以下に、本発明の実施の形態にかかる光通信システム、通信装置および通信方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
本実施の形態の光通信システムは、光通信経路に加え、無線通信経路によって近隣装置との通信冗長経路を提供する通信システムである。すなわち、本実施の形態の光通信システムは、光通信経路を形成可能な複数の通信装置、を備え、複数の通信装置のうちの少なくとも一部の通信装置は無線通信経路により通信可能である。無線通信の経路は光通信経路と一致する必要はない。無線通信経路は、仮に低速であっても、システム制御などに用いる重要信号に対し、信頼性の高い通信手段を低コストで提供できる。
たとえば面的に広がる多数の装置を光リングNW(ネットワーク)で収容する場合、物理的に近接する装置が光ネットワーク上では必ずしも隣接せず、光通信経路では中継数が多くなる場合がある。光通信経路が遠い場合は、光通信路を維持するために累積光損失を補償するための光再生中継が必須となり、電源設備が必要となる。電源設備としては例えばバッテリーが用いられるが、バッテリーによる動作可能時間はその容量による限度があり、障害の長期化等によりバッテリーによる動作可能時間を超過すると再生中継が不可となり、光リングNWの通信が維持できなくなる。本発明による場合、物理的に近接する装置間で無線通信経路を見つけることにより、無線経路を介して通信接続することができる。光リングNWにて光再生中継を行なって光通信経路を維持しなくても、無線経路を見つけて通信することができるため、システムコストを抑圧することが可能となるとともに、電源設備の稼働時間に制限されずに通信を行うことが可能となる。
本実施の形態の光通信システムは、たとえば電力制御系などへの適用を想定している(図1)。図1は、光ネットワーク例(光リング/無線経路および電力系統)を示す図である。センサーなどで取得した大量の情報を上位システムへ通信するために、信号速度の速いPON(Passive Optical Network)型やリング型の光通信システムを用いるケースがある。また同時に配電系統では、停電復旧機能として上流で開閉器が操作された後に配電系統に沿った下流で電力復帰したことを検知し、通信経路を介して電源状態を伝達することが求められ、その電源復帰順序や通信経路は変化する可能性がある。例えばリングなどの光ネットワークの複数地点でファイバ断線した場合には、通信装置への電源が回復しても通信経路を確保できない。図2は、光ネットワーク例における通信経路の論理トポロジを示す図である。また光リングを迂回した通信経路で通信するためにリング全体で光中継伝送を行う必要があり、光再生中継を行うノードでは高価なバックアップ電源が必須となっていた。また光リング網構成と配電系統構成が一致していない場合には、配電系統で物理的には近接していても、光ネットワーク上では通信経路が遠く、大きな光通信経路の光損失を補償するために、バックアップ電源を用いた光再生中継が必須となる場合があった。本実施の形態の光通信システムは、電力制御系への適用に限定されず、画像やセンシング情報などをはじめとして他の情報を伝送する光通信システム、他の機器などを制御する光通信システムに適用されてもよい。
本実施の形態の光通信システムは、仮に光伝送路が断線していたり、また仮に光再生中継器に電源がなく光リング経路が非導通であっても、通信装置への電源が復旧した際に冗長経路を無線経路で見つけて冗長経路を確保することにより、重要信号に対する通信を確保することができる。これにより、安価で高耐性の通信NWを実現でき、高価なバックアップ電源を不要にすることができる。光ネットワークの構成については、PON型、リング型などのトポロジに対して有効であり、特定のトポロジには限定されない。
たとえば図1の適用事例に於いては、無線経路により接続している装置間は、物理的に近接しているが、光リングでは多数の停電中の中継ノードを介しており、光通信経路では再生中継を行わないと通信できない。
電源供給が断たれた光ネットワークにおいて段階的に電源復旧する場合、電源復旧した装置が光ネットワーク上で隣接しない場合がある。光リングを介して通信を行おうとした場合、停電時にも通信を行えるようにするため装置における光再生中継が必要となり、バックアップ電源をもつ必要がある。各装置を光バイパスすることも考えられるが、光ネットワークの構成次第では多数のノードを中継してしまい、累積する光損失を補償するためにやはりバックアップ電源による再生中継装置が必要となってしまう。
一方、配電系で時限順送処理を行う場合、隣接する開閉器の物理的な距離は近く、無線通信路で直接通信することが可能である。よって光通信経路では届かない場合でも、電源供給を受けた装置が近隣の装置間で無線通信経路を発見すれば制御用の通信を行う事が可能となり、光再生中継用のバッテリーを削減することが可能となる。
システム全体で電源が復旧した後は、光ネットワーク全体が機能するため、光通信経路で大容量のデータ通信を行う事ができる。本無線経路には例えば制御用に920MHz帯特小無線を用いることができる。また、無線通信路を用いた光ネットワークは、障害時だけでなく、光ネットワークを段階的に構築している途中で光経路全体が完成するまでの過渡的な期間において、光通信路でつなぐことができない区間を無線経路でつなぐことによってネットワークを機能させることもできる。
次に、本発明の実施の形態の詳細と具体例について説明する。図3は、本発明にかかる実施の形態の光通信システムの構成例を示す図である。図3に示した光通信システムは図1と同様の構成であるが、説明のために符号を付したものである。図3に示す本実施の形態の光通信システム2は、電力系統である配電系統において用いられる光通信システムである。光通信システム2は、通信装置1-1~1-29を備える。光通信システム2は、通信装置1-1~1-29間が光ファイバで環状に接続されるリング型光通信システムである。すなわち、光通信システム2は、リング型の光通信経路により複数の通信装置である通信装置1-1~1-29が接続される光通信システムである。
図3に示した配電線3-1~3-6は、上位系統から供給される電力に対して電圧変換を行う高圧変圧器5に接続され、高圧変圧器5から出力される電力を伝送する。以下、配電線3-1~3-6において、電力の経路として高圧変圧器5のある側を上流側と呼び、反対の方向を下流側と呼ぶ。高圧変圧器5は変電所4に設置される。配電線3-1~3-6には、電路の開閉を行う開閉器7が設けられている。図3では、図の簡略化のため1つの開閉器7に符号を付しているが、配電線3-1~3-6に配置された同形状の矩形は全て開閉器7である。
図3に示すように、通信装置1-1~1-29のうち通信装置1-1は、例えば、変電所4に設置される。通信装置1-1は、配電線3-1~3-6すなわち配電系統の監視および制御を行う監視制御装置6に接続される。通信装置1-1は、他の通信装置1-2~1-29から情報を収集するとともに、他の通信装置1-2~1-29へ制御情報を送信する親局装置である。通信装置1-2~1-29のそれぞれは、親局装置である通信装置1-1と通信を行う子局装置である。子局装置である通信装置1-2~1-29は、開閉器7ごとに設置される。図3に示すように、通信装置1-2~1-29のそれぞれは、開閉器7の近くに併設され、または開閉器7と一体化されている。通信装置1-2~1-29のそれぞれは、対応する開閉器7を制御する。開閉器7および対応する通信装置1-2~1-29は、例えば電柱に設置されるが、設置される場所に特に制約はない。
以下、通信装置1-1~1-29のそれぞれを、個別に区別せずに示すときは通信装置1と記載し、配電線3-1~3-6のそれぞれを、個別に区別しないときには配電線3と記載する。図3では、変電所4内の開閉器7も含めて開閉器7を31台図示しているが、開閉器の数は、図3に示した例に限定されない。通信装置1の数も開閉器7の数に応じた数であればよく、図3に示した例に限定されない。配電線3の数も図3に示した例に限定されない。なお、子局装置である通信装置1は、正しくは配電線3に設けられている開閉器7の近くに設けられているのであり配電線3に設けられているわけではないが、以下では、記載を簡略化するため、配電線3に設けられている開閉器7の近くに設けられている通信装置1を配電線3上に設けられているとも表現する。
図4は、光通信システム2の通信経路の論理トポロジを示す図である。図3と図4を比較するとわかるように、通信経路の論理トポロジ上で隣接する通信装置1が、1つの配電線3に沿って隣接しているとは限らない。例えば、配電線3-2には、上流側から順に通信装置1-2、通信装置1-4、通信装置1-7、通信装置1-12、通信装置1-11が設けられている。一方、図3および図4からわかるように、論理トポロジ上は、この順に接続されているわけではない。通信装置1-5と通信装置1-6は、配電線3上でも、通信経路の論理トポロジ上でも隣接しているが、通信装置1-2と通信装置1-4は、配電線3上では隣接しているが、通信経路の論理トポロジ上では隣接していない。また、光通信システム2は、複数の配電線3にわたって配置されている。すなわち、光通信システム2の光通信経路は、電力系統における複数の配電線3にわたって設けられている。このように、通信経路の論理トポロジ上の通信装置1の位置と、配電系統上の位置とは、対応しているとは限らない。すなわち、複数の通信装置1のうち少なくとも一部は、光通信経路において隣接する通信装置と、配電線3に沿って隣接する通信装置1とが異なる。なお、図3では、各配電線3を模式的に直線で示しており、図3は地理上の位置を示すわけではない。
次に、通信装置1の構成について説明する。図5は、通信装置1の構成例を示す図である。図5は、通信装置1が子局装置である例を示しているため、通信装置1が開閉器7と併設されている。通信装置1の構成は、親局装置も子局装置と同様である。通信装置1は、光通信部11、信号処理部12、電源部13および無線通信部14を備える。また、通信装置1は、開閉器7と接続される。開閉器7は、配電線3と入力側と出力側との2か所で接続され、通信装置1からの指示にしたがって入力側と出力側を接続または開放することで、電路を閉または開にする。また、開閉器7は、配電線3の短絡事故、地絡事故などにより過電流を検出した場合などには自律的に電路を開にする。また、開閉器7は、配電線3の電流、電圧などを測定し、測定値を通信装置1へ出力する。このように、開閉器7は、計測機能を有するセンサー付き開閉器と呼ばれる開閉器である。
光通信部11は、リング型の光通信経路を用いた光通信を行うことが可能である。光通信部11は、光受信機、光送信機および通信制御回路などで構成され、光ファイバ8を介して、光信号の送受信を行い、受信した光信号を電気信号に変換して信号処理部12へ出力する。また、光通信部11は、信号処理部12から出力される電気信号を光信号に変換して光ファイバ8へ送出する。さらに、光通信部11は、光通信が断となったことを検出する機能を有する。具体的には、光通信部11は、光通信経路の分断を検出する第1の判定機能を有するとともに、光通信経路上で隣接する2つの通信装置1のそれぞれとの間の光通信の可否を判定する第2の判定機能を有する。第1の判定機能は、例えば、子局装置の場合には、通信相手の装置である親局装置からの応答の待ち時間がタイムアウトとなったときに、すなわち親局装置からの応答が一定時間内に受信できない場合に、光通信の分断と判定する機能である。なお、通信の分断は、光通信経路において複数箇所に障害が生じたときに発生する。リング型の光通信システム2では、一般に、片方向の通信が不可であると逆回りの通信が行われる。したがって、光通信経路に1か所の障害が発生しても通信の継続は可能である。しかし、光通信経路において複数箇所に障害が生じると、分断されてしまう経路が生じ、通信できない部分が発生する。第2の判定機能は、例えば、隣接する通信装置1から受信した光信号のレベルを監視し、光信号のレベルが閾値未満となると隣接する通信装置1との間の光通信が不可と判定する機能であってもよいし、隣接する通信装置1へ光信号を送信し応答がタイムアウトしたときに隣接する通信装置1との間の光通信が不可と判定する機能であってもよい。また、光通信システム2は、右回りと左回りの両方向の通信が可能であり、光通信部11は、光通信の断を検出すると、逆回りで通信を行う。光通信部11は、第1の判定機能では、右回りと左回りの両方向とも応答がタイムアウトした時に光通信の分断と判定する。光通信部11は、第1の判定機能によって光通信経路の分断を検出した場合、および第2の判定機能により隣接する2つの通信装置1のうち少なくとも1つと光通信が不可であると判定した場合、判定結果を信号処理部12へ通知する。
信号処理部12は、光通信部11を介して、親局装置である通信装置1から受信した制御情報に基づいて、開閉器7へ接続または開放を指示する信号を出力する。また、信号処理部12は、開閉器7から、配電線3の電流、電圧などの測定値を取得すると、測定値を含む第1の情報を、光通信部11を介して親局装置である通信装置1へ送信する。第1の情報は、電力系統の監視に用いられる情報の一例であり、上述した測定値以外に開閉器7の状態を示す情報などが含まれていてもよい。また、第1の情報には、測定値の他に送信元の通信装置1の識別情報が含まれる。さらに、信号処理部12は、光通信部11を介して、受信した信号が自装置宛てでない場合には、受信した信号を、光通信部11を介して光ファイバ8へ送出することにより転送する。信号処理部12は、初期状態では、第1の情報を光通信部11に送信させる。また、信号処理部12は、光通信部11からの通知に基づいて、光通信経路の分断が検出されかつ光通信経路上で隣接する2つの通信装置1のうち少なくとも一方と光通信が不可である場合に、無線通信部14に、第2の情報を送信させる。第2の情報は、電力系統の監視に用いられる情報であり、少なくとも送信元の通信装置1の識別情報を含む。第2の情報は、第1の情報と同一内容の情報であってもよい。第2の情報は、第1の情報より情報量が少ないものであってもよい。
電源部13は、通信装置1の各部へ電源を供給する。ここでは、電源部13は、配電線3から供給される電力を用いて通信装置1の各部へ電源を供給する例を説明するが、電源部13はバッテリーも備えていてもよい。
無線通信部14は、無線通信を行うことが可能であり、アンテナおよび送受信回路などで構成される。無線通信部14は、信号処理部12から出力される第2の情報を、無線信号として送信する。また、無線通信部14は、他の通信装置1から無線信号を受信すると、受信信号の宛先が自装置である場合には、受信信号を信号処理部12へ出力する。無線通信部14は、受信信号の宛先が自装置でない場合には、宛先に応じて、受信信号を他の通信装置1へ転送する。各通信装置1の無線通信部14が、このような転送を行うことで、複数の通信装置1により無線マルチホップネットワークが構成される。無線マルチホップネットワークにおける経路制御は、通常の無線マルチホップネットワークと同様の経路制御プロトコルにより行われてもよいし、後述するようにあらかじめ定められたポリシーにしたがって行われてもよい。なお、無線通信部14は、光通信が断であるか否かにかかわらず、無線信号を受信可能な状態であるとする。
以上のように、子局装置は、配電線3に設けられた開閉器7に接続され、接続された開閉器7から取得した情報を第1の情報として親局装置を宛先として光通信経路により送信する。また、子局装置は、他の子局装置から、第1の情報を受信すると、受信した第1の情報を親局装置へ向けて光通信経路へ転送する。
また、親局装置である通信装置1-1の構成は、図3に示した通信装置1と同様であるが、通信装置1-1は、監視制御装置6に接続される親局装置であり、変電所4に設置される場合対応する開閉器7を必ずしも直接制御する必要はない。しかしながら、通信装置1-1も、子局装置と同様に、配電線3に設けられた開閉器7を制御する機能を有していてもよい。通信装置1-1の光通信部11および無線通信部14の機能は、子局装置の光通信部11および無線通信部14と同様である。通信装置1-1の信号処理部12は、監視制御装置6と通信を行う機能を有し、光通信部11を介して子局装置から受信した第1の情報を監視制御装置6へ送信する。また、通信装置1-1の信号処理部12は、監視制御装置6から、子局装置宛ての制御情報を受信すると、光通信部11を介して、子局装置に宛てて該制御情報を送信する。また、通信装置1-1の信号処理部12は、無線通信部14を介して子局装置から受信した第2の情報を監視制御装置6へ送信する。また、通信装置1-1の信号処理部12は、子局装置から無線通信部14を介して第2の情報を受信すると、この子局装置宛ての制御情報を、無線通信部14を介して無線信号として送信してもよいし、無線信号と光信号の両方で送信してもよい。
以上の動作により、光通信が両方向とも断となった場合、すなわち光通信システム2の複数箇所で障害が発生した場合でも、各子局装置は、親局装置との間の通信経路を確保することができる。また、各子局装置は、光通信が両方向とも断となった場合のみ、一般的な経路制御プロトコルにしたがってまたは定められたポリシーにしたがって無線信号の送受信を行えばよいので、冗長経路確保のための処理負荷を抑制することができる。
次に、本実施の形態の動作例について説明する。上述した図3および図4は、配電系統内に障害が発生しておらず、光通信システム2の光通信経路内でも障害が発生していない通常時の状態を示しており、各配電線3の開閉器7は閉(ON)の状態に制御される。変電所4の高圧変圧器5から配電線3を介して、配電線3に接続される図示しない需要家へ電力が供給されている。また、光通信システム2を構成する通信装置1-1~1-29は、リング型の光通信経路により通信を行っている。
次に、大規模な災害などによって複数の配電線3で地絡などが発生し、複数箇所で停電が生じた場合について説明する。図6は、複数箇所で停電が発生した場合の本実施の形態の配電系統の状態を示す図である。図6では、複数の開閉器7のうち停電により電源が供給されなくなり開(OFF)状態となった開閉器7にハッチングを施さず、電源が供給されており閉(ON)状態の開閉器7にハッチングを施している。また、図6では、停電により電源が供給されなくなり機能を停止した通信装置1にハッチングを施さず、電源が供給されており機能している通信装置1にハッチングを施している。また、図6では、配電線3のうち給電されていない区間を破線で示し、給電されている区間を実線で示している。また、図6では、光通信システム2のうち機能している光通信経路を実線で示し、機能していない光通信経路を破線で示している。
図6に示した例では、配電線3-3には高圧変圧器5から電力が供給されているが、配電線3-2,3-6には、高圧変圧器5から電力が供給されていない。また、配電線3-3の下流の配電線3-4,3-5では、通信装置1-13,1-22,1-21,1-20に対応する開閉器7には電力が供給されている。また、通信装置1-13,1-22,1-21,1-20にも電力が供給されており、通信装置1-1,1-29,1-5,1-6にも電力が供給されている。したがって、通信装置1-1,1-29,1-5,1-6,1-13,1-22,1-21,1-20は正常に機能している。しかし、これら以外の通信装置1は、電力が供給されていないため、通信を行うことができない。
図7は、図6に示した状態における光通信システム2の通信経路の論理トポロジを示す図である。図7においても、停電により電源が供給されなくなり機能を停止した通信装置1にハッチングを施さず、電源が供給されており機能している通信装置1にハッチングを施している。光通信経路によって通信が可能な区間は、通信装置1-5から通信装置1-6までの区間と、通信装置1-20から通信装置1-22までの区間と、通信装置1-1から通信装置1-29までの区間と、の3区間である。したがって、通信装置1-1と光通信経路によって通信可能な子局装置は通信装置1-29のみである。他の子局装置は、通信装置1との間で光通信経路による通信はできない。
したがって、監視制御装置6は、通信装置1-2~1-28から送信される測定値を受信できず、また通信装置1-2~1-28に接続される各開閉器7の状態も把握できない。一方で、上述した通り、実際には、通信装置1-5,1-6,1-13,1-22,1-21,1-20も実際には正常に動作しており、対応する開閉器7にも電力が供給されている。すなわち、監視制御装置6は、光通信経路を用いた情報の収集だけでは、どの区間で停電しており、どの区間で停電していないかを把握することができない。このような停電の発生時には、停電の要因を解消させるために、作業者を現地に派遣することになる。光通信経路を用いた情報の収集だけでは、実際には正常に動作している区間があっても、上述したようにほとんどの区間で停電が生じていると判断される可能性がある。したがって、作業者を、実際には正常である区間に派遣する可能性があり、作業時間の浪費が生じる可能性がある。停電からの速やかな復旧のためには、作業者を派遣する場所を絞り込むことが望ましい。
なお、通信装置1の電源部13がバッテリーを備える場合には、通信装置1は、バッテリーによりある程度の時間、通信を行うことができる。しかしながら、大規模な災害時などでは全ての停電の復旧には時間を要するため、通信装置1はバッテリーにより動作可能な時間を超過して通信ができなくなることが想定される。
そこで、本実施の形態では、上述したように、通信装置1が無線通信機能も有することで、正常に動作している通信装置1間の無線経路を冗長経路として用いて、子局装置と親局装置の間の通信を実現できる可能性を高める。
図8は、通信装置1における通信経路の切替処理手順の一例を示すフローチャートである。通信装置1は、初期状態では、光通信部11による通信を行っており、光通信部11による通信を行っている状態で、図8に示した処理を実施する。なお、光通信システム2における光通信経路に障害が無い場合、通信装置1-1から通信装置1-29には、通信装置1-29宛ての制御情報のほか、通信装置1-29を経由して通信装置1-1と通信を行う通信装置1-28宛ての制御情報も送信される。さらに、通信装置1から通信装置1-29には、通信装置1-28だけでなく通信装置1-29を経由して、通信装置1-1と通信を行う全ての子局装置宛ての制御情報が送信される。このように、各通信装置1-1は中継装置としても機能する。子局装置から通信装置1-1へ向かう方法の通信においても同様である。
図8に示すように、通信装置1の光通信部11は、光通信の断を検出する(ステップS1)。なお、ここでは、光通信の断とは、光通信の分断が検出され、かつ、隣接する2つの通信装置1の少なくとも一方と光通信が不可であることを示す。
光通信の断を検出すると(ステップS1 Yes)、通信装置1は、選択ポリシーに従って無線通信の相手を選択する(ステップS2)。具体的には、光通信部11は、光通信におけるタイムアウトを検出すると信号処理部12へ通知し、信号処理部12が、選択ポリシーに従って無線通信の相手を選択する。この選択ポリシーとしては、電波状態の最も良い通信装置1を選択するというポリシー、通信装置1までの通信経路が最短となる通信装置1を選択するというポリシー、またこれらに重み付けをした値により選択するポリシーが例示できる。
また、選択ポリシーとして、無線通信の接続先の通信装置1の候補があらかじめ設定される方法もある。例えば、配電線3に沿って隣接する通信装置1を、通信相手の候補として定めておいてもよい。停電からの復旧時を考慮すると、変電所4から下流へ向けて順次電力が復旧していく。したがって、配電線3に沿って上流側から光通信経路が復旧される可能性が高い。このため、自装置の配電線3上の上流側の隣接装置と通信が可能であればよい。このように、固定で通信相手を定めておくことで、無線通信経路の確立に要する時間を省くことができる。また、通信相手の装置の候補を複数定めておき、これらの複数の通信装置に優先順位をつけておき、信号処理部12は、優先順位の高い順に複数の候補のなかから通信相手の装置を選択してもよい。すなわち、複数の候補のそれぞれに優先順位が付与され、無線通信部14は、優先順位の高い候補から順に無線通信の確立処理を実施するようにしてもよい。選択ポリシーとしては、これらに限定されず、様々な判断基準を用いることが可能である。また、通信装置1は、1つの他の通信装置1を無線通信の相手として選択してもよく、複数の他の通信装置1を無線通信の相手として選択してもよい。
なお、信号処理部12が、電波状態に基づいて通信装置1を選択する場合、例えば、無線通信部14に、ブロードキャストにより応答を要求する無線信号を送信させ、応答を受信したときの受信信号の強度を電波状態として求めることができる。また、通信装置1までの通信経路が最短となる通信装置1を選択する場合、通信装置1は、例えば、無線マルチホップネットワークにおける経路探索において得られるホップ数などに基づいて通信経路の長さを判断する。なお、通信装置1ごとに、通信装置1までの通信経路が最短となる通信装置1を固定で設定しておいてもよい。
ステップS2の後、信号処理部12は、無線通信により情報を送信し(ステップS3)、処理を終了する。このとき送信する情報は、上述した第2の情報である。ステップS1でNoと判断した場合、通信装置1はステップS1の処理を繰り返す。なお、一時的な障害により光通信が断になっている可能性もあるため、通信装置1は、ステップS1でYesと判断した場合も、周期的に光信号の送信を行い、図8に示す処理を繰り返す。
また、信号処理部12は、光通信により通信装置1からの応答がなかった場合でも、隣接装置との通信が可能な場合は、隣接する通信装置1との間では光通信を使用してもよい。すなわち、子局装置は、光通信の分断と判定した場合、光通信経路上で隣接する2つの通信装置1のうち一方の隣接装置と光通信が可能であって他方の隣接装置と光通信が不可であるときには、一方の隣接装置との間では光通信部11による光通信を行うとともに、無線通信部14による無線通信を行ってもよい。この場合、隣接する通信装置1との間で光通信が不可である通信装置1は、他の通信装置1から光通信で受信した情報も含めて全て無線通信によって送信することになる。このときに光通信で送信される情報は、上述した第1の情報であってもよいし第2の情報であってもよい。また、子局装置は、光通信の分断と判定した場合、光通信経路上で隣接する2つの通信装置の両方と光通信が可能であるときには、光通信部11による光通信を行ってもよい。このように、光通信が可能な区間は可能な限り光通信経路を用いることで、低遅延、大容量の光通信を、有効に活用することができる。また、無線通信の使用区間を抑制することで、無線通信で発生する送信信号の衝突を抑制し、無線区間の遅延抑制、無線リソースの効率的な利用を実現できる。
ここで、無線通信経路の構築の例について説明する。ここでは、通信装置1が、電波状態に基づいて通信相手を選択する例を説明する。図6および図7に示した例において、通信装置1-29は、通信装置1-28との間の光通信が断になったことを検出すると、周辺の通信装置1の電波状態に基づいて、通信相手を選択する。ここでは、通信装置1-29の近隣の通信装置1のなかで、通信装置1-5が通信装置1-29と距離的に最も近いとする。通信装置1-29が受信する無線信号の強度も、近隣の通信装置1のなかで最も高いとする。このため、通信装置1-29は、通信装置1-5を通信相手として選択して、通信装置1-5宛ての無線通信を開始する。なお、図7に示すように、通信装置1-5と通信装置1-29との間には、光通信の論理トポロジ上は4台の通信装置1が存在している。しかしながら、上述したように、通信装置1-5と通信装置1-29は無線経路としては隣接する位置に存在している。
通信装置1-5は、通信装置1-29から無線信号を受信すると、受信した信号が自装置宛ての情報であればその情報を処理し、自装置宛てでない信号を光通信により通信装置1-6へ転送する。なお、通信装置1-5から通信装置1-1との間は、光通信経路ではリングのどちらの方向も途中で途切れている。このため、通信装置1-5は、光通信の断と判断して無線通信を開始してもよい。ただし、上述したように、通信装置1は、隣接する通信装置1との間で光通信を行うことができる場合には、隣接する通信装置1へ光通信により信号を送信してもよい。ここでは、通信装置1-5は、光通信により通信装置1-6へ転送することとする。通信装置1-6は、通信装置1-5から受信した信号を無線通信により送信する。なお、このように、光通信が可能な区間では光通信を行うようにする場合、この区間の両端の装置は光通信と無線通信の両方を行うことになる。子局となる各通信装置1-2~1-29と親局の通信装置1-1との間の通信経路の構築には、例えば公知の技術であるAODV(Ad hoc On-Demand Distance Vector)プロトコルが用いられる。
例として、通信装置1-1が通信装置1-22宛てに下り方向の通信を開始する場合、基本的な経路構築の動作の概要は以下のようになる。通信装置1-1は、送信元である自身のIPアドレスと宛先である通信装置1-22のIPアドレスとを含むRREQ(経路要求:Route REQuest)メッセージを、光通信、無線通信を含むすべての使用可能な通信経路を用いてブロードキャストする。
図6に示した構成例の場合、このメッセージは通信装置1-29で受信される。通信装置1-29は、RREQメッセージの宛先が自装置ではない場合、再度ブロードキャストを行う。このとき、通信装置1-29は通信装置1-1から受信したことを経路表に記憶しておく。この経路表が、通信装置1-29からの上り方向の通信で用いられるため、通信装置1-29からの上り方向の経路は通信装置1-1への経路となる。
通信装置1-29からブロードキャストされたRREQメッセージは、通信装置1-5で受信される。通信装置1-5では、RREQメッセージの宛先が自装置ではないため、再度ブロードキャストを行う。このとき、通信装置1-5では、通信装置1-1を送信元とするパケットを通信装置1-29から受信したことを経路表に記憶しておく。この経路表が、通信装置1-5からの上り方向の通信で用いられるため、通信装置1-5からの上り方向の経路は通信装置1-29を介した通信装置1-1への経路となる。
通信装置1―5からブロードキャストされたRREQメッセージは、通信装置1-6で受信され、同様な処理が行われる。通信装置1-22は通信装置1-6からRREQメッセージを受信し、宛先が自身のIP(Internet Protocol)アドレスであることを確認すると、通信装置1-1を送信元とするパケットを通信装置1-6から受信したことを経路表に記憶しておくとともに送信元である通信装置1-1へRREP(経路応答:Route REPly)メッセージを送信する。このとき、通信装置1-22は、通信装置1-1への宛てのメッセージを経路表により通信装置1-6へ送信する。
RREPメッセージを通信装置1-22から受信した通信装置1-6は、経路表により通信装置1-1宛てのメッセージは通信装置1-5に送信すればよいことがわかるので通信装置1-5へRREPメッセージを転送する。RREPメッセージを受信した通信装置1-5の動作も同様である。またこのとき、通信装置1-5は、RREPメッセージを受信したことで自装置から通信装置1-22への通信は通信装置1-6へ送信すればよいことがわかるので、この情報を経路表に追加する。これにより、通信装置1-5は、以降は通信装置1-22宛ての通信を行う際はブロードキャストを行わず通信装置1-6宛てにユニキャストで転送すればよいことになる。
以降、同様に各通信装置は自身の経路表を辿ってRREPメッセージを逆方向(上り方向)へ転送していく。RREPメッセージが通信装置1―1へ到達すると、通信装置1-1と通信装置1-22との間の通信経路が双方向で確立することになり、以降は任意のデータ通信が可能となる。このようにして、各通信装置はメッセージの送信元、宛先と自装置で作成する経路表から転送先を決定する。
この動作については経路が光通信か無線通信であるかには依存しないため、転送先である通信装置との通信手段は光通信もしくは無線通信の使用可能な方で行えばよく、光通信と無線通信が混在した経路の構築が可能である。
通信装置1-6から送信された無線信号は、通信装置1-22で受信され、通信装置1-22から通信装置1-21,1-20へ光通信により伝送される。また、通信装置1-6から送信された無線信号は、通信装置1-13でも受信される。これにより、図6および図7に示した通信装置1のうち正常に動作している全ての通信装置1へ、通信装置1-1から送信された制御情報が送信されることになる。同様に逆向きの通信も行われる。
これによって、通信装置1-1は、通信装置1-5,1-6,1-13,1-20,1-21,1-22から送信された信号を受信することができる。したがって、監視制御装置6はこれらの通信装置1から、これらの信号を受信することにより、通信装置1-5,1-6,1-13,1-20,1-21,1-22が正常に動作していることを把握することができる。
また、監視制御装置6は、正常に動作している通信装置1からの信号を受信することにより、配電線3における停電箇所すなわち故障箇所を推測することができる。図9は、監視制御装置6の構成例を示す図である。図9に示すように監視制御装置6は、通信部61、開閉器制御部62、故障判定部63、故障解析部64および記憶部65を備える。通信部61は、通信装置1などの他の装置との間で通信を行う。開閉器制御部62は、開閉器7を制御するための制御情報を生成し、制御情報を対応する子局装置宛てに通信部61を介して光通信システム2へ送信する。制御情報は通信装置1を介して上述したとおり、各子局装置へ転送される。通信部61は、各子局装置から第1の情報または第2の情報を受信しているか否かに基づいて各子局装置の動作状態を示す情報を記憶部65へ格納する。動作状態を示す情報は各子局装置が通信可能であるか否か、すなわち応答があるか否かを示す情報であり、通信部61は、一定時間以上第1の情報または第2の情報を受信できない場合に通信不能であると判断する。また、通信部61は、各子局装置から受信した第1の情報および第2の情報を記憶部65に格納する。
故障判定部63は、記憶部65に格納された各子局装置の動作状態を示す情報に基づいて、各配電線3における故障の有無を判定するとともに故障が生じたときには故障箇所を推定する。故障解析部64は、第1の情報、すなわち配電線の電圧、電流などの測定値に基づいて、故障予知、故障分析などの解析を実施する。
故障判定部63は、図6および図7で示したように停電が生じた場合には各配電線3における停電箇所を推測する。故障判定部63は、例えば、各配電線3における通信装置1の位置を示す位置情報と、記憶部65に記憶されている各子局装置の動作状態を示す情報とを用いて停電箇所を推測する。位置情報は、記憶部65に格納されている。図10は、位置情報の一例を示す図である。図10に示すように、位置情報には、配電線3ごとに、上流側から下流側への配置位置の順に通信装置1の識別情報が格納される。配電線3においてある箇所の開閉器が閉になるとその開閉器より下流では全て停電となるので、故障判定部63は、最上流の通信装置1から順にどの通信装置1までが通信可能であるかを把握することにより、停電箇所を推定することができる。
すなわち、本実施の形態では、子局装置は、第2の情報を、無線通信により親局装置を宛先として送信し、親局装置は、子局装置から受信した第1の情報および第2の情報を監視制御装置6へ送信する。そして、第1の情報および第2の情報は、監視制御装置6における配電線3内の停電箇所の推定に用いられる。
図11は、故障判定部63における停電箇所の推定手順の一例を示すフローチャートである。故障判定部63は、記憶部65に記憶されている各子局装置の動作状態を示す情報に基づいて、応答がない通信装置があるか否かを判断する(ステップS11)。応答がない通信装置1がある場合(ステップS11 Yes)、故障判定部63は、通信装置1の配電線3上の位置を求める(ステップS12)。詳細には、故障判定部63は、位置情報を検索して、応答の無い通信装置1がどの配電線3の上流から何番目の通信装置1であるかを求める。次に、故障判定部63は、応答のない通信装置1より下流の通信装置1から応答があったか否かを判断する(ステップS13)。応答のない通信装置1より下流の通信装置1から応答があった場合(ステップS13 Yes)、故障判定部63は、ローカルな故障と判断し(ステップS16)、処理を終了する。応答のない通信装置1より下流の通信装置1から応答がない場合(ステップS13 No)、停電と判断し(ステップS14)、停電区間の最上流の位置を特定し(ステップS15)、処理を終了する。ステップS11で、応答がない通信装置がないと判断した場合(ステップS11 No)、故障判定部63は、ステップS11を再び実施する。
以上のように、監視制御装置6が、停電区間の最上流の位置を特定することにより、より効率的に、停電の復旧作業を行うことができる。
なお、上述した例では、冗長経路として、通信装置1を用いた無線通信経路を用いる例を説明したが、配電線3による電力線通信経路、スマートメータネットワークなど他の通信経路を併用してもよい。スマートメータネットワークは、自動検針のための検針装置であるスマートメータにより構成されるマルチホップネットワークである。電力線通信を用いる場合には、あらかじめ配電線3に接続されて電力線通信および無線通信を行う通信装置を設けておく。これにより、電力線通信の経路を、災害時に光ファイバに障害が生じた場合の冗長経路として用いることもできる。また、スマートメータネットワークを経由する場合には、例えば、通信装置1がスマートメータと同様の手順でスマートメータネットワークに参入することにより、スマートメータネットワークにはこれらの通信装置1がスマートメータネットワークに参入することを許可するように設定しておく。
なお、上述した例では、全ての通信装置1が光通信機能と無線通信機能を有するようにしたが、無線通信機能を一部の通信装置1が有するようにしてもよい。無線通信機能を一部の通信装置1が有する場合、全ての通信装置1の動作状態を把握することはできないが、おおよその停電箇所の推定を行うことはできる。なお、この場合、無線通信機能を備えない通信装置1は、光通信経路の分断を検出しても、隣接した通信装置1のうち少なくとも一方との間で光通信が可能であれば、隣接した通信装置1のうち少なくとも一方に第1の情報または第2の情報を送信する。
また、通信装置1とは別に、無線通信機能を有する中継装置を、通信装置1とは別の場所に設けておくようにしてもよい。通信装置1間の距離が離れている場合、無線信号が相手に到達しない可能性があるが、中継装置を設けておくことにより、無線信号が到達する可能性を高めることができる。中継装置は光通信機能を有していなくてもよい。
以上のように、本実施の形態では、電力系統で用いられるリング型の光通信システム2を構成する通信装置1が無線通信機能を有し、光通信の断を検出した場合に、無線信号により情報を送信するようにした。このため、本実施の形態の光通信システム2は、通信装置1の処理負荷を抑制しつつ、複数地点の障害時に通信不能となる通信装置1を抑制することができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。