[第1実施形態]
図1から図35を参照して、本発明の光学素子の第1実施形態を説明する。なお、各図面において、同一または類似した機能を発揮する構成要素には全て同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、本開示の本発明の実施形態は、背景からの独自の単一の発明を元とする一群の実施形態である。また、本開示の各側面は、単一の発明を元とした一群の実施形態の側面である。本開示の各構成は、本開示の各側面を有しうる。本開示の各特徴(feature)は組合せ可能であり、各構成をなせる。したがって、本開示の各特徴(feature)、本開示の各構成、本開示の各側面、本開示の各実施形態は、組合せることが可能であり、その組合せは相乗的機能を有し、相乗的な効果を発揮しうる。
図1が示すように、光学素子10は、第1層11と、第1層11に接する第2層12と、第2層12に接する第3層13とを備えている。各層は、透光性を有している。光学素子10は、セキュリティシールの全体または一部とできる。言い換えれば、セキュリティシールは、光学素子10を含むことができる。また、光学素子10は、可視のモチーフとできる。セキュリティシールの形態はパッチ、ストライプ、オーバーレイ、ステッカーとできる。光学素子10は、第2層12に対して第3層13とは反対側に位置する光源から光が照射され、第2層12に対して第3層13とは反対側から観察される。光学素子10において、第1層11のなかで、第2層12に接する面とは反対側の面が、観察者によって観察される観察面10Sである。
第1層11は、第1の屈折率n1を有する樹脂製の層である。第1層11は、第2層12に接する表面11Sの少なくとも一部に格子構造11Gを含む。表面11Sは、第1面の一例である。第2層12は、格子構造11Gに追従した凹凸状を有している。第2層12は、第1の屈折率n1よりも高い第2の屈折率n2を有する誘電体製の層である。第3層13は、第2の屈折率n2よりも低い第3の屈折率n3を有する樹脂製の層である。凹部と凸部で構成される最小構造単位である格子構造11Gは1つの方向に沿って複数並べられ、格子パターンGPとして表面11Sに広がる。格子パターンGPは、表面11Sの凹凸面として形成できる。格子構造11Gの格子周期は、250nm以上500nm以下の可視波長以下のサブ波長であって、例えば400nmである。
第1層11の屈折率n1は、第3層13の屈折率n3と互いに同じであってもよいし、互いに異なってもよい。第1層11の屈折率n1と第3層13の屈折率n3との差は、0.2以下とでき、さらには、0.1以下とできる。第1層11の屈折率n1と第3層13の屈折率n3との差が、0.2以下であれば、彩度を上げやすい。第1層11の屈折率n1と第3層13の屈折率n3との差が、0.1以下であれば、最大の彩度に近づく。第1層11の屈折率n1と第2層12の屈折率n2との差、および、第3層13の屈折率n3と第2層12の屈折率n2との差は、それぞれ0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。
第1層11の表面11Sのなかで、格子構造11Gが位置する領域が凹凸面である。すなわち、表面11Sは、凹凸面を有する。本実施形態では、表面11Sの全体が凹凸面であるが、表面11Sの一部のみが凹凸面であってもよい。
図2は、観察面10Sと対向する平面視における光学素子10の外観を示している。光学素子10は、モチーフ領域11S1と背景領域11S2とを備えている。モチーフ領域11S1は第1領域の一例であり、背景領域11S2は第2領域の一例である。モチーフ領域11S1は、複数の画像要素11R1,11R2,11R3,11R4,11R5から形成されている。背景領域11S2は、パターン要素11P1,11P2から形成される。モチーフ領域11S1は、文字、記号、物体形状、および、シンボルなどのデザイン全体のなかで主となる要素であって、特定の意味を有した輪郭を有する領域である。一方で、背景領域11S2は、特別な意味を有していない領域であって、図2の例のようにストライプ状であってもよいし、その他の幾何学模様などの図形であってもよい。
モチーフ領域11S1と背景領域11S2とは、境界領域11S3を介して隣り合っている。境界領域11S3は、第3領域の一例である。光学素子10がある観察角度で観察されたときに、光学素子10は、境界領域11S3が呈する色が、モチーフ領域11S1が呈する色、および、背景領域11S2が呈する色の両方と異なる状態を有する。光学素子10が境界領域11S3を有するため、光学素子10が境界領域11S3を有しない場合に比べて、光学素子10の観察者が、モチーフ領域11S1と背景領域11S2との境界をより明確に認識することが可能である。なお、光学素子10は、境界領域11S3を有しなくてもよい。光学素子10が境界領域11S3を有しない場合には、モチーフ領域11S1と背景領域11S2とが接している。
図3は、図2に示した光学素子10の一部を拡大した図である。モチーフ領域11S1、背景領域11S2、境界領域11S3において、複数のセルPxが区画されている。各セルPxの面積は、0.1mm2以下であることが好ましい。第1層11の表面11Sの全体において、複数のセルPxが隙間なく並んでいる。本実施形態では、表面11Sと対向する平面視において、各セルPxは正方形状を有しているが、セルPxは、正三角形状および正六角形状などを有してもよい。また、各セルPxは、多角形状であって、かつ、互いに異なる長さを有した辺を含む形状であってもよい。セルPxにおいて、一辺の長さは0.3mm以下であることが好ましい。なお、一辺の長さが0.08mm以下であることがより好ましい。この場合には、セルPxの一辺の長さが人の目の分解能よりも小さい値であるため、各セルPxが観察者によって視認されない。これにより、光学素子10が、高解像度の像を表示することが可能である。
以下では、図示および説明の便宜上、観察面10Sと対向する平面視での構造を用いて、第1層11の表面11S、すなわち第1層11のなかで第2層12との界面を形成する面について説明する。また、図3では、図示の便宜上、格子パターンGPが延びる方向を直線によって示している。ここでは例として、境界領域11S3に隣接する画像要素11R1およびパターン要素11P2のうち、境界領域11S3の輪郭からの距離が少なくとも300μmの領域内のセルPxに配置された格子構造の格子方向が互いに直交した場合を示している。なお、セルPxにおいて格子方向が互いに平行もしくは直交していれば、格子方向の組み合わせ方は任意である。
図4を参照して、格子方向を表す方位角の定義を説明する。
図4が示すように、光学素子10の観察面10Sに沿う任意の方向が、X方向であり、X方向に直交する方向がY方向である。本実施形態では、X方向が方位角において基準となる方向であり、X方向と格子構造が延びる方向とが形成する角度が方位角φである。そのため、第1セルPx1における方位角φは0°であり、第2セルPx2における方位角φは45°である。また、第3セルPx3における方位角φは90°であり、第4セルPx4における方位角φは135°である。なお、X方向は光学素子10の水平方向と一致する場合が多く、その場合に利用する格子構造の方位角φは0°、90°、または、0°および90°であることが好ましい。このような設計とすることによって、光学素子10の製造が容易であり、光学素子10の生産効率を高めることができる。第1格子構造の方位角と、第2格子構造の方位角の差が1°以下のとき、それぞれの方位角は等しいと定義できる。
図5は、図3におけるI‐I線およびII‐II線に沿う格子構造11Gの断面構造を示している。図5では、図示の便宜上、画像要素に配置される第1格子構造11G1の断面構造と、パターン要素に配置される第2格子構造11G2の断面構造とを、紙面の上下方向において並べて示している。なお、各格子構造の断面構造は、1つのセルPxに位置する格子構造の断面構造を模式的に示している。また、図5では、図示の便宜上、各格子構造を、平坦面から離れる方向に突出する凸部を構成する面として示している。
図5が示すように、各格子パターンGPにおいて、互いに隣り合う格子構造の距離が格子周期dである。第1格子構造11G1における格子周期が第1周期d1であり、第2格子構造11G2における格子周期が第2周期d2である。本実施形態では、第1周期d1が第2周期d2よりも小さいが、第1周期d1が第2周期d2よりも大きくてもよい。本実施形態では、格子構造は、凸部と凹部を備えた最小単位の構造であって、格子構造が1つの方向において繰り返されたパターンが格子パターンGPである。
第1格子構造11G1の格子方向と第2格子構造11G2の格子方向とが互いに直交する場合は、第1周期d1と第2周期d2とは同じでもよいし、異なっていてもよい。一方で、第1格子構造11G1の格子方向と第2格子構造11G2の格子方向とが互いに平行である場合は、第1周期d1と第2周期d2とは異なっていることが好ましい。いずれの場合においても、光学素子10は、式(1)を満たす構成であればよい。
|d1(n21-R)-d2(n22-R)|≧25 … 式(1)
式(1)において、n21は第1格子構造11G1が配置された領域における入射光に対する仮想層12Vの有効屈折率、n22は第2格子構造11G2が配置された領域における入射光に対する仮想層12Vの有効屈折率、Rは第1層11の屈折率n1と入射光の角度θとによって規定される定数である。
また、モチーフ領域11S1の平均色彩値L*a*b*と背景領域11S2の平均色彩値L*a*b*との色差ΔE*abが13以上とできる。平均色彩値L*a*b*は、任意の、例えば直径3mmの範囲での色彩値L*a*b*とできる。
図6は、光学素子10において、格子構造11Gが配置された領域に光が入射する様子を模式的に示している。入射光ILは、第1層11側から入射角θで第2層12へ入射する。第2層12は格子構造11Gの形状にあたるが、可視波長以下の細かい構造、すなわちサブ波長格子においては格子構造が存在する領域を、実質的にz方向に一定の厚みを有した二次元平面的な層、すなわち仮想層12Vと見なせることが知られている。この仮想層12Vの屈折率neffは有効屈折率あるいは実効屈折率といわれ、偏光方向によって値が異なる(光学異方性)。今回のように、構造に方向性がある場合に発生する光学異方性は構造複屈折といわれ、入射光と構造の方向との関係性によって有効屈折率が異なる。
図7は、方位角φが0°である格子構造11Gの斜視構造を示している。一方で、図8は、方位角φが90°である格子構造11Gの斜視構造を示している。なお、本実施形態では図示の便宜上、格子構造を矩形状としているが、波状であってもよい。格子構造11Gへの入射光が含む偏光成分のうち、格子構造11Gの入射面に対して電場が垂直に振動している偏光がs偏光である。これに対して、格子構造11Gの入射面に対して電場が平行に振動している偏光がp偏光である。なお、入射面とは、格子構造が広がる平面に対して垂直であり、かつ、入射光と反射光とを含む平面である。また、s偏光およびp偏光の各々は、格子構造11Gの方位角φには依存しない。言い換えれば、図7が示す格子構造11Gに入射する入射光であっても、図8が示す格子構造11Gに入射する入射光であっても、s偏光およびp偏光を含む。
ここで、格子構造11Gのような溝を有する構造では、上述のように溝が延びる方向、すなわち方位角φと電場の振動方向との関係によって光学異方性が生じる。格子構造11Gに入射した光のなかで、電場の振動方向が格子構造11Gの方位角φと平行な成分がTE波である。一方で、格子構造11Gに入射した光のなかで、電場の振動方向が格子構造11Gの方位角φと直交する成分がTM波である。図7を参照して先に説明したように、方位角φが0°である格子構造11Gでは、電場の振動方向が格子構造11Gの方位角φと平行な成分であるp偏光は、TE波と等しい。これに対して、図8を参照して先に説明したように、方位角φが90°である格子構造11Gでは、電場の振動方向が格子構造11Gの方位角φと直交する成分であるp偏光は、TM波と等しい。
図9を参照して、格子構造11Gが矩形形状である単純なモデルを用いて、仮想層12Vの有効屈折率について説明する。
図9が示すように、周期dの格子構造の凸部に相当する領域の屈折率をnaとし、凹部に相当する領域の屈折率をnbとし、周期dのうち凸部の占める幅をaとし、凹部の占める幅をbとする。周期dに対する凸部の占有率をFとすると、入射光のうちTE波およびTM波に対する有効屈折率neffはそれぞれ式(2)および式(3)のように表される。
以下に、上記式(1)の導出過程を説明する。式(1)では、有効屈折率n21および有効屈折率n22はどちらも上記TE波およびTM波の両方での屈折率を含めたものとして扱っている。上述のように格子構造11Gの方位角φによって有効屈折率n21および有効屈折率n22の値は変化する。ここで、格子構造11Gにおいて導波モード共鳴が生じるためには、下記の式(4)から式(7)で表される位相整合条件を満たす必要がある。この式が成り立つ特定波長の光が仮想層12Vを伝搬し、観察者の方向へ射出される。なお、図6に示すような平坦面に形成された格子構造においては、入射光ILの入射角θと射出光ELの射出角θは等しい、すなわち正反射角度でゼロ次回折光として特定の色が観察される。
kn1sinθ+mK=β … 式(4)
k=2π/λ … 式(5)
K=2π/d … 式(6)
β=(2π/λ)・neff… 式(7)
なお、kは波数であり、n1は第1層11の屈折率であり、θは仮想層12Vに入射する光の角度であり、mは回折次数であり、λは共鳴波長であり、Kは逆格子ベクトルであり、dは格子周期であり、βは伝搬定数であり、neffは有効屈折率である。
式(4)に式(5)から式(7)を代入することによって、式(8)が導出される。
d(neff-R)=mλ … 式(8)
屈折率n1および入射角θは、材料および入射角度を固定して考える場合には一定であるため、ここではn1sinθを定数Rとして取り扱う。導波モード共鳴に寄与するのは主に1次回折光であるため、式8においてm=1とすることができる。第1格子構造11G1および第2格子構造11G2について、式(8)より導かれる共鳴波長λをそれぞれλ1、λ2とすると、式(9)が成り立つ。
|λ1-λ2|=|d1(n21-R)-d2(n22-R)|… 式(9)
可視波長域において、特定の色に該当する波長範囲が比較的狭い黄緑、黄、橙よりも広い25nm以上の波長差がある場合に、2つの色で表示される2領域で色の違いを知覚できる。したがって、画像要素およびパターン要素に、式(9)の右辺が25以上となるような第1格子構造11G1および第2格子構造11G2を設けることで色の違いを知覚でき、波長差|λ1-λ2|が大きいほど色の違いが明瞭になる。なお、格子構造の方位角に平行なTE波の方が格子構造の方位角に直交なTM波よりも構造に起因して有効屈折率が高くなり、仮想層12Vと第1層11との屈折率差が大きくなるため、正反射方向に射出する特定波長の強度が高く、光学効果としては支配的であるといえる。
図3を参照して先に説明した光学素子10は、画像要素11R1に図7が示す第1格子構造11G1を備えることが可能であり、パターン要素11P2に図8が示す第2格子構造11G2を備えることが可能である。この場合において、画像要素11R1が第1色を呈し、かつ、パターン要素11P2が第2色を呈する状態が、光学素子10、観察者、および、光源の相対位置における初期位置である。光学素子10の法線を回転軸として光学素子10を初期位置から90°回転させると、画像要素11R1において、s偏光がTE波に対応し、かつ、p偏光がTM波に対応する。これに対して、パターン要素11P2において、s偏光がTM波に対応し、かつ、p偏光がTE波に対応する。これにより、画像要素11R1が第2色を呈し、かつ、パターン要素11P2が第1色を呈する。それゆえに、観察者は、光学素子10の回転によって、画像要素11R1が呈する色とパターン要素11P2が呈する色とが反転したと認識する。
上述したように、第1格子構造11G1の方位角φと、第2格子構造11G2の方位角φとは、90°以下であることが以下の理由から好ましい。光学素子10の観察面10Sと、観察者の視線を含む平面とが形成する角度が、観察角度である。格子構造が呈する色が視認される観察角度は、光源、観察者、および、光学素子10の相対的な位置の関係で規定される。そのため、第1格子構造11G1の方位角φと、第2格子構造11G2の方位角φとが互いに異なっても、第1格子構造11G1が呈する色が視認される観察角度と、第2格子構造11G2が呈する色とが視認される観察角度とは、互いに等しい。言い換えれば、各格子構造11G1,11G2が呈する色が発現する観察角度と、各格子構造11G1,11G2が呈する色が消失する観察角度とは、2つの格子間において互いに等しい。
第1格子構造11G1の方位角φと、第2格子構造11G2の方位角φとの差が90°である場合、第1格子構造11G1から射出されるゼロ次回折光の波長と、第2格子構造11G2から射出されるゼロ次回折光の波長とは互いに異なる。これにより、第1格子構造11G1が呈する第1色と、第2格子構造11G2が呈する第2色とが互いに異なる。第1格子構造11G1の方位角φと第2格子構造11G2の方位角φとの差を、0°よりも大きくかつ90°未満の範囲に含まれる角度に設定した場合には、第1格子構造11G1および第2格子構造11G2の少なくとも一方が、第1色と第2色との中間色を呈する。第1格子構造11G1が呈する色と、第2格子構造11G2が呈する色とは、方位角φの差に応じて変わる。そのため、第1格子構造11G1の方位角φと第2格子構造11G2の方位角φとの差によって、1つの方向に沿って並ぶセルPxにおいて、各セルPxが呈する色を徐々に変化させたり、互いに隣り合うセルPx間において、各セルPxが呈する色を急激に変えたりすることができる。
なお、格子構造11Gにおいて、第1格子構造11G1における方位角φと、第2格子構造11G2における方位角φとの差が90°に設定されたときに、第1格子構造11G1が射出する光の波長と、第2格子構造11G2が射出する光の波長との差が最も大きくなる。
図10が示すように、光学素子10では、例えば、光学素子10の観察面10Sに垂直な平面上において、光源LSと観察者OBとが、観察面10Sの法線に対して対象となるように位置するとき、観察者OBは、光学素子10が射出するゼロ次回折光を視認することができる。言い換えれば、光学素子10は、光源LSから入射した入射光に対する正反射の方向に、格子構造11Gの格子周期に応じた波長の光を射出することができる。
上述したように、本実施形態において、格子構造の格子周期は、可視波長以下、特に250nm以上500nm以下に設定されている。しかしながら、ゼロ次回折光による特定の波長を有した光のみが特定の方向に射出されるための格子周期は、格子構造の屈折率、および、格子構造に入射する入射光の入射角などによって変わる。以下において、格子構造がゼロ次回折光のみを射出するための条件、言い換えれば、サブ波長格子が1次回折光を射出しないための条件を説明する。
反射型の回折格子において、以下の式(10)が成り立つことが知られている。
sinθ1+sinθ2 = mλ/nd … 式(10)
なお、式(10)において、θ1は回折格子に対する入射光の入射角であり、θ2は回折格子が射出する回折光の回折角であり、mは回折光の回折次数である。λは波長であり、nは回折格子の屈折率であり、dは回折格子の格子周期である。
ここで、屈折率nが1であり、かつ、回折格子が配置された平面に対して垂直な光が入射したと仮定したときの1次回折光について考える。このとき、入射角θ1は0°であり、回折次数mは1である。そのため、これらの数値を式(10)に代入すると、以下の式(11)が導かれる。
sinθ2 = λ/d … 式(11)
sinθ2は-1以上1以下であるため、式(11)における右辺(λ/d)が1よりも大きいとき、式(11)は成り立たない。言い換えれば、右辺(λ/d)が1よりも大きいとき、1次回折光は回折格子から射出されない。したがって、上述した前提のもとでは、回折格子の格子周期が波長よりも小さいときに、回折格子はゼロ次回折光のみを射出する。
一方で、屈折率が1ではなく、かつ、入射角θ1が0°でない場合には、回折格子がゼロ次以外の次数の回折光を射出する場合もある。例えば、入射角θ1が30°であり、かつ、波長λが600nmであると仮定したときの1次回折光について考える。このとき、入射角θ1は30°であり、波長λは600nmであり、回折次数mは1である。そのため、これらの数値を式(10)に代入すると、以下の式(12)が導かれる。
1/2 + sinθ2 =600/nd … 式(12)
sinθ2は-1以上1以下であるため、式(12)の左辺(1/2+sinθ2)は-0.5以上1.5以下であり、屈折率nと格子周期dとの積が0以上400以下を満たすとき、屈折率nと格子周期dとの組み合わせによって、回折格子が1次回折光を射出する。例えば、1次回折光が射出されるときの屈折率nと格子周期dとの組み合わせ(n,d)は、以下の通りである。
(n,d) = (1,400)、(1.5,200)、(2,100)
このように、回折格子の屈折率nによっては、回折格子の格子周期dが波長λ以下であっても、1次回折光やより高次の回折光が射出されることがある。言い換えれば、回折格子の格子周期dと、回折格子の屈折率nとの調整によって、回折格子がゼロ次回折光を射出する一方で、ゼロ次回折光よりも高次の回折光を射出しないように回折格子を構成することが可能である。
一方で、1次回折光の回折角θ2がゼロ次回折光の回折角θ2よりも大幅に大きくなるように設計することで、観察者に対する回折格子の相対位置が固定された状態において、ゼロ次回折光が観察者によって視認される一方で、1次回折光が観察者によって視認されないように、回折格子を構成することも可能である。これにより、回折格子を形成する材料の選択における自由度や、回折格子の格子周期における自由度を高めることはできる。
図11が示すように、光源LSと観察者OBの視点とを固定した状態で、上述した平面と光学素子10とが、垂直以外の角度で交差するように光学素子10を傾ける。この場合には、光学素子10は、観察者OBの視線の方向にはゼロ次回折光を射出しないため、観察者は光学素子10が射出する特定の波長の光を視認することができない。言い換えれば、観察者は、光学素子10が呈する色を視認することができない。
光学素子10では、第1格子構造11G1および第2格子構造11G2の両方において、各格子構造に起因する色の発現と消失とが同時に起こる。そのため、光学素子10の全体において、特定の色を呈する状態と、特定の色を呈しない状態とが切り替わる。それゆえに、光学素子10の真正検証では、光学素子10が、第1格子構造11G1に由来する色を呈するモチーフ領域11S1と、第2格子構造11G2に由来する色を呈する背景領域11S2とを備えるか否かを、一度に把握することができる。結果として、光学素子10を回転させることによって、光学素子10が2つの色を呈する状態を有するか否かを検証する場合に比べて、光学素子10の真正をより容易に検証することができる。
図12から図14を用いて、境界領域11S3の構造を説明する。図12から図14では、(a)が境界領域11S3におけるXY平面に沿う概略的な構造を示し、(b)が(a)における断面指示線に沿う断面構造を示している。
図12は、無指向性の散乱構造の一例を示している。
図12が示すように、無指向性の散乱構造は、構造の幅や高さが不規則な構成である。図示の便宜上、図12では構造がX方向とY方向にランダムに並んだ形態としているが、方向も関係なく完全にランダムに凹凸構造が形成された形態であってもよい。この無指向性の散乱構造は、モチーフ領域11S1の格子構造や背景領域11S2の格子構造を形成する工程で同時に形成してもよいし、第1層11から第3層13を含む積層体を別の基材に転写したり、ラミネートしたりするときに物理的に生成されるものであってもよい。
図13は、指向性の散乱構造の一例を示している。
図13が示すように、指向性の散乱構造において、構造の幅や高さが不規則ではあるが、構造の並ぶ方向が揃っている。観察者が紙面手前から観察しているとすると、図13に示す構造断面図に対して紙面の奥から紙面の手前に向けて光が入射する場合には、観察者側に散乱光が入ってくるため白色として知覚される。一方で、構造断面図に対して紙面の左から紙面の右に向けて光が入射する場合には、射出方向から観察しても光が弱く、散乱構造は、実質的に黒またはグレーに見える。つまり、光学素子10を平面視した状態でどの方向に指向性の散乱構造を設けるかによって、境界領域を白色にも黒色にも表示可能である。例えば、境界領域11S3に入射した光の正反射方向とは異なる方向に指向性を有した散乱構造によれば、第3領域が、正反射方向では黒色を呈する。これにより、導波モード共鳴によって正反射方向に特定の色を表示するモチーフ領域11S1および背景領域11S2における境界がより明確になる。
図14は、モスアイ構造に代表される反射防止構造の一例を示している。
図14が示すように、モスアイ構造による反射防止の原理とは、ナノオーダーの針状構造を設けることで、構造周辺の屈折率がゆるやかに変化するため、入射した光の反射や屈折が極めて小さくなり、結果的に黒色に見えるという原理である。図14では、円錐状の構造を正方配列した例を示しているが、構造のXY方向の断面積がZ方向に変化する微細構造であればよく、配列も正方配列に限定されるものではない。
また、境界領域11S3に格子構造11Gを設けてもよい。この場合には、モチーフ領域11S1や背景領域11S2と同じく境界領域11S3においても特定波長の色が表示される。境界領域11S3内の平均色彩値L*a*b*と、境界領域11S3に隣接する画像要素およびパターン要素の少なくとも一方の要素内での平均色彩値L*a*b*との色差ΔE*abは、13以上とできる。この条件を満たせば、境界領域11S3に設ける格子構造11Gは任意である。
境界領域11S3に配置する格子構造11Gは、光学素子10と対向する平面視において縦方向に延びる、すなわち方位角φが90°の格子構造11Gであることが好ましい。格子構造11Gの方位角φが0°の場合と90°の場合とでは光学特性が異なる。
図15から図24を参照して、格子構造11Gの方位角の違いによる特徴を説明する。なお、図16から図24は実験より得られた結果の一例である。当該実験は、格子周期dが300nmから500nmまで20nm刻みに条件を振ったサンプルの測色結果に関する。サンプルは、第1層11から第3層13を含む積層体を基材でラミネートした形態とした。各条件5mm角の平面上に格子周期dが一定の格子構造11Gを設け、それぞれ図7に示すように格子方向と平行に光を入射したα入射の場合と、図8に示すように格子方向と直交して光を入射したβ入射の場合とで分光反射率取得による測色を行なった。
当該測定は、図15に示すような光学系を用いて行なった。サンプルへの入射角と受光角が等しくなるように光学系を準備し、サンプルホルダーに設置したサンプル表面約4mmφの領域について反射光を受光し、反射光について測色した。なお、入射角および受光角は30度を基本とした。分光器では生データとして、後に参照する図16や図17に示すような分光反射スペクトルが得られる。各波長に対する物体の反射率と光源の分光特性、ヒトの視感度から三刺激値XYZが導かれ、そこからL*a*b*表色系などの各種色彩値へと変換される。
図15に示すような方法によって、画像要素およびパターン要素に対して測定を行なうことで、それぞれの共鳴波長λ1、λ2を取得できる。すなわち、式(9)で示される共鳴波長λ1、λ2の差と、構造周期の差の関係を実験的に求めることができる。このように、図15のように実験的に得られた結果から、共鳴波長λ1、λ2の差が25nmとなり、構造周期の差は20nmに相当することがわかる。言い換えれば、厳格には共鳴波長λ1、λ2と構造周期の差の関係は、式(9)で定式化できるが、実用的は、共鳴波長λ1、λ2の差と構造周期の差とが線形の関係であることから、実験値を用いた近似値を得ることができる。この近似値は、観察角度や、構造の材質に依存するが、現実的な観察角度や構造の材質は類似することから、ほとんどの現実的な構成において、十分に実用的である。
図16および図17は、格子構造11Gの格子方向と入射方向の関係の異なるα入射およびβ入射の条件で、格子周期dの異なるサンプルを測定して得られた分光反射スペクトルである。図16がα入射の条件で得られた分光反射スペクトルであり、図17がβ入射の条件で得られた分光反射スペクトルである。
図18は、図16および図17の結果について、格子構造11Gの格子周期dと反射ピーク波長の関係を示したものである。
図18が示すように、α入射、β入射どちらの場合も格子周期dと反射ピーク波長の関係が線形性を有している。しかし、α入射の場合は終始一貫した変化であるのに対して、β入射の場合は格子周期における360nmから380nm付近を境に、両者の関係が異なっている。このことから、α入射となる格子構造11Gの方が設計面および製造面において制御しやすいといえる。
図19は、図16および図17の結果について、格子構造11Gの格子周期dとピーク反射率の関係を示したものである。
図19が示すように、全体的にα入射の方がβ入射よりも反射率が高い。これは、図17において、格子周期dの細かい格子構造11Gの反射ピークが、主成分である長波長側以外に短波長側にも現れていることに起因する。これらは格子方向と入射方向の関係で生じる偏光の影響によるものといえる。α入射となる構造設計では、主となる色相に該当する波長における反射率が高いほど、表示される色の発色が強くなり、視認性が高まる。
図20および図21は、図16および図17に示した分光反射率から、色彩値へ換算した結果である。図20は、CIE1976に基づくu’v’色度図を示している。図21は、CIE Lab表色系のab色度図を示している。いずれも色度図に示した矢印の起点が格子周期300nmの色彩値であり、プロット間を結ぶ線にしたがって格子周期が20nmずつ大きくなっている。α入射とβ入射では、前者の方が全体的に色度図の外側に位置しており、後者と比べて高彩度である。高彩度であるほど、各色相の色味が強く感じられるようになるため、α入射すなわち格子方向と入射方向が平行な格子構造を設ける方が視認性は高くなる。
図22には、青、緑、赤に相当する波長について、α入射とβ入射の場合で近しい色相となる格子周期dを図21より抽出し、図16および図17より該当する分光反射スペクトルを重ね合わせたものである。450nm付近にピークを有するスペクトルが青であり、500nm付近にピークを有するスペクトルが緑であり、650nm付近にピークを有するスペクトルが赤である。また、実線のスペクトルはα入射の結果を示し、破線のスペクトルはβ入射の結果を示す。それぞれの波長について実線と破線を比較すると、上述したように反射率に差があることが容易に分かる。
図23および図24には、それぞれα入射とβ入射について、測定する正反射角度を30°を中心に20°、40°と変化させた場合の分光反射スペクトルを示す。図23がα入射における分光反射スペクトルを示し、図24がβ入射における分光反射スペクトルを示している。正反射角度20°から40°におけるピーク波長の中心の変動幅S1および変動幅S2を比較すると、β入射の変動幅S2が大きい。すなわち、光学素子10を正反射角で観察するよう観察者に指示した場合に、β入射だと、同じ正反射でも観察する角度によって見える色相が大きくずれる可能性がある。一方、α入射の場合は色相の変動量が比較的小さいため、α入射となる構造設計にすることで観察される色の角度依存性を低くすることができる。
正反射角度によって色が変化する現象は、上記式(4)の位相整合条件より説明できる。入射角θが変化した場合、格子周期dは一定であるため、共鳴波長λが変化することになる。図7のように格子方向と入射方向が平行だと、入射角θが変化しても式(2)、式(3)におけるFは変化しない、つまり有効屈折率が変化しないため、共鳴波長λの変化は小さい。一方で、図8のように格子方向と入射方向が直交する場合、入射角θによってFが変化する。特に、第2層12の誘電体製層の厚さが、第1層11と第2層12の境界面に形成された格子構造の形状に対して分布をもつ場合には、Fの変化が生じやすく、入射角θによる有効屈折率の変動が大きくなる可能性がある。
以上のように、α入射、すなわち格子方向と入射方向が平行な格子構造を設ける方が視認性や色安定性という観点で優れているといえる。一般的に、光学素子10は、真上あるいは前方上側から光が当たるような照明環境下にて観察されることが多い。これを踏まえると、α入射となる状態は、図7のように観察者からみて格子構造11Gの方位角が90°すなわち縦方向となる。このような格子方向とする別のメリットとして、回折光が観察者の目に入りにくいことが挙げられる。これによれば、光学素子10を傾けながら観察する場合に、本来見せたいモチーフ領域11S1や背景領域11S2のみに視線を集めることができる。
また、モチーフ領域11S1、背景領域11S2、および、境界領域11S3に配置される格子構造11Gすべてにおいて方位角が90°である場合には、以下のような製造上のメリットがある。例えば、このような格子構造11Gを備えたフィルムを作製する場合に、格子構造11Gが形成された金属版を熱可塑性樹脂あるいは紫外線硬化性樹脂などに熱圧を加えて金属版の構造に樹脂を充填させ、硬化させることで作製する方法が考えられる。光学素子10を大量生産する場合にはロールに金属版を巻き付け、長いフィルムにエンボスする方法があるが、これらの工程において、フィルムの流れ方向と格子構造の方向が平行である方が、成形性が高く狙った光学効果を得やすく、さらに、金属版に樹脂が取られて版がすぐに使えなくなるなどの不良が起こりにくくなる。
図25は、境界領域11S3の一態様を示している。
図25(a)が示すように、境界領域11S3は画像要素11R1に接する部位と、パターン要素11P1に接する部位とにそれぞれ輪郭を有しているが、この輪郭上の任意の点と、当該点における接線に直交し、もう一方の輪郭と交わる点との距離を境界領域11S3の幅Wbとする。
図25(b)が示すように、幅Wbは境界領域全体で一定であってもよい。これにより、モチーフ領域11S1と背景領域11S2との境界が、境界領域11S3によって一様に強調される。これにより、光学素子10が平面的な印象となりやすく、また、強い印象を与えやすい。特に、境界領域11S3が直線状であると、印象がシャープになりやすい。なお、曲線状の境界領域11S3は、光学素子10に柔らかな印象を与えやすい。
または、図25(c)が示すように、境界領域11S3の幅は、幅Wb1および幅Wb2を含むように局所的に変化してもよい。すなわち、境界領域11S3第1部分と第2部分とを含み、第1部分の幅Wb1が第2部分の幅Wb2と異なってもよい。これにより、境界領域11S3の幅が異なることによって、光学素子10の美観が高められる。境界領域11S3の幅が異なることによって、光学素子10にエレガントな印象を与えやすい。特に曲線と組み合わせるとリズミカルな印象となる。また、幅Wbの変化は、連続的である場合は、自然な外観となりやすい。
境界領域11S3の幅は、30μm以上3000μm以下でとできる。境界領域11S3の幅が30μm以上であることによって、観察者が境界領域11S3を視認することが可能である。また、境界領域11S3の幅が3000μm以下であることによって、境界領域11S3が、モチーフ領域11S1および背景領域11S2よりも目立つことが抑えられる。特に、境界領域11S3の幅が30μm以上300μm未満の場合には、緻密な線が描けるため補助的な境界線として利用することができる。一方で、境界領域11S3の幅が300μm以上3000μm以下の場合は、人の目で十分解像できる太さであるため、領域間の境界線、特に異なる絵柄の境界として利用することができる。
図26から図29を参照して、モチーフ領域11S1、背景領域11S2、および、境界領域11S3の配置に関する変形例を説明する。
図26では、モチーフ領域11S1が3つの画像要素から形成され、モチーフ領域11S1の外周に境界領域11S3が設けられている。なお、境界領域11S3および背景領域11S2は格子構造11Gを備えなくてもよく、平均粗さSaが20μm以下の実質的に平坦な面であってもよい。このような構造とすることで、例えば国旗のようなシンボルを表示させる場合に、モチーフ領域11S1以外は白色となるため、シンボルのイメージを損なうことなく、見せたいデザインを強調させることができる。
図27は、モチーフ領域11S1が互いに接していない複数の画像要素から形成される場合の例を示す。このような場合においては、画像要素のそれぞれをモチーフ領域11S1とみなし、それぞれに境界領域11S3を設けてもよい。このような構造であっても、境界領域11S3によって各画像要素の輪郭がはっきりと表示されるため、結果として、モチーフ領域11S1全体の形状を観察者に印象付けることは可能である。
図28は、背景領域11S2および境界領域11S3が、モチーフ領域11S1の輪郭の一部に存在しない場合の例である。図28が示すように、図27のようにモチーフ領域11S1の輪郭を完全に取り囲む構成でなくても、デザインが配置される領域の端にあたる部分においては、モチーフ領域11S1の輪郭を認識できるため、境界領域11S3がなくてもよい。ただし、モチーフ領域11S1とデザイン領域の外側の色が類似している場合には、境界領域11S3を設けて輪郭を際立たせる方がモチーフ形状を認識しやすい。
図29は、デザイン領域全体がモチーフ領域11S1で埋め尽くされた場合の例である。
図29が示すように、一見すると意味をもたない図形であっても、デザイン全体に配置され、それ自体が「柄」という意味をもつ場合には、「柄」の一つひとつをモチーフ領域11S1として扱ってもよい。このとき、モチーフ領域11S1のそれぞれに境界領域11S3を設ける場合は、表面11Sのなかでモチーフ領域11S1が位置しない領域を背景領域11S2として扱える。デザイン全体の外観を考慮して境界領域11S3を設けない場合には、近接する複数のモチーフ領域11S1間を背景領域11S2と見なしてもよいし、表面11Sにおいてモチーフ領域11S1が位置しない領域を境界領域11S3とみなしてもよい。複数のモチーフ領域11S1の最近接点の距離が1mm以下であれば、モチーフ領域11S1同士が近接していると定義できる。
図30から図32を参照して、格子構造11Gの変形例を説明する。
図30は、XY平面上に方位角φで配列された格子構造11Gを示している。図30において格子構造11Gに直交するVII‐VII線における断面形状を図31および図32に示す。
図31に示される構造が、基本となる構造である。図31において、凸部における高さをHp、凹部における高さをHvとすると、高さHpと高さHvとの距離Hが構造高さである。凸部と凹部の中心位置CLを基準とした場合に、中心位置CLよりも上側にある凸部の幅をdpとし、下側にある凹部の幅をdvとする。図31の例において、幅dpと幅dvとは互いに等しい。
一方で、図32に示される構造は、図31に示される構造の変形例である。図32が示す構造において、中心位置CLを基準とした凸部の幅dpと凹部の幅dvとは互いに異なる。幅dpと幅dvの比率によって、上述の有効屈折率は変化する。有効屈折率が変化すると、式(4)から式(7)に示す位相整合条件を満たす共鳴波長λが変わるため、観察される色が変化することとなる。
このように、位相整合条件に含まれる変数の値によって観察される色は変化する。図31および図32では格子構造11Gの凸部と凹部の幅の比率について示したが、その他にも格子構造11Gの方位角φ、格子周期dによっても有効屈折率は変化する。
さらに、位相整合条件を満たすある一定条件のもとであっても、格子構造11Gの構造高さHによって、凸部と凹部それぞれで反射された光の干渉状態が異なり、観察される光の強度、言い換えると濃淡に相当する変数である彩度が変化する。
これらの変数の少なくとも1つを異ならせることで、モチーフ領域11S1、背景領域11S2、境界領域11S3の色相や濃淡を変えられるため、色彩表現を自在に行える。図33に一例を示す。モチーフ領域11S1を形成する画像要素11R1,11R2および背景領域11S2を形成するパターン要素11P1,11P2について、それぞれX方向に並ぶセルPxおよびその断面形状を示している。図33(a)が画像要素11R1の平面構造、および、VIII‐VIII線に沿う断面構造を示し、図33(b)が画像要素11R2の平面構造、および、IX‐IX線に沿う断面構造を示し、図33(c)がパターン要素11P1の平面構造、および、X‐X線に沿う断面構造を示し、図33(d)がパターン要素11P2の平面構造、および、XI‐XI線に沿う断面構造を示している。
この例では、各要素内ではセルPxの格子構造11Gが一様であり、特定の色でベタ塗りされたような外観となる。ただし、VIII‐VIII線からXI‐XI線に従う断面については、要素ごとに異なり、例えば画像要素11R1と画像要素11R2とでは、格子構造11Gの格子周期dは異なる(d1>d2)一方で、構造高さHは互いに等しい(H1=H2)。これに対して、パターン要素において、方位角φが画像要素とは異なる。さらに、パターン要素11P1とパターン要素11P2では、格子構造11Gの格子周期dは等しく(d3=d4)、構造高さHが異なる(H3<H4)。
図34は、光学素子10における別の変形例を示している。画像要素11R1とパターン要素11P1について、それぞれX方向またはY方向に並ぶセルPxおよびその断面形状を示している。図34(a)が画像要素11R1の平面構造、および、XII‐XII線に沿う断面構造を示し、図34(b)がパターン要素11P1の平面構造、および、XIII‐XIII線に沿う断面構造を示している。この例では、画像要素11R1では、要素内において部分的に格子周期dが変化している。XII‐XII線に沿う断面において構造高さH1が一定であり、格子周期d1と格子周期d2とが互いに異なっている。
また、パターン要素11P1では、格子周期dが一定であり、構造高さH3と構造高さH4とが互いに異なっている。このように、要素内において格子構造の方位角、格子周期、構造高さ、および、格子構造の凹部と凸部との比率のいずれかを変化させることによって、色相にグラデーションを付与したり、濃淡を付与したりすることができる。例えば、図2が示すような花びらを光学素子10が表示する場合には、花びらの中心から外側に向けて色相の濃淡を変化させることによって、疑似的な立体感を表現することもできる。
図35は、本実施形態の光学素子10における他の例である。図35は、図3と同様、観察面10Sと対向する平面視における光学素子10の構造を示している。
図35が示すように、複数のセルPxは、表面11Sと対向する平面視において、各セルPxの一部に位置する第1格子構造11G1を備えるセルPxを含んでもよい。図3を参照して先に説明した例では、第1格子構造11G1は、各セルPxの全体に位置している。これに限らず、各セルPxにおいて、そのセルPxの一部のみに第1格子構造11G1が位置してもよい。各セルPxにおいて、セルPxの面積に対する第1格子構造11G1の面積の比が面積率である。複数のセルPxには、面積率が互いに異なるセルPxが含まれてもよい。
各セルPxにおける面積率が高いほど、各セルPxの輝度が高い。そのため、複数のセルPxが、面積率が互いに異なるセルPxを含むことによって、モチーフ領域11S1が呈する色において、同一の色相において輝度による濃淡を形成することが可能である。また、面積率は、漸次的に変化してもよい。これにより、モチーフ領域11S1に擬似的な立体像を表示させることが可能でもある。この場合には、モチーフ領域11S1が表示すべき立体像における輝度の高低、すなわち階調値に応じて、面積率を決定することができる。
また、光学素子10は、モチーフ領域11S1と背景領域11S2とを備える一方で、境界領域11S3を備えていない。そして、光学素子10では、モチーフ領域11S1と背景領域11S2とが互いに接している。
本実施形態では、光学素子10は、モチーフ領域11S1の中央からモチーフ領域11S1の外縁に向かう方向に沿って、セルPxにおける面積率が小さくなる部分を含み、かつ、モチーフ領域11S1の外縁における面積率が最も小さい。
[第2実施形態]
図36から図38を参照して、光学素子の第2実施形態を説明する。本発明の第2実施形態の光学素子は、第1実施形態の光学素子と比べて、格子構造を備える格子パターンの形状が異なる。そのため以下では、こうした相違点について詳しく説明する一方で、第2実施形態の光学素子において第1実施形態の光学素子に対応する構成には、第1実施形態と同一の符号を付すことによって、その詳しい説明を省略する。なお、以下に参照する図36から図38では、図示の便宜上、格子構造を平坦面から離れる方向に突出する凸部が並ぶ構造として示している。また、第2実施形態の光学素子では、観察者によって観察される格子構造の色が、ゼロ次回折光よりも高次の回折光に基づく場合もある。そのため以下では、格子構造が発色する効果が最も高い効率で現れる角度をm次とし、m次における回折光をm次回折光とする。
上述したように、格子パターンは、複数の格子構造11Gを含んでいる。複数の格子構造が並ぶ方向が第1方向D1であり、第1方向D1と直交する方向が第2方向D2である。各格子構造において、第1方向D1に沿い、かつ、第1層11が広がる平面に垂直な断面における形状が、断面形状である。各格子パターンにおいて、格子群が繰り返し配置されている。格子群において、断面形状が互いに異なる2つ以上の格子構造が第2方向D2に沿って並んでいる。以下、本実施形態の光学素子について、より詳しく説明する。
図36が示すように、第1実施形態の光学素子10と同様、光学素子20は、第1層11、第2層12、および、第3層13を備えている。光学素子20は、第1方向D1において、3つの部分を含んでいる。すなわち、光学素子20は、第1部分20A、第2部分20B、および、第3部分20Cを備えている。第1部分20A、第2部分20B、および、第3部分20Cは、格子構造が並ぶ方向において、記載の順に並んでいる。
格子パターンにおいて、各部分に属する複数の格子構造11Gは、互いに同じ断面形状を有する。一方で、各部分間において、各部分に属する格子構造の断面形状は、互いに異なっている。格子パターンにおいて、第1部分20Aに属する部分が第1格子20AGであり、第2部分20Bに属する部分が第2格子20BGであり、第3部分20Cに属する部分が第3格子20CGである。
第1格子20AGは、複数の第1格子構造AGPを含んでいる。複数の第1格子構造AGPは、第1方向D1に沿って繰り返されている。第1格子20AGの断面形状は、波状である。第1格子20AGの格子周期は、第1周期d1である。第1格子構造AGPは、第1方向D1に沿う断面において、1つの山部が2つの谷部によって挟まれた形状を有している。第1格子構造AGPは、一方の谷部と山部とを結ぶ斜面と、山部と他方の谷部とを結ぶ斜面とを有している。各斜面は、第1層11が広がる平面に対して傾きを有している。
第1方向D1に沿う断面において、一方の斜面に対する接線と、複数の谷部を結ぶ直線とが形成する角度が第1接線角度θ1である。なお、複数の谷部を結ぶ直線は、第1層11の表面にほぼ平行な直線である。なお、第1接線角度θ1は、第1層11が広がる平面と斜面とが形成する角度に等しい。
第2格子20BGは、複数の第2格子構造BGPを含んでいる。複数の第2格子構造BGPは、第1方向D1に沿って繰り返されている。第2格子20BGの断面形状は、波状である。第2格子20BGの格子周期は、第2周期d2である。第2周期d2は、第1周期d1に等しい。第2格子構造BGPは、第1格子構造AGPと同様、第1方向D1に沿う断面において、1つの山部が2つの谷部によって挟まれた形状を有している。第2格子構造BGPは、一方の谷部と山部とを結ぶ斜面と、山部と他方の谷部とを結ぶ斜面とを有している。各斜面は、第1層11が広がる平面に対して傾きを有している。
第1方向D1に沿う断面において、一方の斜面に対する接線と、複数の谷部を結ぶ直線とが形成する角度が第2接線角度θ2である。第2接線角度θ2は、第1接線角度θ1とは異なる角度である。なお、第2接線角度θ2は、第1層11が広がる平面と斜面とが形成する角度に等しい。本実施形態において、第2接線角度θ2は、第1接線角度θ1よりも小さい。一方で、上述したように、第2格子20BGの第2周期d2は、第1格子20AGの第1格子周期d1に等しい。そのため、第1方向D1に沿う断面において、第2格子構造BGPの断面形状と、第1格子構造AGPの断面形状とは互いに異なっている。
第3格子20CGは、複数の第3格子構造CGPを含んでいる。複数の第3格子構造CGPは、第1方向D1に沿って繰り返されている。第3格子20CGの断面形状は、波状である。第3格子20CGの格子周期は、第3周期d3である。第3周期d3は、第1周期d1および第2周期d2に等しい。第3格子構造CGPは、第1格子構造AGPと同様、第1方向D1に沿う断面において、1つの山部が2つの谷部によって挟まれた形状を有している。第3格子構造CGPは、一方の谷部と山部とを結ぶ斜面と、山部と他方の谷部とを結ぶ斜面とを有している。各斜面は、第1層11が広がる平面に対して傾きを有している。
第1方向D1に沿う断面において、一方の斜面に対する接線と、複数の谷部を結ぶ直線とが形成する角度が第3接線角度θ3である。第3接線角度θ3は、第1接線角度θ1とは異なる角度であり、かつ、第2接線角度θ2とも異なる角度である。なお、第3接線角度θ3は、第1層11が広がる平面と斜面とが形成する角度に等しい。本実施形態において、第3接線角度θ3は、第1接線角度θ1よりも小さく、かつ、第2接線角度θ2よりも小さい。一方で、上述したように、第3格子20CGの第3周期d3は、第1周期d1および第2周期d2に等しい。そのため、第1方向D1に沿う断面において、第3格子構造CGPの断面形状は、第1格子構造AGPの断面形状、および、第2格子構造BGPの断面形状の両方と異なっている。
すなわち、本実施形態では、各格子パターンにおける上述した断面形状は、第1層11が広がる平面に対して傾きを有した斜面を含んでいる。そして、複数の格子パターンは、第1層11に対する斜面の傾斜角が互いに異なる格子構造を含んでいる。
こうした格子パターンによれば、各斜面における接線角度θ1,θ2,θ3を変えることによって、光学素子20に入射した光が回折する角度を変えることができる。すなわち、第1格子20AG、第2格子20BG、および、第3格子20CGの間において、接線角度θ1,θ2,θ3を互いに異ならせることで、各格子20AG,20BG,20CGにおいてm次回折光が射出される角度を互いに異ならせることができる。これにより、複数の格子パターン全体において接線角度が等しい場合と比べて、m次回折光が射出される角度の範囲を広げることができる。言い換えれば、観察者がm次回折光を観察することが可能な観察角度の範囲を広げることができる。なお、各格子20AG,20BG,20CGにおいて、断面形状が異なる一方で格子周期は等しいため、各格子20AG,20BG,20CGが呈する色はほぼ同じである。それゆえに、各格子20AG,20BG,20CGから射出されたm次回折光の集合は白色光を生成しない。
第1方向D1において、各格子20AG,20BG,20CGの幅は300μm以下とでき、さらには、85μm以下とできる。各格子20AG,20BG,20CGの幅が300μm以下であることによって、人の目の分解能では、各格子20AG,20BG,20CGを分離することができない。それゆえに、観察者は、各格子20AG,20BG,20CGが、互いに異なる角度で光を回折していると認識することはできない。
一般に、視力が1.0である人が、観察対象から5m離れた位置から視覚1分で分離することが可能な間隔は、1.454mmであることが知られている。こうした事項は、ランドルト環を用いて説明されている。なお、1分は、1°の60分の1である。観察者が光学素子20から30cm離れた位置から光学素子20を観察すると仮定した場合、観察者の目によって分離することが可能な間隔、すなわち分解能Rは、以下の式(13)から導出することができる。
R = 1454 × (30/500) (μm) … 式(13)
なお、式(13)の右辺において、第1項の単位がμmであり、第2項の単位がcmである。式(13)より、分解能Rは87.24μmである。そのため、各格子20AG,20BG,20CGの幅が85μm以下であれば、人の目の分解能では、各格子20AG,20BG,20CGを分解することができない確実性を高めることができる。このため、各格子20AG,20BG,20CGの幅が85μm以下であると、ジャギーのような像の違和感を抑制しやすい。
各格子構造AGP,BGP,CGPの断面形状が、互いに異なる接線角度を有した波形状であることは、m次回折光が射出される方向を、接線角度によって制御することが可能である。これに対して、格子構造の断面形状が、光学素子20の表面に対して平行な面と、表面に対して直交する面とから構成される矩形状である場合、m次回折光、すなわちゼロ次回折光は、入射光に対する正反射の方向に射出される。例えば、光学素子20の表面に対する入射光の入射角度が45°である場合には、正反射光の射出角度も45°である。そのため、観察者は、観察角度が45°である方向から光学素子20を観察しなければ、光学素子20が射出する光を観察することができない。
正反射光の射出角度で光学素子20を観察した場合には、光源から光学素子20に向けて射出された光の正反射光も観察者によって観察される。そのため、観察者が、格子構造によって射出された光を視認しにくい場合がある。さらに、光学素子20に対する光源の相対位置によって、光学素子20を正反射の角度から観察することが難しい場合もある。この点で、m次回折光が射出される方向を、接線角度によって制御することが可能であることで、光学素子20がm次回折光を射出する角度の自由度が高くなる。そのため、上述した問題を解決することが可能にもなる。
3つの格子構造を含む格子パターンは、以下の構造を有してもよい。
図37が示すように、格子パターンは、第1格子構造AGP、第2格子構造BGP、および、第3格子構造CGPを含んでいる。第1格子構造AGP、第2格子構造BGP、および、第3格子構造CGPが、第1方向D1に沿って記載の順に並んでいる。これにより、第1格子構造AGP、第2格子構造BGP、および、第3格子構造CGPが1つの格子群GPGを構成している。格子パターンにおいて、複数の格子群GPGが、第1方向D1に沿って繰り返されている。
第1方向D1において、第1格子構造AGPの格子周期が第1周期d1であり、第2格子構造BGPの格子周期が第2周期d2であり、第3格子構造CGPの格子周期が第3周期d3である。第1周期d1、第2周期d2、および、第3周期d3は、互いに等しい。
第1方向D1において、格子群GPGの周期Dは、20μm以上であることが好ましい。格子群GPGの周期Dが大きいほど、より高次の回折光が同一の観察角度内に含まれる。言い換えれば、格子群GPGの周期Dが大きいほど、同一の次数の回折光が含まれる観察角度の範囲が狭くなる。これにより、m次回折光の観察角度と他の回折光の観察角度との差を小さくすることで、観察者は、m次回折光と同時に複数の回折光を視認することができる。これにより、観察者が光学素子20から射出された光を視認することができる観察角度の範囲が広がる。
例えば、上述したように、断面形状が矩形状の回折格子では、入射光と回折格子の放線とが形成する角度を角度αとし、かつ、回折光と回折格子の放線とが形成する角度を角度βとするとき、以下の式(14)が成り立つ。なお、角度αは入射角であり、角度βは回折角である。
d(sinα+sinβ) = mλ … 式(14)
なお、式(14)において、dは回折格子の周期であり、mは回折次数であり、λは光の波長である。周期および波長の単位はnmである。なお、図37に示される格子構造11Gでは、周期dが上述した格子群GPGの周期Dに相当する。式(14)において、角度αを45°に設定し、波長λを500nmに設定するとき、周期dを5000nmに設定すると、以下のように回折次数mと角度βとが決まる。
(m,β) = (1,-37.4)、(2,-30.5)、(3,-24.0)…
また、周期dを10000nmに変更すると、以下のように回折次数mと角度βとが決まる。
(m,β) = (1,-41.1)、(2,-37.4)、(3,-33.9)…
また、周期dを20000nmに変更すると、以下のように回折次数mと角度βとが決まる。
(m,β) = (1,-43.0)、(2,-41.1)、(3,-39.2)…
このように、周期dが大きくなるほど、回折次数の異なる回折光間において、角度βの差が小さくなる。
ここで、人の目における瞳孔径が5mmであり、かつ、観察者が光学素子20を観察する距離を30cmであると仮定する。この場合、光学素子20におけるある点から射出される光のうち、約1°の観察角度内に含まれる光が、観察者の目に入る。すなわち、観察者は約1°の観察角度内の光を積算した結果を視認している。つまり、約1°の観察角度の範囲内に特定の波長を有した回折光が含まれていると、この観察角度の範囲内において回折効率が高くなる。また、観察者が、観察角度が変わるように光学素子20を傾けながら観察する場合、観察者が観察角度を2°以上変える間にわたって、光学素子20の呈する色が特定の色に保持されていることによって、観察者は光学素子20が呈する色を認識しやすい。そのため、光学素子20は、観察角度における2°の範囲内に次数の異なる回折光を少なくとも2つ射出するような構成は、上記の効果を有することができる。この点で、光学素子20における周期Dは、20μm以上であれば、上記の効果を有することができる。
3つの格子構造を含む格子パターンは、以下の構造を有してもよい。
図38が示すように、格子構造11Gは、第1格子構造AGP、第2格子構造BGP、および、第3格子構造CGPを含んでいる。第1格子構造AGP、第2格子構造BGP、および、第3格子構造CGPが、第1方向D1に沿って記載の順に並んでいる。これにより、第1格子構造AGP、第2格子構造BGP、および、第3格子構造CGPが1つの格子群GPGを構成している。格子パターンにおいて、複数の格子群GPGが、第1方向D1に沿って繰り返されている。
第1格子構造AGPの格子周期が第1周期d1であり、第2格子構造BGPの格子周期が第2周期d2であり、第3格子構造CGPの格子周期が第3周期d3である。第1周期d1、第2周期d2、および、第3周期d3は、互いに異なる。第1方向D1において互いに隣り合う格子構造間では、格子周期の差が20nmよりも小さくできる。例えば、第1周期d1を300nmに設定し、第2周期d2を310nmに設定し、かつ、第3周期d3を290nmに設定することが可能である。
格子構造間において格子周期が互いに異なるため、格子構造間において回折角が互いに異なる。格子構造間において、格子周期の差が小さいほど、回折角の差が小さくなる。上述したように、第1方向D1において互いに隣り合う格子構造間での格子周期の差が20nmよりも小さければ、各格子構造から射出されるm次回折光の回折角が互いにほぼ等しくなる。これにより、観察者は、各格子構造から射出されるm次回折光を分離することができない。そのため、観察者が光学素子20から射出される光を観察することが可能な観察角度を広げることができる。
以上説明したように、光学素子の第2実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)複数の格子パターンにおいて、第1方向D1に沿う断面形状が互いに同一である場合と比べて、格子構造11Gから射出される光を観察者が視認することが可能な観察角度を広げることができる。
(2)複数の格子パターンにおいて、第1方向D1に沿う断面形状に含まれる斜面の傾斜角が互いに同一である場合と比べて、格子パターン間における傾斜角の差に応じて、格子構造11Gから射出される光を観察者が視認することが可能な観察角度を広げることができる。
[第2実施形態の変形]
なお、上述した第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[断面形状]
・格子構造11Gは、断面形状が互いに異なる格子構造を含んでもよい。また、断面形状は、4種以上の格子構造を含んでもよい。また、複数種の格子構造は、格子パターン内においてランダムに位置してもよい。
・格子構造11Gの断面形状は、上述した波状に限らない。格子構造11Gが波形状以外の形状を有する場合であっても、パターン格子が、断面形状が互いに異なる格子構造を含んでいることによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
[第3実施形態]
図39を参照して、光学素子の第3実施形態を説明する。本発明の第3実施形態の光学素子は、第1実施形態の光学素子10と比べて、第1層がフィラーを含む点が異なっている。そのため、以下では、こうした相違点を詳しく説明する一方で、第3実施形態の光学素子において、第1実施形態の光学素子に対応する構成には、第1実施形態と同一の符号を付すことによって、その詳しい説明を省略する。
図39が示すように、光学素子30が備える第1層11は、第1層11を形成する樹脂中に分散したフィラー31を含んでいる。フィラー31の平均粒径は、400nm以下である。第1層11に入射した光の少なくとも一部は、第1層11内に分散したフィラーによって散乱される。そのため、格子構造11Gに入射する光には、互いに異なる入射角を有した光が含まれる。これにより、格子パターンGPが含む各格子構造11Gは、その格子構造11Gに入射した光の入射角に応じた正反射の方向に光を反射する。格子構造11Gが反射した光は、フィラー31によって散乱されることなく、または、フィラー31によって散乱された後に、光学素子30の外部に射出される。そのため、第1層11がフィラーを含まない場合と比べて、光学素子30から射出される光の射出角の範囲が広がる。結果として、光学素子30が呈する色を観察者が観察することが可能な観察角度の範囲が広がる。
上述したように、フィラー31の平均粒径は、400nm以下とできる。これにより、ミー散乱が生じることが抑えられるため、第1層11の透明性が少なからず高められる。フィラー31の形状は、球状に限らない。そのため、本実施形態では、各フィラー31において規定することが可能な複数の直径における平均値が、各フィラー31の平均粒径である。ここで、フィラー31などの散乱体の大きさと散乱現状との関係について、以下のことが知られている。散乱体の平均粒径が400nm以上700nm以下の範囲に含まれる場合には、散乱体によってミー散乱が生じる。ミー散乱では、可視域に含まれる光は、光の波長に関わらず同程度に散乱されるため、ミー散乱によって散乱された光は白色を有する光として視認される。なお、ミー散乱では、散乱体の粒径によって光の散乱角度が影響される。ミー散乱では、散乱体の粒径が大きいほど、光の進行方向における前方に対する散乱が強くなる。
これに対して、散乱体が光の波長に対して1/10よりも小さい場合には、レイリー散乱が生じる。レイリー散乱では、光が散乱される方向は、散乱体の粒径に依存しない。レイリー散乱では、散乱体の粒径に関わらず、光の進行方向に対して8の字を描くような分布で、光が散乱される。また、レイリー散乱では、光の波長が短いほど、光の散乱が強くなる。
本実施形態のように、散乱体であるフィラー31が分散した第1層11に透明性が必要とされる場合には、フィラー31の平均粒径は、少なくとも光の波長以下であり、かつ、フィラー31の散乱はレイリー散乱である必要がある。この場合、フィラー31の平均粒径は、400nm以下とできる。フィラー31の平均粒径をDとし、光の波長をλとするとき、散乱断面積αは以下の式(15)によって算出することができる。
α =πD/λ … 式(15)
式(15)を用いることによって、フィラー31によって生じる散乱現象が、レイリー散乱であるか、あるいは、ミー散乱であるかを簡易的に判断することができる。散乱断面積αが0.4以上である場合には、主にレイリー散乱が生じる一方で、散乱断面積αが、0.4よりも大きく、かつ、3未満である場合には、主にミー散乱が生じることが知られている。それゆえに、フィラー31に入射する光が可視域の光であって、例えば光の波長が400nmである場合には、フィラー31の平均粒径が50nm以下であれば、フィラー31によって主にレイリー散乱を生じさせることができる。これにより、第1層11における透明性が高い状態で、第1層11に入射した光をフィラー31によって散乱させることができる。
以上説明したように、第3実施形態の光学素子によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(3)第1層11がフィラーを含まない場合と比べて、光学素子30から射出される光の射出角の範囲が広がる。そのため、光学素子30が呈する色を観察者が観察することが可能な観察角度の範囲が広がる。
[第4実施形態]
図40および図41を参照して、光学素子の第4実施形態を説明する。本発明の第4実施形態の光学素子は、第1実施形態の光学素子10と比べて、第3層13において、第2層12に接する面とは反対側の面の状態が異なっている。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明する一方で、第3実施形態の光学素子において第1実施形態の光学素子10と対応する構成には同一の符号を付すことによって、その詳しい説明を省略する。また、以下では、第4実施形態における第1例と第2例とを順に説明する。
[第1例]
図40が示すように、光学素子40において、第3層13は、熱可塑性を有した接着層である。第3層13は、第3層13の厚さ方向における中央よりも第2層12に接する面とは反対側の面寄りの部分に分散したフィラー41を含んでいる。第3層13において、第2層12に接する面が表面13Fであり、表面13Fとは反対側の面が裏面13Rである。第3層13において、フィラー41は、上述したように、第3層13の厚さ方向における中央よりも裏面13R寄りに位置することが好ましく、裏面13Rの近傍に位置することが好ましい。
上述したように、第3層13は、熱可塑性を有した接着層である。第3層13を形成する材料には、熱可塑性を有した接着剤を用いることができる。第3層13が熱可塑性を有した接着層であるため、第3層13が被転写体に接する状態で光学素子40に熱および圧力を加えることにより、光学素子40を被転写体に転写することができる。このとき、第3層13に加えられた熱および圧力によって、第3層13の裏面13Rにフィラー41に起因する凹凸が生じ、これによって、第3層13の表面13Fにも凹凸が生じる。結果として、第1層11および第2層12のなかで、光学素子40の厚さ方向から見て、第3層13に形成された凹凸と重なる部分にも、凹凸が生じる。これにより、第1層11と第2層12との界面において、格子パターンGPに対してフィラー41に起因する凹凸が付加される。被転写体は、例えば、紙幣、パスポート、および、カードとできる。
第1層11と第2層12との界面における凹凸は、フィラー41の大きさ、各層11,12,13の厚さ、および、光学素子40を転写するときの熱および圧力の条件によって、調節することができる。
格子パターンGPには、フィラー41に起因する凹凸が付加されるため、格子パターンGPを構成する複数の格子構造11Gには、格子構造11Gに対する光の入射角が違いに異なる格子構造11Gが含まれる。そして、各格子構造11Gは、その格子構造11Gにおける光の入射角に応じた射出角で、m次回折光を反射する。各格子構造11Gがm次回折光を射出する射出角の範囲は、各格子構造11Gに付与された凹凸が有する曲率によって変わる。言い換えれば、観察者が、格子パターンGPが呈する色を観察することが可能な観察角度は、各格子構造11Gに付与された凹凸の曲率によって変わる。
上述したように、光学素子40が呈する色は、観察角度における2°以上の範囲において保たれることが好ましい。一方で、光学素子40が呈する色を観察することができる観察角度の範囲が広すぎると、各観察角度において光学素子40が射出する光の強度が低くなる。そのため、光学素子40が呈する色を観察することができる観察角度の範囲は、2°以上10°以下であることが好ましく、2°以上5°以下であることがより好ましい。こうした観察角度の範囲に、全ての格子パターンGPが射出するm次回折光の射出角が含まれることが好ましい。
そのため、フィラー41に起因する凹凸の曲率は、過度に大きくないことが好ましい。以下の2つの方法により、フィラー41に起因する凹凸の曲率が過度に大きくなることを抑えることができる。第1の方法では、フィラー41を第3層13において一様に分散させ、かつ、凹凸の曲率が過度に大きくならないように、転写における熱および圧力の条件を調節する。第2の方法では、フィラー41として、球状を有するフィラーではなく、扁平な形状を有するフィラーを用い、かつ、第3層13の厚さ方向において、フィラー41の直径が小さくなるように、第3層13にフィラー41を分散させる。
[第2例]
図41が示すように、光学素子40は、第3層13に接する第4層42をさらに備えている。第4層42は、第3層13に接する表面42Fを含んでいる。表面42Fは、凹凸を含んでいる。
第4層42の表面42Fにおける凹凸は、種々の方法によって形成することができる。例えば、第3層13を被転写体である第4層42に転写するときに、熱および圧力によって変形した第3層13に追従するように、第4層42の表面42Fに凹凸を形成することができる。この場合には、第3層13には、熱可塑性を有した接着層を用いることができる。また、第4層42には、例えば、紙や樹脂フィルムを用いることができる。あるいは、第4層42に微粒子や繊維を分散させることによって、第4層42の表面42Fに凹凸を形成することができる。また、第4層42の表面42Fには、第4層42を成膜するときに生じる脱泡やむらによっても凹凸を生じさせることができる。第2例においても、第1例と同様、第4層42の表面42Fに起因する凹凸を格子構造11Gに付加することができる。そのため、第2例の光学素子40によっても、第1例の光学素子40と同様の効果を得ることができる。
なお、第4層42が被転写体であり、かつ、第4層42が微粒子を含む場合には、微粒子の平均粒径が、接着層である第3層13の厚さと同程度であることが好ましい。また、第4層42に対する転写において、熱および圧力の条件を調節することによって、格子構造11Gに付与される凹凸が過度に大きくなることが抑えられる。
また、繊維が分散した第4層42として、紙製の第4層42を用いることができる。この場合、第4層42を構成する繊維は、第4層42の表面42Fに平行に並んでいる。パルプ繊維は、直径が20μm以上50μm以下であり、かつ、長さが1mm以上5mm以下程度の大きさを有する。そのため、格子パターンGPに付与される凹凸が過度に大きくなる場合がある。これに対して、セルロースナノファイバーは、直径が4nm以上100nm以下であり、かつ、長さが5μm以上程度の大きさを有する。そのため、格子構造11Gに付与される凹凸が過度に大きくなることが抑えられる。なお、セルロースナノファイバーは、パルプ繊維を分解することによって得られる繊維である。
以上説明したように、第4実施形態の光学素子によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(4)フィラー41に起因する凹凸が格子パターンGPに付与されるため、複数の格子構造11Gが、格子構造11Gに対する光の入射角が互いに異なる格子構造11Gを含むことができる。これにより、格子構造11Gにおける射出角も異なるため、格子パターンGPから射出される光が観察される観察角度を広げることができる。
(5)第4層42の表面42Fに起因する凹凸が格子パターンGPに付与されるため、複数の格子構造11Gが、格子構造11Gに対する光の入射角度が互いに異なる格子構造11Gを含むことができる。これにより、格子構造11Gにおける射出角も異なるため、格子パターンGPから射出される光が観察される観察角度を広げることができる。
[第5実施形態]
図42および図43を参照して、光学素子の第5実施形態を説明する。本発明の第5実施形態の光学素子は、第1実施形態の光学素子と比べて、第1層から第3層の他に、樹脂層を備える点が異なっている。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明する一方で、第5実施形態の光学素子において第1実施形態の光学素子10と対応する構成には、第1実施形態の光学素子10と同じ符号を付すことによって、その詳しい説明を省略する。
[第1例]
図42が示すように、光学素子50は、第1層11に対して第2層12とは反対側に樹脂層14を備える。樹脂層14は、第1層11に接している。第1層11の硬度は、第3層13の硬度および樹脂層14の硬度よりも高い。なお、これらの層の積層体において、第2層12の厚さは他の層の厚さと比べて薄い。そのため、第2層12の硬度は、光学素子50が有する特性に対してあまり影響しないと見なすことが可能であるとして省略した。
例えば、第1層11、第2層12、第3層、および、樹脂層14を供えるカードなどの媒体を製造する場合に、各層が有する微細な凹凸構造やフィラーなどの凹凸が、カードを形成する複数の層をラミネートする際に、格子パターンGPに対して付与されることがある。このとき、樹脂層14および第3層13が比較的弾性を有した材料によって形成されていることによって、樹脂層14および第3層によって外部からの力を吸収することができる。また、第1層11をこれらの層に対して硬度の高い材料によって形成することによって、積層体に外部から力が加わった場合にも、格子パターンGPの領域にまで微細な凹凸の影響が生じないようにすることができる。これにより、格子パターンGPが備える格子構造11Gの形状が変形することを抑え、これによって、特定の方向において観察される色の純度および発色の強さを維持することができる。
上記の硬度を達成するために、第1層11を形成する材料が紫外線硬化性樹脂であり、第3層13および樹脂層14を形成する材料が熱可塑性樹脂であってよい。さらに、第1層11の厚さを、第1層11に形成する格子構造11Gの構造高さよりも厚くすることによって、第1層11有する硬度による効果をより高めることができる。第1層11の厚さは、1μm以上10μm以下とできる。
なお、樹脂層14は、上述したフィラーを含んでもよい。
[第2例]
図43は、第1例の構造を含むカード50Cの構造における一例を示している。
図43が示す例では、例えば、第1層11は成形層であり、第2層12は反射層であり、第3層13は接着層であり、樹脂層14は剥離層である。これらの積層体を印字層16に転写し、次いで、印字層16に対して白色層17と印字層16とを順に積層する。そして、最上層である樹脂層14、および、最下層である印字層16の各々に保護層15を積層してラミネートする。これにより、図43に示すカード50Cを得ることが可能である。
印字層16は、例えばレーザー光線に反応することによって黒色となる材料によって形成されている。印字層16のレーザー光線で炭化し黒色となる材料によって形成できる。印字層16には、上述したラミネートの後に識別情報や顔画像などの生体情報を印字することが可能である。また、白色層17には、ポリカーボネートなどによって形成された耐熱性の高い基材を用いることが好ましい。白色層17の表面には、印刷が施されていてもよい。
保護層15は、樹脂層14に接する面に凹凸を有している。これにより、上述したラミネートの後に、カード50Cには、保護層15を介してカード50Cに入射した光を散乱する効果が付与される。これによって、観察者が、カード50Cから射出される光を視認することができる観察角度の範囲を広げることができる。このとき、第1層11が第1例に記載の硬度および第1例に記載の厚さの少なくとも一方を有することができる。これによって、格子パターンGPの形状に対して保護層15の凹凸が影響することを抑えつつ、すなわちカード50Cから射出される光が有する明瞭な色相を保ちつつ、当該光が観察される角度範囲を広げることができる。
[第6実施形態]
図44から図50を参照して、光学素子の第6実施形態を説明する。本発明の第6実施形態の光学素子は、第1実施形態の光学素子と比べて、レリーフ面を備えるレリーフ層を備える点が異なっている。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明する一方で、第6実施形態の光学素子において第1実施形態の光学素子10と対応する構成には、第1実施形態の光学素子10と同じ符号を付すことによって、その詳しい説明を省略する。また以下では、第6実施形態の光学素子における2つの例を順に説明する。
[第1例]
[光学素子の構成]
図44を参照して、第1例の光学素子における構成を説明する。
図44が示すように、光学素子60は、上述した第1実施形態の光学素子10と同様、第1層11と、第1層11に接する第2層12と、第2層12に接する第3層13とを備えている。第1層11は、第2層12に接する裏面11Rの少なくとも一部に格子構造11Gを含む樹脂製の層である。裏面11Rは、第1面の一例である。図44では、図示の便宜上、裏面11Rの全体に格子構造11Gが位置するような断面形状が示されているが、本実施形態の光学素子60では、裏面11Rの一部に格子構造11Gが形成されている。
第2層12において、第1層11の裏面11Rに接する表面12Fが、格子構造11Gに追従した凹凸状である。表面12Fは、第2面の一例である。第2層12は、第1層11の屈折率よりも高い屈折率を有した誘電体製の層である。第3層13は、第2層12よりも屈折率が低い樹脂製の層である。
光学素子60は、裏面11Rおよび表面12Fとは異なるレリーフ面13Reを含むレリーフ層を含んでいる。レリーフ面13Reは、複数の反射面を含み、互いに隣り合う反射面間のピッチが、格子構造11Gのピッチよりも大きい。本実施形態では、レリーフ層は、上述した第3層13である。より詳しくは、第3層13のなかで、第4層61に接する面である裏面13Rが、レリーフ面13Reである。
なお、図44では、図示の便宜上、裏面13Rの全体にレリーフ面13Reが位置しているが、本実施形態の光学素子60では、裏面13Rの一部にレリーフ面13Reが位置している。また、レリーフ面13Reは、光学素子60の厚さ方向から見て、裏面13Rのなかで格子構造11Gと重なる位置に形成されている。
格子構造11Gは、正反射方向を含む反射方向に、格子構造11Gの格子周期に固有の色を呈する有色像を表示する。レリーフ面13Reは、正反射方向とは異なる方向を含む反射方向に白色の反射光による反射像を表示する。光学素子60は、有色像および反射像を表示しない第1状態、有色像を主として表示する第2状態、反射像を主として表示する第3状態、および、有色像および反射像を主として表示する第4状態を有する。光学素子60が広がる平面と、観察者の視線を含む平面とが形成する角度が観察角度である。光学素子60は、観察角度に応じて各状態のいずれかを有する。
光学素子60は、さらに第4層61を備えている。第4層61は、反射層であってもよいし、屈折層であってもよい。第4層61が屈折層である場合、第4層61の屈折率は、第3層13の屈折率と異なっている。第4層61の屈折率が、第3層13の屈折率と異なることによって、第4層61は、レリーフ面13Reにおける反射率を高めることができる。互いに隣接する2つの層において、界面における反射率は、2つの層の間における屈折率の差によって決まる。そのため、第4層61の屈折率が第3層13の屈折率とは異なることによって、第4層61が反射層である場合と同様の効果が得られる。
上述したように、光学素子60は、第2層12に対して第3層13とは反対側から観察される。そのため、第4層61は、光透過性を有してもよいし、光透過性を有しなくてもよい。第4層61は、単一の層から構成されてもよいし、複数の層から構成されてもよい。第4層61が屈折層であり、かつ、複数の層から構成される場合には、第4層61は、相対的に屈折率の低い層と、相対的に屈折率の高い層とを備えることができる。
レリーフ面13Reは、上述したように複数の反射面を含んでいる。レリーフ面13Reは、散乱および反射の少なくとも一方によって、白色光によって形成される反射像を表示する。レリーフ面13Reは、上述したように複数の反射面を含み、複数の反射面は、レリーフ面13Re内において所定の規則で並んでもよいし、不規則に並んでもよい。レリーフ面13Reでは、各反射面の向きや角度によって、レリーフ面13Reが射出する光の射出方向を制御することができる。
格子構造11Gは、上述した正反射方向を含む射出方向の範囲に光を射出する。格子構造11Gが射出する光のなかで、正反射方向に射出される光の強度が最も大きい。これに対して、レリーフ面13Reは、正反射方向とは異なる方向を含む射出方向の範囲に光を射出する。レリーフ面13Reが射出する光のなかで、正反射方向とは異なる方向に射出される光の強度が最も大きい。言い換えれば、レリーフ面13Reでは、レリーフ面13Reが射出する光のなかで、正反射方向とは異なる方向に射出される光の強度が最も大きくなるように、反射面の向きや角度が設定されている。
レリーフ面13Reにおいて、反射面の周期は400nmよりも大きく1000nm以下であってもよいし、1000nmよりも大きくてもよい。レリーフ面13Reが回折光を射出することを抑える上では、反射面の周期は1000nmよりも大きいことが好ましい。レリーフ面13Reにおいて、例えば、反射面が延びる方向と直交する断面における形状は、鋸歯状でもよい。
格子構造11Gが表示する有色像とは、可視光の波長に含まれる特定の波長の光によって形成される像である。有色像には、例えば、赤色の像、緑色の像、および、青色の像などの有彩色の像が含まれる。格子構造11Gが赤色の像を表示する場合、格子構造11Gが射出する光には、例えば、620nm以上750nm以下の波長の光が含まれる。格子構造11Gが緑色の像を表示する場合、格子構造11Gが射出する光には、例えば、495nm以上570nm以下の波長の光が含まれる。格子構造11Gが青色の像を表示する場合、格子構造11Gが射出する光には、例えば、450nm以上495nm以下の波長の光が含まれる。なお、格子構造11Gが有色像を表示するとは、格子構造11Gが、有彩色を呈することと同義である。
レリーフ面13Reが表示する反射像とは、レリーフ面13Reでの反射あるいは散乱によって生じる白色光によって形成される像である。言い換えれば、レリーフ面13Reが表示する反射像は無彩色の像であり、色相を有しない像である。レリーフ面13Reは、各位置から射出される白色光の強度が互いに異なるように構成されてもよい。これにより、レリーフ面13Reは、白色光の強度の差によって、言い換えれば明度の差によって、特定の画像を表示することができる。なお、レリーフ面13Reが反射像を表示するとは、レリーフ面13Reが、無彩色を呈することと同義である。
[光学素子の作用]
図45から図49を参照して、光学素子60の作用を説明する。
図45が示すように、光源LSが放出した入射光ILが光学素子60に入射する角度が入射角αであり、光学素子60が射出する射出光ELが射出される角度が射出角βである。観察者OBの視線方向を含む平面と、光学素子60が広がる平面とが形成する角度が、観察角度θOBである。上述した正反射方向とは、入射角αと同一の大きさを有した射出角βで、射出光ELが射出される方向である。光学素子60において、格子構造11Gは、正反射方向を含む反射方向に有色像を表示する一方で、レリーフ面13Reは、正反射方向とは異なる方向を含む反射方向に白色光による反射像を表示する。光学素子60は、観察角度θOBに応じて、以下の4つの状態のいずれかを有する。
なお、本実施形態では、格子構造11Gが表示する有色像が月形状を有し、レリーフ面13Reが表示する反射像が星形状を有する例を説明する。ただし、格子構造11Gが表示する有色像の形状、および、レリーフ面13Reが表示する反射像の形状は、任意の形状とすることが可能である。また、格子構造11Gが表示する像が第1像であり、レリーフ面13Reが表示する像が第2像である。
図46は、光学素子60の第1状態を示している。
図46が示すように、光学素子60の第1状態では、光学素子60において、第1像P1および第2像P2の両方が消失する。第1状態において、第1像P1を形成するための光における輝度、および、第2像P2を形成するための光における輝度が、観察者OBによって第1像P1および第2像P2が識別されない程度に低い。言い換えれば、観察者OBが光学素子60を観察する観察角度θOBでは、格子構造11Gが反射した光、および、レリーフ面13Reが反射した光の輝度は、いずれも光学素子60が貼られた媒体の反射光と比べて低いため、観察者OBによって第1像P1および第2像P2が識別されない。
図47は、光学素子60の第2状態を示している。
図47が示すように、光学素子60の第2状態では、光学素子60において、第1像P1が出現し、第2像P2は消失する。第1像P1が出現するとは、第1像P1における光の輝度が、第2像P2における光の輝度よりも高い状態で、光学素子60が、第1像P1を表示することである。そのため、第2状態には、第1像P1が識別される一方で、第2像P2は識別されない状態が含まれる。また、第2状態には、光学素子60において第1像P1および第2像P2が出現し、かつ、第1像P1における光の輝度が、第2像P2における光の輝度よりも高い状態が含まれる。
言い換えれば、観察者OBが光学素子60を観察する観察角度θOBでは、格子構造11Gが反射した光を観察者が知覚しやすい一方で、レリーフ面13Reが反射した光を観察者が知覚しにくい。
図48は、光学素子60の第3状態を示している。
図48が示すように、光学素子60の第3状態では、光学素子60において、第2像P2が出現する。第2像P2が出現するとは、第2像P2における光の輝度が、第1像P1における光の輝度よりも高く、光学素子60が、少なくとも第2像P2を表示することである。そのため、第3状態には、第2像P2が識別される一方で、第1像P1が識別されない状態が含まれる。また、第3状態には、光学素子60が第2像P2および第1像P1を表示し、かつ、第2像P2における光の輝度が、第1像P1における光の輝度よりも高い状態が含まれる。
言い換えれば、観察者OBが光学素子60を観察する観察角度θOBでは、レリーフ面13Reが反射した光の輝度は観察者が像を識別できる程度であり、格子構造11Gが反射した光の輝度は観察者が識別できる程度ではない。
図49は、光学素子60の第4状態を示している。
図49が示すように、光学素子60の第4状態では、光学素子60において、第1像P1および第2像P2の両方が出現する。第1像P1および第2像P2の両方が出現するとは、光学素子60が第1像P1および第2像P2の両方が観察者に識別される。この状態では、第1像P1における光の輝度が、第2像P2における光の輝度とほぼ等しくてもよい。言い換えれば、観察者OBが光学素子50を観察する観察角度θOBでは、格子構造11Gが反射した光と、レリーフ面13Reが反射した光の強度は、観察者OBが識別できる程度である。なお、光学素子60は第1状態から第3状態を有していればよく、光学素子60において、第4状態は必須ではない。
このように、光学素子60は、白色の反射光によって形成される反射像、すなわち無彩色の像と、特定の波長を有した光によって形成される有色像、すなわち有彩色の像とを表示する。ここで、無彩色の像と有彩色の像との判別は、無彩色の第1像と無彩色の第2像とを判別したり、有彩色の第1像と有彩色の第2像とを判別したりする場合に比べて、2つの像の判別に個人差が生じにくい。それゆえに、光学素子60では、2つの有彩色の像、または、2つの無彩色の像に基づいて、光学素子60の真正を検証させる場合と比べて、真正の検証に個人差が生じにくく、また、真正を検証する基準が明文化されやすい。
また、光学素子60は、第1像P1が主として表示される第2状態と、第2像P2が主として表示される第3状態と、第1像P1と第2像P2との両方が表示されない第1状態とを含む。ここで、第2状態あるいは第3状態と第1状態とは、互いに対照的な状態であるため、第2状態あるいは第3状態と第4状態との判別に個人差が生じにくい。それゆえに、真正の検証に個人差が生じにくく、また、真正を検証する基準が、簡単に記述できる。
[第2例]
図50を参照して、光学素子60の第2例を説明する。
図50が示すように、第2例の光学素子60は、第1例の光学素子60と同様、第1層11、第2層12、および、第3層13を備えている。一方で、第2例の光学素子60では、第2層12がレリーフ層である。第2層12は、第2層12の表面12Fとは反対側の面、すなわち裏面12Rとしてレリーフ面12Reを含んでいる。なお、図50では、裏面12Rの全体にレリーフ面12Reが位置しているが、レリーフ面12Reは、裏面12Rの全体に位置してもよいし、裏面12Rの一部のみに位置してもよい。
第2例の光学素子60では、第1層11の屈折率と第2層12の屈折率との差によって、格子構造11Gにより反射された光による有色像を表示することができる。また、第2例の光学素子60では、第2層12の屈折率と第3層13の屈折率との差によって、レリーフ面12Reにより反射された光による反射像を表示することができる。
なお、第2例の光学素子60において、第3層13における第2層12に接する面とは反対側の面は平坦面であってもよいし、第2層12のレリーフ面12Reにおける凹凸に追従する形状を有してもよい。
以上説明したように、光学素子の第6実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(6)光学素子60が、有色像と白色光による反射像とを表示するため、2つの像の判別に個人差が生じにくい。それゆえに、光学素子60では、真正の検証に個人差が生じにくく、また、真正を検証する基準が、簡単に記述できる。
(7)第2層12が格子構造11Gとレリーフ面12Reとを含むため、第1層11の屈折率と第2層12との屈折率との差により格子構造11Gでの反射率を高め、かつ、第2層12の屈折率と第3層13の屈折率との差によりレリーフ面12Reでの反射率を高めることができる。
[第6実施形態の変形]
なお、上述した第6実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[レリーフ層]
・光学素子60において、第1層11がレリーフ層であってもよい。すなわち、第1層11のなかで、格子構造11Gを含む面とは反対側の面が、レリーフ面を含んでもよい。こうした場合にも、上述した(6)に準じた効果を得ることができる。
・第2例の光学素子60において、第3層13のなかでレリーフ面12Reに接する面である表面は、レリーフ面12Reに追従する形状を有している。そのため、第3層13の表面もレリーフ面として機能することができる。
[第7実施形態]
図51から図54を参照して、光学素子の第7実施形態を説明する。本発明の第7実施形態の光学素子は、第6実施形態の光学素子60と比べて、第1層11、第2層12、および、第3層13以外の層がレリーフ層である点が異なる。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明する一方で、第7実施形態の光学素子において、第6実施形態の光学素子60と対応する構成には、第6実施形態と同じ符号を付すことによって、その詳しい説明を省略する。また以下では、第7実施形態の光学素子として4つの例を順に説明する。
[第1例]
図51を参照して、第1例の光学素子を説明する。
図51が示すように、光学素子70は、第1層11、第2層12、および、第3層13を備えている。光学素子70は、レリーフ面71Reを含むレリーフ層71をさらに備えている。レリーフ面71Reは、上述した裏面11Rおよび表面12Fとは異なる面である。レリーフ面71Reは複数の反射面を含み、互いに隣り合う反射面間のピッチが、格子構造11Gのピッチよりも大きい。レリーフ面71Reは、レリーフ層71の裏面71Rに含まれる。
光学素子70は、反射層72と、接着層73とをさらに備えている。反射層72は、レリーフ面71Reに接し、かつ、レリーフ面71Reの凹凸に追従する形状を有している。接着層73は、反射層72に対してレリーフ層71とは反対側において反射層72に接している。光学素子70において、第3層13が接着層として機能している。これにより、第1層11および第2層12から構成される多層体が、第3層13によってレリーフ層71に貼り付けられている。そのため、光学素子70では、光学素子70の厚さ方向から見て、格子構造11Gとレリーフ面71Reとが重なっている。
接着層73は、反射層72においてレリーフ層71に接する面とは反対側の面の全体に位置してもよいし、一部に位置してもよい。
第1例の光学素子70によれば、第1層11、第2層12、および、第3層13から形成される第1多層体と、レリーフ層71、反射層72、および、接着層73から形成される第2多層体とを個別に製造することができる。また、第1例の光学素子70によれば、接着層73を用いて光学素子70を被接着体に貼り付けることができる。
[第2例]
図52を参照して、第2例の光学素子を説明する。
図52が示すように、光学素子70は、上述した第1例の光学素子70と同様、第1層11、第2層12、および、第3層13に加えて、レリーフ層71、反射層72、および、接着層73を備えている。第2例の光学素子70は、さらに、第3層13とレリーフ層71との間に基材74を備えている。基材74において互いに隣り合う一対の面では、第3層13が一方の面に位置し、レリーフ層71が他方の面に位置している。基材74は光透過性を有している。基材74は、光学素子70の製造時に、基材74に対して形成される第1層11およびレリーフ層71の支持層として機能することができる。第2例の光学素子70は、レリーフ層71に対して基材74側から観察される。
[第3例]
図53を参照して、第3例の光学素子を説明する。
図53が示すように、光学素子70では、上述した第1例の光学素子70と同様、第1層11、第2層12、および、第3層13に加えて、レリーフ層71、反射層72、および、接着層73を備えている。第3例の光学素子70は、さらに、第1基材75と第2基材76とを備えている。第1基材75は、第3層13とレリーフ層71との間に位置している。第3層13は接着層として機能し、これにより、第1層11および第2層12から構成される多層体が第3層13によって第1基材75に接着されている。接着層73は、第2基材76に接着されている。第1基材75は、光透過性を有する。一方で、第2基材76は、光透過性を有してもよいし、光透過性を有しなくてもよい。
第1層11、第2層12、および、第3層13から構成される第1多層体は、格子構造11Gと対向する平面視において、第1基材75の一部に位置している。レリーフ層71、反射層72、および、接着層73を備える第2多層体は、レリーフ面71Reと対向する平面視において、第2基材76の一部に位置している。光学素子70の厚さ方向から見て、第1層11はレリーフ層71に重なっている。
[第4例]
図54を参照して、第4例の光学素子を説明する。
図54が示すように、光学素子70は、第1例の光学素子70と同様、第1層11、第2層12、および、第3層13に加えて、レリーフ層71、反射層72、および、接着層73を備えている。光学素子70は、さらに、第1基材75、および、第2基材76を備えている。第3層13は接着層として機能し、第3層13はレリーフ層71に接着している。接着層73は、第2基材76に接着している。
上述した第1多層体は、格子構造11Gと対応する平面視において、第1基材75の一部に位置している。第2多層体は、レリーフ面71Reと対向する平面視において、第2基材76の一部に位置している。光学素子70の厚さ方向から見て、第1層11はレリーフ層71に重なっている。
光学素子70は、接着層73に対して反射層72側から観察される。そのため、第1基材75は、光透過性を有する。一方で、第2基材76は、光透過性を有してもよいし、光透過性を有しなくてもよい。
なお、光学素子70の第1例から第4例において、各基材には、紙およびプラスチックフィルムなどを用いることができる。各基材には印刷が施されていてもよい。または、各基材は多層体であり、基材を構成する複数の層において、少なくとも一部の層に印刷が施されてもよい。
以上説明したように、第7実施形態の光学素子によれば、上述した(6)に加えて、以下に記載の効果を得ることができる。
(8)第1層11、第2層12、および、第3層13以外の層がレリーフ面を備えるレリーフ層であるため、レリーフ層における設計の自由度が高まる。
[第7実施形態の変形]
なお、上述した第7実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[基材]
・第1例から第4例の光学素子70において、格子構造11Gと対向する平面視において、各基材は、第1多層体および第2多層体の少なくとも一方よりも小さくてもよい。
・第1層11を含む第1多層体、および、レリーフ層71を含む第2多層体は、2つの基材の間に内包されてもよい。言い換えれば、第1多層体および第2多層体の各々は、2つの基材によって挟まれた状態で、ラミネートされてもよい。
・各基材は、レーザー光線の照射によって発色するレーザー発色層であってもよい。そして、第1例における基材74は、レーザー光線の照射によって基材74に記録された情報を含んでもよい。
また、第3例の光学素子70において、第1基材75および第2基材76の少なくとも一方が、レーザー光線の照射によって記録された情報を含むことができる。第1基材75が情報を含む場合には、光学素子70の厚さ方向から見て、レリーフ面71Reが表示する第2像と、第1基材75が含む情報とを重ねることによって、第2像の一部のみが視認される。これにより、光学素子70において、偽造に対する耐性が高まる。これに対して、第2基材76が情報を含む場合には、光学素子70の厚さ方向から見て、格子構造11Gが表示する第1像の全体と、レリーフ面が表示する第2像の全体とが視認される。
第3例の光学素子70において、第1基材75が情報を含む場合には、光学素子70の厚さ方向から見て、格子構造11Gが表示する第1像、および、レリーフ面71Reが表示する第2像と、第1基材75が含む情報とを重ねることによって、第1像の一部、および、第2像の一部のみが視認される。これにより、光学素子70において、偽造に対する耐性が高まる。これに対して、第2基材76が情報を含む場合には、光学素子70の厚さ方向から見て、格子構造11Gが表示する第1像の全体と、レリーフ面が表示する第2像の全体とが視認される。
[第8実施形態]
図55を参照して、光学素子を備える転写箔を説明する。本発明の第8実施形態では、転写箔が備える光学素子が、第6実施形態の光学素子60における第1例である場合を、転写箔の一例として説明する。
図55が示すように、転写箔80は、光学素子60と、光学素子60を被転写体に接着させるための接着層81と、を含む接着体を備えている。転写箔80は、さらに、支持層82と剥離層83とを備えている。転写箔80において、支持層82、剥離層83、光学素子60、および、接着層81が、記載の順に積み重なっている。被転写体に転写された後の光学素子60は、剥離層83に対して光学素子60とは反対側から観察される。そのため、剥離層83は光透過性を有する。一方で、光学素子60が転写されるとき、剥離層83は支持層82から剥離されるため、支持層82は光透過性を有してもよいし、光透過性を有しなくてもよい。
転写箔80は、格子構造11Gとレリーフ面13Reとを含む。そのため、被転写体には、転写箔80の一部を転写するのみによって、第1像P1と第2像P2とを表示する光学素子60を転写することができる。光学素子60の転写には、例えば、ホットスタンプ方式を用いることができる。
[第8実施形態の変形例]
[転写箔]
・格子構造11Gを含む第1転写箔と、レリーフ面13Reを含む第2転写箔とを準備し、2つの転写箔を用いて光学素子を形成することが可能である。この場合には、光学素子の厚さ方向から見て、第1転写箔が含む格子構造11Gと、第2転写箔が含むレリーフ面13Reとが重なるように、被転写体に対して第1転写箔の一部と第2転写箔の一部とを転写すればよい。この場合には、光学素子を形成するときに、第1転写箔の一部が転写される位置と、第2転写箔の一部が転写される位置との位置合わせが必要である。そのため、光学素子において、偽造に対する耐性が高められる。
[光学素子]
・転写箔は、上述した光学素子60に代えて、第1実施形態の光学素子10、第2実施形態の光学素子20、第3実施形態の光学素子30、および、第4実施形態の光学素子40を含んでもよい。また、転写箔は、上述した光学素子60に代えて、第6実施形態における第2例の光学素子60、第7実施形態における第1例および第2例の光学素子70を含んでもよい。
[第9実施形態]
図56から図58を参照して、第9実施形態の光学素子を説明する。本発明の第9実施形態では、第6実施形態と比べて、第6実施形態におけるレリーフ面を、格子構造と同じ面に備える点が異なっている。
図56が示すように、光学素子90において、第1層91は、格子構造11Gおよびレリーフ面11Reを第2層12との界面に備えている。光学素子90では、例えば、格子構造11Gが形成された格子領域SA1と、レリーフ面11Reが形成されたレリーフ領域SA2とが、交互に配置される。図56では、図示の便宜上、第1層11が格子領域SA1とレリーフ領域SA2とをそれぞれ一つずつ備え、かつ、第1層11の裏面11Rは、格子領域SA1およびレリーフ領域SA2以外の領域を有していない。しかしながら、格子領域SA1およびレリーフ領域SA2の数や配置は、光学素子90が表示する像によって変更される。
上述したレリーフ面71Reと同様、レリーフ面11Reは、複数の反射面を含む。各反射面を含む構造における幅は、格子構造11Gの幅よりも大きくてもよいし、各反射面を含む構造の高さは、格子構造11Gの高さよりも高くてもよい。あるいは、反射面を含む構造の幅は格子構造11Gの幅と同等であってもよく、また、反射面を含む構造の高さは格子構造11Gの高さと同等であってもよい。ただし、レリーフ面11Reによって表示される色は無彩色を主とし、かつ、レリーフ面11Reは、格子構造11Gによって有色像が表示される観察角度とは異なる観察角度に像を表示する。
上述したように、レリーフ面11Reにおいて、反射面が延びる方向と直交する断面における形状は、例えば鋸歯状でもよい。反射面を含む構造が、レリーフ面11Reにおいて回折光が発生しない程度に大きい場合には、レリーフ面11Reにおいて、互いに隣り合う反射面のピッチが略一定であってよく、これによって、レリーフ面11Reが特定の方向に白色光を反射することができる。一方で、反射面を含む構造が、レリーフ面11Reにおいて回折光が発生する程度に小さい場合には、例えば、レリーフ面11Re内に、互いに異なる大きさを有した構造を混在させ、これによって、各大きさの構造に起因する回折光を混合することによって、光学素子90に白色を表示させてもよい。
図57(a)は、光学素子90が格子構造11Gによって表示する第1像P1の一例を示し、図57(b)は、光学素子90がレリーフ面11Reによって表示する第2像P2の一例を示している。なお、図57は、光学素子90が適用されたカード90Cの平面構造を、カード90Cが有する第3像P3とともに示している。なお、第3像P3は、カード90Cの所有者を識別する識別情報を含んでいる。第3像P3は、例えば、所有者の顔画像、および、氏名、ID番号などの識別情報を含んでいる。
図57(a)が示すように、光学素子90は、第1像P1としてユーロを意味する記号を表示することが可能である。図57(b)が示すように、光学素子90は、第2像P2としてユーロを意味する文字列(EURO)を表示することが可能である。光学素子90は、領域Aにおいて、第1像P1の一部と第2像P2の一部とを表示することが可能である。すなわち、領域Aには、第1像P1を表示するための格子構造11Gの一部と、第2像P2を表示するためのレリーフ面11Reの一部とが位置している。
図58が示すように、領域Aには、格子構造11Gが位置するセルと、レリーフ面11Reを形成する反射面を含む構造が位置するセルとが配置されている。
図58(a)が示すように、セルPxとセルPxrとは市松状に配置されてもよい。また、図58(b)が示すように、セルPxとセルPxrとはストライプ状に配置されてもよい。また、図58(c)が示すように、セルPxとセルPxrとは、1つのセルPxrの周りを8つのセルPxによって取り囲むように配置されてもよい。なお、領域Aにおいて、セルPxおよびセルPxrの配置、および、セルPxの面積とセルPxrの面積との比は、光学素子90が表示する像に応じて変更可能である。例えば、領域Aにおいて第1像P1の一部を第2像P2の一部よりも強調したい場合には、領域AにおいてセルPxが占める割合をセルPxrが占める割合よりも大きくしてもよい。
[第10実施形態]
図59および図60を参照して、本発明の第10実施形態の認証体を説明する。以下では、認証体の実例であるカードについて説明する。カードの実例は、IDカードや免許証、ライセンスカード、メンバーカード、クレジットカードである。なお、カードは、第7実施形態の光学素子70における第3例をカードの一部として含んでいる。
[カードの構成]
図59が示すように、カード100は、カード100の表面100Fと対向する平面視において、2次元的に広がる板状を有している。カード100は、表面100Fを介して、第1画像101、第2画像102、および、第3画像103を表示する。また、カード100は、表面100Fを介して第1像P1および第2像P2を表示する。
本実施形態では、第1画像101は、顔画像101aと背景画像101bとを含んでいる。顔画像101aは、カード100の所有者の顔を示す画像である。背景画像101bは、顔画像101aを内部に含み、顔画像101aの背景を構成している。第2画像102は、カード100の所有者に関する情報を含んでいる。第2画像102は、文字および数字によって表現される情報を含んでいる。第3画像103は、カード100に関する情報を含んでいる。第3画像103が含む情報は、カード100の名称である。顔画像101aと第2画像102はカードの所有者を識別する識別情報である。なお、カード100は、表面100Fを介して第1像P1および第2像P2を表示することが可能であればよい。上述した画像は、カード100が表示することが可能な画像の一例である。
図60は、図59におけるXIV‐XIV線に沿うカード100の断面構造を示している。
図60が示すように、認証体の一例であるカード100は、光学素子70を備えている。光学素子70は、識別情報を覆っていてもよい。カード100が備える光学素子70では、第1層11、第2層12、および、第3層13を備える第1多層体が、剥離層78をさらに備えている。剥離層78は、第1層11を覆っている。レリーフ層71、反射層72、および、接着層73を備える第2多層体は、剥離層79をさらに備えている。剥離層79は、レリーフ層71を覆っている。光学素子70において、第2多層体は、第1基材75によって覆われている。
第2基材76の全体が、レーザー光線の照射前において、レーザー光線の照射によって発色する特性を有している。カード100が備える第2基材76は、レーザー光線の照射によって発色した部分である第1発色部76aと、第2発色部76bとを含んでいる。第1発色部76aは、顔画像101aを表示する部分であり、第2発色部76bは、第2画像102を表示する部分である。
カード100は、白色層111、下部保護層112、および、上部保護層113を備えている。白色層111は、白色に着色された層であり、第2基材76に接している。白色層111のなかで、第2基材76に接する面の一部には、印刷114が施されている。カード100の厚さ方向から見て、印刷114は、第1発色部76aと重なる領域に位置している。印刷114は、背景画像101bを表示する。
下部保護層112は、白色層111のなかで、第2基材76に接する面とは反対側の面に位置している。上部保護層113は、第1基材75を覆い、かつ、第1基材75との間に第1多層体を内包している。上部保護層113は、光透過性を有している。一方で、下部保護層112は、光透過性を有してもよいし、光透過性を有しなくてもよい。
[第10実施形態の変形例]
[認証体]
・認証体は、カードに限らず、例えばパスポートなどの所有者を認証するために用いられる他の認証体として具体化されてもよい。
[光学素子]
・認証体は、上述した光学素子70に代えて、第1実施形態の光学素子10、第2実施形態の光学素子20、第3実施形態の光学素子30、第4実施形態の光学素子40、第6実施形態の光学素子60、および、第9実施形態の光学素子90を含んでもよい。また、認証体は、上述した光学素子70に代えて、第7実施形態の第1例、第2例、および、第4例における光学素子70を備えてもよい。
[第11実施形態]
図61から図68を参照して、本発明の第11実施形態の認証体を説明する。以下では、認証体の一例としてカードの他の例を説明する。
[カードの構成]
図61を参照して、カードの構成を説明する。カードの一例として、第1実施形態の光学素子10を備えるカードについて説明するが、カードは、第1実施形態の光学素子10に限らず、第2実施形態から第9実施形態の各々における光学素子を備えてもよい。
カード120は、第1層11、第2層12、および、第3層13に加えて、表示層121をさらに備えている。表示層121は、所定の情報を表示することができる。表示層121は、例えば、文字、数字、図形、および、QRコード(登録商標)などを用いて所定の情報を表示することができる。カード120は、第1層11において第2層12に接する面とは反対側の面として、表面120Fを含んでいる。
表示層121は、第3層13に接する表示面121F上に施された印刷によって、所定の情報を表示することができる。表示面121Fに印刷を施す方法は、例えば、活版印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷とできる。印刷に用いるインキには、機能性インキを用いることができる。機能性インキは、カード120に光を照射する光源の種類あるいは状態に応じて色が変わるインキ、および、観察者の観察角度に応じて色や光沢が変わるインキなどである。光源の種類あるいは状態に応じて色が変化するインキは、蓄光インキ、および、フォトクロミックインキとできる。観察角度に応じて色や光沢が変わるインキは、パールインキ、磁性インキ、および、カラーシフトインキとできる。
蓄光インキは、太陽光や蛍光灯などから放出された光エネルギーを吸収し、かつ、蓄積し、暗闇において徐々に発光する機能を有している。フォロクロミックインキは、紫外線に反応して発色するインキである。フォトクロミックインキは、フォトクロミックインキに対する紫外線の照射量に応じて、レッド、ブルー、パープル、および、イエローなどの互いに異なる色を呈する機能を有している。パールインキは、パール顔料が添加されたインキである。パールインキの光沢は、観察角度に応じて変わる。パールインキは、パール顔料として偏光パールから形成されたパール顔料を含むことによって、観察角度に応じて色調も変わる。機能性インキによれば、表示面121Fに形成された印刷の色が変わるか否かを容易に確認することができる。そのため、カード120の真正を、印刷の色に基づいて確実に検証することができる。
なお、表示面121Fに印刷を施す方法には、インクジェット方式、サーマルプリンタ方式、および、レーザー方式などを用いてもよい。これらの方式によれば、表示面121Fに形成する情報をカード120ごとに設定することが可能である。そのため、複数のカード120に共通する柄などは、上述した印刷によって相対的に高い速度で印刷し、かつ、各カード120で識別される識別情報は、インクジェット方式、サーマルプリンタ方式、および、レーザー方式などを用いて印刷することが好ましい。
なお、上述したように、カード120が備える光学素子は、第1実施形態の光学素子10に限らず、第5実施形態および第6実施形態の各々における光学素子であってもよい。すなわち、カード120は、格子構造11Gが表示する第1像P1、レリーフ面が表示する第2像P2、および、表示層121が表示する第3像を表示することが可能であってもよい。こうしたカード120では、第1像P1の輝度、および、第2像P2の輝度が十分に高い場合には、第1像P1が表示される観察角度、および、第2像P2が表示される観察角度の各々では、第3像が視認されにくい。一方で、第1像P1および第2像P2の両方が表示されない観察角度では、第3像が視認される。それゆえに、観察者は、第3像を視認することができる。
第1像P1、第2像P2、および、第3像の各々が視認される観察角度は、第1像P1および第2像P2の各々が発現する観察角度、すなわち、格子構造11Gおよびレリーフ面の形状によって、任意に設定することが可能である。
カード120において、第1層11、第2層12、および、第3層13から構成される多層体は、3つの層が積み重なる方向において、70%以上の透過率を有することができる。これにより、カード120が表示する像が視認されやすい。この場合特に、第1層11、第2層12、および、第3層13から構成される多層体である光学素子が識別情報を覆う場合、その識別のしやすさが向上する。例えば、道路運送車両の保安基準における第195条では、自動車の前面ガラスおよび側面ガラスの各々における透過率が70%以上であることが義務づけられている。こうした基準に鑑みても、人が情報を明瞭かつ確実に視認する上では、情報を表示するための光が透過する透過体の透過率が70%以上であることが好ましいと言える。
透明な多層体の透過率は、分光光度計を用いて測定することができる。カード120が観察される環境では、光源が太陽光または蛍光灯であることが想定される。そのため、カード100に用いられる多層体の透過率として、500nmの波長における透過率を測定することが好ましい。多層体の透過率は、JIS K7375:2008「プラスチックの全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に準拠する方法で測定することが好ましい。
[カードの作用]
図62から図68を参照して、カード120の作用を説明する。以下では、カード120の第1例における作用と、カード120の第2例における作用とを順に説明する。なお、カード120の第1例は、格子構造11Gとレリーフ面とを含む光学素子を備え、かつ、観察者の目視によってカード120の真正が検証される構成である。これに対して、カード120の第2例は、格子構造11Gを含む一方で、レリーフ面を含まない光学素子を備え、かつ、検証器によってカード120の真正が検証される構成である。
[第1例]
図62から図65を参照して、カード120の第1例における作用を説明する。
図62は、観察者OBが目視によってカード120の真正を検証する方法を模式的に示している。
図62が示すように、観察者OBは、カード120を手に持った状態でカード120を視認する。基準平面Ph0は、観察者OBがカード120の観察を開始するときにカード120が配置される平面である。基準平面Ph0は、カード120の真正を検証するときの基準面である。観察者OBは、基準平面Ph0に配置したカード120を、第1平面Ph1、第2平面Ph2、および、第3平面Ph3の各々に沿うように傾ける。観察者OBは、カード120が各平面Ph1,Ph2,Ph3の各々に位置するときに、カード120を観察する。基準平面Ph0と第1平面Ph1とが形成する角度が第1角度θ1であり、基準平面Ph0と第2平面Ph2とが形成する角度が第2角度θ2であり、基準平面Ph0と第3平面Ph3とが形成する角度が第3角度θ3である。第1角度θ1は、第2角度θ2および第3角度θ3よりも大きく、かつ、第2角度θ2は、第3角度θ3よりも大きい。
光源LSは、カード120に対して観察者OBとは反対側に位置している。言い換えれば、光源LSは、観察者OBの前方に位置している。光源LS、カード120、および、観察者OBは、カード120に入射した光源LSの光が、カード120において、観察者OBに向けて反射されるような相対位置で配置されている。カード120を観察するときには、点光源からの光が一方向からカード120に入射することが好ましい。しかしながら、実際には、カード120の観察時には、蛍光灯からの光や外光が、様々な方向からカード120に入射する。この場合であっても、カード120に入射した光に、カード120において観察者OBに向けて反射される光が含まれていれば、カード120から射出される光の輝度が低くなるものの、観察者OBは、カード120が表示する情報を視認することができる。
図63から図65は、それぞれカード120が表示する像を示している。図63は、カード120が第1平面Ph1に配置されたときにカード120が示す像であり、図64は、カード120が第2平面Ph2に配置されたときにカード120が示す像である。図65は、カード120が第3平面Ph3に配置されたときにカード120が示す像である。なお、カード120は、第1像P1、第2像P2、および、第3像P3を表示することが可能に構成されている。
図63が示すように、観察者OBがカード120を第1平面Ph1に配置したとき、カード120は、第3像P3のみを表示している。なお、第3像P3は、カード120の所有者を識別する識別情報を含んでいる。第3像P3は、例えば、所有者の顔写真、および、氏名、ID番号などの識別情報を含んでいる。観察者OBがカード120を第1平面Ph1に配置したときには、カード120は、第3像P3の全てを、表面120Fを介して外部に表示する。
図64が示すように、観察者OBがカード120を第2平面Ph2に配置したとき、カード120は、第2像P2を表示する。カード120の表面120Fと対向する平面視において、第2像P2は第3像P3の一部に重なる。そのため、本実施形態では、第3像P3の一部は、第2像P2によって隠蔽される。なお、第2像P2の輝度は、第3像P3の一部を完全に隠蔽しない程度の輝度であってもよい。
図64が示すように、観察者OBがカード120を第3平面Ph3に配置したとき、カード120は、第1像P1を表示する。一方で、カード120は、第2像P2を表示しない。カード120の表面120Fと対向する平面視において、第1像P1は第3像P3の一部に重なる。そのため、本実施形態では、第3像P3の一部は、第1像P1によって隠蔽される。なお、第1像P1の輝度は、第3像P3の一部を完全には隠蔽しない程度の輝度であってもよい。
このように、観察者OBがカード120を基準平面Ph0に対して前方に傾けた場合に、カード120は、カード120の位置に応じて、第1像P1および第2像P2を表示する。言い換えれば、観察者OBが、観察空間において、カード120のなかで観察者OBが把持した部分の位置をほぼ固定した状態で、カード120の表面120Fを観察者OBに近づけた場合に、カード120の位置に応じて、カード120は、第1像P1および第2像P2を表示する。
なお、観察者OBが、例えば第2平面Ph2を基準面として、カード120を左右に傾けた場合にも、観察者OBは、カード120が表示する第1像P1および第2像P2を視認することは可能である。言い換えれば、観察者OBが、観察空間において、カード120の表面120Fと観察者OBとの間の距離をほぼ変えずに、カード120を傾けたときにも、観察者OBは、第1像P1および第2像P2を視認することは可能である。しかしながら、観察者OBは、第2像P2を容易に視認することができる一方で、観察者OBは、以下の理由から、限られた観察条件においてのみ第1像P1を観察することができる。
上述したように、第1像P1は、カード120の表面に対する放線を含む平面に対して、光源LSと観察者OBとが対象な角度に位置する場合にのみ観察者OBによって視認される。そのため、第2平面Ph2を基準としてカード120を左右に傾けた場合には、第2平面Ph2が基準平面Ph0と形成する角度が第3角度θ3である必要がある。ここで、第2平面Ph2は、観察者OBが無意識にカード120を手に取ったときにカード120を配置する平面である。そのため、第2平面Ph2と基準平面Ph0とが形成する角度が第3角度θ3に一致する確率は低い。これに対して、観察者OBが基準平面Ph0に対してカード120を前後に傾けたときに、観察者OBが第3平面Ph3にカード120を配置する確率が高い。
それゆえに、カード120を観察するときには、観察者OBの視線を含む平面に対して斜め上方に光源LSが位置する状態で、観察者OBがカード120を前後に傾けることが好ましい。これにより、観察者OBが、第1像P1および第2像P2の両方を観察する確率が高まる。そのため、観察者OBによるカード120の真正の検証が、正確に行われやすい。
[第2例]
図66から図68を参照して、カード120の第2例における作用を説明する。
図66は、検証器Vによってカード120の真正を検証する方法を模式的に示している。
図66が示すように、カード120の表面120Fに、光源LSからの光を入射角αで入射させ、かつ、射出角βで反射される反射光が検証器Vに入力されるように、カード120の真正を検証するための環境を設定する。検証器Vには、例えば、画像を読み取ることが可能なカメラ、および、輝度の分布を読み取ることが可能なセンサーなどを用いることができる。検証器Vは、第1像P1および第2像P2の各々を画像、もしくは、輝度などの光学的な情報として処理することが可能な機器であればよい。
図67は、真正のカード120が表示する像を示している。一方で、図68は、偽のカード200が表示する像を示している。なお、図67および図68は、特定の観察条件において、各カード120,200が表示する像を示している。
図66が示すように、真正のカード120は、第3像P3の一部としてQRコード(登録商標)P3aを示している。
これに対して、偽のカード200は、第3像P3の一部としてQRコードP3aを示すと同時に、第1像P1も表面200Fを介して表示している。ここで、検証器Vは、上述した観察条件において、カード100が表示するQRコードP3aを読み取った場合に、カード120が真正であると判定する。この場合には、カード120は、第3像P3の一部としてQRコードP3aを表示し、かつ、QRコードP3aが他の像とは重ならないため、検証器Vは、カード120を真正のカード120であると判定する。これに対して、カード200は、第3像P3の一部としてQRコードP3aを表示するものの、カード120の厚さ方向から見て、QRコードP3aに重なるように第1像P1を表示する。言い換えれば、検証器Vが読み取った情報には、QRコード以外の情報も含まれる。そのため、検証器Vは、カード200が偽物であると判定する。
本実施形態では、カード120,200が表示するコードとしてQRコードP3aを例示したが、カード120,200が表示するコードは検証器Vによる読み取りが可能な他のコードでもよい。他のコードには、例えばバーコードとできる。なお、検証器Vによる検証には、第3像P3ではなく、第1像P1を用いてもよいし、第2像P2を用いてもよい。
また、上述した例では、検証器Vの位置が一カ所に固定されているが、検証器Vが可動式であり、かつ、検証器Vが、上述した射出角βに加えて、射出角βとは異なる角度である角度γでもカード120から射出された光を読み取ってもよい。この場合には、互いに異なる角度において得られた2つの情報を用いることによって、カード120の真正を二段階で検証することができる。これにより、真正か偽物かの判定の確度をより高めることができる。
[光学素子の形成材料]
以下、光学素子の形成に用いることが可能な材料を説明する。以下では、光学素子のなかで、第1層11、第2層12、および、第3層13の各々を形成するための材料を説明する。
[第1層および第3層]
第1層11および第3層13の各々を形成するための材料には、以下の各種の樹脂を本質的に含むことができる。各層を形成するための材料には、例えば、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、アセタール系樹脂、および、セルロース系樹脂などを用いることができる。第1層および第3層の形成材料には、これらの樹脂のうちの1つのみを用いてもよいし、2つ以上を混合または、複合して用いてもよい。第1層11および第3層13を形成するための材料は、硬化剤、可塑剤、分散剤、各種レベリング剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、潤滑剤、および、光安定化剤などの少なくとも1つを含んでもよい。
第1層11および第3層13の各々を形成する方法には、例えば、熱エンボス法、キャスト法、および、フォトポリマー法などを挙げることができる。フォトポリマー法では、プラスチックフィルムなどの平坦な基材と、金属製のスタンパとの間に、放射線硬化樹脂を流し込む。そして、放射線の照射によって放射線硬化樹脂を硬化させた後、硬化された樹脂膜を基材ごと金属製のスタンパから剥離する。フォトポリマー法では、熱可塑性樹脂を利用するプレス法やキャスト法に比べて、微細凹凸構造の転写精度が高く、耐熱性や耐薬品性にも優れているため好ましい。
[第2層]
第2層12を形成するための材料には、上述したように、光透過性を有した誘電体を用いることができる。誘電体には、金属、金属化合物、ケイ素化合物、または、これらの混合物を用いることができる。誘電体は、例えば、ZnS、ZnO、ZnSe、SiNx、SiOx、TixOx、Ta2O5、Cr2O3、ZrO2、Nb2O5、および、ITOとできる。
第2層12を形成する方法には、例えば、物理気相成長法、および、化学気相成長法などを用いることができる。物理気相成長法は、実例として、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法を適用できる。化学気相成長法には、実例として、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および、光化学気相成長法を適用できる。真空蒸着法は、生産性を高めやすい。イオンプレーティング法は、良質な反射層を形成しやすい。なお、物理気相成長法および化学気相成長法における成膜条件は、反射層の形成材料に応じて選択することができる。
第2層12は、各種の印刷方式、キャスト方式、および、ダイコート方式などを用いて形成することもできる。この場合には、上述した誘電体の少なくとも1つが分散した樹脂を用いて、第2層12を形成することができる。
[試験例]
[試験例1]
以下、実施例1を説明する。実施例1は、上述した第10実施形態の認証体に対応する試験例である。試験例1では、第1層11を含む第1転写箔と、レリーフ層71を含む第2転写箔とを準備した。そして、第1転写箔の一部を第1基材75に転写し、かつ、第2転写箔の一部を第2基材76に転写した。第2基材76としてレーザー光線の照射によって発色する基材を用いた。第1基材75と第2基材76とをラミネートすることによって、試験例1の認証体としてIDカードを得た。
より詳しくは、第1転写箔を製造するときに、まず、厚さが38μmであるPETフィルム(ルミラー(登録商標)、東レ(株))を支持層として準備した。支持層が備える1つの面に、剥離層用インキを塗布し、剥離層用インキを乾燥させることによって、剥離層を得た。剥離層78の厚さは1μmであった。次いで、剥離層78上に第1層用インキをグラビア印刷法によって塗工した後、第1層用インキを乾燥させた。乾燥後の第1層用インキの厚さは2μmであった。そして、乾燥後の第1層用インキに、格子構造11Gを形成するための原版を押し当てることによって、格子構造11Gを成形した。なお、成形時において、プレス圧力を2kgf/cm2に設定し、プレス温度を80℃に設定し、プレススピードを10m/minに設定した。
成型と同時に、支持層に対して剥離層78とは反対側から、第1層用インキに紫外線を照射した。紫外線の照射には、高圧水銀灯を用い、かつ、高圧水銀灯の出力を300mJ/cm2に設定した。これにより、第1層用インキを硬化させることによって、第1層11を得た。そして、第1層11上に、50nmの厚さを有するTiO2膜を真空蒸着によって形成した。これにより、第2層12が得られた。次いで、接着層用インキを塗工し、接着層用インキを乾燥させることによって、2.5μm以上4μm以下の厚さを有し、接着層として機能する第3層13を得た。なお、乾燥時の温度を120℃に設定し、時間を45秒に設定した。なお、第2転写箔を形成するときには、レリーフ面71Reの成形に用いる原版を格子構造11Gの成形に用いる原版と異ならせる以外は、第1転写箔と同じ方法を用いた。
上述した剥離層用インキ、第1層用インキ、レリーフ層用インキ、第3層用インキ、および、接着層用インキとして、以下の組成を有するインキを用いた。
[剥離層用インキ]
アクリル樹脂 70.0質量部
メチルエチルケトン 30.0質量部
[第1層用インキ/レリーフ層用インキ]
紫外線硬化型アクリルアクリレート樹脂 70.0質量部
メチルエチルケトン 30.0質量部
[第3層用インキ/接着層用インキ]
ウレタン樹脂 50.0質量部
シリカフィラー 10.0質量部
メチルエチルケトン 40.0質量部
第1基材75として、100μmの厚さを有し、かつ、透明なポリカーボネート基材(LEXAN SD8B14、SABIC社製)(LEXANは登録商標)を準備した。第2基材76として、100μmの厚さを有し、かつ、レーザー光線の照射によって発色するポリカーボネート基材(LEXAN SD8B94、SABIC社製)を準備した。第1転写箔を第1基材75に転写した後、支持層を取り除いた。また、第2転写箔を第2基材76に転写した後、支持層を取り除いた。転写時には、電気式のホットスタンプ機を用い、かつ、転写箔に接する面の温度を120℃に設定し、圧力を1.05t/cm2に設定し、かつ、加圧する時間を1秒に設定した。
次いで、白色層111として、400μmの厚さを有し、かつ、白色の樹脂フィルム(LEXAN SD8B24、SAVIC社製)を準備した。下部保護層112および上部保護層113として、100μmの厚さを有し、かつ、透明な樹脂フィルム(LEXAN SD8B14)を準備した。そして、下部保護層112、白色層111、第2基材76、第1基材75、および、上部保護層113を記載の順に積み重ねた状態で、これらの層をラミネートした。ラミネート時には、温度を200℃に設定し、圧力を80N/cm2に設定し、加熱および加圧をする時間を25分に設定した。そして、ラミネート後の多層体の一部をカード状に切り出した。
レーザー印字機を用いて、1064nmの波長のレーザー光線を多層体に照射した。これにより、第2基材76に、第1発色部76aと第2発色部76bとを形成した。結果として、試験例1の認証体としてカードを得た。
[試験例2]
以下、試験例2を説明する。試験例2の転写箔は、上述した第8実施形態の転写箔に対応する試験例である。試験例1では、まず、試験例1と同じ支持層82を準備した。支持層が備える1つの面に、試験例1と同様の方法で、剥離層83を形成した。そして、試験例1と同様の方法で、剥離層83上に第1層11を形成し、かつ、第1層11上に第2層12を形成した。
次いで、第1層用インキを用いて第1層11を形成したときと同様の方法で、第3層用インキを塗工し、かつ、第3層用インキを乾燥させた。そして、乾燥後の第3層用インキに、レリーフ面13Reを形成するための原版を押し当てることによって、レリーフ面13Reを成形した。なお、成形時における各種の条件を、格子構造11Gを成形したときと同様の条件に設定した。
続いて、第2層12を形成したときと同様の方法で、レリーフ面13Re上に第4層61を形成した。また、試験例1において第3層13を形成したときと同様の方法で、第4層61上に接着層81を形成した。これにより、試験例2の転写箔を得た。なお、試験例2において第3層13を形成するための第3層用インキには、試験例1における第1層用インキと同様の組成を有するインキを用いた。
以上、本発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は本実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計,本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含むことができる。更に、本開示の範囲は、請求項により画される発明の特徴(feature)に限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴(feature)、その特徴(feature)のあらゆる組み合わせも含む。
本開示で用いられる「部分」、「要素」、「画素」、「セグメント」、「単位」「印刷体」、「物品」という用語は、物理的存在である。物理的存在は、物質的形態または、物質に囲まれた空間的形態を指すことができる。物理的存在は、構造体とできる。構造体は、特定の機能を有するものとできる。特定の機能を有した構造体の組合せは、各構造体の各機能の組合せにより相乗的効果を発現できる。
本開示および特に添付の特許請求の範囲内で使用される用語(例えば、添付の特許請求の範囲の本文)は、一般的に、「オープンな」用語として意図される(例えば、「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈すべきであり、「含む」という用語は「含むがそれに限定されない」などと解釈されるべきである。
また、用語、構成、特徴(feature)、側面、実施形態を解釈する場合、必要に応じて図面を参照すべきである。図面により、直接的かつ一義的に導き出せる事項は、テキストと同等に、補正の根拠となるべきである。
さらに、特定の数の導入された請求項の記載が意図される場合、そのような意図は、請求項に明示的に記載され、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しない。例えば、理解を助けるために、以下の添付の特許請求の範囲は、「少なくとも1つ」および「1つまたは複数」の導入句の使用を含み、請求の列挙を導入することができる。しかしながら、そのような語句の使用は、不定冠詞「a」または「an」によるクレーム記載の導入が、そのようなクレームを含む特定のクレームを、そのような記載を1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではない。「1つ以上」または「少なくとも1つ」の冒頭の語句および「a」または「an」などの不定冠詞(例えば、「a」および/または「an」)は、少なくとも「少なくとも」を意味すると解釈されるべきである。「1つ」または「1つ以上」)。請求項の記述を導入するために使用される明確な記事の使用についても同様である。
実施形態に関し付記する。
(付記1)
第1層と、前記第1層に接する第2層と、前記第2層に接する第3層とを備え、各層が透光性を有する光学素子であって、
前記第1層は第1の屈折率を有する樹脂製の層であり、前記第2層に接する第1面を有し、前記第1面の少なくとも一部に凹部および凸部によって形成された格子構造を含み、
前記第2層は前記第1の屈折率よりも高い第2の屈折率を有する誘電体製の層であり、前記格子構造に追従した凹凸状を有し、
前記第3層は、前記第2の屈折率よりも低い第3の屈折率を有する樹脂製の層であり、
前記第1面は凹凸面を有し、
前記格子構造は第1格子構造と第2格子構造とを含み、
前記凹凸面は、前記第1格子構造が位置する第1領域と、前記第1面に対向する平面視において前記第1領域に近接し、前記第2格子構造が位置する第2領域とを含み、
前記第1格子構造の方位角と、前記第2格子構造の方位角とが互いに平行か、または直交し、
前記第1格子構造および前記第2格子構造の格子周期が、250nm以上500nm以下であり、
第1領域と第2領域の平均色彩値L*a*b*の色差ΔE*abが13以上である
光学素子。
(付記2)
前記第1領域と前記第2領域との間に位置する第3領域をさらに備え、
前記第2層に対して前記第3層とは反対側に位置する光源から前記光学素子に対し光が照射されている状態を前記光源の側からある観察角度で観察するとき、前記光学素子は、前記第3領域が呈する色が、前記第1領域が呈する色、および、前記第2領域が呈する色の両方と異なる状態を有する
付記1に記載の光学素子。
(付記3)
前記第1領域および前記第2領域の少なくとも一方において、前記格子構造の方位角、前記格子構造の格子周期、前記格子構造の構造高さ、および、前記格子構造の凹部と凸部との比率のいずれかが変化している
付記1または2に記載の光学素子。
(付記4)
前記第3領域は、前記第1層の前記第1面において平坦面によって形成され、
前記平坦面の平均粗さSaが、20μm以下である
付記2に記載の光学素子。
(付記5)
前記第3領域は、前記第3領域に入射した光の正反射方向とは異なる方向に指向性を有した散乱構造、または、反射防止構造を含む
付記2に記載の光学素子。
(付記6)
前記第3領域は、一定な幅を有する
付記2に記載の光学素子。
(付記7)
前記第3領域は、第1部分と第2部分とを含み、前記第1部分の幅は前記第2部分の幅と異なる
付記2に記載の光学素子。
(付記8)
前記第3領域の幅は、30μm以上3000μm以下である
付記2に記載の光学素子。
(付記9)
前記第1領域および前記第2領域は、各々0.1mm2以下の面積を有するように区画された複数のセルをそれぞれ含み、
前記第1領域および前記第2領域は、前記セルの少なくとも一部に前記格子構造が位置する前記セルを含む
付記1から8のいずれか一つに記載の光学素子。
(付記10)
各セルにおいて、前記第1領域および前記第2領域の少なくとも一方は、面積率が互いに異なるセルを含む
付記9に記載の光学素子。
(付記11)
前記第1領域および前記第2領域の少なくとも一方は、前記面積率が漸次的に変化する部分を含む
付記10に記載の光学素子。
(付記12)
前記第1層に対して、前記第2層とは反対側に位置する樹脂層をさらに備え、
前記第1層の硬度が、前記樹脂層の硬度および前記第3層の硬度よりも高い
付記1から11のいずれか一つに記載の光学素子。
(付記13)
前記第1層は、紫外線硬化性樹脂によって形成され、
前記第1層の厚さが、1μm以上10μm以下であり、
前記樹脂層および前記第3層は、熱可塑性樹脂によって形成される
付記12に記載の光学素子。
(付記14)
前記第1層に対して、前記第2層とは反対側に位置する樹脂層をさらに備え、
前記第1層、前記第3層、および、前記樹脂層の少なくとも1つがフィラーを含み、
前記フィラーの平均粒径は、400nm以下である
付記1から11に記載の光学素子。
(付記15)
請求項1から14いずれか一つに記載の光学素子を備え、前記光学素子が識別情報を覆う
認証体。