JP7319004B2 - 菌液製造システム、菌液製造システムにより製造された菌液パッケージ及び菌液の製造方法 - Google Patents

菌液製造システム、菌液製造システムにより製造された菌液パッケージ及び菌液の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、主として体内に移植するための菌液を製造する菌液システム及び菌液の製造方法に関する。
近年、腸管内の環境と健康との深い因果関係が明らかにされ、腸管内に共生する多様な細菌(Microbiota)の増減や構成バランスの乱れなどが様々な健康障害を誘起する可能性が示唆されている。そこで、健康なドナーにより提供された新鮮便を液状にし、種々の疾患を持つ患者腸管内に移植することで腸内細菌叢の数やバランスを調整し、様々な病気を治療する糞便細菌叢移植(FMT: Fecal Microbiota Transplantation、以下「FMT」と略記する場合がある)が注目されている。
FMTは、例えば、重篤な腸管感染症の1つ、クロストリジウム・ディフィシル腸炎(CDI)に対する有効な治療法とされている。さらに、FMTは、アレルギー疾患、自己免疫疾患、がん、肥満、生活習慣病、精神疾患をはじめとする、他の様々な難治性疾患に対する治療法としても期待されている。例えば、2017年には、胃腸障害を持つ小児自閉スペクトラム(ASD)の患者が、FMTによって、胃腸障害の改善と共に、行動学的なASD症状の優位な改善を示したと報告されている(非特許文献1)
本願発明者らは、全国19の医療機関や大学と連携しながらFMTによる各種難病患者の治療に取り組んでいる。FMTを実施するうえで最も重要なプロセスの1つは、健常人「移植用菌液」を採取及び調整したうえで、ドナー便の試料(サンプル)として使いやすい形態に加工することである。この調整作業は、従来、生理食塩水を溶媒として大気下等の開放空間で均化し、その後漏斗でろ過する方法(アムステルダムプロトコル)により調整されることが一般的であった(非特許文献2,P.948,Table 1)。
Microbiota Transfer Therapy alters gut ecosystem and improves gastrointestinal and autism symptoms: an open-label study (Kang et al. Microbiome (2017) 5:10 )DOI 10.1186/s40168-016-0225-7 Therapeutic Potential of Fecal Microbiota Transplantation(GASTROENTEROLOGY Vol. 145, No. 5, 2013, P.946-953)
現行の移植用菌液調整にかかる時間は、一回の移植あたり3.5~4.0時間と長時間であり、扱う細菌のデリケートさから、短時間で一気に作業を進める必要がある。試料の色、粘性度、量などが毎回違うことに加え症状に応じたブレンド操作などを行うと、移植菌液としての再現性維持が困難であった。大学病院などでもマスクに手袋、予防着、メガネといった重装備で周囲を気にしながら手作業でおこなわれている。通常の移植治療と違い、完全無菌操作までは必要ない。とはいえ、扱う細菌群の遺伝情報交換速度の速さはヒトとは比べ物にならず、臓器や骨髄、血液などの移植同様の慎重さが要求されるのが実状である。
生理食塩水を溶媒として調整した菌液は、ヒト腸粘液との酸化還元電位の相違により、腸管内での抵抗性が大きくなり、菌の定着が悪かった。そのため、移植した腸内細菌を腸のディストリビューター(分配役)となる「虫垂」まで届けるために、調整した菌液は大腸内視鏡を用いて移植しなければならなかった。また、従来の菌液調整は、ビーカーなどの実験器具を用いて人の手で行われるため、ヒトDNAや大気中に浮遊するウイルス等の汚染を完全に排除することができず、再現性や信頼性において必ずしも十分ではなかった。さらに別の観点では、大気下での作業により、嫌気性菌が弱体化するという点において、腸管内の環境に近い環境下で調整されたものとはかけ離れているものでもあった。
さらに、実験器具を用いた製造では大量生産できず、FMTを広く普及させるための障害となっていた。
本発明は、これらの課題を解決して低侵襲で安全かつ効果の高い治療法としての糞便細菌叢移植(FMT)技術の確立を目指すものである。
本発明の更なる一態様として、特定の種類の腸内細菌(絶対数)だけで判断するのでは無く、複数の腸内細菌のバランス(菌数比率)によって患者の健康状態を診断し、その結果に基づいて移植用菌液の組成を決定する方法と組み合わせることで、患者ごとに適した移植用菌液の製造を可能とする方法をも提供するものである。
本発明に係る菌液製造システムは、
腸内細菌を含む試料Sをナノバブル水に融解する一次融解機構(10)と、前記一次融解機構(10)により前記ナノバブル水に融解した試料Sを含む溶媒Yを均一に撹拌するホモジナイズ機構(20)と、前記ホモジナイズ機構により撹拌した試料Sを含む溶液を濾過する濾過器(40)と、前記濾過器で濾過された試料Sを含む溶液を分注する分注機構(50)と、分注された前記溶液をパッキングするパッケージ機構(60)と、を含む菌液製造システムであって、前記菌液製造システムの全体が大気と遮断された閉鎖型回路を構成する。
前記一次融解機構は温度制御装置が設けられていてもよい。
前記ホモジナイズ機構は温度制御装置が設けられていてもよい。
前記ホモジナイズ機構は流体クラッチ機構を介して伝達される回転動力により撹拌するように構成されていてもよい。前記ホモジナイズ機構は流体クラッチ機構に代えて、「ワイヤー型カッター」を用いて構成されていてもよい。
前記菌液製造システムは、ペリスタルティックポンプを含む流路系動力部を含んでいてもよい。
前記流路系動力部は希釈用管路と気体流入用管路とを含んでいてもよい。
前記菌液製造システムは脱気機構を含んでいてもよい。
前記菌液製造システムはミキシングコイルを含んでいてもよい。
前記ミキシングコイルは温度調節機構を具備してもよい。
前記濾過器は限外濾過器であってもよい。
前記限外濾過器のポアサイズは、0.5μm~15μmであってもよい。
前記分注機構は回転式バルブカット方式の分注機構であってもよい。
前記菌液製造システムは流路内に濁度計が設けられ、前記濁度計の出力に応じて前記流路系動力部の流速が制御されるように構成してもよい。
上記菌液製造システムにより菌液パッケージが製造される。
前記菌液製造システムはデータベースを組み合わせた所定のシステムを構築することにより、患者の健康状態等を診断するための診断システムを構築することも可能である。
具体的には、本発明に係る診断システムは、上記菌液製造システムを用いて腸内フローラの健康状態を診断するための診断システムであって、さらに、情報処理データベース(101)、デバイス制御システム(102)、制御用端末(103)を含み、
前記情報処理データベース(101)には予め決められた、腸内フローラの健康状態に関する1又は複数の基準を指標として記録しておき、
前記デバイス制御システム(102)が、前記制御端末(103)からの指示又はデバイス制御システム(102)で実行されるプログラムに基づき、
以下のステップS1~S4を実行することを特徴とする。
i)前記基準のうち少なくとも1つを指標として得られた結果の入力を受け付ける手段(ステップS1)と、
ii)入力された値をスコア化及び/又はランク付けする手段(ステップS2及び/又はステップS3)
iii)前記スコア又はランクと、指標とした基準を関連付けた診断結果を表示する手段(ステップS4)
このようなシステムを適用することにより、便提供者の現在の健康状態を把握することが可能となる。患者の便に適用すれば患者の健康状態を客観的に診断することが可能となり、ドナーの便に適用すればドナーの菌液パッケージに含まれる菌液に含まれる腸内細菌を客観的に把握することができる。それにより、患者にとって必要な腸内細菌を含む移植用菌液を得るために必要な情報を取得することが可能となる。
前記デバイス制御システム(102)は、前記ステップS1~S4に加えて、さらに以下のステップS5~S8を実行するものであっても良い。
iv)通信簿又はレーダーチャートを作成するステップ(ステップS5)
v)診断結果、通信簿又はレーダーチャートに基づく、移植用菌液の組成を決定するステップ(ステップS6)
vi)決定した組成を達成しうるドナー情報(1以上のドナーの選別,及び選別した複数ドナーの菌液配合比率等)を選択するステップ(ステップS7)
vii)菌液組成又は選択したドナー情報の入力を受け付けるステップ(ステップS8)
このように、診断システムと連動させた菌液製造システムを使用することによって、移植用菌液は、複数のドナーから得られた菌液を、効率的に組み合わせて製造することが可能である。
本発明のプログラムは、前記の各ステップを実行するためのものである。
本発明に係る菌液製造方法は、
(I)腸内細菌を含む試料Sをナノバブル水に融解する一次融解ステップと、
(II)前記一次融解ステップにより前記ナノバブル水に融解した試料Sを含む溶媒Yを均一に撹拌するホモジナイズステップと、
(III)前記ホモジナイズステップにより撹拌した試料Sを含む溶液を濾過する濾過ステップと、
(IV)前記濾過ステップで濾過された試料Sを含む溶液を分注する分注ステップと、
(V)分注された前記溶液をパッキングするパッケージステップ
とを含むものである。
また、前記菌液製造方法は、前記ステップ(I)の前に、さらに下記(VI)乃至(VIII)のステップを含んでいてもよい。
(VI)患者の腸内フローラバランスを測定するステップ
(VII)前記測定の結果に基づき、患者の健康状態を診断するステップ
(VIII)前記測定の結果又は前記診断の結果に基づき、前記ステップ(I)で使用する1又は2以上の前記試料Sを選択するステップ
また、前記菌液製造方法は、前記(VII)の診断ステップが、前記ステップ(VI)で測定された腸内フローラバランスにおける、少なくとも2種類以上の腸内細菌群の、菌数比率を指標として実行されるものが好ましい。
本発明に係る菌液製造システムによれば、ヒト腸管内に近い環境で試料S(ドナー便)を効率良く安定的に移植用菌液を製造するすることができる効果がある。
図1は、菌液製造システム1の基本原理を説明するための模式的な構成図である。 図2(A)は、一次融解機構10の構成の一部を模式的に示す概念図であり、パージガスの注入後、又は注入とほぼ同時に、溶媒流入口18からUFB水からなる溶媒Yを噴出させ、チャンバー12内に溶媒Yを流入させる様子を示す図である。図2(B)は、一次融解機構によって製造された、一次融解菌液を示す図である。 図3は、試料Sを投入し溶媒で満たされたチャンバー12内で第1の回転動翼21が回転するホモジナイズ機構20により、試料Sが溶媒Y中で均化される様子を模式的に示す概念図である。 図4は、チャンバー12の構造の変形例を示す図である。 図5(A)は、濾過前菌液が流路系動力部30を介してミキシングコイル39に投入され、その後、脱気機構38に接続される様子を示す図である。図5(B)は、脱気機構38を通過した後、濾過前菌液が限外濾過器40に流入する様子を示す図である。 図6は、脱気機構38の概念図である。 図7(A)及び(B)~(D)は、限外濾過器の構成を説明するための模式図である。 図8は回転式バルブカット分注装置(分注機構50)の構成を示す模式図である。 図9は、管路58から排出された菌液を定量ずつパッケージされた菌液パックPを製造するパッキング装置(パッケージ機構60)を表す図である。 図10は、実際に設計した菌液製造システムの構成例を示している。 図11は、情報処理データベース101、デバイス制御システム102、制御用端末103を付加した、本発明の菌液製造システムの構成例を示している。 図12は、本発明の菌液製造システムにおける診断ステップ(VII)や(VIII)を実行するためのプロセスを表す、フローチャートの一例である。 図13は、本発明の菌液製造システムにおける診断システム等の実施によって得られた結果を示す「菌力・通信簿」のイメージを表す図である。 図14は、本発明の菌液製造システムにおける診断システム等の実施によって得られた結果を示す「菌力・レーダーチャート」のイメージを表す図である。 図15は、実際に試作したホモジナイザーの形状を模式的に示す概略構成図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
[菌液製造システム]
(第1の実施形態)
図1は、菌液製造システム1の基本原理を説明するための模式的な構成図である。但し、実際のシステムでは菌液の一部が循環する系を構築するなど、より複雑なものとなることもある。それらについては第2の実施形態で説明する。本実施形態で説明する菌液製造システム(以下、単に「システム」という場合がある。)1は、腸内細菌を含むドナー便(以下、「試料S」という。)を投入した後、種々のステップを経て最終的に、パッケージに封入された移植用菌液を得ることを可能にするシステムである。
システム1は大きく5つの機構で構成される間歇型連続流れ方式の回路であり、各機構の動作がそれぞれ最終的な生成物を得るための主な製造ステップ(I)~(V)に対応する。
(I) 一次融解
(II) ホモジナイズ(均化)
(III)濾過(ダイアライズ)
(IV) 分注
(V)パッキング
本実施形態の菌液製造システム1は、各装置がいずれも汚染等に強いサニタリー配管及びサニタリー継手や耐薬品・耐圧・耐摩耗性などに優れた可撓性のチューブ等で連結され、それによりシステム全体が大気と完全に遮断されたクリーンかつ完全な閉鎖嫌気環境で処理される構成となっている。これは、ヒトDNAや大気中に浮遊するウイルス等の混入による汚染の可能性を可能な限り排除して、再現性や信頼性に優れた菌液を安定して得るためである。大気と遮断される構成は、嫌気性菌の弱体化を防止することにも貢献する。後述する精緻な温度管理を含め、試料の投入からパッケージに封入された移植用菌液を得る最終工程に至るすべての工程が、「アムステルダムプロトコル」に則り実験器具を用いて人の手で調整していた従来法と比べ、より汚染が少なく、腸管内の環境に近い環境下に維持された状態で菌液の調整が完了する。以下、各製造ステップを実施するための装置構成について詳述する。
[(I)一次融解ステップ]
菌液を製造する最初のステップは、試料Sを溶媒Yと混ぜ合わせて流動性を高めた菌液(以後「一次融解菌液」という。)を得ることである。一次融解菌液に求められることは、溶媒Yに融解させる過程で、菌の形状や運動性、性状や物性(鞭毛構造や繊毛など)等の菌液の質を極力損なうことなく融解させることである。一般に移植用菌液の質は、腸管内壁における定着性に影響する。一次融解の時点でこれらの菌液の質が損なわれると、後述するステップ(II)~(V)を経て最終的に得られる移植用菌液に含まれる菌の定着性が悪くなるからである。
ここで、腸管内壁への菌の定着は、ヒトの腸管内に分泌される免疫グロブリンA(IgA:病原菌の排除や毒素の中和といった腸管内常在菌の制御に関わる抗体の一種)が、糖鎖を介して主要な腸内細菌の1つと結合することにより進むと考えられている。しかし、患者によって個人差のあるIgAの菌輸送能力のみに頼る方法は、FMTの信頼性を低下させる原因となる。
従来の生理食塩水を溶媒として調整した移植用菌液は、腸管内壁への菌の定着性が悪いため、大腸内視鏡を用いて直接大腸管内に移植しなければならず、高侵襲で患者への負担が非常に大きかった。
腸管内壁への菌の定着を低下させる原因の1つとして考えられるのは、生理食塩水とヒトの腸管内壁の酸化還元電位差が大きいことである。すなわち、酸化還元電位が0mVである生理食塩水を溶媒とする試料Sを含む菌液に対して、ヒト腸粘液の酸化還元電位は約-0.2Vと考えられ、この酸化還元電位の相違が、腸管内壁への菌の定着を低下させる原因の1つと考えられる。
そこで、本システムの一次融解機構で用いる溶媒Yには、ウルトラファインバブル水(以下、「UFB水」という場合がある。)とも呼ばれるナノバブル水を用いる。UFB水は、マイナスに帯電した超微細サイズの気泡を大量に含有し、気泡のサイズはナノメートルオーダーとなる。一次融解菌液の調整において、溶媒YとしてUFB水を使用すると、得られる一次融解菌液の酸化還元電位は、ヒト腸管内に近い値(約-150mV)となる。そして、マイナスに帯電した気泡は腸粘膜上のプラスに帯電した有機的な汚れに吸い寄せられる挙動を示す結果、移植用菌液に含まれる腸内細菌も気泡によって腸壁付近の粘液層(内因性粘液層)へと運ばれる。内因性粘液層に到達した腸内細菌は、内因性粘液層が腸管腔側粘液層とは逆に流れる性質を有するため、患者腸管内のそれぞれの住処へ容易に定着する。
UFBを用いることによる利点は、上記のとおり移植時における腸管内での抵抗性が生理食塩水よりもはるかに小さいことに加えて、個々の菌が微細な気泡によって保護されることで菌同士の接触頻度が大幅に減少することである。その結果、菌の保存状態が改善し、より奏効率の高い移植が可能となる。
本件発明者らによる基礎実験では、溶媒YにUFB水を用いた場合、より低侵襲な腸カテーテルを用いた注腸法で難治性腸疾患の寛解率60%以上(主治医による5段階の判定に基づき軽度の改善も含むと75%以上)もの移植成果を実現することが明らかとなっている。
図2(A)は、一次融解機構10の構成の一部を模式的に示す概念図である。一次融解機構10は、チャンバー12内に、ガス流入口14と、ガス排出口16と、温度管理された溶媒Yを噴出させるための溶媒流入口18を含む。チャンバー12につながる全ての配管中の弁(不図示)を閉じることで、チャンバー12は、完全に密閉された閉鎖環境にすることができる。なお、図2(A)では、一次融解ステップのみを説明するため図示を省略しているが、一次融解機構10は、チャンバー12の内部の温度を制御する温度制御装置が設けられ内部温度を制御することができる構造を有するほか、次工程の「(II)ホモジナイズステップ」で使用される回転動翼などの撹拌装置、その他必要な機構が設けられていてもよい。チャンバー12は、一次融解機構10に着脱可能に構成されていてもよい。また、チャンバー12は、例えばアクリル樹脂製などのような透明で内部を視認できる透明樹脂で構成されていてもよい。
チャンバー12内に試料Sを投入し、その後、ポンプによりチャンバー12内を減圧する。その後、任意のパージガス(例えば、水素など)で置換する。パージガスの種類は導入すべき菌種によって変えることができる。例えば、嫌気性の菌を多量に含む移植用菌液を調整する場合、酸素を含まないガスによりパージすることが好ましい。一般に、ヒトの腸管内で糖が分解されることによって産生されるガスの多くは水素であり、かつ、水素は比較的安価であることから、腸管内と同じ嫌気性環境を保持することによって菌叢のバランスを維持する上では、水素ガスは好ましいガスの1つと考えられる。
別の観点から、例えば、意図的に酸素・オゾンなどの酸化条件下に置いて除菌または減菌することにより、移植効果を一層高めることも可能である。パージガスとして可能性のあるものとしては、例えば、空気・酸素・窒素・水素・二酸化炭素・オゾン・アルゴンなどが考えられるがそれに限られるものではない。
具体的には、ガス排出口16から真空ポンプ(不図示)によりチャンバー12内の空気を追い出して減圧し、次いで、ガス流入口14からパージガスを注入してゆくように構成する。
図2(A)は、パージガスの注入後、又は注入とほぼ同時に、溶媒流入口18からUFB水からなる溶媒Yを噴出させ、チャンバー12内に溶媒Yを流入させる様子を示す図である。UFB水を注入する際には投入した試料Sの例えば約2.5倍量(ボリューム倍率)を噴射する。なお、溶媒流入口18は、例えばシャワーヘッドのような形状でもよく、その形状は特に限定されない。なお、通常はパージしてから溶媒Yを投入するが、パージと同時に溶媒Yを投入し、或いは溶媒Yを投入した後、パージしてもよい。
なお、パージ前の到達真空度やチャンバー12の気密性については、一次融解並びに次工程の均化工程を実施する際に菌叢のバランスが崩れない程度であればよい。必要であれば、チャンバー12に真空度を計測する計器類を設けてもよい。
このような構成により、大気と遮断された、より腸管内の環境に近い閉鎖環境内で一次融解菌液を得ることができる。なお、気密性については試料Sと共にガスインジケーターを投入し、一次融解終了後に色の変化で確認できるように構成してもよい。生物学的に嫌気性菌の量的バランスは次世代シーケンサー(NGS:Next Generation Sequencer)を用いた菌叢解析により行い、融解前後の菌叢バランスを評価するように構成してもよい。
本実施形態の一次融解機構のチャンバー12は、予め装置外で試料Sの重量その他性状を表すパラメーターを計測できるようにして、その結果を基に融解時の溶媒Yの噴射圧、チャンバー内温度、水量などを決定すると共に、UFB水の流入速度は調圧バルブによって調整可能とする。
ここで、溶媒Yについて説明する。溶媒Yは、およそ数千万~数億個/mlのナノメートルサイズ(1ミクロン未満)の気泡を溶存させたUFB水である。気泡径及び気泡数は精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製 Multisizer4e)を用いてISO13319に準拠する電磁抵抗法(コールター法)を用いて測定した。
チャンバー12内の温度は、例えば冷温水チラーを併設する形で装置を設計するなど、内部の温度を例えば-80℃~40℃の範囲で設定できるように構成してもよい。具体的な加熱及び冷却の手段、温度制御手段、温度センサーの種類やその設置場所等は、特に限定されない。これらはいずれもコストや用途等を考慮して種々設計しうる事項である。例えば、チャンバー内部或いは外壁部等に熱電対或いは放射温度計などの温度センサーを設けると共に、チャンバーの外周に配管を設け、温水或いは冷水などの溶媒を通し、フィードバック制御してもよいし、温度制御範囲によっては電熱ヒーターで加温するのみの構造であってもよい。このような温度制御手段により、試料Sの性状が硬い固形物の場合でも、逆に柔らかく流動性或いは粘着性の高い場合でも、温和な条件下で速やかに融解させることができる。
なお、現行の実験環境では低温冷凍庫からの融解等を目的としているが、用途或いは目的により、液化窒素を用いて冷却する場合やそれ以下の温度に冷却する場合もありうる。例えば、高温耐性菌などを意図的に選択した菌液の精製が可能となり、より一層の効果が得られる可能性が広がると考えられる。
一次融解時の装置庫内は液面上昇を自動検知し、コンプレッサーによる吸引により、液面に合わせ庫内を自動脱気、排液を行う。試作した一次チャンバーの容積は、溶質(試料S)が約1,600mlであったので、溶媒の量(例えば溶質×2.5程度)を目安とし、約4,000mlとした。
一次融解機構は、試料投入前に試料の重量、硬さ、粘性度などを予め初期条件を入力するか若しくは運転開始後の蓄積データを解析することで自動感知することとし、その結果を基に、融解時のUFB水噴射圧、庫内温度、UFB水量などを決定する。その後、順次融解とともに庫内を脱気しながら置換ガス(例えば水素など)を注入し、UFB水と混ざり合って泥状になった試料を一次融解菌液として排出する。
図2(A)に示す一次融解機構のチャンバー12によれば、処理対象となる試料Sは、重量、硬さ、粘性度、など初期条件が毎回一定でないあらゆる性状の試料に対して一律に融解処理できる。
本実施形態の菌液製造システム(以下、単に「システム」という場合がある。)においては、一次融解以後のステップでは移植用菌液とするための種々のステップが続くが、菌液の性状は以後溶媒に融解した状態のまま最終ステップで移植用菌液としてパッケージされることになる。
[(II)ホモジナイズステップ(均化工程)]
チャンバー12内で一次融解された菌液は、試料Sと溶媒とが十分に混ざり合っていない。そこで、一次融解機構のチャンバー12内に設置した撹拌装置(モーターと回転動翼などからなる撹拌装置)によって撹拌し、均一化する工程(均化工程)が必要となる。ここでも、撹拌前後で大気と遮断された閉鎖環境で均化することが重要である。
図3は、試料Sを投入し溶媒で満たされたチャンバー12内で第1の回転動翼21が回転するホモジナイズ機構20により、試料Sが溶媒Y中で均化される様子を模式的に示す概念図である。図3に示すように、チャンバー12の周囲には配管19が設けられ、その内部に温水や冷水等の熱媒を通すことでチャンバー12内の試料Sの温度を調整できる温度制御手段が設けられる。但し、温度制御手段は必ずしもこの方法に限定されない。
ホモジナイズ機構20は、チャンバー12内の試料Sの物性を極力損なわないように撹拌することが求められる。そのため、一例として、試料Sを均化するためのチャンバー12と流体クラッチ槽32とが隣接した構造を具備する。流体クラッチ槽32は、内部に粘性流体33が充填された閉鎖空間内で2枚の回転動翼(第2の回転動翼22と第3の回転動翼23)を対向させて設けた、いわゆるトルクコンバーターである。
図3に示すように、第3の回転動翼23のシャフト(軸)25は、流体クラッチ槽32の外部に設けられたモーターなどの回転動力26につながっている。回転動力26によって第3の回転動翼23が回転すると、粘性流体33による旋回流が生成され、その回転力が第2の回転動翼22に伝達される。他方、第2の回転動翼22は、流体クラッチ槽32に隣接するチャンバー12内に設けられた第1の回転動翼21と共通のシャフト(軸)24で連結され、このため、第2の回転動翼22の回転力はそのまま第1の回転動翼21に伝達される。
一般に、粘性流体33は、グリスオイルなど油性の流体が用いられ、低温時には粘性度が高く、高温時には反対に低くなる性質を有する。このため、粘性流体33の温度を制御する機構を設けることにより、伝達するトルクの大きさを無段階で調整することが可能となる。例えば、図3で示すように、流体クラッチ槽32の外周に配管29を設け、その内部に冷水や温水を流すことで冷却や加温できる構造であってもよい。もちろん、この方法に限定されず、他の温度制御手段を用いても良い。
なお、チャンバー12の気密構造は、図2及び図3で例示した構成に限定されない。
図4は、チャンバー12の構造の変形例を示す図である。図4に示すように、チャンバー中央部が底部からせり上がっていて、その頂点周辺にシャフト24を挿通する開口部が設けられた構造である。この場合、開口部を通じて大気開放され密閉構造にはならないが、チャンバー12内にUFB水を注水すれば、UFB水の液面より上部は密閉空間となる。この場合、試料Sの投入後、先にチャンバー12内にUFB水を満たしてからポンプを稼働し、ガス流出口16からチャンバー12の内部を減圧し、必要に応じてガス流入口14からパージガスを導入する。このようにすれば、図4のような構造であっても、第1の回転動翼21は、チャンバー12の底部に設置されたシャフト24と気密性を保持した状態で連結される構造となる。
なお、一次融解機構及びホモジナイズ機構は、同一チャンバー12を用いて行う例を説明したが、必ずしも同一チャンバーである必要はなく、別チャンバーであってもよい。また、一次融解機構10とホモジナイズ機構20が2つの機能を備えた同一の装置で構成されていてもよい。また、一次融解工程において、試料Sのチャンバーへの投入は手動で行うこともできるが、計量から投入までの工程を自動で行える機構を採用してもよい。
ホモジナイズ(以下、均化工程と記載)を経ることにより、試料Sが溶媒Y中に均等に分散融解し、かつ菌叢バランスの保持された試料Sの「濾過前菌液」が生成される。「(I)一次融解」で説明したように、最終的な移植用菌液に至るいずれの過程においても、個々の細菌の物性(鞭毛構造や繊毛など)を極力損なわないことが重要である。そこで、第1の回転動翼21に伝えるトルクを試料Sの粘性度に応じた適切な大きさに調整するため、一次融解された試料の物性の粘性度を検知するセンサー等によって、試料Sの粘性度を検知しつつ、その粘性度に応じた最適な回転トルクを発生させ、均化するような構成を採用してもよい。
均化工程では、処理対象である試料が微生物ないし細菌であることから、トルクの伝達は極力緩やかに行うことが好ましく、ゆえに、回転始動時に慣性力が作用するような、よりデリケートなトルク伝達機構である流体クラッチ機構が好ましい実施形態の1つと考えられる。流体クラッチ機構によれば無段階変則のトランスミッション機構を提供することが可能となり、便の硬さや粘性度に応じて回転トルクの大きさを調整し、適切な回転トルクを付与することも可能となる。但し、回転動力の伝達機構は必ずしも流体クラッチ機構に限定されず、ギアやベルト等を用いた他の回転動力伝達機構を採用してもよい。これらはコストや目的によって適宜設計すればよい。
流体クラッチ機構は、種々の追加的構成を取りうる。例えば、内部に封入する流体(オイル等)の粘性度を変化させることができるよう温度可変機構を備えた加温式の流体クラッチ機構を採用してもよい。尚、この流体クラッチ機構は、断熱壁で覆われていてもよい。
他の変形例としては、流体クラッチ機構に代えて、内部に線状の刃で構成される「ワイヤー型カッター」を付加する構成を採用してもよい。
図15は、実際に試作したホモジナイザーの形状を模式的に示す概略構成図である。回転速度を制御できるモーター280Aに回転軸280Bが取り付けられ、回転軸280Bにメッシュホモジナイザー290とワイヤー型カッター300とミキシング羽根310が取り付けられる。ワイヤー型カッター300は、複数のワイヤー300Aと1つのワイヤー受け部300Bと複数のワイヤー固定部300Cとで構成される。複数のワイヤー300Aの一端は回転軸280Bに取り付けられたリング状のワイヤー受け部300Bに固定され、他端は環状に均等配置されたワイヤー固定部300Cに接続された構成を具備する。メッシュホモジナイザー290は回転軸280Bに沿って上下に移動することができる(動力機構は不図示)。
このような構成を用いてワイヤー型カッター300の上部側から試料Sを投入すると、試料Sは直接回転動翼槽に入ることなく放射線状に張られたワイヤー300Aの上に留まることになる。その後、メッシュホモジナイザー290が回転軸280Bに沿って下降した状態で回転軸280Bが回転することでホモジナイザー290とワイヤー300Aとに挟まれたドナー便が押しつぶされ、試料Sが細切れにされた状態で、回転動翼槽に落とすことができる。
均化工程においては、泥状になった一次融解菌液に対して大気と遮断された閉鎖環境下で攪拌を行いつつ、溶媒流入口18から溶媒(UFB水)を引き続き補填注入し、例えば原便Qg×2.5ml/UFB水を試料原液とし、同一「一次チャンバー」内で回転軸24の回転数から粘性度を算出する。粘性度の算出には、例えば、あらかじめ装置固有のトルクv[Nm](vニュートンメートル)に装置定数kを乗じた「装置補正係数kv」を設定し、装置の持つ固有トルクより、任意の「試料粘性度」を決定するといった方法が考えられる。
使用する国や地域によって電圧や周波数の違いがあるため、あらかじめ所望のトルク(動力)を準備できない場合は、装置補正係数を乗じる構成としてもよい。一定の時間および一定の温度で攪拌を続け、均一な試料溶液となったことを粘性度計により感知・確認し「均化完了」の指標としてもよい。
附帯装置として、プレフィルターなどで簡易濾過した一次チャンバー内の菌液を一部サンプリングし、濁度(吸光度)測定用フローセル(例えば管径3.30mmのガラス管)に吸引し、重水素放電管を光源とした光から回折格子により580nmの波長を取り出し、直線光としてミラー反射型3回測光により照射することにより一次菌液の濁度(吸光度A)を定量的に数値化してもよい。
この場合、ランバート・ベールの法則より:入射光強度 I、透過光強度I、光路長l、溶質濃度をc、モル吸光係数をε としたとき、A= log10(I/I)=εcl の関係が成立するため、この関係式を用いて濁度を算出することができる。
附帯装置を付けず、手動でサンプリングして濁度を確認してもよい。しかし、システムを完全自動化する観点からは、濁度を自動認識し、移植用菌液の品質管理項目として追跡できるように構成することが好ましい。均化の程度を評価するには、例えば濁度を吸光度測定により標準偏差±2SD範囲内の再現性維持を対象とする。これにより、一次融解機構に試料を投入した時点において試料にばらつきがあっても、均化工程終了時にはそれらのばらつきを吸収し、再現性のよい移植用菌液の「濾過前菌液」が得られる。
また、同時に生物学的に菌の多様性を指標にするためNGSを用いた菌叢解析、具体的には、例えばNGS技術を用いて16S-rRNA(16SリボソームRNA)遺伝子配列における特定領域の塩基配列を利用することで、細菌の系統的な同定を行い、腸内細菌叢のメタゲノムを調べることで、均化前後の菌叢バランスを評価することができる。
均化工程を終えた菌液(濾過前菌液)は、チャンバー12に設けられた配管(不図示)から吸引され、次の濾過ステップを実施するための限外濾過器40に送出されるが(図5(B))、その前に図5(A)のミキシングステップ、脱気ステップ等を経ることもできる。なお、システム全体が比較的大規模な設備として構成される場合は、サニタリー配管などのコンタミネーション(汚染)に強い配管を用いることが好ましい。
[ミキシングステップ]
図5(A)は、濾過前菌液が流路系動力部30を介してミキシングコイル39に投入され、その後、脱気ステップを実施するための脱気機構38に接続される様子を示す図である。流路系動力部30は、ペリスタルティックポンプ34及び可撓性チューブ35、36、37とで構成され、均化工程を終えた濾過前菌液を、ミキシングコイル39及び脱気機構38を介して限外濾過器40に送り出すための、動力機構を構成するものである。可撓性チューブ35、36、37を通過した濾過前菌液は合流点Xで合流し、その後、ミキシングコイル39に送られ、脱気機構38を介して限外濾過器40に送られる。
ここで、「ペリスタルティックポンプ(チューブポンプ)」とは、軟質チューブを回転する複数のローラーでしごいて送液するいわゆる蠕動運動のような動きをする間歇式のポンプであり、コンタミネーションに強い特徴を有する。試作機では、直径10mm内径7.0mmの可撓性チューブ35、36、37を用いたが、送出する液体の流量やポンプの仕様によるものであり、特に限定されない。
このペリスタルティックポンプの機能により、同一の配管で送液される菌液は(置換)ガスによって隔絶された状態が維持されるため、チャンバー12を複数設けて異なる種類の菌液を同一の配管で送出することが可能となる。
可撓性チューブ36の一端は、均化工程を経た後に排出される濾過前菌液の排出口に接続され、可撓性チューブ37は、気体供給源(不図示)に接続され、気体流入用管路としての役割を果たす。
また、可撓性チューブ35は溶媒Y(UFB水)供給源につながっており、必要に応じて菌液の希釈化を行う希釈用管路としての役割を果たす。可撓性チューブ35を流れる溶媒Yの流量を調整することで、合流点Xから排出される濾過前菌液の粘性度を調整することができる。チャンバー12内で一次融解された試料の粘性度が大きい場合には溶媒Yを混合することで濾過前菌液の粘性度が小さくなるように調整する。逆に、予め十分な粘性度が得られている場合は、溶媒Yの供給量を少なくしたり場合により停止したりする。なお、図示しない菌液の粘性度を感知する機構やその取り付け位置等は種々の実施態様が考えられる。例えば、粘性度が、ホモジナイズ機構20の一部である撹拌装置のトルクと関係することから、撹拌装置において、シャフト25等の回転トルクを計測することで回転動翼のプロペラシャフトに掛かるトルクから算出し、希釈率(希釈のために追加する溶媒Yの量)を自動計算させるという方法が考えられる。試作機においては、ビスコメーター(粘度測定装置)を組み込むことで粘性度を目視確認し希釈の有無を決定することとした。
また、可撓性チューブ37は気体供給源に接続されており、ペリスタルティックポンプ34によって連続的な気体の流れが間歇的に分断される。その結果、合流点Xの下流側では、濾過前菌液が気泡Bによって分断された不連続の塊となる。このように菌液を例えば水素ガス等の気泡Bによって不連続の塊に分断するのは、コンタミネーションを抑えるためである。脱気機構38は均化処理後の濾過前菌液に含まれる気泡Bを除去する。
このように、濾過前菌液は一次融解チャンバーを出た直後から間歇的に細切れにされた気泡を投入することでコンタミネーションを防ぐ構造になっており、限外濾過器などに投入される直前に脱気機構38によって脱気し、その後改めて(置換)ガスを細切れに投入することが好ましい。特に、システム内で菌液を常時循環させて必要な時に必要な量取り出す場合、コンタミネーションを防ぐために(置換)ガスの注入と脱気は重要と考えられる。
適切な粘性度に調整され、気泡Bで分断された菌液はミキシングコイル39に投入される。ここで、ミキシングコイル39の役割について説明する。流路を移動する濾過前菌液は、質量の差で重い分子は下方に偏り、軽い分子は反対に上方に偏る。しかし、流路をコイル状にしたミキシングコイル39を通過させることにより、その偏りを是正することができる。また、ミキシングコイル39を通過することにより、濾過前菌液を一定の温度に維持すると共に一定の均化状態を維持することができる。ミキシングコイル39の温度管理方法としては、例えばミキシングコイルをウォーターバス(温浴槽)やオイルバス(油浴槽)といった恒温槽の中に沈める、或いは冷凍・冷蔵庫内等に配置することで、濾過前菌液中に含まれる細菌のインキュベーションに適した様々な任意の温度環境が得られる。
適切に温度管理されたミキシングコイル39を通過することにより、濾過前菌液中の細菌が活性化する。このように、ミキシングコイル39はインキュベーターの役割も果たす。このように、ミキシングコイル39を設けることは、必須ではないがより濾過前菌液の均一性の向上及びインキュベーション効率の向上の点で好ましい。
ミキシングコイル39を挿入すべき箇所は、上記合流点Xと限外濾過器40の中間であり、流路が長い場合は回路の随所に複数設けてもよい。ミキシングコイルをどの位置にいくつ設けるか、長さをどのぐらいにするか等の諸条件についてはシステム全体の設計による。なお、一次融解後の濾過前菌液の状態やシステムの簡素化の観点から、ミキシングコイル39を省略し、合流点Xのあと、限外濾過器40に投入するという設計も考えられる。
[脱気ステップ]
ミキシングコイル39を通過した濾過前菌液は、脱気機構38により気泡Bが除去される(図5(A))。図6は、脱気機構38の概念図である。脱気機構38は、ガラス管等の狭い流路の途中を上方に向けて分岐させた三叉路のような構造である。濾過前菌液に気泡Bを混入させた液体と気体が別々に分かれた気液混合流体がガラス管流路内を通ると流体力学上、気体は楕円形の立体構造となる。その連続的な流れに上向き(大気に解放するため)の脱気管を設けると、気体は上向きに抜けて液体のみが本流路に残る。これが脱気機構の基本的な原理である。
ミキシングコイル39を通過した濾過前菌液は、脱気機構38の導入口381から流入し、脱気機構38の内部で脱気され、脱気口382から気泡B中の気体が上方に放出され、排出口383から排出された濾過前菌液は、限外濾過器40に流入する。
脱気機構38は好適にはエアートラップ流路を備えた大気解放型エアートラップ方式を採用するべきであるが、これに限定されない。
流路を流れる濾過前菌液は常に一定の圧力と大気と閉鎖された環境を維持する必要がある。試料が装置外気温や気圧などの影響を受けることは好ましくない。しかし、扱っている細菌の生物活性や流路内結合部などの抵抗により、微細な気泡が流路系の途中で発生する可能性もあり、これら装置内部の温度や圧力の変化による流路系途中に発生する溶存気体もまた、上述した脱気機構38で脱気される。
[(III) 濾過ステップ(ダイアライズ(限外濾過)工程)]
図5(B)は、脱気機構38を通過した後、濾過前菌液が限外濾過器40に流入する様子を示す図である。
限外濾過器40は、分子篩(ふるい)の一種であり、透析濾過などに用いられるフィルターの一種である。透析濾過する試料に応じたポアサイズのメンブレン(薄膜)47の下側の流入口43から濾過前菌液を流入させ、上方の流入口44からUFB水を投入すると圧力差により下から上に分子篩を行うことができる。濾過後の菌液は「二次菌液」として出口管48から排出され、分子濾過により除去された後の排液は排出口49から排出される。
図7(A)及び(B)~(D)は、限外濾過器の構成を説明するための模式図である。限外濾過器40は、所定の粒径の粒子のみを通過させる濾過器の一種である。大気環境から完全に隔離された閉鎖流路内で連続濾過を可能にする観点では、流路型濾過器を用いることが好ましいが、これに限定されない。
限外濾過器は内部にUターン型の半円形溝を有した長方形のアクリルなどのブロックを向かい合わせに重ねたトンネル構造を有し、重ねたブロック間に例えばポアサイズ10μmのメンブレンフィルターを挟んだトンネル流路を有する。下方流路より限外濾過器内に流入した試料は、大きさが10μm以上の小腸粘膜や食物残渣などが濾過され、下方流路内に残ったまま流れて行き排液となる。また上方流路内から濾過されるものはほぼ腸内細菌だけの状態となっている。
なお、細菌の大きさは平均的には0.7μm程度であるため、実験で製作した図10のシステムでは、限外濾過器のポアサイズを0.7~0.8μmに設定した。しかし、試料に含まれる多種多様な菌の中には、球菌のように単一で0.5μm程度の大きさの小さな菌もあれば、ブドウ状に結合したり連鎖球菌のように長く連なることで非常に大きな菌もあり、1.0μm程度あるいはそれ以上の大きさになることもある。これらの菌が泥状の塊となった状態で限外濾過器を通過することを考えると、ポアサイズは目的に応じて様々な数値範囲を設定することができる。
ここで、間歇式の流れを作るのは、試料Sの自動連続処理におけるコンタミネーションを防止するためである。通常のロートなどの分子篩による物理的濾過は地球の重力に逆らえない。試料は細菌であり、濾紙やガーゼのように、通過時に巨大な外的抵抗力を与えてしまう分子篩は、通常の生命活動以外の分裂・増殖力を惹起する引き金となってしまう。
この点、連続流路を用いた限外濾過器によれば、構造上、流路と濾過フィルターによる抵抗性は人体のそれとほとんど変わらず、例えばフィルターのポア形状を下から上に向けて萎む円錐形の形状でも抵抗なく通過できる。流路系の圧力差を利用し、ポアのサイズが扱う細菌のサイズ以上であれば濾過物質(溶質)は重力に逆らって下から上に通過させることで、分子篩を行うことができる。こうして、試料中の巨大成分である食物残渣、小腸組織、などと腸内細菌、水分などを効率的にかつ自動的に篩い分けることができる。評価は濾過率とし、単位時間当たりのロートによる従来濾過法との濾過率として評価し、同時に「B.ホモジナイズ機構」で説明したと同様、NGS菌叢解析による多様性、バランスなどの比較を行い評価項目とする。
[(IV)分注ステップ・(V)パッキングステップ]
図8は回転式バルブカット分注機構(分注装置)50の構成を示す模式図である。限外濾過後の試料は、必要によりエアートラップ機構で脱気され、回転式バルブカット分注装置に流入する。図8の回転式バルブカット分注装置は、[A]、[B]、[C]三つの円柱型ブロックからなりそのうちBのブロックだけが回転可能である。[A]、[B]、[C]三つの円柱型ブロックは、流入側から流出側に、例えば8本の連通孔を配した場合、チャンネル1用~チャンネル6用、ドレーン用、希釈用の連通孔となる。
回転式バルブカット分注装置の動作原理を分かり易く例えると、鉄道のターンテーブルを思い浮かべると良い。ターンテーブルを回転させることにより、大きさ(重量)及び種類が様々な鉄道車両を自由に連結出来る仕組みである。レールを筒にした構造が回転式バルブカット分注装置である。ポンプの送出タイミングとバルブの回転のタイミングで量を変えたりブレンドしたりが可能となる。なお、円柱形ブロックに何本の穴を開けるかは設計において検討すべき事項の1つである。マルチタイプの装置の場合はブロック数を更に増やしてもよい。
回転式バルブカット分注装置内で複数種類の菌液の送出順序が任意に入れ替えられ、管路58を通過してパッキングされ、菌液パックP内で混合した菌液が完成する。
ダイアライズ装置を経て濾過された移植用菌液は流路内をさらに移動した後、管路51から分注装置50に流入し、ペリスタルティックポンプの間歇(一時停止状態)タイミングでバルブが回転し、正確に秤量し管路58からパッケージされる。一方、管路52から希釈液として例えばUFB水を投入し、分注後の廃液(ドレン)が管路59から排出される。このことを繰り返すことにより正確な定量性を維持し、移植用菌液の濃度(概ね菌数といえる)を維持することができる。バルブ本体の素材や回転部の構造はさらに検討の余地があるが試作機ではステンレス(またはセラミックス)で構成し、回転部はUFB水製造時に使用するせん断ミキサーの研磨水準とした。
ブロックB管内の容積は試作機では20mlを予定しており、一回のFMT実施のために5~6回転することで、一回分の移植用菌液真空パックが精製できる。回転式バルブカット分注装置を流れ出た移植用菌液は真空の閉鎖型分注チャンバー内に流入し、18G(ゲージ)以上の太さのシリンジから減圧された真空パックへと自然に入る構成である。
図9は、管路58から排出された菌液を定量ずつパッケージされた菌液パックPを製造するパッケージ機構(パッキング装置)60を表す図である。
(第2の実施形態)
図10は、実際に設計した菌液製造システムの構成例を示している。試料Sの投入以降から一次融解、及びそれに続くホモジナイズ以降の流路系動力は、ぺリスタルティックポンプによる間歇型連続流れ方式で一定の圧力と閉鎖環境が維持される。運転時には流路系において前の処理と次の処理の間に80℃以上の温水を流し、次いで5%グリセロール溶液を流す。次いで生理食塩水で流路を共洗いする。試料が装置外気温や気圧などの影響を受けることはないが、扱っている細菌の生物活性や流路内結合部などの抵抗により、微細な気泡が流路系の途中で発生する可能性があり、これら装置内部の温度や圧力の変化による流路系途中に発生する溶存気体は大気解放型エアートラップ方式の脱気機構により脱気する。
ミキシングコイル39はインキュベーション用の恒温槽として4℃のウォーターバスが設けられている。限外濾過のポアサイズは0.7μm~0.8μmとした。限外濾過後の二次菌液はさらに気体及び希釈用UFB水と混合され、分注機構50に流入する。分注機構50の出口側には濁度計55が設けられ、ここで計測された濁度に応じてシステムの動力源であるペリスタルティックポンプの回転速度が調整される。
恒温槽も実験で試作した初号機では菌たちの劣化を懸念しウォーターバスの温度を冷蔵の4℃に設定したが、ターゲットとする菌を絞り込んで精製する場合には高温で一定時間維持することが効果的な場合もある。その際は恒温槽を、湯浴ではなくオイルバスに代えて高温の反応を実現することが可能である。
上記システムはヒト腸管内に近い嫌気環境とDNAフリーの非汚染環境(クラス5以上のハイレベルなクリーン環境)の処理空間内で、間歇型連続流れ方式の閉鎖型回路開発により実現し、試料を安全に精度よく自動処理できる「安価で低侵襲なFMT治療」を実現するための「移植用菌液自動精製装置(菌液製造システム)」を提供する。それに伴い精製物である移植用菌液を再現性良く低コストで大量に精製できる。大気中不純物や浮遊DNAなどの混入リスクをゼロにできる。また、ドナー便の融解、均化、濾過工程を完全自動化することにより、ヒト手作業による偶発誤差や試料劣化の発生を防ぐとともに、衛生的でかつ安全な作業効率化と精製精度の向上ならびにコストの削減と汎用化が可能となる。
評価は生成物である移植用菌液の重量法による再現性の確認とNGSを用いた16S-rRNA菌叢解析などにより菌叢バランスを評価する。
試作機は上記(I)~(V)に対応する各装置を連続して繋がる回路型で1つのユニットを構成しているが、それらを複数ユニット、(試作した実験機では最大6ユニットまで)同時に運用することができる。ここで、ユニットとは、1つの回路(配管経路)を流れる菌液の種類の数を意味するものであり、ユニットの数はチャンバー12の数と一致する。すなわち、6ユニットで運用するとは、チャンバー12を6つ設け、それぞれのチャンバー12に異なる試料Sを投入し、同一の配管を経由して各種の工程を経た後、最終的に、バルブカット分注装置で菌液の種類を入れ替えることにより、所望の配合比率の菌液が菌液パックPに送られる。なお、配管内を流れる異なる種類の菌液は、(置換)ガスで隔絶された状態で配管内を送られるため、配管内を菌液が流れている際に隣り合う菌液が接触したり混ざり合うことはない。
FMT「腸内フローラ移植」のための1~6ユニット分(1~6回分)の移植用菌液製造(精製)速度は40~60分を想定しており、一次融解~限外濾過までの構成を6ユニットまで回路内に配置することができ、その場合の処理能力は6~36回分/時間の移植用菌液製造が可能となる。そして、さらにバルブカット分注装置を6つ(6ユニット)に増設することにより、処理能力はさらに6倍となり、理論上はバルブカット分注装置1つ(1ユニット)の場合と比べて36~216回分/時間の移植用菌液精製が可能となる。欧米の便バンクでは、年間数十万件のFMT治療が行われており、当該新技術による機構を複数組み合わせたマルチユニット型自動製造装置の機動性はヒトの手作業とは比べ物にならず高い。
このように、試料Sの融解、均化、濾過工程を完全自動化することにより、ヒト手作業による偶発誤差や試料劣化の発生を防ぐとともに、衛生的でかつ安全な作業効率化と精製精度(製造品質の精度)の向上ならびにコストの削減と汎用化が可能となる。
表1は、本実施形態の特徴を比較したものである。
[表1]
Figure 0007319004000001
このように、CDI(C.difficileの異常増加よる重篤な腸管感染症)のみならず、多様な難治性疾患(アレルギー疾患、自己免疫疾患、がん、肥満、生活習慣病、精神疾患等)に対し、効果が期待される疾患別にパッケージ化された商品「移植用菌液パック」を容易に得ることが可能となる。さらに、患者の症状に応じて複数の菌液を混合するため電子カルテに記載されたデータと連動して適切なレシピを得るプログラムなどへの応用も可能である。これは、例えば後述する本発明の菌液製造方法の(第2の実施態様)等に示すように、本発明の菌液製造方法において、ステップ(VI)乃至(VIII)を利用することで、可能となる。
また大規模な基幹病院向けには、再現性良く安全かつ衛生的に医師の判断で任意の疾患専用の移植用菌液を容易に自動調整できる「自動菌液調整装置」として小型汎用化の開発や、患者単位で特異的な医療機関独自の菌液調整ができる装置の製造が可能である。また、本装置は、「閉鎖型ガス置換技術」、「限外濾過技術」、「UFB水の界面活性作用」によるコロイド化や架橋効果を組み合わせることにより、連続流れ方式流路内における発酵、醸造分野、畜産分野への応用が可能である。
尚、流路は、例えば、約80℃の温水、続いて5%のグリセロール溶液、最後に生理食塩水を用いて共洗いした後、各種のガスを充填すること等によって、ヒトの消化管等のもともと菌が生存(生息)していた環境を再現することができる。このような環境で製造された菌液は、実際の生体に移植した場合に、よりスムーズに生体に定着(生着)させることができる点で、好ましい。
[菌液製造方法]
(第3の実施形態)
第2の実施形態において説明した菌液製造システムは、情報処理データベース、デバイス制御システム、制御用端末を結びつけることが可能である。更に、現在の健康状態に基づいて、異なる種類の菌液を混合する際の配合比等を考慮するための制御システムを付加することもできる。例えば、患者のプロファイリング結果や医師の要望、解析ロジックの結果を踏まえて、最適な菌液を調合できるように構成することができる。
図11は、情報処理データベース101、デバイス制御システム102、制御用端末103を付加した構成例を示している。制御用端末は、例えば、各地の病院等に設置されている端末であり、電子カルテの情報にアクセスできることが好ましい。医師が患者とのヒアリングを通じて、治療を除く疾患或いは体質改善の目的等をデバイス制御システム102に送信するとデバイス制御システム102は情報処理データベース101を検索し、目的に応じた配合比率の菌液を製造するレシピを生成することができる。また、ブレンドされた菌液を実際に患者等に適用した臨床データを情報処理データベース101にフィードバックすることで、情報処理データベース101はより一層充実したレシピ情報を蓄積することが可能となる。
このような構成による菌液製造システムを前提として、本発明に係る菌液製造方法は、
(I) 腸内細菌を含む試料Sをナノバブル水に融解する一次融解ステップと、
(II) 前記一次融解ステップにより前記ナノバブル水に融解した試料Sを含む溶媒Yを均一に撹拌するホモジナイズステップと、
(III)前記ホモジナイズステップにより撹拌した試料Sを含む溶液を濾過する濾過ステップと、
(IV) 前記濾過ステップで濾過された試料Sを含む溶液を分注する分注ステップと、
(V) 分注された前記溶液をパッキングするパッケージステップ
とを含むものである。
(第4の実施形態)
また、図11に例示する菌液製造システムを前提として、前記菌液製造方法は、前記ステップ(I)の前に、さらに下記(VI)乃至(VIII)のステップを含んでいてもよい。
(VI)患者の腸内フローラバランスを測定するステップ
(VII)前記測定の結果に基づき、患者の健康状態を診断するステップ
(VIII)前記測定の結果又は前記診断の結果に基づき、前記ステップ(I)で使用する1又は2以上の前記試料Sを選択し、選択した試料Sが複数の場合には、その配合比率を決定するステップ
このようなステップを追加することで、さらに効率的な菌液の製造が可能となる。
なお、前記(VII)の診断ステップは、例えば特開2021-45097号公報に記載の手段が好ましい例として挙げられ、具体的には、前記ステップ(VI)で測定した腸内フローラバランスにおける、少なくとも2種類以上の腸内細菌群の、菌数比率を指標として実行されることが好ましい。
前記2種類以上の腸内細菌群とは、例えば、それぞれ下記(A)又は(B)のいずれかであることが好ましい。
(A)下記の18グループのいずれか1種のグループ
(B)下記の18グループのうち少なくとも2種以上を合わせた複合グループ
グ ル ー プ 1 : others
グ ル ー プ 2 : Enterobacterales
グ ル ー プ 3 : Fusobacterium
グ ル ー プ 4 : Clostridium cluster XIX
グ ル ー プ 5 : Clostridium cluster XVIII
グ ル ー プ 6 : Clostridium cluster XV
グ ル ー プ 7 : Clostridium cluster XI
グ ル ー プ 8 : Clostridium cluster IX
グ ル ー プ 9 : Clostridium subcluster XIVab
グ ル ー プ 1 0 : Clostridium cluster IV
グ ル ー プ 1 1 : Clostridium cluster I& II& III
グ ル ー プ 1 2 : Clostridium cluster Blautia
グ ル ー プ 1 3 : Equolifaciens
グ ル ー プ 1 4 : Prevotella
グ ル ー プ 1 5 : Bacteroides
グ ル ー プ 1 6 : Akkermansia
グ ル ー プ 1 7 : Lactobacillales
グ ル ー プ 1 8 : Bifidobacterium
尚、上記の 「others」とは、上記のグループ2~18のいずれにも属しない、全ての腸内細菌のほか、その他の細菌、真菌、ウイルス等の、糞便中に存在する、「グループ2~18の腸内細菌」以外の全ての微生物を意味する。
上記グループ毎の「菌数比率」や「グループの数」の測定は、患者の腸内フローラを、遺伝子解析方法を用いて測定することによって、実施することができる。
本発明において用いられる「遺伝子解析方法」としては、公知の「リボソームプロファイリング(16SリボソームRNA(rRNA)シーケンス)」と、上述した公知の「次世代シーケンサー(NGS ) 」 を 組 み 合 わ せ て 用 い る 方 法 が 好ましい。
尚、プロファイリング手法としては、「リボソームプロファイリング」のほか、被検体中に存在する全ての微生物の全遺伝子を包括的に解析する、「ショットガンメタゲノミクスシーケンス」等を用いることもできるが、シーケンス量が少なく低コストで実施可能な「リボソームプロファイリング」が好ましい。
(リボソームプロファイリング)
「リボソームプロファイリング」とは、近年、微生物種等の特定や分類等において広く利用されている方法であり、翻訳処理をされている遺伝子転写産物の同定を利用する手法である。殆どの微生物中に存在する「16SrRNA遺伝子」をシーケンスすることで、被験体中に存在する微生物種の同定や、その存在比率を推定することができるため、これまで分析が困難とされてきた菌叢(微生物叢:微生物の集団)の解析、中でも約100兆~1000兆個近く存在すると言われる腸内細菌叢の解析等に適したものである。
(次世代シーケンサー(NGS))
「次世代シーケンサー」とは、2000年頃に米国で開発されたもので、塩基配列を並行して読み出せるDNA断片の数が、従来のDNAシーケンサーに比べて桁違いに多い機器であり、米国のイルミナ(Illumina)社等によって開発されたものである。
本発明においては、イルミナ株式会社製の次世代シーケンサーとして、例えば、DNAシーケンサー「M iSeqシリーズ」、「NextSeqシリーズ」、「HiSeqシリーズ」等を用いることができるが、その原理や使用方法等については、下記に開示されている。
https://jp.illumina.com/landing/s/metagenome.html
なお、前記診断ステップ(VII)の、より具体的な実施方法としては、下記の手段i)乃至iii)の各ステップを実行することが、好ましい手法として挙げられる。
i)予め決められた、1又は複数の基準のうち少なくとも1つを指標として得られた結果の入力を受け付ける手段(ステップS1)
ii)入力された値をスコア化及び/又はランク付けする手段(ステップS2及び/又はステップS3)
iii)前記スコア又はランクと、指標とした基準を関連付けた診断結果を表示する手段(ステップS4)
上述した実施形態の菌液製造システムは、更に、以下のステップiv)乃至vii)の各ステップを実行することが、好ましい。これらのステップは、予めプログラムしておくことにより、自動化することができる。このプログラムの一例(フローチャート)を、図12に示す。
iv)通信簿又はレーダーチャートを作成するステップ(ステップS5)
v)診断結果、通信簿又はレーダーチャートに基づく、移植用菌液の組成を決定するステップ(ステップS6)
vi)決定した組成を達成しうるドナー情報(1以上のドナーの選別,及び選別した複数ドナーの菌液配合比率等)を選択するステップ(ステップS7)
vii)菌液組成又は選択したドナー情報の入力を受け付けるステップ(ステップS8)
ここで、診断結果を得るために用いうるi)の「指標とした基準」について例示する。
i)の「予め決められた1又は複数の基準」としては、例えば下記の基準1~8等が挙げられる。
なお、下記の「菌力」とは、腸内フローラの有する「健康維持に寄与する能力」、つまり「患者の腸内フローラが有している、自ら健康になろうとする潜在能力」の有無(又は高低)」を意味している。
基準1(免疫活性菌力判定基準)
1-1:下記(B1)に対する(B2)の比率
(B1)グループ1乃至グループ18の全腸内微生物数
(B2)グループ4乃至グループ12の全Clostridium (sub)clusterの合計菌数
及び/又は
1-2:下記(B1)に対する(B3)の比率
(B1)グループ1乃至グループ18の全腸内微生物数
(B3)グループ17及びグループ18の合計菌数
基準2(免疫寛容菌力判定基準)
2-1:下記(B2)に対する(B4)の比率
(B2)グループ4乃至グループ12の全 Clostridium (sub)cluster菌数
(B4)グループ5、グループ9、グループ10、グループ11、及びグループ12の合計菌数
及び/又は
2-2:下記(B1)に対する(B5)の比率
(B1)グループ1乃至グループ18の全腸内微生物数
(B5)グループ4乃至グループ12の全Clostridium (sub)cluster、グループ17、及びグループ18の合計菌数
基準3(メンタル菌力判定基準)
3-1:下記(A1)に対する(A2)の比率
(A1)グループ9菌数 (A2)グループ8の菌数
基準4(脂質代謝指令菌力判定基準)
4-1:下記(B1)に対する(A3)の比率
(B1)グループ1乃至グループ18の全腸内微生物数
(A3)グループ15の菌数
基準5(糖質代謝指令菌力判定基準)
5-1:下記(B1)に対する(B6)の比率
(B1)グループ1乃至グループ18の全腸内微生物数
(B6)グループ14、グループ17、及びグループ18の合計菌数
基準6(組織・皮膚再生菌力判定基準)
6-1:下記(B1)に対する(A4)の比率
(B1)グループ1乃至グループ18の全腸内微生物数
(A4)グループ13の菌数
基準7(長寿サポート菌力判定基準):
7-1:下記(B1)に対する(B7)の比率
(B1)グループ1乃至グループ18の全腸内微生物数
(B7)グループ17及びグループ18の合計菌数
基準8(臓器間通信菌力判定):
7-2(8-1):下記(B1)に対する(A5~A13)の比率が0.2%以上である グループの数
(B1)グループ1乃至グループ18の全腸内微生物数
(A5~13)グループ4乃至グループ12の、いずれか1つのグループの菌数
但し、これらの基準は一例であって、これに限られるものではない。
<具体的な診断基準値>
上記各基準において、「菌力」の診断基準となる具体的な値(最適値)は、民族、年齢、性別その他の条件によっても若干変換し、一概には特定できないが、日本人の成人においては、例えば下記の数値が、健康体の標準値(参考値:reference)として例示される。
基準1(免疫活性菌力判定)
基準1-1:36.66(%)
基準1-2:15.81(%)
基準2(免疫寛容菌力判定)
基準2-1:78.3(%)
基準2-2:46.47(%)
基準3-1(メンタル菌力):37.5(%)
基準4-1(脂質代謝指令菌力):42.53(%)
基準5-1(糖質代謝指令菌力):15.06(%)
基準6-1(組織・皮膚再生菌力):6.20(%)
基準7(長寿サポート菌力)
基準7-1:14.81(%)
基準7-2:7(個)
基準8(臓器間通信菌力)
基準8-1:7(個)
尚、上記の値は、実際に疾患や症状が明らかな、数百例以上の多数の患者の解析結果に基づく統計分析から導き出した値であるが、必ずしもこれらの値に限定されるものでは無い。
具体的な診断手法としては、上記の値から(上下に)遠ざかるほど、当該基準の示す「菌力」が弱いと判断する。尚、「%」ではなく「個」が単位である場合には下に遠ざかるほど「菌力」が弱いと判断する。
<診断における判定手法>
どの程度近ければ、当該「菌力」が高いと判定するかは、どの程度の精度の診断結果を示すかによるため、個々の診断機関で決定することができ、一概には言えず、例えば下記のような判定手法を採用することができるが、必ずしもこの方法に限定されるものではない。
(三段階スコアによる判定方法)
上記のreference値を中心とする一定の幅の値を、3点満点の3点とする。理論上の最低値(0%)及び最高値(100%以上)を0点とする。reference値と最低値又は最高値との間に、適宜、1点又は2点とする幅を設ける。
但し、このスコア化による結果の分類は、必ずしも三段階に分類する必要はなく、一段階や二段、あるいは四段階以上であってもかまわない。
また、基準毎に異なる分類方法を用いても良く、例えば、ある基準では三段階であるが、他の基準は二段階でスコア化しても良い。
尚、このスコアを用いて、更に各「菌力」のランク付けに用いることもできる。
ランク付けの例としては、例えば下記のような手法が挙げられる。
Aランク:基準内の全てのスコア値の合計(又は平均)がW以上
Bランク:基準内の全てのスコア値の合計(又は平均)がX以上W未満
Cランク:基準内の全てのスコア値の合計(又は平均)がY以上X未満
Dランク:基準内の全てのスコア値の合計(又は平均)がZ以上Y未満
尚、このスコア化のルールは、後述する本発明の「診断システム」、「診断装置」、及び「診断プログラム」等において用いることができる。
また、上記ルール等に基づき導き出されたスコアは、それぞれ単独で、あるいは上記の各「基準1~8」毎のスコアの総合判断を以て、本発明の「診断方法」や「健康状態の診断シート」等において用いることができる。
また、このようにして得られた診断結果に基づき、個々の患者に適した移植用菌液を得るためには、異なる種類の菌液(ドナーごとの菌液)についても、上記の基準に基づく診断結果、通信簿又はレーダーチャート等を得ておき、それらのデータを情報処理データベース101に記録しておく点が重要である。そして、制御用端末103からの操作等により、デバイス制御システム102に基づき、患者及び予め用意した1つ又は複数のドナーの便(精製された菌液)から得られた診断結果を考慮して、患者ごとの理想とする腸内フローラバランスを達成し得る1又は2以上のドナーの選択や、選択したドナー菌液の最適な配合比率を決定し、それらの選択や決定の結果を、回転式バルブカット分注機構等に伝達し、複数チャンネルからのドナー菌液各々の、分注比率を決定すること等を通じて、患者一人一人にとって最適な移植用菌液を製造することが可能となる。
なお、情報処理データベース101には、決定した菌液の配合比率や、その他の配合条件等をレシピとして記録し、さらに、患者に調合した菌液を移植した後の状態変化についてのフィードバックをかけることで、デバイス制御システム102は、過去のデータを参照しながら機械学習していくシステムを適用し、より高精度な調合が可能となるように構成することが可能である。
尚、通信簿(スコアリングレポート)とレーダーチャートのイメージ図を、それぞれ図13,14に示す。
図13に示す通信簿は、それぞれの基準についてスコアリングした結果と、その結果に基づくランク付けの結果を示す一覧表である。
図14は、図13の結果を視覚的に表現したレーダーチャート図である。
本発明の菌液製造システムは、以下のように構成することで、便の提供者の健康状態を診断するシステムに応用することが可能である。
具体的には、前記菌液製造システムにおいて、さらに、情報処理データベース(101)、デバイス制御システム(102)、制御用端末(103)を含み、
前記情報処理データベース(101)には予め決められた複数の基準を指標として記録しておき、
前記制御端末(103)からの指示又はデバイス制御システム(102)で実行されるプログラムに基づき、
以下のステップS1~S4を実行するようにしても良い。
i)予め決められた複数の基準のうち少なくとも1つを指標として得られた結果の入力を受け付ける手段(ステップS1)と、
ii)入力された値をスコア化及び/又はランク付けする手段(ステップS2及び/又はステップS3)
iii)前記スコア又はランクと、指標とした基準を関連付けた診断結果を表示する手段(ステップS4)
或いは、本発明の診断システムは、腸内フローラの健康状態を診断するためのものであって、前記菌液製造システムにおいて、さらに、情報処理データベース(101)、デバイス制御システム(102)、制御用端末(103)を含み、
前記情報処理データベース(101)には予め決められた、腸内フローラの健康状態に関する1又は複数の基準を指標として記録しておき、
前記デバイス制御システム(102)が、制御用端末(103)からの指示又はデバイス制御システム(102)で実行されるプログラムに基づき、
以下のステップS1~S8を実行するようにしても良い。
i)前記基準のうち少なくとも1つを指標として得られた結果の入力を受け付ける手段(ステップS1)と、
ii)入力された値をスコア化及び/又はランク付けする手段(ステップS2及び/又はステップS3)
iii)前記スコア又はランクと、指標とした基準を関連付けた診断結果を表示する手段(ステップS4)
iv)通信簿又はレーダーチャートを作成するステップ(ステップS5)
v)診断結果、通信簿又はレーダーチャートに基づく、移植用菌液の組成を決定するステップ(ステップS6)
vi)決定した組成を達成しうるドナー情報(1以上のドナーの選別,及び選別した複数ドナーの菌液配合比率等)を選択するステップ(ステップS7)
vii)菌液組成又は選択したドナー情報の入力を受け付けるステップ(ステップS8)
尚、上記v)のステップS6,及びvi)のステップS7は、より具体的には、例えば次のようにして実行することができる。
v)患者の診断結果、通信簿又はレーダーチャートに基づき、当該患者に不足する菌力を見極める。
続いて、その不足した菌力にかかわる腸内細菌群の組成比の改善に役立つ、当該患者にとって理想的な、腸内フローラバランス組成を決定する。
vi)決定した組成を最大限実現しうる、1又は2以上のドナー菌液とその配合比率を、予め菌液製造システムにリンクさせたドナー菌液群から選択する。
本発明のプログラムは、前記本発明の方法と前記本発明の診断システムの各ステップを実行するためのコンピュータープログラムとして構成しうる。
本発明は、高品質な菌液を安定して連続的に製造できる技術的手段を提供するものであり、種々の疾患において改善率が向上する革新的研究・開発に寄与する安全で奏効率の高い糞便細菌叢移植(FMT)技術を実現するためのキーテクノロジーとして位置づけられる。
1 ウルトラファインバブル発生装置
10 一次融解機構
12 チャンバー
14 ガス流入口
16 ガス排出口
18 溶媒流入口
20 ホモジナイズ機構
21 第1の回転動翼
22 第2の回転動翼
23 第3の回転動翼
24、25 シャフト(軸)
26 回転動力
29 配管
280A モーター
280B 回転軸
290 メッシュホモジナイザー
300 ワイヤー型カッター
300A ワイヤー
300B ワイヤー受け部
300C ワイヤー固定部
310 ミキシング羽根
30 流路系動力部
32 流体クラッチ槽
33 粘性流体
34 ペリスタルティックポンプ
35、36、37 可撓性チューブ
38 脱気機構
381 導入口
382 脱気口
383 排出口
39 ミキシングコイル
40 限外濾過器
43、44 流入口
48 出口管
49 排出口
50 分注機構
51 管路(分注前の移植用菌液)
52 管路(希釈用UFB水)
58 管路(分注後の移植用菌液)
59 管路(廃液)

60 パッケージ機構
101 情報処理データベース
102 デバイス制御システム
103 制御用端末

Claims (24)

  1. 腸内細菌を含む試料Sをチャンバーに投入し、前記チャンバー内を減圧した後、前記試料Sに含まれる細菌の菌種に応じて選択されたパージガスによってパージされた状態でナノバブル水に融解する一次融解機構と、前記一次融解機構により前記ナノバブル水に融解した試料Sを含む溶媒Yを均一に撹拌するホモジナイズ機構と、前記ホモジナイズ機構により撹拌した試料Sを含む溶液を濾過する濾過器と、前記濾過器で濾過された試料Sを含む溶液を分注する分注機構と、分注された前記溶液をパッキングするパッケージ機構と、を含む菌液製造システムであって、前記菌液製造システムの全体が大気と遮断された閉鎖型回路を構成する菌液製造システム。
  2. 前記一次融解機構は温度制御装置が設けられていることを特徴とする請求項1記載の菌液製造システム。
  3. 前記ホモジナイズ機構は温度制御装置が設けられていることを特徴とする請求項1記載の菌液製造システム。
  4. 前記ホモジナイズ機構は流体クラッチ機構を介して伝達される回転動力により撹拌することを特徴とする請求項1又は2記載の菌液製造システム。
  5. 前記菌液製造システムは、ペリスタルティックポンプを含む流路系動力部を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の菌液製造システム。
  6. 前記流路系動力部は希釈用管路と気体流入用管路とを含む請求項5記載の菌液製造システム。
  7. 前記菌液製造システムは脱気機構を含むことを特徴とする請求項1記載の菌液製造システム。
  8. 前記菌液製造システムは脱気機構を含むことを特徴とする請求項6記載の菌液製造システム。
  9. 前記菌液製造システムはミキシングコイルを含むことを特徴とする請求項1記載の菌液製造システム。
  10. 前記菌液製造システムはミキシングコイルを含むことを特徴とする請求項6記載の菌液製造システム。
  11. 前記ミキシングコイルは温度調節機構を具備することを特徴とする請求項9記載の菌液製造システム。
  12. 前記ミキシングコイルは温度調節機構を具備することを特徴とする請求項10記載の菌液製造システム。
  13. 前記濾過器は限外濾過器であることを特徴とする請求項1又は2記載の菌液製造システム。
  14. 前記限外濾過器のポアサイズは、0.5μm~15μmであることを特徴とする請求項13記載の菌液製造システム。
  15. 前記分注機構は回転式バルブカット方式の分注機構である請求項1又は2記載の菌液製造システム。
  16. 前記菌液製造システムは流路内に濁度計が設けられ、前記濁度計の出力に応じて前記流路系動力部の流速が制御されることを特徴とする請求項5記載の菌液製造システム。
  17. 請求項1又は2記載の菌液製造システムにより製造された菌液パッケージ。
  18. 請求項1又は2記載の菌液製造システムにより製造され、大気と遮断された環境下で小腸粘膜及び/又は食物残渣が除去された腸内細菌を含む菌液パッケージ。
  19. (I)腸内細菌を含む試料Sをチャンバーに投入し、前記チャンバー内を減圧した後、前記試料Sに含まれる細菌の菌種に応じて選択されたパージガスによってパージされた状態でナノバブル水に融解する一次融解ステップと、
    (II)前記一次融解ステップにより前記ナノバブル水に融解した試料Sを含む溶媒Yを均一に撹拌するホモジナイズステップと、
    (III)前記ホモジナイズステップにより撹拌した試料Sを含む溶液を濾過する濾過ステップと、
    (IV)前記濾過ステップで濾過された試料Sを含む溶液を分注する分注ステップと、
    (V)分注された前記溶液をパッキングするパッケージステップ
    とを含む菌液製造方法。
  20. 前記ステップ(I)の前に、さらに下記(VI)乃至(VIII)のステップを含んでいることを特徴とする、請求項19記載の菌液製造方法。
    (VI)患者の腸内フローラバランスを測定するステップ
    (VII)前記測定の結果に基づき、患者の健康状態を診断するステップ
    (VIII)前記測定の結果又は前記診断の結果に基づき、前記ステップ(I)で使用する1又は2以上の前記試料Sを選択するステップ
  21. 前記(VII)の診断ステップが、前記ステップ(VI)で測定された腸内フローラバランスにおける、少なくとも2種類以上の腸内細菌群の、菌数比率を指標として実行されることを特徴とする、請求項20記載の菌液製造方法。
  22. 請求項1記載の菌液製造システムを用いて腸内フローラの健康状態を診断するための診断システムであって、さらに、情報処理データベース(101)、デバイス制御システム(102)、制御用端末(103)を含み、
    前記情報処理データベース(101)には予め決められた、腸内フローラの健康状態に関する1又は複数の基準を指標として記録しておき、
    前記デバイス制御システム(102)が、前記制御端末(103)からの指示又はデバイス制御システム(102)で実行されるプログラムに基づき、
    以下のステップS1~S4を実行する診断システム。
    i)前記基準のうち少なくとも1つを指標として得られた結果の入力を受け付ける手段(ステップS1)と、
    ii)入力された値をスコア化及び/又はランク付けする手段(ステップS2及び/又はステップS3)
    iii)前記スコア又はランクと、指標とした基準を関連付けた診断結果を表示する手段(ステップS4)
  23. 請求項1記載の菌液製造システムを用いて腸内フローラの健康状態を診断するための診断システムであって、さらに、情報処理データベース(101)、デバイス制御システム(102)、制御用端末(103)を含み、
    前記情報処理データベース(101)には予め決められた、腸内フローラの健康状態に関する1又は複数の基準を指標として記録しておき、
    前記デバイス制御システム(102)が、制御用端末(103)からの指示又はデバイス制御システム(102)で実行されるプログラムに基づき、
    以下のステップS1~S8を実行する診断システム。
    i)前記基準のうち少なくとも1つを指標として得られた結果の入力を受け付ける手段(ステップS1)と、
    ii)入力された値をスコア化及び/又はランク付けする手段(ステップS2及び/又はステップS3)
    iii)前記スコア又はランクと、指標とした基準を関連付けた診断結果を表示する手段(ステップS4)
    iv)通信簿又はレーダーチャートを作成するステップ(ステップS5)
    v)診断結果、通信簿又はレーダーチャートに基づく、移植用菌液の組成を決定するステップ(ステップS6)
    vi)決定した組成を達成しうるドナー情報(1以上のドナーの選別,及び選別した複数ドナーの菌液配合比率等)を選択するステップ(ステップS7)
    vii)菌液組成又は選択したドナー情報の入力を受け付けるステップ(ステップS8)
  24. 請求項19乃至請求項23のいずれか一項記載の各ステップを実行するためのコンピュータープログラム。
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[特許出願中]UFB(NanoGAS(TM))水を使用した移植菌液,腸内フローラ移植臨床研究会[online],2021年05月16日,URL: https://web.archive.org/web/20210516014334/https://fmt-japan.org/bubble,[retrieved on 8.15.2022]

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