(第1実施形態)
以下、車両用外装品を車両用のエンブレムに具体化した第1実施形態について、図1~図7を参照して説明する。
なお、以下の記載に関し、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって車両の前進時の左右方向と一致するものとする。また、各図では、エンブレムにおける各部を認識可能な大きさとするために、各部の縮尺を適宜変更して図示している。
図1及び図3に示すように、車両10の前部の車幅方向における中央部分であって、フロントグリル11の後方には、前方監視用のミリ波レーダ装置13が配置されている。ミリ波レーダ装置13は、電磁波におけるミリ波を、車外のうち前方へ向けて送信し、かつ、車外の物体に当たって反射されたミリ波を受信する機能を有する。ミリ波とは、波長が1mm~10mmであり、周波数が30GHz~300GHzである電波をいう。
上記フロントグリル11の厚みは、一般的なフロントグリルと同様、一定ではない。また、フロントグリル11では、樹脂製基材の表面に金属めっき層が形成されることがある。従って、フロントグリル11は、送信又は反射されたミリ波と干渉する。このため、フロントグリル11において、ミリ波の送信方向におけるミリ波レーダ装置13の前方には、窓部12が開口されている。
上記窓部12には、第1実施形態のエンブレム15が配置されている。ここで、エンブレム15を説明するにあたり、意匠面側(図3では左側)を表側といい、意匠面とは反対側(図3では右側)を裏側というものとする。
エンブレム15は、その表面(意匠面)が車両10の前方を向き、かつ同エンブレム15の裏面が車両10の後方を向くように、起立した状態で配置される。この配置状態では、エンブレム15の表側が車両10の前側に対応し、エンブレム15の裏側が車両10の後側に対応する。
そのため、単体のエンブレム15の説明に際し、車両前後方向に対応する方向を特定する場合には、「表」及び「裏」の語を用いるものとする。車両10に取付けられた状態のエンブレム15を説明する場合についても同様である。
エンブレム15は、樹脂基材21、透明樹脂層33、加飾層41、コネクタ51、及び発熱部を備えている。次に、エンブレム15を構成する各部について説明する。
<樹脂基材21>
樹脂基材21は、エンブレム15の裏側部分を構成している。樹脂基材21は、その骨格部分を構成する基材本体部22と、基材本体部22の表側に隣接する箇所であって、同基材本体部22の側部に形成された環状の枠部31とを備えている。
基材本体部22は、AES(アクリロニトリル-エチレン-スチレン共重合)樹脂によって形成されており、着色されている。基材本体部22の表側の部分には、表裏方向に対し略直交する一般部24と、一般部24よりも表側へ突出する突部25とが形成されている。一般部24は、図1におけるエンブレム15の背景領域16に対応し、突部25は同エンブレム15の模様領域17に対応している。ここでは、模様領域17は、「V」という文字部分18とその周りの環状部分19とにより構成されている。
図3に示すように、基材本体部22の側部には、表側の面において開放されて裏側へ凹む環状凹部26が形成されている。環状凹部26は、基材本体部22の全周にわたって形成されていて、略楕円の環状をなしている。基材本体部22の側面27は、表裏方向に対し直交する方向の寸法が、表側ほど大きくなるように、同表裏方向に対し緩やかに傾斜している。樹脂基材21(基材本体部22)の裏面は、表側へ凹むように緩やかに湾曲している(図7参照)。
なお、基材本体部22は、上記AES樹脂に代えて、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリレート共重合)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PC樹脂及びABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合)樹脂のポリマーアロイ等によって形成されてもよい。
枠部31は、基材本体部22の全周にわたって形成されることで略楕円の環状をなしている(図1参照)。枠部31の裏側の部分は、上記環状凹部26内に充填された状態で形成(埋設)されている。枠部31は、例えば、PC樹脂とカーボンブラックとの混合材料によって形成されていて、黒色を有している。枠部31の側面32は、表裏方向に対し直交する方向の寸法が、表側ほど大きくなるように、同表裏方向に対し緩やかに傾斜している。側面32は、表裏方向に対し、上記側面27と同一又は近い角度で傾斜している。枠部31の裏面は、基材本体部22の表面に対し密着している。
基材本体部22の裏面の側部における複数箇所には、エンブレム15をフロントグリル11又は車体に組付けるための取付部(図示略)が設けられている。取付部は、クリップ、ビス、係合爪等によって構成されている。
<透明樹脂層33>
透明樹脂層33は、エンブレム15の表側の多くの部分を構成している。透明樹脂層33は、PC樹脂によって、基材本体部22及び枠部31よりも表側に形成されており、透明である。ここでの透明には、無色透明のほか、着色透明(有色透明)も含まれる。この点は、後述するヒータフィルム61についても同様である。透明樹脂層33の裏側部分(但し、側部を除く)は、上記基材本体部22の表側部分の形状に対応した形状に形成されている。すなわち、透明樹脂層33の裏側部分であって、基材本体部22の一般部24の表側となる箇所には、表裏方向に対し略直交する一般部34が形成されている。透明樹脂層33の裏側部分であって、基材本体部22の突部25の表側となる箇所には、一般部34よりも表側へ凹む凹部35が形成されている。
透明樹脂層33の表面36は、上記基材本体部22の裏面に対応して、表側へ膨らむように緩やかに湾曲している(図7参照)。透明樹脂層33の側部は、枠部31よりも外側方へ飛び出している。透明樹脂層33の側部は、表側の側面37と、裏側の側面38とを有している。表側の側面37は、透明樹脂層33の側面のうちの大部分を構成している。上記側面37は、表裏方向に対し直交する方向の寸法が、表側ほど小さくなるように、同表裏方向に対し傾斜している。裏側の側面38は、表側の側面37と枠部31の側面32との間に位置する。側面38は、表裏方向に対し直交する方向の寸法が、表側ほど大きくなるように、同表裏方向に対し傾斜している。側面38は、表裏方向に対し、上記側面27,32よりも大きな角度で傾斜している。上記側面38の存在により、両側面37,32の間に段差部Aが設けられている。
上記段差部Aは、次のような設計思想のもと、形成されている。それは、第1実施形態では、透明樹脂層33及び枠部31が、この順で樹脂成形法によって成形される。一方で、透明樹脂層33は、一般的な樹脂成形法が行なわれた場合と同様、樹脂成形後に少なからず収縮する。枠部31の樹脂成形に際し、透明樹脂層33が樹脂成形金型にインサート部材として配置された場合、樹脂成形金型と透明樹脂層33の側面37との間に隙間が生ずる。
仮に、段差部Aが設けられていないとすると、枠部31の樹脂成形に際し、同枠部31の材料である溶融状態の樹脂が上記の隙間に流れ込んで、透明樹脂層33の表側に出てしまう。そこで、上記のように、段差部Aを設けることで、枠部成形用の溶融状態の樹脂が上記隙間を通って透明樹脂層33の表側へ流れ出るのを抑制している。
透明樹脂層33は、自身の裏面の側部において、枠部31の表面に対し密着している。
なお、透明樹脂層33は、PC樹脂に代えてPMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂等の透明な樹脂によって形成されてもよい。
<加飾層41>
加飾層41は、樹脂基材21と透明樹脂層33との間であって、枠部31によって囲まれた領域に形成されており、ミリ波透過性を有している。本実施形態では、加飾層41は、有色加飾層42と光輝加飾層43との組合わせによって構成されている。有色加飾層42は、例えば、黒色、青色等の濃色を有しており、一般部34の裏面に形成されている。
光輝加飾層43は、インジウム(In)等の金属材料からなり、透明樹脂層33の凹部35の壁面、及び有色加飾層42の裏面全体に対し、島構造をなすように形成されている。島構造は、金属皮膜が一面に連続しておらず、多数の微細な金属皮膜が島状に互いに僅かに離間し又は一部接触した状態で敷き詰められてなる構造である。この構造が採用されることにより、光輝加飾層43は不連続構造となり、高い電気抵抗を有し、ミリ波透過性を有する。
樹脂基材21及び透明樹脂層33において、ミリ波が透過される領域は、厚みが一定となるように形成されている。
<コネクタ51>
コネクタ51は、後述するヒータフィルム61の発熱本体部に対し電力を供給するための機器BのコネクタCが結合される部材である。コネクタ51は、コネクタハウジング52及び一対(図3では一方のみ図示)の端子部53を備えている。
両端子部53は、それぞれ導電性を有する金属材料、例えば、銅(Cu)からなる板材又は線材が用いられて、互いに同一の形状となるように形成されており、互いに離間した状態で配置されている。
各端子部53は、端子本体部54、露出部55及び被結合部56からなる。端子部53毎の端子本体部54は、樹脂基材21に埋設されている。各端子本体部54の表側部分は、枠部31の裏面に対応した形状に曲げられていて、枠部31と基材本体部22との境界部分に配置されている。各端子本体部54の裏側部分は、基材本体部22を表裏方向に貫通している。
端子部53毎の露出部55は、各端子本体部54の表側の端部に接続されており、同端部において裏側へ屈曲されている。各露出部55は、基材本体部22の側面27に沿って裏側へ延びており、樹脂基材21の側面27,32から外側方(図3では上方)へ向けて露出している。端子部53毎の露出部55の側面は、枠部31の側面32及び基材本体部22の側面27と同一の平面上に位置している。
端子部53毎の被結合部56は、上記機器BのコネクタCが結合される部分であり、各端子本体部54に接続され、かつ端子本体部54の裏側の端部から樹脂基材21よりも裏側へ突出している。
コネクタハウジング52は、電気絶縁性を有する材料によって形成されており、裏側の面が開放された筒状をなしている。コネクタハウジング52は、基材本体部22の裏側に配置されており、両被結合部56を取り囲んでいる。
<発熱部>
図2及び図3に示すように、発熱部は、透明樹脂層33の表側に配置されたヒータフィルム61によって構成されている。ヒータフィルム61は、PC樹脂等の透明な樹脂材料によって形成されたフィルム基材62と、少なくとも透明樹脂層33に貼付けられる粘着層63と、フィルム基材62及び粘着層63の間に配置された発熱本体部とを備えている。本実施形態では、発熱本体部は、通電により発熱する金属材料、例えば銅(Cu)からなるヒータ線64によって構成されている。粘着層63としては、例えば、OCA(OPTICAL CLEAR ADHESIVE)と呼ばれるフィルム状の透明な光学粘着フィルムが用いられている。
ヒータフィルム61の主部67は、透明樹脂層33の表面36に対し、粘着層63において貼付けられている。この貼付けにより、上記主部67が透明樹脂層33に固定されている。主部67では、ヒータ線64が波形状に繰り返し屈曲された状態で配線されている。このように配線されたヒータ線64は、複数の直線部65と複数の連結部66とを備えている。複数の直線部65は、互いに離間した状態で平行に延びている。複数の連結部66は、半円弧状をなし、隣り合う直線部65の端部同士を連結している。こうした配線により、ヒータ線64によってミリ波の透過が妨げられるのを抑制している。表現を変えると、直線部65を、所定の間隔をおいて配置することにより、隣り合う直線部65の間をミリ波が透過できるようにしている。ヒータ線64の両端部は、互いに接近した箇所に位置している。第1実施形態では、ヒータ線64の両端部は、ヒータフィルム61の上部に位置している。
ヒータフィルム61のうち上記主部67の周りの部分(以下「側部68」という)は、透明樹脂層33の側面37,38を経由して、樹脂基材21の側面まで回り込んでいる。ここでの樹脂基材21の側面とは、枠部31の側面32、及び基材本体部22の側面27である。側部68の周方向における一部、第1実施形態では上部には、導電性材料により形成され、かつヒータ線64の端部に接続された一対の接続部69が位置している。各接続部69は、上述した端子部53における露出部55に対し重ね合わされて接合されることで、ヒータ線64及び端子部53を電気的に接続している。
さらに、上記側部68は、接続部69と露出部55との接合部分よりも裏側で、基材本体部22の側面27に対し溶着されており、同側部68と側面27との間を封止している。
そして、上記のように構成されたエンブレム15は、起立させられた状態で窓部12の内部に配置され、取付部においてフロントグリル11又は車体に取付けられている。
次に、上記のように構成された第1実施形態の作用について、エンブレム15の製造方法とともに説明する。
エンブレム15の製造に際しては、最初に、樹脂成形金型が用いられてインサート成形が行なわれることにより、図4に示す中間成形体71が成形される。すなわち、予め所定の形状に賦形されたフィルム材72が準備される。フィルム材72は、ヒータフィルム61の成形に用いられる素材であり、同ヒータフィルム61と同様、フィルム基材62、ヒータ線64及び粘着層63からなる。フィルム材72は、図4及び図7に示すように、大別すると次の3つの部分からなる。
・表裏方向に対し略直交し、透明樹脂層33の表面36に積層される予定の第1の部分73。
・第1の部分73の周りに位置していて環状をなし、同第1の部分73の周縁部に対し屈曲して裏側へ延びる第2の部分74。
・第2の部分74の周りに位置していて環状をなし、同第2の部分74の周縁部に対し屈曲して、外側方へ延びる第3の部分75。
上記フィルム材72がインサート部材として、樹脂成形金型に配置される。次に、樹脂成形金型内のキャビティに溶融状態の樹脂材料(PC樹脂)が射出されて、充填される。溶融樹脂が硬化されることにより、一般部34及び凹部35を有する透明樹脂層33が第1の部分73の裏側に成形される。このようにして、透明樹脂層33及びフィルム材72からなる図4に示す中間成形体71が得られる。この中間成形体71では、第1の部分73が透明樹脂層33の表面36に貼付けられ、第2の部分74の一部が透明樹脂層33の側面37に貼付けられている。
続いて、上記とは異なる樹脂成形金型が用いられてインサート成形が行なわれることにより、図5に示す中間成形体76が成形される。すなわち、上記図4の中間成形体71がインサート部材として、樹脂成形金型に配置される。次に、樹脂成形金型内のキャビティに溶融状態の樹脂材料(PC樹脂とカーボンブラックとの混合材料)が射出されて、充填される。溶融樹脂が硬化されることにより、透明樹脂層33の裏面の側部に密着した状態の枠部31が成形される。このようにして、フィルム材72、透明樹脂層33及び枠部31からなる中間成形体76が得られる。
次に、上記中間成形体76が上記樹脂成形金型から取り出される。図5において二点鎖線で示すように、透明樹脂層33の一般部34に対し、スクリーン印刷等の印刷、ホットスタンプ等が行なわれることにより、有色加飾層42が形成される。続いて、透明樹脂層33の凹部35の壁面、及び有色加飾層42の裏面全体に、インジウム等の金属材料がスパッタリング又は蒸着されることにより、光輝加飾層43が形成される。このようにして、透明樹脂層33の裏面に、有色加飾層42及び光輝加飾層43からなる加飾層41が形成される。
次に、上記とは異なる樹脂成形金型が用いられてインサート成形が行なわれる。すなわち、図5において二点鎖線で示すように、別途作成されたコネクタ51と、上記図5の中間成形体76とがインサート部材として、樹脂成形金型に配置される。この際、コネクタ51は、両端子部53を枠部31の裏面に密着させ、かつコネクタハウジング52を固定した状態で樹脂成形金型に配置される。
次に、樹脂成形金型内のキャビティに溶融状態の樹脂材料(AES樹脂)が射出されて、充填される。溶融樹脂が硬化されることにより、図6において二点鎖線で示すように、枠部31の裏面、加飾層41(光輝加飾層43)、及び端子部53の一部(端子本体部54、露出部55)に密着した状態の基材本体部22が成形されて、中間成形体77が得られる。
ここで、仮に、両端子部53がコネクタハウジング52のない状態で、基材本体部22の形成のための樹脂成形が行なわれると、供給される溶融樹脂によって両端子部53が流されて、位置ずれを起こすおそれがある。しかし、第1実施形態では、両端子部53がコネクタハウジング52に固定された状態で樹脂成形が行なわれる。コネクタハウジング52は樹脂成形金型に固定されている。そのため、溶融樹脂によって両端子部53が流れることが起こりにくく、上記のような位置ずれを抑制することができる。
続いて、フィルム材72における第2の部分74の一部と第3の部分75とが、透明樹脂層33の側面38、枠部31の側面32、端子部53の露出部55、及び基材本体部22の側面27に沿った形状に賦形される。
上記賦形に際しては、図7に示す賦形装置80が用いられる。なお、図7では、中間成形体77が簡略化されて図示されている。この賦形装置80は、基部81、成形体受け治具82及びフィルム受け治具84を備えている。
成形体受け治具82は基部81上に配置されている。成形体受け治具82の上部には、上記中間成形体77の裏面に対応した形状を有する突部83が形成されている。
フィルム受け治具84は、環状をなしていて、成形体受け治具82を取り囲んだ状態で基部81上に配置されている。フィルム受け治具84は、自身の上端面を、フィルム材72の第3の部分75が載置される載置面85として有している。フィルム受け治具84の下端部と基部81との間には、高さ調整用のスペーサ86が適宜介在される。
フィルム材72における第2の部分74及び第3の部分75の賦形に際しては、上記中間成形体77が樹脂基材21(基材本体部22)において、成形体受け治具82の突部83上に載置される。中間成形体77は、成形体受け治具82によって裏側から支えられた状態となる。フィルム材72における上記第3の部分75がフィルム受け治具84の載置面85上に載置される。
図示しない真空吸引機構が作動させられることにより、成形体受け治具82を通じて、フィルム材72における第2の部分74の一部と第3の部分75とが吸引される。この吸引により、図7において二点鎖線で示すように、第2の部分74の一部と、第3の部分75とが、中間成形体77における透明樹脂層33の側面38、枠部31の側面32、端子部53の露出部55、及び基材本体部22の側面27に密着するように巻き込まれることで、同側面38,32,27及び露出部55に沿った形状に賦形される。なお、圧縮空気によって加圧(圧空成形)されることで賦形が行なわれてもよい。
また、上記賦形装置80において、スペーサ86の数を増減したり、同スペーサ86を厚みの異なる別のスペーサに変更したりすることで、載置面85の上下位置(高さ)を調整し、フィルム材72の巻き込み長さを調整することが可能である。
次に、フィルム材72の第3の部分75のうち上記側面38,32,27に対する賦形に関与しない余剰部分が、超音波、熱刃、レーザ等によってカット(トリミング)される。余剰部分が除去されることで残ったフィルム材72により、ヒータフィルム61が構成される。
一対の接続部69のそれぞれが、対向する端子部53の露出部55に対し、超音波金属接合法(超音波溶接法とも呼ばれる)によって接合される。
超音波金属接合法では、接続部69が露出部55側へ加圧されながら、ヒータフィルム61に対し、振動子によって超音波振動が印加される。超音波振動により、接続部69と露出部55との境界面に摩擦が発生する。この摩擦により、接続部69及び露出部55のそれぞれの表面の酸化被膜、吸着ガス等の不純物が飛散させられ、清浄な活性化した金属分子が現れる。さらに、超音波振動が印加されることにより、摩擦熱による加熱から原子運動が盛んになる。拡散による金属原子の移動が発生し、金属原子相互間に引力が発生して結び付き、固相接合状態となる。固相接合であるため、互いの金属が溶融する温度までは上昇せず、比較的低温で接合を行うことができる。この接合により、ヒータ線64が接続部69を介して、対応する端子部53に電気的に接続される。
さらに、フィルム基材62が、接続部69と端子部53との接合部分よりも裏側において、基材本体部22の側面27に対し、超音波溶着法により溶着される。超音波溶着法では、フィルム基材62が、超音波ホーンによって基材本体部22側へ加圧される。この状態で、超音波ホーンが20kHz以上の周波数で振動(超音波振動)される。この振動が、上記フィルム基材62を介して基材本体部22に伝達されて、両者の間に摩擦熱が発生する。この摩擦熱により、図3に示すように、フィルム基材62及び基材本体部22が溶融し、両者が接合される。
このようにして、図1及び図3に示す、目的とするエンブレム15が得られる。
このエンブレム15のコネクタ51に対し、上記機器BのコネクタCが結合されることで、ヒータ線64が上記機器Bに対し電気的に接続される。
上記エンブレム15では、ヒータ線64及び端子部53の電気的接続が、樹脂基材21の側面27,32の外側方における近傍で行なわれている。そのため、ヒータ線64と端子部53との間の部分(接続部69)を、樹脂基材21(基材本体部22)の側面27と裏面との境界部分で屈曲させなくてもすむ。樹脂基材21において、ヒータ線64と端子部53との間の部分(接続部69)が透明樹脂層124の表面と側面との境界部分で屈曲され、かつ樹脂基材123の側面と裏面との境界部分で屈曲される場合とは異なり、上記部分(接続部69)を大きく屈曲させなくてもすむ。その結果、大きな角度での屈曲が原因で、ヒータ線64及び端子部53の間における導通が遮断(断線)されるのを抑制することができる。断線を回避しつつ、ヒータ線64及び端子部53を接続部69によって接続することができる。ヒータ線64と端子部53との導通を安定して確保することができる。
上記エンブレム15では、フィルム基材62が、露出部55と接続部69との接合部分よりも裏側で、基材本体部22の側面27に対し溶着されていて、両者の間が封止されている。そのため、雨、氷雪が溶けて生じた水、洗車時に使用される水等が、基材本体部22とフィルム基材62との隙間に入り込んで露出部55に触れるのを抑制し、防水性を高めることができる。
ところで、エンブレム15の意匠面(表面)に氷雪が付着した場合には、電力が機器B側のコネクタC、エンブレム15側のコネクタ51における端子部53、接続部69を介して、ヒータ線64に供給される。ヒータ線64は、通電されると発熱する。ヒータ線64が発した熱の一部は、エンブレム15の意匠面(表面)に伝達される。この熱により、上記意匠面(表面)に付着している氷雪が融解され、氷雪によるミリ波の減衰が抑制される。
特に、第1実施形態では、ヒータフィルム61がエンブレム15において最も表側の箇所に配置されている。そのため、ヒータ線64の発した熱がエンブレム15の意匠面(表面)に伝わりやすく、氷雪を効率よく融解させることができる。
図3に示すミリ波レーダ装置13からミリ波が送信されると、そのミリ波は、エンブレム15の各部を透過する。透過したミリ波は、先行車両、歩行者等を含む車両前方の物体に当たって反射された後、再びエンブレム15を透過し、ミリ波レーダ装置13によって受信される。ミリ波レーダ装置13では、送信及び受信された上記ミリ波に基づき、物体の認識や、車両10と同物体との距離、相対速度等の検出が行われる。
また、エンブレム15に対し車両10の前側から可視光が照射されると、その可視光は、ヒータフィルム61及び透明樹脂層33を透過する。上記可視光は、加飾層41及び枠部31で反射又は吸収される。車両10の前方からエンブレム15を見ると、ヒータフィルム61及び透明樹脂層33を通して、それらの裏側(奥側)に加飾層41及び枠部31が位置するように見える。加飾層41のうち有色加飾層42については、その有色加飾層42の有する色(黒色、青色等)が見える。また、加飾層41のうち光輝加飾層43については、金属のように光り輝いて見える。すなわち、黒色、青色等の濃色を背景に、文字部分18と環状部分19とが金属のように見える。また、環状部分19の周りには、黒色の枠部31が見える。このように、加飾層41及び枠部31によってエンブレム15が装飾され、同エンブレム15及びその周辺部分の外観が向上する。
なお、加飾層41及び枠部31は、ミリ波レーダ装置13よりも前側に位置していて、同ミリ波レーダ装置13を覆い隠す機能を発揮する。そのため、エンブレム15の前側からは、ミリ波レーダ装置13が見えにくい。ミリ波レーダ装置13がエンブレム15を介して透けて見える場合に比べて外観が向上する。
第1実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・接続部69と端子部53との接合を、透明樹脂層33の表側(意匠面側)で行なうことも可能である。しかし、車両前方からエンブレム15を見た場合に、接合部分が見えてしまい、エンブレム15の見栄えが低下する。接合部分を別部材で隠すことも可能であるが、この場合には、別部材が別途必要となり、部品点数が多くなる。
この点、第1実施形態では、接続部69と端子部53との接合が、基材本体部22の外側方近傍で行なわれる。車両10の前方からエンブレム15を見た場合に、接続部69及び端子部53が見えにくく、接合部分による見栄えの低下を抑制することができる。また、接合部分を隠すための別部材が不要となり、部品点数の増加を抑制することができる。
特に、透明樹脂層33の側部が、樹脂基材21の側面27,32よりも外側方に位置していて、同透明樹脂層33の側面37と樹脂基材21の側面27,32との間に段差部Aが形成されている。段差部Aは、露出部55よりも表側に位置していて、同露出部55を隠すように作用する。そのため、車両10の前方からエンブレム15を見た場合に、接続部69と露出部55との接合部分をより一層見えにくくすることができる。
・第1実施形態では、フィルム基材62が基材本体部22の裏面まで巻き込まれていないため、巻き込まれている場合に比べ、コストを低減することができる。
(第2実施形態)
次に、車両用外装品を車両用のエンブレムに具体化した第2実施形態について、図8~図14を参照して説明する。
図11に示すように、第2実施形態では、発熱本体部が、通電により発熱する透明な導電性薄膜91からなる。導電性薄膜91は、銀(Ag)膜等の導電膜によって形成されている。導電性薄膜91は、ヒータとしての機能を有するほか、周波数の特定の帯域の電波を通過させ、かつその帯域以外の他の周波数の電波の通過を抑制する、いわゆるバンドパスフィルタに類する機能を有している。第2実施形態の導電性薄膜91は、ミリ波レーダ装置13によって送信及び受信されるミリ波の周波数帯域が通過帯域となるように構成されている。
各接続部69は、導電性薄膜91の端部に接続されている。
また、第2実施形態では、図8~図10に示すように、エンブレム15側のコネクタ92として、コネクタハウジング93及び一対の端子部96からなるものが用いられている。コネクタハウジング93は、表裏方向に延びる四角筒状をなしている。コネクタハウジング93の表側の端部は、閉塞部94によって閉塞されている。コネクタハウジング93の裏側の端部は開放されており、同コネクタハウジング93の内部において閉塞部94よりも裏側部分は空間部95となっている(図9参照)。
図10~図12に示すように、両端子部96は、互いに線対称の関係となる形状を有している。各端子部96は、第1実施形態と同様、端子本体部97、露出部98及び被結合部99によって構成されている。各端子部96の全体は、銅、黄銅(銅と亜鉛の合金)等の導電性を有する金属によって形成されている。
端子部96毎の端子本体部97は、コネクタハウジング93の表側部分の内部に配置されている。より詳しくは、端子本体部97の表側の部分は、上記閉塞部94内に配置され、裏側の部分は空間部95に位置している。
被結合部99は、表裏方向へ延びており、自身の表側の端部において、端子本体部97の裏側の端部に繋がっている。両端子部96の被結合部99は、互いに平行な状態で空間部95に位置している。
両端子部96の露出部98は、樹脂基材21の周方向であって、互いに反対方向へ延びており、隣の露出部98に近い側の端部において、端子本体部97の表側の端部に接続されている。露出部98の端子本体部97との境界部分は、閉塞部94の内部に位置している。露出部98のうち、端子本体部97との境界部分を除く多くの部分は、コネクタハウジング93から露出している。
コネクタ92の表裏方向における少なくとも一部、第2実施形態では、表側の部分は、枠部31及び基材本体部22に埋設されている。コネクタハウジング93の表側の端部(閉塞部94)は、透明樹脂層33と枠部31との境界部分に接近した箇所に位置している。端子本体部97は、樹脂基材21の内部に位置している。コネクタハウジング93の側面と、露出部98のうちコネクタハウジング93から露出している部分とは、樹脂基材21の側面27,32と同一面上に位置していて、同側面27,32から外側方に向けて露出している。そして、各露出部98に対し、対応する接続部69が重ね合わされ、同接続部69が露出部98に接合されている。
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
次に、第2実施形態の作用について、エンブレム15の製造方法とともに説明する。
透明樹脂層33及びフィルム材72からなる中間成形体71の成形は、第1実施形態と同様に行なわれる(図4参照)。
次に、図13に示すように、上記中間成形体71及びコネクタ92がインサート部材として、樹脂成形金型に配置される。コネクタ92は、樹脂成形金型に対し、位置決めされた状態で固定される。樹脂成形金型内のキャビティに溶融状態の樹脂材料(PC樹脂とカーボンブラックとの混合材料)が射出されて、充填される。溶融樹脂が硬化されることにより、透明樹脂層33の裏面の側部と、コネクタハウジング93の外面の一部とに対しそれぞれ密着した状態の枠部31が成形される。
このようにして、フィルム材72、透明樹脂層33、枠部31及びコネクタ92からなる中間成形体101が得られる。この中間成形体101では、コネクタハウジング93の側面と露出部98の側面とが、枠部31の側面32と同一面上に位置している。
ここで、第2実施形態でも、第1実施形態と同様、両端子部96がコネクタハウジング93に固定された状態で樹脂成形が行なわれる。コネクタハウジング93は樹脂成形金型に固定されている。そのため、溶融樹脂によって両端子部96が流れることが起こりにくく、両端子部96の位置ずれを抑制することができる。
次に、中間成形体101が上記樹脂成形金型から取り出される。図13において二点鎖線で示すように、透明樹脂層33の一般部34に対し有色加飾層42が形成される。続いて、凹部35の壁面、及び有色加飾層42の裏面全体に光輝加飾層43が形成される。このようにして、透明樹脂層33の裏面に、有色加飾層42及び光輝加飾層43からなる加飾層41が形成されて、図14において実線で示す中間成形体102が得られる。
次に、上記とは異なる樹脂成形金型が用いられてインサート成形が行なわれる。すなわち、樹脂成形金型内のキャビティに溶融状態の樹脂材料(AES樹脂)が射出されて、充填される。図14において、二点鎖線で示すように、溶融樹脂が硬化されることにより、枠部31の裏面、加飾層41(光輝加飾層43)、及びコネクタハウジング93の外面の一部に密着した状態の基材本体部22が成形されて、中間成形体103が得られる。この中間成形体103では、基材本体部22の側面27が、コネクタハウジング93の側面及び両露出部98の側面と同一面上に位置する。
その後は、第1実施形態と同様の工程が行なわれる。図7に示す賦形装置80が用いられて、フィルム材72が、透明樹脂層33の側面38、枠部31の側面32、及び基材本体部22の側面27に沿った形状に賦形される。
フィルム材72の余剰部分がトリミングされ、残ったフィルム材72により、ヒータフィルム61が構成される。一対の接続部69のそれぞれが、対向する露出部98に対し、超音波金属接合法により接合される。この接合により、導電性薄膜91が接続部69を介して、対応する端子部96に電気的に接続される。
さらに、ヒータフィルム61のフィルム基材62が、接続部69と端子部96(露出部98)との接合部分よりも裏側において、基材本体部22の側面27に対し、超音波溶着法により溶着される。このようにして、図11に示すエンブレム15が得られる。
このエンブレム15のコネクタ92に対し、機器BのコネクタCが結合されることで、導電性薄膜91が機器Bに対し電気的に接続される。
従って、第2実施形態は、発熱本体部の構成、及びコネクタ92の形態の点で第1実施形態と相違する。しかし、第2実施形態は、端子部96毎の露出部98が、樹脂基材21の側面27,32から外側方に向けて露出していて、発熱本体部(導電性薄膜91)に接続された接続部69が露出部98に直接接合されている点で第1実施形態と共通している。
そのため、第2実施形態によると、第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
なお、第2実施形態では、機器BからコネクタC、コネクタ92の端子部96及び接続部69を介して電力が供給されると、導電性薄膜91に通電される。この通電に伴い、導電性薄膜91の導電領域が発熱する。そのため、エンブレム15に氷雪が付着しても、上記発熱により氷雪を溶かすことが可能である。氷雪によるミリ波の減衰を抑制し、氷雪の付着が原因でミリ波レーダ装置13の検出性能が低下するのを抑制することができる。
また、ミリ波がエンブレム15を透過する点、加飾層41及び枠部31によりエンブレム15が加飾される点、ミリ波レーダ装置13がエンブレム15によって隠される点等は、第1実施形態と同様である。
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組合わせて実施することができる。
・図15に示すように、第2実施形態における接続部69が、超音波金属接合法に代えてはんだ付け工法によって、対応する露出部98に接合されてもよい。
はんだ付け工法では、接続部69及び露出部98の間と、周辺部分とに対し、融点の低いはんだ合金105が溶かされて付着される。その後、はんだ合金105の濡れ性と表面張力で接合部の形状が維持された状態で、同接合部が冷却されることにより、接続部69が露出部98に対し接合される。
この場合、図7の賦形装置80を用いたフィルム材72の賦形に先立ち、コネクタ92における露出部98上にはんだ合金105が載せられる。はんだ合金105上に接続部69が載せられる。この状態でフィルム材72の賦形が行なわれる。すなわち、図7に示す賦形装置80が用いられて、フィルム材72における第2の部分74の一部と第3の部分75とが、透明樹脂層33の側面38、枠部31の側面32、及び基材本体部22の側面27に沿った形状に賦形される。
フィルム材72を介してはんだ合金105が加温される。又は誘電発熱によってはんだ合金105が加温される。これらの加温によって、はんだ合金105が溶かされ、はんだ合金105を介して接続部69が露出部98に接合される。はんだ合金105は、接合された接続部69と露出部98との間に良好な導電性をもたらす(電気を良く通す)。
なお、第1実施形態における接続部69の露出部55に対する接合も、はんだ付け工程によって行なわれてもよい。
・図示はしないが、第2実施形態において接続部69が、導電性接着剤を用いた接着によって、対応する露出部98に接合されてもよい。導電性接着剤は、基本的に、導電性、電磁シールド等の機能を受け持つ導電性粒子と、接着を受け持つ有機接着剤との複合体である。有機系接着剤としては、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等からなるものが用いられる。導電性粒子としては、銀、ニッケル、銅、アルミニウム、金、カーボン等からなる粒子が用いられる。
この場合、図7の賦形装置80を用いたフィルム材72の賦形に先立ち、コネクタ92における露出部98に対し、上記はんだ合金105(図15参照)に代えて、導電性接着剤が塗布される。接続部69が導電性接着剤を介して露出部98に載せられる。この状態でフィルム材72の賦形が行なわれる。この賦形の際、フィルム材72が樹脂基材21側へ引っ張られて、接続部69が同樹脂基材21側へ押圧される。接続部69が導電性接着剤を介して露出部98に接着される。このようにして、接続部69の露出部98に対する接合が、導電性接着剤を介して行なわれる。接続部69が導電性接着剤を介して端子部96に対し導通した状態となる。なお、第1実施形態における接続部69の露出部55に対する結合も、導電性接着剤を用いた接着によって行なわれてもよい。また、接続部69の樹脂基材21側への押圧力が不足する場合には、圧縮空気による加圧(圧空成形)が行なわれてもよい。
・図示はしないが、第2実施形態における粘着層63に代えて、透明樹脂層33の側面37から、側面38,32に沿って、少なくとも露出部98に対向する位置まで延長されたものが粘着層として用いられてもよい。この場合、粘着層として、導電性材料が含有されることで導電性を有する粘着層が用いられる。そして、接続部69が、上記粘着層63に代わる粘着層を介して露出部98に接合されてもよい。
また、この場合、図7の賦形装置80を用いたフィルム材72の賦形が行なわれることで、同フィルム材72が樹脂基材21側へ引っ張られて、接続部69が同樹脂基材21側へ押圧される。接続部69が導電性の粘着層を介して露出部98に貼付けられる。このようにして、接続部69の露出部98に対する接合が、導電性を有する粘着層を介して行なわれる。接続部69が粘着層を介して端子部96に対し導通した状態となる。
・図16は、露出部98に対する接続部69の接合のために、長尺状の導電部材として導電性粘着テープ106が用いられた変形例を示している。同図16では、導電性粘着テープ106が網点で図示されている。
図16及び図17に示すように、導電性粘着テープ106は、接続部69と露出部98との間に在されている。導電性粘着テープ106は、銅箔からなるテープ基材107と、テープ基材107の裏面に形成された導電性粘着層108とを備えている。この導電性粘着テープ106が、樹脂基材21(基材本体部22)の側面27であって周方向の所定の領域に対し貼付けられる。この貼付けの対象には、上記側面27,32から外側方に向けて露出する露出部98も含まれる。そして、接続部69がテープ基材107上に重ね合わされる。接続部69は、露出部98に対し、導電性粘着テープ106を介して間接的に接合される。なお、図17では、接続部69が、樹脂基材21の周方向のうち、露出部98に対向する箇所に配置されているが、対向しない箇所に配置されてもよい。
この変形例によると、接続部69は、樹脂基材21の周方向における導電性粘着テープ106のいずれかの箇所に位置すればよく、同方向における接続部69の位置について設計の自由度が高くなる。
・図18は、露出部98に対する接続部69の接合のために、長尺状の導電部材として導電性帯状体109が用いられた変形例を示している。同図18では、導電性帯状体109が網点で図示されている。
図18及び図19に示すように、導電性帯状体109は銅、黄銅等からなり、接続部69と露出部98との間に介在されている。この場合、コネクタハウジング93であって、露出部98よりも外側方となる箇所に、同コネクタハウジング93の側面において開放された凹部111が形成される。上記導電性帯状体109の厚み方向における一部が凹部111に嵌合され、残部が凹部111から露出される。導電性帯状体109のうち、凹部111に嵌合された部分が、はんだ付け、導電性接着剤による接着、超音波金属接合法による溶着等によって、露出部98に接合される。図19では、はんだ合金105を用いたはんだ付けによって接合された例が図示されている。
そして、接続部69が導電性帯状体109上に重ね合わされる。図19では、接続部69が、樹脂基材21の周方向のうち、露出部98に対向する箇所に配置されているが、対向しない箇所に配置されてもよい。
この変形例によっても、上記図16及び図17の変形例と同様、接続部69は、樹脂基材21の周方向における導電性帯状体109のいずれかの箇所に位置すればよく、同方向における接続部69の位置について設計の自由度が高くなる。
なお、導電性帯状体109に代えて、銅、黄銅等からなるワイヤが用いられてもよい。この場合にも、上記導電性帯状体109を用いた変形例と同様の効果が得られる。
また、図18に示すように、導電性帯状体109から分岐して、基材本体部22の側面27を経由して、裏面にまで延びる分岐部112が設けられてもよい。このようにすると、導電性帯状体109を樹脂基材21に対しより安定した状態で装着することができる。
・図18を用いて説明したように、導電性帯状体109から分岐する分岐部112が設けられる場合、この分岐部112を接続部69として利用することも可能である。この場合、分岐部112の近くにコネクタ92が設置される。端子部96の露出部98に対し、分岐部112(接続部69)が重ね合わせられた状態で接合される。図18で示されているコネクタ92は不要になるか、もしくは別の場所に設置されることになる。
・第1及び第2実施形態では、ヒータフィルム61における側部68の基材本体部22に対する溶着が、超音波溶着法によって行なわれたが、振動溶着法、高周波溶着法等の他の溶着法によって行なわれてもよい。
・第2実施形態では、枠部31の樹脂成形に先立ち、コネクタ92がインサート部材として樹脂成形金型内に配置されたが、図20に示すように、枠部31の樹脂成形後であり、かつ基材本体部22の樹脂成形に先立ち、コネクタ92がインサート部材として樹脂成形金型内に配置されてもよい。この場合、コネクタ92の表裏方向における少なくとも一部、図20では表側の部分が、基材本体部22に埋設される。コネクタハウジング93の表側の端部(閉塞部94)は、第2実施形態よりも裏側に位置する。
この変形例のエンブレム15でも、第2実施形態と同様、コネクタハウジング93の側面と、露出部98のうちコネクタハウジング93から露出している部分とは、樹脂基材21の側面27,32と同一面上に位置し、同側面27,32から外側方へ向けて露出する。そして、各露出部98に対し、対応する接続部69が重ね合わされ、同接続部69が露出部98に接合される。
・図18及び図19を用いて説明した上記変形例、すなわち、露出部98に対する接続部69の接合のために、導電性帯状体109が長尺状の導電部材として用いられた変形例を前提とし、発熱本体部及び接続部の各構成が変更されてもよい。
この前提となる変形例では、図22に示すように、コネクタハウジング93であって、露出部98よりも外側方となる箇所に、同コネクタハウジング93の側面において開放された凹部111が形成される。上記導電性帯状体109が凹部111に嵌合され、はんだ付け、導電性接着剤による接着、超音波金属接合法を用いた溶着等によって、露出部98に接合される。図22では、はんだ合金105を用いたはんだ付けによって接合された例が図示されている。
上記変形例において、図21及び図22に示すように、発熱部としてヒータフィルム61に代えて発熱部113が用いられる。発熱部113における発熱本体部114と接続部115とは、ともに導電性を有する金属膜によって構成される。これらの発熱本体部114及び接続部115は、スパッタリング等の成膜方法によって形成されたものである。
発熱本体部114は、透明樹脂層33の表面を対象とし、所定のパターン(ヒータパターン)を有するように形成されており、通電により発熱する。発熱に伴う発熱本体部114の温度分布、温度勾配等はヒータパターンから影響を受ける。ヒータパターンの設定により、温度分布を均一にしたり、適度な温度勾配を待たせたりすることが可能である。
接続部115は、発熱本体部114に繋がった状態で、樹脂基材21の側面27,32、導電性帯状体109の外周面、及びコネクタハウジング93の外側面に形成されている。接続部115は、露出部98に対し、導電性帯状体109及びはんだ合金105を介して間接的に接合されている。
発熱部113は、上記発熱本体部114に加え、同発熱本体部114の表側に配置された粘着層116と、粘着層116の表側に配置された保護層117とを備えている。保護層117は、発熱本体部114を表側から保護するためのものであり、上記透明樹脂層33と同等の屈折率及び電波透過性を有する透明樹脂材料によって形成されている。本実施形態では、保護層117は、PCを用いて形成されたフィルムによって構成されている。
また、粘着層116としては、例えば、上述したOCAを用いることができる。
上記変形例において、透明樹脂層33の表面36に対し、スパッタリング等により形成された金属膜は、通電により発熱する発熱本体部114として機能する。
また、スパッタリング等により、発熱本体部114に繋がった状態で形成され、樹脂基材21の側面27,32よりも外側方に位置し、かつ露出部98に対し、導電性帯状体109及びはんだ合金105を介して間接的に接合された金属膜は、発熱本体部114及び端子部96を電気的に接続する接続部115として機能する。
接続部115の露出部98に対する接合は、樹脂基材21の外側方で行なわれる。そのため、接続部115を、基材本体部22の側面27と裏面との境界部分で屈曲させなくてもすむ。従って、この変形例によっても、上記第1及び第2実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
また、接続部115が、上述したように導電性帯状体109及びはんだ合金105を介して露出部98に対し間接的に接合されているため、コネクタ92は、樹脂基材21の周方向におけるいずれかの箇所で導電性帯状体109に接合されていればよく、同方向におけるコネクタ92の位置について設計の自由度が高くなる。
また、上記変形例では、透明樹脂層33の表面36に形成された発熱本体部114を、保護層117によって、その発熱本体部114の表側から保護することができる。
なお、上記変形例において、発熱本体部114よりも表側の部分の層構成は適宜変更可能である。
例えば、上記発熱本体部114と粘着層116との間に絶縁層が形成されたり、上記保護層117の表側に、傷付き抑制を目的として、ハードコート層が形成されたりしてもよい。
また、導電性帯状体109に代えて、露出部98が周方向に延長されてもよい。そして、この延長された露出部98上に、スパッタリング等により金属膜が直接形成されて、露出部98に接合された状態の接続部115が形成されてもよい。
・第1実施形態、第2実施形態、及び上述した各変形例において、枠部31が省略され、樹脂基材21が基材本体部22のみによって構成されてもよい。ただし、この場合には、端子部53,96における露出部55,98は、基材本体部22の側面27から外側方に向けて露出する。
・上記車両用外装品は、車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置が搭載された車両に組込まれる車両用外装品であれば適用可能である。この場合、装置が送信及び受信する電磁波には、ミリ波のほかにも、赤外線等の電磁波が含まれる。
・車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置としては、前方監視用以外にも、後方監視用、前側方監視用、又は後側方監視用の装置であってもよい。この場合、車両用外装品は、電磁波の送信方向における上記装置の前方に配置される。
・上記車両用外装品は、車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置が搭載されない車両に組込まれる車両用外装品であってもよい。
・上記車両用外装品は、オーナメント、マーク等、エンブレム以外の車両用外装品にも適用可能である。