以下、本発明を実施するための形態(本実施形態)を説明する。ただし、本発明は以下の内容及び図示の内容になんら限定されず、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形して実施できる。本発明は、異なる実施形態同士を組み合わせて実施できる。以下の記載において、異なる実施形態において同じ部材については同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、第1実施形態の処理システム100の系統図である。処理システム100は、第1除去装置10により、放射性核種及び塩化物イオンを含む放射性廃液から放射性核種を除去するものである。放射性核種の除去は、放射性廃液への酸化剤添加による放射性核種の酸化後、酸化した放射性核種について行われる。放射性核種は、例えば、セシウム、ストロンチウム、ヨウ素等を含む。塩化物イオンは、「Cl-」で示され、例えば海水に由来する。放射性廃液は、例えば、海水への放射性核種の混入により生じたものである。
いずれも詳細は後記するが、処理システム100では、第1添加装置2による酸化剤添加後、第2除去装置4において酸化剤の除去が行われる。しかし、例えば第2除去装置4の経時劣化、不具合等により、第2除去装置4による除去が不完全になり、第2除去装置4の後段に酸化剤が漏れる可能性がある。即ち、第2除去装置4の後段で酸化剤が残留する可能性がある。そこで、処理システム100では、通常運転時には第2除去装置4での酸化剤除去後に第1除去装置10で放射性核種の除去が行われるが、第2除去装置4の後段で酸化剤が検出された場合には、濃度低下装置16での酸化剤除去後に、第1除去装置10で放射性核種の除去が行われる。
処理システム100は、上記の第1除去装置10に加え、濃縮装置1と、第1添加装置2と、混合槽3と、第2除去装置4と、測定装置18を構成する第2測定装置5とを備える(第1測定装置13については後記する)。また、処理システム100は、第2添加装置11と、貯留槽12A,12B,12Cを含む貯留槽12と、測定装置18を構成する第1測定装置13とを備える。さらに、処理システム100は、貯留槽12と第1除去装置10とを接続する第3流路14cを備え、第3流路14cは弁15cを備える。これらのうち、第2添加装置11、貯留槽12及び弁15cは、濃度低下装置16を構成する。弁15cは、貯留槽12から貯留槽12の後段の第1除去装置10(処理装置の一例)への酸化剤含有廃液の流通を制御するものである。さらに、処理システム100は、第1制御部20a及び第2制御部20bを備える制御装置20を備える。
濃縮装置1は、放射性廃液を濃縮するものである。濃縮装置1は、例えば逆浸透膜を含む。濃縮装置1により、放射性廃液中の例えば放射性核種及び塩化物イオンが濃縮される。濃縮は、例えば塩化物イオン濃度が例えば2倍以上4倍以下になる条件で行うことができる。濃縮装置1により、放射性廃液の処理量を削減できる。
第1添加装置2は、濃縮された放射性廃液(濃縮されていなくてもよい)に対し酸化剤を添加するものである。第1添加装置2は、いずれも図示しないが、例えば、酸化剤を貯留する酸化剤タンクと、酸化剤を放射性廃液に供給する送液ポンプとを備える。第1添加装置2により、放射性廃液に酸化剤を添加できる。放射性廃液への酸化剤の添加により、酸化剤を含む放射性廃液である酸化剤含有廃液が生成する。
酸化剤は、例えば、酸化剤含有廃液のpHにより分解される酸化剤である。具体的には、酸化剤は、例えば、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩(例えば次亜塩素酸ナトリウム)、過酸化水素、又はオゾンの少なくとも1種を含む。これらのうちの少なくとも一種の酸化剤を使用することで、酸化剤含有廃液のpHの制御により、酸化剤を容易に分解除去できる。第1実施形態では、説明の簡略化のために、一例として酸化剤は次亜塩素酸塩である。なお、次亜塩素酸及び次亜塩素酸塩は、いずれも水中で次亜塩素酸イオンを生じる。このため、説明の簡略化のために、次亜塩素酸及び次亜塩素酸塩を総称して、以下、次亜塩素酸等ということがある。
混合槽3は、酸化剤含有廃液と酸化剤とを混合するものである。混合槽3は、例えば攪拌翼(図示しない)を備える。混合槽3での酸化剤含有廃液と酸化剤との混合により、酸化剤含有廃液中の放射性核種が酸化される。
第2除去装置4は、酸化剤を酸化剤含有廃液から除去するものである。第2除去装置4は例えば活性炭であり、酸化剤の活性炭への接触により、酸化剤が例えば分解する。これにより、酸化剤が除去され、酸化剤含有廃液での酸化剤濃度を低下できる。
第2除去装置4では、酸化剤を完全に除去できることが好ましい。ただし、酸化剤除去が完全である場合には、第2除去装置4の後段では酸化剤は残留せず、後段の廃液は酸化剤含有廃液とはいえない。しかし、通常は、第2除去装置4での酸化剤除去後においても、金属腐食に影響を及ぼさない程度に微量の酸化剤が残留し得る。また、例えば第2除去装置4の性能低下等により、金属腐食を生じさせる程度に多量の酸化剤が残留する可能性もある。そこで、これらの場合を考慮し、仮に酸化剤除去が完全に行われた場合も含めて、第2除去装置4から排出される廃液を便宜的に「酸化剤含有廃液」というものとする。
測定装置18は、酸化剤含有廃液での酸化剤の濃度に関する指標値を測定するものである。測定装置18に含まれる第2測定装置5は、第2除去装置4による酸化剤除去後に残留した酸化剤を含む酸化剤含有廃液について指標値を測定する。第2測定装置5の測定値は、後記する制御装置20の第2制御部20bに入力される。第2測定装置5により、第2除去装置で意図せず酸化剤を除去できなかった場合であっても、漏れた酸化剤を検出できる。
ここでいう指標値は、酸化剤濃度を直接的に表す指標値であってもよく、酸化剤濃度を間接的に表す指標値であってもよい。測定装置18が例えば滴定装置(図示しない)である場合、例えば濃度既知の還元剤水溶液を用いた滴定により、酸化剤濃度を直接的に測定できる。また、測定装置18が例えば比色法に基づく測定装置(図示しない。例えば吸光光度計)である場合、例えばジエチルパラフェニレンジアミンを用いた吸光度の測定により、酸化剤濃度を直接的に測定できる。一方で、測定装置18が例えば酸化還元電位測定装置(図示しない。ORP計)である場合、酸化剤濃度と相関のある酸化還元電位(ORP)の測定により、酸化剤濃度を間接的に測定できる。
測定装置18は、測定の容易さの観点から、測定装置18はORP計であることが好ましい。処理システム100では、一例として、測定装置18としてORP計が使用される。
第1除去装置10(第1添加装置2の後段に設置された処理装置の一例であり、第1除去装置10に限られない)は、第1流路14a(後記する)を介して第2除去装置4の後段に備えられ、放射性核種を除去するものである。また、第1除去装置10は、第3流路14cを介し、濃度低下装置16の後段にも備えられる。第1除去装置10を備えることで、放射性廃液を処理できる。第1除去装置10による処理後、放射線核種を含まないことが確認されたうえで、外部に放流される。第1除去装置10は、吸着装置6と、緩衝装置7と、捕捉装置8と、ヨウ素除去装置9とを備える。
吸着装置6は、例えばセシウム、ストロンチウム等の放射性核種を吸着するものである。吸着装置6は、例えば放射性核種を吸着可能な陽イオン交換樹脂を備える。緩衝装置7は、流れる放射性廃液のpHをアルカリ性に調整するものである。緩衝装置7は例えば酸化マグネシウムを備える。緩衝装置7から排出された放射性廃液には、必要に応じて還元剤及び酸が添加されてもよい。捕捉装置8は、放射性廃液中の金属を捕捉するものである。捕捉装置8は、例えばキレート樹脂を備える。ヨウ素除去装置9は、放射性廃液中のヨウ素(ヨウ化物イオン、ヨウ素酸イオン等)を除去するものである。ヨウ素除去装置9は例えば陰イオン交換樹脂を含む。
処理システム100は、第1流路14a、第2流路14b及び第3流路14cを備える。第1流路14aは、第2除去装置4による酸化剤除去後に残留した酸化剤を含む酸化剤含有廃液が後段の第1除去装置10(処理装置の一例であり、第1除去装置10に限られない)に流れるものである。第1流路14aは弁15aを備える。第1流路14aには、第1流路14aを流れる酸化剤含有廃液の指標値を測定する第2測定装置5が設置される。第2流路14bは、第1流路14aから分岐し、濃度低下装置16(具体的には貯留槽12。いずれも後記する)に接続されるものである。第2流路14bは弁15bを備える。第3流路14cは、濃度低下装置16と第1除去装置10とを接続し、濃度低下装置16での酸化剤除去後の酸化剤含有廃液を第1除去装置10に供給するものである。第3流路14cは、弁15cを備える。弁15cは、濃度低下装置16から濃度低下装置16の後段の処理装置への酸化剤含有廃液の流通を制御するものである。
濃度低下装置16は、酸化剤含有廃液に含まれる塩化物イオン及び酸化剤のうちの少なくとも一方である腐食促進成分の酸化剤含有廃液での濃度を低下させるものである。処理システム100では、濃度低下装置16は、一例として酸化剤の濃度を低下させる。まず、腐食促進成分について説明する。
処理システム100では、例えば配管等の設備の構成材料として、SUS304、SUS316L鋼等のステンレス鋼(腐食する金属の一例)が使用される。第1添加装置2による酸化剤の添加により、酸化剤含有廃液(放射性廃液の一例)の電位が上昇し、局部腐食(例えばすき間腐食、孔食)等の腐食発生電位が高くなる。このため、ステンレス鋼(同様の機構で腐食が生じるほかの金属でもよい)において、局部腐食等の腐食が生じ得る。腐食により、粒界腐食が生じたり、応力が加わることで応力腐食割れが進行したりする。そこで、設備の健全性維持のため、腐食の抑制が行われる。
腐食は、上記のように酸化剤に起因して生じるほか、塩化物イオンによっても生じ得る。そこで、処理システム100では、酸化剤及び塩化物イオンを腐食促進成分と定義し、腐食抑制のため、濃度低下装置16において腐食促進成分の濃度低下が図られる。ただし、酸化剤及び塩化物イオンのいずれか一方のみが存在する場合、腐食は生じ得るがその進行速度はそれほど早くない。このため、処理システム100では、一例として酸化剤のみの濃度低下が図られる。ただし、酸化剤及び塩化物イオンの双方の濃度低下が行われてもよい。
なお、処理システム100を構成する配管等の設備は、腐食する金属の一例であるステンレス鋼により構成される。従って、放射性廃液及び酸化剤含有廃液は、金属に接触する。ただし、第1添加装置2と濃度低下装置16とを繋ぐ設備のうち、金属腐食を進行させる程度に多量の金属促進成分を含む酸化剤含有廃液との接触が予想される部分には、例えば樹脂等によって金属の被覆が行われる。
濃度低下装置16は、第2添加装置11と、貯留槽12と、弁15cとを備える。便宜のため、貯留槽12をはじめに説明する。
貯留槽12は、酸化剤含有廃液を貯留するものである。処理システム100では、貯留槽12は、第2除去装置4から排出された酸化剤含有廃液を貯留する。濃度低下装置16は、貯留槽12に貯留された酸化剤含有廃液での酸化剤の濃度を低下させるように構成される。貯留槽12は貯留槽12A,12B,12Cを備え、貯留槽12A,12B,12Cはこの順で直列に接続される。第2除去装置4から排出された酸化剤含有廃液は、まず貯留槽12Aに供給される。貯留槽12Aでは第2添加装置11(後記する)によりpH調整剤が添加され、貯留槽12B,12Cに流れる。貯留槽12B,12Cを流れる途中で酸化剤が分解除去され、貯留槽12Cから排出された廃液は第1除去装置10に供給される。
なお、貯留槽12は、図示の例では3つ(複数)であるが、1つ又は2つでもよく、4つ以上でもよい。即ち、単数又は3つ以外の複数でもよい。
第2添加装置11は、酸化剤含有廃液にpH調整剤を添加するものである。pH調整剤は、処理システム100では、貯留槽12Aに貯留された酸化剤含有廃液に添加される。第2添加装置11は、いずれも図示しないが、例えば、pH調整剤を貯留するpH調整剤タンクと、pH調整剤を放射性廃液に供給する送液ポンプとを備える。第2添加装置11により、酸化剤含有廃液のpHを調整でき、酸化剤含有廃液中の酸化剤を分解除去できる。
pH調整剤は、例えば無機酸又は無機塩基により構成される無機物であり、酸化剤の種類に応じて決定できる。無機物のpH調整剤を使用することで、有機物を含む放射性廃棄物の量を削減できる。処理システム100では、酸化剤は、上記のように一例として次亜塩素酸等である。次亜塩素酸等は、pHが酸性のときに分解する。そこで、処理システム100では、pH調整剤は無機酸が使用され、具体的には例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の少なくとも一種が挙げられる。
ここで、pHによる酸化剤の分解について、一例として、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウム(次亜塩素酸等の一例)を挙げて図2以降を参照しながら説明する。
図2は、20000ppmの塩化物イオンを含有するpH3.5の溶液に、終濃度が15ppmになるように次亜塩素酸ナトリウムを添加した時のORP位及びpHの時間変化を示すグラフである。なお、海水の塩化物イオン濃度はおよそ20000ppmである。
図2に示すように、時刻t1で次亜塩素酸ナトリウムを添加すると、ORPは300mV程度から急激に1050mV程度に上昇した。このように、次亜塩素酸ナトリウム濃度(酸化剤)とORPとの間には相関がある。なお、次亜塩素酸ナトリウムの添加によりpHが若干アルカリ性側に変化した。そこで、1時間経過後、塩酸の添加によりpHを3.5に再調整した。1050mV程度に上昇したORPは、2時間経過後、卑側に変化し始めた。そして、ORPは、ほぼ6時間で、次亜塩素酸ナトリウム添加前の同程度の値に戻った。この結果から、pH3.5という低pHでは、次亜塩素酸ナトリウムは数時間で分解することがわかった。
図3は、20000ppmの塩化物イオンを含有するpH8.5の溶液に、終濃度が15ppmになるように次亜塩素酸を添加した時の酸化還元電位及びpHの時間変化を示すグラフである。図3に示すように、時刻t2で次亜塩素酸ナトリウムを添加すると、ORPは200mV程度から急激に650mV程度に上昇した。このように、図2の場合と同様に、次亜塩素酸ナトリウム濃度(酸化剤)とORPとの間には相関がある。その後、時間の経過とともに、ORPは徐々に貴側に変化した。しかし、低pHでの確認結果である図2の場合とは異なり、20時間経過後もORPは低下しなかった。従って、pH8.5という高pHでは、次亜塩素酸ナトリウム濃度(酸化剤)とORPとの間に相関があるものの、次亜塩素酸ナトリウムは分解しないことがわかった。
図4は、次亜塩素酸ナトリウムを添加後のORPが添加前のORPに戻るまでのpH依存性を示すグラフである。即ち、図4に示すグラフは、次亜塩素酸ナトリウムが分解されるまでの時間と溶液のpHとの関係を示すものである。縦軸の時間は、対数軸である。
pHが大きくなるほど、次亜塩素酸ナトリウムが分解されるまでの時間は指数関数的に大きくなる。従って、pHが大きくても次亜塩素酸ナトリウムは分解されるが、分解されるまでの時間を短くするためには、pHは小さいことが好ましいといえる。具体的には、処理システム100の通常の大きさ、放射性廃液の処理量、貯留槽12(図1参照)の通常の大きさ等を考慮すれば、例えば50時間以内でほぼ全て分解することが好ましい。従って、pHは、5以下が好ましい。従って、第2添加装置11は、酸化剤含有廃液のpHが5以下になるように無機酸を添加することが好ましい。
図1に戻って、第2除去装置4から貯留槽12Aに供給された酸化剤含有廃液は、例えば、貯留槽12Aでの貯留量が所定量になるまで貯留槽12Aに貯留される。貯留量が所定量になった後、第2添加装置11により、pH調整剤が添加される。添加量は、例えば貯留された酸化剤含有廃液のpHが上記のように5以下になるように行われる。ただし、貯留槽12Aの後段での更なる腐食抑制の観点から、pHは3以上であることが好ましい。この点について、図5を参照しながら説明する。
図5は、10ppm次亜塩素酸ナトリウムを含む溶液のpHに対し、100分間での電流値の変化をプロットしたグラフである。図5に示すように、pHが大きいほど電流値の変化が小さくなることが読み取れる。通常、腐食電流が2mA以下であれば、生じる腐食は金属の耐久性に影響がない程度の腐食である。このため、腐食の十分な抑制の観点からは、電流が2mA以下となるpH、即ちpHは3以上であることが好ましい。
図1に戻って、pH調整剤添加後の酸化剤含有廃液は、貯留槽12Bに移送された後に貯留槽12Bで所定時間貯留され、酸化剤分解に起因した酸化剤濃度低下が図られる。ここでいう所定時間は、上記のように例えば50時間である。所定時間経過後、貯留槽12Bの酸化剤含有廃液(酸化剤は分解していると考えられるが、便宜的にこの名称を付する)は、貯留槽12Cに移送される。
処理システム100は、測定装置18に含まれる第1測定装置13を備える。第1測定装置13は、貯留槽12(例えば貯留槽12C)に貯留された酸化剤含有廃液についての指標値を測定する。第1測定装置13の測定値は、後記する制御装置20の第1制御部20a(後記する)に入力される。
制御装置20は、測定装置(処理システム100では第1測定装置13)による測定値に基づいて濃度低下装置16を制御するものである。制御装置20は、第1測定装置13による測定値に基づき弁15cを制御する第1制御部20aを含む。第1制御部20aを備えることで、第1測定装置13によって貯留槽12での酸化剤含有廃液の酸化剤が除去されたことを確認した後で、第1除去装置10での腐食を抑制できる。
第1制御部20aは、第1測定装置13による測定値が所定の基準値以下になったときに、酸化剤含有廃液を第1除去装置10(処理装置の一例)に流すように弁15cを制御する。測定値が所定の基準値以下になれば、酸化剤が完全に分解又は腐食に影響を及ぼさない程度にまで分解したと判断できる。所定の基準値の決定方法について、図6~図9を参照して説明する。
図6は、すき間腐食試験の試験装置80の模式図である。所定の基準値は、例えば試験装置80を用いて決定できる。試験装置80は、恒温装置60とポテンシオスタット70とを備える。恒温装置60は、容器本体61と、内部容器63,64とを備える。容器本体61には所定温度(例えば40℃)に維持された水溶液74が収容され、容器本体61の上部開口(図示しない)は蓋69により閉塞される。
内部容器63,64は水溶液74に浸っている。内部容器63,64の内部には、20000ppmの塩化物イオン及び5ppmの次亜塩素酸イオンを含むpH3.5の水溶液67,68が収容される。水溶液67,68は塩橋65で架橋される。水溶液67には、ポテンシオスタット70に接続される基準電極71が浸っている。水溶液68には外部と連通する脱気管66が浸っている。更に、水溶液68には、ポテンシオスタット70に接続される白金電極72と、試験片40とが浸っている。試験片40の構造について、図7A~図7Cを参照して説明する。
図7Aは、試験片40の正面図である。試験片40は、正面視で矩形状を有し、高さ50.0mm、幅20.0mmである。試験片40は、S32750(二相ステンレス鋼)製の2枚の平板41,42の溶接により作製した。平板41の大きさは、高さ35.0mm、幅20.0mmである。平板42の大きさは、高さ15.0mm、幅20.0mmである。溶接は、アセトン洗浄された2枚の平板41,42に対し、溶接部44(図6Aでは図示しない)で行った。試験片40の上側20.0mmの部分は、耐薬品性の絶縁テープ45で被覆される。従って、試験片40は、水溶液68(図5参照)に対して下側30.0mmの部分のみが接触する。Wについては後記する。
図7Bは、試験片40の断面図である。試験片40の表面には、溶接部44を覆うように、シリコーン部材43が配置される。試験片40とシリコーン部材43との間には、図示しないすき間が形成される。
図7Cは、図7BのA部拡大図である。溶接部44は、2枚の平板41,42を突き合わせ、V開先とした。溶接部44の幅W(シリコーン部材43の接地面側)は最大で15mmとした。
シリコーン部材43は、歯科用ビニルシリコーン印象材(ジージー社製)で試験片40表面に沿って型取りした後に一度剥がし、それを20mm×20mmに切り出したものである。シリコーン部材43(即ち20mm×20mmに切り出した部分)は、溶接部44を覆うように配置後、PTFE製のケーブルタイで試験片40に巻きつけた。巻きつけは、シリコーン部材43の上下それぞれについて行った。これにより、試験片40とシリコーン部材43との間に、20mm×20mmのすき間が形成された。
図8は、試験片40に定電位を付与した場合の電流値の時間変化を示すグラフである。縦軸及び横軸はいずれも対数軸である。図8は、20000ppmの塩化物イオン及び5ppmの次亜塩素酸イオンを含むpH3.5の溶液中で500mVの電位に保持した場合の電流値(破線で示す)との各時間変化を示している。保持は2000時間行った。また、図8は、参考として、20000ppmの塩化物イオンを含み次亜塩素酸イオンを含まないpH3.5の溶液中で200mVの電位に保持した場合の比較電流値(実線で示す)を示している。保持は2000時間行った。比較電流値は、酸化剤を含まないことから、すき間腐食が生じていないときの電流値である。電流値及び比較電流値のいずれについても、電流値の増加は腐食の進行を示している。
電流値に示すように、測定開始後、時間の経過とともに電流値が増大した。従って、塩化物イオン及び酸化剤の双方を含む水溶液中では、すき間腐食のような腐食が進行し易いことがわかった。一方で、比較電流値に示すように、塩化物イオンが含まれていても酸化剤を含まない場合には、測定開始後、電流値は減少した。このため、すき間腐食のような腐食は生じていないと考えられる。また、40時間経過後、比較電流値が増加し始め、すき間腐食が生じ始めたと考えられる。しかし、1000時間経過後であっても、比較電流値は電流値よりも1/100程度であって、比較電流値の値は十分に小さいといえる。このため、多少すき間腐食は進行したといえるが、その程度は小さいといえる。
図9は、図8において破線で示した電流値の試験結果を得た際の試験条件において、各ORPの溶液において100分間での電流値の変化をプロットしたグラフである。図9に示すように、ORPの上昇により、電流値が上昇する。即ち、溶液のORPが大きいほど、大電流が流れ、腐食が進行し易くなる。通常、上記のように、腐食電流が2mA以下であれば、生じる腐食は金属の耐久性に影響がない程度の腐食である。このため、2mAに対応するORP以下、即ち、ORPが500mV以下になるような酸化剤濃度であれば、酸化剤に起因する腐食の影響は小さく問題にならないといえる。そこで、酸化剤含有廃液を後段に移送するか否かの判断基準となる所定の基準値は、例えば500mVにできる。
図1に戻って、制御装置20は、第2制御部20bを備える。第2制御部20bは、第2測定装置5による測定値に基づき、第2流路14bに酸化剤含有廃液を流すように酸化剤含有廃液の流路を制御するものである。第2制御部20bを備えることで、酸化剤含有廃液の測定値に基づき、腐食促進成分の濃度を低下させる濃度低下装置16に酸化剤含有廃液を供給できる。
処理システム100では、第2制御部20bは、第2測定装置5による測定値が所定の基準値以下であるとき、酸化剤含有廃液の流路を第1流路14aに切り替え、第2測定装置5による測定値が所定の基準値を超えたとき、酸化剤含有廃液の流路を第2流路14bに切り替える。ここでいう所定の基準値は、第1制御部20aによる判断時に使用される所定の基準値(ORPであれば例えば500mV)と同じ値を使用できる。測定値と所定の基準値との比較により流路を切り替えることで、測定値が所定の基準値以下であるときには腐食が生じにくいと考え、そのまま第1除去装置10で処理できる。一方で、測定値が所定の基準値を超えたときには腐食が生じ易いと考え、濃度低下装置16で酸化剤濃度を低下させた後に第1除去装置10で処理できる。
流路の切り替えは、例えば以下のようにして行われる。第2制御部20bは、第1流路14aに酸化剤含有廃液を流すときには、弁15aを開弁して弁15bを閉弁する。一方で、第2制御部20bは、第2流路14bに酸化剤含有廃液を流すときには、弁15bを開弁して弁15aを閉弁する。
制御装置20は、いずれも図示はしないが、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、I/F(インターフェイス)等を備えて構成される。そして、制御装置20は、ROMに格納されている所定の制御プログラムがCPUによって実行されることにより具現化される。
図10は、第1実施形態の処理方法を示すフローチャートである。第1実施形態の処理方法は、例えば処理システム100(図1参照)において実施できる。そこで、図1を参照しながら、図10の説明を行う。
第1実施形態の除去方法は、添加ステップS1と、第2除去ステップS2と、第2測定ステップS3と、第2判断ステップS4と、流路切替ステップS5と、第1除去ステップS6と、流路切替ステップS7と、濃度低下ステップS8と、第1測定ステップS9と、第1判断ステップS10と、制御ステップS11とを含む。
添加ステップS1は、放射性核種及び塩化物イオンを含む放射性廃液に酸化剤を添加するものである。添加ステップS1により、放射性廃液中の放射性核種が酸化される。添加ステップS1は、例えば第1添加装置2により実行される。
第2除去ステップS2は、添加した酸化剤を酸化剤含有廃液から除去するものである。第2除去ステップS2により、酸化剤に起因する後段での腐食を抑制できる。第2除去ステップS2は、例えば第2除去装置4により実行される。
第2測定ステップS3(測定ステップの一例)は、酸化剤含有廃液での酸化剤の濃度に関する指標値を測定するものである。第2測定ステップS3により、第2除去ステップS2での除去が不十分な結果第2除去装置4の後段に酸化剤が漏れた場合であっても、酸化剤の漏れを検出できる。第2測定ステップS3は、例えば第2測定装置5により実行される。
第2判断ステップS4は、第2測定装置5による測定値が所定の基準値以下であるか否かを判断するものである。第2判断ステップS4により、第2除去装置4の後段への酸化剤の漏れを検出できる。第2判断ステップS4は、例えば第2制御部20bにより実行される。
流路切替ステップS5は、測定値が所定の基準値以下であるとの判断(第2判断ステップS4でのYes)に基づき、第1除去装置10に酸化剤含有廃液を流すように流路を切り替えるものである。流路切替ステップS5は、例えば第2制御部20bにより実行される。具体的には、第2制御部20bは、弁15a,15bを制御して、流路を第1流路14aに切り替える。ただし、第1流路14aに酸化剤含有廃液が流れていた場合には、流路切替ステップS5は行われない。
第1除去ステップS6は、酸化剤含有廃液中の放射性各種を除去するものである。第1除去ステップS6により、酸化剤含有廃液中の放射性核種を除去できる。第1除去ステップS6は、例えば第1除去装置10により実行される。
上記第2判断ステップS4において、測定値が所定の基準値を超えたと判断(第2判断ステップS4でのNo)した場合、流路切替ステップS7が行われる。流路切替ステップS7は、濃度低下装置16に酸化剤含有廃液を流すように流路を切り替えるものである。流路切替ステップS7は、例えば第2制御部20bにより実行される。具体的には、第2制御部20bは、弁15a,15bを制御して、流路を第2流路14bに切り替える。ただし、第2流路14bに酸化剤含有廃液が流れていた場合には、流路切替ステップS7は行われない。
濃度低下ステップS8は、酸化剤含有廃液中の腐食促進成分(処理システム100では酸化剤)の濃度を低下させるものである。濃度低下ステップS8により、酸化剤含有廃液中の腐食促進成分の濃度を低下できる。濃度低下ステップS8は、例えば濃度低下装置16により実行される。
第1測定ステップS9(測定ステップの一例)は、濃度低下装置16において、酸化剤含有廃液での酸化剤の濃度に関する指標値を測定するものである。第1測定ステップS9により、濃度低下装置16での腐食促進成分の濃度低下を確認できる。第1測定ステップS9は、例えば第1測定装置13により実行される。
第1判断ステップS10は、第1測定装置13による測定値が所定の基準値以下であるか否かを判断するものである。第1判断ステップS10により、濃度低下装置16の後段の第1除去装置(処理装置の一例)への酸化剤の漏れを抑制できる。第1判断ステップS10は、例えば第1制御部20aにより実行される。
制御ステップS11は、酸化剤含有廃液に含まれる塩化物イオン及び酸化剤のうちの少なくとも一方である腐食促進成分の酸化剤含有廃液での濃度を低下させる濃度低下装置16を、第1測定ステップS9での測定値に基づいて制御するものである。処理システム100では、一例として腐食促進成分は酸化剤である。制御ステップS11は、例えば第1制御部20aにより実行される。具体的には、第1制御部20aは、測定値が所定の基準値以下であれば(第1判断ステップS10でYes)、弁15cを開弁する。これにより、酸化剤含有廃液は第1除去装置10に供給される。一方で、測定値が所定の基準値を超えていれば(第1判断ステップS10でNo)、弁15cを閉弁する。これにより、散在濃度が所定期の基準値以下になるまで、濃度低下が行われる。
処理システム100及び第1実施形態の処理方法によれば、酸化剤供給後の腐食(特にすき間腐食、孔食等の局部腐食)を抑制できる。具体的には、処理システム100では、第1添加装置2での酸化剤供給後、第2除去装置4において酸化剤の除去が行われる。しかし、意図せず酸化剤が第2除去装置4の後段に漏れた場合であっても、第2除去装置4と第1除去装置10との間に濃度低下装置16を備えることで、例えば第2除去装置4の後段で酸化剤濃度を低下できる。これにより、例えば第1除去装置10の腐食を抑制でき、第1除去装置10を含む処理システム100全体の寿命を長期化できる。
図11は、第2実施形態の処理システム101の系統図である。上記の処理システム100(図1参照)では、放射性廃液中の酸化剤はまず第2除去装置4で除去され、第2除去装置4の後段に漏れた酸化剤は濃度低下装置16で除去された。しかし、図11に示す処理システム101では、放射性廃液は濃度低下装置16に直接供給され、濃度低下装置16で放射性廃液中の酸化剤が除去される。
処理システム101は、混合槽3と濃度低下装置16とを接続する流路14dを備える。従って、酸化剤含有廃液は濃度低下装置16の貯留槽12に流れる。ただし、流路14dは分岐し、貯留槽12A,12B,12Cに対して並列に接続される。貯留槽12Aには流路14d1が接続され、貯留槽12Bには流路14d2が接続され、貯留槽12Cには流路14d3が接続される。流路14d1は弁21aを備え、流路14d2は弁21bを備え、流路14d3は弁21cを備える。詳細は後記するが、第4制御部20dによる弁21a,21b,21cの制御により、貯留槽12A,12B,12Cに対して独立して酸化剤含有廃液が供給される。
処理システム101は、処理システム100(図1参照)と同様に、第3流路14cを備える。ただし、第3流路14cは分岐しており、貯留槽12A,12B,12Cに対して並列に接続される。貯留槽12Aには第3流路14c1が接続され、貯留槽12Bには第3流路14c2が接続され、貯留槽12Cには第3流路14c3が接続される。第3流路14c1は弁22aを備え、第3流路14c2は弁22bを備え、第3流路14c3は弁22cを備える。従って、処理システム101は、貯留槽12A,12B,12Cから第1除去装置10(後段の処理装置)への酸化剤含有廃液の流通をそれぞれ独立して制御する弁22a,22b,22cを備える。弁22a,22b,22cは、濃度低下装置16に含まれる。詳細は後記するが、第1制御部20aによる弁22a,22b,22cの制御により、貯留槽12A,12B,12Cからそれぞれ独立して酸化剤含有廃液が排出される。
処理システム101は、処理システム100(図1参照)と同様に、第2添加装置11を備える。ただし、第2添加装置11は、貯留槽12A,12B,12C毎に無機酸を供給可能に構成される。具体的には、処理システム101は、第2添加装置11と貯留槽12とを接続する流路17を備える。流路17は、第2添加装置11と貯留槽12Aとを接続する流路17aと、第2添加装置11と貯留槽12Bとを接続する流路17bと、第2添加装置11と貯留槽12Cとを接続する流路17cとを含む。流路17aは弁11aを備え、流路17bは弁11bを備え、流路17cは弁11cを備える。弁11a,11b,11cは、濃度低下装置16に含まれる。
処理システム101は、処理システム100(図1参照)と同様に、第1測定装置13を備える。ただし、処理システム101では、第1測定装置13は、貯留槽12A,12B,12C毎に備えられる。貯留槽12Aには第1測定装置13Aが備えられ、第1測定装置13Aは貯留槽12Aに貯留された酸化剤含有廃液での指標値を測定する。貯留槽12Bには第1測定装置13Bが備えられ、第1測定装置13Bは貯留槽12Bに貯留された酸化剤含有廃液での指標値を測定する。貯留槽12Cには第1測定装置13Cが備えられ、第1測定装置13Cは貯留槽12Cに貯留された酸化剤含有廃液での指標値を測定する。第1測定装置13を備えることで、貯留槽12A,12B,12Cにおいて濃度測定及び濃度低下操作の双方を行うことができる。これにより、濃度測定に対する濃度低下操作の時間遅れを短くできる。
制御装置20は、処理システム100(図1参照)と同様に、第1制御部20aを備える。ただし、処理システム101では、第1制御部20aは、第1測定装置13(測定装置18の一例)による測定値に基づき、濃度低下装置16を構成する弁22a,22b,22cの開閉を制御する。具体的には、処理システム101では、第1制御部20aは、第1測定装置13による測定値が所定の基準値以下になった貯留槽12に繋がる弁22a,22b,22cを開弁する。これにより、濃度低下装置16によって酸化剤濃度を低下させた酸化剤含有廃液を第1除去装置10に供給できる。
制御装置20は、貯留槽12毎に酸化剤含有廃液を貯留できるように弁21a,21b,21cを切り替える第4制御部20dを備える(第3制御部20cについては、図12を参照しながら後記する)。第4制御部20dにより、1つの貯留槽12が所定水位になるまで当該1つの貯留槽12に酸化剤含有廃液を供給し、所定推移に達したら異なる貯留槽12に酸化剤含有廃液を供給できる。
制御装置20は、貯留槽12毎にpH調整剤を添加できるように弁11a,11b,11cを切り替える第5制御部20eを備える。第5制御部20eにより、貯留槽12毎に任意のタイミングでpH調整剤を添加できる。
処理システム101では、第4制御部20dによる弁21a,21b,21cの切り替えにより、貯留槽12毎に酸化剤含有廃液が供給される。酸化剤含有廃液の供給中、後段の弁22a,22b,22cは閉弁している。1つの貯留槽12(例えば貯留槽12A)において酸化剤含有廃液の水位が所定水位になれば、第4制御部20dは弁21a,21b,21cを切り替え、異なる貯留槽12(例えば貯留槽12B)に酸化剤含有廃液の供給を切り替える。これにより、異なる貯留槽12への酸化剤含有廃液の供給が開始される。
酸化剤含有廃液の水位が所定水位となった貯留槽12(例えば貯留槽12A)では、第2添加装置11によるpH調整剤が添加される。pH調整剤の添加は、第5制御部20eにより、貯留槽12毎に行われる。添加後、酸化剤を分解除去するため、所定時間の待機が行われる。所定時間経過後、第1測定装置13(例えば第1測定装置13A)による指標値の測定が行われる。測定の結果、測定値が所定の基準値以下であれば、第1制御部20aは弁22a,22b,22cのうちの当該貯留槽12に対応する弁(例えば弁22a)を開弁し、貯留槽12に貯留された酸化剤含有廃液を第1除去装置10に流す。一方で、測定値が所定の基準値を超えていれば、更に所定時間待機し、所定時間経過後に再度測定が行われる。待機中、適宜追加のpH調整剤を添加できる。そして、測定値が所定の基準値以下になれば、第1制御部20aは弁22a,22b,22cのうちの当該貯留槽12に対応する弁を開弁し、貯留槽12に貯留された酸化剤含有廃液を第1除去装置10に流す。これらの操作を貯留槽12A,12B,12Cについてそれぞれ繰り返すことで、連続的に放射性廃液を処理できる。
処理システム101によれば、放射性廃液の供給を停止させることなく、放射性廃液を連続的に処理できる。
図12は、第3実施形態の処理システム102の系統図である。上記の処理システム100,101は、腐食促進成分である酸化剤の濃度を低下させた。しかし、図12に示す処理システム102は、腐食促進成分である塩化物イオンの濃度を低下させる。ただし、必要に応じて更に酸化物の濃度を低下させてもよい。塩化物イオン濃度の調整について、図13を参照して説明する。
図13は、5ppm次亜塩素酸ナトリウムを含む溶液に500mVの電位を付与した場合における100分間での電流値の変化を、塩化物イオン濃度に対してプロットしたグラフである。図13に示すように、塩化物イオン濃度が高くなるほど電流値の変化も大きくなる。通常、上記のように、腐食電流が2mA以下であれば、生じる腐食は金属の耐久性に影響がない程度の腐食である。従って、塩化物イオン濃度が5000ppm以下であれば、腐食が生じたとしても金属の耐久性に影響がない程度の腐食となる。従って、5000ppm以下になるように塩化物イオン濃度を調整することが好ましい。
図12に戻って、処理システム102は、濃度低下装置16は、第1添加装置2の前段に設置され、放射性廃液を濃縮する濃縮装置1と、濃縮装置1に繋がる第4流路30aと、濃縮装置1をバイパスする第5流路30bとを備える。第4流路30aは弁31aを備える。第5流路30bは弁31bを備える。また、処理システム102は、第2除去装置4、第2測定装置5(測定装置18に含まれる)及び制御装置20を備える。
制御装置20は、処理システム100,101と同様に、測定装置18による測定値に基づいて濃度低下装置16を制御する。ただし、制御装置20は、第3制御部20cを備える。第3制御部20cは、測定装置18に含まれる第2測定装置5による測定値に基づき、第4流路30a又は第5流路30bのいずれかに流路を制御するものである。第3制御部20cを備えることで、第2測定装置5による測定値に基づき、濃縮装置1をバイパスさせるように制御できる。
第3制御部20cは、第2測定装置5による測定値が所定の基準値を超えたとき、放射性廃液を第4流路30aに流すように流路を切り替え、第2測定装置5による測定値が所定の基準値以下であるとき、放射性廃液を第5流路30bに流すように流路を切り替える。ここでいう所定の基準値は、第1制御部20aによる判断時に使用される所定の基準値(ORPであれば例えば500mV)と同じ値を使用できる。流路の切り替えは、弁31a,31bの開閉により行われる。このようにすることで、測定値が所定の基準値を超えたときには濃縮装置1をバイパスさせることができる。これにより、濃縮によって高くなった塩化物イオン濃度を例えば5000ppm以下にでき、塩化物イオンの高濃度化に起因する腐食を抑制できる。一方で、測定値が所定の基準値以下のときには濃縮装置1により放射性廃液を濃縮できる。これにより、第1除去装置10での放射性廃液の処理量を削減できる。
なお、濃縮装置1に供給される放射性廃液の塩化物イオン濃度が所定の目標値(例えば5000ppm)を超える場合、濃縮装置1をバイパスさせても塩化物イオン濃度を所定の目標値以下に調整できない。従って、この場合には、例えば上記の処理システム100,101により、放射性廃液を処理できる。
図14は、第4実施形態の処理システム103の系統図である。処理システム103は、酸化剤として次亜塩素酸等に代えて過酸化水素を使用し、pH調整剤として無機塩基を使用したこと以外は、上記の処理システム100と同じである。
酸化剤である過酸化水素は、例えば活性炭を含んで構成される第2除去装置4において分解除去される。そして、処理システム100と同様に、第2測定装置5による測定値と所定の基準値との比較に基づき、酸化剤含有廃液は貯留槽12に供給される。貯留槽12では、酸化剤の分解除去のため、pH調整剤として無機塩基(例えば水酸化ナトリウム。無機塩基塩でもよい)が添加される。無機塩基の添加量は、例えば、pHを5以上12以下、好ましくはpH11程度にできる程度である。酸化剤含有廃液のpHをこの範囲にすることで、過酸化水素を分解できる。
処理システム103によれば、酸化剤として過酸化水素を使用した場合であっても、酸化剤を分解除去できる。
図15は、第5実施形態の処理システム104の系統図である。処理システム104は、酸化剤として次亜塩素酸等に代えてオゾンを使用したこと以外は、上記の処理システム100と同じである。
酸化剤であるオゾンは、例えば活性炭を含んで構成される第2除去装置4において分解除去される。そして、処理システム100と同様に、第2測定装置5による測定値と例えば所定の基準値との比較に基づき、酸化剤含有廃液は貯留槽12に供給される。貯留槽12では、酸化剤の分解除去のため、pH調整剤として無機酸が添加される。添加する無機酸は、例えば、塩酸、硫酸、リン酸塩(例えばリン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、これらの水溶液の混合物等)である。ただし、無機酸の添加量は、処理システム100とは異なり、例えば、pHを2以上6以下、好ましくは3以上5以下にできる程度である。酸化剤含有廃液のpHをこの範囲にすることで、オゾンを分解できる。
処理システム104によれば、酸化剤としてオゾンを使用した場合であっても、酸化剤を分解除去できる。