本明細書に開示される技術は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本明細書に開示される鉛蓄電池は、第1の方向の一方側に開口を有するとともに、前記開口に連通する収容室が形成された電槽と、前記電槽の前記収容室に収容された正極および負極と、前記電槽の前記開口を塞ぐように配置され、外表面に排出口が形成された蓋と、を備え、前記蓋の内部には、前記収容室との間の仕切壁と、前記仕切壁と前記第1の方向に互いに対向する対向壁と、前記仕切壁と前記対向壁とをつなぐ側壁と、に囲まれた連通室が形成されており、前記仕切壁には、前記収容室に連通する連通孔が形成されており、前記側壁には、前記蓋の前記排出口に連通する通気孔が形成されており、前記連通室には、前記通気孔に対向するように配置された内部壁が備えられており、前記内部壁と前記側壁における前記通気孔との間の第1の距離は、前記内部壁と前記連通孔との間の第2の距離より短い。鉛蓄電池が倒立姿勢になると、電槽内の電解液が連通室の仕切壁に形成された連通孔を介して連通室内に流れ込み、連通室内における電解液の水位が上昇する。そして、電解液の水位が連通室の側壁に形成された通気孔に達すると、電解液が通気孔を介して連通室の外部に流出するおそれがある。ここで、仮に、内部壁と通気孔との距離が、内部壁と連通孔との距離より遠い構成である場合、電解液が連通室の外部に流出し易い。すなわち、この構成では、連通室の外部の空気が通気孔を介して連通室内に流れ込むことを妨げる障害が存在しない。このため、連通室の外部の空気が通気孔を介して連通室内に浸入し易い。その結果、連通室の内外における気液置換によって電解液が連通室の外部に流出し易い。これに対して、本鉛蓄電池では、連通室には、通気孔寄りの位置において該通気孔に対向するように配置された内部壁が備えられており、内部壁と側壁における通気孔との間の第1の距離は、内部壁と連通孔との間の第2の距離より短い。このため、連通室の外部の空気が通気孔を介して連通室内に浸入し難く、連通室の内外における気液置換が抑制される。これにより、鉛蓄電池の倒立姿勢時に電解液が連通室の外部に流出することを抑制することができる。
(2)本明細書に開示される鉛蓄電池は、第1の方向の一方側に開口を有するとともに、前記開口に連通する収容室が形成された電槽と、前記電槽の前記収容室に収容された正極および負極と、前記電槽の前記開口を塞ぐように配置され、外表面に排出口が形成された蓋と、を備え、前記蓋の内部には、前記収容室との間の仕切壁と、前記仕切壁と前記第1の方向に互いに対向する対向壁と、前記仕切壁と前記対向壁とをつなぐ側壁と、に囲まれた連通室が形成されており、前記仕切壁には、前記収容室に連通する連通孔が形成されており、前記側壁には、前記蓋の前記排出口に連通する通気孔が形成されており、前記連通室には、前記通気孔に対向するように配置された内部壁が備えられており、前記内部壁における前記第1の方向の他方側の先端部は、前記通気孔より前記第1の方向の前記他方側の位置に形成されている。ここで、仮に、内部壁の先端部が、通気孔の少なくとも一部より第1の方向の一方側(電槽とは反対側)に配置された構成である場合、電解液が連通室の外部に流出し易い。すなわち、この構成では、連通室の外部の空気が通気孔を介して連通室内に流れ込むことを妨げる障害が存在しない。このため、連通室の外部の空気が通気孔を介して連通室内に浸入し易い。その結果、連通室の内外における気液置換によって電解液が連通室の外部に流出し易い。これに対して、本鉛蓄電池では、連通室には、通気孔に対向するように配置された内部壁が備えられており、内部壁における第1の方向の他方側(電槽側)の先端部は、通気孔より第1の方向の他方側の位置に形成されている。このため、連通室の外部の空気が通気孔を介して連通室内に浸入し難く、連通室の内外における気液置換が抑制される。これにより、鉛蓄電池の倒立姿勢時に電解液が連通室の外部に流出することを抑制することができる。
(3)上記鉛蓄電池において、前記内部壁は、前記対向壁から前記連通孔に向かって突出する筒状の排気筒壁である構成としてもよい。鉛蓄電池が倒立姿勢になると、電槽内の電解液が連通孔を介して連通室内に配置された排気筒壁内に流れ込む。その後、電解液で排気筒壁が満たされると、排気筒壁内の電解液が連通室の対向壁へと溢れ出る。その後、連通室内において、排気筒壁外の電解液の水位が排気筒壁内の電解液の水位と同じになると、連通室内における電解液の水位の上昇速度が遅くなる。ここで、仮に、排気筒壁の先端部が、通気孔の少なくとも一部分より第1の方向の一方側(電槽とは反対側)の位置に形成された構成であるとすると、多量の電解液が連通室の外部に流出する。すなわち、このような構成では、電解液の水位の上昇速度が遅い水位低速期間において、連通室内において通気孔から連通孔まで連続的に続く連続空間が存在することになり、この連続空間を介して、連通室の内外の気液置換が促進され、多量の電解液が連通室の外部に流出する。これに対して、本鉛蓄電池では、排気筒壁の先端部は、通気孔より第1の方向の他側(電槽側)の位置に形成されている。このため、排気筒壁の内外における電解液の水位が同じになったときには、既に、通気孔は電解液によって閉塞状態となっており、連通室の外部の空気が通気孔を介して連通室内に浸入し難くなっている。これにより、水位低速期間内において連通室の内外における気液置換が生じ難くなり、連通室の外部への電解液の流出が抑制される。すなわち、本鉛蓄電池によれば、鉛蓄電池の倒立姿勢において、連通室の外部への電解液の流出をより効果的に抑制することができる。
(4)上記鉛蓄電池において、前記連通孔は、前記収容室に連通する排気孔と、前記排気孔より前記第1の方向の前記他方側に位置するとともに前記収容室に連通する還流孔とを含んでおり、前記通気孔は、前記連通室内において、前記還流孔より前記排気孔に近い位置に形成されている構成としてもよい。連通室に、排気孔と、該排気孔より第1の方向の他方側(電槽側)に位置する還流孔とが形成された構成では、鉛蓄電池が倒立姿勢になると、連通室内における電解液の水位は、還流孔より先に排気孔に達する。その結果、排気孔は電解液によって塞がれ、還流孔は開放された状態となる。ここで、仮に、通気孔が、排気孔より還流孔に近い位置に形成された構成であるとすると、多量の電解液が連通室の外部に流出する。すなわち、連通室内における電解液の水位が排気孔に達しても、連通室内において通気孔から還流孔まで連続的に続く連続空間が存在することになり、この連続空間を介して、連通室の内外における気液置換が促進され、多量の電解液が連通室の外部に流出する。これに対して、本鉛蓄電池では、通気孔は、還流孔より排気孔に近い位置に形成されている。このため、鉛蓄電池が倒立姿勢となり、連通室内における電解液の水位が排気孔に達した場合、連通室内において通気孔と還流孔との間には連通室内に溜まった電解液が存在する。すなわち、連通室内に、通気孔から還流孔まで連続的に続く連続空間は形成されない。このため、連通室の内外における気液置換が抑制される。これにより、本鉛蓄電池によれば、鉛蓄電池の倒立姿勢において、連通室の外部への電解液の流出をより効果的に抑制することができる。
A.実施形態:
A-1.構成:
(鉛蓄電池100の構成)
図1は、本実施形態における鉛蓄電池100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII-IIの位置における鉛蓄電池100のYZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII-IIIの位置における鉛蓄電池100のYZ断面構成を示す説明図である。なお、図2および図3では、便宜上、後述する極板群20の構成が分かりやすく示されるように、該構成が実際とは異なる形態で表現されている。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を「上方向」といい、Z軸負方向を「下方向」というものとするが、鉛蓄電池100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。また、上下方向(Z軸方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当し、上方向(Z軸正方向)は、特許請求の範囲における第1の方向の一方側に相当し、下方向(Z軸負方向)は、特許請求の範囲における第1の方向の他方側に相当する。
鉛蓄電池100は、短時間で大電流を放電することができる上に、種々の環境下で安定した性能を発揮することができるため、例えば、自動車等の車両に搭載され、エンジン始動時におけるスタータへの電力供給源や、ライト等の各種電装品への電力供給源として利用される。図1から図3に示すように、鉛蓄電池100は、筐体10と、正極側端子部30と、負極側端子部40と、複数の極板群20とを備える。以下では、正極側端子部30と負極側端子部40とを、まとめて「端子部30,40」ともいう。
(筐体10の構成)
筐体10は、電槽12と、蓋14とを有する。電槽12は、上面に開口部を有する略直方体の容器であり、例えば合成樹脂により形成されている。蓋14は、電槽12の開口部を塞ぐように配置された部材であり、例えば合成樹脂により形成されている。蓋14の下面の周縁部分と電槽12の開口部の周縁部分とが例えば熱溶着によって接合されることにより、筐体10内に外部との気密が保たれた空間が形成されている。筐体10内の空間は、隔壁58によって、所定方向(本実施形態ではX軸方向)に並ぶ複数の(例えば6つの)セル室16に区画されている。以下では、複数のセル室16が並ぶ方向(X軸方向)を、「セル並び方向」という。また、図1等に示すように、蓋14が電槽12の上側に位置するように配置されたときの鉛蓄電池100の姿勢を、「正規姿勢」といい、蓋14が電槽12の下側に位置するように配置されたときの鉛蓄電池100の姿勢(図1等に示す鉛蓄電池100を上下反転させた姿勢)を、「倒立姿勢」という。以下の説明では、特に言及しない限り、鉛蓄電池100が正規姿勢であることを前提とするものとする。蓋14の詳細構成については後述する。
筐体10内の各セル室16には、1つの極板群20が収容されている。そのため、例えば、筐体10内の空間が6つのセル室16に区画されている場合には、鉛蓄電池100は6つの極板群20を備える。また、筐体10内の各セル室16には、希硫酸を含む電解液18が収容されており、極板群20の全体が電解液18中に浸かっている。電解液18は、蓋14に設けられた後述の注液孔311からセル室16内に注入される。
(極板群20の構成)
極板群20は、複数の正極板210と、複数の負極板220と、セパレータ230とを備える。複数の正極板210および複数の負極板220は、正極板210と負極板220とが交互に並ぶように配置されている。以下では、正極板210と負極板220とを、まとめて「極板210,220」ともいう。
正極板210は、正極集電体212と、正極集電体212に支持された正極活物質216とを有する。正極集電体212は、略格子状または網目状に配置された骨を有する導電性部材であり、例えば鉛または鉛合金により形成されている。また、正極集電体212は、その上端付近に、上方に突出する正極耳部214を有している。正極活物質216は、二酸化鉛を含んでいる。正極活物質216は、さらに公知の添加剤を含んでいてもよい。
負極板220は、負極集電体222と、負極集電体222に支持された負極活物質226とを有する。負極集電体222は、略格子状または網目状に配置された骨を有する導電性部材であり、例えば鉛または鉛合金により形成されている。また、負極集電体222は、その上端付近に、上方に突出する負極耳部224を有している。負極活物質226は、鉛を含んでいる。負極活物質226は、さらに公知の添加剤を含んでいてもよい。
セパレータ230は、絶縁性材料(例えば、ガラスや合成樹脂)により形成されている。セパレータ230は、互いに隣り合う正極板210と負極板220との間に介在するように配置されている。セパレータ230は、一体部材として構成されてもよいし、正極板210と負極板220との各組合せについて設けられた複数の部材の集合として構成されてもよい。
極板群20を構成する複数の正極板210の正極耳部214は、例えば鉛または鉛合金により形成された正極側ストラップ52に接続されている。すなわち、複数の正極板210は、正極側ストラップ52を介して電気的に並列に接続されている。同様に、極板群20を構成する複数の負極板220の負極耳部224は、例えば鉛または鉛合金により形成された負極側ストラップ54に接続されている。すなわち、複数の負極板220は、負極側ストラップ54を介して電気的に並列に接続されている。以下では、正極側ストラップ52と負極側ストラップ54とを、まとめて「ストラップ52,54」ともいう。
鉛蓄電池100において、一のセル室16に収容された負極側ストラップ54は、例えば鉛または鉛合金により形成された接続部材56を介して、該一のセル室16の一方側(例えばX軸正方向側)に隣り合う他のセル室16に収容された正極側ストラップ52に接続されている。また、該一のセル室16に収容された正極側ストラップ52は、接続部材56を介して、該一のセル室16の他方側(例えばX軸負方向側)に隣り合う他のセル室16に収容された負極側ストラップ54に接続されている。すなわち、鉛蓄電池100が備える複数の極板群20は、ストラップ52,54および接続部材56を介して電気的に直列に接続されている。なお、図2に示すように、セル並び方向の一方側(X軸負方向側)の端に位置するセル室16に収容された正極側ストラップ52は、接続部材56ではなく、後述する正極柱34に接続されている。また、図3に示すように、セル並び方向の他方側(X軸正方向側)の端に位置するセル室16に収容された負極側ストラップ54は、接続部材56ではなく、後述する負極柱44に接続されている。
(端子部30,40の構成)
正極側端子部30は、筐体10におけるセル並び方向の一方側(X軸負方向側)の端部付近に配置されており、負極側端子部40は、筐体10におけるセル並び方向の他方側(X軸正方向側)の端部付近に配置されている。
図2に示すように、正極側端子部30は、正極側ブッシング32と、正極柱34とを含む。正極側ブッシング32は、上下方向に貫通する孔が形成された略円筒状の導電性部材であり、例えば鉛合金により形成されている。正極側ブッシング32の下側部分は、インサート成形により蓋14に埋設されており、正極側ブッシング32の上側部分は、蓋14の上面から上方に突出している。正極柱34は、略円柱形の導電性部材であり、例えば鉛合金により形成されている。正極柱34は、正極側ブッシング32の孔に挿入されている。正極柱34の上端部は、正極側ブッシング32の上端部と略同じ位置に位置しており、例えば溶接により正極側ブッシング32に接合されている。正極柱34の下端部は、正極側ブッシング32の下端部より下方に突出し、さらに、蓋14の下面より下方に突出しており、上述したように、セル並び方向の一方側(X軸負方向側)の端に位置するセル室16に収容された正極側ストラップ52に接続されている。
図3に示すように、負極側端子部40は、負極側ブッシング42と、負極柱44とを含む。負極側ブッシング42は、上下方向に貫通する孔が形成された略円筒状の導電性部材であり、例えば鉛合金により形成されている。負極側ブッシング42の下側部分は、インサート成形により蓋14に埋設されており、負極側ブッシング42の上側部分は、蓋14の上面から上方に突出している。負極柱44は、略円柱形の導電性部材であり、例えば鉛合金により形成されている。負極柱44は、負極側ブッシング42の孔に挿入されている。負極柱44の上端部は、負極側ブッシング42の上端部と略同じ位置に位置しており、例えば溶接により負極側ブッシング42に接合されている。負極柱44の下端部は、負極側ブッシング42の下端部より下方に突出し、さらに、蓋14の下面より下方に突出しており、上述したように、セル並び方向の他方側(X軸正方向側)の端に位置するセル室16に収容された負極側ストラップ54に接続されている。
鉛蓄電池100の放電の際には、正極側端子部30の正極側ブッシング32および負極側端子部40の負極側ブッシング42に負荷(図示せず)が接続され、各極板群20の正極板210での反応(二酸化鉛から硫酸鉛が生ずる反応)および負極板220での反応(鉛から硫酸鉛が生ずる反応)により生じた電力が該負荷に供給される。また、鉛蓄電池100の充電の際には、正極側端子部30の正極側ブッシング32および負極側端子部40の負極側ブッシング42に電源(図示せず)が接続され、該電源から供給される電力によって各極板群20の正極板210での反応(硫酸鉛から二酸化鉛が生ずる反応)および負極板220での反応(硫酸鉛から鉛が生ずる反応)が起こり、鉛蓄電池100が充電される。
A-2.蓋14の詳細構成:
図2および図3に示すように、蓋14は、いわゆる二重蓋構造の蓋体であり、中蓋300と上蓋400とを備える。中蓋300と上蓋400との間には蓋14の内部空間が形成されている。図4は、中蓋300を上側(上蓋400側)から見たXY平面構成を示す説明図であり、図5は、上蓋400を下側(中蓋300)から見たXY平面構成図である。また、図6は、中蓋300と上蓋400との内部構成を示す斜視図である。但し、図6では、便宜上、中蓋300から上蓋400が分離された状態が示されており、また、中蓋300および上蓋400のうち、一の区画室500を構成する部分だけが示されている。図7は、図6のVII-VIIの位置における蓋14のXZ断面構成を示す説明図である。但し、図7には、図6に示す上蓋400が中蓋300の上に配置された状態のときの蓋14のXZ断面構成が示されている。
A-2-1.蓋14の内部空間:
蓋14の内部空間は、隔壁506によって、セル並び方向に並ぶ複数(セル室16の数と同数)の区画室500に区画されている。各区画室500は、複数のセル室16のうちの1つに対応しており、その対応しているセル室16の真上に位置している。以下、具体的に説明する。
具体的には、図2から図4および図6に示すように、中蓋300は、平板状の中蓋本体302と、中蓋周壁304と、複数(セル室16の数より1少ない数)の中蓋隔壁306とを有する。中蓋周壁304は、中蓋本体302の上面のうち、セル並び方向(X軸方向)に略直交する方向(Y軸方向 以下、「奥行き方向」という)において端子部30,40とは反対側の領域に配置されている。中蓋周壁304は、中蓋本体302の上面から上側に突出するように形成されている。中蓋周壁304の上下方向視(Z軸方向視)の形状は、略長方形の枠形状である。複数の中蓋隔壁306は、中蓋周壁304内において、セル並び方向に所定間隔を空けて並んでいる。各中蓋隔壁306は、奥行き方向に沿って延びており、各中蓋隔壁306における奥行き方向の両端は中蓋周壁304の内周面に繋がっている(図4参照)。
一方、図2、図3、図5および図6に示すように、上蓋400は、平板状の上蓋本体402と、上蓋周壁404と、複数(セル室16の数より1少ない数)の上蓋隔壁406とを有する。上蓋周壁404は、上蓋本体402の下面から下側に突出するように形成されている。上蓋周壁404の上下方向視(Z軸方向視)の形状は、上蓋本体402の周縁部分に沿って延びる略長方形の枠形状である。また、上蓋周壁404のうち、セル並び方向(X軸方向)に互いに対向する両端部分のそれぞれには、上蓋周壁404を貫通する排出口405が形成されている。複数の上蓋隔壁406は、セル並び方向に所定間隔を空けて並んでいる。各上蓋隔壁406は、奥行き方向(Y軸方向)に沿って延びており、各上蓋隔壁406における奥行き方向の両端は上蓋周壁404の内周面に繋がっている(図5参照)。但し、各上蓋隔壁406には、第1の切り欠き部407が開口形成されている。なお、中蓋300に形成された上述の各中蓋隔壁306には、切り欠き部は形成されていない。
中蓋周壁304と上蓋周壁404とが熱溶着により接合されることによって蓋14の外周面を構成する周壁504が構成されており、これにより、蓋14の内部に上述の内部空間が形成されている。また、各中蓋隔壁306と各上蓋隔壁406とが熱溶着により接合されることによって隔壁506が構成されており、これにより、蓋14の内部空間が複数の区画室500に区画されている。複数の区画室500は、各上蓋隔壁406に形成された第1の切り欠き部407を介して互いに連通している。
A-2-2.各区画室500の内部構成:
各区画室500内には、注液室510と、セル連通個室520と、排気流路530とが含まれる。また、セル並び方向(X軸方向)の端に位置する区画室500(以下、「端側区画室500」という)には、さらに、集中排気室540が含まれる(図2、図3および図7参照)。
(注液室510)
図2および図3に示すように、注液室510は、電槽12の各セル室16に電解液18を注液するための空間である。具体的には、注液室510は、上下方向視(Z軸方向視)の形状が略円筒状である注液側壁512に囲まれた空間である。図4および図6に示すように、中蓋本体302の上面における中蓋周壁304内には、中蓋注液側壁312が中蓋本体302から上側に突出するように形成されている。中蓋注液側壁312の上下方向視の形状は、略円筒状である。また、中蓋本体302の上面における中蓋注液側壁312内には、中蓋本体302を上下方向に貫通する注液孔311が形成されている。注液孔311から電槽12のセル室16に電解液18を注液することができる。一方、図5および図6に示すように、上蓋本体402の下面における上蓋周壁404内には、中蓋注液側壁312に対向する位置に、上蓋注液側壁412が上蓋本体402から下側に突出するように形成されている。上蓋注液側壁412の上下方向視の形状は、略円筒状である。中蓋注液側壁312と上蓋注液側壁412とが熱溶着により接合されることによって注液側壁512が構成されており、これにより、蓋14の内部に注液室510が形成されている(図2および図3参照)。
(セル連通個室520)
セル連通個室520は、連通孔(後述の排気孔328や還流孔330)が形成されており、該連通孔を介してセル室16に連通している空間である。具体的には、セル連通個室520は、隔壁506と排気側壁522とに囲まれた空間であり、セル連通個室520の上下方向視の形状は略台形である。図4および図6に示すように、中蓋本体302の上面における中蓋周壁304内には、中蓋隔壁306とともに略台形の隔壁を構成する中蓋排気側壁322が中蓋本体302から上側に突出するように形成されている。一方、図5および図6に示すように、上蓋本体402の下面における上蓋周壁404内には、中蓋排気側壁322に対向する位置に、上蓋隔壁406とともに略台形の隔壁を構成する上蓋排気側壁422が上蓋本体402から下側に突出するように形成されている。中蓋排気側壁322と上蓋排気側壁422とが熱溶着により接合されることによって排気側壁522が構成されており、これにより、蓋14の内部にセル連通個室520が形成されている(図2、図3および図7参照)。但し、図6に示すように、中蓋隔壁306と中蓋排気側壁322との間に第2の切り欠き部321が形成されており、上蓋隔壁406と上蓋排気側壁422との間には切り欠き部が形成されていない。このため、セル連通個室520は、第2の切り欠き部321を介して排気流路530に連通している。セル連通個室520は、特許請求の範囲における連通室に相当し、隔壁506と排気側壁522とは、特許請求の範囲における側壁に相当し、第2の切り欠き部321は、特許請求の範囲における通気孔に相当する。
また、中蓋本体302のうち、上下方向視で中蓋隔壁306および中蓋排気側壁322の内側に位置する部分は、第1の仕切壁324と、第2の仕切壁326と、第1の仕切壁324と第2の仕切壁326とを接続する段部325とを含む。第1の仕切壁324と第2の仕切壁326と段部325とは、セル室16とセル連通個室520とを仕切る壁である。第1の仕切壁324は、第2の切り欠き部321に対して第2の仕切壁326より近い位置に配置されている。図7に示すように、第1の仕切壁324と第2の切り欠き部321とは、上下方向(Z軸方向)において互いに離間している。換言すれば、第2の切り欠き部321は、第1の仕切壁324の上面より上側に位置している。具体的には、第1の仕切壁324と第2の切り欠き部321との間には、第1の仕切壁324から上側に延びる段差部327が形成されており、これにより、第1の仕切壁324と第2の切り欠き部321とは、上下方向において互いに離間している。また、第2の切り欠き部321と上蓋本体402の下面とも、上下方向において互いに離間している。換言すれば、第2の切り欠き部321は、上蓋本体402の下面より下側に位置している。
また、第1の仕切壁324には、第1の仕切壁324を上下方向に貫通する排気孔328が形成されている。また、第1の仕切壁324の上面には、排気孔328を囲みつつ、第1の仕切壁324から上側に向かって延びる略筒状の連通筒部332が形成されている。連通筒部332の上側先端332Aは、中蓋隔壁306の上面および中蓋排気側壁322の上面より上側に位置しており、上蓋400内に達している(図7参照)。
上述したように、第2の仕切壁326は、第2の切り欠き部321に対して第1の仕切壁324よりも離れた位置に配置されている。また、第2の仕切壁326は、上下方向に延びる段部325を介して第1の仕切壁324より下側(極板群20側)に位置している。第2の仕切壁326には、第2の仕切壁326を上下方向に貫通する還流孔330が形成されている。すなわち、還流孔330は、排気孔328より電解液18の液面に近い位置に配置されている。なお、第1の仕切壁324は、第2の仕切壁326に向かって斜め下方向に傾斜しており、第2の仕切壁326は、還流孔330に向かって傾斜している(図7参照)。これにより、鉛蓄電池100を正規姿勢にした際、セル連通個室520に残留する電解液18を、第1の仕切壁324および第2の仕切壁326の傾斜に沿って円滑に還流孔330に導き、セル室16内に戻すことができる。排気孔328および還流孔330は、特許請求の範囲における連通孔に相当する。また、上蓋本体402のうち、第1の仕切壁324および第2の仕切壁326に対向する部分は、特許請求の範囲における対向壁に相当する。
図6および図7に示すように、上蓋本体402の下面には、中蓋本体302の第1の仕切壁324に形成された排気孔328に対向する位置に、排気筒壁432が上蓋本体402から下側に突出するように形成されている。排気筒壁432の上下方向視(Z軸方向視)の形状は、略角筒状である。排気筒壁432の下側の先端部432Aは、第2の切り欠き部321より下側に位置している。また、排気筒壁432の先端部432Aは、中蓋300の連通筒部332の上側先端332Aより下側に位置し、かつ、排気筒壁432は、中蓋300の連通筒部332を囲むように配置されている。排気筒壁432は、特許請求の範囲における内部壁に相当し、排気筒壁432の先端部432Aは、特許請求の範囲における、内部壁における第1の方向の他方側の先端部に相当する。
図8は、中蓋300の上面側の構成を示すXY平面図である。なお、図8には、上蓋400に形成された排気筒壁432が二点鎖線で示されている。図8に示すように、排気筒壁432の一部は、セル連通個室520に形成された第2の切り欠き部321(通気孔)に対向している。また、排気筒壁432と第2の切り欠き部321が形成された孔形成部分(上蓋隔壁406と上蓋排気側壁422との間の切り欠き部分)との間の最短距離である第1の距離L1は、排気筒壁432と排気孔328が形成された部分(連通筒部332)との間の最短距離である第2の距離L2より短い(図7参照)。なお、第1の距離L1は、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。本実施形態では、第1の距離L1は、1.5mmである。また、排気筒壁432の先端部432Aは、第2の切り欠き部321の全体より下側(セル室16側)に位置している。また、第2の切り欠き部321の少なくとも一の方向の幅(例えば上下方向に直交する方向の横幅)は、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。本実施形態では、第2の切り欠き部321の横幅は、1.5mmである。
図9は、上蓋400の下面側の構成を示す斜視図である。また、図6および図9に示すように、排気筒壁432と、排気側壁522(上蓋隔壁406、上蓋排気側壁422)との間には、第2の切り欠き部321に連通し、かつ、第2の切り欠き部321よりセル室16側に位置する内部流路Qが形成されている。この内部流路Qを形成する排気筒壁432と排気側壁522との互いに対向する対向面同士の対向距離は、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。本実施形態では、対向距離は、1.5mmである。
また、図6および図9に示すように、排気筒壁432と排気側壁522との対向面の少なくとも一部分の表面は、凹凸部Tを有している。具体的には、排気筒壁432の4つの外側表面のうち、還流孔330側の外側表面が略平坦面であり、残りの3つの外側表面には、複数の凹凸部Tが形成されている。また、排気側壁522を構成する中蓋隔壁306および中蓋排気側壁322の内周面のうち、排気筒壁432の上記残りの3つの外側表面に対向する部分には、複数の凹凸部Tが形成されている。なお、排気筒壁432における上記残りの3つの外側表面と排気側壁522(中蓋隔壁306、中蓋排気側壁322)とは、第2の切り欠き部321の横幅と略同一の距離を介して対向しており、内部流路Qを構成している。より具体的には、排気筒壁432と排気側壁522との対向面には、上下方向(Z軸方向)に延びる複数の凹凸部Tが、対向面に平行で、かつ上下方向に略直交する方向に沿って並んでいる。凹凸部Tの山と谷との高低差は、0.1mm以上であることが好ましい。また、第2の切り欠き部321が形成された仕切壁(第1の仕切壁324、第2の仕切壁326)の上蓋400側の面には、凹凸部Tが形成されておらず、略平坦面である。
(集中排気室540)
図2および図3に示すように、集中排気室540は、各端側区画室500内において、注液室510とセル連通個室520との間に位置している。集中排気室540は、集中排気側壁542に囲まれた空間であり、上下方向視の形状は略円状である。具体的には、図4および図6に示すように、中蓋本体302の上面には、中蓋注液側壁312側に第3の切り欠き部341が形成された略円弧状の中蓋集中排気側壁342が中蓋本体302から上側に突出するように形成されている。一方、図5および図6に示すように、上蓋本体402の下面には、中蓋集中排気側壁342に対向する位置に、略円筒状の上蓋集中排気側壁442が上蓋本体402から下側に突出するように形成されている。上蓋集中排気側壁442には、上述の排出口405に連通するダクト443が形成されている。中蓋集中排気側壁342と上蓋集中排気側壁442とが熱溶着により接合されることによって集中排気側壁542が構成されており、これにより、蓋14の内部に集中排気室540が形成されている(図2および図3参照)。また、集中排気室540には、図示しないフィルタが配置されており、排気流路530から第3の切り欠き部341を介して中蓋集中排気側壁342内に侵入したガスGは、フィルタを介して上蓋集中排気側壁442側に侵入し、排出口405を介して、鉛蓄電池100(蓋14)の外部に排出される。
(排気流路530)
図6に示すように、排気流路530は、第2の切り欠き部321を介してセル連通個室520に連通するとともに、排出口405に連通している。具体的には、端側区画室500では、排気流路530は、集中排気室540に直接連通しており、さらに、集中排気室540を介して排出口405に連通している。端側区画室500では、排気流路530は、第2の切り欠き部321から、排気側壁522の外周に沿って回り込み、セル連通個室520と集中排気室540との間を通過し、さらに、注液室510の外周に沿って回り込み、集中排気室540の第3の切り欠き部341に至るように延びている。
より具体的には、図4および図6に示すように、中蓋本体302の上面には、中蓋注液側壁312と中蓋集中排気側壁342とを連結する連結壁352が中蓋本体302から上側に突出するように形成されている。これにより、中蓋300には、中蓋周壁304と、中蓋排気側壁322と、中蓋隔壁306と、中蓋注液側壁312と、連結壁352とに囲まれた中蓋排気流路354が形成されている。中蓋本体302における中蓋排気流路354内の底面は、中蓋排気流路354の全長にわたって面一になっており、かつ、第2の切り欠き部321に向かって傾斜している。これにより、鉛蓄電池100の正規姿勢時において、排気流路530に漏れ出た電解液18を中蓋排気流路374内の底面を介して円滑にセル連通個室520内に戻すことができる。すなわち、中蓋排気流路354は、全長にわたって連続的に繋がっている。なお、中蓋排気流路354には、複数のリブ356が形成されている。これら複数のリブ356は、第2の切り欠き部321から第3の切り欠き部341に向かうガスG中に含まれるミスト(水蒸気)をトラップし、水へと凝集させる。また、これら複数のリブ356は、セル連通個室520から第2の切り欠き部321を介して排気流路530に流出した電解液18が排出口405側に流れることを抑制する。
一方、図5および図6に示すように、上蓋本体402の下面には、上蓋隔壁406と上蓋集中排気側壁442とを連結する第1の連結壁452と、上蓋隔壁406と上蓋注液側壁412とを連結する第2の連結壁454と、上蓋注液側壁412と上蓋集中排気側壁442とを連結する第3の連結壁456とが、それぞれ、上蓋本体402から下側に突出するように形成されている。第1の連結壁452と第2の連結壁454と第3の連結壁456とのいずれにも切り欠き部は形成されていない。これにより、上蓋400の端側区画室500内には、第1の上蓋空間460と第2の上蓋空間462と第3の上蓋空間464とが形成されている。第1の上蓋空間460は、上蓋周壁404と上蓋排気側壁422と上蓋集中排気側壁442と連結壁452とに囲まれた空間であり、第2の切り欠き部321に最も近い位置に配置されている。第2の上蓋空間462は、上蓋隔壁406と第1の連結壁452と第2の連結壁454と第3の連結壁456とに囲まれた空間であり、第2の切り欠き部321に対して第1の上蓋空間460より遠い位置に配置されている。第3の上蓋空間464は、上蓋周壁404と上蓋隔壁406と上蓋注液側壁412と第2の連結壁454と第3の連結壁456とに囲まれた空間であり、第2の切り欠き部321に対して第2の上蓋空間462よりさらに遠い位置に配置されている。以上のように、端側区画室500では、排気流路530は、中蓋300側において連続的に繋がっており、上蓋400側において、第1の連結壁452と第2の連結壁454と第3の連結壁456とによって3つの空間460,462,464に区画されている。また、第2の上蓋空間462と第3の上蓋空間464との合計体積(電解液18の収容容積)は、上蓋排気側壁422の体積より大きい。また、第1の上蓋空間460の体積は、第2の上蓋空間462の体積より大きい。
複数の区画室500のうち、セル並び方向(X軸方向)において端側区画室500より内側に位置する区画室500(以下、「内側区画室500」という)では、排気流路530は、他の区画室500を介して、集中排気室540に連通している。内側区画室500では、排気流路530は、第2の切り欠き部321から、排気側壁522の外周に沿って回り込み、セル連通個室520と集中排気室540との間を通過し、上蓋隔壁406に形成された第1の切り欠き部407に至るように延びている。
より具体的には、図4に示すように、中蓋300には、中蓋周壁304と、中蓋排気側壁322と、中蓋隔壁306と、中蓋注液側壁312とに囲まれた中蓋排気流路374が形成されている。中蓋本体302における中蓋排気流路374内の底面は、中蓋排気流路374の全長にわたって面一になっており、かつ、第2の切り欠き部321に向かって傾斜している。すなわち、中蓋排気流路374は、全長にわたって連続的に繋がっている。これにより、鉛蓄電池100の正規姿勢時において、排気流路530に漏れ出た電解液18を中蓋排気流路374内の底面を介して円滑にセル連通個室520内に戻すことができる。なお、中蓋排気流路374には、複数のリブ356が形成されている。これら複数のリブ356は、第2の切り欠き部321から第3の切り欠き部341に向かうガスG中に含まれるミスト(水蒸気)をトラップし、水へと凝集させる。また、これら複数のリブ356は、セル連通個室520から第2の切り欠き部321を介して排気流路530に流出した電解液18が第1の切り欠き部407側に流れることを抑制する。
一方、図5に示すように、上蓋本体402の下面には、互いに対向する上蓋隔壁406同士を連結する第4の連結壁472と、上蓋注液側壁412と上蓋隔壁406とを連結する一対の第5の連結壁474とが、それぞれ、上蓋本体402から下側に突出するように形成されている。第4の連結壁472と第5の連結壁474とのいずれにも切り欠き部は形成されていない。これにより、上蓋400の内側区画室500内には、第4の上蓋空間480と第5の上蓋空間482と第6の上蓋空間484とが形成されている。第4の上蓋空間480は、上蓋周壁404と上蓋隔壁406と上蓋排気側壁422と第4の連結壁472とに囲まれた空間であり、第2の切り欠き部321に最も近い位置に配置されている。第5の上蓋空間482は、上蓋隔壁406と第4の連結壁472と上蓋注液側壁412と第5の連結壁474とに囲まれた空間であり、第2の切り欠き部321に対して第4の上蓋空間480より遠い位置に配置されている。第6の上蓋空間484は、上蓋周壁404と上蓋隔壁406と上蓋注液側壁412と第5の連結壁474とに囲まれた空間であり、第2の切り欠き部321に対して第5の上蓋空間482よりさらに遠い位置に配置されている。以上のように、内側区画室500では、排気流路530は、中蓋300側において連続的に繋がっており、上蓋400側において、第4の連結壁472と第5の連結壁474とによって3つの空間480,482,484に区画されている。
A-3.本実施形態の効果:
鉛蓄電池100が倒立姿勢になると、セル室16内の電解液18がセル連通個室520に形成された連通孔(排気孔328や還流孔330)を介してセル連通個室520内に流れ込み、セル連通個室520内における電解液18の水位が上昇する。そして、電解液18の水位がセル連通個室520に形成された第2の切り欠き部321に達すると、電解液18が第2の切り欠き部321を介してセル連通個室520の外部(排気流路530)に流出するおそれがある。
ここで、仮に、排気筒壁432の先端部432Aが、第2の切り欠き部321の少なくとも一部より上蓋本体402側(Z軸正方向側)に配置された構成や、排気筒壁432と第2の切り欠き部321との距離が、排気筒壁432と排気孔328や還流孔330との距離より遠い構成である場合、電解液18がセル連通個室520の外部に流出し易い。すなわち、これらの構成では、排気流路530に存在する空気が第2の切り欠き部321を介してセル連通個室520内に流れ込むことを妨げる障害が存在しない。このため、排気流路530に存在する空気が第2の切り欠き部321を介してセル連通個室520内に浸入し易い。その結果、排気流路530からセル連通個室520内に空気が流入すると同時にセル連通個室520から排気流路530に電解液18が流出する、いわゆる気液置換によって電解液18が排気流路530に流出し易い。
これに対して、本実施形態の鉛蓄電池100では、セル連通個室520には、第2の切り欠き部321寄りの位置において該第2の切り欠き部321に対向するように配置された排気筒壁432が備えられている。また、排気筒壁432におけるセル室16側(Z軸負方向側)の先端部432Aは、第2の切り欠き部321よりセル室16側の位置に形成されている。このため、排気流路530に存在する空気が第2の切り欠き部321を介してセル連通個室520内に浸入し難く、セル連通個室520の内外における気液置換が抑制される。これにより、本実施形態によれば、鉛蓄電池100の倒立姿勢時に電解液18が排気流路530、さらには筐体10の外部に流出することを抑制することができる。次に、本実施形態による作用効果をより詳細に説明する。
図10は、鉛蓄電池100の倒立姿勢時におけるセル連通個室520内の電解液18の水位の変化を示す説明図である。図10に示す蓋14のXZ断面構成は、図7に示す蓋14のXZ断面構成を上下反転させたものである。図10に示すように、鉛蓄電池100が倒立姿勢になると、まずは、セル室16内の電解液18が排気孔328を介して排気筒壁432内に流れ込む。その後、電解液18によって排気筒壁432で囲まれた空間が満たされると(図10(A)参照)、排気筒壁432内の電解液18が、セル連通個室520における排気筒壁432の外側(上蓋本体402における排気筒壁432の外側)へと溢れ出る。その後、セル連通個室520内における排気筒壁432の外側の電解液18の水位が、第2の切り欠き部321の下端に達すると、電解液18がセル連通個室520から第2の切り欠き部321を介して排気流路530へと流出し始める。その後、セル連通個室520内における排気筒壁432の外側の電解液18の水位が排気筒壁432内における電解液の水位と同じになると(図10(B)参照)、排気筒壁432の内外の両方が電解液18に満たされないと電解液18の水位が上昇しなくなるため、セル連通個室520内における電解液18の水位の上昇速度が遅くなる。
ここで、仮に、排気筒壁432の先端部432Aが、第2の切り欠き部321の少なくとも一部分より上蓋本体402側(図10で下側(Z軸正方向))の位置に形成された構成であるとすると、多量の電解液18がセル連通個室520から排気流路530に流出する。すなわち、このような構成では、電解液18の水位の上昇速度が遅い水位低速期間において、セル連通個室520内において第2の切り欠き部321から還流孔330まで連続的に続く連続空間が比較的に長い時間、存在することになり、連続空間を介して、セル連通個室520の内外の気液置換が促進され、多量の電解液18がセル連通個室520から排気流路530に流出する。
これに対して、本実施形態の鉛蓄電池100では、排気筒壁432の先端部432Aは、第2の切り欠き部321よりセル室16側(図10で上側(Z軸負方向側))の位置に形成されている。このため、排気筒壁432の内外における電解液18の水位が同じになったときには、既に、第2の切り欠き部321は電解液18によって閉塞状態となっており、上記連続空間は存在しないため、排気流路530に存在する空気が第2の切り欠き部321を介してセル連通個室520内に浸入し難くなっている。これにより、水位低速期間内においてセル連通個室520の内外における気液置換が生じ難くなり、セル連通個室520から排気流路530への電解液18の流出が抑制される。すなわち、本実施形態の鉛蓄電池100によれば、鉛蓄電池100の倒立姿勢において、セル連通個室520から排気流路530への電解液18の流出をより効果的に抑制することができる。
また、本実施形態の鉛蓄電池100のように、セル連通個室520に、排気孔328と、該排気孔328よりセル室16側(Z軸負方向側)に位置する還流孔330とが形成された構成では、鉛蓄電池100が倒立姿勢になると、セル連通個室520内における電解液18の水位は、還流孔330より先に排気孔328に達する。その結果、排気孔328は電解液18によって塞がれ、還流孔330は開放された状態となる。ここで、仮に、第2の切り欠き部321が、排気孔328より還流孔330に近い位置に形成された構成であるとすると、多量の電解液18がセル連通個室520から排気流路530に流出する。すなわち、セル連通個室520内における電解液18の水位が排気孔328に達しても、セル連通個室520内において第2の切り欠き部321から還流孔330まで連続的に続く連続空間が存在することになり、この連続空間を介して、セル連通個室520の内外における気液置換が促進され、多量の電解液18がセル連通個室520から排気流路530に流出する。
これに対して、本実施形態の鉛蓄電池100では、第2の切り欠き部321は、還流孔330より排気孔328に近い位置に形成されている。このため、鉛蓄電池100が倒立姿勢となり、セル連通個室520内における電解液18の水位が排気孔328に達した場合、セル連通個室520内において第2の切り欠き部321と還流孔330との間にはセル連通個室520内に溜まった電解液18が存在する。すなわち、セル連通個室520内に、第2の切り欠き部321から還流孔330まで連続的に続く連続空間は形成されない。このため、セル連通個室520の内外における気液置換が抑制される。これにより、本実施形態の鉛蓄電池100によれば、鉛蓄電池100の倒立姿勢において、セル連通個室520から排気流路530への電解液18の流出をより効果的に抑制することができる。
また、本実施形態の鉛蓄電池100では、第2の切り欠き部321に連通し、かつ、該第2の切り欠き部321よりセル室16側(Z軸負方向側)に位置する内部流路Qを形成する排気筒壁432と排気側壁522との互いに対向する対向面の少なくとも一部分の表面は、凹凸部Tを有している。これにより、図10(C)に示すように、鉛蓄電池100が倒立姿勢となり、セル室16内の電解液18がセル連通個室520に流れ込んで第2の切り欠き部321が電解液18によって閉塞状態となった際、排気流路530からセル連通個室520内に浸入した空気が還流孔330に移動することが凹凸部Tによって抑制される。これにより、セル連通個室520の内外における気液置換が生じ難くなり、セル連通個室520から排気流路530への電解液18の流出を抑制することができる。
また、本実施形態の鉛蓄電池100では、第2の切り欠き部321が形成された仕切壁(第1の仕切壁324、第2の仕切壁326)の上蓋本体402側の面の表面は、略平坦面であり、流路壁(排気筒壁432と排気側壁522との互いに対向する対向面の少なくとも一部分)の表面は凹凸部Tを有する。これにより、仕切壁に凹凸部が形成された場合に比べて、鉛蓄電池100を倒立姿勢から正規姿勢に戻した際、セル連通個室520内の電解液18を、仕切壁を介して円滑に還流孔330に導き、セル室16内に戻すことができる。
また、本実施形態の鉛蓄電池100では、上蓋本体402のうち、排気流路530を構成する部分には、複数の連結壁(452,454,472,474)が形成されている。各連結壁塀は、上蓋本体402からセル室16側に突出するとともに、排気流路530と交差する方向における排気流路530の幅全体にわたって連続的に延びている。これにより、例えば鉛蓄電池100が倒立姿勢となり、セル室16内の電解液18がセル連通個室520を介して排気流路530に流れ込んだとしても、まずは、電解液18がセル連通個室520と各連結塀との間に留まる。その後、電解液18が各連結塀を越えるまで流出したときに初めて各連結塀より排出口405側に流れ込む。すなわち、本実施形態の鉛蓄電池100によれば、排気流路530に連結塀が形成されていない構成に比べて、電解液18が蓋14の排出口405側に流れ込むことを抑制することができる。
しかも、第2の上蓋空間462と第3の上蓋空間464との合計体積は、上蓋排気側壁422の体積より大きい。これにより、セル連通個室520から排気流路530に流れ込んだ電解液18が、蓋14に形成された排出口405に最も近い第3の上蓋空間464まで達し難いため、電解液18が排出口405を介して鉛蓄電池100の外部に漏れ出ることを抑制することができる。
また、本実施形態の鉛蓄電池100では、第1の上蓋空間460の体積は、第2の上蓋空間462の体積より大きい。これにより、第1の上蓋空間460の体積が第2の上蓋空間462の体積より小さい構成に比べて、セル連通個室520から流出した電解液18がセル連通個室520に最も近い区画塀を越えにくくなり、蓋の排出口側に近づくことを抑制することができる。
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態では、内部壁として、セル連通個室520を構成する対向壁(上蓋本体402)から突出するように形成された排気筒壁432を例示したが、内部壁は、第2の切り欠き部321に対向していれば、対向壁から離間している壁や、平板状など筒状以外の形状の壁であるとしてもよい。
上記実施形態において、蓋14は、連通筒部332を備えないとしてもよい。また、上記実施形態において、蓋14は、第2の切り欠き部321が、排気孔328より還流孔330に近い位置に形成された構成であるとしてもよい。また、上記実施形態において、セル連通個室520に還流孔330が形成されていないとしてもよい。
上記実施形態において、中蓋本体302における中蓋排気流路374内の底面は、中蓋排気流路374の全長にわたって面一で区画壁が介在するとしてもよいし、第2の切り欠き部321に向かって傾斜していないとしてもよい。
上記実施形態において、排気筒壁432と排気側壁522との対向面の両面に凹凸部Tが形成されていてもよいし、片面だけに凹凸部Tが形成されていてもよい。また、中蓋本体302の上面にも凹凸部Tが形成されているとしてもよい。また、排気筒壁432における残りの3つの外側表面のうちの1つまたは2つの外側表面だけに凹凸部Tが形成されているとしてもよい。また、排気筒壁432と排気側壁522との対向面に凹凸部Tが形成されていないとしてもよい。また、凹凸部Tは、所定方向に延びているものに限らず、例えば半球状や柱状の凸部により形成されたものでもよい。なお、鉛蓄電池100が倒立姿勢となり、第2の切り欠き部321が電解液18によって閉塞状態となった際、排気流路530からセル連通個室520内に浸入した空気が還流孔330に移動することを抑制する他の構成として、排気筒壁432と排気側壁522との対向面の少なくとも一部分の表面粗さを、上蓋本体402の下面の表面粗さより大きくしてもよい。
上記実施形態において、上蓋本体402のうち、排気流路530を構成する部分は、2つに区画されてもよいし、4つ以上に区画されてもよい。また、第1の上蓋空間460の体積が第2の上蓋空間462の体積より小さくてもよい。また、第2の上蓋空間462と第3の上蓋空間464との合計体積は、上蓋排気側壁422の体積以下でもよい。