JP7311112B2 - 固液分離システム - Google Patents

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Description

本発明は、固液分離システムに関する。
従来の上水処理仕様の沈殿池には沈降面積を向上させるため複数の傾斜板が用いられており、当該傾斜板によりフロック(微粒子が会合して、より大きな集合体を生成する集塊)が堆積し、水を浄化するシステムが開発されていた。
これらの技術が下水処理に転用されているが、その背景として、近年、下水処理場では、環境負荷の軽減などの観点から既存施設の高度処理化が求められており、それに伴って最終沈殿池の能力増強が求められていることが挙げられる(特許文献1参照)。
「下水道施設計画・設計指針と解説-2009年版-」(社団法人日本下水道協会)によれば、最終沈殿池の処理能力は、汚泥の沈降面積に対する1日当たりの流入水量(水面積負荷)で定められる。汚泥の沈降面積は、最終的に汚泥を捕捉する部分の面積であり、沈降した汚泥が行き着く最終沈殿池の底面の面積、通常は、最終沈殿池そのものの面積に相当する。
従って、より大きな最終沈殿池を新設すれば、時間変動や日間変動などによる影響により流入水量が増加した場合でも処理水の水質への影響は小さくなると考えられるが、最終沈殿池は前述の設計指針により日最大水量に対して設計されるのが通常であるため、仮に流入変動におけるピークの水量に対して施設設計をすれば、過大な設備投資が必要になるという問題がある。そこで、既存の最終沈殿池の効率を向上させるために、小規模な設備投資で処理能力を向上させる傾斜板を用いる技術が提案されている。
特許第6182190号明細書
上記特許文献の従来の傾斜板装置では、流入水が装置前段部に集中する傾向があり、装置後段部の傾斜板の長さを短く調整したり、後段の配置ピッチが広くなるように傾斜板の配置を調整することにより、流動抵抗を減じることで、装置全体に均等な流量を配分する方法が示されている。
しかしながらいずれの方式においても傾斜板の有効沈降面積が減少するため傾斜板装置としての処理能力が低下していた。
本発明は、有効沈降面積を低減させずに複数の傾斜板における流量の偏りを抑制することが可能な固液分離システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、第1の発明に係る固液分離システムは、下水処理場の沈殿池と、流入部と、流出部と、複数の傾斜板と、を備える。流入部は、沈殿池に被処理水が流入する。流出部は、沈殿池から処理水が流出する。
複数の傾斜板は、所定方向に沿って並んで沈殿池に配置されている。複数の傾斜板は、隣り合う傾斜板が互いに対向して平行になるように配置されている。各々の傾斜板は、上方に向かうに従って流入部側に位置するように傾斜している。
複数の傾斜板のうち少なくとも一部の傾斜板は、本体部と、本体部の下端に設けられ、本体部に対して屈曲した屈曲部と、を有する。屈曲部の所定方向に投影した長さをbとし、所定方向における傾斜板の間隔をcとすると、0.20≦b/c≦0.90を満たす。
このように、傾斜板に屈曲部を設けることにより、複数の傾斜板の間の開口面積を制限できるため、傾斜板の間に流れ込む流量を制限することができる。このため、複数の傾斜板の流入部に近い側の前段付近に少なくとも屈曲部を有する傾斜板を配置することにより、前段において傾斜板の間に流れ込む流量を減らし、流入部から遠い側の後段において傾斜板の間に流れ込む流量を増やすことができる。
すなわち、屈曲部を設けた傾斜板を適宜配置することによって、傾斜板の間に流れ込む流量を調整でき、複数の傾斜板における流量の偏りを抑制することができる。
また、全ての傾斜板に屈曲部を設けた場合であっても、傾斜板の間への流入抵抗は、流速が速くなると大きくなるため、屈曲部を設けない場合と比べて、流速が速い前段において流入抵抗が大きくなって流入量が減少し、流速が遅くなる後段において流入抵抗が小さくなって流入量が増加する。このため、複数の傾斜板における流量の偏りを抑制することができる。
また、傾斜板の間隔を前段よりも後段の方で広くする必要がなく、また後段において傾斜板の長さを短くする必要がないため、有効沈降面積を減少させなくてもよく、処理能力の低下を防ぐことができる。
このように、有効沈降面積を低減させずに複数の傾斜板における流量の偏りを抑制することができる。
第2の発明にかかる固液分離システムは、第1の発明にかかる固液分離システムであって、屈曲部は、本体部の下端から流入部の反対側に向かうように屈曲している。
これによって、複数の傾斜板の下部の開口が流入部と反対側を向くため、流動抵抗が増加し、傾斜板の間への流入量を減らすことができる。
第3の発明にかかる固液分離システムは、第1または第2の発明にかかる固液分離システムであって、複数の傾斜板の間隔は、全て同じである。
これによって、有効沈降面積を低減させずに複数の傾斜板における流量の偏りを抑制することができる。
第4の発明にかかる固液分離システムは、第1~3のいずれかの発明にかかる固液分離システムであって、傾斜板の流入部の反対側において本体部と屈曲部の間に形成される角度は、120度以上180度未満である。
この角度が120度未満の場合には、屈曲部に沈降汚泥が堆積するため作業者による清掃が必要になる恐れが生じる。また、角度が180度を超過する場合には複数の傾斜板の下部の開口が流入部側を向くため、流動抵抗が低下し、傾斜板の間への流入量を減らし難くなる。
そのため、上記角度を120度以上180度未満に設定することによって、流動抵抗を増加し、傾斜板の間への流入量を減らすことが可能となる。このため、傾斜板への流入量を調整でき、複数の傾斜板における流量の偏りを抑制することができる。
本発明によれば、有効沈降面積を低減させずに複数の傾斜板における流量の偏りを抑制することが可能な固液分離システムを提供することができる。
本発明にかかる実施の形態における固液分離システムを示す側面図。 図1の固液分離システムの傾斜板装置の構成を模式的に示す斜視図。 図2の傾斜板装置を模式的に示す側面図。 (a)図3の下水用傾斜板の第2面側を示す平面図、(b)図3の下水用傾斜板の第1面側を示す平面図。 図2の傾斜板装置の他の例を模式的に示す側面図。 図2の傾斜板装置下部の流速に対する傾斜板装置への流入抵抗のグラフを示す図。 図2の傾斜板装置において支持棒への下水用傾斜板の取り付けを示す斜視図。 図2の傾斜板装置において支持棒への下水用傾斜板の取り付けを示す斜視図。 実施例における下水用傾斜板の配置を説明するための平面模式図。 実施例1~8および比較例1、2の結果の表を示す図。
以下、本発明による実施の形態の固液分離システムについて、図面に基づいて詳細に説明する。
<構成>
(固液分離システム100)
図1は、本実施の形態の固液分離システム100を示す図である。本実施の形態の固液分離システム100は、下水処理場の最終沈殿池Pにおける被処理水Wの固液分離に適用される。
図1に示すように、固液分離システム100は、最終沈殿池P(沈殿池の一例)と、傾斜板装置10と、阻流板11と、越流堰12と、水路13と、流入部14と、流出部15と、汚泥掻き寄せ機16と、汚泥ホッパー17と、を備える。
流入部14は、原水(被処理水W)が最終沈殿池Pに流入する。流出部15は、最終沈殿池Pにおいて流入部14の反対側に設けられており、最終沈殿池Pから浄化された被処理水Wが流出する。
傾斜板装置10は、最終沈殿池Pの略中央部から下流側(流出部15側)の部分に配置されている。傾斜板装置10は、複数の下水用傾斜板20を有している。複数の下水用傾斜板20は、水面側を流入部14側に傾けて、上流側から下流側に向かって並んで配置されている。
傾斜板装置10は、被処理水Wの水面から所定の深さまで沈み、かつ、最終沈殿池Pの底面との間に所定の空間が確保されるように支持されている。この支持は、たとえば図示しない支持体上に載置されるか、図示しない横架材などから吊り下げられてもよい。傾斜板装置10の詳細については後段にて詳述する。
阻流板11は、傾斜板装置10の上流側(流入部14側)であって最終沈殿池Pの略中央部分に設けられている。阻流板11は、水面から所定の深さまでの領域内の被処理水Wの下流側(流出部15側)への流れを阻む。
越流堰12は、阻流板11よりも下流側(流出部15側)の被処理水Wの水面付近に配置されている。越流堰12は、上流側から下流側に向かう方向に沿って形成されている。
水路(トラフ)13は、越流堰12に囲まれて形成されており、流出部15に繋がっている。なお、越流堰12に限らず、管に穴が形成された構成であってもよい。
流入部14から最終沈殿池Pに流入してきた被処理水Wは、阻流板11に水流方向を阻まれ、阻流板11の下端と最終沈殿池Pの底面との間の部分に向かって下降する。最終沈殿池Pの底面と阻流板11の下端との間を通り抜けた被処理水Wは、水路13に向かう上向流Jとなり、傾斜板装置10の下部10aから下水用傾斜板20の間に流入し上昇する。
そして、被処理水Wの汚泥が、傾斜板装置10内を通過する間に沈降し、下水用傾斜板20の第1面20a上に沈殿することにより被処理水Wが浄化される。下水用傾斜板20の第1面20aに沈殿した汚泥は、堆積に伴って自重で落下する。
汚泥掻き寄せ機16は、最終沈殿池Pの底面付近に配置されている。最終沈殿池Pの底面付近には沈降した汚泥Mが堆積している。堆積した汚泥Mは、汚泥掻き寄せ機16が、図1上時計回りに回転することにより汚泥ホッパー17に集められ、排泥される。
汚泥ホッパー17は、最終沈殿池Pの流入部14付近の底面に形成されている。
(傾斜板装置10)
図2は、傾斜板装置10の構成を模式的に示す斜視図である。
図2に示すように、傾斜板装置10は、複数の下水用傾斜板20と、上側フレーム21a、21bと、下側フレーム22a、22bと、複数の支持棒23と、複数のフック24と、を有している。
上側フレーム21a、21bは、流入部14から流出部15に向かう方向D(所定方向の一例)に沿って配置されている。上側フレーム21a、21bは、互いに平行に配置されている。
下側フレーム22a、22bは、流入部14から流出部15に向かう方向Dに沿って配置されている。下側フレーム22a、22bは、互いに平行に配置されている。上側フレーム21a、21bは、下側フレーム22a、22bよりも水面側に配置される。
複数の支持棒23は、上側フレーム21a、21bの間に互いに平行に架設されており、下側フレーム22a、22bの間にも互いに平行に架設されている。
下水用傾斜板20は、上側フレーム21a、21bおよび下側フレーム22a、22bに対して傾斜して、上下一対の支持棒23に取り付けられている。
下水用傾斜板20は、上側フレーム21a、21b側の第1面20aと、下側フレーム22a、22b側の第2面20bを有する。下水用傾斜板20は、上側フレーム21a、21bと下側フレーム22a、22bの長さ方向(方向D)に沿って傾斜して複数個並んで配置されている。
傾斜板装置10は、下水処理場の最終沈殿池P内において、下側フレーム22a、22bを最終沈殿池Pの底面側に向けて設置される。したがって、下水用傾斜板20の第2面20bが最終沈殿池Pの底面側に向けられる。
下水用傾斜板20は、複数のフック24によって、上下に配置されている支持棒23に係止されて取り付けられる。
(下水用傾斜板20)
下水用傾斜板20は、概ね長方形状の部材が屈曲されて形成されている。下水用傾斜板20の材質としては、硬質塩化ビニルが好ましいが、これに限るものではない。
傾斜板の材質は、たとえば、熱可塑性樹脂、たとえばポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリカーボネート等のカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ABS等のスチレン系樹脂あるいはこれらの共重合体や混合樹脂であってもよいし、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよく、金属、セラミック、木材、ゴム等であってもよい。
図3は、傾斜板装置10を模式的に示した側面図である。図4(a)は、下水用傾斜板20の第2面20b側を示す平面図である。図4(b)は、下水用傾斜板20の第1面20a側を示す平面図である。
図2~図4に示すように、下水用傾斜板20は、本体部31と、屈曲部32と、を有する。
本体部31は、図4(a)および図4(b)に示すように、上端部31iと、下端部31jと、第1端部31cと、第2端部31dと、第1面31a、第2面31b、を有する。
下水用傾斜板20が、上述した上側フレーム21a、21b、下側フレーム22a、22b、および支持棒23に取り付けられた際に、図2に示すように、上端部31iおよび下端部31jは、支持棒23と平行に配置される。
また、上端部31iは、上側フレーム21a、21bよりも上方に配置され、下端部31jは、下側フレーム22a、22bよりも下方に配置される。
第1端部31cと第2端部31dは、上側フレーム21a、21bから下側フレーム22a、22bに向かって傾斜して配置される。
屈曲部32は、本体部31の下端部31jから流入部14の反対側(矢印D方向)に向かって延びている。屈曲部32は、上側の第1面32aと、下側の第2面32bと、流入部14の反対側の先端32cと、を有する。
屈曲部32は、本実施の形態では、略水平方向に形成されているが、これに限られるものではない。本体部31と屈曲部32の成す角度のうち流入部14と反対側の角度θcは、120度以上180度未満に設定されるほうが好ましい。
また、下水用傾斜板20の第1面20aは、本体部31の第1面31aと屈曲部32の第1面32aによって形成される。下水用傾斜板20の第2面20bは、本体部31の第2面31bと屈曲部32の第2面32bによって形成される。
複数の下水用傾斜板20は、流入部14から沈殿池Pに被処理水が流入する方向Dに沿って並んで配置されている。複数の下水用傾斜板20は、隣り合う下水用傾斜板20が互いに対向して平行になるように配置されている。
詳細には、複数の下水用傾斜板20は、隣り合う下水用傾斜板20のうち一方の下水用傾斜板20の本体部31の第1面31aと、他方の下水用傾斜板20の本体部31の第2面31bが対向するように配置されている。
各々の下水用傾斜板20は、図1~図3に示すように、上方に向かうに従って流入部14側に位置するように傾斜して、上側フレーム21a、21b、下側フレーム22a、22b、および複数の支持棒23に支持されている。下水用傾斜板20は、図3に示すように本体部31の上端部31iが下端部31jよりも流入部14側に位置するように、配置されている。
また、側面視において下水用傾斜板20の本体部31と矢印D方向(本実施の形態では水平方向と一致する)の成す角度θaは、10度以上であり、本体部31と鉛直方向Gのなす角度θbは、20度以上に設定されている。
下水用傾斜板20の矢印D方向に沿った間隔をcとし、屈曲部32の矢印D方向に投影した長さをbとすると、0.20≦b/c≦0.90を満たすように、複数の下水用傾斜板20は配置されている。本実施の形態では、屈曲部32の延びる方向と矢印D方向が一致しているため、屈曲部32自体の長さと矢印D方向に投影した長さが一致している。
例えば、図5に示すように、屈曲部32が矢印D方向と一致していない場合には、長さbは、屈曲部32を矢印D方向に投影した長さとなり、屈曲部32の実際の長さとbは一致しない。なお、本実施の形態では矢印Dは水平方向であるため、長さbは、屈曲部32を水平面上に投影した矢印D方向(被処理水の流入方向ともいえる)の長さといえる。
図4(a)に示す下水用傾斜板20の第2面20b(第2面31bと第2面32bを含む)には、汚泥の補足処理が行われている。ここで、汚泥の補足処理とは、被処理水中の汚泥が最終沈殿池Pから流出しないように、下水用傾斜板20の第2面20bを汚泥の滞留し易い状態にする処理である。
例えば、傾斜板の表面の粗さを強くすることや、表面に沿った汚泥の動きに沿った方向または直交する方向に凹凸を形成することにより傾斜板の表面に汚泥が付着し易い状態にすることができるが、これに限定されるものではない。表面の粗面化の方法は特に限定されるものではないが、たとえばサンドブラストなどで機械的に加工されていてもよく、或いは、所定の薬剤による微細なエッチング加工または所定の面粗度の型によるプレス加工などであってもよい。また、補足処理は、第2面20bの全体に施されていなくてもよい。
第2面20bの反対側の第1面20a(第1面31aと第1面32aを含む)は、汚泥が滑落し易いように平坦な面であるほうが好ましい。
なお、下水用傾斜板20は、異形押出成形、射出成形などで作成することができるが、押出成形が好ましい。
また、本実施の形態の傾斜板装置10では、全ての下水用傾斜板20に屈曲部32が設けられており、全ての下水用傾斜板20は間隔cが同じ長さで配置されている。
ここで、有効沈降面積について隣り合う2つの下水用傾斜板20を用いて説明する。所定の下水用傾斜板20の上端部31iから、所定の下水用傾斜板20の流入部14とは反対側の下水用傾斜板20の屈曲部32の先端32cまでの長さにおける有効沈降面積について、下水用傾斜板20が設けられている場合と設けられていない場合を比較する。
沈殿池Pの底面(水平面とする)に下水用傾斜板20(図3の最も左)を投影した際の矢印D方向の長さをkとすると、長さkと奥行き方向(後述する図9の幅方向F)の長さとの積が下水用傾斜板20の有効沈降面積となる。
また、この下水用傾斜板20と、流入部14と反対側(図3の左から2番目)の下水用傾斜板20との間隔がcであるため、傾斜板装置10が設けられていない状態における有効沈降面積は、長さk+cと奥行き方向の長さとの積となる。一方、隣(図3の左から2番目)の下水用傾斜板20の有効沈降面積も長さkと奥行き方向の長さとの積となる。
このため、下水用傾斜板20が設けられていない場合の有効沈降面積は、((k+c)×奥行方向の長さ)となり、下水用傾斜板20が設けられている場合の有効沈降面積は、2k×奥行方向の長さ)となる。なお、kはcよりも長く設定されている。
このように、長さkが重なっている部分だけ、傾斜板装置10が設けられていない場合と比較して有効沈降面積を大きくすることができる。
また、屈曲部32を矢印D方向に投影した長さは、下水用傾斜板20の有効沈降面積の投影面に屈曲部32を投影した長さともいえる。
また、下水用傾斜板20の本体部31の第2面31bには、第1端部31cと第2端部31dのそれぞれに沿って溝部33が設けられている。溝部33内には、フック孔33bが形成されており、フック孔33bには、上述したフック24が装着される。フック孔33bに装着されたフック24によって、傾斜板装置10の支持棒23に下水用傾斜板20が取り付けられる。また、第1面31aには、溝部33に対向する突条部33aが形成されている。
図6は、傾斜板装置10の下部10aの流速に対する傾斜板装置への流入抵抗のグラフを示す図である。図6に示すように、下水用傾斜板20の間への流入抵抗は、流速が速くなると大きくなる。傾斜板装置10の下部10aにおける速度は、流入部14に近いほど速くなっているため、屈曲部が設けられていない従来の構造(例えば、特許文献1の構造)と比較して流入部14に近いほど流入抵抗が大きくなって流入量が減少し、屈曲部が設けられていない従来の構造と比較して流入部14から遠くなるにつれて流入抵抗が小さくなって流入量が増加する。このため、複数の傾斜板における流量の偏りを抑制することができる。
また、流入部14から遠い側において下水用傾斜板の間隔を広くする必要がなく、また傾斜板の長さを短くする必要がないため、有効沈降面積を減少させなくてもよく、処理能力の低下を防ぐことができる。
このように、有効沈降面積を低減させずに複数の傾斜板における流量の偏りを抑制することができる。
<取り付け方法>
以下に、本発明にかかる実施の形態の下水用傾斜板20の支持棒23への取り付け方法について説明する。
図7および図8は、支持棒23への下水用傾斜板20の取り付けを示す斜視図である。
下水用傾斜板20は、図7および図8に示すように、下側フレーム22a、22bの下方から支持棒23の間を通し、4つのフック24を支持棒23に係止することによって取り付けられる。
このように下方から取り付けることによって、屈曲部32が設けられた下水用傾斜板20を上側フレーム21a、21bの支持棒23と下側フレーム22a、22bの支持棒23に配置することができる。
<実施例>
上記実施の形態の以下に実施例を用いて説明する。
図9は、本実施例における下水用傾斜板20の配置を説明するための平面模式図である。本実施例では、沈殿池Pを幅(矢印F方向)5.6m、長さ(矢印D方向)41.6m、有効水深3.2mとし、流入水量を5630m/日とした。下水用傾斜板20の材質としては、ポリ塩化ビニル樹脂を用い。幅(矢印F方向)1000mm、深さ方向1000mmと、幅(矢印F方向)600mm、深さ方向1000mmの2種類の下水用傾斜板20を用いた。図9に示すように、1000mm×1000mmの下水用傾斜板20を4列配置し、600mm×1000mmの下水用傾斜板20(図9では下水用傾斜板20´と示す)を1列配置し、各列に186枚の下水用傾斜板を配置した。
また、流入部阻流板(図1の阻流板11参照)と下部阻流板はポリ塩化ビニルによって形成されている。下部阻流板は、図示していないが、固液分離システム100と沈殿池内壁の隙間を塞ぐように固液分離システム100の底部と同じ高さで池躯体側に設置される。
上記条件下において、b/cの値を変化させて、傾斜板装置の前段部の流速と、後段部の流速をシミュレーションで算出し、また、屈曲部32における汚泥の堆積状況を求めた。
なお、前段部の流速の計測位置は、図1に示す固液分離システム100の始端部から流下方向に2m地点であり、後段の流速の計測位置は、末端部から流入方向に2m地点である。また、本実施例では、図3に示すように屈曲部32は水平方向に設けられている。
図10は、実施例1~8および比較例1、2の結果の表を示す図である。
ここで、傾斜板奥行きは、幅方向Fの長さであり、幅1000mmの下水用傾斜板20の列の部分について検討を行った。従来開口面積は、ピッチ(間隔)cと下水用傾斜板20の奥行きとの積であり、屈曲部が設けられていない場合における隣り合う下水用傾斜板の間に水が流入する面積である。屈曲傾斜板での開口面積は、ピッチ(間隔)cから屈曲部の長さbを引いた値と下水用傾斜板20の奥行きとの積であり、隣り合う下水用傾斜板の間に水が流入する面積である。損失係数は、圧力損失と比例する値であり、圧力損失に基づいて前段部の流速と後段部の流速を算出した。
比較例1は、屈曲部が設けられていない平面状の下水用傾斜板である。この場合、前段部流速と後段部流速の比率は、39.2となっている。
比較例2では、b/cが0.10に設定されているが、比率が小さすぎるため、前段部流速と後段部流速の比率がかわらず効果が発揮されていない。
一方、実施例1~実施例8では、b/cが大きくなるにつれて前段部流速と後段部流速の比率が小さくなり、傾斜板装置10において水の流入量の偏りを減らすことができる。
また、実施例1、2では屈曲部32に汚泥が堆積せず、実施例3~5までは屈曲部32に汚泥が堆積するが、自然滑落によって排出される。一方、実施例6~実施例8では、汚泥が堆積するため定期的な清掃が必要となる。このため、b/cが0.2以上0.6以下の方がより好ましい。
<他の実施の形態>
以上、本発明による実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
(A)
上記実施の形態では、全ての下水用傾斜板20に屈曲部32が形成されているが、一部の下水用傾斜板20に屈曲部が形成されていなくてもよい。
この場合、屈曲部が形成されている傾斜板が流入部14に近い側に配置され、屈曲部が形成されていない傾斜板は流入部14から遠い側に配置されているほうが、流入量の偏りを低減できるため好ましい。
(B)
上記実施の形態では、全ての下水用傾斜板20において本体部31と屈曲部32の成す角度θcは同じ角度に設定されているが、異なっていてもよい。
(C)
上記実施の形態では、全ての下水用傾斜板20において屈曲部32は本体部31の下端部31jから流入部14とは反対側に延びているが、流入部14側に延びてもよい。ただし、流入部14と反対側に延びるほうが流入量の低下が発生しやすいため好ましい。
(D)
上記実施の形態では、フック24によって下水用傾斜板20を支持棒23に支持されているが、フックに限らなくてもよく、複数の下水用傾斜板20を並んで配置することができさえすれば支持方法は限定されるものではない。
本発明の固液分離システムは、有効沈降面積を低減させずに複数の傾斜板における流量の偏りを抑制することが可能な効果を発揮し、下水処理施設の最終沈殿池などとして有用である。
10 :傾斜板装置
11 :阻流板
12 :越流堰
13 :水路
14 :流入部
15 :流出部
16 :機
17 :汚泥ホッパー
20 :下水用傾斜板
20a :第1面
20b :第2面
20´ :下水用傾斜板
21a :上側フレーム
21b :上側フレーム
22a :下側フレーム
22b :下側フレーム
23 :支持棒
24 :フック
31 :本体部
31a :第1面
31b :第2面
31c :第1端部
31d :第2端部
31i :上端部
31j :下端部
32 :屈曲部
32a :第1面
32b :第2面
32c :先端
33 :溝部
33a :フック孔
100 :固液分離システム

Claims (4)

  1. 下水処理場の沈殿池と、
    前記沈殿池に被処理水が流入する流入部と、
    前記沈殿池から処理水が流出する流出部と、
    所定方向に沿って並んで前記沈殿池に配置された複数の傾斜板と、を備え、
    複数の前記傾斜板は、隣り合う前記傾斜板が互いに対向して平行になるように配置され、
    各々の前記傾斜板は、上方に向かうに従って前記流入部側に位置するように傾斜しており、
    複数の前記傾斜板のうち少なくとも一部の前記傾斜板は、本体部と、前記本体部の下端に設けられ、前記本体部に対して屈曲した屈曲部と、を有し、
    前記屈曲部の前記所定方向に投影した長さをbとし、前記所定方向における前記傾斜板の間隔をcとすると、0.20≦b/c≦0.90を満たす、
    固液分離システム。
  2. 前記屈曲部は、前記本体部の下端から前記流入部の反対側に延びるように屈曲している、
    請求項1に記載の固液分離システム。
  3. 複数の前記傾斜板の間隔は、全て同じである、
    請求項1または2に記載の固液分離システム。
  4. 前記傾斜板の前記流入部の反対側において前記本体部と前記屈曲部の間に形成される角度は、120度以上180度未満である、
    請求項1~3のいずれかに1項に記載の固液分離システム。
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