JP7320467B2 - エントランス構造 - Google Patents
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Description
エントランスでは、発進口または到達口としての開口部の周縁にシール部材を周設することで、掘削機、セグメントまたは推進函体等と開口部の縁との隙間を止水する。
例えば、特許文献1には、立坑に形成された矩形エントランスの止水構造として、開口部の頂辺部と側辺部に沿って止水弾性シート設け、底辺部にリップ式シール部材を設けた止水構造が開示されている。また、特許文献2には、エントランスのシール部材に使用するワイヤーブラシが開示されている。
エントランスに設けるシール部材は、開口部の周縁の全周にわたって設置する必要がある。特許文献1の止水構造は、止水弾性シートとリップ式シール部材を配設することで止水性を確保するものであるが、大深度で地下水圧が大きいトンネル施工時には、止水弾性シートやリップ式シール部材の部材厚を大きくして地下水圧に対する耐力を確保する必要がある。また、トンネルの断面形状が大きい場合には、一体に成形されたシール部材の搬送、設置が困難になるため、シール部材を分割する必要がある。しかし、樹脂製のシール部材を分割すると、隙間(目地)が形成されるため、止水性が低下してしまう。
また、特許文献2のワイヤーブラシをエントランスのシール部材として使用する場合は、複数の短冊状のワイヤーブラシを開口部の周縁に沿って並設する必要がある。この場合、隣接するワイヤーブラシ同士の隙間には、パテやエポキシ樹脂等を充填する。また、隣接するワイヤーブラシ同士は、一部を重ねることで連続性を確保することが好ましい。ところが、矩形状の開口部に対して短冊状のワイヤーブラシを設置すると、隅角部の形状に追従し難く、隙間が形成され易くなってしまう。また、隅角部では、ワイヤーブラシ同士の重ね代がその他の部分に比べて小さくなってしまう。
かかるエントランス構造では、隅角部の形状に応じて成形された止水用ブラシを配設することで、矩形状のエントランスの止水性を確保している。また、隣り合う止水用ブラシ同士は、止水用ブラシの内部に介設されたメッシュ部材同士を重ねることで、連続性を確保している。メッシュ部材は、ブラシ部分が広がることを抑制し、その結果、止水用ブラシに充填したグリスの逸脱を抑制する。このように、本発明によれば、止水用ブラシの止水性が低下し難くなる。
また、前記メッシュ部材が、一対のワイヤーメッシュと、前記一対のワイヤーメッシュの間に介設された不燃布とにより形成されていれば、止水用ブラシ内に充填されたグリスの逸脱抑制効果がより向上する。
また、前記止水用ブラシは、三層の前記ワイヤの束と、前記ワイヤの束の層同士の間に介設されたメッシュ部材と、を基端部においてかしめることにより形成されているのが望ましい。複層構造の止水用ブラシであれば、メッシュ部材によるブラシ部分の変形の抑制効果が向上するため、止水性をより効果的に保持することができる。
さらに、前記止水用ブラシの外面に外側保護板が配設されているとともに内面に内側保護板が配設されている場合には、前記外側保護板の外面に補強板をさらに積層することが望ましい。こうすることで、外側保護板による押付け力が弱く、ブラシの追従性が悪くなるおそれがある直線部において、ブラシの追従性を向上させることができる。
エントランス構造1は、図1に示すように、立坑やトンネルの壁面に形成された矩形状の開口部11の周囲に連設された複数の止水用ブラシ2を備えている。止水用ブラシ2は、開口部11を通過するシールドマシンの外周面と、開口部11との隙間を遮蔽し、当該隙間からの湧水を抑制する。止水用ブラシ2には、止水性の向上を図るためのグリスが注入されている。本実施形態のエントランス構造1は、大深度トンネルであるために地下水圧が高い場合であっても、止水性を確保することを可能としている。
止水用ブラシ2は、断面視く字状を呈していて、一方の片(基部21)が開口部11の内面(開口部11の縁)に密着させた状態で固定されている。止水用ブラシ2の他方の片(ブラシ部22)は、シールドマシンの進行方向に沿って延設されているとともに、基部21から離れるに従って開口部11の周縁から離れるように張り出している。
外側保護板5は、鋼板からなり、最外層のワイヤ3の束の外面を覆っている。外側保護板5の板厚は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
内側保護板6は、最内層のワイヤ3の束の内面を覆っている。本実施形態の内側保護板6は、外側保護板5と同じ板厚で、外側保護板5よりも小さい幅の鋼板からなる。なお、内側保護板6の板厚は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。また、内側保護板6の幅寸法は限定されるものでなく、外側保護板5と同じ幅であってもよい。
補強板7は、外側保護板5によるワイヤ3(ブラシ)への押付力を増強するための板材であって、外側保護板5の外面に添接されている。本実施形態の補強板7は、外側保護板5と同じ板厚で、外側保護板5よりも小さい幅の鋼板からなる。なお、補強板7の板厚は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
止水用ブラシ2の基端部(結束部材8)は開口部11の周縁に固定されている。本実施形態では、開口部11に設けられた金属製の枠材に、結束部材8を溶接する。なお、止水用ブラシ2の固定方法は限定されるものではなく、例えば、治具により固定してもよい。隣り合う止水用ブラシ2の基端部(取付部)同士の間に隙間が形成される場合には、当該隙間にパテ材を充填する。なお、パテ材は、止水性を有し、水圧に対して流出することがない固定度を有した材料であれば、限定されるものではない。
また、ブラシ部22の根元部分(例えば、基部21から3~5cm程度の範囲)には、樹脂や接着剤等が充填されていて、ブラシ部22の根元部分に水みちが形成されることが防止されている。
また、ブラシ部22を通った水が基部21に浸透して結束部材8同士の隙間から漏水することがないように、止水用ブラシ2の基部21には、不透水性を付加させる加工が施すのが望ましい。ここで、不透水性を付加させる加工は、例えば、止水用ブラシ2の製造段階において、基部21にエポキシ樹脂等の止水性を備えた材料を押し込むことにより行えばよい。
止水用ブラシ2のワイヤ3の束には、止水用封入グリスが注入されている。本実施形態の止水用封入グリスには、繊維が混合されていて、ワイヤ3と繊維が絡み合うことで、流出に対する抵抗性が向上している。なお、ワイヤ3の束には、発泡ウレタン系の材料を充填してもよい。ワイヤ3の束に発泡ウレタン系の材料を充填した場合には、ワイヤ3に発泡ウレタン系の充填剤が密着することで、流出に対する抵抗性が向上する。
直線部用ブラシ23のメッシュ部材4は、隣接する他の止水用ブラシ2のメッシュ部材4と重ねられるように、ワイヤ3の束よりも側方に張り出している。
隅角部用ブラシ24の外面および内面には、それぞれ複数の外側保護板5および複数の内側保護板6が幅方向に並設されている。
隅角部用ブラシ24の内側保護板6は、曲線部分25において隣り合う他の内側保護板6と干渉しないように、幅を100mmよりも小さくするのが望ましい。なお、隅角部用ブラシ24の隣り合う内側保護板6同士は、端面同士を突き合せた状態、あるいは、端部を重ねた状態で並設されている。
また、隣り合う止水用ブラシ2同士は、止水用ブラシ2の内部に介設されたメッシュ部材4同士を重ねることで、連続性を確保している。メッシュ部材4は、ブラシ部分が広がることを抑制し、その結果、止水用ブラシ2に充填したグリスの逸脱を抑制する。このように、エントランス構造1によれば、止水用ブラシ2の止水性が低下し難くなる。ワイヤーブラシ(止水用ブラシ2)を使用したエントランス構造1では、止水性を確保するうえでメッシュ部材4の連続性が重要となる。本実施形態のエントランス構造1では、メッシュ部材4の連続性を確保しているため、止水性に優れている。また、止水用ブラシ2の基部に近い部分ではワイヤ3が密集しているため、メッシュ部材4同士をラップさせることが困難であるが、隅角部用ブラシ24では、隅角部13の幅(周方向の長さ)以上の幅を有したメッシュ部材4を配設して一体成型することで、連続性を確保している。
また、メッシュ部材4が、一対のワイヤーメッシュと、ワイヤーメッシュ同士の間に介設された不燃布とにより形成されているため、止水用ブラシ2内に充填されたグリスの逸脱抑制効果がより向上する。また、一対のワイヤーメッシュの間に不燃布が介設されているため、グリスとの付着性が向上し、ワイヤーメッシュとグリスとの間に水みちが形成されることを防止できる。また、不燃布を使用しているため、耐熱性と防水性が確保されている。
また、止水用ブラシ2の外面に配設された外側保護板5の外面に補強板7が積層されているため、ブラシの追従性が悪くなるおそれがある直線部12において、ブラシの追従性を向上させることができる。
前記実施形態では、矩形断面のシールドトンネルの施工について説明したが、トンネルの形状は限定されるものではなく、矩形以外の多角形断面であってもよいし、楕円形や小判方等であってもよい。
また、前記実施形態体では、直線部12に対して、複数の直線部用ブラシ23を配設するものとしたが、直線部12に配設する直線部用ブラシ23の幅は限定されるものではない。例えば、複数の直線部用ブラシ23の幅(周方向の長さ)と同等の幅となるように一体に成形された一つの直線部用ブラシ23を設置してもよい。このようにすれば、基部においてラップさせることができないメッシュ部材4を、一枚の連続した部材とすることができる。
また、直線部12では、止水用ブラシ2の基端部近傍におけるメッシュ部材4同士の連続性を確保するために、止水用ブラシ2の側面からのメッシュ部材4の張り出し長を大きくしたうえで(例えば10cm程度張り出させる)、隣り合う止水用ブラシ2のメッシュ部材4同士を一体化(例えば縫合)し、止水用ブラシ2を設置する際にメッシュ部材4同士の接合部をワイヤ3の束に押し込むようにしてもよい。このようにすれば、止水用ブラシ2の基端部付近においてメッシュ部材4同士の連続性を確保でき、高圧水に対応することが可能となる。
止水用ブラシ2の基部21には、異なる種類のパッキンを組み合わせて貼着させることで、止水性の向上を図ってもよい。
前記実施形態では、止水用ブラシ2の基部21からのグリスや水の流出を防止することを目的として、止水用ブラシ2と開口部11との間(ブラシ部22の根本部分)に不乾性パテP1が充填したが、ブラシ部22の根本部分に設ける止水材は限定されるものではなく、例えば、開口部11の周囲に沿ってシール材(ゴム系、水膨張性等)を周設してもよい。
また、止水用ブラシ2の基部21においてもメッシュ部材4を側方に張り出させて、隣接する他の止水用ブラシ2の基部21から張り出したメッシュ部材4とラップさせてもよい。こうすることで、基部21における止水性が向上する。
11 開口部
12 直線部
13 隅角部
2 止水用ブラシ
23 直線部用ブラシ
24 隅角部用ブラシ
3 ワイヤ
4 メッシュ部材
5 外側保護板
6 内側保護板
7 補強板
Claims (5)
- 矩形状の開口部の周囲に複数の止水用ブラシが周設されてなるトンネルのエントランス構造であって、
前記止水用ブラシは、板状に束ねられたワイヤの束と、面状のメッシュ部材と、を備えているとともに、前記開口部の内面に固定された基部と、前記基部から延設されたブラシ部とにより断面視く字状を呈しており、
前記ワイヤの束は、トンネル周方向と直交する方向に複数層積層されており、
前記メッシュ部材は、積層された前記ワイヤの束同士の間に介設されており、
前記止水用ブラシの前記メッシュ部材の一部が隣接する他の前記止水用ブラシの前記メッシュ部材に重なっており、
前記開口部の隅角部には、当該隅角部の形状に応じて折り曲げられた一つの前記止水用ブラシが配設されていて、
前記開口部と、前記ブラシ部の根本部分との間に、パテが充填されていることを特徴とする、エントランス構造。 - 前記隅角部に設けられた前記止水用ブラシの前記メッシュ部材に、プリーツ状に折り目が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のエントランス構造。
- 前記メッシュ部材は、一対のワイヤーメッシュと、前記一対のワイヤーメッシュの間に介設された不燃布と、により形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のエントランス構造。
- 前記止水用ブラシは、三層の前記ワイヤの束と、前記ワイヤの束の層同士の間に介設されたメッシュ部材と、を基端部においてかしめることにより形成されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエントランス構造。
- 前記止水用ブラシは、外面に外側保護板が配設されているとともに内面に内側保護板が配設されており、
前記外側保護板の外面に補強板がさらに積層されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のエントランス構造。
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