Rの上端P1RU及び第1空孔形成面S1の右部S1Rの下端P1RDから素体右方向に突出するように湾曲した形状を有している。これにより、第1空孔形成面S1の右部S1Rの素体上下方向の中央は、右部S1Rにおいて最も右に位置している。以上より、第1空孔形成面S1の右部S1Rは、図2に示すように、素体前後方向に直交する断面において、第1空孔形成面S1の右部S1Rの上端P1RU及び第1空孔形成面S1の右部S1Rの下端P1RDより素体左右方向における右に位置する部分を有している。
絶縁体層18bには、絶縁体層18bを素体上下方向に貫通する第2空孔H2が設けられている。より詳細には、第2空孔H2は、図1に示すように、素体上下方向に見て、素体前後方向に延びる長辺を有する長方形状を有している。第2空孔H2は、絶縁体層18bの素体左右方向の中央に設けられている。これにより、第2空孔H2の少なくとも一部は、素体上下方向に見て、信号導体層22と重なっている。ただし、信号導体層22の前端及び後端は、素体上下方向に見て、第2空孔H2と重なっていない。
ここで、絶縁体層18bが第2空孔H2を形成している面を第2空孔形成面S2と定義する。また、第2空孔形成面S2は、左部S2L及び右部S2Rを有している。更に、第2空孔形成面S2の左部S2Lは、上端P2LU及び下端P2LDを有している。第2空孔形成面S2の右部S2Rは、上端P2RU及び下端P2RDを有している。
第2空孔形成面S2の左部S2Lは、素体前後方向に見て、素体左方向に突出する円弧形状を有している。すなわち、第2空孔形成面S2の左部S2Lは、素体前後方向に直交する断面において、第2空孔形成面S2の左部S2Lの上端P2LU及び第2空孔形成面S2の左部S2Lの下端P2LDから素体左方向に突出するように湾曲した形状を有している。これにより、第2空孔形成面S2の左部S2Lの素体上下方向の中央は、左部S2Lにおいて最も左に位置している。以上より、第2空孔形成面S2の左部S2Lは、図2に示すように、素体前後方向に直交する断面において、第2空孔形成面S2の左部S2Lの上端P2LU及び第2空孔形成面S2の左部S2Lの下端P2LDより素体左右方向における左に位置する部分を有している。
第2空孔形成面S2の右部S2Rは、素体前後方向に見て、素体右方向に突出する円弧形状を有している。すなわち、第2空孔形成面S2の右部S2Rは、素体前後方向に直交する断面において、第2空孔形成面S2の右部S2Rの上端P2RU及び第2空孔形成面S2の右部S2Rの下端P2RDから素体右方向に突出するように湾曲した形状を有している。これにより、第2空孔形成面S2の右部S2Rの素体上下方向の中央は、右部S2Rにおいて最も右に位置している。以上より、第2空孔形成面S2の右部S1Rは、図2に示すように、素体前後方向に直交する断面において、第2空孔形成面S2の右部S2Rの上端P2RU及び第2空孔形成面S2の右部S2Rの下端P2RDより素体左右方向における右に位置する部分を有している。
以上のような第1空孔H1及び第2空孔H2の形成方法について説明する。第1空孔H1及び第2空孔H2の形成方法には、熱膨張法、揮発法及び圧力法が存在する。
熱膨張法では、絶縁体層16a~16cの線膨張係数と絶縁体層18a,18bの線膨張係数との差を利用する。絶縁体層16a~16c,18a,18bを熱圧着すると、第1空孔H1が熱圧着の圧力により小さくなる。ここで、絶縁体層18a,18bの線膨張係数は、絶縁体層16a~16cの線膨張係数より大きい。そのため、絶縁体層16a~16c,18a,18bの熱圧着が完了し、絶縁体層16a~16c,18a,18bが冷却されると、絶縁体層18a,18bが絶縁体層16a~16cより大きく収縮する。ただし、絶縁体層18aの上主面は、絶縁体層16aの下主面に接着されている。絶縁体層18aの下主面は、絶縁体層16bの上主面に接着されている。従って、絶縁体層18aの上主面及び下主面のそれぞれは、絶縁体層16aの下主面及び絶縁体層16bの上主面に拘束される。そのため、第1空孔形成面S1の左部S1Lは、素体左方向に突出するように変形する。同様に、第1空孔形成面S1の右部S1Rは、素体右方向に突出するように変形する。同様に、第2空孔形成面S2の左部S2Lは、素体左方向に突出するように変形する。同様に、第2空孔形成面S2の右部S2Rは、素体右方向に突出するように変形する。これにより、第1空孔H1及び第2空孔H2が形成される。
揮発法では、絶縁体層16a~16c,18a,18bの熱圧着により絶縁体層18a,18bに含まれる成分が揮発することを利用する。より詳細には、絶縁体層16a~16c,18a,18bを熱圧着すると、第1空孔H1及び第2空孔H2が熱圧着の圧力により小さくなる。ここで、絶縁体層16a~16c,18a,18bの熱圧着により絶縁体層18a,18bに含まれる成分が揮発する。そのため、熱圧着前後における絶縁体層18a,18bの体積の減少率は、熱圧着前後における絶縁体層16a~16cの体積の減少率より大きい。ただし、絶縁体層18aの上主面は、絶縁体層16aの下主面に接着されている。絶縁体層18aの下主面は、絶縁体層16bの上主面に接着されている。従って、絶縁体層18aの上主面及び下主面のそれぞれは、絶縁体層16aの下主面及び絶縁体層16bの上主面に拘束される。そのため、第1空孔形成面S1の左部S1Lは、素体左方向に突出するように変形する。同様に、第1空孔形成面S1の右部S1Rは、素体右方向に突出するように変形する。同様に、第2空孔形成面S2の左部S2Lは、素体左方向に突出するように変形する。同様に、第2空孔形成面S2の右部S2Rは、素体右方向に突出するように変形する。これにより、第1空孔H1及び第2空孔H2が形成される。
圧力法では、絶縁体層16a~16c,18a,18bの熱圧着後の第1空孔H1及び第2空孔H2の膨張を利用する。より詳細には、絶縁体層16a~16c,18a,18bを熱圧着すると、第1空孔H1及び第2空孔H2が熱圧着の圧力により小さくなる。絶縁体層16a~16c,18a,18bの熱圧着が完了すると、第1空孔H1及び第2空孔H2に加わる圧力が小さくなるので、第1空孔H1及び第2空孔H2が大きくなる。ただし、絶縁体層18aの上主面は、絶縁体層16aの下主面に接着されている。絶縁体層18aの下主面は、絶縁体層16bの上主面に接着されている。従って、絶縁体層18aの上主面及び下主面のそれぞれは、絶縁体層16aの下主面及び絶縁体層16bの上主面に拘束される。そのため、第1空孔形成面S1の左部S1Lは、素体左方向に突出するように変形する。同様に、第1空孔形成面S1の右部S1Rは、素体右方向に突出するように変形する。同様に、第2空孔形成面S2の左部S2Lは、素体左方向に突出するように変形する。同様に、第2空孔形成面S2の右部S2Rは、素体右方向に突出するように変形する。これにより、第1空孔H1及び第2空孔H2が形成される。
[電子機器の構造]
次に、伝送線路10を備える電子機器1の構造について図面を参照しながら説明する。図3は、伝送線路10を備える電子機器1の左面図である。電子機器1は、例えば、携帯無線通信端末である。電子機器1は、例えば、スマートフォンである。
伝送線路10は、図3に示すように、折り曲げられる。「伝送線路10が折り曲げられる」とは、伝送線路10に外力が加えられることにより伝送線路10が変形して曲がっていることを意味する。以下では、伝送線路10が折り曲げられる区間を曲げ区間A2と呼ぶ。伝送線路10が折り曲げられない区間を非曲げ区間A1,A3と呼ぶ。そして、電子機器1におけるx軸、y軸及びz軸を以下の様に定義する。x軸は、非曲げ区間A1での素体前後方向である。y軸は、非曲げ区間A1での素体左右方向である。z軸は、非曲げ区間A1での素体上下方向である。非曲げ区間A1、曲げ区間A2及び非曲げ区間A3は、x軸の正方向に向かってこの順に並んでいる。
図3に示すように、曲げ区間A2はz軸方向に折り曲げられる。従って、素体上下方向及び素体前後方向は、図3に示すように、伝送線路10の位置によって異なる。素体12が折り曲げられていない非曲げ区間A1及び非曲げ区間A3(例えば、(1)の位置)では、素体上下方向及び素体前後方向のそれぞれは、z軸方向及びx軸方向と一致する。一方、素体12が折り曲げられている曲げ区間A2(例えば、(2)の位置)では、素体上下方向及び素体前後方向のそれぞれは、z軸方向及びx軸方向と一致しない。
電子機器1は、図3に示すように、伝送線路10、コネクタ30a,30b,102a,102b、回路基板100,110を備えている。
回路基板100,110は、板形状を有している。回路基板100は、主面S5,S6を有している。主面S5は、主面S6よりz軸の負方向側に位置する。回路基板110は、主面S11,S12を有している。主面S11は、主面S12よりz軸の負方向側に位置する。回路基板100,110は、図示しない配線導体層やグランド導体層、電極等を含んでいる。
コネクタ30a,30bのそれぞれは、非曲げ区間A1及び非曲げ区間A3のz軸の正方向側の主面(上主面)に実装されている。より詳細には、コネクタ30aは、開口h1~h3から露出している信号端子28a及び第1グランド導体層24に実装される。コネクタ30bは、開口h4~h6から露出している信号端子28b及び第1グランド導体層24に実装される。
コネクタ102a,102bのそれぞれは、回路基板100の主面S5及び回路基板110の主面S11に実装されている。コネクタ102a,102bのそれぞれは、コネクタ30a,30bに接続されている。これにより、伝送線路10は、回路基板100と回路基板110とを電気的に接続している。
[効果]
伝送線路10によれば、伝送線路10の伝送損失の低減を図ることができる。より詳細には、絶縁体層18aには、絶縁体層18aを素体上下方向に貫通する第1空孔H1が設けられている。低い誘電率を有する空気が第1空孔H1内に存在する。第1空孔H1の少なくとも一部は、素体上下方向に見て、信号導体層22と重なっている。そのため、信号導体層22の周囲の誘電率が低くなる。その結果、伝送線路10では、信号導体層22を伝送される高周波信号に誘電損が発生することが抑制されるので、伝送線路10の伝送損失が低くなる。第2空孔H2も、第1空孔H1と同じ理由により、伝送線路10の伝送損失の低減に寄与する。
また、伝送線路10によれば、絶縁体層16aと絶縁体層18aとの剥離、及び、絶縁体層16bと絶縁体層18aとの剥離を抑制しつつ、伝送線路10の伝送損失の低減を図ることができる。より詳細には、第1空孔形成面S1の左部S1Lは、図2に示すように、素体前後方向に直交する断面において、第1空孔形成面S1の左部S1Lの上端P1LU及び第1空孔形成面S1の左部S1Lの下端P1LDより素体左右方向における左に位置する部分を有している。これにより、第1空孔形成面S1の左部S1Lの上端P1LUは、素体12の左面から離れるようになる。すなわち、絶縁体層16aと絶縁体層18aとが接着している領域が広くなる。同様に、第1空孔形成面S1の左部S1Lの下端P1LDは、素体12の左面から離れるようになる。すなわち、絶縁体層16bと絶縁体層18aとが接着している領域が広くなる。その結果、絶縁体層16aと絶縁体層18aとの剥離、及び、絶縁体層16bと絶縁体層18aとの剥離を抑制される。
更に、第1空孔形成面S1の左部S1Lは、図2に示すように、素体前後方向に直交する断面において、第1空孔形成面S1の左部S1Lの上端P1LU及び第1空孔形成面S1の左部S1Lの下端P1LDより素体左右方向における左に位置する部分を有している。これにより、第1空孔形成面S1の左部S1Lは、素体前後方向に直交する断面において、素体左方向に突出する形状を有している。そのため、第1空孔H1の体積が大きい。その結果、伝送線路10では、信号導体層22を伝送される高周波信号に誘電損が発生することが抑制されるので、伝送線路10の伝送損失が低くなる。第2空孔H2も、第1空孔H1と同じ理由により、絶縁体層16bと絶縁体層18bとの剥離、及び、絶縁体層16cと絶縁体層18bとの剥離の抑制、及び、伝送線路10の伝送損失の低減に寄与する。
なお、第1空孔形成面S1の右部S1Rは、第1空孔形成面S1の左部S1Lと左右対称な形状を有している。これにより、伝送線路10によれば、絶縁体層16aと絶縁体層18aとの剥離、及び、絶縁体層16bと絶縁体層18aとの剥離を抑制しつつ、伝送線路10の伝送損失の低減を図ることができる。
また、第1空孔形成面S1の左部S1Lは、素体前後方向に直交する断面において、素体左方向に突出する形状を有している。第1空孔形成面S1の左部S1Lは、湾曲している。その結果、伝送線路10に力が加わった際に、左部S1Lの一部に応力が集中することが抑制される。すなわち、伝送線路10が破損しにくくなる。
また、伝送線路10によれば、第1空孔H1が設けられているので、素体12が変形しやすくなる。その結果、伝送線路10を折り曲げて使用することが容易となる。また、伝送線路10において使用される接着剤が低減される。そのため、伝送線路10の製造コストの低減及び伝送線路10の軽量化が図られる。なお、第2空孔H2も、第1空孔H1と同様に、素体12を容易に変形させること、及び、接着剤の低減に寄与する。
また、伝送線路10によれば、以下の理由によって、伝送線路10の伝送損失を低減できる。より詳細には、信号導体層22からは、電界が放射される。電界は、低い誘電率を有する第1空孔H1より高い誘電率を有する絶縁体層16aを通過しやすい。そのため、信号導体層22の近くに絶縁体層16aが存在すると、信号導体層22が放射した電界は、素体左方向に延びて、絶縁体層16aを通過する。この場合、信号導体層22の左面では、信号導体層22の角に電界が集中する。このような電界の集中は、信号導体層22の角における電流の集中の原因となる。その結果、伝送線路10の伝送損失の増大を生じる場合がある。
そこで、第1空孔形成面S1の左部S1Lは、図2に示すように、素体前後方向に直交する断面において、第1空孔形成面S1の左部S1Lの上端P1LU及び第1空孔形成面S1の左部S1Lの下端P1LDより素体左右方向における左に位置する部分を有している。従って、第1空孔形成面S1の左部S1Lは、信号導体層22から離れる方向に突出している。これにより、信号導体層22の近くに位置する絶縁体層18aが少なくなる。よって、信号導体層22が放射した電界は、素体左上方向に広がる。この場合、信号導体層22の左面では、信号導体層22の角に電界が集中することが抑制される。その結果、伝送線路10によれば、伝送線路10の伝送損失を低減できる。
伝送線路10では、第1空孔H1が層間接続導体v1,v2の近くに位置するので、信号導体層22と層間接続導体v1,v2との間に容量が形成されにくくなる。これにより、信号導体層22と層間接続導体v1,v2を近づけることができる。なお、「第1空孔H1が層間接続導体v1の近くに位置する」とは、例えば、第1空孔H1の左端と第1空孔H1の素体左右方向における左に位置する層間接続導体v1との距離が層間接続導体v1と信号導体層22との距離より短いことを意味する。
伝送線路10では、第1空孔H1が層間接続導体v1,v2の近くに位置するので、複数の層間接続導体v1,v2を伝送される高周波信号の波長が長くなる。その結果、複数の層間接続導体v1の間隔及び複数の層間接続導体v2の間隔が長くなる。
空気中の水蒸気等は、信号線導体層20等の導体層を酸化させ、信号特性を劣化させる虞がある。伝送線路10では、第1空孔H1内の空気と樹脂18aとの接触面積が増えるため、樹脂18aにおいて空気に含まれる不要なガスの吸着性が上がり、空気に含まれる水蒸気等が減少する。このように、伝送線路10によれば、空気中の水蒸気等を減少させることによって、特性の劣化を抑制することができる。
伝送線路10では、絶縁体層16bと絶縁体層18aとが剥離することが抑制される。より詳細には、第3グランド導体層27の左部の右端部が第1空孔H1内に位置していないと、第3グランド導体層27の左部の右端部は、第1空孔形成面S1の左部S1Lより左に位置する。この場合、第1空孔形成面S1の左部S1Lの下端P1LD近傍において、絶縁体層16bと絶縁体層18aとの間に隙間が形成される。このような隙間は、絶縁体層16bと絶縁体層18aとの剥離の原因となる。そこで、第3グランド導体層27の左部の右端部は、第1空孔H1内に位置している。すなわち、第3グランド導体層27の一部分が、第1空孔H1内に位置している。これにより、第1空孔形成面S1の左部S1Lの下端P1LD近傍において、絶縁体層16bと絶縁体層18aとの間に隙間が形成されない。その結果、伝送線路10では、絶縁体層16bと絶縁体層18aとが剥離することが抑制される。
また、伝送線路10では、信号導体層22は、図2に示すように、第1空孔H1内に位置している。これにより、信号導体層22が空気に接するようになるので、信号導体層22の周囲の誘電率が低くなる。その結果、信号導体層22を伝送される高周波信号に誘電損が発生することが抑制される。
また、伝送線路10では、信号端子28aは、素体上下方向に見て、後述する第1空孔H1及び第2空孔H2と重なっていない。これにより、伝送線路10の製造時の熱圧着時の応力により、伝送線路10が破損することが抑制される。
(第1変形例)
以下に、第1変形例に係る伝送線路10aについて図面を参照しながら説明する。図4は、伝送線路10aの断面図である。
伝送線路10aは、第1グランド導体層24及び第2グランド導体層26が設けられている位置において伝送線路10と相違する。より詳細には、第1グランド導体層24は、絶縁体層16aの下主面に設けられている。これにより、第1グランド導体層24は、第1空孔H1に面している。第2グランド導体層26は、絶縁体層16cの上主面に設けられている。これにより、第2グランド導体層26は、第2空孔H2に面している。伝送線路10aのその他の構造は、伝送線路10と同じであるので説明を省略する。また、伝送線路10aは、伝送線路10と同じ作用効果を奏することができる。
(第2変形例)
以下に、第2変形例に係る伝送線路10bについて図面を参照しながら説明する。図5は、伝送線路10bの断面図である。図6は、比較例に係る伝送線路500の断面図である。
伝送線路10bは、絶縁体層16a,16c、保護層20a,20b及び層間接続導体v1,v2を備えていない点において、伝送線路10と相違する。このように、絶縁体層16a,16c、保護層20a,20b及び層間接続導体v1,v2は、必須の構成ではない。なお、伝送線路10bでは、第1グランド導体層24は、例えば、転写法により、絶縁体層18aの上主面に貼り付けられる。第2グランド導体層26は、例えば、転写法により、絶縁体層18bの下主面に貼り付けられる。伝送線路10bのその他の構造は、伝送線路10と同じであるので説明を省略する。また、伝送線路10bは、伝送線路10と同じ作用効果を奏することができる。
本願発明者は、伝送線路10bが奏する効果をより明確にするために、以下に説明するコンピュータシミュレーションを行った。具体的には、伝送線路10bの構造を有する第1モデル、及び、伝送線路500の構造を有する第2モデルを作成した。第1モデルと第2モデルとの相違点は、第1空孔H1及び第2空孔H2の形状である。なお、第1モデルにおける上端P1LUと上端P1RUとの距離L1は、第2モデルにおける上端P1LUと上端P1RUとの距離L2と等しい。本願発明者は、第1モデル及び第2モデルを用いて信号導体層22周辺の電界の分布をコンピュータに演算させた。また、本願発明者は、第1モデル及び第2モデルの周波数と第1モデル及び第2モデルの伝送損失との関係をコンピュータに演算させた。この際、本願発明者は、第1グランド導体層24と第2グランド導体層26とを電気的に接続して、信号導体層22との間に高周波信号を印加した条件で演算した。
図7は、第1モデルの電界分布を示した図である。図8は、第2モデルの電界分布を示した図である。図7及び図8では、色が濃い部分が電界の強度が高い部分であることを意味し、色が薄い部分が電界の強度が低い部分であることを意味する。図7及び図8を比べると、第1モデルにおける電界の強度が低い領域が第2モデルにおける電界の強度が低い領域より広いことが分かる。また、空気よりも誘電体損失が大きい絶縁体層の電界の強度が第1モデルの方が第2モデルよりも小さいことが分かる。これは、第1モデルの第1空孔H1及び第2空孔H2の体積が、第2モデルの第1空孔H1及び第2空孔H2の体積より大きいためであると考えられる。このように、第1モデルにおける電界の強度が低い領域が第2モデルにおける電界の強度が低い領域より広くなり、絶縁体層の電界の強度が低くなると、第1モデルにおいて生じる高周波信号の伝送損失が第2モデルにおいて生じる高周波信号の伝送損失より小さくなる。
図9は、第1モデルの信号導体層22の左端部における電界分布を示した図である。図10は、第2モデルの信号導体層22の左端部における電界分布を示した図である。図9及び図10を比較すると、第1モデルの方が第2モデルより信号導体層22の角に電界が集中することが抑制されていることが分かる。これにより、第1モデルでは、信号導体層22の角における電流の集中が抑制される。その結果、第1モデルでは、第2モデルより、高周波信号の伝送損失が低減される。
図11は、第1モデル及び第2モデルの周波数と第1モデル及び第2モデルの伝送損失との関係を示したグラフである。横軸は、信号導体層22を伝送される高周波信号の周波数である。縦軸は、第1モデル及び第2モデルの1メートル当りの伝送線路の伝送損失である。図11によれば、第1モデル(伝送線路10a)の伝送損失は、第2モデル(伝送線路500)の伝送損失より小さいことが分かる。
(第3変形例)
以下に、第3変形例に係る伝送線路10cについて図面を参照しながら説明する。図12は、伝送線路10cの断面図である。
伝送線路10cは、絶縁体層16d及び第3グランド導体層27a,27bを更に備えている点において伝送線路10aと相違する。より詳細には、絶縁体層16dは、絶縁体層18aと絶縁体層16bとの間に設けられている。これにより、信号導体層22は、絶縁体層16dと絶縁体層16bとの間に位置している。すなわち、信号導体層22は、第1空孔H1内に位置していない。以上のように、信号導体層22が絶縁体層16b,16dに囲まれることにより、信号導体層22が他の導体層とショートすることが抑制される。更に、信号導体層22が酸化等により劣化することが抑制される。
また、第3グランド導体層27aは、絶縁体層16bの上主面に設けられている。第3グランド導体層27bは、絶縁体層16dの下主面に設けられている。伝送線路10cのその他の構造は、伝送線路10aと同じであるので説明を省略する。伝送線路10cは、伝送線路10と同じ作用効果を奏することができる。
また、信号導体層22より素体上下方向における上に第3グランド導体層27aが位置し、信号導体層22より素体上下方向における下に第3グランド導体層27bが位置している。これにより、信号導体層22に対するシールド性が向上する。
(第4変形例)
以下に、第4変形例に係る伝送線路10dについて図面を参照しながら説明する。図13は、伝送線路10dの断面図である。
伝送線路10dは、第1グランド導体層24及び第2グランド導体層26が設けられている位置において伝送線路10cと相違する。より詳細には、第1グランド導体層24は、絶縁体層16aの上主面に設けられている。第2グランド導体層26は、絶縁体層16cの下主面に設けられている。伝送線路10dのその他の構造は、伝送線路10cと同じであるので説明を省略する。また、伝送線路10dは、伝送線路10cと同じ作用効果を奏することができる。
(第5変形例)
以下に、第5変形例に係る伝送線路10eについて図面を参照しながら説明する。図14は、伝送線路10eの断面図である。
伝送線路10eは、絶縁体層16a,16c,18a,18bの厚み、及び、空孔H3、H4の有無において、伝送線路10と相違する。より詳細には、伝送線路10eでは、絶縁体層18a,18bの厚みは、絶縁体層16a,16cの厚みより小さい。また、空孔H3,H4のそれぞれが、絶縁体層16a,16cに設けられている。空孔H3,H4のそれぞれは、絶縁体層16a,16cを素体上下方向に貫通している。また、空孔H3は、第1空孔H1と繋がっている。空孔H4は、第2空孔H2と繋がっている。伝送線路10eのその他の構造は、伝送線路10と同じであるので説明を省略する。
絶縁体層18a,18bは、接着層である。そのため、絶縁体層18a,18bの厚みは、素体12の圧着時に、変化しやすい。そこで、絶縁体層18a,18bの厚みが、絶縁体層16a,16bの厚みより小さい。素体12の圧着時における絶縁体層18a,18bの厚みの変化量が低減される。これにより、第1空孔H1及び第2空孔H2の素体上下方向の大きさにばらつきが生じることが抑制される。
(第6変形例)
以下に、第6変形例に係る伝送線路10fについて図面を参照しながら説明する。図15は、伝送線路10fの断面図である。
伝送線路10fは、第1空孔H11、第2空孔H12及び空孔H13,H14が素体12に設けられている点において、伝送線路10eと相違する。より詳細には、第1空孔H1、第2空孔H2及び空孔H3,H4は、素体12の素体左右方向の中央より左に配置されている。また、第1空孔H11、第2空孔H12及び空孔H13,H14は、素体12の素体左右方向の中央より右に配置されている。第1空孔H11、第2空孔H12及び空孔H13,H14のそれぞれは、第1空孔H1、第2空孔H2及び空孔H3,H4と左右対称な構造を有している。伝送線路10fのその他の構造は、伝送線路10eと同じであるので説明を省略する。また、伝送線路10fは、伝送線路10eと同じ作用効果を奏することができる。
伝送線路10fによれば、絶縁体層16a~16c,18a,18bの一部が、第1空孔H1、第2空孔H2及び空孔H3,H4と第1空孔H11、第2空孔H12及び空孔H13,H14との間に存在している。これにより、絶縁体層16a~16c,18a,18bの一部が、支柱として機能するようになる。その結果、伝送線路10fが折り曲げられたときに、第1空孔H1,H11、第2空孔H2,H12及び空孔H3,H4,H13,H14が変形することが抑制される。
(第7変形例)
以下に、第7変形例に係る伝送線路10gについて図面を参照しながら説明する。図16は、伝送線路10gの断面図である。
伝送線路10gは、第1空孔H21、第2空孔H22及び空孔H23,H24が素体12に設けられている点において、伝送線路10fと相違する。より詳細には、第1空孔H21、第2空孔H22及び空孔H23,H24は、第1空孔H1、第2空孔H2及び空孔H3,H4の素体左右方向の右に配置されている。第1空孔H21、第2空孔H22及び空孔H23,H24は、第1空孔H11、第2空孔H12及び空孔H13,H14の素体左右方向の左に配置されている。第1空孔H21、第2空孔H22及び空孔H23,H24のそれぞれは、第1空孔H1、第2空孔H2及び空孔H3,H4と同じ構造を有している。伝送線路10gのその他の構造は、伝送線路10fと同じであるので説明を省略する。また、伝送線路10gは、伝送線路10fと同じ作用効果を奏することができる。
伝送線路10gによれば、第1空孔H1、第2空孔H2及び空孔H3,H4と第1空孔H21、第2空孔H22及び空孔H23,H24との間に絶縁体層16a~16c,18a,18bの一部が存在している。第1空孔H11、第2空孔H12及び空孔H13,H14と第1空孔H21、第2空孔H22及び空孔H23,H24との間に絶縁体層16a~16c,18a,18bの一部が存在している。これにより、絶縁体層16a~16c,18a,18bの一部が、支柱として機能するようになる。その結果、伝送線路10gが折り曲げられたときに、第1空孔H1,H11,H21、第2空孔H2,H12,H22及び空孔H3,H4,H13,H14,H23,H24が変形することが抑制される。
(第8変形例)
以下に、第8変形例に係る伝送線路10hについて図面を参照しながら説明する。図17は、伝送線路10hの断面図である。
伝送線路10hは、絶縁体層18c,18dを更に備えている点、及び、第1空孔H31及び第2空孔H41が素体12に設けられている点において、伝送線路10eと相違する。絶縁体層18cは、絶縁体層16aの素体上下方向における上に設けられている。そのため、第1グランド導体層24は、絶縁体層18cの上主面に設けられている。絶縁体層18dは、絶縁体層16cの素体上下方向における下に設けられている。そのため、第2グランド導体層26は、絶縁体層18dの下主面に設けられている。
第1空孔H31は、絶縁体層18cを素体上下方向に貫通している。第1空孔H31の形状は、第1空孔H1と同じである。第1空孔H31は、空孔H3と繋がっている。第2空孔H41は、絶縁体層18dを素体上下方向に貫通している。第2空孔H41の形状は、第1空孔H1と同じである。第2空孔H41は、空孔H4と繋がっている。伝送線路10hのその他の構造は、伝送線路10eと同じであるので説明を省略する。また、伝送線路10hは、伝送線路10eと同じ作用効果を奏することができる。
絶縁体層18a~18dは、接着層である。そのため、絶縁体層18a~18dの厚みは、素体12の圧着時に、変化しやすい。そこで、絶縁体層18a~18dの厚みが、絶縁体層16a,16cの厚みより小さい。素体12の圧着時における絶縁体層18a~18dの厚みの変化量が低減される。これにより、第1空孔H1,H31、第2空孔H2,H41及び空孔H3,H4の素体上下方向の大きさにばらつきが生じることが抑制される。
また、絶縁体層16a,16cの材料に絶縁体層16bの材料より低い誘電率を有する材料又は低い誘電正接を有する材料を用いれば、伝送線路10hの伝送損失の低減が図られる。
(第9変形例)
以下に、第9変形例に係る伝送線路10iについて図面を参照しながら説明する。図18は、伝送線路10iの断面図である。
伝送線路10iは、層間接続導体v1,v2の代わりに複数の導体物200を備えている点において、伝送線路10cと相違する。より詳細には、複数の導体物200は、例えば、半田や導電性接着剤に表面が覆われた金属球である。複数の導体物200の金属球の直径は、均一である。複数の導体物200は、絶縁体層18a(第1絶縁体層)に設けられている。複数の導体物200は、第1グランド導体層24と第3グランド導体層27aとを電気的に接続している。
複数の導体物200は、絶縁体層18bに設けられている。複数の導体物200は、第2グランド導体層26と第3グランド導体層27bとを電気的に接続している。複数の導体物200は、第2グランド導体層26及び第3グランド導体層27bに接合している。伝送線路10iのその他の構造は、伝送線路10cと同じであるので説明を省略する。また、伝送線路10iは、伝送線路10cと同じ作用効果を奏することができる。
伝送線路10iによれば、層間接続導体v1,v2が不要になる。そのため、層間接続導体v1,v2を形成するためのメッキ工程が不要となる。そのため、メッキ液が伝送線路10i内に侵入することがなくなる。
伝送線路10iによれば、絶縁体層16aと絶縁体層16dとの間隔が複数の導体物200の金属球の直径により実質的に定まる。同様に、絶縁体層16bと絶縁体層16cとの間隔が複数の導体物200の金属球の直径により実質的に定まる。これにより、絶縁体層16aと絶縁体層16dとの間隔、及び、絶縁体層16bと絶縁体層16cとの間隔がばらつくことが抑制される。すなわち、第1空孔H1の素体上下方向の大きさ及び第2空孔H2の素体上下方向の大きさがばらつくことが抑制される。
(第10変形例)
以下に、第10変形例に係る伝送線路10jについて図面を参照しながら説明する。図19は、伝送線路10jの断面図である。
伝送線路10jは、絶縁体層16e,16f及び導体層150,152,160,162を更に備えている点において、伝送線路10cと相違する。より詳細には、絶縁体層16eは、絶縁体層16aの素体上下方向における上に設けられている。絶縁体層16fは、絶縁体層16cの素体上下方向における下に設けられている。導体層150は、絶縁体層16eの下主面に設けられている。導体層152は、絶縁体層16eの上主面に設けられている。導体層160は、絶縁体層16fの上主面に設けられている。導体層162は、絶縁体層16fの下主面に設けられている。導体層150,152,160,162は、信号配線やグランド導体である。このように、導体層150,152,160,162が設けられることにより、伝送線路10jに電気回路が追加される。伝送線路10jのその他の構造は、伝送線路10cと同じであるので説明を省略する。また、伝送線路10jは、伝送線路10cと同じ作用効果を奏することができる。
(第11変形例)
以下に、第11変形例に係る伝送線路10kについて図面を参照しながら説明する。図20は、伝送線路10kの断面図である。
伝送線路10kは、層間接続導体v1,v2の代わりに複数の導体物200を備えている点において、伝送線路10jと相違する。より詳細には、複数の導体物200の直径は、均一である。複数の導体物200は、絶縁体層18a(第1絶縁体層)に設けられている。複数の導体物200は、第1グランド導体層24と第3グランド導体層27aとを電気的に接続している。
複数の導体物200は、絶縁体層18bに設けられている。複数の導体物200は、第2グランド導体層26と第3グランド導体層27bとを電気的に接続している。伝送線路10kのその他の構造は、伝送線路10jと同じであるので説明を省略する。また、伝送線路10kは、伝送線路10jと同じ作用効果を奏することができる。
(第12変形例)
以下に、第12変形例に係る伝送線路10lについて図面を参照しながら説明する。図21は、伝送線路10lの断面図である。
伝送線路10lは、絶縁体層16a,16cを備えていない点、絶縁体層16bの材料が絶縁体層18a,18bの材料と同じである点及び層間接続導体v1,v2がビアホール導体である点において、伝送線路10と相違する。より詳細には、絶縁体層16b(第3絶縁体層)は、絶縁体層18a(第1絶縁体層)の素体上下方向における下に設けられている。絶縁体層16b(第3絶縁体層)の材料は、絶縁体層18a,18b(第1絶縁体層)の材料と同じである。絶縁体層16b,18a,18bの材料は、ポリイミドや液晶ポリマー、PTFE(ポリテトラフロオロエチレン)等の熱可塑性樹脂である。
第1グランド導体層24は、絶縁体層18aの上主面に設けられている。第2グランド導体層26は、絶縁体層18bの下主面に設けられている。層間接続導体v1,v2は、第1グランド導体層24と第2グランド導体層26とを電気的に接続している。層間接続導体v1,v2は、ビアホール導体である。ビアホール導体は、絶縁体層16b,18a,18bに貫通孔を形成し、導電性ペーストを貫通孔に充填した後に、導電性ペーストを焼結させることにより作製される。伝送線路10lのその他の構造は、伝送線路10と同じであるので説明を省略する。また、伝送線路10lは、伝送線路10と同じ作用効果を奏することができる。
伝送線路10lでは、伝送線路10lの伝送損失の低減を図ることができる。より詳細には、伝送線路では、複数の絶縁体層を接合するために、接着層が用いられる場合がある。しかしながら、接着層には高い接着性が要求されるので、低い誘電率や低い誘電正接を有する材料を接着層に用いることが難しい場合がある。そこで、伝送線路10lでは、絶縁体層18a,18bの材料は、絶縁体層16bの材料と同じ熱可塑性樹脂である。そのため、絶縁体層18a,16b,18bを熱圧着により接合することが可能となる。これにより、絶縁体層の接合のための接着層が不要となる。その結果、伝送線路10lでは、伝送線路10lの伝送損失の低減を図ることができる。
伝送線路10lでは、絶縁体層16bの材料は、絶縁体層18a,18bの材料と同じである。そのため、絶縁体層16bの線膨張係数は、絶縁体層18a,18bの線膨張係数と等しい。これにより、伝送線路10lの温度が変化したときに、絶縁体層16bの線膨張係数と絶縁体層18a,18bの線膨張係数との差により、素体12の内部に応力が発生することが抑制される。
伝送線路10lでは、素体12の熱圧着の際に、ビアホール導体である層間接続導体v1,v2を形成することが可能である。
(第13変形例)
以下に、第13変形例に係る伝送線路10mについて図面を参照しながら説明する。図22は、伝送線路10mの断面図である。
伝送線路10mは、層間接続導体v1,v2がスルーホール導体である点において、伝送線路10lと相違する。伝送線路10mのその他の構造は、伝送線路10lと同じであるので説明を省略する。また、伝送線路10mは、伝送線路10lと同じ作用効果を奏することができる。
(第14変形例)
以下に、第14変形例に係る伝送線路10nについて図面を参照しながら説明する。図23は、伝送線路10nの断面図である。
伝送線路10nは、第2空孔H2が設けられていない点において、伝送線路10と相違する。伝送線路10nのその他の構造は、伝送線路10と同じであるので説明を省略する。また、伝送線路10nは、伝送線路10と同じ作用効果を奏することができる。なお、伝送線路10a~10mにおいても、第2空孔H2が設けられていなくてもよい。
(第15変形例)
以下に、第15変形例に係る伝送線路10oについて図面を参照しながら説明する。図24は、伝送線路10oの断面図である。
伝送線路10oは、信号導体層22a,22bを更に備えている点において、伝送線路10と相違する。信号導体層22aは、信号導体層22の素体左右方向における左に設けられている。信号導体層22bは、信号導体層22の素体左右方向における右に設けられている。伝送線路10oのその他の構造は、伝送線路10と同じであるので説明を省略する。また、伝送線路10oは、伝送線路10と同じ作用効果を奏することができる。なお、伝送線路10oは、2本の信号導体層を備えていてもよいし、4本以上の信号導体層を備えていてもよい。また、複数本の信号導体層の内の隣り合う2本の信号導体層が差動伝送線路を構成していてもよい。なお、伝送線路10a~10mは、信号導体層22a,22bを更に備えていてもよい。
(その他の実施形態)
本発明に係る伝送線路は、伝送線路10,10a~10oに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。なお、伝送線路10,10a~10oの構成を任意に組み合わせてもよい。
なお、伝送線路10,10a~10oにおいての全ての断面において、第1空孔形成面S1の左部S1Lは、上端P1LU及び下端P1LDより素体左右方向における左に位置する部分を有する必要はない。従って、伝送線路10,10a~10oの断面の一部において、第1空孔形成面S1の左部S1Lは、上端P1LU及び下端P1LDより素体左右方向における左に位置する部分を有していればよい。
なお、伝送線路10,10a~10oにおいての全ての断面において、第1空孔形成面S1の右部S1Rは、上端P1RU及び下端P1RDより素体左右方向における右に位置する部分を有する必要はない。従って、伝送線路10,10a~10oの断面の一部において、第1空孔形成面S1の右部S1Rは、上端P1RU及び下端P1RDより素体左右方向における右に位置する部分を有していればよい。
なお、伝送線路10,10a~10oにおいて、第2グランド導体層26は、必須の構成ではない。また、伝送線路10が第2グランド導体層26、絶縁体層18b,16c及び保護層20bを備えていないことにより、信号導体層22及び第1グランド導体層24がマイクロストリップライン構造を有していてもよい。
なお、伝送線路10,10a~10oにおいて、第1空孔形成面S1の右部S1Rは、素体前後方向に直交する断面において、上端P1RU及び下端P1RDより素体左右方向における右に位置する部分を有していなくてもよい。ただし、左部S1L及び右部S1Rの両方が湾曲している場合の方が、左部S1L又は右部S1Rのいずれか一方が湾曲している場合より、絶縁体層16aと絶縁体層18aとの剥離、及び、絶縁体層16bと絶縁体層18aとの剥離を効果的に抑制しつつ、伝送線路10の伝送損失の低減を効果的に図ることができる。 なお、伝送線路10i,10kにおいて、絶縁体層18aは、異方性導電膜であってもよい。この場合、複数の導体物200は、異方性導電膜の微小な金属粒子である。
なお、伝送線路10,10a~10oにおいて、信号端子28a,28bは、素体12の下主面に設けられてもよい。
なお、伝送線路10,10a~10oは、ストリップライン線路に加えて、他の回路を更に備えていてもよい。
なお、伝送線路10,10a~10oには、コネクタ30a,30b以外に電子部品が実装されてもよい。
なお、伝送線路10,10a~10oは、素体上下方向に見て、直線形状を有している。しかしながら、伝送線路10,10a~10oは、曲がっていてもよい。ここでの「伝送線路10,10a~10oが曲がっている」とは、伝送線路10,10a~10oに外力を加えない状態で曲がった形状を有していることを意味する。
なお、伝送線路10,10a~10oにおいて、第1空孔H1及び第2空孔H2は、非曲げ区間A1,A3に設けられ、曲げ区間A2に設けられなくてもよい。
なお、伝送線路10において、第1空孔形成面S1の右部S1Rは、第1空孔形成面S1の左部S1Lと左右対称ではない形状を有していてもよい。例えば、信号導体層22と下端P1LDとの距離が信号導体層22とP1RD下端との距離と異なる場合、第1空孔形成面S1の右部S1Rが、第1空孔形成面S1の左部S1Lと左右対称ではない形状を有する。このような場合、左部S1Lと右部S1Rとの内の信号導体層22に近い方が、湾曲していればよい。また、左部S1Lと右部S1Rとの内の信号導体層22に近い方が、右部S1Rと左部S1Lの内の信号導体層22に遠い方より大きく湾曲していればよい。ただし、左部S1Lと右部S1Rとの湾曲が大きすぎると伝送線路10が衝撃により損傷しやすくなる。そこで、左部S1Lの左右方向の幅又は右部S1Rの左右方向の幅は、伝送線路10の上下方向の厚みより小さくてもよい。