JP7305498B2 - 電子写真用部材及び定着装置 - Google Patents
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Description
この定着装置における2つの対向する部材の組合せとしては、一対のローラの組合せ、フィルムとローラの組合せ、ベルトとベルトの組合せ、ベルトとローラの組合せなどの定着方式に応じた形態が用いられている。これらの部材は電子写真用部材に含まれ、未定着トナーに接する部材は定着部材とも称される。定着部材には、その形態に応じて定着ローラ、定着フィルム、定着ベルトが含まれる。一方、定着部材と対向して配置され、該定着部材とともに定着ニップを形成する部材は加圧部材とも称される。加圧部材には、その形態に応じて加圧ローラ、加圧フィルム、加圧ベルトが含まれる。
特許文献1には、管状の基体上に弾性層を設けた定着部材として用いられる回転部材が開示されている。当該回転部材は、基体と弾性層の間に、Si-H基を有するシロキサンオリゴマー、アルケニル基を有するシランカップリング剤、及びテトラアルコキシシランを含む組成物の硬化物である層を有する。そして、特許文献1は、このような硬化物の層(以降、単に「硬化物層」ともいう)を設けることで、弾性層の内周面の硬度を外周面の15倍以上とし、これによって、弾性層の基材からの剥離に起因する外周面の隆起を抑制できることを記載している。
本開示の一態様は厚みのある記録材への電子写真画像の定着を繰り返した場合における弾性層の破断の発生を防止し得る電子写真用部材の提供に向けたものである。
また、本開示の他の態様は、高品位な電子写真画像を安定して形成することのできる定着装置の提供に向けたものである。
該基材と該弾性層との間に、該基材と該弾性層の内表面に接してなる、Si-H基を有するオルガノポリシロキサン、およびアルケニル基を有するシランカップリング剤を含む組成物の硬化物を含む硬化物層を有し、
該弾性層と該基材との、はく離接着強さが、3.0N/cm以上20.0N/cm以下であり、
該弾性層は、該基材からのはく離試験において凝集破壊するものであり、
該弾性層の外表面から深さ方向に10μm切削した位置において測定される、該弾性層の厚み方向のユニバーサル硬度をHU1とし、該弾性層の内表面において測定される、該弾性層の厚み方向のユニバーサル硬度をHU2としたとき、HU2/HU1が1.0以上、1.4以下である、電子写真用部材が提供される。
本開示の他の態様によれば、定着部材と、加圧部材とを備え、未定着トナー像を有する記録材を、該定着部材と該加圧部材とで形成されるニップ部で加熱して未定着トナー像を該記録材に定着する定着装置であって、該定着部材が、上記の電子写真用部材である定着装置が提供される。
具体的には、坪量60~90g/m2程度の普通紙の厚みは一般に80~120μm程度であるのに対し、厚紙と称される坪量100~400g/m2のプリント用紙は一般に150~300μm程度の厚みを有する。このため、厚紙を通紙した際には電子写真用部材における弾性層がより大きく変形することでその厚みを吸収することとなる。しかし、厚紙通紙時の紙の端部近傍においては紙が存在する領域と存在しない領域で変形量が大きく異なることから、弾性層内部に大きなひずみが生じ、特に内周面近傍において硬度が高いと応力が集中することとなる。
i)硬化物層形成用材料の層中における、当該オルガノポリシロキサンの、アルケニル基との反応率を向上させることによって、硬化物層中における、未反応の当該オルガノポリシロキサンの残留量を減らす方法。
ii)硬化物層の形成後に、該硬化物層から、未反応の当該オルガノポリシロキサンを除去することによって、硬化物層中における、未反応の当該オルガノポリシロキサンの残留量を減らす方法。
a)硬化物層形成用の材料は、必須成分として、Si-H基を有するオルガノポリシロキサン、及びアルケニル基および加水分解性官能基を有するシランカップリング剤を含む。シランカップリング剤中の加水分解性官能基は、加水分解によって水酸基に変化し、当該水酸基が、基材表面の水酸基との間で縮合反応する。このことにより、基材の外表面にアルケニル基が化学的に固定される(図2(a)及び図2(b)参照)。
従って、かかるシランカップリング剤を含む混合物には、縮合反応を促進させる触媒(以降、「縮合反応用触媒」ともいう)が用いられる。一方、かかる縮合反応用触媒は、ヒドロシリル化を促進するための、白金の如き付加硬化反応用触媒との共存下では、各々の触媒を構成する配位子の交換反応が起こり、触媒活性が低下する。そのため、シランカップリング剤を含む混合物には、縮合反応用触媒以外の触媒は含有させないのが通常である。
しかしながら、我々の検討では、縮合反応用触媒と、付加硬化反応用触媒とを当該混合物中に共存させた場合であっても、当該混合物の調製後、速やかに使用することで、縮合反応用触媒の活性の低下を抑えられること、すなわち、シランカップリング剤由来の水酸基と基材表面の水酸基との縮合反応と、当該縮合反応によって基材表面に化学固定されたアルケニル基とSi-H基との付加反応と、を共に効率的に生じさせ得ることを見出した。その結果、当該混合物中のSi-H基を有するオルガノポリシロキサンの量を減らすことなしに、硬化物層中の未反応の当該オルガノポリシロキサンの量を減らすことが可能となる。
硬化物層形成用の材料中のSi-H基を有するオルガノポリシロキサンの量を減らさず、かつ、上記i)の如き対策を採らない場合、硬化物層中には、未反応のSi-H基を有するオルガノポリシロキサンが残留することになる。かかる硬化物層の表面に、弾性層形成用の付加硬化型シリコーンゴム混合物の層を形成することで、硬化物層中の当該オルガノポリシロキサンが、浸透していき、弾性層の硬化物層側の領域の硬度を上昇させる。
図1(a)及び(b)は、本開示にかかる定着部材の一態様である、定着ベルト1および定着ローラ2の構成をそれぞれ示す概略断面模式図である。定着ベルト1は、エンドレスベルト形状を有し、基材自体が変形することにより定着ニップを形成するものである。定着ローラ2はローラ形状を有し、基材自体はほとんど変形せず弾性層の弾性変形で定着ニップを形成するものである。
図1(a)に示す定着ベルト1は、基材3の円筒状の外周を弾性層4が被覆し、弾性層4の外周を表層5が被覆した構成を有する。基材3と弾性層4との界面には、硬化物層(不図示)が存在する。なお、表層5は、弾性層4の周面に接着層(不図示)により固定されている場合がある。また、弾性層4は複層構成であってもよい。図1(b)に示す定着ローラ2も同様の構成を有する。なお、本開示に係る定着ベルトとは、定着フィルムを包含する。
(基材)
基材の材質としては、アルミニウム、鉄、ステンレス、ニッケルの如き金属およびその合金、ならびにポリイミドの如き耐熱性樹脂を用いることができる。これらの1種または2種以上を組み合わせて基材を構成することができる。
定着部材がローラ形状を有する場合、基材には芯金が用いられる。芯金の材質としては、アルミニウム、鉄、ステンレスの如き金属および合金が挙げられる。なお、芯金の内部は、定着装置での加圧に耐える強度を有していれば、中空状であってもよい。芯金の内部が中空状である場合には、芯金の内部に熱源を設けることも可能となる。
定着部材がベルト形状を有する場合には、基材としては、電鋳ニッケルスリーブ、ステンレススリーブおよび耐熱樹脂ベルトが挙げられる。スリーブ又はベルトの内面には、耐磨耗性や断熱性の如き機能を付与するための層(不図示)が更に設けられることがある。基材の表面には、ブラスト、ラップ、研磨の如き物理的処理を施してもよい。
定着部材がベルト形状を有する場合の基材の厚さとしては、15μm以上、80μm以下であることが好ましい。定着部材がローラ形状を有し、かつ中空状の場合の基材の厚さは、定着装置の加圧力による変形が生じにくいように適宜設計される。
弾性層は、付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物を含む。
弾性層形成用材料としての付加硬化型シリコーンゴム組成物としては、電子写真部材の弾性層形成用として公知の組成物を、あるいは、公知の材料から弾性層形成用として利用し得る材料を選択して調製した組成物を用いることができる。
付加硬化型シリコーンゴムの硬化物によって弾性層に弾性が付与される。
付加硬化型シリコーンゴム組成物は、以下の材料を混練することによって得ることができる。
(a)アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン;
(b)Si-H基を有するオルガノポリシロキサン;
(c)付加硬化反応用触媒
・分子両末端がR1 2R2SiO1/2で表され、中間単位がR1 2SiO及びR1R2SiOで表される直鎖状オルガノポリシロキサン
・分子末端がR1 2R2SiO1/2で表され、中間単位にR1SiO3/2及び/又はSiO4/2が含まれる分岐状オルガノポリシロキサン
ここで、R1はケイ素原子に結合した不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換の炭化水素基を表す。その具体例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等の炭素数1~6のアルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、置換炭化水素基(例えば、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-シアノプロピル基、3-メトキシプロピル基等、の塩素原子、フッ素原子またはシアノ基で置換された炭素数1~3のアルキル基)が挙げられる。
特に、合成や取扱いが容易で、優れた耐熱性が得られることから、オルガノポリシロキサンの有する全R1の50%以上がメチル基であることが好ましく、すべてのR1がメチル基であることがより好ましい。
また、R2はケイ素原子に結合したアルケニル基を表す。R2としては、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基が例示され、合成や取扱いが容易でシリコーンゴム組成物の架橋反応も容易に行われることから、特にビニル基が好ましい。
上記成分(a)であるアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの分子量は特に限定されず、弾性層形成用の付加硬化型シリコーンゴム組成物に用いられるアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの公知の分子量から選択することができる。
上記(b)成分において、Si-H基の数は、1分子中に平均して3個を越える数であることが好ましい。ケイ素原子に結合した有機基としては、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン成分のR1と同じ非置換又は置換の1価の炭化水素基が例示される。特に、合成及び取扱いが容易なことから、メチル基が好ましい。Si-H基を有するオルガノポリシロキサンの分子量は、目的とする架橋剤としての機能を得ることができる範囲から選択すればよく、特に限定されない。
また、上記(b)成分の25℃における粘度は、好ましくは10mm2/s以上100,000mm2/s以下、さらに好ましくは15mm2/s以上1,000mm2/s以下の範囲である。粘度が10mm2/s以上であると、オルガノポリシロキサンが保存中に揮発しにくく、得られる硬化物において所望の架橋度や物性を得ることができる。また、粘度が100,000mm2/s以下であると、オルガノポリシロキサンの取扱いが容易で系に容易に均一に分散させることができる。
上記(b)成分のシロキサン骨格は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでも差支えなく、これらの骨格を有する2種以上のオルガノシロキサンの混合物を用いてもよい。
特に合成の容易性の観点から、直鎖状のものが好ましい。
また、上記(b)成分において、Si-H基は、分子中のどのシロキサン単位に存在してもよいが、少なくともその一部が、R1 2HSiO1/2単位のように、オルガノポリシロキサンの分子末端に存在することが好ましい。
また、上記した成分(a)~(c)の他に、インヒビターと呼ばれる反応制御剤(阻害剤)を含んでもよい。反応制御剤としては、メチルビニルテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイドの如き公知の物質を用いることができる。
付加硬化型シリコーンゴム組成物の調製用の各成分の配合割合は、目的とする弾性層が得られるように設定すればよく、公知の配合割合から選択することができる。
弾性層に熱伝導性、耐熱性、および補強性の如き機能を付与するために、フィラーを弾性層に添加することが好ましい。また、付加硬化型シリコーンゴム組成物はフィラーを分散させやすく、また、フィラーの種類や添加量によってその硬化物の架橋度を調整し、弾性層の弾性を調整することができ、付加硬化型シリコーンゴム組成物にフィラーを添加して用いることが好ましい。
フィラーは熱伝導性を有することが好ましい。熱伝導性フィラーとしては、金属、金属化合物、炭素繊維を挙げることができる。高熱伝導性フィラーが更に好ましく、その具体例としては、以下の材料が挙げられる。
炭化珪素(SiC)、窒化珪素(Si3N4)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、シリカ(SiO2)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、気相成長法炭素繊維、PAN系(ポリアクリロニトリル)炭素繊維、ピッチ系炭素繊維。
これらのフィラーは、単独であるいは2種類以上を混合して用いることができる。
フィラーの平均粒径は、取扱い上、および分散性の観点から1μm以上50μm以下が好ましい。また、フィラーの形状としては、球状、粉砕状、針状、板状、ウィスカ状が用いられる。特に、分散性の観点から、フィラーは、球状のものが好ましい。
フィラーは、その機能を十分に達成させるために、弾性層中に、上述した成分(a)、(b)及び(c)の合計を基準として、30体積%以上60体積%以下の範囲で含有させることが好ましい。弾性層には、更に、補強性フィラー、耐熱性フィラー及び着色フィラーの少なくも1種を添加してもよい。
弾性層の形成には、上記の付加硬化型シリコーンゴム組成物の層を、金型成型法、ブレードコート法、ノズルコート法及びリングコート法の如き加工法によって、基材の外周面に形成し、加熱する方法が利用できる。基材には、後述するプライマー液による表面処理によって接着性が付与されており、このプライマー液による処理については、後に詳述する。
弾性層の厚さは、定着部材の表面硬度への寄与、およびニップ幅確保の観点から、適宜設計可能である。
本態様に係る定着部材における弾性層の厚みは、100μm以上500μm以下であり、好ましくは、200μm以上400μm以下である。弾性層の厚さが上記範囲であると、定着ベルトを定着装置に組み込んだ場合に、十分なニップ幅を確保することができる。また、弾性層の厚さが上記範囲であると、ベルト内に発熱源を有する場合に、熱源から記録媒体に効率よく熱を伝えることができる。
なお、弾性層の強度は、一般に、JIS K6251:2010に基づく、ダンベル状3号型試験片を用いて測定したときの引っ張り強さ(TS)が、0.4MPa以上、3.0MPa以下、特には、1.0MPa以上、2.5MPa以下であることが好ましい。弾性層の強度が上記範囲であると、定着部材の弾性層が十分な強度を有することができる。なお、弾性層の引っ張り強さは、弾性層を構成する硬化物に含まれるオルガノポリシロキサンの架橋度を大きくすることによって、大きくすることができる。例えば、ケイ素原子数に対するアルケニル基、及びケイ素原子数に対する活性水素基(Si-H基)の割合を増加させることで弾性層の引っ張り強さを大きくすることが可能となる。
ユニバーサル硬度(HU)とは、超微小硬度計(商品名:FISCHERSCOPE HM2000 XYp; Fischer Instruments K.K.製)を用いて測定できる硬度であり、ユニバーサル硬度によって材料の特性を評価することができる。本開示における弾性層のユニバーサル硬度の測定部は、弾性層の外表面から深さ方向に10μm切削した位置と弾性層の内表面となり、いずれの測定位置においも弾性層の厚み方向のユニバーサル硬度が測定される。
ユニバーサル硬度の具体的な測定方法については後述する実施例1において説明する。本開示において、弾性層の外表面から深さ方向に10μm切削した位置において測定されるユニバーサル硬度(HU1)と弾性層の内表面で測定されるユニバーサル硬度(HU2)との比(HU2/HU1)は、1.0以上、1.4以下とされ、好ましくは1.0以上、1.3以下とされる。
定着部材の表面には必要に応じて、表層が形成される。表層の材料としては、フッ素樹脂層が好適に用いられる。フッ素樹脂としては、以下に列挙する樹脂を単独もしくは2種以上を複合して用いることができる。
テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)。
上記に列挙した材料の中でも、成形性やトナー離型性の観点からPFAが好ましい。
・図3で示すように、フッ素樹脂ペレットによりチューブ状に成形したフッ素樹脂チューブ7を、接着層8を介して弾性層4上に被覆する方法。
・フッ素樹脂の微粒子を直接弾性層表面にコーティングした後、あるいは、フッ素樹脂の微粒子が溶媒中に分散された塗料を弾性層表面にコーティング後、乾燥し、焼き付けする方法。
シリカ、アルミナ、カーボン、カーボンナノチューブ。
表層の厚さは、10μm以上、50μm以下、更には、15μm以上、30μm以下とすることが好ましい。表層の厚さは、10μm以上であると耐久性が良く、30μm以下であると、伝熱性が良好である。
なお、定着部材の表面硬度は、記録材の凹凸への追従性の観点から75°以上、85°以下であることが好ましい。表面硬度はマイクロゴム硬度計(商品名:マイクロゴム硬度計MD-1 capa タイプC;高分子計器株式会社製)を用いて測定することができる。
基材と弾性層との間に設けられる硬化物層は、基材の外周面と弾性層の内周面に接している。
かかる硬化物層は、Si-H基を有するオルガノポリシロキサンと、アルケニル基及び加水分解性官能基を有するシランカップリング剤を含む硬化物層形成用の材料(プライマー)の硬化物からなる。硬化物層形成用の材料は、通常、下記成分(A)~(D)を含み、また、任意成分として成分(E)、及び、成分(F)を含む。
(A)Si-H基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)アルケニル基及び加水分解性官能基を有するシランカップリング剤、
(C)その他のシラン化合物、
(D)触媒、
(E)溶剤、
(F)添加剤。
これらの成分の配合割合は、目的とする硬化物層が得られるように設定すればよく、特に限定されず、公知の配合割合を選択して用いることができる。
以下に、上記各成分について詳細に説明する。
Si-H基を有するオルガノポリシロキサンは、弾性層に含まれるビニル基等のアルケニル基と反応することで、接着性が生まれる。このオルガノポリシロキサンは、直鎖状、分岐状または環状の形態を採ることができ、異なる形態のオルガノポリシロキサンの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Si-H基を有するオルガノポリシロキサンとしては、上記した目的とする機能を得ることがきるものであれば特に限定されない。例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチル-メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン等が挙げられ、分子量やSi-H基のモル当量は、所望の範囲で適宜選択される。
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。このアルケニル基が、成分(A)のオルガノポリシロキサンのSi-H基と反応し、結合を形成する。
加水分解性官能基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1~3のアルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基が、空気中の水分などにより加水分解することで、アルコキシ基から水酸基(-OH基)が生じる。その後、この水酸基は、主に基材表面の水酸基と縮合反応して結合したり、シランカップリング剤同士で縮合してオリゴマー状態となったりする。
アルケニル基を有するシランカップリング剤としては、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシランが挙げられる。
成分(B)以外のシラン化合物としてテトラアルコキシシラン等が添加されることがある。テトラアルコキシシランは、加水分解性有機基を有し、前述の通りシラン化合物同士で縮合したり、弾性層に含まれているフィラー表面の水酸基と縮合したりする。テトラアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランなどが例示される。
触媒としては、(D-1)縮合反応用触媒と(D-2)付加硬化反応用触媒を挙げることができる。縮合反応用触媒は、硬化物層形成用材料中のシランカップリング剤やその他のシラン化合物が有する加水分解性官能基が、水酸基へと加水分解し、基材表面の水酸基との間で起こるという縮合反応(図2(a))を促進させる。
一方、付加硬化反応用触媒は、硬化物層形成用材料中のSi-H基を有するオルガノポリシロキサンとアルケニル基を有するシランカップリング剤との反応(図2(b))を促進させる。さらに、付加硬化反応用触媒は、図2(a)及び/または図2(b)の反応を経て形成された、硬化物層中のSi-H基と、弾性層を構成している付加硬化シリコーンゴム中のアルケニル基との間の、弾性層4と硬化物層6との界面における付加反応(図2(c))を促進させる。
すなわち、縮合反応用触媒の働きにより、基材の外表面に、より効率的にアルケニル基を化学的に固定することができる。また、付加硬化反応用触媒の働きにより、基材の表面に固定されたアルケニル基と、Si-H基を持つシロキサンとを効率的に反応させることができる。その結果、硬化物層中の、未反応のSi-H基を有するオルガノポリシロキサンを減少させることができる。
なお、前記したように、硬化物層形成用の材料中に、縮合反応用触媒と付加硬化反応用触媒とを共存させた場合、縮合反応用触媒の触媒活性の低下が懸念されるため、通常は、付加硬化反応用触媒を用いない。しかしながら、我々の検討によれば、縮合反応用触媒と付加硬化反応用触媒とを共存させた場合でも、当該混合物の調製後、速やかに使用すれば、縮合反応用触媒の触媒活性は、殆ど低下しない。
縮合反応用触媒の例としては、スズ化合物が挙げられる。スズ化合物は、硬化物層と基材との間の縮合反応を促進し、接着性を向上させる働きをする。スズ化合物としては、ジラウリン酸ジブチルスズやジオクチルスズジラウレート等が挙げられる。縮合反応用触媒の1種を、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
付加硬化反応用触媒の例としては、白金化合物が挙げられる。白金化合物は弾性層と硬化物層との間の付加反応を促進し、接着性を向上させる働きをする。白金化合物としては、塩化白金酸や、ジビニルテトラメチルジシロキサンと白金の錯体化合物及びカルボニルシクロビニルメチルシロキサンと白金の錯体化合物等の白金錯体化合物が挙げられる。付加硬化反応用触媒の1種を、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶剤としては、有機溶媒が挙げられる。基材に対して濡れ性が良く硬化物層形成用材料の調製に利用でき、硬化物層形成用材料の層の乾燥時に揮発しやすい有機溶剤が好ましい。有機溶剤として、具体的には、上述した基材の材質に対しては、n-ヘプタンやn-ヘキサン、トルエン、酢酸エチル等が挙げられる。
硬化物層形成用材料の層を可視化させ、当該層の表面を目視で観察できるように、添加剤を添加してもよい。添加剤として、例えば、酸化鉄の如き顔料が挙げられる。
硬化物層形成用材料を基材へ塗布し、得られた層を加熱により焼き付けることで、硬化物層形成用材料の硬化物からなる硬化物層を形成することができる。
硬化物層形成用材料を基材に塗布する方法は特に限定されないが、均一な厚さを有する硬化物形成用材料の層を形成できる方法が好ましい。
具体的には、特許文献1に記載の方法やディッピングが挙げられる。
硬化物層形成用材料の層の焼成温度は、温度130℃以上、200℃以下が好ましい。130℃以上であれば、Si-H基を有するオルガノポリシロキサンとアルケニル基を有するシランカップリング剤との反応が進行しやすく、200℃以下であれば、アルケニル基が失活しにくく、十分にアルケニル基を残存させやすい。
また、硬化物層形成用材料の層の焼成時間は、30秒以上、60分以内、特には、2分以上、15分以内であることが好ましい。焼成時間が上記範囲内であれば、シランカップリング剤の縮合反応を十分に行うことができる。また、焼成に伴うアルケニル基の消失を抑えることができる。
硬化物形成用材料の基材表面への塗布量は、より良好な接着性と伝熱性を得るという観点から、0.1mg/cm2以上、10mg/cm2以下であることが好ましく、0.5mg/cm2以上、1.0mg/cm2以下であることがより好ましい。
基材上に設けた硬化物層の確認には、熱分解GC-MSによる分析を用いることができる。分析用の装置としては、ガスクロマトグラフィー(GC)用としてTrace GC Ultra(商品名;Thermo Fisher Scientific社製)、マススペクトル(MS)用としてISQ-LT(商品名;Thermo FisherScientific社製)、パイロライザーとしてPY-3030D(商品名;フロンティアラボ社製)の組合せを用いた。分析用のサンプルとしては、カッターなどを用いて、定着部材から表層と弾性層を切除し、基材と硬化物層のみとし、ハサミなどを用いて、0.2mm×1.0mm程度の大きさに切り出した硬化物層の断片を用いた。このサンプルをサンプルホルダーに投入して、熱分解GC-MSを用いた分析を行う。
加熱条件としては、例えば、600℃で0.2分が挙げられる。加熱した際のMSより、硬化物層中に未反応のまま残存しているSi-H基を有するポリオルガノシロキサンやアルケニル基を有するシランカップリング剤が検出される。
基材と弾性層とは良好に接着され、日本工業規格で定められた「接着剤-はく離接着強さ試験方法」(JIS-K6854-1:1999)において、弾性層が凝集破壊を起こす。
また、基材と弾性層の剥離接着強さは、上述したJIS-K6854-1:1999における剥離試験により求めることができ、本開示では、基材と弾性層の剥離接着強さは3.0N/cm以上20.0N/cm以下とされる。
具体的な試験方法については後述の実施例1において説明する。
本開示に係る電子写真部材は、定着部材と、加圧部材とを備え、未定着トナー像を有する記録材を、該定着部材と該加圧部材とで形成されるニップ部で加熱して未定着トナー像を該記録材に定着する定着装置の定着部材に用いることができる。
図1(a)に示す定着ベルトの形態の電子写真部材を用いた定着装置の一例を図5に示す。
図5は、定着ベルトを装着した定着装置の一例の、定着ベルトの回転軸に直交する方向での模式的断面図である。
この定着装置は、定着部材としての定着ベルト1と、加圧部材としての加圧ローラ25を有する。定着ベルト1と加圧ローラ25とでニップ部を形成している。
定着ベルト1の内部には、定着ベルト1を非輻射熱によって加熱するためのヒータ20、伝熱部材21、ヒータ20と伝熱部材21を保持するヒータホルダー22、温度検知素子24、ヒータホルダー22を支持する加圧用ステー23が配置されている。ここで、ヒータ20の例としては、例えば、セラミックヒータが挙げられる。加圧用ステー23の幅方向の両端と、不図示の定着装置本体側のばね受け部との間に各々加圧バネ(不図示)が配置されることにより、加圧用ステー23は、加圧部材25に対して押圧されている。そのため、ニップ部においては、ヒータ20が、加圧ローラ25と共に定着ベルト1を挟持するように配置されている。
なお、定着ベルト1は、その内部に配置された部材に対してルーズに外嵌されている。また、ステー23は、フランジ部材(不図示)に嵌合されて固定設置されている。
ヒータホルダー22はヒータ20を固定して保持する保持部材である。温度検知素子24によって検知された温度を利用して、ニップの温度が制御される。
加圧ローラ25の矢印R1方向への回転駆動に伴い定着ベルト1が、矢印R2の方向へ従動回転する。定着ベルト1の内周面は、ヒータ20及びヒータホルダー22と摺擦しながら回転し、ヒータ20によって定着ベルト1を介してニップ部が加熱される。このニップ部に、電子写真法により形成された未定着の電子写真トナー像Tを有する記録材Pが矢印A1の方向から搬入される。記録材Pはニップ内で定着ベルト1と加圧ローラ25の周面に挟持され、搬送される。その過程で、記録材Pは、加圧下で加熱され、記録材Pに未定着トナー像Tが定着される。
定着装置の定着部材として図1(b)に示す定着ローラを用いる場合には、図5に示す定着ベルト1を有する部分に代えて、定着ローラを配置して、加圧ローラとの間に未定着トナーの定着用のニップ部を形成する。ニップ部の加熱は、定着ローラと加圧ローラの少なくとも一方の内部に設けた、あるいはこれらのローラの外部に設けた加熱装置により行うことができる。
<定着ベルトの作製>
まず、基材として、内径30mm、幅400mm、厚さ40μmのニッケル電鋳製エンドレススリーブを用意した。尚、以下の一連の製造工程中、エンドレススリーブは、その内部に中子を挿入して取り扱った。
プライマー処理を行う前段階として、以下の各成分を用いて定法によりプライマー液(I)を調製した。
プライマー液(I)組成:
・(A)成分:
メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン:4.0質量部
・(B)成分:
メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:2.5質量部
・(C)成分:
テトラエトキシシラン:2.5質量部
・(D-1)成分:
スズ化合物(商品名:SND3260;GELEST,inc.):0.02質量部
・(D-2)成分:
白金化合物溶液(商品名:SIP.6829.2;GELEST,inc.):0.01質量部
・(E)成分:
ヘプタン:47.5質量部
酢酸エチル:31質量部
トルエン:7.5質量部
付加硬化型シリコーンゴム組成物の調製を以下のようにして行った。
成分(a)としてのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとして、1分子中にビニル基を少なくとも2個以上有する、ビニル化ポリジメチルシロキサン(商品名:DMS-V41、Gelest社製、数平均分子量68000(ポリスチレン換算)、ビニル基のモル当量0.04ミリモル/g)を準備した。
また、成分(b)としてのSi-H基を有するオルガノポリシロキサンとして、1分子中にSi-H基を少なくとも2個以上有する、メチルハイドロジェンポリシロキサン(商品名:HMS-301、Gelest社製、数平均分子量1300(ポリスチレン換算)、Si-H基のモル当量3.60ミリモル/g)を準備した。成分(a)100質量部に対して、成分(b)を0.5量部添加し、十分に混合し、付加硬化型シリコーンゴム原液を得た。シリコーンゴム原液におけるビニル基の数に対するSi-H基の数の割合(H/Vi)が0.45であった。
この付加硬化型シリコーンゴム原液に対し、フィラーとして高純度真球状アルミナ(商品名:アルナビーズCB-A10S;昭和タイタニウム(株)製)を、弾性層を基準として体積比率で45%となるように配合、混練した。そして、硬化後のJIS K 6253A準拠デュロメータ硬度が10°の付加硬化型シリコーンゴム組成物を得た。
先に用意した基材のプライマー処理された外周面に、リングコート法で、先に用意した液状の付加硬化型シリコーンゴム組成物を厚さ300μmに塗布した。こうして基材の外周面に硬化物層及び液状の付加硬化型シリコーンゴム組成物の塗膜を有する部材を200℃に設定した電気炉中で4時間加熱して、付加硬化型シリコーンゴム組成物を硬化させ弾性層を得た。
その後、弾性層の表面に、付加硬化型シリコーンゴム接着剤(商品名:SE1819CV;東レ・ダウ・コーニング社製の「A液」及び「B液」を当量混合)を用いて、厚さがおよそ50μm程度になるように塗布して接着剤層を形成した。
次いで、図3で示すように、内径29mm、厚み30μmのフッ素樹脂チューブ(商品名:KURAFLON-LT;倉敷紡績株式会社製)により接着剤層を被覆した。こうしてフッ素樹脂チューブを被覆した部材を200℃に設定した電気炉にて1時間加熱して接着剤層を硬化させてフッ素樹脂チューブを弾性層上に表層として固定した。得られた部材の両端部を切断し、幅が341mmの定着ベルトを得た。
以下の各項目について定着ベルトの評価を行い、得られた結果を表1又は表2に示した。
(評価1;弾性層のH/Vi値)
シリコーン化合物中のビニル基とSi-H基の存在割合は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いた水素核測定(H-NMR)を行うことにより確認可能である。ケミカルシフトが5.6ppmから6.2ppmにビニル基起因のピークが検出されるので、その積算値をもってビニル基由来の水素核の量とする。また、同じくケミカルシフトが4.6ppmから4.7ppmの範囲にSi-H基起因のピークが検出されるので、その積算値からSi-H基由来の水素核の量とする。ビニル基はその構造上に3個の水素原子を有するため、ビニル基の積算値を3で除した数値を分母に、Si-H基由来の積算値を分子に用いることで、H/Vi値を算出することができる。本例では、弾性層にH/Vi値が0.45となる付加硬化型シリコーンゴム原液を用いている。
定着ベルトの有する基材からの弾性層の剥離試験方法について図4を参照して説明する。
剥離試験用の定着ベルト1の基材の形状が変形しないように、必要に応じて内部に中子12を挿入し、部材の周方向に沿って、表層側から基材表面に到達するように剃刀を用いて幅1cmのスリットを入れる。次に、スリットを入れた部分に長手方向に一カ所切り込みを入れ、ここを剥がし端とする。この剥がし端において、弾性層と基材との界面部分に剃刀を入れて、界面で強制的に定着ベルトの周方向2cm程度剥離する。そして、剥がし端をフォースゲージ13のチャック部14に挟み込む。なお、弾性層が薄く塑性変形が起こりやすい場合には、スリット形成に先立って補強としてポリイミドテープを表層の表面に貼り付け、その上からスリットを形成してもよい。
そして、定着ベルトが周方向に自由に回転可能なように中子12を固定し、フォースゲージ13を不図示の手段を用いて剥がし端の根元における定着ベルト本体の接線方向に対し垂直方向に、剥がした弾性層側の層の長さが10mmになるまで、50mm/分の一定速度で引き上げる。この際、引き剥がす方向Fが、剥がし端の根元における定着ベルト本体の接線方向に対して90°を維持することが重要である。90°を維持するために、まず、該剥がし端をフォースゲージで挟み込む際に、剥がした弾性層側の層が90°となるように挟み込む。次に、中子12の回転軸の真上から垂直方向Fに一定の移動速度(50mm/分)にて引っ張ると同時に、中子12の接線における移動速度が垂直方向Fの移動速度と等しくなるように、中子12を図中R方向に回転させる。具体的には、定着ベルトの外径がφ30mmであれば、0.53rpmの速度で回転させることで90°を維持して剥離させることが可能である。
なお、定着部材が定着ローラである場合は、中子12の代わりに定着ローラの有する基材を用いて定着ローラを固定し、上記の操作によって剥離試験を行う。
・接着破壊:割れ目が接着剤と被着剤の界面にあることが目に見える接着剤結合の破壊。
・凝集破壊:割れ目が接着剤又は被着剤の中にあると目に見える結合たい積物の破壊。
基材と弾性層とが良好に接着している場合、破断面において、弾性層が凝集破壊を呈する。これは、基材側と弾性層側の両方に破壊した弾性層が付着している状態である。なお、破断面が凝集破壊と接着破壊の混合破壊を呈した場合には、弾性層の凝集破壊部分が剥離面積の50%以上であれば弾性層の凝集破壊と判定し、50%に満たない場合には接着破壊と判定する。
・ランクA:凝集破壊
・ランクB:接着破壊
また、基材から弾性層が剥離した際の引張り力をフォースゲージ13で測定して、弾性層の強度を示す剥離接着強さとした。
定着ベルトから、基材上の硬化物層と弾性層の間、並びに表面層側の接着剤層との間を、剃刀を用いて強制的に剥離させ、表面層側の外表面と基材側の内表面とを有する弾性層の一部を測定用として利用できる大きさの断片として切り出し、測定用サンプルとした。
この測定サンプルの外表面から深さ方向に10μm切削した位置と、弾性層の内表面を測定部とし、弾性層の厚さ方向のユニバーサル硬度を測定した。
測定は、超微小硬度計(商品名:FISCHERSCOPE HM2000 XYp;Fischer Instruments K.K.製)を用い、以下の手順により行った。
測定装置の測定ヘッドにISO14577に準拠した136゜の面角を持つ四角錐のダイヤモンドビッカース圧子を使用し、該圧子によりサンプルの測定部表面を押し込む。具体的には、サンプルの測定部表面から圧子の押込み速度3μm/秒で30μmの深さまで押し込む。そして、押し込んだ状態で5秒間保持し、さらに3μm/秒で除荷を行う。ユニバーサル硬度(HU)は、下記式(1)に従って計算される。下記式(1)において、hは押込み深さを表し、F(h)は押し込み深さhでの負荷荷重、A(h)は押込み深さhの時の圧子がサンプルに接触している面積を表し、ビッカース圧子の場合、式(2)で表される。
・式(1):HU=F(h)/A(h)
・式(2):A(h)=26.43×h2
こうして得られた測定サンプルの外表面から深さ方向に10μm切削した位置でのユニバーサル硬度(HU1)と、弾性層の内表面でのユニバーサル硬度(HU2)から、これらの比(HU2/HU1)を求めた。
定着ベルトを、カラー複合機(商品名:imageRUNNER ADVANCE 5051;キヤノン株式会社製)に装着し、記録材として厚紙(商品名:CLC5000用最厚口(坪量250g/mm2);キヤノン株式会社製)を用いて、連続通紙試験を行い、定着ベルトの弾性層への破断の発生の有無を以下の基準に基づいて評価した。
・ランクA:15万枚連続通紙中に、弾性層は破断しなかった。
・ランクB:10万枚の連続通紙中には破断がなかったが、10万枚を超えて連続通紙中に破断した。
・ランクC:10万枚連続通紙するまでに弾性層が破断、又は基材から弾性層が剥離した。
表1に示す通りプライマー液の種類、添加触媒、弾性層厚み、弾性層のH/Vi、フィラー量を変更した以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、得られた各定着ベルトについて評価した。各定着ベルトの作製条件と評価1の結果を表1に示す。弾性層のH/Viは成分(a)の配合量に対する成分(b)の配合量を調整することで、変更している。(H/Vi=0.35のとき、成分(b)の配合量は0.78質量部。H/Vi=1.00のとき、成分(b)の配合量は2.22質量部)
比較例2では、硬化物層を形成せず、基材上に直接、弾性層を設けることよって定着部材を作製した。
実施例1~実施例7及び比較例1~8に係る定着部材について、評価2~評価4の結果を表2に示す。
2 定着ローラ
3 基材
4 弾性層
5 表層
6 硬化物層
20 ヒータ
25 加圧ローラ(加圧部材)
P 記録材
T 未定着トナー像
Claims (12)
- 基材と、該基材上の、厚さが100μm以上500μm以下である、付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物を含む弾性層と、を有する電子写真用部材であって、
該基材と該弾性層との間に、該基材と該弾性層の内表面に接してなる、Si-H基を有するオルガノポリシロキサン、およびアルケニル基を有するシランカップリング剤を含む組成物の硬化物を含む硬化物層を有し、
該弾性層と該基材との、はく離接着強さが、3.0N/cm以上20.0N/cm以下であり、
該弾性層は、該基材からのはく離試験において凝集破壊するものであり、
該弾性層の外表面から深さ方向に10μm切削した位置において測定される、該弾性層の厚み方向のユニバーサル硬度をHU1とし、該弾性層の内表面において測定される、該弾性層の厚み方向のユニバーサル硬度をHU2としたとき、HU2/HU1が1.0以上、1.4以下である、ことを特徴とする電子写真用部材。 - HU2/HU1が、1.0以上、1.3以下である請求項1に記載の電子写真用部材。
- 前記硬化物層に含まれる硬化物を形成するための材料が、触媒として、縮合反応用触媒及び付加硬化反応用触媒の少なくとも一方を含む請求項1または2に記載の電子写真用部材。
- 前記縮合反応用触媒が、スズ化合物である請求項3に記載の電子写真用部材。
- 前記付加硬化反応用触媒が、白金化合物である請求項3に記載の電子写真用部材。
- 前記電子写真用部材が、非輻射熱によって加熱された定着フィルムを用いて記録材上の未定着トナー像を定着する定着装置の該定着フィルムとして用いられるものである請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電子写真用部材。
- 前記基材が円筒状の外周面を有し、該外周面に前記硬化物層を介して前記弾性層が設けられている請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電子写真用部材。
- 前記電子写真用部材が、エンドレスベルト形状またはローラ形状を有する請求項7に記載の電子写真用部材。
- 定着部材と、加圧部材とを備え、未定着トナー像を有する記録材を、該定着部材と該加圧部材とで形成されるニップ部で加熱して未定着トナー像を該記録材に定着する定着装置であって、
該定着部材が、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電子写真用部材からなることを特徴とする定着装置。 - 前記定着部材を非輻射熱で加熱するヒータを具備する請求項9に記載の定着装置。
- エンドレスベルト形状またはローラ形状を有する定着部材と、加圧部材と、該定着部材を非輻射熱で加熱するヒータとを備え、
未定着トナー像を有する記録材を、該定着部材と該加圧部材とで形成されるニップ部で加熱して未定着トナー像を該記録材に定着する定着装置であって、
該定着部材は、請求項8に記載の電子写真用部材であり、
該ヒータの少なくとも一部が、該定着部材の内周面に接して配置されている、ことを特徴とする定着装置。 - 前記ヒータが、前記ニップ部において、前記加圧部材と共に前記定着部材を挟持するように配置されている請求項11に記載の定着装置。
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