JP7313922B2 - ヨウ化物イオン吸着剤及びその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)ヨウ素含有気体又は液体を、銀ゼオライトに接触させてヨウ化銀として捕集する方法(下記非特許文献1)。
(2)ヨウ化カリウムを添着した添着活性炭を大量に使用して、放射性ヨウ素(ヨウ素131)を非放射性ヨウ素と同位体交換することによって捕集する方法(下記特許文献1)。
(3)ヨウ素含有気体又は液体を、アミノ基を有するイオン交換性繊維に接触させて、除去する方法(下記特許文献2)。
(4)不溶性のシクロデキストリン又はその誘導体を有効成分としてヨウ素を吸着する方法(下記特許文献3)。
また本発明のヨウ化物イオン吸着性能は本発明のヨウ化物イオン吸着剤を工業的に有利な方法で製造できる。
本発明のヨウ化物イオン吸着剤(以下、単に「本発明の吸着剤」ともいう。)は金属銀及びリン元素を含有することが好ましい。これにより本発明の吸着剤は、リン元素と併用せずに金属銀を用いた場合やその他の銀系吸着剤に比してヨウ化物イオン吸着性能に優れ、且つ金属銀の保持性能に優れるものとなる。
なお、吸着剤中の金属銀がごく少ない場合には、粉末X線回折測定において金属銀に由来するピークが観察されない場合もある。この場合は、XPS(X線光電子分光法)や電子線回折法により金属銀の含有を確認することができる。
例えば後述する図2~図4等におけるAg、P、Mg、Siの各元素マッピングにおいて白く見える箇所が該当元素の存在箇所であるところ、これらの図では、Ag元素マッピングがところどころで白くなっており、局所的に銀が集中して存在する箇所が点在していることが示されているところ、そのように銀が集中して存在する箇所において、リンも同様に集中して存在していることが示されている。2つのマッピング像において、マッピング像はこのような混在の態様は、金属銀とリン元素が同じ箇所で凝集していることを示すと発明者は考えている。例えば図2において、Ag元素マッピング像及びP元素のマッピング像それぞれにおいて、同じ位置の白いドット又は塊は10箇所以上示されている。図2のこれらの白いドット又は塊はAg元素及びP元素が混在状態で凝集している箇所を示す。白いドット又は塊はその最長長さが例えば0.001μm以上20μm以下であることが好ましく、0.01μm以上10μm以下であることがより好ましい。ここでいう最長長さとは、当該白いドット又は塊を横断する線分のうち、最大の線分の長さである。図2ではこのような箇所の一部を矢印で示している。本発明の吸着剤においては、上記の倍率のSEM-EDX分析において、200μm×150μmの一視野当たり、図2に示すようにAg元素及びP元素が混在状態で凝集している箇所が5箇所以上観察されることが好ましく、10箇所以上観察されることがより好ましい。図3及び図4においても、図2と同様にAg元素とP元素が混在状態で凝集している箇所が多数示されている。金属銀とリン元素が同じ箇所で凝集している態様の例としては、金属銀粒子中にリン元素が含有されている態様が挙げられる。このような金属銀とリン元素の存在形態は吸着剤の表面及び内部のいずれで観察されてもよい。銀及びリン元素が上記の態様で存在する吸着剤は後述する好適な吸着剤の製造方法で得ることができる。
本製造方法は、リン酸銀及び有機バインダを混合する工程(以下「混合工程」ともいう)と、得られた混合物を成形する工程(以下「成形工程」ともいう)と、得られた成形物を焼成して焼成物を得る工程(以下「焼成工程」ともいう)とを有する。
リン酸銀は、Ag3PO4で表される化合物であり、本製造方法では、これを有機バインダと混合して焼成することで有機バインダが還元剤の役割を果たし、金属銀を生成する。これにより、製造コストを低減しながら金属銀及びリン元素を含有する本発明の吸着剤を製造できる。本製造方法は、好ましくは、混合工程において、リン酸銀及び有機バインダに加えて、粘土鉱物及び水を混合することが好ましい。この場合、粘土鉱物中に分散した有機バインダが焼成工程により除去されて粘土鉱物からなる多孔質体中に金属銀及びリン元素が分散した吸着剤が得られる。このような吸着剤では、ヨウ化物イオンを含む液体と吸着剤中の金属銀及びリン元素との接触性を高めることができ、ヨウ化物イオンを一層効率的に吸着除去することが可能である。また粘土鉱物を含む混合物を焼成することで得られる吸着剤は粘土鉱物が焼結した焼結体となる。これにより、液中で崩れずに使用しやすい吸着剤を得ることができる。
特に、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、などといったセルロース誘導体であることが、分散安定性が高いことや他物質との反応を起こしにくい観点から好ましい。中でも特に好ましくはカルボキシメチルセルロースである。カルボキシメチルセルロースはナトリウム塩やカリウム塩等の塩の形態で使用することができる。
混合物を成形する工程における成形は特に限定なく、例えば押し出し成形、射出成形、圧縮成形等が挙げられる。また成形される形状は、粒状、カプセル状、シート状、棒状、板状、ブロック状、球状、円柱状等のいずれであってもよい。
(1)リン酸銀の調製
硝酸銀60.9gをイオン交換水182.6gに溶解させ25%硝酸銀溶液を調製した。リン酸3ナトリウム20.2gをイオン交換水182.1gに溶解させ10%リン酸3ナトリウム水溶液を調製した。25%硝酸銀水溶液を撹拌しながら10%リン酸3ナトリウム水溶液を添加し、添加後、固形分をろ過により分離してろ過ケーキを得た。このろ過ケーキをイオン交換水で洗浄後、110℃で24時間乾燥することによりリン酸銀粉末46.4gを得た。このリン酸銀粉末はX線回折測定によりAg3PO4単相であることを確認した。
リン酸銀として、上記(1)で得られたリン酸銀粉末を用いた。また、粘土鉱物としてマグネシウムケイ酸塩であるセピオライトを用いた。また、有機バインダとしてカルボキシメチルセルロースナトリウムを用いた。
表1に示す通りの配合比(配合量)で、リン酸銀粉末とセピオライトを混合して混合粉末を得た。この混合粉末に、表1に示す通りの配合比(配合量)でイオン交換水とカルボキシメチルセルロースナトリウムを加えて混練して混練物を得た。次いで、φ0.6mmのスクリーンを装着した押出造粒機に導入して押出造粒後、得られた造粒物を大気雰囲気中、110℃、12時間で乾燥して乾燥物を得た。この乾燥物を大気雰囲気中、600℃で2時間焼成して焼結物を得た。次いで、得られた焼結物をφ1mmのスクリーンを装着したスピードミル(岡田精工社製、ニュースピードミルND‐02S)で解砕して、300μm及び600μmの篩に通して粒度が300μm以上600μm以下の粒状の吸着剤を得た。得られた実施例1~3の吸着剤を下記の方法にて粉末X線回折測定に供したところ、実施例1~3のX線回折測定で、2θ=35°~40°の範囲に金属銀に由来するピークが観察され、金属銀が生成していることを確認した。
実施例1~3の吸着剤を粉末X線回折測定に供して得られたピークパターンを図1に示す。実施例1~3の吸着剤中の金属銀とリン元素の量を下記方法にて測定した。実施例1~3のタップ密度を上記の方法で測定した。結果を表2に示す。
粒状体はメノウ乳鉢にて乾式条件で10分間粉砕した。得られた粉末について以下の条件のX線回折測定に供した。
X線回折装置:リガク社UltimaIVを用いた。線源としてCu-Kαを用いた。測定条件は、管電圧40kV、管電流40mA、走査速度0.2°/secとした。
吸着剤を硝酸で溶解した。溶液中の銀元素及びリン元素の濃度をICP-AESにて測定して全リン量と全銀量を求めた。ICP-AESとしては、Varian社720-ESを用いた。
リン酸銀の代わりに、7.7質量部の金属銀粒子(レーザ回折・散乱式粒度分布測定法による積算体積50容量%における積算体積粒径D50が7μm)を用いた。その点以外は実施例1と同様にして、粒状体を得た。得られた吸着剤中の金属銀の量を上記方法にて測定した。結果を表2に示す。
リン酸銀の代わりに、8.3質量部の酸化銀(Ag2O)を用いた。その点以外は実施例1と同様にして、粒状体を得た。得られた吸着剤中のリン元素の量を上記方法にて測定した。結果を表2に示す。
塩化ナトリウム(NaCl)、ヨウ化ナトリウム(NaI)をイオン交換水に溶解することにより、以下の組成の吸着試験液を調製した。
(吸着試験液の組成)
NaCl 0.3%
I- 20ppm
<保持性評価>
100mLのポリビンに、吸着剤4.0gとイオン交換水100gとを秤量し、密栓した。密栓したポリビンを70℃に保持した恒温機内で静置した。静置開始から14日後にポリビンの中の液体を目視で観察した。その後、吸着剤をろ別し、イオン交換水で洗浄した後、110℃で一晩乾燥した。乾燥した吸着剤中の銀の含有率をICP-AESで測定した。保持性試験前の吸着剤についても銀の含有率を測定し(1)式から銀の保持率を求めた。結果を表4に示す。
銀の保持率(%)=
100-(試験前の銀含有率-試験後の銀含有率)/試験前の銀含有率 ×100
Claims (11)
- 金属銀とリン元素と粘土鉱物とを含有し、
粘土鉱物の多孔質体中又は粘土鉱物の焼結体中に、金属銀がリン元素と混在した状態で存在しており、
金属銀とリン元素が、リン酸銀を還元して得られるものである、ヨウ化物イオンの吸着剤。 - 粘土鉱物中に金属銀とリン元素が分散している、請求項1に記載の吸着剤。
- 金属銀の含有量が1質量%以上50質量%以下である、請求項1又は2に記載の吸着剤。
- リン元素の含有量が、0.1質量%以上5質量%以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の吸着剤。
- 粘土鉱物がカオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、セリサイト、グローコナイト、タルク、ゼオライト、バーミキュライト、アロフェン、イモゴライト、パリゴルスカイト及びセピオライトから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4の何れか1項に記載の吸着剤。
- 粒度が200μm以上1000μm以下の粒状体である、請求項1~5の何れか1項に記載の吸着剤。
- 粘土鉱物の焼結体中に、金属銀及びリン元素が混在状態で凝集している箇所が複数存在している、請求項1~6の何れか1項に記載の吸着剤。
- リン酸銀、有機バインダ及び粘土鉱物の混合物の大気雰囲気又は不活性雰囲気下での焼成品であり、粘土鉱物の焼結体中に、金属銀がリン元素と混在した状態で存在している、ヨウ化物イオンの吸着剤。
- リン酸銀、有機バインダ及び粘土鉱物を混合する工程と、得られた混合物を成形する工程と、得られた成形物を焼成して焼成物を得る工程とを有し、該焼成物は、粘土鉱物の焼結体中に、金属銀がリン元素と混在した状態で存在している、ヨウ化物イオンの吸着剤の製造方法。
- リン酸銀、有機バインダ及び粘土鉱物に加えて水を混合し、得られた混合物を成形する、請求項9に記載のヨウ化物イオンの吸着剤の製造方法。
- 有機バインダがポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、デンプン、コーンスターチ、糖蜜、乳糖、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、アルギン酸、ポリアクリル酸、グリセリン、ポリエチレングリコール、及びポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種である、請求項9又は10に記載のヨウ化物イオンの吸着剤の製造方法。
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