以下、実施形態によるガス充填装置として、車両の被充填タンクに水素ガスを充填する車両用の水素ガス充填装置を例に挙げ、添付図面に従って説明する。なお、図6に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用いる(例えば、ステップ1=「S1」とする)。
図1および図2において、水素ガス充填装置1は、例えば燃料電池自動車等の車両31の燃料タンクとなる被充填タンク32に、圧縮状態の水素ガス(燃料ガス)を充填する。車両用の水素ガス充填装置1は、例えば、水素ガス供給ステーションと呼ばれる設備(燃料供給所)に設置されている。水素ガス充填装置1は、高圧に圧縮された水素ガスを蓄圧するガス蓄圧器2と、ガス蓄圧器2からの水素ガスを車両31の被充填タンク32に充填する充填機構としてのディスペンサユニット3と、ガス蓄圧器2からディスペンサユニット3のディスペンサ筐体4内にわたって延びるガス供給管路5とを含んで構成されている。
ガス蓄圧器2は、高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵する水素ガスの供給源である。即ち、蓄圧器としてのガス蓄圧器2には、燃料ガスとなる水素ガスが蓄圧されている。ガス蓄圧器2は、ディスペンサユニット3に接続されている。ガス蓄圧器2は、ガス供給管路5の上流側で、高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵するガス貯蔵部を構成している。ディスペンサユニット3は、ディスペンサ筐体4、充填ホース6A,6B、充填ノズル7A,7B、流量調整弁12、遮断弁13、熱交換器16、流量計17、圧力センサ18、温度センサ19、充填開始スイッチ20、充填停止スイッチ21、脱圧弁23、制御装置24、ノズル掛け26A,26Bを含んで構成されている。
ディスペンサ筐体4は、ディスペンサユニット3の外形をなす建屋を構成するもので、例えば上,下方向に長尺な直方体状に形成されている。図2に示すように、ディスペンサ筐体4内には、ガス供給管路5、流量調整弁12、遮断弁13、熱交換器16、圧力センサ18、温度センサ19、制御装置24等が収容されている。ディスペンサ筐体4には、水素ガスの充填作業を行う作業者(係員)または利用者(顧客)が視認し易い位置に、液晶モニタ、液晶タッチパネル等の表示部25が設けられている。
ディスペンサ筐体4の外部には、第1充填ノズル7Aが取外し可能に掛止めされる第1ノズル掛け26Aと、第2充填ノズル7Bが取外し可能に掛止めされる第2ノズル掛け26Bとが設けられている。ノズル掛け26A,26Bは、充填ノズル7A,7Bを保持する保持部に相当する。なお、実施形態では、1つのディスペンサユニット3に複数(より具体的には2つ)の充填ノズル7A,7Bを有する構成を例に挙げて説明するが、例えば、1つのディスペンサユニットに1つの充填ノズルを有する構成としてもよい。また、例えば、1つのディスペンサユニットに3つ以上の充填ノズルを有する構成としてもよい。
図2に示すように、ガス供給管路5は、ディスペンサ筐体4内に配設され、加圧状態の水素ガスをガス蓄圧器2から充填ホース6A,6B側に向けて供給する。このために、ガス供給管路5は、上流側がガス蓄圧器2に接続されている。即ち、ガス供給管路5は、ガス蓄圧器2側が上流側となり、充填ホース6A,6B側が下流側となっている。この場合、ガス供給管路5の下流側は、複数、例えば2経路に分岐されている。即ち、ガス供給管路5は、ガス蓄圧器2側となる上流側のメイン供給管路5Aと、メイン供給管路5Aの下流端の分岐部5Dの位置で分岐された下流側の第1供給管路5Bおよび第2供給管路5Cとを有している。
これにより、ガス供給管路5は、途中で第1供給管路5Bと第2供給管路5Cとに分岐している。そして、ガス供給管路5の下流側の端部、より具体的には、第1供給管路5Bの下流端には、ディスペンサ筐体4の外部へと延びる第1充填ホース6Aが接続されており、第2供給管路5Cの下流端には、ディスペンサ筐体4の外部へと延びる第2充填ホース6Bが接続されている。充填ホース6A,6Bは、可撓性を有する耐圧ホースが用いられている。
このように、実施形態では、ガス供給経路としてのガス供給管路5は、複数の経路となる第1供給管路5Bと第2供給管路5Cとを備えている。これにより、例えば、一方の水素ガス充填経路に関するメンテナンス(例えば、第1供給管路5B、第1充填ホース6A、第1充填ノズル7A、第1緊急離脱カップリング8A、第1ノズル掛け26Aのメンテナンス)を行っているときに、他方の水素ガス充填経路(例えば、第2供給管路5C、第2充填ホース6B、第2充填ノズル7B等)を利用して水素ガスの充填を行うことができる。
充填ホース6A,6Bは、基端側がガス供給管路5の下流側に接続されている。即ち、第1充填ホース6Aは、基端側が第1供給管路5Bの下流側に接続されており、第2充填ホース6Bは、基端側が第2供給管路5Cの下流側に接続されている。第1充填ホース6Aの先端には、車両31に搭載された被充填タンク32に連結される第1充填ノズル7Aが設けられている。第2充填ホース6Bの先端には、車両31に搭載された被充填タンク32に連結される第2充填ノズル7Bが設けられている。
第1充填ホース6Aの途中には、第1緊急離脱カップリング8Aが設けられており、第2充填ホース6Bの途中には、第2緊急離脱カップリング8Bが設けられている。「第1充填ホース6A、第1充填ノズル7Aおよび第1緊急離脱カップリング8A」と「第2充填ホース6B、第2充填ノズル7Bおよび第2緊急離脱カップリング8B」は、第1供給管路5Bに接続されているか第2供給管路5Cに接続されているかで異なる以外、同様の構成である。充填ホース6A,6Bは、ガス供給管路5と共に、水素ガス充填経路(燃料ガス充填経路)を構成している。水素ガス充填経路は、水素ガスを燃料として走行する車両31の被充填タンク32に水素ガスを充填するための経路(管路)である。
充填ノズル7A,7Bは、充填ホース6A,6Bを介してガス供給管路5の下流側に接続されている。充填ノズル7A,7Bは、充填ホース6A,6Bの先端側に気密状態で接続されており、所謂充填カップリングを構成している。充填ノズル7A,7Bは、充填ホース6A,6Bを介してディスペンサ筐体4(より具体的には、ガス供給管路5)と接続されている。充填ノズル7A,7Bの内部には、例えば、水素ガスの流通を許可する「開位置」と水素ガスの流通を遮断する「閉位置」とに切換えられる弁部が設けられている。なお、充填ノズル7A,7Bには、弁部に代えて、または、弁部と共に、逆止弁を設けてもよい。逆止弁は、充填ノズル7A,7Bから車両31の被充填タンク32への水素ガスの流通を許容し、被充填タンク32から充填ノズル7A,7Bへの水素ガスの流通を阻止する。
充填ノズル7A,7Bの先端側は、接続カプラとなっており、被充填タンク32の接続口となる充填口32Aに着脱可能に接続される。即ち、充填ノズル7A,7Bの接続カプラは、充填ノズル7A,7B内の管路(図示せず)を通じて車両31の被充填タンク32に水素ガスを供給するときに、被充填タンク32の充填口32Aに気密状態で着脱可能に接続される。また、充填ノズル7A,7Bは、被充填タンク32の充填口32Aに対して係脱可能にロックされるロック機構(図示せず)を備えている。これにより、充填ノズル7A,7Bは、水素ガスの充填時に充填口32Aから不用意に外れることを抑制できる。
ガス蓄圧器2内の高圧な水素ガスは、充填ノズル7A,7Bが被充填タンク32の充填口32Aに対してロック機構によりロックされた状態で、ガス供給管路5、充填ホース6A,6Bおよび充填ノズル7A,7Bを通じて車両31の被充填タンク32に充填される。即ち、水素ガス充填装置1は、充填ノズル7A,7Bを備えており、この充填ノズル7A,7Bを用いて車両31の被充填タンク32へ水素ガスを充填する。充填ノズル7A,7Bは、充填作業が行われていないときに、ノズル掛け26A,26Bに保持される。
図2に示すように、ディスペンサユニット3には、それぞれガス供給管路5(メイン供給管路5A)の途中に位置して、例えば手動操作により開弁、閉弁される入口弁11と、入口弁11の下流側に接続され制御装置24によって開弁、閉弁されることによりガス供給管路5を流れる燃料の流量を調整可能に制御する制御弁としての流量調整弁12と、流量調整弁12よりも下流側に接続された電磁式または空圧作動式の弁装置である遮断弁13とが設けられている。なお、ガス供給管路5の上流側から下流側に向けて設けられている流量計17、流量調整弁12、遮断弁13の配置(取付けの順番)は、図2中に示した順番に限定されるものではない。
入口弁11は、ディスペンサ筐体4内に位置してガス供給管路5(メイン供給管路5A)の途中に設けられている。なお、入口弁11は、必要に応じて取付けられるものであり、不要であればこれを除いてもよい。流量調整弁12および遮断弁13は、ガス供給管路5を流れる水素ガスの流量および圧力を制御する制御機器を構成している。流量計17、圧力センサ18および温度センサ19は、ガス供給管路5を流れる水素ガスの流量、圧力および温度を計測する計測機器を構成している。
ディスペンサユニット3内に設けられた流量調整弁12は、例えば空圧作動式の弁装置であり、エアの供給で開弁し、制御信号で制御圧(エア圧)を制御して弁開度が調整される。流量調整弁12は、制御装置24の制御プログラムに基づく指令により任意の弁開度に制御され、ガス供給管路5内を流れる水素ガスの流量、水素ガス圧を可変に制御する。
遮断弁13は、ガス供給管路5(メイン供給管路5A)の途中部位(例えば、冷却器14と圧力センサ18との間)に設けられた電磁式または空圧作動式の弁装置である。遮断弁13は、制御装置24からの制御信号に基づいて開閉されることにより、ガス供給管路5内で水素ガス(燃料ガス、充填ガス)の流通を許容または遮断する。
即ち、制御装置24は、充填ノズル7A,7Bを介して車両31の被充填タンク32に水素ガスを充填するとき、または、水素ガスの充填を停止(終了)するときに、流量調整弁12および遮断弁13の開閉弁制御を行う。流量調整弁12および遮断弁13は、ガス供給管路5(メイン供給管路5A)の途中に設けられており、開弁することによりガス蓄圧器2内の水素ガスを充填ノズル7A,7Bへ供給する供給制御弁に相当する。
冷却器14は、ガス供給管路5内を流れる水素ガスを冷却するための冷却装置である。冷却器14は、被充填タンク32に充填される水素ガスの温度上昇を抑えるため、ガス供給管路5の途中位置で水素ガスを冷却する。冷却器14は、流量調整弁12と遮断弁13との間に位置してガス供給管路5(メイン供給管路5A)の途中部位に設けられた熱交換器16と、熱交換器16に冷媒管路15A,15Bを介して接続され、例えばコンプレッサ、ポンプ等の駆動機構を備えたチラーユニット(図示せず)とを含んで構成されている。
冷却器14には、チラーユニットから熱交換器16側に向けて冷媒(例えば、エチレングリコール等を含んだ液体)を供給する供給側の冷媒管路15Aと、熱交換器16からチラーユニット側に向けて熱交換後の冷媒を戻す戻り側の冷媒管路15Bとが設けられている。チラーユニットは、冷媒管路15A,15Bを介して熱交換器16との間に冷媒を循環させる。これにより、冷却器14の熱交換器16は、ガス供給管路5内を流れる水素ガスと冷媒との間で熱交換を行い、充填ホース6A,6Bに向けて供給される水素ガスの温度を規定温度(例えば、-33~-40℃)まで低下させる。
ディスペンサ筐体4内には、ガス供給管路5(メイン供給管路5A)の途中に位置して被測流体の質量流量を計測するコリオリ式の流量計17が設けられている。流量計17は、例えば入口弁11と流量調整弁12との間でガス供給管路5内を流れる水素ガスの流量(質量流量)を計測し、計測結果(検出信号)を制御装置24へと出力する。制御装置24は、車両31の被充填タンク32に対する水素ガスの充填量を演算し、水素ガス燃料の払出し量(給油量に相当)を表示部25等で表示する。これにより、例えば顧客等に表示内容を報知する。
圧力センサ18は、遮断弁13よりも下流側(即ち、充填ノズル7A,7B側)のガス供給管路5(メイン供給管路5A)に設けられている。圧力センサ18は、ガス蓄圧器2から供給される水素ガスの圧力(即ち、被充填タンク32の圧力、または、被充填タンク32内の圧力にほぼ相当する管路途中の圧力)を検知する。圧力センサ18は、充填ノズル7A,7Bの近傍でガス供給管路5内の圧力を測定し、測定した圧力に応じた検出信号を制御装置24へと出力する。
温度センサ19は、遮断弁13と圧力センサ18との間に位置してガス供給管路5(メイン供給管路5A)の途中に設けられている。温度センサ19は、ガス供給管路5内を流れる水素ガスの温度を検出し、その検出結果(検出信号)を制御装置24へと出力する。なお、温度センサ19と圧力センサ18との配置関係は、図2に示す配置に限るものではなく、例えば互いに逆となる配置にしてもよい。また、例えば、第1供給管路5Bと第2供給管路5Cとのそれぞれに温度センサ19および圧力センサ18を設けてもよい。
充填開始スイッチ20と充填停止スイッチ21は、例えばディスペンサ筐体4の前面側に設けられている。充填開始スイッチ20および充填停止スイッチ21は、例えば燃料供給所(水素ステーション)の作業者が手動操作可能なスイッチである。充填開始スイッチ20は、水素ガスの充填を開始するときに操作される。充填停止スイッチ21は、水素ガスの充填中にガスの充填を停止するときに操作される。充填開始スイッチ20と充填停止スイッチ21は、操作状態に応じた信号を制御装置24にそれぞれ出力する。これにより、制御装置24は、これらの信号に応じて遮断弁13を開弁または閉弁させる。
ガス供給管路5(メイン供給管路5A)の遮断弁13よりも下流側には、例えば充填ホース6A,6B側からガス圧力を脱圧するための脱圧管路22が分岐して設けられている。脱圧管路22の途中には、例えば電磁式または空圧作動式の弁装置である脱圧弁23が設けられている。脱圧弁23は、充填ホース6A,6B(充填ノズル7A,7B)を用いた水素ガスの充填作業が完了し、遮断弁13が閉弁されたときに、制御装置24からの信号に基づいて開弁制御される。
充填ノズル7A,7B(の接続カプラ)を被充填タンク32の充填口32Aから取外す場合には、充填ホース6A,6B内の圧力を大気圧レベルまで減圧する必要がある。このため、ガス充填作業の完了時には、脱圧弁23を一時的に開弁して脱圧管路22の先端側を大気に開放させる。これにより、充填ホース6A,6B側の水素ガスは、外部に放出されて充填ホース6A,6B内の圧力が大気圧レベルまで減圧される。この結果、充填ノズル7A,7Bは、被充填タンク32の充填口32Aから取外し可能となる。
制御装置24は、流量調整弁12、遮断弁13、脱圧弁23等を制御するコントローラ(コントロールユニット)を構成している。制御装置24は、流量調整弁12および遮断弁13の制御を行うことにより充填対象となる被充填タンク32への燃料供給を制御する。即ち、制御装置24は、供給制御弁となる流量調整弁12および遮断弁13を開閉制御することにより、車両31の被充填タンク32への水素ガスの供給を制御する充填制御手段を構成している。制御装置24は、例えば、CPU、メモリ24A、タイマ等を備えたマイクロコンピュータを含んで構成されている。制御装置24のメモリ24Aには、例えば、後述の図6に示す処理フローを実行するための処理プログラム、即ち、充填制御処理用のプログラム等が格納されている。
制御装置24の入力側には、流量計17、圧力センサ18、温度センサ19、充填開始スイッチ20、充填停止スイッチ21、ノズル検出器27A,27B、リミットスイッチ47,47等が接続されている。一方、制御装置24の出力側は、流量調整弁12、遮断弁13、脱圧弁23、表示部25等と接続されている。
表示部25は、ディスペンサ筐体4の前面側に設けられている。表示部25は、水素ガスの充填作業を行う作業者が視認し易い高さ位置に配置され、水素ガスの充填作業に必要な情報表示等を行う。表示部25は、例えば、液晶モニタ、液晶タッチパネル等により構成されている。ディスペンサ筐体4の前面側には、表示部25の他に充填開始スイッチ20、充填停止スイッチ21等の操作部が設けられている。
ノズル掛け26A,26Bは、例えばディスペンサ筐体4の側面側に設けられている。第1ノズル掛け26Aには、第1充填ノズル7Aが取外し可能に掛止めされ、第2ノズル掛け26Bには、第2充填ノズル7Bが取外し可能に掛止めされる。ノズル掛け26A,26Bには、水素ガスの非充填時(即ち、充填作業の待機時間)に充填ノズル7A,7Bが掛止めされる。水素ガスを充填するときは、充填作業の作業者によりノズル掛け26A,26Bから充填ノズル7A,7Bが取外される。ノズル掛け26A,26Bは、ディスペンサ筐体4の側面側に充填ノズル7A,7Bを収容するノズル収容部に相当する。
ノズル掛け26A,26Bには、充填ノズル7A,7Bが掛止めされたか否か(換言すれば、充填ノズル7A,7Bがノズル収容部に収容されたか否か)を検出するノズル検出器27A,27Bが設けられている。ノズル検出器27A,27Bは、例えば2位置切換型のスイッチにより構成されている。ノズル検出器27A,27Bは、制御装置24に接続されている。
第1ノズル検出器27Aは、例えば、第1充填ノズル7Aを第1ノズル掛け26Aに掛止めすると、第1充填ノズル7Aによって押動され、オン(ON)状態に切換わる。第1ノズル検出器27Aは、第1充填ノズル7Aがノズル掛け26Aから取出される(または取外される)と、オフ(OFF)状態に切換わる。同様に、第2ノズル検出器27Bは、例えば、第2充填ノズル7Bを第2ノズル掛け26Bに掛止めするとオン(ON)状態に切換わり、第2充填ノズル7Bが第2ノズル掛け26Bから取出される(または取外される)とオフ(OFF)状態に切換わる。
ノズル検出器27A,27Bは、充填ノズル7A,7Bがノズル掛け26A,26Bに掛止めされたか否かに対応する検出信号(ON信号またはOFF信号)を、制御装置24に出力する。なお、ノズル検出器27A,27Bは、ディスペンサ筐体4側のノズル掛け26A,26Bに設けるものに限らず、充填ノズル7A,7B側に設けてもよい。いずれの場合も、水素ガスの非充填時(即ち、充填作業の待機時間)は、ディスペンサユニット3のノズル掛け26A,26Bに充填ノズル7A,7Bが保持される。即ち、車両31の被充填タンク32に水素ガスを充填する充填作業が終了すると、充填ノズル7A,7Bは、ノズル掛け26A,26Bに戻される(ノズル収容部に収容状態に保持される)。
水素ガスを燃料として走行駆動される車両31は、例えば図1に示すような4輪自動車(乗用車)により構成されている。車両31は、例えば燃料電池と電動モータとを含んで構成される駆動装置(図示せず)、図1中に点線で示す被充填タンク32等を備えている。被充填タンク32は、水素ガスが充填される耐圧構造をもった容器として構成され、例えば車両31の後部側に搭載されている。なお、被充填タンク32は、車両31の後部側に限らず、前部側または中央部側に設ける構成としてもよい。
被充填タンク32には、充填ノズル7A(7B)の接続カプラが着脱可能に取付けられる充填口32A(レセプタクル)が設けられている。車両31の被充填タンク32内には、充填ノズル7A(7B)が充填口32Aに気密に連結(接続)された状態で水素ガスの充填が行われる。このとき、充填ノズル7A(7B)は、ロック機構により充填口32Aに対して不用意に外れることがないようにロックされる。
ところで、水素ガス充填装置1のメンテナンス(例えば、充填ノズルやガス供給管路の点検)を行っているときに、誤って水素ガスの充填開始操作がなされた場合に、流量調整弁12および遮断弁13が開弁し、ガス供給管路5を通じて充填ノズル7A,7Bから水素ガスが吐出されることは好ましくない。そこで、メンテナンス中に充填ノズル7A,7Bから水素ガスが吐出されることを防止するために、流量調整弁12および遮断弁13とは別に、ガス供給管路5内の開閉を切換えるための切換弁を設けることが考えられる。例えば、図2に示すように、ガス供給管路5の第1供給管路5Bに第1切換弁41Aを設けると共に、第2供給管路5Cに第2切換弁41Bを設けることが考えられる。
ここで、切換弁41A,41Bとして、例えば、電磁式または空圧作動式の弁装置、即ち、制御装置24によって開弁、閉弁の切換えが可能な自動弁を採用することが考えられる。しかし、電磁弁等の自動弁は、開弁、閉弁を行うアクチュエータを搭載している分、大きな設置スペースが必要になることに加えて、機器単体のコストが高くなる可能性がある。これに対して、切換弁41A,41Bとして、開弁、閉弁を手動で切換える手動弁を採用した場合には、省スペースで設置できることに加えて、コストも低減できる。しかし、いずれの場合も、即ち、切換弁41A,41Bとして自動弁を採用した場合も手動弁を採用した場合も、メンテナンスを行う係員が目視により切換弁41A,41Bの開閉状態を把握できない可能性がある。また、手動式の切換弁41A,41Bを採用した場合、そのままでは制御装置24により開閉状態を検知できない可能性がある。
そこで、実施形態では、充填ホース6A,6Bへのガス供給管路5(第1供給管路5B、第2供給管路5C)に設けられた切換弁41A,41Bを手動弁としている。これと共に、実施形態では、切換弁41A,41Bの開閉状態を目視にて確認できる機構と、切換弁41A,41Bの開閉状態を検出する機構とを備えている。即ち、図2に示すように、ガス供給管路5には、供給制御弁(流量調整弁12、遮断弁13)よりも下流側に位置して切換弁41A,41Bが設けられている。切換弁41A,41Bは、ガス供給管路5(第1供給管路5B、第2供給管路5C)内の開閉状態を切換える。実施形態では、ガス供給経路であるガス供給管路5は、複数の経路となる第1供給管路5Bと第2供給管路5Cとを備えている。そして、切換弁41A,41Bは、複数の経路、即ち、第1供給管路5Bと第2供給管路5Cとのそれぞれに設けられている。なお、切換弁41A,41Bの位置は、供給制御弁(流量調整弁12、遮断弁13)よりも上流側に設けられてもよい。
切換弁41A,41Bは、手動で切換えられる手動切換弁、より具体的には、ニードル弁である。切換弁41A,41Bは、内蔵された弁体(ニードル)がハンドル42によって上下に変位することにより開弁量が変化する。即ち、切換弁41A,41Bは、ハンドル42の回転により内蔵された弁体が下がることにより、水素ガスの流通が遮断される閉位置(遮断位置)となり、ハンドル42の回転により弁体が上がることにより、水素ガスが流通する開位置(連通位置)となる。
切換弁41A,41Bには、切換弁41A,41Bの切換え状態(開閉状態)を表示する表示部としてのレバー部46が設けられている。より具体的には、切換弁41A,41Bには、切換弁41A,41Bの切換え状態を表示すると共に切換え状態を検出するための開閉状態表示検出機構43,43が隣接して設けられている。なお、実施形態では、開閉状態表示検出機構43,43と切換弁41A,41Bとをそれぞれ別体(別部材、別部品)としているが、開閉状態表示検出機構43,43と切換弁41A,41Bとを一体に構成してもよい。即ち、図3および図4に示すように、実施形態では、開閉状態表示検出機構43と切換弁41A(41B)とが、それぞれ別々に設置面に固定されているが、例えば、開閉状態表示検出機構43のレバー取付ブラケット44を切換弁41A(41B)に固定することにより、開閉状態表示検出機構43を切換弁41A(41B)と一体に設ける構成としてもよい。
開閉状態表示検出機構43は、レバー取付ブラケット44と、レバー支持部45と、レバー部46とを備えている。また、開閉状態表示検出機構43は、検出手段としてのリミットスイッチ47をさらに備えている。レバー取付ブラケット44は、開閉状態表示検出機構43のベースフレームである。レバー取付ブラケット44は、例えば、金属製の板体を折り曲げ加工することにより形成されており、固定板部44Aと、立ち上がり板部44Bと、支持板部44Cとを備えている。
固定板部44Aは、設置面に取付けられる。立ち上がり板部44Bは、固定板部44Aから上方に延びており、立ち上がり板部44Bには、リミットスイッチ47が取付けられている。支持板部44Cは、立ち上がり板部44Bの上端側から水平方向に延び、レバー支持部45が取付けられている。
レバー支持部45は、レバー取付ブラケット44に対してレバー部46を回転可能に支持する。即ち、図3および図4に示すように、レバー支持部45は、上下方向に延びる鉛直軸を中心として、レバー部46をレバー取付ブラケット44に対して回転可能に支持している。レバー部46は、基端側がレバー取付ブラケット44の支持板部44Cにレバー支持部45を介して回転可能に支持されている。
レバー部46は、切換弁41A(41B)の動作に応じて切換え状態の表示が切換え可能である。即ち、レバー部46は、切換弁41A(41B)の切換え状態が閉(閉弁)である旨を表示するための表示部(閉弁表示部)に相当する。換言すれば、切換弁41A(41B)の切換え状態を表示する表示部は、切換弁41A(41B)が閉のときに、閉の表示に対応する位置(図3および図4の(B)の位置)に移動可能なカバー部としてのレバー部46である。この場合、レバー部46は、切換弁41A(41B)が閉のときに、切換弁41A(41B)のハンドル42の上側に移動可能である。
ここで、図3および図4の(A)は、開弁時、即ち、係員がハンドル42を時計回りまたは反時計回りに回してハンドル42を上げることにより、切換弁41A(41B)を開弁状態とした場合を示している。この場合、レバー部46は、ハンドル42から離間した位置(開弁位置)となっている。即ち、この場合は、レバー部46をハンドル42側に向けて回そうとしても、レバー部46がハンドル42と干渉するため、レバー部46をハンドル42の上方に位置させることはできない。
これに対して、図3および図4の(B)は、閉弁時、即ち、係員がハンドル42を反時計回りまたは時計回りに回してハンドル42を下げることにより、切換弁41A(41B)を閉弁状態とした場合を示している。この場合、レバー部46は、ハンドル42の上方に位置させることができる。即ち、この場合は、図4の(B)に示すように、ハンドル42がレバー部46の高さ位置よりも下側となる。このため、レバー部46をレバー支持部45の鉛直軸を中心として図3および図4の(A)に示す位置からハンドル42側に向けて回動させると、レバー部46がハンドル42と干渉せずに、レバー部46をハンドル42上に位置させることができる。
係員は、切換弁41A(41B)を閉弁状態としたときに、レバー部46を図3および図4の(A)に示す位置から(B)に示す位置に回動させることができる。これにより、係員は、切換弁41A(41B)が閉弁しているか開弁しているかを、レバー部46をハンドル42側に向けて回動させることができるか否かにより判定することができる。また、係員は、レバー部46がハンドル42上に位置しているときは、切換弁41A(41B)が閉弁していることを目視により容易に判定することができる。
ここで、図5にも示すように、レバー部46は、水平方向に延びる把持板部46Aと、把持板部46Aから下側に向けて延びる爪状のスイッチ接触部46Bとを有している。把持板部46Aは、切換弁41A(41B)が閉弁しているとき、換言すれば、ハンドル42が最下位置のときに、係員の回動操作によって、ハンドル42の上側、かつ、中央部に位置させることができる。即ち、レバー部46の把持板部46Aは、係員によって、ハンドル42の上側の位置(閉弁位置)とハンドル42から離れた位置(開弁位置)とに回動させることができる。スイッチ接触部46Bは、レバー部46(把持板部46A)が閉弁位置のときに、レバー取付ブラケット44に設けられたリミットスイッチ47の押圧部47Aと接触し、リミットスイッチ47をON位置に切換えることができる。
リミットスイッチ47は、レバー部46の位置を検出する。リミットスイッチ47は、図示しない接点と、接点を切換えるための押圧部47Aとを備えている。押圧部47Aは、レバー部46が閉弁位置のときに、レバー部46のスイッチ接触部46Bに押圧される。即ち、リミットスイッチ47は、押圧部47Aがスイッチ接触部46Bと接触することにより下方に向けて押圧されると、接点がOFF位置からON位置に切換わる。これにより、リミットスイッチ47は、レバー部46の位置、延いては、切換弁41A(41B)の切換え状態(閉弁状態であるか否か)を検出する。
リミットスイッチ47は、制御装置24と接続されており、ON位置のときに、レバー部46がハンドル42の上方に位置している旨のON信号、換言すれば、切換弁41A(41B)が閉弁している旨のON信号を制御装置24に出力する。これにより、制御装置24は、切換弁41A,41Bが開弁しているか閉弁しているかを判定することができる。制御装置24は、リミットスイッチ47の検出に応じて、供給制御弁である流量調整弁12および/または遮断弁13を開閉制御する。なお、制御装置24による制御、即ち、図6に示す水素ガスの充填制御の処理については、後で詳しく述べる。
いずれにしても、実施形態では、切換弁41A,41Bの近傍にリミットスイッチ47,47が設けられている。そして、図3および図4の(B)に示すように、レバー部46を切換弁41A(41B)のハンドル42側に移動させることにより、リミットスイッチ47がONとなる。レバー部46は、切換弁41A(41B)のハンドル42が最下位置となる閉弁位置のときにのみ回動させることができる。即ち、切換弁41A(41B)のハンドル42を操作し、切換弁41A(41B)を閉弁させたときに、レバー部46の把持板部46Aは、ハンドル42の上側となる位置にまで回動させることができる。
レバー部46の把持板部46Aをハンドル42の上側となる位置まで回動すると、レバー部46のスイッチ接触部46Bによりリミットスイッチ47を作動させることができる。これに対して、切換弁41A(41B)のハンドル42が最下位置となる閉位置以外のときは、ハンドル42の位置がレバー部46の把持板部46Aと干渉する位置となるため、リミットスイッチ47を作動させる位置までレバー部46(スイッチ接触部46B)を移動(回動)させることができない。
図3および図4の(B)に示すように、レバー部46が閉弁位置のとき、即ち、切換弁41A(41B)が閉弁しているときは、レバー部46の把持板部46Aをハンドル42の上側の中央部に位置させることができる。これにより、レバー部46(把持板部46A)は、ハンドル42の操作を妨げると共に、レバー部46(把持板部46A)に記載された「閉」の文字、および、レバー部46(把持板部46A)がハンドル42上に位置していることによって、切換弁41A(41B)が閉弁していることを容易に確認することができる。
実施形態による水素ガス充填装置1は、上述の如き構成を有するもので、次に、水素ガス充填装置1による水素ガスの充填作業について説明する。
車両31の被充填タンク32に水素ガスを充填するときに、充填作業を行う作業者は、第1充填ノズル7A(または第2充填ノズル7B)を第1ノズル掛け26A(または第2ノズル掛け26B)から取外す。以下、第1充填ノズル7Aにより水素ガスを充填する場合を説明するが、第2充填ノズル7Bについても同様である。
図1中に示すように、第1充填ノズル7Aを被充填タンク32の充填口32Aに接続し、当該接続部位をロックする。この状態で、充填作業の作業者が充填開始スイッチ20をON操作すると、制御装置24は、流量調整弁12と遮断弁13に開弁信号を出力して流量調整弁12と遮断弁13を開弁させる。これにより、ガス蓄圧器2内の水素ガスは、ガス供給管路5(メイン供給管路5A、第1供給管路5B)、第1充填ホース6Aおよび第1充填ノズル7Aを通じて車両31の被充填タンク32に充填される。制御装置24は、例えば流量計17、圧力センサ18、温度センサ19の測定結果を監視しつつ、流量調整弁12の開度等を予め設定された制御方式(定圧上昇制御方式または定流量制御方式)等で調整する。これにより、ガス供給管路5内に供給される水素ガスの圧力、流量を適切な流通状態に制御することができる。
このとき、制御装置24は、流量計17からの流量パルスを積算して水素ガスの充填量(質量)を演算し、水素ガスの充填量が予め設定された目標充填量に達するか、または圧力センサ18により検出した水素ガスの圧力が予め設定された目標充填圧力(目標充填圧)に達したか否かを判定する。目標とする充填量(圧力)に達したと判定したときには、制御装置24からの信号により流量調整弁12および遮断弁13が閉弁され、被充填タンク32への水素ガスの充填が終了される。なお、作業者が充填停止スイッチ21を操作した場合にも、充填作業は終了される。
次に、この状態で制御装置24は充填終了制御処理を実行する。この充填終了制御処理では、制御装置24からの信号により脱圧弁23を閉弁状態から開弁するように制御する。そして、脱圧弁23が開弁したときには、脱圧管路22が大気に開放されることにより、充填ノズル7A,7B側のガスが外部に放出されて第1充填ノズル7Aの圧力が大気圧レベルに減圧される。この状態で、作業者は第1充填ノズル7Aの接続カプラを被充填タンク32の充填口32Aから取外すことができる。
被充填タンク32の充填口32Aから取外された第1充填ノズル7Aは、作業者によってディスペンサ筐体4側の第1ノズル掛け26Aに戻され、手動操作により掛止めされる。第1ノズル掛け26Aに設けられた第1ノズル検出器27Aは、第1充填ノズル7Aが第1ノズル掛け26Aに戻されたか否かを検出する。第1充填ノズル7Aが第1ノズル掛け26Aに戻されて掛止めされると、第1ノズル検出器27Aからの検出信号が制御装置24に出力される。これにより、制御装置24は、第1充填ノズル7Aによる充填作業が終了したと判定し、次回の充填作業に対する待機状態となる。
また、水素ガス充填装置1のメンテナンスを行うときに、係員は、必要に応じて、第1切換弁41Aまたは第2切換弁41Bを閉弁する。例えば、係員は、第1供給管路5B、第1充填ホース6A、第1充填ノズル7A、第1緊急離脱カップリング8A、第1ノズル掛け26A等のメンテナンスを行うときに、第1切換弁41Aのハンドル42をハンドル42が下がる方向に回転させ、第1切換弁41Aを閉弁する。係員は、第1切換弁41Aを閉弁したら、第1切換弁41A側の開閉状態表示検出機構43のレバー部46を図3および図4の(B)に示す位置に回動させる。これにより、係員は、第1切換弁41Aが閉弁していることを目視により把握することができる。また、レバー部46のスイッチ接触部46Bによってリミットスイッチ47の押圧部47Aが下側に向けて押圧される。これにより、リミットスイッチ47からON信号が制御装置24に出力される。制御装置24は、リミットスイッチ47からON信号により、第1切換弁41Aが閉弁状態であると判定することができる。
同様に、第2供給管路5C、第2充填ホース6B、第2充填ノズル7B、第2緊急離脱カップリング8B、第2ノズル掛け26B等のメンテナンスを行うときに、係員は、第2切換弁41Bのハンドル42をハンドル42が下がる方向に回転させ、第2切換弁41Bを閉弁する。係員は、第2切換弁41Bを閉弁したら、第2切換弁41B側の開閉状態表示検出機構43のレバー部46を図3および図4の(B)に示す位置に回動させる。これにより、係員は、第2切換弁41Bが閉弁していることを目視により把握することができる。また、レバー部46のスイッチ接触部46Bによってリミットスイッチ47の押圧部47Aが下側に向けて押圧される。これにより、リミットスイッチ47からON信号が制御装置24に出力される。制御装置24は、リミットスイッチ47からON信号により、第2切換弁41Bが閉弁状態であると判定することができる。
次に、制御装置24で行われる制御処理(水素ガスの充填制御処理)について、図6を参照しつつ説明する。なお、図6の制御処理は、例えば、制御装置24に通電している間、所定の制御周期(例えば、10ms)で繰り返し実行される。
制御装置24が起動すると、図6の制御処理が開始される。制御装置24は、S1で、充填ノズル7A,7Bがノズル掛け26A,26Bから外されたか否かを判定する。この判定は、ノズル検出器27A,27Bの検出信号(ON信号またはOFF信号)により判定することができる。S1で「NO」、即ち、充填ノズル7A,7Bがノズル掛け26A,26Bから外されていないと判定された場合は、S1の処理を繰り返す。この場合は、充填作業が開始される前の待機状態であり、充填ノズル7A,7Bがノズル掛け26A,26Bから取外されるのを待機する。一方、S1で「YES」、即ち、充填ノズル7A(または充填ノズル7B)がノズル掛け26A(またはノズル掛け26B)から外されたと判定された場合は、S2に進む。
S2では、ノズル掛け26A(または26B)から外された充填ノズル7A(または7B)側の切換弁41A(または41B)が「開」であるか否かを判定する。この判定は、ノズル検出器27A,27Bの信号とリミットスイッチ47,47の信号とから判定することができる。この場合、制御装置24は、例えば、リミットスイッチ47からON信号が入力されていない場合は、当該リミットスイッチ47が設けられた側の切換弁41A(または41B)が「開」であると判定することができる。
S2で「NO」、即ち、外された充填ノズル7A(または7B)側の切換弁41A(または41B)が「開」でないと判定された場合は、S3に進む。この場合は、外された充填ノズル7A(または7B)側の切換弁41A(または41B)が「閉」であるため、充填を行うことができない。このため、S3で、アラーム表示を行う。即ち、制御装置24は、ディスペンサユニット3の表示部25に切換弁41A(または41B)が閉である旨の表示を行う。S3でアラーム表示を行ったら、S1に戻り、S1以降の処理を繰り返す。
一方、S2で「YES」、即ち、外された充填ノズル7A(または7B)側の切換弁41A(または41B)が「開」であると判定された場合は、S4に進む。S4では、充填制御処理を行う。即ち、S4では、充填開始スイッチ20がON操作されると、流量調整弁12と遮断弁13を開弁し、ガス蓄圧器2内から被充填タンク32に対して水素ガスの充填を行う。このとき、制御装置24は、例えば流量計17、圧力センサ18、温度センサ19の測定結果を監視しつつ、流量調整弁12の開度等を予め設定された制御方式で調整する。これにより、ガス供給管路5内に供給される水素ガスの圧力、流量を適切な流通状態に制御する。
S4に続くS5では、水素ガスの充填が終了したか否かを判定する。具体的には、水素ガスの充填量または充填圧が予め設定された目標値に達したか否かを判定する。S5で「NO」、即ち、水素ガスの充填量または充填圧が予め設定された目標値に達していないと判定された場合は、S5の処理を繰り返す。この場合は、被充填タンク32に対する水素ガスの充填を継続する。一方、S5で「YES」、即ち、水素ガスの充填量または充填圧が予め設定された目標値に達したと判定された場合は、水素ガスの充填を終了する。即ち、流量調整弁12および遮断弁13を閉弁し、S6に進む。作業者が充填停止スイッチ21を操作した場合にも、S5で「YES」と判定されS6に進む。
S6では、充填終了制御処理を行う。S6では、脱圧弁23を閉弁状態から開弁する。これにより、脱圧管路22が大気に開放され、充填ノズル7A,7B側の水素ガスが外部に放出されて充填ノズル7A(または7B)の圧力が大気圧に減圧される。S6に続くS7では、充填ノズル7A(または7B)がノズル掛け26A(または26B)に戻されたか否かを判定する。
S7で「NO」、即ち、充填ノズル7A(または7B)がノズル掛け26A(または26B)に戻されていないと判定された場合は、S7の処理を繰り返す。この場合は、充填ノズル7A(または7B)がノズル掛け26A(または26B)に戻されるまで待機する。S7で「YES」、即ち、充填ノズル7A(または7B)がノズル掛け26A(または26B)に戻されたと判定された場合は、リターンする。即ち、リターンを介してスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。
このように、実施形態では、制御装置24は、「ノズル検出器27A(27B)からの信号により充填ノズル7A(7B)がノズル掛け26A(26B)から外されたこと」と「リミットスイッチ47からの信号により充填ノズル7A(7B)が接続された供給管路5B(5C)に設けられた切換弁41A(41B)が開であること」との両方を判定する。制御装置24は、充填ノズル7A(7B)が外れており、かつ、当該充填ノズル7A(7B)の供給管路5B(5C)の切換弁41A(41B)が開であると判定された場合に、当該充填ノズル7A(7B)による充填を許可する。これに対して、制御装置24は、充填ノズル7A(7B)が外れていない、または、ノズル掛け26A(26B)から外された充填ノズル7A(7B)の供給管路5B(5C)の切換弁41A(41B)が開でないと判定された場合は、充填を禁止する。この場合、制御装置24は、ディスペンサユニット3の表示部25にアラーム表示、例えば、充填可能な充填ノズル7A(7B)でない旨の表示、または、切換弁41A(41B)が閉である旨の表示を行う。なお、切換弁41Aおよび切換弁41Bがいずれも閉であると判定された場合には、充填を禁止する。
なお、図6のS2では、ノズル検出器27A,27Bの信号とリミットスイッチ47,47の信号とにより、外された充填ノズル7A(または7B)側の切換弁41A(または41B)が「開」であるか否かを判定する。これに対して、例えば、充填を行う作業者が充填を開始する前にディスペンサユニット3に設けられた操作パネル、操作スイッチ等を操作して充填を行う充填ノズル7A(または7B)を選択(指定)する構成の場合には、選択情報(指定情報)とリミットスイッチ47,47の信号とに基づいて図6のS2の判定を行うこともできる。
以上のように、実施形態によれば、切換弁41A,41Bの切換え状態を表示する表示部(レバー部46)を備えているため、メンテナンスを行うときに、係員は、表示部(レバー部46)を目視することにより、切換弁41A,41Bの開閉状態、即ち、切換弁41A,41Bによるガス供給管路5(第1供給管路5B、第2供給管路5C)の連通、遮断状態を把握することができる。
実施形態によれば、切換弁41A,41Bは、手動切換弁であり、表示部(レバー部46)は、切換弁41A,41Bの動作(ハンドル42の位置)に応じて切換え状態の表示が切換え可能である。このため、表示部(レバー部46)により、切換弁41A,41Bの開閉状態を容易に把握することができる。
実施形態によれば、表示部として、切換弁41A,41Bが閉のときに、閉の表示に対応する位置に移動可能なレバー部46を備えている。このため、レバー部46が閉の表示に対応する位置に移動しているか否かにより、切換弁41A,41Bが閉であるか否かを容易に把握することができる。
実施形態によれば、レバー部46は、切換弁41A,41Bが閉のときに、切換弁41A,41Bのハンドル42の上側に移動可能である。このため、切換弁41A,41Bのハンドル42の上側にレバー部46が移動しているか否かにより、切換弁41A,41Bが閉であるか否かを容易に把握することができる。
実施形態によれば、レバー部46の位置を検出する検出手段としてのリミットスイッチ47をさらに備えている。そして、充填制御手段となる制御装置24は、リミットスイッチ47の検出に応じて、供給制御弁となる流量調整弁12および遮断弁13を開閉制御する。このため、制御装置24は、レバー部46の位置を検出するリミットスイッチ47の検出に応じて、流量調整弁12および遮断弁13を開閉制御することができる。このため、例えば、切換弁41A,41Bが閉のときに、流量調整弁12および遮断弁13が開弁することを阻止できる。
なお、実施形態では、充填ノズル7A,7Bが掛けられるノズル掛け26A,26B(充填ノズル7A,7Bを収容する収容部)をディスペンサ筐体4の左側に設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えばノズル掛け(収容部)をディスペンサ筐体の右側に設ける構成としてもよく、これ以外の位置(例えば、正面)に設ける構成としてもよい。また、ディスペンサ筐体の近傍位置に、ノズル掛け(収容部)を別途設ける構成としてもよい。また、第1ノズル掛けと第2ノズル掛けとをディスペンサ筐体の異なる側面にそれぞれ設ける構成としてもよい。
実施形態では、車両31の被充填タンク32に圧縮された水素ガスを充填する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、車両以外の被充填タンク(タンク、容器等)に水素ガスを充填するときに用いることもできる。また、水素ガス充填装置1のディスペンサユニット3を、他の場所に水素ガスを給送するための管路(水素給送管路)の途中に設置してもよい。さらに、燃料ガスとして水素ガスを例に挙げて説明したが、天然ガス(NG)、プロパンガス(LPG)等の水素ガス以外の燃料ガスを用いる構成(ガス充填装置)としてもよい。
実施形態では、切換弁41A,41Bを手動切換弁とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、切換弁として、例えば、制御装置により開閉の制御が可能な電磁弁等の自動切換弁を用いてもよい。この場合、自動切換弁には、例えば、自動切換弁の切換状態(切換位置)に応じて切換え状態(例えば、「開」,「閉」)が表示される表示部を設けることができる。また、表示について「開」、「閉」に限らず、例えば、「切換中」、「未切換」や切換されていない状態(閉状態)である場合には非表示としてもよい。
実施形態では、カバー部となるレバー部46は、切換弁41A,41Bが閉のときに、切換弁41A,41Bのハンドル42の上側に移動可能な構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、カバー部(レバー部)をハンドルの下側に移動可能な構成としてもよい。この場合、例えば、切換弁のハンドルは、閉弁のときに上側に変位する構成とすることができる。そして、カバー部(レバー部)は、上側に変位したハンドルの下側に移動可能な構成とすることができる。この場合、カバー部(レバー部)には、必要に応じて、ハンドルの軸が入り込む切り欠き部を設ける構成とすることができる。また、カバー部(レバー部)は、ハンドルから突出する長さに設定することができる。
実施形態では、検出手段としてのリミットスイッチ47を用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、検出手段としてハンドルの位置を検出する位置センサ、ポテンショメータ等を用いてもよい。また、検出手段および/または表示部は、切換弁に内蔵する構成としてもよい。さらに、検出手段は省略してもよい。
実施形態では、ガス供給経路であるガス供給管路5は、複数のガス供給経路となる第1供給管路5Bと第2供給管路5Cとを備えており、これら第1供給管路5Bと第2供給管路5Cとのそれぞれに切換弁41A,41Bを設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、1つのガス供給経路に1つの切換弁を設ける構成としてもよい。また、例えば、3つ以上のガス供給経路のそれぞれに切換弁を設ける構成としてもよい。
以上説明した実施形態に基づくガス充填装置として、例えば下記に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様としては、燃料ガスが蓄圧された蓄圧器に上流側が接続されたガス供給経路と、前記ガス供給経路の下流側に接続され、車両に搭載された被充填タンクに連結される充填ノズルと、前記ガス供給経路の途中に設けられ、開弁することにより前記蓄圧器内の燃料ガスを前記充填ノズルへ供給する供給制御弁と、前記供給制御弁を開閉制御することにより、前記被充填タンクへの前記燃料ガスの供給を制御する充填制御手段と、を含んで構成されたガス充填装置において、前記ガス供給経路に設けられ、前記ガス供給経路内の開閉状態を切換える切換弁と、前記切換弁に設けられ、前記切換弁の切換え状態を表示する表示部と、を備える。
この第1の態様によれば、切換弁の切換え状態を表示する表示部を備えているため、メンテナンスを行うときに、係員は、表示部を目視することにより、切換弁の開閉状態(即ち、切換弁によるガス供給経路の連通、遮断状態)を把握することができる。
第2の態様としては、第1の態様において、前記切換弁は、手動で切換えられる手動切換弁であり、前記表示部は、前記手動切換弁の動作に応じて表示を切換え可能である。この第2の態様によれば、手動切換弁の動作に応じて切換え状態の表示が切換え可能な表示部により、手動切換弁の開閉状態を容易に把握することができる。
第3の態様としては、第2の態様において、前記表示部は、前記手動切換弁が閉のときに、閉の表示に対応する位置に移動可能なカバー部である。この第3の態様によれば、カバー部が閉の表示に対応する位置に移動しているか否かにより、手動切換弁が閉であるか否かを容易に把握することができる。
第4の態様としては、第3の態様において、前記カバー部は、前記手動切換弁が閉のときに、前記手動切換弁のハンドルの上側または下側に移動可能である。この第4の態様によれば、手動切換弁のハンドルの上側または下側にカバー部が移動しているか否かにより、手動切換弁が閉であるか否かを容易に把握することができる。
第5の態様としては、第3の態様または第4の態様において、前記カバー部の位置を検出する検出手段をさらに備え、前記充填制御手段は、前記検出手段の検出に応じて前記供給制御弁を開閉制御する。この第5の態様によれば、充填制御手段は、カバー部の位置を検出する検出手段の検出に応じて、供給制御弁を開閉制御することができる。このため、例えば、手動切換弁が閉のときに、供給制御弁が開弁することを阻止できる。
第6の態様としては、第1の態様ないし第5の態様のいずれかにおいて、前記ガス供給経路は、複数の経路を備えており、前記切換弁は、前記複数の経路のそれぞれに設けられている。この第6の態様によれば、メンテナンスを行うときに、係員は、複数の経路にそれぞれ設けられた複数の切換弁の開閉状態(即ち、複数の経路の連通、遮断状態)をそれぞれ把握することができる。
なお、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されず、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
本願は、2020年9月15日付け出願の日本国特許出願第2020-154575号に基づく優先権を主張する。2020年9月15日付け出願の日本国特許出願第2020-154575号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書を含む全開示内容は、参照により本願に全体として組込まれる。