JP7307713B2 - 塗膜評価システム - Google Patents

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Description

本発明は、塗膜の劣化度を評価できるシステム等に関する。
意匠性や防食性等を確保するため、部材や構造物等は塗膜で被覆される。塗膜は、外環境の影響を受けて、初期状態から経時的に変化(いわゆる劣化)し得る。特に、屋外に曝される塗膜は、太陽光、風雨、腐食性ガス等の影響を受けて劣化が進行し易い。
塗膜の劣化具合(「劣化度」という。)や劣化傾向を評価(分析)できれば、塗膜の補修・保全、塗料や塗装等の開発研究に役立つ。そこで、塗膜の劣化評価に関連する提案がなされており、下記の文献に関連する記載がある。
特開平3-160354号公報 特開2004-53474号公報 特開2007-101184号公報
久保田ら,"交流インピーダンス測定による鉄鋼面塗装材の劣化予測",大成建設技術センター報,Vol.43(2010),no.17,PP.1-5
いずれの文献も、交流インピーダンス法により、インピーダンスの変化に基づいて塗膜の劣化を評価(診断、監視等)している。しかし、塗膜のインピーダンスは、塗膜の劣化がかなり進行した後に顕著な変化を示す。このため、従来の評価手法では、寿命到達前の塗膜の劣化(例えば外観変化が殆ど生じていない段階での劣化)を適切に評価できなかった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、従来とは異なる手法により、塗膜の劣化を評価できる塗膜評価システム等を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、塗膜の誘電特性またはそれに関連する指標値を用いて、塗膜の劣化度を評価することを着想すると共に具現化した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《塗膜評価システム》
(1)本発明は、基体を覆う塗膜の劣化を評価するシステムであって、該塗膜の少なくとも一部で評価対象である被検層の一面側に接する第1電極と該被検層の他面側に接する第2電極とを有するセンサ部と、該第1電極と該第2電極の間に特定周波数の交流を通電して、該被検層の誘電特性を反映した特性値を求める測定部と、該特性値を所定値と比較して該被検層の劣化度を評価する評価部と、を備える塗膜評価システムである。
(2)本発明の塗膜評価システム(単に「システム」ともいう。)では、塗膜の誘電特性を反映した特性値を用いて塗膜の劣化度を評価するため、従来よりも塗膜の劣化を適切に評価できる。例えば、塗膜の寿命前(劣化が外観に表出してインピーダンスが大きく変化する以前等)でも、本発明のシステムによれば、塗膜の状態変化を把握でき、塗膜の残存寿命(「余寿命」ともいう。)を予測できる。
《塗膜評価方法等》
(1)本発明は、塗膜評価方法としても把握できる。例えば、本発明は、基体を覆う塗膜の少なくとも一部を構成する評価対象である被検層に特定周波数の交流を通電して、該被検層の誘電特性を反映した特性値を求める測定工程(ステップ)と、 該特性値を所定値と比較して該被検層の劣化度を評価する評価工程(ステップ)と、を備える塗膜評価方法でもよい。
(2)本発明は、塗膜の劣化を評価するシステムや方法に使用できるセンサとしても把握される。例えば、本発明は、塗膜の少なくとも一部で評価対象である被検層に接する電極対(第1電極と第2電極)を備え、被検層に特定周波数の交流を通電して、被検層の誘電特性または特性値の検出または測定に用いることができるセンサでもよい。
電極の一方(第1電極)は、塗膜が形成される基体を利用してもよい。塗膜は、基体(部材や構造物等の一部)に直接形成されたものでもよいし、センサ専用の基体(第1電極)に形成されたものでもよい。前者なら、部材や構造物等に実際に形成されている塗膜(単に「実塗膜」という。)そのものを評価できる。後者なら、センサの後付け等により、実塗膜と同様な環境下において、高い自由度で塗膜の劣化評価を行える。なお、いずれの場合でも、その場(in-situ)観察・測定が可能となる。
《その他》
(1)本明細書でいう「~部」、「~手段」、「~工程」または「~ステップ」は、相互に読み替えることができる。これにより、本発明は、物の発明(塗膜評価システム、塗膜評価プログラム、塗膜評価装置(センサを含む)等)としても、方法の発明(塗膜評価方法等)としても把握される。なお、プログラムは、各手段や各ステップがコンピュータにより実行される。
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x~y」は、下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として、「a~b」のような範囲を新設し得る。
塗膜の誘電正接の経時変化を示すデータベース(一例)である。 塗膜の評価システムの構成例を示す模式図である。 塗膜に接する第2電極(一例)を模式的に示す平面図である。 塗膜の劣化に係るデータ群を構成する処理フロー(一例)である。 塗膜の評価システムの応用例を示す模式図である。 鋼板上に形成した塗膜の誘電正接の周波数特性(一例)を示す散布図である。 その塗膜のインピーダンスの周波数特性(一例)を示す散布図である。 亜鉛めっき鋼板上に形成した塗膜の誘電正接の周波数特性(一例)を示す散布図である。 その塗膜のインピーダンスの周波数特性(一例)を示す散布図である。
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、塗膜評価システムのみならず、塗膜評価方法、塗膜評価用センサ等にも適宜該当し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《基体》
塗膜(被検層)により被覆される基体は、金属製でも非金属製でもよい。金属は、例えば、鉄系、アルミニウム系、マグネシウム系、チタン系等のいずれでもよい。本明細書でいう「~系」は、純金属または合金を意味する。基体の代表例は、部材や構造物を構成する鋼板(めっき鋼板を含む)、アルミニウム合金板等である。
《塗膜》
塗膜は、主に非導電材(絶縁材、誘電材等)からなる。非導電材は、例えば、樹脂、油脂、セラミックス等である。塗膜は、粒子状または繊維状の充填材(顔料、添加剤等を含む)を含んでもよい。塗膜を形成する塗料の種類(溶剤の有無、溶剤の種類等)は問わない。
塗膜は、単層でも複層(多層)でもよい。複層は、通常、種類または成分の異なる塗料を塗り重ねて形成される。例えば、自動車のボディを被覆する塗膜は、通常、少なくとも3層からなる。具体的にいうと、鋼板等を成形したパネル(基体)に、防食性を確保するための電着塗装、耐ピッチング性・遮光性・平滑性等を確保するための中塗り塗装、意匠性・耐候性等を確保するための上塗り塗装等が順になされて、多層の塗膜が形成される。ちなみに、電着塗装前のパネルは、化成処理等の前処理がなされていてもよい。また、上塗り塗装は、通常、有色なベース塗装と、透明なクリア塗装とがなされる。
評価対象である被検層は、単層でも複層でもよい。塗膜が複層でも、被検層は、その一層だけでもよいし、二層以上(全層を含む)でもよい。評価目的に応じて被検層が選択される。
《電極》
電極は、被検層の各面側にそれぞれ設けられる。導電材からなる基体(一部)は、一方の電極(第1電極)を兼ねてもよい。なお、本明細書では、被検層に関して、基体側を「第1」、その反対側(外環境側)を「第2」という。
電極は、被検層の誘電特性や導電性(インピーダンス等)に及ぼす影響が少ない材質からなるとよい。例えば、電極は、高耐食性(不溶性、難溶性)または標準電極電位が貴な導電材からなるとよい。具体的な電極材として、ステンレス、Ti系、貴金属(Pt、Au、Ag)、酸化物半導体、ニクタイド導電材(TiP、FeTiP、XTiP(X:金属元素)等)などがある。
但し、外環境に露出していない電極は、鉄系、アルミニウム系等でもよい。塗膜(被検層)で被覆されている基体を第1電極とする場合や、被検層(下層)上に配設された第2電極に上塗り(上層)を形成する場合等である。
電極は、その形態を問わないが、例えば、箔状または薄板状であればよい。外環境側となる第2電極は、通気性または通液性を有するとよい。これにより、外環境が被検層へ及ぼす作用(影響)が、第2電極より遮断されることが抑止される。つまり、第2電極下の被検層について、その劣化を適切に評価できる。このような第2電極は、例えば、多孔状(パンチングメタル(箔)、焼結体等)、網目状等であるとよい。
《測定》
電極間に特定周波数の交流を通電して、その特定周波数に応じた被検層の誘電特性またはそれを反映した特性値が測定(算出または解析される場合を含む)される。
(1)誘電特性として、被検層を誘電体とみたときの誘電率(ε)、被検層とその両側にある電極対とをコンデンサとみたときの静電容量(C)等がある。誘電率や静電容量等は、通常、周波数特性(依存性)を有し、通電される交流(電界)の周波数により変動し得る。これは誘電体を構成する分子の配向(分極)遅れや熱振動、コンデンサの電極間に生じる漏れ電流(誘電損)等に起因する。
誘電特性の代表例である誘電率に着目すると、交流通電下における誘電率(ε)は、一般的に複素誘電率(ε=ε'-iε" 、i:虚数単位、ε':実部、ε":虚部)で表現される。また、その誘電特性を反映した特性値として、例えば、誘電正接(tanδ)、電気的モジョラス(M=jwCo・Z/MとZ:複素数、Z:複素インピーダンス、Co:真空の電気容量)等がある。
誘電正接は、実部(ε')に対する虚部(ε")の比率(ε"/ε')として求まる。ここで虚部(ε")は分極遅れ等に起因した誘電損率を示す。コンデンサとしてみれば、コンデンサ(静電容量:C)に流れる電流:Ic、寄生抵抗(抵抗値:r)に流れる電流:Ir、角周波数:ω=2πf(f:交流周波数)として、tanδ=Ir/Ic=1/ωrCとしても求まる。このように誘電正接は、供給される電気エネルギーに対して損失される熱エネルギーの割合を示す。換言すれば、誘電正接は、誘電体の絶縁性の低下ひいては塗膜の劣化を指標するといえる。
ちなみに、誘電率の測定には(平行電極)容量法、反射伝送法、共振法等がある。周波数に応じた測定方法が適宜選択されるが、本発明の場合なら、通常、容量法で足る。
(2)被検層の評価指標は、誘電特性(誘電率、静電容量等)そのものでもよいし、その誘電特性を反映した特性値(誘電正接等)でもよい。つまり、本明細書でいう「特性値」には、誘電特性自体も含まれる。
塗膜の少なくとも一部である被検層は、経時(経年)により分子構造、形態(例えば厚み)等が変化(劣化)し、それを反映して、被検層の特性値も変化し得る。特性値を指標とすれば、従来のようにインピーダンスのみを指標とする場合よりも、被検層(ひいては塗膜)の経時変化を早期から把握することが可能となる。
この際、少なく2つの周波数の交流通電により得られた各特性値を評価指標とすると、被検層の変化をより適確に把握し得る。例えば、特定周波数は高周波数側の第1周波数と低周波数側の第2周波数とを含むと共に、第1周波数に対応した第1特性値と第2周波数に対応した第2特性値とにより、またはそれらを反映した第3特性値により、被検層の劣化が評価されるとよい。
特定周波数は、被検層の成分、厚さ、塗装方法等を考慮して選択されるとよい。特定周波数が過小では、測定毎に長時間を要する。特定周波数が過大では、被検層の変化に対する特性値の変化が小さくなり得る。特定周波数は、例えば、0.01~10000Hz、0.1~1000Hzさらには0.5~500Hzの範囲内で選択されるとよい。
第1周波数なら、例えば、10~1000Hz、30~500Hzさらには50~200Hzの範囲内で選択されるとよい。第2周波数なら、例えば、0.1~100Hz、1~50Hzさらには5~30Hzの範囲内で選択されるとよい。
第2周波数(f2)に対する第1周波数(f1)の比(f1/f2)が、例えば、1~100さらには5~50程度とされてもよい。また、第1周波数(f1)と第2周波数(f2)の差(|f1-f2|)が、例えば、10~1000さらには50~500程度とされてもよい。
《評価》
(1)被検層の劣化度は、例えば、特定周波数に対して得られた特性値を、所定値と比較して評価される。所定値との比較は、特性値の取得(測定)毎になされてもよいし、複数の特性値の平均値等となされてもよい。
劣化度は、例えば、被検層の状態や形態の変化度合でもよいし、被検層(ひいては塗膜)が機能し得る残存寿命(余寿命)でもよい。
(2)特定周波数に対応して得られた誘電正接(tanδ/特性値)に基づいて、被検層の劣化度を評価する場合を図1に模式的に例示した。図1において、a(t)は、例えば、高周波数(第1周波数)側の第1特性値の経時変化を示し、b(t)は、例えば、低周波数(第2周波数)側の第2特性値の経時変化を示す。さらにc(t)は、a(t)とb(t)から導出した関数c(a、b)であり、両者を統合した第3特性値の経時変化を示す。c(t)は、例えば、k・a(t)×b(t)、m・a(t)+n・b(t)のようにして求まる(k、m、n:係数)。
このようなa(t)、b(t)は、次のような塗膜の経時変化を反映していると考えられる。一例として、大気中に曝される塗膜を考えると、その塗膜は経時により、水分を徐々に吸収した後、塗膜内におけるイオン伝導度を増す。通電したときに伝導されるイオンとして、例えば、塗膜成分、H+、OH-、外界から取り込まれる成分(Cl等)等がある。
a(t)は、ある時点(t1)まで単調に増加して、その後、飽和状態となっていることから、被検層に吸収された水分量(含水率)を反映していると考えられる。このような傾向が高周波数側の特性値に観られる理由として、樹脂内部への水分の侵入に伴う樹脂の自由体積の増加等が考えられる。ちなみに、通常、t1付近において、被検層(塗膜)の外観変化やインピーダンス変化は殆どない。
b(t)は、ある時点(t2)で極大(ピーク)となっていることから、被検層内のイオン伝導度を反映していると考えられる。イオン伝導度は、被検層内に水分があり、被検層内におけるイオンの束縛(拘束)が経時的に低下して増すからである。このような傾向が低周波数側の特性値に観られる理由は、樹脂中の水分量や自由体積が一定以上となり、イオンのモビリティの増加等が考えられる。ちなみに、通常、t2付近において、被検層のインピーダンスの減少が顕著になり始める。例えば、被検層のインピーダンスは、初期値の1/10~1/100程度、または10Ω以下さらには10Ω以下になり得る。このような塗膜は、意匠性が低下(外観変化)しているのみならず、環境遮断能力(防食性等)が限界(つまり寿命)を迎えていると考えられる。それ以降、塗膜の下地(基体)に、浸食(例えば、錆さらには孔食)が発生するようになると考えられる。
図1に示すように、予め用意したa(t)とb(t)の一方または両方、またはそれらから導出したc(t)等に基づいて求まる所定値と、実測した特性値とを比較すると、被検層(塗膜)の劣化度を評価できる。例えば、実測された特性値(x)に対応する時間(tx)を、データベース(c(t)等)から求めると、t2-tx=Jとして、塗膜の余寿命が求まる。
なお、データベースとなるa(t)、b(t)、c(t)の選択は、塗膜の評価目的に応じてなされるとよい。また、被検層の成分、形態等に応じて、上述したa(t)が低周波数(第2周波数)側の第2特性値の経時変化を示し、b(t)が高周波数(第1周波数)側の第1特性値の経時変化を示すことがあってもよい。
《データ処理》
特性値は、測定時期(時刻)、劣化度、測定環境を示す環境情報等と共にデータ群を構成しているとよい。これにより、塗膜の劣化傾向の分析等も可能となる。そこで本発明のシステムは、データ群に基づいて被検層の劣化傾向を分析する分析部をさらに備えるとよい。劣化傾向は、例えば、劣化の進行速度の経時変化等である。
なお、環境情報には、塗膜が曝される雰囲気(温度、湿度等)情報の他、測定される場所や地域等を示す位置情報が含まれるとよい。位置情報は、例えば、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)等から得られる。移動体(自動車等)に設けられた塗膜の劣化を評価する場合なら、カーナビゲーションの軌跡情報等を位置情報として利用してもよい。
データ群の保存や分析は、センサ部がある基体側でなされる他、基体に対して遠隔地でなされてもよい。そこで本発明のシステムは、遠隔地へデータ群を無線送信する送信部をさらに備えるとよい。データ群に基づく分析結果は、塗膜の開発研究に活用されてもよいし、基体側へ塗膜の余寿命または補修案内等として返信されてもよい。
交流を通電して測定された塗膜の誘電特性と塗膜の劣化との関係を明らかにした。このような具体例に基づいて、本発明をさらに詳しく説明する。
《構成》
塗膜評価システムS(単に「システムS」という。)の概要を図2Aに示した。システムSは、センサ部dと、センサ部dに接続された測定装置(測定部)と、測定装置から得られたデータを解析する評価装置(評価部)とを備える。
(1)センサ部dは、基体e1(第1電極)の上面全体に塗装された被検層p1と、その反対面側に設けられた電極e2(第2電極)と、被検層p1および電極e2の上面全体(基体e1の反対面側)に上塗り塗装された上層p2とを有する。基体e1と電極e2は、それぞれ配線w1、w2により測定装置と接続されている。被検層p1と上層p2を併せて塗膜pという。電極e2は、例えば、図2Bに模式的に示すように、多数の貫通した小孔hが形成された金属箔からなる。
本実施例では、基体e1として、自動車ボディに用いられる冷間圧延鋼板(SPCC)または溶融亜鉛めっき鋼板(SGCC)を用いた。基体e1はいずれも10cm×10cm×t3mmとした。なお、基体e1の下面(被検層p1の反対面側)は、配線w1のはんだ接合後、未塗装のままとした。
電極e2には白金(Pt)からなるパンチングメタル箔を用いた。電極e2は、例えば、幅:1~2cm、長さ:15~20cm、厚さ:0.1~5μm、孔径:0.2~0.5cm、孔密度:3~9個/cmとした。
被検層p1は、自動車ボディの防食塗装に用いられる電着塗料を焼き付け塗装して形成した。電着塗料には樹脂系(エポキシ)を用いた。被検層p1の膜厚は15~25μmとした。
上層p2は、自動車ボディのクリア塗料を上塗りして形成した。クリア塗料には樹脂系(アクリル)を用いた。上層p2の膜厚は50~100μmとした。
(2)測定装置には、被検層p1の誘電正接(tanδ)と被検層p1のインピーダンス(Z)を周波数毎に測定できるLCRメータ(ソーラトロンアナリティカル社製ModuLab)を用いた。
本実施例では、tanδの周波数特性を1Hz~10Hzの範囲で測定し、|Z|の周波数特性を10-2Hz~10Hzの範囲で測定した。
劣化評価を行う際の特定周波数の一例として、f1:100Hz(第1周波数)とf2:10Hz(第2周波数)を選択した。これらの周波数を選択した理由は後述する。測定開始からの経過時間tにおいて、f1で得られたtanδの実測値(第1特性値):α(t)、f2で得られたtanδの実測値(第2特性値):β(t)とする。測定は、一定期間の経過毎に行った。
(3)評価装置は、コンピュータ(パソコン、車載制御装置(ECU)等)からなり、測定装置から取得したα(t)、β(t)を、データベースa(t)、b(t)と比較する。a(t)、b(t)は、被検層p1と同様な塗膜について、それぞれf1、f2におけるtanδの経時変化を示すデータベース(関数)である。a(t)、b(t)は、α(t)、β(t)と同様な測定により、予め用意しておいた。なお、図1に示したように、α(t)とβ(t)から定まる特性値γ(t)と、a(t)、b(t)から定まるデータベースc(t)とを比較してもよい。
実測値とデータベースから求まる所定値とを比較して、実測時点における経過寿命(tx)が予測できる。その経過寿命(tx)と、データベース上の限界寿命(t2)との差分から、余寿命(J=t2-tx)が算出される。こうして、被検層p1の劣化評価が可能となる。
(4)余寿命(J)を含むデータ群を構成する一連の処理フロー例を図3に示した。ステップS1で、ある時点(t)におけるα(t)、β(t)を測定する。ステップS2では、α(t)、β(t)から劣化パラメータγ(t)をさらに算出する。ステップS3では、γ(t)と、その劣化パラメータに対応する予め用意したデータベースc(t)とを比較して、塗膜の余寿命(J)を算出する。ステップS4では、測定時点(t)と余寿命(J)を対応させたデータ群が構成される。データ群には、測定時点(t)と余寿命(J)に加えて、特性値または劣化パラメータγ(t)、測定環境を示す環境情報(温度、湿度、光量、濡れ乾き状態等)、位置情報等が含まれるとよい。
(5)自動車(移動体)にセンサ部を取り付けた塗膜評価システム例を模式的に図4に示した。自動車側で構成されたデータ群は、例えば、自動車から遠隔地にある格納部(クラウドストレージ等)へ送信される。遠隔地にある分析部(解析センター等)では、格納部から読み出した一連のデータ群(ビッグデータ)を分析して、自動車の使用環境と塗膜の劣化傾向との相関を明らかにしたり、塗膜の寿命や補修に関する情報を自動車へ無線で返信したりする。
《周波数特性》
(1)測定
上述したセンサ部dを用いて、被検層p1の誘電正接(tanδ)とインピーダンス(|Z|)の周波数特性を測定した。測定は、上層p2を食塩水(濃度1mol/L)に接触させた状態で、初期(経過日数0日)、42日経過後、84日経過後にそれぞれ行った。第1電極を兼ねる基体e1を冷間圧延鋼板(SPCC)としたときのtanδ、|Z|をそれぞれ図5A、図5Bに示した。その基体e1を溶融亜鉛めっき鋼板(SGCC)としたときのtanδ、|Z|をそれぞれ図6A、図6Bに示した。
(2)評価
図5A、図6Aからわかるように、42日経過したときを観ると、10~100Hzの間にtanδのピーク(極値)があることがわかった。このピークは初期には観られない。また、84日経過したときを観ると、そのピークは衰退さらには消滅し、tanδは高周波数側である100Hz(第1周波数)付近で飽和状態となることもわかった。
塗膜の劣化過程を考慮すると、100Hz付近のtanδは、被検層p1への水分の吸収度合(含水率)を反映していると考えられる。
次に、84日経過後のtanδを観ると、低周波数側でtanδが急増している。このような傾向は、初期や42日経過後には観られない。塗膜の劣化過程を考慮すると、低周波数側におけるtanδの増加は、含水後のイオン伝導度の増加を反映していると考えられる。このような状態は、塗膜(被検層p1)の劣化がかなり進行した段階と考えられる。このことは、図5B、図6Bに示すように、84日経過後に|Z|の低下が顕著になることからも裏付けられる。
また、塗膜の劣化に伴うtanδの急増は、例えば、10Hz(第2周波数)付近を境にして生じている。その周波数付近のtanδを観れば、|Z|から把握できない基体e1の材質の影響も把握できる。そこで本実施例の場合でいえば、イオン伝導度が塗膜の特性に支配的な影響を及ぼす低周波数域の一指標値として、10Hzを挙げることができる。
このように、本発明によれば、従来の交流インピーダンス法では把握できかなった塗膜の劣化度(余寿命等)を適切に把握できることがわかった。
S 塗膜評価システム
d センサ部
p 塗膜
p1 被検層
p2 上層
e1 基体(第1電極)
e2 第2電極

Claims (9)

  1. 基体を覆う塗膜の劣化を評価するシステムであって、
    該塗膜の少なくとも一部で評価対象である被検層の一面側に接する第1電極と該被検層の他面側に接する第2電極とを有するセンサ部と、
    該第1電極と該第2電極の間に特定周波数の交流を通電して、該被検層の誘電特性を反映した特性値を求める測定部と、
    該特性値を所定値と比較して該被検層の劣化度を評価する評価部とを備え、
    該第2電極は、該被検層に直に接する箔状または薄板状であり、
    該被検層と該第2電極はさらに上塗りされている塗膜評価システム。
  2. 前記特定周波数は、高周波数側の第1周波数と低周波数側の第2周波数とを少なくとも含み、
    前記特性値は、該第1周波数に対応した第1特性値と該第2周波数に対応した第2特性値とを反映している請求項1に記載の塗膜評価システム。
  3. 前記特性値は、誘電正接である請求項1または2に記載の塗膜評価システム。
  4. 前記基体は、導電材からなり、
    前記第1電極は、該基体からなる請求項1~3のいずれかに記載の塗膜評価システム。
  5. 前記第2電極は、多孔状または網目状である請求項1~4のいずれかに記載の塗膜評価システム。
  6. 前記基体は、自動車ボディである請求項1~5のいずれかに記載の塗膜評価システム。
  7. 前記特性値および/または前記劣化度と、該特性値の測定環境を示す環境情報とを含むデータ群が構成される請求項1~6のいずれかに記載の塗膜評価システム。
  8. 前記データ群を無線送信する送信部をさらに備える請求項7に記載の塗膜評価システム。
  9. 前記データ群に基づいて、前記被検層の劣化傾向を分析する分析部をさらに備える請求項7または8に記載の塗膜評価システム。
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