JP7320936B2 - 棒状鋼材 - Google Patents

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Description

本発明は、棒状鋼材に関する。
従来、SUS304を代表とするオーステナイト系ステンレス鋼では、製品内部に存在する欠陥(「内質欠陥」ともいう。)を把握するために、超音波探傷試験が行われている。超音波探傷試験は、非破壊で製品を検査することができ、非常に有用な試験手法である。このような超音波探傷試験では、内質欠陥に超音波が反射し、戻ってくる強度および時間を測定し、欠陥の状態を把握することができる。しかしながら、例えば、高純フェライト系ステンレス鋼のような一部の鋼種では、超音波探傷試験を用いても、内質欠陥の把握が難しく、制約を受ける場合がある。
この理由について、高純フェライト系ステンレス鋼では、以下のような理由が考えられる。具体的には、高純フェライト系ステンレス鋼で、超音波探傷試験を行うと、試験片内で、内質欠陥に起因しない超音波の散乱・減衰といった現象が生じるためである。この結果、超音波探傷精度が十分に得られていないと考えられる。
超音波探傷試験の探傷精度を向上させるために、装置および探傷方法を改良する等の検討がなされている。
特開2015-224358号公報 特開2013-147705号公報 国際公開第2014/157231号 特開2002-254103号公報 特開2005-226147号公報 特開2005-313207号公報
特許文献1~6には、化学組成、製造条件等を適切に制御して、特性を向上させた鋼線材等が開示されている。しかしながら、棒状鋼材の化学組成、金属組織等を制御して、超音波探傷精度の向上を検討した技術はこれまでにない。
以上を踏まえ、本発明は、上記課題を解決し、超音波探傷試験の探傷精度に優れる棒状鋼材を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記の棒状鋼材を要旨とする。
(1)一方向に延びる棒状鋼材であって、
化学組成が、質量%で、
C:0.001~0.20%、
Si:0.01~3.0%、
Mn:0.01~2.0%、
Ni:0.01~5.0%、
Cr:7.0~35.0%、
Mo:0.01~5.0%、
Cu:0.01~3.0%、
N:0.001~0.10%、
Ti:0~2.0%、
Nb:0~2.0%、
V:0~2.0%、
B:0~0.1%、
Al:0~5.0%、
W:0~2.5%、
Ga:0~0.05%、
Co:0~2.5%、
Sn:0~2.5%、
Ta:0~2.5%、
Ca:0~0.05%、
Mg:0~0.012%、
Zr:0~0.012%、
REM:0~0.05%、
残部:Feおよび不可避的不純物であり、
前記一方向に垂直な任意の断面での重心位置と表面とを結ぶ線上において、結晶粒界の横断する数が1.0mm辺り2.0本以上である、棒状鋼材。
(2)前記化学組成が、質量%で、
Ti:0.001~2.0%、
Nb:0.2~2.0%、
V:0.001~2.0%、
B:0.0001~0.1%
Al:0.001~5.0%、
W:0.05~2.5%、
Ga:0.0004~0.05%、
Co:0.05~2.5%、
Sn:0.01~2.5%、および
Ta:0.01~2.5%、
から選択される一種以上を含有する、
上記(1)に記載の棒状鋼材。
(3)前記化学組成が、質量%で、
Ca:0.0002~0.05%、
Mg:0.0002~0.012%、
Zr:0.0002~0.012%、および
REM:0.0002~0.05%、
から選択される一種以上を含有する、
上記(1)または(2)に記載の棒状鋼材。
(4)全粒界の長さに対して、隣り合う粒同士の方位差が15°以上である粒界の長さの割合が0.20以上である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の棒状鋼材。
(5)前記断面の形状が円であり、
前記円の直径が5.5~200mmである、上記(1)~(4)のいずれかに記載の棒状鋼材。
本発明によれば、超音波探傷試験の探傷精度に優れる棒状鋼材を得ることができる。
本発明者らは超音波探傷試験の探傷精度に優れる棒状鋼材を得るために、種々の検討を行なった。その結果、以下の(a)~(c)の知見を得た。
(a)例えば、高純フェライト系ステンレス鋼線材等の鋼材では、デルタフェライトからオーステナイトへの変態が生じないため、金属組織が粗大になる傾向にある。超音波探傷試験においては、このような粗大な金属組織に超音波が衝突することで、超音波の散乱、減衰が生じる。フェライト系ステンレス鋼線材の中でも、太径の鋼線材では、金属組織が顕著に粗大になりやすく、超音波探傷試験における測定精度が低下する傾向にある。
(b)超音波が進行する方向である、超音波探傷方向の金属組織が試験の測定精度に影響を与えると考えられる。特に、粒界密度を適切に制御することが有効であり、さらに粒界角度を制御することが望ましい。
(c)上述の粒界密度および粒界角度を制御するためには、化学組成、製造時の条件、具体的には、圧延時の温度、時間、その後の熱処理条件を調整するのが望ましい。
本発明は上記の知見に基づいてなされたものである。また、本発明の好ましい一実施形態を詳細に説明する。以降の説明では、本発明の好ましい一実施形態を本発明として記載する。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
なお、本発明における棒状鋼材とは、鋼線材、鋼線、棒鋼を含む。また、後述するように、断面形状は円状に限定されない。したがって、平鋼、角鋼、異形線材、異形棒鋼等を含む。また、本発明に係る棒状鋼材は、一方向に延びる形状を有する。
1.化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.001~0.20%
Cは、鋼材の強度を高める。このため、C含有量は、0.001%以上とし、0.002%以上とするのが好ましい。しかしながら、Cを過剰に含有させると、熱間加工中に再結晶不良が生じ、粒界密度、粒界角度等が低下する。この結果、超音波探傷特性の低下が生じる。このため、C含有量は0.20%以下とする。C含有量は0.10%以下とするのが好ましく、0.05%以下とするのがより好ましく、0.02%以下とするのがさらに好ましい。
Si:0.01~3.0%
Siは、脱酸元素として含有させ、高温酸化特性を向上させる。このため、Si含有量は0.01%以上とし、0.05%以上とするのが好ましい。しかしながら、Siを過剰に含有させると、熱間加工中に再結晶不良が生じ、粒界密度、粒界角度等が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。また、靭性が低下する場合もある。このため、Si含有量は3.0%以下とする。Si含有量は2.0%以下とするのが好ましく、1.0%以下とするのがより好ましく、0.5%以下とするのがさらに好ましい。
Mn:0.01~2.0%
Mnは、鋼材の強度を向上させる。このため、Mn含有量は、0.01%以上とし、0.05%以上とするのが好ましい。しかしながら、Mnを過剰に含有させると、熱間加工中に再結晶不良が生じ、粒界密度、粒界角度等が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。また、耐食性が低下する場合もある。このため、Si含有量は2.0%以下とする。Si含有量は1.0%以下とするのが好ましく、0.8%以下とするのがより好ましく、0.5%以下とするのがさらに好ましい。
Ni:0.01~5.0%
Niは、鋼材の靭性を向上させる。このため、Ni含有量は0.01%以上とし、0.05%以上とするのが好ましい。しかしながら、Niを過剰に含有させると、熱間加工中に再結晶不良が生じ、粒界密度または粒界角度が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、Ni含有量は5.0%以下とする。Ni含有量は2.0%以下とするのが好ましく、1.0%以下とするのがより好ましく、0.5%以下とするのがさらに好ましい。
Cr:7.0~35.0%
Crは、耐食性を向上させる。このため、Cr含有量は、7.0%以上とする。Cr含有量は10.0%以上とするのが好ましく、15.0%以上とするのがより好ましい。しかしながら、Crを過剰に含有させると、熱間加工中に再結晶不良が生じて、粒界密度、粒界角度等が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。また、靭性が低下する場合がある。Cr含有量は35.0%以下にする。Cr含有量は27.0%以下とするのが好ましく、25.0%以下とするのがより好ましく、21.0%以下とするのがさらに好ましい。
Mo:0.01~5.0%
Moは、耐食性を向上させる。このため、Mo含有量は0.01%以上とする。しかしながら、Moを過剰に含有させると、熱間加工中に再結晶不良が生じて、粒界密度、粒界角度等が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、Mo含有量は5.0%以下とする。Mo含有量は2.0%以下とするのが好ましく、1.0%以下とするのがより好ましく、0.5%以下とするのがさらに好ましい。
Cu:0.01~3.0%
Cuは、耐食性を向上させる。このため、Cu含有量は0.01%以上とし、0.30%以上とするのが好ましい。しかしながら、Cuを過剰に含有させると、熱間加工中に再結晶不良が生じて、粒界密度、粒界角度等が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、Cu含有量は3.0%以下とする。Cu含有量は2.0%以下とするのが好ましく、1.0%以下とするのがより好ましく、0.5%以下とするのがさらに好ましい。
N:0.001~0.10%
Nは、鋼材の強度を向上させる。このため、N含有量は0.001%以上とし、0.004%以上とするのが好ましい。しかしながら、Nを過剰に含有させると、熱間加工中に再結晶不良が生じて、粒界密度または粒界角度が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、N含有量は0.10%以下とする。N含有量は0.05%以下とするのが好ましく、0.03%以下とするのがより好ましく、0.02%以下とするのがさらに好ましい。
本発明に係る棒状鋼材は、上記元素に加え、必要に応じて、Ti、Nb、V、B、Al、W、Ga、Co、Sn、およびTaから選択される一種以上の元素を含有させてもよい。
Ti:0~2.0%
Tiは、鋼材の強度を高める効果を有する。また、Tiは炭窒化物を形成するので、Cr炭化物の生成を抑制し、Cr欠乏層の生成を抑制する。この結果、粒界腐食を防止する効果を有する。すなわち、Tiは、耐食性を向上させる効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。
しかしながら、Tiを過剰に含有させると、熱間加工中に再結晶不良が生じて、粒界密度、粒界角度等が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、Ti含有量は2.0%以下とする。Ti含有量は1.0%以下とするのが好ましく、0.5%以下とするのがより好ましく、0.05%以下とすることがさらに好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ti含有量は0.001%以上とするのが好ましい。
Nb:0~2.0%
Nbは、鋼材の強度を高める効果を有する。また、Nbは炭窒化物を形成するため、Cr炭化物の生成を抑制し、Cr欠乏層の生成を抑制する。この結果、Nbは粒界腐食を防止する効果を有する。すなわち、Nbは、耐食性の向上に有効な元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Nbを過剰に含有させると、熱間加工中に再結晶不良が生じて、粒界密度、粒界角度等が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、Nb含有量は2.0%以下とする。Nb含有量は1.0%以下とするのが好ましく、0.8%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Nb含有量は0.2%以上とするのが好ましく、0.3%以上とするのがより好ましい。
V:0~2.0%
Vは、耐食性を向上させる効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Vを過剰に含有させると、熱間加工中に再結晶不良が生じて、粒界密度、粒界角度等が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。また、靭性が低下する場合がある。このため、V含有量は2.0%以下とする。V含有量は1.0%以下とするのが好ましく、0.5%以下とするのがより好ましく、0.1%以下とするのがさらに好ましい。一方、上記効果を得るためには、V含有量は0.001%以上とするのが好ましい。
B:0~0.1%
Bは、熱間加工性および耐食性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Bを過剰に含有させると、熱間加工中に再結晶不良が生じて、粒界密度、粒界角度等が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。また、靭性が低下する場合がある。このため、B含有量は0.1%以下とする。B含有量は0.02%以下とするのが好ましく、0.01%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、B含有量は0.0001%以上とするのが好ましい。
Al:0~5.0%
Alは、脱酸を促進させ、介在物清浄度レベルを向上させる効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Alを過剰に含有させると、その効果は飽和し、熱間加工中に再結晶不良が生じて、粒界密度、粒界角度等が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。また、靭性が低下する場合がある。このため、Al含有量は5.0%以下とする。Al含有量は1.0%以下とするのが好ましく、0.1%以下とするのがより好ましく、0.01%以下とするのがさらに好ましい。一方、前記効果を得るためには、Al含有量は0.001%以上とするのが好ましい。
W:0~2.5%
Wは、耐食性を向上させる効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Wを過剰に含有させると、熱間加工中に再結晶不良が生じて、粒界密度、粒界角度等が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、W含有量は2.5%以下とする。W含有量は2.0%以下とするのが好ましく、1.5%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、W含有量は0.05%以上とするのが好ましく、0.10%以上とするのがより好ましい。
Ga:0~0.05%
Gaは、耐食性を向上させる効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Gaを過剰に含有させると、熱間加工性が低下する。このため、Ga含有量は0.05%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Ga含有量は0.0004%以上とするのが好ましい。
Co:0~2.5%
Coは、鋼材の強度を向上させる効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Coを過剰に含有させると、熱間加工中に再結晶不良が生じて、粒界密度または粒界角度が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、Co含有量は2.5%以下とする。Co含有量は1.0%以下とするのが好ましく、0.8%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Co含有量は0.05%以上とするのが好ましく、0.10%以上とするのがより好ましい。
Sn:0~2.5%
Snは、耐食性を向上させる効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Snを過剰に含有させると、熱間加工中に再結晶不良が生じて、粒界密度、粒界角度等が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、Sn含有量は2.5%以下とする。Sn含有量は1.0%以下とするのがより好ましく、0.2%以下とするのがさらに好ましい。一方、上記効果を得るためには、Sn含有量は0.01%以上とするのが好ましく、0.05%以上とするのがより好ましい。
Ta:0~2.5%
Taは、耐食性を向上させる効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Taを過剰に含有させると、熱間加工中に再結晶不良が生じて、粒界密度、粒界角度等が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、Ta含有量は2.5%以下とする。Ta含有量は1.5%以下とするのが好ましく、0.9%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ta含有量は0.01%以上とするのが好ましく、0.04%以上とするのがより好ましく、0.08%以上とするのがさらに好ましい。
本発明に係る棒状鋼材は、上記元素に加え、必要に応じて、Ca、Mg、Zr、およびREMから選択される一種以上の元素を含有させてもよい。
Ca:0~0.05%
Mg:0~0.012%
Zr:0~0.012%
REM:0~0.05%
Ca、Mg、Zr、およびREMは、脱酸のため、必要に応じて、含有させてもよい。しかしながら、これら各元素を過剰に含有させると、熱間加工中に再結晶不良が生じて、粒界密度、粒界角度等が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、Ca:0.05%以下、Mg:0.012%以下、Zr:0.012%以下、REM:0.05%以下とする。Ca含有量は、0.010%以下とするのが好ましく、0.005%以下とするのがより好ましい。Mgは、0.010%以下とするのが好ましく、0.005%以下とするのがより好ましい。Zrは、0.010%以下とするのが好ましく、0.005%以下とするのがより好ましい。REMは、0.010%以下とするのが好ましい。
一方、上記効果を得るためには、Ca:0.0002%以上、Mg:0.0002%以上、Zr:0.0002%以上、REM:0.0002%以上とするのが好ましい。Ca含有量は、0.0004%以上とするのがより好ましく、0.001%以上とするのがさらに好ましい。Mg含有量は、0.0004%以上とするのが好ましく、0.001%以上とするのがさらに好ましい。Zr含有量は、0.0004%以上とするのがより好ましく、0.001%以上とするのがさらに好ましい。REM含有量は、0.0004%以上とするのがより好ましく、0.001%以上とするのがさらに好ましい。
なお、REMとは、ランタノイドの15元素にYおよびScを合わせた17元素の総称である。これらの17元素のうちの1種以上を鋼に含有させることができ、REM含有量は、これらの元素の合計含有量を意味する。
本発明の鋼板の化学組成において、残部はFeおよび不可避的不純物である。ここで「不可避的不純物」とは、鋼板を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
なお、不可避的不純物としては、例えば、S、P、O、Zn、Bi、Pb、Se、Sb、H、Te等が例示される。不可避的不純物は低減されることが好ましいが、含有される場合は、Zn、Bi、Pb、Se、およびHは0.01%以下とするのが望ましい。また、SbおよびTeは、0.05%以下とするのが望ましい。
2.粒界密度
上述のように、本発明に係る棒状鋼材は、一方向に延びる形状を有する。そして、上記一方向に垂直な任意の断面での重心位置と表面とを結ぶ線上において、結晶粒径の横断する数(以下、単に「粒界密度」と記載する。)が1.0mm辺り2.0本以上とする。なお、例えば、断面の形状が円である場合には、重心位置が円の中心となり、表面は円弧上の任意の点となる。
本発明に係る棒状鋼材では、粒界密度が、2.0本/mm未満であると、超音波が散乱・減衰され、超音波探傷特性が低下する。このため、本発明に係る棒状鋼材では、粒界密度は2.0本/mm以上とする。粒界密度は、3.0本/mm以上とするのが好ましく、5.0本/mm以上とするのがより好ましく、10.0本/mm以上とするのがさらに好ましく、20.0本/mm以上とするのが一層好ましい。
なお、上述した粒界密度は、以下の手順で測定する。具体的には、棒状鋼材の長さ方向(上述の一方向)に平行であり、かつ鋼材の中心軸を通る断面(L断面)を研磨した後、結晶粒界を識別できるエッチング(例えば、王水など)を施す。エッチングした面を観察面とし、重心位置から外周の点、つまり表面までが含まれる組織写真を撮影する。得られた組織写真において重心位置と表面とを直線で結び(直線は長手方向に垂直)、直線上の粒界の本数ngb(本)を測定する。測定した粒界本数ngb(本)を、重心位置と表面とを結ぶ直線の長さ(R(mm))で除して、粒界密度ngb/R(本/mm)を算出する。
3.粒界角度
本発明に係る棒状鋼材では、観察される全粒界の長さに対し、隣り合う粒同士の方位差が15°以上である粒界の長さの割合(以下、単に「大角粒界分率」と記載する。)を0.20以上とするのが好ましい。大角粒界分率が0.20未満であると、超音波が散乱、減衰され、超音波探傷特性が低下するためである。大角粒界分率は0.50以上とするのがより好ましく、0.70以上とするのがさらに好ましく、0.80以上とするのが一層好ましい。
なお、大角粒界分率は、以下の手順を用い、算出する。具体的には、鋼材のL断面において、表層部、中心部、および表層部と中心部との間に存在する1/4深さ位置部において、200倍の視野で1視野以上測定を行う。そして、観察視野における各結晶粒の結晶方位を、FE-SEM/EBSDを用いて解析する。得られたデータにおける各粒界角度の出現頻度を用い、測定された全粒界に対して15°以上の粒界の割合を抽出し、その分率を算出する。この際、解析ソフトは、「OIM-Analysis」を用いる。なお、上記表層部とは表面から中心軸方向に1mm深さ位置を指す。
4.形状および大きさ
上述したように、本発明に係る棒鋼材の長さ方向に対して垂直な面の断面形状は、特に限定されない。例えば、上記断面は、一般的な円形だけに限定されない。断面が矩形である平鋼、角鋼に加え、異形材をも含まれ得る。
また、本発明に係る棒状鋼材は、丸鋼である場合、すなわち、上記断面が円である場合は、上記断面の直径を5.5~200mmの範囲とするのが好ましい。上記断面の直径が5.5mm未満であると、鋼材に占める超音波探傷の不感帯領域の増加によって、超音波探傷特性が低下する。このため、上記断面の直径は、5.5mm以上とするのが好ましく、10.0mm以上とするのがより好ましく、20.0mm以上とするのがさらに好ましい。
しかしながら、上記断面が200mm超であると、熱間加工前の金属組織が粗大になり、鋼材の粒界密度または粒界角度が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、上記断面の直径は200mm以下とするのが好ましい。上記断面の直径は150mm以下とするのがより好ましく、100mm以下とするのがさらに好ましく、70mm以下とするのが、特に好ましい。
本発明に係る棒状鋼材は、上記断面形状が円以外である場合、断面の重心位置から、表面(外周)までの最短距離が2.75~100mmの範囲とするのが好ましい。
5.特性の評価
本発明に係る棒状鋼材では、人工欠陥に基づく信号強度(S)と、ノイズに基づく信号強度(N)との比であるS/Nを用い、超音波探傷特性を評価する。S/Nが6.0dB以上である場合、超音波探傷特性が良好であると判断する。S/Nは、8.0dB以上であるのが好ましく、12.0dB以上であるのがより好ましく、15.0dB以上であるのがさらに好ましく、20.0dB以上であるのが一層好ましい。
なお、S/Nは、探傷方向、選定する周波数、人工欠陥の有無、表面状態等によっても変化する。このため、本発明に係る棒状鋼材では、以下の手順により、S/Nを算出する。具体的には、Phased Array方式の超音波探傷試験により試験を行い、探傷角度は垂直とし、周波数は0.5~20MHz、26素子、全没水浸条件にて測定を行う。なお、後述する実施例においては周波数を7MHzとして、測定を行う。
低周波数では、超音波の波長が大きくなり、超音波の散乱・減衰が抑制されるが、検出可能な欠陥径は大きくなるため、両者の兼ね合いから周波数を選定する。人工欠陥径について、0.3~5mmが好ましく、表面状態について、スケールの付いた黒皮肌またはピーリング肌等が好ましい。
6.製造方法
本発明に係る棒状鋼材の好ましい製造方法を説明する。以下の説明においては、断面が円形である鋼線材を例に説明をする。本発明に係る棒状鋼材は、製造方法によらず、上述の構成を有していれば、その効果を得られるが、例えば、以下のような製造方法により、本発明に係る棒状鋼材を安定して得ることができる。
本発明に係る棒状鋼材では、上記化学組成を有する鋼を溶製し、所定の径を有する鋳片を鋳造した後、熱間または温間の線材圧延を行うことが好ましい。その後、必要に応じて、適宜、溶体化処理、酸洗を行うことが好ましい。
6-1.加熱工程
鋳片の加熱温度は、加工温度に関係し、鋼材の累積ひずみおよび再結晶挙動に寄与する。そして、鋼材の粒界密度および粒界角度を変化させ、超音波探傷特性に関係する。このため、溶製した鋳片を450~1300℃の温度で加熱するのが好ましい。鋳片の加熱温度が低すぎると、棒状鋼材が脆化する。このため、鋳片の加熱温度は450℃以上とするのが好ましく、700℃以上とするのがより好ましく、800℃以上とするのがさらに好ましい。
しかしながら、鋳片の加熱温度が高すぎると、加工時の温度を高め、累積ひずみの減少、再結晶不良によって粒界密度および粒界角度が減少する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、鋳片の加熱温度は1300℃以下とするのが好ましく、1200℃以下とするのがより好ましく、1100℃以下とするのがさらに好ましい。
6-2.傾斜圧延工程
加熱された鋳片は、傾斜圧延を用い、熱間加工されるのが好ましい。なお、熱間加工は傾斜圧延に限定されず、同様の熱加工履歴を辿る方法であればよい。傾斜圧延の断面減少率は、鋼材の累積ひずみ、および再結晶挙動に寄与し、粒界密度および粒界角度を変化させる。このため、断面減少率は、超音波探傷特性に影響を与える。断面減少率を20.0%未満とすると、累積ひずみの減少および再結晶不良によって、粒界密度および粒界角度が減少する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、断面減少率は20.0%以上とするのが好ましく、40.0%以上とするのがより好ましく、50.0%以上とするのがさらに好ましく、80.0%以上とするのが一層好ましい。
傾斜圧延における加工温度は、棒状鋼材の累積ひずみ、および再結晶挙動に寄与し、粒界密度および粒界角度を変化させる。このように、傾斜圧延における加工温度は、超音波探傷特性に影響を与えるため、加工温度は450~1200℃の範囲とするのが好ましい。圧延の加工温度が450℃未満であると、鋼材が脆化する。このため、傾斜圧延における加工温度は450℃以上とするのが好ましく、700℃以上とするのがより好ましい。
しかしながら、傾斜圧延における加工温度が1200℃を超えると、累積ひずみが減少し、再結晶不良が生じて、粒界密度および粒界角度が減少する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、傾斜圧延における加工温度は1200℃以下とするのが好ましく、1100℃以下とするのがより好ましく、1000℃以下とするのがさらに好ましい。
なお、傾斜圧延が完了した後に、続いて、鋼材は中間焼鈍に供されるのが好ましい。傾斜圧延完了後から中間焼鈍開始までの時間は、圧延で蓄積されたひずみ量および再結晶挙動に影響を与え、粒界密度および粒界角度を変化させる。このため、傾斜圧延完了後から中間焼鈍開始までの時間は、超音波探傷特性に影響を与える。傾斜圧延完了後から中間焼鈍開始までの時間は、0.01~100sの範囲とするのが好ましい。
傾斜圧延完了後から、中間焼鈍開始までの時間が0.01s未満であると、後述する製造工程において、粗大な粒が形成し、粒界密度および粒界角度が減少し、超音波探傷特性が低下する。このため、傾斜圧延完了後から中間焼鈍時間までの0.01s以上とするのが好ましく、0.1s以上とするのがより好ましく、1s以上とするのがさらに好ましい。
しかしながら、傾斜圧延完了後から中間焼鈍開始までの時間が100s超であると、累積ひずみが減少、および再結晶不良が生じて、粒界密度および粒界角度が減少する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、傾斜圧延完了後から中間焼鈍開始までの時間は100s以下とするのが好ましく、50s以下とするのがより好ましく、10s以下とするのがさらに好ましい。
6-3.中間焼鈍工程
続く中間焼鈍工程では、鋳造で形成された粗大な凝固組織を再結晶させるために行う。中間焼鈍工程においては、700~1300℃の温度域で焼鈍を行うのが好ましい。中間焼鈍工程で鋼材が再結晶すると、棒状鋼材の粒界密度および粒界角度が増加する。この結果、超音波探傷特性が向上する。中間焼鈍工程における温度(以下、「中間焼鈍温度」と記載する。)が700℃未満であると、再結晶不良が生じて、粒界密度および粒界角度が減少する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、中間焼鈍温度は700℃以上とするのが好ましく、800℃以上とするのがより好ましい。
しかしながら、中間焼鈍温度が1300℃超であると、粗大粒が形成し、粒界密度および粒界角度が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、中間焼鈍温度は1300℃以下とするのが好ましく、1200℃以下とするのがより好ましく、1100℃以下とするのがさらに好ましい。
また、中間焼鈍における焼鈍時間(以下、「中間焼鈍時間」と記載する。)は、1~480minの範囲とするのが好ましい。中間焼鈍時間が1min未満であると、再結晶不良が生じ、粒界密度および粒界角度が減少し、超音波探傷特性が低下する。このため、中間焼鈍時間は1min以上とするのが好ましく、30min以上とするのがより好ましい。
しかしながら、中間焼鈍時間が480min超であると、粗大粒が形成し、粒界密度および粒界角度が低下する。このため、中間焼鈍時間は480min以下とするのが好ましく、180min以下とするのがより好ましい。
6-4.圧延工程
傾斜圧延以後の、粗圧延、中間圧延、仕上圧延等の圧延は、累積ひずみおよび再結晶挙動に寄与し、粒界密度および粒界角度を変化させる。この結果、上記傾斜圧延以後に行われる圧延も、超音波探傷特性に影響を及ぼす。傾斜圧延以後の圧延における圧延温度は450~1200℃の範囲とするのが好ましい。
傾斜圧延以後の圧延の圧延温度が450℃未満であると、鋼材が脆化する。このため、上記圧延の圧延温度は450℃以上とするのが好ましく、600℃以上とするのがより好ましく、700℃以上とするのがさらに好ましい。
しかしながら、傾斜圧延以後の圧延の圧延温度が1200℃を超えると、累積ひずみの減少および再結晶不良が生じて、粒界密度および粒界角度が減少する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、上記圧延の圧延温度は1200℃以下とするのが好ましく、1100℃以下とするのがより好ましく、1000℃以下とするのがさらに好ましく、900℃以下とするのが特に好ましい。
また、最終圧延加工後の鋼材の温度である圧延仕上げ温度は、450~1100℃の範囲とするのが好ましい。圧延仕上げ温度は、鋼材の累積ひずみ、および再結晶挙動に影響を及ぼし、粒界密度および粒界角度を変化させる。この結果、圧延仕上げ温度は、超音波探傷特性に影響を及ぼす。圧延仕上げ温度が450℃未満であると、鋼材が脆化する。このため、圧延仕上げ温度は450℃以上とするのが好ましく、600℃以上とするのがより好ましく、700℃以上とするのがさらに好ましい。
しかしながら、圧延仕上げ温度が、1100℃を超えると、累積ひずみの減少、および再結晶不良が生じて、粒界密度および粒界角度が減少する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、圧延仕上げ温度は、1100℃以下とするのが好ましく、1000℃以下とするのがより好ましく、900℃以下とするのがさらに好ましい。
また、圧延パスと次の圧延パスとの間の所要時間(以下、「圧延パス間時間」と記載する。)は、傾斜圧延機以後の粗・中間・仕上げなどにおける各圧延機間の鋼材搬送時間であり、鋼材の累積ひずみおよび再結晶挙動に寄与する。そして、圧延パス間時間は、粒界密度および粒界角度を変化させ、超音波探傷特性に影響を与える。このため、圧延パス間時間は、0.0001~100sの範囲とする。
圧延パス間時間が0.0001s未満であると、鋼材が脆化する。このため、圧延パス間時間は0.0001s以上とするのが好ましく、0.001s以上とするのがより好ましく、0.01s以上とするのがさらに好ましい。
しかしながら、圧延パス間時間が100sを超えると、累積ひずみの減少および再結晶不良が生じて、粒界密度および粒界角度が減少する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、圧延パス間時間は100s以下とするのが好ましく、50s以下とするのがより好ましく、10s以下とするのがさらに好ましく、1s以下とするのが特に好ましい。
なお、圧延は、傾斜圧延機、粗圧延機、中間圧延機、仕上圧延機等を用い、加工される。そして、上記の傾斜圧延を含む、圧延等による総断面減少率は、全ての加工が完了するまでの断面減少率である。総断面減少率は、鋼材の累積ひずみ、および再結晶挙動に影響を及ぼし、粒界密度および粒界角度を変化させる。この結果、総断面減少率は、超音波探傷特性に影響を及ぼす。総断面減少率が30.0%未満であると、累積ひずみの減少、および再結晶不良が生じて、粒界密度および粒界角度が減少し、超音波探傷特性がする。このため、総断面減少率を30.0%以上とするのが好ましく、50.0%以上とするのがより好ましく、80.0%以上とするのがさらに好ましく、90.0%以上とするのが一層好ましい。
6-5.冷却工程
上記の仕上圧延完了後、累積ひずみの減少を抑制するため、すぐに冷却を行う。この際の冷却速度が0.1℃/s未満であると、累積ひずみの減少および再結晶不良が生じて、粒界密度および粒界角度が減少する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、上記冷却速度は0.1℃/s以上とするのが好ましく、1.0℃/s以上とするのがより好ましく、5.0℃/s以上とするのがさらに好ましく、10.0℃/s以上とするのが特に好ましい。ここで、後述する最終冷却速度と記載を明確に分けるため、仕上圧延完了後の冷却における冷却速度は、単に、「冷却速度」とのみ記載する。
6-6.最終焼鈍
上記冷却後に、450~1300℃の範囲の温度域で最終焼鈍を施し、結晶粒を再結晶させるのが好ましい。仕上圧延完了後の最終焼鈍は、鋼材冷却後の焼鈍熱処理に限定されず、加工後に直ちにインラインにて焼鈍を施してもよい。最終焼鈍における焼鈍温度(以下、「最終焼鈍温度」と記載する。)が450℃未満であると、再結晶不良が生じて、粒界密度および粒界角度が減少する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、最終焼鈍温度は450℃以上とするのが好ましく、700℃以上とするのがより好ましい。
しかしながら、最終焼鈍温度が1300℃超であると、粗大粒が形成し、粒界密度および粒界角度が減少する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、最終焼鈍温度は1300℃以下とするのが好ましく、1200℃以下とするのがより好ましく、1100℃以下とするのがさらに好ましく、1000℃以下とするのが一層好ましい。
また、最終焼鈍における焼鈍時間(以下、「最終焼鈍時間」と記載する。)は0.5~600minの範囲とする。最終焼鈍時間が0.5min未満であると、再結晶不良が生じて、粒界密度および粒界角度が減少する。この結果、超音波探傷特性が低下する。このため、最終焼鈍時間は0.5min以上とするのが好ましく、10min以上とするのがより好ましい。
しかしながら、最終焼鈍時間が600minを超えると、粗大粒が形成し、粒界密度および粒界角度が減少する。この結果、音波探傷特性が低下する。このため、最終焼鈍時間は600min以下とするのが好ましく、180min以下とするのがより好ましく、120min以下とするのがさらに好ましく、60min以下とするのが一層好ましい。
6-7.最終冷却工程
最終焼鈍後は、粒成長および第二相の形成を抑制するため、すぐに冷却を行う。最終焼鈍後の冷却における冷却速度(以下、「最終冷却速度」と記載する。)が0.1℃/s未満であると、粒成長が生じ、粒界密度および粒界角度が低下する。この結果、超音波探傷特性が低下する。また、第二相の析出によって靭性が低下する。このため、最終冷却速度は0.1℃/s以上とするのが好ましく、1.0℃/s以上とするのがより好ましく、5.0℃/s以上とするのがさらに好ましく、10.0℃/s以上とするのが一層好ましい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1および2に記載の化学組成を有する鋼を溶製した。鋼の溶製の際には、ステンレス鋼の安価な溶製プロセスであるAOD溶製を想定し、100kgの真空溶解炉にて溶解し、直径180mmの鋳片に鋳造した。その後、下記の製造条件により直径44.5mmの棒状鋼材とした。
以下に条件を記載する。具体的には、鋳造した鋳片に、加熱温度1061℃で加熱を行い、断面減少率84.0%、加工温度706℃で傾斜圧延を施し、続いて、焼鈍温度911℃、焼鈍時間1.95minで焼鈍を施した。なお、この際、傾斜圧延から、中間焼鈍までの時間を8.54sとした。その後、圧延を施した。この際、圧延温度は703℃、圧延仕上げ温度は777℃とし、圧延パス間時間は0.73sとした。また、総断面減少率は、93.9%とし、圧延後の冷却速度を13℃/sとして冷却を行い、最終焼鈍温度761℃、最終焼鈍時間0.92minで焼鈍を施し、冷却速度16℃/sで冷却した。
Figure 0007320936000001
なお、表1の鋼種における不可避的不純物の一例を示すが、各鋼種において、不可避的不純物は、以下の元素だけに限られるわけではない。以下の記載は、不可避的不純物の一例について、その含有量の目安を示すものである。表1の鋼種AIは、Teを0.01%、不可避的不純物として、含有していた。同様に鋼種AJはOを0.001%、鋼種AKはSeを0.001%、ALはBiを0.001%、ATはSを0.001%、不可避的不純物として含有していた。
Figure 0007320936000002
得られた鋼線材について、粒界密度、粒界角度、およびS/Nを測定した。なお、これらの測定は以下の手順に従い、測定を行った。
粒界密度は、棒状ステンレス鋼材の長さ方向に平行であり、かつ鋼材の中心軸を通る断面(L断面)を研磨した後、結晶粒界を識別できるエッチング(例えば、王水など)を施した。エッチングした面を観察面とし、中心から表面(径方向の断面の円周上の点)までを含む組織写真を撮影した。撮影した組織写真において、中心と表面とを結ぶ直線を引き(直線は長手方向に垂直)、直線上の粒界の本数ngb(本)を測定した。続いて、測定した粒界本数ngb(本)を鋼材の半径の長さ(R(mm))で除して、粒界密度ngb/R(本/mm)を算出した。
粒界角度は、鋼材のL断面において、鋼材のL断面において、表層部、中心部、および表層部と中心部との間に存在する1/4深さ位置部において、200倍の視野で、1視野以上測定を行った。そして、観察視野における各結晶粒の結晶方位を、FE-SEM/EBSDを用いて解析する。得られたデータにおける各粒界角度の出現頻度を用い、測定された全粒界に対して15°以上の粒界の割合を抽出し、その分率(大角粒界分率)を算出した。
S/Nは、黒皮の鋼材半径方向中心部に、直径2mmの人工欠陥を鋼材圧延方向に導入し、Phased Array方式の超音波探傷試験によって垂直探傷、周波数7MHz、26素子、全没水浸の条件にて、人工欠陥の信号強度(S)およびノイズによる信号強度(N)の比であるS/Nを測定した。なお、S/Nが6.0dB以上である場合、超音波探傷特性が良好であると判断した。以下、表3にまとめて結果を示す。
Figure 0007320936000003
No.1~46は、本発明の規定を満足し、超音波探傷特性が良好であった。一方、本発明の規定を満足しないNo.47~61は超音波探傷特性が不良または耐食性が不良であった。
続いて、表1の鋼種PおよびYを上記同様の方法で溶製した。その後、鋳造した鋳片に、加熱温度1073℃で加熱を行い、断面減少率66.1%で、傾斜圧延での加工温度を937℃として傾斜圧延を施し、続いて、焼鈍温度1049℃、焼鈍時間1.4minで焼鈍を施した。なお、この際、傾斜圧延から、焼鈍までの時間を5sとした。その後、圧延を施した。この際、圧延温度は950℃、圧延仕上げ温度は821℃とし、圧延パス間時間は5sとした。圧延による総断面減少率は82.0%とした。また、圧延後の冷却速度を10℃/sで冷却を行い、最終焼鈍温度1067℃、最終焼鈍時間1.28minsで焼鈍を施し、冷却速度10℃/sで冷却した。なお、この製造条件は、後述する表5のNo.131と同じ製造条件である。鋼線材とし、得られた鋼線材について、上述の方法で、粒界密度、粒界角度、およびS/Nを測定した。以下、結果をまとめて、表4に示す。なお、上記、実施例1と同様に、S/Nが6.0dB以上である場合、超音波探傷特性が良好であると判断した。
Figure 0007320936000004
No.62~95は、本発明の規定を満足し、超音波探傷特性が良好であった。一方、No.96および98は、本発明の規定を満足しないため、超音波探傷特性が不良または測定ができなかった。また、No.97および99は、不感帯となり超音波特性が評価できなかった。
表1に示す鋼種Rを用いて、種々の径を有する鋳片から、表5および6に記載の条件条件により、直径15mmの棒状鋼材を作製した。作製した棒状鋼材について、粒界密度、粒界角度分率、およびS/N比を、上述の方法で測定した。以下、結果をまとめて、表5および6に示す。なお、上記、実施例1と同様に、S/Nが6.0dB以上である場合、超音波探傷特性が良好であると判断した。
Figure 0007320936000005
Figure 0007320936000006
No.100~136については、本発明の規定を満足するため、良好な超音波探査特性を示した。一方、No.137~163は、本発明の好ましい製造条件を満足せず、超音波探傷特性が不良、または脆化割れのため測定できなかった。
本発明によれば、超音波探査特性に優れる棒状鋼材を得ることができ、産業上極めて有用である。

Claims (4)

  1. 一方向に延びる棒状鋼材であって、
    化学組成が、質量%で、
    C:0.001~0.20%、
    Si:0.01~3.0%、
    Mn:0.01~2.0%、
    Ni:0.01~5.0%、
    Cr:15.0~35.0%、
    Mo:0.01~5.0%、
    Cu:0.01~3.0%、
    N:0.001~0.10%、
    Ti:0~2.0%、
    Nb:0~2.0%、
    V:0~2.0%、
    B:0~0.1%、
    Al:0~5.0%、
    W:0~2.5%、
    Ga:0~0.05%、
    Co:0~2.5%、
    Sn:0~2.5%、
    Ta:0~2.5%、
    Ca:0~0.05%、
    Mg:0~0.012%、
    Zr:0~0.012%、
    REM:0~0.05%、
    残部:Feおよび不可避的不純物であり、
    前記一方向に垂直な任意の断面での重心位置と表面とを結ぶ線上において、結晶粒界の横断する数が1.0mm辺り2.0本以上であり、
    前記断面の形状が円であり、
    前記円の直径が20.0mm以上である、
    棒状鋼材。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Ti:0.001~2.0%、
    Nb:0.2~2.0%、
    V:0.001~2.0%、
    B:0.0001~0.1%、
    Al:0.001~5.0%、
    W:0.05~2.5%、
    Ga:0.0004~0.05%、
    Co:0.05~2.5%、
    Sn:0.01~2.5%、および
    Ta:0.01~2.5%、
    から選択される一種以上を含有する、
    請求項1に記載の棒状鋼材。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    Ca:0.0002~0.05%、
    Mg:0.0002~0.012%、
    Zr:0.0002~0.012%、および
    REM:0.0002~0.05%、
    から選択される一種以上を含有する、
    請求項1または2に記載の棒状鋼材。
  4. L断面の表層部、中心部、および表層部と中心部との間に存在する1/4深さ位置部において、全粒界の長さに対して、隣り合う粒同士の方位差が15°以上である粒界の長さの割合が0.20以上である、請求項1~3のいずれかに記載の棒状鋼材。
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