以下、図面を参照して本発明を実施するための一つの形態について説明する。患者離床時の転倒防止の観点から、比較例では、離床(在床)を検出することが多く行われていた。しかし、在床時に患者がどのような姿勢であるかを検知することは行われていなかった。
患者の姿勢としては、例えば離床前の行動として端座位の検出等が行われる場合、ベッドの広範囲にセンサを多数設置すること等で臥位と座位を判別等が行なわれる場合があるが、患者が寝ているときの向き(例えば、仰臥位、腹臥位、側臥位等)を判定することはできなかった。
患者の姿勢を判定するためには、例えば別にカメラ装置等を設け、患者を監視するか、画像解析を行う必要があった。この場合、患者を監視する側の負担が大きかった。また、カメラにより常時撮影する必要があるため、プライバシーを守る観点から、患者に反対される場合もあった。
そこで、本実施形態の姿勢判定装置によれば、ベッド装置上において、患者が就寝しているときの振動を検出するだけで、患者の姿勢までも検出することができることが可能となる。
なお、本明細書で患者とは、ベッド装置(マットレス)を利用する者をいい、病気で治療を受けるものに限られず、施設で介護を受ける者や、ベッド装置で就寝する者であれば対象者として適用可能である。
[1.第1実施形態]
[1.1 システム全体]
図1は、本発明の姿勢判定装置を適用したシステム1の全体概要について説明するための図である。図1に示すように、システム1は、ベッド装置10の床部と、マットレス20の間に載置される検出装置3と、検出装置3より出力される値を処理するため処理装置5を備えて構成されている。この検出装置3、処理装置5とで患者の姿勢を判定するシステムを構成している。
マットレス20に、対象者(以下、一例として「患者P」とする)が在床すると、対象者である患者Pの生体信号として体振動(人体から発せられる振動)を検出装置3が検出する。また、検出された振動に基づいて、患者Pの生体情報値が算出可能である。
算出された生体情報値(例えば、呼吸数、心拍数、活動量)を、患者Pの生体情報値として出力・表示してもよい。
また、検出装置3に記憶部、表示部等を設けることにより処理装置5と一体に形成されてもよい。また、処理装置5は、汎用的な装置で良いため、コンピュータ等の情報処理装置に限られず、例えばタブレットやスマートフォン等といった装置で構成されてもよい。また、検出装置3が通信機能を有している場合には、処理装置5の代わりにサーバ装置に接続してもよい。
また、対象者としては、病気療養中の者であったり、介護が必要なものであったりしてもよい。また、介護が必要でない健康な者であっても、高齢者でも子供でも、障害者でも、人でなくても動物でも良い。
ここで、検出装置3は、厚さが薄くなるようにシート状に構成されている。これにより、ベッド装置10と、マットレス20の間に載置されたとしても、患者Pに違和感を覚えさせることなく使用できるため、寝床での患者の状態を長期間検出できることとなる。
なお、検出装置3は、患者Pの振動を検出できればよい。例えば、歪みゲージ付きアクチュエータやベッドの脚等に配置された荷重を計測するロードセルを利用したりしても良い。また、内蔵された加速度センサ等を利用することにより、例えばベッド装置10上に載置されたスマートフォンや、タブレット等で実現してもよい。
また、図1において、ベッド装置10(マットレス20)において頭側を方向H、足側を方向Fとし、患者Pが仰臥位のときの左側を方向L、右側を方向Rとする。
[1.2 構成]
つづいて、システム1の構成について、図2から図4を参照して説明する。本実施形態におけるシステム1は、検出装置3と、処理装置5とを含む構成となっており、各機能部(処理)は、振動検出部110以外についてはどちらで実現されても良い。すなわち、これらの装置を組み合わせることにより、姿勢判定装置として機能する。
システム1(姿勢判定装置)は、制御部100と、振動検出部110と、生体情報算出部120と、波形算出部130と、周波数分布算出部135と、患者状態判定部140と、記憶部150と、入力部160と、出力部170とを含んでいる。
制御部100は、システム1の動作を制御している。例えば、CPU(Central Processing Unit)等の制御装置である。制御部100は、記憶部150に記憶されている各種プログラムを読み出して実行することにより各種処理を実現することとなる。なお、本実施形態においては、制御部100は全体として動作しているが、後で説明する図4のように検出装置3、処理装置5のそれぞれに設けることもできるものである。
振動検出部110は、検出装置3上の振動を検出し、振動データを取得する。本実施形態では、一例として、圧力変化を検出するセンサを利用して患者の動き等に基づく振動(体振動)を検出する。検出された振動に基づき振動データが取得され、生体情報算出部120、波形算出部130、周波数分布算出部135に出力されて処理される。なお、出力される振動データは、アナログの振動データの場合もあるし、ディジタルの振動データの場合もある。
また、振動検出部110は、例えば、圧力センサにより患者の振動を検出して振動データを取得してもよいし、圧力センサの代わりにマイクロフォンを設けることにより、マイクロフォンが拾う音に基づいて生体信号を取得し、当該生体信号から振動データを取得しても良い。また、加速度センサ、静電容量センサや荷重センサの出力値から、振動データを取得してもよい。このように、何れかの方法を用いて生体信号(患者の体動を示す体振動)を取得できればよい。
生体情報算出部120は、振動データから、患者Pの生体信号を取得し、生体情報値(呼吸数・心拍数・活動量等)を算出する。本実施形態では、振動検出部110より取得された振動(体振動)データから呼吸成分・心拍成分を抽出し、呼吸間隔、心拍間隔に基づいて呼吸数、心拍数を求めても良い。また、体動の周期性を分析(フーリエ変換等)し、ピーク周波数から呼吸数、心拍数を算出してもよい。
波形算出部130は、振動検出部110から入力されたアナログの振動データを所定のサンプリング間隔でディジタルの電圧信号に変換し、体振動の波形(振動波形)を算出する。
なお、本実施形態において、説明の都合上、振動検出部110において出力される振動データから、波形算出部130により振動データの波形(振動波形)が算出され、算出された波形に基づいて処理を実行することとして説明する。しかし、波形算出部130を有さず、振動データに基づいて各種処理を実行してもよい。
また、周波数分布算出部135は、振動(波形)から周波数分布を算出する。例えば、周波数分布算出部135は、波形算出部130により算出された波形を高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)することにより、周波数成分を算出する。
患者状態判定部140は、患者の状態を判定する。例えば、振動検出部110により取得された振動データや、生体情報算出部120により算出された生体情報値、ベッド装置10に別に設けられた荷重センサ等により、患者の状態を判定する。
本実施形態では、患者状態判定部140は、主に患者の姿勢(仰臥位、腹臥位、側臥位)を判定する。また、患者状態判定部140は、端座位等の他の患者の姿勢や、姿勢以外(例えば、離床、在床等)を判定してもよい。
記憶部150は、システム1が動作するための各種データ及びプログラムを記憶している。制御部100は、記憶部150に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現することとなる。ここで、記憶部150は、半導体メモリ(例えば、SSD(Solid State Drive)やSDカード(登録商標))や、磁気ディスク装置(例えば、HDD(Hard Disk Drive))等により構成されている。また、記憶部150は、内蔵される記憶装置であってもよいし、着脱可能な外部記憶装置であってもよい。また、クラウド等の外部サーバの記憶領域であってもよい。
記憶部150には、振動データ記憶領域152と、波形データ記憶領域154との領域が確保されている。
振動データ記憶領域152は、振動検出部110から出力される振動データを記憶する。ここで、振動データとして記憶される間隔としては、所定時間毎であればよく、例えば1秒毎や5秒毎といった短い間隔であってもよいし、30秒、1分、5分といった比較的長い間隔であってもよい。
波形データ記憶領域154は、振動検出部110より出力された振動データ又は振動データ記憶領域152に記憶された振動データに基づいて波形算出部130が算出した振動の波形のデータ(波形データ)を記憶する。なお、本実施形態では、波形データとして波形データ記憶領域154に記憶されることとして説明するが、波形算出部130がその都度必要に応じて波形データを算出してもよい。
なお、波形データ記憶領域154は、説明の都合上記憶領域として確保されているが、適宜振動データから算出され、一時記憶されれば十分である。
入力部160は、利用者からの操作入力を受け付ける。例えば、利用者により、振動取得の開始操作が行われたり、振動検出部110の感度の調整が行われたりと、各種操作入力が行われる。
出力部170は、各種情報を出力する。例えば、液晶ディスプレイの表示装置や、LED等の発光部材、音や音声を出力するスピーカ、他の記録媒体にデータを出力するインタフェース等で構成される。また、入力部160と、出力部170とを一体に構成することにより、タッチパネルとして構成してもよい。
ここで、上述した構成のうち、生体情報算出部120、波形算出部130、周波数分布算出部135、患者状態判定部140は、主にソフトウェアにより実現される。例えば、記憶部150に記憶されたソフトウェアを制御部100が読み出して実行する。ソフトウェアが実行されると、制御部100が各構成として実現されることとなる。
すなわち、制御部100が、生体情報算出部120、波形算出部130、周波数分布算出部135、患者状態判定部140を実現するプログラムを読み込み、実行することで、制御部100が各構成の機能を有することとなる。
また、図2はシステム1として姿勢判定装置について概念的に構成を説明したものである。これらの構成は、例えば1つの振動検出可能な装置で実現されてもよいし、図1のように、検出装置3、処理装置5と分かれて構成されてもよい。また、処理装置5の代わりに、同じサービスを提供可能な外部サーバで実現されてもよい。
図2のシステム1を、図1の検出装置3及び処理装置5で実現する場合について、図3を参照して説明する。検出装置3は、制御部300と、センサである振動検出部320と、記憶部330と、通信部390とを含んでいる。
また、制御部300は、記憶部330に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行することにより、生体情報算出部310として機能する。振動検出部320は、検出された振動に基づいて振動データを出力する。
生体情報算出部310は、当該振動データに基づいて生体情報を算出する。そして、算出された生体情報(値)は、生体情報データ340に記憶されたり、通信部390を介して、処理装置5に送信されたりする。また、併せて振動検出部320で検出された振動データも、通信部390を介して処理装置5に送信される。
検出装置3から処理装置5に振動データを送信するタイミングや、生体情報データ340に生体情報値(生体情報)を記憶するタイミングとしては、リアルタイムであってもよいし、所定時間毎であってもよい。
なお、振動検出部320は、図2の振動検出部110である。ここで、振動検出部320について、図4を用いて説明する。
図4は、ベッド装置10(マットレス20)を上から見た図である。図4は、上側が図1の方向H、下側が図1の方向Fの方向である。また、図4の右側が図1の方向F、図4の左側が図1の方向Rである。
検出装置3は、ベッド装置10と、マットレス20との間や、マットレス20の上に載置される。載置される場所としては、好ましくは患者の背中近傍であるため、少なくともベッド装置10(マットレス20)の中央よりH側に寄った方向となる。
また、検出装置3には、センサ(振動検出部110/320)が内蔵されている。当該センサは、例えば振動センサであり、患者の振動(体振動)を検出することができる。そして、センサは少なくとも2つ設けられており、例えば図4では、検出装置3の左右に2つ(振動センサ320a、振動センサ320b)設けられている。
この振動センサ320a、振動センサ320bは、所定の間隔を離して設けられている。2つの間隔は、例えば、患者の横方向の幅となる程度であればよく、好ましくは2つのセンサの間隔は15~60cm程度である。
また、図3の生体情報算出部310は、図2の生体情報算出部120である。また、通信部390は、例えば、ネットワーク(例えば、LAN/WAN)に接続可能な通信インタフェースである。
処理装置5は、制御部500と、記憶部530と、入力部540と、出力部550と、通信部590とを含んでいる。処理装置5は、検出装置3から、通信部590を介して振動データを受信する。受信された振動データは、振動データ記憶領域532に記憶される。
制御部500は、記憶部530に記憶されているソフトウェア(プログラム)を実行することにより、波形算出部502、周波数分布算出部504、患者状態判定部506として機能する。また、波形算出部502により算出された波形データは、波形データ記憶領域534に記憶される。
なお、波形算出部502は、図2の波形算出部130である。周波数分布算出部504は、図2の周波数分布算出部135である。患者状態判定部506は、図2の患者状態判定部140である。入力部540は、図2の入力部160である。出力部550は、図2の出力部170である。記憶部530は、図2の記憶部150である。
[1.3 処理の流れ]
つづいて、本実施形態における姿勢判定処理について、図5を参照して説明する。姿勢判定処理は、患者状態判定部140により実行される処理である。
まず、制御部100(患者状態判定部140)は、振動データを取得する(ステップS102)。患者状態判定部140は、振動データを振動データ記憶領域152から読み出すか、振動検出部110より受信することにより、取得する。
つづいて、振動データに基づいて、センサ間の相関や、センサ内の相関に基づき、患者の姿勢が判定される。本実施形態では、例えば、波形算出部130は、波形を算出し、波形データとして出力する(ステップS104)。波形データは、振動センサ毎に算出される。例えば、図4で示したように、本実施形態においては、振動センサが2つ(振動センサ320a、振動センサ320b)設けられていることから、波形データもそれぞれ算出される。
また、波形データは、波形データ記憶領域154に記憶されてもよいし、出力部170により出力されてもよい。例えば、出力部170が表示装置であれば、波形データが表示装置に表示される。
つづいて、患者状態判定部140は、波形データからセンサ間の相関があるか否かを判定する(ステップS106)。ここで、センサ間の相関は、2つのセンサ(例えば、図4の振動センサ320a、振動センサ320b)から取得された振動データに基づいて算出された波形に類似性があるか否かを判定する方法の一つである。
一例として、2つの波形に対して、相互相関関数を利用する。相互相関関数は、2つの波形の類似度にもとづいて「0」~「1」に規格化された値が出力される。この値は、2つの波形の類似度により変化する。例えば、相互相関関数の値が「1」の場合は2つの波形が完全に一致しており類似度が最大であることがわかる。また、相互相関関数の値が「0」の場合、2つの波形は全く一致しておらず、類似度が最小であることがわかる。
そして、患者状態判定部140は、2つの波形に相関があるか否かを判定する場合、相互相関関数の出力値が、相互相関関数閾値を超えたか否かにより判定する。例えば、相互相関関数閾値を「0.7」とした場合、相互相関関数の出力値が「0.7」以下であれば2つの波形は相関がないと判定する。他方、相互相関関数の出力値が「0.7」を超えれば、2つの波形は相関があると判定する。
次に、患者状態判定部140は、センサ間の相関がある場合には、(ステップS106;Yes)、患者の姿勢は「仰臥位もしくは腹臥位」として判定される(ステップS116~S120)。なお、睡眠中に腹臥位となる時間は極端に短いため、患者の姿勢は「仰臥位もしくは腹臥位」と判定されるだけでもよいが、腹臥位は窒息リスクが高く乳幼児突然死症候群との関連も報告されていること、腹臥位時には電動ベッドの自動運転時を禁止する等の目的のため、仰臥位と腹臥位をさらに判定してもよい。
すなわち、センサ内の相関があるか否かを判定する(ステップS106;Yes→ステップS116)。ここで、センサ内の相関があるか否かは、例えば波形における周期性の強さを評価する。一例として、1つのセンサの波形に対して、自己相関関数を利用することで相関があるか否かを判定する。自己相関関数は、同じセンサ内の波形の周期性の強さに基づいて「0」~「1」に規格化された値が出力される。例えば、自己相関関数の値が「1」の場合は、波形データが完全に周期的に出力されており、完全なセンサ内の相関があることが分かる。
また、フーリエ変換やカイ2乗ピリオドグラムなどを用いて周期性の強さを「0」~「1」に規格化された値として算出しても良い。
そして、患者状態判定部140は、1つの波形に相関があるか否かを判定する場合、自己相関関数の出力値が、自己相互関数閾値を超えたか否かにより判定してもよい。例えば、自己相関関数閾値を「0.7」とした場合、自己相関関数の出力値が「0.7」以下であれば算出された波形(検出された1つの振動データ)には相関がないと判定する。他方、自己相関関数の出力値が0.7を超えれば、当該波形は相関があると判定する。
患者状態判定部140は、センサ内の相関があると判定した場合は患者の姿勢は「仰臥位」と判定する(ステップS116;Yes→ステップS118)。他方、患者状態判定部140は、センサ内の相関がないと判定した場合は患者の姿勢は腹臥位と判定する(ステップS116;Yes→ステップS118)。
また、患者状態判定部140は、ステップS106において、センサ間の相関がないと判定した場合(ステップS106;No)、患者の姿勢は「側臥位」として判定される(ステップS110)。なお、患者の姿勢は「側臥位」と判定されるだけでも良いが、体位変換の有無を確認するため、患者に麻痺側がある場合などは麻痺側を下にして寝ていないか注意する必要があるため、右側臥位と左側臥位をさらに判定しても良い(ステップS114)。
この場合、左側臥位の場合は、右側臥位より心拍信号の入力が大きくなる。したがって、心拍信号が所定以上抽出される場合(高周波信号が抽出される場合)は、左側臥位として判定する。
心拍信号の入力の大きさを判定する方法としては、種々の方法があるが、例えば、呼吸信号に相当する周波数成分に対する心拍信号に相当する周波数成分の比率、ハイパスフィルタ処理を施したデータの信号強度などを用いれば良い。
このように、本実施形態によれば、振動データから、患者の姿勢(寝姿勢)を判定することができる。
また、説明の都合上、波形算出部130により算出された波形データに基づいてセンサ間の相関や、センサ内の相関の有無を判定することとして説明したが、単純に振動データに基づいてセンサ間の相関や、センサ内の相関を判定してもよい。この場合、ステップS104の処理は実行されなくてよい。
また、上述した実施形態では、患者の振動データから、波形を算出して患者の姿勢を判定したが、周波数分布の形状を評価して姿勢を判定してもよい。この場合、2つ以上のセンサで取得した振動の周波数分布の形状を総合的に評価したほうが精度は高くなるが、振動を取得するセンサは1つであってもよい。
例えば、周波数分析を利用して、患者の姿勢を判定する処理について、図6を参照して説明する。図5と同様に、振動検出部110から振動データを取得し(ステップS152)、波形算出部130により、波形データが算出(出力)される(ステップS154)。
つづいて、周波数分布算出部135は、波形算出部130により出力された波形データの周波数分布を算出する(ステップS156)。例えば、周波数分布のうち、高周波数成分が算出されない場合、患者の姿勢は「側臥位」と特定される。
姿勢により、心臓の位置とセンサの位置との関係が異なるため、その間にある体の組織(筋肉、脂肪、骨、内臓等)が異なる。したがって、振動の伝わり方も変わるため、計測される周波数成分に違いが現れる。
心臓の動き、呼吸による胸腹部の動く方向は決まっている。例えば、呼吸による胸腹部の動きは、仰臥位のときはセンサ(振動検出部110)と垂直方向に大きく動くことになる。また、側臥位のときは、センサ(振動検出部110)と平行方向の動きが大きくなる。よって、患者の姿勢毎に周波数分布が異なる。したがって、姿勢毎に周波数分布を記憶させておき、実際に抽出された周波数分布と、姿勢毎に記憶された周波数分布とを比較することにより姿勢を判定することができる。
例えば、側臥位では、心拍成分より高周波である成分は(心拍成分に相当する周波数の整数倍を除き)検出されにくい。したがって、心拍成分より高周波成分が少ない場合は、患者の姿勢を「側臥位」と判定することができる。
なお、上述した説明では、周波数分布算出部135は、波形データから周波数分布を算出しているが、直接振動データから周波数分布を算出してもよい。この場合、ステップS154は実行されないこととなる。
[1.4 姿勢判定の条件]
ここで、上述した姿勢判定処理は、通常実行されてもよいし、所定条件に合致するときに実行されてもよい。以下、姿勢判定の条件として患者の体動を利用する。ここで、患者の体動とは、患者が寝返りをするなど、患者の姿勢に動きがあることをいう。
(1)区間毎に姿勢を判定する
例えば、体動を含まない連続区間は、同じ姿勢が継続されていると判定し、同じ姿勢が出力される。
この場合、体動を含まない区間をまとめて解析(姿勢判定処理の結果を適用)してもよい。また、ある一定区間(例えば、3分毎等)に姿勢判定処理の結果を集計する。その一定区間の中で体動を含まない区間がある場合、体動を含まない区間の中で最も多い姿勢の判定結果を当該区間の姿勢判定処理の結果として出力する。
(2)体動が生じていない区間のみの姿勢判定を行う
体動が生じていない区間のみ姿勢判定を行う。例えば、振動検出部110により、患者の体動が検出された場合、姿勢判定処理の実行を中止する。また、体動が検出され、体動が検出されなくなってから所定時間経過後(例えば、体動が検出されなくなってから10秒後)に再び姿勢判定処理を実行すればよい。
[1.5 波形に基づく説明]
ここで、波形に基づいて患者の姿勢の判定について説明する。それぞれの波形は、2つの振動センサに基づいて検出された振動に基づく波形である。横軸は時間、縦軸は電圧値を示しており、検出された振動に基づく波形をそれぞれ示している。なお、患者の姿勢の判定については、説明の都合上、波形に基づく説明するが、時系列の振動データから傾向を検出して患者の姿勢を判定してもよい。
図7は、センサ内での波形に相関がなく、同一形状が繰り返して表されていない。すなわち、この波形は、腹臥位の姿勢を示す波形である(図5のステップS120)。
図8は、センサ間での波形に相関があり、センサ内の波形でも相関がある。すなわち、この波形は、仰臥位の姿勢を示す波形である(図5のステップS118)。
図9及び図10は、センサ間に相関がない波形である。すなわち、この波形は、側臥位の姿勢を示す波形である(図5のステップS110)。図9と図10を比較すると、左側臥位の波形である図10のほうが、心拍による高周波の信号が顕著に認められる。
図11は、波形から周波数分布を求めたグラフである。図11は、図6のステップS156において、周波数分布を求めたことを示すグラフであり、図11(a)が仰臥位を示す図であり、図11(b)が側臥位を示す図である。このように、波形(振動データ)から、更に周波数分布を抽出することにより、患者の姿勢を判定するができる。
[2.第2実施形態]
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、複数の姿勢判定条件に基づいて、患者の姿勢を判定する実施形態である。
なお、第1実施形態の図5の動作フローを、図12の動作フローに置き換えた実施形態であり、構成等の同一の部分については説明を省略する。
まず、患者状態判定部140は、振動データを取得する(ステップS202)。そして、波形算出部130により、波形が算出される(ステップS204)。つづいて、患者状態判定部140は、条件毎に指標(値)を算出し(ステップS206~ステップS214)、算出された指標値から合計値を算出する(ステップS216)。
合計値は、「仰臥位」「腹臥位」「(左右)側臥位」のそれぞれの合計値が算出される。そして、患者状態判定部140は、最も大きな値となった姿勢を、患者の姿勢であるとして出力する。
ここで、患者状態判定部140は、ステップS206~ステップS214において、条件毎に指標値を算出するが、指標値の算出方法について、図13を参照して説明する。
(1)センサ内相関指数算出(ステップS206)
センサ内の波形に基づいた相関により算出されるセンサ内相関指標の値を算出する。まず、患者状態判定部140は、第1実施形態で説明した方法でセンサ内の波形に基づいて自己相関関数の値を算出する。
そして、患者状態判定部140は、前記自己相関関数の出力値を、重み付けを行ってセンサ内相関指標の値として出力する。ここで、重み付けの方法について説明する。
例えば、図13を参照すると、センサ内相関指標は、「仰臥位」「側臥位」は「あり」となっており、「腹臥位」は「なし」となっている。
自己相関関数の出力値は「0~1」の間となっている。ここで、図13において「あり」(「仰臥位」「腹臥位」)の箇所は、出力値をそのままセンサ内相関指標の値とする。また、図13において「なし」の箇所は、最大値から自己相関関数の出力値を減算したものをセンサ内相関指標の値とする。
具体例を説明すると、患者状態判定部140は、自己相関関数の出力値が「0.8」であれば、センサ内相関指標の値として、「仰臥位=0.8」「腹臥位=0.2」「側臥位=0.8」を出力する。
(2)センサ間相互指標算出(ステップS208)
センサ間の波形に基づいた相関により算出されるセンサ間相関指標の値を算出する。まず、患者状態判定部140は、上述した方法で2つの波形データの相互相関関数を利用した出力値を算出する。
そして、患者状態判定部140は、前記出力値に重み付けを行ってセンサ内相関指標の値として出力する。ここで、重み付けの方法について説明する。
例えば、図13を参照すると、センサ間相関指標は、「仰臥位」は「あり」と、「腹臥位」は「あり/なし」と、「側臥位」は「なし」なっている。
相互相関関数の出力値は「0~1」の間となっている。ここで、図13において「あり」(「仰臥位」)の箇所は、出力値をそのままセンサ内相関指標の値とする。また、図13において「なし」の箇所(「側臥位」)は、最大値から出力値を減算したものをセンサ内相関指標の値とする。また、図13において「あり/なし」(「腹臥位」)の箇所は、出力値を半分にしたものをセンサ間相互指標の値とする。
具体例を説明すると、患者状態判定部140は、相互相関関数の出力値が「0.9」であれば、センサ間相関指標の値として、「仰臥位=0.9」「腹臥位=0.45」「側臥位=0.1」を出力する。
(3)心拍波形指標値算出(ステップS210)
出力されている波形に心拍波形が載っている程度を示す心拍波形指標値を算出する。例えば、周波数分布算出部135により、呼吸成分の周波数以上の高周波数成分における心拍成分の周波数とその整数倍の周波数のパワースペクトル密度が占める比率が一定値以上の場合には、心拍波形が強く載っていると判定される。
そして、患者状態判定部140は、波形に心拍波形が載っている場合は「1」、載っていない場合は「0」を出力する。更に、患者状態判定部140は、出力値に重み付けを行ったものを心拍波形指標の値として出力する。ここで、重み付けの方法について説明する。
例えば、図13を参照すると、心拍波形は「仰臥位」と「腹臥位」とでは載り方が小さい。また、「側臥位」の場合は大きく載る。また、「側臥位」についても、「左側臥位」の場合は大きく載るが、「右側臥位」の場合は、「仰臥位」「腹臥位」に比べると大きいが、「左側臥位」と比較すると小さく載る。
したがって、「側臥位」の場合は、出力値が心拍波形指標値としてそのまま出力される。また、「仰臥位」及び「腹臥位」は、小さく(例えば、「0.1」倍としたり、「0」であったり等)出力される。
(4)センサ間呼吸指標値(ステップS212)
患者状態判定部140は、波形における山、谷の形状についての指標を算出する。波形における谷から山になる部分は、例えば図14の時間t1→t2の部分であり、山から谷になる部分は、例えば図14の時間t2→t3の部分である。これらの部分は振動の遷移(圧力の遷移)を示しているが、通常は呼気/吸気に対応する。患者状態判定部140は、谷から山になる時間と、山から谷になる時間のどちらが長いかがセンサ間で同じか否かを判定し、姿勢判定区間内に含まれる時間の対応関係が同じペアの割合をセンサ間呼吸指標の値として算出する。図13を参照すると、「仰臥位」と「腹臥位」とではセンサ間で同じとなる。
したがって、センサ間呼吸指標の値をそのまま出力する。また、「側臥位」の場合は、同じ場合もあれば反対となってしまう場合もあるため、上述した同じペアの割合を「0.5」倍したものをセンサ間呼吸指標の値として出力する。
(5)呼吸指標値算出(ステップS214)
患者状態判定部140は、波形における谷から山の時間と、山から谷の時間との比較結果についての指標を算出する。
このとき、患者状態判定部140は、波形から、姿勢判定区間内に含まれる谷から山の時間と、山から谷の時間の長さを比較し、2つの区間の長さが「短→長」の関係となる部分が検出できるか否かを判定する。そして、患者状態判定部140は、「短→長」の関係となるペアの割合を出力値として出力する。
また、図13を参照すると、「仰臥位」の場合は、「短→長」が多く出来ることから、患者状態判定部140は、算出された出力値から0.5を減じた値を呼吸指標の値としてそのまま出力する。また、患者状態判定部140は、「腹臥位」と「側臥位」とでは特徴が出にくいところから呼吸指標値は出力しない(「0」を出力する)。
このように、各指標値を利用して患者の姿勢を判定することが可能となり、より適切な患者の姿勢を判定することが可能となる。
なお、本実施形態においても、振動データに基づいて、波形を算出することとして説明したが、単純に振動データに基づいて患者の姿勢が判定されてもよい。すなわち、図12のステップS204が実行されず、ステップS202からステップS206に処理を遷移させてもよい。
例えば、心拍波形指標は、振動データを周波数分析することで判定することができる。また、呼吸指標においては、波形の山や谷は、振動データの最大値(近傍)、最小値(近傍)が抽出できれば、波形と同様に捉えることが可能となる。
[3.第3実施形態]
つづいて、第3実施形態について説明する。本実施形態は、患者状態判定部140が、人工知能(機械学習)を用いて患者の姿勢を判定する場合について説明する。
本実施形態は、図5の処理の代わりに、図15の患者状態推測部700に基づいて患者の状態の1つである患者の姿勢を推測する。
ここで、本実施形態における患者状態推測部700の動作について説明する。患者状態推測部700は、振動データや、患者の状態を入力値(入力データ)とし、人工知能や各種統計指標を利用することにより、患者の姿勢を推測する。
図15に示すように、患者状態推測部700は、特徴抽出部710と、識別部720と、識別辞書730と、患者状態出力部740とが含まれている。
まず、患者状態推測部700に入力される入力データとしては、種々のパラメータが入力され、利用される。例えば、本実施形態においては、振動データとしての振動データと、振動データから算出される波形データとが利用されている。
そして、特徴抽出部710により、各特徴点が抽出され、特徴ベクトルとして出力される。ここで、特徴抽出部710が、特徴点として抽出するものは、例えば以下のものが考えられる。
(1)センサ内の相関があるかないか
(2)センサ間の相関があるかないか
(3)心拍波形が波形データに載っているか否か
(4)呼吸波形の谷から山の時間が山から谷の時間に対して短いか長いか
(5)2山波形の出現率が多いか少ないか
(6)波形データにおいて、中央線から上下の面積の差があるかないか
(7)センサ間の心拍波形の違い・載り方に差はあるかないか
特徴抽出部710は、これらの特徴点を1又は複数組み合わせることにより、特徴ベクトルが出力される。なお、特徴点として説明したものは1例であり、当該値に限定されるものではない。また、このように、各値は、説明の都合上の値である。そして、該当する特徴点は「1」、非該当の特徴点は「0」が出力されでも良いし、確率変数が出力されても良い。
そして、上述した特徴点を全て含まれる場合は、特徴空間は7次元であり、7次元の特徴ベクトルとして識別部720に出力される。
識別部720は、入力された特徴ベクトルから、患者状態に対応するクラスを識別する。このとき、識別辞書730として、事前に用意した複数のプロトタイプと照合することにより、クラスを識別する。プロトタイプは、各クラスに対応する特徴ベクトルとして記憶していても良いし、クラスを代表する特徴ベクトルを記憶していてもよい。
クラスを代表する特徴ベクトルが記憶されている場合には、最も近いプロトタイプの属するクラスを決定する。このとき、識別部720は、最近傍決定則により決定してもよいし、k近傍法により識別してもよい。
なお、識別部720が利用する識別辞書730は、予めプロトタイプを記憶してもよいし、機械学習を利用して記憶することとしても良い。
そして、識別部720により識別されたクラスに対応して、患者状態出力部740により患者状態の1つとして(寝)姿勢が出力される。出力される患者の状態としては、「仰臥位」「腹臥位」「側臥位」等が識別されてもよいし、そのまま確率変数が出力されても良い。
これにより、本実施形態によれば、センサから出力された振動データを取得し、これらの情報から、患者の姿勢を推測することが可能となる。
[4.第4実施形態]
第4実施形態について説明する。第4実施形態は、第3実施形態の患者状態推測部700において、波形データに基づいて、ニューラルネットワークを利用したディープラーニングを利用して患者の姿勢を推測する場合の実施形態である。
本実施形態では、患者状態推測部700に、患者の波形データを入力する。患者状態推測部700は、入力された波形データから患者状態(姿勢)を推測するが、この推測する処理としては、最近はディープラーニング(ディープニューラルネットワーク)が特に画像認識において高い精度を出している。本実施形態でも一例として当該方法を利用する。このディープラーニングにおける処理について、図16を用いて簡単に説明する。
まず、患者状態推測部700は、波形算出部130により出力される波形データ(画像データ)の信号を、複数の層と、各層に含まれるニューロンによって構成されるニューラルネットワークに入力する。各ニューロンは別の複数のニューロンから信号を受け取り、演算を施した信号を別の複数のニューロンへ出力する。ニューラルネットワークが多層構造の場合、信号が流れる順に、入力層、中間層(隠れ層)、出力層と呼ばれる。
ニューラルネットワークの中間層が複数の層からなっているものはディープニューラルネットワーク(例えば、畳み込み演算を持つConvolutional Neural Network(畳み込みニューラルネットワーク))と呼ばれ、これを用いた機械学習の手法をディープラーニングと呼ぶ。
波形データはニューラルネットワークの各層のニューロンに各種演算(畳み込み演算、プーリング演算、正規化演算、行列演算等)が施され、形を変えながら流れ、出力層から複数の信号が出力される。
ニューラルネットワークからの複数の出力値は、それぞれ、患者の姿勢に紐づいていて、値が最も大きい出力値に紐づく患者の姿勢と推測する、というような処理を行う。又は、患者の状態である姿勢を直接出力しなくとも、一又は複数の出力値を分類器に通して、分類器の出力から患者の姿勢を推測してもよい。
ニューラルネットワークの各種演算に用いる係数であるパラメータは、事前にニューラルネットワークへ数多くの波形データと、当該波形データにおける対応する患者の姿勢とを入力し、出力値と正解値との誤差を、誤差逆伝播法により、ニューラルネットワークを逆方向に伝搬し、各層のニューロンのパラメータを何度も更新することによって決まる。このように、パラメータを更新し、決める工程を学習と呼ぶ。
ニューラルネットワークの構造や、個々の演算については、書籍や論文で解説された公知技術であり、その何れかの技術を利用すれば良い。
このように、患者状態推測部700を利用することにより、センサから出力された振動データから算出された振動波データを参照することにより、患者の姿勢が出力される。
なお、本実施形態では、波形の画像データとしてニューラルネットワークを利用して推測する例を説明したが、単に振動データ(時系列の電圧出力値)を入力し、学習させることで患者の姿勢を推測させることとしてもよい。また、フーリエ変換や離散コサイン変換で周波数領域の信号に変換したデータを入力し、学習させることで患者の姿勢を推測させることとしてもよい。
[5.適用例]
上述した姿勢判定装置については、他の装置に組み込むことで以下のような適用例が考えられる。
[5.1 ベッド装置]
図17にベッド装置の構成を示す。ベッド装置10は、背ボトム12と、腰ボトム14と、膝ボトム16と、足ボトム18とを有している。利用者Pは、背ボトム12により上体が支持され、腰ボトム14により、腰部が支持されている。
駆動制御部1000は、ベッド装置の駆動を制御する。ここで、駆動制御部1000は、ボトムを動作させることにより、背上げ、膝上げ(足下げ)機能等を制御するためのボトム制御部1100の機能を実現する。
背上げ機能を実現するために、ボトム制御部1100には、背ボトム駆動部1110と、膝ボトム駆動部1120とが接続されている。背ボトム駆動部1110は、例えば、アクチュエータであり、リンク機構を介して背上げ用のリンクと連結されている。そして、背ボトム駆動部1110の制御により、リンクにより載置された背ボトム12が動作し、背上げ・背下げ制御が行われる。
また、膝ボトム駆動部1120は、例えば、アクチュエータであり、リンク機構を介して膝上げ用のリンクと連結されている。そして、膝ボトム駆動部1120の制御により、リンクに載置された膝ボトム16と、更に連結された足ボトム18とが動作し、膝上げ・膝下げ(足下げ・足上げ)制御が行われる。
そして、ベッド装置が背上げ動作を行おうとした場合、ボトム制御部1100は、患者状態判定部140により患者の姿勢が「腹臥位」と判定された場合には、背上げ動作を行わない。すなわち、利用者が背上げ動作を選択しても、ボトム制御部1100は、背ボトム駆動部1110を駆動させず、背上げ動作が行われない。また、ベッド装置が自動運転の場合にも、患者状態判定部140により患者の姿勢が「腹臥位」と判定されている場合は、ボトム制御部1100は、背上げ動作を行わない。
この場合の動作について、図18を参照して説明する。まず、利用者により動作が選択されたか否かを判定する(ステップS302)。例えば、入力部160(操作リモコン)により、利用者により背上げボタンが選択される。これにより、背上げ動作が選択されたことを制御部100は判定する。
つづいて、制御部100(患者状態判定部140)は、姿勢判定処理を実行する(ステップS304)。姿勢判定処理は、患者状態判定部140により、上述した何れかの姿勢判定処理が実行され、ベッド装置上の患者の姿勢が判定される。
ここで、制御部100は、患者の姿勢は特定の姿勢になっているか否かを判定する(ステップS306)。本適用例では、制御部100は、患者の姿勢が「腹臥位」であれば背上げ動作を実行しない(ステップS306;Yes)。それ以外の姿勢であれば、制御部100は、ボトム制御部1100(背ボトム駆動部1110)に指示を出すことにより、背上げ動作を実行する(ステップS306;Yes→ステップS308)。
そして、制御部100は、利用者により背上げ動作が解除される(例えば、利用者・患者により中止操作がされたり、背上げボタンが解除されたりする等)と、背上げ動作を停止する(ステップS310;Yes→ステップS312)。
また、制御部100は、背上げ動作中に、患者の姿勢が特定姿勢となった場合(例えば、背上げ動作中に腹臥位となってしまった場合)にも背上げ動作を停止する(ステップS306;Yes→ステップS312)。
[5.2 体位変換]
褥瘡リスク把握のため、体位変換(姿勢変換)の頻度や、姿勢ごとの割合を自動記憶する。すなわち、患者状態判定部140により判定された患者の姿勢を自動的に記憶することで、介護や治療に活用する。
また、患者状態判定部140により判定された姿勢が同一の状態で所定時間を経過したら、報知したり、自動的に体位変換を行ったりする。例えば、図17に示すように、駆動制御部1000は、体位変換駆動部1200を制御する。体位変換駆動部1200は、例えば患者の左右に設けられたエアセルを膨縮させたり、左右のボトムを起伏させたりすることにより、患者の体位を変換する。
駆動制御部1000は、患者状態判定部140により判定された姿勢に応じて体位変換駆動部1200を制御し、患者Pの体位を変える制御を行う。
例えば、図18の処理を例に説明する。体位変換の動作が選択されると(ステップS302;Yes)、患者状態判定部140は、上述した何れかの方法により患者の姿勢を判定する(ステップS304)。
ここで、判定された姿勢は特定姿勢であるか否かを判定する。例えば、患者が右側臥位の姿勢であれば、体位変換駆動部1200は、右側に設けられたエアセルを制御することにより、体位変換を行う。また、患者が左側臥位の姿勢であれば、体位変換駆動部1200は、左側に設けられたエアセルを制御することにより、体位変換を行う。また、患者が腹臥位であれば体位変換は行わない。
また、姿勢が所定時間継続している場合に、体位変換を行ってもよい。例えば、姿勢安定処理により判定された姿勢が、同じ姿勢を10分以上継続している場合には、体位変換を行うといった処理を実行してもよい。
[5.3 報知装置]
患者状態判定部140により判定された患者の姿勢に応じて報知を行う構成を設ける。報知方法としては、音声出力装置や、表示装置であってもよいし、他の端末(例えば医療従事者が所持している携帯端末装置)に報知する方法であってもよい。
報知するタイミングとしては、例えば、患者に麻痺がある場合には、麻痺側を下にすると褥瘡リスクが高まる。したがって、患者状態判定部140により判定された姿勢が、麻痺側が下になる側臥位の場合には報知を行う。
また、乳幼児のうつ伏せ寝による窒息死防止のため、患者状態判定部140により姿勢が腹臥位と判定された場合には報知を行う。
[6.変形例]
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
また、本実施形態においては、検出装置3で出力された結果に基づき、処理装置5において患者の姿勢を判定しているが、1つの装置で全て判定してもよい。また、端末装置(例えばスマートフォン、タブレット、コンピュータ)にアプリケーションをインストールして実現するだけでなく、例えばサーバ側で処理をして、処理結果を端末装置に返しても良い。
例えば、検出装置3から、振動データをサーバにアップロードすることで、サーバ側で上述した処理を実現してもよい。この検出装置3は、例えば加速度センサ、振動センサを内蔵したスマートフォンのような装置で実現してもよい。
また、上述した実施形態において、振動センサは2つあることとして説明したが、それ以上設けられても良い。また、第1実施形態の周波数分布を算出して姿勢を判定する方法においては、センサが1つでも実現可能である。
また、実施形態において各装置で動作するプログラムは、上述した実施形態の機能を実現するように、CPU等を制御するプログラム(コンピュータを機能させるプログラム)である。そして、これら装置で取り扱われる情報は、その処理時に一時的に一時記憶装置(例えば、RAM)に蓄積され、その後、各種ROMやHDD、SSDの記憶装置に格納され、必要に応じてCPUによって読み出し、修正・書き込みが行なわれる。
また、市場に流通させる場合には、可搬型の記録媒体にプログラムを格納して流通させたり、インターネット等のネットワークを介して接続されたサーバコンピュータに転送したりすることができる。この場合、サーバコンピュータの記憶装置も本発明に含まれるのは勿論である。