JP7314958B2 - 熱電変換素子 - Google Patents

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Description

本発明は、磁性合金材料を含む熱電変換素子に関する。
持続可能な社会に向けた熱マネジメント技術の一つとして、熱電変換への期待が高まっている。熱は、体温や太陽熱、工業排熱など様々な場面で回収できるエネルギー源である。そのため、エネルギー利用の高効率化や、携帯端末やセンサ等への給電、熱流センシングによる熱の流れの可視化といった様々な用途において、熱電変換への期待がさらに高まることが予想される。
特許文献1~3には、ホイスラー構造を有する鉄-バナジウム-アルミニウム(FeVAl)系化合物を含む熱電変換素子が開示されている。特許文献1~3の熱電変換素子では、両主面間に温度差を与えることによって正孔および電子が移動し、両端子間に起電力が発生するゼーベック効果が発現する。
近年、印加された温度勾配を電流に変換する磁性材料を含む熱電変換素子の開発が行われている。そのような熱電変換素子には、温度勾配によって異常ネルンスト効果やスピンゼーベック効果の発現する磁性材料が用いられる。
異常ネルンスト効果の発現する熱電変換素子は、一方向に磁化する磁性金属を含む。異常ネルンスト効果が発現する磁性材料に温度勾配を印加すると、温度勾配によって生成される熱流が磁性金属内で電流に変換される。異常ネルンスト効果を用いた熱電変換素子は、ゼーベック効果を用いた素子に比べて素子構造がシンプルであるため、様々な用途への応用が期待できる。
非特許文献1には、異常ネルンスト効果の発現する磁性材料として、スピン軌道相互作用の大きい白金を含む鉄-白金(FePt)合金が開示されている。また、非特許文献2には、異常ネルンスト効果の発現する磁性材料として、窒化鉄(γ’-Fe4N)系材料や鉄-アルミニウム(Fe80Al20)系合金材料が開示されている。非特許文献1~2の磁性材料は、非磁性基板上に強磁性材料の薄膜が成膜された薄膜型素子である。
また、非特許文献3には、異常ネルンスト効果に基づいた起電力(出力電圧)が膜厚依存性を示すことが開示されている。異常ネルンスト効果に基づいた起電力が膜厚依存性を示すことは、同じ組成の磁性材料を用いた場合であっても、数十~数百ナノメートル程度の厚さの薄膜系と、10マイクロメートル以上の厚さのバルク系とでは起電力が異なる可能性を示唆している。すなわち、薄膜系で異常ネルンスト効果の大きな材料がバルク系でも大きな異常ネルンスト効果を示す可能性があり、薄膜系で異常ネルンスト効果の小さな材料がバルク系では大きな異常ネルンスト効果を示す可能性もある。
スピンゼーベック効果を用いた熱電変換素子は、一方向に磁化を有する磁性絶縁体層と、導電性を持つ起電体層の2層構造によって構成される。スピンゼーベック効果を用いた熱電変換素子の面外方向に温度勾配を印加すると、スピンゼーベック効果によって磁性絶縁体中にスピン流というスピン角運動量の流れが誘起される。磁性絶縁体中に誘起されたスピン流が起電体層に注入されると、逆スピンホール効果によって起電膜中の面内方向に電流が流れる。スピンゼーベック効果を用いた熱電変換素子は、熱伝導率が比較的小さい磁性絶縁体を用いて構成されることから、効果的な熱電変換を行うための温度差保持が可能となる。
特許文献4には、単結晶のイットリウムガリウム鉄ガーネット(以下、YIGと記載)を磁性絶縁層とし、白金ワイヤを起電体層とする熱電変換素子が開示されている。非特許文献4には、多結晶Mn-Znフェライトの焼結体を磁性絶縁層とし、白金薄膜を起電体層とする熱電変換素子が開示されている。
また、非特許文献5には、スピンゼーベック効果と異常ネルンスト効果とを併用するハイブリッド型のスピン熱電素子が開示されている。スピンゼーベック効果と異常ネルンスト効果とは、いずれも面外方向の温度勾配によって面内方向の起電力を誘起するという同様の対称性をもつため、二つの効果を組み合わせれば、熱電変換効率を向上できる。非特許文献5には、ニッケルと鉄の合金であるパーマロイ以外は開示されていないため、スピンゼーベック効果と異常ネルンスト効果とを併用するハイブリッド素子を設計する際には、熱電変換効率をさらに向上させるための知見や指針が求められる。
特開2004-119647号公報 特開2004-253618号公報 特開2008-021982号公報 国際公開第2009/151000号
M. Mizuguchi, S. Ohata, K. Uchida, E. Saitoh, K. Takanashi, "Anomalous Nernst Effect in an L10-Ordered Epitaxial FePt Thin Film", Appl. Phys. Express 5 093002 (2012) S. Isogami, T.Takanashi, M. Mizuguchi, "Dependence of anomalous Nernst effect on crystal orientation in highly ordered γ-Fe4N films with anti-perovskite structure", Appl. Phys. Express 10, 073005 (2017) T. Chuang, P. Su, P. Wu, S. Huang, "Enhancement of the anomalous Nernst effect in ferromagnetic thin films", Phys. Rev B 96, 174406 (2017) K. Uchida, T. Nonaka, T. Ota, E. Saitoh, "Longitudinal spin-Seebeck effect in sintered polycrystalline (MnZn)Fe2O4", Appl. Phys. Lett. 97, 262504 (2010) B. Miao, S. Huang, D. QU, C. Chien, "Inverse Spin Hall Effect in a Ferromagnetic Metal", Phys. Rev. Lett. 111, 066602 (2013)
これまで、大きな異常ネルンスト効果を発現するためには、白金や金などの貴金属や、希土類元素などのスピン軌道相互作用の大きな重元素が添加される必要があると考えられていた。しかし、白金や金などの貴金属や、希土類元素などの重元素は希少であり、高価である。
非特許文献1の熱電変換素子には、白金が添加されている。そのため、非特許文献1の熱電変換素子には、材料コストが高くなるという問題点があった。また、ゼーベック効果を用いた熱電変換素子と比較して、異常ネルンスト効果やスピンゼーベック効果を用いた熱電変換素子は熱電変換効率が低いため、実用化のためには更なる熱電変換効率の向上が求められる。
非特許文献2の熱電変換素子は、鉄とアルミニウムを主成分とするため、材料コストを低く抑えられる。非特許文献2の熱電変換素子には、鉄とアルミニウムの原子組成比が8:2である場合に比較的大きな異常ネルンスト効果を得られることが記載されているが、測定された試料数の制限から、異常ネルンスト効果が最大となる組成は開示されていない。そのため、異常ネルンスト効果が最大となる組成を明らかにすることが求められる。
また、非特許文献1~2の熱電変換素子は、異常ネルンスト効果の発現する強磁性膜の膜厚が100ナノメートル程度以下の薄膜型素子である。薄膜型素子の場合、発電層である強磁性膜が薄いため、膜面に垂直な面外方向の温度勾配を用いる場合、膜にかかる実効的な温度差が小さくなり、熱電変換の効率を向上させることが難しい。強磁性層における効果的な温度差保持によって熱電変換を行うためには、強磁性層の厚みが10マイクロメートル以上のバルク型素子を用いることが望ましい。しかし、非特許文献3に示されているように、同じ材料であっても、薄膜型素子とバルク型素子とでは異常ネルンスト効果が大きく異なる可能性がある。そのため、効果的な温度差保持が可能で、異常ネルンスト効果が大きく、かつ材料のコストの安価なバルク型素子が求められる。
本発明の目的は、上述した課題を解決するために、異常ネルンスト効果が大きく、かつ材料コストの安価な発電層を有する熱電変換素子を提供することにある。
本発明の一態様の熱電変換素子は、異常ネルンスト効果を呈し、鉄とアルミニウムとを合計で70重量パーセント以上含有する鉄-アルミニウム系の合金を含む。
本発明の一態様の熱電変換素子は、鉄とアルミニウムとを合計で70重量パーセント以上含有する鉄-アルミニウム系の磁性合金材料を含む発電層を有する。発電層は、温度勾配が印加された際に、磁性合金材料に発現する異常ネルンスト効果によって、磁性合金材料の磁化の方向と、印加された温度勾配の方向とのそれぞれに対して交差する方向に起電力を生成する。
本発明によれば、異常ネルンスト効果が大きく、かつ材料コストの安価な発電層を有する熱電変換素子を提供することが可能になる。
本発明の第1の実施形態に係る熱電変換素子の一例を示す概念図である。 本発明の第2の実施形態に係る熱電変換素子の一例を示す概念図である。 本発明の第3の実施形態に係る熱電変換素子の一例を示す概念図である。 本発明の第4の実施形態に係る熱電変換素子の一例を示す概念図である。 本発明の第4の実施形態に係る熱電変換素子に含まれる鉄-アルミニウム合金ネットワーク体の構造の一例を示す概念図である。 本発明の実施例1に係る熱電変換素子の一例を示す概念図である。 本発明の実施例1-1に係る熱電変換素子に用いた磁性材料(Fe3Al合金)のX線回折パターンである。 本発明の実施例1-1に係る磁性材料(鉄-アルミニウム系合金)を研磨した試料をSEM(Scanning Electron Microscope)で撮影した画像である。 本発明の実施例1に係る熱電変換素子の熱起電力の外部磁場依存性を示すグラフである。 本発明の実施例1に係る熱電変換素子に用いた磁性材料(鉄-アルミニウム系合金)の熱起電力の材料組成依存性を示すグラフである。 本発明の実施例1-2に係る磁性材料(鉄-アルミニウム系合金)を研磨した試料をSEMで撮影した画像である。 本発明の実施例1-1~4に係る磁性材料(鉄-アルミニウム系合金)の熱起電力の測定結果をまとめたグラフである。 本発明の実施例1-1に係る磁性材料の結晶粒界における熱電性能の増大効果について説明するための概念図である。 本発明の実施例2に係る熱電変換素子の一例を示す概念図である。 本発明の実施例2に係る熱電変換素子の熱起電力の外部磁場依存性を示すグラフである。 本発明の実施例1に係る熱電変換素子に用いた磁性材料(SUS630+アルミニウム系合金)の熱起電力の材料組成依存性を示すグラフである。 本発明の実施例3に係る熱電変換素子の一例を示す概念図である。 本発明の実施例3に係る熱電変換素子の熱起電力の外部磁場依存性を示すグラフである。 本発明の実施例4に係る熱電変換素子の一例を示す概念図である。 本発明の実施例4に係る熱電変換素子に含まれる鉄-アルミニウム合金ネットワーク体の構造の一例を示す概念図である。
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
以下の実施形態においては、鉄(Fe)とアルミニウム(Al)を主成分とする鉄-アルミニウム系(FeAl系)のバルク型合金材料を発電層に用いた熱電変換素子を示す。以下の実施形態で示すFeAl系合金材料は、白金(Pt)を含む鉄-白金系(FePt系)のバルク型合金材料や、コバルト-白金系(CoPt系)のバルク型合金材料などよりも高い熱電変換効率を実現する。なお、以下の実施形態で用いる「バルク」という用語は、薄膜とは異なり基板が無くても自立可能な程度の厚さの材料を示す。典型的には、厚みが10マイクロメートル(μm)以上の材料のことをバルクと呼ぶ。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る熱電変換素子について図面を参照しながら説明する。本実施形態の熱電変換素子は、鉄(Fe)とアルミニウム(Al)を主成分とする鉄-アルミニウム合金(FeAl合金)を含む発電層を有する。
図1は、本実施形態の熱電変換素子1の一例を示す概念図である。熱電変換素子1は、FeAl合金を含む発電層10を有する。図1には、発電層10の一主面上に電極端子14aと電極端子14bとを設置し、電極端子14aと電極端子14bとの間の電圧を測定する電圧計15を示す。以下において、面内方向とは発電層10の主面に対して平行な方向を示し、面外方向とは発電層10の主面に対して垂直な方向を示す。
熱電変換素子1は、FeとAlを主成分とするFeAl合金を含む発電層10を有する。FeAl合金は、強磁性体であり、面内方向(図面のy方向)の磁化Mを有する。
発電層10の面外方向(図1のz方向)に温度勾配dTが印加されると、異常ネルンスト効果によって、磁化Mと温度勾配dTのそれぞれの方向に垂直な面内方向(図1のx方向)に起電力Eが生じる。磁化Mと温度勾配dTのそれぞれの方向に垂直な面内方向(図1のx方向)の起電力Eを電極端子14aと電極端子14bの間から電気として取り出すことによって熱電変換が可能となる。
発電層10は、FeおよびAlを70重量パーセント(wt%)以上含有するFeAl合金を含む。Feに対するAlの添加量は、およそ10wt%から17wt%の範囲内であることが好ましい。言い換えると、Feに対するAlの添加量は、20原子パーセント(at%)から30at%の範囲内であることが好ましい。さらに、FeとAlとの原子数比は、3:1(重量比で85.7:14.3)のFe3Alであることがより好ましい。Fe3Alは、面心立方(fcc:face-centered cubic)格子構造の規則合金である。なお、発電層10のFeAl合金は、FeとAlの組成が上述の範囲内に収まる限りにおいては、FeとAl以外の不純物を20モルパーセント(mol%)以下含んでいてもよい。
発電層10の膜厚は、十分な温度勾配dTを保持するために、一定以上の厚みを有することが好ましい。例えば、発電層10の膜厚は、少なくとも1マイクロメートル(μm)以上であることが好ましい。例えば、発電層10の膜厚は、10μm以上のバルク体であることがより好ましい。例えば、発電層10の膜厚は、1ミリメートル(mm)以上のバルク体であることがより好ましい。
以上のように、本実施形態の熱電変換素子は、異常ネルンスト効果を呈し、鉄とアルミニウムとを合計で70重量パーセント以上含有する鉄-アルミニウム系の合金を含む。
本実施形態の一態様の熱電変換素子は、鉄とアルミニウムとを合計で70重量パーセント以上含有する鉄-アルミニウム系の磁性合金材料を含む発電層を有する。発電層は、温度勾配が印加された際に、磁性合金材料に発現する異常ネルンスト効果によって、磁性合金材料の磁化の方向と、印加された温度勾配の方向とのそれぞれに対して交差する方向に起電力を生成する。発電層は、温度勾配が印加された際に、磁性合金材料の磁化の方向と、印加された温度勾配の方向とのそれぞれに対して、理論的には略垂直な方向に起電力を生成する。
本実施形態の一態様において、発電層は、対向する二つの主面を含む板状の形状を有し、磁性合金材料が主面の面内方向に磁化している。発電層は、主面の面外方向に温度勾配が印加された際に、磁性合金材料の磁化の方向と、印加された温度勾配の方向とのそれぞれに対して交差する方向に起電力を生成する。発電層は、主面の面外方向に温度勾配が印加された際に、磁性合金材料の磁化の方向と、印加された温度勾配の方向とのそれぞれに対して、理論的には略垂直な方向に起電力を生成する。
例えば、発電層の厚さは、1マイクロメートル以上であることが好ましい。例えば、磁性合金材料における鉄に対するアルミニウムの含有量が10重量パーセントから17重量パーセントの範囲内であることが好ましい。例えば、磁性合金材料における鉄とアルミニウムとの組成比が3対1であり、磁性合金材料が規則合金であることが好ましい。
本実施形態の熱電変換素子は、鉄-白金合金(FePt合金)やコバルト-白金合金(CoPt合金)よりも熱電変換効率の高いFeAl合金を含む発電層を有する。本実施形態の熱電変換素子の発電層に含まれるFeAl合金によれば、FePt合金やCoPt合金の数倍程度の起電力が得られる。また、本実施形態の熱電変換素子の発電層に含まれるFeAl合金は、白金(Pt)やイリジウム(Ir)などの貴金属と比較して安価なFeやAlを主成分とするために安価である。
すなわち、本実施形態によれば、異常ネルンスト効果が大きく、かつ材料コストの安価な発電層を有する熱電変換素子を提供できる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る熱電変換素子について図面を参照しながら説明する。本実施形態の熱電変換素子は、鉄-アルミニウム-クロム合金(FeAlCr合金)を含む発電層を有する。
図2は、本実施形態の熱電変換素子2の一例を示す概念図である。熱電変換素子2は、FeAlCr合金を含む発電層20を有する。図2には、発電層20の一主面上に電極端子24aと電極端子24bとを設置し、電極端子24aと電極端子24bとの間の電圧を測定する電圧計25を示す。
発電層20は、FeとAlを合計で70wt%以上含有するFeAl系の磁性合金材料の発電層である。発電層20は、Fe、Al、およびCrを主成分とするFeAlCr合金を含む。FeAlCr合金は、強磁性体であり、面内方向(図面のy方向)の磁化Mを有する。
発電層20の面外方向(図2のz方向)に温度勾配dTが印加されると、異常ネルンスト効果によって、磁化Mと温度勾配dTのそれぞれの方向に垂直な面内方向(図2のx方向)に起電力Eが生じる。磁化Mと温度勾配dTのそれぞれの方向に垂直な面内方向(図2のx方向)の起電力Eを電極端子24aと電極端子24bの間から電気として取り出すことによって熱電変換が可能となる。
発電層20のFeAlCr合金は、10wt%以上25wt%以下のCrを含む。また、Feに対するAlの添加量は、およそ10wt%(20mol%)から17wt%(30mol%)の範囲内であることが好ましい。言い換えると、Feに対するAlの添加量は、20原子パーセント(at%)から17at%の範囲内であることが好ましい。さらに、FeとAlとの原子数比は、3:1(重量比で85.7:14.3)であることがより好ましい。なお、発電層20のFeAlCr合金は、Fe、Al、Crの組成が上述の範囲内に収まる限りにおいては、Fe、Al、Cr以外の不純物を10モルパーセント(mol%)以下含んでいてもよい。
発電層20の膜厚は、十分な温度勾配dTを保持するために、一定以上の厚みを有することが好ましい。例えば、発電層20の膜厚は、少なくとも1マイクロメートル(μm)以上であることが好ましい。例えば、発電層20の膜厚は、10μm以上のバルク体であることがより好ましい。例えば、発電層20の膜厚は、1ミリメートル(mm)以上のバルク体であることがより好ましい。
以上のように、本実施形態の熱電変換素子は、熱電変換効率の高いFeAlCr合金を発電層として含む。すなわち、本実施形態の熱電変換素子は、10重量パーセント以上25重量パーセント以下のクロムを含む磁性合金材料を含む発電層を有する。本実施形態の熱電変換素子は、ステンレス系のCrを含むFe系合金にAlを添加したFeAlCr合金を主成分とするため、第1の実施形態の熱電変換素子と比べて腐食しにくく、かつ安価である。
すなわち、本実施形態によれば、異常ネルンスト効果が大きく、材料コストが安価であり、かつ耐腐食性の高い発電層を有する熱電変換素子を提供できる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る熱電変換素子について図面を参照しながら説明する。本実施形態の熱電変換素子は、異常ネルンスト効果の発現する導電性の磁性体層(第1磁性体層とも呼ぶ)と、スピンゼーベック効果の発現する絶縁性の磁性体層(第2磁性体層とも呼ぶ)とを積層させた構造の発電層を含む。
図3は、本実施形態の熱電変換素子3の一例を示す概念図である。熱電変換素子3は、第1磁性体層31と第2磁性体層32とを積層させた構造の発電層30を有する。図3には、発電層30の一主面上に電極端子34aと電極端子34bとを設置し、電極端子34aと電極端子34bとの間の電圧を測定する電圧計35を示す。
第1磁性体層31は、異常ネルンスト効果の大きい磁性材料の層である。第1磁性体層31は、一方向(図3のy方向)の磁化M1を有する。第1磁性体層31は、FeとAlを合計で70wt%以上含有するFeAl系の磁性合金材料の層である。第1磁性体層31には、第1の実施形態のFeAl合金や、第2の実施形態のFeAlCr合金を適用することが好ましい。
例えば、第1磁性体層31は、スパッタ法やめっき法、真空蒸着法などを用いて形成できる。
第1磁性体層31は、二つの役割を兼ね備える。一つ目は、第2磁性体層32のスピンゼーベック効果によって流入するスピン流を、逆スピンホール効果によって起電力(電場ESSE)に変換するスピン流-電流変換の役割である(SSE:Spin Seebeck Effect)。二つ目は、異常ネルンスト効果によって温度勾配dTから直に起電力(電場EANE)を生成する役割である(ANE:Anomalous Nernst Effect)。
異常ネルンスト効果によって生成される電場EANEの向きは、以下の式1に示すように、第1磁性体層31の磁化M1と温度勾配dTとの外積で規定される。
ANE∝M1×dT・・・(1)
第2磁性体層32は、スピンゼーベック効果の発現する磁性材料の層である。第2磁性体層32は、第1磁性体層31と同様に、一方向(図3のy方向)の磁化M2を有する。第2磁性体層32は、イットリウム鉄ガーネット(YIG:Yttrium Iron Garnet)や、Biが添加されたYIG(Bi:YiG)、ニッケル亜鉛フェライト(NiZnフェライト)などの磁性材料を含む。例えば、イットリウム鉄ガーネットとしては、Y3Fe512や、Biが添加されたBiY2Fe512を一例として挙げられる。例えば、NiZnフェライトとしては、(Ni,Zn)xFe3-x4を一例として挙げられる(xは1以下の正数)。
例えば、第2磁性体層32は、スパッタ法や有機金属分解法、パルスレーザー堆積法、ゾルゲル法、エアロゾルデポジション法、フェライトめっき法、液相エピタキシー法などを用いて成膜できる。この場合、熱電変換素子3は、何らかの基体上に成膜される。
第2磁性体層32には、主面に対して面外方向(図3のz方向)の温度勾配dTが印加された際に、スピンゼーベック効果によってスピン流Jsが生成する。スピン流Jsの方向は、温度勾配dTの方向(図3のz方向)と平行あるいは反平行の方向(図3のz方向)である。図3の例では、第2磁性体層32に+z方向の温度勾配dTが印加されると、+z方向あるいは-z方向に沿ったスピン流Jsが生成される。第1磁性体層31と第2磁性体層32との界面においてスピン流Jsが生成すると、逆スピンホール効果によって第1磁性体層31に面内方向の起電力が生成される。
第2磁性体層32は、熱電変換効率の観点から熱伝導率が小さいことが望ましい。そのため、第2磁性体層32には、導電性の無い磁性絶縁体や、電気抵抗の比較的大きな磁性半導体を用いることが望ましい。
スピンゼーベック効果によって生成される電場ESSEの向きは、以下の式2に示すように、第2磁性体層32の磁化M2と温度勾配dTとの外積で規定される。
SSE∝M2×dT・・・(2)
実際の電場の符号は材料にも依存するが、熱電変換素子3の素子構成の場合、磁化Mと磁化M2の方向が同一であれば、ある温度勾配dTに対して、電場ESSEと電場EANEとはいずれも同一方向に生成される。したがって、このような条件の下では異常ネルンスト効果とスピンゼーベック効果とがお互いを強め合い、生成される電場の絶対値は、以下の式3で示すように、2つの効果による起電力が加算された値(EHybrid)になる。
|EHybrid|=|ESSE|+|EANE|・・・(3)
図3の例では、第1磁性体層31の磁化Mおよび第2磁性体層32の磁化M2の方向は+y方向であり、温度勾配dTの方向は+z方向であり、第1磁性体層31に生成する起電力の方向は+x方向となるように構成されている。
発電層30における熱電変換を効果的に行うためには、温度勾配dTを保持することが求められる。温度勾配dTを保持するために、第2磁性体層32の厚さは、1μm以上であることが望ましい。また、スピンゼーベック効果を効果的に発現させるためには、膜内でのスピン流の散逸の影響を避けることが求められる。膜内でのスピン流の散逸の影響を避けるために、第1磁性体層31の膜厚は、100nm以下であることが望ましい。また、熱電変換素子3全体を支えるために、第2磁性体層32の下部に基板を設けてもよい。
以上のように、本実施形態の熱電変換素子は、異常ネルンスト効果の発現する第1磁性体層と、スピンゼーベック効果の発現する第2磁性体層と積層させた構造を有する発電層を有する。すなわち、本実施形態の熱電変換素子は、磁性合金材料を含む第1磁性体層と、温度勾配の印加によってスピンゼーベック効果の発現する第2磁性体層とを積層させた構造の発電層を有する。例えば、第1磁性体層の厚さが100ナノメートル以下であることが好適である。
本実施形態の熱電変換素子においては、磁性合金材料を含む第1磁性体層と、温度勾配の印加によってスピンゼーベック効果の発現する第2磁性体層とを積層させた構造により、異常ネルンスト効果とスピンゼーベック効果とを併用できる。そのため、本実施形態の熱電変換素子によれば、第1~第2の実施形態の熱電変換素子よりも大きな熱起電力を生成することができる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る熱電変換素子について図面を参照しながら説明する。本実施形態の熱電変換素子は、異常ネルンスト効果の発現する導電性の磁性体ネットワークと、スピンゼーベック効果の発現する絶縁性の磁性体粒子とをコンポジットさせた構造の発電層を含む。
図4は、本実施形態の熱電変換素子4の一例を示す概念図である。熱電変換素子4は、第1支持層43aと第2支持層43bとの間に発電層40を挟み込んだ構造を有する。図4には、発電層40の対面し合う2つの端面上に電極端子44aと電極端子44bとを設置し、電極端子44aと電極端子44bとの間の電圧を測定する電圧計45を示す。
図5は、発電層40の構造の一例を示す概念図である。図5は、zy平面で切断された発電層40の断面を+x方向の視座から見た図である。発電層40は、磁性体ネットワーク401と、磁性体ネットワーク401の内部に分散された粒状の磁性体粒子402とを含む。言い換えると、発電層40においては、粒状の磁性体粒子402が互いに隔離して配置され、磁性体粒子402の粒と粒の間の隙間を埋めるように磁性体ネットワーク401が網状に広がっている。
磁性体ネットワーク401は、異常ネルンスト効果の大きい磁性材料を含む。磁性体ネットワーク401は、FeとAlを合計で70wt%以上含有するFeAl系の磁性合金材料のネットワーク構造体である。磁性体ネットワーク401には、第1の実施形態のFeAl合金や、第2の実施形態のFeAlCr合金を適用することが好ましい。
発電層40の内部で磁性体ネットワーク401が3次元的なネットワーク構造を有することにより、電極端子44aと電極端子44bとの間は電気的に接続される。
磁性体粒子402は、スピンゼーベック効果の発現する磁性材料を含む。磁性体粒子402は、イットリウム鉄ガーネット(YIG:Yttrium Iron Garnet)やニッケル亜鉛フェライト(NiZnフェライト)などの磁性材料を含む。例えば、イットリウム鉄ガーネットとしてはY3Fe512を一例として挙げられる。例えば、NiZnフェライトとしては、(Ni,ZnFe)34を一例として挙げられる。
磁性体粒子402は、面内方向(図5のx方向)の磁化を有する。なお、発電効率を最大化するために、個々の磁性体粒子402の粒径は、スピンゼーベック効果で誘起されるスピン流(マグノン流)の緩和長程度であることが望ましい。具体的には、磁性体粒子402の平均粒径は、300nm以上10μm以下であることが望ましい。
また、発電層40の両主面上には、第1支持層43aと第2支持層43bとが配置される。第1支持層43aは、発電層40の上面(第1面とも呼ぶ)に配置される。第2支持層43bは、発電層40の下面(第2面とも呼ぶ)に配置される。熱電変換素子4は、第1支持層43aと第2支持層43bとによって発電層40が支持されることによって、素子全体の強度が高められている。
第1支持層43aおよび第2支持層43bには、発電層40で生成される起電力をロスなく外部に取り出すために、電気を通さない絶縁体材料、もしくは抵抗率が1オームメートル(Ωm)以上の半導体材料を用いることが望ましい。
第1支持層43aおよび第2支持層43bを構成する材料は、熱電変換素子4の作製の都合上、発電層40を構成する金属材料や磁性絶縁体材料よりも融点が低いことが望ましい。スピンゼーベック効果の発現する磁性体粒子402は、磁性体粒子402に含まれる磁性体のキュリー温度以下の温度域で用いられる。そのため、磁性体粒子402に含まれる磁性体のキュリー温度以下の温度域で融けないように、第1支持層43aおよび第2支持層43bの材料の融点は、磁性体粒子402のキュリー温度より高いことが好ましい。
すなわち、熱電変換素子4を作製する際には、第1支持層43aおよび第2支持層43bの最低焼結温度と、発電層40の最低焼結温度との間に熱電変換素子4の焼結温度を設定する。このように、融点(および焼結温度)の低い材料を第1支持層43aおよび第2支持層43bとして用いれば、発電層40の本来の焼結温度よりも低い低温熱処理で熱電変換素子4を高い強度で一体に固形化できる。
例えば、磁性体粒子402として、キュリー温度が300~400℃、融点が1200~1700℃のフェライト系の材料を用いることを想定する。この場合、第1支持層43aおよび第2支持層43bを構成する材料の融点は、400℃以上1200℃以下であることが望ましい。具体的には、第1支持層43aおよび第2支持層43bを構成する材料には、酸化ビスマスBi23、酸化モリブデンMoO3、酸化ゲルマニウムGeO2などが好適である。
電極端子44aおよび電極端子44bは、発電層40の対向する2つの側端面上に設置される。図4において、電極端子44aは-y側の側端面(第3面とも呼ぶ)に設置され、電極端子44aは+y側の側端面(第4面とも呼ぶ)に設置される。電極端子44aおよび電極端子44bは、-z方向に印加された温度勾配dTによってy方向に生じる熱起電力を取り出すための端子である。電極端子44aおよび電極端子44bは、導電性を有する材料によって構成される。
図4の構造の熱電変換素子4に面外方向(図4のz方向)の温度勾配dTを印加すると、磁性体粒子402にはスピンゼーベック効果が発現する。磁性体粒子402にはスピンゼーベック効果が発現すると、図5のように、磁性体ネットワーク401と磁性体粒子402との界面においてスピン流Jsが生成される。磁性体ネットワーク401と磁性体粒子402との界面においてスピン流Jsが生成すると、逆スピンホール効果によって磁性体ネットワーク401に面内方向の起電力が生成される。図5には、逆スピンホール効果によって磁性体ネットワーク401の内部に電流jISHEが流れる様子を概念化して図示している(ISHE:Inverse Spin Hall Effect)。磁性体ネットワーク401は、発電層40の中でネットワーク状に広がって分散しているため、コンポジット体各部において生成された起電力は全体として加算され、電極端子44aと電極端子44bとを介して面内方向(図4のy方向)の起電力が得られる。
以上のように、本実施形態の熱電変換素子は、異常ネルンスト効果の発現する磁性体ネットワークで、スピンゼーベック効果の発現する磁性体粒子を分散保持させた構造を有する。すなわち、本実施形態の熱電変換素子は、磁性合金材料を含む磁性体ネットワークと、磁性体ネットワークの内部に分散され、温度勾配の印加によってスピンゼーベック効果の発現する磁性体粒子とによって構成される発電層を有する。
第3の実施形態の熱電変換素子の構造では、第2磁性体層におけるスピン流の緩和のため、発電層を厚くしても発電効率が効率的には大きくならない。それに対し、本実施形態の熱電変換素子によれば、異常ネルンスト効果の発現する磁性体ネットワークと、スピンゼーベック効果の発現する磁性体粒子とのコンポジット構造により、発電層を厚くすることによって発電効率が効率的に大きくなる。
続いて、第1~第4の実施形態の熱電変換素子について実施例(実施例1~4)を挙げて具体的に説明する。
(実施例1)
まず、第1の実施形態の熱電変換素子の実施例(実施例1)について図面を参照しながら説明する。図6は、実施例1の熱電変換素子100の概念図である。熱電変換素子100は、Fe3Alバルク合金を含む発電層110を有する。実施例1では、図6のように、発電層110の一方の主面上に電極端子140aと電極端子140bとを設置し、電極端子140aと電極端子140bとの間に電圧計150を設置した。実施例1においては、異なる原料や製法を用いて作製した同じ組成のFe3Alバルク合金に関する4つの実施例(実施例1-1~4)を挙げる。以下においては、各実施例(実施例1-1~4)に係るFe3Alバルク合金のサンプルについて熱電性能を評価し、それらの熱電性能を比較した例を示す。
〔実施例1-1〕
実施例1-1では、放電プラズマ焼結装置を用いた粉末冶金法によって発電層110(Fe3Alバルク合金)を作製した。まず、平均粒径が4μmのFe粉末と、平均粒径が3μmのAl粉末とを原子組成比3:1で調合し、両者が均一に混和するように乳鉢で40分間混合することによって混合粉末を調製した。次に、混合粉末を黒鉛の型に詰め、50メガパスカル(MPa)の圧力を印加した状態で、真空中900℃で1時間焼結することによってFe3Alを合金化させた。
図7は、作製したFe3Alバルク合金の結晶構造を調べるために行ったX線回折測定によって得られたX線回折スペクトルである。図7のX線回折スペクトルにより、炭素(C)と合金化した成分が含まれるものの、Fe3Alが主成分であることが確認できた。
図8は、実施例1-1の手法で作製したFe3Alバルク合金を研磨した試料の材料組織をSEM(Scanning Electron Microscope)で撮影した画像である。図8に示す矢印は、結晶粒径の大きさの目安である。図8に示すように、実施例1-1の手法で作製したFe3Alバルク合金の結晶粒径は、原料粉末の粒径と同程度(3~10μm)であった。
次に、熱電変換素子100の熱電変換特性を調べるため、図6に示すセットアップで熱電変換素子100に温度勾配dTを印加して熱起電力を測定した。図6の例では、起電力取出し方向(図面のx方向)の長さが8mm、磁化方向(図面のy方向)の幅が2mm、温度差印加方向(図面のz方向)厚さが1.3mmとなるように焼結体(発電層110)を切り出した。切り出した発電層110の主面上には、起電力取出し方向(図面のx方向)の両端近傍に電極端子140aと電極端子140bとを配置した。
熱電変換による起電力の測定時には、熱電変換素子100の両主面の中心部に幅5mmの銅ブロックを上下から押し当て、片方の面を加熱、もう片方の面を冷却することで温度勾配dTを印加した。したがって、電極端子間距離は約8mmだが、実際に温度差が印加されて熱起電力が発生する領域の面積は、銅ブロックの幅(5mm)と、熱電変換素子100の幅(2mm)との積(10平方ミリメートルmm2)である。
図9は、熱電変換素子100の両主面間に3.8ケルビン(K)の温度勾配dTが印加されたときに生成される出力電圧Vの外部磁場H依存性を示すグラフである。図9のように、温度勾配dTと外部磁場H(磁化M)のそれぞれの方向に対して垂直な方向に熱起電力が生じ、電極端子140aと電極端子140bとの間には出力電圧Vが発生した。実施例1-1の発電層110(Fe3Al)の単位温度差あたりの出力電圧V/dTは、10.1μV/Kであった。
次に、FeAlバルク合金の異常ネルンスト効果の組成依存性を調べるために、Al含有比を変えた熱電変換素子100を複数作成し、それぞれの熱電変換素子100の熱起電力を測定した。図10は、単位温度差あたりの出力電圧V/dT(熱電性能とも呼ぶ)のAl組成(原子比)依存性を示すグラフである。また、図10には、比較のために、非特許文献1などで大きな異常ネルンスト効果が示唆されているFePt(原子比はFe:Pt=1:1)、およびCoPt(原子比はCo:Pt=1:1)という組成からなるバルク合金素子の熱電性能V/dTを点線で示した。ここで、これらの比較用素子は、FeAlバルク合金素子と同様の条件で焼結作製した。
図10のように、Alの組成比が20at%超(10wt%超)、30at%未満(17wt%未満)の組成範囲において、バルクCoPt合金およびバルクFePt合金よりも熱電性能V/dTが大きくなった。特に、Alの原子組成比が25%、すなわちFe3Alのときに熱電性能V/dTが最大になった。
〔実施例1-2〕
実施例1-2では、実施例1-1と比べて平均粒径の大きい原料粉末(Fe3Al合金粉末)を用いて、実施例1-1と同様の粉末冶金法で、実施例1-1で熱電性能が最大であった組成のFe3Alバルク合金を作製した。実施例1-2では、平均粒径が50μmのFe3Al合金粉末を黒鉛の型に詰め、50メガパスカル(MPa)の圧力を印加した状態で、1パスカル(Pa)よりも真空度の低い真空中800℃で10分間焼結することによってFe3Alを合金化させた。
実施例1-2のFe3Alバルク合金の結晶構造を調べるためにX線回折測定を行った結果、実施例1-1と同様の多結晶特性が得られている一方で、結晶粒径は原料粉末の粒径と同程度(~50μm)であった。
図11は、実施例1-2の手法で作製したFe3Alバルク合金を実施例1-1と同様にSEMで撮影した画像である。図11に示す矢印は、結晶粒径の大きさの目安である。図11に示すように、実施例1-2の手法で作製したFe3Alバルク合金の結晶粒径は、原料粉末の粒径と同程度(50~100μm)であった。
実施例1-1と同様に、実施例1-2のFe3Alバルク合金の焼結体を8mm×2mm×1.3mmのサイズに切り出して熱電変換特性を調べた。その結果、実施例1-2のFe3Alバルク合金の単位温度差あたりの出力電圧V/dTは6.6μV/Kであった。このように、実施例1-2のFe3Alバルク合金は、実施例1-1のFe3Alバルク合金と比べて熱電変換特性が劣る結果になった。
〔実施例1-3〕
実施例1-3では、実施例1-1~2とは異なり、実施例1-1で熱電性能が最大であった組成のFe3Alバルク合金をアーク溶解法で作製した。まず、粒状の鉄(Fe)の塊とアルミニウム(Al)の塊を原子比3:1(重量比85.7:14.3)で混合したFeAl原料を準備した。次に、FeAl原料をアーク溶解装置内に投入した。そして、-0.03MPaに減圧されたアルゴン雰囲気で、FeAl原料にタングステンチップを近づけた状態でアーク放電によってプラズマを立ててFeAl原料を溶解させ、その後急冷することによってFe3Alを合金化させた。
一般に、アーク溶解法によって作製された合金の結晶粒径は数百μm程度になり、焼結法によって作製された合金の結晶粒径に比べて大きい。実際に、実施例1-3で作製されたFe3Alバルク合金の結晶粒径は数百μm程度であり、実施例1-1や実施例1-2のFe3Alバルク合金の結晶粒径と比べて大きかった。
実施例1-1と同様に、実施例1-3のFe3Alバルク合金の焼結体を8mm×2mm×1.3mmのサイズに切り出して熱電変換特性を調べた。その結果、実施例1-2のFe3Alバルク合金の単位温度差あたりの出力電圧V/dTは6.2μV/Kであった。このように、実施例1-3のFe3Alバルク合金は、実施例1-1のFe3Alバルク合金と比べて熱電変換特性が劣る結果になった。
〔実施例1-4〕
実施例1-4では、実施例1-1~3とは異なり、実施例1-1で熱電性能が最大であった組成のFe3Alバルク合金を引き上げ法(チョクラルスキー法)によって作製した。実施例1-4では、坩堝内で溶解させたFe3Al原料融液を温度勾配下で上方に引き上げることによって、一方向に結晶方位が揃った結晶粒界のない単結晶Fe3Al合金を作製した。
実施例1-4のFe3Al合金の結晶構造を調べるためにX線回折測定を行った結果、Fe3Al合金が単結晶化していることが確認された。
実施例1-1と同様に、実施例1-4の単結晶Fe3Al合金の焼結体を8mm×2mm×1.3mmのサイズに切り出して熱電変換特性を調べた。その結果、実施例1-4の単結晶Fe3Al合金の単位温度差あたりの出力電圧V/dTは5.0μV/Kであった。このように、実施例1-4の単結晶Fe3Al合金は、実施例1-1のFe3Alバルク合金と比べて熱電変換特性が劣る結果になった。
ここで、異なる作製条件で作製された実施例1-1~4のFe3Alバルク合金の熱電変換特性の評価結果をまとめたグラフ(図12)を示す。図12のように、結晶粒径の小さな多結晶体である実施例1-1のFe3Alバルク合金では10μV/K程度の大きな起電力が得られた。その一方で、平均結晶粒径が50μm以上の多結晶体である実施例1-2~3のFe3Alバルク合金では、実施例1-1のFe3Alバルク合金の6割程度の起電力しか得られなかった。また。実施例1-4の結晶粒界がない単結晶体のFe3Alバルク合金では、実施例1-1のFe3Alバルク合金の半分以下の起電力しか得られなかった。すなわち、図12に示したように、実施例1(実施例1-1~4)によって、結晶粒径が小さいほど熱電変換特性が向上することが分かった。
図13は、結晶粒径の大きさと結晶粒界の数との関係について説明するための概念図である。図13のように、結晶粒径が小さいほど、Fe3Alバルク合金中の結晶粒界の数が多くなる。言い換えると、結晶粒径が小さいほど、Fe3Alバルク合金中の結晶粒界の密度が大きくなる。すなわち、実施例1(実施例1-1~4)の結果から、Fe3Alバルク合金中の結晶粒界が多いほど熱電性能が向上する傾向が見られたため、熱流(温度差)から電流への変換量は結晶粒界によって増大すると推定できる。これは、結晶粒界においてスピンゼーベック効果に起因するスピン流の蓄積が生じ、この結晶粒界に蓄積されたスピン流が逆スピンホール効果によって電流へと変換され、起電力が増大したものであると推察できる。
以上のように、実施例1(実施例1-1~4)の結果から、発電層110に用いられるFeAl系合金は、平均結晶粒径が50μm未満の多結晶体であることが望ましい。さらに、実施例1-1の結果から、発電層110に用いられるFeAl系合金の平均結晶粒系は、10μm未満であることがより望ましい。
(実施例2)
次に、第2の実施形態の熱電変換素子の実施例(実施例2)について図面を参照しながら説明する。本実施例の熱電変換素子は、磁性ステンレスSUS630にアルミニウム(Al)が添加された鉄-アルミ-クロム合金(FeAlCr合金)を発電層として備える(SUS:Steel Use Stainless)。
図14は、本実施例の熱電変換素子200の概念図である。熱電変換素子200は、FeAlCr合金を含む発電層210を有する。図14には、発電層210の一主面上に電極端子240aと電極端子240bとを設置し、電極端子240aと電極端子240bとの間の電圧を測定する電圧計250を示す。
発電層210は、磁性ステンレスSUS630にAlを混合させて焼結作製されたFeAlCr合金を含む。磁性ステンレスSUS630は、鉄(Fe)を75wt%、クロム(Cr)を16wt%、銅(Cu)を4wt%、ニッケル(Ni)を4wt%、マンガン(Mn)を1%含む。
本実施例では、放電プラズマ焼結装置を用いた粉末冶金法によって発電層210(FeAlCr合金)を作製した。まず、平均粒径が17μmのSUS630粉末と、平均粒径が3μmのAl粉末とを重量比92:8で調合し、両者が均一に混合されるよう乳鉢で40分間混合することによって混合粉末を調製した。次に、混合粉末を黒鉛の型に詰め、50メガパスカル(MPa)の圧力を印加した状態で、真空中900℃で1時間焼結することによってFeAlCrを合金化させた。
次に、熱電変換素子200の熱電変換特性を調べるため、実施例1と同様に、図14に示すセットアップで熱電変換素子200に温度勾配dTを印加して熱起電力を測定した。図14の例では、起電力取出し方向(図面のx方向)の長さが8mm、磁化方向(図面のy方向)の幅が2mm、温度差印加方向(図面のz方向)厚さが1.3mmとなるように焼結体(発電層210)を切り出した。切り出した発電層210の主面上には、起電力取出し方向(図面のx方向)の両端近傍に電極端子240aと電極端子240bとを配置した。
図15は、熱電変換素子200の両主面間に4.2ケルビン(K)の温度勾配dTが印加されたときに生成される出力電圧Vの外部磁場H依存性を示すグラフである。図15のように、温度勾配dTと外部磁場H(磁化M)のそれぞれの方向に対して垂直な方向に熱起電力が生じ、電極端子240aと電極端子240bとの間には出力電圧Vが発生した。
次に、FeAlCr合金の異常ネルンスト効果の組成依存性を調べるために、Al含有比を変えた熱電変換素子200を複数作成し、それぞれの熱電変換素子200の熱起電力を測定した。図16は、単位温度差あたりの出力電圧V/dT(熱電性能とも呼ぶ)のAl組成依存性(原子比)依存性を示すグラフである。
図16のように、Alが6~11wt%の組成範囲において、熱電性能V/dTが大きくなった。特に、Alの重量比が8%のときに熱電性能V/dTが最大になった。
(実施例3)
次に、第3の実施形態の熱電変換素子の実施例(実施例3)について図面を参照しながら説明する。本実施例の熱電変換素子は、異常ネルンスト効果の発現する導電性の磁性体層(第1磁性体層とも呼ぶ)と、スピンゼーベック効果の発現する絶縁性の磁性体層(第2磁性体層とも呼ぶ)とを積層させた構造の発電層を含む。
本実施例では、第1磁性体層にはFeAl合金(Fe3Al)を用い、第2磁性体層にはBiをドープしたYIG(Bi:YIG)を用いた。本実施例では、SGGG基板の上に発電層を形成させた(SGGG:Substituted Gadolinium Gallium Garnet)。SGGG基板の材料は、ガドリニウム(Gd)、カルシウム(Ca)、ガリウム(Ga)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)を含み、(GdCa)3(GaMgZr)512と表記される。
図17は、本実施例の熱電変換素子300の概念図である。熱電変換素子300は、Fe3Alバルク合金を含む第1磁性体層311と、Bi:YIGを含む第2磁性体層312とを積層させた発電層310をSGGG基板313上に積層した構造を有する。図17には、発電層310の一主面上に電極端子340aと電極端子340bとを設置し、電極端子340aと電極端子340bとの間の電圧を測定する電圧計350を示す。
本実施例では、厚さ0.7mmのSGGG基板313の上にBiY2Fe512磁性膜を第2磁性体層312として形成させ、その第2磁性体層312の上に膜厚10nmのFe3Al層を第1磁性体層311として形成させた。まず、塗布ベースの成膜法である有機金属分解法を用いて、第2磁性体層312をSGGG基板313の上に形成させた。具体的には、Bi、Y、Feを含む有機金属を溶媒に溶かした溶液をスピンコート法(回転数1000回転/分)でSGGG基板313の上に塗布し、700℃でアニールすることでSGGG基板313の上に第2磁性体層312を形成させた。第1磁性体層311(Fe3Al)は、焼結作製したFe3Al合金ターゲットを用いて、マグネトロンスパッタ法によって第2磁性体層312の上に形成した。
また、異常ネルンスト効果とスピンゼーベック効果を併用する本実施例の熱電変換素子300の性能を確かめるために、常磁性のSGGG基板の上に膜厚10nmのFe3Alを直に成膜した比較用素子(図示しない)も準備した。この比較用素子では、スピンゼーベック効果の寄与分はほとんどなく、主に異常ネルンスト効果が熱電変換に寄与する。
次に、熱電変換素子300の熱電変換特性を調べるため、実施例1と同様に、図17に示すセットアップで熱電変換素子300に温度勾配dTを印加して熱起電力を測定した。本実施例では、8mm×2mmの大きさに切り出した熱電変換素子300および比較用素子の熱電特性を評価した。発電層310の主面上には、両端近傍に電極端子340aと電極端子340bとを配置した。
図17のように、第1磁性体層311と第2磁性体層312とを一方向(図17の+y方向)に磁化させた状態で、面外方向(図17のz方向)に温度勾配dTを印加し、第1磁性体層311の長手方向(図17のx方向)に生じる起電力を測定した。第1磁性体層311の長手方向(図17のx方向)に生じる起電力は、スピンゼーベック効果と異常ネルンスト効果とが加算された値になる。
図18は、熱電変換素子300の両主面間に8ケルビン(K)の温度勾配dTが印加されたときに生成される出力電圧Vの外部磁場H依存性を示すグラフである。図18において、実線が熱電変換素子300(Fe3Al/Bi:YIG)の測定結果、破線が比較用素子(Fe3Al)の測定結果である。図18のように、熱電変換素子300には、温度勾配dTと外部磁場H(磁化M)のそれぞれの方向に対して垂直な方向に熱起電力が生じ、電極端子340aと電極端子340bとの間には出力電圧Vが発生した。熱電変換素子300と同様に、比較用素子にも、温度勾配dTと外部磁場H(磁化M)のそれぞれの方向に対して垂直な方向に熱起電力が生じ、電極端子340aと電極端子340bとの間に出力電圧が発生した。図18のように、主に異常ネルンスト効果が発現する比較用素子(Fe3Al)に比べて、異常ネルンスト効果とスピンゼーベック効果が発現する熱電変換素子300(Fe3Al/Bi:YIG)の方が大きな起電力が得られた。
(実施例4)
次に、第4の実施形態の熱電変換素子の実施例(実施例4)について図面を参照しながら説明する。本実施例の熱電変換素子は、異常ネルンスト効果の発現する導電性の磁性体ネットワークと、スピンゼーベック効果の発現する絶縁性の磁性体粒子とをコンポジットさせた構造の発電層を含む。
本実施例では、磁性体ネットワークにはFeAl合金(Fe3Al)を用い、磁性体粒子にはBiをドープしたYIG(Bi:YIG)を用いた。また、本実施例の熱電変換素子では、磁性体粒子(Bi:YIG)よりも融点の低い酸化ビスマス(Bi23)を第1支持層43aと第2支持層43bとして用いた。なお、Bi:YIGの融点は1555℃であり、Bi23の融点は817℃である。また、本実施例の熱電変換素子では、発電層の端面に銀ペーストを塗布することによって電極端子を形成させた。
図19は、本実施例の熱電変換素子400の概念図である。熱電変換素子400は、第1支持層430aと第2支持層430bとの間に発電層410を挟み込んだ構造を有する。図19には、発電層410の対面し合う2つの端面上に電極端子440aと電極端子440bとを設置し、電極端子440aと電極端子440bとの間の電圧を測定する電圧計450を示す。
図20は、発電層410の構造の一例を示す概念図である。図20は、zy平面で切断された発電層410の断面を+x方向の視座から見た図である。発電層410は、磁性体ネットワーク411と、磁性体ネットワーク411の内部に分散された粒状の磁性体粒子412とを含む。言い換えると、発電層410においては、粒状の磁性体粒子412が互いに隔離して配置され、磁性体粒子412の粒と粒の間の隙間を埋めるように磁性体ネットワーク411が網状に広がっている。
本実施例では、まず、平均粒径5μmのBi:YIG粉末の表面に、膜厚15nmのFe3Alを成膜したFe3Al/Bi:YIG粉末を準備した。その後、このFe3Al/Bi:YIG粉末と、平均粒径7.5μmのBi23粉末とを用いて熱電変換素子400を形成させた。具体的には、Bi23粉末、Fe3Al/Bi:YIG粉末、Bi23粉末を順番に3層重ねて金型に詰め、100メガパスカル(MPa)でプレス成型した後に、600℃で2時間焼結することによって熱電変換素子400を形成させた。一般に、Fe3Al/Bi:YIG粉末単体の焼結では、通常800℃以上の温度が必要とされ、これ以下の温度で熱電評価可能な強度を担保することは難しい。本実施例では、焼結温度の低いBi23でFe3Al/Bi:YIG粉末を挟んで焼結することで、600℃でも比較的高強度な熱電変換素子400を作製できた。
上述の手順で作製した熱電変換素子400の面外方向(図19の-z方向)に温度勾配dTを印加することによって、スピンゼーベック効果および異常ネルンスト効果に基づく熱起電力が計測された。
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
異常ネルンスト効果を呈し、鉄とアルミニウムとを合計で70重量パーセント以上含有する鉄-アルミニウム系の合金を含む熱電変換素子。
(付記2)
鉄とアルミニウムとを合計で70重量パーセント以上含有する鉄-アルミニウム系の磁性合金材料を含む発電層を有し、
前記発電層は、
温度勾配が印加された際に、前記磁性合金材料に発現する異常ネルンスト効果によって、前記磁性合金材料の磁化の方向と、印加された温度勾配の方向とのそれぞれに対して交差する方向に起電力を生成する熱電変換素子。
(付記3)
前記発電層は、
対向する二つの主面を含む板状の形状を有し、前記磁性合金材料が前記主面の面内方向に磁化しており、前記主面の面外方向に温度勾配が印加された際に、前記磁性合金材料の磁化の方向と、印加された温度勾配の方向とのそれぞれに対して交差する方向に起電力を生成する付記2に記載の熱電変換素子。
(付記4)
前記発電層は、
平均結晶粒径が50マイクロメートル未満の多結晶体によって構成される前記磁性合金材料を含む付記2または3に記載の熱電変換素子。
(付記5)
前記発電層の厚さが1マイクロメートル以上である付記2乃至4のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
(付記6)
前記磁性合金材料における鉄に対するアルミニウムの含有量が10重量パーセントから17重量パーセントの範囲内である付記2乃至5のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
(付記7)
前記磁性合金材料における鉄とアルミニウムとの組成比が3対1である付記2乃至6のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
(付記8)
前記磁性合金材料は、10重量パーセント以上25重量パーセント以下のクロムを含む付記2乃至7のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
(付記9)
前記発電層は、
前記磁性合金材料を含む第1磁性体層と、
温度勾配の印加によってスピンゼーベック効果の発現する第2磁性体層とを積層させた構造を有する付記2乃至8のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
(付記10)
前記第1磁性体層の厚さが100ナノメートル以下である付記9に記載の熱電変換素子。
(付記11)
前記発電層は、
前記磁性合金材料を含む磁性体ネットワークと、
前記磁性体ネットワークの内部に分散され、温度勾配の印加によってスピンゼーベック効果の発現する磁性体粒子とによって構成される付記2乃至8のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
(付記12)
前記磁性合金材料が規則合金である付記7に記載の熱電変換素子。
(付記13)
前記発電層は、
平均結晶粒径が10マイクロメートル未満の多結晶体によって構成される前記磁性合金材料を含む付記2または3に記載の熱電変換素子。
この出願は、2018年12月20日に出願された日本出願特願2018-238642、および、日本出願特願2018-238642を基礎として2019年5月28に出願された日本出願特願2019-099484を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
1、2、3、4 熱電変換素子
10、20、30、40 発電層
14a、24a、34a、44a 電極端子
14b、24b、34b、44b 電極端子
15、25、35、45 電圧計
31 第1磁性体層
32 第2磁性体層
43a 第1支持層
43b 第2支持層
100、200、300、400 熱電変換素子
110、210、310、410 発電層
140a、240a、340a、440a 電極端子
140b、240b、340b、440b 電極端子
150、250、350、450 電圧計
311 第1磁性体層
312 第2磁性体層
313 SGGG基板
401、411 磁性体ネットワーク
402、412 磁性体粒子
430a 第1支持層
430b 第2支持層

Claims (8)

  1. 鉄とアルミニウムとを合計で70重量パーセント以上含有する鉄-アルミニウム系の磁性合金材料を含む発電層を有し、
    前記発電層は、
    温度勾配が印加された際に、前記磁性合金材料に発現する異常ネルンスト効果によって、前記磁性合金材料の磁化の方向と、印加された温度勾配の方向とのそれぞれに対して交差する方向に起電力を生成し、
    前記磁性合金材料における鉄とアルミニウムとの組成比が3対1である
    熱電変換素子。
  2. 前記発電層は、
    対向する二つの主面を含む板状の形状を有し、前記磁性合金材料が前記主面の面内方向に磁化しており、前記主面の面外方向に温度勾配が印加された際に、前記磁性合金材料の磁化の方向と、印加された温度勾配の方向とのそれぞれに対して交差する方向に起電力を生成する請求項1に記載の熱電変換素子。
  3. 前記発電層は、
    平均結晶粒径が50マイクロメートル未満の多結晶体によって構成される前記磁性合金材料を含む請求項1または2に記載の熱電変換素子。
  4. 前記発電層の厚さが1マイクロメートル以上である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  5. 前記磁性合金材料は、10重量パーセント以上25重量パーセント以下のクロムを含む請求項1乃至のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  6. 前記発電層は、
    前記磁性合金材料を含む第1磁性体層と、
    温度勾配の印加によってスピンゼーベック効果の発現する第2磁性体層とを積層させた構造を有する請求項1乃至のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  7. 前記発電層は、
    前記磁性合金材料を含む磁性体ネットワークと、
    前記磁性体ネットワークの内部に分散され、温度勾配の印加によってスピンゼーベック効果の発現する磁性体粒子とによって構成される請求項1乃至のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  8. 前記磁性合金材料が規則合金である請求項1に記載の熱電変換素子。
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