図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1~図21は、本開示の一実施の形態を説明するための図である。このうち図1~図13は、第1の具体例とその変形例を説明するための図である。図14及び図15は、第2の具体例を説明するための図であり、図16~図21は、第3の具体例を説明するための図である。なお、いずれかの具体例に対する変形例は、他の具体例の変形例としても適宜適用され得る。
まず、図1~図13に示された一具体例およびその変形例を参照しながら一実施の形態を説明する。図1は生体物質用容器10を示す斜視図である。図1に示すように、生体物質用容器10は、容器本体部材20及びカバー部材30を有している。図2及び図3は、それぞれ、容器本体部材20またはカバー部材30を示す斜視図である。また、図4は、生体物質用容器10の縦断面図である。
生体物質用容器10は、生体物質用の容器であって、生体物質を収容するための生体物質収容空間CSを有している。生体物質は、生物の体内に存在し得る物質であり、例えば細胞や細胞から分泌される分泌物質等を例示することができる。生体物質用容器10に収容される生体物質には、一具体例として、細胞組織等の培養済みの細胞や、培養前の細胞を含んだ細胞懸濁液が含まれる。生体物質用容器10は、生体物質収容空間CSに収容した生体物質の保管や処理等に用いられる。一具体例として、生体物質用容器10の生体物質収容空間CSで実施される処理としては、培養操作、軽量操作、遠心処理操作、凍結操作を例示することができる。
生体物質用容器10での生体物質の処理は、生体物質に悪影響を及ぼし得る菌の侵入を防ぐため、閉鎖された環境で行われる。ただし、生体物質の生体物質用容器10内への供給、例えば培養操作のための細胞の播種等を可能にするため、生体物質用容器10の容器本体部材20及びカバー部材30は、培養等の処理を行う前、分離された別の部材として取り扱われる。その一方で、生体物質用容器10を用いて生体物質を処理する際、例えば細胞を培養する際には、容器本体部材20及びカバー部材30の間の隙間は密封される。すなわち、ここで用いる「密封」とは、容器本体部材20及びカバー部材30の間の隙間を、収容される生体物質に害を及ぼし得る菌の侵入を防止し得る程度に、塞ぐことを意味している。そこで、生体物質を生体物質用容器10に収容した後、例えば細胞を播種した後、カバー部材30が容器本体部材20に取り付けられ、カバー部材30及び容器本体部材20の間が密封される。
生体物質用容器10は、閉鎖系の生体物質処理システムに含まれる容器として用いられ得る。例えば、特許文献2に記載されるような閉鎖系の細胞培養システムに含まれる容器、とりわけ細胞培養容器として、生体物質用容器10を用いることもできる。生体物資処理システムでは、生体物質用容器10に接続された器具を用いて或いはこれらの器具から液体等を生体物質用容器10に移送することで、生体物質用容器10内の生体物質収容空間CSに収容された生体物質を処理することができる。生体物質の処理が終了したところで、処理済みの生体物質を生体物質用容器10から取り出す。例えば、カバー部材30を容器本体部材20から取り外すことで、或いは、カバー部材30を切断して除去することで、容器本体部材20内の生体物質収容空間CSを露出させ、処理済みの生体物質を取り出す。
ただし、カバー部材30の取り外しやカバー部材30の切断除去にともなって、異物が発生することが考えられる。異物が発生して生体物質収容空間CS内に落下すると、この異物が生体物質を害することも予想される。一方、本実施の形態においては、生体物質収容空間CSを開放する際に、生体物質収容空間への異物混入を効果的に回避するための工夫が成されている。より詳しくは、以下に詳述するよう、容器本体部材20とカバー部材30との間の密封箇所SPが、容器本体部材20の側壁部24の外面24S1上に位置している。
なお、本件明細書で用いる「液体」は、厳密な液体に限られることなく、細胞、タンパク質、その他の生体物質、粒子等が溶媒に分散した懸濁液も含むものとする。
以下、図1~図13に示された生体物質用容器10の第1の具体例について説明する。上述したように生体物質用容器10は、容器本体部材20及びカバー部材30を有している。なお、以下においては、生体物質用容器10が、細胞培養空間として機能する生体物質収容空間CSで播種された細胞を培養する細胞培養容器として用いられる例について説明する。ただし既に説明したように、生体物質用容器10は、細胞培養容器以外の用途へも適用可能である。
容器本体部材20は、図2に示すように、底部22及び側壁部24を有している。つまり、容器本体部材20は皿状の部材である。底部22は、細胞を播種され且つ播種された細胞を培養する底面22Sを有している。側壁部24は、底部22から上方に立ち上がっている。側壁部24は、底面22Sに対して垂直な方向に底部22から立ち上がっていてもよいし、或いは、底面22Sに対して傾斜した方向に底部22から立ち上がっていてもよい。側壁部24が底面22Sに対して傾斜した方向に底部22から立ち上がる場合、側壁部24が、底部22から離間するにつれて先細りするようにしてもよいし、底部22から離間するにつれて先太りするようにしてもよい。図示された側壁部24は、筒状、とりわけ円筒状に形成されている。底部22は、筒状の側壁部24の下方となる開口部を塞いでいる。一方、筒状の側壁部24は、底部22とは反対側において、開口している。すなわち、円筒状の側壁部24を含む容器本体部材20は、開口部OPを有して、上方に開口している。
底部22及び側壁部24によって取り囲まれる空間が、生体物質収容空間CSを形成している。生体物質収容空間CSは、底部22の底面22S及び側壁部24の内面24S2によって区画されている。なお、図示された例において、底部22の底面22Sは平坦面となっているが、この例に限られず、例えば播種された細胞等を安定して保持するための凹部等が設けられていてもよい。
また、容器本体部材20の内部に、例えば底面22S上に、細胞が接着できる培養担体が設置されていても良く、また、各種表面処理が施されていてもよい。各種表面処理としては、プラズマ処理やコロナ処理などの親水性処理、疎水性処理、機能性高分子のコーティングなどが挙げられる。これらの処理により、容器内部の細胞接着のし易さや、容器内部への液体の出し入れのし易さを制御することが出来る。
容器本体部材20は、例えば樹脂成形によって作製され得る。容器本体部材20に用いられる材料は、生体物質や液体等を生体物質収容空間CSに無菌的に収容することを可能にするものであれば特に限定はない。ただし、容器本体部材20の外部から生体物質収容空間CSを視認できる程度に透明性があることが好ましい。具体例として、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、C-FLEX、ポリスチレンなどを容器本体部材20の材料として好適に用いることができる。さらに、容器本体部材20に用いられる材料の他の具体例として、金属、ガラス、及びシリコン等の無機材料、プラスチック、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂で代表される有機材料を挙げることができる。また、容器本体部材20は当業者に公知の方法を用いて製造することができる。例えば、プラスチック材料を用いて製造する場合には、射出成形により容器本体部材20を製造することができる。
次に、カバー部材30について説明する。カバー部材30は、容器本体部材20の底部22に対向して位置する開口部OPを覆う。そして、カバー部材30は、容器本体部材20との間を密封される。とりわけ本実施の形態において、カバー部材30は、容器本体部材20の側壁部24の外面24S1との間を密封される。カバー部材30が容器本体部材20との間を密封されることで、容器本体部材20の生体物質収容空間CSが閉鎖される。そして、容器本体部材20及びカバー部材30との間に閉鎖された処理空間、より具体的には閉鎖された細胞を培養するための空間が形成される。
図示されたカバー部材30は、図3によく示されているように、蓋材として形成され、蓋天部32及び蓋側壁部34を有している。蓋天部32は、図1及び図4に示すように、容器本体部材20の開口部OPに対面して配置されるようになる。蓋天部32は、板状、とりわけ円板状に形成されている。図1及び図3に示すように、蓋側壁部34は、蓋天部32から垂下している。蓋側壁部34は、蓋天部32に対して垂直な方向に蓋天部32から垂下していてもよいし、或いは、蓋天部32に対して傾斜した方向に蓋天部32から垂下していてもよい。蓋側壁部34が蓋天部32に対して傾斜した方向に蓋天部32から垂下する場合、蓋側壁部34が、蓋天部32から離間するにつれて先細りするようにしてもよいし、蓋天部32から離間するにつれて先太りするようにしてもよい。蓋側壁部34は、筒状、とりわけ円筒状に形成されている。図4に示すように、蓋側壁部34は、容器本体部材20の側壁部24の外面24S1に対面する位置に配置される。側壁部24の外面24S1は、側壁部24の生体物質収容空間CSとは反対側を向く面である。側壁部24の外面24S1は、側壁部24の内面24S2に対向している。とりわけ、蓋側壁部34は、側壁部24の外面24S1に外側から対面している。ここで外側とは、生体物質収容空間CSから離間する側のことであり、生体物質収容空間CSに近接する内側とは逆の側となる。図示された例において、蓋側壁部34の内面と側壁部24の外面24S1との間が周状に密封される。
なお、カバー部材30は、容器本体部材20との間を単に密封されているだけでもよいが、さらに生体物質用容器10を用いた作業性を向上させるため、カバー部材30は容器本体部材20に固定されていることが好ましい。とりわけ、容器本体部材20及びカバー部材30との密封箇所SPにおいて、容器本体部材20及びカバー部材30が互いに固定されていることが好ましい。ただし、密封箇所SPは密封を確保するだけであって、容器本体部材20及びカバー部材30の固定が密封箇所SP以外で確保されるようにしてもよい。
図示された例において、密封箇所SPにおける容器本体部材20とカバー部材30との間の密封は、密封材料15を介在させることで実現されている。密封材料15が例えば接着性や粘着性を有した接合材であれば、密封材料15によって容器本体部材20とカバー部材30とが互いに固定される。ただし、この例に限られず、密封材料15を用いることなく、容器本体部材20とカバー部材30との間がヒートシールによって密封されるようにしてもよいし、超音波接合されるようにしてもよい。
蓋材としてのカバー部材30は、例えば樹脂成形によって作製され得る。カバー部材30に用いられる材料は、細胞や液体等を生体物質収容空間CSに無菌的に収容することを可能にするものであれば特に限定されない。ただし、カバー部材30の外部から生体物質収容空間CSを視認できる程度に透明性があることが好ましい。また、視認性確保の観点から、カバー部材30に、とりわけカバー部材30の蓋天部32に、曇り止めのための層が設けられていてもよし、曇り止めのための処理が施されていてもよい。さらに、カバー部材30が容器本体部材20と溶着可能な材料であれば、上述した例と異なって密封材料15を用いることなく、容器本体部材20とカバー部材30との間を熱溶着によって密封してもよいし、超音波接合によって密封してもよい。カバー部材30の材料として、具体例には、上述した容器本体部材20と同様の材料を用いることができる。また、密封材料15の材料として、例えば、オキシム縮合型シリコーンゴム、酢酸縮合型シリコーンゴム、付加反応型シリコーンゴム、その他医療機器向け接着剤を用いることができる。さらに具体的には、信越シリコーン社から製品名KE-45Tの製品名で入手可能なオキシム縮合型シリコーンゴム系接着材、信越シリコーン社から製品名KE-42Tの製品名で入手可能な酢酸縮合型シリコーンゴム系接着材、信越シリコーン社から製品名KE-106の製品名で入手可能な付加反応型シリコーンゴム系接着材、MOMENTIVE社から製品名RTV118で入手可能なシリコーンゴム系接着材を、密封材料15の材料として用いることができる。
図4に示すように、生体物質用容器10は、容器本体部材20とカバー部材30との間の空間Sに通じる通路Pを設けられている。図示された例において、生体物質用容器10は、通路Pを形成する筒状部材61を有している。図示された例において、二つの筒状部材61が容器本体部材20に接続している。各筒状部材61は、側壁部24の外面24S1に接続している。筒状部材61が側壁部24に接続している接続箇所JPは、側壁部24のうちのカバー部材30が容器本体部材20に取り付けられた状態で露出している部分である。すなわち、筒状部材61が側壁部24に接続している接続箇所JPは、側壁部24のうちのカバー部材30によって覆われない位置にある。筒状部材61によって形成される通路Pは、接続口Jを介して、生体物質収容空間CSに通じている。
図4に示された生体物質用容器10では、筒状部材61は、容器本体部材20と一体的に成形されている。ただし、この例に限られず、筒状部材61は、容器本体部材20と一体的に成形されておらず、溶着や接合材の使用により、別体としての筒状部材61が容器本体部材20に固定されるようにしてもよい。また、図示された例と異なり、一本以上の筒状部材61がカバー部材30に接続していてもよい。筒状部材61の材料として、上述した容器本体部材20の材料として例示した材料を用いることができる。ただし、筒状部材61の材料は、通路Pを視認できる程度に透明性を有していることが好ましい。
なお、生体物質用容器10を使用する前においても、例えば生体物質用容器10が流通や保管されている間においても、生体物質用容器10の容器本体部材20とカバー部材30との間の空間Sは閉鎖されていることが好ましい。生体物質用容器10の容器本体部材20とカバー部材30との間の空間Sが閉鎖された状態で更に滅菌処理を行っておくことで、特段の処理を行うことなく、生体物質用容器10の使用を開始することができる。滅菌処理としては、EOG滅菌やガンマ線滅菌、電子線滅菌など一般的な滅菌方法を採用することができる。
例えば、筒状部材61が比較的柔軟性を有した材料である場合、生体物質用容器10から離間する側の端部を密封しておき、使用に際して無菌接続装置を用いてチューブ材等と無菌接続するようにしてもよい。筒状部材61との無菌接続に使用される無菌接合装置として、特に限定されることなく種々の無菌接合装置を用いることができ、例えば、TSCD-II(テルモ製)、SCDIIB(テルモ製)、HOTNAVI(JMS製)、BioWelder(ザルトリウス製)等を用いることができる。あるいは、後に参照する図14等に示された例のように、筒状部材61の生体物質用容器10から離間する側の端部に無菌接続ポートが設けられ、使用時にチューブ材等と無菌的に接続し得るようにしてもよい。無菌接続ポートは、複数の接続口を有して、複数の器具に接続可能としてもよい。
また、比較的に硬い筒状部材61を用いる場合、図1に二点鎖線で示すように、生体物質用容器10が、筒状部材61に接続されたチューブ材69を更に有するようにしてもよい。チューブ材69は、無菌的に筒状部材61に接続する。つまり。チューブ材69と筒状部材61との間は密封される。チューブ材69と筒状部材61との接続は、無菌接合装置を用いることができる。チューブ材69の材料として、通路Pを視認できる程度の透明性を有していることが好ましい。また、チューブ材69の端部を熱封止しやすいように、溶融温度が低く軟質性が高い材料によってチューブ材69が作製されていることが好ましい。具体例として、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、C-FLEX等をチューブ材69の材料として用いることができる。
以上のような構成からなる生体物質用容器10は、他の器具等と無菌的に接続して、閉鎖系の培養環境を構築することができる。生体物質用容器10を用いて、無菌状態の生体物質収容空間CSにおいて、生体物質の処理、例えば細胞の培養を行うことができる。生体物質の処理、例えば細胞の培養が終了したところで、カバー部材30を容器本体部材20から取り外す等して、生体物質用容器10を開放する。そして、容器本体部材20内の生体物質収容空間CSにアクセスし、細胞組織としての培養細胞等の生体物質を生体物質収容空間CSから取り出す。
ここで、図5及び図6は、生体物質用容器10の開放方法を示している。図5に示された例では、密封箇所SPを破壊して、例えばカッター等の切断具を用いて密封材料15を切断したり、カバー部材30と容器本体部材20とをねじって開けたりして、容器本体部材20からカバー部材30を取り外している。また、図6に示された例では、カッター、超音波カッター等の切断具を用いて、容器本体部材20の蓋側壁部34を切断して分断することで、容器本体部材20からカバー部材30を取り外している。図6に示された例において、カバー部材30の切断箇所は、側壁部24との間の密封箇所SPと側壁部24の底部22から離間する側の縁部24Eに対面する位置との間に位置している。すなわち、カバー部材30の切断箇所は、容器本体部材20の側壁部24の外面24S1に外側から対面する位置となっている。
密封箇所SPの破壊や蓋側壁部34の分断にともなって、蓋側壁部34や密封材料15の一部分からなる異物FMが発生し得る。ただし、本実施の形態によれば、密封箇所SPが容器本体部材20の側壁部24の外面24S1上に位置しており、したがって、密封箇所SPの破壊や蓋側壁部34の分断を、側壁部24の外面24S1に対面する位置にて実施することができる。すなわち、密封箇所SPの破壊や蓋側壁部34の分断を、容器本体部材20の開口部OPよりも下方で行うことができる。したがって、異物FMが、開口部OPを介して生体物質収容空間CS内に落下してしまうことを効果的に回避することができる。これにより、異物FMによって害されることなく培養細胞等の生体物質を取り出すことが可能となる。
なお、第1の具体例として説明した生体物質用容器10は、その使用前に、カバー部材30と容器本体部材20との間が密封されていない状態で、流通等の取り扱いを受けるようにしてもよい。すなわち、容器本体部材20及びカバー部材30を含む生体物質用容器キットKとして流通等の取り扱いを受けるようにしてもよい。使用者は、容器本体部材20の生体物質収容空間CSに生体物質を収容した後、容器本体部材20とカバー部材30との間を密封するようにしてもよい。
以上において、一実施の形態における第1の具体例を説明してきたが、上述した第1の具体例に対して種々の変更が可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
まず、図7A及び図7Bに示すように、カバー部材30が、当該カバー部材30を分断し易くする構成を有した分断部41を含むようにしてもよい。図7A及び図7Bに示すように、分断部41は、カバー部材30と側壁部24との間の密封箇所SPと側壁部24の底部22から離間した縁部24Eに対面する位置との間となる位置に、設けられている。上述したように、このように配置された分断部41においてカバー部材30を分断することで、生体物質収容空間CSへの異物FMの混入を効果的に防止することができる。分断部41をなすカバー部材30の分断を促進する構成としては、図7Aに示された薄肉部や、図7Bに示された切欠や切り込みを例示することができる。
例えば周状の切り込み箇所や周状の薄肉部として形成された分断部41を設けることで、側壁部24のうちのカバー部材30への密封箇所SPと開口部OPを画成する縁部24Eとの間となる位置に対面する位置にて、カバー部材30を二分割することを促進することができる。このようなカバー部材30の分断部41によれば、分断部41が側壁部24の外面24S1に対面しているので、分断時に異物FM等が開口部OPを介して容器本体部材20の内部に落下することを効果的に回避しながら、カバー部材30を容易に分割することができる。また、使用者は、視覚的に分断作業を把握することができる。
次に、図8に示すように、容器本体部材20が、容器本体部材20内の液体Lを筒状部材61Aへと誘導する誘導部42を有するようにしてもよい。細胞懸濁液や培養液等の液体の取り替え等の目的で、容器本体部材20に保持された液体Lを、筒状部材61Aから送り出すことがある。送出誘導部42を設けることで、容器本体部材20内の細胞懸濁液や培養液等の液体Lを安定して筒状部材61に誘導することができる。これにより、液体Lを乱すことを抑制しながら、例えば液体Lの泡立ち等を抑制しながら、筒状部材61Aを介して容器本体部材内の液体Lを送り出すことができる。液体Lの泡立ちを抑制することで、生体物質用容器10の内部を観察しやすくなり、また、生体物質への害を抑制することができる。さらに、液体Lを生体物質用容器10から迅速に送り出すことができ、且つ、生体物質用容器10に残液が残りにくくすることができる。
とりわけ図8に示された例では、送出誘導部42は、側壁部24への筒状部材61Aの接続箇所JPと底部22との間に設けられている。送出誘導部42は、底部22に対して傾斜した傾斜面42Sを含んでいる。より具体的には、傾斜面42Sは、底部22の底面22S及び側壁部24の内面24S2に接続し、底面22S及び内面24S2に対して傾斜している。また、送出誘導部42の一端は、通路Pの接続口Jに接続または近接している。傾斜面42Sとしての送出誘導部42によれば、生体物質用容器10を大きく傾けることなく、容器本体部材20内の細胞懸濁液や培養液等の液体Lを安定して筒状部材61Aに誘導することができる。これにより、液体Lを乱すことを抑制しながら、例えば液体Lの泡立ち等を抑制しながら、筒状部材61Aを介して容器本体部材20内の液体Lを送り出すことができる。
次に、図9A~図9Cに示すように、容器本体部材20及びカバー部材30の少なくとも一方が、筒状部材61Bから供給される液体を容器本体部材20の底部22へ誘導する誘導部43を有するようにしてもよい。細胞懸濁液や培養液等の液体の供給または補充の目的で、容器本体部材20内の生体物質収容空間CSに筒状部材61Bから液体を供給することがある。供給誘導部43を設けることで、筒状部材61Bから供給される細胞懸濁液や培養液等の液体を安定して容器本体部材20の底部22へ供給することができる。これにより、容器本体部材20内の液体を乱すことを効果的に抑制すること、例えば液体の泡立ち等を効果的に抑制することができる。また、カバー部材30や側壁部24への液体の意図しない付着等を効果的に回避して、高価な液体の利用効率を改善することができる。
図9A~図9Cに示すように、供給誘導部43は、容器本体部材20又はカバー部材30への筒状部材61Bの接続箇所JPと底部22との間に設けられている。とりわけ図示された例において、供給誘導部43は、筒状部材61Bの接続箇所JPと底部22との間を延びている。更に、供給誘導部43は、一方の端部において筒状部材61Bの接続箇所JPに近接又は接触していてもよく、他方の端部において底部22に近接又は接触していてもよい。
図9Aに示された例において、筒状部材61Bは側壁部24に接続している。供給誘導部43は、筒状部43Aとして形成されている。筒状部としての供給誘導部43の一端は、通路Pの接続口Jを包囲するようにして側壁部24の内面24S2に接続している。また、供給誘導部43の他端は、底部22の底面22Sに近接して又は底部22に接触している。
図9Bに示された例において、筒状部材61Bは側壁部24に接続している。供給誘導部43は、棒状部43Bまたは板状部43Cとして形成されている。棒状部または板状部としての供給誘導部43の一端は、通路Pの接続口Jの下方にて側壁部24の内面24S2に接続している。また、供給誘導部43の他端は、底部22の底部22に近接して又は底部22に接触している。
図9Cに示された例において、筒状部材61Bはカバー部材30の蓋天部32に接続している。供給誘導部43は、筒状部43Aとして形成されている。筒状部としての供給誘導部43の一端は、通路Pの接続口Jを包囲するようにして蓋天部32の内面に接続している。また、供給誘導部43の他端は、底部22の底部22に近接して又は底部22に接触している。
図9A~図9Cに示すように、供給誘導部43は、容器本体部材20又はカバー部材30への筒状部材61Bの接続箇所JPと底部22との間に設けられた棒状部43B、板状部43Cまたは筒状部43Aとすることができる。棒状部43B、板状部43Cまたは筒状部43Aとしての供給誘導部43を用いることで、生体物質用容器10に供給された液体が底部22から大きく離間した位置から底部22へ落下することを効果的に回避することができる。これにより、容器本体部材20内の液体を乱すことを効果的に抑制し、例えば液体の泡立ち等を効果的に抑制することができる。
また、図9A~図9Cに示された例において、供給誘導部43は、容器本体部材20及びカバー部材30のうちの誘導すべき液体が供給されてくる筒状部材61Bが接続している方に接続している。これにより、筒状部材61Bから供給される液体を安定して生体物質収容空間CSに移送することができる。ただし、この例に限られず、容器本体部材20及びカバー部材30の一方に筒状部材61Bが接続し、容器本体部材20及びカバー部材30の他方に供給誘導部43が支持されるようにしてもよい。
次に図10A~図10Cに示すように、容器本体部材20及びカバー部材30の少なくとも一方が、容器本体部材20又はカバー部材30への通路Pの接続口Jを覆う遮蔽部44を有するようにしてもよい。生体物質収容空間CSには、通気を行うための筒状部材61Cが接続されることがある。遮蔽部44は、筒状部材61Cによって形成される通路Pの生体物質用容器10への接続口Jを覆って、例えば細胞懸濁液や培養液等の液体を保持する底部22から接続口Jを遮蔽する。この遮蔽部44によれば、容器本体部材20内の液体が通路Pに入ることを効果的に抑制することができる。例えば生体物質用容器10を動かす等して容器本体部材20内の液体が揺れて跳ね上がったとしても、この通路Pを介した通気を安定して確保することができる。また、この通路Pを介して液体が意図せず排出されることを効果的に回避することもできる。すなわち、細胞懸濁液や培養液といった高価な液体を効率的に有効に使用することができる。
図10Aに示された例において、筒状部材61Cは容器本体部材20の側壁部24に接続している。筒状部材61Cによって形成される通路Pの接続口Jは、側壁部24の内面24S2に位置して、生体物質収容空間CS内に露出している。遮蔽部44は、側壁部24の内面24S2のうちの接続口Jよりも下方の位置から延び出し且つカバー部材30の蓋天部32近傍まで延びる遮蔽板44Aを有している。ここで、図10D、図10E及び図10Fは、図10Aに示された例に適用され得る容器本体部材20を底面22Sの側から示す平面図である。図10Dに示された例において、遮蔽板44Aは、平面視において略扇形状、とりわけ略半円状の底板44A1と、底板の縁部から立ち上がった壁板44A2と、を有している。図10Eに示された例において、遮蔽板44Aは、平面視において略四角形状、とりわけ略正方形状の底板44A1と、底板の縁部から立ち上がった壁板44A2と、を有している。図10Fに示された例において、遮蔽板44Aは、平面視において略三角形状、とりわけ正三角形状の底板44A1と、底板の縁部から立ち上がった壁板44A2と、を有している。図10D~図10Fに示された例において、底板44A1及び壁板44A2によって、筒状部材61Cにより形成される通路Pの接続口Jを取り囲んでいる。
次に、図10Bに示された例において、筒状部材61Cはカバー部材30の蓋天部32に接続している。筒状部材61Cによって形成される通路Pの接続口Jは、蓋天部32の内面に位置して、生体物質収容空間CS内に露出している。遮蔽部44は、側壁部24の内面24S2から延び出し且つ蓋天部32近傍まで延びる遮蔽板44Aを有している。
ここで、図10G、図10H及び図10Iは、図10Bに示された例に適用され得る容器本体部材20を底面22Sの側から示す平面図である。図10G、図10H及び図10Iには、筒状部材61Cが点線で示されている。図10Gに示された例において、遮蔽板44Aは、平面視において略扇形状、とりわけ略半円状の底板44A1と、底板の縁部から立ち上がった壁板44A2と、を有している。図10Hに示された例において、遮蔽板44Aは、平面視において略四角形状、とりわけ略正方形状の底板44A1と、底板の縁部から立ち上がった壁板44A2と、を有している。図10Iに示された例において、遮蔽板44Aは、平面視において略三角形状、とりわけ正三角形状の底板44A1と、底板の縁部から立ち上がった壁板44A2と、を有している。図10G~図10Iに示された例において、底板44A1及び壁板44A2によって、筒状部材61Cによって形成される通路Pの接続口Jを取り囲んでいる。
図10Cに示された例において、筒状部材61Cはカバー部材30の蓋天部32に接続している。筒状部材61Cによって形成される通路Pの接続口Jは、蓋天部32の内面に位置して、生体物質収容空間CS内に露出している。遮蔽部44は、蓋天部32の内面から延び出し且つ側壁部24の内面24S2の近傍まで延びる遮蔽板44Aを有している。
ここで、図10J、図10K及び図10Lは、図10Cに示された例に適用され得るカバー部材30を内面の側から示す平面図である。図10Jに示された例において、遮蔽板44Aは、平面視において略扇形状、とりわけ略半円状の底板44A1と、蓋天部32から垂下して底板の縁部に接続する壁板44A2と、を有している。図10Kに示された例において、遮蔽板44Aは、平面視において略四角形状、とりわけ略正方形状の底板44A1と、蓋天部32から垂下して底板の縁部に接続する壁板44A2と、を有している。図10Lに示された例において、遮蔽板44Aは、平面視において略三角形状、とりわけ正三角形状の底板44A1と、蓋天部32から垂下して底板の縁部に接続する壁板44A2と、を有している。図10J~図10Lに示された例において、底板44A1及び壁板44A2によって、筒状部材61Cによって形成される通路Pの接続口Jを取り囲んでいる。
図10A~図10Lに示された例において、遮蔽部44の遮蔽板44Aが、生体物質収容空間CSから通路Pの接続口Jを遮蔽している。したがって、この通路Pに生体物質収容空間CS内の液体が浸入することを効果的に防止して、安定した通気を確保することができる。また、生体物質収容空間CS内の高価な液体が通路Pに捕捉されてしまうことを効果的に防止することができ、液体を有効に利用することができる。
次に、図11に示すように、生体物質用容器10が、容器本体部材20の側壁部24に対面する位置における蓋側壁部34に接続する筒状部材61Dを有するようにしてもよい。この筒状部材61Dは、カバー部材30のうちの、側壁部24との間の密封箇所SPと側壁部24の底部22から離間した縁部24Eに対面する位置との間となる位置に接続する。この筒状部材61は、通気用の通路Pを形成するようにしてもよい。
図11に示された例では、容器本体部材20とカバー部材30との間の空間に通じる通路Pを形成する筒状部材61Dが、カバー部材30のうちの容器本体部材20の側壁部24の外面24S1に対面する位置に接続している。すなわち、筒状部材61Dによって形成される通路Pの接続口Jは、容器本体部材20の生体物質収容空間CSから容器本体部材20の側壁部24によって覆われる。これにより、容器本体部材20内の液体が通路に入ることを側壁部24によって効果的に抑制することができる。例えば生体物質用容器10を動かす等して容器本体部材20内の液体が揺れて跳ね上がったとしても、この通路Pを介した通気を安定して確保することができる。また、この通路Pを介して細胞懸濁液や培養液等の液体が意図せず排出されることを効果的に回避することができる。
次に、図12Aに示すように、容器本体部材20及びカバー部材30の一方が、側壁部24の底部22とは反対側となる縁部24Eとカバー部材30との間の隙間Gを覆う遮蔽部45を有するようにしてもよい。この隙間Gは側壁部24と蓋側壁部34との間を密封する密封材料15に通じている。密封材料15に液体が接触すると、密封材料15の成分が液体に流出することも考えられる。そして、この液体が生体物質収容空間CSまで流れると、生体物質が汚染される可能性もある。
一方、遮蔽部45は、隙間Gを覆って、例えば細胞懸濁液や培養液等の液体を保持する底部22から隙間Gを遮蔽する。図示された遮蔽部45は、側壁部24の内面24S2から延び出し且つ蓋天部32の内面の近傍まで延び出した遮蔽板45Aを有している。隙間G及び密封材料15が環状に形成されていることに対応して、遮蔽板45Aも環状に形成されている。すなわち、遮蔽板45Aは、側壁部24の環状内面24S2に沿って環状に形成されている。したがって、例えば生体物質用容器10を動かす等して容器本体部材20内の液体が揺れて跳ね上がったとしても、容器本体部材20内の液体が密封材料15に到達することを遮蔽部45によって効果的に抑制することができる。これにより、細胞等の生体物質の密封材料15への接触が効果的に抑制され、細胞の汚染や損傷を効果的に回避することができる。
以上において説明してきた分断部41、送出誘導部42、供給誘導部43、遮蔽部44及び遮蔽部45や、筒状部材61,61A,61B,61C,61D等の設置位置は、適宜変更することができる。例えば、図10A~図10Cに示された例において、遮蔽部44は、側壁部24又はカバー部材30から延び出しているが、これに限られず、遮蔽部44は、図10M及び図10Nに示すように底部22から延び出してもよい。また、図12Aに示された例において、遮蔽部45は側壁部24から延び出しているが、これに限られず、図12Bに示すように、遮蔽部45は、カバー部材30から、例えば30の蓋天部32から延び出してもよい。
また、以上において第1の具体例に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。例えば、図13に示すように、図11を参照して説明した筒状部材61Dと、図12Aを参照して説明した遮蔽部45とを、一つの生体物質用容器10に適用することができる。
次に、図14~図16を参照して第2の具体例について説明する。第2の具体例は、カバー部材30の構成が上述した第1の具体例と異なっているが、その他においては第1の具体例および第1の具体例に対する変形例と同一の構成を採用することができる。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述してきた例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
図14に示すように、第2の具体例における生体物質用容器10において、カバー部材30は柔軟性を有した袋材51を有している。袋材51に用いられる材料は、細胞等の生体物質を生体物質収容空間CSに無菌的に収容できるものであれば特に限定されないが、典型的には樹脂製フィルムとすることができる。ただし、袋材51の外部から生体物質収容空間CSを視認できる程度に透明性があることが好ましい。具体例として、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、C-FLEX、ポリスチレンなどを袋材51の材料として好適に用いることができ、前記材料のうち2種以上の積層体や複合体により袋材51を形成することもできる。
図15は、容器本体部材20に固定される前の袋材51を示している。図示された袋材51は、積層された第1フィルム材51A及び第2フィルム材51Bを有している。二枚のフィルム材51A,51Bは、平面視において矩形形状を有している。しかしながら、この例に限られず、二枚のフィルム材51A,51Bは、平面視において、円形状、半円形状、円の一部分となる形状、楕円形状、半楕円形状、楕円の一部分となる形状、三角形形状、五角形形状、六角形形状、七角以上の角形状を有していてもよい。
二枚のフィルム材51A,51Bは、一方に開口し、その他の周縁部において互いに接続している。図示された例において、二枚のフィルム材51A,51Bは、周縁のうちの三方において互いに接続している。二枚のフィルム材51A,51Bは、その三方において、例えば熱溶着によって互いに接続し、その間を密封されている。
なお、インフレーション製袋により得られた筒状のフィルム材の一方の開口を溶着で閉じることによっても、図14及び図15に示された袋材51を作製することができる。また、一枚のフィルム材を折り返して二辺を溶着することによっても、図14及び図15に示された袋材51を作製することができる。
図15に示すように、袋材51の開口部51OPに、容器本体部材20が配置される。袋材51の開口部51OPを画成する縁部またはその近傍領域が、容器本体部材20の側壁部24に外側から対面する。そして、袋材51は、側壁部24の外面24S1との間を密封される。これにより、袋材51と容器本体部材20との間の空間Sが閉鎖され、容器本体部材20内となる生体物質収容空間CSにおいて、生体物質の処理、例えば細胞の培養を行うことができる。
袋材51と容器本体部材20との間の密封は、第1の具体例と同様に、密封材料15を用いてもよいし、熱溶着や超音波接合であってもよい。また、密封箇所SPにおいて、袋材51が容器本体部材20に固定されるようにしてもよいし、或いは、別途の方法や手段を用いて密封箇所SPとは別途に袋材51が容器本体部材20に固定されるようにしてもよい。
図14に示された例において、生体物質用容器10は、押圧部材(押し付け部材、密着部材)70を有している。押圧部材70は、外側から袋材51に接触して、袋材51を容器本体部材20に向けて押し付ける。すなわち、押圧部材70は、袋材51の容器本体部材20に対面する面とは反対側の面に接触して、袋材51を容器本体部材20の側壁部24に向けて押し付ける。そして、押圧部材70は、袋材51を容器本体部材20の側壁部24の外面24S1に密着させる。更には、押圧部材70は、袋材51と側壁部24の外面24S1との間を密封することができる。押圧部材70は、チューブクランプ、インシュロック、結束バンド、ゴム等の環状弾性材、周長を調整可能な環状の部材を用いることができる。袋材51と容器本体部材20との間に形成される空間Sの外部に押圧部材70が配置されるので、袋材51と容器本体部材20との間に形成される空間S内での異物FMの発生を効果的に抑制することができる。また、押圧部材70が袋材51と容器本体部材20との間に形成される空間Sの外部に配置されているので、押圧部材70の取り扱い性を効果的に改善することができる。
カバー部材30として袋材51を用いた生体物質用容器10では、容器本体部材20内への液体等の材料を供給または排出することにともなって、柔軟性を有する袋材51が変形し、袋材51と容器本体部材20との間に形成された空間の容積を変化させることができる。したがって、容器本体部材20内への材料供給や材料排出にともなった圧力調整を不要することができる。
また、図示された生体物質用容器10は、カバー部材30をなす袋材51を貫通して延びる筒状部材61Eを有している。筒状部材61Eは、上述した第1具体例の筒状部材61やチューブ材69を用いることができる。図14及び図15に示す例において、筒状部材61Eは、袋材51をなす二枚のフィルム材51A,51Bの間を通過している。フィルム材51A,51Bの周縁部において、フィルム材51A,51Bは筒状部材61Eに熱溶着している。そして、筒状部材61Eの外側となる端部には無菌接続ポート62が設けられている。筒状部材61Eの内側となる端部の位置は、柔軟性を有した袋材51を変形させることによって、カバー部材30と容器本体部材20との間の空間S内で移動させることができる。したがって、細胞懸濁液や培養液といった液体を容器本体部材20内の生体物質収容空間CSへ供給する際や生体物質収容空間CSから回収する際の損失又は無駄を僅かに抑えて、液体を有効に利用することができる。
このような第2の具体例による生体物質用容器10では、例えば培養細胞等の生体物質を回収するにあたり、押圧部材70を取り外すことによって、或いは、側壁部24の外面24S1に外側から対面する位置において袋材51を切断することによって、カバー部材30をなす袋材51を容器本体部材20から取り外すことができる。カバー部材30の取り外しにともなって生じる異物FMが、開口部OPを介して生体物質収容空間CS内に落下してしまうことを効果的に回避することができる。そもそも、カバー部材30の取り外しにともなって生じる異物FMの量を格段に低減することができる。これにより、異物FMによって害されることなく培養細胞等の生体物質を取り出すことが可能となる。
なお、図14及び図15に示された袋材51は、袋材の切断の開始位置となる構成を有した開始部46を有している。開始部46は、スリットや切り込みとして構成される。図示された例において、開始部46は、袋材51をなすフィルム材51A,51Bの周縁部に位置する熱溶着領域に形成されている。開始部46は、柔軟性を有した袋材51を変形させることで、容器本体部材20の開口部OPに対面しない位置に配置することができる。したがって、開口部OPに対面しない位置に移動させた開始部46から袋材51を切断することによって、異物FMの生体物質収容空間CSへの混入を防止しながら、しかも、袋材51を容易且つ安定して開放することができる。また、袋材51を切断することによりカバー部材30を開く際に生じる異物FMの量を大幅に低減することもできる。
さらに、図示された袋材51は、図14に二点鎖線で示すように、袋材51を切断し易くする構成を有した切断部47を有している。切断部47は、上述した第1の具体例の分断部41と同様に、薄肉部、フィルム材51A,51Bの厚みを貫通しない切欠や切り込みによって構成することができる。切断部47は、柔軟性を有した袋材51を変形させることで、容器本体部材20の開口部OPに対面しない位置に配置することができる。図示された例では、開始部46に対面する位置に切断部47の端部が配置されている。例えば切り込みや薄肉部として形成された切断部47を設けることで、袋材51を安定して容易に開放することができる。この切断時に、切断箇所を容器本体部材20の開口部OPに対面しない位置とすることが促進される。したがって、異物FMの生体物質収容空間CSへの混入を効果的に防止することができる。また、袋材51を切断することによりカバー部材30を開く際に生じる異物の量を大幅に低減することができる。
なお、第2の具体例として説明した生体物質用容器10は、その使用前に、カバー部材30をなす袋材51と、容器本体部材20と、押圧部材70とが組み立てられていない状態で、流通等の取り扱いを受けるようにしてもよい。すなわち、袋材51、容器本体部材20及び押圧部材70を含む生体物質用容器キットKとして流通等の取り扱いを受けるようにしてもよい。使用者は、容器本体部材20の生体物質収容空間CSに生体物質を供給した後、例えば細胞を播種した後、押圧部材70を用いることで、袋材51を容器本体部材20に密封固定することができる。
また、第2の具体例に対しても、上述した第1の具体例で説明した変形例を単独で又は適宜組み合わせて適用することができる。
次に、図16~図21を参照して第3の具体例について説明する。第3の具体例は、カバー部材30の構成が上述した第1の具体例及び第2の具体例と異なっているが、その他においては第1の具体例および第1の具体例に対する変形例、第2の具体例および第2の具体例に対する変形例と同一の構成を採用することができる。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述してきた例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
図17に示すように、第3の具体例における生体物質用容器10において、カバー部材30は柔軟性を有した袋材51を有している。袋材51に用いられる材料は、第2の具体例で説明した袋材の材料と同一とすることができる。つまり、袋材51に用いられる材料は、細胞等の生体物質を生体物質収容空間CSに無菌的に収容できるものであれば特に限定されないが、典型的には樹脂製フィルムとすることができる。ただし、袋材51の外部から生体物質収容空間CSを視認できる程度に透明性があることが好ましい。具体例として、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、C-FLEX、ポリスチレンなどを袋材51の材料として好適に用いることができ、前記材料のうち2種以上の積層体や複合体により袋材51を形成することもできる。
ただし、第3の具体例において、袋材51は、閉鎖された内部空間ISを有している。つまり、生体物質用容器10に収容される生体物質に害を及ぼし得る菌の内部空間ISへの侵入は防止されている。このような内部空間ISを有した袋材51は、一例として、タカラバイオ製の培養バックCulitiLife215や、Miltenyi Biotec製の凍結保存バックcryoMACS Freezing Bag 1000を用いることができる。
タカラバイオ製の培養バックCulitiLife215の材料はポリエチレンであり、Miltenyi Biotec製の凍結保存バックcryoMACS Freezing Bag 1000の材料はエチレン酢酸ビニル共重合体である。タカラバイオ製の培養バックCulitiLife215は高いガス透過性を有していることから、タカラバイオ製の培養バックCulitiLife215を袋材51として用いた生体物質用容器10で細胞を培養する場合、袋材51を介して生体物質培養空間CS内のCO2濃度調整を行うことができる。一方、Miltenyi Biotec製の凍結保存バックcryoMACS Freezing Bag 1000は、凍結保存が可能である。したがって、Miltenyi Biotec製の凍結保存バックcryoMACS Freezing Bag 1000を袋材51として用いた生体物質用容器10内で細胞を培養いた場合、生体物質用容器10をそのまま凍結保存することができる。ただし、Miltenyi Biotec製の凍結保存バックcryoMACS Freezing Bag 1000はガス透過性が低いので、生体物質用容器10に無菌フィルタを接続する等として、CO2濃度の調整を行う必要がある。
袋材51の他の例として、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、ナイロン、その他ポリオレフィンからなる、または前記材料のうち2種以上の積層体や複合体により形成された培養バッグを用いることができる。
そして、第3の具体例では、容器本体部材20が袋材51の内部空間IS内に配置されている。容器本体部材20が閉鎖された袋材51の内部空間IS内に配置されるので、汚染の危険性を大幅に低減して、容器本体部材20を用いて生体物質の処理、例えば細胞の培養を行うことが可能となる。容器本体部材20は上述の第1の具体例や第2の具体例の容器本体部材と同様とすることができ、一例として、ThermoFisher製の10cmシャーレを用いることができる。ThermoFisher製の10cmシャーレの材料はポリスチレンである。容器本体部材20の他の例として、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレンなど一般的なプラスチック樹脂からなるシャーレを用いることができる。
図17は、容器本体部材20と袋材51とを固定する前の生体物質用容器10を示している。図示された袋材51は、積層された第1フィルム材51A及び第2フィルム材51Bを有している。袋材51は、容器本体部材20の底部22に対面する柔軟性を有した第1フィルム材51Aと、第1フィルム材51Aと周縁部において接続され且つ容器本体部材20の開口部OPに対面する柔軟性を有した第2フィルム材51Bと、を含んでいる。このような袋材51を用いることで取り扱い性、とりわけ偏平した外輪郭を有する容器本体部材20との組合せ時における取り扱い性を改善することができる。なお、インフレーション製袋により得られた筒状のフィルム材を用いて袋材51を作製してもよく、筒状フィルムの両方の開口を溶着で閉じることによって袋材51が得られる。また、一枚のフィルムを折り返し三方から溶着することによっても袋材51を作製することができる。
図17に示された例において、二枚のフィルム材51A,51Bは、平面視において矩形形状を有している。しかしながら、この例に限られず、二枚のフィルム材51A,51Bは、平面視において、円形状、半円形状、円の一部分となる形状、楕円形状、半楕円形状、楕円の一部分となる形状、三角形形状、五角形形状、六角形形状、七角以上の角形状を有していてもよい。二枚のフィルム材51A,51Bは、四方の周縁において互いに接続している。二枚のフィルム材51A,51Bは、その周縁において、例えば熱溶着によって互いに接続し、その間を密封されている。これにより、袋材51と容器本体部材20との間の空間Sが閉鎖され、容器本体部材20内となる生体物質収容空間CSにおいて生体物質を処理することができる。
袋材51は、第2の具体例と同様に、容器本体部材20の側壁部24との間で密封されてもよい。すなわち、熱溶着や超音波接合等による密封箇所SPを介して、袋材51と側壁部24の外面24S1との間が密封されてもよい。また、密封箇所SPにおいて、袋材51が容器本体部材20に固定されるようにしてもよいし、或いは、別途の方法や手段を用いて密封箇所SPとは別途に袋材51が容器本体部材20に固定されるようにしてもよい。
なお、袋材51として、例えばタカラバイオ製の培養バックCulitiLife215や、Miltenyi Biotec製の凍結保存バックcryoMACS Freezing Bag 1000等の製袋済みのバッグを使用する場合、まず当該バッグを切り開き、バッグ内に容器本体部材20を収容する。その後にバッグを溶着で再封止する。
図16に示された例において、生体物質用容器10は、第2の具体例と同様に、押圧部材(押し付け部材、密着部材)70を有している。押圧部材70は、袋材51の外部に位置している。押圧部材70は、外側から袋材51に接触して、袋材51を容器本体部材20に向けて押し付ける。すなわち、押圧部材70は、袋材51の容器本体部材20に対面する面とは反対側の面に接触して、袋材51を容器本体部材20の側壁部24に向けて押し付ける。そして、押圧部材70は、袋材51を容器本体部材20の側壁部24の外面24S1に密着させる。更には、押圧部材70は、袋材51と側壁部24の外面24S1との間を密封することができる。押圧部材70は、チューブクランプ、インシュロック、結束バンド、ゴム等の環状弾性材、周長を調整可能な環状の部材を用いることができる。
なお、第3の具体例では、生体物質収容空間CSを形成する容器本体部材20が袋材51内の閉鎖された空間に配置されている。したがって、袋材51と容器本体部材20の側壁部24の外面24S1との間を必ずしも無菌性を維持するように密封させる必要はない。第3の具体例において、押圧部材70は、袋材51を容器本体部材20の側壁部24の外面24S1に押し付ける部材として、機能するようにしてもよい。
ただし、袋材51が容器本体部材20の側壁部24の外面24S1に少なくとも部分的に押し付けられていることが望ましく、袋材51と容器本体部材20の側壁部24の外面24S1との間が密封されていることがより望ましい。このような構成によれば、容器本体部材20の外面と袋材51との間に貴重な細胞液等の液体が入り込んでしまうことを効果的に防止することができる。本件発明者らが図16及び図17に示された第3の具体例と同様の生体物質用容器10を作製し、筒状部材61を介してDMEM培地の出し入れを行ったところ、容器本体部材20の外面に培地がトラップされることがほとんどなかった。
なお、生体物質用容器10の滅菌処理を、生体物質用容器10のアセンブリ後に行ってもよいが、滅菌済みの袋材51や容器本体部材20を用いることも可能である。滅菌済みの袋材51や容器本体部材20を用いる場合、アセンブリ後の生体物質用容器10を再度滅菌処理するようにしてもよい。或いは、滅菌済みの袋材51及び容器本体部材20をアイソレーターやCPC等のグレードA環境下で生体物質用容器10にアセンブリすることも好ましく、この例によれば、生体物質用容器10をアセンブリした後の滅菌処理の必要性を排除することができる。
カバー部材30として袋材51を用いた生体物質用容器10では、第2の具体例で例示した生体物質用容器と同様に、容器本体部材20内への材料供給や材料排出にともなった圧力調整を不要することができる。また、図17に示された生体物質用容器10は、第2の具体例で例示した生体物質用容器と同様に、カバー部材30をなす袋材51を貫通して延びる筒状部材61Eを有している。この筒状部材61Eによれば、第2の具体例で説明したように、柔軟性を有した袋材51を変形させることで、細胞懸濁液や培養液といった液体を、押圧部材70を介して袋材51に固定された容器本体部材20内の生体物質収容空間CSへ、安定して容易に供給することができる。
このような第3の具体例による生体物質用容器10では、容器本体部材20が袋材51の内部空間IS内に配置されている。容器本体部材20が閉鎖された袋材51の内部空間IS内に配置されるので、汚染の危険性を大幅に低減して、容器本体部材20を用いて生体物質の処理、例えば細胞の培養を行うことが可能となる。
また、第3の具体例による生体物質用容器10では、培養細胞等の生体物質を回収するにあたり、柔軟性を有した袋材51を単に切断することで、カバー部材30をなす袋材51を開放することができる。袋材51の切断時に生じる異物FMは僅かであり、カバー部材30を開放する際に開口部OPを介して生体物質収容空間CS内に落下してしまうことを効果的に回避することができる。また、柔軟性を有する袋材51を変形させることで、袋材51の切断位置を容器本体部材20の開口部OP上からずらすことができる。これにより、カバー部材30を開放する際に開口部OPを介して生体物質収容空間CS内に落下してしまうことを更に効果的に回避することができる。
とりわけ図17に示された袋材51は、第2の具体例で例示した袋材と同様に開始部46及び切断部47を有しており、第2の具体例で説明した開始部46及び切断部47に起因した作用効果を奏することができる。すなわち、カバー部材30をなす袋材51の開放を円滑に行うことができ、且つ、袋材51の切断位置を容器本体部材20の開口部OP上から安定してずらすことができる。
なお、第3の具体例として説明した生体物質用容器10は、第2の具体例と同様に、その使用前に、カバー部材30をなす袋材51と、容器本体部材20と、押圧部材70とが組み立てられていない状態で、流通等の取り扱いを受けるようにしてもよい。すなわち、袋材51、容器本体部材20及び押圧部材70を含む生体物質用容器キットKとして流通等の取り扱いを受けるようにしてもよい。
また、第3の具体例に対しても、上述した第1の具体例及び第2の具体例で説明した変形例を単独で又は適宜組み合わせて適用することができる。さらに、第3の具体例に対して以下の変形例を適用することができる。
まず、図18に示すように、生体物質用容器10が、カバー部材30をなす袋材51内に配置された蓋材31を有するようにしてもよい。蓋材31は、第1の具体例において説明した蓋材と同様に構成することができる。例えば、袋材51内に配置される蓋材31は、板状の蓋天部32及び蓋側壁部34を有するようにしてもよい。また、図18に示された生体物質用容器10は、蓋材31を袋材51に固定するための第2の押圧部材71を更に有している。第2の押圧部材71は、袋材51の外側から、袋材51を蓋材31の蓋側壁部34に向けて押す。そして、第2の押圧部材71は、袋材51を蓋材31の蓋側壁部34の外面34S1に密着させる。更には、第2の押圧部材71は、袋材51と蓋側壁部34の外面34S1との間を密封することができる。第2の押圧部材71は、押圧部材70と同様に構成することができる。すなわち、第2の押圧部材71として、チューブクランプ、インシュロック、結束バンド、ゴム等の環状弾性材、周長を調整可能な環状の部材を用いることができる。
図18に示された変形例において、蓋材31の蓋天部32は、容器本体部材20の開口部OPに対面する位置に配置可能となっている。そして、蓋材31の蓋天部32を介して、カバー部材30と容器本体部材20との間の空間Sを高い視認性で観察することが可能となる。また、蓋材31によって袋材51に適切な剛性が付与されるので、生体物質用容器10の取り扱い性を改善することができる。
とりわけ、図18に示された例において、蓋材31の蓋天部32は袋材51と重ねられている。蓋材31の蓋天部32は、好ましくは袋材51に面で接触し、更に好ましくは袋材51にその全域で密着している。このような例によれば、カバー部材30と容器本体部材20との空間Sの視認性を大幅に向上させることができる。
別の変形例として、図19~図21に示すように、袋材51は、容器本体部材20の開口部OPを覆う柔軟性を有した第1袋部56と、第1袋部56に通じる柔軟性を有した第2袋部57と、を有している。第1袋部56及び第2袋部57は、閉鎖された空間を形成している。第2袋部57内には、細胞の培養に使用される器具Tが設けられている。器具Tとしては、スクレーパ、スプレッダー、ピペット、シリンジ、三方活栓、延長チューブ、遠心管、ピペットチップ、注射針、ニードル、ノズル等を例示することができ、これらのうち複数の器具Tが第2袋部57内に収容されていてもよい。第1袋部56及び第2袋部57を含む袋材51が柔軟性を有していることから、袋材51を変形させることで、第2袋部57内の器具Tの先端を、第1袋部56内に移動させ、更に生体物質収容空間CS内へと移動させることができる。すなわち、無菌状態に維持された袋材51の内部空間IS内において、器具Tを用いた培養作業を実施することができる。
また、第2袋部57内に収容された複数の器具Tが互いに連結可能かつ連結解除可能であるようにしてもよい。さらに、第2袋部57内に筒状部材61が挿入され、第2袋部57内に収容された器具T、例えばシリンジが筒状部材61に連結可能かつ連結解除可能となっていてもよい。このような構成を採用することで、例えば、第2袋部57に収容された器具Tとしてのシリンジによって容器本体部材20内の生体物質を含む液体を吸引し、次に、シリンジを筒状部材61に挿入して連結して、シリンジ内の液体を筒状部材61を介して生体物質用容器10の外部に、例えば定量だけ、送出することができる。このようなシリンジの操作を柔軟性を有した第2袋部57の外部から行うことができるので、液体への菌の付着を効果的に回避することができる。
とりわけ図示された例において、袋材51は、第1袋部56及び第2袋部57の間に連結袋部58をさらに有している。連結袋部58は、第1袋部56及び第2袋部57とともに、閉鎖された空間を形成している。そして、連結袋部58は、第1袋部56及び第2袋部57よりも狭い幅を有している。器具Tは、連結袋部58を通過して第1袋部56内に挿入される。幅狭の連結袋部58を設けることで、器具Tが意図せずに生体物質収容空間CSに入り込むことを効果的に防止することができる。
なお、図18を参照して説明した袋材51内に蓋材31を配置する変形例は、第2の具体例の袋材へも適用可能である。すなわち、図14及び図15に示された第2の具体例において、容器本体部材20に固定された袋材51内に蓋材31を配置してもよい。また、図19~図21を参照して説明した袋材51の変形例は、第2の具体例の袋材へも適用可能である。すなわち、図14及び図15に示された第2の具体例において、容器本体部材20に固定された袋材51に対して、器具Tが収容された第2袋部57を接続するようにしてもよいし、器具Tが収容された第2袋部57を連結袋部58を介して接続するようにしてもよい。
以上において、複数の具体例および変形例を参照しながら一実施の形態を説明してきた。この一実施の形態において、生体物質用容器10は、底部22及び側壁部24を有する容器本体部材20と、容器本体部材20の開口部OPを覆うカバー部材30と、を有している。そして、容器本体部材20の側壁部24の外面24S1とカバー部材30との間が密封されている。結果として、容器本体部材20とカバー部材30との間の空間Sが閉鎖され、これにともない、容器本体部材20内の生体物質収容空間CSが閉鎖される。このような一実施の形態によれば、生体物質収容空間CSを開放するために密封箇所SPにおいてカバー部材30を容器本体部材20から取り外す際又は剥がす際、或いは、密封箇所SPから容器本体部材20の開口部OP側にずれた位置においてカバー部材30を切断等する際、取り外しや切断等で発生した異物FMが開口部OPを介して容器本体部材20内部、すなわち生体物質収容空間CSに落下することを効果的に回避することができる。これにより、異物FMによって害されることなく培養細胞等の生体物質を取り出すことが可能となる。
なお、一実施の形態を複数の具体例により説明してきたが、これらの具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
例えば、上述した生体物質用容器10とともに、図22及び図23に示された器具入り容器80を用いるようにしてもよい。器具入り容器80は、密封された内部空間ISを有する袋材51と、袋材51に取り付けられた筒状部材61と、袋材51内に収容された器具Tと、を有している。袋材51は、第2の具体例および第3の具体例で説明した袋材51のいずれかを用いることができる。図22及び図23に示された例において、袋材51は、袋材51の内部に収容された器具Tを袋材51の外部から操作し得る程度の柔軟性を有している。筒状部材61は、第1の具体例~第3の具体例で説明した筒状部材61のいずれかを採用することができる。袋材51に取り付けられる筒状部材61の数量は特に限定されない。
また、器具Tは、第3の具体例で説明した器具Tのいずれか一以上とすることができる。具体的には、器具Tとして、ピペット、シリンジ、延長チューブ、ピペットチップ、注射針、ニードル、ノズル等を例示することができ、これらのうち複数の器具Tが器具入り容器80の袋材51内に収容されていてもよい。袋材51内に収容された複数の器具Tが互いに連結可能かつ連結解除可能であるようにしてもよい。袋材51が柔軟性を有していることから、袋材51を変形させることで袋材51内の器具Tを操作し、筒状部材61を介して器具入り容器80に接続された部材に働きかけること、例えば生体物質用容器10内の生体物質の処理を行うことが可能となる。
とりわけ図示された例において、袋材51内には、シリンジTSが器具として収容されている。シリンジTSの先端は、図23に示すように、筒状部材61と連結可能となっている。図示された例において、シリンジTSの先端を筒状部材61内に挿入することで、シリンジTSを筒状部材61に連結して、筒状部材61を介してシリンジTS内への吸引が可能となる。なお、連結具が器具Tとして袋材51内に収容され、シリンジTSが連結具を介して筒状部材61と連結されるようにしてもよい。
図22及び図23に示された器具入り容器80によれば、筒状部材61を介して連結された生体物質用容器10の容器本体部材20から生体物質を含んだ液体を吸引することができる。器具入り容器80のシリンジに液体を回収した後、袋材51を開放して袋材51からシリンジTSを取り出すことができる。その後、シリンジTS内の液体を生体等の対象に送液または輸液することができる。
なお、袋材51内のシリンジTSの操作を容易にするため、シリンジTSのシリンダ部TSSを袋材51内に固定するようにしてもよい。例えば、第2の具体例および第3の具体例における押圧部材70を用いることで、シリンジTSのシリンダ部TSSを袋材51に取り外し可能に固定することができる。シリンダ部TSSを袋材51に固定することで、シリンジTSのピストン部TSPをシリンダ部TSSに対して容易に相対移動させることができる。
また、シリンジTSには、吸引した液体の量を示す表示TSXが設けられていてもよい。この表示TSXを設けることで、所定量の液体の吸引および所定量の液体の送出を容易に行うことができる。
さらに、袋材51内の複数のシリンジTSが収容され、筒状部材61に接続されるシリンジTSを変更することができるようになっていてもよい。複数のシリンジTSの間で用途や容量が異なるようにしてもよい。