JP7311324B2 - 水和膨潤物 - Google Patents
水和膨潤物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP7311324B2 JP7311324B2 JP2019118636A JP2019118636A JP7311324B2 JP 7311324 B2 JP7311324 B2 JP 7311324B2 JP 2019118636 A JP2019118636 A JP 2019118636A JP 2019118636 A JP2019118636 A JP 2019118636A JP 7311324 B2 JP7311324 B2 JP 7311324B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- oily substance
- galactose
- gel composition
- mixture
- aqueous solvent
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Landscapes
- Jellies, Jams, And Syrups (AREA)
- Medicinal Preparation (AREA)
- Cosmetics (AREA)
Description
また、ガラクトース部分分解物は、天然多糖類由来であり、化学修飾(付加)されていないことから人体および環境に安全であるため、該ガラクトース部分分解物を用いて製造
されたゲル組成物は、食品、化粧品、または医薬品製剤等において幅広く利用され得る。
この種のガラクトース部分分解物を含有するゲル組成物の製造方法として、冷却した水性溶媒とガラクトース部分分解物とを混合して水性溶媒にガラクトース部分分解物を溶解し、溶解液を加熱してゲル化させることによって、ゲル組成物を製造することが提案されている(特許文献1、2参照)。
しかし、特許文献1の方法では、十分に油状物質を含有させられるとはいい難い。
また、これら方法では、混合物の粘度が高くなり過ぎて、所望の容器に移し替えて加熱によってゲル化させようとする際に、取り扱い難くなる場合がある。また、所望の容器に十分に充填することが困難となったり、溶液調製時や充填時等に気泡が混入し易くなったりする。
このように、特許文献1、2の方法を用いても、油状物質含有ゲル化組成物を簡便に製造できるとはいい難い。
すなわち、一般的に、多糖類を水性溶媒と混合したとき、水性溶媒中の水によって多糖類が、先ずは水和膨潤した状態となり、水和膨潤がさらに進むと溶解した状態に至ることが知られている。
このことと、上記特許文献1、2の方法とを考慮した結果、特許文献1、2の方法では、冷却した水性溶媒にガラクトース部分分解物を混合してこれを溶解しているため、溶解液の粘度が比較的高くなり、その結果、取り扱い難くなる。
また、水性溶媒を冷却してその温度を低くする程、ガラクトース部分分解物が水和膨潤した状態になるまでに要する時間、さらには、水和膨潤した状態から溶解した状態になるまでの時間が短くなるため、上記特許文献1の方法では、早期に粘性が発現され、水性溶媒にガラクトース部分分解物を均一に拡散させるためには、比較的強い強制撹拌が必要になる。
また、この室温での混合によって、水性溶媒中でガラクトース部分分解物を、ほとんど溶解していない状態にさせ易くなり、その結果、混合物の粘度を低いものとし得ることになる。次いで、このように粘度の低い混合物を冷却または凍結することによって、水性溶媒中でガラクトース部分分解物が溶解状態ではなく高粘性の水和膨潤した状態にさせ易くなり、その結果、混合物の粘度を高いものとし得ることになる。
しかも、予め水性溶媒を冷却しておかなくても済むため、その分、準備時間も手間も省けることにもなる。
そして、ガラクトース部分分解物の多くが水和膨潤した状態にある混合物を加熱しても、この混合物をゲル化させることができ、ゲル組成物が得られることを見出した。
また、ガラクトース部分分解物と水とを混合して得られた混合物を、冷却または凍結し、室温まで加熱して解凍した後、油状物質を添加してさらに混合し、加熱することによっても、油状物質を十分に含有する油状物質含有ゲル組成物が得られることを見出した。
さらに、このように油状物質を含有させることによって、冷却した水性溶媒にガラクトース部分分解物を溶解させる特許文献1、2の方法と比較して、同じガラクトース部分分解物を添加したときに、より多くの油状物質を含有させ得ることを見出した。
このように、ガラクトース部分分解物と水とを混合して得られた混合物を冷却または凍結し、その後、この混合物がゲル化する前に、油状物質を添加することによって、油状物質を十分に含有する油状物質含有ゲル組成物を簡便に製造できることを見出して、本発明を完成するに至った。
油状物質を含有する油状物質含有ゲル組成物の製造方法であって、
工程(1):ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、水性溶媒とを室温で混合して混合物を得る工程と、
工程(2):前記工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結する工程と、
工程(3):前記工程(2)で得られた混合物を加熱することによりゲル化させて、ゲル組成物を得る工程とを備え、
前記工程(1)~(3)の少なくとも1つの工程において、且つ、前記工程(2)で得られた混合物がゲル化される前に、前記油状物質を添加する。
混合する」とは、水性溶媒の温度が室温の状態で混合することを意味する。
「冷却」とは、水性溶媒とガラクトース部分分解物との混合物が、その温度が降下させられることによって固体状となっていない状態を意味し、液状になっている場合と固体状、すなわち、凍結状になっている場合の双方が混在している状態も含む。
「凍結」とは、水性溶媒とガラクトース部分分解物との混合物が、その温度が降下させられることによって固体状となっていることを意味する。
また、工程(2)にて、工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結することによって、水性溶媒中でガラクトース部分分解物を水和膨潤させることができる。このとき、ガラクトース部分分解物が溶解状態ではなく水和膨潤した状態にさせ易くなる。これにより、混合物(分散液)の粘度を低いものとすることができ、冷却または凍結することによって、混合物を高粘性の水和膨潤物とすることができる。
さらに、粘度の発現を比較的遅らせることができるため、従来のような比較的強い強制撹拌を行わなくても、水性溶媒中にガラクトース部分分解物を十分に分散することができる。
このように、工程(1)及び(2)によれば、予め水性溶媒を冷却しておかなくても済むため、その分、準備時間も手間も省ける。
さらに、工程(3)にて、工程(2)で得られた混合物を加熱してゲル化することによって、混合物をゲル化させることができる。このとき、得られたゲル組成物は、ガラクトース部分分解物に起因するダマ等の非水和物の混入が抑制されたものとなる。
また、このようにして得られた油状物質含有ゲル組成物は、添加した油状物質がゲル組成物と分離することなくこれに安定して取り込まれており、油状物質を十分に含有するものとなる。
いるが、表層に高粘度な(粘着)層がほとんど形成されていない状態で、各ガラクトース
部分分解物が水性溶媒に存在している状態を意味する。
「水和膨潤」とは、全体的に粉状の各ガラクトース部分分解物が水性溶媒を十分に吸収
し、各ガラクトース部分分解物が全体として高粘度な状態を形成している状態を意味する。
「溶解」とは、高粘度な表層から多糖分子鎖が解離し、該表層から溶媒中に拡散する状
態を意味する。
また、「ダマ」とは、粉状のガラクトース部分分解物が集合した状態(集合物の状態)
で水と接触し、集合物内部に空気層を含んだまま該集合物の外層のみが水との接触によって高粘度な状態となり、これにより、該集合物の内部まで水性溶媒が浸透し難くなり、全
体として塊となった状態、または、その塊がさらに集合した状態を意味する。
前記工程(1)において、前記油状物質を添加してもよい。
これにより、油状物質を室温で混合することができる。また、比較的初期の工程で、必要な原料を投入することができるため、製造がより簡便となる。
前記工程(3)において、前記工程(2)で得られた混合物がゲル化される前に前記油状物質を添加してもよい。
これにより、既に十分に水和膨潤物が形成され、該水和膨潤物を構成しているガラクトース部分分解物の分子が比較的多い状態で、油状物質を添加することができるため、該ガラクトース部分分解物の分子間に、比較的多くの油状物質を取り込ませることができる。
従って、油状物質をより十分に含有する油状物質含有ゲル組成物を、製造し得る。
前記工程(1)において前記油状物質を添加するとき、
前記ガラクトース部分分解物1質量部に対して、0.01~20質量部の前記油状物質を添加することが好ましい。
前記工程(2)において、前記工程(1)で得られた混合物を凍結した場合には、
前記工程(3)において、前記工程(2)で得られた混合物を解凍し、前記油状物質を添加することが好ましい。
よって、油状物質をより十分に含有させ得る。
前記工程(3)において前記油状物質を添加するとき、
前記工程(2)で得られた混合物100質量部に対して、前記油状物質を0.01~700質量部添加し得る。
前記工程(2)で得られた混合物100質量部に対して、前記油状物質を1~50質量部添加し得る。
前記工程(2)で得られた混合物100質量部に対して、前記油状物質を50~700質量部添加することが好ましい。
前記工程(1)では、前記ガラクトース部分分解物と、前記水性溶媒とを18~30℃で混合することが好ましい。
前記ゲル組成物中の前記ガラクトース部分分解物の配合量が、0.05~20質量%であることが好ましい。
して0.05~20質量%であることによって、油状物質をより十分に含有させ得ることができ、また、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物に油状物質をより分離させることなく安定に包含させることができる。
工程(1)では、得られた混合物にガラクトース部分分解物が1~10質量%含有されていることが好ましい。
前記工程(2)では、前記工程(1)で得られた混合物を-25~10℃まで冷却または凍結することが好ましい。
前記油状物質は、常温で液状または半固体状であることが好ましい。
ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、水性溶媒と、油状物質とを含有し、且つ、
前記油状物質を、0.01~90質量%含有する。
前記ガラクトース部分分解物を、0.05~20質量%含有することが好ましい。
油状物質を含有する油状物質含有ゲル組成物の製造方法であって、
工程(1):ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、水性溶媒とを室温で混合して混合物を得る工程と、
工程(2):前記工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結する工程と、
工程(3):前記工程(2)で得られた混合物を加熱することによりゲル化させて、ゲル組成物を得る工程とを備え、
前記工程(1)~(3)の少なくとも1つの工程において、且つ、前記工程(2)で得られた混合物がゲル化される前に、前記油状物質を添加する。
ガラクトキシログルカンは、通常、側鎖キシロースを約37%、側鎖ガラクトースを約17%含有している(Gidleyら、カーボハイドレート リサーチ(Carbohydrate Research)、214(1991)219-314頁参照)。よって、ガラクトースが30~55%部分分解されてなるガラクトース部分分解物は、側鎖キシロースを39~41%、側鎖ガラクトースを8~12%含有していると算出される。
なお、ガラクトースの部分分解率(すなわち、ガラクトースの除去率)は、得られた部分分解物がセルラーゼ分解されることによって生成されるガラクトキシログルカンオリゴ糖量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アミノカラム)で測定することにより算出することができる。
油性物質としては、特に限定されないが、水和膨潤物中のガラクトース部分分解物と相溶性を有するものを用いることができる。
油状物質が、常温で液状または半固体状であることによって、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物と混合し易くなる。
より具体的には、上記ガラクトース部分分解物を室温の水性溶媒と混合して、水性溶媒中にガラクトース部分分解物を分散させた混合物としての分散液(すなわち、懸濁液)を得る。
よって、工程(1)では、ガラクトース部分分解物と室温の水性溶媒とを混合することによって、ガラクトース部分分解物に起因するダマの発生を抑制し得る。
18℃以上で混合することによって、ダマの形成をより回避しながら水性溶媒中にガラクトース部分分解物を分散させることができる。これにより、ガラクトース部分分解物を溶解させた場合に生じるような粘度増加をより抑制することができるため、作業性の低下をより抑制できる。また、30℃以下で混合することによって、加熱等の特殊な環境を必要とすることなく、通常の室温環境でガラクトース部分分解物を水性溶媒に分散させることができるので、簡便に操作を行うことができる。なお、加熱を行いながら、混合してもよい。
このように、ガラクトース部分分解物と水性溶媒とを18~30℃で混合することによって、作業性の低下をより抑制することができる。
かかる混合時間は、例えば、5分~1時間を採用することができ、10分~30分を採用することが好ましい。
混合時間を1時間以下とすることによって、操作を早く完了させることができ、作業性が向上するという利点がある。
例えば、得られるゲル組成物の所望のゲル特性に応じて適宜設定することができる。例えば、この観点から、例えば、工程(1)では、上記混合物中に、前記ガラクトース部分分解物が1~10質量%含有されていることが好ましく、2~7質量%含有されていることがより好ましく、3~5質量%含有されていることがさらに好ましい。
上記混合物中に、ガラクトース部分分解物が1質量%以上含有されていることによって、より確実にゲル化させることができる。また、ゲルの表面上に水層が形成され難くし得るという点では、ガラクトース部分分解物が2質量%以上含有されていることが好ましく、3質量%以上含有されていることがより好ましい。
一方、ガラクトース部分分解物が10質量%以下含有されていることによって、ゲル中の水を適度な量とすることができ、これにより、所望のゲル特性を発揮させ得るゲル組成物を製造することができる。
加えて、工程(1)で得られた混合物にガラクトース部分分解物が1~10質量%含有されていることによって、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物に油状物質をより分離させることなく安定に包含させることが可能となる。
なお、ガラクトース部分分解物の濃度が低い場合、後述する冷却または凍結した混合物を加熱すると、上側に、ゲル化に寄与できなかった水が層となり、その下方がゲル化層となる場合がある。この場合、上側の水層(分離水)を除去することによって、下側のゲル層を、ゲル組成物として得ることもできる。すなわち、後述する冷却または冷凍した混合物を濃縮してゲル組成物を得ることもできる。
このように、ガラクトース部分分解物の濃度によっては上記水層が除去されることを考慮すれば、生成したゲル組成物(上記水層を除去した場合には、除去後のゲル組成物であり、上記水層が発生しない場合にはそのままのゲル組成物)中のガラクトース部分分解物の濃度は、1~10重量%が好ましく、2~7重量%がより好ましく、3~5重量%がさらに好ましい。
より具体的には、工程(1)で得られた分散液を冷却または凍結することによって、水和溶媒にガラクトース部分分解物を水和膨潤させた水和膨潤物を得る。
水和膨潤物には、冷却したが凍結されていない液状の水和膨潤物、及び、凍結した固体状の水和膨潤物が含まれる。なお、工程(2)において、水性溶媒にはガラクトース部分分解物が一部溶解した溶解物が含まれていてもよい。
なお、工程(2)において強制撹拌を行うことが妨げられるものではく、強制撹拌を行った場合には、行わなかった場合よりも一層速やかにガラクトース部分分解物を水和膨潤させることが可能となる。
ここで、上記混合物を降温させる温度が低くなるほど、ガラクトース部分分解物を水和膨潤させ易くなる傾向にある一方、過度に水和膨潤を進行させて粘性を発現させ易くなる傾向にある。
従って、例えば、かかる観点を考慮して、前記工程(1)で得られた混合物を-25~10℃まで冷却または凍結することが好ましい。
上記混合物を降温させる温度範囲の上限については、10℃以下とすることによって、ガラクトース部分分解物を水和膨潤させ易くなる。また、ガラクトース部分分解物を一層水和膨潤させ易くなるという点では、上限については、5℃とすることがより好ましく、1℃とすることがさらに好ましい。
一方、上記混合物を降温させる温度範囲の下限については、-25℃とすることによって、水和膨潤の過度の進行を抑制し、粘性を発現させ難くすることができる。
より具体的には、工程(3)では、工程(2)で得た水和膨潤物及び溶解物を加熱することによりゲル化させて、ゲル組成物を得る。
油状物質の添加タイミングは、工程(1)~(3)の少なくとも1つの工程において、且つ、工程(2)で得られた混合物がゲル化される前に油状物質を添加するのであれば、特に限定されない。
このように、工程(1)において、油状物質を添加することによって、油状物質を室温で混合することができる。また、比較的初期の工程で、必要な原料を投入することができるため、製造がより簡便となる。
0.01~20質量部の油状物質を添加することによって、ガラクトース部分分解物の混合物に油状物質をより分離することなく安定に包含させることが可能となり、加えて、油状物質をより安定に保持することが可能となる。
これにより、既に十分に水和膨潤物が形成され、該水和膨潤物を構成しているガラクトース部分分解物の分子が比較的多い状態で、油状物質を添加することができるため、該ガラクトース部分分解物の分子間に、比較的多くの油状物質を取り込ませることができる。
従って、油状物質をより十分に含有する油状物質含有ゲル組成物を、製造し得る。
このように油状物質を添加することによって、工程(2)で凍結した混合物を解凍した状態で、該混合物と油状物質とを混合することができるため、これらを十分に混合し得る。よって、油状物質をより十分に含有させ得る。
なお、この場合、工程(3)において、工程(2)で凍結した混合物が解凍され、且つ、ゲル化されない温度まで加熱して、該混合物を解凍すればよい。また、工程(2)で得られた混合物に、油状物質を添加する際には、該混合物が解凍されていても解凍されていなくてもよいが、該混合物と油状物質とを混合する際には、該混合物が解凍されていることが好ましい。
従って、例えば、かかる観点を考慮して、油状物質含有混合物を加熱する場合、25~60℃まで昇温させることが好ましい。
上記昇温させる温度の下限については25℃とすることによって、ゲル強度を十分に高めることができる。また、ゲル強度をより十分に高めるという点では、下限については30℃とすることがより好ましく、40℃がさらに好ましい。
一方、上記昇温させる温度の上限については60℃とすることによって、無駄な加熱操作および油状物質の分離を抑制することができ、これにより、ゲル組成物の品質および作業性の低下を抑制することができる。また、無駄な加熱操作および油状物質の分離をより抑制するという点では、上限については50℃とすることが好ましい。
また、工程(2)にて、工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結することによって、水性溶媒中でガラクトース部分分解物を水和膨潤させることができる。このとき、ガラクトース部分分解物を溶解状態ではなく水和膨潤した状態にさせ易くなる。これにより、混合物の粘度を低いものとすることができ、冷却または凍結することによって、混合物を高粘性の水和膨潤物とすることができる。
さらに、粘度の発現を比較的遅らせることができるため、従来のような比較的強い強制撹拌を行わなくても、水性溶媒中にガラクトース部分分解物を十分に分散することができる。
しかも、工程(1)及び(2)によれば、予め水性溶媒を冷却しておかなくても済むため、その分、準備時間も手間も省ける。
また、このようにして得られた油状物質含有ゲル組成物は、添加した油状物質がゲル組成物と分離することなくこれに安定して取り込まれており、油状物質を十分に含有するものとなる。
かかる油状物質含有ゲル組成物は、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、水性溶媒と、油状物質とを含有し、且つ、油状物質を、0.01~90質量%含有する。
ガラクトース部分分解物を、0.05~20質量%含有することによって、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物に油状物質を安定に包含させることができる。
ガラクトース部分分解物を、0.2~5質量%含有することによって、ガラクトース部分分解物の水和膨潤物に油状物質をより分離することなく安定に包含できるという利点がある。
・β-ガラクトシダーゼの精製:
複合酵素活性を有する市販のβ-ガラクトシダーゼ(製品名:ラクターゼY-AO、ヤクルト社製、Aspergillusorizae由来)の2.5%水溶液をイオン交換クロマトグラフィー(製品名:DEAE Toyopeal、東ソー社製)の0.025Mリン酸緩衝液(pH7.4)、0~0.6MのNaClグラジエントに付し、NaCl濃度0.2~0.4Mで溶出させた。さらに、疎水クロマトグラフィー(製品名:Butyl-Toyopeal、東ソー社製)の0.025Mリン酸緩衝液(pH7.4)、0~0.6Mの硫酸アンモニウムグラジエントに付し、硫酸アンモニウム濃度10%以下で溶出させた。以上の操作により、市販の粗酵素2.5gから精製酵素60mgを得た。本品はセルラーゼ活性、IPase(イソプリメベロース生成酵素)活性が認められなかった。
上記で得た精製酵素β-ガラクトシダーゼを用い、基質の1%ガラクトキシログルカン(製品名:グリロイド(登録商標)、DSP五協フード&ケミカル社製)水溶液を、酵素濃度2.4×10-5質量%、pH5.6、50℃で反応させた後、100℃で20分間加熱することにより、反応を停止させた。反応溶液は、反応開始後約15時間でゲル化して、ゲル状の組成物を得た。得られたゲル状の組成物におけるガラクトース除去率を以下の方法で算出した。
ゲル状の組成物の1質量%水溶液7gにセルラーゼオノズカRS(ヤクルト社製)0.15質量%溶液(50mM酢酸緩衝液、pH4.0)を1mL加え、50℃、オーバーナイトで反応させた。上記1%ガラクトキシログルカン水溶液も同様の方法で反応させ、対照とした。反応後、反応液を98℃で30分間加熱することによって酵素を失活させた。その後、試料を前処理カートリッジ(IC-SP、東ソー社製)および0.45μmのセルロースアセテート製メンブレンフィルターにかけ、得られたろ液10μLを、アセトニトリル:水=60:40(v/v)を0.6mL/分で流しているHPLCのアミノカラムにアプライし、ガラクトキシログルカンのオリゴ糖(7糖(ガラクトース0個)、8糖(ガラクトース1個)、9糖(ガラクトース2個))の溶出面積を示差屈折率計で検出した。次いで、1ユニット(7糖)あたりのガラクトース量を、(8糖の面積+(9糖の面積×2))/(7糖の面積+8糖の面積+9糖の面積)により算出した。上記式で算出したゲル状の組成物について算出されたガラクトース量の、対照のガラクトキシログルカンから算出されたガラクトース量からの減少率をガラクトース除去率(%)としてさらに算出したところ、約45%だった。
そして、上記得られたゲル状の組成物を凍結乾燥、または、該ゲル状の組成物にアルコールを加えて沈殿・濾取後、乾燥して、粉状のガラクトース部分分解物を得た。
(1)オリーブ油含有ゲル組成物の作製
プラスチックカップ(製品名:プロマックス、容量:90mL、品番:EI-90、旭化成パックス社製)に、製造例1で得られたガラクトース部分分解物1.0gを加え、室温の水を加え、全量を20gとしてガラクトース部分分解物(5質量%)の分散液を調製した。この状態で、分散液を-20℃に設定した冷凍庫(型式:HRF-180XF、ホシザキ電機社製)で2時間静置して、分散液を-20℃まで降温させ、この状態で2時間保持した後、室温で解凍した。解凍後の試料に、0.2、0.4、0.8、1.2、2.0、3.0、4.0.5.0、10.0gのオリーブ油(製品名:スブベティカオーガニックエキストラバージンオリーブ油、DSP五協フード&ケミカル社製。なお、オリーブ油として、以下、同様のオリーブ油を用いた。)を添加し、スパチュラを用いて混合し、恒温器中で、50℃まで昇温させた後、この状態で2時間保持して、オリーブ油含有ゲル組成物を作製した。
(2)評価
得られたゲル組成物について、オリーブ油の分離、保形性(ゲル形成)、触感及び使用感を評価した。下記表1に示す基準で、オリーブ油の分離を評価した。また、保形性については、50℃で2時間保持(加熱)後、プラスチック容器を水平状態から90°傾け、ゲル組成物の変形が見られないとき、保形性を有する(ゲル形成された)と判断した。触感については、加熱後の組成物を容器から取り出し、取り出したゲル組成物を手の甲の肌上に貼付することにより触感を評価した。
オリーブ油の添加量および分離についての結果を表2に示す。
(1)オリーブ油含有ゲル組成物の作製(工程(1)の分散液中にオリーブ油を添加して作製する方法)
実験例1と同様の方法で、全量を20gとしてガラクトース部分分解物(5質量%)の分散液を調製した後、4.0gのオリーブ油を添加し、混合しなかった。この状態で、オリーブ油を添加した分散液を-20℃に設定した冷凍庫で2時間静置して、分散液を-20℃まで降温させ、この状態で2時間保持した後、室温で解凍した。解凍後の試料を、スパチュラを用いて混合し、恒温器中で、50℃まで昇温させた後、この状態で2時間保持して、オリーブ油含有ゲル組成物を作製した。
(2)評価
得られたゲル組成物について、実験例1と同様にして、オリーブ油の分離、保形性(ゲル形成)、および触感を評価した。オリーブ油の添加量および分離についての結果を表3に示す。
(1)シリコーン油含有ゲル組成物の作製
実験例1と同様にして、ガラクトース部分分解物1.0gの分散液20g(5質量%)を調製し、凍結した後、解凍した。解凍後、1.0、2.0、3.0、4.0gのシリコーン油(製品名:ケアシル、型式:CSF-3100、ヌシルテクノロジー社製)を添加し、スパチュラを用いて混合し、恒温器中で、50℃まで昇温させた後、この状態で2時間保持して、シリコーン油含有ゲル組成物を作製した。
(2)評価
得られたゲル組成物について、実験例1と同様にして、オリーブ油の分離、保形性(ゲル形成)、および触感を評価した。オリーブ油の添加量および分離についての結果を表4に示す。また、比較例1の結果も併せて示す。
(1)ゴマ油含有ゲル組成物の作製
実験例1と同様にして、ガラクトース部分分解物1.0gの分散液20g(5質量%)を調製し、凍結した後、解凍した。解凍後、0.2、0.5、1.0、2.0.3.0gのゴマ油(かどや社製)を添加し、スパチュラを用いて混合し、恒温器中で、50℃まで昇温させた後、この状態で2時間保持して、ゴマ油含有ゲル組成物を作製した。
(2)評価
得られたゲル組成物について、実験例1と同様にして、ゴマ油の分離、保形性(ゲル形成)、および触感を評価した。オリーブ油の添加量および分離についての結果を表5に示す。
(1)オレイン酸含有ゲル組成物の作製
実験例1と同様にして、3質量%および5質量%のガラクトース部分分解物を含有する分散液を30.0g調製し、凍結した後、解凍した。解凍後、撹拌棒を用いて混合しながら、オレイン酸(ナカライテスク社製)を少量ずつ添加して、ゲル組成物に安定に含有できるオレイン酸添加量を調べた。オレイン酸を添加した混合物を、50℃まで昇温させた後、この状態で2時間保持して、オレイン酸含有ゲル組成物を作製した。
(2)評価
得られたゲル組成物について、実験例1と同様にして、オレイン酸の分離、保形性(ゲル形成)、及び触感を評価した。オリーブ油の添加量および分離についての結果を表6に示す。
これに対し、3質量%の部分分解物を含有する分散液30gでは、5質量%部分分解物を含有する分散液30gと比較して少なくとも約2.5倍多くのオレイン酸(8.2g)を分離することなく安定に含有する、良好なオレイン酸含有ゲル組成物を作製できた。また、得られたオレイン酸を含有する2つのゲル組成物は、いずれもプラスチックカップを90°傾けても組成物の変形が見られなかった。このことから、組成物がゲル化していること、及び保形性を有することが示された。さらにゲル組成物は、容器から容易に取り出すことができた。取り出したゲル組成物は、手の甲の肌上に置いたとき肌上に適量の油分が付着することにより肌がしっとりとし、また、心地よい触感を示し、使用感に優れていた。
(1)石鹸含有ゲル組成物の作製
本実験例の処方を、下記表7に示す。
上記プラスチックカップに、製造例1で得られたガラクトース部分分解物1.0gを加え、室温の水を加え、全量を15gとしてガラクトース部分分解物の分散液(5質量%)を得た。得られた分散液に、石鹸素地液1(製品名:プライオリーB-100B(登録商標)、花王社製)、石鹸素地液2(製品名:アミライトGCK-12K(登録商標)、味の素社製)を5gずつ別々に添加し、スパチュラを用いて混合した(石鹸素地液1の凍結前添加:実施例18、石鹸素地液2の凍結前添加:実施例20)。これら石鹸素地液1、2を添加した各分散液(2つ)と、石鹸素地液を添加していない分散液(2つ)を、-20℃に設定した冷凍庫(型式:HRF-180XF、ホシザキ電機社製)で2時間静置して、-20℃まで降温させ、この状態で2時間保持した後、室温で解凍した。解凍後、石鹸素地液を添加していない分散液に、石鹸素地液1、石鹸素地液2を5gずつ別々に添加し、スパチュラを用いて混合した(石鹸素地液1の凍結解凍後添加:実施例19、石鹸素地液2の凍結解凍後添加:実施例21)。各分散液を、恒温器中で、50℃まで昇温させた後、この状態で2時間保持して、石鹸素地液含有ゲル組成物を作製した。
実施例18~21では、いずれも石鹸素地液を含有するゲル組成物が得られた。
石鹸素地液が均一に混合されている場合を、「◎」と表し、均一に混合されていない場合を、「○」と表すことによって、評価した。結果を表7に表す。
表7に示すように、石鹸素地液を凍結前の分散液に混合した場合(実施例18及び20)、均一に石鹸素地液を含有する良好なゲル組成物が得られた。しかし、凍結後解凍した混合物に石鹸素地液を混合した場合(実施例19及び21)、石鹸素地液の分離はほとんど見られなかったが、均一には混合されなかった。凍結前に石鹸素地液を添加したゲル組成物(実施例18及び20)を用いて、水道水で手を洗浄したところ、ゲル組成物は、良好な泡立ち性を示し、問題なく手を洗浄することができた。
(1)オリーブ油及び石鹸素地液含有ゲル組成物の作製
本実験例の処方を表8に示す。
プラスチックカップ〔旭化成パックス社製、製品名プロマックス、容量:90mL、EI-90〕に、下記表8に示すように、製造例1で得られたガラクトース部分分解物を1.0g、石鹸素地液(製品名:プライオリーB-100(登録商標)、花王社製)を0または6g加え、室温の水を加え、全量を20gとしてガラクトース部分分解物を5質量%含有する分散液を得た。調製した分散液を-20℃に設定した冷凍庫(型式:HRF-180XF、ホシザキ電機社製)で2時間静置して分散液を-20℃まで降温させ、この状態で2時間保持した後、室温で解凍した。解凍後、石鹸素地液を添加および添加していない試料に、水4g(オリーブ油0g+水4g)、オリーブ油2g及び水2g(オリーブ油2g+水2g)、オリーブ油3g及び水1g(オリーブ油3g+水1g)、オリーブ油4g(オリーブ油4g+水0g)を添加し、スパチュラを用いて混合した。得られた混合液を、恒温器中で、50℃まで昇温させた後、この状態で2時間保持して、オリーブ油及び石鹸素地液含有ゲル組成物(オリーブ油配合ゲル石鹸組成物)を作製した。
(2)評価
オリーブ油を単独で含有するゲル組成物、及び、オリーブ油と石鹸素地液とを含有するゲル組成物の分離について、実験例1と同様にして評価を行った。結果を表8に示す。
実施例22~27のゲル組成物で手を洗浄したところ、泡立ちが良いことが確認された。洗浄後、手の表面を観察したところ、手の表面にオリーブ油が薄被膜として残存したことにより、該手の表面が、しっとりとしていた。オリーブ油を含有していないゲル組成物(実施例28)は、凍結解凍後の水添加と撹拌とによって、起泡し、その後の加熱処理によって、細かな泡を内含したままゲル化したため、起泡化されたゲル組成物を作製することができた。
ゲル組成物を用いたクレンジング実験
実施例1と同様にして、3質量%の部分分解物を含有する分散液を調製し、凍結した後、解凍して、混合物を調製した(試料1:ゲル化されていない)。
さらに、上記混合物100質量部に対して20質量部のオリーブ油を徐々に添加し、スパチュラを用いて混合して、オリーブ油含有混合物を調製した(試料2:ゲル化されていない)。
一方、ガラクトースが部分除去されていないガラクトキシログルカン(製品名:グリロイド(登録商標)、DSP五協フード&ケミカル社製)を水に加えて撹拌溶解することにより、3質量%のガラクトキシログルカンを含有する水溶液を調製した(試料3:ゲル化されていない)。
そして、5箇所の塗布面それぞれに、試料1、2、3を適量塗布し、手指でこすり洗いした(各塗布面について10往復)。こすり洗いを行った後、残存するゲルを流水に晒すことのみによって、穏やかに除去した。除去後の塗布面を観察したところ、試料3で洗浄した塗布面は、リップクリームがほとんど除去されていなかったが、試料2で洗浄した塗布面は、リップクリームが全て除去されていた。試料1で洗浄した塗布面は、リップクリームがほとんど除去されていた。よって、ガラクトース部分分解物及び油状物質を含有するゲル組成物では、グリロイドと比較して、優れた洗浄効果を明瞭に確認することができた。
実験例9の処方を表9~17に示す。なお、表8~10において、ガラクトース部分分解物を「部」と表し、ガラクトキシログルカン(グリロイド)を「グ」と表し、メチルセルロースを「メ」と表し、氷温下撹拌溶解により調製したガラクトース部分分解物を「部・撹拌」と表す。
実施例1と同様にして、ガラクトース部分分解物を含有する水分散液を調製し、凍結後、解凍することによって、混合物(水和膨潤物)を作製した。得られた混合物に、各種油状物質を一定量添加し、必要に応じて撹拌棒を用いた以外は基本的にスパチュラを用いて混合した後、25℃~80℃に調節した恒温器中で、一定時間静置した。なお、後述するように、4℃に調節した恒温器中で、一定時間静置したものは、ゲル化しなかった(比較例9、10、13)。なお、いずれの温度でも、5~10分程度でゲル化が確認された。
上記ガラクトキシログルカン(製品名:グリロイド(登録商標)、DSP五協フード&ケミカル社製)を水に加え、撹拌溶解することにより、3質量%のガラクトキシログルカンを含有する水溶液を調製した。得られた水溶液に、各種油状物質を一定量添加し、必要に応じて撹拌棒を用いた以外は基本的にスパチュラを用いて混合した後、4℃、及び、25℃~80℃に調節した恒温器中で、一定時間静置した。なお、これらは、恒温器中で一定時間静置したものの、いずれの温度でもゲル化しなかった。
実施例1と同様にして、ガラクトース部分分解物を含有する水分散液を調製し、凍結後、解凍することによって、混合物(水和膨潤物)を作製した。得られた混合物に、各種油状物質を一定量添加し、必要に応じて撹拌棒を用いた以外は基本的にスパチュラを用いて混合した後、4℃に調節した恒温器中で、一定時間静置した。得られた組成物は、ゲル化しなかった。
上記ガラクトース部分分解物を氷温に冷却した水に加え、撹拌溶解することにより、3質量%のガラクトース部分分解物を含有する水溶液を調製した。得られた水溶液に、油状物質(オリーブ油)を一定量添加し、必要に応じて撹拌棒を用いた以外は基本的にスパチュラを用いて混合した後、50℃に調節した恒温器中で、一定時間静置した。
メチルセルロース(製品名:メトローズ(登録商標)SM-4000(高粘性タイプ)、信越化学工業社製)の粉末を、室温の水に添加して分散液の作製を試みたが、ダマが多く発生したため分散液を作製することはできなかった。そこで、90℃以上に加熱した水に上記メチルセルロースを添加し、混合することによって分散液を作製した。得られた分散液を4℃まで冷却し、さらに撹拌溶解することにより、3質量%の水溶液を調製した。得られた水溶液を目視で観察したところ、ガラクトース部分分解物を用いた混合物と同程度の粘性を示した。そして、得られた水溶液に、油状物質(オリーブ油)を一定量添加し、必要に応じて撹拌棒を用いた以外は基本的にスパチュラを用いて混合した後、50℃に調節した恒温器中で、一定時間静置した。
上記(1)~(4)において、油状物質を添加して撹拌して得られた調製直後の組成物(恒温器中に静置していない組成物)を、そのまま(ゲル化させないまま)参考例の組成物とした。
得られた油状物質含有組成物について、実験例1と同様にして、調製直後及び恒温器内で一定条件で保存後の油状物質の分離、保形性(ゲル形成)、及び触感を評価した。油状物質の分離についての結果を表9~表17に示す。
得られた組成物について、恒温器内での保存時間と分離との関係を調べた。具体的には、一定条件で保存した後で実験例1と同様にして評価を行い、上記(6)での調製直後の上記組成物の評価と比較することによって、経時安定性を評価した。そして、一定条件で保存した後でも良好と評価された組成物を、経時的に安定なものと判定した。なお、表9~17の保存条件の欄において、「-」は調製直後の組成物であり、恒温器で保存しなかったことを示す。
一方、かかる油状物質とガラクトース部分分解物とを含有する組成物は、低温(4℃)での長期保存ではゾルを呈していた。また、この低温保存により、油状物質の分離が見られ(水和膨潤物が油状物質を取り込む量が低下し)、安定性が低い傾向にあった。
ガラクトース部分分解物と水性溶媒との混合物(水和膨潤物)は、低温でゲル化しないことから、油状物質を含有するゲル組成物を作製するためには、さらに、油状物質を経時的に分離することなく安定に含有するゲル組成物を作製するためには、油状物質を上記混合物に混合するだけでは不十分であり、上記混合物を、温度を上昇させることによって一旦ゲル化させることが必要であり、そして、このようにゲル化させて得られたゲル組成物は、油状物質を経時的に分離することなく安定に含有できることが明らかとなった。
また、各種油状物質とガラクトース部分分解物とを含有するゲル組成物は、容器から容易に取り出すことができ、いずれも心地よい触感があることがわかった。
また、従来法で調製した溶液に油状物質を含有させて作製した組成物は、50℃で一定時間保存したとき、2時間後から油状物質の分離が多くなり(比較例14)、24時間後では、油状物質の分離が著しく、安定性を全く維持することはできなかった(比較例15)。
これに対して、本発明の方法で得られる油状物質含有ゲル組成物は、上記混合物(水和膨潤物)の段階で、予想外なことに、従来法で調製した溶液よりも多くの油状物質を分離することなく安定に含有させた組成物を製造することができ(例、参考例14)、さらに、この組成物を加熱してゲル化させることによって、50℃で一定時間保存したとき、少なくとも1ヶ月まで、経時的にも分離することなく安定性を維持することが可能であった(実施例43)。
しかも、本発明の方法によって作製した油状物質含有ゲル組成物は、製造が簡便であった。
この結果から、本発明の方法で得られる上記混合物(水和膨潤物)およびゲル組成物は、従来法で製造した溶液やゲル組成物よりも、油状物質を分離することなく安定に含有させることができ、しかも、経時的に分離することなく安定に含有しやすい構造となっていると考えられる。
本実施例で検討した油状物質のうち、オレイルアルコール及びトリオレインは、上記他の油状物質に比べて、上記混合物中に安定に含有される量が比較的少なかった(参考例16、17)。しかし、オレイルアルコール及びトリオレインを含有させた場合でも、一定保存条件で良好な経時安定性を示した(実施例50、51)。
ガラクトース部分分解物を4質量%~5質量%含有する水分散液(水和膨潤物)を用いたゲル組成物は、同じ濃度のメチルセルロース溶液と比べて、分離することなく安定に含有できるオリーブ油の量が著しく少なくなる傾向にあった。予想外なことに、ガラクトース部分分解物を含有するゲル組成物は、一般に知られているメチルセルロースとは明瞭に異なる、油状物質を安定に含有できる特異な濃度(3質量%)を有することが明らかとなった。ガラクトース部分分解物を3質量%の含有する水分散液(水和膨潤物)を用いたゲル組成物では、油状物質を安定に取り込んで包含するのに最適なネットワーク構造(網目構造)が形成されていると考えられる。
以上の結果から、天然由来の水性多糖の構造を一部酵素処理するだけで、広範囲の油状物質を安定に含有するゲル状組成物を作製できること、また油状物質を含有するこのゲル組成物は、触感が良好であることが示された。
化粧品(ミルクローション)(比較例22)
製造例1で得られたガラクトース部分分解物を用いて、特許文献1(特開平8-283305号公報)に記載の処方に類似する下記表18の処方で化粧品(ミルクローション)を作製した。本実験例では、ガラクトース部分分分解物を、氷温下で水に撹拌溶解した。作製した試料を50℃のインキュベータ内に2時間静置したが、保形性のあるゲルは形成されなかった。
Claims (3)
- 水性溶媒と、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物とを含有する水和膨潤物であって、
前記ガラクトース部分分解物を3質量%以上10質量%以下含有し、
前記ガラクトース部分分解物が前記水性溶媒に溶解されずに前記水性溶媒を吸収し前記水性溶媒中に-25℃以上5℃以下で懸濁した状態である、水和膨潤物。 - 請求項1に記載の水和膨潤物であって、油状物質と混合して油状物質含有ゲル組成物を調製するための水和膨潤物。
- ダマを含まない前記油状物質含有ゲル組成物を調製するための、請求項2に記載の水和膨潤物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019118636A JP7311324B2 (ja) | 2015-07-10 | 2019-06-26 | 水和膨潤物 |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015138910A JP6549431B2 (ja) | 2015-07-10 | 2015-07-10 | 油状物質含有ゲル組成物の製造方法 |
JP2019118636A JP7311324B2 (ja) | 2015-07-10 | 2019-06-26 | 水和膨潤物 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2015138910A Division JP6549431B2 (ja) | 2015-07-10 | 2015-07-10 | 油状物質含有ゲル組成物の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2019156851A JP2019156851A (ja) | 2019-09-19 |
JP7311324B2 true JP7311324B2 (ja) | 2023-07-19 |
Family
ID=87201226
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019118636A Active JP7311324B2 (ja) | 2015-07-10 | 2019-06-26 | 水和膨潤物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP7311324B2 (ja) |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3909095B2 (ja) * | 1995-04-11 | 2007-04-25 | 大日本住友製薬株式会社 | 可逆的熱ゲル化剤 |
AU1671997A (en) * | 1996-02-13 | 1997-09-02 | Dainippon Pharmaceutical Co. Ltd. | Drug delivery system using galactoxyloglucan |
JP2011195601A (ja) * | 2010-03-17 | 2011-10-06 | Dsp Gokyo Food & Chemical Co Ltd | 低分子化ガラクトキシログルカン及びそれを含有する乳化組成物 |
-
2019
- 2019-06-26 JP JP2019118636A patent/JP7311324B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2019156851A (ja) | 2019-09-19 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CN100584305C (zh) | 含组合的脂肪酸和水溶或水溶胀淀粉结构化系统的个人用品液体清洁剂 | |
CN1950059B (zh) | 吸汗化妆制品及其制备方法 | |
JPH04290809A (ja) | 酵素的に枝切りされたスターチを含む化粧品 | |
JP2006503577A (ja) | 封入された機能性ベーカリー成分 | |
JP2021178844A (ja) | 泡増進糖類ブレンド | |
US11566111B2 (en) | Gel composition and production method therefor | |
JP7311324B2 (ja) | 水和膨潤物 | |
JP2950671B2 (ja) | 食品用起泡及び泡安定剤 | |
JP6549431B2 (ja) | 油状物質含有ゲル組成物の製造方法 | |
JP2002128636A (ja) | 除去容易なパック化粧料 | |
JP6085705B2 (ja) | ゲル組成物及びシート、並びに、それらの製造方法 | |
EP3476383B1 (en) | Gel composition, sheet, and production method therefor | |
JPH03232811A (ja) | 化粧品 | |
JP2008142046A (ja) | シート状成型食品 | |
JPWO2003000787A1 (ja) | 水性ゲル組成物 | |
KR102123608B1 (ko) | 하이드로겔을 함유하는 스크럽 조성물 | |
WO2023153370A1 (ja) | 水中油型乳化組成物、及び該水中油型乳化組成物が用いられた化粧料 | |
JPH10508337A (ja) | 糖脂質/mpgゲル | |
WO2023182488A1 (ja) | 乳化組成物 | |
JP2013126400A (ja) | 乳化用組成物及び乳化物 | |
CN106753888A (zh) | 一种护肤洗洁精及其制备方法 | |
JP6511554B1 (ja) | 水系組成物、その製造方法、及び、フィルムの製造方法 | |
CN106753890A (zh) | 一种除菌护手洗洁精及其制备方法 | |
JP4931094B1 (ja) | マンナン類含有食材のペースト化方法及びマンナン類含有食材のペースト化剤 | |
JP2002010751A (ja) | ドレッシング |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20190724 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20190724 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20200722 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20200828 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20201020 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20201224 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20210402 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20210702 |
|
C60 | Trial request (containing other claim documents, opposition documents) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C60 Effective date: 20210702 |
|
A911 | Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20210712 |
|
C21 | Notice of transfer of a case for reconsideration by examiners before appeal proceedings |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C21 Effective date: 20210716 |
|
A912 | Re-examination (zenchi) completed and case transferred to appeal board |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A912 Effective date: 20210910 |
|
C211 | Notice of termination of reconsideration by examiners before appeal proceedings |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C211 Effective date: 20210917 |
|
C22 | Notice of designation (change) of administrative judge |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C22 Effective date: 20220826 |
|
C22 | Notice of designation (change) of administrative judge |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C22 Effective date: 20230106 |
|
C13 | Notice of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C13 Effective date: 20230127 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20230328 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20230706 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 7311324 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |