JP7319931B2 - キトサン部分分解物の安定化方法、キトサン部分分解物の保存方法および食品用保存剤 - Google Patents
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Description
<1> キトサン部分分解物をシクロデキストリンおよび/またはトレハロースと共存させることを含むことを特徴とするキトサン部分分解物の安定化方法である。
<2> キトサン部分分解物と、シクロデキストリンおよび/またはトレハロースとの質量比が、4:1~1:10の範囲である前記<1>に記載の方法である。
<3> シクロデキストリンとトレハロースを併用する前記<1>または<2>に記載の方法である。
<4> シクロデキストリンとトレハロースの質量比が10:1~1:10の範囲である前記<3>に記載の方法である。
<5> キトサン部分分解物が微生物由来である前記<1>~<4>のいずれかに記載の方法である。
<6> キトサン部分分解物をシクロデキストリンおよび/またはトレハロースと共存させることを含むことを特徴とするキトサン部分分解物の保存方法である。
<7> キトサン部分分解物が固体の形態である前記<6>に記載の方法である。
<8> キトサン部分分解物と、シクロデキストリンおよび/またはトレハロースとを含有し、安定化されたキトサン部分分解物を有効成分とすることを特徴とする食品用保存剤である。
本発明のキトサン部分分解物の安定化方法およびキトサン部分分解物の保存方法は、共存工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
前記共存工程は、キトサン部分分解物をシクロデキストリンおよび/またはトレハロースと共存させる工程である。
前記キトサン部分分解物は、キトサンを酵素、酸、熱、酸化剤などにより処理し、分解することで得ることができ、細菌の生育および増殖を抑制することが知られている。
前記キトサン部分分解物の重量平均分子量としては、静菌活性を有する限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、500~50万が挙げられるが、5,000~10万の範囲が好ましい。
前記酵素としては、キトサンを分解する活性を有している酵素であれば、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、キトサナーゼなどが挙げられる。なお、前記酵素は、夾雑活性としてキトサンを分解する活性を有するものを使用することもできる。前記酵素処理の温度や時間などの条件としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記シクロデキストリンと前記トレハロースは、いずれか一方を用いてもよいし、両方を用いてもよいが、キトサン部分分解物の安定性がより優れる点で、両者を併用することが好ましい。
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、乾燥工程で賦形剤として使用可能な成分、具体的にはブドウ糖、乳糖等の糖類、コーンスターチ等の澱粉類、グァーガム、タラガム、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、カラギナン、ペクチン、ローカストビーンガム等の増粘多糖類、カゼインナトリウム、乳清タンパク等のタンパク質、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース誘導体などが挙げられる。
前記その他の成分の使用量としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記キトサン部分分解物と、前記シクロデキストリンおよび/またはトレハロースとを共存させる方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、水などの液体中に、キトサン部分分解物と、シクロデキストリンおよび/またはトレハロースと、必要に応じてその他の成分とを含有させ液体の形態で共存させる方法、キトサン部分分解物と、シクロデキストリンおよび/またはトレハロースと、必要に応じてその他の成分を含有する液体を乾燥し、固体の形態で共存させる方法などが挙げられる。
前記液体中のキトサン部分分解物、シクロデキストリンおよび/またはトレハロース、必要に応じてその他の成分の量としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記液体の乾燥方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、生成する粒子1つ1つの中でキトサン部分分解物と、シクロデキストリンおよび/またはトレハロースとが共存する点で、噴霧乾燥が好ましい。
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、キトサンを分解し、キトサン部分分解物を調製するキトサン部分分解物調製工程などが挙げられる。
本発明の食品用保存剤は、キトサン部分分解物と、シクロデキストリンおよび/またはトレハロースとを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
前記キトサン部分分解物は、安定化されたキトサン部分分解物であり、前記食品用保存剤の有効成分である。上記したように、キトサン部分分解物は、シクロデキストリンおよび/またはトレハロースと共存することにより、その静菌活性が安定化される。
前記キトサン部分分解物は、上記した(キトサン部分分解物の安定化方法およびキトサン部分分解物の保存方法)の項目に記載したものと同様にして調製することができる。
前記キトサン部分分解物の食品用保存剤における含有量としては、特に制限はなく、その使用量などに応じて適宜選択することができる。
前記シクロデキストリンおよび/またはトレハロースは、上記した(キトサン部分分解物の安定化方法およびキトサン部分分解物の保存方法)の項目に記載したものと同様である。
前記シクロデキストリンおよび/またはトレハロースの食品用保存剤における含有量としては、特に制限はなく、キトサン部分分解物の量などに応じて適宜選択することができる。
前記食品用保存剤におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、その他の成分としては、それ自体、静菌作用を有する成分、例えば酢酸、クエン酸等の有機酸およびその塩、グリシン、アラニン等のアミノ酸類、フェルラ酸、グリセリン脂肪酸エステル、エタノール、リゾチーム、カラシ抽出物、ホコッシ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、チャ抽出物、カンゾウ油性抽出物、ユッカ抽出物、ローズマリー抽出物等の植物抽出物が挙げられる。また、上記した(キトサン部分分解物の安定化方法およびキトサン部分分解物の保存方法)の項目に記載したその他の成分と同様のものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の食品用保存剤における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記食品用保存剤は、他の食品用保存剤と組み合わせて使用することもできる。
前記食品としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、惣菜、肉製品、魚介類製品、サラダ等の加工食品、漬物類、味噌などが挙げられる。
より具体的には、室温(約25℃)で保存した場合に少なくとも保存開始3か月間後の静菌活性が保存開始時の静菌活性と同等であることをいう。なお、室温(25℃)での保存期間3か月は35℃の加速条件下では2か月間に相当し、40℃の加速条件下では保存期間1か月間に相当する。
<キトサン部分分解物の調製>
-キトサン部分分解物含有液の調製-
キトサン(セティ社製、キトグリーン(微生物由来キトサン))86gと、プロテアーゼ(新日本化学工業株式会社製、スミチームLP50D)8gと、水790gとを混合した後、醸造酢116gを加えて混合し、次いで、40℃で20時間酵素反応を行った。
粘度が30mPa・s以下に低下していることを確認し、酵素反応を終了とした(キトサン部分分解物の重量平均分子量は、約2万)。
その後、温度75~80℃まで昇温し、達温後10分間保持した。
前記キトサン部分分解物含有液0.5Lを以下の条件で噴霧乾燥を行い、粉末化した。
〔噴霧乾燥条件〕
・ 装置 : ヤマト科学株式会社製、スプレードライヤADL311S
・ ブロワー : 0.500
・ 流速 : 目盛2(およそ4.6mL/分間)
・ 入口温度 : 185℃
・ 出口温度 : 80~86℃
得られた粉末状のキトサン部分分解物をポリ包材に入れ、25℃、30℃、35℃または40℃で5か月間保存し、保存開始時および保存1か月間ごとに以下の最小発育阻止濃度(MIC)評価による静菌活性能試験(塗抹法)を行った。結果を下記の表1に示す。
〔静菌活性能試験〕
SCD培地(pH5.8)中に、キトサン部分分解物を50ppm、100ppmまたは150ppmとなるように培地を調製した。
前記培地に、106cfu/gに希釈した乳酸菌(L. mesenteroides)をディスポスティックで植菌した。
30℃で24時間培養後、コロニーの発育の有無を目視にて確認した。
<キトサン部分分解物の調製>
-キトサン部分分解物含有液の調製-
試験例1と同様にして、キトサン部分分解物含有液を調製した。
次いで、前記キトサン部分分解物含有液0.5Lに、下記に示す素材を43g(キトサン部分分解物と、下記に示す素材との質量比は、5:5)を添加し、溶解させた。
〔素材〕
・ デキストリン(試験例2-1)
・ シクロデキストリン(α-シクロデキストリン)(試験例2-2)
・ トレハロース(試験例2-3)
上記で調製したキトサン部分分解物含有液を用いた以外は試験例1と同様にして噴霧乾燥を行い、粉末化した。
保存条件を35℃、8週間とし、静菌活性能試験を保存開始時および2週間ごとに行った以外は、試験例1と同様にして保存試験を行った。結果を下記の表2に示す。
<キトサン部分分解物の調製>
-キトサン部分分解物含有液の調製-
試験例1と同様にして、キトサン部分分解物含有液を調製した。
次いで、前記キトサン部分分解物含有液0.5Lに、下記に示す素材を100.3g(キトサン部分分解物と、下記に示す素材との質量比は、3:7)を添加し、溶解させた。
〔素材〕
・ シクロデキストリン(α-シクロデキストリン)(試験例3-1)
・ トレハロース(試験例3-2)
上記で調製したキトサン部分分解物含有液を用いた以外は試験例1と同様にして噴霧乾燥を行い、粉末化した。
保存条件を40℃、90日間とし、静菌活性能試験を保存開始時、2週間ごと(10週間まで)および90日間に行った以外は、試験例1と同様にして保存試験を行った。結果を下記の表3に示す。
<キトサン部分分解物の調製>
-キトサン部分分解物含有液の調製-
試験例1と同様にして、キトサン部分分解物含有液を調製した。
次いで、前記キトサン部分分解物含有液0.5Lに、下記に示す素材を下記に示す量で添加し、溶解させた。
〔素材〕
・ 試験例4-1
シクロデキストリン(α-シクロデキストリン) ・・・ 43g
トレハロース ・・・ 57.3g
※ キトサン部分分解物と、シクロデキストリンおよびトレハロースとの質量比は3:7であり、シクロデキストリンとトレハロースとの質量比は3:4である。
・ 試験例4-2
シクロデキストリン(α-シクロデキストリン) ・・・ 14.3g
トレハロース ・・・ 86g
※ キトサン部分分解物と、シクロデキストリンおよびトレハロースとの質量比は3:7であり、シクロデキストリンとトレハロースとの質量比1:6である。
・ 試験例4-3
トレハロース ・・・ 100.3g
※ キトサン部分分解物と、トレハロースとの質量比は3:7である。
上記で調製したキトサン部分分解物含有液を用いた以外は試験例1と同様にして噴霧乾燥を行い、粉末化した。
保存条件を40℃、90日間とし、静菌活性能試験を保存開始時、2週間ごと(10週間まで)および90日間に行った以外は、試験例1と同様にして保存試験を行った。結果を下記の表4に示す。
-キトサン部分分解物含有液の調製-
試験例1のキトサン部分分解物含有液の調製において、酵素反応時間を15時間(試験例5-1)または10時間(試験例5-2)とした以外は、試験例1と同様にしてキトサン部分分解物を製造した。それぞれのキトサン部分分解物の重量平均分子量は、約5万(試験例5-1)、約10万(試験例5-2)であった。
上記で調製したキトサン部分分解物含有液を用いた以外は試験例1(A)または試験例2-3(B)と同様にして噴霧乾燥を行い、粉末化した。
保存条件を40℃、90日間とし、静菌活性能試験を保存開始時、2週間ごと(10週間まで)および90日間に行った以外は、試験例1と同様にして保存試験を行った。結果を下記の表5に示す。
Claims (8)
- キトサン部分分解物をシクロデキストリンおよび/またはトレハロースと共存させることを含むことを特徴とするキトサン部分分解物の安定化方法。
- キトサン部分分解物と、シクロデキストリンおよび/またはトレハロースとの質量比が、4:1~1:10の範囲である請求項1に記載の方法。
- シクロデキストリンとトレハロースを併用する請求項1または2に記載の方法。
- シクロデキストリンとトレハロースの質量比が10:1~1:10の範囲である請求項3に記載の方法。
- キトサン部分分解物が微生物由来である請求項1~4のいずれかに記載の方法。
- キトサン部分分解物をシクロデキストリンおよび/またはトレハロースと共存させることを含むことを特徴とするキトサン部分分解物の保存方法。
- キトサン部分分解物が固体の形態である請求項6に記載の方法。
- キトサン部分分解物と、シクロデキストリンおよび/またはトレハロースとを含有し、安定化されたキトサン部分分解物を有効成分とすることを特徴とする食品用保存剤。
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