以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
<電源システムの構成>
図1および図2を参照して、本発明の実施形態に係る電源システム1の構成について説明する。
図1は、電源システム1の概略構成を示す模式図である。
電源システム1は、具体的には、電動車両に搭載され、車両内の各装置に電力を供給するために用いられるシステムである。
なお、以下で説明する電源システム1は、あくまでも本発明に係る電源システムの一例であり、後述するように、本発明に係る電源システムの構成は電源システム1の構成に特に限定されない。
具体的には、図1に示されるように、電源システム1は、駆動用モータ30と、駆動用モータ30に供給される電力を発電する燃料電池10と、駆動用モータ30に供給される電力を蓄電する二次電池20と、二次電池20の充放電を制御する制御装置100とを備える。さらに、電源システム1は、燃料電池コンバータ41と、二次電池コンバータ42と、インバータ43と、ナビゲーション装置50と、二次電池センサ60とを備える。なお、本明細書において、充放電は、充電または放電の少なくとも一方を意味する。つまり、後述する充放電制御は、充電のみを実行するものも含む。
電源システム1が搭載される車両(以下、単に車両とも呼ぶ)は、燃料電池10または二次電池20の少なくとも一方から供給される電力を用いて駆動される駆動用モータ30を駆動源として走行する。詳細には、主として燃料電池10により発電される電力が駆動用モータ30の駆動に用いられ、例えば、駆動用モータ30の駆動に要求される電力に対して燃料電池10により発電される電力が不足する場合に二次電池20に蓄電される電力が利用される。
電源システム1において、燃料電池10は、燃料電池コンバータ41を介してインバータ43と接続されている。二次電池20は、二次電池コンバータ42を介してインバータ43と接続されている。二次電池20および二次電池コンバータ42は、燃料電池10および燃料電池コンバータ41に対して並列にインバータ43と接続されている。インバータ43は、駆動用モータ30と接続されており、当該駆動用モータ30が駆動輪9と接続されている。
燃料電池10は、燃料ガス(具体的には、水素ガス)と酸化ガス(具体的には、空気)とを反応させることにより発電する電池である。具体的には、燃料電池10は、水素タンク(図示省略)と接続されており、水素タンクには、例えば、燃料電池10に供給される高圧水素が充填されている。そして、モータポンプ(図示省略)等により水素タンクから燃料電池10へ水素ガスが供給されるようになっている。また、燃料電池10には、コンプレッサ(図示省略)等により酸化ガスとしての空気が供給される。燃料電池10への水素ガスおよび空気の供給量が制御されることによって、燃料電池10の出力が制御される。
燃料電池コンバータ41は、燃料電池10により発電される電力を昇圧可能な電力変換装置である。例えば、燃料電池コンバータ41は、いわゆるチョッパ方式の回路を含むDCDCコンバータであり、当該回路に設けられるスイッチング素子の動作が制御されることによって、燃料電池コンバータ41による電力変換が制御される。燃料電池10により発電される電力は、燃料電池コンバータ41およびインバータ43を介して駆動用モータ30に供給され、駆動用モータ30の駆動に利用される。また、燃料電池10により発電される電力は、燃料電池コンバータ41および二次電池コンバータ42を介して二次電池20に供給され、二次電池20の充電にも利用され得る。
二次電池20は、電力を充放電可能な電池である。二次電池20としては、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池または鉛蓄電池が用いられるが、これら以外の電池が用いられてもよい。
二次電池コンバータ42は、二次電池20に蓄電される電力を昇圧可能であり、さらに燃料電池コンバータ41またはインバータ43から供給される電力を降圧可能な電力変換装置である。例えば、二次電池コンバータ42は、いわゆるチョッパ方式の回路を含むDCDCコンバータであり、当該回路に設けられるスイッチング素子の動作が制御されることによって、二次電池コンバータ42による電力変換が制御される。二次電池20に蓄電される電力は、二次電池コンバータ42およびインバータ43を介して駆動用モータ30に供給され、駆動用モータ30の駆動に利用される。なお、二次電池20に蓄電される電力は車両内の補機に供給されてもよく、その場合、例えば、二次電池20と補機との間には、二次電池20に蓄電される電力を降圧して補機に供給可能なDCDCコンバータが設けられる。
駆動用モータ30は、動力を出力可能であり、駆動用モータ30から出力される動力は、駆動輪9に伝達される。駆動用モータ30としては、例えば、多相交流式(例えば、三相交流式)のモータが用いられる。また、駆動用モータ30は、車両の減速時に回生駆動されて駆動輪9の回転エネルギを用いて発電する発電機としての機能(つまり、回生機能)を有してもよい。
インバータ43は、燃料電池コンバータ41または二次電池コンバータ42から供給される直流電力を交流電力に変換して駆動用モータ30に供給可能であり、さらに駆動用モータ30により発電される交流電力を直流電力に変換して二次電池コンバータ42に供給可能な電力変換装置である。インバータ43は、例えば、多相ブリッジ回路(例えば、三相ブリッジ回路)を含み、当該回路に設けられるスイッチング素子の動作が制御されることによって、インバータ43による電力変換が制御される。駆動用モータ30により発電される電力は、インバータ43および二次電池コンバータ42を介して二次電池20に供給され、二次電池20の充電に利用される。
ナビゲーション装置50は、ユーザによる入力操作に応じて車両の現在位置からユーザが所望する目的地までのルートを案内する装置である。また、ナビゲーション装置50は、情報を視覚的に表示する機能を有し、ルート案内に関する情報であるナビゲーション情報(例えば、車両の現在位置、車両が現在走行中のルートを含む案内の対象となる走行ルート、目的地の位置、車両の現在位置から目的地までの走行ルート上での距離および目的地までの到達時間等)を表示する。
図2は、ナビゲーション情報の一例を概略的に示す模式図である。具体的には、図2は、ナビゲーション装置50により表示されるナビゲーション情報の表示例に相当し、図2には、ナビゲーション情報として、車両の出発地点P1、目的地P2、現在位置C1および走行ルートL1が示されている。これらのナビゲーション情報は、ナビゲーション装置50から制御装置100に出力され、後述するように、制御装置100が行う処理に利用される。なお、ナビゲーション装置50は、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信すること等によって車両の現在位置を特定し得る。
二次電池センサ60は、二次電池20の各種状態量を検出し、制御装置100へ出力する。具体的には、二次電池センサ60は、二次電池20のSOCを検出する。
制御装置100は、電源システム1における電力の供給を制御する。
例えば、制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)およびCPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等で構成される。
具体的には、制御装置100は、燃料電池10、燃料電池コンバータ41、二次電池コンバータ42およびインバータ43の動作を制御することによって、電源システム1における電力の供給を制御する。
例えば、制御装置100は、燃料電池10および二次電池20から駆動用モータ30への電力の供給を制御することによって、駆動用モータ30の出力を制御することができる。
また、例えば、制御装置100は、燃料電池10から二次電池20への電力の供給を制御すること等によって、二次電池20の充放電を制御することができる。
また、制御装置100は、ナビゲーション装置50および二次電池センサ60と通信することによって、これらの各装置から出力される各種情報を取得する。このように得られる情報は、電源システム1における電力の供給の制御に関する処理に利用される。
制御装置100は、上述したように、電源システム1に搭載される各装置と通信を行う。制御装置100と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。
なお、本実施形態に係る制御装置100が有する機能は複数の制御装置により少なくとも部分的に分割されてもよく、複数の機能が1つの制御装置によって実現されてもよい。制御装置100が有する機能が複数の制御装置により少なくとも部分的に分割される場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。
上記のように、制御装置100は、二次電池20の充放電を制御する。具体的には、制御装置100は、通常時に、二次電池20のSOCが第1目標残存容量(以下、第1目標SOCとも呼ぶ)に近づくように二次電池20の充放電を制御する第1充放電制御を実行する。第1目標SOCは、二次電池20を健全な状態で持続的に使用するためのSOCである。なお、通常時は、後述するように所定の条件が満たされて第2充放電制御が実行されている時以外の時を基本的に意味する。
ここで、制御装置100は、所定の条件が満たされた場合、二次電池20のSOCが第1目標残存容量より高い第2目標残存容量(以下、第2目標SOCとも呼ぶ)に近づくように二次電池20の充放電を制御する第2充放電制御を実行する。それにより、二次電池20の電力の枯渇をより適切に抑制することが可能となる。第2目標SOCは、後述するように、具体的には、要求駆動力が閾値より高くなる高負荷走行が電源システム1の再起動から所定時間内に行われた場合において燃料電池10の立ち上がり時間中に駆動用モータ30に要求駆動力を出力させるために必要な電力量に対応するSOCである。このような、制御装置100により行われる第2充放電制御に関する処理の詳細については、後述にて説明する。
<電源システムの動作>
続いて、図3~図5を参照して、本発明の実施形態に係る電源システム1の動作について説明する。なお、以下では、電源システム1の制御装置100が行う処理の流れの例として、第1の例および第2の例をこの順に説明する。
[第1の例]
まず、図3および図4を参照して、制御装置100が行う処理の流れの第1の例について説明する。
図3は、制御装置100が行う処理の流れの第1の例を示すフローチャートである。図3に示される第1の例に係る制御フローは、具体的には、制御装置100により行われる第2充放電制御に関する処理の流れであり、電源システム1の起動後(例えば、燃料電池10の立ち上がり時間経過後)に開始される。なお、図3に示される第1の例に係る制御フローは、第1充放電制御が行われている状態で開始される。
図3に示される第1の例に係る制御フローが開始されると、まず、ステップS501において、制御装置100は、車両の目的地を示す情報を取得する。
例えば、制御装置100は、ナビゲーション装置50から出力されるナビゲーション情報に含まれる車両の目的地を示す情報を取得する。なお、目的地を示す情報の取得は、新たな目的地が設定されたときに行われてもよく、車両の走行中において定期的または不定期に行われてもよい。
次に、ステップS502において、制御装置100は、車両が目的地に停車した場合における電源システム1の再起動から所定時間内に高負荷走行が行われる可能性が基準より高いか否かを予測する。なお、以下では、電源システム1の再起動から所定時間内に高負荷走行が行われる可能性を、高負荷走行可能性とも呼ぶ。車両が目的地に停車した場合における高負荷走行可能性が基準より高いと予測された場合(ステップS502/YES)、ステップS503に進む。一方、車両が目的地に停車した場合における高負荷走行可能性が基準以下であると予測された場合(ステップS502/NO)、ステップS501に戻り、ステップS501およびステップS502の処理が繰り返される。
なお、高負荷走行は、要求駆動力(つまり、車両の走行に要求される駆動力)が閾値より高くなる走行を意味する。当該閾値は、車両の通常負荷走行または低負荷走行時の要求駆動力の平均値よりも高い値に設定される。なお、当該閾値は、車両の仕様等に応じて適宜異なっていてもよい。また、上記の所定時間は、電源システム1の再起動が行われた時点から少なくとも燃料電池10の立ち上がりが完了するまでの時間を意味する。
ここで、制御装置100は、車両の目的地を示す情報に基づいて、ステップS502の予測処理を行う。
例えば、制御装置100は、車両の目的地が山岳路上の地点であることをもって、車両が目的地に停車した場合における高負荷走行可能性が基準より高いと予測する。
なお、制御装置100は、車両の目的地が山岳路上の地点以外の他の地点であることをもって、車両が目的地に停車した場合における高負荷走行可能性が基準より高いと予測してもよい。
例えば、制御装置100は、車両の目的地が高速道路上の地点(例えば、インターチェンジまたはサービスエリア等)であることをもって、車両が目的地に停車した場合における高負荷走行可能性が基準より高いと予測してもよい。また、例えば、制御装置100は、車両の目的地が山岳路上の地点または高速道路上の地点の近傍の地点であることをもって、車両が目的地に停車した場合における高負荷走行可能性が基準より高いと予測してもよい。
なお、ステップS502の予測処理における基準は、例えば、50%等の基準値であってもよく、数値以外のものであってもよい。当該基準は、電源システム1の再起動直後の燃料電池10の立ち上がり時間における二次電池20の電力の枯渇が抑制される確実性を向上させる観点と第2充放電制御が不要に実行される頻度を低減する観点とのバランスから適宜設定され得る。具体的には、上記基準を低く設定するほど、電源システム1の再起動直後の燃料電池10の立ち上がり時間における二次電池20の電力の枯渇が抑制される確実性を向上させる効果が増大する一方で、第2充放電制御が不要に実行される頻度も増大する。また、上記判定における基準を高く設定するほど、電源システム1の再起動直後の燃料電池10の立ち上がり時間における二次電池20の電力の枯渇が抑制される確実性を向上させる効果が減少する一方で、第2充放電制御が不要に実行される頻度も減少する。
ステップS502でYESと判定された場合、ステップS503において、制御装置100は、目的地までの到達時間が基準時間を下回ったか否かを判定する。目的地までの到達時間が基準時間を下回ったと判定された場合(ステップS503/YES)、ステップS504に進む。一方、目的地までの到達時間が基準時間に達していないと判定された場合(ステップS503/NO)、ステップS503の処理が繰り返される。
例えば、制御装置100は、ナビゲーション情報に含まれる車両の現在位置から目的地までの到達時間を示す情報に基づいて、ステップS503の予測処理を行うことができる。
ここで、基準時間は、第2充放電制御を開始した時点から二次電池20のSOCが第2目標SOCに到達するまでにかかる時間として十分な時間に設定される。例えば、基準時間は、第2充放電制御を開始した時点で二次電池20のSOCが第1充放電制御の実行中に取り得る最も低いSOCであった場合において、第2充放電制御を開始した時点から二次電池20のSOCが第2目標SOCに到達するまでにかかる時間として想定される時間よりも長い時間に設定される。
ステップS503でYESと判定された場合、ステップS504において、制御装置100は、第2充放電制御を開始する。
上述したように、第2充放電制御では、二次電池20のSOCが第1目標SOCより高い第2目標SOCに近づくように二次電池20の充放電が制御される。それにより、第2充放電制御を実行することにより、二次電池20のSOCを、第1充放電制御におけるSOCの目標値である第1目標SOCと比較して高いSOCである第2目標SOCの近傍の値まで上昇させることができる。
ところで、上述したように、電源システム1の再起動直後(つまり、車両の再発進直後)には、燃料電池10の立ち上がり時間が存在するので、その時間において、二次電池20に蓄電されている電力を用いて駆動用モータ30を駆動する必要が生じる。ゆえに、電源システム1の再起動から所定時間内に高負荷走行が行われた場合、電源システム1が再起動される際の二次電池20のSOCが第1目標SOC程度しかないとすると、二次電池20の電力が枯渇してしまうおそれがある。よって、電源システム1の再起動から所定時間内に高負荷走行が行われた場合であっても、電源システム1が再起動されるまでに二次電池20のSOCを第2目標SOCの近傍の値まで上昇させておくことにより、燃料電池10の立ち上がり時間に二次電池20の電力が枯渇することを抑制することができる。
ここで、電源システム1の再起動直後の燃料電池10の立ち上がり時間における二次電池20の電力の枯渇を適切に抑制する観点では、第2目標SOCは、高負荷走行が電源システム1の再起動から所定時間内に行われた場合において燃料電池10の立ち上がり時間中に駆動用モータ30に要求駆動力を出力させるために必要な電力量に対応するSOCであることが好ましい。
また、電源システム1の再起動直後の燃料電池10の立ち上がり時間における二次電池20の電力の枯渇をさらに適切に抑制する観点では、制御装置100は、電源システム1の再起動から所定時間内に行われる高負荷走行における要求駆動力と関連するパラメータに基づいて、第2目標SOCを変化させることが好ましい。具体的には、制御装置100は、上記パラメータに基づいて予測される上記要求駆動力が大きいほど、第2目標SOCを大きくすることが好ましい。
例えば、制御装置100は、上記パラメータとして、車両の目的地またはその近傍における道路に関する各種情報(例えば、勾配、制限速度、摩擦係数、起伏の程度、信号機に関する情報または渋滞情報等)に基づいて、第2目標SOCを変化させてもよい。また、例えば、制御装置100は、上記パラメータとして、ドライバのアクセル操作量の傾向を示すパラメータ(例えば、ドライバがアクセルを強く踏み込む傾向があるか否かを示すパラメータ)に基づいて、第2目標SOCを変化させてもよい。
上記のように、図3に示される制御フローでは、目的地までの到達時間が基準時間を下回った時点で第2充放電制御が開始される。ゆえに、制御装置100は、車両が当該車両の目的地に到着する前に二次電池20のSOCが第2目標SOCに到達するように、第2充放電制御を実行することができる。それにより、車両が当該車両の目的地に到着してドライバの操作による電源システム1の停止要求が生じる時点までに二次電池20のSOCを第2目標SOCに適切に到達させることができる。ゆえに、ドライバの操作による電源システム1の停止要求が生じた時点以降に第2充放電制御が継続して実行される(つまり、燃料電池10の発電電力を用いた二次電池20の充電が行われる)ことを抑制することができる。
次に、図3に示される制御フローは終了する。
なお、第1の例では、第2充放電制御は、例えば、電源システム1が停止することをトリガとして終了する。また、電源システム1の再起動後には、例えば、燃料電池10の立ち上がり時間中には目標SOCを用いた二次電池20の充放電制御は行われず、当該時間経過後に第1充放電制御が開始される。
ここで、図4を参照して、図3に示される制御フローが実行される場合における各種状態量の推移の一例について説明する。
図4は、電源システム1が停止する前後に亘る要求駆動力および二次電池20のSOCの推移の一例を示す図である。
図4に示される例は、時刻T1以前の時点において、車両が目的地に停車した場合における高負荷走行可能性が基準より高いと予測され、時刻T1において、目的地までの到達時間が基準時間を下回ったと判定された場合の例に相当する。
時刻T1までの間、第1充放電制御が実行された状態で車両が走行しているので、図4に示されるように、二次電池20のSOCは、第1目標SOCの近傍の値に維持されている。そして、時刻T1において、第2充放電制御が開始されることに伴って、二次電池20のSOCが上昇し始め、時刻T1より後の時刻T2において、二次電池20のSOCが第2目標SOCに到達する。その後、時刻T3において、車両が目的地に到着して停車し、ドライバの操作により電源システム1が停止する。ゆえに、図4に示されるように、時刻T3において、車両が停車することに伴って要求駆動力が0[N]となっている。
そして、時刻T3より後の時刻T4において、車両が再発進することに伴い電源システム1の再起動が行われる。ここで、図4に示される例では、電源システム1の再起動が行われる時刻T4の直後において、走行状態が高負荷走行に相当する程度に要求駆動力が高い値F0となっている。ところで、二次電池20のSOCは、第2充放電制御が実行されることによって、時刻T4において、第2目標SOCの近傍の値まで上昇している。ゆえに、電源システム1の再起動が行われる時刻T4の直後の燃料電池10の立ち上がり時間において、二次電池20に蓄電されている電力を用いて駆動用モータ30を駆動することに起因して二次電池20の電力が枯渇することを抑制することができる。
上記のように、図3を参照して説明した第1の例では、制御装置100は、車両の目的地を示す情報に基づいて、高負荷走行が電源システム1の再起動から所定時間内に行われる可能性(つまり、高負荷走行可能性)が基準より高いか否かを予測する。そして、制御装置100は、所定の条件として、高負荷走行が電源システム1の再起動から所定時間内に行われる可能性が基準より高いと予測された場合、第2充放電制御を実行する。それにより、車両が目的地に停車した場合において電源システム1の再起動から所定時間内に高負荷走行が行われる可能性が基準より高いときに、第2充放電制御を実行することができる。ゆえに、車両が目的地に停車した後の電源システム1の再起動から所定時間内に高負荷走行が行われた場合であっても、電源システム1が再起動されるまでに二次電池20のSOCを第2目標SOCの近傍の値まで上昇させておくことができるので、燃料電池10の立ち上がり時間に二次電池20の電力が枯渇することを抑制することができる。
[第2の例]
次に、図5を参照して、制御装置100が行う処理の流れの第2の例について説明する。
図5を参照して説明する第2の例は、上述した第1の例と比較して、高負荷走行可能性が基準より高いか否かの予測処理において車両の走行ルートを示す情報を用いる点が異なる。
図5は、制御装置100が行う処理の流れの第2の例を示すフローチャートである。図5に示される第2の例に係る制御フローは、上述した第1の例に係る制御フローと同様に、具体的には、制御装置100により行われる第2充放電制御に関する処理の流れであり、電源システム1の起動後(例えば、燃料電池10の立ち上がり時間経過後)に開始される。なお、図5に示される第2の例に係る制御フローは、上述した第1の例に係る制御フローと同様に、第1充放電制御が行われている状態で開始される。
図5に示される第2の例に係る制御フローが開始されると、まず、ステップS601において、制御装置100は、車両の走行ルートを示す情報を取得する。
例えば、制御装置100は、ナビゲーション装置50から出力されるナビゲーション情報に含まれる車両の走行ルートを示す情報を取得する。
次に、ステップS602において、制御装置100は、車両が走行ルート上で停車した場合における電源システム1の再起動から所定時間内に高負荷走行が行われる可能性(つまり、高負荷走行可能性)が基準より高いか否かを予測する。車両が走行ルート上で停車した場合における高負荷走行可能性が基準より高いと予測された場合(ステップS602/YES)、ステップS603に進む。一方、車両が走行ルート上で停車した場合における高負荷走行可能性が基準以下であると予測された場合(ステップS602/NO)、ステップS601に戻り、ステップS601およびステップS602の処理が繰り返される。
ここで、制御装置100は、車両の走行ルートを示す情報に基づいて、ステップS602の予測処理を行う。
例えば、制御装置100は、車両の走行ルートが山岳路であることをもって、車両が走行ルート上で停車した場合における高負荷走行可能性が基準より高いと予測する。
なお、制御装置100は、車両の走行ルートが山岳路以外の他のルートであることをもって、車両が走行ルート上で停車した場合における高負荷走行可能性が基準より高いと予測してもよい。
例えば、制御装置100は、車両の走行ルートが高速道路であることをもって、車両が走行ルート上で停車した場合における高負荷走行可能性が基準より高いと予測してもよい。
また、制御装置100は、車両の走行ルートにおける現在位置と当該現在位置よりも先方の位置との間で道路の種類が異なる場合、走行ルートにおける現在位置よりも先方の位置での道路の種類に基づいて、ステップS602の予測処理を行ってもよい。例えば、走行ルートにおける現在位置での道路の種類が一般道であっても、走行ルートにおける現在位置よりも先方の位置での道路の種類が高速道路であることをもって、車両が走行ルート上で停車した場合における高負荷走行可能性が基準より高いと予測してもよい。
なお、ステップS602の予測処理における基準は、上述した第1の例に係る制御フローにおけるステップS502の予測処理と同様に、電源システム1の再起動直後の燃料電池10の立ち上がり時間における二次電池20の電力の枯渇が抑制される確実性を向上させる観点と第2充放電制御が不要に実行される頻度を低減する観点とのバランスから適宜設定され得る。
ステップS602でYESと判定された場合、ステップS603において、制御装置100は、第2充放電制御を開始する。
次に、図5に示される制御フローは終了する。
なお、第2の例では、第1の例と同様に、第2充放電制御は、例えば、電源システム1が停止することをトリガとして終了し、電源システム1の再起動後において、例えば、燃料電池10の立ち上がり時間経過後に第1充放電制御が開始される。
上記のように、図5を参照して説明した第2の例では、制御装置100は、車両の走行ルートを示す情報に基づいて、高負荷走行が電源システム1の再起動から所定時間内に行われる可能性(つまり、高負荷走行可能性)が基準より高いか否かを予測する。そして、制御装置100は、所定の条件として、高負荷走行が電源システム1の再起動から所定時間内に行われる可能性が基準より高いと予測された場合、第2充放電制御を実行する。それにより、車両が、高負荷走行が予想される山岳路または高速道路等の走行ルート上で停車した場合における電源システム1の再起動から所定時間内に高負荷走行が行われる可能性が基準より高いときに、第2充放電制御を実行することができる。ゆえに、車両が走行ルート上で停車した後の電源システム1の再起動から所定時間内に高負荷走行が行われた場合であっても、電源システム1が再起動されるまでに二次電池20のSOCを第2目標SOCの近傍の値まで上昇させておくことができるので、燃料電池10の立ち上がり時間に二次電池20の電力が枯渇することを抑制することができる。
上記では、図3および図5に示される各制御フローを参照して、制御装置100が行う処理の流れの例として第1の例および第2の例を説明したが、制御装置100が行う処理は、これらの例に特に限定されない。
例えば、第1の例では、目的地までの到達時間が基準時間を下回った時点で第2充放電制御が開始され、第2の例では、高負荷走行可能性が基準より高いと予測された時点で第2充放電制御が開始されるが、第2充放電制御の開始タイミングは、これらの例に限定されない。例えば、第2充放電制御は、高負荷走行可能性が基準より高いと予測された後、車両が停車した時点で開始されてもよい。なお、この場合、ドライバの操作による電源システム1の停止要求が生じた時点以降において、二次電池20のSOCを第2目標SOCに到達させるまでの間、第2充放電制御が継続して実行されてもよい(つまり、燃料電池10の発電電力を用いた二次電池20の充電が行われてもよい)。
また、例えば、第1の例および第2の例では、高負荷走行可能性が基準より高いか否かが予測され、高負荷走行可能性が基準より高いと予測された場合に第2充放電制御が実行されたが、このような予測によらずに第2充放電制御が実行されてもよい。例えば、制御装置100は、高負荷走行可能性が基準より高いか否かの予測を行わず、所定の条件として、車両が停車した場合に、第2充放電制御を実行してもよい。
<電源システムの効果>
続いて、本発明の実施形態に係る電源システム1の効果について説明する。
本実施形態に係る電源システム1では、制御装置100は、二次電池20のSOCが第1目標SOCに近づくように二次電池20の充放電を制御する第1充放電制御を実行し、所定の条件が満たされた場合、二次電池20のSOCが第1目標SOCより高い第2目標SOCに近づくように二次電池20の充放電を制御する第2充放電制御を実行する。ゆえに、第2充放電制御を実行することによって、二次電池20のSOCを、第1充放電制御におけるSOCの目標値である第1目標SOCと比較して高いSOCである第2目標SOCの近傍の値まで上昇させることができる。それにより、電源システム1の再起動から所定時間内に高負荷走行が行われた場合であっても、電源システム1が再起動されるまでに二次電池20のSOCを第2目標SOCの近傍の値まで上昇させておくことにより、燃料電池10の立ち上がり時間に二次電池20の電力が枯渇することを抑制することができる。よって、燃料電池10および二次電池20を備える車両の電源システム1において、二次電池20の電力の枯渇をより適切に抑制することができる。
さらに、本実施形態に係る電源システム1によれば、二次電池20の容量を増大させることなく、電源システム1の再起動直後の燃料電池10の立ち上がり時間における二次電池20の電力の枯渇を抑制することができるので、電源システム1の重量の増大、コストの増大および電費の悪化を抑制することができる。
さらに、本実施形態に係る電源システム1によれば、第1充放電制御におけるSOCの目標値である第1目標SOCを増大させることなく、電源システム1の再起動直後の燃料電池10の立ち上がり時間における二次電池20の電力の枯渇を抑制することができる。ここで、例えば、第2充放電制御を実行せずに第1充放電制御におけるSOCの目標値を従来よりも高くする場合には、二次電池20のSOCが従来よりも基本的に常時高くなってしまうので、駆動用モータ30の回生機能を適切に働かすことが困難な状況が生じるおそれや二次電池20の劣化が促進されるおそれがある。ゆえに、本実施形態に係る電源システム1では、このような問題を回避しつつ、電源システム1の再起動直後の燃料電池10の立ち上がり時間における二次電池20の電力の枯渇を抑制することができる。
また、本実施形態に係る電源システム1では、第2目標SOCは、高負荷走行が電源システム1の再起動から所定時間内に行われた場合において燃料電池10の立ち上がり時間中に駆動用モータ30に要求駆動力を出力させるために必要な電力量に対応するSOCであることが好ましい。それにより、燃料電池10の立ち上がり時間において、二次電池20に蓄電されている電力を用いて駆動用モータ30を駆動することに起因して二次電池20の電力が枯渇することを適切に抑制することができる。
また、本実施形態に係る電源システム1では、制御装置100は、所定の条件として、高負荷走行が電源システム1の再起動から所定時間内に行われる可能性が基準より高いか否かを予測し、高負荷走行が電源システム1の再起動から所定時間内に行われる可能性が基準より高いと予測された場合、第2充放電制御を実行することが好ましい。それにより、高負荷走行が電源システム1の再起動から所定時間内に行われる可能性が基準より高いときに、第2充放電制御を適切に実行することができるので、電源システム1の再起動直後の燃料電池10の立ち上がり時間における二次電池20の電力の枯渇を適切に抑制することができる。
また、本実施形態に係る電源システム1では、制御装置100は、車両の目的地を示す情報に基づいて、高負荷走行が電源システム1の再起動から所定時間内に行われる可能性が基準より高いか否かを予測することが好ましい。それにより、車両が目的地に停車した場合における電源システム1の再起動から所定時間内に高負荷走行が行われる可能性が基準より高いときに、第2充放電制御を実行することができる。ゆえに、車両が目的地に停車した後の電源システム1の再起動から所定時間内に高負荷走行が行われた場合であっても、電源システム1が再起動されるまでに二次電池20のSOCを第2目標SOCの近傍の値まで上昇させておくことができるので、燃料電池10の立ち上がり時間に二次電池20の電力が枯渇することを抑制することができる。
また、本実施形態に係る電源システム1では、制御装置100は、車両の走行ルートを示す情報に基づいて、高負荷走行が電源システム1の再起動から所定時間内に行われる可能性が基準より高いか否かを予測することが好ましい。それにより、車両が走行ルート上で停車した場合における電源システム1の再起動から所定時間内に高負荷走行が行われる可能性が基準より高いときに、第2充放電制御を実行することができる。ゆえに、車両が走行ルート上で停車した後の電源システム1の再起動から所定時間内に高負荷走行が行われた場合であっても、電源システム1が再起動されるまでに二次電池20のSOCを第2目標SOCの近傍の値まで上昇させておくことができるので、燃料電池10の立ち上がり時間に二次電池20の電力が枯渇することを抑制することができる。
また、本実施形態に係る電源システム1では、制御装置100は、車両が当該車両の目的地に到着する前に二次電池20のSOCが第2目標SOCに到達するように、第2充放電制御を実行することが好ましい。それにより、車両が当該車両の目的地に到着してドライバの操作による電源システム1の停止要求が生じる時点までに二次電池20のSOCを第2目標SOCに適切に到達させることができる。ゆえに、ドライバの操作による電源システム1の停止要求が生じた時点以降に第2充放電制御が継続して実行される(つまり、燃料電池10の発電電力を用いた二次電池20の充電が行われる)ことを抑制することができる。
また、本実施形態に係る電源システム1では、制御装置100は、電源システム1の再起動から所定時間内に行われる高負荷走行における要求駆動力と関連するパラメータに基づいて、第2目標SOCを変化させることが好ましい。それにより、高負荷走行が電源システム1の再起動から所定時間内に行われた場合において燃料電池10の立ち上がり時間中に駆動用モータ30に要求駆動力を出力させるために必要な電力量に応じて第2目標SOCを適切に変化させることができる。ゆえに、燃料電池10の立ち上がり時間において、二次電池20に蓄電されている電力を用いて駆動用モータ30を駆動することに起因して二次電池20の電力が枯渇することをさらに適切に抑制することができる。よって、電源システム1の再起動直後の燃料電池10の立ち上がり時間における二次電池20の電力の枯渇をさらに適切に抑制することができる。
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
例えば、上記では、図1を参照して、電源システム1の構成について説明したが、本発明に係る電源システムの構成は、このような例に限定されず、例えば、図1に示される電源システム1に対して一部の構成要素を削除、追加または変更を加えたものであってもよい。例えば、図1に示される電源システム1から二次電池コンバータ42を削除したものも、本発明に係る電源システムに含まれる。
また、例えば、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。