JP7312591B2 - 被膜形成方法 - Google Patents

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本発明は、被膜形成方法及び表面保護油に関する。
転がり軸受などの部材は、摺動により繰り返し応力を受ける。このような部材は、疲労限を超えた面圧条件下では、有限の疲労寿命を有することとなり、この疲労寿命は、安全率などを考慮して設定される。しかし、例えば、部材の潤滑状態が不適切であったり、異物で部材の表面に傷が形成されたり、錆が発生したり、想定より高い負荷が加わった場合などにおいては、設定された疲労寿命より短い時間で損傷が発生するおそれがあり、このように損傷が生じた場合、動作不良を起こしたり、損傷の進展により部材が破損したりするおそれもある。従って、例えば特許文献1には、損傷した摺動面を修復するための摩耗修復剤が記載されており、摺動面を修復することにより、部材の破損などを抑制する旨が記載されている。
特許第6236593号公報
しかし、部材の破損を抑制する点については、改善の余地がある。
本発明は、上述した課題を解決するものであり、部材の破損を抑制可能な被膜形成方法及び表面保護油を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る表面保護油は、部材の表面に被膜を形成するための表面保護油であって、テトラエトキシシランであるシラン化合物と、潤滑油とを含み、前記シラン化合物が、2重量%以上50重量%以下含まれている。
この表面保護油を用いると、表面保護油のシラン化合物を反応させることで、部材の表面に、シラン化合物の反応による被膜を形成することができる。従って、被膜で部材の損傷箇所を覆うことが可能となり、部材の破損を抑制することができる。
前記表面保護油は、さらに、SiOの粒子であるシリカ粒子を含むことが好ましい。この表面保護油によると、部材の表面上に、シリカを含む被膜を形成することが可能となり、被膜により部材の破損を抑制することができる。
前記シリカ粒子の平均粒径は、2μm以下であることが好ましい。シリカ粒子の粒径をこの範囲とすることで、軸受面にシリカ粒子を入り込ませて被膜を好適に形成させつつ、シリカ粒子の噛み込みによる焼き付きを抑制することができる。
前記シリカ粒子が、2重量%以下含まれていることが好ましい。シリカ粒子をこの量とすることで、被膜の硬度を高く保ちつつ、シリカの研磨作用によって被膜の形成が阻害されることを抑制できる。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る被膜形成方法は、部材の表面に被膜を形成する被膜形成方法であって、前記表面保護油を、前記部材の表面に接触させる接触ステップと、前記シラン化合物を加水分解して脱水縮合させることで、SiとOとを含む被膜を前記部材の表面に形成する被膜形成ステップと、を有する。この被膜形成方法によると、部材の表面に表面保護油を接触させて、表面保護油のシラン化合物を反応させることで、表面に被膜を形成する。従って、被膜によって、表面の損傷箇所を覆うことが可能となり、部材の破損を抑制することができる。
前記被膜形成ステップを開始してから所定時間経過後に、前記表面保護油に、前記被膜の形成を停止させる反応停止物を添加する反応停止ステップをさらに有することが好ましい。
前記反応停止物は、アルキル基を含むシラン化合物であることが好ましい。
本発明によれば、部材の損傷を抑制することができる。
図1は、第1実施形態に係る部材を示す模式図である。 図2は、第1実施形態に係る被膜形成方法を説明するフローチャートである。 図3は、部材に被膜が形成される反応を説明する模式図である。 図4は、部材に被膜が形成される反応を説明する模式図である。 図5は、部材に被膜が形成される反応を説明する模式図である。 図6は、部材に被膜が形成される反応を説明する模式図である。 図7は、部材に被膜が形成される反応を説明する模式図である。 図8は、実施例2の疲労強度試験の結果を示すグラフである。
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
(第1実施形態)
最初に、第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る部材を示す模式図である。部材Aは、潤滑油が充填された環境下で別の部材Bの表面B1と対向しており、部材Bから繰り返し荷重を受ける。すなわち、部材Aと部材Bとが収納される収納室Cには、潤滑油が充填されており、収納室C内において、部材Aが部材Bから繰り返し荷重を受ける。本実施形態では、収納室C内において、部材Aは、部材Aの表面A1上で部材Bが摺動することで、部材Bから繰り返し荷重を受ける。言い換えれば、表面A1は摺動面である。部材Aは、転がり軸受などの軸受であり、例えば、風車の主軸受や翼旋回輪の軸受に用いられる。ただし、部材Aは、風車に用いられることに限られず、任意の装置に用いられてよい。また、部材Aは、軸受であることに限られず、例えばギアなど、任意の部材であってよい。また、図1における部材A、Bの形状は模式的に示したものであり、実際の形状は図1で示したものに限られない。
部材Aは、金属製の部材であり、本実施形態では、軸受鋼SUJ2など、Feを含む部材である。ただし、部材Aの材料は任意であってよい。ただし、部材Aは、表面において、OH基が終端となる部材であることが好ましい。
図2は、第1実施形態に係る被膜形成方法を説明するフローチャートである。図3から図5は、部材に被膜が形成される反応を説明する模式図である。図1に示すように、第1実施形態に係る被膜形成方法は、表面保護油1により、部材Aの表面A1に被膜Mを形成する。図2に示すように、第1実施形態に係る被膜形成方法においては、最初に、接触ステップを実行する(ステップS10)。接触ステップにおいては、表面保護油1を、部材Aに接触させる。具体的には、接触ステップにおいては、部材Aと部材Bとが収納される収納室Cに、表面保護油1が充填される。これにより、収納室C内において、部材Aの表面A1に表面保護油1が接触する。
第1実施形態における表面保護油1は、シラン化合物10と、潤滑油12とを含む。シラン化合物10は、シランを含む化合物であり、本実施形態では、アルコキシシランである。シラン化合物10は、シランカップリング剤であるともいえる。シラン化合物10としては、例えば、テトラエトキシシラン((CO)Si)、又はテトラメトキシシラン((CHO)Si)が挙げられ、テトラエトキシシランとテトラメトキシシランとの両方を含んでいてもよい。さらに言えば、シラン化合物10は、テトラエトキシシランであることが好ましく、また、テトラエトキシシランの重合体であってもよい。テトラエトキシシランの重合体は、例えば、テトラエトキシシランのオリゴマーである。テトラエトキシシランの重合体は、粘度が高いため、これを用いることで、表面保護油1の粘度の低下を抑制して、表面保護油1を収納室Cに充填した場合の、油膜形成能力の低下や部材Aの耐摩耗性の低下を抑制できる。
潤滑油12は、油であり、例えば、鉱油、ポリアルフォオレフィン、ポリオールエステルなどが挙げられる。潤滑油12は、粘度グレードがVG32以上VG680以下であることが好ましい。
表面保護油1は、シラン化合物10が、5重量%以上50重量%以下含まれることが好ましい。より詳しくは、表面保護油1は、シラン化合物10と潤滑油12との合計の重量に対し、シラン化合物10が、2重量%以上50重量%以下含まれることが好ましく、5重量%以上10重量%以下含まれることがより好ましい。従って、表面保護油1は、シラン化合物10と潤滑油12との合計の重量に対し、潤滑油12が、50重量%以上98重量%以下含まれることが好ましく、90重量%以上95重量%以下含まれることがより好ましい。また、表面保護油1は、40℃における動粘度が27cSt以上207cST以下であることが好ましい。
表面保護油1は、シラン化合物10が潤滑油12に添加されることで生成される。表面保護油1において、シラン化合物10は、潤滑油12に油溶した状態となっている。なお、表面保護油1は、潤滑油12にシラン化合物10が添加された状態、すなわちシラン化合物10が油溶した状態で、収納室C内に注入されてもよい。また、シラン化合物10を含まない潤滑油12を収納室C内に充填し、収納室C内の潤滑油12に、シラン化合物10を添加することで、表面保護油1を生成してもよい。
なお、表面保護油1は、シラン化合物10及び潤滑油12に加え、さらに、硬化触媒と水とを含んでもよい。また、表面保護油1は、以上説明した成分以外にも、不可避的不純物を含んでもよい。硬化触媒は、シラン化合物10の加水分解及び縮合反応を促進させる触媒であり、例えば、チタンを含む物質である。硬化触媒は、表面保護油1に添加されなくてもよい。水は、シラン化合物10の加水分解に用いられるが、潤滑油12に水が含まれている場合は、表面保護油1に添加されなくてもよい。すなわち、ここでの水とは、潤滑油12に含まれず、潤滑油12に対し不純物となる水を指す。硬化触媒は、表面保護油1の全体の重量に対し、0重量%より高く、0.1重量%以下含まれていることが好ましい。また、水は、表面保護油1の全体の重量に対し、0重量%より高く、0.1重量%以下含まれていることが好ましい。なお、表面保護油1が硬化触媒と水(不純物としての水)とを含む場合、潤滑油12にシラン化合物10と硬化触媒と水とが添加された状態で、収納室C内に注入されてもよい。また、潤滑油12が収納室C内に充填されており、収納室C内の潤滑油12に、シラン化合物10と硬化触媒と水とを添加することで、表面保護油1としてもよい。
図2に示すように、接触ステップを実行したら、被膜形成ステップを実行する(ステップS12)。被膜形成ステップにおいては、表面保護油1を部材Aに接触させた状態で、すなわち表面保護油1を収納室C内に充填させた状態で、表面保護油1に含まれるシラン化合物10を加水分解して縮合させることで、部材Aの表面A1に、被膜Mを形成する。図3に示すように、表面保護油1は、シラン化合物10(ここでは(CO)Si)と、水(HO)とを含む。ここでの水は、潤滑油12に含まれる水、又は、不純物として添加された水である。シラン化合物10は、水と反応して加水分解する。図4に示すように、シラン化合物10は、加水分解により、第1物質10Aと第2物質10Bとに分解する。第1物質10Aは、SiとOHとを含み、Si基とOH基とが結合した物質である。第1物質10Aは、本実施形態では、テトラシラノール(Si(OH))である。第2物質10Bは、シラン化合物10及び水から第1物質10Aが除去された物質(有機物)であり、本実施形態では、エタノール(COH)である。なお、図3及び図4では、説明の便宜上、シラン化合物10及び水を、それぞれ1つだけ記載しているが、実際には複数存在する。
ここで、図3及び図4に示すように、部材Aは、OH基で終端されている。すなわち、部材Aは、表面A1が金属酸化物(ここでば、Fe、Feなどの酸化鉄)となっているため、OH基で終端されている。言い換えれば、部材Aの表面A1には、OH基が存在する。第1物質10A、ここではテトラシラノールは、不安定な物質であり、反応し易い。従って、第1物質10Aは、表面A1のOH基と反応して、縮合、ここでは脱水縮合して、図5に示すように、シロキサン結合(Si基とO基との結合)を生じる。すなわち、第1物質10Aに含まれているSi基に結合しているOH基が脱水縮合して、Si基が、O基を介して、部材AのFeと結合する。従って、部材Aの表面A1には、SiとOとを含む被膜Mが形成される。また、第1物質10Aは、他の第1物質10Aとも脱水縮合する。言い換えれば、加水分解したシラン化合物10同士も、脱水縮合する。すなわち、第1物質10AのSi基は、O基を介して、他の第1物質10AのSi基とも結合する。従って、被膜Mは、Si基とO基との結合を複数含むように形成され、Si基がO基を介して部材AのFeと結合し、かつ、Si基同士がO基を介して結合した構成となる。従って、被膜Mを、厚い膜として形成することができる。なお、図5における被膜Mの構成(化学組成)は、一例であり、例えば、さらにSi基が結合してもよい。
なお、被膜形成ステップは、表面保護油1を部材Aに接触させたら、すなわち表面保護油1を収納室Cに充填させたら、開始する。すなわち、被膜形成ステップにおいては、表面保護油1を部材Aに接触させる以外の処理(表面保護油1を収納室C内に充填させる以外の処理)は、不要である。ただし、被膜形成ステップにおいて、被膜Mの形成促進のため、表面保護油1を部材Aに接触させる以外の処理を行ってもよい。例えば、被膜形成ステップにおいて、部材Aと部材Bとを有する装置を駆動することで部材Bを部材A上で摺動させて、部材Bにより部材Aに繰り返し荷重を負荷してもよい。また、被膜形成ステップにおいて、収納室Cを60℃以上90℃以下の温度で加熱してもよい。
図2に示すように、被膜形成ステップを実行したら、反応停止ステップを実行する(ステップS14)。反応停止ステップは、被膜形成ステップを開始してから所定時間経過後に実行される。ここで、被膜形成ステップは、表面保護油1を部材Aに接触させたタイミング、すなわち表面保護油1を収納室Cに充填させたタイミングで開始する。従って、反応停止ステップは、表面保護油1を部材Aに接触させたタイミングから所定時間経過後に実行されると言ってもよい。反応停止ステップにおいては、収納室Cに充填された表面保護油1に、被膜Mの形成を停止させる反応停止物を添加する。反応停止物は、本実施形態では、アルキル基を含むシラン化合物である。反応停止物としては、例えば、エトキンシラン((CO)Si(CH)、ジエトキンシラン((CO)Si(CH)、トリエトキンシラン((CO)Si(CH))などが挙げられ、これらの複数を含んでもよい。OH基の脱水反応、すなわち脱水縮合によるシロキサン結合は、反応停止物に含まれるアルキル基で停止するため、被膜Mを形成する脱水縮合が停止して、被膜Mの形成が停止される。なお、反応停止物に含まれるアルキル基は、例えばメチル基(CH)であるが、それに限られず、エチル基(C)などであってもよい。
なお、図2の例では、このように、被膜形成ステップの後に反応停止ステップを実行するが、反応停止ステップを実行しなくてもよい。また、収納室C内には、部材Bも設けられる。従って、部材Bの表面B1にも、被膜Mが形成されてもよい。
本実施形態においては、表面A1上に形成される被膜Mの厚みは、0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。
以上説明したように、本実施形態に係る被膜形成方法は、表面保護油1を部材Aの表面A1に接触させる接触ステップS10と、表面保護油1のシラン化合物10を加水分解して脱水縮合させることで、SiとOとを含む被膜Mを部材Aの表面A1に形成する被膜形成ステップS12とを有する。表面保護油1は、部材Aの表面A1に被膜Mを形成するためのものであり、シラン化合物10と潤滑油12とを含む。
部材Aは、部材Bから繰り返し荷重を受けるため、表面A1に損傷が発生するおそれがある。表面A1に損傷が発生すると、損傷が伸展することで部材Aが破損するおそれがある。それに対し、本実施形態においては、部材Aの表面A1に表面保護油1を接触させて、表面保護油1のシラン化合物10を反応させることで、表面A1に被膜Mを形成する。従って、被膜Mによって、表面A1の損傷箇所を覆うことが可能となり、損傷の進展が抑制され、部材Aの破損を抑制することができる。また、損傷が発生する前に、すなわち損傷が発生していない箇所に、被膜Mを形成することで、損傷自体が起こることを抑制することもできる。また、被膜Mは、シラン化合物10の反応により形成されるため、損傷箇所が微小なクラックなどであっても、そのクラックに被膜Mを充填することが可能となり、クラックを起点とする破損を好適に抑制できる。また、被膜Mは、SiとOとを含むシロキサン結合により形成されるため、例えばシリカ(SiO2)などのように硬度が高くなり、部材Aの破損を好適に抑制できる。また、表面保護油1は、潤滑油12を含むため、被膜Mを形成した後も、部材Aと部材Bとの潤滑油としてそのまま用いることができる。この場合、シラン化合物10を追加で添加することにより、被膜Mを一度形成した後に、さらに被膜Mを形成することもできる。
また、シラン化合物10は、テトラエトキシシランである。本実施形態に係る被膜形成方法は、シラン化合物10としてテトラエトキシシランを用いることで、加水分解により生成した第1物質10Aを、テトラシラノール(Si(OH))とすることが可能となり、シロキサン結合の被膜Mを好適に形成することができる。
また、表面保護油1は、シラン化合物10が、2重量%以上50重量%以下含まれている。本実施形態に係る被膜形成方法は、この量のシラン化合物10を表面保護油1に含ませることで、シロキサン結合の被膜Mを好適に生成することができる。すなわち、例えばシラン化合物10が2重量%より少ないと、被膜Mの厚みD2が薄くなって被膜Mの強度が十分に保てないおそれがある。また、シラン化合物10が50重量%より多いと、被膜Mの厚みD2が厚くなり過ぎて部材Aと部材Bとが適切に摺動されなくなったり、表面保護油1の粘度が低くなり過ぎて潤滑性能が低下したりするおそれがある。
また、本実施形態に係る被膜形成方法は、被膜形成ステップS12を開始してから所定時間経過後に、表面保護油1に、被膜Mの形成を停止させる反応停止物を添加する反応停止ステップS14をさらに有してもよい。反応停止ステップS14を行うことで、被膜Mが厚くなり過ぎることを抑制して、部材Aと部材Bとが適切なクリアランスを保持して摺動されなくなることを抑制できる。また、反応停止物は、アルキル基を含むシラン化合物であることが好ましい。アルキル基を含むシラン化合物を用いることで、脱水縮合によるシロキサン結合を停止させて、被膜Mの形成を好適に停止できる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、表面保護油1aに、シリカ粒子14が含まれる点で、第1実施形態とは異なる。第2実施形態において、第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
第2実施形態に係る表面保護油1aは、シラン化合物10及び潤滑油12に加え、シリカ粒子14を含む。シリカ粒子14は、シリカ(SiO)の粒子であり、表面保護油1aに複数個添加される。シリカ粒子14は、表面保護油1aの全体の重量に対し、0重量%より高く、2重量%以下含まれていることが好ましい。シリカ粒子14をこの量とすることで、被膜の硬度を高く保ちつつ、シリカの研磨作用によって被膜の形成が阻害されることを抑制できる。また、シリカ粒子14の平均粒径は、0.2μm以上2μm以下であることが好ましい。また、シリカ粒子14の平均粒径は、部材Aの表面A1と部材Bの表面B1との間の距離D1に対し、1%以上10%以下の大きさであることが好ましい。シリカ粒子14の粒径をこの範囲とすることで、軸受面、すなわち表面A1とB1との間にシリカ粒子14を入り込ませて被膜を好適に形成させつつ、シリカ粒子14の噛み込みによる焼き付きを抑制することができる。また、このようにシリカ粒子14の径をある程度大きくすることで、例えば、表面A1に圧痕など比較的面積や深さが大きい損傷が発生した場合に、シリカ粒子14でその圧痕を埋めることが可能となるため、大きな損傷起点の破損も抑制できる。なお、表面保護油1aは、第1実施形態の表面保護油1と同様に、さらに、硬化触媒と水とを含んでもよい。
なお、本実施形態におけるシリカ粒子14の粒径の測定方法は任意であるが、例えば、レーザ回折・散乱法によって求められた粒度分布に基づき求められた粒径である。粒度分布として、体積分布を用いてもよいし個数分布を用いてもよい。この場合、シリカ粒子14の平均粒径は、例えば、レーザ回折・散乱法によって求められた粒度分布の平均値である。
図6及び図7は、部材に被膜が形成される反応を説明する模式図である。第2実施形態における被膜形成方法も、第1実施形態と同様に、接触ステップS10と被膜形成ステップS12とを実行する。また、必要に応じて反応停止ステップS14を実行してもよい。図6に示すように、第2実施形態においては、被膜形成ステップS12において、シラン化合物10は、加水分解により、第1物質10Aと第2物質10Bとに分解する。ここで、シリカ粒子14は、部材Aの表面A1と同様に、OH基で終端されている。すなわち、シリカ粒子14の表面には、OH基が存在する。従って、第1物質10Aは、部材Aの表面A1のOH基と反応すると共に、シリカ粒子14の表面のOH基とも反応する。すなわち、第1物質10Aは、図7に示すように、脱水縮合してシロキサン結合を生じて、Si基がO基を介して、部材AのFeと結合する。また、第1物質10Aは、脱水縮合して、Si基が、O基を介して、シリカ粒子14とも結合する。従って、第2実施形態においては、部材AのFeとシリカ粒子14とが、第1物質10AのSi基及びO基を介して、結合する。また、シリカ粒子14同士も、第1物質10AのSi基及びO基を介して、互いに結合する。従って、第2実施形態においては、部材Aの表面A1に、Si及びOと、シリカ粒子14とが含まれる被膜Mが形成される。言い換えれば、第2実施形態における被膜Mは、部材AのFeとシリカ粒子14とが、Si基及びO基を介して結合し(シロキサン結合で結合し)、シリカ粒子14同士が、Si基及びO基を介して結合した(シロキサン結合で結合した)構成となる。なお、図7における被膜Mの構成(化学組成)は、一例であり、例えば、さらにSi基やシリカ粒子14などが結合してもよい。
このように、第2実施形態に係る表面保護油1aは、SiOの粒子であるシリカ粒子14を含む。従って、第2実施形態によると、部材Aの表面A1上に、シリカを含む被膜Mを形成することが可能となり、被膜Mにより部材Aの破損を抑制することができる。言い換えれば、第2実施形態においては、加水分解したシラン化合物10同士(第1物質10A同士)を脱水縮合し、加水分解したシラン化合物10と部材Aとを接合し、加水分解したシラン化合物とシリカ粒子14とを結合して、被膜Mを形成する。
また、シリカ粒子14の平均粒径は、2μm以下であることが好ましい。シリカ粒子14の粒径をこの範囲とすることで、軸受面にシリカ粒子14を侵入させて被膜を好適に形成させつつ、シリカ粒子14の噛み込みによる焼き付きを抑制することができる。
また、表面保護油1は、シリカ粒子14が2重量%以下含まれていることが好ましい。シリカ粒子14をこの量とすることで、被膜Mの硬度を高く保ちつつ、シリカの研磨作用によって被膜Mの形成が阻害されることを抑制できる。
(実施例1)
次に、実施例について説明する。実施例1においては、部材Aとして、円錐ころ軸受に対し、表面保護油1に被膜Mが形成されるかを確認した。実施例1においては、シラン化合物10を50重量%として潤滑油を50重量%とした表面保護油1を用いた場合に、部材Aの表面A1に厚みD2が5μmとなる被膜Mが形成されることが確認された。また、シラン化合物10を5重量%として潤滑油を95重量%とした表面保護油1を用いた場合に、部材Aの表面A1に厚みD2が0.3μmとなる被膜Mが形成されることが確認された。このように、表面保護油1を用いることで、適切に被膜Mが形成されることが分かる。
(実施例2)
実施例2においては、部材Aに被膜Mを形成した上で、疲労強度試験を行った。図8は、実施例2の疲労強度試験の結果を示すグラフである。実施例2においては、内輪内径が25mmの円すいころ軸受を使用し、疲労寿命を求める試験を行った。試験を加速するため、軸受の外輪部にはブラスト処理によって疵を設けた。また、軸受に加える面圧は、2.6GPaとし、回転数は3500rpmとした。実施例2に係る表面保護油1は、潤滑油12の粘度グレードをVG32とし、シラン化合物10として、テトラエトキシシランのオリゴマーを5重量%とし、チタン系の硬化触媒を0.1重量%、水を0.1重量%添加した。また、比較例としては、実施例2と同じ潤滑油12を使用したが、シラン化合物10、硬化触媒及び水を加えなかった。図8は、実施例2と比較例との疲労試験の結果を示している。図8のデータT1が実施例2の結果で、データT2が比較例の結果である。図8に示すように、シラン化合物10を添加剤として加えた場合、加えない場合と比較して、軸受の寿命が延びる傾向にあることが分かり、延命効果は、少なくとも約2倍であることが分かる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
1 表面保護油
10 シラン化合物
10A 第1物質
12 潤滑油
14 シリカ粒子
A 部材

Claims (2)

  1. 部材の表面に被膜を形成する被膜形成方法であって、
    シラン化合物と潤滑油とを含み、前記シラン化合物が2重量%以上50重量%以下含まれている表面保護油を、前記部材の表面に接触させる接触ステップと、
    前記シラン化合物を加水分解して脱水縮合させることで、SiとOとを含む被膜を前記部材の表面に形成する被膜形成ステップと、
    前記被膜形成ステップを開始してから所定時間経過後に、前記表面保護油に、前記被膜の形成を停止させる反応停止物を添加する反応停止ステップと、を有する、被膜形成方法。
  2. 前記反応停止物は、アルキル基を含むシラン化合物である、請求項に記載の被膜形成方法。
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