以下、本発明の感光性樹脂組成物、感光性フィルム、プリント配線板、及び半導体装置について詳細に説明する。
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有する樹脂、(B)無機充填材、(C)光重合開始剤、(D)エポキシ樹脂、及び(E)活性エステル樹脂、マレイミド樹脂、及びビニル樹脂から選択される1種以上の樹脂、を含有する感光性樹脂組成物であって、(D)成分が、(D-1)軟化点が30℃未満であり、エポキシ当量が150g/eq.以下であるエポキシ樹脂、及び(D-2)軟化点が30℃以上59℃未満であるエポキシ樹脂を含む。
本発明では、現像性に加えて誘電率及び誘電正接が低い硬化物を得ることができ、可撓性、現像性に優れる感光性樹脂組成物を提供できるようになる。また、通常は、ガラス転移温度が高い硬化物を得ることも可能となる。
感光性樹脂組成物は、更に必要に応じて、(F)硬化促進剤、(G)溶剤、及び(H)その他の添加剤などの任意の成分を含んでいてもよい。以下、感光性樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
<(A)エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有する樹脂>
感光性樹脂組成物は、(A)成分として、エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有する樹脂を含有する。(A)成分を感光性樹脂組成物に含有させることにより現像性を向上させることができる。
エチレン性不飽和基は、炭素-炭素二重結合を有し、例えば、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリロイル基が挙げられ、光ラジカル重合の反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基、アクリロイル基及びこれらの組み合わせを包含する。(A)成分は、エチレン性不飽和基を含むため、光ラジカル重合が可能である。(A)成分の1分子当たりのエチレン性不飽和基の数は、1つでもよく、2つ以上でもよい。また、(A)成分が1分子当たり2個以上のエチレン性不飽和基を含む場合、それらのエチレン性不飽和基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
また、(A)成分はカルボキシル基を含むため、当該(A)成分を含有する感光性樹脂組成物は、アルカリ溶液(例えば、アルカリ性現像液としての1質量%の炭酸ナトリウム水溶液)に対し溶解性を示す。(A)成分の1分子当たりのカルボキシル基の数は、1つでもよく、2つ以上でもよい。
(A)成分としては、エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有している樹脂であればよい。(A)成分としては、
(A-1)ナフタレン骨格含有樹脂、及び
(A-2)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、
の少なくともいずれかであることが好ましい。
((A-1)ナフタレン骨格含有樹脂)
(A-1)ナフタレン骨格含有樹脂は、(A)成分に属する樹脂であるため、エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを含有する樹脂である。このため、(A-1)成分は、光ラジカル重合が可能であり、かつ、(A-1)成分を含有する感光性樹脂組成物は、いずれも、アルカリ溶液に対し溶解性を示す。
(A-1)成分は、1分子中に、複数個のエチレン性不飽和基を持つことが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐溶解性を高めることができる。また、(A-1)成分は、ナフタレン骨格1個につき、2個以下のエチレン性不飽和基を持つことが好ましい。これにより、架橋位置(架橋点)を調整できるので、感光性樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐溶解性をコントロールすることができる。より好ましくは、エチレン性不飽和基は、ナフタレン骨格が有する置換基に含まれている。エチレン性不飽和基をナフタレン骨格の置換基に含ませるためには、第1の前駆体として、例えば、ナフトールのOH基のH原子が、エポキシ基を含有する置換基(例えば、エポキシ基、グリシジル基)で置換された化合物を用意し、第1の前駆体に対して、エチレン性不飽和結合を有する化合物(例えば不飽和カルボン酸、好ましくは(メタ)アクリル酸)を付加させることで得ることができる。これにより、ナフタレン骨格が有する置換基に、エチレン性不飽和基を導入することができる。
(A-1)成分は、1分子中に、複数個のカルボキシル基を持つことが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物のアルカリ溶液(例えばアルカリ性現像液)に対する溶解性を高めることができる。(A-1)成分は、ナフタレン骨格1個につき、2個以下のカルボキシル基を持つことが好ましい。これにより、溶解性の制御ができる。より好ましくは、カルボキシル基は、ナフタレン骨格が有する置換基に含まれている。カルボキシル基をナフタレン骨格の置換基に含ませるためには、第1の前駆体として、例えば、ナフトールのOH基のH原子が、エポキシ基を含有する置換基で置換された化合物を用意し、第1の前駆体に対して、エチレン性不飽和結合を有する化合物(例えば不飽和カルボン酸、好ましくは(メタ)アクリル酸)を付加させ、これによって第2級水酸基を有する第2の前駆体を得て、第2の前駆体に対して、カルボン酸無水物(例えばテトラヒドロフタル酸)を付加させることで得ることができる。これにより、ナフタレン骨格が有する置換基に、エチレン性不飽和基と、カルボキシル基の双方を導入することができる。
また、(A-1)成分は、ナフタレン骨格含有樹脂である。ナフタレン骨格含有樹脂とは、1分子中に1個以上のナフタレン骨格を含有する化合物をいう。また、(A-1)成分は、アルカリ溶液(例えばアルカリ性現像液)に対して適切な範囲の溶解速度で溶解できる。また、(A-1)成分を含む感光性樹脂組成物をアルカリ性現像液で現像した場合に、意図に反して溶け過ぎる部分、意図に反して溶けない部分が感光性樹脂組成物中に局所的に発生することを抑制できる。即ちBP(ブレイクポイント)を向上させることが可能となる。したがって、感光性樹脂組成物の現像性を改善することができる。
また、(A-1)成分として、ナフタレン骨格含有樹脂を用いると、通常は、分子の剛性が高くなるので感光性樹脂組成物中の分子の動きが抑制され、その結果、感光性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度がより高くなる。さらに、(A-1)成分の作用により、通常は、熱膨張又は熱収縮によって生じる内部応力に対する耐性が向上するので、感光性フィルムの可撓性を向上することができる。
(A-1)成分は、1分子中に、1つのナフタレン骨格を含んでいてもよく、2個以上のナフタレン骨格を含んでいてもよい。
(A-1)成分は、例えば、下記式(1)に示す構造を含有する樹脂である。(A-1)成分は、下記式(1)に示す構造を複数個(例えば1~10個、好ましくは1~6個)有していてもよく、下記式(1)に示す構造を複数個有する場合、(A-1)成分は、それら複数個の下記式(1)に示す構造を構造単位(繰り返し単位)として含んでいてもよい。また、下記式(1)中、R1と結合した結合手は、ナフタレン骨格が有する炭素原子のうち結合可能な炭素原子のいずれに結合していてもよい。よって、R1が結合した結合手は、末端結合手と、同じベンゼン環の炭素原子と結合していてもよく、異なるベンゼン環の炭素原子と結合していてもよい。前記の末端結合手は、ナフタレン環に結合する結合手のうち、R1に結合した結合手及びOR’に結合した結合手以外の結合手を表し、具体的には、式(1)の左端に描かれた結合手を表す。例えば、ナフタレン骨格における末端結合手と、R1と結合した結合手との位置の組み合わせは、1,2位、1,3位、1,4位、1,5位、1,6位、1,7位、1,8位、2,3位、2,6位、2,7位であってもよい。
上記式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。R
1の炭素原子数は、通常1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~6である。また、アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、等が挙げられる。
R1及びR2が有しうる置換基は、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、オキソ基等が挙げられる。
上記式(1)中、Xは、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Xの炭素原子数は、通常6~30、好ましくは6~20、より好ましくは6~10である。アリーレン基は、例えば、フェニレン基、アントラセニレン基、フェナントレニレン基、ビフェニレン基である。
Xが有しうる置換基は、例えば、R1及びR2が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。
上記式(1)において、aは、0又は1を表す。ここで、aは、基Xの数である。
上記式(1)において、sは、0又は1を表す。ここで、s及びtは、それぞれ、基R1及び基R2の数である。また、上記式(1)において、tは、0又は1を表す。ただし、s及びtは、s+tが0にはならない。中でも、a=1の場合、s及びtがいずれも1であることが好ましい。a=0の場合、s及びtの一方が0であることが好ましい。
上記式(1)中、OR’は、ナフタレン骨格上の置換基である。上記式(1)中、R’は、それぞれ独立してエチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含む有機基を表す。
R’は、好ましくは、下記式(2)に示す基を表す。
上記式(2)中、R
3は、3価の基を表し、好ましくは、置換基を有していてもよい3価の炭化水素基(ただし、炭素-炭素結合(C-C結合)の間にヘテロ原子が介在していてもよい)を表し、中でも、置換基を有していてもよい3価の脂肪族炭化水素基が好ましい。このR
3は、置換基を有していてもよいエポキシ基含有置換基の3価の残基であってもよい。R
3が有しうる置換基は、例えば、R
1及びR
2が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。
上記式(2)中、R4は、エチレン性不飽和基を含む有機基を表す。エチレン性不飽和基を含む有機基の好ましい例としては、(メタ)アクリロイルオキシ基が挙げられる。「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基及びそれらの組み合わせを包含する。
上記式(2)中、R5は、カルボキシル基を含む有機基である。カルボキシル基を含む有機基の例は、-OCO-R6-COOHである。ここで、R6は、2価の基を表す。R6としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が好ましい。R6の炭素原子数は、通常1~30、好ましくは1~20、より好ましくは1~6である。2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の直鎖状若しくは分岐鎖状の非環式アルキレン基;飽和若しくは不飽和の2価の脂環式炭化水素基;フェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基等が挙げられる。中でも、2価の脂環式炭化水素基及びアリーレン基が好ましく、4-シクロヘキセニレン基及びフェニレン基が特に好ましい。また、R6が有しうる置換基は、例えば、R1及びR2が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。-OCO-R6-COOH中の-CO-R6-COOHは、通常、カルボン酸無水物の残基である。カルボン酸無水物の例は、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物である。
上記式(1)中、cは、通常1~6、好ましくは1~3、より好ましくは1~2の整数を表す。ここで、cは、基OR’の数である。
-(A-1)成分の第1の例(a=1)-
(A-1)成分の好ましい例は、ナフトールアラルキル型樹脂である。「ナフトールアラルキル型樹脂」とは、ナフトールアラルキレン基からOH基のH原子を除いた構造の基を含有する樹脂である。
好ましいナフトールアラルキル型樹脂は、上記式(1)においてa=1の構造を含有する樹脂であり、例えば、下記式(3)に示す構造を含有する樹脂である。
上記式(3)中、R1、R2、X、s、t、R’及びcは、前述と同じである。s及びtがいずれも1であることが好ましい。
ナフトールアラルキル型樹脂のより好ましい樹脂は、上記式(3)において、c=1、s=1、かつ、t=1の構造を含有する樹脂であり、例えば、下記式(4)又は(5)に示す構造の2価の基を含有するナフトールアラルキル型樹脂である。
上記式(4)又は(5)中、R1、R2、X、R’及びcは、前述と同じである。上記式(4)又は(5)に示されるナフトールアラルキル型樹脂は、後述する合成例1で用いたナフトールアラルキル型エポキシ樹脂を材料として合成可能な樹脂である。ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂は、例えば、新日鉄住金化学株式会社製「ESN-475V」(エポキシ当量325g/eq.)として入手可能である。
-(A-1)成分の第2の例(a=0)-
(A-1)成分のうち、ナフトールアラルキル型樹脂以外(a=0)の好ましい例は、上記式(1)において、c=2、s=1、かつ、t=0の構造を含有する樹脂であり、例えば、下記式(6)に示す構造の2価の基を含有するナフタレン骨格含有樹脂である。
上記式(6)中、R
1、R及びR’は、前述と同じである。上記式(6)に示されるナフタレン骨格含有樹脂は、1,1’-ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)メタンを材料として合成可能な樹脂である。このようなナフタレン骨格含有エポキシ樹脂は、例えば、大日本インキ化学工業社製「EXA-4700」として入手可能である。
(A-1)成分の重量平均分子量としては、成膜性の観点から、500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、1500以上であることがさらに好ましく、2000以上であることがよりさらに好ましい。上限としては、現像性の観点から、10000以下であることが好ましく、8000以下であることがより好ましく、7500以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
-(A-1)成分の製造方法-
(A-1)成分は、ナフタレン骨格、エチレン性不飽和基、及びカルボキシル基を含有する樹脂を有する化合物であれば、上述した例に限られることはなく、特に制限はないが、その一態様としては、ナフタレン骨格を有するナフタレン型エポキシ化合物(ナフタレン骨格含有エポキシ化合物)に不飽和カルボン酸を反応させ、さらにカルボン酸無水物を反応させた、酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂等が挙げられる。酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂の製造方法について説明する。まず、ナフタレン骨格含有エポキシ化合物に不飽和カルボン酸を反応させ不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得、次いで、不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂とカルボン酸無水物とを反応させる。このようにして酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得ることができる。
ナフタレン骨格含有エポキシ化合物としては、分子内にエポキシ基を1個以上有する化合物であれば使用可能であり、例えば、モノヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロオキシナフタレン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシビナフタレン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合反応によって得られるナフタレン型エポキシ樹脂、ビナフトール型エポキシ樹脂等の、分子中にナフタレン骨格を有するナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
モノヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1-グリシジルオキシナフタレン、2-グリシジルオキシナフタレンが挙げられる。ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1,3-ジグリシジルオキシナフタレン、1,4-ジグリシジルオキシナフタレン、1,5-ジグリシジルオキシナフタレン、1,6-ジグリシジルオキシナフタレン、2,3-ジグリシジルオキシナフタレン、2,6-ジグリシジルオキシナフタレン、2,7-ジグリシジルオキシナフタレン等が挙げられる。
ポリヒドロキシビナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1,1’-ビ-(2-グリシジルオキシ)ナフチル、1-(2,7-ジグリシジルオキシ)-1’-(2’-グリシジルオキシ)ビナフチル、1,1’-ビ-(2,7-ジグリシジルオキシ)ナフチル等が挙げられる。
ポリヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合反応によって得られるナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1,1’-ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)メタン、1-(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)-1’-(2’-グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’-ビス(2-グリシジルオキシナフチル)メタンが挙げられる。
これらのなかでも1分子中にナフタレン骨格を2個以上有する、ポリヒドロキシビナフタレン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合反応によって得られるナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、特に1分子中にエポキシ基を3個以上有する1,1’-ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)メタン、1-(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)-1’-(2’-グリシジルオキシナフチル)メタン、1-(2,7-ジグリシジルオキシ)-1’-(2’-グリシジルオキシ)ビナフチル、1,1’-ビ-(2,7-ジグリシジルオキシ)ナフチルが平均線熱膨張率に加えて耐熱性に優れる点で好ましい。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸等が挙げられ、これらは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。なかでも、アクリル酸、メタクリル酸が感光性樹脂組成物の光硬化性を向上させる観点から好ましい。なお、本明細書において、上記のナフタレン型エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物であるナフタレン型エポキシ化合物エステル樹脂を「ナフタレン型エポキシ化合物(メタ)アクリレート」と記載する場合があり、ここでナフタレン型エポキシ化合物のエポキシ基は、通常、(メタ)アクリル酸との反応により実質的に消滅している。「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート、アクリレート及びその組み合わせを包含する。アクリル酸とメタクリル酸とをまとめて「(メタ)アクリル酸」ということがある。
カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。なかでも、無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸が硬化物の現像性及び絶縁信頼性向上の点から好ましい。
酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得るにあたって、触媒存在下で不飽和カルボン酸とナフタレン骨格含有エポキシ化合物とを反応させ不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得た後、不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂とカルボン酸無水物とを反応させてもよい。
この際に用いる触媒の量は、不飽和カルボン酸とナフタレン骨格含有エポキシ化合物とカルボン酸無水物との合計質量に対して、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは0.0005質量%~1質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.001質量%~0.5質量%の範囲である。触媒としては、例えば、N-メチルモルフォリン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の各種アミン化合物類;トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;テトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラプロピルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、トリメチル(2-ヒドロキシルプロピル)ホスホニウム塩、トリフェニルホスホニウム塩、ベンジルホスホニウム塩等のホスホニウム塩類であって、代表的な対アニオンとして、クロライド、ブロマイド、カルボキシレート、ハイドロオキサイド等を有するホスホニウム塩類;トリメチルスルホニウム塩、ベンジルテトラメチレンスルホニウム塩、フェニルベンジルメチルスルホニウム塩またはフェニルジメチルスルホニウム塩等のスルホニウム塩類であって、代表的な対アニオンとして、カルボキシレート、ハイドロオキサイド等を有するスルホニウム塩類;燐酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸のような酸性化合物類等が挙げられる。反応は、50℃~150℃の範囲で行うことができ、80℃~120℃の範囲で行うことが好ましい。
酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得るにあたって、有機溶剤を使用してもよく、有機溶剤としては、後述する(G)溶剤と同様の溶剤を使用することができる。
酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得るにあたって、ハイドロキノン等の重合阻害剤を使用してもよい。この際に用いる重合阻害剤の量は、不飽和カルボン酸とナフタレン骨格含有エポキシ化合物とカルボン酸無水物との合計質量に対して、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは0.0005質量%~1質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.001質量%~0.5質量%の範囲である。
酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂としては、酸変性ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。酸変性ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレートとは、ナフタレン骨格含有エポキシ化合物を使用し、不飽和カルボン酸として(メタ)アクリル酸を使用して得られる酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を指す。
(A-1)成分の他の態様としては、(メタ)アクリル酸を重合して得られる構造単位に有する(メタ)アクリル樹脂に、エチレン性不飽和基及びナフタレン骨格含有エポキシ化合物を反応させてエチレン性不飽和基を導入した不飽和変性ナフタレン骨格含有(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。さらに不飽和基導入の際に生じたヒドロキシル基にカルボン酸無水物を反応させることも可能である。カルボン酸無水物としては上記した酸無水物と同様のものを使用することができ、好ましい範囲も同様である。
((A-2)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂)
(A-2)成分としての酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、エポキシ化合物の(メタ)アクリレートにカルボキシル基が導入された構造を有する化合物である。ただし、この(A-2)成分には、前記(A-1)成分は含まれない。
(A-2)成分の一態様としては、クレゾールノボラックA型エポキシ化合物、クレゾールノボラックF型エポキシ化合物等のクレゾールノボラック型エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させ、さらにカルボン酸無水物を反応させた、酸変性クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。詳細は、クレゾールノボラック型エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートを得、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートとカルボン酸無水物とを反応させることで酸変性クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートを得ることができる。
(A-2)成分の別態様としては、上述したクレゾールノボラック型エポキシ化合物以外のエポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させ、さらにカルボン酸無水物を反応させた酸変性エポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。そのようなエポキシ化合物としては、例えば、ビフェニル型エポキシ化合物;ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物等のビスフェノール型エポキシ化合物;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;パーフルオロアルキル型エポキシ樹脂等のフッ素含有エポキシ樹脂;ビキシレノール型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等の縮合環骨格を含有するエポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ポリグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレートとアクリル酸エステルとの共重合体等のグリシジル基含有アクリル樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。
このような酸変性エポキシ(メタ)アクリレートは市販品を用いることができ、具体例としては、日本化薬社製の「CCR-1179」(クレゾールノボラックF型エポキシアクリレート)、「ZAR-2000」(酸変性ビスフェノール型エポキシアクリレート:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び無水コハク酸の反応物)、「ZFR-1491H」(酸変性ビスフェノール型エポキシアクリレート:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び酸無水物の反応物)、「ZFR-1533H」(酸変性ビスフェノール型エポキシアクリレート:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び無水テトラヒドロフタル酸の反応物)、「ZCR-1569H」(酸変性ビフェニル型エポキシアクリレート:ビフェニル型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び酸無水物の反応物)、昭和電工社製の「PR-300CP」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び酸無水物の反応物)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A-2)成分の他の態様としては、(メタ)アクリル酸を重合して得られる構造単位に有する(メタ)アクリル樹脂に、エポキシ化合物の(メタ)アクリレートを反応させてエチレン性不飽和基を導入した不飽和変性(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。エポキシ化合物の(メタ)アクリレートは、例えば、グリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。さらに不飽和基導入の際に生じたヒドロキシル基にカルボン酸無水物を反応させることも可能である。カルボン酸無水物としては上記したカルボン酸無水物と同様のものを使用することができ、好ましい範囲も同様である。
このような不飽和変性(メタ)アクリル樹脂は市販品を用いることができ、具体例としては、昭和電工社製の「SPC-1000」、「SPC-3000」、ダイセル・オルネクス社製「サイクロマーP(ACA)Z-250」、「サイクロマーP(ACA)Z-251」、「サイクロマーP(ACA)Z-254」、「サイクロマーP(ACA)Z-300」、「サイクロマーP(ACA)Z-320」等が挙げられる。
(A-2)成分の重量平均分子量としては、成膜性の観点から、1000以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましく、2000以上であることがさらに好ましい。上限としては、現像性の観点から、20000以下であることが好ましく、15000以下であることがより好ましく、14000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
(A)成分は、上述した(A-1)成分及び(A-2)成分以外の(A-3)成分であってもよい。この成分には、(A-1)成分及び(A-2)成分は含まない。
(A-3)成分の重量平均分子量及び酸価は、任意であるが、上述した(A-2)成分の重量平均分子量及び酸価と同じ範囲にあることが好ましい。これにより、(A-2)成分の項で説明したのと同じ利点を得ることができる。
(A)成分の酸価としては、感光性樹脂組成物のアルカリ溶液に対する溶解性を向上させるという観点から、0.1mgKOH/g以上、0.5mgKOH/g以上又は1mgKOH/g以上であることが好ましい。他方で、硬化物の微細パターンがアルカリ溶液に溶け出す事を抑制するという観点から、酸価が150mgKOH/g以下であることが好ましく、120mgKOH/g以下であることがより好ましく、100mgKOH/g以下であることが更に好ましい。ここで、酸価とは、(A)成分に存在するカルボキシル基の残存酸価のことであり、酸価は以下の方法により測定することができる。まず、測定樹脂溶液約1gを精秤した後、その樹脂溶液にアセトンを30g添加し、樹脂溶液を均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1Nのエタノール性KOH溶液を用いて滴定を行う。そして、下記式(1)により酸価を算出する。
式:A=Vf×5.611/(Wp×I) ・・・(1)
なお、上記式(1)中、Aは酸価[mgKOH/g]を表し、VfはKOH溶液の滴定量[mL]を表し、Wpは測定樹脂溶液質量[g]を表し、Iは測定樹脂溶液の不揮発成分の割合[質量%]を表す。
(A)成分の含有量としては、感光性樹脂組成物のアルカリ溶液に対する溶解性を調整するという観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
なお、本発明において、感光性樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
<(B)無機充填材>
感光性樹脂組成物は、(B)成分として(B)無機充填材を含有する。(B)成分を含有させることで、誘電率及び誘電正接が低い硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物を提供可能となる。
(B)無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。またシリカとしては球形シリカが好ましい。(B)無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)無機充填材の平均粒径は、誘電率及び誘電正接が低い硬化物を得る観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、2μm以下、1μm以下又は0.7μm以下である。該平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.07μm以上、0.1μm以上又は0.2μm以上である。
無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA-500」、島津製作所社製「SALD-2200」等を使用することができる。
(B)無機充填材の比表面積は、誘電率及び誘電正接が低い硬化物を得る観点から、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは3m2/g以上、特に好ましくは5m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
(B)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等の1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)等が挙げられる。
(B)無機充填材は市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、アドマテックス社製「SC2050」、「SC4050」、「アドマファイン」、電気化学工業社製「SFPシリーズ」、新日鉄住金マテリアルズ社製「SP(H)シリーズ」、堺化学工業社製「Sciqasシリーズ」、日本触媒社製「シーホスターシリーズ」、新日鉄住金マテリアルズ社製の「AZシリーズ」、「AXシリーズ」、堺化学工業社製の「Bシリーズ」、「BFシリーズ」等が挙げられる。
(B)無機充填材の含有量は、誘電率及び誘電正接が低い硬化物を得る観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以上が好ましく、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。上限は、露光時の光反射を抑制して優れた現像性を得る観点から、例えば、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下である。
<(C)光重合開始剤>
感光性樹脂組成物は、(C)成分として、光重合開始剤を含有する。(C)光重合開始剤を感光性樹脂組成物に含有させることにより、感光性樹脂組成物を効率的に光硬化させることができる。
(C)光重合開始剤は、任意の化合物を使用でき、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤;1,2-オクタンジオン、1-4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等のα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸、ベンゾイルエチルエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,4-ジエチルチオキサントン、ジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等が挙げられ、スルホニウム塩系光重合開始剤も使用することができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より効率的に感光性樹脂組成物を光硬化させる観点から、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤のいずれかが好ましく、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤がより好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)光重合開始剤の具体例としては、IGM社製の「Omnirad907」、「Omnirad369」、「Omnirad379」、「Omnirad819」、「OmniradTPO」、BASF社製の「IrgacureOXE-01」、「IrgacureOXE-02」、「IrgacureTPO」、「Irgacure819」、ADEKA社製の「N-1919」等が挙げられる。
(C)光重合開始剤の含有量としては、感光性樹脂組成物を十分に光硬化させ、絶縁信頼性を向上させるという観点から、感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。一方、感度過多による現像性の低下を抑制するという観点から、上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
さらに、感光性樹脂組成物は、(C)成分と組み合わせて、光重合開始助剤として、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の第三級アミン類を含んでいてもよいし、ピラリゾン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、チオキサントン類などのような光増感剤を含んでいてもよい。これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
<(D)エポキシ樹脂>
感光性樹脂組成物は、(D)成分としてエポキシ樹脂を含有する。(D)成分を含有させることにより、絶縁信頼性を向上させることができる。但し、ここでいう(D)成分は、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有するエポキシ樹脂は含めない。
(D)エポキシ樹脂は、(D-1)軟化点が30℃未満であり、エポキシ当量が150g/eq.以下であるエポキシ樹脂、及び(D-2)軟化点が30℃以上59℃未満であるエポキシ樹脂を含む。優れた誘電率及び誘電正接を有する硬化物を得る観点から、後述する(E)成分を感光性樹脂組成物に含有させると、(E)成分は通常疎水性であるから感光性樹脂組成物の溶解性が低下してしまい、現像性が低下する傾向がある。しかし、本発明では、軟化点が低くエポキシ当量が小さい(D-1)成分及び(D-2)成分を併用することにより、溶解性の低下が抑制される。その結果、現像性に優れるとともに(E)成分が本来的に有する優れた誘電率及び誘電正接を有するという利点を有する硬化物を実現するに至ったものである。
(D-1)成分の軟化点は、本発明の効果を顕著に得る観点から、30℃未満であり、好ましくは25℃以下、より好ましくは20℃以下である。下限は特に制限はないが、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上である。軟化点は、JIS K7234に準拠して測定することができる。
(D-1)成分のエポキシ当量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、150g/eq.以下であり、好ましくは148g/eq.以下、より好ましくは145g/eq.以下であり、好ましくは10g/eq.以上、より好ましくは50g/eq.以上、さらに好ましくは100g/eq.以上である。(D)成分のエポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
(D-1)成分としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、1分子中に1個以上のエポキシ基を有することが好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することがより好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有することがさらに好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(D-1)成分の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
(D-1)成分には、温度20℃で液状の成分と、温度20℃で固体状の成分とがある。(D-1)成分としては、可撓性を向上させる観点から、液状であることが好ましい。
(D-1)成分としては、軟化点が59℃未満であり、エポキシ当量が150g/eq.以下であるエポキシ樹脂を用いることができる。このようなエポキシ樹脂としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、環状構造を有することが好ましい。環状構造としては、芳香環構造、脂環式構造等が挙げられる。芳香環構造としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。脂環式構造としては、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等が挙げられる。中でも、環状構造としては芳香環構造が好ましく、ナフタレン環、ベンゼン環がより好ましく、ナフタレン環がさらに好ましい。
また、(D-1)成分としては、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、イソシアヌル環型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられ、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
(D-1)成分の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);住友化学社製の「ELM-434L」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3980S」(2官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社の「EP-3950L」(3官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂);日産化学社製の「TEPIC-VL」(イソシアヌル環型エポキシ樹脂);住友化学社製の「ELM-100H」(N-[2-メチル-4-(オキシラニルメトキシ)フェニル]-N-(オキシラニルメチル)オキシランメタンアミン);DIC社製の「EXA-7311-G4」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(D-1)成分の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100以上、より好ましくは200以上、さらに好ましくは250以上であり、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは1500以下である。
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
(D-1)成分の含有量は、現像性に加えて誘電率及び誘電正接に優れる硬化物を得る観点から、(D)成分全体を100質量%とした場合、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、又は40質量%以下であり、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。
(D-1)成分の含有量は、現像性に加えて誘電率及び誘電正接に優れる硬化物を得る観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
(D-2)成分の軟化点は、本発明の効果を顕著に得る観点から、30℃以上であり、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上である。上限は、本発明の効果を顕著に得る観点から、59℃未満であり、好ましくは55℃以下、より好ましくは50℃以下である。軟化点は、(D-1)成分と同様の方法にて測定することができる。
(D-2)成分としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、1分子中に1個以上のエポキシ基を有することが好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することがより好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有することがさらに好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(D-2)成分の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
(D-2)成分は、温度20℃で固体状であることが好ましい。
(D-2)成分としては、軟化点が30℃以上59℃未満であるエポキシ樹脂を用いることができる。このようなエポキシ樹脂としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、環状構造を有することが好ましい。環状構造としては、芳香環構造、脂環式構造等が挙げられる。芳香環構造としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル等が挙げられる。脂環式構造としては、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等が挙げられる。中でも、環状構造としては芳香環構造が好ましく、ベンゼン環、ビフェニル環がより好ましく、ビフェニル環がさらに好ましい。
また、(D-2)成分としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられ、ビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。
(D-2)成分の具体例としては、日本化薬社製の「NC3000L」(ビフェニル型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「HP-6000L」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000」(ビフェニル型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(D-2)成分のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、感光性樹脂組成物層の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。
(D-2)成分の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100以上、より好ましくは200以上、さらに好ましくは250以上であり、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは1500以下である。
(D-2)成分の含有量は、現像性に加えて誘電率及び誘電正接に優れる硬化物を得る観点から、(D)成分全体を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
(D-2)成分の含有量は、現像性に加えて誘電率及び誘電正接に優れる硬化物を得る観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
(D-1)成分の感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの含有量をD1とし、(D-2)成分の感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの含有量をD2としたとき、D2/D1は、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは1.5以上であり、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.3以下、さらに好ましくは2.2以下である。(D-1)成分と(D-2)成分との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。
感光性樹脂組成物は、(D-3)(D-1)成分及び(D-2)成分以外のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。(D-3)成分としては、例えば
(1)軟化点が59℃以上であるエポキシ樹脂、及び
(2)軟化点が30℃未満であり、エポキシ当量が150g/eq.を超えるエポキシ樹脂が挙げられる。
(D-3)成分の軟化点の測定方法は(D-1)成分と同様である。
(D-3)成分としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。(D-3)エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
感光性樹脂組成物は、(D-3)成分として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(D-3)成分の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
(D-3)成分には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。(D-3)成分として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよいが、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、固体状エポキシ樹脂のみを含むことが好ましい。
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。
液状エポキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(D-3)成分として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:1~1:20、より好ましくは1:1.5~1:15、特に好ましくは1:2~1:10である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。
(D-3)成分のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、感光性樹脂組成物層の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。
(D-3)成分の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。
(D-3)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐溶解性を高める観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。(D-3)成分の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
(D-3)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、(D)成分全体を100質量%とした場合、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
<(E)活性エステル樹脂、マレイミド樹脂、及びビニル樹脂から選択される1種以上の樹脂>
感光性樹脂組成物は、(E)成分として、活性エステル樹脂、マレイミド樹脂、及びビニル樹脂から選択される1種以上の樹脂を含む。(E)成分を感光性樹脂組成物に含有させることで誘電率、誘電正接及びガラス転移温度を向上させることができる。
以下、(E)成分である、活性エステル樹脂(以下、「(E1)成分」ということがある。)、マレイミド樹脂(以下、「(E2)成分」ということがある。)、及びビニル樹脂(以下、「(E3)成分」ということがある。)について説明する。
((E1)活性エステル樹脂)
(E)成分としての(E1)活性エステル樹脂は(D)成分のエポキシ基と反応し、誘電率及び誘電正接が低い硬化物を得ることができる。活性エステル樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(E1)活性エステル樹脂としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
具体的には、(E1)活性エステル樹脂としては、ジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル樹脂が好ましく、中でもジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂、及びナフタレン型活性エステル樹脂から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、ジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂がさらに好ましい。ジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂が好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
(E1)活性エステル樹脂の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000」、「HPC-8000H」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂として「EXB-8151-62T」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「EXB-8150-65T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150L-65T」、「EXB9416-70BK」(DIC社製)、「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
(E1)活性エステル樹脂の活性エステル基当量は、誘電率及び誘電正接が低い硬化物を得る観点から、好ましくは50g/eq.~500g/eq.、より好ましくは50g/eq.~400g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性エステル基当量は、1当量の活性エステル基を含む活性エステル樹脂の質量である。
(D)エポキシ樹脂と(E1)活性エステル樹脂との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[活性エステル樹脂の活性基の合計数]の比率で、1:0.01~1:5の範囲が好ましく、1:0.3~1:3がより好ましく、1:0.5~1:2がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、感光性樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「活性エステル樹脂の活性基数」とは、感光性樹脂組成物中に存在する活性エステル樹脂の不揮発成分の質量を活性エステル基当量で除した値を全て合計した値である。(D)エポキシ樹脂と(E1)活性エステル樹脂との量比をかかる範囲内とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることが可能になる。
(E1)成分の含有量としては、誘電率及び誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
((E2)マレイミド樹脂)
(E)成分としての(E2)マレイミド樹脂は(A)成分のエチレン性不飽和基と反応し、誘電率及び誘電正接が低い硬化物を得ることができる。ただし、(E2)マレイミド樹脂には、上述した(A)成分~(D)成分及び(E1)成分に該当するものを含めない。(E2)マレイミド樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(E2)マレイミド樹脂としては、マレイミド基を含有している樹脂を用いることができる。(E2)マレイミド樹脂の1分子当たりのマレイミド基の数は、1つでもよく、2つ以上でもよく、2つが好ましい。マレイミド基とは下記式(E)で表される。
(E2)マレイミド樹脂は、マレイミド基を含有している樹脂であればよい。(E2)マレイミド樹脂としては、
(E2-1)マレイミド基の窒素原子と直接結合している炭素原子数5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物、
(E2-2)マレイミド基の窒素原子と直接結合している芳香族環を有するマレイミド化合物、及び
(E2-3)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物、
から選択される1種以上であることが好ましい。
ここで、用語「直接」とは、(E2-1)成分にあっては、マレイミド基の窒素原子と炭素原子数5以上の脂肪族基との間に他の基がないことをいい、(E2-2)成分にあっては、マレイミドの窒素原子と芳香族環との間に他の基がないことをいう。
-(E2-1)成分-
(E2-1)成分は、マレイミドの窒素原子と直接結合している炭素原子数5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物である。(E2-1)成分は、例えば、脂肪族アミン化合物(ダイマー酸骨格を有するジアミン化合物など)と、マレイン酸無水物と、必要に応じてテトラカルボン酸二無水物とを含む成分をイミド化反応させることにより得ることができる。
炭素原子数5以上の脂肪族基としては、例えば、アルキル基、アルキレン基、アルケニレン基等が挙げられる。
炭素原子数が5以上のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。炭素原子数が5以上のアルキル基は、炭素原子数が5以上のアルキレン基の置換基として有していてもよい。
炭素原子数が5以上のアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルキレン基とは、環状のアルキレン基のみからなる場合と、直鎖状のアルキレン基と環状のアルキレン基との両方を含む場合も含める概念である。このようなアルキレン基としては、例えば、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
炭素原子数が5以上のアルケニレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルケニレン基とは、環状のアルケニレン基のみからなる場合と、直鎖状のアルケニレン基と環状のアルケニレン基との両方を含む場合も含める概念である。このようなアルケニレン基としては、例えば、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、ヘプチレニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基、トリデシニレン基、ヘプタデシニレン基、ヘキサトリアコンチニレン基、オクチニレン-シクロヘキシニレン構造を有する基、オクチニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基、プロピニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基等が挙げられる。
(E2-1)成分としては、下記式(E2-1-1)で表される化合物が好ましい。
一般式(E2-1-1)中、Mは置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表す。
Mは、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表す。炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。この脂肪族基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状の脂肪族基とは、環状の脂肪族基のみからなる場合と、直鎖状の脂肪族基と環状の脂肪族基との両方を含む場合も含める概念である。2価の脂肪族基としては、アルキレン基、アルケニレン基等が挙げられる。アルキレン基、及びアルケニレン基については上述したとおりである。
Mの置換基としては、例えば、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-10アルキル基、-N(C1-10アルキル基)2、C1-10アルキル基、C2-30アルケニル基、C2-30アルキニル基、C6-10アリール基、-NH2、-CN、-C(O)O-C1-10アルキル基、-COOH、-C(O)H、-NO2等が挙げられる。ここで、「Cx-y」(x及びyは正の整数であり、x<yを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がx~yであることを表す。例えば、「C1-10アルキル基」という表現は、炭素原子数1~10のアルキル基を示す。これら置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。置換基は、好ましくは炭素原子数が5以上のアルキル基である。
Lは単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-NR
0-(R
0は水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基)、酸素原子、硫黄原子、C(=O)NR
0-、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、及びこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる基等が挙げられる。アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、及び2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、炭素原子数が5以上のアルキル基を置換基として有していてもよい。フタルイミド由来の2価の基とは、フタルイミドから誘導される2価の基を表し、具体的には一般式(E2-1-2)で表される基である。ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基とは、ピロメリット酸ジイミドから誘導される2価の基を表し、具体的には一般式(E2-1-3)で表される基である。式中、「*」は結合手を表す。
Lにおける2価の連結基としてのアルキレン基は、炭素原子数1~50のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~45のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~40のアルキレン基が特に好ましい。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチルエチレン基、シクロヘキシレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
Lにおける2価の連結基としてのアルケニレン基は、炭素原子数2~50のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~45のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~40のアルケニレン基が特に好ましい。このアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニレン基としては、例えば、メチルエチレニレン基、シクロヘキセニレン基、ペンテニレン基、へキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等が挙げられる。
Lにおける2価の連結基としてのアルキニレン基は、炭素原子数2~50のアルキニレン基が好ましく、炭素原子数2~45のアルキニレン基がより好ましく、炭素原子数2~40のアルキニレン基が特に好ましい。このアルキニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキニレン基としては、例えば、メチルエチニレン基、シクロヘキシニレン基、ペンチニレン基、へキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基等が挙げられる。
Lにおける2価の連結基としてのアリーレン基は、炭素原子数6~24のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~18のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~14のアリーレン基がさらに好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらにより好ましい。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等が挙げられる。
Lにおける2価の連結基であるアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、及びアリーレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、一般式(E2-1-1)中のMの置換基と同様であり、好ましくは炭素原子数が5以上のアルキル基である。
Lにおける2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、例えば、アルキレン基、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる2価の基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる2価の基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる2価の基;等が挙げられる。2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、それぞれの基の組み合わせにより縮合環等の環を形成してもよい。また、2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、繰り返し単位数が1~10の繰り返し単位であってもよい。
中でも、一般式(E2-1-1)中のLとしては、酸素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数6~24のアリーレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1~50のアルキレン基、炭素原子数が5以上のアルキル基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基であることが好ましい。中でも、Lとしては、アルキレン基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-アリーレン基-アルキレン基-アリーレン基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン-ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;;アルキニレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキニレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-アリーレン基-アルキニレン基-アリーレン基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキニレン-ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基がより好ましい。
一般式(E2-1-1)で表されるマレイミド樹脂は、一般式(E2-1-4)で表されるマレイミド樹脂であることが好ましい。
一般式(E2-1-4)中、M
1はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、Zはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。tは1~10の整数を表す。
M1はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表す。M1は、一般式(E2-1-1)中のMと同様である。
Zはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。Zにおける2価の脂肪族基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基等が挙げられる。2価の脂肪族基は鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも環状、即ち置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の環状の2価の脂肪族基が好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このようなアルキレン基としては、例えば、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
炭素原子数が5以上のアルケニレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルケニレン基とは、環状のアルケニレン基のみからなる場合と、直鎖状のアルケニレン基と環状のアルケニレン基との両方を含む場合も含める概念である。このようなアルケニレン基としては、例えば、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、ヘプチレニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基、トリデシニレン基、ヘプタデシニレン基、ヘキサトリアコンチニレン基、オクチニレン-シクロヘキシニレン構造を有する基、オクチニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基、プロピニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基等が挙げられる。
Zが表す芳香環を有する2価の基における芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環、芳香族複素環等が挙げられ、ベンゼン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環が好ましい。即ち、芳香環を有する2価の基としては、置換基を有していてもよいベンゼン環を有する2価の基、置換基を有していてもよいフタルイミド環を有する2価の基、置換基を有していてもよいピロメリット酸ジイミド環を有する2価の基が好ましい。芳香環を有する2価の基としては、例えば、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;等が挙げられる。上記アリーレン基は、一般式(E2-1-1)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基と同様である。
Zが表す、アルキレン基及び芳香環を有する2価の基は置換基を有していてもよい。置換基としては、一般式(E2-1-1)中のMが有していてもよい置換基と同様である。
Zが表す基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
一般式(E2-1-1)で表される化合物は、一般式(E2-1-5)で表される化合物、及び一般式(E2-1-6)で表される化合物のいずれかであることが好ましい。
一般式(E2-1-5)中、M
2及びM
3はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、R
40はそれぞれ独立に、酸素原子、アリーレン基、アルキレン基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基を表す。t1は1~10の整数を表す。
一般式(E2-1-6)中、M
4、M
6及びM
7はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を表し、M
5はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表し、R
41及びR
42はそれぞれ独立に炭素原子数が5以上のアルキル基を表す。t2は0~10の整数を表し、u1及びu2はそれぞれ独立に0~4の整数を表す。
M2及びM3はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表す。M2及びM3は、一般式(E2-1-1)中のMが表す炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基と同様であり、ヘキサトリアコンチニレン基、ヘキサトリアコンチレン基が好ましい。
R40はそれぞれ独立に、酸素原子、アリーレン基、アルキレン基、又はこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる基を表す。アリーレン基、アルキレン基は、一般式(E2-1-1)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様である。R40としては、2種以上の2価の基の組み合わせからなる基又は酸素原子であることが好ましい。
R
40における2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、酸素原子、アリーレン基、及びアルキレン基の組み合わせが挙げられる。2種以上の2価の基の組み合わせからなる基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
M4、M6及びM7はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を表す。M4、M6及びM7は、一般式(E2-1-1)中のMが表す置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基と同様であり、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基が好ましく、オクチレン基がより好ましい。
M5はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。M5は、一般式(E2-1-4)中のZが表す置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基と同様であり、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基が好ましく、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基がより好ましい。上記アリーレン基及びアルキレン基は、一般式(E2-1-1)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様である。
M
5が表す基の具体例としては、例えば以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
R41及びR42はそれぞれ独立に炭素原子数が5以上のアルキル基を表す。R41及びR42は、上記した炭素原子数が5以上のアルキル基と同様であり、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が好ましく、ヘキシル基、オクチル基がより好ましい。
u1及びu2はそれぞれ独立に1~15の整数を表し、1~10の整数が好ましい。
(E2-1)成分の具体例としては、以下の(E-i)~(E-iii)の化合物を挙げることができ、これら具体例に限定されるものではない。式中、vは1~10の整数を表す。
(E2-1)成分の具体例としては、デジグナーモレキュールズ社製の「BMI1500」(式(E-i)の化合物)、「BMI1700」(式(E-ii)の化合物)、「BMI689」(式(E-iii)の化合物)、等が挙げられる。
(E2-1)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは150~5000、より好ましくは300~2500である。
(E2-1)成分のマレイミド基当量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは150g/eq.~500g/eq.である。マレイミド基当量は、1当量のマレイミド基を含む(E2-1)成分の質量である。
-(E2-2)成分-
(E2-2)成分は、マレイミドの窒素原子と直接結合している芳香族環を有するマレイミド化合物である。(E2-2)成分は、例えば、芳香族アミン化合物(芳香族ジアミン化合物など)と、マレイン酸無水物とを含む成分をイミド化反応させることにより得ることができる。
芳香族環は、炭素環又は複素環であり得る。芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等の単環式の芳香族環;ナフタレン環、アントラセン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾイミダゾール環、インダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、アクリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環等の2個以上の単環式の芳香族環が縮合した縮合環;インダン環、フルオレン環、テトラリン環等の1個以上の単環式の芳香族環に1個以上の単環式の非芳香族環が縮合した縮合環等が挙げられる。中でも、芳香族環としては、単環式の芳香族環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
(E2-2)成分としては、下記式(E2-2-1)で表される化合物が好ましい。
式中、Rcは、それぞれ独立して、置換基を示し;Xcは、それぞれ独立して、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、又は-OCO-(好ましくは単結合又はアルキレン基)を示し;Zcは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい非芳香環、又は置換基を有していてもよい芳香環(好ましくは置換基を有していてもよい芳香環、特に好ましくは置換基を有していてもよいベンゼン環)を示し;sは、1以上の整数(好ましくは1~100の整数、より好ましくは1~50の整数、さらに好ましくは1~20の整数)を示し;tは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し;uは、それぞれ独立して、0~2の整数(好ましくは0)を示す。]で表されるマレイミド化合物であり、特に好ましくは、式(E2-2-2)~(E2-2-5):
式中、R
c1、R
c2及びR
c3は、それぞれ独立して、アルキル基を示し;X
c1及びX
c2は、それぞれ独立して、単結合又はアルキレン基を示し;sは、1以上の整数(好ましくは1~100の整数、より好ましくは1~50の整数、さらに好ましくは1~20の整数)を示し;t’は、1~5の整数を示し;u1、u2及びu3は、それぞれ独立して、0~2の整数(好ましくは0)を示す。なお、s単位、t単位、t’単位、u単位、u1単位、u2単位及びu3単位は、それぞれ、単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、他の実施形態として、(E2-2)成分は、例えば下記式(E2-2-6)により表される構造であることが好ましい。
式中、R
31及びR
36はマレイミド基を表し、R
32、R
33、R
34及びR
35は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Dはそれぞれ独立に2価の芳香族基を表す。m1及びm2はそれぞれ独立に1~10の整数を表し、aは1~100の整数を表す。
式(E2-2-6)中のR32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、水素原子が好ましい。
アルキル基としては、炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がさらに好ましい。アルキル基は、直鎖状、分枝状又は環状であってもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基等が挙げられる。
アリール基は、炭素原子数6~20のアリール基が好ましく、炭素原子数6~15のアリール基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリール基がさらに好ましい。アリール基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
アルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-6アルキル基、-N(C1-10アルキル基)2、C1-10アルキル基、C6-10アリール基、-NH2、-CN、-C(O)O-C1-10アルキル基、-COOH、-C(O)H、-NO2等が挙げられる。ここで、「Cp-q」(p及びqは正の整数であり、p<qを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がp~qであることを表す。例えば、「C1-10アルキル基」という表現は、炭素原子数1~10のアルキル基を示す。これら置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。
上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
式(E2-2-6)中のDは2価の芳香族基を表す。2価の芳香族基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、アラルキル基、ビフェニレン基、ビフェニルアラルキル基等が挙げられ、中でも、ビフェニレン基、ビフェニルアラルキル基が好ましく、ビフェニレン基がより好ましい。2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、式(E2-2-6)中のR32が表すアルキル基が有していてもよい置換基と同様である。
m1及びm2はそれぞれ独立に1~10の整数を表し、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2であり、1がよりさらに好ましい。
aは1~100の整数を表し、好ましくは1~50、より好ましくは1~20、さらに好ましくは1~5である。
(E2-2)成分としては、式(E2-2-7)で表される樹脂が好ましい。
式中、R
37及びR
38はマレイミド基を表す。a1は1~100の整数を表す。
a1は、式(E2-2-6)中のaと同じであり、好ましい範囲も同様である。
(E2-2)成分の市販品としては、例えば、日本化薬社製の「MIR-3000-70MT」;ケイアイ化成社製「BMI-50P」;大和化成工業社製の「BMI-1000」、「BMI-1000H」、「BMI-1100」、「BMI-1100H」、「BMI-4000」、「BMI-5100」;ケイアイ化成社製「BMI-4,4’-BPE」、「BMI-70」、ケイアイ化成社製「BMI-80」等が挙げられる。
(E2-2)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは150~5000、より好ましくは300~2500である。
(E2-2)成分のマレイミド基の官能基当量は、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.さらに好ましくは150g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは200g/eq.~300g/eq.である。
-(E2-3)成分-
(E2-3)成分は、トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物である。トリメチルインダン骨格とは、下記式(E2-3-1)に示す骨格を表す。
トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環には、置換基が結合していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、及び、メルカプト基が挙げられる。
アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~10である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、等が挙げられる。
アルキルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは1~10である。アルキルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
アルキルチオ基の炭素原子数は、好ましくは1~10である。アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等が挙げられる。
アリール基の炭素原子数は、好ましくは6~10である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
アリールオキシ基の炭素原子数は、好ましくは6~10である。アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
アリールチオ基の炭素原子数は、好ましくは6~10である。アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
シクロアルキル基の炭素原子数は、好ましくは3~10である。シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記の置換基のうち、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及び、シクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
トリメチルインダン骨格が含む1つのベンゼン環に結合する置換基の数は、1でもよく、2以上でもよい。トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合する置換基の数は、通常、0以上3以下である。置換基の数が2以上である場合、それら2以上の置換基は、同じでもよく、異なっていてもよい。中でも、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環には、置換基が結合していないことが好ましい。
(E2-3)成分の1分子中に含まれるトリメチルインダン骨格の数は、1でもよく、2以上でもよい。上限は、例えば、10以下、8以下、7以下、又は6以下でありうる。
(E2-3)成分は、上述したトリメチルインダン骨格に加えて、更に芳香環骨格を含むことが好ましい。当該芳香環骨格の環構成炭素の数は、好ましくは6~10である。芳香環骨格としては、例えば、ベンゼン環骨格、ナフタレン環骨格、等が挙げられる。(E2-3)成分の1分子中に含まれる前記の芳香環骨格の数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。(E2-3)成分が2以上の芳香環骨格をトリメチルインダン骨格に加えて含む場合、それら芳香環骨格は、同じでもよく、異なっていてもよい。
前記の芳香環骨格が含む芳香環には、置換基が結合していてもよい。置換基としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基として上述した置換基、及び、ニトロ基が挙げられる。1つの芳香環に結合する置換基の数は、1でもよく、2以上でもよい。芳香環に結合する置換基の数は、通常、0以上4以下である。置換基の数が2以上である場合、それら2以上の置換基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
(E2-3)成分は、上述したトリメチルインダン骨格に加えて、更に2価の脂肪族炭化水素基を含むことが好ましい。特に、(E2-3)成分が、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環以外の芳香環骨格を含む場合に、(E2-3)成分が2価の脂肪族炭化水素基を含むことが好ましい。この場合、2価の脂肪族炭化水素基は、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環と芳香環骨格との間を連結することが好ましい。また、2価の脂肪族炭化水素基は、芳香環骨格同士の間を連結することが好ましい。
2価の脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1以上であり、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、特に好ましくは5以下である。2価の脂肪族炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基としてのアルキレン基がより好ましい。2価の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の直鎖アルキレン基;エチリデン基(-CH(CH3)-)、プロピリデン基(-CH(CH2CH3)-)、イソプロピリデン基(-C(CH3)2-)、エチルメチルメチレン基(-C(CH3)(CH2CH3)-)、ジエチルメチレン基(-C(CH2CH3)2-)等の分岐鎖アルキレン基;等が挙げられる。(E2-3)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物が2以上の2価の脂肪族炭化水素基をトリメチルインダン骨格に加えて含む場合、それら2価の脂肪族炭化水素基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
(E2-3)成分は、下記式(E2-3-2)で示す構造を含むことが好ましい。(E2-3)成分の全体が式(E2-3-2)で示す構造を有していてもよく、(E2-3)成分の部分が式(E2-3-2)で示す構造を有していてもよい。
(式中、Ara1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し;Ra1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;Ra2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;Ra3は、それぞれ独立に、2価の脂肪族炭化水素基を表し;na1は、正の整数を表し;na2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;na3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。Ra1のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Ra2のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。na2が2~4の場合、Ra1は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。na3が2~3の場合、Ra2は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
式(E2-3-2)において、Ara1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。この2価の芳香族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは6以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは16以下である。2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられる。2価の芳香族炭化水素基が有しうる置換基としては、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、及び、メルカプト基が挙げられる。各置換基の水素原子は、さらにハロゲン原子で置換されていてもよい。また、これらの置換基の具体例としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基と同じ例が挙げられる。2価の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基の数は、好ましくは1~4である。2価の芳香族炭化水素基が有する置換基の数が2以上である場合、それら2以上の置換基は、同じでもよく、異なっていてもよい。中でも、Ara1は、置換基を有さない2価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
式(E2-3-2)において、Ra1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表す。アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。これらの基の具体例としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基と同じ例が挙げられる。中でも、Ra1は、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数3~6のシクロアルキル基、及び、炭素原子数6~10のアリール基からなる群より選ばれる1種類以上の基であることがより好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基が特に好ましい。
式(E2-3-2)において、Ra2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表す。アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。これら基の具体例としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基と同じ例が挙げられる。中でも、Ra2は、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数3~6のシクロアルキル基、及び、炭素原子数6~10のアリール基からなる群より選択される1種類以上の基であることがより好ましい。
式(E2-3-2)において、Ra3は、それぞれ独立に、2価の脂肪族炭化水素基を表す。好ましい2価の脂肪族炭化水素基の範囲は、上述した通りである。
式(E2-3-2)において、na1は、正の整数を表す。na1は、好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
式(E2-3-2)において、na2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。na2は、好ましくは2又は3であり、より好ましくは2である。複数のna2は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。na2が2以上の場合、複数のRa1は、同一環内で、同じであってもよく、異なっていてもよい。
式(E2-3-2)において、na3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。複数のna3は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。na3は、好ましくは0である。
(E2-3)成分は、下記式(E2-3-3)で示す構造を含むことが特に好ましい。(E2-3)成分の全体が式(E2-3-3)で示す構造を有していてもよく、(E2-3)成分の部分が式(E2-3-3)で示す構造を有していてもよい。
(式中、R
b1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;R
b2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;n
b1は、正の整数を表し;n
b2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;n
b3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。R
b1のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。R
b2のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。n
b2が2~4の場合、R
b1は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。n
b3が2~3の場合、R
b2は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
式(E2-3-3)において、Rb1、Rb2、nb1、nb2及びnb3は、それぞれ、式(E2-3-2)におけるRa1、Ra2、na1、na2及びna3と同じである。
(E2-3)成分は、更に、下記式(E2-3-4)で示す構造を含んでいてもよい。
式(E2-3-4)において、R
c1、R
c2、n
c2及びn
c3は、それぞれ、式(E2-3-2)におけるR
a1、R
a2、n
a2及びn
a3と同じである。また、式(E2-3-4)において、n
c1は、繰り返し単位数であり、1~20の整数を表す。さらに、式(E2-3-4)において、*は、結合手を表す。例えば、(E2-3)成分は、式(E2-3-2)において、n
a2が3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、R
a1が結合していない場合に、式(E2-3-2)で表される構造に組み合わせて前記の式(E2-3-4)で表される構造を含みうる。また、例えば、(E2-3)成分は、式(E2-3-3)において、n
b2が3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、R
b1が結合していない場合に、式(E2-3-3)で表される構造に組み合わせて前記の式(E2-3-4)で表される構造を含みうる。
(E2-3)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(E2-3)成分のマレイミド基当量は、好ましくは50g/eq.以上、より好ましくは100g/eq.以上、特に好ましくは200g/eq.以上であり、好ましくは2000g/eq.以下、より好ましくは1000g/eq.以下、特に好ましくは800g/eq.以下である。マレイミド基当量は、マレイミド基1当量あたりのマレイミド化合物の質量を表す。(E2-3)成分のマレイミド基当量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
(E2-3)成分の製造方法は、特に制限は無い。(E2-3)成分は、例えば、発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の方法によって製造できる。この発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の製造方法によれば、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数に分布があるマレイミド化合物を得ることができる。この方法で得られるマレイミド化合物は、下記式(E2-3-5)で表される構造を含む。よって、(E2-3)成分は、式(E2-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物を含んでいてもよい。
(式中、R1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;R2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;n1は、0.95~10.0の平均繰り返し単位数を表し;n2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;n3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。R1のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。R2のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。n2が2~4の場合、R1は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。n3が2~3の場合、R2は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
式(E2-3-5)において、R1、R2、n2及びn3は、それぞれ、式(E2-3-2)におけるRa1、Ra2、na2及びna3と同じである。
式(E2-3-5)において、n1は、平均繰り返し単位数を表し、その範囲は0.95~10.0である。発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の製造方法によれば、式(E2-3-5)で表される構造を含む一群のマレイミド化合物が得られる。式(E2-3-5)中の平均繰り返し単位数n1が1.00より小さくなりうることから分かるように、こうして得られる式(E2-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物には、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物が含まれうる。そこで、式(E2-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物から、精製により、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物を除いて(E2-3)成分を得て、その得られた(E2-3)成分のみを樹脂組成物が含んでいてもよい。しかし、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物が樹脂組成物に含まれている場合でも、本発明の効果を得ることができる。また、精製を省略した場合、コストの抑制が可能である。そこで、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物を除くことなく、式(E2-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物を樹脂組成物が含むことが好ましい。
式(E2-3-5)において、平均繰り返し単位数n1は、好ましくは0.95以上、より好ましくは0.98以上、更に好ましくは1.0以上、特に好ましくは1.1以上であり、好ましくは10.0以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは7.0以下、特に好ましくは6.0以下である。平均繰り返し単位数n1が前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。特に、樹脂組成物のガラス転移温度を効果的に高めることができる。
式(E2-3-5)で表される構造の例としては、下記のものが挙げられる。
式(E2-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物は、更に、前記の式(E2-3-4)で示す構造を含んでいてもよい。例えば、式(E2-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物は、式(E2-3-5)において、n2が3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、R1が結合していない場合に、式(E2-3-5)で表される構造に組み合わせて式(E2-3-4)で表される構造を含みうる。
式(E2-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定から算出される分子量分布Mw/Mnが、特定の範囲にあることが好ましい。分子量分布は、重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで割り算して求められる値であり、「Mw/Mn」で表される。具体的には、式(E2-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物の分子量分布Mw/Mnは、好ましくは1.0~4.0、より好ましくは1.1~3.8、更に好ましくは1.2~3.6、特に好ましくは1.3~3.4である。式(E2-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物の分子量分布Mw/Mnが前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
式(E2-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物のうち、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の量は、特定の範囲にあることが好ましい。式(E2-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物の前記GPC測定を行った場合、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の量は、そのGPC測定の結果に基づいて面積%で表すことができる。詳細には、前記のGPC測定で得られるクロマトグラムにおいて、式(E2-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物のピークの総面積に対する、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物のピークの面積の割合(面積%)により、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の量を表すことができる。具体的には、式(E2-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物の全量100面積%に対して、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の量は、好ましくは32面積%以下、より好ましくは30面積%以下、更に好ましくは28面積%以下である。平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の量が前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
式(E2-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物のマレイミド基当量は、上述した(E2-3)成分のマレイミド基当量と同じ範囲にあることが好ましい。式(E2-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物のマレイミド基当量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
(E2)成分の含有量としては、誘電率及び誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
((E3)ビニル樹脂)
(E)成分としての(E3)ビニル樹脂は(A)成分のエチレン性不飽和基と反応し、誘電率及び誘電正接が低い硬化物を得ることができる。ただし、(E3)ビニル樹脂には、上述した(A)成分~(D)成分、(E1)成分及び(E2)成分に該当するものを含めない。(E3)ビニル樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(E3)ビニル樹脂としては、ビニル基(-CH=CH2)を含有している樹脂を用いることができる。ビニル樹脂の1分子当たりのビニル基の数は、1つでもよく、2つ以上でもよく、2つが好ましい。
(E3)ビニル樹脂は、ビニル基(-CH=CH2)を有していればよく、例えば、ビニル基、ビニルフェニル基、アリル基、及びマレオイル基を含む樹脂も含む概念である。
ビニル樹脂はビニル基を含有している樹脂であればよい。(E3)ビニル樹脂としては、
(E3-1)ポリフェニレンエーテル骨格を含有するビニル樹脂、
(E3-2)ポリエチレン骨格を含有するビニル樹脂、及び
(E3-3)アリル基を含有する樹脂、
から選択される1以上であることが好ましい。
-(E3-1)成分-
(E3-1)成分は、ポリフェニレンエーテル骨格を含むビニル樹脂である。(E3-1)成分としては、下記式(E3-1-1)で表される化合物が挙げられる。
(式(E3-1-1)において、L1は、2価の連結基を表し;RB11、RB12、RB13、RB21、RB22及びRB23は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し;RB14、RB15、RB24及びRB25は、それぞれ独立に、アルキル基を表し;RB16及びRB26は、それぞれ独立に、アルキレン基を表し;mb11及びmb21は、それぞれ独立に、0又は1を表し;mb12、mb13、mb22及びmb23は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;mb14及びmb24は、それぞれ独立に、0~300の整数を表し;mb15及びmb25は、それぞれ独立に、0又は1を表す。)
式(E3-1-1)において、L1は、2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基、ヘテロアリーレン基、-O-、-NH-、-NRx-、-CO-、-CS-、-SO-、-SO2-、-C(=O)O-、-NHC(=O)-、-NC(=O)N-、-NHC(=O)O-、-C(=O)-、-S-、並びに、これらを複数組み合わせた基が挙げられる。Rxは、炭素原子数1~12のヒドロカルビル基を表す。L1の炭素原子数は、通常60以下、より好ましくは48以下、更に好ましくは36以下、特に好ましくは24以下である。
式(E3-1-1)において、RB11、RB12、RB13、RB21、RB22及びRB23は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。RB11、RB12、RB13、RB21、RB22及びRB23は、式(E3-1-1)におけるRA1、RA2及びRA3と同じでありうる。なかでも、RB11及びRB21は、水素原子又はメチル基が好ましく、RB12、RB13、RB22及びRB23は、水素原子が好ましい。
式(E3-1-1)において、RB14、RB15、RB24及びRB25は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~12、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~2である。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、等が挙げられる。なかでも、RB14、RB15、RB24及びRB25は、メチル基が好ましい。
式(E3-1-1)において、RB16及びRB26は、それぞれ独立に、アルキレン基を表す。アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~3である。アルキレン基としては、直鎖アルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
式(E3-1-1)において、mb11及びmb21は、それぞれ独立に、0又は1を表す。
式(E3-1-1)において、mb12、mb13、mb22及びmb23は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。mb12、mb13、mb22及びmb23は、好ましくは1~4、より好ましくは2~3、特に好ましくは2である。
式(E3-1-1)において、mb14及びmb24は、それぞれ独立に、0~300の整数を表す。詳細には、mb14及びmb24は、通常0以上、好ましくは1以上であり、通常300以下、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは20以下、特に好ましくは10以下である。
式(E3-1-1)において、mb15及びmb25は、それぞれ独立に、0又は1を表す。mb11が0である場合、mb15は好ましくは1であり、mb11が1である場合、mb15は好ましくは0である。また、mb21が0である場合、mb25は好ましくは1であり、mb21が1である場合、mb25は好ましくは0である。
式(E3-1-1)で表される化合物の好ましい例を挙げると、下記式(E3-1-2)で表される化合物が挙げられる。
(式(E3-1-2)において、L
2は、2価の連結基を表し;R
C15及びR
C25は、それぞれ独立に、アルキル基を表し;R
C16及びR
C26は、それぞれ独立に、アルキレン基を表し;m
c14及びm
c24は、それぞれ独立に、0~300の整数を表す。)
式(E3-1-2)において、L2は、2価の連結基を表す。L2は、式(E3-1-1)におけるL1と同じでありうる。中でも、L2は、下記の式(E3-1-3)で表される2価の基が好ましい。
(式(E3-1-3)において、X
1~X
8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、又は、フェニル基を表す。*は、結合手を表す。)
式(E3-1-2)において、RC15及びRC25は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。RC15及びRC25は、式(E3-1-1)におけるRB14と同じでありうる。なかでも、RC15及びRC25は、メチル基が好ましい。
式(E3-1-2)において、RC16及びRC26は、それぞれ独立に、アルキレン基を表す。RC16及びRC26は、式(E3-1-1)におけるRB16及びRB26と同じでありうる。中でも、RC16及びRC26は、メチレン基がより好ましい。
式(E3-1-2)において、mc14及びmc24は、それぞれ独立に、0~300の整数を表す。mc14及びmc24は、式(E3-1-1)におけるmb14及びmb24と同じでありうる。また、式(E3-1-2)において、好ましくは、mc14及びmc24の一方が0である構成は除かれる。
式(E3-1-2)で表される化合物としては、例えば、下記式(E3-1-4)で表される化合物が挙げられる。式(E3-1-4)において、mc14及びmc24は、式(E3-1-2)と同じ数を表す。式(E3-1-4)で表される化合物は、三菱ガス化学社製の「OPE-2St」として入手できる。
式(E3-1-1)で表される化合物の別の好ましい例を挙げると、下記式(E3-1-5)で表される化合物が挙げられる。
(式(E3-1-5)において、L
3は、2価の連結基を表し;R
D11及びR
D21は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し;R
D14、R
D15、R
D24及びR
D25は、それぞれ独立に、アルキル基を表し;m
d14及びm
d24は、それぞれ独立に、0~300の整数を表す。)
式(E3-1-5)において、L3は、2価の連結基を表す。L3は、式(B2)におけるL1と同じでありうる。中でも、L3は、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、-NRx-、-CO-、-CS-、-SO-、-SO2-からなる群より選ばれるいずれかであることが好ましく、アルキレン基が好ましく、イソプロピリデン基(-C(CH3)2-)が特に好ましい。
式(E3-1-5)において、RD11及びRD21は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。RD11及びRD21は、式(E3-1-1)におけるRB11及びRB21と同じでありうる。なかでも、RD11及びRD21は、メチル基が好ましい。
式(E3-1-5)において、RD14、RD15、RD24及びRD25は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。RD14、RD15、RD24及びRD25は、式(E3-1-1)におけるRB14と同じでありうる。なかでも、RD14、RD15、RD24及びRD25は、メチル基が好ましい。
式(E3-1-5)において、md14及びmd24は、それぞれ独立に、0~300の整数を表す。md14及びmd24は、式(E3-1-1)におけるmb14及びmb24と同じでありうる。また、mb14及びmb24の合計は、2以上であることが好ましい。
式(E3-1-5)で表される化合物としては、例えば、下記式(E3-1-6)で表される化合物が挙げられる。式(E3-1-6)において、L3、md14及びmd24は、式(E3-1-5)と同じである。式(E3-1-4)で表される化合物は、SABIC社製の「NORYL SA9000」として入手できる。
-(E3-2)成分-
(E3-2)成分は、ポリエチレン骨格を含有するビニル樹脂である。(E3-2)成分としては、下記式下記式(E3-2-1)で表される構造単位を含む重合体が挙げられる。
(式(E3-2-1)において、RE1、RE2及びRE3は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し;RE4は、それぞれ独立に、アルキル基を表し;RE5、RE6及びRE7は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示し;me1は、0又は1を表し;me2は、0~4の整数を表し;*は、結合手を表す。)
式(E3-2-1)において、RE1、RE2及びRE3は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~18、より好ましくは1~12、更に好ましくは1~6、特に好ましくは1~2である。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、等が挙げられる。なかでも、なかでも、RE1、RE2及びRE3は、水素原子が好ましい。
式(E3-2-1)において、RE4は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。RE4は、式(E3-1-1)におけるRB14と同じでありうる。
式(E3-2-1)において、RE5、RE6及びRE7は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。中でも、RE5、RE6及びRE7は、水素原子が好ましい。
式(E3-2-1)において、me1は、0又は1を表し、好ましくは0である。
式(E3-2-1)において、me2は、0~4の整数を表し、好ましくは0である。
式(E3-2-1)で表される構造単位を含む重合体が含む全構造単位の合計100モル%に対して、式(E3-2-1)で表される構造単位のモル含有率は、特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、式(E3-2-1)で表される構造単位のモル含有率は、2モル%~95モル%であることが好ましく、8モル%~81モル%であることがより好ましい。また、前記の重合体1分子が含む式(E3-2-1)で表される構造単位の平均数は、1~160であることが好ましく、3~140であることがより好ましい。
式(E3-2-1)で表される構造単位を含む重合体は、式(E3-2-1)で表される構造単位に組み合わせて、更に任意の構造単位を含んでいてもよい。任意の構造単位としては、例えば、下記式(E3-2-2)で表される構造単位が挙げられる。
(式(E3-2-2)において、R
E8、R
E9及びR
E10は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。Ar
E1は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Ar
E1が有しうる置換基としては、炭素原子数1~6のアルキル基が挙げられる。*は、結合手を表す。)
式(E3-2-2)で表される構造単位を含む重合体としては、例えば、下記式(E3-2-3)で表される構造単位と、下記式(E3-2-4)で表される構造単位と、下記式(E3-2-5)で表される構造単位と、を組み合わせて含む共重合体が挙げられる。式(E3-2-3)、式(E3-2-4)及び式(E3-2-5)において、*は、結合手を表す。この共重合体において、式(E3-2-3)で表される構造単位、式(E3-2-4)で表される構造単位、及び、式(E3-2-5)で表される構造単位のモル含有率は、それぞれ、8モル%~54モル%、0モル%~92モル%、0モル%~89モル%である。また、この共重合体1分子が含む、式(E3-2-3)で表される構造単位、式(E3-2-4)で表される構造単位、及び、式(E3-2-5)で表される構造単位の平均数は、それぞれ、1~160、0~350及び0~270である。この共重合体は、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ODV-XET(X03)」、「ODV-XET(X04)」及び「ODV-XET(X05)」として入手できる。
(E3-2)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(E3-2)成分のビニル基当量は、好ましくは250g/eq.~1200g/eq.、より好ましくは300g/eq.~1100g/eq.である。ラジカル重合性不飽和基当量は、ビニル基1当量当たりのラジカル重合性芳香族樹脂の質量を表す。(E3-2)成分のラジカル重合性不飽和基当量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
(E3-2)成分の重量平均分子量は、好ましくは1000~40000、より好ましくは1500~35000である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
-(E3-3)成分-
(E3-3)アリル基を含有する樹脂とは、アリル基を分子中に少なくとも1つ有する樹脂である。(E3-3)成分は、1分子あたり1個以上のアリル基を有することが好ましく、2個以上のアリル基を有することがより好ましい。下限は特に制限されないが、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下とし得る。
また、(E3-3)成分は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、アリル基に加えて、ベンゾオキサジン環、フェノール環、イソシアヌル環、エポキシ基、及び環状構造を有するカルボン酸誘導体のいずれかを有することが好ましい。
ベンゾオキサジン環を有する(E3-3)成分は、ベンゾオキサジン環の窒素原子及びベンゼン環のいずれかと結合していることが好ましく、窒素原子と結合していることがより好ましい。
フェノール環を有する(E3-3)成分としては、例えば、アリル基を含むクレゾール樹脂、アリル基を含むノボラック型フェノール樹脂、アリル基を含むクレゾールノボラック樹脂等が挙げられる。
イソシアヌル構造を有する(E3-3)成分は、イソシアヌル構造の窒素原子とアリル基とが直接結合していることが好ましい。イソシアヌル構造を有する(E3-4)成分としては、イソシアヌル酸アリル、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル等が挙げられる。
エポキシ基を有する(E3-3)成分は、エポキシ基を1分子中に2個以上含むことが好ましい。また、エポキシ基を有する(E3-3)成分は、芳香族構造を有することが好ましく、エポキシ基を(E3-3)成分を2種以上用いる場合は少なくとも1種が芳香族構造を有することがより好ましい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。エポキシ基を有する(E3-3)成分としては、ビスフェノール構造を有することが好ましく、ビスフェノール構造としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAF型等が挙げられる。
環状構造を有するカルボン酸誘導体を有する(E3-3)成分としては、環状構造を有するカルボン酸アリルが好ましい。環状構造としては、脂環式構造を含む環状基及び芳香環構造を含む環状基のいずれであってもよい。また、環状基は、炭素原子以外にヘテロ原子により環の骨格が構成されていてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、窒素原子が好ましい。ヘテロ原子は前記の環に1つ有していてもよく、2つ以上を有していてもよい。
環状構造を有するカルボン酸としては、例えば、イソシアヌル酸、ジフェン酸、フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。環状構造を有するカルボン酸誘導体を有する(E3-3)成分としては、例えば、イソシアヌル酸アリル、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジフェン酸ジアリル、ジフェン酸アリル、オルトジアリルフタレート、メタジアリルフタレート、パラジアリルフタレート、シクロヘキサンジカルボン酸アリル、シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル等が挙げられる。
(E3-3)成分は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、明和化成社製「MEH-8000H」、「MEH-8005」(フェノール環を有する(E3-3)成分);日本化薬社製「RE-810NM」(エポキシ基を有する(E3-3)成分);四国化成工業社製「ALP-d」(ベンゾオキサジン環を有する(E3-3)成分);四国化成工業社製「L-DAIC」(イソシアヌル環を有する(E3-3)成分);日本化成社製「TAIC」(イソシアヌル環を有する(E3-3)成分(トリアリルイソシアヌレート));大阪ソーダ社製「MDAC」(シクロヘキサンジカルボン酸誘導体を有する(E3-3)成分);日触テクノファインケミカル社製「DAD」(ジフェン酸ジアリル);大阪ソーダ社製「ダイソーダップモノマー」(オルトジアリルフタレート)等が挙げられる。
(E3-3)成分のアリル基当量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは20g/eq.~1000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~500g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。アリル基当量は、1当量のアリル基を含む(E3-3)成分の質量である。
(E3)成分の含有量としては、誘電率及び誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
(E)成分としては、誘電率及び誘電正接に優れる硬化物を得る観点から、活性エステル樹脂、マレイミド樹脂、及びビニル樹脂から選択される1種以上含むことが好ましく、活性エステル樹脂を含むことがより好ましく、活性エステル樹脂とマレイミド樹脂及びビニル樹脂から選択される1種以上の樹脂とを含むことがさらに好ましい。
(E)成分の合計含有量としては、誘電率及び誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
<(F)硬化促進剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(F)硬化促進剤を含有していてもよい。(F)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(F)成分としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
(F)成分の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下である。
<(G)溶剤>
感光性樹脂組成物は、任意の成分として、更に(G)溶剤を含有していてもよい。(G)溶剤を含有させることによりワニス粘度を調整できる。(G)溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。
(G)溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAc)、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。溶剤を用いる場合の含有量は、感光性樹脂組成物の塗布性の観点から適宜調整することができる。
<(H)その他の添加剤>
感光性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない程度に、(H)その他の添加剤を更に含有してもよい。(H)その他の添加剤としては、例えば、反応性希釈剤、熱可塑性樹脂、有機充填材、メラミン、有機ベントナイト等の微粒子、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディン・グリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の着色剤、ハイドロキノン、フェノチアジン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等の重合禁止剤、ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、ビニル樹脂系の消泡剤、臭素化エポキシ化合物、酸変性臭素化エポキシ化合物、アンチモン化合物、リン系化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル等の難燃剤、フェノール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤等の熱硬化樹脂、等の各種添加剤を添加することができる。
感光性樹脂組成物は、必須成分として上記(A)~(E)成分を混合し、任意成分として上記(F)~(H)成分を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または撹拌することにより製造することができる。
<感光性樹脂組成物の物性、用途>
感光性樹脂組成物を光硬化させた硬化物は現像性に優れるという特性を示す。このため、未露光部における残渣の形成を抑制できる。未露光部の残渣の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って評価することができる。
感光性樹脂組成物を光硬化させた硬化物は現像性に優れるという特性を示す。このため、BP(ブレイクポイント)に優れるという特性を示す。BPとは未露光部が現像液により溶解し、溶解した樹脂がなくなるまでの時間を意味する。BPは、好ましくは150秒以下、より好ましくは140秒以下、さらに好ましくは130秒以下である。下限は30秒以上、より好ましくは40秒以上、さらに好ましくは50秒以上である。BPの測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
感光性樹脂組成物を光硬化させた硬化物は現像性に優れるという特性を示す。このため、残渣、剥離がないビア、及び剥離や埋まりがないラインアンドスペース(L/S)を形成することができる。前記のビアの最小ビア径としては、好ましくは60μm以下、より好ましくは55μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。下限は特に限定されないが、1μm以上等としうる。最小ビア径の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
感光性樹脂組成物を光硬化させた硬化物は誘電率に優れるという特性を示す。このため、誘電率が低い絶縁層及びソルダーレジストをもたらす。誘電率としては、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.3以下である。下限は特に限定されないが、0.1以上等とし得る。誘電率の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
感光性樹脂組成物を光硬化させた硬化物は誘電正接に優れるという特性を示す。このため、誘電正接が低い絶縁層及びソルダーレジストをもたらす。誘電正接としては、好ましくは0.013未満、より好ましくは0.012以下、さらに好ましくは0.011以下である。下限は特に限定されないが、0.0001以上等とし得る。誘電正接の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
感光性樹脂組成物は、可撓性に優れるという特性を示す。このため、感光性樹脂組成物は、応力が加えられた場合であっても割れの形成を抑制できる。
感光性樹脂組成物を光硬化させた硬化物は、通常ガラス転移温度が高いという特性を示す。このため、ガラス転移温度が高く耐熱性に優れる絶縁層及びソルダーレジストをもたらす。ガラス転移温度としては、好ましくは140℃以上、より好ましくは145℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。上限は特に限定されないが、300℃以下等とし得る。ガラス転移温度の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
本発明の感光性樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、感光性フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途等)、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、感光性樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。なかでも、プリント配線板の絶縁層用感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物を絶縁層としたプリント配線板)、層間絶縁層用感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物を層間絶縁層としたプリント配線板)、メッキ形成用感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物上にメッキが形成されたプリント配線板)、及びソルダーレジスト用感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物の硬化物をソルダーレジストとしたプリント配線板)として好適に使用することができる。
[感光性フィルム]
感光性フィルムは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を有する。
支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、トリアセチルアセテートフィルム等が挙げられ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
市販の支持体としては、例えば、王子製紙社製の製品名「アルファンMA-410」、「E-200C」、信越フィルム社製等のポリプロピレンフィルム、帝人社製の製品名「PS-25」等のPSシリーズなどのポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられるが、これらに限られたものではない。これらの支持体は除去を容易にするため、シリコーンコート剤のような剥離剤を表面に塗布してあるのがよい。支持体の厚さは、5μm~50μmの範囲であることが好ましく、10μm~25μmの範囲であることがより好ましい。厚さを5μm以上とすることで、現像前に行う支持体剥離の際に支持体が破れることを抑制することができ、厚さを50μm以下とすることで、支持体上から露光する際の解像度を向上させることができる。また、低フィッシュアイの支持体が好ましい。ここでフィッシュアイとは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものである。
また、紫外線等の活性エネルギー線による露光時の光の散乱を低減するため、支持体は透明性に優れるものが好ましい。支持体は、具体的には、透明性の指標となる濁度(JIS K6714で規格化されているヘーズ)が0.1~5であるものが好ましい。さらに感光性樹脂組成物層は保護フィルムで保護されていてもよい。
感光性フィルムの感光性樹脂組成物層側を保護フィルムで保護することにより、感光性樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムとしては上記の支持体と同様の材料により構成されたフィルムを用いることができる。保護フィルムの厚さは特に限定されないが、1μm~40μmの範囲であることが好ましく、5μm~30μmの範囲であることがより好ましく、10μm~30μmの範囲であることが更に好ましい。厚さを1μm以上とすることで、保護フィルムの取り扱い性を向上させることができ、40μm以下とすることで廉価性がよくなる傾向にある。なお、保護フィルムは、感光性樹脂組成物層と支持体との接着力に対して、感光性樹脂組成物層と保護フィルムとの接着力の方が小さいものが好ましい。
感光性樹脂組成物層の厚さは、取り扱い性を向上させ、かつ感光性樹脂組成物層内部の感度及び解像度が低下するのを抑制するという観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは28μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。
感光性フィルムは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。有機溶剤としては、上記した(G)成分と同様のものを用いることができる。
樹脂ワニスの塗布方式としては、例えば、グラビアコート方式、マイクログラビアコート方式、リバースコート方式、キスリバースコート方式、ダイコート方式、スロットダイ方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、チャンバーグラビアコート方式、スロットオリフィス方式、スプレーコート方式、ディップコート方式等が挙げられる。
樹脂ワニスは、数回に分けて塗布してもよいし、1回で塗布してもよく、また異なる方式を複数組み合わせて塗布してもよい。中でも、均一塗工性に優れる、ダイコート方式が好ましい。また、異物混入等をさけるために、クリーンルーム等の異物発生の少ない環境で塗布工程を実施することが好ましい。
乾燥温度は、感光性樹脂組成物の硬化性や樹脂ワニス中の(G)成分の量によっても異なるが、80℃~120℃で行うことができる。但し、乾燥の最高温度は、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得る観点から、好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上である。最高温度の下限は特に限定されないが、好ましくは135℃以下、より好ましくは130℃以下である。
乾燥時間は、感光性樹脂組成物の硬化性や樹脂ワニス中の(G)成分の量によっても異なるが、好ましくは6分間以上であり、好ましくは30分以下、より好ましくは20分以下である。ここで、乾燥時間とは、乾燥温度が80℃に達した時からの時間を指す。
感光性樹脂組成物層中の(G)成分の残存量は、感光性樹脂組成物層の総量に対して5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。当業者は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。
感光性フィルムは、本発明の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を含むので、可撓性に優れるという特性を示す。例えば、感光性フィルムを3インチのコア芯に巻き付け、ローラーカッターにて感光性フィルムを裁断する。このとき、感光性フィルムに割れの発生を抑制できる。
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。該絶縁層は、ソルダーレジスト又は層間絶縁層として使用することが好ましい。
詳細には、本発明のプリント配線板は、上述の感光性フィルムを用いて製造することができる。以下、絶縁層がソルダーレジストである場合の一例について説明する。
<塗布及び乾燥工程>
感光性樹脂組成物を含む樹脂ワニスを直接的に回路基板上に塗布する場合、(G)成分を乾燥、揮発させることにより、回路基板上に感光性樹脂組成物層を形成する。
回路基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような支持基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された基板をいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっている基板も、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理、銅エッチング等により予め粗化処理が施されていてもよい。
塗布方式としては、スクリーン印刷法による全面印刷が一般に多く用いられているが、その他にも均一に塗布できる塗布方式であればどのような手段を用いてもよい。例えば、スプレーコート方式、ホットメルトコート方式、バーコート方式、アプリケーター方式、ブレードコート方式、ナイフコート方式、エアナイフコート方式、カーテンフローコート方式、ロールコート方式、グラビアコート方式、オフセット印刷方式、ディップコート方式、刷毛塗り、その他通常の塗布方式はすべて使用できる。塗布後、必要に応じて熱風炉あるいは遠赤外線炉等で乾燥を行う。乾燥条件は、80℃~120℃で3分間~13分間とすることが好ましい。このようにして、回路基板上に感光性組成物層が形成される。
<ラミネート工程>
一方、感光性フィルムを用いる場合には、感光性樹脂組成物層側を、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネートする。ラミネート工程において、感光性フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じて感光性フィルム及び回路基板をプレヒートし、感光性樹脂組成物層を加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。感光性フィルムにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。
ラミネート工程の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70℃~140℃とし、圧着圧力を好ましくは1kgf/cm2~11kgf/cm2(9.8×104N/m2~107.9×104N/m2)、圧着時間を好ましくは5秒間~300秒間とし、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下とする減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネート工程は、バッチ式であってもロールを用いる連続式であってもよい。真空ラミネート法は、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニッコー・マテリアルズ社製バキュームアップリケーター、名機製作所社製真空加圧式ラミネーター、日立インダストリイズ社製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー社製真空ラミネーター等を挙げることができる。
<露光工程>
塗布及び乾燥工程、あるいはラミネート工程により、回路基板上に感光性樹脂組成物層が設けられた後、次いで、マスクパターンを通して、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射し、照射部の感光性樹脂組成物層を光硬化させる露光工程を行う。活性光線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量はおおむね10mJ/cm2~1000mJ/cm2である。露光方法にはマスクパターンをプリント配線板に密着させて行う接触露光法と、密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法とがあるが、どちらを用いてもかまわない。また、感光性樹脂組成物層上に支持体が存在している場合は、支持体上から露光してもよいし、支持体を剥離後に露光してもよい。
ソルダーレジストは、本発明の感光性樹脂組成物を使用することから、現像性に優れる。このため、マスクパターンにおける露光パターンとしては、例えば、回路幅(ライン;L)と回路間の幅(スペース;S)の比(L/S)が100μm/100μm以下(すなわち、配線ピッチ200μm以下)、L/S=80μm/80μm以下(配線ピッチ160μm以下)、L/S=70μm/70μm以下(配線ピッチ140μm以下)、L/S=60μm/60μm以下(配線ピッチ120μm以下)のパターンが使用可能である。なお、ピッチは、回路基板の全体にわたって同一である必要はない。
ソルダーレジストは、本発明の感光性樹脂組成物を使用することから、現像性に優れる。このため、ビア径としては、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下とすることが可能となる。下限は特に限定されないが、1μm以上、10μm以上等とし得る。
<現像工程>
露光工程後、感光性樹脂組成物層上に支持体が存在している場合にはその支持体を除去した後、ウエット現像又はドライ現像で、光硬化されていない部分(未露光部)を除去して現像することにより、パターンを形成することができる。
上記ウエット現像の場合、現像液としては、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の安全かつ安定であり操作性が良好な現像液が用いられ、なかでもアルカリ水溶液による現像工程が好ましい。また、現像方法としては、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法が適宜採用される。
現像液として使用されるアルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の炭酸塩又は重炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩の水溶液や、水酸化テトラアルキルアンモニウム等の金属イオンを含有しない有機塩基の水溶液が挙げられ、金属イオンを含有せず、半導体チップに影響を与えないという点で水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水溶液が好ましい。
これらのアルカリ性水溶液には、現像効果の向上のため、界面活性剤、消泡剤等を現像液に添加することができる。上記アルカリ性水溶液のpHは、例えば、8~12の範囲であることが好ましく、9~11の範囲であることがより好ましい。また、上記アルカリ性水溶液の塩基濃度は、0.1質量%~10質量%とすることが好ましい。上記アルカリ性水溶液の温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて適宜選択することができるが、20℃~50℃とすることが好ましい。
現像液として使用される有機溶剤は、例えば、アセトン、酢酸エチル、炭素原子数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルである。
このような有機溶剤の濃度は、現像液全量に対して2質量%~90質量%であることが好ましい。また、このような有機溶剤の温度は、現像性にあわせて調節することができる。さらに、このような有機溶剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。単独で用いる有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1-トリクロロエタン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトンが挙げられる。
パターン形成においては、必要に応じて、上記した2種類以上の現像方法を併用して用いてもよい。現像の方式には、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、高圧スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等があり、高圧スプレー方式が解像度向上のためには好適である。スプレー方式を採用する場合のスプレー圧としては、0.05MPa~0.3MPaが好ましい。
<熱硬化(ポストベーク)工程>
上記現像工程終了後、熱硬化(ポストベーク)工程を行い、ソルダーレジストを形成する。ポストベーク工程としては、高圧水銀ランプによる紫外線照射工程やクリーンオーブンを用いた加熱工程等が挙げられる。紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば0.05J/cm2~10J/cm2程度の照射量で照射を行うことができる。また加熱の条件は、感光性樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃~220℃で20分間~180分間の範囲、より好ましくは160℃~200℃で30分間~120分間の範囲で選択される。
<その他の工程>
プリント配線板は、ソルダーレジストを形成後、さらに穴あけ工程、デスミア工程を含んでもよい。これらの工程は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。
ソルダーレジストを形成した後、所望により、回路基板上に形成されたソルダーレジストに穴あけ工程を行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけ工程は、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけ工程が好ましい。
デスミア工程は、デスミア処理する工程である。穴あけ工程において形成された開口部内部には、一般に、樹脂残渣(スミア)が付着している。斯かるスミアは、電気接続不良の原因となるため、この工程においてスミアを除去する処理(デスミア処理)を実施する。
デスミア処理は、乾式デスミア処理、湿式デスミア処理又はこれらの組み合わせによって実施してよい。
乾式デスミア処理としては、例えば、プラズマを用いたデスミア処理等が挙げられる。プラズマを用いたデスミア処理は、市販のプラズマデスミア処理装置を使用して実施することができる。市販のプラズマデスミア処理装置の中でも、プリント配線板の製造用途に好適な例として、ニッシン社製のマイクロ波プラズマ装置、積水化学工業社製の常圧プラズマエッチング装置等が挙げられる。
湿式デスミア処理としては、例えば、酸化剤溶液を用いたデスミア処理等が挙げられる。酸化剤溶液を用いてデスミア処理する場合、膨潤液による膨潤処理、酸化剤溶液による酸化処理、中和液による中和処理をこの順に行うことが好ましい。膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等を挙げることができる。膨潤処理は、ビアホール等の形成された基板を、60℃~80℃に加熱した膨潤液に5分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。酸化剤溶液としては、アルカリ性過マンガン酸水溶液が好ましく、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解した溶液を挙げることができる。酸化剤溶液による酸化処理は、膨潤処理後の基板を、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に10分間~30分間浸漬させることにより行うことが好ましい。アルカリ性過マンガン酸水溶液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ド-ジングソリューション・セキュリガンスP」等が挙げられる。中和液による中和処理は、酸化処理後の基板を、30℃~50℃の中和液に3分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
乾式デスミア処理と湿式デスミア処理を組み合わせて実施する場合、乾式デスミア処理を先に実施してもよく、湿式デスミア処理を先に実施してもよい。
絶縁層を層間絶縁層として使用する場合も、ソルダーレジストの場合と同様に行うことができ、熱硬化工程後に、穴あけ工程、デスミア工程、及びメッキ工程を行ってもよい。
メッキ工程は、絶縁層上に導体層を形成する工程である。導体層は、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせて形成してもよく、また、導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成してもよい。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、プリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。なお、(D)成分のエポキシ当量はJIS K7236に従って測定し、軟化点はJIS K7234に従って測定した。
(合成例1:樹脂(A-1)の合成)
以下の式(1)に示すナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(エポキシ当量325g/eq.、新日鉄住金化学社製「ESN-475V」)325部を、ガス導入管、撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコに入れ、カルビトールアセテート340部を加え、加熱溶解し、ハイドロキノン0.46部と、トリフェニルホスフィン1部を加えた。この混合物を95~105℃に加熱し、アクリル酸72部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80~90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物80部を加え、8時間反応させ、冷却させた。このようにして、固形物の酸価60mgKOH/gの樹脂溶液(不揮発分70%、以下、「樹脂溶液(A-1)」と略称する)を得た。
但し、Zはグリシジル基(G)又は炭素数1~8の炭化水素基(R
6)であり、R
6/Gの比率が0.05~2.0である。また、nは平均値として1から6までの数を示す。
樹脂溶液(A-1)は、少なくとも下記式(2)に示す構造を含む樹脂を含むことが確認された。
(合成例2:マレイミド化合物(E-1)の合成)
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップを取り付けた300mLのフラスコに2,6-ジメチルアニリン12.1g(0.1mol)、α,α’-ジヒドロキシ-1,3-ジイソプロピルベンゼン68.0g(0.35mol)、キシレン100gおよび活性白土20gを仕込み、攪拌しながら120℃まで加熱した。さらに留出水をディーンスターク管で取り除きつつ210℃になるまで昇温し、3時間反応させた。その後140℃まで冷却し、2,6-ジメチルアニリン36.4g(0.3mol)を仕込んだ後、220℃まで昇温し、3時間反応させた。反応後、100℃まで空冷し、トルエン75gで希釈して、ろ過により活性白土を除き、減圧下で溶剤及び未反応物等の低分子量物を留去することにより、下記式(E-1)で表される中間体アミン化合物91.0gを得た(nは1以上10以下の整数)。アミン当量は296であり、軟化点は70℃であった。
次に、温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ、攪拌機を取り付けた500mLフラスコに無水マレイン酸32.9g(0.32mol)、トルエン200gを仕込み室温で攪拌した。式(E-1)で表される中間体アミン化合物を91gとDMF 40gの混合溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、室温でさらに2時間反応させた。p-トルエンスルホン酸一水和物9.3gを加え、反応液を加熱し還流下で共沸してくる水とトルエンを冷却・分離した後、トルエンだけを系内に戻して脱水反応を8時間行った。室温まで空冷後、減圧濃縮し褐色溶液を酢酸エチル150gに溶解させイオン交換水40gで3回、2%炭酸水素ナトリウム水溶液40gで3回洗浄し、硫酸ナトリウムを加え乾燥後、減圧濃縮し得られた反応物を80℃で4時間真空乾燥を行い、マレイミド化合物(C-1)を含有する生成物を103.0g得た。このマレイミド化合物(C-1)のFD-MSスペクトルにて、M+=560、7、876のピークが確認され、それぞれのピークは、nが0、1、2の場合に相当する。なお、前記マレイミド化合物(C-1)中のインダン骨格部分における繰り返し単位数nの値(数平均分子量に基づく)をGPCで求めたところ、n=1.47であり、分子量分布(Mw/Mn)=1.81であった。また、前記マレイミドE-1全量100面積%中、平均繰り返し単位数nが0の前記マレイミドは、26.5面積%であった。
<実施例1~11、比較例1~6>
下記表に示す配合割合で各成分を配合し、高速回転ミキサーを用いて樹脂ワニスを調製した。
次に、支持体としてPETフィルム(東レ社製「ルミラーT6AM」、厚み38μm、軟化点130℃、)を用意した。かかるPETフィルムに乾燥後の感光性樹脂組成物層の厚みが25μmになるよう、樹脂ワニスをダイコーターにて均一に塗布し、80℃から110℃で6.5分間乾燥することにより、PETフィルム上に感光性樹脂組成物層を有する感光性フィルムを得た。
また、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーT6AM」、厚み38μm、軟化点130℃、「離型PETフィルム」)を用意した。かかる離型PETに乾燥後の感光性樹脂組成物層の厚みが25μmになるよう、樹脂ワニスをダイコーターにて均一に塗布し、80℃から110℃で6.5分間乾燥することにより、離型PETフィルム上に感光性樹脂組成物層を有する感光性フィルムを得た。
<可撓性の評価>
PETフィルム上に感光性樹脂組成物層を有する感光性フィルムを3インチのコア芯に巻き付け、感光性フィルムの割れがないかを確認した。また、ローラーカッター(DAHLE社製)にて感光性フィルムを裁断した時に感光性フィルムの割れがないかを確認した。これらの作業で割れがない場合を「〇」とし、割れが確認できた場合は「×」とした。
<現像性の評価>
(評価用積層体の形成)
厚さ18μmの銅層をパターニングした回路が形成されているガラスエポキシ基板(銅張積層板)の銅層に対して有機酸を含む表面処理剤(CZ8100、メック社製)による処理にて粗化を施した。次にPETフィルム上に感光性樹脂組成物層を有する感光性フィルムの感光性樹脂組成物層が銅回路表面と接するように配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、VP160)を用いて積層し、前記銅張積層板と、前記感光性樹脂組成物層と、前記支持体とがこの順に積層された積層体を形成した。圧着条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度80℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。該積層体を室温30分以上静置し、該積層体の支持体上から、丸穴パターンを用いパターン形成装置を用いて、紫外線で露光を行った。露光パターンは開口:50μm/60μm/70μm/80μm/90μm/100μmの丸穴、L/S(ライン/スペース):50μm/50μm、60μm/60μm、70μm/70μm、80μm/80μm、90μm/90μm、100μm/100μmのラインアンドスペース、1cm×2cmの四角形を描画させる石英ガラスマスクを使用した。室温にて30分間静置した後、前記積層体から支持体を剥がし取った。
(未露光部の残渣)
支持体を剥がしとった積層板上の感光性樹脂組成物層の全面に、現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaにてスプレー現像を行った。スプレー現像後の積層体の1cm×2cmの部分の未露光部を目視で観察し、以下の基準で評価した。
〇:未露光部に樹脂が残っていない。
×:樹脂が目視で確認できる、もしくは膜減りが生じている。
(BP(ブレイクポイント)の評価)
積層体の1cm×2cmの部分の未露光部を目視で観察しながら、現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaにてスプレー現像を行った。スプレー開始から基板上の上に残る樹脂がなくなった時点の時間(秒)を記録した。
(解像性、最小ビア径の評価)
次に、形成したビアとL/SとをSEMで観察(倍率1000倍)し、残渣、剥離がない無い最小ビア径、また、任意の三点のL/Sの形状を測定し、以下の基準で評価した。但し、最小ビア径については、残渣や剥離があったものには「×」と評価した。最小L/Sが60μm/60μmを超えるものは「×」と評価した。
○:三点のL/Sを観察し、全てのL/Sの間に剥離や埋まりがない。
×:三点のL/Sを観察し、いずれかのL/Sの間に樹脂埋まりや剥離が見られる。
<誘電率、誘電正接、ガラス転移温度の測定>
(評価用硬化物の形成)
離型PETフィルム上に感光性樹脂組成物層を有する感光性フィルムの感光性樹脂組成物層に1J/cm2の紫外線照射を行い、さらに190℃、90分間の加熱処理を行い、硬化物を形成した。その後、支持体を剥がし取って評価用硬化物Aを得た。
(誘電率、誘電正接の測定)
評価用硬化物Aを、幅2mm、長さ80mmの試験片に切断し、評価用硬化物Bを得た。各評価用硬化物Bについて、アジレントテクノロジーズ(AgilentTechnologies)社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて、誘電率の値(Dk値)及び誘電正接の値(Df値)を測定した。3本の試験片(N=3)にて測定を実施し、その平均を算出した。
(ガラス転移温度の測定)
評価用硬化物Aを、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、動的粘弾性測定装置(EXSTAR6000、SIIナノテクノロジー社製)を使用して引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重200mN、昇温速度2℃/分の測定条件にて測定した。得られたtanδのピークトップをガラス転移温度(℃)として算出した。
表中の略語等は以下のとおりである。
(A)成分:
・CCR-1179:クレゾールノボラックF型エポキシアクリレート(日本化薬社製、酸価99mgKOH/g、不揮発成分濃度70%)
・A-1:合成例1で合成した樹脂溶液(A-1)
(B)成分:
・SC2050:溶融シリカ(アドマテックス製、平均粒径0.5μm、比表面積5.9m2/g)100質量部に対して、アミノシラン(信越化学社製、KBM573)0.5質量部で表面処理したもの
(C)成分:
・IrgacureTPO:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製)
・IrgacureOXE-01:1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](BASF社製)
(D)成分:
・HP4032:ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製、エポキシ当量144g/eq.、軟化点は30℃未満)
・ELM-434VL:N,N,N‘,N’-テトラキス(オキシラン-2-イルメチル)-4,4’-メチレンジアニリン(グリシジルアミン型エポキシ樹脂、住友化学社製、エポキシ当量114g/eq.、軟化点は30℃未満)
・NC3000L:ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、エポキシ当量271g/eq.、軟化点は53℃)
・NC3000H:ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、エポキシ当量272g/eq.、軟化点は70℃)
・1031S:テトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂(三菱化学社製、エポキシ当量224g/eq.、軟化点は92℃)
(E)成分:
・BMI-689:マレイミド樹脂、ダイマージアミン型ビスマレイミド(デジグナーモレキュールズ社製)
・E-1:合成例2で合成したマレイミド化合物(E-1)
・BMI-5100:マレイミド樹脂、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドジフェニルメタンビスマレイミド、デジグナーモレキュールズ社製
・MIR3000:マレイミド樹脂、日本化薬社製
・EXB-8151-62T:ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、DIC社製
・PC1300-02-65MA:ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、エア・ウォーター社製
・DAD:ビニル樹脂:2,2’-ビフェニルジカルボン酸ジアリルエステル(日触テクノファインケミカル株式会社製)
・OPE-2St:ビニル樹脂(ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル、三菱瓦斯化学社製)
(F)成分
・1B2PZ:2-フェニル-1-ベンジル-1H-イミダゾール、四国化成社製
(G)成分:
・EDGAc:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
・MEK:メチルエチルケトン
(H)成分:
・DOG-A:ジオキサングリコールジアクリレート、新中村化学社製
・TD-2090-60M:ノボラック型フェノール樹脂、DIC社製
各実施例において、(F)~(H)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。