本出願は、抗ヒトTIGITモノクローナル抗体及びその適用を提供する。本開示は、マウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体クローンの所定の重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)の遺伝子配列に関する、70A11A8E6、11D8E12A4、16F10H12C11、8F2D8E7、48B5G4E12、139E2C2D2、128E3G7F5、121C2F10B5、104G12E12G2、83G6H11C12、92E9D4B4、100C4E7D11、及び64G1E9B4。それはまた、これらのマウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体クローンの一部に対するヒト化または翻訳後修飾後の、所定の重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)の遺伝子配列に関する。本開示は、抗ヒトTIGITモノクローナル抗体の生成方法に関する。
本出願は、開示されたクローンの重鎖及び軽鎖の可変ドメインをヒトIgG1の定常領域と融合させることにより、キメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体を提供する。本出願は、マウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体クローンの重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)のヒト化形態を提供する。ヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体は、開示されたクローンの重鎖及び軽鎖のヒト化可変ドメインをヒトIgG1の定常領域と融合させることにより生成された。
I.定義
本発明の実施は、特に反対の指示がない限り、当業者の範囲内のウイルス学、免疫学、微生物学、分子生物学、及び組み換えDNA技術の従来の方法を用いることになり、それらの多くは、例示の目的で以下に記載される。そのような技術は、文献で完全に説明される。例えば、Current Protocols in Molecular Biology or Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,New York,N.Y.(2009);Ausubel et al,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,Wiley & Sons,1995;Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001);Maniatis et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982);DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(D.Glover,ed.);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,ed.,1984);Nucleic Acid Hybridization(B.Hames & S.Higgins,eds.,1985);Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,eds.,1984);Animal Cell Culture(R.Freshney,ed.,1986);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)及び他の類似の参考文献を参照のこと。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈に別途明示のない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。
別途指示のない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者らは、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。そのような等価物は、本発明に包含されることが意図される。
文脈に別途要求のない限り、「含む(comprise)」という単語ならびに「含む(comprises)」及び「含むこと(comprising)」などの変形形態に伴う本明細書及び特許請求の範囲の全体にわたって、所定の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループを含むが、任意の他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループを除外しないことを意味すると理解されるであろう。本明細書で使用される時、「含むこと(comprising)」という用語は、「含有すること(containing)」もしくは「含むこと(including)」という用語で、または、多くの場合、本明細書で使用される時、「有する(having)」という用語で置き換えることができる。
本明細書で使用される場合、「からなる(consisting of)」は、請求項の要素で詳述されない任意の要素、ステップ、または成分を除外する。本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の基本的且つ新規の特徴に実質的に影響を与えない物質またはステップを除外しない。本出願の態様または実施形態との関連において、本明細書で使用される時はいつでも、「含むこと(comprising)」、「含有すること(containing)」、「含むこと(including)」、及び「有すること(having)」という上述の用語のいずれも、開示の範囲を変更するために、「からなる(consisting of)」または「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で置き換えることができる。
本明細書で使用される場合、複数の列挙された要素間の接続用語「及び/または」は、個々の選択肢及び組み合わされた選択肢の両方を包含すると理解される。例えば、2つの要素が「及び/または」で結合されている場合、最初の選択肢は、2番目の要素なしの最初の要素の適用性を指す。2番目の選択肢は、最初の要素なしの2番目の要素の適用性を指す。3番目の選択肢は、同時に最初の要素及び2番目の要素の適用性を指す。これらの選択肢のいずれか1つは、意味内に入り、それにより、本明細書で使用される「及び/または」という用語の要件を満足すると理解される。複数の選択肢の同時適用性も、意味の範囲内に入り、それにより、「及び/または」という用語の要件を満たすものと理解される。
別途記載のない限り、本明細書に記載の濃度または濃度範囲などの任意の数値は、全ての場合において、「約」という用語により変更されるものとして理解されるべきである。従って、数値には通常、列挙された値の±10%を含む。例えば、1mg/mLの濃度は、0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1mg/mL~10mg/mLの濃度範囲は、0.9mg/mL~11mg/mLを含む。本明細書で使用される場合、数値範囲の使用は、文脈が別途明示しない限り、可能な部分範囲全て、そのような範囲内の整数及び値の分数を含むその範囲内の個々の数値全てを明示的に含む。
「エピトープ」という用語は、抗体への特異的な結合が可能なタンパク質決定基を意味する。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面グループからなり、通常、特定の3次元構造特性及び特定の電荷特性を有する。立体配座エピトープ及び非立体配座エピトープは、後者ではなく前者への結合が変性溶媒の存在下で失われるという点で区別される。
本明細書で使用される場合、「処置」または「処置すること」は、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益または所望の臨床結果は、以下のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない:疾患から生じる1つ以上の症状の緩和、疾患の程度の軽減、疾患の安定化(例えば、疾患の予防または疾患の悪化の遅延)、疾患の拡大の予防または疾患の拡大(例えば、転移)の遅延、疾患の防止または疾患の再発の遅延、疾患の進行の遅延または減速、病状の改善、疾患の(一部または全部)の寛解の提供、疾患の処置に必要な1つ以上の他の薬剤の用量の減少、疾患の進行の遅延、生活の質の向上、及び/または生存期間の延長。疾患の病理学的結果の軽減も、「処置」に包含される。本発明の方法は、これらの処置の態様のうちのいずれか1つ以上を企図する。
本明細書で使用される「有効量」という用語は、特定の障害、状態、または疾患を処置する、例えば、症状のうちの1つ以上を改善、緩和、軽減、及び/または遅延させるのに十分な薬剤または薬剤の組み合わせの量を指す。がんに関して、有効量は、腫瘍を収縮させる及び/または腫瘍の成長速度を減少させる(例えば、腫瘍成長を抑制する)か、または他の望ましくない細胞増殖を防止または遅延させるのに十分な量を含む。一部の実施形態では、有効量は、発達を遅延させるのに十分な量である。一部の実施形態では、有効量は、再発を防止または遅延させるのに十分な量である。有効量は、1回以上の投与で投与することができる。薬物または組成物の有効量は、(i)がん細胞数を低減させ;(ii)腫瘍サイズを低減させ;(iii)末梢器官へのがん細胞の浸潤を抑制し、遅らせ、ある程度減速させ、好ましくは停止させ;(iv)腫瘍転移を抑制する(すなわち、ある程度減速させ、好ましくは、停止させ);(v)腫瘍の成長を抑制し;(vi)腫瘍の発生及び/または再発を防止もしくは遅延させ;及び/または、(vii)がんに関連する症状のうちの1つ以上をある程度緩和させ得る。
「抗体」、「抗体部分」、または「抗体構築物」という用語は、最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限り、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、全長抗体、及びその抗原結合フラグメントを含む種々の抗体構造を包含する。
基本的な4鎖抗体ユニットは、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、J鎖と呼ばれるさらなるポリペプチドと共に基本的なヘテロ四量体ユニットの5つからなり、10の抗原結合部位を含有するが、IgA抗体は、J鎖と組み合わせて多価集団を形成するために重合し得る基本的な4鎖ユニットのうちの2~5つを含む。IgGの場合、4鎖ユニットは一般に、約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によりH鎖に連結されているが、2つのH鎖は、H鎖アイソタイプに応じて1つ以上のジスルフィド結合により互いに連結されている。各H鎖及びL鎖は、規則的な間隔の鎖内ジスルフィドブリッジも有する。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(VH)、続いて、α鎖及びγ鎖のそれぞれに対する3つの定常ドメイン(CH)ならびにμアイソタイプ及びεアイソタイプに対する4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)、続いて、他端に定常ドメインを有する。VLは、VHとアラインされ、CLは、重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)とアラインされる。特定のアミノ酸残基は、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。VH及びVLが一緒にペアリングされると、単一の抗原結合部位が形成される。抗体の種々のクラスの構造及び特性について、例えば、Basic and Clinical Immunology,8th Edition,Daniel P.Sties,Abba I.Terr and Tristram G.Parsolw(eds),Appleton & Lange,Norwalk,Conn.,1994,page 71 and Chapter 6を参照のこと。任意の脊椎動物種由来のL鎖は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に異なるタイプの1つに割り当てることができる。重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てることができる。それぞれα、δ、ε、γ、及びμと称される重鎖を有する免疫グロブリンの5つのクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがある。γクラス及びαクラスはさらに、CH配列及び機能と比較的小さな差異に基づいてサブクラスに分類され、例えば、ヒトは、以下のサブクラス:IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2を発現する。
「重鎖のみの抗体」または「HCAb」という用語は、重鎖を含むが、4鎖抗体に通常見られる軽鎖を欠く機能的抗体を指す。ラクダ科動物(例えば、ラクダ、ラマ、またはアルパカ)は、HCAbを生産することが知られる。
「単一ドメイン抗体」または「sdAb」という用語は、3つの相補性決定領域(CDR)を有する単一の抗原結合ポリペプチドを指す。sdAb単独は、対応するCDR含有ポリペプチドとペアリングすることなく、抗原に結合することが可能である。一部の場合では、単一ドメイン抗体は、ラクダ科HCAbから操作され、それらの重鎖可変ドメインは、本明細書では、「VHH」(重鎖抗体の重鎖の可変ドメイン)と呼ばれる。一部のVHHは、ナノボディとしても知られ得る。ラクダ科sdAbは、既知の最小の抗原結合抗体フラグメントの1つである(例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-8(1993);Greenberg et al.,Nature 374:168-73(1995);Hassanzadeh-Ghassabeh et al.,Nanomedicine(Lond),8:1013-26(2013)を参照のこと)。基本的なVHHは、N末端からC末端に、以下の構造:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を有し、FR4~FR1は、それぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3は、相補性決定領域1~3を指す。
「単離」抗体は、その産生環境の構成要素(例えば、天然または組み換え)から同定、分離、及び/または回収されているものである。好ましくは、単離ポリペプチドは、その生産環境からの他の全ての構成要素との関連がない。組み換えトランスフェクト細胞から生じるものなどの、生産環境の汚染構成要素は、抗体の研究、診断、または治療的使用を通常妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含み得る。好ましい実施形態では、ポリペプチドは、(1)例えば、Lowry法により決定されるように、抗体の95重量%超まで、一部の実施形態では、99重量%超まで;(2)スピニングカップシーケンサーを使用して、N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで;または、(3)クーマシーブルーまたは、好ましくは、銀染色を使用する非還元または還元条件下でのSDS-PAGEにより均質まで、精製されるであろう。抗体の天然環境の少なくとも1つの構成要素が存在しないので、単離抗体は、組み換え細胞内にin situで抗体を含む。しかし、通常、単離ポリペプチド、抗体、または構築物は、少なくとも1つの精製ステップで調製されるであろう。
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、「VH」及び「VL」と呼ぶことができる。これらのドメインは一般に、(同じクラスの他の抗体と比較して)抗体の最も可変の部分であり、抗原結合部位を含有する。ラクダ科種の重鎖のみ抗体は、「VHH」と呼ばれる単一重鎖可変領域を有する。従って、VHHは、特別なタイプのVHである。
「可変」という用語は、可変ドメインの特定のセグメントが抗体間で配列が大きく異なるという事実を指す。Vドメインは、抗原結合を媒介し、特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定義する。しかし、可変性は、可変ドメインの全スパンにわたって均一に分布しない。その代わりに、それは、軽鎖及び重鎖可変ドメインの両方に相補性決定領域(CDR)または超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、3つのCDRにより連結されているβシート立体配置を主に採用する4つのFR領域を含み、これは、βシート構造を連結するループを形成し、一部の場合では、βシート構造を形成する。各鎖のCDRは、FR領域により近接して結び付けられ、他の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合には直接関与しないが、抗体依存性細胞毒性への抗体の関与など、種々のエフェクター機能を発揮する。
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る、起こり得る天然の変異及び/または翻訳後修飾(例えば、異性化、脱アミド化)を除いて同一である。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原部位に対して向けられる。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらがハイブリドーマ培養で合成され、他の免疫グロブリンで汚染されていないという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られるような抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、用途に応じて使用されるべきモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein.,Nature,256:495-97(1975);Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253-260(1995),Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981))、組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)を参照のこと));ならびに、ヒト免疫グロブリン遺伝子座またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部または全部を有する動物においてヒトまたはヒト様抗体を産生する技術(例えば、WO1998/24893;WO1996/34096;WO1996/33735;WO1991/10741;Jakobovits et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993);米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;及び同第5,661,016号;Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994);Morrison,Nature 368:812-813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996);ならびに、Lonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)を参照のこと)を含む様々な技術で作製することができる。
「全長抗体」、「インタクト抗体」、または「完全抗体」という用語は、抗体フラグメントとは対照的に、実質的にインタクトな形態の抗体を指すために互換的に使用される。具体的には、全長4鎖抗体は、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものを含む。全長重鎖のみ抗体は、重鎖(例えば、VHH)及びFc領域を含む。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列多様体であり得る。一部の場合では、インタクト抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有し得る。
「抗体フラグメント」は、インタクト抗体の一部、好ましくは、インタクト抗体の抗原結合及び/または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFvフラグメント;ダイアボディ;線状抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057-1062[1995]を参照のこと);一本鎖抗体分子;単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、及び抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。抗体のパパイン消化により、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメント及び容易に結晶化する能力を表す名称である残りの「Fc」フラグメントが産生された。Fabフラグメントは、H鎖の可変領域ドメイン(VH)及び1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と一緒にL鎖全体からなる。各Fabフラグメントは、抗原結合に関して一価であり、すなわち、それは、単一抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、異なる抗原結合活性を有する2つのジスルフィド連結されているFabフラグメントに、おおよそ対応する単一の大きなF(ab’)2フラグメントを生じ、依然として、抗原を架橋することが可能である。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む、CH1ドメインのカルボキシ末端に、いくつかの追加の残基を有することでFabフラグメントとは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書での名称である。F(ab’)2抗体フラグメントは元々、それらの間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントのペアとして生成された。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも知られている。
Fcフラグメントは、ジスルフィドにより結合している両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、特定のタイプの細胞に見られるFc受容体(FcR)によっても認識される領域であるFc領域の配列により決定される。
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含有する可変ドメインである、免疫グロブリンの他の部分と比較して、より保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2、及びCH3ドメイン(一括して、CH)ならびに軽鎖のCHL(またはCL)ドメインを含有する。
任意の哺乳動物種の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明確に異なるタイプのうちの1つに割り当てることができる。
「Fv」は、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。このフラグメントは、密な非共有結合で、1つの重鎖可変領域ドメイン及び1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これらの2つのドメインの折りたたみから、抗原結合のアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖からそれぞれ3つのループ)が生ずる。しかし、単一可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、結合部位全体よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識及び結合する能力を有する。
「sFv」とも略される「一本鎖Fv」または「scFv」は、単一のポリペプチド鎖に連結されているVH及びVL抗体ドメインを含む抗体フラグメントである。好ましくは、sFvポリペプチドはさらに、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にする、VHドメイン及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーを含む。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照のこと。
本明細書に記載の抗体の「機能的フラグメント」は、FcR結合能を保持するかまたは修飾している、インタクト抗体の抗原結合領域もしくは可変領域または抗体のFc領域を一般に含む、インタクト抗体の一部を含む。抗体フラグメントの例としては、線形抗体、単鎖抗体分子、及び抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体を含む。
「ダイアボディ」という用語は、Vドメインの鎖内ペアリングではなく鎖間ペアリングが達成され、それにより、二価フラグメント、すなわち、2つの抗原結合部位を有するフラグメント、がもたらされように、VHドメイン及びVLドメイン間に短いリンカー(約5~10残基)を有するsFvフラグメント(前の段落を参照のこと)を構築することにより調製される小さい抗体フラグメントを指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVHドメイン及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖に存在する2つの「クロスオーバー」sFvフラグメントのヘテロダイマーである。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;Hollinger et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)にさらに詳細に記載される。
本明細書のモノクローナル抗体は具体的には、重鎖及び/または軽鎖の一部が特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であるが、鎖(複数可)の残りが別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびに、所望の生物活性を示す限り、そのような抗体のフラグメントを含む(米国特許第4,816,567号;Morrison et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))。「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットとして使用される。
非ヒト(例えば、ラマまたはラクダ)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有する抗体である。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのCDR(以下で定義)由来の残基がマウス、ラット、ウサギ、ラクダ、ラマ、アルパカ、または所望の特異性、親和性、及び/または能力を有する非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基で置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の場合では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク(「FR」)残基は、対応する非ヒト残基で置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見られない残基を含み得る。これらの修飾は、結合親和性などの抗体性能をさらに改善するために行うことができる。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループの全てまたはほぼ全てが非ヒト免疫グロブリン配列のものに対応する、FR領域の全てまたはほぼ全てがヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つ、通常は2つの可変ドメインをほぼ全て含むであろう。但し、FR領域は、結合親和性、異性化、免疫原性などの抗体性能を改善する1つ以上の個々のFR残基の置換を含み得る。FR中のこれらのアミノ酸置換数は通常、H鎖では6以下であり、L鎖では3以下である。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、通常は、ヒト免疫グロブリンの定常領域、の少なくとも一部も含むであろう。さらなる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照のこと。例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105-115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035-1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428-433(1994);ならびに米国特許第6,982,321号及び同第7,087,409号も参照のこと。
「ヒト抗体」は、ヒトにより産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体であり、及び/または、本明細書に開示されるように、ヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製されている。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当該技術分野で既知の種々の技術を使用して生成することができる。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載される方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368-74(2001)も参照のこと。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してそのような抗体を産生するように改変されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物、例えば、免疫化ゼノマウス、に抗原を投与することにより調製することができる(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照のこと)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されたヒト抗体に関するLi et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)も参照のこと。
本明細書で使用される時の「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、配列が超可変であり、及び/または構造的に定義されるループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、単一ドメイン抗体は、3つのHVR(またはCDR):HVR1(またはCDR1)、HVR2(またはCDR2)、及びHVR3(またはCDR3)を含む。HVR3(またはCDR3)は、3つのHVRの中で最も多様性を示し、抗体に良好な特異性を付与する独自の役割を果たしていると考えられる。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-448(1993);Sheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733-736(1996)を参照のこと。
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、Kabatシステムにより定義されるような超可変領域を指すために使用される。Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照のこと。
多数のHVRの図解が使用され、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列変化に基づいており、最も一般に使用される(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。その代わりに、Chothiaは、構造的ループの位置を指す(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM HVRは、Kabat HVR及びChothia構造的ループ間の中間物を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用可能な複雑な結晶構造の分析に基づく。これらのHVRのそれぞれからの残基を、以下の表1に示される。
HVRは、「拡張HVR」を次の通り含み得る:VLに24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)、及び89~97または89~96(L3)ならびにVHに26~35(H1)、50~65または49~65(H2)、及び93~102、94~102、または95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義のそれぞれについて、上掲のKabat et al.に従って番号付けされる。
単一ドメイン抗体(例えば、VHH)のアミノ酸残基は、Riechmann and Muyldermans,J.Immunol.Methods 2000 Jun.23;240(1-2):185-195の論文のラクダ科動物由来のVHHドメインに適用されるように、Kabat et al.により与えられるVHドメインに対する一般的なナンバリングに従って番号付けされる(“Sequence of proteins of immunological interest”,US Public Health Services,NIH Bethesda,Md.,Publication No.91)。このナンバリングによれば、VHHのFR1は、1~30位にアミノ酸残基を含み、VHHのCDR1は、31~35位にアミノ酸残基を含み、VHHのFR2は、36~49位にアミノ酸を含み、VHHのCDR2は、50~65位にアミノ酸残基を含み、VHHのFR3は、66~94位にアミノ酸残基を含み、VHHのCDR3は、95~102位にアミノ酸残基を含み、VHHのFR4は、103~113位にアミノ酸残基を含む。この点で、VHドメイン及びVHHドメインに対し、当該技術分野で既知のように、CDRのそれぞれにおけるアミノ酸残基の総数が変動し得、Kabatナンバリングで示されるアミノ酸残基の総数に対応することができない(つまり、Kabatナンバリングによる1つ以上の位置が、実際の配列において占有することができないか、または、実際の配列が、Kabatナンバリングで許容される数より多くのアミノ酸残基を含み得る)という点に留意すべきである。
「Kabatのような可変ドメイン残基ナンバリング」または「Kabatのようなアミノ酸位置ナンバリング」という表現及びそれらの変形形態は、上掲のKabat et al.の抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用されるナンバリングシステムを指す。このナンバリングシステムを使用すると、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはHVRの短縮またはそれらへの挿入に対応する、より少ないまたは追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一アミノ酸挿入物(Kabatによる残基52a)及び重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82cなど)を含み得る。残基のKabatナンバリングは、「標準の」Kabatナンバリング配列を有する抗体の配列の相同性の領域でのアラインメントにより、所与の抗体について決定することができる。
本明細書では別途指示のない限り、免疫グロブリン重鎖の残基のナンバリングは、上掲のKabat et al.のようなEUインデックスのものである。「KabatのようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されるようなHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」または「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般に発生するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからのものである。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5thEd.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)のようなサブグループである。例としては、VLが挙げられ、サブグループは、上掲のKabat et al.のようなサブグループカッパI、カッパII、カッパIII、またはカッパIVであり得る。さらに、VHの場合、サブグループは、Kabat et al.のようなサブグループI、サブグループII、またはサブグループIIIであり得る。あるいは、ヒトコンセンサスフレームワークは、例えば、ヒトフレームワーク残基がドナーフレームワーク配列を種々のヒトフレームワーク配列の集合とアラインすることによるドナーフレームワークとの相同性に基づいて選択される時の、上記の特定の残基に由来することができる。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含み得るか、または既存のアミノ酸配列変化を含有し得る。一部の実施形態では、既存のアミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。
「親和性成熟」抗体は、それらの変更(複数可)を有さない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす、その1つ以上のCDRにおける1つ以上の変更を伴うものである。一部の実施形態では、親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルまたはさらにピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当該技術分野で既知の手順により生成される。例えば、Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992)は、VHドメイン及びVLドメインシャッフリングによる親和性成熟について記載する。CDR及び/またはフレームワーク残基のランダム変異導入は、例えば、Barbas et al.Proc Nat’l.Acad.Sci.USA 91:3809-3813(1994);Schier et al.Gene 169:147-155(1995);Yelton et al.J.Immunol.155:1994-2004(1995);Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310-9(1995);及びHawkins et al.,J.Mol.Biol.226:889-896(1992)により記載される。
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」、「特異的に認識する」、または「特異的な」という用語は、標的及び抗原結合タンパク質(例えば、mAb)間の結合などの測定可能及び再現可能な相互作用を指し、これは、生体分子を含む分子の不均一な集団の存在下で標的の存在が決定的である。例えば、(エピトープであり得る)標的と特異的に結合する抗原結合タンパク質(例えば、mAb)は、他の標的と結合するよりも、より大きい親和性で、より大きい結合活性、より容易に、及び/またはより長い期間で、この標的と結合する抗原結合タンパク質(例えば、mAb)である。一部の実施形態では、無関係な標的への抗原結合タンパク質(例えば、mAb)の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)で測定された対象への抗原結合タンパク質(例えば、mAb)の結合の約10%未満である。一部の実施形態では、標的と特異的に結合する抗原結合タンパク質(例えば、mAb)は、≦10-5M、≦10-6M、≦10-7M、≦10-8M、≦10-9M、≦10-10M、≦10-11M、または≦10-12Mの解離定数(KD)を有する。一部の実施形態では、抗原結合タンパク質は、異なる種由来のタンパク質間で保存されているタンパク質上のエピトープと特異的に結合する。一部の実施形態では、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、必要はない。
「特異性」という用語は、抗原の特定のエピトープに対する抗原結合タンパク質(例えば、mAb)の選択的認識を指す。天然抗体は、例えば、単一特異性である。本明細書で使用される「多重特異性」という用語は、抗原結合性タンパク質が、多エピトープ特異性(すなわち、1つの生物学的分子上の、2つ、3つ、もしくはそれ以上の異なるエピトープに特異的に結合することが可能であるか、または、2つ、3つ、もしくはそれ以上の異なる生物学的分子上のエピトープに特異的に結合することが可能である)を有することを示す。本明細書で使用される「二重特異性」は、抗原結合タンパク質が2つの異なる抗原結合特異性を有することを示す。別途指示のない限り、列挙された二重特異性抗体が結合する抗原の順序は任意である。つまり、例えば、「抗TIGIT/PD-L1」、「抗PD-L1/TIGIT」、「TIGIT×PD-L1」、「PD-L1×TIGIT」、「PD-L1-TIGIT」、及び「TIGIT-PD-L1」という用語は、TIGIT及びPD-L1の両方に特異的に結合する二重特異性抗体を指すために互換的に使用することができる。本明細書で使用される「単一特異性」という用語は、1つ以上の結合部位を有する抗原結合タンパク質(例えば、mAb)を示し、これのそれぞれは、同じ抗原の同じエピトープに結合する。
本明細書で使用される「価」という用語は、抗原結合タンパク質における特定数の結合部位の存在を示す。例えば、天然抗体または全長抗体は、2つの結合部位を有し、二価である。そのようなものであるから、「三価」、「四価」、「五価」、及び「六価」という用語は、抗原結合タンパク質における、それぞれ、2つの結合部位、3つの結合部位、4つの結合部位、5つの結合部位、及び6つの結合部位の存在を示す。
「抗体エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列多様体Fc領域)に寄与する生物学的活性を指し、抗体アイソタイプに伴って変動する。抗体エフェクター機能の例としては、以下が挙げられる:C1q結合及び補体依存性細胞毒性;Fc受容体結合;抗体-依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC);貪食;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;ならびに、B細胞の活性化。「低減または最小化された」抗体エフェクター機能は、野生型または未修飾抗体から少なくとも50%(あるいは、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%)低減するものを意味する。抗体エフェクター機能の決定は、当業者により容易に決定可能及び測定可能である。好ましい実施形態では、補体結合、補体依存性細胞毒性、及び抗体依存性細胞毒性の抗体エフェクター機能が影響を受ける。一部の実施形態では、エフェクター機能は、グリコシル化を排除した定常領域の変異、例えば、「エフェクターのない変異」により排除される。一態様では、エフェクターレス変異は、CH2領域にN297AまたはDANA変異(D265A及び/またはN297A)を含む。Shields et al.,J.Biol.Chem.276(9):6591-6604(2001)。あるいは、エフェクター機能の低減または排除をもたらす追加の変異は、K322A及びL234A/L235A(LALA)を含む。あるいは、エフェクター機能は、グリコシル化しない宿主細胞(例えば、E.coli)またはエフェクター機能を促進することに効果がないもしくは効果が弱いグリコシル化パターンの変化をもたらす宿主細胞における発現などの産生技術により低減させるか、または排除することができる(例えば、Shinkawa et al.,J.Biol.Chem.278(5):3466-3473(2003))。
「抗体依存性細胞媒介性細胞毒性」またはADCCは、特定の細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)に存在するFc受容体(FcR)上に結合している分泌型Igが、これらの細胞毒性エフェクター細胞が抗原担持標的細胞に特異的に結合し、続いて、細胞毒素で標的細胞を死滅させることを可能にする細胞毒性の形態を指す。抗体は、細胞毒性細胞を「作動状態にし」、この機序による標的細胞の死滅に必要である。ADCCを媒介する初代細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFc発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-92(1991)の464ページの表3にまとめられる。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されているようなin vitro ADCCアッセイを実施することができる。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。代替的または追加的に、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されるような動物モデルにおいて、in vivoで評価することができる。
本明細書における「Fc領域」という用語は、天然配列Fc領域及び多様体Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化する可能性があるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226位のアミノ酸残基またはPro230からそのカルボキシル末端に伸びると定義される。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムによる残基447)は、例えば、抗体の産生もしくは精製中に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組み換え操作することにより除去することができる。従って、インタクト抗体の組成物は、全てK447残基を有する抗体集団、K447残基が除去されない抗体集団、ならびに、K447残基の有る及びK447残基のない抗体の混合物を有する抗体集団を含み得る。本明細書に記載の抗体に使用されるネイティブ配列のFc領域は、ヒトIgG1、IgG2(IgG2A、IgG2B)、IgG3、及びIgG4を含む。
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を表す。好ましいFcRは、天然配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)と結合し、対立遺伝子多様体及びこれらの受容体の選択的スプライシング型を含む、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含むものであり、FcγRII受容体は、主にその細胞質ドメインが異なる類似のアミノ酸配列を有するFcγRIIAと(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「抑制型受容体」)を含む。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含有する。抑制型受容体FcγRIIBは、細胞質ドメインに、免疫受容体チロシンベースの抑制モチーフ(ITIM)を含有する(M.Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997)を参照のこと)。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-92 (1991);Capel et al.,Immunomethods 4:25-34(1994);及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330-41(1995)に概説される。将来的に同定されるFcRを含む他のFcRは、本明細書では、「FcR」という用語に包含される。
「Fc受容体」または「FcR」という用語は、胎児への母系IgGの移動に関与する新生児受容体FcRnも含む。Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994)。FcRnへの結合を測定する方法は、既知である(例えば、Ghetie and Ward,Immunol.Today 18:(12):592-8(1997);Ghetie et al.,Nature Biotechnology 15(7):637-40(1997);Hinton et al.,J.Biol.Chem.279(8):6213-6(2004);WO2004/92219(Hinton et al.)を参照のこと))。in vivoでのFcRnへの結合及びヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清半減期は、例えば、トランスジェニックマウスまたはヒトFcRnを発現するトランスフェクトされたヒト細胞株、または多様体Fc領域を有するポリペプチドが投与される霊長類において、アッセイすることができる。WO2004/42072(Presta)は、FcRへの結合を改善または低減させた抗体多様体について記載する。例えば、Shields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)も参照のこと。
「補体依存性細胞毒性」または「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。古典補体経路の活性化は、(適切なサブクラスの)補体系の最初の成分(C1q)が、同族抗原に結合している抗体に結合することにより開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載されるようなCDCアッセイを実施することができる。Fc領域アミノ酸配列が変更され、C1q結合能力が増加または減少した抗体多様体は、米国特許第6,194,551B1号及びWO99/51642に記載される。それらの特許公開の内容は、具体的には、参照により本明細書に組み込まれる。Idusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)も参照のこと。
「結合親和性」は一般に、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の合計の強さを指す。別途指示のない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合ペアのメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。結合親和性は、KD、Koff、Kon、またはKaで示すことができる。本明細書で使用される「Koff」という用語は、s-1の単位で表される、速度論的選択セットアップから決定されるような抗体/抗原複合体からの抗体(または抗原結合ドメイン)の解離のオフ速度定数を指すことが意図される。本明細書で使用される「Kon」という用語は、M-1s-1の単位で表される、抗体/抗原複合体を形成する、抗体(または抗原結合ドメイン)の抗原への会合のオン速度定数を指すことが意図される。平衡解離定数「KD」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離定数を指し、平衡状態で抗体分子の溶液中に存在する抗体結合ドメインの全ての半分を占めるのに必要とされる抗原の濃度について記載し、Mの単位で表されるKoff/Konに相当する。KDの測定は、全ての結合剤が溶液中にあることを前提とする。例えば、酵母発現系において、抗体が細胞壁に連結されている場合では、対応する平衡速度定数は、EC50として表され、これは、KDの良好な近似を与える。親和定数Kaは、M-1の単位で表される解離定数KDの逆数である。
解離定数(KD)は、抗原に対する抗体の親和性を示す指標として使用される。例えば、簡単な分析は、様々なマーカー剤でマーカーされた抗体を使用したスキャッチャード法、及び、BiacoreX(Amersham Biosciences製)を使用することにより可能であり、これは、市販の測定キット、またはキットに付属するユーザーズマニュアル及び実験操作方法に従う類似のキットである。これらの方法を使用して、導出することができるKD値は、M(1リットル当たりのモル)の単位で表される。標的に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、例えば、≦10-5M、≦10-6M、≦10-7M、≦10-8M、≦10-9M、≦10-10M、≦10-11M、または≦10-12Mの解離定数(KD)を有し得る。
抗体または抗原結合ドメインの結合特異性は、当該技術分野で既知の方法により実験的に決定することができる。そのような方法は、ウェスタンブロット、ELISA試験、RIA試験、ECL試験、IRMA試験、EIA試験、BIAcore試験、及びペプチドスキャンを含むが、これらに限定されない。
半最大阻害濃度(IC50)は、特定の生物学的または生化学的機能の抑制における物質(例えば、抗体)の有効性の尺度である。それは、所望の生物学的プロセス(例えば、PD-L1及びB7-1間の結合、またはプロセスの構成要素、すなわち、酵素、細胞、細胞受容体、または微生物)を半分阻害するために、特定の薬物または他の物質(抗体などの阻害剤)が、どの程度必要とされるかを示す。値は通常、モル濃度として表される。IC50は、アゴニスト薬物または他の物質(例えば、抗体)のEC50に相当する。EC50は、in vivoで最大効果の50%を得るのに必要な血漿濃度も表す。本明細書で使用される場合、「IC50」は、in vitroで抗原生物活性(例えば、PD-L1生物活性)の50%を中和するのに必要な抗体(例えば、抗PD-L1 mAb)の有効濃度を示すために使用される。IC50またはEC50は、FACS分析(競合結合アッセイ)、細胞ベースのサイトカイン放出アッセイ、または増幅発光近接均一アッセイ(AlphaLISA)によるリガンド結合の抑制などのバイオアッセイで測定することができる。
ペプチド、ポリペプチド、または抗体配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」及び「相同性」は、必要に応じて、配列同一性の一部として任意の保存的置換を考慮せずに、最大パーセント配列同一性を達成するために、配列をアラインし、ギャップを導入した後に、特定のペプチドまたはポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列のアミノ酸残基の百分率として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性の決定を目的としたアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMEGALIGN(商標)(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピューターソフトウェアを使用して、当業者の範囲内である種々の方法で達成することができる。当業者らは、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。
本明細書に記載の構築物、抗体、またはその抗原結合フラグメントをコードする「単離」核酸分子は、同定され、それが産生される環境と通常関連する少なくとも1つの汚染核酸分子から分離される核酸分子である。好ましくは、単離核酸は、産生環境に関連する全ての構成要素と関連がない。本明細書に記載のポリペプチド及び抗体をコードする単離核酸分子は、それが天然に見られる形態または設定以外の形態である。従って、単離核酸分子は、細胞中に天然に存在する、本明細書に記載のポリペプチド及び抗体をコードする核酸とは区別される。単離核酸は、通常核酸分子を含有する細胞に含有される核酸分子を含むが、核酸分子は、染色体外に、またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を増殖させることが可能な核酸分子を指す。用語は、自己複製核酸構造としてのベクター及びそれが導入されている宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。特定のベクターは、それらが作動可能に連結されている核酸の発現を導くことが可能である。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
本明細書で使用される「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞に移入または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外因性核酸でトランスフェクト、形質転換、または形質導入されているものである。細胞は、初代対象細胞及びその子孫を含む。
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は、互換的に使用され、そのような細胞の子孫を含む、外因性核酸が導入されている細胞を指す。宿主細胞は、継代数に関係なく、初代形質転換細胞及びそれに由来する子孫を含む「形質転換体」及び「形質転換細胞」を含む。子孫は、親細胞に対する核酸含有量が完全に同一である可能性がないが、変異を含有し得る。最初の形質転換細胞において、スクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物活性を有する変異型子孫が、本明細書に含まれる。
「アジュバント設定」は、個体ががんの病歴を有しており、一般に、(必ずしもではないが)限定されないが、手術(例えば、手術切除)、放射線療法、及び化学療法を含む治療に応答している臨床設定を指す。しかし、がんの病歴のために、これらの個体は、疾患を発症するリスクがあると考えられる。「アジュバント設定」における処置または投与は、後続の処置様式を指す。(例えば、アジュバント設定の個体が「高リスク」または「低リスク」と考えられる時の)リスクの程度は、いくつかの要因、ほとんどの場合、最初に処置された時の疾患の程度、に依存する。
「ネオアジュバント設定」は、1次/根治治療前の、方法が実施される臨床設定を指す。
「医薬組成物」の「医薬製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、且つ、製剤が投与される対象に対して容認できないほど毒性である追加の構成要素を含有しない調製物を指す。そのような製剤は、滅菌である。「滅菌」製剤は、無菌であるか、または全ての生きている微生物及びその胞子を含まない。
本明細書に記載される本発明の実施形態は、「からなる」及び/または「本質的にからなる」実施形態を含むことが理解される。
本明細書の「約」値またはパラメーターのへの言及は、その値またはパラメーター自体に向けられる変形形態を含む(且つ記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。
本明細書で使用される場合、値またはパラメーター「でない」への言及は一般に、値またはパラメーター「以外」を意味及び記載する。例えば、方法がX型のがんを処置するために使用されないことは、方法がX型以外のがんを処置するために使用されることを意味する。
本明細書で使用される「約X-Y」という用語は、「約X~約Y」と同じ意味を有する。
II.抗TIGIT構築物
抗TIGITモノクローナル抗体
本明細書に記載の単離抗TIGIT構築物は、TIGIT(または「抗TIGIT mAb」)を特異的に認識または結合するモノクローナル抗体(mAb)部分を含む。本発明の一部の実施形態では、単離抗TIGIT構築物は、全長IgGである。
TIGIT
より大きなPVRネクチンファミリーの分子と構造で同様に、TIGITタンパク質は、細胞外IgVドメイン、1型膜貫通領域、ならびにITIM及び免疫グロブリンテールチロシン(ITT)様モチーフを含有する細胞質尾部を含有する。CD155を介したTIGITの関与は、Fyn及びLckを介したTIGITのリン酸化、ならびに、細胞質ゾルアダプターGrb2を介したSHIP1の動員を誘導する。SHIP1をTIGIT尾部に動員すると、PI3K及びMAPK経路を介したシグナル伝達が遮断され、NK細胞の抑制がもたらされる。さらに、リン酸化時に、TIGITのITT様モチーフが、β-アレスチン2に結合し、SHIP1を動員して、NF-κBシグナル伝達を制限する。ヒトTIGITの例示的なアミノ酸配列は、Genbankアクセッション番号NP_776160.2で開示される。
本発明の実施形態によれば、ヒトTIGIT配列は、Genbankアクセッション番号NP_776160.2のヒトTIGITと、アミノ酸配列中で少なくとも90%同一であり、他の種(例えば、マウス)のTIGITアミノ酸配列と比較した時、アミノ酸配列をヒトであると同定するアミノ酸残基を含有する。一部の実施形態では、ヒトTIGITは、Genbankアクセッション番号NP_776160.2のTIGITと、アミノ酸配列において少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%同一であり得る。一部の実施形態では、ヒトTIGIT配列は、Genbankアクセッション番号NP_776160.2のTIGITとは、10以下のアミノ酸の差異を示すであろう。一部の実施形態では、ヒトTIGITは、Genbankアクセッション番号NP_776160.2のTIGITとは、5、4、3、2、または1つ以下のアミノ酸の差異を示し得る。パーセント同一性は、本明細書に記載されように、決定することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗TIGIT mAbは、Genbankアクセッション番号NP_776160.2のTIGITと100%のアミノ酸配列同一性で、TIGITポリペプチドに特異的に結合する。一部の実施形態では、本出願の抗TIGIT mAbは、配列番号122のアミノ酸配列を含むTIGITポリペプチドに特異的に結合する。
一部の実施形態では、本出願の抗TIGIT mAbは、ヒト以外の種由来のTIGIT、またはヒトTIGIT(例えば、ヒトTIGITホモログ)と構造的に関連する他のタンパク質と交差反応し得る。一部の実施形態では、本出願の抗TIGIT mAbは、ヒトTIGITに完全に特異的であり、種または他のタイプの交差反応性を示さない。
抗体親和性
抗体または抗原結合ドメインの結合特異性は、当該技術分野で既知の方法により実験的に決定することができる。そのような方法は、ウェスタンブロット、ELISA試験、RIA試験、ECL試験、IRMA試験、EIA試験、BIAcore試験、及びペプチドスキャンを含むが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、抗TIGIT mAb及びTIGIT間の結合のKDは、約10-5M~約10-6M、約10-6M~約10-7M、約10-7M~約10-8M、約10-8M~約10-9M、約10-9M~約10-10M、約10-10M~約10-11M、約10-11M~約10-12M、約10-5M~約10-12M、約10-6M~約10-12M、約10-7M~約10-12M、約10-8M~約10-12M、約10-9M~約10-12M、約10-10M~約10-12M、約10-5M~約10-11M、約10-7M~約10-11M、約10-8M~約10-11M、約10-9M~約10-11M、約10-5M~約10-10M、約10-7M~約10-10M、約10-8M~約10-10M、約10-5M~約10-9M、約10-7M~約10-9M、約10-5M~約10-8M、または約10-6M~約10-8Mである。
一部の実施形態では、抗TIGIT mAb及びTIGIT間の結合のKonは、約102M-1s-1~約104M-1s-1、約104M-1s-1~約106M-1s-1、約106M-1s-1~約107M-1s-1、約102M-1s-1~約107M-1s-1、約103M-1s-1~約107M-1s-1、約104M-1s-1~約107M-1s-1、約105M-1s-1~約107M-1s-1、約103M-1s-1~約106M-1s-1、または約104M-1s-1~約106M-1s-1である。
一部の実施形態では、抗TIGIT mAb及びTIGIT間の結合のKoffは、約1s-1~約10-2s-1、約10-2s-1~約10-4s-1、約10-4s-1~約10-5s-1、約10-5s-1~約10-6s-1、約1s-1~約10-6s-1、約10-2s-1~約10-6s-1、約10-3s-1~約10-6s-1、約10-4s-1~約10-6s-1、約10-2s-1~約10-5s-1、または約10-3s-1~約10-5s-1である。
一部の実施形態では、抗TIGIT mAbのIC50は、抗TIGIT mAbが、ヒトTIGIT過剰発現CHO-K1細胞におけるCD155(PVRとしても知られている;0.5μg/ml)の結合を競合的に遮断するFACS研究において、10nM未満である。一部の実施形態では、抗TIGIT mAbのIC50は、FACS分析(競合結合アッセイ)または細胞ベースのサイトカイン放出アッセイによるリガンド結合の阻害において500nM未満である。一部の実施形態では、抗TIGIT mAbのIC50は、1nM未満、約1nM~約10nM、約10nM~約50nM、約50nM~約100nM、約100nM~約200nM、約200nM~約300nM、約300nM~約400nM、または約400nM~約500nMである。
キメラまたはヒト化抗体
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗TIGIT抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)に記載される。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、ラマなどのラクダ科種に由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のものから変化している「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合フラグメントを含む。
一部の実施形態では、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。通常は、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減させるためにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来する1つ以上の可変ドメインを含み、FR(またはその一部)がヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部も含むであろう。一部の実施形態では、ヒト化抗体の一部のFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)で概説され、さらに、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号;Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(SDR(a-CDR)移植について記載する);Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「リサーフェシング」について記載する);Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」について記載する);ならびに、Osbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフリングとほとんど同じである「ガイド選択」について記載する)に記載される。
ヒト化に使用することができるヒトフレームワーク領域は、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照のこと);「軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照のこと);ヒト成熟(体細胞変異している)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照のこと);ならびに、スクリーニングFRライブラリーに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照のこと)を含むが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、mAbは、抗原に対するドメインの本来の親和性を低下させないが、異種種に関するその免疫原性を低下させる、ヒト化などの修飾を受ける。例えば、抗体の重鎖及び軽鎖可変ドメイン(VH及びVL)のアミノ酸残基を決定することができ、例えば、フレームワーク領域中の、マウスアミノ酸のうちの1つ以上は、ポリペプチドが代表的な特徴を失わずに、ヒトコンセンサス配列で見られるようなヒト対応物で置き換えられ、すなわち、ヒト化は、得られるポリペプチドの抗原結合能に著しい影響を及ぼさない。マウスモノクローナル抗体のヒト化は、2つの鎖である軽鎖及び重鎖への限られた量のアミノ酸の導入及び変異導入、ならびに、両方の鎖の組み立ての保存を要求する。
ヒト抗体
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗TIGIT抗体、特に、mAbは、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で既知の種々の技術を使用して生成することができる。ヒト抗体は一般に、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に記載される。完全にヒト単一ドメイン抗体を産生することが可能なトランスジェニックマウスまたはラットは、当該技術分野で既知である。例えば、US20090307787A1、米国特許第8,754,287号、US20150289489A1、US20100122358A1、及びWO2004049794を参照のこと。
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答して、インタクトヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクト抗体を産生するように改変されているトランスジェニック動物に免疫原を投与することにより調製することができる。そのような動物は通常、内因性免疫グロブリン遺伝子座を交換するか、または染色体外に存在するか、もしくは動物の染色体にランダムに組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有する。そのようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は一般に、不活化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を取得するための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照のこと。例えば、XENOMOUSE(商標)技術について記載する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号;HuMab(登録商標)技術について記載する米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術について記載する米国特許第7,041,870号、ならびに、VelociMouse(登録商標)技術について記載する米国特許出願公開第US2007/0061900号も参照のこと。そのような動物により生成されたインタクト抗体由来のヒト可変領域はさらに、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることにより改変することができる。
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法により作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照のこと)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体はまた、Li et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)に記載される。さらなる方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生について記載する)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマについて記載する)が挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)に記載される。
ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することにより生成することもできる。次に、そのような可変ドメイン配列を、所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技術は、以下に記載される。
ライブラリー由来の抗体
本出願の抗体は、所望の活性(複数可)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより単離することができる。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特性を有する抗体についてそのようなライブラリーをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野で既知である。そのような方法は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に概説され、さらに、例えば、the McCafferty et al.,Nature 348:552-554;Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Marks and Bradbury,in Methods in Molecular Biology 248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)に記載される。単一ドメイン抗体ライブラリーを構築するための方法が記載されており、例えば、米国特許第7371849号を参照のこと。
特定のファージディスプレイ法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーは、別々に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でクローニングされ、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433-455(1994)に記載されるように、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができるファージライブラリーにおいてランダムに再結合される。ファージは通常、一本鎖Fv(scFv)フラグメントまたはFabフラグメントのいずれかとしての抗体フラグメントを提示する。免疫源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なく、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、ナイーブレパートリーは、Griffiths et al.,EMBO J,12:725-734(1993)に記載されるように、任意の免疫化なしに、広範囲の非自己抗原、さらに自己抗原に対する抗体の単一源を提供するために、(例えば、ヒトから)クローニングすることができる。最終的に、ナイーブライブラリーは、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381-388(1992)により記載されるように、高度な可変CDR3領域をコードするために、且つin vitroでの再配列を達成するために、幹細胞から再編成されていないV遺伝子セグメントをクローニングすること、及びランダム配列を含有するPCRプライマーを使用することにより、合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリーについて記載する特許公開は、例えば、米国特許第5,750,373号、及び米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号を含む。
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体または抗体フラグメントは、本明細書のヒト抗体またはヒト抗体フラグメントと考えられる。
生物活性
本明細書に記載の抗TIGIT mAbの生物活性は、その半最大阻害濃度(IC50)を測定することにより決定することができ、これは、特定の生物学的または生化学的機能の抑制(例えば、TIGIT及びそのリガンドCD155(PVRとしても知られる)間の結合の阻害))における抗体の有効性の尺度である。例えば、本明細書では、IC50は、in vitroでTIGIT生物活性の50%を中和するために必要な抗TIGIT mAbの有効濃度を示すために使用することができる。IC50は、アゴニスト薬物または他の物質(例えば、抗体)のEC50に相当する。EC50は、in vivoで最大効果の50%を得るのに必要な血漿濃度も表す。IC50またはEC50は、当該技術分野で既知のアッセイ、例えば、FACS分析(競合結合アッセイ)、細胞ベースのサイトカイン放出アッセイ、またはルシフェラーゼレポーターアッセイによるリガンド結合の阻害などのバイオアッセイ、で測定することができる。
例えば、リガンド結合の遮断は、フローサイトメトリーを使用して研究することができる。ヒトTIGITを発現するCHO細胞は、接着培養フラスコから解離させ、試験のために種々の濃度の抗TIGIT mAb及び一定濃度の標識CD155タンパク質(例えば、ビオチン標識hCD155/Fcタンパク質)と混合させることができる。アテゾリズマブなどの抗TIGIT抗体陽性対照を用いることができる。混合物を室温で30分間平衡化し、FACS緩衝液(1%のBSAを含有するPBS)で3回洗浄する。次に、一定濃度の標識CD155タンパク質を特異的に認識する抗体(例えば、PE/Cy5ストレプトアビジン2次抗体)を加え、室温で15分間インキュベートする。細胞をFACS緩衝液で洗浄し、フローサイトメトリーで分析する。データは、IC50を計算するために非線形回帰を使用するPrism(GraphPad Software、カリフォルニア州サンディエゴ)で分析することができる。競合アッセイの結果は、標識CD155及びTIGIT間の相互作用の阻害における抗TIGIT mAbの能力を示すであろう。
抗TIGIT mAbの生物活性は、サイトカイン放出のTIGITベースの遮断アッセイにより試験することもできる。樹状細胞では、CD155のTIGITライゲーションは、IL-12p40の産生を抑制し、IL10産生を誘導し、それにより、T細胞増殖及び応答するT細胞からのIFN-γ産生を抑制する免疫寛容を生じる樹状細胞を生成する(Yu et al.、2009)。TIGITはさらに、エフェクターT細胞で作用して、タイプ1またはタイプ17の優勢からIL-10の優勢の免疫応答への移行を誘導する。TIGIT欠損マウスは、抗原での免疫化後のIL-10産生のほぼ完全な喪失を同時に示しながら、IFN-γ+である細胞及びIL-17+CD-4+T細胞の頻度の増加を示す(Joller et al.、2011)。従って、抗TIGIT抗体によるTIGIT経路の遮断は、T細胞増殖、IFN-γ放出、またはIL10分泌を監視する様々なバイオアッセイを使用して研究することができる。
一部の実施形態では、本出願の抗TIGIT抗体、特に、抗TIGIT mAbは、CD155リガンドにより伝達されるシグナルを遮断または拮抗する。一部の実施形態では、抗TIGIT mAbは、TIGITがCD155と相互作用するのを阻害するように、TIGIT上のエピトープに結合し得る。一部の実施形態では、抗TIGIT mAbは、抗体結合部位対TIGITリガンド結合部位の比が1:1を超え、且つ抗体濃度が10-8Mを超える条件下で、TIGITのCD155への結合を少なくとも約5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%、99%または99.9%のいずれか、低減させ得る。
一部の実施形態では、配列番号27~39のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖CDR1または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体;配列番号53~65のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重CDR3または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体を有する重鎖可変ドメイン(VH);及び配列番号66~78のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体;配列番号79~91のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体;及び配列番号92~104のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗TIGIT mAbが提供される。一部の実施形態では、抗TIGIT mAb及びTIGIT間の結合のKDは、約10-5M~約10-12M(例えば、約10-7M~約10-12M、または約10-8M~約10-12M)である。一部の実施形態では、抗TIGIT抗体は、齧歯動物、キメラ、ヒト、部分的にヒト化、または完全にヒト化である。
一部の実施形態では、抗TIGIT mAbは、配列番号53~65のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVH CDR3及び配列番号92~104のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVL CDR3を含み、アミノ酸置換は、VH及びVLドメインのCDR1及び/またはCDR2に存在する。
従って、一部の実施形態では、配列番号27~39のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR1または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体;配列番号40~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR2または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体;及び配列番号53~65のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3を有する重鎖可変ドメイン(VH);ならびに配列番号66~78のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR1または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体;配列番号79~91のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR2または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体;及び配列番号92~104のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗TIGIT mAbが提供される。一部の実施形態では、抗TIGIT mAb及びTIGIT間の結合のKDは、約10-5M~約10-12M(例えば、約10-7M~約10-12M、もしくは約10-8M~約10-12M)、またはそれ以下である。一部の実施形態では、抗TIGIT mAbは、齧歯動物、キメラ、ヒト、部分的にヒト化、または完全にヒト化である。
一部の実施形態では、配列番号27~39のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR1;配列番号40~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR2;及び配列番号53~65のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3を有する重鎖可変ドメイン(VH);ならびに、配列番号66~78のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR1;配列番号79~91のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR2;及び、配列番号92~104のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗TIGIT mAbが提供される。一部の実施形態では、抗TIGIT mAb及びTIGIT間の結合のKDは、約10-5M~約10-12M(例えば、約10-7M~約10-12M、または約10-8M~約10-12M)である。一部の実施形態では、抗TIGIT mAbは、齧歯動物、キメラ、ヒト、部分的にヒト化、または完全にヒト化である。
一部の実施形態では、本出願の抗体または抗原結合フラグメントは、表17及び18で提供されるCDRの配列を含む。
CDRは、多数のヒト化抗TIGIT抗体を生成するために、種々のペアワイズ組み合わせで組み合わせることができる。ヒト化置換は、当業者らには明らかであろう。例えば、潜在的に有用なヒト化置換は、当該技術分野で既知の方法を使用して(また本明細書に記載される)、天然に存在するVHまたはVLのFRの配列を、1つ以上の密接に関連するヒトVHまたはVLの対応するFR配列と比較することにより決定し、その後に、該VHまたはVLに、そのような潜在的に有用なヒト化置換のうちの1つ以上を導入することができる。ヒト化重鎖及び軽鎖はペアになっている。得られるヒト化抗体は、TIGIT結合親和性、安定性、発現の容易さ及びレベル、及び/または他の望ましい特性について試験することができる。本明細書に記載の抗TIGIT mAbは、部分的または完全にヒト化することができる。好ましくは、得られるヒト化抗体、例えば、ヒト化mAb、またはその抗原結合フラグメントは、本明細書に記載のKD、Kon、KoffでTIGITに結合する。
一部の実施形態では、配列番号1~13のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVHドメイン、または配列番号1~13のいずれか1つと少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%のいずれか)の配列同一性を有するその多様体;及び配列番号14~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVLドメイン、または配列番号14~26のいずれか1つと少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%のいずれか)の配列同一性を有するその多様体を含む抗TIGITヒト化mAbまたはその抗原結合フラグメントが提供される。一部の実施形態では、配列番号1~13のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVHドメインまたはVHドメインに最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体;及び配列番号14~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVHドメインまたはVLドメインに最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体を含む抗TIGIT mAbが提供される。一部の実施形態では、抗TIGIT mAbまたはその抗原結合フラグメントは、多様体がVHのCDR1及び/またはCDR2及び/またはCDR3などのCDRにアミノ酸置換を含む、配列番号1~13のいずれか1つのアミノ酸配列を有するVHドメインの多様体;ならびに、多様体がVLのいずれか1つのCDR1及び/またはCDR2及び/またはCDR3などのCDRにアミノ酸置換を含む、配列番号14~26のいずれか1つのアミノ酸配列を有するVLドメインの多様体を含む。一部の実施形態では、抗TIGIT mAbまたはその抗原結合フラグメントは、多様体がVHのいずれか1つのFR1及び/またはFR2及び/またはFR3及び/またはFR4などのFRにアミノ酸置換を含む、配列番号1~13のいずれか1つのアミノ酸配列を有するVHドメインの多様体;ならびに、多様体が配列番号14~26のいずれか1つのFR1及び/またはFR2及び/またはFR3及び/またはFR4などのFRにアミノ酸置換を含む、配列番号14~26のいずれか1つのアミノ酸配列を有するVHドメインの多様体を含む。
一部の実施形態では、mAb(以下、「競合する抗TIGIT抗体もしくは競合する抗TIGIT mAb」と呼ばれる)などの抗TIGIT抗体、または本明細書に記載の抗TIGIT mAbのうちのいずれか1つと競合的にTIGITに特異的に結合するその抗原結合フラグメントが提供される。一部の実施形態では、競合結合は、ELISAアッセイを使用して決定することができる。例えば、一部の実施形態では、それぞれ、配列番号1~13のいずれか1つのVHアミノ酸配列及び配列番号14~26のいずれか1つのVLアミノ酸配列を含む抗TIGIT mAbと競合的に、TIGITに特異的に結合する抗TIGIT mAbが提供される。別の例として、一部の実施形態では、配列番号27~39のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR1;配列番号40~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR2;及び、配列番号53~65のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3を有する重鎖可変ドメイン(VH);ならびに、配列番号66~78のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR1;配列番号79~91のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR2;及び、配列番号92~104のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗TIGIT mAbと競合的に、TIGITに特異的に結合する抗TIGIT mAbが提供される。別の例として、一部の実施形態では、表17及び18に記載される任意の抗TIGIT mAbと競合的に、TIGITに特異的に結合する抗TIGIT mAbが提供される。一部の実施形態では、競合する抗TIGITmAb及びTIGIT間の結合のKDは、約10-5M~約10-12M(例えば、約10-7M~約10-12M、または約10-8M~約10-12M)、またはそれ以下である。一部の実施形態では、競合する抗TIGIT mAbは、齧歯動物、キメラ、ヒト、部分的にヒト化、または完全にヒト化である。
抗TIGIT mAbを含む構築物
抗TIGIT mAbを含む抗TIGIT構築物は、任意の可能なフォーマットとすることができる。
一部の実施形態では、抗TIGIT mAbを含む抗TIGIT構築物はさらに、1つ以上の抗体部分などの追加のポリペプチド配列を含み得る。そのような追加のポリペプチド配列は、抗TIGIT mAbの(生物学的)特性を変化させるかまたは他の点で影響させ得るかまたは得ず、本明細書に記載の抗TIGIT mAbに、さらなる機能性を加え得るかまたは得ない。一部の実施形態では、追加のポリペプチド配列は、本出願の抗TIGIT mAbに1つ以上の所望の特性または機能を付与する。一部の実施形態では、抗TIGIT構築物は、本明細書に記載の1つ以上の抗TIGIT結合部分を含む細胞外抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)である。
一部の実施形態では、追加のポリペプチド配列は、第2の抗原を特異的に認識する第2の抗体部分(例えば、sdAb、scFv)であり得る。一部の実施形態では、第2の抗原は、TIGITではない。一部の実施形態では、第2の抗体部分は、本明細書に記載の抗TIGIT mAbと同じTIGIT上のエピトープを特異的に認識する。一部の実施形態では、第2の抗体部分は、本明細書に記載の抗TIGIT mAbと、TIGIT上の異なるエピトープを特異的に認識する。
一部の実施形態では、追加のポリペプチド配列は、本明細書に記載の抗TIGIT mAb自体と比較して、分子の安定性、溶解度、もしくは吸収を増加させ、免疫原性もしくは毒性を低減させ、望ましくない副作用を排除もしくは減弱し、及び/または他の有利な特性を本発明の抗TIGIT構築物に与え、及び/またはそれの望ましくない特性を低減させ得る。
全長IgG
一部の実施形態では、抗TIGIT mAbは、全長IgGである。一部の実施形態では、抗TIGIT mAbは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のいずれかなどのIgGの定常領域を含む。一部の実施形態では、定常領域は、ヒト定常領域である。一部の実施形態では、定常領域は、ヒトIgG1定常領域である。
従って、一部の実施形態では、可変領域(VH)が、配列番号27~39のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR1または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体;配列番号40~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR2または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体;及び配列番号53~65のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体を含み、VHが、免疫グロブリンの重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2、及びCH3)に融合している重鎖、ならびに、可変領域(VL)が、配列番号66~78のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR1または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体;配列番号79~91のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR2または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体;及び配列番号92~104のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体を含み、VLが、免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)に融合している軽鎖を含む抗TIGIT全長IgGが提供される。一部の実施形態では、可変領域(VH)が、配列番号27~39のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR1を含む;配列番号40~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR2;及び配列番号53~65のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体を含み、VHが、免疫グロブリンの重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2、及びCH3)に融合している重鎖、ならびに、可変領域(VL)が、配列番号66~78のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR1;配列番号79~91のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR2;及び、配列番号92~104のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体を含み、VLが、免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)に融合している軽鎖を含む抗TIGIT全長IgGが提供される。一部の実施形態では、定常領域は、ヒトIgG1定常領域である。一部の実施形態では、全長抗TIGIT IgG及びTIGIT間の結合のKDは、約10-5M~約10-12M(例えば、約10-7M~約10-12M、もしくは約10-8M~約10-12M)、またはそれ以下である。一部の実施形態では、全長抗TIGIT IgGは、齧歯動物、キメラ、ヒト、部分的にヒト化、または完全にヒト化である。
一部の実施形態では、配列番号1~13のいずれか1つの重鎖アミノ酸配列、及び配列番号14~26のいずれか1つの軽鎖アミノ酸配列を含む全長抗TIGIT mAbが提供される。
一部の実施形態では、本明細書に記載の全長抗TIGIT IgGのいずれか1つと競合的に、TIGITに特異的に結合する全長抗TIGIT IgG(以下「競合する抗TIGIT IgG」と呼ばれる)も提供される。競合結合は、ELISAアッセイを使用して決定することができる。例えば、一部の実施形態では、配列番号1~13のいずれか1つの重鎖アミノ酸配列及び配列番号14~26のいずれか1つの軽鎖アミノ酸配列を含む抗TIGIT IgGと競合的に、TIGITに特異的に結合する抗TIGIT IgGが提供される。別の例として、一部の実施形態では、可変領域(VH)が、配列番号27~39のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR1;配列番号40~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR2;及び配列番号53~65のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖;ならびに、可変領域(VL)が、配列番号66~78のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR1;配列番号79~91のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR2;及び、配列番号92~104のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖を含む抗TIGIT IgGと競合的にTIGITと特異的に結合する抗TIGIT IgGが提供される。一部の実施形態では、競合する抗TIGIT IgG及びTIGIT間の結合のKDは、約10-5M~約10-12M(例えば、約10-7M~約10-12M、または約10-8M~約10-12M)またはそれ以下である。一部の実施形態では、競合する抗TIGIT IgGは、齧歯動物、キメラ、ヒト、部分的にヒト化、または完全にヒト化である。
多価及び/または多特異性抗体
一部の実施形態では、抗TIGIT構築物は、1つ以上の他の抗体部分(例えば、別の抗原を特異的に認識する抗体部分)に融合している、本明細書に記載の抗TIGIT mAbを含む。1つ以上の他の抗体部分は、sdAb、全長抗体、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、一本鎖Fv(scFv)、scFv-scFv、ミニボディ、またはダイアボディなどの任意の抗体または抗体フラグメントのフォーマットのものであり得る。特定の抗体フラグメントの概説については、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)を参照のこと。scFvフラグメントの概説については、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag、ニューヨーク),pp.269-315(1994)を参照のこと;WO93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、in vivo半減期の増加を有するFab及びF(ab’)2フラグメントの考察については、米国特許第5,869,046号を参照のこと。多重特異性抗体の概説については、Weidle et al.,Cancer Genomics Proteomics,10(1):1-18,2013;Geering and Fussenegger,Trends Biotechnol.,33(2):65-79,2015;Stamova et al.,Antibodies,1(2):172-198,2012を参照のこと。ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントである。例えば、EP404,097;WO1993/01161;Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003);及びHollinger et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)を参照のこと。トリアボディ及びテトラボディはまた、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)に記載される。抗体フラグメントは、本明細書に記載されるように、限定されないが、インタクト抗体のタンパク質分解消化、及び組み換え宿主細胞(例えば、E.coliまたはファージ)による産生を含む種々の技術により作製することができる。一部の実施形態では、1つ以上の他の抗体部分は、抗体を想起させる抗原結合ドメインを含む小さな操作タンパク質である抗体模倣物である(Geering and Fussenegger,Trends Biotechnol.,33(2):65-79,2015)。これらの分子は、既存のヒト足場タンパク質に由来し、単一のポリペプチドを含む。本明細書に記載の抗TIGIT構築物内に含まれ得る例示的な抗体模倣物は、N末端及びC末端キャップドメインに隣接する設計されたアンキリン反復タンパク質(DARPin;3~5完全合成アンキリン反復を含む)、結合活性多量体(アビマー、複数のAドメインを含む高親和性タンパク質、標的に対して低い親和性を有する各ドメイン)、またはアンチカリン(4つのアクセス可能なループを有するリポカリンの足場に基づいて、それぞれの配列がランダム化することができる)であり得るが、これらに限定されない。
多重特異性抗体を作製するための技術は、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組み換え共発現を含むが、これらに限定されない(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983))、WO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照のこと)、ならびに“ノブ-イン-ホール”工学(例えば、米国特許第5,731,168号を参照のこと)。多重特異性抗体は、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するための静電ステアリング効果を設計すること(WO2009/089004A1);2つ以上の抗体またはフラグメントを架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照のこと);二重特異性抗体を生成するためにロイシンジッパーを使用すること(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)を参照のこと);二重特異性抗体フラグメントを作製するための「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)を参照のこと);及び、一本鎖Fv(scFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照のこと);及び、例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60(1991)に記載されるように三重特異性抗体を調製すること;及び、タンデム単一ドメイン抗体を含むポリペプチドを作成すること(例えば、米国特許出願第20110028695号;及びConrath et al.J.Biol.Chem.,2001;276(10):7346-50を参照のこと)により作製することもできる。「タコ抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作抗体も本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照のこと)。
ペプチドリンカー
一部の実施形態では、抗TIGIT構築物内に2つ以上の抗体部分は、任意に、ペプチドリンカーで連結することができる。抗TIGIT構築物に使用されるペプチドリンカー(複数可)の長さ、柔軟性の程度、及び/または他の特性は、限定されないが、1つ以上の特定の抗原及びエピトープに対する親和性、特異性、または結合活性を含む特性に何らかの影響を与え得る。例えば、確実に、2つの隣接するドメインが互いに立体的に干渉させないために、より長いペプチドリンカーを選択することができる。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、隣接するドメインが互いに対して自由に移動できるように、柔軟な残基(例えば、グリシン及びセリン)を含む。例えば、グリシン-セリンダブレットは、好適なペプチドリンカーであり得る。
ペプチドリンカーは、任意の好適な長さであり得る。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、75、100アミノ酸長以上のいずれかである。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、約100、75、50、40、35、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5アミノ酸長以下のいずれかである。一部の実施形態では、ペプチドリンカーの長さは、約1アミノ酸~約10アミノ酸、約1アミノ酸~約20アミノ酸、約1アミノ酸~約30アミノ酸、約5アミノ酸~約15アミノ酸、約10アミノ酸~約25アミノ酸、約5アミノ酸~約30アミノ酸、約10アミノ酸~約30アミノ酸長、約30アミノ酸~約50アミノ酸、約50アミノ酸~約100アミノ酸、または約1アミノ酸~約100アミノ酸のいずれかである。
ペプチドリンカーは、天然に存在する配列、または天然に存在しない配列を有し得る。例えば、重鎖のみの抗体のヒンジ領域に由来する配列をリンカーとして使用することができる。例えば、WO1996/34103を参照のこと。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、変異型ヒトIgG1ヒンジ(EPKSSDKTHTSPPSP、配列番号121)である。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、柔軟なリンカーである。例示的なフレキシブルなリンカーとしては、グリシンポリマー(G)n
(配列番号123)、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)n
(配列番号124)、(GSGGS)n
(配列番号125)、(GGGS)n
(配列番号126)、及び(GGGGS)n
(配列番号127)を含み、nは、少なくとも1つの整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、ならびに当該技術分野で既知の他のフレキシブルなリンカーが挙げられる。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、GGGGSGGGSのアミノ酸配列(配列番号119)を含む。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号120のアミノ酸配列(GGGGSGGGGSGGGGS)を含む。
二重特異性抗体
一部の実施形態では、本出願の単離抗体または抗原結合フラグメントは、第2の抗体部分に融合している本明細書に記載の抗TIGIT IgGを含む二重特異性または多重特異性抗体であり、第2の抗体部分は、別の抗原、好ましくは、別の抑制性免疫チェックポイント分子に特異的に結合する。
一実施形態では、他の抗原は、CTLA-4であり、第2の抗体部分は、抗CTLA-4mAb、好ましくは、抗CTLA-4sdAbなどのCTLA-4に特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントを含む。TIGIT及びCTLA-4に対する二重特異性を含む単離抗体または抗原結合フラグメントは、以後、「抗TIGIT/CTLA-4抗体」、「抗TIGIT/CTLA-4構築物」、または「TIGIT×CTLA-4抗体」と呼ぶことができる。
一実施形態では、他の抗原は、PD-L1であり、第2の抗体部分は、抗PD-L1 mAb、好ましくは、抗PD-L1 sdAbなどのPD-L1に特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントを含む。TIGIT及びPD-L1に対する二重特異性を含む単離抗体または抗原結合フラグメントは、以後、「抗TIGIT/PD-L1抗体」、「抗TIGIT/PD-L1構築物」、または「TIGIT×PD-L1抗体」と呼ぶことができる。
一実施形態では、他の抗原は、TIM-3であり、第2の抗体部分は、TIM-3、例えば、抗TIM-3 mAb、好ましくは、抗TIM3 sdAb、に特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントを含む。TIGIT及びTIM-3に対する二重特異性を含む単離抗体または抗原結合フラグメントは、以後、「抗TIGIT/TIM-3抗体」、「抗TIGIT/TIM-3構築物」、または「TIGIT×TIM-3抗体」と呼ぶことができる。
一実施形態では、他の抗原は、LAG-3であり、第2の抗体部分は、LAG-3、例えば、抗LAG-3 mAb、好ましくは、抗LAG-3 sdAb、に特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントを含む。TIGIT及びLAG-3に対する二重特異性を有する単離抗体または抗原結合フラグメントは、以後、「抗TIGIT/LAG-3抗体」、「抗TIGIT/LAG-3構築物」、または「TIGIT×LAG-3抗体」と呼ぶことができる。
CTLA-4、PD-L1、TIM-3、及びLAG-3は、TIGITと同様に、抑制性免疫チェックポイント分子である。
一部の実施形態では、TIGITを特異的に認識する全長IgG、ならびに抗CTLA-4 sdAb、抗PD-L1 sdAb、抗TIM-3 sdAb、及び抗LAG-3 sdAbからなる群より選択されるsdAbを含む単離抗TIGIT構築物が提供され、抗TIGIT IgGが、可変領域(VH)が、配列番号27~39のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR1または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体;配列番号40~52のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR2または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体;及び配列番号53~65のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体を含み、VHが、免疫グロブリンの重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2、及びCH3)に融合している重鎖、ならびに、可変領域(VL)が、配列番号66~78のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR1または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体;配列番号79~91のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR2または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体;及び配列番号92~104のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3または最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体を含み、VLが、免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)に融合している軽鎖を含む。一部の実施形態では、sdAbのN末端は、TIGITを特異的に認識する全長抗体の重鎖の少なくとも1つのC末端に融合している。一部の実施形態では、sdAbのC末端は、TIGITを特異的に認識する全長抗体の重鎖の少なくとも1つのN末端に融合している。一部の実施形態では、sdAbのN末端は、TIGITを特異的に認識する全長抗体の軽鎖の少なくとも1つのC末端に融合している。一部の実施形態では、sdAbのC末端は、TIGITを特異的に認識する全長抗体の軽鎖の少なくとも1つのN末端に融合している。一部の実施形態では、TIGITを特異的に認識する全長IgG及び第2の結合部分sdAbは、任意に、ペプチドリンカーで連結されている。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号119~121のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗TIGIT mAb及びTIGIT間の結合のKDは、約10-5M~約10-12M(例えば、約10-7M~約10-12M、もしくは約10-8M~約10-12M)、またはそれ以下である。一部の実施形態では、抗TIGIT IgGは、齧歯動物、キメラ、ヒト、部分的にヒト化、または完全にヒト化である。
一部の実施形態では、TIGITを特異的に認識する全長IgG、ならびに抗CTLA-4 sdAb、抗PD-L1 sdAb、抗TIM-3 sdAb、及び抗LAG-3 sdAbからなる群より選択されるsdAbを含む抗TIGIT構築物が提供され、全長IgGは、VHが免疫グロブリンの重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2、及びCH3)に融合している、配列番号1~13のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVHドメイン、または配列番号1~13のいずれか1つと少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%のいずれか)の配列同一性を有するその多様体、ならびに、VLが免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)に融合している、配列番号14~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVLドメイン、または配列番号14~26のいずれか1つと少なくとも約80%(例えば、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%のいずれか)の配列同一性を有するその多様体を含む。一部の実施形態では、TIGITを特異的に認識する全長IgG、ならびに抗CTLA-4 sdAb、抗PD-L1 sdAb、抗TIM-3 sdAb、及び抗LAG-3 sdAbからなる群より選択されるsdAbを含む単離抗TIGIT構築物が提供され、全長IgGは、VHが免疫グロブリンの重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2、及びCH3)に融合している、配列番号1~13のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVHドメインまたはVHドメインに最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体、ならびに、VLが免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)に融合している、配列番号14~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVHドメインまたはVLドメインに最大約3つ(例えば、約1つ、2つ、もしくは3つのいずれか)のアミノ酸置換を含むその多様体を含む。
一部の実施形態では、VHが免疫グロブリンの重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2、及びCH3)に融合している、配列番号1~13のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVHドメインまたは配列番号1~13のいずれか1つのCDR1及び/またはCDR2及び/またはCDR3などのCDRにアミノ酸置換を含むその多様体、ならびに、VLが免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)に融合している、配列番号14~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVLドメインまたは配列番号14~26のいずれか1つのCDR1及び/またはCDR2及び/またはCDR3などのCDRにアミノ酸置換を含むその多様体を含む抗TIGIT全長IgG。一部の実施形態では、VHが免疫グロブリンの重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2、及びCH3)に融合している、配列番号1~13のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVHドメインまたは配列番号1~13のいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含むその多様体(アミノ酸置換は、配列番号1~13のいずれか1つのFR1及び/またはFR2及び/またはFR3及び/またはFR4などのFRにある)、ならびに、VLが免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)に融合している、配列番号14~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVLドメインまたは配列番号14~26のいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含むその多様体(アミノ酸置換は、配列番号14~26のいずれか1つのFR1及び/またはFR2及び/またはFR3及び/またはFR4などのFRにある)を含む抗TIGIT全長IgG。一部の実施形態では、VHが免疫グロブリンの重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2、及びCH3)に融合している、配列番号1~13のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVHドメインまたはCDR及びFRの両方にアミノ酸置換を含むその多様体、ならびに、VLが免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)に融合している、配列番号14~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVLドメインまたはCDR及びFRの両方にアミノ酸置換を含むその多様体を含む抗TIGIT全長IgG。一部の実施形態では、TIGITを特異的に認識する全長IgG、ならびに抗CTLA-4 sdAb、抗PD-L1 sdAb、抗TIM-3 sdAb、及び抗LAG-3 sdAbからなる群より選択されるsdAbを含む単離抗TIGIT構築物が提供され、全長IgGは、免疫グロブリンの重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2、及びCH3)に融合している、配列番号1~13のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVHドメイン、ならびに、免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)に融合している、配列番号14~26のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVHドメインを含む。一部の実施形態では、sdAbのN末端は、TIGITを特異的に認識する全長抗体の重鎖の少なくとも1つのC末端に融合している。一部の実施形態では、sdAbのC末端は、TIGITを特異的に認識する全長抗体の重鎖の少なくとも1つのN末端に融合している。一部の実施形態では、sdAbのN末端は、TIGITを特異的に認識する全長抗体の軽鎖の少なくとも1つのC末端に融合している。一部の実施形態では、sdAbのC末端は、TIGITを特異的に認識する全長抗体の軽鎖の少なくとも1つのN末端に融合している。一部の実施形態では、TIGITを特異的に認識する全長IgG及び第2の結合部分sdAbは、任意に、ペプチドリンカーで連結されている。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号119~121のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗TIGIT mAb及びTIGIT間の結合のKDは、約10-5M~約10-12M(例えば、約10-7M~約10-12M、または約10-8M~約10-12M)である。一部の実施形態では、抗TIGIT mAbは、齧歯動物、キメラ、ヒト、部分的にヒト化、または完全にヒト化である。
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗TIGIT/CTLA-4構築物、抗TIGIT/PD-L1構築物、抗TIGIT/TIM-3構築物、または抗TIGIT/LAG-3構築物のうちのいずれか1つと競合的に、TIGITに特異的に結合するTIGITを特異的に認識する全長IgGを含む抗TIGIT構築物(以下、「競合する抗TIGIT構築物」と呼ばれる)も提供される。
抗PD-L1抗体多様体
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列多様体が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい可能性がある。抗体のアミノ酸配列多様体は、抗体をコードする核酸配列に適切な修飾を導入することにより、またはペプチド合成により調製することができる。そのような修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失及び/または残基への挿入及び/または残基の置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終構築物に到達するように行うことができる。但し、最終構築物が所望の特徴、例えば、抗原結合、を有する。
a)置換、挿入、欠失、及び多様体
一部の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体多様体が提供される。置換変異導入のための目的の部位は、HVR及びFRを含む。保存的置換は、「好ましい置換」の見出しの下の表2に示される。より実質的な変化は、「例示的置換」の見出しの下の表2に、さらにアミノ酸側鎖クラスに関しては以下に記載のように、提示される。アミノ酸置換は、目的の抗体に導入することができ、生成物を、例えば、所望の活性、結合抗原の保持/改善、免疫原性の減少、またはADCCもしくはCDCの改善、についてスクリーニングすることができる。
アミノ酸は、一般的な側鎖の特性に従ってグループ化することができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性:Asp、Glu、
(4)塩基性:His、Lys、Arg、
(5)鎖の向きに影響を与える残基:Gly、Pro、
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴うであろう。
1つのタイプの置換多様体は、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)のうちの1つ以上の超可変領域残基を置換することを含む。一般に、さらなる研究のために選択される、得られる多様体(複数可)は、親抗体と比較して特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加、免疫原性の低下)に改変(例えば、改善)を有することになり、及び/または、親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持することになる。例示的な置換多様体は、親和性成熟抗体であり、これは、例えば、本明細書に記載されるようなファージディスプレイベースの親和性成熟技術を使用して、都合よく生成することができる。要約すると、1つ以上のHVR残基が変異し、多様体抗体は、ファージ上に提示され、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
改変(例えば、置換)は、例えば、抗体の親和性を改善するために、HVRで行うことができる。そのような改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を受けるコドンによりコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照のこと)、及び/または、SDR(a-CDR)で行うことができ、得られる多様性VHまたはVLは、結合親和性について試験される。2次ライブラリーの構築及び再選択による親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟の一部の実施形態では、多様性が、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド特異的変異導入)のいずれかにより、成熟について選択される可変遺伝子に導入される。次に、2次ライブラリーが作成される。次に、ライブラリーは、望ましい親和性を有する任意の抗体多様体を同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6残基)がランダム化されるHVR指向のアプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異導入またはモデリングを使用して、具体的に同定することができる。特に、CDR-H3及びCDR-L3は多くの場合、標的化される。
一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、そのような変更が抗体が抗原に結合する能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的変更(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)は、HVRで行うことができる。そのような変更は、HVRの「ホットスポット」またはCDRの外部に存在し得る。上で提供される多様体VHH配列の一部の実施形態では、各HVRは、変化していないか、または1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有する。
変異導入を対象とし得る抗体の残基または領域を同定するための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085に記載されているような「アラニンスキャニング変異導入」と呼ばれる。本方法では、抗原との抗体の相互作用が影響を受けるかどうかを判定するために、標的残基の残基または基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)が、同定され、中性または負荷電アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)で置換される。アミノ酸位置にさらなる置換を導入することができ、最初の置換に対する機能的感受性を示す。代替的または追加的に、抗体及び抗原間の接触点を同定するための抗原抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的化または排除することができる。多様体は、所望の特性を含有するかどうかを判定するためにスクリーニングすることができる。
アミノ酸配列挿入は、1残基から、100残基以上を含有するポリペプチドの長さの範囲がアミノ末端及び/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入多様体は、(例えば、ADEPTの場合)酵素、または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの抗体のN末端またはC末端への融合を含む。
b)グリコシル化多様体
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗TIGIT構築物は、構築物がグリコシル化される程度を増加または減少させるように変更される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作成または削除されるようにアミノ酸配列を変更することにより、都合よく達成することができる。
抗TIGIT構築物がFc領域を含む場合、それに結合している炭水化物を変更することができる。哺乳動物細胞により産生された天然抗体は通常、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN結合により一般に結合する分枝状二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照のこと。オリゴ糖は、種々の炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「ステム」においてGlcNAcに結合しているフコースを含み得る。一部の実施形態では、特定の改善された特性を有する抗体多様体を作製するために、本出願の抗PD-L1構築物におけるオリゴ糖の修飾を行うことができる。
一部の実施形態では、Fc領域に(直接的または間接的に)結合しているフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体多様体が提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されるように、MALDI-TOF質量分析法で測定されたAsn297に結合した全ての糖構造体(例えば、複合構造、ハイブリッド構造、及び高マンノース構造)の合計に対するAsn297の糖鎖内のフコースの平均量を計算することにより決定される。Asn297は、Fc領域のおよそ297位にあるアスパラギン残基(Fc領域残基のEUナンバリング)を指すが、Asn297はまた、抗体における小さな配列変動のために、297位の上流または下流、すなわち、294位及び300位間の約±3アミノ酸に位置し得る。そのようなフコシル化多様体は、ADCC機能を改善することができる。例えば、米国特許出願第US2003/0157108号(Presta,L.)、同第US2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照のこと。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体多様体に関連する刊行物の例としては、以下が挙げられる:US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;WO2002/031140;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)。脱フコシル化抗体を産生することが可能な細胞株の例としては、タンパク質フコシル化を欠損するLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許出願第US2003/0157108A1号、Presta,L;及びWO2004/056312A1、Adams et al.、特に、実施例11で)ならびにノックアウト細胞株、例えば、α-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006);及びWO2003/085107を参照のこと)が挙げられる。
抗TIGIT構築物多様体はさらに、例えば、抗体のFc領域に結合している二分岐オリゴ糖がGlcNAcにより二分されている二分オリゴ糖と共に提供される。そのような抗体多様体は、フコシル化の低減及び/またはADCC機能の改善を有し得る。そのような抗体多様体の例としては、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairet et al.);米国特許第6,602,684号(Umana et al.);及びUS2005/0123546(Umana et al,)に記載される。Fc領域に結合しているオリゴ糖に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体多様体も提供されている。そのような抗体多様体は、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体多様体は、例えば、WO1997/30087(Patel et al.);WO1998/58964(Raju,S);及びWO1999/22764(Raju,S.)に記載されている。
c)Fc領域多様体
一部の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾は、本明細書で提供される抗TIGIT構築物のFc領域に導入し、それにより、Fc領域多様体を生成することができる。Fc領域多様体は、1つ以上のアミノ酸位置においてアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域)を含み得る。
一部の実施形態では、本出願は、全てではないが一部のエフェクター機能を有する抗TIGIT構築物多様体を企図し、これは、in vivoでの抗TIGIT構築物の半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(例えば、補体及びADCC)が不要または有害である適用に望ましい候補となる。In vitro及び/またはin vivo細胞毒性アッセイは、実施して、CDC及び/またはADCC活性の低減/枯渇を確認するために行うことができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイは、抗体がFcγRを欠失すること(従って、ADCC活性を欠失する可能性)を確認するために行うことができるが、FcRn結合能力を保持する。ADCCを媒介する初代細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464ページの表3にまとめられる。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986)を参照のこと)、及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985);同第5,821,337号(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照のこと)に記載される。あるいは、非放射性アッセイ法を用いることができる(例えば、フローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Cell Technology,Inc.、カリフォルニア州マウンテンビュー);及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega、ウィスコンシン州マディソン)を参照のこと)。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。代替的または追加的に、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されるような動物モデルにおいて、in vivoで評価することができる。C1q結合アッセイはまた、抗体がC1qと結合することができず、従って、CDC活性を欠くことを確認するために行うことができる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402のC1q及びC3c結合ELISAを参照のこと。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施することができる(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045-1052(2003);及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照のこと)。FcRn結合及びin vivoクリアランス/半減期の決定は、当該技術分野で既知の方法を使用して実施することもできる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照のこと)。
エフェクター機能が低減した抗体は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上が置換されているものを含む(米国特許第6,737,056号)。そのようなFc変異体は、残基265及び297がアラニンで置換されている、いわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸位置265、269、270、297、及び327のうちの2つ以上に置換を有するFc変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。
FcRへの結合が改善または低減した特定の抗体多様体が記載される。(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照のこと)
一部の実施形態では、抗TIGIT構築物多様体は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/または334位(残基のEUナンバリング)での置換、を有するFc領域を含む。
一部の実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されるように、C1q結合及び/または補体依存性細胞毒性(CDC)の変化(すなわち、改善または低下のいずれか)をもたらすFc領域において変更がなされる。
一部の実施形態では、半減期を増加させ及び/または新生児Fc受容体(FcRn)への結合を改善する1つ以上のアミノ酸置換を含む多様体Fc領域を含む抗TIGIT構築物(例えば、HCAb)多様体が提供される。胎児への母系IgGの移動に関与する、半減期が増加し、新生児Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))は、US2005/0014934A1(Hinton et al.)に記載される。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する1つ以上の置換を有するFc領域を含む。そのようなFc多様体は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上に置換、例えば、Fc領域残基434の置換、を有するものを含む(米国特許第7,371,826号)。
Fc領域多様体の他の例に関するDuncan & Winter,Nature 322:738-40(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;及びWO94/29351も参照のこと。
本明細書に記載のFc多様体のいずれか、またはその組み合わせを含む抗TIGIT構築物(例えば、sdAbに融合している全長IgGまたは抗TIGITIgGなど)が企図される。
d)システイン操作抗体多様体
一部の実施形態では、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作された抗TIGIT構築物、例えば、「チオMAb」を作成することが望ましい可能性がある。特定の実施形態では、置換残基は、抗体の接近可能な部位に生じる。システインとそれらの残基を置換することにより、反応性チオール基は、それにより、抗体の接近部位に配置され、さらに本明細書に記載されるように、免疫複合体を作成するために、薬剤部分またはリンカー-薬物部分などの他の部分に抗体をコンジュゲートするように使用することができる。一部の実施形態では、以下の残基のうちのいずれか1つ以上は、システインで置換することができる:重鎖のA118(EUナンバリング)及び重鎖のFc領域のS400(EUナンバリング)。システイン操作された抗TIGIT構築物は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成することができる。
e)抗体誘導体
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗TIGIT構築物はさらに、当該分野で既知であり、容易に利用可能である追加の非タンパク質性部分を含有するように修飾することができる。抗体の誘導体化に適する部分は、水溶性ポリマーを含むが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、酸化プロピレン/酸化エチレンコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中での安定性に起因して、製造上有利である得る。ポリマーは、任意の分子量であり得、分枝または非分枝であり得る。抗体に結合しているポリマーの数は、変動し得、複数のポリマーが結合している場合、それらは、同じかまたは異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/またはタイプは、限定されないが、改善されるべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が、定義された条件下の治療に使用されるかどうかなど、を含む考慮事項に基づいて決定することができる。
一部の実施形態では、放射線に曝露することにより選択的に加熱することができる抗TIGIT構築物及び非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供される。一部の実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 102:11600-11605(2005))。放射線は、任意の波長のものであり得、通常の細胞に害を与えないが、抗体-非タンパク質性部分に近接する細胞が死滅する温度まで非タンパク質性部分を加熱する波長を含むが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗TIGIT構築物(例えば、抗TIGITIgG、抗TIGIT/CTLA-4二重特異性抗体、抗TIGIT/PD-L1二重特異性抗体、抗TIGIT/TIM-3二重特異性抗体、または抗TIGIT/LAG-3二重特異性抗体)はさらに、1つ以上の生物学的に活性なタンパク質、ポリペプチド、またはそのフラグメントを含有するように修飾することができる。本明細書で使用される「生物活性」または「生物学的に活性な」は、特定の機能を実行するために体内で生物活性を示すことを意味する。例えば、それは、特定の生体分子、例えば、タンパク質、DNAなどと組み合わせた後の、そのような生体分子の活性の促進または抑制を意味し得る。一部の実施形態では、生物活性タンパク質またはそのフラグメントは、免疫刺激/免疫調節、膜輸送、または酵素活性を有する。
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗TIGIT構築物と融合させることができる生理活性タンパク質またはそのフラグメントは、リンホカインなどのリガンド及び特定の細胞受容体と相互作用する細胞因子である。リンホカインは、抗原またはレクチンがT細胞成長を刺激する時に、T細胞により分泌される低分子量タンパク質である。リンホカインの例としては、インターフェロン-α、インターフェロン-γ、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-3(IL-3)、腫瘍壊死因子(TNF)、コロニー刺激因子(例えば、CSF-1、G-CSF、またはGM-CSF)、ケモタキシン、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、マクロファージ活性化因子(MAF)、NK細胞活性化因子、T細胞置換因子、白血球抑制因子(LIF)、リンホトキシン、破骨細胞活性化因子(OAF)、可溶性免疫応答抑制因子(SIRS)、成長刺激因子、単球成長因子などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の抗TIGIT融合タンパク質に組み込むことができる細胞因子は、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターフェロン(IFN)、及び神経成長因子(NGF)などを含むが、これらに限定されない。
III.医薬組成物
さらに、本明細書に記載のTIGITを特異的に認識する全長IgG(例えば、抗TIGIT IgG、抗TIGIT/CTLA-4二重特異性抗体、TIGIT/PD-L1二重特異性抗体、抗TIGIT/TIM-3二重特異性抗体、または抗TIGIT/LAG-3二重特異性抗体)を含む抗TIGIT構築物のいずれか1つ、及び、任意に、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であるが、本出願により提供される。医薬組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、所望の純度を有する本明細書に記載の抗TIGIT構築物を任意の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合させることにより、調製することができる。
医薬組成物は、安定であることが好ましく、本明細書に記載の抗TIGIT mAbを含む抗TIGIT構築物は、保存時にその物理的及び化学的安定性及び完全性を本質的に保持する。タンパク質の安定性を測定するための種々の分析技術は、当該分野で利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)に概説される。安定性は、選択温度で、選択時間測定することができる。迅速なスクリーニングのために、製剤を40℃で2週間~1ヶ月間維持することができ、この時点で、安定性が測定される。製剤が2~8℃で保存される場合、一般に、製剤は、30℃または40℃で少なくとも1ヶ月間、及び/または2~8℃で少なくとも2年間安定でなければならない。製剤を30℃で保存される場合、一般に、製剤は、30℃で少なくとも2年間、及び/または40℃で少なくとも6ヶ月間安定でなければならない。例えば、保存中の凝集の程度は、タンパク質の安定性の指標として使用することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗TIGIT構築物の安定した製剤は、製剤中に凝集物として存在する抗TIGIT構築物を約10%未満(好ましくは、約5%未満)含み得る。
許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに無害であり、緩衝液、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE、メタ重亜硫酸ナトリウムを含む抗酸化剤;保存剤、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム)、安定剤、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);EDTA及び/または非イオン性界面活性剤などのキレート剤を含む。
生理学的に許容される担体の例としては、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩を形成する対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/またはTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
緩衝液は、特に、安定性がpH依存性である場合、治療効果を最適化する範囲でpHを制御するために使用される。緩衝液は、好ましくは、約50mM~約250mMの範囲の濃度で存在する。本出願に使用される好適な緩衝剤は、有機酸及び無機酸の両方ならびにその塩を含む。例えば、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酢酸塩。さらに、緩衝液は、ヒスチジン及びトリスなどのトリメチルアミン塩を含み得る。
防腐剤は、微生物の成長を遅らせるために添加し、通常、0.2%~1.0%(w/v)の範囲で存在する。保存料の添加は、例えば、多目的使用(複数回投与)の製剤の生成を容易にすることができる。本出願に使用される好適な防腐剤としては、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;ベンザルコニウムハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、塩化ベンゼトニウム;チメロサール、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールが挙げられる。
場合により、「安定剤」として知られる等張化剤は、組成物中の液体の等張性を調整または維持するために存在する。タンパク質及び抗体などの大きな荷電生体分子と併用される場合、それらは、アミノ酸側鎖の荷電基と相互作用し、それにより、分子間及び分子内相互作用の可能性を軽減することができるので、多くの場合「安定剤」と呼ばれる。等張化剤は、他の成分の相対量を考慮して、0.1重量%~25重量%、好ましくは、1重量%~5重量%の任意の量で存在することができる。好ましい等張化剤としては、多価糖アルコール、好ましくは、三価または高糖アルコール、例えば、グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトールが挙げられる。
追加の賦形剤は、以下の(1)増量剤、(2)溶解促進剤、(3)安定剤、及び、(4)変性または容器壁への付着を防止する薬剤、のうちの1つ以上として機能し得る薬剤を含む。そのような賦形剤としては、多価糖アルコール(上に列挙);アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニンなどのアミノ酸;スクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオニシトース、ミオイニシトール、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコールなどの有機糖または糖アルコール;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール、及びチオ硫酸ナトリウムなどの硫黄含有還元剤;ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、または他の免疫グロブリンなどの低分子量タンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;単糖類(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース);二糖類(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース);ラフィノースなどの三糖類;及びデキストリンまたはデキストランなどの多糖類が挙げられる。
(「湿潤剤」としても知られる)非イオン性界面活性剤または界面活性剤は、治療薬の可溶化を助けるために、且つ、撹拌誘発性凝集から治療タンパク質を保護するために存在し、これはまた、活性な治療用タンパク質または抗体の変性を引き起こすことなく、製剤を剪断表面応力に曝露させる。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/ml~約1.0mg/ml、好ましくは、約0.07mg/ml~約0.2mg/mlの範囲で存在する。
好適な非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート(20、40、60、65、80など)、ポリオキサマー(184、188など)、PLURONIC(登録商標)ポリオール、TRITON(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80など)、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50、及び60、モノステアリン酸グリセロール、ショ糖脂肪酸エステル、メチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。使用することができるアニオン性界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、及びジオクチルソジウムスルホサクシネートを含む。カチオン性界面活性剤は、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムを含む。
医薬組成物がin vivo投与に使用されるために、それらは、滅菌でなければならない。医薬組成物は、滅菌濾過膜に通す濾過により滅菌にすることができる。本明細書の医薬組成物は一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針により穿刺可能な栓を有する静脈内溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
投与経路は、好適な方法で長期間にわたって、例えば、単一または複数回ボーラスまたは注入による既知の容認された方法、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内による注射もしくは注入、病巣内もしくは関節内経路、局所投与、吸入、または徐放もしくは持続放出手段によるもの、に従うものである。一部の実施形態では、医薬組成物は、腫瘍内など、局所投与される。
徐放性調製物を調製することができる。徐放性調製物の好適な例としては、アンタゴニストを含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを含み、このマトリックスは、成形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びエチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドで構成される注射用ミクロスフェア)、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
本明細書の医薬組成物は、処置される特定の適応症に必要な場合に複数の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。代替的または追加的に、組成物は、細胞毒性剤、化学療法剤、サイトカイン、免疫抑制剤、または成長抑制剤を含み得る。そのような分子は、意図された目的に有効な量で組み合わせて適切に存在する。
活性成分は、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、及びナノカプセル)またはマクロエマルションにおいて、例えば、コアセルベーション技術、または界面重合、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリラート)マイクロカプセルにより、調製されたマイクロカプセルに封入することもできる。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 18th editionに開示される。
一部の実施形態では、医薬組成物は、使い捨て密封バイアルなどの使い捨てバイアルに含有される。一部の実施形態では、医薬組成物は、多目的バイアルに含有される。一部の実施形態では、医薬組成物は、容器に一括で含有される。一部の実施形態では、医薬組成物は、凍結保存される。
IV.使用方法または用途
本明細書に記載されているようにTIGITを特異的に認識するmAbを含む抗TIGITコンストラクト(例えば、抗TIGIT全長IgG、抗TIGIT/CTLA-4二重特異性抗体、抗TIGIT/PD-L1二重特異性抗体、抗TIGIT/TIM-3二重特異性抗体、または抗TIGIT/LAG-3二重特異性抗体)及びその組成物(例えば、医薬組成物)は、例えば、診断、分子アッセイ、及び治療において様々な用途に有用である。
本発明の一態様は、本明細書に記載の抗TIGIT構築物を含む有効量の医薬組成物を個体に投与することを含む、それを必要とする個体のTIGIT関連疾患または状態を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、TIGIT関連疾患は、がんである。一部の実施形態では、TIGIT関連疾患は、ウイルス感染などの病原性感染である。
本出願は、部分的に、単独または別の療法との任意の組み合わせで、少なくとも一部の態様では、薬学的に許容される担体または賦形剤と共に、投与することができるタンパク質構築物(例えば、抗TIGIT全長IgG、抗TIGIT/CTLA-4二重特異性抗体、抗TIGIT/PD-L1二重特異性抗体、抗TIGIT/TIM-3二重特異性抗体、または抗TIGIT/LAG-3二重特異性抗体)、核酸分子及び/またはそれらをコードするベクター、核酸分子及び/またはそれらをコードするベクターを含む宿主細胞を検討する。一部の実施形態では、抗TIGIT構築物の投与前に、それらは、当該分野で周知である好適な薬学的担体及び賦形剤と組み合わせることができる。本開示に従って調製される組成物は、がんの処置またはがんの悪化の遅延に使用することができる。
一部の実施形態では、TIGITを特異的に認識するmAb(例えば、抗TIGIT全長IgG、抗TIGIT/CTLA-4二重特異性抗体、抗TIGIT/PD-L1二重特異性抗体、抗TIGIT/TIM-3二重特異性抗体、または抗TIGIT/LAG-3二重特異性抗体)を含む単離抗TIGIT構築物を含む有効量の医薬組成物を個体に投与することを含む、がんの処置方法が提供される。一部の実施形態では、がんは、固形腫瘍(例えば、結腸がん)である。一部の実施形態では、医薬組成物は、全身(例えば、静脈内)投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、局所(例えば、腫瘍内)投与される。一部の実施形態では、方法はさらに、追加のがん治療法(例えば、手術、放射線、化学療法、免疫療法、ホルモン療法、またはそれらの組み合わせ)を個体に投与することを含む。一部の実施形態では、個体は、ヒトである。一部の実施形態では、がんを処置する方法は、以下の生物活性のうちの1つ以上を有する:(1)がん細胞の死滅(バイスタンダー死滅を含む);(2)がん細胞の増殖の抑制;(3)腫瘍の免疫応答の誘導;(4)腫瘍サイズの低減;(5)がんを有する個体の1つ以上の症状の緩和;(6)腫瘍転移の抑制;(7)生存期間の延長;(8)がん進行の時間の延長;及び、(9)がんの再発の可能性の予防、抑制、または低減。一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物により媒介されるがん細胞を死滅させる方法は、少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上のいずれかの腫瘍細胞死滅率を達成し得る。一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物により媒介されるがん細胞を死滅させる方法は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上のいずれかのバイスタンダー腫瘍細胞(腫瘍溶解性VVに感染していない)の死滅率を達成し得る。一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物により媒介される腫瘍サイズを低減させる方法は、腫瘍サイズの少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)を低減させ得る。一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物により媒介される腫瘍転移を抑制する方法は、転移の少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)を抑制し得る。一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物により媒介される個体(例えば、ヒト)の生存を延長する方法は、個体の生存を、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、または24ヶ月のいずれか延長し得る。一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物により媒介されるがん進行の時間を延長する方法は、がん進行の時間を、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12週間のいずれか延長し得る。
本明細書に記載の方法は、固形がん及び液体がんの両方を含む様々ながんを処置するのに適する。方法は、早期がん、非転移性がん、原発性がん、進行性がん、局所進行性がん、転移性がん、または寛解期のがんを含む全ての段階のがんに適用可能である。本明細書に記載の方法は、アジュバント設定またはネオアジュバント設定における、第1の治療、第2の治療、第3の治療、または当該技術分野で既知の他のタイプのがん治療、例えば、化学療法、手術、ホルモン療法、放射線、遺伝子療法、免疫療法(例えば、T細胞療法)、骨髄移植、幹細胞移植、標的療法、凍結療法、超音波療法、光線力学療法、高周波アブレーションなどとの併用治療として使用することができる(すなわち、方法は、1次/根治治療前に実施することができる)。一部の実施形態では、方法は、以前に処置されている個体を処置するために使用される。一部の実施形態では、がんは、以前の治療に対して不応であった。一部の実施形態では、方法は、以前に処置されていることがない個体を処置するために使用される。
一部の実施形態では、方法は、異常なTIGIT発現、活性、及び/またはシグナル伝達を伴うがんを処置するのに適するが、非限定例として、メラノーマ、前立腺癌、肺癌、結腸癌、胃癌、卵巣癌、乳癌、及び神経膠芽腫を含む。
従って、一部の実施形態では、TIGITを特異的に認識するモノクローナル抗体(例えば、抗TIGIT全長IgG、抗TIGIT/CTLA-4二重特異性抗体、抗TIGIT/PD-L1二重特異性抗体、抗TIGIT/TIM-3二重特異性抗体、または抗TIGIT/LAG-3二重特異性抗体)を含む単離抗TIGIT構築物を含む有効量の医薬組成物を個体に投与することを含む、免疫療法応答性固形腫瘍(例えば、がん腫または腺がん、例えば、異常なTIGIT発現、活性、及び/またはシグナル伝達を伴うがん)を処置する方法が提供される。一部の実施形態では、がんは、固形腫瘍(例えば、結腸癌)である。一部の実施形態では、医薬組成物は、全身(例えば、静脈内)投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、局所(例えば、腫瘍内)投与される。一部の実施形態では、方法はさらに、追加のがん治療法(例えば、手術、放射線、化学療法、免疫療法、ホルモン療法、またはそれらの組み合わせ)を個体に投与することを含む。一部の実施形態では、個体は、ヒトである。一部の実施形態では、がんを処置する方法は、以下の生物活性のうちの1つ以上を有する:(1)がん細胞の死滅(バイスタンダー死滅を含む);(2)がん細胞の増殖の抑制;(3)腫瘍の免疫応答の誘導;(4)腫瘍サイズの低減;(5)がんを有する個体の1つ以上の症状の緩和;(6)腫瘍転移の抑制;(7)生存期間の延長;(8)がん進行の時間の延長;及び、(9)がんの再発の可能性の予防、抑制、または低減。一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物により媒介されるがん細胞を死滅させる方法は、少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上のいずれかの腫瘍細胞死滅率を達成し得る。一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物により媒介されるがん細胞を死滅させる方法は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上のいずれかのバイスタンダー腫瘍細胞(腫瘍溶解性VVに感染していない)の死滅率を達成し得る。一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物により媒介される腫瘍サイズを低減させる方法は、腫瘍サイズの少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)を低減させ得る。一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物により媒介される腫瘍転移を抑制する方法は、転移の少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)を抑制し得る。一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物により媒介される個体(例えば、ヒト)の生存を延長する方法は、個体の生存を、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、または24ヶ月のいずれか延長し得る。一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物により媒介されるがん進行の時間を延長する方法は、がん進行の時間を、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12週間のいずれか延長し得る。
一部の実施形態では、方法は、異常なCD155またはTIGITの発現、活性、及び/またはシグナル伝達を伴うがんを処置するのに適し、非限定例として、血液がん及び/または固形腫瘍を含む。本発明の抗体を使用して成長を抑制することができる一部のがんは、通常、免疫療法に応答するがんを含む。処置のための他のがんの非限定例としては、メラノーマ(例えば、転移性悪性メラノーマ)、腎癌(例えば、明細胞癌)、前立腺癌(例えば、ホルモン不応性前立腺腺癌)、乳癌、結腸癌、及び肺癌(例えば、非小細胞肺癌)が挙げられる。さらに、本発明は、本発明の抗体を使用して成長を抑制することができる難治性または再発性の悪性腫瘍を含む。本発明の抗体を使用して処置することができる他のがんの例としては、骨癌、膵癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼内悪性メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織の肉腫、尿道癌、陰茎癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性または急性白血病、小児の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓または尿管の癌、腎盂癌、中枢神経系の新生物(CNS)、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、アスベストにより誘発されたものを含む環境誘発性がん、及び該がんの組み合わせが挙げられる。本出願はまた、転移性がん、特に、TIGITを発現する転移性がんの処置に有用である(Iwai et al.(2005)Int.Immunol.17:133-144)。
従って、一部の実施形態では、CTLA-4、PD-L1、TIM-3、またはLAG-3 sdAbに融合しているTIGITを特異的に認識する全長IgGを含む単離抗TIGIT構築物を含む有効量の医薬組成物を個体に投与することを含む、免疫療法応答性固形腫瘍(例えば、がん腫または腺がん、例えば、異常なTIGIT発現、活性、及び/またはシグナル伝達を伴うがん、及び/または異常なCTLA-4、PD-L1、TIM-3、及びLAG-3の発現、活性、及び/またはシグナル伝達)を処置する方法が提供される。一部の実施形態では、CTLA-4、PD-L1、TIM-3、またはLAG-3 sdAbに融合しているTIGITを特異的に認識する全長IgGを含む単離抗TIGIT構築物を含む有効量の医薬組成物を個体に投与することを含む、免疫療法応答性固形腫瘍(例えば、がん腫または腺がん、例えば、異常なTIGIT発現、活性、及び/またはシグナル伝達を伴うがん、及び/または異常なCTLA-4、PD-L1、TIM-3、LAG-3の発現、活性、及び/またはシグナル伝達)を処置する方法が提供される。
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、腺がん、胃腸カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、平滑筋肉腫、メラノーマ、または扁平上皮細胞がんなどの結腸直腸癌を処置するのに適する。
本出願の医薬組成物の投薬量及び所望の薬物濃度は、想定される特定の用途に応じて変動し得る。適切な投薬量または投与経路の決定は、十分に当業者の技術の範囲内である。動物実験は、ヒト治療のための有効用量を決定するための信頼できるガイダンスを提供する。有効用量の種間スケーリングは、Mordenti,J.and Chappell,W.“The Use of Interspecies Scaling in Toxicokinetics,”In Toxicokinetics and New Drug Development,Yacobi et al.,Eds,Pergamon Press,New York 1989,pp.42-46に定められる原理に従って実施することができる。
本明細書に記載の抗TIGIT mAbを含む抗TIGIT構築物のin vivo投与が使用される時、通常の投薬量は、投与経路に応じて、1日当たり約10ng/kg~約100mg/kg哺乳動物体重以上、好ましくは、約1mg/kg/日~10mg/kg/日、例えば、約1~3mg/kg/日、約2~4mg/kg/日、約3~5mg/kg/日、約4~6mg/kg/日、約5~7mg/kg/日、約6~8mg/kg/日、約6~6.5mg/kg/日、約6.5~7mg/kg/日、約7~9mg/kg/日、または約8~10mg/kg/日で変動し得る。これは、異なる製剤が異なる処置及び異なる疾患に有効であること、ならびに、特定の器官または組織を処置することが意図される投与が、別の器官または組織のものと異なる方法の送達を必要とし得ることは、本出願の範囲内である。さらに、投薬量は、1回以上の別々の投与により、または連続注入により投与することができる。数日以上にわたる反復投与では、状態に応じて、疾患症状の望ましい抑制が生じるまで、処置が持続する。しかし、他の投薬レジメンが有用であり得る。この治療法の進行は、従来技術及びアッセイで容易に監視される。
一部の実施形態では、医薬組成物は、単回投与される(例えば、ボーラス注射)。一部の実施形態では、医薬組成物は、複数回(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、またはそれ以上のいずれか)投与される。複数回投与した場合、それらは、同じかまたは異なる経路により実施することができ、同じ部位または代替部位で行うことができる。医薬組成物は、週2回、週3回、週4回、週5回、毎日、中断なしで毎日、週1回、中断なしで毎週、2週に1回、3週に1回、月1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、6ヶ月に1回、7ヶ月に1回、8ヶ月に1回、9ヶ月に1回、10ヶ月に1回、11ヶ月に1回、または年1回投与することができる。投与間隔は、約24時間~48時間、2日~3日、3日~5日、5日~1週間、1週間~2週間、2週間~1ヶ月、1ヶ月~2ヶ月、2ヶ月~3ヶ月、3ヶ月~6ヶ月、または6ヶ月~1年のいずれか1つであり得る。間隔は、(例えば、腫瘍の進行後に)不規則でもあり得る。一部の実施形態では、投与スケジュールに中断はない。一部の実施形態では、医薬組成物は、4日毎に4回投与される。特定の患者のための最適な投薬量及び処置レジメンは、疾患の徴候について患者を監視し、それに応じて処置を調整することにより、医薬品の当業者が容易に決定することができる。
限定されない、再構成された液体製剤を含む本出願の医薬組成物は、ボーラスとしての静脈内投与などの既知の方法に従って、または筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、静脈内(i.v.)、関節内、滑膜内、くも膜下腔内、経口、局所、もしくは吸入経路による、ある期間にわたる連続注入により、本明細書に記載の抗TIGIT構築物での処置を必要とする個体、好ましくは、ヒト、に投与される。再構成された製剤は、タンパク質が全体に分散されるように、本明細書に記載の凍結乾燥抗TIGIT構築物を希釈剤に溶解させることにより調製することができる。本出願での使用に適する例示的な薬学的に許容される(ヒトへの投与に対して安全且つ非毒性の)希釈剤としては、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水)、滅菌生理食塩水、リンガー溶液、もしくはデキストロース溶液、または塩及び/または緩衝液の水溶液が挙げられるが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、医薬組成物は、皮下(すなわち、皮膚の下に)投与により個体に投与される。そのような目的のために、医薬組成物は、シリンジを使用して注射することができる。しかし、注射デバイスなどの医薬組成物を投与するための他の装置:インジェクターペン;自動注射器、無針デバイス;及び皮下パッチ送達システムが利用可能である。
一部の実施形態では、医薬組成物は、個体に静脈内投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、静脈内注入などの注入により個体に投与される。免疫療法のための注入技術は、当該技術分野で既知である(例えば、Rosenberg et al.,New Eng.J.of Med.319:1676(1988)を参照のこと)。
本明細書に記載のTIGITを特異的に認識するmAbを含む抗TIGIT構築物(例えば、抗TIGIT全長IgG、抗TIGIT/CTLA-4二重特異性抗体、抗TIGIT/PD-L1二重特異性抗体、抗TIGIT/TIM-3二重特異性抗体、または抗TIGIT/LAG-3二重特異性抗体)、及びそれらの組成物(例えば、医薬組成物)はまた、診断または分子アッセイにおいて有用である。例えば、抗体または抗原結合フラグメントは、生物学的試料中のTIGITの検出または定量化に使用し、それにより、TIGITに関連する上記のような疾患の進行または処置を検出または監視することができる。
V.調製方法
本明細書に記載の抗TIGIT構築物(例えば、抗TIGITモノクローナル抗体)は、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して、または本明細書に記載されるように調製することができる。
齧歯動物モノクローナル抗体は、当該技術分野で既知の方法を使用して、例えば、齧歯動物種(例えば、マウスもしくはラット)を免疫して、そのハイブリドーマを得ることにより、または、当該技術分野で既知の分子生物学的技術及び未選択ライブラリーの個々のクローンを用いるELISAによる後続の選択を使用して、Fabフラグメントもしくは一本鎖Fc(scFv)のライブラリーをクローニングすることにより、または、ファージディスプレイを使用することにより、得ることができる。
モノクローナル抗体の組み換え産生のために、モノクローナル抗体をコードする核酸は、単離または合成され、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入される。モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、簡単に分離及び配列決定される。多くのベクターが利用可能である。ベクターの選択は、部分的には使用されるべき宿主細胞に依存する。一般に、好ましい宿主細胞は、原核生物または真核生物(一般に、哺乳動物)起源のいずれかである。
実施形態
本発明は、以下の非限定的な実施形態も提供する。
実施形態1は、
(a)
i.配列番号27~39からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDR1)、
ii.配列番号40~52からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び
iii.配列番号53~65からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3をそれぞれ含む重鎖可変ドメイン(VH)、及び
(b)
i.配列番号66~78からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
ii.配列番号79~91からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
iii.配列番号92~104からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3をそれぞれ含む軽鎖可変ドメイン(VL)、
を含む単離抗体、好ましくは、mAb、またはその抗原結合フラグメントを含み、
抗体またはその抗原結合フラグメントは、TIGIT、好ましくは、ヒトTIGITに特異的に結合することができる。
実施形態2は、実施形態1の単離抗体またはその抗原結合フラグメントであり、
(1)VHは、それぞれ、配列番号27、40、及び53のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、VLは、それぞれ、配列番号66、79、及び92のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含むか、
(2)VHは、それぞれ、配列番号28、41、及び54のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、VLは、それぞれ、配列番号67、80、及び93のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含むか、
(3)VHは、それぞれ、配列番号29、42、及び55のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、VLは、それぞれ、配列番号68、81、及び94のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含むか、
(4)VHは、それぞれ、配列番号30、43、及び56のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、VLは、それぞれ、配列番号69、82、及び95のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含むか、
(5)VHは、それぞれ、配列番号31、44、及び57のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、VLは、それぞれ、配列番号70、83、及び96のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含むか、
(6)VHは、それぞれ、配列番号32、45、及び58のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、VLは、それぞれ、配列番号71、84、及び97のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含むか、
(7)VHは、それぞれ、配列番号33、46、及び59のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、VLは、それぞれ、配列番号72、85、及び98のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含むか、
(8)VHは、それぞれ、配列番号34、47、及び60のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、VLは、それぞれ、配列番号73、86、及び99のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含むか、
(9)VHは、それぞれ、配列番号35、48、及び61のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、VLは、それぞれ、配列番号74、87、及び100のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含むか、
(10)VHは、それぞれ、配列番号36、49、及び62のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、VLは、それぞれ、配列番号75、88、及び101のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含むか、
(11)VHは、それぞれ、配列番号37、50、及び63のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、VLは、それぞれ、配列番号76、89、及び102のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含むか、
(12)VHは、それぞれ、配列番号38、51、及び64のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、VLは、それぞれ、配列番号77、90、及び103のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含むか、または
(13)VHは、それぞれ、配列番号39、52、及び65のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、VLは、それぞれ、配列番号78、91、及び104のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含む。
実施形態3は、VHがそれぞれ配列番号38、51、及び64のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、VLがそれぞれ配列番号77、90、及び103のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含む、実施形態2の単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態4は、VHがそれぞれ配列番号39、52、及び65のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、VLが配列番号78、91、及び104のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含む、実施形態2の単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態5は、VHが、配列番号1~13のいずれか1つのアミノ酸配列、または配列番号1~13のいずれか1つと少なくとも約80%、少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有するその多様体を含み、VLが、配列番号14~26のいずれか1つのアミノ酸配列、または配列番号14~26のいずれか1つと少なくとも約80%、少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%の配列同一性を有するその多様体を含む、実施形態1~4のいずれか1つの単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態6は、VHが、配列番号1~13からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはVHに最大約3つのアミノ酸置換を含むその多様体を含み、VLが、配列番号14~26からなる群より選択されるアミノ酸配列、またはVLに最大約3つのアミノ酸置換を含むその多様体を含む、実施形態5の単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態7は、
(1)VHが、配列番号1のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号14のアミノ酸配列を含むか、
(2)VHが、配列番号2のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号15のアミノ酸配列を含むか、
(3)VHが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号16のアミノ酸配列を含むか、
(4)VHが、配列番号4のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号17のアミノ酸配列を含むか、
(5)VHが、配列番号5のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号18のアミノ酸配列を含むか、
(6)VHが、配列番号6のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号19のアミノ酸配列を含むか、
(7)VHが、配列番号7のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号20のアミノ酸配列を含むか、
(8)VHが、配列番号8のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号21のアミノ酸配列を含むか、
(9)VHが、配列番号9のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号22のアミノ酸配列を含むか、
(10)VHが、配列番号10のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号23のアミノ酸配列を含むか、
(11)VHが、配列番号11のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号24のアミノ酸配列を含むか、
(12)VHが、配列番号12のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号25のアミノ酸配列を含むか、または
(13)VHが、配列番号13のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号26のアミノ酸配列を含む、実施形態5または6の単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態8は、VHが配列番号12のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号25のアミノ酸配列を含む、実施形態7の単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態9は、VHが配列番号13のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号26のアミノ酸配列を含む、実施形態7の単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態10は、VHが、免疫グロブリンの重鎖定常領域に融合している、実施形態1~9のいずれか1つの単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態11は、VLが、免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)に融合している、実施形態1~10のいずれか1つの単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態12は、抗体またはその抗原結合フラグメント及びTIGIT間の結合のKDが、10-7M~約10-12M、好ましくは、約10-8M~約10-12M、より好ましくは、約10-9M~約10-12Mである、実施形態1~11のいずれか1つの単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態13は、齧歯動物、キメラ、ヒト、部分的ヒト化、または完全ヒト化である、実施形態1~12のいずれか1つの単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態14は、ヒト化である、実施形態13の単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態15は、VHが配列番号105~112からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、VLが配列番号113~118からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態14の単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態16は、さらに、第2の抗体部分を含み、第2の抗体部分が、第2の抗原に特異的に結合することが可能である、実施形態1~15のいずれか1つの単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態17は、第2の抗体部分が、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、一本鎖Fv(scFv)、scFv-scFv、ミニボディ、ダイアボディ、sdAb、または抗体模倣物である、実施形態16の単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態18は、第2の抗体部分が、sdAbである、実施形態17の単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態19は、第2の抗体部分が、CTLA-4に特異的に結合することが可能であり、好ましくは、第2の抗体部分が、CTLA-4に特異的に結合することが可能なsdAbである、実施形態16~18のいずれか1つの単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態20は、第2の抗体部分が、PD-L1に特異的に結合することが可能であり、好ましくは、第2の抗体部分が、PD-L1に特異的に結合することが可能なsdAbである、実施形態16~18のいずれか1つの単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態21は、第2の抗体部分が、TIM-3に特異的に結合することが可能であり、好ましくは、第2の抗体部分が、TIM-3に特異的に結合することが可能なsdAbである、実施形態16~18のいずれか1つの単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態22は、第2の抗体部分が、LAG-3に特異的に結合することが可能であり、好ましくは、第2の抗体部分が、LAG-3に特異的に結合することが可能なsdAbである、実施形態16~18のいずれか1つの単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態23は、TIGITを特異的に認識することが可能な全長IgGの重鎖または軽鎖のアミノ末端が、CTLA-4、PD-L1、TIM-3、またはLAG-3に特異的に結合することが可能なsdAbのカルボキシル末端に、任意に、ペプチドリンカーを介して融合している、実施形態19~22のいずれか1つの単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態24は、TIGITを特異的に認識することが可能な重鎖もしくは軽鎖または全長IgGのカルボキシル末端が、CTLA-4、PD-L1、TIM-3、またはLAG-3に特異的に結合することが可能なsdAbのアミノ末端に、任意に、ペプチドリンカーを介して融合している、実施形態19~22のいずれか1つの単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態25は、TIGITを特異的に認識することが可能な全長IgGが、配列番号119~121の1つのアミノ酸配列を有するペプチドリンカーを介して、CTLA-4、PD-L1、TIM-3、またはLAG-3に特異的に結合することが可能なsdAbに融合している、実施形態23または24の単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態26は、実施形態1~25のいずれか1つの単離抗体またはその抗原結合フラグメントと競合的に、TIGITに特異的に結合することが可能である、第2の単離抗体またはその抗原結合フラグメントである。
実施形態27は、実施形態1~25のいずれか1つの単離抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または実施形態26の単離抗体もしくはその抗原結合フラグメント、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
実施形態28は、それを必要とする対象のTIGIT関連疾患の処置に使用される、実施形態1~25のいずれか1つの単離抗体もしくはその抗原結合フラグメント、実施形態26の第2の単離抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または実施形態27の医薬組成物である。
実施形態29は、TIGIT関連疾患が、がんである、実施形態28の単離抗体またはその抗原結合フラグメントまたは使用のための医薬組成物である。
実施形態30は、がんが、固形腫瘍である、実施形態29の単離抗体またはその抗原結合フラグメントまたは使用のための医薬組成物である。
実施形態31は、がんが、結腸癌である、実施形態29の単離抗体またはその抗原結合フラグメントまたは使用のための医薬組成物である。
実施形態32は、追加のがん治療法と組み合わせて、実施形態28~31のいずれか1つの単離抗体またはその抗原結合フラグメントまたは使用のための医薬組成物である。
実施形態33は、追加のがん治療法が、外科手術、放射線、化学療法、免疫療法、ホルモン療法、またはそれらの組み合わせである、実施形態32の単離抗体またはその抗原結合フラグメントまたは使用のための医薬組成物である。
実施形態34は、TIGIT関連疾患が、病原性感染である、実施形態28の単離抗体またはその抗原結合フラグメントまたは使用のための医薬組成物である。
実施形態35は、単離抗体またはその抗原結合フラグメントまたは医薬組成物が、全身または局所投与用である、実施形態28~34のいずれか1つの単離抗体またはその抗原結合フラグメントまたは使用のための医薬組成物である。
実施形態36は、単離抗体またはその抗原結合フラグメントまたは医薬組成物が、静脈内投与用である、実施形態28~34のいずれか1つを単離抗体またはその抗原結合フラグメントまたは使用のための医薬組成物である。
実施形態37は、単離抗体またはその抗原結合フラグメントまたは医薬組成物が、腫瘍内投与用である、実施形態28~34のいずれか1つの単離抗体またはその抗原結合フラグメントまたは使用のための医薬組成物である。
実施形態38は、対象が、ヒトである、実施形態28~37のいずれか1つの単離抗体またはその抗原結合フラグメントまたは使用のための医薬組成物である。
実施形態39は、有効量の実施形態27の医薬組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象のTIGIT関連疾患を処置する方法である。
実施形態40は、TIGIT関連疾患が、がんである、実施形態39の方法である。
実施形態41は、がんが、固形腫瘍である、実施形態40の方法である。
実施形態42は、がんが、結腸がんである、実施形態40または41の方法である。
実施形態43は、さらに追加のがん治療を個体に投与することを含む、実施形態40~42のいずれか1つの方法である。
実施形態44は、追加のがん治療法が、外科手術、放射線、化学療法、免疫療法、ホルモン療法、またはそれらの組み合わせである、実施形態43の方法である。
実施形態45は、TIGIT関連疾患が、病原性感染である、実施形態39の方法である。
実施形態46は、医薬組成物が、全身的または局所的に投与される、実施形態39~45のいずれか1つの方法である。
実施形態47は、医薬組成物が、静脈内投与される、実施形態39~45のいずれか1つの方法である。
実施形態48は、医薬組成物が腫瘍内投与される、実施形態39~45のいずれか1つの方法である。
実施形態49は、個体が、ヒトである、実施形態39~48のいずれか1つの方法である。
以下の実施例は、本発明の単なる例示であることが意図され、従って、決して本発明を限定すると考えるべきではない。以下の実施例及び詳細な記載は、例示のために提供され、限定するものではない。
実施例1:マウス抗ヒトTIGITハイブリドーマ細胞株及びモノクローナル抗体の生成
本開示では、マウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体、70A11A8E6、11D8E12A4、16F10H12C11、8F2D8E7、48B5G4E12、139E2C2D2、128E3G7F5、121C2F10B5、104G12E12G2、83G6H11C12、92E9D4B4、100C4E7D11、及び64G1E9B4を以下の免疫化方法で得た。
動物免疫では、免疫原は、FcタグヒトTIGITタンパク質(Acro Bioscience:TIT-5254)の融合タンパク質である。50μgのTIGIT Fc融合タンパク質を200μlのフロイト完全アジュバント(Sigma-Aldrich)と1:1で混合して、雌のBalb/cマウスを免疫した。次に、フロイト不完全アジュバントと1:1で混合した25μgのTIGIT Fc融合タンパク質で、2週間毎に最大3回、マウスの腹腔内に追加免疫した。融合の4日前に、蛍光活性化細胞選別(FACS、図1A~1C)によるフローサイトメトリー研究でTIGIT結合シグナルが高い3匹のマウス(#8087、#8100、及び#8771)を、25μgのTIGIT Fc融合タンパク質(アジュバントなし)を用いる最終の腹腔内の追加免疫について選択した。FACS結合テストを適用して、CHO-K1細胞(GenScript)の表面に発現したTIGITタンパク質へのハイブリドーマ上清中の抗体の結合能力を評価した。CHO-K1親細胞及びヒトTIGITで過剰発現されたCHO-K1の両方を収集し、PBSで3回洗浄した。2.5×105の細胞及び100μlのハイブリドーマ上清を、96ウェルプレートの各ウェルに加え、4℃で1時間インキュベートした。次に、PBSを使用して、プレートを3回洗浄した。100μlのiFluor標識ヤギ抗マウスIgGを加え、4℃で45分間インキュベートした。最終的に、細胞をPBSで3回洗浄し、シグナルをFACS BD Caliburで読み取った。
ハイブリドーマ融合及びスクリーニングでは、単離された脾臓を均質化された単一細胞懸濁液にし、単一細胞懸濁液を骨髄腫細胞(SP2/0細胞)についても作製した。8.9×107の脾臓細胞及び4.1×107のSP2/0細胞を、電気融合法で融合させた。胸腺ヌクレオシドピリミジン、ヒポキサンチン、及びアミノプテリンハイブリドーマ選択試薬を含有する100mlのDMEM/10%のFBS培地に、各ハイブリドーマ融合からの融合細胞を再懸濁した。細胞懸濁液を、それぞれ100μlを、50の96ウェルに分配した。96ウェルプレートを、6%のCO2濃度で、37℃のインキュベーターで7日間培養した。次に、ハイブリドーマ上清をELISA結合、ブロッキング、及びFACS結合で試験して、ELISA結合試験で抗ヒトTIGIT抗体の存在を検出した。
ELISA結合試験:間接ELISAを適用して、上清中の抗体のヒトTIGIT Fc融合タンパク質への結合能力を評価した。0.5μg/mlの組み換えTIGIT Fc融合タンパク質またはヒトIgG1を、1ウェル当たり100μlのPBSを含むELISAプレートで、4℃で一晩コーティングした。PBST(0.05%のtween)を使用してプレートを洗浄した。1%のBSAを含有するPBSTを使用して、1ウェル当たり200μlで、0.5時間プレートを遮断した。ブロッキング緩衝液を後で廃棄し、ハイブリドーマ上清を1ウェル当たり100μl加えて、室温で1時間インキュベートした。次に、プレートをPBSTで3回洗浄した。ヤギ抗マウスIgG(Fab特異的)HRPを、1ウェル当たり100μlで加え、37℃で30分インキュベートした。次に、プレートをPBSTで5回洗浄し、TMB緩衝液(GenScript)をウェルに加え、室温で15分間インキュベートした。1MのHCL(Sigma)停止緩衝液を1ウェル当たり50μlで加えて、反応を停止させ、プレートを450nmで読み取った。
500を超える、ヒトTIGIT Fc融合タンパク質の上清のELISA試験読み値及びヒトIgG1上の上清のELISA試験読み値間のOD値の差を有するハイブリドーマはさらに、ハイブリドーマサブクローニングについて選択した。サブクローニングを限界希釈で実施した。細胞を計数し、胸腺ヌクレオシドピリミジン、ヒポキサンチン、及びアミノプテリンハイブリドーマ選択試薬を含有するDMEM/10%のFBS培地で、5~15細胞/mlの濃度に段階希釈した。各ハイブリドーマクローンでは、200μlのハイブリドーマ懸濁液を、1ウェル当たり1~3細胞の濃度で96ウェルに移した。プレートを37℃、5%のCO2で1週間インキュベートした。次に、上清をFACS結合研究で使用して、抗ヒトTIGIT抗体の存在を評価した。70A11A8E6、11D8E12A4、16F10H12C11、8F2D8E7、48B5G4E12、139E2C2D2、128E3G7F5、121C2F10B5、104G12E12G2、83G6H11C12、92E9D4B4、100C4E7D11、及び64G1E9B4由来のハイブリドーマ上清は、FACS試験(図2A~2M)により、ヒトTIGITと特異的に結合することが確認された。
実施例2:マウス抗ヒトTIGITハイブリドーマ細胞株及びモノクローナル抗体の配列決定及び発現
発現マウスアイソタイプELISAキット(Clonotyping System-HRP、SouthernBiotech、アラバマ州バーミンガム)を使用して、モノクローナル抗体のアイソタイプを同定した。次に、TRIzol(Ambion)を使用して、3×106~5×106のハイブリドーマ細胞からモノクローンの総RNAを抽出した。アイソタイプ特異的プライマー及びユニバーサルプライマー(PrimeScript(商標)第1鎖cDNA合成キット、Takara;カリフォルニア州マウンテンビュー)を使用して、RNAをcDNAに逆転写し、次に、RACE PCR(GenScript)を適用して、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域を増幅し、PCR産物をpMD18-Tベクターシステム(Takara)にサブクローニングした。ベクター特異的プライマーを使用して、挿入されたセグメントを検証及び配列決定をした。最終的に、70A11A8E6、11D8E12A4、16F10H12C11、8F2D8E7、48B5G4E12、139E2C2D2、128E3G7F5、121C2F10B5、104G12E12G2、83G6H11C12、92E9D4B4、100C4E7D11、及び64G1E9B4の可変領域DNA/タンパク質配列を得た。
上記のクローンのそれぞれの重鎖または軽鎖可変及び定常領域のDNAフラグメントを合成し、pTT5発現ベクターに挿入した。構築されたプラスミドを使用して、HEK293-6E細胞をトランスフェクトし、HEK293-6E細胞を、振盪フラスコ中、37℃で10日間培養した。次に、精製のために上清を収集した。精製前に、パイプ及びプロテインAカラムを0.2MのNaOHで処理して、発熱物質を除去した。次に、カラムを0.05MのTris及び1.5MのNaCl(pH8.0)で再平衡化した。以前に収集した上清を、平衡緩衝液と1:1で混合し、濾過して滅菌状態を維持した。濾過した上清を室温で2時間プロテインAカラムを用いてインキュベートし、1Xの平衡緩衝液で洗浄した。IgGを、滅菌の0.1Mのクエン酸ナトリウム(pH3.5)で溶出させた。溶出液を、1/9容量の1MのTris-HCl(pH9.0)で中和した。中和した溶液を、PBS(pH7.4)緩衝液に変更して、他の緩衝液内容物を除去し、最終的な試料溶液を無菌条件下で濃縮した。次に、1.43の消衰係数Ec(0.1%)を用いてOD280nmで、濃度を決定した。精製した抗体を、BioRad電気泳動システムで10%の既製ゲル(GenScript)を使用したSDS-PAGEで試験した。ゲルをEstain2.0(GenScript)で染色し、純度及び分子量を、タンパク質ラダー(GenScript)と比較することにより推定した。
実施例3:ヒトTIGIT組み換えタンパク質へのマウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体の結合
表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサーBIACORE(登録商標)T200(GE Healthcare;イギリス、リトルチャルフォント)を使用して、ヒトTIGITへのマウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体の結合動態を決定した。異なる濃度のマウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体を、50nMから3倍連続希釈で調製した。Fcキャプチャー法を介して、各マウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体をセンサーチップ上に固定化した。HISタグ付きのヒトTIGITタンパク質を検体として使用した。BIACORE(登録商標)T200評価ソフトウェアを使用して、解離(K
d)及び会合(K
A)速度定数を得た。見かけの平衡解離定数(K
D)をk
d対k
aの比から計算した。表3に示されるように、マウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体は、ヒトTIGITタンパク質に相当する結合動態を有していた(表3)。
実施例4:CHO-K1細胞で発現されたヒトまたはカニクイザルTIGITへのマウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体の結合
蛍光活性化細胞選別(FACS)ベースのアッセイを使用して、CHO-K1細胞で過剰発現されたヒトまたはカニクイザルTIGITへのマウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体の結合親和性を決定した。FACS分析のために1次抗体として(ヒトTIGITの場合111μM、カニクイザルTIGITの場合55.6μMで開始し、9つの濃度の3倍連続希釈した)、マウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体を調製した。ヒトTIGITを発現するCHO-K1細胞を接着培養フラスコから分離し、(両方とも96ウェルプレートで)様々な濃度のマウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体と混合した。混合物を室温で30分間平衡化し、FACS緩衝液(1%のBSAを含有するPBS)で3回洗浄した。2次抗体としてiFluor標識ヤギ抗マウスIgGを加え、室温で45分間インキュベートした。最終的に、細胞をPBSで3回洗浄し、シグナルをFACS BD Caliburで読み取った。非線形回帰を使用するPRISM(商標)(GraphPad Software、カリフォルニア州サンディエゴ)で、データを分析し、EC
50値を計算した。図3A~3C及び表4で示されるように、FACS研究は、マウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体が、0.3nM~16.3nMの範囲のEC
50値で、CHO-K1細胞で過剰発現されたヒトTIGITに結合したことを示した。
試験されたマウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体のうち、139E2C2D2、128E3G7F5、121C2F10B5、104G12E12G2、83G6H11C12、92E9D4B4、100C4E7D11、及び64G1E9B4のみは、カニクイザルTIGITに結合した。図3A~3C及び表5に示されるように、FACS研究は、マウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体の一部が、EC
50値が1nM~18.5nMの範囲で、CHO-K1細胞で過剰発現されたカニクイザルTIGITに結合したことを示した。
実施例5:マウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体及びPVR組み換えタンパク質間のCHO-K1細胞で過剰発現されたヒトTIGITに対する競合的結合
FACSアッセイを使用して、マウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体及びPVR組み換えタンパク質間のヒトTIGITに対する競合的結合を評価した。マウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体及びPVR間のヒトTIGITに対する競合的結合を評価するために、マウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体試料を調製した(500nMで開始し、10の濃度で3倍連続希釈した)。ヒトTIGITを発現するCHO細胞を接着培養フラスコから分離し、様々な濃度の各マウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体及びビオチン標識を有する5μg/mlのヒトTIGIT-Fc融合タンパク質と混合した。混合物を室温で30分間平衡化し、FACS緩衝液(1%のBSAを含有するPBS)で3回洗浄した。次に、PE/Cy5ストレプトアビジン2次抗体を混合物に添加し、室温で15分間インキュベートした。その後、細胞をFACS緩衝液で洗浄し、フローサイトメトリーで分析した。非線形回帰を使用するPRISM(商標)(GraphPad Software、カリフォルニア州サンディエゴ)で、データを分析し、IC
50値を計算した(図4A~4B及び表6)。競合FACS研究は、16F10H12C11を除いて、0.75nM~73.5nMの範囲のIC
50値で、マウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体がヒトTIGIT及びヒトPVR間の結合を遮断する能力を示した。
実施例6:ヒトTIGITに対するマウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体のエピトープ結合
128E3G7F5、121C2F10B5、104G12E12G2、83G6H11C12、92E9D4B4、100C4E7D11、及び64G1E9B4へのエピトープ結合試験を、Octet RED96機器(ForteBio;カリフォルニア州メンロパーク)で実施した。全ての測定を30℃で実施した。アミンカップリング法を使用して、目的の1つの抗体をバイオセンサー上に固定化した。検体1として使用されるように、抗原タンパク質TIGITをPBST緩衝液(1xのPBS、pH7.4、及び0.05%のTween-20)で希釈した。抗原タンパク質TIGIT(検体1と同じ濃度)及び2次抗体の混合物を検体2として使用した。コーティングされたバイオセンサーを最初に検体1に浸し、次に、再生及び平衡化後に、検体2に浸した。検体1及び検体2のセンサーグラムを比較した。検体1の結合レベルが検体2の結合レベルよりも大幅に高い場合、第2の抗体は、標的タンパク質TIGITの結合について固定化された抗体と競合することができると考えられた。検体1の結合レベルが検体2の結合レベルよりも大幅に低い場合、第2の抗体は、標的タンパク質TIGITの結合について固定化された抗体と競合することができないと考えられた。全ての抗体が分析されるまで、実験を繰り返した。128E3G7F5、121C2F10B5、104G12E12G2、83G6H11C12、92E9D4B4、100C4E7D11、及び64G1E9B4を、3つのグループにマッピングした(表7)。各グループのマウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体は、ヒトTIGITにおいて密接に関連するエピトープまたは同じエピトープを有する。
実施例7:T細胞で過剰発現されたTIGITへのPVRの結合により抑制されたT細胞活性化に対するマウス抗ヒトTIGIT抗体の中和効果
T細胞受容体(TCR)アクチベーターを安定的にトランスフェクトすることにより、CHO-K1細胞を人工樹状細胞(APC)になるように設計した。次に、CHO-K1 APCをPVRで過剰発現させた。ジャーカット細胞株をNFAT誘導性ルチアレポーター構築物で安定的にトランスフェクトして、ジャーカット/NFATレポーター細胞株を生成した。次に、ジャーカット/NFATレポーター細胞株を、ヒトTIGITで過剰発現させた。CHO-K1 APC/PVR細胞をジャーカット/NFATレポーター/TIGIT細胞と共培養して、マウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体の中和活性を評価した。ジャーカット/NFATレポーター/TIGIT細胞を、CHO-K1 APC/PVR細胞を加える前に、各マウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体の連続希釈液と共に30分間プレインキュベートした。数時間の相互作用の後、20μlの上清を、IL-2測定のために各ウェルから収集し、次に、ONE-STEP(商標)ルシフェラーゼ試薬を、NFAT活性を測定するために、系に加えた。ジャーカット/NFATレポーター/TIGIT細胞の活性化を、ルシフェラーゼシグナルの強度またはIL-2の分泌により評価した。2つの細胞間のTIGITへのPVRの結合は、ジャーカット/NFATレポーター/TIGIT細胞の活性化を抑制した。マウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体は、PVR及びTIGIT間の相互作用を遮断し、次に、TIGITへのPVRの阻害を中和する。より多くの中和抗体を加え、より多くのジャーカット/NFATレポーター/TIGIT細胞を活性化し、より多くのルシフェラーゼシグナルまたはより多くのIL-2を分泌した(図5A~5B、表8、及び表9)。非線形回帰を使用するPRISM(商標)(GraphPad Software、カリフォルニア州サンディエゴ)で、データを分析し、EC
50値を、正規化されたルシフェラーゼシグナル及びIL-2分泌の両方で計算した。
実施例8:ヒトTIGIT組み換えタンパク質へのキメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体またはヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体の結合
100C4E7D11または64G1E9B4の重鎖及び軽鎖の可変ドメインをヒトIgG1の定常領域と融合させることにより、キメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体(100C4E7D11キメラまたは64G1E9B4キメラ)を作成した。
100C4E7D11の重鎖(配列番号105)及び軽鎖(配列番号113)のヒト化可変ドメインをヒトIgG1の定常領域と融合させることにより、100C4E7D11のヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体(100C4E7D11VH1_VL1)を作成した。
64G1E9B4の重鎖(配列番号109)及び軽鎖(配列番号118)のヒト化可変ドメインをヒトIgG1の定常領域と融合させることにより、64G1E9B4のヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体(64G1E9B4VH1_VL1.M1)を作成した。ヒト化64G1E9B4VH1_VL1.M1モノクローナル抗体は、配列番号78の軽鎖CDRに1つのアミノ酸置換を含み、置換が1K位に形成され、残基1KがRに置換される。
64G1E9B4の重鎖(配列番号109)及び軽鎖(配列番号118)のヒト化可変ドメインをヒトIgG1の定常領域と融合させることにより、64G1E9B4のヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体(64G1E9B4VH1.M1_VL1.M1)を作成した。ヒト化64G1E9B4VH1.M1_VL1.M1モノクローナル抗体は、配列番号52の重鎖CDRに1つのアミノ酸置換を含み、置換が7D位に形成され、残基7DがGに置換される。それはまた、配列番号78の軽鎖CDRに1つのアミノ酸置換を含み、置換が1K位に形成され、残基1KがRに置換される。
表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサーBIACORE(登録商標)T200(GE Healthcare)を使用して、ヒトTIGITへのキメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体及びヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体の結合動態を決定した。異なる濃度のキメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体またはヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体を、50nMで開始し、3倍連続希釈で調製した。各キメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体または各ヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体を、Fcキャプチャー法でセンサーチップ上に固定化した。HISタグ付きのヒトTIGITタンパク質を検体として使用した。BIACORE(登録商標)T200評価ソフトウェアを使用して、解離(k
d)及び会合(k
a)の速度定数を得た。見かけの平衡解離定数(K
D)をk
d対k
aの比から計算した。表10に示されるように、キメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体及びヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体は、ヒトTIGITタンパク質に相当する結合動態を有していた(表10)。
実施例9:CHO-K1細胞で発現されたヒトまたはカニクイザルTIGITへのキメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体及びヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体の結合
蛍光活性化細胞選別(FACS)ベースのアッセイを使用して、CHO-K1細胞で過剰発現されたヒトまたはカニクイザルTIGITへのキメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体及びヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体の結合親和性を決定した。FACS分析のために1次抗体として、キメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体及びヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体を調製した(ヒトTIGITの場合100μM、カニクイザルTIGITの場合55.6μMで開始し、10の濃度で3倍連続希釈)。ヒトTIGITを発現するCHO-K1細胞を接着培養フラスコから分離し、(両方とも96ウェルプレートで)様々な濃度のマウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体と混合した。混合物を室温で30分間平衡化し、FACS緩衝液(1%のBSAを含有するPBS)で3回洗浄した。2次抗体としてiFluor標識ヤギ抗マウスIgGを加え、室温で45分間インキュベートした。最終的に、細胞をPBSで3回洗浄し、シグナルをFACS BD Caliburで読み取った。非線形回帰を使用するPRISM(商標)(GraphPad Software、カリフォルニア州サンディエゴ)で、データを分析し、EC
50値を計算した。図6A及び表11に示されるように、FACS研究は、キメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体及びヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体が、0.4nM~1.2nMの範囲のEC
50値で、CHO-K1細胞で過剰発現されたヒトTIGITに結合したことを示した。
キメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体及びヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体はまた、カニクイザルTIGITに結合した。図6B及び表12に示されるように、FACS研究は、キメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体及びヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体が、0.9~2.9nMの範囲のEC
50値で、CHO-K1細胞で過剰発現されたカニクイザルTIGITに結合したことを示した。
実施例10:キメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体またはヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体とPVR組み換えタンパク質との間のCHO-K1細胞で過剰発現されたヒトTIGITに対する競合的結合
FACSアッセイを使用して、キメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体またはヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体とPVR組み換えタンパク質との間のヒトTIGITに対する競合的結合を評価した。キメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体またはヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体とPVRとの間のヒトTIGITに対する競合的結合を評価するために、キメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体またはヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体試料を調製した(300nMで開始し、10の濃度で3倍連続希釈)。ヒトTIGITを発現するCHO細胞を、接着培養フラスコから解離させ、様々な濃度の各キメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体またはヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体及びビオチン標識を有する5μg/mlのヒトTIGIT-Fc融合タンパク質と混合した。混合物を室温で30分間平衡化し、FACS緩衝液(1%のBSAを含有するPBS)で3回洗浄した。次に、PE/Cy5ストレプトアビジン2次抗体を混合物に添加し、室温で15分間インキュベートした。その後、細胞をFACS緩衝液で洗浄し、フローサイトメトリーで分析した。非線形回帰を使用するPRISM(商標)(GraphPad Software、カリフォルニア州サンディエゴ)で、データを分析し、IC
50値を計算した(図7及び表13)。競合FACS研究は、0.4nMから1.3nMの範囲のIC
50値で、ヒトTIGIT及びヒトPVR間の結合へのブロッキングに対するマウス抗ヒトTIGITモノクローナル抗体の能力を示した。
実施例11:T細胞で過剰発現されたTIGITに対するPVRの結合により抑制されたT細胞活性化に対するキメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体及びヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体の中和効果
T細胞受容体(TCR)アクチベーターを安定的にトランスフェクトすることにより、CHO-K1細胞を人工樹状細胞(APC)になるように設計した。次に、PVRをCHO-K1 APCで過剰発現させた。ヒトTIGITを、ジャーカット細胞株で過剰発現させた。CHO-K1 APC/PVR細胞を、ジャーカット/TIGIT細胞と共に共培養して、キメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体及びヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体の中和活性を評価した。ジャーカット/TIGIT細胞を、各キメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体または各ヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体の連続希釈液と共に、CHO-K1 APC/PVR細胞を加える前に30分間プレインキュベートした。数時間の相互作用の後、IL-2測定のために各ウェルから20μlの上清を収集した。ジャーカット/TIGIT細胞の活性化を、IL-2の分泌により評価した。2つの細胞間のTIGITへのPVRの結合は、ジャーカット/TIGIT細胞の活性化を抑制した。キメラ抗ヒトTIGITモノクローナル抗体またはヒト化抗ヒトTIGIT抗体は、PVR及びTIGIT間の相互作用を遮断し、次に、TIGITでのPVRの抑制を中和する。中和抗体を加えるほど、より多くのジャーカット/TIGIT細胞が活性化され、より多くのIL-2が分泌された(図8及び表14)。非線形回帰を使用するPRISM(商標)(GraphPad Software、カリフォルニア州サンディエゴ)で、データを分析し、EC
50値をIL-2分泌で計算した。
実施例12:抗TIGIT抗体のin vivo抗腫瘍効果
マウスの結腸腺癌細胞株であるMC38腫瘍細胞をC57BL/6ヒトTIGIT Knockin(KI)マウス(Biocytogen;マサチューセッツ州ウスター)に移植することにより、マウス異種移植モデルを調製した。MC38腫瘍細胞を培養し、マグネシウム不含HBSS-/-及びカルシウム不含HBSS-/-に懸濁し、1×106の細胞を、6~8週齢の雌C57BL/6ヒトTIGIT KIマウスの脇腹に皮下注射した。ノギスを使用して、腫瘍体積を測定し、式(長さx幅x幅)/2で計算した。平均腫瘍体積が90~100mm3に達した時、マウスをランダム化して、ヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体での処置を開始した。ヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体を、i.p.で4日毎に1回投与した(5mg/kg)。研究全体を通して、体重を測定した。
図9A~9Bに示されるように、ヒト化抗ヒトTIGITモノクローナル抗体、100C4E7D11VH1_VL1、64G1E9B4VH1_VL1.M1、及び64G1E9B4VH1.M1_VL1.M1は、ヒトIgG対照と比較してより高い腫瘍抑制有効性を示した。各試験グループの平均体重は、試験期間中、有意差を示さなかった。
ID:配列番号
ID:配列番号
ID:配列番号;CDR:相補性決定領域
ID:配列番号;CDR:相補性決定領域