JP7347707B1 - 紫外線レーザー印刷用媒体、印刷物およびその製造方法、並びに加工品 - Google Patents

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Abstract

【課題】紫外線レーザー照射された際に、一点ごとの印字鮮明性に優れる印字スポットが得られ、かつ、レーザー照射された際に、保護樹脂層の膨らみが抑制された印刷物が得られ、さらにヒートシール性を有する紫外線レーザー印刷用媒体を提供すること。また、前記紫外線レーザー印刷用媒体に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させた印刷物およびその製造方法を提供すること。さらに、前記紫外線レーザー印刷用媒体または印刷物を用いてなる加工品を提供することを目的とする。【解決手段】基材の一方の面に、酸化チタンを含有する印刷層と、保護樹脂層とをこの順で有し、基材の他方の面にシーラント層を有し、前記印刷層中の前記酸化チタンの含有量が、0.1g/m2以上4.0g/m2以下であり、前記印刷層中の酸化チタンの結晶子サイズが13nm以上53nm以下である、紫外線レーザー印刷用媒体。【選択図】なし

Description

本発明は、紫外線レーザー印刷用媒体、印刷物およびその製造方法、並びに加工品に関する。
従来、製造日や出荷日などの日付や、バーコードなどの可変情報を、収容物が収容される容器等の包装体に表示するために、ラベル表示またはインクジェット印刷が行われている。
また、レーザー光照射により印字する方法も提案されており、例えば、特許文献1には、レーザー光照射により、鮮明な印字が高速で行え、かつ、印字された部分が各種の耐性に優れたレーザー印字用積層体およびその印字体を提供することを目的として、アルミ蒸着紙のアルミ蒸着面上に、白インキ、黒インキおよびオーバープリントニス(OPニス)を塗布して製造したレーザー印刷用積層体が開示されている。
さらに、特許文献2には、発熱が比較的少なく、包装材のレーザーマーキングに好ましく適用可能な技術を提供することを目的として、平均粒子径が150nm以下の第一の酸化チタン粒子を含み、紫外線レーザーの照射により色変化するレーザーマーキング層を形成するために用いられるインク組成物が記載されている。
特開平9-123607号公報 特開2020-75943号公報
包装体、ラベル、粘着テープなどの表面への印刷手段として、サーマルプリンタやインクジェットプリンタを用いて包装体表面に直接インキを載せる方法があり、現在多用されている。しかし、サーマルプリンタのインクリボンやインクジェットプリンタのインキ等の消耗品は高価であり、多くの変動情報を印刷するにはランニングコストが高額になるという問題がある。また、これら消耗品の交換を怠ると印刷漏れが発生する場合もある。さらに、UV硬化型インキを用いたオフセット印刷による包装体への変動情報の直接印刷も行われているが、包装体表面の汚れや包装体の厚さむら等によって、印刷カスレや文字欠け等が発生する場合がある。
また、特許文献1に記載の方法では、高速化が可能であるものの、COレーザー光の照射によりレーザー光を吸収しやすい上層を除去して、下層を露出し、上層と下層の色の違いから視認可能な文字等を形成する技術であるため、上層はレーザー光を吸収しやすい材料に限定され、逆に下層はレーザー光を吸収しにくく、かつ、上層と色のコントラストの取れる材料に限定される。すなわち、レーザー光を吸収しやすいカーボンブラック系の材料(黒色)が上層となり、酸化チタン系の材料(白色)が下層となり、レーザー光の照射により形成される文字等は、黒地に白い文字となり、視認性に劣る。また、上層を除去する際に、上層のインクが粉塵化して、作業環境の汚染を招くという問題があった。
さらに、特許文献2に記載のインク組成物を用いて作製した塗工層に対して、紫外線レーザーによる印刷を行うと、印字スポットの一点ごとの印字鮮明性に劣る場合があった。
本発明は、紫外線レーザー照射された際に、一点ごとの印字鮮明性に優れる印字スポットが得られ、かつ、レーザー照射された際に、保護樹脂層の膨らみが抑制された印刷物が得られ、さらにヒートシール性を有する紫外線レーザー印刷用媒体を提供することを目的とする。また、本発明は、前記紫外線レーザー印刷用媒体に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させた印刷物およびその製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、前記紫外線レーザー印刷用媒体または印刷物を用いてなる加工品を提供することを目的とする。
本発明者等は、基材の一方の面に酸化チタンを含有する印刷層と、保護樹脂層とをこの順で有し、基材の他方の面にシーラント層を有する紫外線レーザー印刷用媒体において、印刷層中の酸化チタンの含有量を特定の範囲とし、かつ、酸化チタンの結晶子サイズを特定の範囲とすることにより、上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の<1>~<13>に関する。
<1> 基材上に、酸化チタンを含有する印刷層と、保護樹脂層とをこの順で有し、基材の他方の面にシーラント層を有し、前記印刷層中の前記酸化チタンの含有量が、0.1g/m以上4.0g/m以下であり、前記印刷層中の酸化チタンの結晶子サイズが13nm以上53nm以下である、紫外線レーザー印刷用媒体。
<2> 前記印刷層中の前記酸化チタンの結晶子サイズが30nm以上53nm以下である、<1>に記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
<3> 印刷層中の酸化チタンがルチル型酸化チタンであり、前記酸化チタンの回折角度が27.60°以下である、<1>または<2>に記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
<4> 前記保護樹脂層の厚さが10μm以上である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
<5> 前記保護樹脂層を構成する樹脂が、ポリオレフィン、ポリエステルおよびポリビニルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1つである、<1>~<4>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
<6> 前記基材が紙基材であり、前記紙基材を構成するパルプの保水度が140%以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
<7> 前記基材がフィルム基材である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
<8> フィルム基材を構成する樹脂が、ポリオレフィン、ポリエステル、およびポリ塩化ビニルよりなる群から選択される、<7>に記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
<9> 基材とシーラント層との間にバリア層を有する、<1>~<8>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
<10> <1>~<9>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用媒体から得られた印刷物であって、前記印刷層が、少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度の比が0.70以下である、印刷物。
<11> <1>~<9>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用媒体、または<10>に記載の印刷物を用いてなる、加工品。
<12> <1>~<9>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用媒体に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有する、印刷物の製造方法。
<13> 前記印刷する工程が、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下となるように紫外線レーザーを照射する工程である、<12>に記載の印刷物の製造方法。
本発明によれば、紫外線レーザー照射された際に、一点ごとの印字鮮明性に優れる印字スポットが得られ、かつ、レーザー照射された際に、保護樹脂層の膨らみが抑制された印刷物が得られ、さらにヒートシール性を有する紫外線レーザー印刷用媒体が提供される。また、本発明によれば、前記紫外線レーザー印刷用媒体に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させた印刷物およびその製造方法が提供される。さらに、本発明によれば、前記紫外線レーザー印刷用媒体または印刷物を用いてなる加工品が提供される。
図1は、印刷領域を有する液体容器の一例の概念斜視図である。
[紫外線レーザー印刷用媒体]
本発明の紫外線レーザー印刷用媒体(以下、単に「印刷用媒体」ともいう)は、基材の一方の面に、酸化チタンを含有する印刷層と、保護樹脂層とをこの順で有し、基材の他方の面にシーラント層を有し、前記印刷層中の前記酸化チタンの含有量が、0.1g/m以上4.0g/m以下であり、前記印刷層中の酸化チタンの結晶子サイズが13nm以上53nm以下である。
本発明によれば、紫外線レーザー照射された際に、一点ごとの印字鮮明性に優れる印字スポットが得られ、かつ、レーザー照射された際に、保護樹脂層の膨らみが抑制された印刷物が得られ、さらにヒートシール性を有する紫外線レーザー印刷用媒体が提供される。
上述した効果が得られる詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように考えられる。
基材上に、酸化チタンを含有する印刷層を有することにより、紫外線レーザーによるレーザー照射により、印刷層中の酸化チタンが変色し、印刷することが可能である。前記酸化チタンの変色は、印刷層が含有する酸化チタンのイオン価数が4価から3価に変化し、酸素欠陥が生じることで、白色から黒色へと変化し、これにより、視認可能となっていると考えられる。酸化チタンのイオン価数は、酸化チタンのバンドギャップに相当する光エネルギーを照射する際に変化するものと考えられる。酸化チタンのバンドギャップは結晶系によって異なるが、一般に3.0~3.2eV程度であり、これに相当する光の波長は420nm以下である。そのため、420nmを超える波長のレーザー光(例えば、532nm、1064nm、10600nm)を用いても本発明のような酸化チタンのイオン価数変化に起因する印刷を施すことは困難である。この際、印刷層中の酸化チタンの含有量を0.1g/m以上にすることで、視認性に優れ、一点ごとの印字鮮明性に優れたスポットを有する印刷物が得られる。
紫外線レーザーの照射により、酸化チタンが変色することで印刷物を得ることができるが、変色の際に酸化チタンが還元されることで、酸素や、印刷層を含む印刷媒体中の水分が気化して水蒸気が発生する。本発明者らは、発生した酸素や水蒸気によって紫外線レーザー照射部の保護樹脂層が膨らむという現象が生じることを見出した。本発明では、印刷層中の酸化チタンの含有量を4.0g/m以下とすることにより、発生する酸素や水蒸気が過度にならず、印刷物が膨らんで凹凸が発生するという現象が抑制されたと考えられる。
なお、保護樹脂層を設けることで、紫外線レーザー照射に伴う発煙が抑制されるとともに、前記発煙にともなう酸化チタンの脱離が抑制され、印字濃度が高く、また、一点ごとの印字鮮明性に優れる印刷画像が得られる傾向にある。
また、酸化チタンの結晶子サイズが13nm以上であると、結晶欠陥が少なく、励起電子と正孔の再結合の発生が抑制され、酸化チタンが還元されやすく、変色しやすいため、一点ごとの印字鮮明性に優れた印字スポットが得られたと考えられる。一方、結晶子サイズが53nm以下であることにより、過度な酸素の発生が抑制され、紫外線レーザー照射時に保護樹脂層が膨らみ、印刷物における凹凸の発生が抑制されたと考えられる。
なお、本実施形態において、印刷可能領域とは、紫外線レーザーにより照射された部分の酸化チタンが白色から黒色に変色することで、紫外線レーザーの照射による印刷が可能である領域(部分)を意味し、印刷領域とは、印刷可能領域の中で、実際に紫外線レーザーの照射により酸化チタンが変色し、視認可能となっている箇所、すなわち、紫外線レーザーの被照射部分を意味する。また、非印刷領域とは、印刷可能領域の中で、紫外線レーザーが照射されていない領域(部分)を意味する。
さらに、基材の印刷層が設けられた面とは反対面にシーラント層を有することで、ヒートシール性が付与され、ヒートシール性を有する印刷用媒体が提供される。さらに、シーラント層を有することで、ガスバリア性も付与されることが好ましい。ここで、ガスバリア性とは、主に酸素および水蒸気から選択される少なくとも1つに対するバリア性を意味し、他のガスに対してもバリア性を有していてもよい。本実施形態の印刷用媒体は、少なくとも水蒸気バリア性を有することが好ましく、これに加え、酸素バリア性を有することも好ましい。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
紫外線レーザー印刷用媒体は、酸化チタンを含有する印刷可能領域を有する。
前記印刷用媒体は、基材の一方の面に、酸化チタンを含有する印刷層および保護樹脂層をこの順で有する。なお、印刷層および保護樹脂層は一方の面に形成されており、他方の面には、シーラント層が設けられている。また、印刷用媒体の全面に印刷層および保護樹脂層をこの順で有していてもよいが、印刷を行いたい、一部の領域(部分)のみに印刷層および保護樹脂層をこの順で有していてもよい。また、シーラント層は、基材の全面に形成されていてもよいが、ヒートシール性が要求される一部の領域(部分)のみにシーラント層が設けられていてもよい。ヒートシール性の観点から、シーラント層は、印刷層が形成されている面と反対面の最外層に設けられていることが好ましい。さらに、基材とシーラント層との間に、バリア層を有していてもよく、酸素バリア性の観点からは、基材のシーラント層との間にバリア層を有することが好ましい。
また、基材と印刷層、印刷層と保護樹脂層、基材とバリア層、基材とシーラント層、シーラント層とバリア層との間に、接着剤層を有していてもよい。
<印刷層>
本実施形態の紫外線レーザー印刷用媒体は、基材の一方の面に酸化チタンを含有する印刷層を有する。印刷層は、塗工により設けてもよく、また、ラミネートにより設けてもよく、特に限定されない。すなわち、印刷層は、酸化チタンを含有する塗工層、または酸化チタンを含有するラミネート層であることが好ましい。本発明において、印刷層は、所望の箇所にのみ印刷層を設けることが容易である観点、および製造容易性の観点から、塗工により設けることがより好ましい。なお、前記「塗工により設ける」とは、塗工液(インク組成物)により印刷層を形成することを意味するものであり、例えば、グラビア印刷やインクジェット印刷等により形成する場合を含むものである。
印刷層は、酸化チタンを含有し、前記印刷層中の酸化チタンの含有量が0.1g/m以上4.0g/m以下である。
印刷層中の酸化チタンの含有量は、十分な印刷濃度を得る観点から0.1g/m以上であり、好ましくは0.2g/m以上、より好ましくは0.3g/m以上、さらに好ましくは0.4g/m以上であり、そして、一点ごとの印字鮮明性に優れる印字スポットを得る観点、印刷濃度が頭打ちとなり、必要量以上の酸化チタンを含有させることによるコストアップを抑制する観点、および紫外線レーザー照射時による保護樹脂層の凹凸の発生を抑制する観点から、4.0g/m以下であり、好ましくは3.0g/m以下、より好ましくは2.0g/m以下、さらに好ましくは1.5g/m以下、よりさらに好ましくは1.0g/m以下である。
印刷層中の酸化チタンの含有量が多過ぎると、酸化チタンの還元で生じる酸素が多く生成し、保護樹脂層の膨らみを抑制しにくい傾向がある。
なお、紫外線レーザー印刷用媒体の少なくとも印刷可能領域が酸化チタンを上記の含有量で含有していればよく、印刷を行わない領域において、印刷層が設けられてない部分が存在してもよく、また、酸化チタンの含有量が0.1g/m未満または4.0g/mを超える印刷層が設けられている領域が存在していてもよい。製造の簡易性の観点から、印刷用媒体の全領域に酸化チタンの含有量が0.1g/m以上4.0g/m以下である印刷層が設けられていることも好ましい。
本実施形態において、印刷用媒体が、酸化チタンを含有する印刷層の下層として、酸化チタンを含有しない下塗り層や、酸化チタンの含有量が0.1g/m未満または4.0g/mを超える下塗り層を有していてもよい。そのような場合には、酸化チタンの含有量は、下層を含めた印刷層の全層中の含有量が0.1g/m以上4.0g/m以下である。
印刷層の1m当たりの質量(坪量、固形分)は、印字濃度の観点、一点ごとの印字鮮明性の観点から、好ましくは0.2g/m以上、より好ましくは0.5g/m以上、さらに好ましくは1.0g/m以上であり、そして、好ましくは50g/m以下、より好ましくは20g/m以下、さらに好ましくは10g/m以下ある。
印刷層(固形分)中の酸化チタンの含有量は、印字濃度の観点、一点ごとの印字鮮明性の観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上、よりさらに好ましくは5.0質量%以上、特に好ましくは10.0質量%以上であり、そして、印刷濃度が頭打ちとなり、必要以上の酸化チタンを含有させることによるコストアップを抑制する観点、印刷層の形成容易性の観点、紫外線レーザー照射時の保護樹脂層の膨らみの発生を抑制する観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下、よりさらに好ましくは60質量%以下である。
印刷層の厚さは、一点ごとの印字鮮明性の観点および印刷層形成の容易性の観点から、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは2.0μm以上であり、そして、印刷濃度が頭打ちとなる観点および印刷層形成容易性の観点から、好ましくは40.0μm以下、より好ましくは30.0μm以下、さらに好ましくは25.0μm以下、よりさらに好ましくは20.0μm以下である。
印刷層の厚さは、印刷用媒体の断面の電子顕微鏡(SEM)の観察像から測定される。
印刷用媒体の基材は、後述するように紙基材またはフィルム基材が好ましく、紙基材やフィルム基材自体が酸化チタンを含有してもよい。
印刷層は、酸化チタンに加え、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。さらに、酸化チタン以外の無機顔料を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
(酸化チタン)
印刷層が含有する酸化チタンは、組成式TiOで表され、二酸化チタン、またはチタニアとも呼ばれる。
本実施形態において、印刷層中の酸化チタンの結晶子サイズは、13nm以上である。印刷層中の酸化チタンの結晶子サイズが13nm未満であると、結晶欠陥が多く、紫外線レーザー照射によって励起した励起電子と正孔の再結合が発生しやすく、結果として、酸化チタンが還元されにくく、一点ごとの印字鮮明性に劣る。酸化チタンの結晶子サイズは、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは35nm以上、よりさらに好ましくは40nm以上である。
また、酸化チタンの結晶子サイズは、紫外線レーザー照射による保護樹脂層の膨らみを抑制する観点、塗工液中や印刷層中での分散安定性の観点から、53nm以下であり、好ましくは50nm以下である。酸化チタンの結晶子サイズの上限が上記範囲内であると、紫外線レーザー照射時の酸素等の発生が過度とならず、保護樹脂層の膨らみが抑制されるので好ましい。また、塗工液中や印刷層中において、酸化チタンの分散安定性が良好であり、印字均一性に優れるので好ましい。
酸化チタンの結晶子サイズは、実施例に記載の方法により測定される。
なお、結晶子サイズは、シェラー式により求められ、ブラッグ角としては、アナターゼ型の酸化チタンの場合には101面、ルチル型の酸化チタンの場合には110面に由来する最大強度の実測値を使用する。
酸化チタンは、いずれも結晶構造でもよく、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、およびブルッカイト型酸化チタンから選択される少なくとも1つであることが好ましく、入手容易性および安定性の観点から、ルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つであることがより好ましく、ルチル型酸化チタンであることがさらに好ましい。
酸化チタンの結晶形は、公知の方法で決定することができ、具体的には、ラマンスペクトル、XRDパターンの解析などにより決定することができる。例えば、ラマンスペクトルから同定する場合には、一般的には、ルチル型では、447±10cm-1、609±10cm-1にピークが確認され、アナターゼ型では、395±10cm-1、516±10cm-1、637±10cm-1にピークが確認される。
酸化チタンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
酸化チタンがルチル型酸化チタンであるとき、酸化チタンの回折角度は、一点ごとの印字鮮明性の観点から、27.60°以下であることが好ましい。ルチル型の酸化チタンのブラッグ角は、本来は27.40°であるが、結晶性が低いと、回折角度が高くなる傾向にある。酸化チタンの回折角度が27.60°を超えると、結晶性が低く、変色が抑制されるため、一点ごとの印字鮮明性に劣る傾向にある。
酸化チタンがルチル型酸化チタンであるとき、酸化チタンの回折角度は、好ましくは27.60°以下、より好ましくは27.55°以下、さらに好ましくは27.50°以下である。
酸化チタンの回折角度は、ルチル型の場合には、上述したように、110面に由来する最大強度の実測値である。
酸化チタンの形状は特に限定されず、不定形、球状、棒状、針状等の、いずれの形状であってもよい。
酸化チタンが不定形または球状である場合、酸化チタンの平均粒子径は特に限定されないが、表面平滑性に優れる印刷用媒体を得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.10μm以上、よりさらに好ましくは0.15μm超、特に好ましくは0.16μm以上であり、そして、好ましくは20.0μm以下、より好ましくは5.0μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下、よりさらに好ましくは0.50μm以下、特に好ましくは0.30μm以下である。
また、酸化チタンが針状である場合、酸化チタンの長径は、特に限定されないが、表面平滑性に優れる印刷用媒体を得る観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上であり、そして、好ましくは50.0μm以下、より好ましくは30.0μm以下、さらに好ましくは15.0μm以下である。また、短径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であり、そして、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。また、酸化チタンが針状である場合、アスペクト比(長径/短径)は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、そして、好ましくは300以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは30以下である。
酸化チタンの粒子径、長径および短径は、実施例に記載の方法により測定される。なお、原料として使用した酸化チタンの粒子径、長径、および短径の値を採用してもよく、原料として使用した酸化チタンの粒子径、長径、および短径のカタログ値を採用してもよい。
(熱可塑性樹脂)
印刷層に使用される熱可塑性樹脂は、バインダーとして機能する。
印刷層の熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、印刷層を塗工により設ける場合には、水性塗工液として塗布してもよく、有機溶剤系塗工液(油性塗工液)としてもよい。
なお、印刷層を塗工により設ける場合、該印刷層を塗工層ともいう。また、塗工層を設けるために使用する組成物を、塗工液またはインク組成物ともいう。
水性塗工液として塗工する場合には、熱可塑性樹脂は、水希釈性の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
水希釈性の樹脂とは、水溶性、エマルション型、ディスパーション型の樹脂が例示される。
水希釈性の熱可塑性樹脂としては、天然樹脂、合成樹脂のいずれでもよく、例えば、澱粉誘導体、カゼイン、シュラック、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、アクリル系樹脂、マレイン酸系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
より具体的には、アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸と、そのアルキルエステルまたはスチレン等とをモノマー成分として共重合したアクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、スチレン-アクリル酸-マレイン酸樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂などが例示される。
これらの中でも、塗工液の安定性、印刷層の耐溶剤性の観点から、澱粉誘導体、カゼイン、シュラック、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、アクリル系樹脂、マレイン酸系樹脂、およびスチレン-ブタジエン系樹脂から選択される少なくとも1つが好ましく、澱粉誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、アクリル系樹脂、マレイン酸系樹脂、およびスチレン-ブタジエン系樹脂から選択される少なくとも1つがより好ましく、澱粉誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、アクリル系樹脂、およびスチレン-ブタジエン系樹脂から選択される少なくとも1つがさらに好ましく、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、アクリル系樹脂、およびスチレン-ブタジエン系樹脂から選択される少なくとも1つがよりさらに好ましい。
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤系の塗工液(油性塗工液)とする場合には、セルロース系樹脂(例えば、硝化綿、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなど)、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル共重合系樹脂等の公知の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されず、熱可塑性樹脂の種類や、塗工液中の酸化チタンや後述する無機顔料の含有量等に応じて適宜選択すればよく、例えば、塗工液の固形分中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
印刷層を塗工により設ける場合、塗工層は、塗工液の塗布および乾燥により設けることが好ましい。
塗工液が、水性塗工液である場合には、使用する水性媒体としては、水、または水と水混和性溶剤との混合物が挙げられる。
水混和性溶剤としては、低級アルコール類、多価アルコール類、およびそれらのアルキルエーテルまたはアルキルエステル類が挙げられる。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
有機溶剤系塗工液(油性塗工液)である場合には、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール等のアルコール系有機溶剤、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤など公知の溶剤等が挙げられる。
塗工液の固形分濃度は特に限定されないが、所望の塗工層の厚さを得る観点、塗工液を塗工容易な粘度とする観点、および乾燥容易性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、よりさらに好ましくは65質量%以下である。
塗工液の粘度は、塗工適性、所望の塗工層の厚さを得る観点、および乾燥容易性の観点から、Brookfield型粘度計による測定で、好ましくは10mPa・s(20℃)以上、より好ましくは15mPa・s(20℃)以上、さらに好ましくは20mPa・s(20℃)以上であり、そして、好ましくは5000mPa・s(20℃)以下、より好ましくは4000mPa・s(20℃)以下、さらに好ましくは3000mPa・s(20℃)以下、よりさらに好ましくは2000mPa・s(20℃)以下である。
印刷層をラミネートにより設ける場合には、酸化チタンを含有するフィルムを基材に積層することが好ましい。なお、印刷層をラミネートにより設ける場合、該印刷層をラミネート層ともいう。
ラミネート層を構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、酸化チタンを内包させてフィルム状に加工可能であればよく、公知の熱可塑性樹脂の中から、適宜選すればよい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリアミド;ポリアクリロニトリル;ポリ(メタ)アクリレート等が例示される。
これらの中でも、ラミネート層を構成する樹脂は、汎用的に使用することができ、かつ、紫外線の透過率が高く、フィルムの内部まで酸化チタンの変色を可能とする観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステルを含むことが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンスクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つを含むことがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンスクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つであることがさらに好ましい。ラミネート層を構成する樹脂は、ポリオレフィンであることがよりさらに好ましく、ポリエチレンおよびポリプロピレンよりなる群から選択される少なくとも1つであることがよりさらに好ましい。ポリエチレン(PE)は、大きくは直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)のように区分される。これらの中では、押し出しラミネート性に優れることから、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。
なお、ラミネート層を構成する樹脂として、生分解性樹脂であるポリエステルを使用すると、環境負荷が低減される点で好ましく、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートが例示される。
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ラミネート層中の熱可塑性樹脂の含有量は、視認性に優れ、一点ごとの印字鮮明性に優れる印刷用媒体を得る観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、よりさらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
(酸化チタン以外の無機顔料)
印刷層は、上述した酸化チタンおよび熱可塑性樹脂に加え、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、酸化チタン以外の無機顔料(以下、単に「無機顔料」ともいう)が挙げられる。酸化チタン以外の無機顔料を含有することにより、紫外線レーザー照射による酸化チタンの発熱および保護樹脂層の軟化が抑制され、また、その結果、保護樹脂層の膨らみの発生が抑制されるので好ましい。
無機顔料としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、カオリン、酸化マグネシウム、マイカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウムが例示され、これらの中でも、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、カオリン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、およびマイカよりなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましく、炭酸カルシウムおよびタルクよりなる群から選択される少なくとも1つであることがより好ましい。
無機顔料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
無機顔料の形状は特に限定されず、不定形、球状、板状、棒状、針状等の、いずれの形状であってもよい。
無機顔料が不定形、球状、または板状である場合、無機顔料の平均粒子径は特に限定されないが、表面平滑性に優れる印刷用媒体を得る観点、および保護樹脂層の膨らみの発生を抑制する観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.15μm以上、さらに好ましくは0.20μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
また、無機顔料が針状である場合、無機顔料の長径は、特に限定されないが、表面平滑性に優れる印刷用媒体を得る観点、および保護樹脂層の膨らみを抑制する観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは2.0μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。また、短径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上であり、そして、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。また、無機粒子が針状である場合、アスペクト比(長径/短径)は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは3.0以上であり、そして、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。
印刷層が酸化チタン以外の無機顔料を含有する場合、印刷層中の無機顔料の含有量は、保護樹脂層の膨らみの発生を抑制する観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、よりさらに好ましくは80質量%以下である。
印刷層が酸化チタン以外の無機顔料を含有する場合、酸化チタンと、酸化チタン以外の無機顔料との質量比(酸化チタン/酸化チタン以外の無機顔料)は、保護樹脂層の膨らみの発生を抑制する観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.10以上であり、そして、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.2以下である。
印刷層は、上述した成分に加え、造膜剤、顔料分散剤、顔料分散樹脂、ブロッキング防止剤、湿潤剤、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、一般の界面活性剤等を含有していてもよい。
(塗工液)
印刷層を塗工により設ける場合、塗工液(インク組成物)が水性塗工液である場合には、上記の各種材料を水性媒体と混合して得ることが好ましい。なお、塗工液が水性塗工液である場合、水性媒体との混合に先立ち、酸化チタン、熱可塑性樹脂、水、および必要に応じて酸化チタン以外の無機顔料、水混和性溶剤、顔料分散剤、顔料分散性樹脂等を混合して混練し、これに、さらに水、必要に応じて水混和性溶剤、および所定の材料の残りを添加、混合してもよい。
また、塗工液が油性塗工液である場合、有機溶剤と樹脂とを混合した後に、酸化チタンや酸化チタン以外の顔料を添加してもよく、予め、顔料分散剤、顔料分散性樹脂等を有機材と樹脂との混合液に添加してもよく、後から添加してもよい。
塗工液は、上記各成分をホモミキサー、ラボミキサー等の高速撹拌機や、コーレス分散機、3本ロールミルやビーズミル等の分散機にて混合、分散することにより得られる。
塗工液の塗布方法としては特に限定されず、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、スプレー塗布、メイヤーバー、グラビアコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ダイコーター、バーコーター等により基材に塗布すればよい。
(ラミネート層)
印刷層がラミネート層である場合、ラミネートするフィルムは、少なくとも酸化チタンおよび熱可塑性樹脂、並びに必要に応じて無機顔料等の材料を溶融混練した原料組成物を調製し、これをフィルム状に成形した後、必要に応じて延伸することで得られる。
なお、原料組成物の調製に際し、酸化チタンや無機顔料を高濃度で含有するマスターバッチを調製してから、これを樹脂と混合してもよい。
また、予め均一に混合した材料を成形機に仕込んでもよく、成形機と一体となったホッパーや混練機で混合してもよい。
フィルム状に成形する方法としては、従来公知の方法から適宜選択すればよく、例えば、溶融押出法、溶融流延法、カレンダー法等の中から、適宜選択すればよい。
基材とフィルムとを接着剤層を介して貼付してもよく、またはラミネート加工することが好ましい。
なお、接着剤層としては特に限定されず、公知の接着剤層から適宜選択して用いればよい。具体的には、特開2012-57112号公報の粘着剤層が例示される。
ラミネート加工としては、具体的には、熱ラミネート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出ラミネート法等により、基材とラミネート層とを積層することが例示される。
これらの中でも、ラミネート層と基材とを貼付する工程が不要であり、製造工程の観点から、押出ラミネート法が好ましい。
<基材>
本実施形態において、基材は、印刷層を設けることが可能な基材であれば特に限定されず、紙、不織布、布、フィルム(樹脂フィルム)、金属等の種々の基材から適宜選択すればよい。
これらの中でも、印刷層の形成が容易である観点から、紙、不織布および布、並びにフィルムから選択される少なくとも1つであることがより好ましく、紙およびフィルムから選択される少なくとも1つであることがさらに好ましい。基材が紙である場合、当該基材を紙基材ともいう。また、基材が樹脂フィルムである場合、当該基材をフィルム基材ともいう。
なお、例えば紙基材は、紙に塗工層が設けられた塗工紙であってもよく、該塗工層は、紙基材の印刷層側に設けられていてもよく、その反対面に設けられてもよく、特に限定されない。
(紙基材)
本実施形態において、基材として紙基材を使用してもよい。
紙基材を構成する原料パルプとしては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、特に限定されないが、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、特に限定されないが、例えば、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、竹、バガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、特に限定されないが、例えば、古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。原料パルプは、上記の1種を単独でも2種以上混合して用いてもよい。なお、原料パルプに、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の有機合成繊維、ポリノジック繊維等の再生繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機繊維を混用してもよい。
原料パルプは、入手のしやすさという観点から、木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、原料パルプは、木材パルプの中でも、地合いの均一性の観点から、好ましくは化学パルプであり、より好ましくはクラフトパルプであり、さらに好ましくはユーカリ、アカシア等の広葉樹クラフトパルプ、およびマツ、スギ等の針葉樹クラフトパルプから選択される1種以上であり、よりさらに好ましくは広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)および針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)から選択される1種以上であり、特に好ましくはLBKPである。
紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長は、塗工ムラを抑制し、印字1点ごとの鮮明さを向上させる観点から、好ましくは0.6mm以上、より好ましくは0.65mm以上、さらに好ましくは0.7mm以上であり、そして、好ましくは3.5mm以下であり、より好ましくは2.5mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下、よりさらに好ましくは1.5mm以下、特に好ましくは1.0mm以下である。
紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が上記上限以下であると、パルプ同士が密に絡まり合うことで、紙基材の空隙が減少し、塗工層を設けた場合に塗工ムラが抑制され、一点ごとの印字鮮明性に優れた印刷物が得られるので好ましい。
また、紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長が上記下限以上であると、紙基材としての強度が向上し、さらに、紙粉が低減されるため、印字箇所の脱落も抑制できるので好ましい。
紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長は、実施例に記載の方法により測定される。
紙基材を構成するパルプ繊維の平均繊維幅は、好ましくは14.0μm以上、より好ましくは15.0μm以上、さらに好ましくは15.5μm以上、よりさらに好ましくは16.0μm以上であり、そして、好ましくは35.0μm以下であり、好ましくは33.0μm以下、より好ましくは31.0μm以下、さらに好ましくは28.0μm以下、よりさらに好ましくは24.0μm以下、よりさらに好ましくは21.0μm以下である。
紙基材を構成するパルプ繊維の平均繊維幅が35.0μm以下であると、パルプ同士が密に絡まり合うことで、紙基材の表面が平滑化し、印刷層を設けた場合に塗工ムラが抑制され、印刷層表面が平滑化することで、一点ごとの印字鮮明性に優れた印刷物が得られるので好ましい。また、平均繊維幅が14.0μm以上であると、紙基材としての強度が向上し、さらに、紙粉が低減されるため、印字箇所の脱落も抑制できるので好ましい。
紙基材を構成するパルプ繊維の平均繊維幅は、実施例に記載の方法により測定することができる。
紙基材を構成するパルプ中、繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合は、好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは6%以上、よりさらに好ましくは10%以上、特に好ましくは15%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。
微細繊維の本数割合が40%以下であると、紙基材としての強度が確保でき、また、微細繊維の離脱による印字箇所の脱落も抑制されるため好ましい。また、微細繊維の本数割合が4%以上であると、繊維間の隙間を埋める形で微細繊維が配置され、紙基材の空隙が減少し、塗工層を設けた場合に塗工ムラが抑制され、その結果、一点ごとの印字鮮明性、および印字均一性が向上するので好ましい。
紙基材を構成するパルプ中の繊維長が0.2mm以下の微細繊維の本数割合は、紙基材を実施例に記載の方法にて離解し、得られたパルプスラリーの繊維長を繊維長測定装置(例えば、バルメット社製、型式FS-5、UHDベースユニット付き)にて測定して算出する。繊維長が0.2mm以下であり、かつ、繊維幅が75μm以下の繊維を微細繊維とし、測定したパルプの本数に対する、微細繊維の本数割合を算出する。
紙基材を構成するパルプ繊維の保水度は、紫外線レーザー印刷による保護樹脂層の膨らみの発生を抑制する観点から、好ましくは140%以下、より好ましくは130%以下、さらに好ましくは125%以下であり、そして、下限は特に限定されないが、好ましくは95%以上、より好ましくは100%以上であり、さらに好ましくは105%以上、よりさらに好ましくは110%以上、よりさらに好ましくは115%以上である。
紫外線レーザーの光を吸収した酸化チタンが発熱し、直下に位置する紙基材を構成するパルプも加熱されることにより、水蒸気が発生すると考えられる。保水度が高いと、発生する水蒸気量が多く、発生した水蒸気によって保護樹脂層の膨らみが発生する傾向にある。
パルプ繊維の保水度は、パルプ繊維中のヘミセルロース含有量が多いと、高い傾向がある。従って、α-セルロース含有量が高く、ヘミセルロース含有量が減少した溶解パルプを原料パルプとして使用した場合には、保水度が減少する傾向にある。
また、パルプ繊維の叩解度が高いと、保水度が向上する傾向にある。従って、カナダ標準ろ水度(CSF:Canadian Standard Freeness)が小さく、叩解度の高いパルプ繊維を使用すると、保水度が増加する傾向にある。
紙基材を構成するパルプ繊維の保水度は、実施例に記載の方法により測定される。
紙基材に用いられる木材パルプのカナダ標準ろ水度(Canadian Standard Freeness;CSF)は、所望の繊維幅および繊維長、印刷層表面の平滑度を得る観点から、好ましくは150mL以上、より好ましくは300mL以上、さらに好ましくは400mL以上であり、そして、好ましくは800mL以下、より好ましくは750mL以下、さらに好ましくは700mL以下、よりさらに好ましくは600mL以下である。
ここで、CSFは、JIS P 8121-2:2012によるカナダ標準ろ水度のことである。
紙基材は、必要に応じて内添剤を添加したパルプスラリーを抄紙することにより得られる。
紙基材には、上述したパルプに加え、填料、サイズ剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤(例えば、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン)、歩留向上剤(例えば、硫酸バンド)、濾水性向上剤、pH調整剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、染料・顔料等の公知の抄紙用内添剤を必要に応じて添加することができる。
填料としては、例えば、カオリン、タルク、酸化チタン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネーテッドカオリン、珪藻土、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等を例示することができる。
サイズ剤としては、例えば、ロジン系、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン-アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系サイズ剤などが挙げられる。
紙基材の抄紙においては、公知の湿式抄紙機、例えば、長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の抄紙機を適宜選択して使用することができる。次に、抄紙機によって形成された紙層をフェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させる。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。
また、上記のようにして得られた紙基材に、カレンダーによる表面処理を施して厚さやプロファイルの均一化を図り、印刷適性の向上を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。
紙基材としては、ライナー原紙、クラフト紙、上質紙、コート紙等の従来公知の紙基材の中から、適宜選択して使用してもよい。
また、紙基材は、単層であっても多層であってもよく、異なるパルプ組成の多層構成としてもよい。
紙基材の坪量は、印刷用媒体としての強度、および印刷適性向上の観点から、好ましくは30g/m以上、より好ましくは35g/m以上であり、そして、好ましくは1000g/m以下、より好ましくは700g/m以下である。
坪量はJIS P 8124:2011に規定される方法で測定する。
紙基材の厚さは特に限定されないが、印刷用媒体としての強度、および印刷適性向上の観点から、好ましくは30μm以上、より好ましくは35μm以上、さらに好ましくは40μm以上、よりさらに好ましくは50μm以上であり、そして、好ましくは900μm以下、より好ましくは500μm以下であり、さらに好ましくは300μm以下である。
紙基材の厚さはJIS P 8118:2014記載の方法で測定することができる。
紙基材の密度は特に限定されないが、印刷用媒体としての強度、および印刷適性向上の観点から、好ましくは0.6g/cm以上、より好ましくは0.7g/cm以上であり、そして、好ましくは1.2g/cm以下、より好ましくは1.0g/cm以下、さらに好ましくは0.9g/cm以下である。
紙基材の密度は、上述した紙基材の坪量および厚さから算出される。
(フィルム基材)
フィルム基材を構成する樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう)としては、特に限定されず、フィルム状に加工可能であればよく、公知の熱可塑性樹脂の中から、適宜選すればよいが、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリアミド;ポリアクリロニトリル;ポリ(メタ)アクリレート等が例示される。
これらの中でも、フィルム基材を構成する樹脂は、汎用的に使用することができる観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステル、ポリ塩化ビニルを含むことが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンスクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つを含むことがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンスクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つであることがさらに好ましい。フィルム基材を構成する樹脂は、ポリオレフィンであることがよりさらに好ましく、ポリエチレンおよびポリプロピレンよりなる群から選択される少なくとも1つであることがよりさらに好ましく、少なくともポリプロピレンを含有することが特に好ましい。
なお、フィルム基材を構成する樹脂として、生分解性樹脂であるポリエステルを使用すると、環境負荷が低減される点で好ましく、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートが例示される。
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、フィルム基材は、延伸されていても、未延伸であってもよく、特に限定されない。例えば、フィルム基材がポリプロピレンフィルムである場合、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)であってもよく、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)であってもよい。
本実施形態において、フィルム基材には、上述した樹脂に加えて、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに他の成分を添加してもよく、例えば、酸化チタンを含む顔料、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、HALS、可塑剤、滑剤、難燃剤、離型剤、着色剤などが例示される。
フィルム基材の厚さは、強度を向上する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、そして、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
フィルムの厚さは、実施例に記載の方法により測定される。
〔フィルム基材の製造方法〕
フィルム基材は、樹脂、並びに必要に応じて無機顔料等の材料を溶融混練した原料組成物を調製し、これをフィルム状に成形した後、適宜延伸してもよい。
なお、原料組成物の調製に際し、フィルム基材の酸化チタンを含む無機顔料を含有する場合には、無機顔料を高濃度で含有するマスターバッチを調製してから、これを樹脂と混合してもよい。また、予め均一に混合した材料を成形機に仕込んでもよく、成形機と一体となったホッパーや混練機で混合してもよい。
フィルム状に成形する方法としては、従来公知の方法から適宜選択すればよく、例えば、溶融押出法、溶融流延法、カレンダー法等の中から、適宜選択すればよい。
本実施形態のフィルム基材に延伸処理が施される場合、該延伸処理は、一軸延伸でも、二軸延伸でもよい。延伸処理は、少なくとも縦方向に延伸することが好ましく、これに加えて、横方向に延伸してもよい。
(布、不織布)
基材が布または不織布である場合、布および不織布を構成する原料としては、天然繊維である綿、麻、セルロース繊維、羊毛等;合成繊維であるポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド(ナイロン)等;再生繊維であるレーヨン、アセテート等が例示される。
なお、基材としては、適宜市販されている基材を使用してもよく、例えば、紙基材として、市販の各種の紙を採用してもよく、フィルム基材として、各樹脂の樹脂フィルムを採用してもよい。
<保護樹脂層>
本実施形態の印刷用媒体は、印刷用媒体の耐水性を向上させる観点、また、保護層としての機能の観点、印字濃度が高く、一点ごとの印字鮮明性を向上させる観点、紫外線レーザー印刷時の発煙を抑制する観点から、印刷層上に、さらに保護樹脂層を有する。
保護樹脂層の全光線透過率は、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましく70%以上、よりさらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上であり、そして、100%以下である。上限は特に限定されない。
全光線透過率は、JIS K 7361-1:1997に準拠して測定される。
保護樹脂層を構成する樹脂は、全光線透過率が好ましくは40%以上であり、印刷層が設けられた基材上に設けることができれば特に限定されない。透明性および保護樹脂層を設けることが容易である観点から、保護樹脂層と印刷層が設けられた基材とを接着剤層とを介して貼付するか、印刷層が設けられた保護樹脂層と基材とを接着剤層を介して貼付するか、または保護樹脂層と印刷層が設けられた基材とをラミネート加工により積層することが好ましい。上記の場合、保護樹脂層を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリビニルアルコール;およびデンプンが例示され、これらの中でも、ポリオレフィン、ポリエステル、およびポリビニルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコールから選択される少なくとも1つであることがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンであることがさらに好ましく、ポリプロピレンであることが特に好ましい。なお、保護樹脂層は、延伸されていてもよく、無延伸であってもよく、特に限定されない。
また、保護樹脂層を塗工により設ける場合には、アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂などが例示される。
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸と、そのアルキルエステル、スチレン、(メタ)アクリル酸以外の不飽和カルボン酸、エチレン、プロピレン等のその他のモノマーとを共重合した樹脂が例示され、具体的には、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸-マレイン酸樹脂などが例示され、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。
保護樹脂層と印刷層を有する基材とは、いずれの方法により積層されていてもよく、特に限定されないが、製造容易性の観点から、保護樹脂層と印刷層を有する基材とを接着剤層とを介して貼付するか、またはラミネート加工するか、透明塗料を液状塗料の形で塗工するか、あるいは、印刷層を有する保護樹脂層と、基材とを接着剤層とを介して貼付することが好ましい。
局所的に保護樹脂層を設ける場合には、製造容易性の観点から、接着剤を介して貼付することが好ましい。また、広範囲に保護樹脂層を設ける場合には、ラミネート加工することが好ましい。
なお、接着剤層としては特に限定されず、公知の接着剤層から適宜選択して用いればよい。具体的には、特開2012-57112号公報の粘着剤層が例示される。
保護樹脂層の厚さは特に限定されないが、紫外線レーザー照射によるの保護樹脂層の膨らみを抑制する観点、鮮明な印字を得る観点、並びに印刷物および印刷用媒体のハンドリング性の観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは12μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
なお、保護樹脂層の厚さが薄いと、紫外線レーザー照射によって保護樹脂層の膨らみが発生しやすい傾向にある。
<シーラント層>
本実施形態の印刷用媒体は、基材の印刷層を設けた面と反対面にシーラント層を有する。シーラント層は、加熱、超音波等で溶融し、接着する層である。本実施形態の印刷用媒体は、シーラント層を基材の両方の面に有していてもよい。また、ヒートシール性を付与する観点から、少なくとも一方の面の最上層にシーラント層を有しており、シーラント層が一方の面に2層以上形成されていてもよい。なお、シーラント層は、少なくとも基材の印刷層を設けた側の反対面に有していればよいが、印刷層を設けた側の面にも設けられていてもよい。
シーラント層を構成する樹脂(以下、「シーラント層用樹脂」とも称する)としては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂(例えば、スチレン-アクリル酸共重合体)、エチレンアクリル樹脂(エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体)、およびこれらの変性物等が挙げられる。シーラント層用樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
シーラント層用樹脂としては、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては、実施例で使用しているもの等を使用することができる。
シーラント層は、溶融押出、接着剤等により積層して形成してもよく、シーラント層用の塗工液を作製して該塗工液を塗工することにより形成する方法が例示される。接着剤としては、公知の接着剤を使用することができる。なお、シーラント層を二層以上形成してもよい。なお、シーラント層を、シーラント層用樹脂フィルムを接着剤等によりラミネートする場合には、当該樹脂フィルムは、未延伸であってもよく、一軸または二軸延伸されていてもよい。
シーラント層を積層して形成する場合、シーラント層用樹脂としては、これらの中でも、ヒートシール性およびガスバリア性の観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリ塩化ビニリデン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、ポリオレフィン樹脂を含むことがより好ましく、ポリオレフィン樹脂であることがさらに好ましい。
また、シーラント層が2種以上の層からなる積層シーラント層である場合、ヒートシール性の観点から、基材と反対面(最外層)がポリオレフィン樹脂層であることが好ましく、ポリエチレン樹脂層であることがより好ましい。
ポリオレフィン樹脂は、ヒートシール性およびガスバリア性の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン-プロピレン共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ポリエチレンおよびポリプロピレンの少なくとも一方であることがさらに好ましい。
なお、ポリエチレンは、低密度ポリエチレン(LDPE)でもよく、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)でもよく、中密度ポリエチレン(MDPE)でもよく、高密度ポリエチレン(HDPE)でもよい。
ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612などが例示される。
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やこれらの誘導体などが例示される。
なお、後述する生分解性樹脂の多くはポリエステル樹脂にも該当する。
ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)は、塩素を含むビニリデン基を重合させた合成樹脂であり、塩化ビニル、アクリロニトリル等との共重合体であってもよい。
生分解性樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、3-ヒドロキシブタン酸・3-ヒドロキシヘキサン酸共重合体(PHBH)等が例示され、これらの中でも、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)が好ましく、ポリブチレンサクシネート(PBS)がより好ましい。
シーラント層として、2種以上の樹脂が積層された、積層フィルムを使用してもよく、例えば、ポリエチレン/ポリプロピレン積層フィルム、ポリアミド樹脂/ポリ塩化ビニリデン樹脂積層フィルム、ポリエチレン/ポリエステル樹脂積層フィルム等が例示される。
接着剤を用いてシーラント層や後述するバリア層を貼り合わせる場合、使用する接着剤としては特に限定されず、無溶剤型、有機溶剤型、水系型などのいずれでもよいが、紙基材の形状安定性を確保する観点から、有機溶剤型の接着剤、または無溶剤型の接着剤を使用することが好ましい。
接着剤を構成する主成分としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、天然ゴム、カゼイン、澱粉等が例示される。これらの中でも、入手容易性および良好な接着性が得られる観点から、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンが好ましく、ポリウレタンがより好ましい。
接着剤としては、市販されている接着剤を適宜使用してもよく、例えば、ニッポランID-816(東ソー株式会社製)とHARDENER300(東ソー株式会社製)との組み合わせ、ディックドライLX-500(DIC株式会社製)とディックドライKW-75(DIC株式会社製)との組み合わせが例示される。
なお、シーラント層やバリア層に接着剤を塗布後に、シーラント層やバリア層と基材とを積層してもよく、基材に接着剤を塗布後に、基材とシーラント層やバリア層とを積層してもよく、また、シーラント層やバリア層と基材との両方に接着剤を塗布後に、両者を積層してもよく、特に限定されないが、形状安定性の観点から、シーラント層やバリア層に接着剤を塗布後に、基材を積層することが好ましい。
接着剤の塗布方法としては、従来公知の方法の中から適宜選択すればよく、特に限定されないが、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター、スプレーコーターなどが例示される。
接着剤の付与量は特に限定されないが、乾燥後の付与量(塗工量)は、シーラント層やバリア層と基材との密着性を高める観点から、好ましくは1g/m以上、より好ましくは2g/m以上、さらに好ましくは3g/m以上であり、そして、好ましくは40g/m以下、より好ましくは20g/m以下、さらに好ましくは10g/m以下である。
塗工液によりシーラント層を形成する場合、シーラント層用樹脂としては、ヒートシール性を有するものであれば特に制限されないが、スチレン-ブタジエン共重合体;エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体等のオレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体;生分解性樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル共重合体、スチレン-メタクリル共重合体等のアクリル系樹脂から選ばれる1種以上であることがより好ましい。
これらの中でも、スチレン-アクリル酸共重合体およびオレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体から選ばれる1種以上であることがさらに好ましい。本明細書においては、アクリル系樹脂には、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体が含まれないものとする。
オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体は、不飽和カルボン酸系単量体由来のカルボキシ基が、アルカリ金属水酸化物、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミン等で一部あるいは全部中和されている塩であってもよい。
オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体のオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン等が挙げられる。これらは、1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。これら中でも、エチレンが好ましい。
オレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体の不飽和カルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸等の不飽和カルボン酸;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル等の、少なくとも1個のカルボキシ基を有する不飽和ポリカルボン酸アルキルエステル;アクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリル酸スルホエチルナトリウム塩、メタクリル酸スルホプロピルナトリウム塩等の不飽和スルホン酸単量体またはその塩;などが挙げられる。これらは、1種類であってもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、不飽和カルボン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸がより好ましく、アクリル酸が特に好ましい。
従って、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体としては、エチレン-アクリル酸共重合体およびエチレン-メタクリル酸共重合体の少なくとも一方であることが好ましい。
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体は、エチレンと前記不飽和カルボン酸系単量体とを乳化重合することによって得ることが好ましい。エチレン-不飽和カルボン酸系共重合体としては、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体が好ましい。本発明の効果を損なわない程度であれば、共重合体には、エチレンおよび不飽和カルボン酸系単量体と共重合可能なその他の化合物からなる単量体が共重合されていてもよい。
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の具体例としては、ザイクセン(登録商標)A,ザイクセン(登録商標)AC(以上、住友精化株式会社製)、ケミパールSシリーズ(三井化学株式会社製)、MFHS1279、MP498345N、MP4983R、MP4990R(以上、マイケルマン合同会社製)等が挙げられる。
生分解性樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)から選ばれる1種以上であることが好ましく、ポリ乳酸およびポリブチレンサクシネートから選ばれる1種以上であることがより好ましく、ポリ乳酸であることが特に好ましい。紙基材を用いた包装材料等は、樹脂フィルムからなる包装材料等と比べて環境負荷の低減という利点を有しているが、本実施形態におけるシーラント層として生分解性樹脂を用いることによって、より一層環境負荷を低減させることができる。
ポリ乳酸は、市販品、合成品のいずれを使用してもよい。市販品としては、例えばランディPL-1000、ランディPL-3000(ポリ乳酸の水性分散液、ミヨシ油脂株式会社製)等が挙げられる。
シーラント層を塗工により設ける場合、シーラント層用塗工液は、シーラント層用樹脂(水懸濁性高分子)に加えて、滑剤、顔料、消泡剤、粘度調整剤、界面活性剤、レベリング剤、着色剤などを含有していてもよい。
なお、これらの他の成分は、ヒートシール性を悪化させる傾向があることから、他の成分の含有量の合計は、シーラント層の固形分中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
シーラント層用塗工液の固形分中のシーラント層用樹脂の含有量は、高いヒートシール剥離強度を得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましく70質量%以上である。
シーラント層用塗工液の塗工に使用する装置は、特に限定されず、一般に使用されている塗工装置から適宜選択して使用すればよい。例えば、エアナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、メイヤーバーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、メータリングブレード式のサイズプレスコーター、ショートドウェルコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、リップコーター等の公知の各種塗工装置が挙げられる。
シーラント層の乾燥条件は、特に限定されないが、乾燥温度は、好ましくは50~120℃であり、乾燥時間は、好ましくは5~120秒である。
塗工したシーラント層を乾燥するための乾燥設備としては、特に限定されず、公知の設備を用いることができる。乾燥設備としては、例えば、熱風乾燥機、赤外線乾燥機、防爆乾燥機、熱板等が挙げられる。
シーラント層の付与量は、ヒートシール剥離強度の観点から、好ましくは1g/m以上、より好ましくは2g/m以上であり、そして、好ましくは30g/m以下、より好ましくは20g/m以下である。なお、印刷用媒体が2層以上のシーラント層を有する場合には、合計した付与量が上記範囲であることが好ましい。
<バリア層>
本実施形態の印刷用媒体は、基材とシーラント層との間に、バリア層を有することが好ましい。
バリア層は、主として酸素ガスの透過を阻止する機能を有する層である。バリア層は、水懸濁性高分子および水溶性高分子よりなる群から選択される高分子を含有する塗工液を塗布することによって形成してもよく、バリア性を有する樹脂を溶融押出、接着剤等により積層して形成してもよく、金属蒸着層および無機蒸着層よりなる群から選択される蒸着層を形成してもよく、金属蒸着層および無機蒸着層よりなる群から選択される蒸着層を有する樹脂フィルムを積層して形成してもよい。
(水懸濁性高分子)
本実施形態において、バリア層で使用する水懸濁性高分子とは、25℃の水に対する溶解度が10g/L以下である高分子である。本実施形態において、水懸濁性高分子は、エマルション中に分散している高分子(粒子)に由来するものであることが好ましい。
バリア層で使用する水懸濁性高分子および水溶性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ポリカルボン酸系樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。水懸濁性高分子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、水懸濁性高分子は、ウレタン系樹脂および塩化ビニリデン系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの樹脂を用いてバリア層を形成することで、優れたガスバリア性(酸素バリア性)を発揮することができる。
ウレタン系樹脂は、公知の製造方法によって製造することができる。例えば、ウレタン系樹脂は、ポリイソシアネート化合物(例えばジイソシアネート化合物)と、ポリヒドロキシ酸(例えばジヒドロキシ酸)との反応により得ることができる。また、例えば、上記ポリイソシアネート化合物およびポリヒドロキシ酸に加えて、ポリオール化合物(例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール)および/または鎖伸長剤との反応により得ることもできる。
ウレタン系樹脂は、メタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位および水添メタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。このようなウレタン系樹脂は、水素結合およびキシリレン基同士のスタッキング効果によって高い凝集力を発現するため、バリア層は優れたガスバリア性を発揮しやすくなる。メタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位とは、ウレタン系樹脂において、メタキシリレンジイソシアネートが反応したモノマーユニットを指す。水添メタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位およびポリイソシアネート由来の構成単位についても同様である。モノマーユニットとは、ポリマー中のモノマー物質が反応した形態をいう。
ウレタン系樹脂において、メタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位および水添メタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位の合計モル%は、ウレタン系樹脂中のポリイソシアネート由来の構成単位全量に対して50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。上限は特に制限されないが、好ましくは95モル%以下であり、より好ましくは90モル%以下である。構成単位のモル%はH-NMRなどの公知の分析手法を用いて同定することができる。
ウレタン系樹脂は、ヒドロキシ基を有していてもよく、その水酸基価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、さらに好ましくは150mgKOH/g以上である。なお、水酸基価の上限は特に限定されないが、好ましくは1000mgKOH/g以下、より好ましくは800mgKOH/g以下、さらに好ましくは600mgKOH/g以下である。ウレタン系樹脂の水酸基価が上記範囲内であると、バリア層は酸素バリア性を発揮しやすくなる。また、ウレタン系樹脂の水酸基価を上記範囲内とすることにより、バリア層の熱融着性を高めることができ、その結果、印刷用媒体のヒートシール性を高めることもできる。
水酸基価の測定はJIS K0070-1992に準じて実施し、試料1gをアセチル化させたとき,水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数を測定する。
ウレタン系樹脂は、25μm厚のシートに換算した際の23℃、相対湿度50%における酸素透過度が、100.0mL/(m・day・atm)以下であることが好ましく、50.0mL/(m・day・atm)以下であることがより好ましく、25.0mL/(m・day・atm)以下であることがさらに好ましく、10.0mL/(m・day・atm)以下であることがよりさらに好ましく、3.0mL/(m・day・atm)以下であることが特に好ましい。なお、25μm厚のシートに換算した際の23℃、相対湿度50%における酸素透過度は0mL/(m・day・atm)であってもよい。
なお、25μm厚のシートに換算した際の酸素透過度は、対象のウレタン系樹脂を用いて厚さ25μmのシートを形成し、該シートを用いて測定した酸素透過度を示す。本明細書において、上記シートの酸素透過度は、酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/22)を使用し、23℃、相対湿度50%の条件にて測定される。
ウレタン系樹脂のガラス転移温度は、150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、135℃以下であることが特に好ましい。なお、ウレタン系樹脂のガラス転移温度は、JIS K 7122:2012に準拠して測定される。
ウレタン系樹脂としては、合成品を使用してもよく、合成品としては例えば国際公開第2015/016069号に記載のウレタン系樹脂等を挙げることができる。また、ウレタン系樹脂としては、市販品を使用してもよく、例えば、三井化学株式会社製の「タケラックW系(商品名)」、「タケラックWPB系(商品名)」、「タケラックWS系(商品名)」等が挙げられ、具体的には、タケラックWPB-341が例示される。その他の市販品としては、大日精化工業株式会社の「HPU W-003」(水酸基価235mgKOH/g)等が挙げられる。
塩化ビニリデン系樹脂は、公知の製造方法によって製造することができる。例えば、塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデンの単独重合体(ポリ塩化ビニリデン、PVDC)や、塩化ビニリデンおよび塩化ビニリデンと共重合可能な単量体の共重合体などにより得ることができる。塩化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、特に限定されないが、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロニトリル、イソブチレン、酢酸ビニルなどが挙げられる。
塩化ビニリデン系樹脂としては、市販品を使用してもよく、例えば、旭化成株式会社製の「サランラテックスL549B」や、Solvay社製のDiofan B204等が挙げられる。
水懸濁性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1000以上20000000以下、より好ましくは5000以上5000000以下である。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算値を採用するものとする。
エマルション中の水懸濁性高分子の平均粒子径は、好ましくは0.001μm以上100μm以下、より好ましくは0.01μm以上10μm以下である。なお、平均粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。
(水溶性高分子)
水溶性高分子とは、水に溶解可能な樹脂である。水に溶解可能な樹脂とは、骨格となるポリマーが25℃の水に対する溶解度が10g/Lを超える高分子である。
水溶性高分子の骨格となるポリマーとしては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプンおよびその誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カゼイン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性向上の観点から、水溶性高分子は、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、より好ましくは変性ポリビニルアルコールである。
変性ポリビニルアルコールとしては、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、変性ポリビニルアルコールは、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、およびアセトアセチル変性ポリビニルアルコールよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、エチレン変性ポリビニルアルコール、およびカルボキシ変性ポリビニルアルコールよりなる群から選ばれる1種以上であることがより好ましく、エチレン変性ポリビニルアルコールであることがさらに好ましい。
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールには、完全ケン化型物および部分ケン型物があるが、完全ケン化型であることが好ましい。完全ケン化とは、ケン化度が96%超であることを意味する。なお、ケン化度は、JIS K 6726:1994に準拠した方法で測定される値である。
水溶性高分子として市販品を用いてもよく、例えば、変性ポリビニルアルコールとして、株式会社クラレ製の「エクセバール(商品名)」等が挙げられる。
バリア層中の水懸濁性高分子および水溶性高分子の含有量は、バリア性向上の観点から、バリア層の固形分中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、よりさらに好ましくは60質量%以上であり、そして、その上限は、100質量%である。
なお、バリア層用塗工液を紙基材に塗工することでバリア層を形成してもよく、予めバリア層用塗工液を塗工した樹脂フィルムを積層することによって、バリア層を形成してもよい。また、前記樹脂フィルムがシーラント層であってもよい。
バリア層を塗工により形成する場合、上記の水懸濁性高分子および水溶性高分子から選択される少なくとも1つに加えて、層状無機化合物を含有させることが好ましい。すなわち、バリア層が水懸濁性高分子および層状無機化合物を含有するか、または、水溶性高分子および層状無機化合物を含有することが好ましい。バリア層に層状無機化合物を含有させることで、バリア性をさらに高める(酸素透過度をさらに低減する)ことができる。
層状無機化合物の平均長さは、好ましくは1μm以上100μm以下、より好ましくは2μm以上50μm以下、さらに好ましくは3μm以上20μm以下である。ここで、層状無機化合物の平均長さとは、層状無機化合物の平面方向における長軸の平均長さである。平均長さが1μm以上であると、バリア層中における層状無機化合物が紙支持体に対して平行に配列し易くなる。また、平均長さが100μm以下であると層状無機化合物の一部がバリア層から突出する懸念が少なくなる。
層状無機化合物のアスペクト比は、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上、よりさらに好ましくは800以上である。なお、層状無機化合物のアスペクト比の上限値は特に限定されるものではないが、好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下、さらに好ましくは2000以下である。
層状無機化合物のアスペクト比が上記範囲内であると、バリア性が向上するとともに、バリア層の塗工量を低減し、印刷用媒体のリサイクル性や軽量性を高めることができる。
ここで、アスペクト比とは、バリア層の断面の顕微鏡拡大写真から算出される値であって、層状無機化合物の長さをその厚さで除した値の平均値(サンプル20~30個の相加平均値)である。
層状無機化合物の厚さは、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。なお、層状無機化合物の厚さの下限値は特に限定されるものではないが、好ましくは2nm以上である。ここで、層状無機化合物の厚さとは、バリア層の断面の顕微鏡拡大写真から測定される層状無機化合物の平均厚さ(サンプル20~30個の相加平均値)である。なお、層状無機化合物の長軸に垂直な方向を厚さとする。
層状無機化合物の平均厚さを上記範囲内とすることにより、バリア層中における層状無機化合物の積層数が大きくなるため、バリア層はより高い酸素バリア性を発揮することができる。特に、アスペクト比が大きくかつ厚さの小さい層状無機化合物を用いると、バリア層は、空隙のない稠密な膜を形成する。これは、バリア層の断面の顕微鏡拡大写真からも観察できる現象である。
層状無機化合物の具体例としては、雲母族、脆雲母族等のマイカ、ベントナイト、カオリナイト(カオリン鉱物、以下「カオリン」とも称する)、パイロフィライト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、緑泥石、セプテ緑泥石、蛇紋石、スチルプノメレーン、モンモリロナイトなどが挙げられる。これらの中でも特に、水蒸気バリア性を向上させる観点から、層状無機化合物は、マイカ、ベントナイトおよびカオリンよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、マイカおよびカオリンから選択される少なくとも1種であることより好ましい。マイカとしては、合成マイカ、白雲母(マスコバイト)、絹雲母(セリサイト)、金雲母(フロコパイト)、黒雲母(バイオタイト)、フッ素金雲母(人造雲母)、紅マイカ、ソーダマイカ、バナジンマイカ、イライト、チンマイカ、パラゴナイト、ブリトル雲母などが挙げられる。中でも、高いアスペクト比を有することから、マイカとしては膨潤性マイカが好ましい。また、カオリンは、天然物であっても合成物(エンジニアードカオリン)であってもよい。
これらの中でも、マイカ、ベントナイトおよびカオリンよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、マイカおよびカオリンから選択される少なくとも1種であることがより好ましい。バリア層が上述したような層状無機化合物を含有することで、高湿度条件下における印刷用媒体のバリア性をより効果的に高めることができる。
層状無機化合物をバリア層に含有させる場合、層状無機化合物の含有量は、特に限定されないが、バリア層中の水懸濁性高分子または水溶性高分子100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上500質量部以下、より好ましくは1質量部以上300質量部以下、さらに好ましくは2質量部以上200質量部以下、よりさらに好ましくは5質量部以上150質量部以下、特に好ましくは10質量部以上70質量部以下である。層状無機化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、高湿度条件下における印刷用媒体のバリア性をより効果的に高めることができる。
バリア層は、水懸濁性高分子および水溶性高分子から選択される少なくとも1つと層状無機化合物の他に、顔料、分散剤、界面活性剤、消泡剤、濡れ剤、染料、色合い調整剤、増粘剤などを含有してもよい。
バリア層を塗工により設ける場合、バリア層用塗工液の塗工量は、固形分として、好ましくは0.1g/m以上10g/m以下、より好ましくは0.5g/m以上5g/m以下である。
(バリア性を有する樹脂)
バリア層を、バリア性を有する樹脂を溶融押出、接着剤等により積層して形成する場合、バリア性を有する樹脂としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、MXナイロンが例示される。
EVOHとしては、上市されている製品を使用してもよく、例えば、クラレ株式会社製のエバールシリーズが例示される。
また、MXナイロンとしては、三菱ガス化学株式会社製のMXD6が例示される。
(蒸着層)
バリア層として、紙基材に直接、蒸着層を形成してもよく、また、蒸着層を形成した樹脂フィルムを積層してバリア層を形成してもよい。
なお、蒸着層は、金属蒸着層および無機蒸着層よりなる群から選択される。
金属蒸着層の蒸着金属としては、アルミニウム(Al)が例示される。また、無機蒸着層蒸着する無機化合物としては、シリカ(SiOx)、アルミナ(AlOx)が例示できる。
金属蒸着層の厚さは、所望のバリア性が得られる範囲で特に限定されない。
バリア層として、蒸着層を設けた樹脂フィルムに接着剤を塗布し、紙基材と積層するしてもよい。
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂フィルム、各種ナイロン等のポリアミド系樹脂フィルム、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリブデン樹脂フィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレイト樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデンフィルム、アセタール系樹脂フィルム、フッ素系樹脂、等が挙げられ、特に、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、または、ポリアミド系樹脂が好ましい。
[印刷物および印刷物の製造方法]
本実施形態の印刷物は、上述した紫外線レーザー印刷用媒体から得られた印刷物であって、少なくとも一部に、変色された酸化チタンを有する印刷領域を有する。非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、前記印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度の比は、0.70以下であることが好ましい。また、前記変色された酸化チタンを有する印刷領域は、紫外線レーザーの照射により変色した酸化チタンを含有する領域であり、紫外線レーザー照射領域、すなわち、印刷領域である。
また、本実施形態の印刷物の製造方法は、上述した印刷用媒体に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有する。
本実施形態の印刷物の製造方法に使用される印刷用媒体としては、上述した印刷用媒体が例示され、好ましい範囲も同様である。また、本実施形態の印刷物の製造方法において、少なくとも紫外線レーザー照射領域に印刷層が設けられていればよく、非照射領域には印刷層が設けられていなくてもよい。
印刷物の製造方法において、紫外線レーザーの照射は、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下となるように、紫外線レーザーを照射することが好ましい。
なお、印刷物において、印刷領域とは、印刷可能領域において、変色された酸化チタンを含有する領域(部分)を意味し、紫外線レーザーにより印刷された領域(部分)である。非印刷領域とは、印刷可能領域において印刷されていない領域(部分)を意味する。また、印刷可能領域とは、紫外線レーザー印刷用媒体または印刷物において、紫外線レーザーによる印刷が可能な領域と、存在する場合は紫外線レーザーにより印刷された領域(部分)とを合わせた酸化チタンを含有する領域全体を意味し、非印刷可能領域とは、紫外線レーザー印刷用媒体または印刷物における印刷可能領域以外の領域を意味する。
印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比(印刷領域のラマン強度/非印刷領域のラマン強度)が、0.70以下であるように印刷することが好ましい。ラマン強度の比を上記範囲内とすることにより、視認性に優れる印刷物が得られる。
上記のラマン強度の比(印刷領域のラマン強度/非印刷領域のラマン強度)は、酸化チタンとしてルチル型の酸化チタンを使用した場合には、酸化チタンに由来するラマン強度として、447±10cm-1の波数範囲の最大値のラマン強度を対比する。また、酸化チタンとしてアナターゼ型の酸化チタンを使用する場合には、酸化チタンに由来するラマン強度として、516±10cm-1の波数範囲の最大値のラマン強度を対比する。
なお、ルチル型の酸化チタンとアナターゼ型の酸化チタンが共存する場合には、ルチル型の酸化チタンに由来するラマン強度で対比することとする。
本実施形態で得られる印刷物は、非印刷領域が白色であり、印刷領域が黒色であることが好ましい。
非印刷領域は、マンセル表色系における明度が10番、すなわち、白色であることが好ましい。一方、印刷領域は、マンセル表色系における0番~8番のいずれかであることが好ましく、0~6番であることがより好ましく、0~4番であることがさらに好ましい。
上記のマンセル表色系における色を得るために、印刷用媒体における印刷層の酸化チタンの含有量、酸化チタンの結晶子サイズ、保護樹脂層の厚み、その他の特性(樹脂種、印刷層の厚さ等)、紫外線レーザーの照射条件(例えば、平均出力、繰返し周波数、波長など)を適宜調整することが好ましい。
〔紫外線レーザーの照射条件〕
紫外線レーザーの波長としては、印刷領域の視認性を向上させる観点から、好ましくは370nm以下、より好ましくは365nm以下、さらに好ましくは360nm以下であり、そして、好ましくは260nm以上、より好ましくは340nm以上、さらに好ましくは350nm以上である。
紫外線レーザーの平均出力は、印刷領域の視認性を向上させる観点から、好ましくは0.3W以上、より好ましくは0.8W以上、さらに好ましくは1.2W以上、よりさらに好ましくは1.8W以上であり、そして、経済性の観点から、好ましくは30W以下、より好ましくは25W以下、さらに好ましくは20W以下、よりさらに好ましくは15W以下、よりさらに好ましくは10W以下、よりさらに好ましくは6W以下である。
紫外線レーザーの繰返周波数(周波数)は、印刷領域の視認性を向上させる観点から、好ましくは10kHz以上、より好ましくは20kHz以上、さらに好ましくは30kHz以上であり、そして、好ましくは100kHz以下、より好ましくは80kHz以下、さらに好ましくは60kHz以下である。
紫外線レーザーのスポット径は、鮮明な画像を得る観点および印刷容易性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは240μm以下、さらに好ましくは180μm以下、さらに好ましくは120μm以下である。
紫外線レーザーのスキャンスピードは、高速印刷および印刷領域の視認性の観点から、好ましくは500mm/sec以上、より好ましくは1000mm/sec以上、さらに好ましくは2000mm/sec以上であり、そして、好ましくは7000mm/sec以下、より好ましくは6000mm/sec以下、さらに好ましくは5000mm/sec以下である。
紫外線レーザーの塗りつぶし間隔(ラインピッチ)は、鮮明な画像を得る観点、および装置の入手容易性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。
〔印刷物の製造方法の態様〕
本発明の印刷物の製造方法は、種々の態様で行うことができる。
以下に、本実施形態の印刷物の製造方法が適用可能な種々な態様について例示するが、本実施形態の印刷物の製造方法は、下記の態様に限定されるものではない。印刷する情報は特に限定されないが、可変情報であることが好ましい。
本実施形態の印刷物の製造方法は、インラインで行われることが好ましい。
(1)包装体への直接印刷
本実施形態の印刷物の製造方法の第一の実施態様は、本実施形態の印刷用媒体を有する包装体に情報を印刷する方法であって、梱包ライン上を移動中、または間欠停止中の包装体に直接紫外線レーザーにて印刷する工程を有する。
第一の印刷物の製造方法は、本実施形態の紫外線レーザー印刷用媒体にて包装体を作製し、紫外線レーザーにて直接印刷する。なお、少なくとも包装体の印刷される領域の最外層が、前記の印刷用媒体にて作製されていればよい。
また、包装体としては、段ボール、箱等が例示され、該包装体の側面または上面に紫外線レーザーにて直接印刷することが好ましい。
また、梱包ラインにコーティング(塗工)機構を有していてもよい。コーティング機構としては、接触印字機、パット印刷機、スプレーコーターが例示される。
本態様においては、包装体が梱包ライン上を移動中に、コーティング機構により印刷層および保護樹脂層を付与する工程と、より下流にて、梱包ラインを移動中、または間欠停止中に包装体に紫外線レーザーにて直接印刷する工程を有する。
(2)ラベルへの印刷
本実施形態の印刷物の製造方法の第二の実施態様は、本実施形態の印刷用媒体を有するラベルに情報を印刷する方法である。該ラベルの印刷面を構成する印刷用媒体が、本実施形態の印刷用媒体である。
印刷されたラベルは、ラベル貼り付け装置を用いて包装体に貼付することが好ましい。ラベル貼り付け装置としては、各種のラベル貼り付け装置が提案されている。なお、このとき、紫外線照射される面に印刷層および保護樹脂層を有する。
第1のラベル貼り付け装置としては、ロール状に巻いたラベル原紙に接着剤を付与した後に物品に貼付する。より具体的には、ロール状に巻いたラベル原紙を1枚ずつ所定の長さに切断する切断手段と、この切断手段によって切断されたラベル原紙を、接着剤が塗布されたラベル原紙保持体によって受取り、このラベル原紙の裏面に接着剤を付着させる糊付け搬送手段と、この糊付け搬送手段から接着剤が付与されたラベル原紙(ラベル)を受け取って容器等の物品に貼付ける貼着手段とを備えたロールラベラにおいて、上記切断手段と糊付け搬送手段との間に、外面にラベル保持面を有する回転搬送手段を設けたロールラベラが例示され、特開平6-64637号公報が例示される。
また、ロール状に巻いたラベル原紙を一枚ずつ所定の長さに切断する切断手段と、貼付ロールに受け渡す受渡ロールと、貼付ロールに保持されたラベル原紙に糊を付与する糊付けロールとを有するロールラベラや、前記受渡ロールを不要とした態様が例示される。
紫外線レーザーの照射は、ロール状に巻いたラベル原紙を所定の長さに切断する前、または切断後であって次のロール等への受け渡し前であることが好ましい。ロールラベラの態様に合わせて、ロール状に巻いたラベル原紙の表面または裏面が、包装体に貼付した際の表面または裏面となるため、これに合わせて紫外線レーザーの照射を行う。
なお、ラベル原紙とは、基材が紙である場合のみを意味するものではなく、基材がフィルム基材である場合にも、ラベル原紙と称するものである。
第2のラベル貼り付け装置は、ラベルとして、粘着ラベルロールを使用する。この場合、少なくとも粘着剤が付与されている面と反対面である、紫外線レーザーが照射される面に印刷層および保護樹脂層を有する。
剥離紙付きの粘着ラベルロールを使用する場合には、例えば、粘着ラベルと剥離紙を分離する剥離紙分離手段と、剥離紙が分離された粘着ラベルを受け取る受渡ロールと、受渡ロールから粘着ラベルを吸引して、物品(包装体)に貼付する貼付ロールとを有する貼り付け装置が例示される。紫外線レーザーによる照射は、剥離紙を分離する前、または剥離紙分離後であって貼付ロールに担持される前に行うことが好ましい。
また、剥離紙付きの粘着ラベルロールをセットし、粘着ラベルと剥離紙とを分離する機構を有し、分離直後にラベルを貼付する機構を有し、セットされた粘着ラベルロールから剥離紙を分離するまでの間に紫外線レーザーにより印刷する装置が例示される。上記の粘着ラベルの貼付方法は、流し貼りとも呼ばれる。
さらに、剥離紙付きの粘着ラベルロールをセットし、粘着ラベルから剥離紙を分離する機構を有し、粘着ラベルを物品(包装体)に貼付する機構を有し、前記貼付する機構が、シリンジ方式、エアジェット方式、またはロボットアーム方式であるラベル貼り付け装置が例示される。紫外線レーザーによる照射は、セットされた剥離紙付きの粘着ラベルロールから、剥離紙を分離するまでの間で行われることが好ましい。
ラベルとして、ライナレス粘着ラベルを使用してもよい。ライナレス粘着ラベルは、剥離紙のないラベルであり、剥離紙付きの粘着ラベルロールを使用する場合に比して、1ロールのラベル枚数が多く、剥離紙が存在しないため、安価であるという特徴を有する。ライナレス粘着ラベルを使用する場合、粘着剤が付与される面とは反対面である、紫外線レーザーが照射される面に、印刷層が形成されている。
ライナレス粘着ラベルを使用したラベル貼り付け装置としては、ライナレスラベルロールをセットする機構と、ライナレスラベルを1枚ずつに切断する切断機構と、切断されたライナレスラベルを物品(包装体)に貼付する貼付機構を有し、前記貼付機構が、シリンダー方式またはロボットアーム方式である装置が例示される。紫外線レーザーの照射による印刷は、ライナレスラベルロールをセットする機構から切断機構までの間、または、切断されたライナレスラベルが貼付機構に送られる間であることが好ましい。
第3のラベル貼り付け装置は、本実施形態の印刷用媒体を物品(包装体)に貼付した後に、紫外線レーザーにて印刷する。
ラベルの貼付の方法としては、上述した第1の装置および第2の装置が参照される。
(3)粘着テープへの印刷
本実施形態の印刷物の製造方法の第三の実施態様は、印刷用媒体を粘着テープとする態様である。この場合、粘着剤が付与されている面とは反対面に、印刷層を有する。
すなわち、第三の実施態様の印刷物の製造方法は、前記印刷用媒体から作製された粘着テープを物品(包装体)に貼付する工程を有し、前記貼付する工程の前、または貼付する工程の後に、紫外線レーザーにより印刷する工程を有する。
また、段ボール封緘機に紫外線レーザーによる印字装置を組み込んだ印刷装置を使用してもよい。具体的には、粘着テープ巻取りをセットする機構と、段ボールを搬送用のコンベアを有し、段ボールのフラップを折り込む機構と、粘着テープを貼付して段ボールを封緘する機構を有し、粘着テープを貼付する間、または貼付した後に、粘着テープに紫外線レーザーにて印刷する機構を有する。
本実施形態の印刷物の製造方法は、上記の態様に限定されるものではなく、印刷が求められる各種用途に応用可能である。
本実施形態において、前記印刷物の製造方法により得られる印刷物は、包装体、ラベル、または粘着テープなどに好適に使用される。
包装体としては、外装袋、外装箱、牛乳パック、アセプティック用紙パック、紙カップ等の飲料用の液体容器(好ましくは飲料用の液体容器)、スキンパックが例示され、ラベルとしては、ラベル原紙、粘着ラベル、粘着シートが例示され、粘着テープとしては、粘着テープ、クラフトテープが例示される。
[加工品]
本実施形態の紫外線レーザー印刷用媒体および印刷物は種々の加工品に応用される。すなわち、本実施形態の加工品は、本実施形態の紫外線レーザー印刷用媒体または本実施形態の印刷物を用いてなる。
本実施形態の加工品としては、包装体、ラベル、または粘着テープなどが好適である。
包装体としては、段ボールのライナー原紙(特に、最表面のライナー原紙)、外装箱、牛乳パック、紙カップ等の飲料用の液体容器(好ましくは飲料用の液体容器)、食品トレー、スキンパック、ピロー包装、スタンディングパウチ、三方・四方シール包装等が例示され、ラベルとしては、ラベル原紙、粘着ラベル、粘着シートが例示され、粘着テープとしては、粘着テープ、クラフトテープが例示される。
図1に示すように、包装体の一例としての液体容器10は、例えば、表面に印刷領域20を有する。印刷領域20には紫外線レーザーを照射され、日付などの文字が印字されている。
[インク組成物]
本実施形態のインク組成物は、結晶子サイズが13nm以上53nm以下である酸化チタンを含有し、紫外線レーザーの照射により変色する印刷層を形成するために用いられる。本実施形態のインク組成物により形成された印刷層を有する紫外線レーザー印刷媒体を、紫外線レーザーの照射によって印字することで、一点ごとの印字鮮明性に優れた画像が得られる。
インク組成物が含有する酸化チタンおよびその含有量としては、上述した紫外線レーザー印刷用媒体の印刷層が含有する酸化チタンおよび塗工液中の酸化チタンの含有量が例示され、好ましい範囲も同様である。
また、インク組成物が含有するその他の成分としては、上述した塗工液が含有してもよい各成分、例えば、熱可塑性樹脂、無機顔料、造膜剤、顔料分散剤、顔料分散樹脂、ブロッキング防止剤、湿潤剤、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、一般の界面活性剤等の各成分を含有していてもよく、その好ましい態様は、上述した塗工液の好ましい態様と同様である。
以下に実施例と比較例とを挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、「部」および「%」は、特に断りのない限り、「質量部」および「質量%」を意味するものである。
[酸化チタン]
実施例および比較例で使用した酸化チタンは、以下の表1の通りである。
<酸化チタンF、G、I、Jの合成方法>
チタニウムテトライソプロポキシド(TTIP)を加水分解縮重合することで、酸化チタン(アモルファス)を合成し、焼成することで結晶化した。
具体的には、以下の(1)~(6)の工程により合成した。
(1)TTIP(東京化成工業株式会社製、製品コード:T0133)、イソプロパノール(東京化成工業株式会社製、純度99.5%以上、製品コード:I0163)およびイオン交換水を用いて、以下の溶液A~Cを作製した。
溶液A:TTIP 35.6質量部、イソプロパノール 200質量部
溶液B:イソプロパノール 200質量部、イオン交換水 6.3質量部
溶液C:イソプロパノール 200質量部、イオン交換水 24.4質量部
(2)テフロン(登録商標)製撹拌羽根で溶液Aを撹拌しながら、溶液Bをゆっくり滴下した後、10分間撹拌を継続した。
(3)上記(2)で得られた溶液Aおよび溶液Bの混合液へ、溶液Cをゆっくり滴下し、1分間撹拌を継続した後、24時間室温下で静置した。
(4)メンブレンフィルター(アドバンテック社製、材質:セルロースアセテート)で沈殿物を固液分離した。
(5)イソプロパノールで洗浄後、100℃下で5時間乾燥し、酸化チタン(アモルファス)を得た。
(6)マッフル炉にて焼成し、酸化チタンを結晶化した。
焼成温度は表中の温度で実施し、昇温速度10℃/min、昇温後2時間かけて焼成した。
[実施例1-1]
<紙基材の製造>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、α-セルロース88%)のパルプスラリーを、離解フリーネス(CSF:カナダ標準ろ水度(Canadian Standard Freeness))が450mLになるようにダブルディスクリファイナーを用いて叩解し、パルプスラリーを得た。得られたパルプスラリー(固形分)100部に対して、内添紙力増強剤として両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤(星光PMC株式会社製、DS4430)を0.30部(固形分換算)、内添サイズ剤としてロジンサイズ剤(荒川化学工業株式会社製、サイズパインN-811)を0.5部(固形分換算)、硫酸バンド1.0部(固形分換算)を添加し、紙料を調製した。この紙料を用いて坪量を40g/mとして、長網ヤンキー抄紙機を用いて抄紙した。該紙基材の厚さは、55μmであった。
<塗工液の調製>
グラビアインク用メジウム(DIC株式会社製、ラミCP メジウム、樹脂成分:硝化綿、固形分濃度:24.1%)100質量部に対し、固形分として表中の酸化チタンを16.1質量部添加し、コーレス分散機を用いて、固形分中酸化チタン濃度40%のグラビア印刷用のインクAを作製した。
<印刷層の形成>
グラビア印刷機(10色機、版深:50μm、印刷後の乾燥温度80℃、印刷速度80m/min)を使用し、表中の酸化チタン含有量となるように基材へ塗工した。
なお、印刷層は、紙基材の平滑度の高い方の面に塗工した。
<保護樹脂層の形成>
PE樹脂(日本ポリエチレン株式会社製、品番:LC522)を単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、50C150)へ投入し、印刷層の上に樹脂の厚みが15μmになるよう溶融積層した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、印刷層の上に、さらに保護樹脂層を形成した。なお、溶融温度は320℃とした。
<シーラント層の形成>
PE(低密度ポリエチレン、日本ポリエチレン株式会社製、ノバテック(登録商標)LD LC522)を単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、D2025)へ投入し、紙基材の印刷層を設けた面とは反対面に、樹脂の厚さが15μmとなるように押出ラミネート(溶融積層)した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、シーラント層を設け、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。なお、押出ラミネートにおける樹脂の溶融温度は320℃とした。
[実施例1-2~1-7、比較例1-1~1-3]
塗工液の調製において、使用した酸化チタンを表2に記載の酸化チタンに変更し、インクB~G、およびインクH~Jを調製し、塗工液として使用した以外は、実施例1-1と同様にして、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例1-8]
実施例1-4で調製したインクDを使用し、グラビア印刷機の印刷版を版深15μmの印刷版へ変更し、表中の酸化チタン含有量となるように基材へ塗工した以外は、実施例1-4と同様にして紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例1-9、1-10]
実施例1-4で調製したインクDを使用し、グラビア印刷機での印刷回数を2回(実施例1-9)、3回(実施例1-10)に変更し、表中の酸化チタン含有量となるように基材へ塗工した以外は、実施例1-4と同様にして紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例1-11、1-12]
保護樹脂層の厚さを表中の厚さに変更した以外は、実施例1-4と同様にして紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例1-13]
紙基材の製造において、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、α-セルロース85%)を使用し、離解フリーネスが350mLとなるように叩解した以外は実施例1-4と同様にして紫外線レーザー印刷媒体を得た。
[実施例1-14]
紙基材の製造において、広葉樹溶解パルプ(LBDP、α-セルロース94%)を使用し、離解フリーネスが550mLとなるよう叩解した以外は実施例1-4と同様にして紫外線レーザー印刷媒体を得た。
[実施例1-15]
実施例1-4と同様にして、紙基材上に印刷層および保護層を形成した。
<シーラント層の形成>
PEフィルム(線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)、フタムラ化学株式会社製、LL-XLTN、厚さ25μm)の表面に、イソシアネート系接着剤(DIC株式会社製、ディックドライLX-500 10部に対して、DIC株式会社製、ディックドライKW-75 1部を混合)を5g/mで塗布した後、印刷層および保護層を形成した基材の基材側と貼り合わせ、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例1-16]
実施例1-4と同様にして、紙基材上に印刷層および保護層を形成した。
<シーラント層の形成>
PEをPP(ポリプロピレン、三菱ケミカル株式会社製、ノバテックPP MA-3)に変更し、溶融温度を330℃にした以外は、実施例1-4と同様にしてシーラント層を形成し、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例1-17]
実施例1-4と同様にして、紙基材上に印刷層および保護層を形成した。
<シーラント層の形成>
PEフィルムをCPPフィルム(無延伸ポリプロピレン系フィルム、フタムラ化学株式会社製、FHK2-L、厚さ25μm)に変更した以外は、実施例1-15と同様にしてシーラント層を形成し、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。前記フィルムは、CоPP(共重合ポリプロピレン)/CoPP(共重合ポリプロピレン)/特殊PPの積層フィルムであり、コロナ処理面であるCoPP面を紙基材側とした。
[実施例1-18]
実施例1-4と同様にして、紙基材上に印刷層および保護層を形成した。
<シーラント層の形成>
水系ヒートシール剤(エチレン-アクリル酸共重合体(表中、Et-AA)、マイケルマン社製、MFHS1279、固形分濃度42%)に水を加えて、固形分濃度20%に希釈し、紙基材の印刷層を設けた面とは反対の面に、塗工量(固形分)が5g/mとなるように、メイヤーバーを用いて塗布し、120℃で60秒乾燥させ、シーラント層を形成し、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例1-19]
実施例1-4と同様にして、紙基材上に印刷層および保護層を形成した。
<シーラント層の形成>
水系ヒートシール剤(エチレン-メタクリル酸共重合体(表中、Et-MAA)、三井化学株式会社製、ケミパールS-300、固形分濃度35%)を固形分濃度20%に調整して使用した以外は、実施例1-18と同様にして、シーラント層を形成し、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例1-20]
実施例1-4と同様にして、紙基材上に印刷層および保護層を形成した。
<シーラント層の形成>
水系ヒートシール剤(スチレン-アクリル酸共重合体(表中、St-AA)、星光PMC株式会社製、SEIKOAT RE-2016、固形分濃度35%)を固形分濃度20%に調整して使用した以外は、実施例1-18と同様にして、シーラント層を形成し、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例1-21]
実施例1-4と同様にして、紙基材上に印刷層および保護層を形成した。
<バリア層の形成>
EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体、クラレ株式会社製、エバール E105B)を単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、D2025)に投入し、基材の印刷層を設けた面とは反対面に、樹脂の厚さが15μmとなるように押出ラミネート(溶融積層)した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、バリア層を形成した。なお、押出ラミネートにおける樹脂の溶融温度は215℃とした。
<シーラント層の形成>
実施例1-4と同様にしてシーラント層を設け、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例1-22]
実施例1-4と同様にして、紙基材上に印刷層および保護層を形成した。
<バリア層の形成>
エチレン変性ポリビニルアルコール(完全けん化型、クラレ株式会社製、エクセバールAQ-4104)の固形分濃度15質量%の水溶液100部に対し、層状無機化合物の水分散液(層状無機化合物=合成マイカ(膨潤性マイカ、平均長さ:6.3μm、アスペクト比:約1000、厚さ:約5nm)、固形分濃度6質量%、トピー工業株式会社製、NTO-05)を50部加え、さらに、これに希釈水を加え、固形分濃度10質量%とし、バリア層用塗工液とした。前記バリア層用塗工液を、塗工量が2.0g/mとなるようにメイヤーバーを用いて基材の印刷層を形成した面とは反対面に塗工し、その後、熱風乾燥機内で120℃にて1分間乾燥し、バリア層を形成した。
<シーラント層の形成>
実施例1-18と同様にしてシーラント層を設け、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例1-23]
実施例1-4と同様にして、紙基材上に印刷層および保護層を形成した。
<バリア層の形成>
層状無機化合物の水分散液(層状無機化合物=合成マイカ(膨潤性マイカ、平均長さ:6.3μm、アスペクト比:約1000、厚さ:約5nm)、固形分濃度6質量%、トピー工業株式会社製、NTO-05)に、ウレタン系エマルション(固形分濃度30質量%、ガラス転移温度130℃、25μm厚シート形成時酸素透過度が2.0mL/(m・day・atm)、三井化学株式会社製、タケラックWPB-341)を固形分の質量比(層状無機化合物:ウレタン系樹脂)が2:10となるように加え、撹拌した。さらに、固形分濃度が20質量%となるように希釈水を加え、バリア層用塗工液とした。前記バリア層用塗工液を、バリア層の塗工量が2.0g/mとなるように、メイヤーバーで基材の印刷層を形成した面とは反対面に塗工した後、熱風乾燥機内で120℃にて、1分間乾燥し、バリア層を形成した。
<シーラント層の形成>
実施例1-18と同様にしてシーラント層を設け、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例1-24]
実施例1-4と同様にして、紙基材上に印刷層および保護層を形成した。
<バリア層の形成>
アルミ蒸着PPフィルム(基材=CPP(無延伸ポリプロピレンフィルム)、三井化学東セロ株式会社製、製品名:ML、厚さ20μm、水蒸気透過度0.2g/m・day、酸素透過度50mL/m・day・atm)のPPフィルム側の表面にイソシアネート系接着剤(DIC株式会社製、ディックドライLX-500 10部に対して、DIC株式会社製、ディックドライKW-75 1部を混合)を5g/m塗布した後、基材の印刷層を設けた面とは反対面に貼り合わせた。
<シーラント層の形成>
実施例1-4と同様に、シーラント層を形成し、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例1-25]
バリア層の形成において、アルミ蒸着PETフィルム(基材=PET(ポリエチレンテレフタレート)、三井化学東セロ株式会社製、製品名:ML、厚さ12μm、水蒸気透過度1g/m・day、酸素透過度10mL/m・day・atm)を使用すること以外は、実施例1-24と同様にして、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。なお、接着剤はアルミ蒸着PETフィルムの基材(PET)側に塗布した。
[実施例1-26]
バリア層の形成において、シリカ蒸着PPフィルム(基材=PP、凸版印刷株式会社製、製品名:GL-LP、厚さ17μm、水蒸気透過度0.5g/m・day、酸素透過度1mL/m・day・atm)を使用すること以外は、実施例1-24と同様にして、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。なお、接着剤はシリカ蒸着PPフィルムの基材(PP)側に塗布した。
[実施例1-27]
バリア層の形成において、シリカ蒸着PETフィルム(基材=PET、凸版印刷株式会社製、製品名:GL-AE、厚さ12μm、蒸着層の厚さ400nm、水蒸気透過度0.6g/m・day、酸素透過度0.2mL/m・day・atm)を使用すること以外は、実施例1-24と同様にして、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。なお、接着剤はシリカ蒸着PETフィルムの基材(PET)側に塗布した。
[実施例1-28]
バリア層の形成において、アルミナ蒸着PETフィルム(基材=PET、三井化学東セロ株式会社製、製品名:TL、厚さ12μm、水蒸気透過度1.5g/m・day、酸素透過度15mL/m・day・atm)を使用すること以外は、実施例1-24と同様にして、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。なお、接着剤はアルミナ蒸着PETフィルムの基材(PET)側に塗布した。
[実施例1-29]
バリア層の形成において、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)をコーティングしたPETフィルム(三井化学東セロ株式会社製、製品名:Vバリア、厚さ12μm、水蒸気透過度0.2g/m・day、酸素透過度0.8mL/m・day・atm)を使用すること以外は、実施例1-24と同様にして、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。なお、接着剤はPVDCをコーティングしたPETフィルムの基材(PET)側に塗布した。
[比較例1-4]
塗工液の調製において、使用した酸化チタンを表2に記載の酸化チタンに変更し、グラビアインク用メジウム(DIC株式会社製、ラミCP メジウム、樹脂成分:硝化綿、固形分濃度:24.1%)100質量部に対し、固形分として表中の酸化チタンを0.05質量部添加し、コーレス分散機を用いて、固形分中酸化チタン濃度0.2%のグラビア印刷用のインクKを作製した。インクKを使用して、表中の酸化チタン含有量となるように基材へ塗工した以外は、実施例1-1と同様にして、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[比較例1-5]
実施例1-4で調製したインクDを使用し、グラビア印刷機での印刷回数を9回に変更し、表中の酸化チタン含有量となるように基材へ塗工した以外は、実施例1-4と同様にして紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[比較例1-6]
実施例1-4において、シーラント層を形成しなかった以外は、実施例1-4と同様にして紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例2-1]
<フィルム基材>
フィルム基材としてCPPフィルム(フタムラ化学株式会社製、品番:FCMLVK、厚さ25μm)を使用した
<塗工液の調製>
実施例1-1で調製したインクAを使用した。
<印刷層および保護層の形成>
グラビア印刷機(10色機、版深:50μm、印刷後の乾燥温度80℃、印刷速度80m/min)を使用し、表中の酸化チタン含有量となるように保護樹脂層へ裏刷り塗工した。その後、ポリエーテルウレタン系ラミネート接着剤(東洋モートン株式会社製 TM320/CAT13B)を固形分として1.5g/mとなるように塗工面へ塗工・乾燥し、フィルム基材と貼り合せてドライラミネートし、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
なお、保護樹脂層としてOPPフィルム(フタムラ化学株式会社製、品番:FOS-BT、厚さ30μm)を使用した。
<シーラント層の形成>
PE(低密度ポリエチレン、日本ポリエチレン株式会社製、ノバテック(登録商標)LD LC522)を単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、D2025)へ投入し、紙基材の印刷層を設けた面とは反対面に、樹脂の厚さが15μmとなるように押出ラミネート(溶融積層)した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、シーラント層を設け、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。なお、押出ラミネートにおける樹脂の溶融温度は320℃とした。
[実施例2-2~2-5]
実施例2-1において、使用した塗工液を、表3に記載のインクB~インクEに変更した以外は、実施例2-1と同様にして紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例2-6]
実施例2-4と同様にして、フィルム基材上に印刷層および保護層を形成した。
<バリア層の形成>
EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体、クラレ株式会社製、エバール E105B)を単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、D2025)に投入し、基材の印刷層を設けた面とは反対面に、樹脂の厚さが15μmとなるように押出ラミネート(溶融積層)した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、バリア層を形成した。なお、押出ラミネートにおける樹脂の溶融温度は215℃とした。
<シーラント層の形成>
実施例2-4と同様にしてシーラント層を設け、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例2-7]
実施例2-4と同様にして、フィルム基材上に印刷層および保護層を形成した。
<バリア層の形成>
エチレン変性ポリビニルアルコール(完全けん化型、クラレ株式会社製、エクセバールAQ-4104)の固形分濃度15質量%の水溶液100部に対し、層状無機化合物の水分散液(層状無機化合物=合成マイカ(膨潤性マイカ、平均長さ:6.3μm、アスペクト比:約1000、厚さ:約5nm)、固形分濃度6質量%、トピー工業株式会社製、NTO-05)を50部加え、さらに、これに希釈水を加え、固形分濃度10質量%とし、バリア層用塗工液とした。前記バリア層用塗工液を、塗工量が2.0g/mとなるようにメイヤーバーを用いて塗工し、その後、熱風乾燥機内で120℃にて1分間乾燥し、バリア層を形成した。
<シーラント層の形成>
実施例2-4と同様にしてシーラント層を設け、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例2-8]
実施例2-4と同様にして、フィルム基材上に印刷層および保護層を形成した。
<バリア層の形成>
層状無機化合物の水分散液(層状無機化合物=合成マイカ(膨潤性マイカ、平均長さ:6.3μm、アスペクト比:約1000、厚さ:約5nm)、固形分濃度6質量%、トピー工業株式会社製、NTO-05)に、ウレタン系エマルション(固形分濃度30質量%、ガラス転移温度130℃、25μm厚シート形成時酸素透過度が2.0mL/(m・day・atm)、三井化学株式会社製、タケラックWPB-341)を固形分の質量比(層状無機化合物:ウレタン系樹脂)が2:10となるように加え、撹拌した。さらに、固形分濃度が20質量%となるように希釈水を加え、バリア層用塗工液とした。前記バリア層用塗工液を、バリア層の塗工量が2.0g/mとなるように、メイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機内で120℃にて、1分間乾燥し、バリア層を形成した。
<シーラント層の形成>
実施例2-4と同様にしてシーラント層を設け、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例2-9]
実施例2-4と同様にして、フィルム基材上に印刷層および保護層を形成した。
<バリア層の形成>
アルミ蒸着PPフィルム(基材=CPP(無延伸ポリプロピレンフィルム)、三井化学東セロ株式会社製、製品名:ML、厚さ20μm、水蒸気透過度0.2g/m・day、酸素透過度50mL/m・day・atm)のPPフィルム側の表面にイソシアネート系接着剤(DIC株式会社製、ディックドライLX-500 10部に対して、DIC株式会社製、ディックドライKW-75 1部を混合)を5g/m塗布した後、フィルム基材の印刷層を設けた面とは反対面に貼り合わせた。
<シーラント層の形成>
実施例2-4と同様に、シーラント層を形成し、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。
[実施例2-10]
バリア層の形成において、アルミ蒸着PPフィルムの代わりにアルミ蒸着PETフィルム(基材=PET(ポリエチレンテレフタレート)、三井化学東セロ株式会社製、製品名:ML、厚さ12μm、水蒸気透過度1g/m・day、酸素透過度10mL/m・day・atm)を使用すること以外は、実施例2-9と同様にして、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。なお、接着剤はアルミ蒸着PETフィルムの基材(PET)側に塗布した。
[実施例2-11]
バリア層の形成において、アルミ蒸着PPフィルムの代わりにシリカ蒸着PPフィルム(基材=PP、凸版印刷株式会社製、製品名:GL-LP、厚さ17μm、水蒸気透過度0.5g/m・day、酸素透過度1mL/m・day・atm)を使用すること以外は、実施例2-9と同様にして、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。なお、接着剤はシリカ蒸着PPフィルムの基材(PP)側に塗布した。
[実施例2-12]
バリア層の形成において、アルミ蒸着PPフィルムの代わりにシリカ蒸着PETフィルム(基材=PET、凸版印刷株式会社製、製品名:GL-AE、厚さ12μm、蒸着層の厚さ400nm、水蒸気透過度0.6g/m・day、酸素透過度0.2mL/m・day・atm)を使用すること以外は、実施例2-9と同様にして、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。なお、接着剤はシリカ蒸着PETフィルムの基材(PET)側に塗布した。
[実施例2-13]
バリア層の形成において、アルミ蒸着PPフィルムの代わりにアルミナ蒸着PETフィルム(基材=PET、三井化学東セロ株式会社製、製品名:TL、厚さ12μm、水蒸気透過度1.5g/m・day、酸素透過度15mL/m・day・atm)を使用すること以外は、実施例2-9と同様にして、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。なお、接着剤はアルミナ蒸着PETフィルムの基材(PET)側に塗布した。
[実施例2-14]
バリア層の形成において、アルミ蒸着PPフィルムの代わりにPVDC(ポリ塩化ビニリデン)をコーティングしたPETフィルム(三井化学東セロ株式会社製、製品名:Vバリア、厚さ12μm、水蒸気透過度0.2g/m・day、酸素透過度0.8mL/m・day・atm)を使用すること以外は、実施例2-9と同様にして、紫外線レーザー印刷用媒体を得た。なお、接着剤はPVDCコーティングPETフィルムの基材(PET)側に塗布した。
[測定・評価]
実施例および比較例で得られた基材および紫外線レーザー印刷用媒体、並びに各種原料について、以下の測定および評価を行った。
〔酸化チタンの平均粒子径〕
酸化チタンの平均粒子径は、以下の方法により測定した。
実施例および比較例で得られた紫外線レーザー印刷用媒体から、印刷層を産業用剃刀(フェザー安全剃刀株式会社製、品番:099769)を用いて削り取り、集めた印刷層のみをサンプルとして、マッフル炉で燃焼して得た灰分の走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテク製、SU7000など)から得られるSEM像(2次電子像)から算出した。なお、印刷層の上に設けられた保護樹脂層は、産業用剃刀(フェザー安全剃刀株式会社製、品番:099769)を用いて削り取ることで除去した後、印刷層のサンプルを得た。灰分は、マッフル炉(ヤマト科学株式会社製、型番FO300)を使用して450℃で焼成し、灰化することで得た。
得られた灰分を、超音波洗浄機(アズワン株式会社製、LSC-63など)で5分間かけてエタノールに分散させ0.1質量%スラリーを得た後、アルミ皿上へ0.1mLをキャストし、100℃で乾燥させて測定用サンプルを作製した。アルミ皿ごと、走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテク製、SU7000など)の観察に供試し、隣り合う粒子と明瞭に見分けられるものを目視で選択し、1つの粒子の長径と短径の相乗平均から粒子径を算出した。この際、1次粒子と凝集状態の2次粒子が混在していても明瞭に見分けられる場合はそれぞれを1つの粒子としてカウントし、無作為に選択した100個の粒子の平均径を平均粒子径とした。SEM画像観察時の倍率は酸化チタンの粒子径によって適宜選択し、20000倍程度とした。また、酸化チタン以外の粒子を含む場合、SEMに付属するエネルギー分散型X線分析装置(株式会社堀場製作所製、EMAXなど)を用いてチタン元素の含まれる粒子を測定した。
なお、針状の場合には、100個の粒子について長径を測定し、その平均を平均粒子径とした。
〔結晶子サイズ算出方法〕
<測定サンプル調製方法>
実施例および比較例で得られた紫外線レーザー印刷用媒体から、印刷層を産業用剃刀(フェザー安全剃刀株式会社製、品番:099769)を用いて削り取り、集めた印刷層のみをサンプルとして、マッフル炉で燃焼して得た灰分の走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテク製、SU7000など)から得られるSEM像(2次電子像)から算出した。なお、印刷層の上に設けられた保護樹脂層は、産業用剃刀(フェザー安全剃刀株式会社製、品番:099769)を用いて削り取ることで除去した後、印刷層のサンプルを得た。灰分は、マッフル炉(ヤマト科学株式会社製、型番FO300)を使用して450℃で焼成し、灰化することで得た。
<X線回折法による測定>
灰化して得た試験サンプルをサンプルホルダーに充填し、高速検出器を使用して測定した。充填の際、サンプル量に応じて適宜高さ調節治具を用いることで、試料測定面がサンプルホルダー縁部と同じ高さとなるように調節した。
(測定条件)
X線回折装置:株式会社リガク製、RINT-Ultima III
電圧:40kV
電流:40mA
光学系:平行ビーム(CBO)
検出器:株式会社リガク製、高速検出器 D/teX Ultra 2
ゴニオメーター:Ultima III 水平ゴニオメーター
管球:Cu
波長:1.541Å(Kα1)
スキャンモード:CONTINUOUS
スキャンスピード:1.0000deg/min
ステップ幅:0.0500deg
スキャン軸:2Theta/Theta
スキャン範囲:5.0000~60.0000deg
入射スリット:1.0mm
長手制限スリット:10mm
受光スリット1:開放
受光スリット2:開放
サンプルホルダー:ASC-6試料ホルダー(品番2455E442)
材質:アルミニウム
寸法:φ23mm×2.0mm
ホルダー高さ調節治具:透明な円盤状の板(自製)
材質:ポリアクリル酸メチル
寸法:φ23mm×0.8mm
<X線回折で得たデータの処理>
得られた回折プロファイルに対し、統合粉末X線解析ソフトウェア(株式会社リガク製、PDXL2)を用いてバックグラウンド処理とプロファイルフィッティング処理を行った。
データ処理の設定については、特に記載のないものは全てソフトウェアのデフォルト設定にて行った。
回折プロファイルのピーク位置とピーク強度の情報から、データベース(ICDD)をもとに結晶相の同定を行った。
<X線回折で得たデータをもとにした結晶子サイズの算出>
データ処理後の回折プロファイルより得た最強回折線の半値幅(FWHM)とブラッグ角(θ)をシェラー式に代入し、結晶子サイズを算出した。
算出に使用した酸化チタンのX線回折ピークは、以下の通りである。
アナターゼ:101面
ルチル:110面
シェラー式は、以下の通りである。
D:結晶子サイズ(nm)
K:シェラー定数
λ:X線の波長(nm)
B:FWHM(rad)
θ:ブラッグ角(rad)
Kの値は0.89、Bは測定で得たFWHMの値、λの値は0.154、θの値はアナターゼの場合は101面、ルチルの場合は110面に由来する最大強度の実測値とした。
〔CSF〕
原料パルプのカナダ標準ろ水度(Canadian Standard Freeness;CSF)は、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定した。
〔紙基材の坪量〕
得られた紫外線レーザー印刷用媒体に対して、前処理として、保護樹脂層、印刷層、シーラント層、バリア層等の紙基材以外の層を、顕微鏡下で層の境界を確認しつつ、研削装置(有限会社佐川製作所製、砥石寸法φ50.8×12.7mm)を用いて研削して除去した。
次に、塗工により設けた印刷層、シーラント層、バリア層等を有する場合には、紙基材にこれらの層の一部が浸漬しているため、上記前処理を行った印刷用紙を100℃のキシレンに浸漬し、樹脂分を溶出させた。
得られた紙基材を、23℃、湿度50%の環境下で1日調湿した。調湿後のサンプルについて、JIS P 8124:2011に準拠して、紙基材の坪量を測定した。
〔紙基材の厚さ〕
紙基材の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定した。なお、保護樹脂層、印刷層、バリア層およびヒートシール層の厚さは後述するようにSEM像から算出し、JIS P 8118:2014に準拠して測定した値から差し引いて算出した。
〔紙基材を構成するパルプ繊維の長さ加重平均繊維長、繊維幅、微細繊維の含有量〕
紙基材を構成するパルプの長さ加重平均繊維長、繊維幅および微細繊維の含有量は、以下の方法で測定した。
実施例および比較例の印刷用媒体を40cm角に切り出し、それに、約50質量倍のイオン交換水を加え、24時間浸した。
24時間浸した後、標準型離解機(熊谷理機工業株式会社製)を用いて、未離解繊維がなくなるまで処理して、パルプを繊維状に離解した。保護樹脂層、印刷層、ヒートシール層、バリア層等を除いた離解後のスラリー(パルプ繊維の分散液)を分取し、繊維長測定機(型式FS-5 UHDベースユニット付、バルメット社製)を使用して、「長さ加重平均繊維長(ISO)」、「微細繊維量」、および「繊維幅」を測定した。
なお、「長さ加重平均繊維長(ISO)」は0.2mm以上7.6mm以下の繊維を選択して計算した長さ加重平均繊維長である。また、「微細繊維量」は、離解されたパルプ繊維中の、繊維幅75μm以下、かつ、長さ0.08mm以上0.20mm以下の微細繊維の本数割合である。「繊維幅」は幅10μm以上75μm以下の繊維を選択して計算した、長さ加重平均繊維幅である。
〔保水度〕
実施例および比較例の紫外線レーザー印刷用媒体について、測定の前処理として、以下の処理を行った。
塗工により設けた印刷層、塗工より設けたシーラント層、塗工により設けたバリア層、および塗工より設けた保護樹脂層は、産業用剃刀(フェザー安全剃刀株式会社製、品番:099769)を用いて削り取り、除去した。また、ラミネートにより設けたシーラント層および塗工により設けたバリア層を有する場合には、前処理において、シーラント層およびバリア層を産業用剃刀(フェザー安全剃刀株式会社製、品番:099769)を用いて削り取り、除去した。さらに、塗工により設けた印刷層およびラミネートにより設けた保護樹脂層を有する場合にも、同様にして、印刷層および保護樹脂層を削り取り、除去した。
その後、上記前処理を行った印刷用紙に、印刷用紙の約50質量倍のイオン交換水を加え、24時間静置した。24時間静置後、標準型離解機(熊谷理機工業株式会社製)を用いて、未離解繊維がなくなるまで処理して、パルプを繊維状に離解した。
離解処理に供した印刷用紙が、前処理により除去されていない、ラミネートにより設けた印刷層、ラミネートにより設けたシーラント層、ラミネートにより設けたバリア層およびラミネートにより設けた保護樹脂層よりなる群から選択されるいずれかの層を有する場合には、離解後のスラリーからこれらのラミネート層を取り除き、イオン交換水を加え、濃度0.5%に調整した。離解後のスラリー(パルプ繊維の分散液)イオン交換水を加え、濃度0.5%に調整した。
得られたパルプ繊維について、JAPAN TAPPI No.26(2000)(パルプ-保水度試験方法)に準じて、保水度を測定した。
〔酸化チタンの含有量〕
1.非印刷可能領域を印刷用媒体中に含む場合
(試験片の作製)
印刷用媒体の印刷可能領域、非印刷可能領域(塗工層が設けられていない領域)それぞれを適当なサイズに切り出し、サンプル(試験片)とし、切り出した面積を記録した。
(試験片の溶解)
オートクレーブ装置(CEMジャパン製、MARS5)のテフロン(登録商標)製容器へ硝酸:フッ酸=50:5(体積%)の混合溶剤と試験片とを投入し、210℃、120分間でオートクレーブ処理し、試験片を溶解させた。試験片の面積は適宜変更してもよく、また試験片が溶け残る場合は硝酸、フッ酸の比率や処理温度、処理時間等を適宜変更してもよい。
試験片を溶解後、超純水を用いて正確に定容した。
(溶解液中の酸化チタン量測定)
(1)ICP装置および測定条件は以下の通りである。
ICP装置:ICP-OEC装置(株式会社リガク製、CIROS1-20)
測定条件:
・キャリアガス:アルゴンガス
・アルゴンガス流量0.9L/min
・プラズマガス流量14L/min
・プラズマ出力1400W
・ポンプ回転数:2
・測定波長Ti:334.941nm
(2)検量線の作成
汎用混合標準液(SPEX社製、XSTC-622B)を、以下の濃度になるように正確に測り取り、上記測定条件で測定に供試し、チタン原子の発光波長に相当する334.941nmの強度を測定した。
・検量線作成用濃度:0ppm、0.01ppm、0.05ppm、0.1ppm、0.5ppm、1.0ppm、3.0ppm、5.0ppm
(3)溶解液中の酸化チタン含有量測定
試験片が溶解した溶液を上記検量線内に収まるよう、超純水で希釈し、ICP測定に供試した。
(4)酸化チタン含有量算出方法
以下の式で酸化チタン含有量を算出した。なお、酸化チタンの分子量÷チタンの原子量≒1.669である。
酸化チタン含有量(g/m)=ICP測定濃度(ppm)×希釈倍率×定容量(L)×1.669×1000÷面積(m
印刷可能領域の酸化チタン含有量から、非印刷可能領域の酸化チタン含有量を減じることにより、塗工層中の酸化チタンの含有量を求めた。
2.非印刷可能領域を印刷用媒体中に含まない場合
(試験片の作製)
印刷用媒体2枚を適当なサイズに切り出し、切り出した面積を記録した。
切り出した試験片のうち1枚を研削装置(有限会社佐川製作所製、砥石寸法φ50.8×12.7mm)を用いて、保護樹脂層と印刷層のみを削り取り除き、リファレンスサンプルとした。
過剰に削り取り過ぎないよう、適宜電子顕微鏡を用いて断面を観察した。
(その後の処理)
1.と同様に処理し、2枚の酸化チタン含有量の差を印刷層の酸化チタン含有量とした。
〔無機顔料の含有量〕
無機顔料の含有量は、ICPの測定波長をそれぞれの無機顔料が含有する金属原子に特有の測定波長に変更した以外は酸化チタンの含有量の測定方法と同様にして測定した。なお、カルシウム元素は測定波長422.673nm、マグネシウム元素は測定波長285.213nmで測定した。
〔印刷層、保護樹脂層、バリア層およびシーラント層の厚さ〕
走査型電子顕微鏡から得られる画像データから印刷層、保護樹脂層、バリア層およびシーラント層の厚さを測定した。
(1)測定サンプルの作製
サンプルを光硬化型樹脂(東亞合成株式会社製、D-800)で包埋し、ウルトラミクロトームで印刷用媒体の断面出しを実施した。切削にはダイアモンドナイフを使用し、常温で切削した。
切削した断面へ厚さ20nm程度の金蒸着を施し、走査型電子顕微鏡の測定へ供試した。
(2)測定装置・条件
測定装置:S-3600(株式会社日立ハイテク製)
測定条件:倍率2000倍
走査型顕微鏡の種類は上記に限らないが、スケールバーが表示されるタイプの装置を使用した。
印刷層、保護樹脂層、バリア層およびシーラント層が薄い場合は、適切な倍率を選択して画像データを取得した。
(3)測定方法
走査型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置を用いて、観察する印刷層からチタン元素が含有されることを確認した後、倍率2000倍で画像データを取得した。得られた画像データを印刷用媒体に印刷した後、定規で対象の印刷層、保護樹脂層、バリア層およびシーラント層の厚さ(他の層との境界から境界の長さ)を測定し、スケールバーと比較して実際の印刷層、保護樹脂層、バリア層およびシーラント層の厚さを測定した。1つの測定サンプルから無作為に選んだ5箇所の画像データを取得し、1箇所の画像データから、印刷層が最も厚い箇所、印刷層が最も薄い箇所の厚さを測定し、計10箇所の平均を印刷層の厚さとした。また、保護樹脂層が最も厚い箇所、保護樹脂層が最も薄い箇所の厚さを測定し、計10箇所の平均を保護樹脂層の厚さとした。同様にして、バリア層およびシーラント層の厚さを測定した。なお、観察する印刷層、保護樹脂層、バリア層、およびシーラント層の厚さにより観察倍率を変更してもよい。
〔ラマンスペクトルの測定〕
ラマンスペクトルは以下の方法により測定した。本実施例において、ラマンスペクトルの測定は、後述する印字1点の鮮明性で得られた印刷物を対象として行った。
<測定条件>
ラマンスペクトルの測定条件は、以下の通りであるが、測定に使用するレーザーで印刷物にダメージが見られる場合や、蛍光が強い場合、ピーク強度が弱い場合等は、適宜レーザー出力や照射時間等の以下の測定条件を変更することができる。ただし、印刷領域と非印刷領域のラマン強度は同じ条件下で測定した数値を採用する。
・装置:レニショー社製 inVia Raman microscope QUONTOR
・励起レーザー:532nm
・レーザーパワー:50mW(出力100%時)
・レーザー出力:50%
・測定モード:共焦点モード
・照射時間:2.0sec
・積算回数:30回
・レーザースポット径:2.5μm
・対物レンズ:20倍
<測定方法>
以下の方法により測定を行った。
(1)標準試料(単結晶シリコン、レニショー社製)を用いて、ラマンシフト位置のキャリブレーションを実施した(単結晶シリコンの520.5cm-1)。
(2)シート状のサンプルを試料台に設置した。シートが平面を保てるよう、必要に応じて押さえを設置した。
(3)装置にてフォーカスを合わせて観察(模擬レーザーにてフォーカスが最も小さくなるよう設定)した。印刷領域を測定する際は、目視で確認できる最も黒い箇所が測定時に表示されるガイドの中心にくるよう測定した。非印刷領域を測定する際は、印刷領域から300μm以上距離を空けて測定した。
(4)得られたラマンスペクトルは、装置付属の処理ソフト(レニショー社製、Wire5.2)にてベースライン補正(インテリジェント補正)を実施した。前記処理ソフトの多項式11にてベーラインを補正した。
(5)ルチル型酸化チタンの場合447±10cm-1、アナターゼ型酸化チタンの場合516±10cm-1の波数範囲の最大値(最大強度)を読み取り、下記式によりラマン強度比を算出した。
ラマン強度比=印刷領域の最大強度÷非印刷領域の最大強度
(6)印刷領域(印字部)、非印刷領域(非印字部)について、それぞれ10箇所を測定し、平均値を測定結果とした。
測定値のバラつきを抑制する観点から、印刷領域のラマン強度のカウントが10,000以下の範囲で測定することが好ましい。従って、印刷領域のラマン強度のカウントが10,000以下の範囲となるように、適宜測定条件を変更して測定を行った。また、以下の測定条件にて10回測定し、平均値±2SD(標準偏差)を超えて外れた数値を除外し、再度平均してラマン強度の平均値とした。
ラマン強度比は、以下のA~Cで評価を行った。
A:ラマン強度比が0.3以下
B:ラマン強度比が0.3を超え0.7以下
C:ラマン強度比が0.7を超える
〔印字1点の鮮明性〕
<レーザー印字方法>
実施例、比較例で得られた基材に対して紫外線レーザー照射機(製造社名:株式会社キーエンス、型番:MD-U1020C)を用いて、サンプル表面に10mm角の正方形を印字した。
(印字の条件)
波長:355nm
出力:50%(出力100%時2.5W)
周波数:40kHz
焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
スポット径:40μm(焦点合わせ時)
塗りつぶし間隔:0.3mm
スキャンスピード:8000mm/sec
スポット可変:0
<鮮明性評価>
デジタルマイクロスコープ(製造社名:株式会社キーエンス、型番:VHX-8000)を用いて評価対象の印字部付近の深度合成画像を取得した。深度合成画像とは、焦点距離を動かして複数の画像を取得し、それぞれからピントが合った部分を抽出して1枚の画像に構築した画像である。深度合成画像はデジタルマイクロスコープに搭載されるライブ深度合成機能を用いて取得した。
その後、自動面積計測機能のうち明るさ抽出モードを使用し、印字部で閾値より暗い領域の面積を計測した。明るさ抽出モードとは、画像の輝度レベルを-255から255に階層化して、任意の閾値以上または閾値以下の領域を抽出するモードである。印字部について、閾値より輝度レベルが低い領域が多いものほど「濃い印字」とみなすこととした。
(画像撮影時の設定)
シャッタースピード:オートモード(設定値70)
ゲイン:0dB
倍率:1000倍
照明:リング照明
(明るさ抽出モードの設定)
深度合成画像取得時の倍率:1000倍
照明:同軸落射100%
閾値:-5
抽出領域:印字部中心より半径45μmの円の内側
(印字部の濃さの評価基準)
A:-5より輝度レベルが低い領域の面積が抽出領域の65%以上
B:-5より輝度レベルが低い領域の面積が抽出領域の60%以上65%未満
C:-5より輝度レベルが低い領域の面積が抽出領域の50%以上60%未満
D:-5より輝度レベルが低い領域の面積が抽出領域の50%未満
〔保護樹脂層の膨らみ抑制〕
<レーザー印字方法>
実施例、比較例で得られた印刷用媒体をMD:50mm×CD:100mmにカットした。カットしたサンプルを、紫外線レーザー照射機(株式会社キーエンス製、型番:MD-U1020C)を用いて、サンプル表面に「2021」(フォント:Arial、幅:9mm、高さ3mm)という文字を印字した。
測定の際は、以下の条件を用いた。
・波長:355nm
・出力:80%(出力100%時2.5W)
・周波数:40kHz
・スポット径:40μm(焦点合わせ時)
・スポット可変:60
・塗りつぶし間隔:0.04mm
・スキャンスピード:3000mm/sec
なお、レーザーの焦点位置の調整では、装置付属の高さ補正機能を使用し、上記スポット可変値で、レーザーの焦点位置を補正した。
<膨らみの評価>
得られた印刷物に対して、表面粗さ計(株式会社キーエンス製、型番:VR-3000)を用いて、非印刷部と印刷部の高さの差を測定し、以下基準により判断した。測定の際は、以下の条件を用いた。
・観察倍率:50倍
・基準面設定として、領域指定:連続領域(抽出方法:平面、許容レベル:4、膨張度縮退度3)
・面形状補正:うねり除去(補正の強さ5)
・計測種別:線粗さ
・カットオフ値:λs=なし
・カットオフ値:λc=なし
評価基準は、以下の通りである。
A:高さの差が15μm未満
B:高さの差が15μm以上30μm未満
C:高さの差が30μm以上45m未満
D:高さの差が45μm以上
〔水蒸気バリア性〕
JIS-Z-0208:1976(カップ法)B法(40℃±0.5℃、相対湿度90%±2%)に準拠して、シーラント層を内側にして測定した。
水蒸気バリア性は、以下の評価基準にて評価した。
(水蒸気バリア性の評価基準)
A:水蒸気透過度が30g/m・day以下
B:水蒸気透過度が30g/m・dayを超え、40g/m・day以下
C:水蒸気透過度が40g/m・dayを超え、50g/m・day以下
D:水蒸気透過度が50g/m・dayを超える
また、下記の条件でレーザー照射を行い、レーザー照射後の紫外線レーザー印刷物に対して、同様に水蒸気透過度を測定した。なお、比較例1-6については、紫外線レーザー照射前の水蒸気バリア性の評価がDであったため、測定しなかった。
<レーザー照射>
実施例、比較例で得られた紫外線レーザー印刷用紙に対して紫外線レーザー照射機(製造社名:株式会社キーエンス、型番:MD-U1020C)を用いて、以下に記載の条件でサンプル表面(印刷層側)に10cm角の正方形を印字した。
・印字の条件
波長:355nm
出力:80%(出力100%時2.5W)
周波数:40kHz
焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
スポット径:40μm(焦点合わせ時)
塗りつぶし間隔:0.04mm
スキャンスピード1000mm/sec
スポット可変:0
〔酸素バリア性〕
酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/22)を使用し、温度23℃、相対湿度85%の条件にて、実施例1-21~1-29、実施例2-6~2-14の紫外線レーザー印刷用媒体の酸素透過度を測定した。
具体的には、積層シートについて、JIS K7126-2:2006に準拠して、温度23℃、相対湿度85%における酸素透過度を測定した。
酸素透過度の値は低いほど酸素バリア性に優れる。
酸素バリア性は、以下の評価基準にて評価した。
(酸素バリア性の評価基準)
A:酸素透過度が3.0mL/m・day・atm以下
B:酸素透過度が3.0mL/m・day・atmを超え、5.0mL/m・day・atm以下
C:酸素透過度が5.0mL/m・day・atmを超え、15mL/m・day・atm以下
D:酸素透過度が15mL/m・day・atmを超える
また、下記の条件でレーザー照射を行い、レーザー照射後の紫外線レーザー印刷物に対して、同様に酸素透過度を測定した。
<レーザー照射>
実施例、比較例で得られた紫外線レーザー印刷用媒体に対して紫外線レーザー照射機(製造社名:株式会社キーエンス、型番:MD-U1020C)を用いて、以下に記載の条件でサンプル表面(印刷層側)に10cm角の正方形を印字した。
・印字の条件
波長:355nm
出力:80%(出力100%時2.5W)
周波数:40kHz
焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
スポット径:40μm(焦点合わせ時)
塗りつぶし間隔:0.04mm
スキャンスピード1000mm/sec
スポット可変:0
〔紫外線レーザー照射後のバリア性低下率(バリア性低下率)〕
紫外線レーザー照射前後の水蒸気透過度および酸素透過度から、紫外線レーザー照射によるバリア性の低下(バリア性低下率)を、以下の評価基準により評価した。
(バリア性低下率の評価基準)
A:水蒸気透過度および酸素透過度の低下率(減少率)が5.0%以下
B:水蒸気透過度または酸素透過度の低下率(減少率)が5.0%を超える
なお、水蒸気透過度の低下率は、以下のように算出される。
水蒸気透過度の低下率=(紫外線レーザー照射後の水蒸気透過度(g/m・day)-紫外線レーザー照射前の水蒸気透過度(g/m・day))/紫外線レーザー照射前の水蒸気透過度(g/m・day)×100
同様に、酸素透過度の低下率は、以下のように算出される。
酸素透過度の低下率=(紫外線レーザー照射後前の酸素透過度(mL/m・day・atm)-紫外線レーザー照射前の酸素透過度(mL/m・day・atm))/紫外線レーザー照射前の酸素透過度(mL/m・day・atm)×100
〔ヒートシール剥離強度およびヒートシール剥離強度の低下率(剥離強度低下率)〕
2枚1組の紫外線レーザー印刷用媒体を、シーラント層が向き合うように重ね、ヒートシールテスター(テスター産業製、TP-701-B)を用いて、160℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした。ヒートシールされた試験片を温度23℃±1℃、湿度50%±2%の室内で4時間以上静置した。続いて、ヒートシールされた試験片を15mm幅にカットし、引張試験機を用いて、引張速度300mm/minでT字剥離し、記録された最大荷重をヒートシール剥離強度とした。
ヒートシール剥離強度を、以下の評価基準で評価した。
(ヒートシール剥離強度の評価基準)
A:ヒートシール剥離強度が10N/15mm以上
B:ヒートシール剥離強度が6.0N/15m以上10N/15mm未満
C:ヒートシール剥離強度が3.0N/15mm以上6.0N/15mm未満
D:ヒートシール剥離強度が3.0N/15mm未満
<レーザー照射>
実施例、比較例で得られた紫外線レーザー印刷用媒体に対して紫外線レーザー照射機(製造社名:株式会社キーエンス、型番:MD-U1020C)を用いて、以下に記載の条件でサンプル表面(印刷層側)に10cm角の正方形を印字した。
・印字の条件
波長:355nm
出力:80%(出力100%時2.5W)
周波数:40kHz
焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
スポット径:40μm(焦点合わせ時)
塗りつぶし間隔:0.04mm
スキャンスピード1000mm/sec
スポット可変:0
(ヒートシール剥離強度低下率の評価基準)
紫外線レーザー照射前後のヒートシール剥離強度から、紫外線レーザー照射によるバリア性の低下(バリア性低下率)を、以下の評価基準により評価した。なお、比較例1-6については、紫外線レーザー照射前のヒートシール剥離強度の評価がDであったため、測定しなかった。
(ヒートシール剥離強度の低下率の評価基準)
A:ヒートシール剥離強度の低下率(減少率)が5.0%以下
B:ヒートシール剥離強度の低下率(減少率)が5.0%を超える
なお、ヒートシール剥離強度の低下率は、以下のように算出される。
ヒートシール剥離強度の低下率=(紫外線レーザー照射前のヒートシール剥離強度(N/15mm)-紫外線レーザー照射前のヒートシール剥離強度(N/15mm))/紫外線レーザー照射前のヒートシール剥離強度(N/15mm)×100
表2および3の結果によれば、実施例の印刷用媒体を用いて、紫外線レーザーにより印刷することにより、一点ごとの印字鮮明性に優れ、保護樹脂層の膨らみ抑制された印刷画像を有する印刷物が得られた。
さらに、ヒートシール性を有し、水蒸気バリア性にも優れるものであった。また、バリア層を形成した実施例1-21~1-29および2-6~2-14の紫外線レーザー印刷用媒体は、酸素バリア性にも優れるものであった。また、紫外線レーザーによる印刷による、バリア性およびヒートシール性の低下が抑制されていた。
一方、印刷層が有する酸化チタンの結晶子サイズが13nm未満である比較例1-1および比較例1-2の印刷用媒体を用いて紫外線レーザーにより印刷した場合には、十分な一点ごとの印字鮮明性が得られなかった。また、印刷層が有する酸化チタンの結晶子サイズが53nmを超える比較例1-3の印刷用媒体を用いて紫外線レーザーにより印刷した場合には、保護樹脂層の膨らみが発生した。
さらに、印刷層が有する酸化チタンの含有量が0.1g/m未満である比較例1-4の印刷用媒体を用いて紫外線レーザーにより印刷した場合には、十分な一点ごとの印字鮮明性が得られなかった。また、印刷層が有する酸化チタンの含有量が4.0g/mを超える比較例1-5の印刷用媒体を用いて紫外線レーザーにより印刷した場合には、保護樹脂層の膨らみが発生した。
また、シーラント層を有していない比較例1-6の印刷用媒体を用いた場合には、ヒートシール性および水蒸気バリア性が得られなかった。
本発明の印刷用媒体は、紫外線レーザーの照射によって酸化チタンが変色することで、視認性に優れる印刷物が提供でき、さらに、一点ごとの印字鮮明性に優れ、保護樹脂層の膨らみが抑制される。本発明の紫外線レーザー印刷用媒体は、日付、バーコード等の可変情報が印刷される包装体、ラベル、および粘着テープなどの加工品に好適に適用される。さらに、本発明の印刷物の製造方法は、包装体、ラベル、粘着テープなどへの可変情報の印刷に好適に適用される。

Claims (14)

  1. 基材の一方の面に、酸化チタンを含有する印刷層と、保護樹脂層とをこの順で有し、
    基材の他方の面にシーラント層を有し、
    前記印刷層中の前記酸化チタンの含有量が、0.1g/m以上4.0g/m以下であり、
    前記印刷層中の酸化チタンの結晶子サイズが13nm以上53nm以下である、
    紫外線レーザー印刷用媒体。
  2. 前記印刷層中の前記酸化チタンの結晶子サイズが30nm以上53nm以下である、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
  3. 印刷層中の酸化チタンがルチル型酸化チタンであり、前記酸化チタンの回折角度が27.60°以下である、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
  4. 前記保護樹脂層の厚さが10μm以上である、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
  5. 前記保護樹脂層を構成する樹脂が、ポリオレフィン、ポリエステルおよびポリビニルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
  6. 前記基材が紙基材であり、前記紙基材を構成するパルプの保水度が140%以下である、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
  7. 前記基材がフィルム基材である、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
  8. フィルム基材を構成する樹脂が、ポリオレフィン、ポリエステル、およびポリ塩化ビニルよりなる群から選択される、請求項7に記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
  9. 基材とシーラント層との間に、バリア層を有する、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用媒体。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用媒体から得られた印刷物であって、
    前記印刷層が、少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、
    非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度の比が0.70以下である、印刷物。
  11. 請求項1~9のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用媒体を用いてなる、加工品。
  12. 請求項10に記載の印刷物を用いてなる、加工品。
  13. 請求項1~9のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用媒体に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有する、
    印刷物の製造方法。
  14. 前記印刷する工程が、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下となるように紫外線レーザーを照射する工程である、請求項13に記載の印刷物の製造方法。
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