JP7325189B2 - 3dプリンター用モノフィラメント及びその使用方法、並びに造形方法 - Google Patents
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Description
[1]
ポリアセタールを100質量部、ポリエチレン0.01~5質量部、を含むことを特徴とする、3Dプリンター用モノフィラメント。
[2]
結晶化速度が40秒以上である、[1]に記載のモノフィラメント。
[3]
ポリエチレンの密度が0.88~0.93g/cm3である、[1]又は[2]に記載のモノフィラメント。
[4]
ポリエチレンのMFRが0.2~100g/10分である、[1]~[3]のいずれかに記載のモノフィラメント。
[5]
熱溶解積層法の3Dプリンター用である、[1]~[4]のいずれかに記載のモノフィラメント。
[6]
長径と短径の比で表される真円率が1.05以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のモノフィラメント。
[7]
[1]~[6]のいずれかに記載のモノフィラメントを用いることを特徴とする、熱溶解積層法の3Dプリンターで造形する方法。
[8]
熱溶解積層法の3Dプリンターに用いることを特徴とする、[1]~[6]のいずれかに記載のモノフィラメントの使用方法。
[9]
樹脂成分のみからなる、[1]~[6]のいずれかに記載のモノフィラメント。
本実施形態における3Dプリンター用モノフィラメント(以下、単に「モノフィラメント」と称することがある。)は、少なくともポリアセタール100質量部とポリエチレン0.01~5質量部とを含有することを特徴とする。本実施形態のモノフィラメントは、樹脂成分が少なくとも1種のポリアセタールと少なくとも1種のポリエチレンとのみであるモノフィラメントであってもよいし、樹脂成分が1種のポリアセタールと1種のポリエチレンとのみであるモノフィラメントであってもよい。
また、本実施形態におけるモノフィラメントは、必要に応じ、無機充填剤等の添加剤、その他の成分などを更に含有してもよい。
本発明におけるポリアセタールとしては、例えば、ポリアセタールホモポリマー(a-1)及びポリアセタールコポリマー(a-2)などが挙げられるが、造形性、熱安定性の観点からは、ポリアセタールコポリマーが好ましい。その一方で、得られる造形品の機械的強度の観点からは、ポリアセタールホモポリマーが好ましい。
上記ポリアセタールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリアセタールホモポリマー(a-1)は、オキシメチレンユニットのみを主鎖に有するポリマーである。そして、ポリアセタールホモポリマー(a-1)は、例えば、公知のスラリー重合法(例えば、特公昭47-6420号公報及び特公昭47-10059号公報に記載の方法)により得ることができる。
また、市販されているポリアセタールホモポリマーとしては、旭化成株式会社製のテナック(商標)が挙げられる。
ポリアセタールコポリマー(a-2)は、主モノマーに由来するオキシメチレンユニットと、コモノマーに由来するコモノマーユニットとを主鎖に有する共重合ポリマーである。コモノマーユニットは、オキシメチレンユニットと共重合できるユニットであれば特に限定されないが、炭素数2以上のオキシアルキレンユニットであることが好ましい。ポリアセタールコポリマー(a-2)の両末端又は片末端は、エステル基及び/又はエーテル基により封鎖されていてもよい。
また、市販されているポリアセタールコポリマーとしては、旭化成株式会社製のテナック-C(商標)が挙げられる。
即ち、ポリアセタールコポリマー(a-2)を、ヘキサフルオロイソプロパノールにより濃度1.5質量%となるように24時間かけて溶解させ、この溶解液を用いて1H-NMR解析を行い、オキシメチレンユニットと、炭素数2以上のオキシアルキレンユニットと、の帰属ピ-クの積分値の比率から、オキシメチレンユニット(a=100mol)に対する炭素数2以上のオキシアルキレンユニット(bmol)の含有割合(b/a:mol/100mol)を求めることができる。
ポリアセタールコポリマー(a-2)の製造に使用する主モノマーとしては、例えば、ホルムアルデヒド又はその3量体であるトリオキサン若しくは4量体であるテトラオキサン等の環状オリゴマーなどが挙げられる。
本実施形態において「主モノマー」とは、全モノマー量に対して50質量%以上含有されているモノマーユニットをいう。
ポリアセタールコポリマー(a-2)の製造に使用するコモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、分子中に炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを有する環状エーテル化合物が挙げられる。
環状エーテル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられるポリエチレンとしては、特に限定されず、一般に市販されている高密度ポリエチレン(例えば、密度が0.942g/cm3以上のポリエチレン)でも低密度ポリエチレン(例えば、密度が0.930g/cm3未満のポリエチレン)でも構わないが、ポリアセタールとの相溶性の観点、および、モノフィラメントの結晶化速度を遅くし、3Dプリンターでの造形性を向上させる観点から、低密度ポリエチレンがより好ましい。
高圧法低密度ポリエチレンは、例えば、1000~3000kg/cm2の高圧下でのラジカル重合で製造できる。重合中にback bitingによる分子内の水素引抜き反応により、短鎖分岐(エチル分岐やブチル分岐)が生成し、低密度となっている。高圧法低密度ポリエチレンは、分子間の水素引抜き反応により主鎖に比肩する分岐(長鎖分岐)を持つことが好ましい。高圧法低密度ポリエチレンの密度は、0.91~0.93g/cm3が好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレンは、例えば、イオン重合によるポリエチレンで、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチルペン-1、1-オクテンのようなα-オレフィンをエチレンの重量に対して数%~数10%重合させることにより短鎖分岐を導入して得ることができる。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は0.88~0.93g/cm3が好ましいである。
本実施形態におけるモノフィラメントは、例えば、無機充填剤、酸化防止剤、安定剤(熱安定剤等)、紫外線吸収剤、結晶核剤、導電剤・帯電防止剤、外観改良剤(顔料や染料等)などの添加剤を更に含んでいてもよい。
本実施形態におけるモノフィラメントは、無機充填剤を更に含有しても構わない。モノフィラメントが無機充填剤を更に含有することで、収縮度を高め、造形品の反り及び層間剥離をより抑制することができる。
無機充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、無機充填剤の平均粒径、平均長径及び平均短径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定対象となる無機充填剤粒子のサンプリングを行い、その無機充填剤粒子を倍率1千倍から5万倍で撮影し、得られた画像において無作為に選んだ最低100個の無機充填剤粒子からそれぞれの径を測定し、その相加平均として求めたものである。
なお、本明細書において「等方性」とは、長径と短径の比(長径/短径)が1.5以下であることを指す。
本実施形態におけるモノフィラメントは、結晶化速度が40秒以上であることが好ましい。結晶化速度が40秒以上であることにより、造形時における反り及び層間剥離をより効果的に抑制することができる。同様の観点から、モノフィラメントの結晶化速度は、45秒以上であることがより好ましく、50秒以上であることが更に好ましい。
ここで、結晶化速度は、示差走査熱量測定(DSC)により、例えば、Parkin Elmer社製「DSC-2C」を用い、実施例に記載の手順に従うことで、測定することができる。
また、結晶化速度は、例えば、ポリエチレンの種類、密度、含有量等により調整することができ、特定割合の低密度ポリエチレン(特に直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン)を用いること等で上記範囲とすることができる。
一方で、3Dプリンターによる造形では、上述の方法とは逆に、結晶化速度を十分に遅くすることによって、造形時における反りを抑制することができる。
本実施形態にモノフィラメントは、ポリアセタールコポリマーの融点である165℃より10℃低い、155℃で1時間保持したときの重量減少率が、5%以下であることが好ましい。上記重量減少率が5%以下であることにより、高い熱安定性を保持することができ、長時間の造形も安定的に可能となり、ホルムアルデヒド等の揮発性有機物質(VOC)の放出を十分に抑制することができる。同様の観点から、上記重量減少率は、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましい。
ここで、上記重量減少率は、熱重量測定装置(Perkin Elmer社製、商品名「Pyris 1 TGA」)を用いて、試料重量:5mg、空気流量:10mL/分、昇温速度(室温から155℃まで):10℃/分、155℃で1時間保持して測定する。
本実施形態におけるモノフィラメントは、特に制限されないが、熱溶解積層法の3Dプリンターの造形材料として用いる観点から、1本の単糸からなる繊維状であることが好ましい。
モノフィラメントは、直径が0.5mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましく、1.4mm以上のものであることが更に好ましい。モノフィラメントの直径が0.5mm未満であると、細くなりすぎて、汎用の熱溶解積層法による3Dプリンターには適さないものとなる虞がある。なお、汎用の熱溶解積層法による3Dプリンターに適したモノフィラメントの直径の上限としては、3mm程度であるが、2.0mm以下であることがより好ましく、1.6mm以下であることが更に好ましい。
なお、モノフィラメントの直径とは、長手方向に対して垂直に切断した断面における長径を測定したものである。
なお、長径と短径の比が1に近いほど、真円度が高いことを示すものであり、モノフィラメントの製造時に延伸を行うことにより、真円度の高いモノフィラメントを得ることが可能となる。
なお、モノフィラメントの製造時に延伸を行うことにより、樹脂の高分子鎖が配向して十分に結晶化し、寸法公差の低いモノフィラメントを得ることができる。
本実施形態におけるモノフィラメントは、ポリアセタール等の樹脂及び任意の他成分を、ニーダー、ロールミル、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機などを用いて溶融混練した造形材料を用いることにより、高い均一性をもって製造することができる。
まず、溶融混練後に得られた造形材料を、常法によって紡糸速度5~30m/分で溶融紡出し、未延伸モノフィラメントを得る。この際の紡糸温度は、190℃~230℃とするのが適当であり、紡糸温度が低すぎると完全に溶融させることが困難となり、高すぎるとポリマーの熱分解が起こるので好ましくない。
本実施形態におけるモノフィラメントは、3Dプリンターなどの付加製造技術に好適に用いられる。なお、本実施形態におけるモノフィラメントは、3Dプリンターにより複雑で精密な造形品を得るための材料として特に好適である観点から、熱溶解積層法の3Dプリンターに用いることができる。本実施形態におけるモノフィラメントを用いて付加製造を行うことにより、設計通りの精密な造形品を得ることができる。また、得られた造形品は、自動車部品、電気・電子部品、工業部品、医療用部品等の機構部品などに、広範囲に亘って適用可能である。
本発明のモノフィラメントの使用方法は、上述した本実施形態におけるモノフィラメントを、熱溶解積層法の3Dプリンターに用いることを特徴とする。なお、本実施形態におけるモノフィラメントの使用方法において、具体的な使用条件等は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択して使用することができる。
本発明の造形方法は、熱溶解積層法の3Dプリンターで、上述した本実施形態におけるモノフィラメントを用いて造形することを特徴とする。本実施形態における造形方法によれば、上述した本実施形態におけるモノフィラメントを用いるため、複雑な造形品を精密に造形することができる。なお、本実施形態における造形方法において、具体的な造形条件等は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択して、造形することができる。
製造したモノフィラメントについて、示差走査熱量計(Parkin Elmer社製:DSC-2C)を用いて、下記の手順に従って結晶化速度を測定した。
1:モノフィラメント3mgを測定用アルミパンの中に封入し、示差走査熱量計の加熱炉内の所定位置に配置する。
2:20℃/分の昇温速度で220℃に達するまで昇温する。
3:220℃に達してから2分間、その温度を保持する。
4:80℃/分の降温速度で149℃に達するまで降温し、10分間、その温度を保持する。
5:保持開始から発熱ピークの最高点に達するまでの時間を、結晶化速度として測定する。なお、この時間が長いほど、結晶化速度が遅いことを意味する。
得られたモノフィラメントより5m分の試料を取り出し、ランダムに20箇所を選択して、それらの直径をマイクロメーターで小数点以下第3位まで測定した。次に、それらの平均値の小数点第3位を四捨五入し、モノフィラメントの直径を求めた。
また、得られたモノフィラメントより5m分の試料を取り出し、ランダムに20箇所を選択して、それらの長径及び短径をマイクロメーターで測定するとともに、真円率=長径/短径を小数点第3位まで1箇所ずつ求めた。次に、それらの平均値の小数点第3位を四捨五入し、モノフィラメントの真円率を求めた。
製造したモノフィラメン卜を原料として、造形を行った。具体的には、熱溶解積層法を採用した押出積層堆積システムとして、XYZプリンティング社製「ダヴィンチ1.0Pro」を用い、3次元物体として、上方に開口部を有するカップ形状の造形品(3次元造形品)の造形を行った。
造形品の造形に際しては、プリント速度を60mm/秒とし、また、基板温度を130℃とし、吐出温度を260℃とした。溶融樹脂は、押出ヘッドから直径0.4mmのス卜ランド状に吐出された。
得られた造形品を観察し、以下の基準で、造形品の反りを評価した。
反り
◎(優れる):ほぼ反っていない。
○(良好):若干反っているが、造形品が得られた。
×(劣る):反りが大きく、きれいに造形できない。
上記(3)の通りにして得られた造形品を観察し、以下の基準で、造形品の層間密着性を評価した。
◎(優れる):層間がしっかり密着し、きれいな造形品が得られた。
○(良好):わずかに層間が剥離している箇所が観察できる。
△(不良):層間の剥離が複数個所に観察される。
×(劣る):大きく層間が剥離し、きれいな造形品が得られない。
表1に示される配合処方で、各成分を、二軸混練機により溶融混練(シリンダ-温度:165℃~210℃)し、ペレッ卜状の造形材料を得た。
次に、上記で得られたペレットを、エクストルーダー型溶融紡糸機に供給し、紡糸温度200℃で溶融し、直径5mmの紡糸孔を1孔有する丸断面形状の口金から吐出した。引き続き、50℃の液浴中で冷却固化し、20m/分の速度で引き取って、未延伸糸を得た。次いで、未延伸糸を一旦巻取ることなく専用スポンジで水分を拭き取った後、ローラ間に設置された非接触型乾熱ヒーターにて、230℃での熱処理を施しながら、延伸した。この後、同様にローラ間に設置された非接触型乾熱ヒーターにて、150℃で弛緩熱処理を施し、径(断面の直径)が1.75mmになるように調整して、モノフィラメントを得た。
*2 ポリエチレン:
A:高密度ポリエチレン(旭化成(株)製;MFR=7g/10分、密度0.96g/cm3)
B:高密度ポリエチレン(旭化成(株)製;MFR=15g/10分、密度0.95g/cm3)
C:直鎖状低密度ポリエチレン(旭化成(株)製;MFR=0.5g/10分、密度0.92g/cm3)
D:直鎖状低密度ポリエチレン(旭化成(株)製;MFR=9g/10分、密度0.92g/cm3)
E:直鎖状低密度ポリエチレン(旭化成(株)製;MFR=16g/10分、密度0.92g/cm3)
F:高圧法低密度ポリエチレン(旭化成(株)製;MFR=7g/10分、密度0.92g/cm3)
G:高圧法低密度ポリエチレン(旭化成(株)製;MFR=0.5g/10分、密度0.92g/cm3)
H:高圧法低密度ポリエチレン(旭化成(株)製;MFR=15g/10分、密度0.92g/cm3)
I:高圧法低密度ポリエチレン(旭化成(株)製;MFR=90g/10分、密度0.92g/cm3)
J:高圧法低密度ポリエチレン(旭化成(株)製;MFR=0.1g/10分、密度0.92g/cm3)
K:高圧法低密度ポリエチレン(旭化成(株)製;MFR=120g/10分、密度0.91g/cm3)
Claims (9)
- ポリアセタールを100質量部、ポリエチレン0.01~5質量部、を含むことを特徴とする、3Dプリンター造形用モノフィラメント。
- 結晶化速度が40秒以上である、請求項1に記載のモノフィラメント。
- ポリエチレンの密度が0.88~0.93g/cm3である、請求項1又は2に記載のモノフィラメント。
- ポリエチレンのMFRが0.2~100g/10分である、請求項1~3のいずれか一項に記載のモノフィラメント。
- 熱溶解積層法の3Dプリンター用である、請求項1~4のいずれか一項に記載のモノフィラメント。
- 長径と短径の比で表される真円率が1.05以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のモノフィラメント。
- 請求項1~6のいずれか一項に記載のモノフィラメントを用いることを特徴とする、熱溶解積層法の3Dプリンターで造形する方法。
- 熱溶解積層法の3Dプリンターに用いることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のモノフィラメントの使用方法。
- 樹脂成分のみからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載のモノフィラメント。
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