JP7306595B1 - 紫外線レーザー印刷用紙、印刷物、加工品、および印刷物の製造方法 - Google Patents

紫外線レーザー印刷用紙、印刷物、加工品、および印刷物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】紫外線レーザー照射された際に、一点ごとの印字鮮明性に優れる印字スポットが得られ、さらにヒートシール性を有する紫外線レーザー印刷用紙を提供すること。また、前記紫外線レーザー印刷用紙に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させた印刷物およびその製造方法を提供すること。さらに、前記紫外線レーザー印刷用紙または印刷物を用いてなる加工品を提供すること。【解決手段】酸化チタンが内添されてなる紙基材と、前記紙基材の少なくとも一方の面にシーラント層とを有する紫外線レーザー印刷用紙であって、前記紙基材層中の酸化チタンの含有量が0.5質量%以上であり、前記酸化チタンの結晶子サイズが、30nm以上である、紫外線レーザー印刷用紙。【選択図】なし

Description

本発明は、紫外線レーザー印刷用紙、印刷物、加工品、および印刷物の製造方法に関する。
従来、製造日や出荷日などの日付や、バーコードなどの可変情報を、収容物が収容される容器等の包装体に表示するために、ラベル表示またはインクジェット印刷が行われている。
また、レーザー光照射により印字する方法も提案されており、例えば、特許文献1には、レーザー光照射により、鮮明な印字が高速で行え、かつ、印字された部分が各種の耐性に優れたレーザー印字用積層体およびその印字体を提供することを目的として、アルミ蒸着紙のアルミ蒸着面上に、白インキ、黒インキおよびオーバープリントニス(OPニス)を塗布して製造したレーザー印刷用積層体が開示されている。
さらに、特許文献2には、発熱が比較的少なく、包装材のレーザーマーキングに好ましく適用可能な技術を提供することを目的として、平均粒子径が150nm以下の第一の酸化チタン粒子を含み、紫外線レーザーの照射により色変化するレーザーマーキング層を形成するために用いられるインク組成物が記載されている。
特開平9-123607号公報 特開2020-75943号公報
包装体、ラベル、粘着テープなどの表面への印刷手段として、サーマルプリンタやインクジェットプリンタを用いて包装体表面に直接インキを載せる方法があり、現在多用されている。しかし、サーマルプリンタのインクリボンやインクジェットプリンタのインキ等の消耗品は高価であり、多くの変動情報を印刷するにはランニングコストが高額になるという問題がある。また、これら消耗品の交換を怠ると印刷漏れが発生する場合もある。さらに、UV硬化型インキを用いたオフセット印刷による包装体への変動情報の直接印刷も行われているが、包装体表面の汚れや包装体の厚さむら等によって、印刷カスレや文字欠け等が発生する場合がある。
また、特許文献1に記載の方法では、高速化が可能であるものの、COレーザー光の照射によりレーザー光を吸収しやすい上層を除去して、下層を露出し、上層と下層の色の違いから視認可能な文字等を形成する技術であるため、上層はレーザー光を吸収しやすい材料に限定され、逆に下層はレーザー光を吸収しにくく、かつ、上層と色のコントラストの取れる材料に限定される。すなわち、レーザー光を吸収しやすいカーボンブラック系の材料(黒色)が上層となり、酸化チタン系の材料(白色)が下層となり、レーザー光の照射により形成される文字等は、黒地に白い文字となり、視認性に劣る。また、上層を除去する際に、上層のインクが粉塵化して、作業環境の汚染を招くという問題があった。
さらに、特許文献2に記載のインク組成物を用いて作製した塗工層に対して、紫外線レーザーによる印刷を行うと、印字スポットの一点ごとの印字鮮明性に劣る場合があった。
本発明は、紫外線レーザー照射された際に、一点ごとの印字鮮明性に優れる印字スポットが得られ、さらにヒートシール性を有する紫外線レーザー印刷用紙を提供することを目的とする。また、本発明は、前記紫外線レーザー印刷用紙に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させた印刷物およびその製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、前記紫外線レーザー印刷用紙または印刷物を用いてなる加工品を提供することを目的とする。
本発明者等は、酸化チタンが内添されてなる紙基材の少なくとも一方の面にシーラント層を有する紫外線レーザー印刷用紙において、酸化チタンの含有量を特定量以上とし、酸化チタンの結晶子サイズを特定の値以上とすることにより、上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の<1>~<11>に関する。
<1> 酸化チタンが内添されてなる紙基材と、前記紙基材の少なくとも一方の面にシーラント層とを有する紫外線レーザー印刷用紙であって、前記紙基材層中の酸化チタンの含有量が0.5質量%以上であり、前記酸化チタンの結晶子サイズが、30nm以上である、紫外線レーザー印刷用紙。
<2> 前記酸化チタンの結晶子サイズが53nm以下である、<1>に記載の紫外線レーザー印刷用紙。
<3> 前記酸化チタンがルチル型酸化チタンであり、前記酸化チタンの回折角度が27.60°以下である、<1>または<2>に記載の紫外線レーザー印刷用紙。
<4> 前記紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.5mm以上3.0mm以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用紙。
<5> 前記紙基材を構成するパルプ繊維中、繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合が4%以上40%以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用紙。
<6> 前記紙基材中の酸化チタンの含有量が50質量%以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用紙。
<7> 前記紙基材とシーラント層との間に、バリア層を有する、<1>~<6>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用紙。
<8> <1>~<7>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用紙から得られた印刷物であって、前記印刷物が、少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度の比が0.70以下である、印刷物。
<9> <1>~<7>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用紙、または<8>に記載の印刷物を用いてなる、加工品。
<10> <1>~<7>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用紙に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有する、印刷物の製造方法。
<11> 前記印刷する工程が、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下となるように紫外線レーザーを照射する工程である、<10>に記載の印刷物の製造方法。
本発明によれば、紫外線レーザー照射された際に、一点ごとの印字鮮明性に優れる印字スポットが得られ、さらにヒートシール性を有する紫外線レーザー印刷用紙が提供される。また、本発明によれば、前記紫外線レーザー印刷用紙に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させた印刷物およびその製造方法が提供される。さらに、本発明によれば、前記紫外線レーザー印刷用紙または印刷物を用いてなる加工品が提供される。
[紫外線レーザー印刷用紙]
本発明の紫外線レーザー印刷用紙(以下、単に「印刷用紙」ともいう)は、酸化チタンが内添されてなる紙基材と、前記紙基材の少なくとも一方の面にシーラント層とを有し、前記紙基材中の酸化チタンの含有量が0.5質量%以上であり、前記酸化チタンの結晶子サイズが、30nm以上である。
本発明によれば、紫外線レーザー照射された際に、一点ごとの印字鮮明性に優れ、さらにヒートシール性を有する印字スポットが得られる紫外線レーザー印刷用紙が提供される。
上述した効果が得られる詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように考えられる。
印刷用紙の紙基材に酸化チタンが内添されてなることにより、紫外線レーザーによるレーザー照射により、紙基材中の酸化チタンが変色し、印刷することが可能である。前記酸化チタンの変色は、紙基材が含有する酸化チタンのイオン価数が4価から3価に変化し、酸素欠陥が生じることで、白色から黒色へと変化し、これにより、視認可能となっていると考えられる。酸化チタンのイオン価数は、酸化チタンのバンドギャップに相当する光エネルギーを照射する際に変化するものと考えられる。酸化チタンのバンドギャップは結晶系によって異なるが、一般に3.0~3.2eV程度であり、これに相当する光の波長は420nm以下である。そのため、420nmを超える波長のレーザー光(例えば532nm、1064nm、10600nm)を用いても本発明のような酸化チタンのイオン価数変化に起因する印刷を施すことは困難である。この際、紙基材中の酸化チタンの含有量を0.5質量%以上にすることで、視認性に優れ、一点ごとの印字鮮明性に優れた印刷物が得られる。
また、酸化チタンの結晶子サイズが30nm以上であると、結晶欠陥が少なく、励起電子と正孔の再結合の発生が抑制され、酸化チタンが還元されやすく、変色しやすいため、一点ごとの印字鮮明性に優れた印字スポットが得られたと考えられる。
なお、本実施形態において、印刷可能領域とは、印刷用紙が含有する酸化チタンの変色、好ましくは紫外線レーザーの照射により、紫外線レーザーにより照射された部分の酸化チタンが白色から黒色に変色することで印刷が可能である領域(部分)を意味し、印刷領域とは、印刷可能領域の中で、実際に酸化チタンが変色している箇所、好ましくは紫外線レーザーの照射により酸化チタンが変色し、視認可能となっている箇所、すなわち、紫外線レーザーの被照射部分を意味する。また、非印刷領域とは、印刷可能領域の中で、酸化チタンが変色していない領域(部分)、例えば、紫外線レーザーが照射されていない領域(部分)を意味する。
また、紙基材の少なくとも一方の面にシーラント層を有することで、ヒートシール性が付与され、ヒートシール性を有する印刷用紙が提供される。さらに、シーラント層を有することで、ガスバリア性も付与されることが好ましい。ここで、ガスバリア性とは、主に酸素および水蒸気から選択される少なくとも1つに対するバリア性を意味し、他のガスに対してもバリア性を有していてもよい。本実施形態の印刷用紙は、少なくとも水蒸気バリア性を有することが好ましく、これに加え、酸素バリア性を有することが好ましい。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
紫外線レーザー印刷用紙は、酸化チタンが内添されてなる紙基材と、前記紙基材の少なくとも一方の面にシーラント層とを有する。本発明において、印刷用紙は、酸化チタンを含有する紙基材と、前記紙基材の少なくとも一方の面に形成されたシーラント層とを有する構成を有していてもよく、前記酸化チタンを含有する紙基材と、前記紙基材の両面に形成されたシーラント層とを有する構成を有していてもよく、該紙基材の一方の面にシーラント層を有し、他方の面に透明樹脂層が設けられていてもよい。すなわち、「印刷用紙」とは、紙基材の一方の面または両面にシーラント層が形成された態様、または紙基材上の一方の面にシーラント層を有し、他方の面に任意に透明樹脂層が設けられた態様の双方を意味する。また、紙基材とシーラント層との間にバリア層を有していてもよい。
なお、印刷用紙の印刷を行う面とは反対面にシーラント層を有することが好ましい。また、印刷を行う面とは反対面の最上層にシーラント層を有することがより好ましい。
〔紙基材〕
本実施形態の紫外線レーザー印刷用紙は、酸化チタンが内添されてなる紙基材を有する。
紙基材は、酸化チタンが内添されてなり、前記紙基材中の酸化チタンの含有量が0.5質量%以上である。
紙基材中の酸化チタンの含有量は、十分な印刷濃度を得る観点から0.5質量%以上であり、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、さらに好ましくは8.0質量%以上であり、そして、一点ごとの印字鮮明性に優れる印字スポットを得る観点、印刷濃度が頭打ちとなり、必要量以上の酸化チタンを含有させることによるコストアップを抑制する観点、および紫外線レーザー照射時(印刷時)の発煙量を抑制する観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、よりさらに好ましくは25質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。
紙基材中の酸化チタンの含有量が多過ぎると、紫外線レーザー照射時に酸化チタンの飛散によると考えられる発煙が発生する傾向がある。また、発煙が生じる結果、変色した酸化チタンが印刷用紙から脱離するという現象が生じるため、一点ごとの印字鮮明性も劣化する傾向がある。
なお、印刷用紙の少なくとも印刷可能領域に該当する紙基材が酸化チタンを含有していればよく、印刷を行わない領域において、紙基材中の酸化チタンの含有量が上記下限未満である領域が存在していてもよい。製造の簡易性の観点から、紙基材の全領域が酸化チタンを上記の下限値以上含有することが好ましい。
紙基材が含有する各成分について詳述する。
(酸化チタン)
紙基材が含有する酸化チタンは、組成式TiOで表され、二酸化チタン、またはチタニアとも呼ばれる。
本実施形態において、紙基材中の酸化チタンの結晶子サイズは、30nm以上である。紙基材中の酸化チタンの結晶子サイズが30nm未満であると、結晶欠陥が多く、紫外線レーザー照射によって励起した励起電子と正孔の再結合が発生しやすく、結果として、酸化チタンが還元されにくく、一点ごとの印字鮮明性に劣る。酸化チタンの結晶子サイズは、好ましくは35nm以上、より好ましくは40nm以上である。
また、酸化チタンの結晶子サイズの上限は特に限定されないが、抄紙の際の紙料中での分散安定性の観点から、好ましくは60nm以下、より好ましくは56nm以下、さらに好ましくは53nm以下である。酸化チタンの結晶子サイズの上限が上記範囲内であると、得られた紙基材中でも酸化チタンの分散性が良好であり、印字均一性に優れるので好ましい。
酸化チタンの結晶子サイズは、実施例に記載の方法により測定される。
なお、結晶子サイズは、シェラー式により求められ、ブラッグ角としては、アナターゼ型の酸化チタンの場合には101面、ルチル型の酸化チタンの場合には110面に由来する最大強度の実測値を使用する。
酸化チタンは、いずれも結晶構造でもよく、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、およびブルッカイト型酸化チタンから選択される少なくとも1つであることが好ましく、入手容易性および安定性の観点から、ルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つであることがより好ましく、ルチル型酸化チタンであることがさらに好ましい。
酸化チタンの結晶形は、公知の方法で決定することができ、具体的には、ラマンスペクトル、XRDパターンの解析などにより決定することができる。例えば、ラマンスペクトルから同定する場合には、一般的には、ルチル型では、447±10cm-1、609±10cm-1にピークが確認され、アナターゼ型では、395±10cm-1、516±10cm-1、637±10cm-1にピークが確認される。
酸化チタンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
酸化チタンがルチル型酸化チタンであるとき、酸化チタンの回折角度は、一点ごとの印字鮮明性の観点から、27.60°以下であることが好ましい。ルチル型の酸化チタンのブラッグ角は、本来は27.40°であるが、結晶性が低いと、回折角度が高くなる傾向にある。酸化チタンの回折角度が27.60°を超えると、結晶性が低く、変色が抑制されるため、一点ごとの印字鮮明性に劣る傾向にある。
酸化チタンがルチル型酸化チタンであるとき、酸化チタンの回折角度は、好ましくは27.60°以下、より好ましくは27.55°以下、さらに好ましくは27.50°以下である。
酸化チタンの回折角度は、ルチル型の場合には、上述したように、110面に由来する最大強度の実測値である。
酸化チタンの形状は特に限定されず、不定形、球状、棒状、針状等の、いずれの形状であってもよい。
酸化チタンが不定形または球状である場合、酸化チタンの平均粒子径は特に限定されないが、表面平滑性に優れる印刷用紙を得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.10μm以上、よりさらに好ましくは0.15μm超、特に好ましくは0.16μm以上であり、そして、好ましくは20.0μm以下、より好ましくは5.0μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下、よりさらに好ましくは0.50μm以下、特に好ましくは0.30μm以下である。
また、酸化チタンが針状である場合、酸化チタンの長径は、特に限定されないが、表面平滑性に優れる印刷用紙を得る観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上であり、そして、好ましくは50.0μm以下、より好ましくは30.0μm以下、さらに好ましくは15.0μm以下である。また、短径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であり、そして、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。また、酸化チタンが針状である場合、アスペクト比(長径/短径)は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、そして、好ましくは300以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは30以下である。
酸化チタンの粒子径、長径および短径は、実施例に記載の方法により測定される。なお、原料として使用した酸化チタンの粒子径、長径、および短径の値を採用してもよく、原料として使用した酸化チタンの粒子径、長径、および短径のカタログ値を採用してもよい。
(パルプ)
本実施形態において、印刷用紙は、酸化チタンが内添されてなる紙基材を有する。
紙基材を構成する原料パルプとしては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、特に限定されないが、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、特に限定されないが、例えば、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、竹、バガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、特に限定されないが、例えば、古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。原料パルプは、上記の1種を単独でも2種以上混合して用いてもよい。なお、原料パルプに、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の有機合成繊維、ポリノジック繊維等の再生繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機繊維を混用してもよい。
原料パルプは、入手のしやすさという観点から、木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、原料パルプは、木材パルプの中でも、地合いの均一性の観点から、好ましくは化学パルプであり、より好ましくはクラフトパルプであり、さらに好ましくはユーカリ、アカシア等の広葉樹クラフトパルプ、およびマツ、スギ等の針葉樹クラフトパルプから選択される1種以上であり、よりさらに好ましくは広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)および針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)から選択される1種以上であり、特に好ましくはLBKPである。
紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長は、塗工ムラを抑制し、印字鮮明さを向上させる観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.65mm以上、さらに好ましくは0.7mm以上であり、そして、好ましくは3.0mm以下であり、より好ましくは2.5mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下、よりさらに好ましくは1.5mm以下、特に好ましくは1.0mm以下である。
紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が3.0mm以下であると、パルプ同士が密に絡まり合うことで、紙基材の空隙が減少し、紫外線レーザー照射の際に、酸化チタンの飛散を抑制することができ、発煙が抑制され、一点ごとの鮮明性に優れた印刷物が得られるので好ましい。また、長さ加重平均繊維長が0.5mm以上であると、紙基材としての強度が向上すると共に、紫外線レーザー照射時に、繊維が紙基材から脱落しにくく、紙粉の発生が抑制され、発煙量が抑制され、一点ごとの印字鮮明性に優れるので好ましい。
紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長は、実施例に記載の方法により測定される。
紙基材を構成するパルプの平均繊維幅は、好ましくは14.0μm以上、より好ましくは15.0μm以上、さらに好ましくは15.5μm以上、よりさらに好ましくは16.0μm以上であり、そして、好ましくは35.0μm以下、より好ましくは33.0μm以下、さらに好ましくは31.0μm以下、よりさらに好ましくは28.0μm以下、よりさらに好ましくは24.0μm以下、よりさらに好ましくは21.0μm以下である。
紙基材を構成するパルプの平均繊維幅が35.0μm以下であると、パルプ同士が密に絡まり合うことで、紙基材の空隙が減少し、紫外線レーザー照射の際に、酸化チタンの飛散を抑制することができ、発煙が抑制され、一点ごとの印字鮮明性に優れた印刷物が得られるので好ましい。また、平均繊維幅が14.0μm以上であると、紙基材としての強度が向上すると共に、紫外線レーザー照射時に、繊維が紙シート媒体から脱落しにくく、紙粉の発生が抑制され、発煙量が抑制され、一点ごとの印字鮮明性に優れるので好ましい。
紙基材を構成するパルプの平均繊維幅は、実施例に記載の方法により測定することができる。
紙基材を構成するパルプ中、繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合は、好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは6%以上、よりさらに好ましくは10%以上、特に好ましくは15%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。
微細繊維の本数割合が4%以上であると、微細繊維が繊維間の空隙を埋める形でシートに配置されるため、紫外線レーザー照射時の酸化チタンの飛散が抑制され、その結果、紫外線レーザー照射時の発煙が抑制され、一点ごとの印字鮮明性が向上するので好ましい。また、微細繊維の本数割合が40%以下であると、微細繊維の増加により、紫外線レーザー照射時に微細繊維が飛散することによる発煙が抑制され、一点ごとの印字鮮明性が向上するので好ましい。
紙基材を構成する繊維のパルプ中、繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合は、紙基材を実施例に記載の方法にて離解し、得られたパルプスラリーの繊維長を繊維長測定器(例えば、バルメット社製、型式FS-5、UHDベースユニット付き)にて測定して、算出する。繊維長が0.2mm以下であり、かつ、繊維幅が75μm以下の繊維を微細繊維とし、測定したパルプの本数に対する、微細繊維の本数割合を算出する。
紙基材に用いられる木材パルプのカナダ標準ろ水度(Canadian Standard Freeness;CSF)は、所望の繊維幅および繊維長を得る観点から、好ましくは150mL以上、より好ましくは300mL以上、さらに好ましくは400mL以上であり、そして、好ましくは800mL以下、より好ましくは750mL以下、さらに好ましくは700mL以下、よりさらに好ましくは600mL以下である。
ここで、CSFは、JIS P 8121-2:2012によるカナダ標準ろ水度のことである。
紙基材は、上述した酸化チタンに加え、必要に応じて内添剤を添加したパルプスラリーを抄紙することにより得られる。
紙基材には、上述したパルプおよび酸化チタンに加え、填料、サイズ剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤(例えば、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン)、歩留向上剤(例えば、硫酸バンド)、濾水性向上剤、pH調整剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、染料・顔料等の公知の抄紙用内添剤を必要に応じて添加することができる。
填料としては、例えば、カオリン、タルク、酸化チタン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネーテッドカオリン、珪藻土、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等を例示することができる。
サイズ剤としては、例えば、ロジン系、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン-アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系サイズ剤などが挙げられる。
紙基材の抄紙においては、公知の湿式抄紙機、例えば長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の抄紙機を適宜選択して使用することができる。次に、抄紙機によって形成された紙層をフェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させる。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。
また、上記のようにして得られた紙基材に、カレンダーによる表面処理を施して厚さやプロファイルの均一化を図り、印刷適性の向上を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。
紙基材は、単層であっても多層であってもよく、異なるパルプ組成の多層構成としてもよい。
紙基材の坪量は、印刷用紙としての強度、および印刷適性向上の観点から、好ましくは30g/m以上、より好ましくは40g/m以上、さらに好ましくは50g/m以上であり、そして、好ましくは1000g/m以下、より好ましくは700g/m以下である。
坪量はJIS P 8124:2011に規定される方法で測定する。
紙基材の厚さは特に限定されないが、印刷用紙としての強度、および印刷適性向上の観点から、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは70μm以上、よりさらに好ましくは80μm以上であり、そして、好ましくは900μm以下、より好ましくは850μm以下であり、さらに好ましくは800μm以下である。
紙基材の厚さはJIS P 8118:2014記載の方法で測定することができる。
〔シーラント層〕
本実施形態の印刷用紙は、紙基材の少なくとも一方の面にシーラント層を有する。シーラント層は、加熱、超音波等で溶融し、接着する層である。本実施形態の印刷用紙は、シーラント層を紙基材の両方の面に有していてもよい。また、ヒートシール性を付与する観点から、少なくとも一方の面の最上層にシーラント層を有しており、シーラント層が一方の面に2層以上形成されていてもよい。なお、シーラント層は、少なくとも紙基材の印刷を行う面と反対面に有することが好ましく、印刷を行う面とは反対側の面にも設けられていてもよい。
なお、上述したように、シーラント層は、紙基材の一面に有していてもよいが、ヒートシール性が必要とされる一部分に有していてもよい。
シーラント層を構成する樹脂(以下、「シーラント層用樹脂」とも称する)としては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂(例えば、スチレン-アクリル酸共重合体)、エチレンアクリル樹脂(エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体)、およびこれらの変性物等が挙げられる。シーラント層用樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
シーラント層用樹脂としては、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては、実施例で使用しているもの等を使用することができる。
シーラント層は、溶融押出、接着剤等により積層して形成してもよく、シーラント層用の塗工液を作製して該塗工液を塗工することにより形成する方法が例示される。接着剤としては、公知の接着剤を使用することができる。なお、シーラント層を二層以上形成してもよい。なお、シーラント層を、シーラント層用樹脂フィルムを接着剤等によりラミネートする場合には、当該樹脂フィルムは、未延伸であってもよく、一軸または二軸延伸されていてもよい。
シーラント層を積層して形成する場合、シーラント層用樹脂としては、これらの中でも、ヒートシール性およびガスバリア性の観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリ塩化ビニリデン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、ポリオレフィン樹脂を含むことがより好ましく、ポリオレフィン樹脂であることがさらに好ましい。
また、シーラント層が2種以上の層からなる積層シーラント層である場合、ヒートシール性の観点から、紙基材層と反対面がポリオレフィン樹脂層であることが好ましく、ポリエチレン樹脂層であることがより好ましい。
ポリオレフィン樹脂は、ヒートシール性およびガスバリア性の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン-プロピレン共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ポリエチレンおよびポリプロピレンの少なくとも一方であることがさらに好ましい。
なお、ポリエチレンは、低密度ポリエチレン(LDPE)でもよく、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)でもよく、中密度ポリエチレン(MDPE)でもよく、高密度ポリエチレン(HDPE)でもよい。
ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612などが例示される。
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やこれらの誘導体などが例示される。
なお、後述する生分解性樹脂の多くはポリエステル樹脂にも該当する。
ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)は、塩素を含むビニリデン基を重合させた合成樹脂であり、塩化ビニル、アクリロニトリル等との共重合体であってもよい。
生分解性樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、3-ヒドロキシブタン酸・3-ヒドロキシヘキサン酸共重合体(PHBH)等が例示され、これらの中でも、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)が好ましく、ポリブチレンサクシネート(PBS)がより好ましい。
シーラント層として、2種以上の樹脂が積層された、積層フィルムを使用してもよく、例えば、ポリエチレン/ポリプロピレン積層フィルム、ポリアミド樹脂/ポリ塩化ビニリデン樹脂積層フィルム、ポリエチレン/ポリエステル樹脂積層フィルム等が例示される。
接着剤を用いてシーラント層や後述するバリア層を貼り合わせる場合、使用する接着剤としては特に限定されず、無溶剤型、有機溶剤型、水系型などのいずれでもよいが、紙基材の形状安定性を確保する観点から、有機溶剤型の接着剤、または無溶剤型の接着剤を使用することが好ましい。
接着剤を構成する主成分としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、天然ゴム、カゼイン、澱粉等が例示される。これらの中でも、入手容易性および良好な接着性が得られる観点から、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンが好ましく、ポリウレタンがより好ましい。
接着剤としては、市販されている接着剤を適宜使用してもよく、例えば、ニッポランID-816(東ソー株式会社製)とHARDENER300(東ソー株式会社製)との組み合わせ、ディックドライLX-500(DIC株式会社製)とディックドライKW-75(DIC株式会社製)との組み合わせが例示される。
なお、シーラント層やバリア層に接着剤を塗布後に、シーラント層やバリア層と紙基材とを積層してもよく、紙基材に接着剤を塗布後に、紙基材とシーラント層やバリア層とを積層してもよく、また、シーラント層やバリア層と紙基材との両方に接着剤を塗布後に、両者を積層してもよく、特に限定されないが、形状安定性の観点から、シーラント層やバリア層に接着剤を塗布後に、紙基材を積層することが好ましい。
接着剤の塗布方法としては、従来公知の方法の中から適宜選択すればよく、特に限定されないが、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター、スプレーコーターなどが例示される。
接着剤の付与量は特に限定されないが、乾燥後の付与量(塗工量)は、シーラント層やバリア層と紙基材層との密着性を高める観点から、好ましくは1g/m以上、より好ましくは2g/m以上、さらに好ましくは3g/m以上であり、そして、好ましくは40g/m以下、より好ましくは20g/m以下、さらに好ましくは10g/m以下である。
塗工液によりシーラント層を形成する場合、シーラント層用樹脂としては、ヒートシール性を有するものであれば特に制限されないが、スチレン-ブタジエン共重合体;エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体等のオレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体;生分解性樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル共重合体、スチレン-メタクリル共重合体等のアクリル系樹脂から選ばれる1種以上であることがより好ましい。
これらの中でも、スチレン-アクリル酸共重合体およびオレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体から選ばれる1種以上であることがさらに好ましい。本明細書においては、アクリル系樹脂には、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体が含まれないものとする。
オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体は、不飽和カルボン酸系単量体由来のカルボキシ基が、アルカリ金属水酸化物、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミン等で一部あるいは全部中和されている塩であってもよい。
オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体のオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン等が挙げられる。これらは、1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。これら中でも、エチレンが好ましい。
オレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体の不飽和カルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸等の不飽和カルボン酸;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル等の、少なくとも1個のカルボキシ基を有する不飽和ポリカルボン酸アルキルエステル;アクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリル酸スルホエチルナトリウム塩、メタクリル酸スルホプロピルナトリウム塩等の不飽和スルホン酸単量体またはその塩;などが挙げられる。これらは、1種類であってもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、不飽和カルボン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸がより好ましく、アクリル酸が特に好ましい。
従って、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体としては、エチレン-アクリル酸共重合体およびエチレン-メタクリル酸共重合体の少なくとも一方であることが好ましい。
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体は、エチレンと前記不飽和カルボン酸系単量体とを乳化重合することによって得ることが好ましい。エチレン-不飽和カルボン酸系共重合体としては、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体が好ましい。本発明の効果を損なわない程度であれば、共重合体には、エチレンおよび不飽和カルボン酸系単量体と共重合可能なその他の化合物からなる単量体が共重合されていてもよい。
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の具体例としては、ザイクセン(登録商標)A,ザイクセン(登録商標)AC(以上、住友精化株式会社製)、ケミパールSシリーズ(三井化学株式会社製)、MFHS1279、MP498345N、MP4983R、MP4990R(以上、マイケルマン合同会社製)等が挙げられる。
生分解性樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)から選ばれる1種以上であることが好ましく、ポリ乳酸およびポリブチレンサクシネートから選ばれる1種以上であることがより好ましく、ポリ乳酸であることが特に好ましい。紙基材を用いた包装材料等は、樹脂フィルムからなる包装材料等と比べて環境負荷の低減という利点を有しているが、本実施形態におけるシーラント層として生分解性樹脂を用いることによって、より一層環境負荷を低減させることができる。
ポリ乳酸は、市販品、合成品のいずれを使用してもよい。市販品としては、例えばランディPL-1000、ランディPL-3000(ポリ乳酸の水性分散液、ミヨシ油脂株式会社製)等が挙げられる。
シーラント層を塗工により設ける場合、シーラント層用塗工液は、シーラント層用樹脂(水懸濁性高分子)に加えて、滑剤、顔料、消泡剤、粘度調整剤、界面活性剤、レベリング剤、着色剤などを含有していてもよい。
なお、これらの他の成分は、ヒートシール性を悪化させる傾向があることから、他の成分の含有量の合計は、シーラント層の固形分中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
シーラント層用塗工液の固形分中のシーラント層用樹脂の含有量は、高いヒートシール剥離強度を得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましく70質量%以上である。
シーラント層用塗工液の塗工に使用する装置は、特に限定されず、一般に使用されている塗工装置から適宜選択して使用すればよい。例えば、エアナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、メイヤーバーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、メータリングブレード式のサイズプレスコーター、ショートドウェルコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、リップコーター等の公知の各種塗工装置が挙げられる。
シーラント層の乾燥条件は、特に限定されないが、乾燥温度は、好ましくは50~120℃であり、乾燥時間は、好ましくは5~120秒である。
塗工したシーラント層を乾燥するための乾燥設備としては、特に限定されず、公知の設備を用いることができる。乾燥設備としては、例えば、熱風乾燥機、赤外線乾燥機、防爆乾燥機、熱板等が挙げられる。
シーラント層の付与量は、ヒートシール剥離強度の観点から、好ましくは1g/m以上、より好ましくは2g/m以上であり、そして、好ましくは30g/m以下、より好ましくは20g/m以下である。なお、印刷用紙が2層以上のシーラント層を有する場合には、合計した付与量が上記範囲であることが好ましい。
〔バリア層〕
本実施形態の印刷用紙は、紙基材とシーラント層との間に、バリア層を有することが好ましい。
バリア層は、主として酸素ガスの透過を阻止する機能を有する層である。バリア層は、水懸濁性高分子および水溶性高分子よりなる群から選択される高分子を含有する塗工液を塗布することによって形成してもよく、バリア性を有する樹脂を溶融押出、接着剤等により積層して形成してもよく、金属蒸着層および無機蒸着層よりなる群から選択される蒸着層を形成してもよく、金属蒸着層および無機蒸着層よりなる群から選択される蒸着層を有する樹脂フィルムを積層して形成してもよい。
(水懸濁性高分子)
本実施形態において、バリア層で使用する水懸濁性高分子とは、25℃の水に対する溶解度が10g/L以下である高分子である。本実施形態において、水懸濁性高分子は、エマルション中に分散している高分子(粒子)に由来するものであることが好ましい。
バリア層で使用する水懸濁性高分子および水溶性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ポリカルボン酸系樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。水懸濁性高分子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、水懸濁性高分子は、ウレタン系樹脂および塩化ビニリデン系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの樹脂を用いてバリア層を形成することで、優れたガスバリア性(酸素バリア性)を発揮することができる。
ウレタン系樹脂は、公知の製造方法によって製造することができる。例えば、ウレタン系樹脂は、ポリイソシアネート化合物(例えばジイソシアネート化合物)と、ポリヒドロキシ酸(例えばジヒドロキシ酸)との反応により得ることができる。また、例えば、上記ポリイソシアネート化合物およびポリヒドロキシ酸に加えて、ポリオール化合物(例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール)および/または鎖伸長剤との反応により得ることもできる。
ウレタン系樹脂は、メタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位および水添メタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。このようなウレタン系樹脂は、水素結合およびキシリレン基同士のスタッキング効果によって高い凝集力を発現するため、バリア層は優れたガスバリア性を発揮しやすくなる。メタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位とは、ウレタン系樹脂において、メタキシリレンジイソシアネートが反応したモノマーユニットを指す。水添メタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位およびポリイソシアネート由来の構成単位についても同様である。モノマーユニットとは、ポリマー中のモノマー物質が反応した形態をいう。
ウレタン系樹脂において、メタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位および水添メタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位の合計モル%は、ウレタン系樹脂中のポリイソシアネート由来の構成単位全量に対して50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。上限は特に制限されないが、好ましくは95モル%以下であり、より好ましくは90モル%以下である。構成単位のモル%はH-NMRなどの公知の分析手法を用いて同定することができる。
ウレタン系樹脂は、ヒドロキシ基を有していてもよく、その水酸基価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、さらに好ましくは150mgKOH/g以上である。なお、水酸基価の上限は特に限定されないが、好ましくは1000mgKOH/g以下、より好ましくは800mgKOH/g以下、さらに好ましくは600mgKOH/g以下である。ウレタン系樹脂の水酸基価が上記範囲内であると、バリア層は酸素バリア性を発揮しやすくなる。また、ウレタン系樹脂の水酸基価を上記範囲内とすることにより、バリア層の熱融着性を高めることができ、その結果、印刷用紙のヒートシール性を高めることもできる。
水酸基価の測定はJIS K0070-1992に準じて実施し、試料1gをアセチル化させたとき,水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数を測定する。
ウレタン系樹脂は、25μm厚のシートに換算した際の23℃、相対湿度50%における酸素透過度が、100.0mL/(m・day・atm)以下であることが好ましく、50.0mL/(m・day・atm)以下であることがより好ましく、25.0mL/(m・day・atm)以下であることがさらに好ましく、10.0mL/(m・day・atm)以下であることがよりさらに好ましく、3.0mL/(m・day・atm)以下であることが特に好ましい。なお、25μm厚のシートに換算した際の23℃、相対湿度50%における酸素透過度は0mL/(m・day・atm)であってもよい。
なお、25μm厚のシートに換算した際の酸素透過度は、対象のウレタン系樹脂を用いて厚さ25μmのシートを形成し、該シートを用いて測定した酸素透過度を示す。本明細書において、上記シートの酸素透過度は、酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/22)を使用し、23℃、相対湿度50%の条件にて測定される。
ウレタン系樹脂のガラス転移温度は、150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、135℃以下であることが特に好ましい。なお、ウレタン系樹脂のガラス転移温度は、JIS K 7122:2012に準拠して測定される。
ウレタン系樹脂としては、合成品を使用してもよく、合成品としては例えば国際公開第2015/016069号に記載のウレタン系樹脂等を挙げることができる。また、ウレタン系樹脂としては、市販品を使用してもよく、例えば、三井化学株式会社製の「タケラックW系(商品名)」、「タケラックWPB系(商品名)」、「タケラックWS系(商品名)」等が挙げられ、具体的には、タケラックWPB-341が例示される。その他の市販品としては、大日精化工業株式会社の「HPU W-003」(水酸基価235mgKOH/g)等が挙げられる。
塩化ビニリデン系樹脂は、公知の製造方法によって製造することができる。例えば、塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデンの単独重合体(ポリ塩化ビニリデン、PVDC)や、塩化ビニリデンおよび塩化ビニリデンと共重合可能な単量体の共重合体などにより得ることができる。塩化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、特に限定されないが、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロニトリル、イソブチレン、酢酸ビニルなどが挙げられる。
塩化ビニリデン系樹脂としては、市販品を使用してもよく、例えば、旭化成株式会社製の「サランラテックスL549B」や、Solvay社製のDiofan B204等が挙げられる。
水懸濁性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1000以上20000000以下、より好ましくは5000以上5000000以下である。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算値を採用するものとする。
エマルション中の水懸濁性高分子の平均粒子径は、好ましくは0.001μm以上100μm以下、より好ましくは0.01μm以上10μm以下である。なお、平均粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。
(水溶性高分子)
水溶性高分子とは、水に溶解可能な樹脂である。水に溶解可能な樹脂とは、骨格となるポリマーが25℃の水に対する溶解度が10g/Lを超える高分子である。
水溶性高分子の骨格となるポリマーとしては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプンおよびその誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カゼイン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性向上の観点から、水溶性高分子は、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、より好ましくは変性ポリビニルアルコールである。
変性ポリビニルアルコールとしては、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、変性ポリビニルアルコールは、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、およびアセトアセチル変性ポリビニルアルコールよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、エチレン変性ポリビニルアルコール、およびカルボキシ変性ポリビニルアルコールよりなる群から選ばれる1種以上であることがより好ましく、エチレン変性ポリビニルアルコールであることがさらに好ましい。
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールには、完全ケン化型物および部分ケン型物があるが、完全ケン化型であることが好ましい。完全ケン化とは、ケン化度が96%超であることを意味する。なお、ケン化度は、JIS K 6726:1994に準拠した方法で測定される値である。
水溶性高分子として市販品を用いてもよく、例えば、変性ポリビニルアルコールとして、株式会社クラレ製の「エクセバール(商品名)」等が挙げられる。
バリア層中の水懸濁性高分子および水溶性高分子の含有量は、バリア性向上の観点から、バリア層の固形分中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、よりさらに好ましくは60質量%以上であり、そして、その上限は、100質量%である。
なお、バリア層用塗工液を紙基材に塗工することでバリア層を形成してもよく、予めバリア層用塗工液を塗工した樹脂フィルムを積層することによって、バリア層を形成してもよい。また、前記樹脂フィルムがシーラント層であってもよい。
バリア層を塗工により形成する場合、上記の水懸濁性高分子および水溶性高分子から選択される少なくとも1つに加えて、層状無機化合物を含有させることが好ましい。すなわち、バリア層が水懸濁性高分子および層状無機化合物を含有するか、または、水溶性高分子および層状無機化合物を含有することが好ましい。バリア層に層状無機化合物を含有させることで、バリア性をさらに高める(酸素透過度をさらに低減する)ことができる。
層状無機化合物の平均長さは、好ましくは1μm以上100μm以下、より好ましくは2μm以上50μm以下、さらに好ましくは3μm以上20μm以下である。ここで、層状無機化合物の平均長さとは、層状無機化合物の平面方向における長軸の平均長さである。平均長さが1μm以上であると、バリア層中における層状無機化合物が紙支持体に対して平行に配列し易くなる。また、平均長さが100μm以下であると層状無機化合物の一部がバリア層から突出する懸念が少なくなる。
層状無機化合物のアスペクト比は、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上、よりさらに好ましくは800以上である。なお、層状無機化合物のアスペクト比の上限値は特に限定されるものではないが、好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下、さらに好ましくは2000以下である。
層状無機化合物のアスペクト比が上記範囲内であると、バリア性が向上すると共に、バリア層の塗工量を低減し、印刷用紙のリサイクル性や軽量性を高めることができる。
ここで、アスペクト比とは、バリア層の断面の顕微鏡拡大写真から算出される値であって、層状無機化合物の長さをその厚さで除した値の平均値(サンプル20~30個の相加平均値)である。
層状無機化合物の厚さは、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。なお、層状無機化合物の厚さの下限値は特に限定されるものではないが、好ましくは2nm以上である。ここで、層状無機化合物の厚さとは、バリア層の断面の顕微鏡拡大写真から測定される層状無機化合物の平均厚さ(サンプル20~30個の相加平均値)である。なお、層状無機化合物の長軸に垂直な方向を厚さとする。
層状無機化合物の平均厚さを上記範囲内とすることにより、バリア層中における層状無機化合物の積層数が大きくなるため、バリア層はより高い酸素バリア性を発揮することができる。特に、アスペクト比が大きくかつ厚さの小さい層状無機化合物を用いると、バリア層は、空隙のない稠密な膜を形成する。これは、バリア層の断面の顕微鏡拡大写真からも観察できる現象である。
層状無機化合物の具体例としては、雲母族、脆雲母族等のマイカ、ベントナイト、カオリナイト(カオリン鉱物、以下「カオリン」とも称する)、パイロフィライト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、緑泥石、セプテ緑泥石、蛇紋石、スチルプノメレーン、モンモリロナイトなどが挙げられる。これらの中でも特に、水蒸気バリア性を向上させる観点から、層状無機化合物は、マイカ、ベントナイトおよびカオリンよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、マイカおよびカオリンから選択される少なくとも1種であることより好ましい。マイカとしては、合成マイカ、白雲母(マスコバイト)、絹雲母(セリサイト)、金雲母(フロコパイト)、黒雲母(バイオタイト)、フッ素金雲母(人造雲母)、紅マイカ、ソーダマイカ、バナジンマイカ、イライト、チンマイカ、パラゴナイト、ブリトル雲母などが挙げられる。中でも、高いアスペクト比を有することから、マイカとしては膨潤性マイカが好ましい。また、カオリンは、天然物であっても合成物(エンジニアードカオリン)であってもよい。
これらの中でも、マイカ、ベントナイトおよびカオリンよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、マイカおよびカオリンから選択される少なくとも1種であることがより好ましい。バリア層が上述したような層状無機化合物を含有することで、高湿度条件下における印刷用紙のバリア性をより効果的に高めることができる。
層状無機化合物をバリア層に含有させる場合、層状無機化合物の含有量は、特に限定されないが、バリア層中の水懸濁性高分子または水溶性高分子100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上500質量部以下、より好ましくは1質量部以上300質量部以下、さらに好ましくは2質量部以上200質量部以下、よりさらに好ましくは5質量部以上150質量部以下、特に好ましくは10質量部以上70質量部以下である。層状無機化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、高湿度条件下における印刷用紙のバリア性をより効果的に高めることができる。
バリア層は、水懸濁性高分子および水溶性高分子から選択される少なくとも1つと層状無機化合物の他に、顔料、分散剤、界面活性剤、消泡剤、濡れ剤、染料、色合い調整剤、増粘剤などを含有してもよい。
バリア層を塗工により設ける場合、バリア層用塗工液の塗工量は、固形分として、好ましくは0.1g/m以上10g/m以下、より好ましくは0.5g/m以上5g/m以下である。
(バリア性を有する樹脂)
バリア層を、バリア性を有する樹脂を溶融押出、接着剤等により積層して形成する場合、バリア性を有する樹脂としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、MXナイロンが例示される。
EVOHとしては、上市されている製品を使用してもよく、例えば、クラレ株式会社製のエバールシリーズが例示される。
また、MXナイロンとしては、三菱ガス化学株式会社製のMXD6が例示される。
(蒸着層)
バリア層として、紙基材に直接、蒸着層を形成してもよく、また、蒸着層を形成した樹脂フィルムを積層してバリア層を形成してもよい。
なお、蒸着層は、金属蒸着層および無機蒸着層よりなる群から選択される。
金属蒸着層の蒸着金属としては、アルミニウム(Al)が例示される。また、無機蒸着層蒸着する無機化合物としては、シリカ(SiOx)、アルミナ(AlOx)が例示できる。
金属蒸着層の厚さは、所望のバリア性が得られる範囲で特に限定されない。
バリア層として、蒸着層を設けた樹脂フィルムに接着剤を塗布し、紙基材と積層するしてもよい。
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂フィルム、各種ナイロン等のポリアミド系樹脂フィルム、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリブデン樹脂フィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレイト樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデンフィルム、アセタール系樹脂フィルム、フッ素系樹脂、等が挙げられ、特に、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、または、ポリアミド系樹脂が好ましい。
〔樹脂層〕
本実施形態の印刷用紙は、印刷用紙の耐水性を向上させる観点、また、保護層としての機能を目的として、紙基材上に、さらに樹脂層を有していてもよい。すなわち、紙基材の上に、さらに予め樹脂層が設けられた印刷用紙を使用してもよい。
樹脂層の全光線透過率は、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましく70%以上、よりさらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上であり、そして、100%以下である。上限は特に限定されない。
全光線透過率は、JIS K 7361-1:1997に準拠して測定される。
樹脂層を構成する樹脂は、全光線透過率が好ましくは40%以上であり、紙基材上に設けることができれば特に限定されないが、透明性および樹脂層を設けることが容易である観点から、樹脂層と紙基材とを接着剤層とを介して貼付するか、またはラミネート加工により積層する場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、およびデンプンから選択される少なくとも1つであることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、およびポリビニルアルコールから選択される少なくとも1つであることがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンであることがさらに好ましく、ポリエチレンであることが特に好ましい。
また、樹脂層を塗工により設ける場合には、アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂などが例示される。
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸と、そのアルキルエステル、スチレン、(メタ)アクリル酸以外の不飽和カルボン酸、エチレン、プロピレン等のその他のモノマーとを共重合した樹脂が例示され、具体的には、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸-マレイン酸樹脂などが例示され、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。
樹脂層と紙基材とは、いずれの方法により積層されていてもよく、特に限定されないが、製造容易性の観点から、樹脂層と紙基材とを接着剤層とを介して貼付するか、またはラミネート加工するか、透明塗料を液状塗料の形で塗工することが好ましい。
局所的に樹脂層を設ける場合には、製造容易性の観点から、接着剤を介して貼付することが好ましい。また、広範囲に樹脂層を設ける場合には、ラミネート加工することが好ましい。
なお、接着剤層としては特に限定されず、公知の接着剤層から適宜選択して用いればよい。具体的には、特開2012-57112号公報の粘着剤層が例示される。
樹脂層の厚さは特に限定されないが、鮮明な印字を得る観点、および印刷物および印刷用紙のハンドリング性の観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
[印刷物および印刷物の製造方法]
本実施形態の印刷物は、上述した紫外線レーザー印刷用紙から得られた印刷物であって、少なくとも一部に、変色された酸化チタンを有する印刷領域を有する。非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、前記印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度の比は、0.70以下であることが好ましい。また、前記変色された酸化チタンを有する印刷領域は、紫外線レーザーの照射により変色した酸化チタンを含有する領域であり、紫外線レーザー照射領域、すなわち、印刷領域である。
また、本実施形態の印刷物の製造方法は、上述した印刷用紙に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有する。
本実施形態の印刷物の製造方法に使用される印刷用紙としては、上述した印刷用紙が例示され、好ましい範囲も同様である。また、本実施形態の印刷物の製造方法において、少なくとも紫外線レーザー照射領域の紙基材中の酸化チタンの含有量が0.5質量%以上であり、酸化チタンの結晶子サイズが30nm以上であればよく、非照射領域の紙基材が上記の要件を満たしていなくてもよい。
紫外線レーザーの照射は、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下となるように、紫外線レーザーを照射することが好ましい。すなわち、本実施形態の印刷物において、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度の比は、0.70以下であることが好ましい。
なお、印刷物において、印刷領域とは、印刷可能領域において、変色された酸化チタンを含有する領域(部分)を意味し、紫外線レーザーにより印刷された領域(部分)である。非印刷領域とは、印刷可能領域において印刷されていない領域(部分)を意味する。また、印刷可能領域とは、紫外線レーザー印刷用紙または印刷物において、紫外線レーザーによる印刷が可能な領域と、存在する場合は紫外線レーザーにより印刷された領域(部分)とを合わせた酸化チタンを含有する領域全体を意味し、非印刷可能領域とは、紫外線レーザー印刷用紙または印刷物における印刷可能領域以外の領域を意味する。
印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比(印刷領域のラマン強度/非印刷領域のラマン強度)が、0.70以下であるように印刷することが好ましい。ラマン強度の比を上記範囲内とすることにより、視認性に優れる印刷物が得られる。
上記のラマン強度の比(印刷領域のラマン強度/非印刷領域のラマン強度)は、酸化チタンとしてルチル型の酸化チタンを使用した場合には、酸化チタンに由来するラマン強度として、447±10cm-1の波数範囲の最大値のラマン強度を対比する。また、酸化チタンとしてアナターゼ型の酸化チタンを使用する場合には、酸化チタンに由来するラマン強度として、516±10cm-1の波数範囲の最大値のラマン強度を対比する。
なお、ルチル型の酸化チタンとアナターゼ型の酸化チタンが共存する場合には、ルチル型の酸化チタンに由来するラマン強度で対比することとする。
本実施形態で得られる印刷物は、非印刷領域が白色であり、印刷領域が黒色であることが好ましい。
非印刷領域は、マンセル表色系における明度が10番、すなわち、白色であることが好ましい。一方、印刷領域は、マンセル表色系における0番~8番のいずれかであることが好ましく、0~6番であることがより好ましく、0~4番であることがさらに好ましい。
上記のマンセル表色系における色を得るために、印刷用紙における紙基材中の酸化チタンの種類や含有量、紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長、その他の特性(紙基材を構成するパルプの保水度、微細繊維量、繊維幅等)、紫外線レーザーの照射条件(例えば、平均出力、繰返し周波数、波長など)を適宜調整することが好ましい。
〔紫外線レーザーの照射条件〕
紫外線レーザーの波長としては、印刷領域の視認性を向上させる観点から、好ましくは370nm以下、より好ましくは365nm以下、さらに好ましくは360nm以下であり、そして、好ましくは260nm以上、より好ましくは340nm以上、さらに好ましくは350nm以上である。
紫外線レーザーの平均出力は、印刷領域の視認性を向上させる観点から、好ましくは0.3W以上、より好ましくは0.8W以上、さらに好ましくは1.2W以上、よりさらに好ましくは1.8W以上であり、そして、経済性の観点から、好ましくは30W以下、より好ましくは25W以下、さらに好ましくは20W以下、よりさらに好ましくは15W以下、よりさらに好ましくは10W以下、よりさらに好ましくは6W以下である。
紫外線レーザーの繰返周波数(周波数)は、印刷領域の視認性を向上させる観点から、好ましくは10kHz以上、より好ましくは20kHz以上、さらに好ましくは30kHz以上であり、そして、好ましくは100kHz以下、より好ましくは80kHz以下、さらに好ましくは60kHz以下である。
紫外線レーザーのスポット径は、鮮明な画像を得る観点および印刷容易性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは240μm以下、さらに好ましくは180μm以下、さらに好ましくは120μm以下である。
紫外線レーザーのスキャンスピードは、高速印刷および印刷領域の視認性の観点から、好ましくは500mm/sec以上、より好ましくは1000mm/sec以上、さらに好ましくは2000mm/sec以上であり、そして、好ましくは7000mm/sec以下、より好ましくは6000mm/sec以下、さらに好ましくは5000mm/sec以下である。
紫外線レーザーの塗りつぶし間隔(ラインピッチ)は、鮮明な画像を得る観点、および装置の入手容易性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。
〔印刷物の製造方法の態様〕
本発明の印刷物の製造方法は、種々の態様で行うことができる。
以下に、本実施形態の印刷物の製造方法が適用可能な種々な態様について例示するが、本実施形態の印刷物の製造方法は、下記の態様に限定されるものではない。印刷する情報は特に限定されないが、可変情報であることが好ましい。
本実施形態の印刷物の製造方法は、インラインで行われることが好ましい。
(1)包装体への直接印刷
本実施形態の印刷物の製造方法の第一の実施態様は、本実施形態の印刷用紙を有する包装体に情報を印刷する方法であって、梱包ライン上を移動中、または間欠停止中の包装体に直接紫外線レーザーにて印刷する工程を有する。
第一の印刷物の製造方法は、本実施形態の紫外線レーザー印刷用紙にて包装体を作製し、紫外線レーザーにて直接印刷する。なお、少なくとも包装体の印刷される領域の最外層が、前記の印刷用紙にて作製されていればよい。
また、包装体としては、段ボール、箱等が例示され、該包装体の側面または上面に紫外線レーザーにて直接印刷することが好ましい。
(2)ラベルへの印刷
本実施形態の印刷物の製造方法の第二の実施態様は、本実施形態の印刷用紙を有するラベルに情報を印刷する方法である。該ラベルの印刷面を構成する印刷用紙が、本実施形態の印刷用紙である。
印刷されたラベルは、ラベル貼り付け装置を用いて包装体に貼付することが好ましい。ラベル貼り付け装置としては、各種のラベル貼り付け装置が提案されている。
第1のラベル貼り付け装置としては、ロール状に巻いたラベル原紙に接着剤を付与した後に物品に貼付する。より具体的には、ロール状に巻いたラベル原紙を1枚ずつ所定の長さに切断する切断手段と、この切断手段によって切断されたラベル原紙を、接着剤が塗布されたラベル原紙保持体によって受取り、このラベル原紙の裏面に接着剤を付着させる糊付け搬送手段と、この糊付け搬送手段から接着剤が付与されたラベル原紙(ラベル)を受け取って容器等の物品に貼付ける貼着手段とを備えたロールラベラにおいて、上記切断手段と糊付け搬送手段との間に、外面にラベル保持面を有する回転搬送手段を設けたロールラベラが例示され、特開平6-64637号公報が例示される。
また、ロール状に巻いたラベル原紙を一枚ずつ所定の長さに切断する切断手段と、貼付ロールに受け渡す受渡ロールと、貼付ロールに保持されたラベル原紙に糊を付与する糊付けロールとを有するロールラベラや、前記受渡ロールを不要とした態様が例示される。
紫外線レーザーの照射は、ロール状に巻いたラベル原紙を所定の長さに切断する前、または切断後であって次のロール等への受け渡し前であることが好ましい。ロールラベラの態様に合わせて、ロール状に巻いたラベル原紙の表面または裏面が、包装体に貼付した際の表面または裏面となるため、これに合わせて紫外線レーザーの照射を行う。
第2のラベル貼り付け装置は、ラベルとして、粘着ラベルロールを使用する。
剥離紙付きの粘着ラベルロールを使用する場合には、例えば、粘着ラベルと剥離紙を分離する剥離紙分離手段と、剥離紙が分離された粘着ラベルを受け取る受渡ロールと、受渡ロールから粘着ラベルを吸引して、物品(包装体)に貼付する貼付ロールとを有する貼り付け装置が例示される。紫外線レーザーによる照射は、剥離紙を分離する前、または剥離紙分離後であって貼付ロールに担持される前に行うことが好ましい。
また、剥離紙付きの粘着ラベルロールをセットし、粘着ラベルと剥離紙とを分離する機構を有し、分離直後にラベルを貼付する機構を有し、セットされた粘着ラベルロールから剥離紙を分離するまでの間に紫外線レーザーにより印刷する装置が例示される。上記の粘着ラベルの貼付方法は、流し貼りとも呼ばれる。
さらに、剥離紙付きの粘着ラベルロールをセットし、粘着ラベルから剥離紙を分離する機構を有し、粘着ラベルを物品(包装体)に貼付する機構を有し、前記貼付する機構が、シリンジ方式、エアジェット方式、またはロボットアーム方式であるラベル貼り付け装置が例示される。紫外線レーザーによる照射は、セットされた剥離紙付きの粘着ラベルロールから、剥離紙を分離するまでの間で行われることが好ましい。
ラベルとして、ライナレス粘着ラベルを使用してもよい。ライナレス粘着ラベルは、剥離紙のないラベルであり、剥離紙付きの粘着ラベルロールを使用する場合に比して、1ロールのラベル枚数が多く、剥離紙が存在しないため、安価であるという特徴を有する。
ライナレス粘着ラベルを使用したラベル貼り付け装置としては、ライナレスラベルロールをセットする機構と、ライナレスラベルを1枚ずつに切断する切断機構と、切断されたライナレスラベルを物品(包装体)に貼付する貼付機構を有し、前記貼付機構が、シリンダー方式またはロボットアーム方式である装置が例示される。紫外線レーザーの照射による印刷は、ライナレスラベルロールをセットする機構から切断機構までの間、または、切断されたライナレスラベルが貼付機構に送られる間であることが好ましい。
第3のラベル貼り付け装置は、本実施形態の印刷用紙を物品(包装体)に貼付した後に、紫外線レーザーにて印刷する。
ラベルの貼付の方法としては、上述した第1の装置および第2の装置が参照される。
(3)粘着テープへの印刷
本実施形態の印刷物の製造方法の第三の実施態様は、印刷用紙を粘着テープとする態様である。
すなわち、第三の実施態様の印刷物の製造方法は、前記印刷用紙から作製された粘着テープを物品(包装体)に貼付する工程を有し、前記貼付する工程の前、または貼付する工程の後に、紫外線レーザーにより印刷する工程を有する。
また、段ボール封緘機に紫外線レーザーによる印字装置を組み込んだ印刷装置を使用してもよい。具体的には、粘着テープ巻取りをセットする機構と、段ボールを搬送用のコンベアを有し、段ボールのフラップを折り込む機構と、粘着テープを貼付して段ボールを封緘する機構を有し、粘着テープを貼付する間、または貼付した後に、粘着テープに紫外線レーザーにて印刷する機構を有する。
本実施形態の印刷物の製造方法は、上記の態様に限定されるものではなく、印刷が求められる各種用途に応用可能である。
本実施形態において、前記印刷物の製造方法により得られる印刷物は、包装体、ラベル、または粘着テープなどに好適に使用される。
包装体としては、外装箱、牛乳パック、紙カップ等の飲料用の液体容器(好ましくは飲料用の液体紙容器)、スキンパックが例示され、ラベルとしては、ラベル原紙、粘着ラベル、粘着シートが例示され、粘着テープとしては、粘着テープ、クラフトテープが例示される。
[加工品]
本実施形態の紫外線レーザー印刷用紙および印刷物は種々の加工品に応用される。すなわち、本実施形態の加工品は、本実施形態の紫外線レーザー印刷用紙または本実施形態の印刷物を用いてなる。
本実施形態の加工品としては、包装体、ラベル、または粘着テープなどが好適である。
包装体としては、段ボールのライナー原紙(特に、最表面のライナー原紙)、外装箱、牛乳パック、紙カップ等の飲料用の液体容器(好ましくは飲料用の液体紙容器)、食品トレー、スキンパック、ピロー包装、スタンディングパウチ、三方・四方シール包装等が例示され、ラベルとしては、ラベル原紙、粘着ラベル、粘着シートが例示され、粘着テープとしては、粘着テープ、クラフトテープが例示される。
包装体の一例としての液体容器は、例えば、表面に印刷領域を有する。印刷領域には紫外線レーザーを照射され、日付などの文字が印字されている。
以下に実施例と比較例とを挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[酸化チタン]
実施例および比較例で使用した酸化チタンは、以下の表1の通りである。
Figure 0007306595000001
<酸化チタンC、F~Hの合成方法>
チタニウムテトライソプロポキシド(TTIP)を加水分解縮重合することで、酸化チタン(アモルファス)を合成し、焼成することで結晶化した。
具体的には、以下の(1)~(6)の工程により合成した。
(1)TTIP(東京化成工業株式会社製、製品コード:T0133)、イソプロパノール(東京化成工業株式会社製、純度99.5%以上、製品コード:I0163)およびイオン交換水を用いて、以下の溶液A~Cを作製した。
溶液A:TTIP 35.6質量部、イソプロパノール 200質量部
溶液B:イソプロパノール 200質量部、イオン交換水 6.3質量部
溶液C:イソプロパノール 200質量部、イオン交換水 24.4質量部
(2)テフロン(登録商標)製撹拌羽根で溶液Aを撹拌しながら、溶液Bをゆっくり滴下した後、10分間撹拌を継続した。
(3)上記(2)で得られた溶液Aおよび溶液Bの混合液へ、溶液Cをゆっくり滴下し、1分間撹拌を継続した後、24時間室温下で静置した。
(4)メンブレンフィルター(アドバンテック社製、材質:セルロースアセテート)で沈殿物を固液分離した。
(5)イソプロパノールで洗浄後、100℃下で5時間乾燥し、酸化チタン(アモルファス)を得た。
(6)マッフル炉にて焼成し、酸化チタンを結晶化した。
焼成温度は表中の温度で実施し、昇温速度10℃/min、昇温後2時間かけて焼成した。
[実施例1~12、比較例1~3]
<紙基材の製造>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を、CSFが450mLとなるようにダブルディスクリファイナーで叩解し、3質量%のパルプスラリーを準備した。
パルプ(固形分)100質量部に対し、硫酸バンド0.5質量部を添加し希釈した後、表2に示す酸化チタンを印刷用紙における含有量が表2に記載の含有量(質量%)となるように添加した。さらに、パルプ100質量部に対して、ポリエピクロロヒドリン系湿潤紙力増強剤WS4024(星光PMC株式会社製)を0.8質量部添加し、湿式抄紙機にてシート状に成形し、表2に示す坪量および厚さの紙基材を作製した。
<シーラント層の形成>
PE(低密度ポリエチレン、日本ポリエチレン株式会社製、ノバテック(登録商標)LD LC522)を単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、D2025)へ投入し、紙基材の一方の面に、樹脂の厚さが15μmとなるように押出ラミネート(溶融積層)した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、シーラント層を設け、紫外線レーザー印刷用紙を得た。なお、押出ラミネートにおける樹脂の溶融温度は320℃とした。なお、紙基材の平滑度の低い面に、シーラント層を設けた。
[実施例13]
紙基材の製造において、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)30部、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)70部を、CSFが550mLになるように混合叩解して使用した以外は、実施例4と同様にして紫外線レーザー印刷用紙を得た。
[実施例14]
紙基材の製造において、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)100部を、CSFが580mLとなるように叩解して使用した以外は、実施例4と同様にして紫外線レーザー印刷用紙を得た。
[実施例15]
紙基材の製造において、実施例4と同じ広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)70部と、そのLBKPから作製した粉末パルプ(下記手順)30部を使用し、CSFが400mLとなるように混合叩解して使用した以外は、実施例4と同様にして紫外線レーザー印刷用紙を得た。
<粉末パルプ>
粉末パルプは、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)のドライシートを、カッターミル(株式会社ホーライ製、HA8 2542 30E、スクリーン0.24mm)で機械粉砕して作製した。
[実施例16]
紙基材の製造において、実施例4の広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)をパルプマシンで抄上げ、乾燥してドライパルプとした。ドライパルプを再離解し、離解フリーネス550mLまで叩解して使用した以外は、実施例4と同様にして紫外線レーザー印刷用紙を得た抄紙した。
[実施例17]
<紙基材の製造>
実施例4と同様にして、紙基材を作製した。
<シーラント層の形成>
PEフィルム(線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)、フタムラ化学株式会社製、LL-XLTN、厚さ25μm)の表面に、イソシアネート系接着剤(DIC株式会社製、ディックドライLX-500 10部に対して、DIC株式会社製、ディックドライKW-75 1部を混合)を5g/mで塗布した後、紙基材と貼り合わせ、紫外線レーザー印刷用紙を得た。
[実施例18]
<紙基材の製造>
実施例4と同様にして、紙基材を作製した。
<シーラント層の形成>
PEをPP(ポリプロピレン、三菱ケミカル株式会社製、ノバテックPP MA-3)に変更し、溶融温度を330℃にした以外は、実施例4と同様にしてシーラント層を形成し、紫外線レーザー印刷用紙を得た。
[実施例19]
<紙基材の製造>
実施例4と同様にして、紙基材を製造した。
<シーラント層の形成>
PEフィルムをCPPフィルム(無延伸ポリプロピレン系フィルム、フタムラ化学株式会社製、FHK2-L、厚さ25μm)に変更した以外は、実施例17と同様にしてシーラント層を形成し、紫外線レーザー印刷用紙を得た。前記フィルムは、CоPP(共重合ポリプロピレン)/CoPP(共重合ポリプロピレン)/特殊PPの積層フィルムであり、コロナ処理面であるCoPP面を紙基材側とした。
[実施例20]
<紙基材の製造>
実施例4と同様にして、紙基材を製造した。
<シーラント層の形成>
水系ヒートシール剤(エチレン-アクリル酸共重合体(表中、Et-AA)、マイケルマン社製、MFHS1279、固形分濃度42%)に水を加えて、固形分濃度20%に希釈し、紙基材の印刷層を設けた面とは反対の面に、塗工量(固形分)が5g/mとなるように、メイヤーバーを用いて塗布し、120℃で60秒乾燥させ、シーラント層を形成し、紫外線レーザー印刷用紙を得た。
[実施例21]
<紙基材の製造>
実施例4と同様にして、紙基材を製造した。
<シーラント層の形成>
水系ヒートシール剤(エチレン-メタクリル酸共重合体(表中、Et-MAA)、三井化学株式会社製、ケミパールS-300、固形分濃度35%)を固形分濃度20%に調整して使用した以外は、実施例20と同様にして、シーラント層を形成し、紫外線レーザー印刷用紙を得た。
[実施例22]
<紙基材の製造>
実施例4と同様にして、紙基材を製造した。
<シーラント層の形成>
水系ヒートシール剤(スチレン-アクリル酸共重合体(表中、St-AA)、星光PMC株式会社製、SEIKOAT RE-2016、固形分濃度35%)を固形分濃度20%に調整して使用した以外は、実施例20と同様にして、シーラント層を形成し、紫外線レーザー印刷用紙を得た。
[実施例23]
<紙基材の製造>
実施例4と同様にして、紙基材を製造した。
<バリア層の形成>
EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体、クラレ株式会社製、エバール E105B)を単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、D2025)に投入し、紙基材の一方の面に、樹脂の厚さが15μmとなるように押出ラミネート(溶融積層)した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、バリア層を形成した。なお、押出ラミネートにおける樹脂の溶融温度は215℃とした。
<シーラント層の形成>
実施例4と同様にしてシーラント層を設け、紫外線レーザー印刷用紙を得た。
[実施例24]
<紙基材の製造>
実施例4と同様にして、紙基材を製造した。
<バリア層の形成>
エチレン変性ポリビニルアルコール(完全けん化型、クラレ株式会社製、エクセバールAQ-4104)の固形分濃度15質量%の水溶液100部に対し、層状無機化合物の水分散液(層状無機化合物=合成マイカ(膨潤性マイカ、平均長さ:6.3μm、アスペクト比:約1000、厚さ:約5nm)、固形分濃度6質量%、トピー工業株式会社製、NTO-05)を50部加え、さらに、これに希釈水を加え、固形分濃度10質量%とし、バリア層用塗工液とした。前記バリア層用塗工液を、塗工量が2.0g/mとなるようにメイヤーバーを用いて塗工し、その後、熱風乾燥機内で120℃にて1分間乾燥し、バリア層を形成した。
<シーラント層の形成>
実施例20と同様にしてシーラント層を設け、紫外線レーザー印刷用紙を得た。
[実施例25]
<紙基材の製造>
実施例4と同様にして、紙基材を製造した。
<バリア層の形成>
層状無機化合物の水分散液(層状無機化合物=合成マイカ(膨潤性マイカ、平均長さ:6.3μm、アスペクト比:約1000、厚さ:約5nm)、固形分濃度6質量%、トピー工業株式会社製、NTO-05)に、ウレタン系エマルション(固形分濃度30質量%、ガラス転移温度130℃、25μm厚シート形成時酸素透過度が2.0mL/(m・day・atm)、三井化学株式会社製、タケラックWPB-341)を固形分の質量比(層状無機化合物:ウレタン系樹脂)が2:10となるように加え、撹拌した。さらに、固形分濃度が20質量%となるように希釈水を加え、バリア層用塗工液とした。前記バリア層用塗工液を、バリア層の塗工量が2.0g/mとなるように、メイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機内で120℃にて、1分間乾燥し、バリア層を形成した。
<シーラント層の形成>
実施例20と同様にしてシーラント層を設け、紫外線レーザー印刷用紙を得た。
[実施例26]
<紙基材の製造>
実施例4と同様にして、紙基材を製造した。
<バリア層の形成>
アルミ蒸着PPフィルム(基材=CPP(無延伸ポリプロピレンフィルム)、三井化学東セロ株式会社製、製品名:ML、厚さ20μm、水蒸気透過度0.2g/m・day、酸素透過度50mL/m・day・atm)のPPフィルム側の表面にイソシアネート系接着剤(DIC株式会社製、ディックドライLX-500 10部に対して、DIC株式会社製、ディックドライKW-75 1部を混合)を5g/m塗布した後、紙基材の一方の面に貼り合わせた。
<シーラント層の形成>
実施例4と同様に、シーラント層を形成し、紫外線レーザー印刷用紙を得た。
[実施例27]
バリア層の形成において、アルミ蒸着PPフィルムの代わりにアルミ蒸着PETフィルム(基材=PET(ポリエチレンテレフタレート)、三井化学東セロ株式会社製、製品名:ML、厚さ12μm、水蒸気透過度1g/m・day、酸素透過度10mL/m・day・atm)を使用すること以外は、実施例26と同様にして、紫外線レーザー印刷用紙を得た。なお、接着剤は基材(PET)側に塗布した。
[実施例28]
バリア層の形成において、アルミ蒸着PPフィルムの代わりにシリカ蒸着PPフィルム(基材=PP、凸版印刷株式会社製、製品名:GL-LP、厚さ17μm、水蒸気透過度0.5g/m・day、酸素透過度1mL/m・day・atm)を使用すること以外は、実施例26と同様にして、紫外線レーザー印刷用紙を得た。なお、接着剤は基材(PP)側に塗布した。
[実施例29]
バリア層の形成において、アルミ蒸着PPフィルムの代わりにシリカ蒸着PETフィルム(基材=PET、凸版印刷株式会社製、製品名:GL-AE、厚さ12μm、蒸着層の厚さ400nm、水蒸気透過度0.6g/m・day、酸素透過度0.2mL/m・day・atm)を使用すること以外は、実施例26と同様にして、紫外線レーザー印刷用紙を得た。なお、接着剤は基材(PET)側に塗布した。
[実施例30]
バリア層の形成において、アルミ蒸着PPフィルムの代わりにアルミナ蒸着PETフィルム(基材=PET、三井化学東セロ株式会社製、製品名:TL、厚さ12μm、水蒸気透過度1.5g/m・day、酸素透過度15mL/m・day・atm)を使用すること以外は、実施例26と同様にして、紫外線レーザー印刷用紙を得た。なお、接着剤は基材(PET)側に塗布した。
[実施例31]
バリア層の形成において、アルミ蒸着PPフィルムの代わりにPVDC(ポリ塩化ビニリデン)をコーティングしたPETフィルム(三井化学東セロ株式会社製、製品名:Vバリア、厚さ12μm、水蒸気透過度0.2g/m・day、酸素透過度0.8mL/m・day・atm)を使用すること以外は、実施例26と同様にして、紫外線レーザー印刷用紙を得た。なお、接着剤は基材(PET)側に塗布した。
[比較例4]
シーラント層を形成しなかった以外は実施例4と同様にして、紫外線レーザー印刷用紙を得た。
[測定・評価]
実施例および比較例で得られた紫外線レーザー印刷用紙、並びに各種原料について、以下の測定および評価を行った。
〔酸化チタンの平均粒子径〕
酸化チタンの平均粒子径は、以下の方法により測定した。
実施例および比較例で得られた紫外線レーザー印刷用紙から、紙基材を産業用剃刀(フェザー安全剃刀株式会社製、品番:099769)を用いて削り取り、集めた紙基材をサンプルとして、マッフル炉で燃焼して得た灰分の走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテク製、SU7000など)から得られるSEM像(2次電子像)から算出した。灰分は、マッフル炉(ヤマト科学株式会社製、型番FO300)を使用して450℃で焼成し、灰化することで得た。
次いで、超音波洗浄機(アズワン株式会社製、LSC-63など)で5分間かけてエタノールに分散させ0.1質量%スラリーを得た後、アルミ皿上へ0.1mLをキャストし、100℃で乾燥させて測定用サンプルを作製した。アルミ皿ごと、走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテク製、SU7000など)の観察に供試し、隣り合う粒子と明瞭に見分けられるものを目視で選択し、1つの粒子の長径と短径の相乗平均から粒子径を算出した。この際、1次粒子と凝集状態の2次粒子が混在していても明瞭に見分けられる場合はそれぞれを1つの粒子としてカウントし、無作為に選択した100個の粒選択し、20000倍程度とした。また、酸化チタン以外の粒子を含む場合、SEMに付属するエネルギー分散型X線分析装置(株式会社堀場製作所製、EMAXなど)を用いてチタン元素の含まれる粒子を測定した。
なお、針状の場合には、100個の粒子について長径を測定し、平均を平均粒子径とした。
〔結晶子サイズ算出方法〕
<測定サンプル調製方法>
実施例および比較例で得られた紫外線レーザー印刷用紙から、紙基材を産業用剃刀(フェザー安全剃刀株式会社製、品番:099769)を用いて削り取り、集めた紙基材をサンプルとして、マッフル炉で燃焼して得た灰分の走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテク製、SU7000など)から得られるSEM像(2次電子像)から算出した。灰分は、マッフル炉(ヤマト科学株式会社製、型番FO300)を使用して450℃で焼成し、灰化することで得た。
<X線回折法による測定>
灰化して得た試験サンプルをサンプルホルダーに充填し、高速検出器を使用して測定した。充填の際、サンプル量に応じて適宜高さ調節治具を用いることで、試料測定面がサンプルホルダー縁部と同じ高さとなるように調節した。
(測定条件)
X線回折装置:株式会社リガク製、RINT-Ultima III
電圧:40kV
電流:40mA
光学系:平行ビーム(CBO)
検出器:株式会社リガク製、高速検出器 D/teX Ultra 2
ゴニオメーター:Ultima III 水平ゴニオメーター
管球:Cu
波長:1.541Å(Kα1)
スキャンモード:CONTINUOUS
スキャンスピード:1.0000deg/min
ステップ幅:0.0500deg
スキャン軸:2Theta/Theta
スキャン範囲:5.0000~60.0000deg
入射スリット:1.0mm
長手制限スリット:10mm
受光スリット1:開放
受光スリット2:開放
サンプルホルダー:ASC-6試料ホルダー(品番2455E442)
材質:アルミニウム
寸法:φ23mm×2.0mm
ホルダー高さ調節治具:透明な円盤状の板(自製)
材質:ポリアクリル酸メチル
寸法:φ23mm×0.8mm
<X線回折で得たデータの処理>
得られた回折プロファイルに対し、統合粉末X線解析ソフトウェア(株式会社リガク製、PDXL2)を用いてバックグラウンド処理とプロファイルフィッティング処理を行った。
データ処理の設定については、特に記載のないものは全てソフトウェアのデフォルト設定にて行った。
回折プロファイルのピーク位置とピーク強度の情報から、データベース(ICDD)をもとに結晶相の同定を行った。
<X線回折で得たデータをもとにした結晶子サイズの算出>
データ処理後の回折プロファイルより得た最強回折線の半値幅(FWHM)およびブラッグ角(θ)をシェラー式に代入し、結晶子サイズを算出した。
算出に使用した酸化チタンのX線回折ピークは、以下の通りである。
アナターゼ:101面
ルチル:110面
シェラー式は、以下の通りである。
Figure 0007306595000002
D:結晶子サイズ(nm)
K:シェラー定数
λ:X線の波長(nm)
B:FWHM(rad)
θ:ブラッグ角(rad)
Kの値は0.89、Bは測定で得たFWHMの値、λの値は0.154、θの値はアナターゼの場合は101面、ルチルの場合は110面に由来する最大強度の実測値とした。
〔CSF〕
原料パルプのカナダ標準ろ水度(Canadian Standard Freeness;CSF)は、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定した。
〔紙基材の坪量〕
得られた紫外線レーザー印刷用紙に対して、前処理として、シーラント層、バリア層、樹脂層等の紙基材以外の層を、顕微鏡下で層の境界を確認しつつ、研削装置(有限会社佐川製作所製、砥石寸法φ50.8×12.7mm)を用いて研削して除去した。
次に、塗工により設けたシーラント層、バリア層、樹脂層等を有する場合には、紙基材にこれらの層の一部が浸漬しているため、上記前処理を行った印刷用紙を100℃のキシレンに浸漬し、樹脂分を溶出させた。
得られた紙基材を、23℃、湿度50%の環境下で1日調湿した。調湿後のサンプルについて、JIS P 8124:2011に準拠して、紙基材の坪量を測定した。
〔紙基材の厚さ〕
紙基材の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定した。なお、バリア層、ヒートシール層、および樹脂層等の厚さは、後述するようにSEM像から算出し、JIS P 8118:2014に準拠して測定した値から差し引いて算出した。
〔紙基材を構成するパルプ繊維の長さ加重平均繊維長、繊維幅、微細繊維の含有量〕
紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長、繊維幅および微細繊維の含有量は、以下の方法で測定した。
実施例および比較例の印刷用紙を40cm角に切り出し、それに約50質量倍のイオン交換水を添加した上で、イオン交換水に24時間浸した。
24時間浸した後、標準型離解機(熊谷理機工業株式会社製)を用いて、未離解繊維がなくなるまで処理して、パルプを繊維状に離解した。シーラント層、並びに任意に有するバリア層および樹脂層を除いた離解後のスラリー(パルプ繊維の分散液)を分取し、繊維長測定機(型式FS-5 UHDベースユニット付、バルメット社製)を使用して、「長さ加重平均繊維長(ISO)」、「微細繊維量」、および「繊維幅」を測定した。
なお、「長さ加重平均繊維長(ISO)」は0.2mm以上7.6mm以下の繊維を選択して計算した長さ加重平均繊維長である。また、「微細繊維量」は、離解されたパルプ繊維中の、繊維幅75μm以下、かつ、長さ0.08mm以上0.20mm以下の微細繊維の本数割合である。「繊維幅」は幅10μm以上75μm以下の繊維を選択して計算した、長さ加重平均繊維幅である。
〔酸化チタンの含有量〕
<紙基材中水分の測定>
JIS P 8203:2010(ISO 638:2008)に従い、紙基材の水分率を測定した。
<試験片の作製>
得られた紫外線レーザー印刷用紙から、前処理として、顕微鏡下で層の境界を確認しつつ、研削装置(有限会社佐川製作所製、砥石寸法φ50.8×12.7mm)を用いて、紙基材以外の層(シーラント層、バリア層、および樹脂層)を研削して除去した。
得られたサンプルについて、JIS P 8111:1998の方法で調湿後、適当サイズに切り出し、サンプル(試験片)とし、切り出した面積と質量を記録した。
<試験片の溶解>
オートクレーブ装置(CEMジャパン製、MARS5)のテフロン(登録商標)製容器へ、硝酸:フッ酸=50:5(体積%)の混合溶剤と試験片とを投入し、210℃、120分間でオートクレーブ処理し、試験片を溶解させた。試験片の質量は適宜変更してもよく、また試験片が溶け残る場合は硝酸、フッ酸の比率や処理温度、処理時間等を適宜変更してもよい。
試験片を溶解後、超純水を用いて正確に定容した。
<溶解液中の酸化チタン量測定>
(1)ICP装置および測定条件は以下の通りである。
ICP装置:ICP-OEC装置(株式会社リガク製、CIROS1-20)
測定条件:
・キャリアガス:アルゴンガス
・アルゴンガス流量0.9L/min
・プラズマガス流量14L/min
・プラズマ出力1400W
・ポンプ回転数:2
・測定波長Ti:334.941nm
(2)検量線の作成
汎用混合標準液(SPEX社製、XSTC-622B)を、以下の濃度になるように正確に測り取り、上記測定条件で測定に供試し、チタン原子の発光波長に相当する334.941nmの強度を測定した。
・検量線作成用濃度:0ppm、0.01ppm、0.05ppm、0.1ppm、0.5ppm、1.0ppm、3.0ppm、5.0ppm
(3)溶解液中の酸化チタン含有量測定
試験片が溶解した溶液を上記検量線内に収まるよう、超純水で希釈し、ICP測定に供試した。
(4)酸化チタン含有量算出方法
以下の式で酸化チタン含有量を算出した。なお、酸化チタンの分子量÷チタンの原子量≒1.669である。
酸化チタン含有量(g/m)=ICP測定濃度(ppm)×希釈倍率×定容量(L)×1.669×1000÷面積(m
酸化チタン含有量(質量%)=ICP測定濃度(ppm)×希釈倍率×定容量(L)×1.669÷試験片質量(mg)×(1-水分率)×100
〔シーラント層の厚さ〕
走査型電子顕微鏡から得られる画像データからシーラント層の厚さを測定した。
(1)測定サンプルの作製
サンプルを光硬化型樹脂(東亞合成株式会社製、D-800)で包埋し、ウルトラミクロトームで印刷用紙の断面出しを実施した。切削にはダイアモンドナイフを使用し、常温で切削した。
切削した断面へ厚さ20nm程度の金蒸着を施し、走査型電子顕微鏡の測定へ供試した。
(2)測定装置・条件
測定装置:S-3600(株式会社日立ハイテク製)
測定条件:倍率2000倍
走査型顕微鏡の種類は上記に限らないが、スケールバーが表示されるタイプの装置を使用した。
シーラント層が薄い場合は、適切な倍率を選択して画像データを取得した。
(3)測定方法
走査型電子顕微鏡にて、倍率2000倍で画像データを取得した。得られた画像データを印刷用紙に印刷した後、定規で対象のシーラント層の厚さ(他の層との境界から境界の長さ)を測定し、スケールバーと比較して実際のシーラント層(塗工層またはラミネート層)の厚さを測定した。1つの測定サンプルから無作為に選んだ5箇所の画像データを取得し、1箇所の画像データから、シーラント層が最も厚い箇所、シーラント層が最も薄い箇所の厚さを測定し、計10箇所の平均をシーラント層の厚さとした。なお、観察するシーラント層の厚さにより観察倍率を変更してもよい。
なお、紙基材のシーラント層を設けた面反対面に、さらに樹脂層を有する場合には、同様の方法により、樹脂層の厚さを測定できる。また、バリア層の厚さについても同様に測定できる。
〔ラマンスペクトルの測定〕
ラマンスペクトルは以下の方法により測定した。本実施例において、ラマンスペクトルの測定は、後述する印字1点の鮮明性で得られた印刷物を対象として行った。
<測定条件>
ラマンスペクトルの測定条件は、以下の通りであるが、測定に使用するレーザーで印刷物にダメージが見られる場合や、蛍光が強い場合、ピークが弱い場合等は、適宜レーザー出力や照射時間等の以下の測定条件を変更することができる。ただし、印刷領域と非印刷領域のラマン強度は同じ条件下で測定した数値を採用する。
・装置:レニショー社製 inVia Raman microscope QUONTOR
・励起レーザー:532nm
・レーザーパワー:50mW(出力100%時)
・レーザー出力:50%
・測定モード:共焦点モード
・照射時間:0.5sec
・積算回数:10回
・レーザースポット径:2.5μm
・対物レンズ:20倍
<測定方法>
以下の方法により測定を行った。
(1)標準試料(単結晶シリコン、レニショー社製)を用いて、ラマンシフト位置のキャリブレーションを実施した(単結晶シリコンの520.5cm-1)。
(2)シート状のサンプルを試料台に設置した。シートが平面を保てるよう、必要に応じて押さえを設置した。
(3)装置にてフォーカスを合わせて観察(模擬レーザーにてフォーカスが最も小さくなるよう設定)した。印刷領域を測定する際は、目視で確認できる最も黒い箇所が測定時に表示されるガイドの中心にくるよう測定した。非印刷領域を測定する際は、印刷領域から300μm以上距離を空けて測定した。
(4)得られたラマンスペクトルは、装置付属の処理ソフト(レニショー社製、Wire5.2)にてベースライン補正(インテリジェント補正)を実施した。前記処理ソフトの多項式11にてベーラインを補正した。
(5)ルチル型酸化チタンの場合447±10cm-1、アナターゼ型酸化チタンの場合516±10cm-1の波数範囲の最大値(最大強度)を読み取り、下記式によりラマン強度比を算出した。
ラマン強度比=印刷領域の最大強度÷非印刷領域の最大強度
(6)印刷領域(印字部)、非印刷領域(非印字部)について、それぞれ10箇所を測定し、平均値を測定結果とした。
測定値のバラつきを抑制する観点から、印刷領域のラマン強度のカウントが10,000以下の範囲で測定することが好ましい。従って、印刷領域のラマン強度のカウントが10,000以下の範囲となるように、適宜測定条件を変更して測定を行った。また、以下の測定条件にて10回測定し、平均値±2SD(標準偏差)を超えて外れた数値を除外し、再度平均してラマン強度の平均値とした。
ラマン強度比は、以下の基準にて評価した。
A:ラマン強度比が0.3以下である
B:ラマン強度比が0.3を超え0.7以下である
C:ラマン強度比が0.7を超える
〔印字1点の鮮明性〕
<レーザー印字方法>
実施例、比較例で得られた印刷用紙に対して紫外線レーザー照射機(製造社名:株式会社キーエンス、型番:MD-U1020C)を用いて、サンプル表面に10mm角の正方形を印字した。
(印字の条件)
波長:355nm
出力:80%(出力100%時2.5W)
周波数:40kHz
焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
スポット径:40μm(焦点合わせ時)
塗りつぶし間隔:0.3mm
スキャンスピード:5000mm/sec
スポット可変:100
<鮮明性評価>
デジタルマイクロスコープ(製造社名:株式会社キーエンス、型番:VHX-8000)を用いて評価対象の印字部付近の深度合成画像を取得した。
深度合成画像とは、焦点距離を動かして複数の画像を取得し、それぞれからピントが合った部分を抽出して1枚の画像に構築した画像である。深度合成画像はデジタルマイクロスコープに搭載されるライブ深度合成機能を用いて取得した。
その後、自動面積計測機能のうち明るさ抽出モードを使用し、印字部で閾値より暗い領域の面積を計測した。明るさ抽出モードとは、画像の輝度レベルを-255から255に階層化して、任意の閾値以上または閾値以下の領域を抽出するモードである。
印字部について、閾値より輝度レベルが低い領域が多いものほど「濃い印字」とみなすこととした。
(画像撮影時の設定)
シャッタースピード:オートモード(設定値70)
ゲイン:0dB
倍率:400倍
照明:リング照明
(明るさ抽出モードの設定)
深度合成画像取得時の倍率:400倍
照明:同軸落射100%
シャッタースピード:オートモード70
ゲイン:0dB
閾値:-7
抽出領域:印字部中心より半径60μmの円の内側
(印字部の濃さの評価基準)
A:-7より輝度レベルが低い領域の面積が抽出領域の70%以上
B:-7より輝度レベルが低い領域の面積が抽出領域の65%以上70%未満
C:-7より輝度レベルが低い領域の面積が抽出領域の45%以上65%未満
D:-7より輝度レベルが低い領域の面積が抽出領域の45%未満
〔印字均一性〕
実施例、比較例で得られた紫外線レーザー印刷用紙に対して紫外線レーザー照射機(製造社名:株式会社キーエンス、型番:MD-U1020C)を用いて、サンプル表面に10mm角の正方形を印字した。
(印字の条件)
波長:355nm
出力:80%(出力100%時2.5W)
周波数:40kHz
焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
スポット径:40μm(焦点合わせ時)
塗りつぶし間隔(ラインピッチ):0.05mm
スキャンスピード3000mm/sec
スポット可変:-100
(印字均一性評価)
正方形を100個印字し、1個の正方形中に目視で確認できる濃淡差(印字不均一さ)が存在する正方形の個数により、印字均一性を以下の基準で評価した。
A:正方形100個に対し、濃淡差がある正方形の個数が3個未満
B:正方形100個に対し、濃淡差がある正方形の個数が3個以上5個未満
C:正方形100個に対し、濃淡差がある正方形の個数が5個以上10個未満
D:正方形100個に対し、濃淡差がある正方形の個数が10個以上
〔発煙性〕
印字均一性を評価する際に紫外線レーザー照射によりサンプル表面に10mm×10mmの正方形を印刷した際の発煙性を、以下の判定基準で評価した。
(判定基準)
A:目視で発煙を確認できないか、またはうっすらと発煙を確認できるが非常に少ない
B:目視で発煙を確認できるが、発煙量は少ない
C:目視で発煙を確認できるが、印字に影響を与えるほどではない
D:目視で発煙を楽に確認でき、発煙で紫外線レーザーの光を散乱し、印字に影響を与えるほど発煙量が多い
〔水蒸気バリア性〕
JIS-Z-0208:1976(カップ法)B法(40℃±0.5℃、相対湿度90%±2%)に準拠して、シーラント層を内側にして測定した。
水蒸気バリア性は、以下の評価基準にて評価した。
(水蒸気バリア性の評価基準)
A:水蒸気透過度が30g/m・day以下
B:水蒸気透過度が30g/m・dayを超え、40g/m・day以下
C:水蒸気透過度が40g/m・dayを超え、50g/m・day以下
D:水蒸気透過度が50g/m・dayを超える
また、下記の条件でレーザー照射を行い、レーザー照射後の紫外線レーザー印刷物に対して、同様に水蒸気透過度を測定した。なお、比較例4については、紫外線レーザー照射前の水蒸気バリア性の評価がDであったため、測定しなかった。
<レーザー照射>
実施例、比較例で得られた紫外線レーザー印刷用紙に対して紫外線レーザー照射機(製造社名:株式会社キーエンス、型番:MD-U1020C)を用いて、以下に記載の条件でサンプル表面(印刷層側)に10cm角の正方形を印字した。
・印字の条件
波長:355nm
出力:80%(出力100%時2.5W)
周波数:40kHz
焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
スポット径:40μm(焦点合わせ時)
塗りつぶし間隔:0.04mm
スキャンスピード1000mm/sec
スポット可変:0
〔酸素バリア性〕
酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/22)を使用し、温度23℃、相対湿度85%の条件にて、実施例23~31の紫外線レーザー印刷用紙の酸素透過度を測定した。
具体的には、積層シートについて、JIS K7126-2:2006に準拠して、温度23℃、相対湿度85%における酸素透過度を測定した。
酸素透過度の値は低いほど酸素バリア性に優れる。
酸素バリア性は、以下の評価基準にて評価した。
(酸素バリア性の評価基準)
A:酸素透過度が3.0mL/m・day・atm以下
B:酸素透過度が3.0mL/m・day・atmを超え、5.0mL/m・day・atm以下
C:酸素透過度が5.0mL/m・day・atmを超え、15mL/m・day・atm以下
D:酸素透過度が15mL/m・day・atmを超える
また、下記の条件でレーザー照射を行い、レーザー照射後の紫外線レーザー印刷物に対して、同様に酸素透過度を測定した。
<レーザー照射>
実施例、比較例で得られた紫外線レーザー印刷用紙に対して紫外線レーザー照射機(製造社名:株式会社キーエンス、型番:MD-U1020C)を用いて、以下に記載の条件でサンプル表面(印刷層側)に10cm角の正方形を印字した。
・印字の条件
波長:355nm
出力:80%(出力100%時2.5W)
周波数:40kHz
焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
スポット径:40μm(焦点合わせ時)
塗りつぶし間隔:0.04mm
スキャンスピード1000mm/sec
スポット可変:0
〔紫外線レーザー照射後のバリア性低下率(バリア性低下率)〕
紫外線レーザー照射前後の水蒸気透過度および酸素透過度から、紫外線レーザー照射によるバリア性の低下(バリア性低下率)を、以下の評価基準により評価した。
(バリア性低下率の評価基準)
A:水蒸気透過度および酸素透過度の低下率(減少率)が5.0%以下
B:水蒸気透過度および/または酸素透過度の低下率(減少率)が5.0%を超える
なお、水蒸気透過度の低下率は、以下のように算出される。
水蒸気透過度の低下率=(紫外線レーザー照射後の水蒸気透過度(g/m・day)-紫外線レーザー照射前の水蒸気透過度(g/m・day))/紫外線レーザー照射前の水蒸気透過度(g/m・day)×100
同様に、酸素透過度の低下率は、以下のように算出される。
酸素透過度の低下率=(紫外線レーザー照射後の酸素透過度(mL/m・day・atm)-紫外線レーザー照射前の酸素透過度(mL/m・day・atm))/紫外線レーザー照射前の酸素透過度(mL/m・day・atm)×100
〔ヒートシール剥離強度およびヒートシール剥離強度の低下率(剥離強度低下率)〕
2枚1組の紫外線レーザー印刷用紙を、シーラント層が向き合うように重ね、ヒートシールテスター(テスター産業製、TP-701-B)を用いて、160℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした。ヒートシールされた試験片を温度23℃±1℃、湿度50%±2%の室内で4時間以上静置した。続いて、ヒートシールされた試験片を15mm幅にカットし、引張試験機を用いて、引張速度300mm/minでT字剥離し、記録された最大荷重をヒートシール剥離強度とした。
ヒートシール剥離強度を、以下の評価基準で評価した。
(ヒートシール剥離強度の評価基準)
A:ヒートシール剥離強度が10N/15mm以上
B:ヒートシール剥離強度が6.0N/15m以上10N/15mm未満
C:ヒートシール剥離強度が3.0N/15mm以上6.0N/15mm未満
D:ヒートシール剥離強度が3.0N/15mm未満
<レーザー照射>
実施例、比較例で得られた紫外線レーザー印刷用紙に対して紫外線レーザー照射機(製造社名:株式会社キーエンス、型番:MD-U1020C)を用いて、以下に記載の条件でサンプル表面(印刷層側)に10cm角の正方形を印字した。
・印字の条件
波長:355nm
出力:80%(出力100%時2.5W)
周波数:40kHz
焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
スポット径:40μm(焦点合わせ時)
塗りつぶし間隔:0.04mm
スキャンスピード1000mm/sec
スポット可変:0
(ヒートシール剥離強度低下率の評価基準)
紫外線レーザー照射前後のヒートシール剥離強度から、紫外線レーザー照射によるヒートシール剥離強度の低下率を、以下の評価基準により評価した。なお、比較例4については、紫外線レーザー照射前のヒートシール剥離強度の評価がDであったため、測定しなかった。
(ヒートシール剥離強度の低下率の評価基準)
A:ヒートシール剥離強度の低下率(減少率)が5.0%以下
B:ヒートシール剥離強度の低下率(減少率)が5.0%を超える
なお、ヒートシール剥離強度の低下率は、以下のように算出される。
ヒートシール剥離強度の低下率=(紫外線レーザー照射前のヒートシール剥離強度(N/15mm)-紫外線レーザー照射後のヒートシール剥離強度(N/15mm))/紫外線レーザー照射前のヒートシール剥離強度(N/15mm)×100
Figure 0007306595000003
Figure 0007306595000004
表2に示すように、酸化チタンを特定量以上含有し、酸化チタンの結晶子サイズが特定の値以上である紫外線レーザー印刷用紙を、紫外線レーザーにて直接印刷することで、一点ごとの印字鮮明性に優れた印刷物が得られた。
さらに、ヒートシール性を有し、水蒸気バリア性にも優れるものであった。また、バリア層を形成した実施例23~31の紫外線レーザー印刷用紙は、酸素バリア性にも優れるものであった。また、紫外線レーザーによる印刷による、バリア性およびヒートシール性の低下が抑制されていた。
なお、結晶子サイズが55.3nmと、結晶子サイズが比較的大きい酸化チタンを使用した実施例6では、分散性の低下に伴うと考えられる印字均一性の低下が認められた。また、回折角度が27.74°であり、比較的に結晶性が低い酸化チタンを使用した実施例8では、若干の一点ごとの印字鮮明性の低下が認められた。さらに、構成するパルプの長さ加重平均繊維長が2.18mmである実施例14の印刷用紙では、繊維間の空隙の増加に伴うと考えられる、一点ごとの印字鮮明性の低下が認められた。
一方、結晶性サイズが30nm未満である酸化チタンを使用した比較例1および2の印刷用紙では、一点ごとの印字鮮明性に劣る印刷物が得られた。また、酸化チタンの含有量が0.1質量%であり、0.5質量%未満である比較例3の印刷用紙では、紫外線レーザー照射した際に、一点ごとの印字鮮明性に劣る印字スポットとなった。
また、シーラント層を有していない比較例4の印刷用紙を用いた場合には、ヒートシール性および水蒸気バリア性が得られなかった。
本発明の紫外線レーザー印刷用紙は、紫外線レーザーの照射によって酸化チタンが変色することで、視認性に優れ、一点ごとの印字鮮明性に優れ、さらにヒートシール性を有する印刷物が提供できる。本発明の紫外線レーザー印刷用紙および印刷物は、日付、バーコード等の可変情報が印刷される包装体(好ましくは食品用容器)、ラベル、および粘着テープなどの加工品に好適に適用される。さらに、本発明の印刷物の製造方法は、包装体、ラベル、粘着テープなどへの可変情報の印刷に好適に適用される。

Claims (12)

  1. 酸化チタンが内添されてなる紙基材と、前記紙基材の少なくとも一方の面にシーラント層とを有する紫外線レーザー印刷用紙であって、
    前記紙基材中の酸化チタンの含有量が0.5質量%以上であり、
    前記酸化チタンの結晶子サイズが、30nm以上である、
    紫外線レーザー印刷用紙。
  2. 前記酸化チタンの結晶子サイズが53nm以下である、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用紙。
  3. 前記酸化チタンがルチル型酸化チタンであり、前記酸化チタンの回折角度が27.60°以下である、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用紙。
  4. 前記紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が0.5mm以上3.0mm以下である、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用紙。
  5. 前記紙基材を構成するパルプ繊維中、繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合が4%以上40%以下である、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用紙。
  6. 前記紙基材中の酸化チタンの含有量が50質量%以下である、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用紙。
  7. 前記紙基材とシーラント層との間に、バリア層を有する、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用紙。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用紙から得られた印刷物であって、
    前記印刷物が、少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、
    非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度の比が0.70以下である、印刷物。
  9. 請求項1~7のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用紙を用いてなる、加工品。
  10. 請求項8に記載の印刷物を用いてなる、加工品。
  11. 請求項1~7のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用紙に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有する、
    印刷物の製造方法。
  12. 前記印刷する工程が、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下となるように紫外線レーザーを照射する工程である、請求項11に記載の印刷物の製造方法。
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