JP6085705B2 - ゲル組成物及びシート、並びに、それらの製造方法 - Google Patents

ゲル組成物及びシート、並びに、それらの製造方法 Download PDF

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本発明は、ゲル組成物及びシート、並びに、それらの製造方法に関する。
従来、天然多糖類としてガラクトキシログルカンが用いられている。ガラクトキシログルカンはグルコース、キシロースおよびガラクトースを構成糖とし、主鎖はグルコースがβ−1,4結合し、側鎖にキシロース、そのキシロースにさらにガラクトースが結合している。ガラクトキシログルカンはそれ自体通常ゲル化しない。
一方、天然多糖類としてLMペクチンも用いられているが、LMペクチンを水に溶解させた溶液では、カルシウムイオンを添加すると、カルボキシ基が架橋されてLMペクチンがゲル化する。
これに対し、ガラクトキシログルカンは、中性多糖であることから、カルシウムなどのイオンを添加してもゲル化しない。
一方、ガラクトキシログルカンの側鎖の一部を構成するガラクトースを、微生物由来の精製β−ガラクトシダーゼを用いて部分的に分解(部分分解)することによって除去して得られた、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物(以下、単に「ガラクトース部分分解物または部分分解物」という場合がある。)が提案されている(特許文献1、2参照)。かかるガラクトース部分分解物は、該ガラクトース部分分解物と水性溶媒とを混合したときの混合物の熱挙動が、上記ガラクトキシログルカンの熱挙動とは逆であり、具体的には、加熱するとゲル化し、冷却するとゾル化し、このゾル/ゲルの変化が可逆的であるという熱挙動を示す。このような熱挙動は、可逆的熱ゲル化特性と呼ばれている。
また、ガラクトース部分分解物は、天然多糖類由来であり、化学修飾(付加)されていないことから人体および環境に安全であるため、該ガラクトース部分分解物を用いて製造されたゲル組成物は、食品、化粧品、または医薬品製剤等において幅広く利用され得る。
この種のガラクトース部分分解物を含有するゲル組成物の製造方法として、冷却した水性溶媒とガラクトース部分分解物とを混合して水性溶媒にガラクトース部分分解物を溶解し、溶解液を加熱してゲル化させることによって、ゲル組成物を製造すること、さらに製造したゲルの乾燥を進めることによってフィルム組成物を製造できることが提案されている(特許文献1、2参照)。
特開平8−283305号公報 国際公開第WO97/29777号
しかし、特許文献1、2に記載されたゲル組成物は、弾力性及び強度が十分とはいい難い。
また、これらゲル組成物を乾燥して水分量を減らしたシートを作製することも考えられるが、これらゲル組成物を乾燥すると、特に柔軟性及び強度が十分とはいえないシートしか得られない。
一方、一般に、多糖類を含有するゲル組成物を簡便に製造するには、水性溶媒と多糖類を接触させたときにダマが形成されないように、水性溶媒と多糖類とを混合することが望ましいとされている。ダマが形成されると、得られたゲル組成物中に、水和していない多糖類に起因する粉状の固形物(非水和物)が残存し、品質が低下することになるからである。また、一旦ダマとなった多糖類を内部まで完全に水和させて溶解させるのには多大な時間及び労力がかかることになるからである。
この点に関し、上記特許文献1、2の方法では、ガラクトース部分分解物を用いてゲル組成物を製造する際、ガラクトース部分分解物を、冷却した水性溶媒を用いてガラクトース部分分解物と混合し、これを溶解している。
しかし、これら方法では、水性溶媒を冷却し続けてこれにガラクトース部分分解物を混合する必要があるため、準備時間と手間がかかる。
また、これら方法では、混合物の粘度が高くなり過ぎて、所望の容器に移し替えて加熱によってゲル化させようとする際に、取り扱い難くなる場合がある。また、所望の容器に十分に充填することが困難となったり、溶液調製時や充填時等に気泡が混入し易くなったりする。
このように、特許文献1、2の方法では、ゲル化組成物を簡便に製造できるとはいい難い。
また、特許文献1、2の方法で得られたゲル組成物を乾燥しても、上記の通り、特に柔軟性及び強度に乏しいシートしか得られない。
上記事情に鑑み、本発明は、従来よりも弾力性及び強度に優れたゲル組成物、柔軟性及び強度に優れたシート、簡便に作製し得るゲル組成物の製造方法及びシートの製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決すべく、本発明者らが鋭意研究を行ったところ、以下の知見を得た。
すなわち、上記の通り、ガラクトース部分分解物を単体で水に溶解させてゲル組成物とした場合、かかるゲル組成物は、弾力性、及び、引っ張り耐性といった強度が十分とはいえないことが判明した。
また、かかるゲル組成物を乾燥してシートを作製した場合、柔軟性、及び、引っ張り耐性といった強度が十分とはいえないことも判明した。
これらの知見に基づき、本発明者らがさらに鋭意研究したところ、ガラクトース部分分解物に、特定の化合物を併用してゲル組成物を作製することにより、かかる化合物を併用しない場合よりも、弾力性及び強度に優れたゲル組成物が得られることを見出して、本発明のゲル組成物を完成するに至った。
一方、ゲル組成物の製造方法について本発明者らが特許文献1、2の記載内容について鋭意研究したところ、以下の知見を得た。
すなわち、一般的に、多糖類を水性溶媒と混合したとき、水性溶媒中の水によって多糖類が、先ずは水和膨潤した状態となり、水和膨潤がさらに進むと溶解した状態に至ることが知られている。
このことと、上記特許文献1、2の方法とを考慮した結果、特許文献1、2の方法では、冷却した水性溶媒にガラクトース部分分解物を混合してこれを溶解しているため、溶解液の粘度が比較的高くなり、その結果、取り扱い難くなる。
また、水性溶媒を冷却してその温度を低くする程、ガラクトース部分分解物が水和膨潤した状態になるまでに要する時間、さらには、水和膨潤した状態から溶解した状態になるまでの時間が短くなるため、上記特許文献1の方法では、早期に粘性が発現され、水性溶媒にガラクトース部分分解物を均一に拡散させるためには、比較的強い強制撹拌が必要になる。
これらの知見に基づいて本発明者らがさらに鋭意研究を進めたところ、水性溶媒と、ガラクトース部分分解物と、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩及びナトリウム塩から選択される1種または2種以上の混合物である化合物とを室温で混合することによって、該化合物を溶解させつつ、混合物中にダマが発生することなく水性溶媒中にガラクトース部分分解物を分散させ得ることを見出した。
また、この室温での混合によって、水性溶媒中でガラクトース部分分解物を、ほとんど溶解していない状態にさせ易くなり、その結果、混合物の粘度を低いものとし得ることになる。次いで、このように粘度の低い混合物を冷却または凍結することによって、水性溶媒中でガラクトース部分分解物が溶解状態ではなく高粘性の水和膨潤した状態にさせ易くなり、その結果、混合物の粘度を高いものとし得ることになる。
しかも、予め水性溶媒を冷却しておかなくても済むため、その分、準備時間も手間も省けることにもなる。
そして、ガラクトース部分分解物の多くが水和膨潤した状態にある混合物を加熱しても、この混合物をゲル化させることができ、ゲル組成物が得られることを見出し、さらに、ガラクトース部分分解物と上記特定の化合物とを併用して場合においても、同様にゲル組成物が得られることを見出して、本発明のゲル組成物の製造方法を完成するに至った。
さらに、上記ゲル組成物を乾燥させて得られたシートが、特許文献1、2に記載されたゲル組成物を乾燥させて得られたシートよりも、柔軟性及び強度に優れることが明らかになった。このように、上記ゲル組成物を乾燥するだけで、このように優れたシートが得られることを見出して、本発明のシート及びその製造方法を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るゲル組成物は、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩及びナトリウム塩から選択される1種または2種以上の混合物である化合物と、水性溶媒とを含有する。
かかる構成によれば、上記ガラクトース部分分解物と、上記化合物と、水性溶媒とを含有することによって、該化合物を含有しない場合よりも、柔軟性及び強度に優れる。
また、上記構成のゲル組成物においては、
前記化合物が前記マグネシウム塩、前記カルシウム塩、前記アルミニウム塩及び前記ナトリウム塩から選択される2種以上の混合物であることが好ましい。
また、上記構成のゲル組成物においては、
前記化合物が前記マグネシウム塩、前記カルシウム塩および前記アルミニウム塩から選択される1種または2種以上の混合物であることが好ましい。
また、上記構成のゲル組成物においては、
前記ガラクトース部分分解物は、ガラクトースが30〜55%部分分解されてなることが好ましい。
かかる構成によれば、ガラクトースが30〜55%除去されてなることによって、弾力性及び強度をより十分に発揮させ得る。
また、上記構成のゲル組成物においては、
前記ガラクトース部分分解物の含有量が、前記ゲル組成物の全量に対して1〜5質量%であることが好ましい。
かかる構成によれば、ガラクトース部分分解物の含有量が、ゲル組成物の全量に対して1〜5質量%であることによって、弾力性及び強度が十分に発揮され得る。
また、上記構成のゲル組成物においては、
前記化合物の含有量が、前記ゲル組成物の全量に対して0.1〜12質量%であることが好ましい。
かかる構成によれば、該化合物の含有量が、ゲル組成物の全量に対して0.1〜12質量%であることによって、弾力性及び強度がより十分に発揮され得る。
また、上記構成のゲル組成物は、
フェイスパック用であることが好ましい。
かかる構成によれば、ゲル組成物がフェイスパック用であることによって、ゲル構造内部に有効成分を保持しつつ、該ゲル構造が含有する水分に起因した接着性も有するため、ゲル組成物がより有用となる。
また、本発明のシートは、
ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、マグネシウム塩、カルシウム塩及びアルミニウム塩から選択される1種または2種以上の混合物である無機化合物と、水性溶媒とを含有する。
かかる構成によれば、上記ガラクトース部分分解物と、上記無機化合物と、水性溶媒とを含有するシートは、柔軟性及び強度に従来よりも優れる。
上記構成のシートにおいては、
前記無機化合物は、ナトリウム塩またはカリウム塩をさらに含有してもよい。
上記構成のシートにおいては、
前記シートの水分量が、前記シートの全量に対して10〜35質量%であることが好ましい。
ここで、シートの水分量とは、シートを70℃で8〜12時間、−0.1MPa(大気圧基準)で減圧乾燥させたときの、乾燥前のシートの質量からの乾燥後のシートの質量の減少分の、乾燥前のシート質量に対する割合(百分率)を意味する。
また、上記構成のシートにおいては、
前記ガラクトース部分分解物の含有量が、前記シートの全量に対して15〜80質量%であることが好ましい。
かかる構成によれば、ガラクトース部分分解物の含有量が、シートの全量に対して
15〜80質量%であることによって、柔軟性及び強度がより十分に発揮され得る。
また、上記構成のシートにおいては、
前記無機化合物の含有量が、前記シートの全量に対して10〜70質量%であることが好ましい。
かかる構成によれば、無機化合物の含有量が、シートの全量に対して10〜70質量%であることによって、柔軟性及び強度がより十分に発揮され得る。
また、本発明に係るゲル組成物の製造方法は、
以下の工程(1)〜(3)を備えたゲル組成物の製造方法:
(1)ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩及びナトリウム塩から選択される1種または2種以上の混合物である化合物と、水性溶媒とを室温で混合して混合物を得る工程と、
(2)工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結する工程と、
(3)工程(2)で冷却または凍結された混合物を加熱することによりゲル化させて、前記ガラクトース部分分解物と前記化合物と前記水性溶媒とを含有するゲル組成物を得る。
ここで、「室温」とは、15〜35℃の温度範囲内の温度を意味する。また、「室温で混合する」とは、水性溶媒の温度が室温の状態で混合することを意味する。
「冷却」とは、水性溶媒とガラクトース部分分解物との混合物が、その温度が降下させられることによって固体状となっていない状態を意味し、液状になっている場合と固体状、すなわち、凍結状になっている場合の双方が混在している状態も含む。
「凍結」とは、水性溶媒とガラクトース部分分解物との混合物が、その温度が降下させられることによって固体状となっていることを意味する。
かかる構成によれば、工程(1)にて、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、水性溶媒とを室温で混合することによって、上記化合物を水性溶媒に溶解させつつ、混合物中にダマを発生させることなく水性溶媒中にガラクトース部分分解物を分散させることができる。
また、工程(2)にて、工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結することによって、水性溶媒中でガラクトース部分分解物を水和膨潤させることができる。このとき、ガラクトース部分分解物が溶解状態ではなく水和膨潤した状態にさせ易くなる。これにより、混合物(分散液)の粘度を低いものとすることができ、冷却または凍結することによって、混合物を高粘性の水和膨潤物とすることができる。
さらに、粘度の発現を比較的遅らせることができるため、従来のような比較的強い強制撹拌を行わなくても、水性溶媒中にガラクトース部分分解物を十分に分散することができる。
さらに、工程(1)及び(2)によれば、予め水性溶媒を冷却しておかなくても済むため、その分、準備時間も手間も省ける。
そして、工程(3)にて、工程(2)で冷却または凍結された混合物を加熱してゲル化することによって、混合物をゲル化させることができる。このとき、得られたゲル組成物は、ガラクトース部分分解物に起因するダマ等の非水和物の混入が抑制されたものとなる。
従って、工程(1)〜(3)を備えることによって、ガラクトース部分分解物と、上記化合物と水性溶媒とを含有するゲル組成物を簡便に製造することができる。
なお、「分散」とは、全体的に粉状の各ガラクトース部分分解物に水性溶媒が浸透しているが、表層に高粘度な(粘着)層がほとんど形成されていない状態で、各ガラクトース部分分解物が水性溶媒に存在している状態を意味する。
「水和膨潤」とは、全体的に粉状の各ガラクトース部分分解物が水性溶媒を十分に吸収し、各ガラクトース部分分解物が全体として高粘度な状態を形成している状態を意味する。
「溶解」とは、高粘度な表層から多糖分子鎖が解離し、該表層から溶媒中に拡散する状態を意味する。
また、「ダマ」とは、粉状のガラクトース部分分解物が集合した状態(集合物の状態)で水と接触し、集合物内部に空気層を含んだまま該集合物の外層のみが水との接触によって高粘度な状態となり、これにより、該集合物の内部まで水性溶媒が浸透し難くなり、全体として塊となった状態、または、その塊がさらに集合した状態を意味する。
上記構成のゲル組成物の製造方法においては、
前記工程(1)では、前記ガラクトース部分分解物と、前記化合物と、前記水性溶媒とを18〜30℃で混合することが好ましい。
かかる構成によれば、ガラクトース部分分解物と上記化合物と水性溶媒とを18〜30℃で混合することによって、ダマの形成をより回避しながら、また、通常の室温環境で水性溶媒中にガラクトース部分分解物を分散させることができる。また、上記化合物を水性溶媒に溶解させ易くすることができる。
従って、作業性の低下をより抑制できる。
上記構成のゲル組成物の製造方法においては、
前記工程(1)では、前記ガラクトース部分分解物と前記水性溶媒とを混合した後、さらに前記化合物と混合することが好ましい。
かかる構成によれば、ガラクトース部分分解物と水性溶媒とを混合した後、さらに上記化合物と混合することによって、ガラクトース部分分解物が十分に分散した状態で上記化合物を混合することができるため、ガラクトース部分分解物をより均一に混合することができ、これにより、得られたゲル組成物の弾力性及び強度を発揮させ易くし得る。
本発明のシートの製造方法は、
以下の工程(1)〜(4)を備える。
(1)ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、マグネシウム塩、カルシウム塩及びアルミニウム塩から選択される1種または2種以上の混合物である無機化合物と、水性溶媒とを室温で混合して混合物を得る工程と、
(2)工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結する工程と、
(3)工程(2)で冷却または凍結された混合物を加熱することによりゲル化させて、前記ガラクトース部分分解物と前記無機化合物と前記水性溶媒とを含有するゲル組成物を得る工程と、
(4)工程(3)で得られたゲル組成物を乾燥してシートを作製する工程。
かかる構成によれば、上記の通り、工程(1)〜(3)によって、ガラクトース部分分解物と、無機化合物と、水性溶媒とを含有するゲル組成物を簡便に製造することができる。
また、工程(3)で得られたゲル組成物を、工程(4)で乾燥するだけで、シートを作製することができる。
従って、簡便である。
なお、本発明のシートの製造方法は、前記ゲル組成物の製造方法によって、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩及びナトリウム塩から選択される1種または2種以上の混合物である化合物のうち、ナトリウム塩を除く無機化合物を用いて工程(1)〜(3)を実施してゲル組成物を製造し、次いで、得られたゲル組成物について上記工程(4)を実施してシートを作製することを包含する。
上記構成のシートの製造方法においては、
前記無機化合物は、ナトリウム塩またはカリウム塩をさらに含有してもよい。
上記構成のシートの製造方法においては、
前記工程(1)では、前記ガラクトース部分分解物と、前記無機化合物と、前記水性溶媒とを18〜30℃で混合することが好ましい。
かかる構成によれば、上記の通り、作業性の低下をより抑制できる。
上記構成のシートの製造方法においては、
前記工程(1)では、前記ガラクトース部分分解物と前記水性溶媒とを混合した後、さらに前記無機化合物と混合することが好ましい。
かかる構成によれば、上記の通り、ガラクトース部分分解物をより均一に混合することができ、これにより、得られたシートの柔軟性及び強度を発揮させ易くし得る。
以上の通り、本発明によれば、従来よりも弾力性及び強度に優れたゲル組成物、柔軟性及び強度に優れたシート、簡便に作製し得るゲル組成物の製造方法及びシートの製造方法が提供される。
以下に、本発明のゲル組成物、シート、及び、それらの製造方法の実施形態について説明する。
本実施形態のゲル組成物は、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩及びナトリウム塩から選択される1種または2種以上の混合物である化合物と、水性溶媒とを含有する。
ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物とは、ガラクトキシログルカンの側鎖ガラクトースを部分分解して除去した物質を意味し、以下、ガラクトース部分分解物と略称することもある。また、ガラクトキシログルカンとは、側鎖ガラクトースが後述する酵素処理による部分分解によって除去されていないガラクトキシログルカン(完全ガラクトキシログルカン)を意味する。また、かかる完全ガラクトキシログルカンは、ネイティブガラクトキシログルカンとも称される場合がある。
ガラクトキシログルカンは双子葉、単子葉植物など高等植物の細胞壁(一次壁)の構成成分であり、また、一部の植物種子の貯蔵多糖類として存在する。ガラクトキシログルカンはグルコース、キシロースおよびガラクトースを構成糖とし、主鎖はグルコースがβ−1,4結合し、側鎖にキシロース、そのキシロースにさらにガラクトースが結合している。ガラクトキシログルカンはそれ自体通常ゲル化しないが、糖やイオンあるいはアルコールの共存下ではゲル化する。
ガラクトキシログルカンは、いかなる植物由来のガラクトキシログルカンでもよく、例えばタマリンド、ジャトバ、ナスタチウムの種子、大豆、緑豆、インゲンマメ、イネ、オオムギなどの穀物またはリンゴなどの果実の表皮から入手できる。最も入手し易く、含有量も多いことから、好ましくは、豆科植物タマリンド種子由来のガラクトキシログルカンである。かかるガラクトキシログルカンとしては、市販のものを採用し得る。
本実施形態の製造方法に用いるガラクトース部分分解物は、例えば、以下の製造方法によって製造される。すなわち、上記タマリンド種子由来のガラクトキシログルカンを、55℃に保持した後クエン酸三ナトリウムでpH6に調製し、β−ガラクトシターゼを添加し、撹拌しながら50〜55℃で16時間反応させる。次いで、95℃、30分間加熱して酵素を失活させた後、室温に戻し、等容量のエタノールを加え、1時間放置する。放置して得られた沈殿物を吸引濾過により回収し、送風乾燥機で乾燥した後、粉砕することによって製造される。
用いるβ−ガラクトシダーゼとしては、植物由来のものおよび微生物由来のもののいずれでもよいが、微生物Aspergillus oryzaeまたはBacillus circulans由来の酵素、または、ガラクトキシログルカン含有種子中の酵素が好ましい。かかるβ−ガラクトシダーゼとしては、市販のものを採用し得る。
このβ−ガラクトシダーゼによる酵素反応は、反応の進行につれて側鎖ガラクトースが部分的に除去され、その除去率が30%付近になると反応液は急激に増粘しゲル化する。ガラクトースの除去率が30〜55%の範囲では、加熱によってゲル化し冷却によってゾル化する可逆的熱応答ゲル化性を有するものとなる。ガラクトース除去率が30%未満ではゲル化せず、また、55%を越えると強固過ぎるゲルが得られる傾向にある(特許文献1、2参照)。
この点を考慮すれば、ガラクトースが30〜55%部分分解されてなる上記ガラクトース部分分解物を用いることが好ましい。除去率をこの範囲とすることによって、加熱によって十分にゲル化を発揮させつつも、強固過ぎないゲル組成物を作製し得る。これにより、可逆的に、加熱によって十分にゲル化し、冷却によって十分にゾル化する可逆的熱応答ゲル化性を発揮させ易くなる。
また、その結果、ガラクトースが30〜55%除去されてなることによって、ゲル組成物の弾力性及び強度をより十分に発揮させ得る。
上記ガラクトースが30〜55%部分分解されてなるガラクトース部分分解物は、上記の通り、ガラクトキシログルカンから、ガラクトースが30〜55%部分分解されてなる。
ガラクトキシログルカンは、通常、側鎖キシロースを約37%、側鎖ガラクトースを約17%含有している(Gidleyら、カーボハイドレート リサーチ(Carbohydrate Research)、214(1991)219−314頁参照)。よって、ガラクトースが30〜55%部分分解されてなるガラクトース部分分解物は、側鎖キシロースを39〜41%、側鎖ガラクトースを8〜12%含有していると算出される。
なお、ガラクトースの部分分解率(すなわち、ガラクトースの除去率)は、得られた部分分解物がセルラーゼ分解されることによって生成されるガラクトキシログルカンオリゴ糖量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(アミノカラム)で測定することにより算出することができる。
ガラクトース部分分解物の含有量は、特に限定されるものではないが、ゲル組成物の全量に対して1〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましく、3〜5質量%であることがさらに好ましい。
ガラクトース部分分解物の含有量が1質量%以上であることによって、より確実にゲル組成物の強度を十分に高めることができる。
一方、ガラクトース部分分解物の含有量が10質量%以下であることによって、ゲル組成物中に適度な量の水性溶媒を保持することができ、これにより、所望の弾力性を発揮させ得る。また、所望のゲル物性、触感も発揮させ得る。また、例えば、浅い(深さが小さい)容器内で(すなわち、上記混合物の深さを小さくした状態で)上記ゲル組成物を作製されるなどして、シート状に形成されたときに、柔軟性及び強度をより十分なものとすることができる。
なお、ガラクトース部分分解物の濃度が低い場合、ゲル組成物の上側に、ゲル化に寄与できなかった水が層となり、その下方がゲル化層となる場合がある。この場合、ガラクトース部分分解物の含有量は、上側の水層(分離水)を除去した後の、下側のゲル層を全量とした含有量とすればよい。すなわち、濃縮後のゲル組成物全量に対する含有量とすればよい。
上記化合物、すなわち、塩化合物は、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩及びナトリウム塩から選択される1種または2種以上の混合物である。
上記化合物は、有機化合物であっても、無機化合物であってもよい。また、2種以上の混合物には、アルミニウムマグネシウムといった複合塩も含まれる。
なお、上記化合物のうち、無機化合物を用いれば、本実施形態のゲル組成物の製造方法によってゲル組成物を製造し、得られたゲル組成物を用いて、後述する本実施形態のシートの製造方法によってシートを製造することができる。一方、上記化合物のうち、有機化合物を用いれば、本実施形態のゲル組成物の製造方法によってゲル組成物を製造することができる。
マグネシウム塩としては、マグネシウムの塩化物が挙げられる。すなわち、塩化マグネシウム(MgCl)が挙げられる。この他、マグネシウムの臭化物、ケイ酸塩、硫酸塩、有機酸塩、有機エステル塩等が挙げられる。有機酸塩としては、グルコン酸塩、パントテン酸塩、酢酸塩等が挙げられ、有機エステル塩としては、リン酸アスコルビル塩等が挙げられる。
カルシウム塩としては、カルシウムの塩化物が挙げられる。すなわち、塩化カルシウム(CaCl)が挙げられる。この他、カルシウムの臭化物、ケイ酸塩、硫酸塩、有機酸塩、有機エステル塩等が挙げられる。有機酸塩としては、グルコン酸塩、パントテン酸塩、酢酸塩等が挙げられ、有機エステル塩としては、リン酸アスコルビル塩等が挙げられる。
アルミニウム塩としては、アルミニウムの塩化物が挙げられる。すなわち、塩化アルミニウム(AgCl)が挙げられる。この他、アルミニウムの臭化物、ケイ酸塩、硫酸塩、有機酸塩、有機エステル塩等が挙げられる。有機酸塩としては、グルコン酸塩、パントテン酸塩、酢酸塩等が挙げられ、有機エステル塩としては、リン酸アスコルビル塩等が挙げられる。
ナトリウム塩としては、ナトリウムの塩化物が挙げられる。すなわち、塩化ナトリウム(NaCl)が挙げられる。この他、ナトリウムの臭化物、ケイ酸塩、硫酸塩、有機酸塩、有機エステル塩等が挙げられる。有機酸塩としては、グルコン酸塩、パントテン酸塩、酢酸塩等が挙げられ、有機エステル塩としては、リン酸アスコルビル塩等が挙げられる。
これらマグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩及びナトリウム塩は、医薬製剤の添加物として用いられ得る。また、これら化合物は、日常で安全に使用され得るように生理学的に許容できるグレードのものが好ましい。
上記化合物は、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩及びナトリウム塩から選択される2種以上の混合物であってもよい。
上記化合物のうち、マグネシウム塩及びカルシウム塩並びにこれらの混合物が好ましい。
上記化合物が、マグネシウム塩及びカルシウム塩並びにこれらの混合物であることによって、ゲル組成物の弾力性及び強度がより向上する。
上記化合物のうち、マグネシウム塩が特に好ましく、具体的には塩化マグネシウムが特に好ましい。
上記化合物の含有量は、ゲル組成物の全量に対して0.1〜12質量%であることが好ましく、1〜6質量%であることがより好ましい。
上記化合物の含有量が、ゲル組成物の全量に対して0.1〜12質量%であることによって、弾力性及び強度をより十分に発揮させ得る。
水性溶媒としては、水を含有する溶媒であれば、特に限定されるものではないが、例えば、水や、少量のエタノール等の有機溶媒を含んだ水等が挙げられる。
また、本実施形態では、水性溶媒を、該水性溶媒に上記化合物や他の添加剤等を添加した水性溶液の状態で用いることもできる。例えば、水性溶媒として水を用いる場合、この水に少量の無機化合物を溶解させた希薄な塩水溶液の状態で用いることもできる。このような塩水溶液としては、ナトリウム塩水溶液、カルシウム塩水溶液や、緩衝液等が挙げられる。このような緩衝液としては、pH4〜7のリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液等が挙げられる。
ゲル組成物中の水分量は、用途等に応じて適宜設定することができ、特に限定されるものではないが、前記ゲル組成物の全量に対して35質量%を超えることが好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
ここで、ゲル組成物の水分量とは、ゲル組成物を70℃で8〜12時間、−0.1MPa(大気圧基準)で減圧乾燥させたときの、乾燥前のゲル組成物の質量からの乾燥後のゲル組成物の質量の減少分の、乾燥前のゲル組成物の質量に対する割合(百分率)を意味する。具体的には、ゲル組成物の水分量は、後述する実施例に記載された測定方法によって測定された値を意味する。
また、本実施形態のゲル組成物は、弾力性及び強度に優れる限り、上記以外の添加剤を含有していてもよい。
かかる添加剤としては、例えば油状物質が挙げられ、油状物質としては、オリーブ油、シリコーン油等が挙げられる。
本実施形態のゲル組成物は、上記ガラクトース部分分解物と、上記化合物とを含有していることによって、かかる化合物を含有しない場合よりも、弾力性及び強度に優れる。
従って、従来よりも、弾力性及び強度に優れる。
次いで、上記ゲル組成物を用いて得られる本実施形態のシートについて説明する。
本実施形態のシートは、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩及びナトリウム塩から選択される1種または2種以上の混合物である無機化合物と、水性溶媒とを含有する。
具体的には、本実施形態のシートは、上記本実施形態のゲル組成物を乾燥させて形成される。すなわち、本実施形態のシートには、無機化合物として、上記した本実施形態のゲル組成物に含有される化合物(塩化合物)のうち、無機アニオン塩化合物が含有される。
シートの水分量は、特に限定されるものではないが、例えば、シートの厚み等に応じて適宜設定することができ、特に限定されるものではない。シートの水分量は、通常、10質量%以上35質量%以下であるが、例えば、10質量%以上30質量%以下が好ましい。
この水分量は、後述する実施例に記載の方法によって測定された値を意味する。
シートの水分量が10質量%以上35質量%以下であることによって、延性も含めて適度な強度を有しながら柔軟性に優れたシートになる。また、適度な接着性(粘着性)も有し得る。この点では、水分量が25質量%以下であることがさらに好ましい。
かかる水分量は、ゲル組成物中のガラクトース部分分解物の含有量、無機化合物の含有量、シートの厚み、乾燥温度、乾燥時間等によって調整し得る。
ガラクトース部分分解物の含有量は、シートの全量に対して15〜80質量%であることが好ましく、15〜70質量%であることがより好ましい。
ガラクトース部分分解物の含有量が、シートの全量に対して15〜80質量%であることによって、柔軟性及び強度がより十分に発揮され得る。さらに、15〜70質量%であることによって柔軟性及び強度が一層十分に発揮され得る。
上記記無機化合物のうち、マグネシウム塩及びカルシウム塩並びにこれらの混合物が好ましい。マグネシウム塩及びカルシウム塩の無機化合物としては、前述したものが挙げられる。
上記無機化合物が、マグネシウム塩及びカルシウム塩並びにこれらの混合物であることによって、シートの柔軟性及び強度がより向上する。
上記無機化合物のうち、マグネシウム塩が特に好ましく、具体的には塩化マグネシウムが特に好ましい。
上記無機化合物は、ナトリウム塩またはカリウム塩をさらに含有していてもよい。
ナトリウム塩の無機化合物としては、前述したものが挙げられる。
カリウム塩の無機化合物としては、カリウムの塩化物が挙げられる。すなわち、塩化カリウム(KCl)が挙げられる。
無機化合物の含有量は、シートの全量に対して10〜70質量%であることが好ましい。
無機化合物の含有量が、シートの全量に対して10〜70質量%であることによって、柔軟性及び強度がより十分に発揮され得る。
シートの厚みは、特に限定されるものではないが、用途等に応じて適宜設定することができる。例えば、シートの厚みは、0.01〜5mmとすることができ、0.03〜3mmが好ましく、0.1〜1mmがより好ましく、0.2〜0.5mmがさらに好ましい。
シートの厚みが0.03〜3mmであると、壊れ難く、取り扱い。また、貼付する場合には、貼り付け易い。
かかるシートの厚みは、ゲル組成物中のガラクトース部分分解物の含有量、無機物の含有量、乾燥する前のゲル組成物の厚み等によって調整し得る。
シートとしては、柔軟性及び強度に加え、伸展性、割れ耐性、引っ張り耐性、接着性(粘着性)、保形性、耐水性、耐熱性を有するものが好ましい。
本実施形態のシートは、ガラクトース部分分解物と、上記無機化合物と、水性溶媒とを含有することによって、柔軟性及び強度に従来よりも優れる。
次いで、上記本実施形態のゲル組成物の製造方法について説明する。
本実施形態のゲル組成物の製造方法は、ガラクトース部分分解物と上記化合物とを水性溶媒に溶解させてゲル組成物を作製することが可能であれば、特に限定されるものではないが、例えば、以下の方法が好ましい。
本実施形態のゲル組成物の製造方法は、以下の工程(1)〜(3)を備える。
(1)ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩及びナトリウム塩から選択される1種または2種以上の混合物である化合物と、水性溶媒とを室温で混合して混合物を得る工程と、
(2)工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結する工程と、
(3)工程(2)で冷却または凍結された混合物を加熱することによりゲル化させて、前記ガラクトース部分分解物と前記化合物とを含有するゲル組成物を得る。
本実施形態の製造方法における工程(1)では、上記ガラクトース部分分解物と、上記化合物と、水性溶媒とを室温で混合して混合物を得る。
なお、上記ガラクトース部分分解物を室温の水性溶媒と混合して、水性溶媒中にガラクトース部分分解物を分散させた混合物としての分散液(すなわち、懸濁液)を得た後、この分散液に、さらに上記化合物を混合してもよい。上記化合物は、水性溶媒に全て溶解していても、一部溶解していなくてもよい。
ここで、水性溶媒を冷却してその温度を低くさせる程、ガラクトース部分分解物が水和膨潤した状態になるまでに要する時間、さらには、水和膨潤した状態から溶解した状態になるまでの時間が短くなる。また、このように溶解した状態に至るまでの時間が比較的早い状態において、水性溶媒中にガラクトース部分分解物をできるだけ均一に拡散させるためには、比較的強い撹拌力が必要となる。すなわち、冷却した水性溶媒にガラクトース部分分解物をできるだけ均一に溶解させるためには、比較的強い撹拌力が必要となる。
これに対し、ガラクトース部分分解物は、室温の水性溶媒中で水和膨潤した状態に至るまで、さらには溶解した状態に至るまでの時間が、冷却した水性溶媒を用いた場合よりも遥かに長いため、これと同程度の撹拌力で撹拌してもほとんど溶解しない。
よって、工程(1)では、ガラクトース部分分解物と、室温の水性溶媒とを混合することによって、ガラクトース部分分解物に起因するダマの発生を抑制し得る。
また、ガラクトース部分分解物と上記化合物の添加順序は、特に限定されるものではないが、ガラクトース部分分解物と水性溶媒とを混合した後、上記化合物を加えてさらに混合することが好ましい。
このように、ガラクトース部分分解物と水性溶媒とを混合した後、さらに上記化合物と混合することによって、ガラクトース部分分解物が十分に分散した状態で上記化合物を混合することができるため、ガラクトース部分分解物をより均一に混合することができる。これにより、得られたゲル組成物の弾力性及び強度を発揮させ易くし得る。
なお、ガラクトース部分分解物と水性溶媒とを混合する際、たとえ分散液中に粉末の塊が発生したように見えたとしても、これはダマではなく、スパチュラ(スパーテル)などで軽くほぐすことで容易にほとんど完全に分散させることができる。ここでいう「ほぐす」とは、塊を形成する前の単位に戻すことを意味し、一般的に物質を溶解させるために行われる撹拌とは全く異なる操作を意味する。
水性溶媒とガラクトース部分分解物と上記化合物とを混合する際の水性溶媒の温度は、室温であれば特に限定されるものではないが、18〜30℃を採用することが好ましく、18〜28℃を採用することがより好ましい。
18℃以上で混合することによって、ダマの形成をより回避しながら水性溶媒中にガラクトース部分分解物を分散させることができる。これにより、ガラクトース部分分解物を溶解させた場合に生じるような粘度増加をより抑制することができる。また、上記化合物を水性溶媒に溶解させ易くすることができる。従って、作業性の低下をより抑制できる。
また、30℃以下で混合することによって、加熱等の特殊な環境を必要とすることなく、通常の室温環境でガラクトース部分分解物を水性溶媒に分散させ易くすることができ、また、上記化合物を水性溶媒に溶解させ易くすることができるので、簡便に操作を行うことができる。なお、加熱を行いながら、混合してもよい。
このように、ガラクトース部分分解物と水性溶媒とを18〜30℃で混合することによって、作業性の低下をより抑制することができる。
水性溶媒とガラクトース部分分解物と上記化合物とを混合する際の混合時間は、上記温度においてはガラクトース部分分解物が水性溶媒に極めてなじみやすく、上記化合物が溶解し易いことを考慮すれば、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
かかる混合時間は、例えば、5分〜1時間を採用することができ、10分〜30分を採用することが好ましい。
混合時間を1時間以下とすることによって、操作を早く完了させることができ、作業性が向上するという利点がある。
工程(1)によれば、工程(2)で冷却または凍結する前に、上記混合物を所望形状の鋳型等に移すことによって、所望の形状に形成された成型品としてのゲル組成物を得ることも可能となる。
工程(2)では、工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結する。
より具体的には、工程(1)で得られた分散液を冷却または凍結することによって、水和溶媒にガラクトース部分分解物を水和膨潤させ、上記化合物を溶解させた水和膨潤物を得る。
水和膨潤物には、冷却したが凍結されていない液状の水和膨潤物、及び、凍結した固体状の水和膨潤物が含まれる。なお、工程(2)において、水性溶媒にはガラクトース部分分解物が一部溶解した溶解物が含まれていてもよい。
工程(2)によれば、水性溶媒とガラクトース部分分解物と上記化合物との混合物を冷却または凍結することによって、工程(1)にて水性溶媒中に分散している状態のガラクトース部分分解物を、水性溶媒中の水によって水和膨潤させることができる。このように水和膨潤させることができるため、粘度の発現を比較的遅らせることができ、これにより、従来のような比較的強い強制撹拌を行わなくても、水性溶媒中にガラクトース部分分解物を分散させることができる。このように強制撹拌等を不要とし得るため、その分、簡便となる。
なお、工程(2)では、上記化合物は、水性溶媒に溶解しているが、一部溶解していなくてもよい。
また、工程(2)において強制撹拌を行うことが妨げられるものではく、強制撹拌を行った場合には、行わなかった場合よりも一層速やかにガラクトース部分分解物を水和膨潤させることが可能となる。
前記冷却または凍結においては、工程(1)で得られた混合物(分散液)中のガラクトース部分分解物を水和膨潤させることができるのであれば、当該混合物を降温させる程度は特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
ここで、上記混合物を降温させる温度が低くなるほど、ガラクトース部分分解物を水和膨潤させ易くなる傾向にある一方、過度に水和膨潤を進行させて粘性を発現させ易くなる傾向にある。
従って、例えば、かかる観点を考慮して、前記工程(1)で得られた混合物を−25〜10℃まで冷却または凍結することが好ましい。
上記混合物を降温させる温度範囲の上限については、10℃以下とすることによって、ガラクトース部分分解物を水和膨潤させ易くなる。また、ガラクトース部分分解物を一層水和膨潤させ易くなるという点では、上限については、5℃とすることがより好ましく、1℃とすることがさらに好ましい。
一方、上記混合物を降温させる温度範囲の下限については、−25℃とすることによって、水和膨潤の過度の進行を抑制し、粘性を発現させ難くすることができる。
工程(3)では、工程(2)で冷却または凍結された混合物を加熱することによりゲル化させて、ガラクトース部分分解物と上記化合物と水性溶媒とを含有するゲル組成物を得る。
より具体的には、工程(3)では、工程(2)で得た水和膨潤物及び溶解物を加熱することによりゲル化させて、ゲル組成物を得る。
前記加熱においては、上記工程(2)で得られた冷却または凍結された混合物(水和膨潤物)をゲル化させるのに十分な温度まで上記混合物を昇温させればよく、当該混合物を昇温させる程度は特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
ここで、上記冷却または冷凍された混合物を昇温させる温度が高くなるほど、ゲル強度を高めることができる一方、無駄な加熱操作が増えて作業性が低下する傾向にある。
従って、例えば、かかる観点を考慮して、上記冷却または凍結された混合物を、25〜80℃まで昇温させることが好ましい。
上記昇温させる温度の下限については25℃とすることによって、ゲル強度を十分に高めることができる。また、ゲル強度をより十分に高めるという点では、下限については25℃とすることがより好ましく、40℃がさらに好ましい。
上記昇温させる温度の上限については80℃とすることによって、無駄な加熱操作を抑制することができ、これにより、作業性の低下を抑制することができる。また、無駄な加熱操作をより抑制するという点では、上限については50℃とすることが好ましい。
上記した本実施形態のゲル組成物の製造方法によれば、工程(1)にて、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、上記化合物と、水性溶媒とを室温で混合することによって、混合物中にダマを発生させることなく水性溶媒中にガラクトース部分分解物を分散させることができる。
また、工程(2)にて、工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結することによって、水性溶媒中でガラクトース部分分解物を水和膨潤させることができる。このとき、ガラクトース部分分解物を溶解状態ではなく水和膨潤した状態にさせ易くなる。これにより、混合物の粘度を低いものとすることができ、冷却または凍結することによって、混合物を高粘性の水和膨潤物とすることができる。
さらに、粘度の発現を比較的遅らせることができるため、従来のような比較的強い強制撹拌を行わなくても、水性溶媒中にガラクトース部分分解物を十分に分散することができる。
しかも、工程(1)及び(2)によれば、予め水性溶媒を冷却しておかなくても済むため、その分、準備時間も手間も省ける。
そして、工程(3)にて、工程(2)で冷却または凍結された混合物を加熱してゲル化することによって、混合物をゲル化させることができる。このとき、得られたゲル組成物は、ガラクトース部分分解物に起因する非水和物の混入が抑制されたものとなる。
また、工程(3)において、上記冷却した混合物を加熱する場合には、該混合物を加熱して解凍した後、強制撹拌し、その後、加熱することが好ましい。また、該混合物を加熱して解凍した後、強制撹拌しながら加熱することも好ましい。このように加熱時に強制撹拌を行うことによって、より均質なゲル組成物が得られる。また、このような強制撹拌を行うことは、特に、水層が形成されるような低濃度のガラクトース部分分解物について工程(3)を行う場合に好適であり、このように強制撹拌を行うことにより、ゲル組成物をより均質化し得る。
従って、工程(1)〜(3)を備えることによって、本実施形態のゲル組成物を簡便に製造することが可能となる。
なお、例えばローカストビーンガムのような多糖類では、室温で水性溶媒に分散させようとするとダマになり、このダマを解消するために、多大な時間を要したり、加熱することが必要であったりする。このため、例えば、水性溶媒に投入した後、強制撹拌したり加熱したりして分散させる必要がある。そして、分散させた後、凍結し、さらに解凍することによってゲル化させ得る。しかし、凍結後、加熱を続けると、ゲルがゾルに転移し、ゲルが溶解してしまう。
これに対し、ガラクトース部分分解物では、上記の通り、冷却後、加熱を続けてもゾル化しない。
また、本実施形態の製造方法に用いられるガラクトース部分分解物は、前述したように、可逆的熱ゲル化特性を有しており、より具体的には、体温程度まで加熱することでゲル化される特性を有している。よって、本実施形態の製造方法は、例えば、工程(2)で得られた混合物(比較的低温の水和膨潤物)を肌に塗布し、体温によって工程(3)のゲル化を行ってもよい。すなわち、ゲル組成物を用時調製してもよい。
また工程(1)で冷却または凍結後の混合物(水和膨潤物)は、必要に応じて工程(3)で使用するまで、例えば15℃以下の低温で静置して保存してもよい。そして、このように保存した混合物を、工程(3)での加熱を行う前に、所望形状の鋳型に移し、この状態で工程(3)を実施することによって、成型品としてのゲル組成物を得ることもできる。
本実施形態のゲル組成物の製造方法によれば、工程(1)にて、ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、水性溶媒とを室温で混合することによって、上記化合物を水性溶媒に溶解させつつ、混合物中にダマを発生させることなく水性溶媒中にガラクトース部分分解物を分散させることができる。
また、工程(2)にて、工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結することによって、水性溶媒中でガラクトース部分分解物を水和膨潤させることができる。このとき、ガラクトース部分分解物が溶解状態ではなく水和膨潤した状態にさせ易くなる。これにより、混合物(分散液)の粘度を低いものとすることができ、冷却または凍結することによって、混合物を高粘性の水和膨潤物とすることができる。
さらに、粘度の発現を比較的遅らせることができるため、従来のような比較的強い強制撹拌を行わなくても、水性溶媒中にガラクトース部分分解物を十分に分散することができる。
さらに、工程(1)及び(2)によれば、予め水性溶媒を冷却しておかなくても済むため、その分、準備時間も手間も省ける。
そして、工程(3)にて、工程(2)で冷却または凍結された混合物を加熱してゲル化することによって、混合物をゲル化させることができる。このとき、得られたゲル組成物は、ガラクトース部分分解物に起因するダマ等の非水和物の混入が抑制されたものとなる。
従って、工程(1)〜(3)を備えることによって、ガラクトース部分分解物と、上記化合物と、水性溶媒とを含有するゲル組成物を簡便に製造することができる。
次いで、上記本実施形態のシートの製造方法について説明する。
本実施形態のシートの製造方法は、上記化合物のうち特定の無機化合物を用い、上記本実施形態のゲル組成物の製造方法によって製造されたゲル組成物を、乾燥することによって、シートを作製する。
すなわち、本実施形態のシートの製造方法は、上記工程(1)において、上記化合物のうち、マグネシウム塩、カルシウム塩及びアルミニウム塩から選択される1種または2種以上の混合物である無機化合物を用い、上記工程(1)〜(3)と、工程(1)〜(3)で得られたゲル組成物を乾燥することによって、シートを作製する工程(4)とを備える。
乾燥温度及び乾燥時間は、ゲル組成物中のガラクトース部分分解物の含有量、無機化合物の含有量、シートの厚み等によって適宜設定し得る。
例えば、乾燥温度は、25℃以上であることが好ましい。
また、乾燥時間を短縮し得るという点では、乾燥温度が30℃以上であることがより好ましく、40℃〜80℃であることがさらに好ましい。
例えば、乾燥時間は、乾燥温度が40〜80℃の場合には、3〜10時間であることが好ましく、25〜40℃の場合には、10〜30時間であることがより好ましい。
なお、上記工程(2)で得られた混合物を室温まで加熱させて得られたゲル状組成物を、例えば、フラットダイ法やカレンダー法などの押し出し法を用いてシート状にした後、さらに加熱してゲル化及び乾燥させることによって、シートを製造してもよい。また、上記工程(2)で得られた混合物をフィルム、ドラム、ベルトなどの支持体上に流延し加熱してゲル組成物を作製し、さらに、乾燥させることによってシートを作製してもよい。また、この他、均一の厚みを有するシートを作製可能な装置や手段を適宜採用し得る。
また、本実施形態のシートの製造方法においては、上記工程(3)における加熱と、上記工程(4)における乾燥とを連続して一体的に行ってもよい。
本実施形態のシートの製造方法によれば、上記の通り、工程(1)〜(3)によって、ガラクトース部分分解物と、上記化合物と、水性溶媒とを含有するゲル組成物を簡便に製造することができる。また、工程(3)で得られたゲル組成物を、工程(4)で乾燥するだけで、シートを作製することができる。従って、簡便である。
なお、本実施形態のゲル組成物及びシートは、加熱によってゲル化させて製造され得ることから、この性質に基づいて、家庭、医療現場、生体材料、化粧料(例えば、ゲルフェイスパック)など、各種産業に利用可能な高分子材料として、各種分野で利用することができる。また、本実施形態で用いるガラクトース部分分解物は、天然物由来のガラクトキシログルカンを化学修飾して得られたものではないため、得られたゲル組成物も、生体に対して安全に使用し得る。
以上、本実施形態のゲル組成物、シート及びそれらの製造方法について説明したが、本発明は、上記実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。
以下、本発明について、実施例を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
(製造例1)ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物の製造
・β−ガラクトシダーゼの精製:
複合酵素活性を有する市販のβ−ガラクトシダーゼ「ラクターゼY−AO」〔ヤクルト社製;Aspergillusoryzae由来〕の2.5%水溶液をイオン交換クロマトグラフィー〔DEAE Toyopeal;東ソー社製〕の0.025Mリン酸緩衝液(pH7.4)、0〜0.6MのNaClグラジエントに付し、NaCl濃度0.2〜0.4Mで溶出させた。さらに、疎水クロマトグラフィー〔Butyl−Toyopeal;東ソー社製〕の0.025Mリン酸緩衝液(pH7.4)、0〜0.6Mの硫酸アンモニウムグラジエントに付し、硫酸アンモニウム濃度10%以下で溶出させた。以上の操作により、市販の粗酵素2.5gから精製酵素60mgを得た。本品はセルラーゼ活性、IPase(イソプリメベロース生成酵素)活性が認められなかった。
・ガラクトース部分分解物の製造:
上記で得た精製酵素β−ガラクトシダーゼを用い、基質の1質量%ガラクトキシログルカン〔DSP五協フード&ケミカル社製、グリロイド(登録商標)〕水溶液を、酵素濃度2.4×10−5質量%、pH5.6、50℃で反応させた後、100℃で20分間加熱することにより、反応を停止させた。反応溶液は、反応開始後約15時間でゲル化して、ゲル状の組成物を得た。得られたゲル状の組成物におけるガラクトース除去率を以下の方法で算出した。
ゲル状の組成物の1質量%水溶液7gにセルラーゼオノズカRS〔ヤクルト社製〕0.15質量%溶液(50mM酢酸緩衝液、pH4.0)を1mL加え、50℃、オーバーナイトで反応させた。上記1質量%ガラクトキシログルカン水溶液も同様の方法で反応させ、対照とした。反応後、反応液を98℃で30分間加熱することによって酵素を失活させた。その後、試料を前処理カートリッジ〔東ソー社製、IC−SP〕および0.45μmのセルロースアセテート製メンブレンフィルターにかけ、得られたろ液10μLを、アセトニトリル:水=60:40(v/v)を0.6mL/分で流しているHPLCのアミノカラムにアプライし、ガラクトキシログルカンのオリゴ糖(7糖(ガラクトース0個)、8糖(ガラクトース1個)、9糖(ガラクトース2個))の溶出面積を示差屈折率計で検出した。次いで、1ユニット(7糖)あたりのガラクトース量を、(8糖の面積+(9糖の面積×2))/(7糖の面積+8糖の面積+9糖の面積)により算出した。上記式で算出したゲル状の組成物について算出されたガラクトース量の、対照のガラクトキシログルカンから算出されたガラクトース量からの減少率をガラクトース除去率(%)としてさらに算出したところ、約45%だった。
そして、上記得られたゲル状の組成物を凍結乾燥、または、該ゲル状の組成物にアルコールを加えて沈殿・濾取後、乾燥して、粉状のガラクトース部分分解物を得た。
以下の実験例において、上記化合物とガラクトース部分分解物とを含有するように作製したゲル組成物を実施例とした。一方、上記化合物を含有することなくガラクトース部分分解物を含有するように作製されたゲル状組成物を比較例とした。
(実験例1)
(1)実施例1〜4のゲル組成物の作製
表1に示す配合で、プラスティック容器にプラスティックカップ〔旭化成パックス社製、製品名プロマックス、容量:90mL、EI−90〕に、製造例1で得られたガラクトース部分分解物2.0g(4質量%)を加え、さらに2.0g(4質量%)のMgCl2、CaCl2、AlCl3またはNaClを加えた後、室温の水を加え、全量を50gとし、プラスティックマドラーで撹拌(10秒程度)して、ガラクトース部分分解物及び上記化合物としての無機化合物を含有する分散液を得た。得られた分散液のうち、40gを直径90mmのプラスティックディッシュに流し入れた。プラスティックディッシュに入った分散液を−20℃に設定した冷凍庫〔ホシザキ電機社製、型式:HRF−180XF〕で2時間静置して分散液を−20℃まで降温させ、この状態で2時間保持した後、室温で解凍した。解凍後、恒温器〔エスペック社製、型式:PR−2KP〕を用いて、40℃でオーバーナイト、または80℃で1〜2時間加熱して、ゲル組成物を作製した。加熱後試料を室温で静置し、試料の温度を室温まで下げた。
得られた組成物を目視で確認したところ、確かにゲル状であった。
(2)比較例1のゲル組成物の作製
表1に示す配合で、上記化合物としての無機化合物を含有しないこと以外は実施例1〜4と同様にして、ゲル組成物を作製した。
得られた組成物を目視で確認したところ、確かにゲル状であった。
(3)比較例2、3のゲル組成物の作製
表1に示す配合で、ガラクトース部分分解物の代わりに、ガラクトキシログルカン(DSP五協フード&ケミカル社製、グリロイド(登録商標))を用いるか、無機化合物を用いないでガラクトース部分分解物を用いるか、または、無機化合物を用いないでガラクトース部分分解物の代わりに上記ガラクトキシログロカンを用いること以外は、実施例1〜4と同様にして、ゲル組成物を作製した。
(4)評価
上記のように加熱した後、室温(20〜25℃)で数日間静置した後、ゲル組成物の物性について下記の評価を行った。結果を表1に示す。なお、耐熱性は、従来と同程度であり、耐熱性の低下は確認されなかった。
また、下記に示すようにして水分量も評価したところ、MgCl2含有ゲル(実施例1)の水分量は、83.7質量%であり、CaCl2含有ゲル(実施例2)の水分量は、80.4質量%であり、AlCl3含有ゲル(実施例3)の水分量は、82.3質量%であり、NaCl含有ゲル(実施例4)の水分量は、84.2質量%であった。なお、比較例1の組成物の水分量は、92.5質量%であった。
・水分量
ゲル組成物を70℃、8〜12時間、−0.1MPa(大気圧基準)で減圧乾燥させた後、あらかじめ測定していた乾燥前の重量に対する、乾燥後の重量減少分の割合を算出することによって水分量を測定した。
・ゲル形成
室温のゲルを手で触れることによってゲル形成を調べ、下記の評価基準でゲル形成を評価した。
壊れない:○
やや壊れやすい:△
壊れやすい:×
・弾力性
室温のゲルを指で押すことによって、ゲルに適度な変形を与え、このときの感触によって弾力性を調べ、下記の評価基準で弾力性を評価した。
非常に高い弾力を有する:◎
ある程度の弾力を有する:○
弾力が不十分 :△
弾力がない :×
・引張破れ耐性(強度)
室温のゲルを両手で持ち、ゲルに左右外向きに力を加えることによって引張破れ耐性を調べ、下記の評価基準で引張破れ耐性を評価した。
非常に破れ難い:○
破れ易い :×
・耐水性
ゲルを水中に一晩浸漬することによって耐水性を調べ、下記の評価基準で耐水性を評価した。
形状が全く崩れない:耐水性がある:○
形状が崩れる :耐水性がない:×
・総合評価
各評価項目の評価およびその数を下記のように分類することによって総合的な評価を行い、下記の基準で判定した。
1個以上の◎がある:非常に優れている:◎
×個がない :良好 :○
1個の×がある :概ね良好 :△
2個以上の×がある:劣っている :×
Figure 0006085705
表1に示すように、組成物中に対して4質量%のガラクトース部分分解物および4質量%の無機化合物(MgCl2、CaCl2またはAlCl3)を配合した分散液から得られた実施例1〜3のゲル組成物は、高い弾力および強度を有し、非常に優れたゲル組成物を示すことがわかった。
実施例4のNaClを含有するゲル組成物、及び、無機化合物を添加していない比較例1のゲル組成物は、弾力・強度を十分に有するゲル組成物は得られなかった。
比較例3のゲル組成物は、ゲルにならなかった。
ガラクトース部分分解物と、無機化合物とを含有する実施例1〜4のゲル組成物は、すべて耐水性を示した。
なお、実施例4、比較例1、2のゲル組成物は、手指で触れると崩れた。
また、手指の触感による弾力性、引張破れ耐性では、実施例2よりも実施例1、3の方が優れており、実施例1、3は同程度であった。
ガラクトースが部分除去されていないガラクトキシログルカン〔DSP五協フード&ケミカル社製、グリロイド(登録商標)〕を用い、これを上記実施例と同様にして作製した比較例2、3のゲル組成物では、MgCl2を含有するしないにかかわらずゲル化しなかった。したがって、ガラクトースの部分分解と、無機化合物(MgCl2、CaCl2、AlCl3)との組み合わせが、ゲル組成物への弾力および強度の付与に必要であることがわかった。
(実験例2)
(1)実施例5〜63のシートの作製
表2〜6に示すように、ガラクトース部分分解物を0.5g(1質量%)〜2.5g(5質量%)配合し、MgCl2、CaCl2、AlCl3、またはNaClを0.25g(0.5質量%)から6.0g(12質量%)配合し、上記プラスティックディッシュに5g、7g、10gまたは20g流し入れ、40℃でオーバーナイト、または80℃で3〜4時間加熱乾燥したこと以外は実施例1〜4と同様にして、ゲル組成物を乾燥させたシートを作製した。なお、表2〜6において、部分分解物を「部」と表した。
(2)比較例4〜41のシートの作製
表7に示す配合で、ガラクトース部分分解物の代わりに、ガラクトキシログルカン(DSP五協フード&ケミカル社製、グリロイド(登録商標))を用いるか、無機化合物を用いないでガラクトース部分分解物を用いるか、または、無機化合物を用いないでガラクトース部分分解物の代わりに上記ガラクトキシログロカンを用いること以外は、実施例1〜4と同様にして、ゲル組成物を作製した。なお、表7において、グリロイドを「グ」と表した。
(3)評価
上記のように加熱した後、室温(20〜25℃)で1日以上静置した後、シートの物性について下記の評価を行った。結果を表2〜7に示す。
また、下記に示すようにして水分量も評価したところ、実施例39の水分量は、16.2質量%であり、実施例41の水分量は、16.5質量%であった。これに対し、無機化合物を含まない比較例26の水分量は7.4質量%であった。すなわち、無機化合物を含まないシートの方が、シート中に水分を多く包含できないことがわかった。
・水分量
作製したシートを70℃、8〜12時間、−0.1MPa(大気圧基準)で減圧乾燥させた後、あらかじめ測定していた乾燥前のシート重量に対する、乾燥後の重量減少分の割合を算出することによって水分量を測定した。
・S(GSを含む)、Fのいずれかが形成されていることの確認(GSF形成)
シートが形成されているか否かを、目視および触感で確認することによって確認し、シートが形成されているか否かを、下記の評価基準で評価した。
シートが形成されている :○
シートの形成が不十分 :△
シートが形成されていない:×
・シートの分類
上記の目視および触感での確認によって、シートが形成されているもの、及び、シートの形成が不十分なものについて、JIS K7130に従って、作製したシートの厚みを測定した。また、その厚みが0.25mm(250μm)未満のものを「F」と表し、シートの厚みが0.25mm以上のものを「S」と表した。また、触感、目視により十分に水分を含んでいる状態であるものを、ゲル状のシートであるとして「GS」で表した。
・柔軟性
作製したシートの触感を確認することによって柔軟性を調べ、下記の評価基準で柔軟性を評価した。
自由自在に曲がる :非常に高い:◎
容易に曲がる :高い :○
少し力を加えると曲がる :概ね柔軟 :△
力を加えて曲げようとしても曲がらない:不十分 :×
・伸展性
作製したシートを手で引っ張ることによって伸縮性を調べ、下記の評価基準で伸展性を評価した。
非常に容易に伸びる :非常に高い :◎
容易に伸びる :高い :○
少し力を加えて引っ張ると伸びる:概ね伸展する:△
力を加えて引っ張っても伸びない:伸展しない :×
・割れ耐性
作製したシートを手で折り曲げることによって割れ耐性を調べ、下記の評価基準で割れ耐性を評価した。
割れない :○
割れにくい :△
容易に割れる:×
・引張破れ耐性(強度)
室温のシートを両手で持ち、シートに左右外向きに力を加えることによって引張破れ耐性を調べ、下記の評価基準で引張破れ耐性を評価した。
非常に破れ難い:○
概ね破れ難い :△
破れ易い :×
・耐水性
シートを水中に一晩浸漬することによって耐水性を調べ、下記の評価基準で耐水性を評価した。
形状が全く崩れない:耐水性がある:○
形状が崩れる :耐水性がない:×
・加熱後容器接着性
作製したシートが、乾燥後型となる容器底に接着しているかどうかの有無を目視で確認
することによって加熱後容器接着性を調べ、下記の評価基準で加熱後容器接着性を評価した。
容器に接着している :〇
容器に接着していない:×
・再度容器接着性(接着性(粘着性))
作製したシートを容器から取り外した後、同じ容器の底に再度軽く押し付けることによって、シートが、容器底に接着しているかどうかの有無を目視で確認し、下記の評価基準で再度容器接着性を評価した。
再度接着する :○
再度接着しない:×
・透明性
作製したシートを目視で観察することによって透明性を調べ、下記の評価基準で透明性を評価した。
シートを手の甲に乗せたとき、シートを通して下の肌がはっきりと見える:透明性がある:○
シートを手の甲に乗せたとき、シートを通して下の肌が見えにくい:透明性がない:×
・総合評価
透明性、加熱後容器接着性、再度容器接着性、GSF形成以外の各評価項目の評価およびその数を下記のように分類することによって総合的な評価を行い、下記の基準で判定した。
×がなく、◎が1個以上、△が1個以下:非常に優れている:◎
×がなく、◎がなく、○が2個以上 :良好 :○
×が1個以上 :劣っている :×
Figure 0006085705
Figure 0006085705
Figure 0006085705
Figure 0006085705
Figure 0006085705
Figure 0006085705
表2〜7に示すように、組成物中に対して1〜5質量%のガラクトース部分分解物および0.5〜12質量%の無機化合物(MgCl2、CaCl2、AlCl3)を配合した分散液から得られたシートは、耐水性とともに柔軟性を有し、非常に優れたシートであることがわかった。一方、NaClを含有するシートは、柔軟性を有しなかった。
また、MgCl2、CaCl2またはAlCl3を比較的多くゲル組成物中に含有させることによって、シートの粘着性が高くなる傾向にあった。
さらに、シートは、プラスティックディッシュへの投入量を変えることによって、厚みを調節しつつ、作製され得ることがわかった。
ガラクトースが部分除去されていないガラクトキシログルカン(DSP五協フード&ケミカル社製、グリロイド(登録商標))を用い、これを上記実施例と同様にして、シートの作製を試みたところ、MgCl2を含有させたゲル組成物からは柔軟性を有するシートが得られたが、水中に浸漬すると溶解した。したがって、ガラクトキシログルカンのガラクトースの部分分解物と、MgCl2、CaCl2、AlCl3の無機化合物の組み合わせがシートへの耐水性、柔軟性の付与に必要であることがわかった。
(実験例3)
(1)実施例64〜69のゲル組成物の作製
下記表8〜10に示す配合に設定すること以外は実施例1〜4と同様にして、ゲル組成物を作製し、同様に評価した。結果を表8〜10に示す。
(2)比較例42のゲル組成物の作製
下記表8に示す配合に設定すること以外は比較例4〜40と同様にして、ゲル組成物を作製し、同様に評価した。結果を表8に示す。
Figure 0006085705
Figure 0006085705
Figure 0006085705
(実験例4)
(1)実施例70〜86のシートの作製
下記表11〜13に示す配合に設定すること以外は実施例5〜63と同様にして、シートを作製し、同様に評価した。結果を表11〜13に示す。
(2)参考例1及び比較例43〜45のシートの作製
下記表14に示す配合に設定すること以外は比較例2〜40と同様にして、シートを作製し、同様に評価した。結果を表14に示す。
Figure 0006085705
Figure 0006085705
Figure 0006085705
Figure 0006085705
表8に示すように、組成物中に対して10質量%のガラクトース部分分解物および10質量%の無機化合物(MgCl2)を配合した分散液から得られたゲルも、弾力性とともに強度を有し、優れたゲルであった。また、表9、表10に示すように、組成物中に対して2種または3種の無機化合物(MgCl2、CaCl2、AlCl)を配合した分散液から得られたゲルも弾力性とともに強度を有し、優れたゲルであった。
表12、表13に示すように、組成物中に対して2種または3種の無機化合物(MgCl、CaCl、AlCl)を配合した分散液から得られたシートは、耐水性とともに柔軟性を有し、優れたシートであった。一方、MgClを3.8質量%含有するシートにNaClが0.2質量%含有していても耐水性とともに柔軟性を有し、優れたシートであった。
表11に示すように、組成物中に対して1〜5質量%のガラクトース部分分解物および0.5〜10質量%の無機化合物(CaCl、AlCl)を配合した分散液から得られたシートは、耐水性とともに柔軟性を有し、優れたシートであった。また、組成物中に対して10質量%のガラクトース部分分解物および10質量%の無機化合物(MgCl)を配合した分散液から得られたシートも、耐水性とともに柔軟性を有し、優れたシートでた。一方、表14に示すように、2〜5質量%のガラクトース部分分解物および1〜10質量%のNaClを含有するシートは、柔軟性を有しなかったが、1質量%のガラクトース部分分解物および0.5質量%のNaClを含有するシートは、耐水性とともに柔軟性を有していた。
(実験例5)
上記化合物として無機化合物を含有するシートの安定性
実施例39および40と同様にして、塩化マグネシウムおよび塩化カルシウムを含有するシート組成物を作製し、50℃中に1ヶ月静置した。1ヶ月静置後、シートを室温中に移し、1日以上室温で静置した。静置後、柔軟性、伸展性、および耐水性について、前記と同様に評価した。50℃中に1ヶ月静置したシートは、どちらも実験例2で得られたシート(実施例39および40)と同等の柔軟性、伸展性、および耐水性を示した。
(実験例6)
シートの物性評価
実験例2で作製した実施例39、40、41のシート(4重量%の塩化マグネシウム、塩化カルシウム、または塩化アルミニウムと、4重量%ガラクトースの部分分解物とを含むシート)、及び、比較例26のシートの破断ひずみを、引張速度を60mm/minにしたこと以外は、JIS K7127(1999)に準拠して測定した。結果を表15に示す。表15に示すように、各種無機化合物を添加して得られたシートでは、無機化合物無添加のシートに比べて非常に大きな破断ひずみが見られた。したがって、各種無機化合物を添加して得られたシートは、優れた延性を有することがわった。
Figure 0006085705
実施例のシートが柔軟性、強度、さらには伸展性に優れる理由は定かではないが、ガラクトース部分分解物が無機化合物を取り込むときに、水和が生じ、この水和水が、乾燥後のシートの柔軟性に寄与すると推察される。具体的には、ゲル(部分分解物分子)中に無機塩(イオン)がインターカレートされることによる分子間結合の強化と、無機化合物(無機塩)を取り込むことによる水和水含量の増加とによるものと推察される。ガラクトース部分分解物の基本骨格となるガラクトキシログルカンは中性多糖なので、ペクチンなどで見られる、イオン(Ca、Mgなど)によるカルボキシ基架橋によるゲル化の機構と異なるとも推察される。
また、実施例のシートは、加熱乾燥直後には、一見水分が少なく、柔軟性も低い場合もあるが、数日程度、室内に保管していると水分量が平衡に達し、これにより、柔軟性が得られることがわかった。
実施例のシートにおいて、より良好なシートを作製できる無機塩の添加量の範囲は、部分分解物の濃度によって若干異なる傾向にあった。部分分解物の濃度が高くなるほど、良好なシート・ゲルを作製できる無機塩量の上限も増加する傾向にあった。
この点を考慮すれば、ガラクトース部分分解物と無機化合物の割合は、上記のようにガラクトース部分分解物の添加量により異なるが、4:1〜1:3とすることが好ましく、3:1〜1:1.5が好ましい。
具体的には、ガラクトース部分分解物の含有量が1〜2質量%である場合には、塩化マグネシウムの含有量が0.5〜1質量%であることが好ましく、ガラクトース部分分解物の含有量が3〜4質量%である場合には、塩化マグネシウムの含有量が1〜4質量%であることが好ましく、ガラクトース部分分解物の含有量が5質量%の場合には、塩化マグネシウムの含有量が2〜10質量%であった。また、ガラクトース部分分解物の含有量が5重量%を超える量で10質量%以下の場合には、塩化マグネシウムの含有量が5〜10質量%が好ましい。この結果、ガラクトース部分分解物が高濃度のときほど、より無機塩を取り込めるゲル(ネットワーク)構造となる可能性があることが示唆された。
無機塩の含有量が至適含有量以下では、柔軟性や強度が不十分なシートが作製され、一方、至適含有量以下より多い過剰量では、無機塩の含有量の増加に伴ってゲル形成し難くなり、ゲル状物と高粘性物の中間、または単に高粘性物となることがわかった。
このような無機塩の特徴により、過剰量以下で、比較的高めの含有量で無機塩を添加することによって、粘着性を有する(粘着性に優れた)シートを作製し得ることがわかった。
(実験例7)
下記表16に示す配合に設定すること以外は実施例1〜4と同様にして、ゲル組成物を作製し、同様に評価した。結果を表16に示す。なお、表16には、表1の比較例1及び実施例1の結果を、併せて示す。
Figure 0006085705
表16に示すように、上記化合物として、リン酸アスコルビルマグネシウム(MAP)、リン酸アスコルビルナトリウム(NAP)、グルコン酸マグネシウム(MgG)、グルコン酸カルシウム(CaG)、パントテン酸カルシウム(CaP)、酢酸マグネシウム(MgOAc)といった有機化合物(有機塩)が用いられた場合であっても、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(AlMgSil)、臭化マグネシウム(MgBr)及び硫酸ナトリウム(NaSO)といった無機化合物(無機塩)が用いられた場合であっても、4質量%のこれらと、4質量%のガラクトース部分分解物をとを配合することによって得られたゲル組成物は、高い弾力性及び強度を有していることがわかった。よって、これらゲル組成物は、優れたゲル特性を示すことがわかった。
(実験例8)
下記表17に示す配合に設定すること以外は実施例1〜4と同様にして、シートを作製し、同様に評価した。結果を表17に示す。なお、表17には、表4の比較例25の結果及び表5の実施例38の結果を、併せて示す。
Figure 0006085705
表17に示すように、表16に示す化合物のうち臭化マグネシウムを用いた場合には、4質量%の臭化マグネシウムと、4質量%のガラクトース部分分解物とを配合することによって得られたシートは、耐水性及び柔軟性を有していることがわかった。よって、このシートは、優れたシート特性を示すことがわかった。
なお、表16に示す化合物のいずれを用いた場合であっても、得られたシートは耐水性を有することがわかった。
上記より、マグネシウム、カルシウム及びアルミニウムの無機塩、特に塩化物塩がガラクトース部分分解物と共に配合されることによって、非常に高い柔軟性や伸展性をシートに付与し得ることがわかった。
一方、マグネシウム、カルシウム及びアルミニウムの有機塩がガラクトース部分分解物と共に配合されても、柔軟性や伸展性をシートに付与し得ないことがわかった。
なお、リン酸アスコルビル塩がガラクトース部分分解物と共に配合されると、上記の通り、柔軟性や伸展性を付与し得ないものの、グルコン酸塩及びパントテン酸塩とは異なり、透明性をシートに付与し得ることがわかった。この結果は、ガラクトース部分分解物は、乾燥後においてもリン酸アスコルビル塩との親和性(ガラクトース部分分解物がリン酸アスコルビル塩を包含する性質、すなわち包含性)を有するものの、両者を含有するシートの水和性(吸湿性)が低いことによるものと推察される。
また、上記したいずれの比較例のシートであっても、製造時に一旦乾燥されると、その後吸湿させたとしても、柔軟性や伸展性が付与されることはなかった。この結果は、上記と同様、ガラクトース部分分解物は、比較例の化合物と共に配合されてシートとされても、該シートの水和性(吸湿性)が低いことによるものと推察される。
なお、シートを乾燥した後、外部環境の湿度によってシートに水分を吸収させてシートに水分を含有させる他、水性溶媒をシートに添加することによって、シートに水分を強制的に含有させることもできる。乾燥後に水性溶媒をシートに添加する方法としては、例えば、水性溶媒をシートに塗布したり、水性溶媒にしシートを浸漬させたりすること等が、挙げられる。
ここで、ゲル組成物が乾燥されてシートが作製されたとき、該シートは、自身が含有する水分を放出したり、環境中の水分を吸収したりしながら、時間が経過すると、一定量の水分を含有する状態になる(定常状態)。
よって、上記定常状態での水分量よりも低い水分量に至るまで過剰に乾燥させた場合には、定常状態での水分量に戻るまで、水を吸収させることができる。
この場合においても、乾燥後のシートの吸湿性が比較的高くなる化合物を用いた場合、すなわち、無機化合物を含有するシートの場合には、柔軟性や伸展性が付与されたシートを得ることができる。
(実験例9)
ガラクトース部分分解物と共に配合される、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩について、各化合物の水和水及び溶解度と、各化合物を含有するシートの柔軟性及び伸展性との関係を調べた。
結果を、表18に示す。
Figure 0006085705
表18に示すように、大まかには、添加される化合物の水和水や水に対する溶解度が大きくなると、シートの柔軟性や伸展性が向上するような傾向があるように見られた。
このことから、前述のようにシートの柔軟性及び伸展性に影響を及ぼし得るシートの飽和水分量は、シート中に存在する無機化合物の水和性(吸湿性)や、ガラクトース部分分解物と無機化合物との親和性や、ガラクトース部分分解物と無機化合物の結合水との親和性も影響し得ると推察される。
以上のことから、シート中にガラクトース部分分解物と共に配合される、マグネシウム塩、カルシウム塩及びアルミニウム塩から選択される1つまたは2つ以上の無機化合物としては、水和性及び親和性に優れた無機化合物が好ましいことがわかった。
この水和性の指標として、水和水の数量、及び、20℃での水に対する溶解度が挙げられ、上記化合物の水和水が2〜10分子、20℃での水の溶解度が20〜100g/100mLであることが好ましい。
(実験例10)
ゲルフェイスパックの製造1
横幅25cm、縦幅30cmの金属容器にガラクトース部分分解物16.0g(4質量%)を加え、さらに16.0g(4質量%)のMgClを加えた後、室温の水を加え、全量を400gとし、プラスティックマドラーで撹拌(30秒程度)して、ガラクトース部分分解物及びMgClを含有する分散液を得た。得られた分散液を、金属容器に入れられた状態で、−20℃に設定した冷凍庫〔ホシザキ電機社製、型式:HRF−180XF〕で−20℃まで降温させ、この状態で2時間保持した後、室温で解凍した。解凍後、恒温器〔エスペック社製、型式:PR−2KP〕を用いて、80℃で2時間加熱して、ゲル組成物を作製した。加熱後ゲル組成物を室温で静置し、その温度を室温まで下げた。得られたゲル組成物を顔型に切り取り、ゲルフェイスパックを作製した。
得られたゲルフェイスパックは、高い弾力および強度を示した。また、適度な伸展性が見られ、しかも接着性に優れていた。
ゲルフェイスパックの製造2
横幅25cm、縦幅30cmの金属容器にガラクトース部分分解物16.0g(4質量%)を加え、さらに16.0g(4質量%)のリン酸アスコルビルマグネシウムを加えた後、室温の水を加え、全量を400gとし、プラスティックマドラーで撹拌(30秒程度)して、ガラクトース部分分解物及びリン酸アスコルビルマグネシウムを含有する分散液を得た。得られた分散液を、金属容器に入れられた状態で、−20℃に設定した冷凍庫〔ホシザキ電機社製、型式:HRF−180XF〕で−20℃まで降温させ、この状態で2時間保持した後、室温で解凍した。解凍後、恒温器〔エスペック社製、型式:PR−2KP〕を用いて、35℃で4時間加熱して、ゲル組成物を作製した。加熱後ゲル組成物を室温で静置し、その温度を室温まで下げた。得られたゲル組成物を顔型に切り取り、ゲルフェイスパックを作製した。
得られたゲルフェイスパックは、上記MgClを含有する場合と同様に、高い弾力および強度を示した。また、適度な伸展性が見られ、しかも接着性に優れていた。
上記ゲル組成物は、加熱によって乾燥され、表面側の水分が局所的に減少すると、その内部側は、弾力性を有して比較的軟らかく、一方、その表面側は、柔軟性を有しつつも内部側よりも比較的硬くなる傾向にある。よって、表面側の水分量を調整することによって、該表面側に、内部側と異なる特性を付与することも可能である。

Claims (18)

  1. ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩及びナトリウム塩から選択される1種または2種以上の混合物である化合物と、水性溶媒とを含有し、
    前記ナトリウム塩が、リン酸アスコルビルナトリウム及び硫酸ナトリウムである、ゲル組成物。
  2. 前記化合物は、マグネシウム塩、カルシウム塩及びアルミニウム塩から選択される1種または2種以上の混合物である、請求項1に記載のゲル組成物。
  3. 前記ガラクトース部分分解物の含有量が、前記ゲル組成物の全量に対して1〜5質量%である、請求項1または2に記載のゲル組成物。
  4. 前記化合物の含有量が、前記ゲル組成物の全量に対して0.1〜12質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載のゲル組成物。
  5. ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩及びナトリウム塩から選択される1種または2種以上の混合物である化合物と、水性溶媒とを含有し、
    化粧料用である、ゲル組成物。
  6. 前記ガラクトース部分分解物の含有量が、前記ゲル組成物の全量に対して1〜5質量%である、請求項5に記載のゲル組成物。
  7. 前記化合物の含有量が、前記ゲル組成物の全量に対して0.1〜12質量%である、請求項5または6に記載のゲル組成物。
  8. フェイスパック用である、請求項のいずれかに記載のゲル組成物。
  9. ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、マグネシウム塩、カルシウム塩及びアルミニウム塩から選択される1種または2種以上の混合物である無機化合物と、水性溶媒とを含有するシート。
  10. 前記無機化合物は、ナトリウム塩またはカリウム塩をさらに含有する請求項に記載のシート。
  11. 前記シートの水分量が、前記シートの全量に対して10〜35質量%である、請求項または10に記載のシート。
  12. 以下の工程(1)〜(3)を備えたゲル組成物の製造方法:
    (1)ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩及びナトリウム塩から選択される1種または2種以上の混合物である化合物と、水性溶媒とを室温で混合して混合物を得る工程と、
    (2)工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結する工程と、
    (3)工程(2)で冷却または凍結された混合物を加熱することによりゲル化させて、前記ガラクトース部分分解物と前記化合物と前記水性溶媒とを含有するゲル組成物を得る工程。
  13. 前記工程(1)では、前記ガラクトース部分分解物と、前記化合物と、前記水性溶媒とを18〜30℃で混合する、請求項12に記載のゲル組成物の製造方法。
  14. 前記工程(1)では、前記ガラクトース部分分解物と前記水性溶媒とを混合した後、さらに前記化合物と混合する、請求項12または13に記載のゲル組成物の製造方法。
  15. 以下の工程(1)〜(4)を備えたシートの製造方法:
    (1)ガラクトキシログルカンのガラクトース部分分解物と、マグネシウム塩、カルシウム塩及びアルミニウム塩から選択される1種または2種以上の混合物である無機化合物と、水性溶媒とを室温で混合して混合物を得る工程と、
    (2)工程(1)で得られた混合物を冷却または凍結する工程と、
    (3)工程(2)で冷却または凍結された混合物を加熱することによりゲル化させて、前記ガラクトース部分分解物と前記無機化合物と前記水性溶媒とを含有するゲル組成物を得る工程と、
    (4)工程(3)で得られたゲル組成物を乾燥してシートを作製する工程。
  16. 前記無機化合物は、ナトリウム塩またはカリウム塩をさらに含有する請求項15に記載のシートの製造方法。
  17. 前記工程(1)では、前記ガラクトース部分分解物と、前記無機化合物と、前記水性溶媒とを18〜30℃で混合する、請求項15または16に記載のシートの製造方法。
  18. 前記工程(1)では、前記ガラクトース部分分解物と前記水性溶媒とを混合した後、さらに前記無機化合物と混合する、請求項1517のいずれかに記載のシートの製造方法。
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