本明細書により開示される鉛蓄電池は、上面が開口した電槽と、前記電槽に収容される電極及び電解液と、前記電槽を封口する蓋部材と、を備えた鉛蓄電池であって、前記蓋部材は、蓋本体と、前記蓋本体の下面側において前記電槽の前記開口に沿って設けられ、前記電槽に対して接合される蓋壁と、前記電槽内で発生したガスを排気する排気部と、前記蓋壁の内周側にあって前記蓋壁と連結され、前記蓋壁により囲まれた前記蓋本体の下部空間を、前記排気部を有する第1空間と前記排気部を有さない第2空間とに分ける分離壁と、を含み、前記分離壁は、前記第1空間と前記第2空間を連通させる連通部を有する。
蓋部材の蓋壁は、電槽と接合して電槽を封口するものであり、電槽の開口に沿って設けられる。そのため、蓋壁の内周側に壁が存在する場合、その壁が蓋壁と連結することによって、蓋壁により囲まれた蓋本体の下部空間を、第1空間(排気部を有する空間)と第2空間(排気部を有さない空間)とに分離する。本構成では、そうした蓋本体の下部空間を分離する分離壁に対して連通部を設けている。
そのため、電槽内の液面が上昇して、蓋本体の下部空間の底面部分を塞いでも、分離壁により分離された第1空間と第2空間は、連通部を通じて連通する。従って、両空間に内圧差が生じることを抑えることが可能である。以上のことから、排気部が存在する第1空間側の液面が上昇し易くなることを抑えられるので、電解液が排気部を通じて外部に漏れることを抑制することが出来る。
また、本明細書により開示される鉛蓄電池の一実施形態として、前記分離壁は、前記連通部として機能する連通孔を有する。
第1空間と第2空間を連通させるには、分離壁に連通スリットを設けることも考えられる。しかし、分離壁は技術的な必要があって設けられているため、あまり大きな連通部を設けると、分離壁を設けた本来の目的を達成し難くなる。そのような事情から、連通スリットの場合、限られたスペースで幅を広くすることは難しく、幅の狭い形状になる。結果として、液面の表面張力で塞がり易く、連通部としての機能を失い易い。連通孔であれば、一方向に長い形状として設けられなくなり、例えば、スリット幅よりも半径の大きな円にした場合であっても、連通部の大きさを制限できるため、分離壁本来の機能が阻害され難い。その結果、液面の表面張力で塞がり難い形状に設計することが可能である。そのため、連通スリットと比べて連通部としての機能を失い難く、両空間に内圧差が生じることを抑制する効果が高い。
また、本明細書により開示される鉛蓄電池の一実施態様として、前記分離壁は、前記連通部として機能する連通スリットを有する。
分離壁は、技術的な必要性があって設けられているため、あまり大きな連通部を設けると、分離壁を設けた本来の目的を達成し難くなる。そのような事情から、連通部を、幅を一定数値以下に限定したスリット形状とすることが好ましく、連通スリットの幅は5mm以下とすることがより好ましい。連通部をスリット形状とすることで、大きな連通部とすることなく、より高い位置まで連通部を延ばすことが出来る。その結果、より高い位置に液面が上昇するまで、分離された2つの空間に内圧差が生じることを抑えることが出来、電解液が排気部を通じて外部に漏れることを抑制できる。また、簡易な金型で製造し易いというメリットもある。なお、連通スリットの幅の下限については、1mm以上が好ましく、3mm以上が更に好ましい。理由は、連通スリットの幅が狭くなると、液面の表面張力で連通スリットが塞がり易くなり(液膜が張り易くなり)、連通部として機能し難くなるためである。
また、本明細書により開示される鉛蓄電池の一実施形態として、前記連通部は、少なくとも一部が前記蓋本体の前記下部空間内に位置し、かつ上端が前記下部空間の底面よりも天井面に近い。この構成では、液面が蓋本体の下部空間の底面を塞いでも、連通部の少なくとも一部は、液面上に位置する。そのため、分離壁により分離された2つの空間を連通させることが可能であり、2つの空間に内圧差が生じることを抑えられる。しかも、連通部の上端は、下部空間の底面よりも天井面に近い。従って、連通部の上端が、下部空間の底面に近い位置に設けられている場合に比べて、より高い位置に液面が上昇するまで、分離された2つの空間に内圧差を生じることを抑えることが可能であり、効果的である。
また、本明細書により開示される鉛蓄電池の一実施態様として、前記電槽は、内部を複数のセル室に仕切る複数の隔壁を有し、前記排気部は、前記セル室ごとに設けられ、前記蓋部材の前記蓋壁は、前記セル室の開口ごとに設けられ、前記分離壁は、前記蓋壁と連結し、前記セル室について、前記蓋壁により囲まれた前記蓋本体の下部空間を前記第1空間と前記第2空間とに分ける。
電槽が複数のセル室に仕切られている場合、セル室を仕切る隔壁の間隔が狭く、分離壁が作られ易い。そのような分離壁が作られやすい構造の鉛蓄電池に対して、本技術を適用することで、セル室内にて電解液の液面が上昇して、蓋本体の下部空間の底面を塞いでも、分離壁により分離された第1空間と第2空間は連通部を通じて連通する。従って、分離された2つの空間に内圧差が生じることを抑制しつつ、電解液が排気部を通じて外部に漏れることを抑制することが出来る。
また、本明細書により開示される鉛蓄電池の一実施態様として、前記蓋部材は、注液孔と、前記注液孔の孔縁部から前記電槽側に向けて延設され、前記注液孔を分担して囲む一対の対向壁と、前記蓋壁と連結され、前記蓋壁を前記電槽に対して位置決めするガイド部材と、を備え、前記対向壁のうち一方は、前記蓋壁と連結された前記ガイド部材と共に、前記分離壁を構成する。
この構成では、一対の対向壁が注液孔の周囲を囲っているので、振動による電解液の飛沫が、注液孔に入り込むことを抑えることが出来る。また、蓋部材の蓋壁はガイド部材によって電槽に位置決めされる。従って、蓋部材側の蓋壁と電槽の位置のずれを抑えることが出来る。しかも、液面が蓋本体の下部空間の底面を塞いでも、対向壁とガイド部材によって分離された2つの空間を、連通部が連通するので、分離された2つの空間、すなわち第1空間と第2空間に内圧差が生じることを抑えることが可能である。
また、本明細書により開示される鉛蓄電池の一実施態様として、前記分離壁を構成する一方の前記対向壁は、前記連通部として機能する連通孔を有する。
注液孔の周囲に一対の対向壁を設けている場合、注液孔からセル室内を覗くと、対向壁の先端(下端)に液面が達しているか否かにより、液面下の極板の像の見え方が変化する。そのため、極板の像の見え方で、液面の高さが確認できる。尚、極板の像の見え方が変わるのは、液面が対向壁の先端(下端)に達すると、表面張力により液面の一部が持ち上がることから、極板の像が歪んで見えるためである。表面張力は、液面に対する対向壁の接触面積が大きい程、大きい。そのため、一方の対向壁に連通部を形成するに伴って、液面に対する対向壁の接触面積が減少しないことが好ましい。本構成では、連通部を連通孔により形成しているため、対向壁の先端形状を変更する必要がないことから、液面に対する接触面積を、連通孔を持たない場合と同等の面積にすることが出来る。そのため、対向壁による液面高さのチェック機能を維持することが出来る。
また、本明細書により開示される鉛蓄電池の一実施態様として、一対の前記対向壁は、前記電極として機能する極板の板面に沿う方向に向かい合っている。この構成では、注液孔から電槽内を覗いた時に見える、液面下の極板の像の歪が大きくなることから、液面の高さをチェックし易くなる。
<実施形態1>
実施形態1を図1から図18を参照して説明する。
1.鉛蓄電池10の構造
鉛蓄電池10は、自動車などの車両用、具体的にはアイドリングストップ車用であり、例えば、車両のエンジンルーム内やラゲッジスペース内に設置され、車両に電力を供給する。鉛蓄電池10は、液式鉛蓄電池であり、図1から図3に示すように電池ケース15と、極板群30と、電解液Wと、端子部40P、40Nとを備える。尚、以下の説明において、電池ケース15が設置面に対して傾きなく水平に置かれた時の電池ケース15の横幅方向(端子部40P、40Nの並び方向)をX方向とし、電池ケース15の高さ方向(上下方向)をY方向とし、奥行方向をZ方向とする。
電池ケース15は、極板群30と電解液Wとを収容する電槽20と、蓋部材50を備える。電槽20は合成樹脂製である。電槽20は4枚の外壁21と底壁22と備え、上面が開口する箱型をなす。電槽20は、図2に示すように、複数枚(本例では5枚)の隔壁23を有している。隔壁23はX方向に概ね等間隔で形成されており、電槽内部を、複数のセル室25に仕切っている。セル室25は、電槽20の横幅方向(図2のX方向)に6室設けられており、Z方向に長い縦長な形状となっている。各セル室25には、希硫酸からなる電解液Wと共に極板群30が収容されている。尚、外壁21と隔壁23は、上端の高さが揃っている。
極板群30は、図3に示すように、正極板30Pと、負極板30Nと、両極板30P、30Nを仕切るセパレータ30Cとから構成されている。各極板30P、30Nは、格子体に活物質が充填されて構成されており、上部には耳部31P、31Nが設けられている。耳部31P、31Nは、ストラップ32を介して、同じ極性の極板30P、30Nをセル室25内にて連結するために設けられている。尚、正極板30Pの活物質の主成分は二酸化鉛、負極板30Nの活物質の主成分は鉛である。また、正極板30P、負極板30Nが本発明の「電極」の一例である。
ストラップ32は例えばX方向に長い板状であり、セル室25ごとに正極用と負極用の1組が設けられている。そして、隣接するセル室25の正負のストラップ32同士を、ストラップ32上に形成された接続部33を介して電気的に接続することにより、各セル室25の極板群30を直列に接続する構造となっている。
蓋部材50は、中蓋60と上蓋100とを備える。図5は、上蓋100を外した状態で中蓋60を上方から見た平面図、図6は、中蓋60を下方から見た底面図、図7は、中蓋60を下方から見た斜視図である。中蓋60は合成樹脂製であって、蓋本体61と、蓋本体61の外周に形成されたフランジ部67と、を備える。
中蓋60の蓋本体61は、電槽20の上面を封口可能な大きさである。蓋本体61は、図6に示すように、下面側に、複数の内壁91と複数の隔壁93を有している。内壁91は、フランジ部67の内側に位置しており、蓋本体61の下面から下向きに突出している。内壁91は、電槽20の開口に沿って全周に設けられており、全体としてX方向に長い枠状をしている。各隔壁93は、内壁91と同様に、蓋本体61の下面から下向きに突出している。各隔壁93は、Z方向に向かい合う2つの内壁91と連結されている。各隔壁93は、電槽20の各隔壁23に対応して設けられており、枠状をなす内壁91を、セル室25の開口25Aに対応する6つの枠壁(セル室25の開口25Aの全周に沿った形状の枠壁)に仕切っている。これら隔壁93と内壁91は、下端の高さが揃っている。尚、「内壁91と5つの隔壁93」が本発明の「蓋壁」の一例である。
中蓋60の各内壁91は電槽20の各外壁21の上端面に重なり、中蓋60の各隔壁93は電槽20の各隔壁23の上端面に重なって位置する。このように、中蓋60側の内壁91や隔壁93を、電槽20側の各壁21、23に重ねることで、電槽20及び各セル室25を気密する構造になっている。尚、内壁91と外壁21、及び隔壁93と隔壁23は、気密性が保持されるように、熱溶着により接合されている。また、フランジ部67は、蓋本体61の外周縁に形成されている。フランジ部67は、蓋本体61の下面から下向きに延びており、電槽20の外壁21の上部を囲む。
また、中蓋60は、ガイド部材94A、94Bを有している。ガイド部材94A、94Bは、図4に示すように、隔壁93のX方向の両側に一対設けられている。ガイド部材94A、94Bは、板面がXY方向に沿った板状であり、中蓋60の蓋本体61の下面から電槽20の内側に向かって下向きに延びている。
ガイド部材94A、94Bの先端部は、隔壁93の先端(下端)から下方に突出している。ガイド部材94A、94Bの先端部は、図4に示すように、隔壁93の先端(下端)を頂点とするV字型の案内溝94Cを形成しており、電槽20の隔壁23に対して中蓋60の隔壁93を位置合わせする機能を果たす。具体的には、セル室25の並び方向であるX方向(図4では左右方向)の位置合わせをする機能を果たす。ガイド部材94A、94Bは、図6に示すように、1つの隔壁93に対してZ方向の3か所に設けられており、隔壁93はZ方向の3点で位置合せされる構造になっている。尚、図6、図7では、一対のガイド部材94A、94Bを総称して、符号94で示している。また、ガイド部材94A、94Bは、中蓋60の内壁91の内面側にも設けられており、中蓋60の内壁91を電槽20の外壁21に対して位置合わせする構成となっている。
また、図1、図5に示すように、中蓋60の蓋本体61は、低面部62と、高面部64と、台状部65を有しており、高低差を付けた形状となっている。低面部62は、蓋部材50の後部側と前部側に設けられている。前部側のX方向の両角部に設けられた各低面部62上には、正極側と負極側の端子部40P、40Nが配置されている。
正極側の端子部40Pと、負極側の端子部40Nの構造は、同一であるため、以下、負極側の端子部40Nを例にとって構造を説明する。図3に示すように、負極側の端子部40Nは、ブッシング41と、極柱45とを含む。ブッシング41は鉛合金等の金属製であり中空の円筒状をなす。ブッシング41は、図3に示すように、中蓋60に対して一体形成された筒型の装着部63を貫通しており、上半分が低面部62の上面から突出している。ブッシング41のうち、低面部62の上面から露出する上半部は端子接続部であり、ハーネス端子などの接続端子(図略)が組み付けされる。
尚、中蓋60はブッシング41をインサートした金型に樹脂を流して一体成形することから、装着部63はブッシング41と一体化され、ブッシング41の下部外周を隙間なく覆う。すなわち、ブッシング41のうち、中蓋60の上面から突出する上半部を除くそれ以外の部分が、中蓋60の装着部63に埋め込まれる構造となっている。
極柱45は鉛合金等の金属製であり、円柱形状をしている。極柱45は、ブッシング41の内側に位置している。極柱45はブッシング41に比べて長く、極柱45の上部はブッシング41の内側に位置し、下部はブッシング41の下面から下向きに突出している。極柱45の上端部は、ブッシング41に対して溶接により接合され、極柱45の基端部47は極板群30のストラップ32に接合されている。
中蓋60の高面部64は、蓋本体61の前部中央に形成されている。高面部64は、X方向の両角部に形成された低面部62の間に位置している。高面部64の上面は、端子部40P、40Nの上面より高い。このようにすることで、仮に、金属部材などが電池上部に置かれたとしても、端子部40P、40Nに同時に接触し難くして、導通するのを防止することができる。
台状部65は、蓋本体61の後部側に形成されている。台状部65は、電槽20に設けられた6つのセル室25を横断するようにX方向に延設されている。台状部65の上面は、低面部62よりも高く、高面部64より低い。
また、図5に示すように、中蓋60の台状部65は、X方向に6つの注液孔75を有している。これら6つの注液孔75は、台状部65を上下に貫通しており、6つのセル室25にそれぞれ連通している。そのため、各注液孔75から電槽20の各セル室25に電解液Wを注液することが出来る。
また、台状部65は、上向きに突出した下側隔壁71〜73を有している。下側隔壁71〜73は、各注液孔75に対応して設けられており、各注液孔75を囲む、四角形状の枠形をしている。各下側隔壁72はX方向に延びる同一直線上に設けられている。
上蓋100は中蓋60と同様、合成樹脂製である。図8は、上蓋100を下方から見た底面図である。上蓋100は蓋本体110とフランジ部105とを備える。蓋本体110は、中蓋60の台状部65に倣った長方形であり、中蓋60の台状部65に対して重ねて取り付けられる。フランジ部105は、蓋本体110の外周縁に形成されている。フランジ部105は蓋本体110の外周縁から下向きに延びており、台状部65の外周を囲む。
図8に示すように、蓋本体110には、中蓋60の注液孔75に対応して、外孔115が設けられている。また、蓋本体110は、上側隔壁121〜123を有している。上側隔壁121〜123は蓋本体110の下面から下向きに突出しており、外孔115ごとに設けられている。上側隔壁121〜123は、下側隔壁71〜73と同様に四角形状の枠形をしている。各上側隔壁122はX方向に延びる同一直線上に設けられている。
各上側隔壁121〜123は、各下側隔壁71〜73に対応しており、各上側隔壁121〜123は各下側隔壁71〜73の上側に重なって配置される。これら上側隔壁121〜123と下側隔壁71〜73は、各注液孔75、各外孔115を囲む隔壁を構成する。上側隔壁121〜123と下側隔壁71〜73は、端面同士を熱溶着により接合している。そして、図1に示すように、上蓋100には、止栓180が装着されており、各外孔115を閉じるようになっている。止栓180は外孔115の内周面に対して螺合しており、着脱可能であることから、止栓180を外すことで、各注液孔75から電槽20の各セル室25に対して液補充を行うことが出来る。
また、鉛蓄電池10の蓋部材50は、中蓋60と上蓋100の間に、排気筒T、個別通路R、共通通路U、タワー部Q1、Q2を有している。以下において、図面と対応させながら説明する。尚、「排気筒T」が本発明の「排気部」の一例である。
(排気筒Tの説明)
排気筒Tは下側排気筒81と上側排気筒131から分割構成されている。下側排気筒81は、図5に示すように、電槽20の各セル室25と対応しており、中蓋60に対してX方向に6つ設けられている。各下側排気筒81は内部が空洞の角筒型であり、中蓋60を貫通しつつ、上下双方向(Y方向)に延在している。
上側排気筒131は、図8に示すように、電槽20の各セル室25と対応しており、上蓋100に対してX方向に6つ設けられている。上側排気筒131は、上面が閉じられた角筒型であり、蓋本体110の下面から下向きに突出している。
各上側排気筒131と各下側排気筒81は、図11に示すように、上下に重なって排気筒Tを構成する。各排気筒Tは、電槽20のセル室25に連通し、上側排気筒131に形成された切り欠き部132を通じて各個別通路Rと連通する。そのため、電槽20の各セル室25にて発生したガスは、下側排気筒81の内側を通った後、切り欠き部132を通じて個別通路Rに流通することが出来る。尚、各下側排気筒81と各上側排気筒131は、排気筒Tの気密性が確保されるように、端面同士を熱溶着により接合している。
また、図11に示すように、下側排気筒81の内壁には、2つの突起部82A、82Bが設けられている。2つの突起部82A、82Bは上下方向(Y方向)に位置をずらしつつ、X方向に向い合っている。下側排気筒81の内壁に、これら突起部82A、82Bを設けることで、セル室25から発生するガスを排気させる経路は確保しつつ、セル室25から飛沫した電解液Wが個別通路Rに入り込みにくい経路を実現できる。
また、下側排気筒81のうち一部壁の下部には、スリット83が設けられている。スリット83は、過充電による液面上昇時に、電解液Wが下側排気筒81の内部を上昇して個別通路Rに流れ込まないように、電解液Wを筒外へ逃がす機能を果たしている。
(個別通路Rの説明)
個別通路Rは、ガスの排出空間であり、中蓋60と上蓋100との間において、電槽20のセル室25ごとに設けられている。各個別通路Rは、図5、図8に示すように、共通通路Uに連通しており、排気筒Tから流出するガスを、共通通路Uに流通させる機能を果たす。
以下、個別通路Rの構成について具体的に説明する。中蓋60の台状部65は、図9に示すように、電槽20のセル室25ごとに、複数の下側通路壁84を有している。複数の下側通路壁84は、台状部65から上向きに突出している。これら下側通路壁84の上端面は高さが揃っている。
一方、上蓋100の蓋本体110は、図10に示すように、電槽20のセル室25ごとに、複数の上側通路壁134を有している。複数の上側通路壁134は、蓋本体110の下面から下向きに突出している。これら上側通路壁134の下端面は高さが揃っている。
各上側通路壁134は、各下側通路壁84と対応しており、対応する下側通路壁84の上側に重なる。下側通路壁84と上側通路壁134は、図12に示すように通路壁RWを構成し、個別通路Rは、対向する一対の通路壁RWを側壁として、その間に設けられている。尚、下側通路壁84と上側通路壁134は、個別通路Rの気密性が確保されるように、端面同士を熱溶着により接合している。
そして、個別通路Rの経路は、図9、図10に示す通りであり、上側排気筒131の切り欠き部132を入口として、左右に蛇行しながらZ方向の奥側(図9、図10の上側)に進み、共通通路Uに至る。
(共通通路U、タワー部Q1、Q2の説明)
共通通路Uは、図9、図10に示すように、下側隔壁72と下側通路壁84Aとの間、及び上側隔壁122と上側通路壁134Aの間に形成されている。すなわち、共通通路Uは、上側隔壁122と下側隔壁72、上側通路壁134Aと下側通路壁84Aを、2つの側壁とし、その間に設けられている。共通通路Uは、各個別通路Rを横断するようにX方向に延びている。そして、共通通路Uの終端にあたるX方向の両端部には、タワー部Q1、Q2が設けられている。
タワー部Q1、Q2は中蓋60と上蓋100との間に設けられており、中蓋60の台状部65に設けられた下側筒部Q1と、上蓋100に設けられた上側筒部Q2とからなる(図9、図10参照)。下側筒部Q1は台状部65から上向きに突出している。下側筒部Q1は、開口が形成されており、共通通路Uと連通している。
上側筒部Q2は、上蓋100の下面から下向きに突出している。上側筒部Q2は下側筒部Q1に重なる。下側筒部Q1と上側筒部Q2は、気密性が確保されるように、端面同士を熱溶着により接合されている。
尚、上側筒部Q2には、図10に示すように、多孔質フィルタ150が収納されている。多孔質フィルタ150は、その下面が上側筒部Q2の先端面よりも上方に位置している。多孔質フィルタ150は、水蒸気と酸ミストの放出を抑制し、外部スパークが侵入するのを抑制する。
また、上蓋100には、円筒型のダクト160が設けられている。ダクト160の一方端は上側筒部Q2に連結(連通)し、他方端は上蓋100のフランジ部105を貫通し、外部に開口している。従って、共通通路Uからタワー部Q1、Q2に送られたガスを、ダクト160を通じて外部に排気することが出来る。
すなわち、本鉛蓄電池10では、電槽20の各セル室25で発生したガスは、まず、各下側排気筒81から各個別通路Rへ流れる。その後、ガスは共通通路Uを通ってタワー部Qに流れ込み、最終的には、ダクト160から外部に排気される。
尚、ダクト160は、使用環境に応じて、いずれか一方のみを開放し、他方を図示しない栓により封止する。本例では、個別通路Rを通るガスは、共通通路Uを通過した後、Z方向前方から見て右側(図5では右側、図8では左側)のダクト160を通じて外部に排気される。
また、中蓋60は、電槽20の各セル室25に対応してX方向に6つの還流孔85を有している。各還流孔85は、中蓋60の台状部65を貫通しており、電槽20のセル室25に連通している。図9に示すように、還流孔85は、個別通路Rの入口部分に配置されており、個別通路Rのうち共通通路Uから見て最も遠い位置にある。
そして、個別通路Rの底面である台状部65には、還流孔85に近い程、低くなるように傾斜(勾配)が付けられている(図11、図18参照)。従って、個別通路R内の液滴Vを、還流孔85を通じて各セル室25に還流することが出来る。
すなわち、セル室25で発生したガスに含まれる水蒸気は、ガスが個別通路Rを通過する際に、個別通路R内にて結露する。結露した液滴Vは、図13にて一点鎖線矢印で示すように、還流孔85に向かって流れてゆく。そのため、ガスに含まれる水蒸気等の液滴Vを各セル室25に還流することが出来る。
また、中蓋60の蓋本体61の下面には、各還流孔85に対応して、還流筒87(図15参照)が設けられている。還流筒87は、還流孔85を囲っており、車両走行時など振動が加わった時に、セル室25内から飛沫した電解液が、還流孔85を通じて、個別通路Rに入り込むのを抑制する機能を果たしている。
2.対向壁97A、97Bと連通孔98
また、中蓋60は、図6、図7に示すように、注液孔75ごとに、一対の対向壁97A、97Bを有している。一対の対向壁97A、97Bは、中蓋60の蓋本体61の下面から電槽20の内側に向かって下向きに延びている。一対の対向壁97A、97Bは、Z方向に向かい合っており、X方向両側には分割スリット97Cが位置している。一対の対向壁97A、97Bは、注液孔75と同径の円弧形状であり、注液孔75の周囲を分担して囲っている。このように、注液孔75の周囲を一対の対向壁97A、97Bで囲むことにより、振動による電解液の飛沫が、注液孔75に入り込むことを抑えることが出来る。
また、対向壁97A、97Bは、その下端の位置を、電解液Wの管理上の最高液位L1と同じ高さに設定してあり、注液孔75から電槽20内を覗いた時に、液面下の極板30P、30Nの像が歪んで見えるかどうかにより、電解液Wが最高液位L1に達しているか、視認出来るようになっている。
すなわち、液面が下端に届いていない場合は、図14の(A)に示すように、注液孔75から電槽20内を覗いた時に見える極板30P、30Nの像は、歪まず、板状に見える。一方、液面が下端に届いている場合は、液面が表面張力で盛り上がり、図14の(B)に示すように、極板30P、30Nの像は、歪んで見える。尚、一対の対向壁97A、97Bを、極板30P、30Nの板面に沿った方向(Z方向)に向い合わせている理由は、注液孔75から電槽20内を覗いた時に見える極板30P、30Nの像の歪が大きくなるため、電解液Wが最高液位L1に達しているか判断しやすくなるからである。
また、対向壁97Aは、ガイド部材94A、94Bを介して、電槽20に接合される内壁91や隔壁93に対してそれぞれ連結されている。すなわち、両端のセル室25では、対向壁97Aは、ガイド部材94A、94Bを介して、X方向(極板30P、30Nに直交する方向)両側の内壁91と隔壁93に対してそれぞれ連結されている。
また、両端を除く中央のセル室25では、対向壁97Aは、ガイド部材94A、94Bを介して、X方向(極板30P、30Nに直交する方向)両側の隔壁93に対してそれぞれ連結されている。具体的には、図15〜図17に示すように、ガイド部材94Aを介してX方向の一端側(図16、図17の左側)の隔壁93に連結され、ガイド部材94Bを介してX方向の他端側(図16、図17の右側)の隔壁93に連結されている。
これらガイド部材94A、94Bと対向壁97Aは、図16〜図18に示すように、各セル室25について、隔壁93及び内壁91により側方を囲まれた蓋本体61の下部空間Sを、第1空間S1と第2空間S2に分離している。尚、「蓋本体61の下部空間S」は、蓋本体61の下側の空間のうち、隔壁93及び内壁91に側方を囲まれた領域を指すので、蓋本体61の下面(図17に示すL3)から隔壁93の下端(図17に示すL2)までの範囲となる。また、内壁91は隔壁93と下端の高さが同じであり、蓋本体61の下面から内壁91の下端までを下部空間Sとしてもよい。
尚、排気筒Tはセル室25に1つしか設定されていないため、第1空間S1か第2空間S2のいずれか一方に含まれることになり、本実施形態の例では、図16、図18に示すように、一方側の第1空間S1に排気筒Tが存在し、他方側の第2空間S2には排気筒Tが存在していない関係になっている。
そして、対向壁97Aは、図17に示すように、連通孔98を有している。連通孔98は円形であり、蓋本体61の下部空間Sの範囲内、すなわち図17に示すL3〜L2の範囲内に設けられている。
対向壁97Aに連通孔98を設けることで、以下の効果が得られる。図17、図18に示すように、電解液Wの液面が最高液位L1より低い場合、液面と対向壁97Aの間、液面とガイド部材94A、94Bの間には、それぞれ隙間がある。従って、それら隙間を通じて、対向壁97Aを境にした2つの空間S1、S2を、ガスが自由に行き来できる。そのため、各セル室25において、対向壁97Aを境にした2つの空間S1、S2は、内圧が均一になることから、過充電等によりガスが発生しても、液面上昇は均一になる。
しかし、液面が上昇して最高液位L1に達すると、液面と対向壁97Aの隙間は無くなる。その後、液面が最高液位L1から更に上昇して、隔壁93の下端(図17、図18に示すL2の位置)に達すると、液面とガイド部材94A、94Bとの間の隙間もなくなる。すなわち、上昇した液面が、蓋本体61の下部空間Sの底面部分を塞ぐ状態になる。
もし仮に、対向壁97Aに対して、連通孔98を設けていないとすると、液面が隔壁93の下端(図17に示すL2の位置)に到達して蓋本体61の下部空間Sの底面部分を塞いだ時点で、対向壁97Aを境界とする第1空間S1と第2空間S2は分断されてしまい、2つの空間S1、S2をガスが行き来することが出来ない状態になる。そして、排気筒Tが存在しない第2空間S2はガスが抜けないので、排気筒Tが存在する第1空間S1に比べて、内圧が上昇し易くなり、2つの空間S1、S2に内圧差が生じ易い。
しかし、本構成では、図17に示すように、対向壁97Aのうち、蓋本体61の下部空間Sの範囲内に連通孔98を設けている。そのため、液面が蓋本体61の下部空間Sの底面部分を塞いでも、連通孔98を通じて、第1空間S1と第2空間S2をガスが行き来することが出来る。そのため、2つの空間S1、S2に内圧差が生じることを抑えることが可能となる。
また、本実施形態では、連通孔98を、下部空間Sの底面よりも、天井面に近い位置に設けている。すなわち、下部空間Sの底面にあたる隔壁93の下端(図17に示すL2)よりも、下部空間Sの天井面にあたる蓋本体61の下面(図17に示すL3)に近い位置に設けている。このようにすることで、連通孔98を下部空間Sの底面に近い位置に設けている場合に比べて、より高い位置に液面が上昇するまで、分離された2つの空間S1、S2に内圧差を生じることを抑えることが可能であり、効果的である。
尚、「ガイド部材94A、94Bと対向壁97A」は、上記したように、セル室25のX方向両側に位置する2つの蓋壁(内壁91又は隔壁93)と連結しており、各セル室25について、蓋本体61の下部空間Sを2つの空間S1、S2に分離している。従って、これら「ガイド部材94A、94Bと対向壁97A」が本発明の「分離壁」の一例である。また、「対向壁97Aに形成した連通孔98」が本発明の「連通部」の一例である。また、図18は技術の理解を容易にするため、排気筒Tの形状は簡略化して図示している。
3.効果説明
以上説明したように、上昇する液面が蓋本体61の下部空間Sの底面を塞いでも、対向壁97Aに形成した連通孔98を通じて、対向壁97Aにより分離された第1空間S1と第2空間S2を、ガスが行き来することが出来る。そのため、第1空間S1と第2空間S2に内圧差が生じることを抑えることができる。そのため、2つの空間S1、S2で、液面の上昇にアンバランスが生じることを抑えることができる。すなわち排気筒Tが存在する第1空間S1側の液面が上昇し易くなることを抑えられるので、電解液が排気筒Tを通じて外部に漏れることを抑制することが出来る。
また特に、電槽20が複数のセル室25に仕切られている場合、セル室25を仕切る隔壁23の間隔が狭く、蓋本体61の下部空間Sを分離する分離壁が作られ易い。そのような分離壁が作られやすい構造の鉛蓄電池10に対して、分離壁の両側の空間を連通させる本技術を適用することで、液面上昇に伴って、分離された空間に内圧差が生じることを抑制しつつ、電解液が排気筒Tを通じて外部に漏れることを抑制することが出来る。
また、第1空間S1と第2空間S2を連通させるには、分離壁94A、94B、97Aの一部に連通スリットを設けることも考えられる。しかし、分離壁94A、94B、97Aは技術的な必要があって設けられているため、あまり大きな連通部を設けると、分離壁94A、94B、97Aを設けた本来の目的を達成し難くなる。そのような事情から、連通スリットの場合、限られたスペースで幅を広くすることは難しく、幅の狭い形状になる。結果として、液面の表面張力で塞がり易く(液膜が張り易い)、連通部としての機能を失い易い。この点、連通孔98であれば、一方向に長い形状として設けられなくなるので、例えば、スリット幅より半径の大きな円にした場合であっても、連通部の大きさを制限できるため、分離壁本体の機能が阻害され難い。その結果、液面の表面張力で塞がり難い形状に設計することが可能である。そのため、連通スリットと比べて連通部としての機能を失い難く、液面上昇に伴って、両空間S1、S2に内圧差が生じることを抑制する効果が高い。
また、連通孔98は、下部空間Sの底面よりも天井面に近い位置に設けられている。すなわち、図17に示すL2よりもL3に近い位置に設けられている。このようにすることで、連通孔98を下部空間Sの底面に近い位置に設けている場合に比べて、より高い位置に液面が上昇するまで、分離された2つの空間S1、S2に内圧差を生じることを抑えることが可能であり、効果的である。
注液孔75から電槽20を覗いた時に見える極板30P、30Nの像の歪の大きさは、液面の表面張力に比例して大きくなる。そして、液面の表面張力は、液面に対する対向壁97Aの接触面積が大きいほど、大きくなる。対向壁97Aの壁面に連通孔98を設ける本構成では、対向壁97Aの先端形状を変更する必要がないことから、液面に対する接触面積を、連通孔98を持たない場合と同等の面積にすることが出来る。そのため、一対の対向壁97A、97Bによる液面高さのチェック機能を維持することが出来る。
また、注液孔75から電槽20を覗いた時に見える極板30P、30Nの像は、板面に対して直交するX方向の歪が大きいほど歪の有無を判断しやすい。図14に示すように、2つの対向壁97A、97Bは、極板30P、30Nの板面に沿うZ方向に向かい合っており、板面の直交するX方向に分割スリット97Cを設けている。この構成では、極板30P、30Nの板面に対して直交するX方向の歪が大きくなるので、電解液Wが最高液位L1に達しているか視認性が高まる。
<実施形態2>
実施形態2について、図19を参照して説明する。実施形態1では分離された第1空間S1と第2空間S2を連通するため、対向壁97Aに連通孔98を設けた例を示した。実施形態2は、第1空間S1と第2空間S2の連通方法が実施形態1と相違しており、連通スリット200A、200Bを利用して、2つの空間S1、S2を連通させる。
具体的に説明すると、図19に示すように、連通スリット200A、200Bは、対向壁97Aの両側に位置しており、連通スリット200Aはガイド部材94Aとの間、連通スリット200Bはガイド部材94Bとの間に設けられている。2つの連通スリット200A、200Bは、上下方向に延びる縦長な形状であり、スリット上端は、中蓋60の蓋本体61の下面に達している。また、連通スリット200Aは、下方に向かってスリットの幅が広がるようなテーパが付けられており、スリット下端は下方に切り抜けている。
これら連通スリット200A、200Bを設けた場合も、連通孔98を設けた場合と同様に、第1空間S1と第2空間S2に内圧差が生じることを抑えることができる。そのため、第1空間S1と第2空間S2で、液面の上昇にアンバランスが生じることを抑えることができる。すなわち排気筒Tが存在する第1空間S1側の液面が上昇し易くなることを抑えられるので、電解液Wが排気筒Tを通じて外部に漏れることを抑制することが出来る。
また、分離壁94A、94B、97Aは、技術的な必要性があって設けられているため、あまり大きな連通部を設けると、分離壁94A、94B、97Aを設けた本来の目的を達成し難くなる。そのような事情から、連通部を、幅を一定数値以下に限定したスリット形状とすることが好ましく、連通スリット200A、200Bの幅を5mm以下とすることがより好ましい。連通部をスリット形状とすることで、大きな連通部とすることなく、より高い位置まで連通部を延ばすことが出来る。その結果、より高い位置に液面が上昇するまで、分離された2つの空間S1、S2に内圧差が生じることを抑えることが出来、電解液Wが排気筒Tを通じて外部に漏れることを抑制できる。また、連通スリット200A、200Bを切り抜けた形状にすることで、簡易な金型で製造し易いというメリットもある。なお、連通スリット200A、200Bの幅の下限については、1mm以上が好ましく、3mm以上が更に、好ましい。理由は、連通スリット200A、200Bの幅が狭くなると、連通スリットに液膜が張り易くなり、連通部として機能し難くなるためである。
本実施形態では、連通スリット200A、200Bの上端の幅を3mm以上、下端の幅を5mm以下に設定しており、スリット幅の全体を、その最適範囲(3mm〜5mm)内の数値に収めている。
尚、一対の対向壁97A、97Bは大きさが異なっており、対向壁97Bより対向壁97Aの方が、周長が短い。これは、対向壁97Aの両端をカットして周長を短くすることによって、連通スリット200A、200Bを形成しているためである。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1、2では、蓋部材50を中蓋60と上蓋100とから構成した例を示した。中蓋60と上蓋100は必ずしも別体である必要はなく、中蓋60と上蓋100を一体化した構造の蓋としてもよい。
(2)実施形態1、2では、鉛蓄電池の一例に、電槽20を複数のセル室25に仕切った構造の電池を例示した。本発明は、電槽20を封口する蓋部材50が、蓋本体61と、蓋本体61の下面において電槽20の開口に沿って形成され電槽20に接合される蓋壁91と、その蓋壁91に囲まれた蓋本体61の下部空間Sを2つの空間に仕切る分離壁を持つ構造の電池であれば、広く適用することが可能であり、電槽20がセル室25に仕切られていない構造の鉛蓄電池に対して、本発明を適用することが可能である。
(3)実施形態1、2では、分離壁の一例として、「ガイド部材94A、94Bと対向壁97A」を例示した。分離壁は、蓋壁91、93の内周側にあって、蓋壁91、93と連結されることによって、蓋壁91、93により囲まれた蓋本体61の下部空間Sを2つの空間S1、S2に分離する壁であればよく、いかなる構造壁であってもよい。また、必ずしも一枚の壁として繋がっている必要はなく、実施形態2で例示したように、壁面の一部に連通スリットを備えた構成であってもよい。
(4)実施形態1、2では、分離壁94A、94B、97Aが、X方向両側に位置する2つの蓋壁93と連結することにより、蓋本体61の下部空間SをZ方向に分離する構造を例示した。分離壁が、蓋本体61の下部空間Sをどの方向に分離するかは、電槽20やセル室25の形状により種々のパターンが考えられ、例えば、電槽20やセル室25の形状がX方向に対しても所定以上の幅を持つような場合であれば、Z方向両側に位置する2つの蓋壁と連結することにより、蓋本体61の下部空間SをX方向に分離する構造であってもよい。
(5)実施形態1では、対向壁97Aに対して連通孔98を設けた例を示した。連通孔98は、分離壁に対して設けられていればよく、形成箇所は、対向壁97Aに限定されない。例えば、対向壁97と共に、分離壁を構成するガイド部材94A、94B側に設ける構成にしてもよい。
(6)実施形態2では、対向壁97Aの両側に連通スリット200A、200Bを設けた例を示したが、例えば、図20に示すように、対向壁97Aの壁面上に連通スリット210を設ける構造にしてもよい。
(7)本実施形態1、2では、蓋壁の一例に「内壁91」と「隔壁93」を例示した。蓋壁は、電槽20やセル室25を封口するため、電槽20やセル室25の開口に沿った形状であればよい。すなわち、実施形態1、2では、開口の「全周」に渡って、蓋壁を設けた例を示したが、必ずしも「全周」である必要はなく、壁の一部が切り欠かれた構成であってもよい。
(8)本実施形態1では、連通孔98を、対向壁97Aのうち下部空間Sの天井面に近い位置に設けた例を示した。連通孔98は、孔全体が下部空間Sの天井面側に寄っている必要は必ずしもなく、上端の位置が下部空間Sの底面より天井面に近い位置にあればよい。すなわち、図17に示すL2よりもL3に近い位置にあればよい。